(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】取り外し可能な保護層を設けられたLIDAR検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220218BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20220218BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
G01S7/481 A
C03C27/12 Z
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CFF
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535609
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2019085741
(87)【国際公開番号】W WO2020127335
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ダカン, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ギロン, グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】レア, ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ, ネリオ
【テーマコード(参考)】
4F071
4G061
5J084
【Fターム(参考)】
4F071AA43
4F071AA50
4F071AA53
4F071AF13
4F071AF30Y
4F071AH07
4F071BC01
4F071BC12
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB04
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
5J084AA05
5J084AA10
5J084AC02
5J084BA03
5J084EA16
5J084EA33
(57)【要約】
本発明は、(a)固体光検出及び測距(LIDAR)装置(21)であって、(b)ガラス又はポリマーから作られた透明壁部分(12)を設けられたハウジング(11)内に密閉された固体光検出及び測距(LIDAR)装置(21)を含む検出装置(1)において、取り外し可能な保護層(31)が、透明壁部分の外面(12o)を覆うことと、(c)取り外し可能な保護層(31)は、SAE J400において規定される砂利による複数回の衝突から透明壁部分を保護し、(d)取り外し可能な保護層は、750~1650nmの波長範囲内のIR線に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の平均透過率を有し、及び(e)取り外し可能な保護層で覆われた透明壁部分は、IR線に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%の平均透過率を有することとを特徴とする検出装置(1)に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス又はポリマーから作られた透明壁部分(12)を設けられたハウジング(11)内に密閉された固体光検出及び測距(LiDAR)装置(21)を含む検出装置(1)において、
取り外し可能な保護層(31)が、前記透明壁部分の外面(12o)を覆うこと、及び
前記取り外し可能な保護層(31)は、SAE J400又はISO 20567-1:2017において規定される砂利による複数回の衝突から前記透明壁部分を保護し、
前記取り外し可能な保護層は、750~1650nmの波長範囲内のIR線に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の平均透過率を有し、かつ
前記取り外し可能な保護層で覆われた前記透明壁部分は、前記IR線に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%の平均透過率を有することを特徴とする検出装置(1)。
【請求項2】
前記取り外し可能な保護層(31)は、
・5mm以下、好ましくは2mm未満の厚さのガラスシートであって、好ましくは接着剤によって前記透明壁部分に接着されるガラスシート、
・1000μm以下、好ましくは500μm以下の厚さのポリマーシートであって、好ましくは接着剤によって前記透明壁部分に接着されるポリマーシート、又は
・ディップコーティング、吹き付け、若しくはスパッタリングによって前記透明壁部分の前記外面上に適用され、且つ溶媒若しくは熱処理によって除去されることができる被覆層
のうちの1つである、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記取り外し可能な保護層(31)は、
・1mm以下、好ましくは0.7mm以下の厚さのガラスシートであって、好ましくは接着剤によって前記透明壁部分に接着されるガラスシート、
・500μm以下、好ましくは150μm以下の厚さのポリマーシートであって、好ましくは接着剤によって前記透明壁部分に接着されるポリマーシート、
・ディップコーティング、吹き付け、又はスパッタリングによって前記透明壁部分の前記外面上に適用され、且つ溶媒又は熱処理によって除去されることができる被覆層
のうちの1つである、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
・前記取り外し可能な保護層(31)は、SAE J400において規定されるストーンチップによる複数回の衝突に対する耐性を有し、それにより、前記保護層の除去後、前記透明壁部分の前記外面(12o)は、3mm以下の衝突サイズに対応するサイズ分類A及びBの場合に少なくとも8A及び8B、好ましくは少なくとも9A及び9Bの等級を有し、好ましくは3mmを超える衝突サイズに対応するサイズ分類C及びDの場合に10C及び10Dの等級を有し、及び/又は
・前記取り外し可能な保護層(31)は、それによって覆われた前記透明壁部分に、ISO 20567-1:2017の方法Aにおいて規定される金属グリットによる複数回の衝突に対する耐性を与え、それにより、前記保護層の除去後、前記透明壁部分の前記外面(12o)は、0.5の等級での試験後、0.2%以下の影響を受けた面積を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記取り外し可能な保護層(31)は、低屈折率多孔質シリカの一つの層を含む反射防止層を含む積層体であるか、又は低屈折率及び高屈折率を有し、且つ低屈折率を有する層で終了する誘電材料の交互層のいくつかの層の積層体であるか、又はそれらの組み合わせであり、前記取り外し可能な保護層は、好ましくは、前記IR線に対して7%未満、好ましくは5%未満の反射率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記取り外し可能な保護層によって覆われた前記透明壁部分は、ASTM-D1003-11、手順Aに準拠してヘイズメーターを用いて測定される3%以下、好ましくは2%以下のヘイズによって特徴付けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記取り外し可能な保護層は、400~700nmの波長の可視光に対して、60%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満の平均透過率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記取り外し可能な保護層(31)は、前記透明壁部分(12)を覆うときに大気にさらされる疎水性外面(31o)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記取り外し可能な保護層(31)は、ソーダ石灰ガラスシートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記取り外し可能な保護層(31)は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、それらのコポリマー又はブレンドを含むポリマーシートである、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
・前記透明壁部分を除く前記ハウジング(11)は、フェンダー、バンパー、グリル、ウイングミラーカバー、バックミラーカバー、ボンネット、トランク、サイドドア、ピラー、又はバックドア、レンズリフレクターを含む、自動車両(40)の非透明要素(41)の一体部分であり、及び/又は
・前記透明壁部分(12)は、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト、又はテールライトカバーを含む、自動車両の透明部品の一部である、請求項1~10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
固体LiDARを密閉するハウジングの透明壁部分(12)を保護するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の取り外し可能な保護層(31)の使用。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の検出装置を修理する方法であって、前記取り外し可能な保護層(31)の外面(31o)は、損傷領域(31d)を含み、前記方法は、
前記損傷領域を含む前記取り外し可能な保護層を前記透明壁部分(12)の前記外面(12o)から除去するステップ、
前記透明壁部分(12)の前記外面(12o)に、新しい取り外し可能な保護層(31n)を、前記新しい取り外し可能な保護層(31n)が前記透明壁部分(12)の前記外面(12o)に接着し、且つそれから除去されることができるように適用するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
前記損傷領域(31d)を含む前記取り外し可能な保護層(31)の前記除去は、機械的な力、溶媒又は熱処理の使用を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記新しい取り外し可能な保護層(31n)は、ガラス又はポリマーシートであり、前記ガラス又はポリマーシートは、機械的に、溶媒によって、又は熱処理によって除去されることができる接着剤により、前記透明壁部分(12)の前記外面(12o)に接着される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項に記載の検出装置を含む自動車両(40)であって、自動車両(40)は、好ましくは自動運転車両である、自動車両(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車両又は自動運転車両を含め、ドライバーを支援するために自動車両に使用するのに適切な検出装置(ADAS=先進運転支援システム)の分野におけるものである。特に、本発明は、非常に低コストで増加した耐用時間及び信頼性を有する、ハウジングと、ハウジング内に収容された固体LiDAR装置とから構成されるLiDARシステムに関する。本発明は、ハウジングの透明壁部分の外面上に適用される除去可能な保護層に関する。IR透過又はヘイズが、LiDARシステムの信頼できる機能に必要な値から外れる点まで損傷した場合、この保護層は、除去され、且つ新しい保護層と交換されることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車両には、車両のドライバーを支援するために一層多くのシステムが装備されている。これらは、一括してADAS(=先進運転支援システム)と呼ばれる。ADASは、車両の直接周囲の障害物を検出し、且つ場合により特定できる検出システムを含む。例えば、検出システムとしては、光学カメラ又はIRカメラ、レーダー及びLiDAR(=光検出及び測距)が挙げられる。LiDARは、光のパルスが光速で物体まで移動してLiDARに戻るまでに要する時間を計算することにより、それ自体とその視界内の物体との間の距離を測定する。これは、通常、レーザー源である発光体と、光受信器とを含む。LiDARの発光体が放出した光のパルスが不規則な形状の物体に到達すると、入射光信号は、散乱し、その光の一部のみが光受信器に戻る。米国特許出願公開第20150029487号明細書は、LiDAR型装置が装備された自動車両を記載している。
【0003】
メカニカルスキャンLiDARは、強力コリメートレーザー源を使用し、高集束光学系を介して受信器上にリターン信号を集中させる第一世代のLiDARである。レーザー及び受信器アセンブリを回転させることにより、メカニカルスキャンLiDARは、その周囲の領域を走査し、最大360度の広い領域にわたってデータを収集することができる。しかし、メカニカルスキャンLiDARは、一般に嵩高く、壊れやすく、非常に高価である。固体LiDARは、メカニカルスキャンLiDARの欠点を有しない第二世代のLiDARである。
【0004】
メカニカルスキャンLiDARが、1つのレーザー源をその周囲の領域にわたって走査するために電気機械的構成に依拠するのに対して、固体LiDARは、可動部品を含まない。固体LiDARでは、光フェーズドアレイが使用され、そこで発光体が特定のパターン及び位相のフォトンのバーストを送り出して指向性放射を形成し、その焦点及びサイズを調節することができる。光フェーズドアレイは、ある発光体から次の発光体までの信号の相対位相を調節することによって電磁ビームの方向を変化させることができる発光体(例えば、レーザー)の列である。固体LiDARは、電子チップ上に形成され、したがってメカニカルスキャンLiDARよりもはるかに安価であり、振動に対して耐性である。1つのレーザー源を含むメカニカルスキャンLiDARと比較した固体LiDARの1つの欠点は、同じエネルギー消費の場合、光フェーズドアレイが放出する光の強度が発光体の数で割ったものとなることである。光の反射、吸収及び散乱などの光学現象は、1つのレーザー源を用いる場合よりも問題となることがある。
【0005】
固体LiDARは、自動車両において一層搭載されるようになっている。これらは、雨、雹、大きい温度変化及び砂利などの種々の物体との衝突にさらされる非常に攻撃的な環境である自動車両の外部に取り付けることができる。このような環境からLiDARを保護するため、LiDAR装置は、LiDARに使用される波長に対して透明である透明壁部分を含むハウジング内に密閉される。LiDARは、UV光、可視光又はIR光を使用することができる。しかし、自動車産業において使用されるLiDARは、一般に、750~1650nmに含まれる近赤外スペクトルの光を放出する。当然ながら、透明壁部分は、光源が放出する光に対して高い透過性を維持する必要がある。このため、多くの自動車製造業者は、透明壁部分が清浄なままとなるようにワイピングシステムを搭載している。しかし、ワイピングシステムでは、透明壁部分が砂利などの物体との種々の衝突によって劣化して、透明壁部分の外面上に引掻傷が形成されることを阻止することができない。透明壁部分は、透過率が低下するまで引掻傷が形成されることがあるか、又はLiDAR装置の信頼性がもはやなくなるまでヘイズが増加することがある。これまで、このようなことが起こると、透明壁部分だけを交換するのではなく、LiDARシステム全体を取り替える必要があり、使用者にコストが発生する。同様に、透明壁部分が衝突によって破壊される場合、LiDAR装置は、外部の攻撃からもはや保護されず、LiDARシステム全体の交換が必要となる。
【発明の概要】
【0006】
ADAS、及び複数の検出システムを必要とする自律走行車両の発展につれて、ハウジングの透明壁部分に引掻傷が生じるたびにLiDARシステムの交換が必要となることは、容認できるものではない。本発明は、現在のシステムと比較して、低コストでLiDARシステムの耐用寿命を実質的に向上させることが可能となる、この問題の解決策を提案する。これら及び他の利点は、以下の項においてより詳細に説明される。
【0007】
本発明は、添付の独立請求項において規定される。好ましい実施形態は、従属請求項において規定される。特に、本発明は、
ガラス又はポリマーから作られた透明壁部分を設けられたハウジング内に密閉された固体光検出及び測距(LiDAR)装置を含む検出装置において、
取り外し可能な保護層が、透明壁部分の外面を覆うこと、及び
取り外し可能な保護層は、SAE J400又はISO 20567-1:2017において規定される砂利による複数回の衝突から透明壁部分を保護し、
取り外し可能な保護層は、750~1650nmの波長範囲内のIR線に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の平均透過率を有し、かつ
取り外し可能な保護層で覆われた透明壁部分は、IR線に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%の平均透過率を有することを特徴とする検出装置に関する。
【0008】
取り外し可能な保護層は、
・5mm以下、好ましくは2mm未満の厚さのガラスシートであって、好ましくは接着剤によって透明壁部分に接着されるガラスシート、
・1000μm以下、好ましくは500μm以下の厚さのポリマーシートであって、好ましくは接着剤によって透明壁部分に接着されるポリマーシート、又は
・ディップコーティング、吹き付け、若しくはスパッタリングによって透明壁部分の外面上に適用され、且つ溶媒若しくは熱処理によって除去されることができる被覆層
の1つであることができる。
【0009】
好ましい一実施形態では、取り外し可能な保護層は、
・1mm以下、好ましくは0.7mm以下の厚さのガラスシートであって、好ましくは接着剤によって透明壁部分に接着されるガラスシート、
・500μm以下、好ましくは150μm以下の厚さのポリマーシートであって、好ましくは接着剤によって透明壁部分に接着されるポリマーシート、又は
・ディップコーティング、吹き付け、若しくはスパッタリングによって透明壁部分の外面上に適用され、且つ溶媒若しくは熱処理によって除去されることができる被覆層
の1つであることができる。
【0010】
取り外し可能な保護層は、好ましくは、それによって覆われた透明壁部分に、SAE J400において規定されるストーンチップによる複数回の衝突に対する耐性を与え、それにより、保護層の除去後、透明壁部分の外面は、3mm以下の衝突サイズに対応するサイズ分類A及びBの場合に少なくとも8A及び8B、好ましくは少なくとも9A及び9Bの等級を有し、好ましくは3mmを超える衝突サイズに対応するサイズ分類C及びDの場合に10C及び10Dの等級を有する。
【0011】
これとは別に又はこれに付随して、取り外し可能な保護層は、それによって覆われた透明壁部分に、ISO 20567-1:2017の方法Aにおいて規定される金属グリットによる複数回の衝突に対する耐性を与えることができ、それにより、保護層の除去後、透明壁部分の外面は、0.5の等級での試験後、0.2%以下影響を受けた面積を有する。
【0012】
好ましい一実施形態では、取り外し可能な保護層は、低屈折率多孔質シリカの一つの層を含む反射防止層を含む積層体である。代わりに、それは、低屈折率及び高屈折率を有し、且つ低屈折率を有する層で終了する誘電材料の交互層のいくつかの層の積層体であるか、又はそれらの組み合わせであることができる。取り外し可能な保護層は、好ましくは、IR線に対して7%未満、好ましくは5%未満の反射率を有する。
【0013】
特に規定されなければ、「IR線」という表現が使用される場合、これは、750~1650nmに含まれる波長の放射線を意味する。
【0014】
好ましい一実施形態では、取り外し可能な保護層によって覆われた透明壁部分は、ASTM-D1003-11、手順Aに準拠してヘイズメーターを用いて測定される3%以下、好ましくは2%以下のヘイズによって特徴付けられる。好ましい一実施形態では、取り外し可能な保護層は、好ましくは、400~700nmの波長の可視光に対して、60%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満の平均透過率を有する。さらなる好ましい一実施形態では、取り外し可能な保護層は、好ましくは、透明壁部分を覆うときに大気にさらされる疎水性外面を有する。疎水性表面は、その上で水滴が少なくとも90°の静的接触角を形成する表面として定義される。
【0015】
一実施形態では、取り外し可能な保護層は、ソーダ石灰ガラスシートである。代わりに、取り外し可能な保護層は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、それらのコポリマー又はブレンドを含むポリマーシートであることができる。
【0016】
検出装置は、好ましくは、自動車両上に搭載される。例えば、透明壁部分を除くハウジングは、フェンダー、バンパー、グリル、ウイングミラーカバー、バックミラーカバー、ボンネット、トランク、サイドドア、ピラー、又はバックドア、レンズリフレクターを含む、自動車両の非透明要素の一体部分であることができる。別の一例では、透明壁部分は、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト、又はテールライトカバーを含む、自動車両の透明部品の一部であることができる。
【0017】
本発明は、固体LiDARを密閉するハウジングの透明壁部分を保護するための、前述で規定された取り外し可能な保護層の使用にも関する。
【0018】
本発明は、前述で規定された検出装置を修理する方法であって、取り外し可能な保護層の外面は、損傷領域を含み、方法は、
損傷領域を含む取り外し可能な保護層を透明壁部分の外面から除去するステップと、
透明壁部分の外面上に、新しい取り外し可能な保護層を、新しい取り外し可能な保護層が透明壁部分の外面に接着し、且つそれから除去されることができるように適用するステップと
を含む方法にも関する。
【0019】
損傷領域を含む取り外し可能な保護層の除去は、機械的な力、溶媒又は熱処理の使用を含むことができる。
【0020】
新しい取り外し可能な保護層は、ガラス又はポリマーシートであることができる。ガラス又はポリマーシートは、機械的に、溶媒によって、又は熱処理によって除去されることができる接着剤により、透明壁部分の外面に接着されることができる。
【0021】
本発明は、前述で規定された検出装置を含む自動車両であって、自動車両は、好ましくは自動運転車両である自動車両にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の性質のより十分な理解のため、添付の図面とともに以下の詳細な説明が参照される。
【
図1】透明壁部分を横断する入射放射線(i0)の挙動を示す。
【
図3】砂利との衝突後に修理される本発明による検出装置の使用の種々の段階を概略的に示す。
【
図4】本発明による検出装置を設置可能な種々の位置を有する自動車両を示す。
【
図5】自動車両内での本発明による検出装置の一体化の3つの実施形態を示し、(a)検出装置全体が車両の(非透明)車体部分に連結され、(b)ハウジングの非透明壁部分が車両の車体部分の一体部分であり、(c)ハウジングの透明壁部分が車両の透明要素である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2中に示されるように、本発明は、ガラス又はポリマーから作られた透明壁部分(12)を備えたハウジング(11)内に密閉された固体LiDAR装置(21)を含む検出装置に関する。LiDARは、砂ぼこり及び砂利又は雹の衝突などの外部の攻撃から保護するためにハウジング内に密閉される必要がある。本発明は、犠牲層に摩耗を集中させることによってLiDARシステムの耐用寿命を延長するための解決策を提案する。透明壁部分の光学的性質を低下させる摩耗により検出装置の信頼性がなくなった場合、犠牲層を低コストで交換することができる。
【0024】
前述のように、固体LiDARは、発光体を移動させることなく種々の方向に電子的に向けることができる光波ビームを発生させる発光体(レーザー)の位相アレイを含む。所望の方向の放射線が増加するように、別々の発光体からの光波が互いに合わせられ、望ましくない方向の放射線が抑制されるように打ち消される位相関係を有するようにそれぞれの発光体が設定される。フェーズドアレイでは、発光体間の位相のずれを制御することにより、光波ビームを異なる方向に向けることができる。
【0025】
固体LiDARを外部の攻撃から保護するために、固体LiDARは、放出される放射線及び障害物から跳ね返って戻る放射線が通ることができる透明壁部分を含むハウジング内に密閉される。
【0026】
透明壁部分(12)
放出される放射線は、ハウジング(11)の透明壁部分(12)を横断して障害物に衝突する必要があり、その放射線の一部が反射して検出装置に戻り、それらは、光センサーに到達する前に透明壁部分(12)を再び横断する必要がある。入射ビーム(i0)及び障害物から反射して戻るビームが横断する透明壁部分(12)は、自動車両(40)上に搭載されるLiDARに一般的に使用される赤外光に対して高い透過率を有する必要がある。これは、ポリマー又はガラスから作られていることができる。
【0027】
図1の簡略化した図中に示されるように、透明壁部分(12)を横断する入射放射線(i0)は、反射放射線(ir)、吸収放射線(ia)、散乱放射線(is)及び屈折放射線(if)の1つ以上に分割される。反射放射線(ir)及び吸収放射線(ia)は、透明壁部分を横断しない。ASTM-D1003-11,§7.2&7.3を参照すると、
・透過率Ttは、透明壁部分を横断した放射線の束T1の、入射放射線(i0)の束T0に対する比T1/T0に等しい。ここで、束T1は、屈折放射線(if)及び散乱放射線(is)の束の合計(Tf+Ts)である。
・拡散透過率Tdは、散乱放射線の束Tsの、透過放射線の束T1に対する比Ts/T1である。
・ヘイズHは、拡散透過率Tdの、透過率Ttに対する比Td/Ttに等しい。
【0028】
透明壁部分(12)が、一方では、一般にIR範囲内(好ましくは750~1650nm)に含まれるLiDARが放出する波長に対して高い透過率Ttを有し、他方では低ヘイズ(H)値を有することは、LiDAR検出装置(1)の良好な機能のために重要である。LiDAR検出装置とともに使用するのに適切な透明壁部分の例は、米国特許出願公開第20150029487号明細書並びに欧州特許出願公開第20170185156号明細書及び国際出願PCT/欧州特許出願公開第2018/070954号明細書に記載されている。雨、霜並びに雹及び砂利の衝突などの外部の攻撃に透明壁部分(12)がさらされる車両の使用中、これらの値が維持されることがLiDAR検出装置の耐用寿命のために重要である。特に、雹及び砂利は、当然ながら、透明壁部分を破壊することがあるが、透明壁部分(12)の外面(12o)の単なる引掻でさえもヘイズ値を増加させることがあり、したがってLiDAR装置の光センサーによって記録される帰還信号の精度が低下することがある。
【0029】
保護層(31)
雹及び砂利の衝突などの外部の攻撃による透明壁部分(12)の外面(12o)の永久的な劣化を防止するために、本発明は、透明壁部分の外面(12o)を取り外し可能な保護層(31)で覆うことを提案する。保護層(31)は、透明壁部分(12)の外面(12o)を、SAE J400又はISO 20567-1:2017において規定される砂利による複数回の衝突による永久的な損傷から保護する。
【0030】
本発明では、雹又は砂利の衝突などの外部の攻撃にさらされるのは、取り外し可能な保護層(31)である。
図3中に示されるように、本発明による新しい検出装置は、自動車両上に搭載し(
図3(a)を参照されたい)、使用することができる。
図3(b)中に示されるように、取り外し可能な保護層(31)は、砂利(5)又は雹などのあらゆる別の物体による衝突によって劣化して、劣化領域(31d)を形成することがある。時間及び使用とともに、透過率Tt及び/又はヘイズHの光学的性質がそれを下回るとLiDAR検出装置(1)がもはや信頼できなくなるレベルを規定する、あらかじめ規定された信頼性閾値を下回る程度まで、劣化領域(31d)が劣化し始めることがある。従来技術の検出装置では、検出装置全体を除去して新しい検出装置と交換する必要が生じ、コストが顕著に増加する。本発明では、
図3(c)中に示されるように、損傷した取り外し可能な保護層(31)は、透明壁部分(12)の外面(12o)から除去することができる。取り外し可能な保護層(31)によって保護され、外部の攻撃のエネルギーのすべて又は大部分が劣化領域(31d)中に吸収されたため、透明壁部分(12)の外面(12o)は、損傷していないか又は損傷が非常にわずかである。
図3(d)中に示されるように、新しい取り外し可能な保護層(31)を透明壁部分(12)の外面(12o)上に適用することができ、それにより、LiDAR検出装置は、十分な透過率Tt及び十分に低いヘイズHで再び高い信頼性で機能し、明確で信頼性のある信号を発生することができる。
【0031】
一実施形態では、取り外し可能な保護層(31)は、例えば、接着剤によって透明壁部分に接着可能なガラスシートであることができる。一方では、例えば溶媒(雨の理由で水以外)、熱又は機械的な力を用いてガラスシートを除去することができ、他方では、信頼性閾値未満のIR線に対する透過率及びヘイズの光学的性質に影響を与えないのであれば、市場で入手可能なあらゆる感圧接着剤(PSA)を使用することができる。
【0032】
IR線の吸収を減少させるために、ガラスシートは、できる限り薄いべきである。他方では、取り外し可能な保護層(31)は、透明壁部分(12)の外面(12o)を保護し、砂利及び雹の衝突のエネルギーの大部分を吸収する必要がある。ガラスは、衝撃に対して脆いため、より厚いガラスシートも有利である。これらの2つの相反する要求のバランスをとるために、好ましくは、ガラスシートは、1mm以下、好ましくは0.7mm以下の厚さを有する。ガラスシートは、好ましくは、少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.4mmの厚さを有する。ガラスシートは、0.6±0.2mmの厚さを有することができる。
【0033】
取り外し可能な保護層(31)を形成するガラスシートは、ソーダ石灰ガラスシートであることができる。ソーダ石灰ガラス組成物の一例は、以下の成分を含む:
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
Cr2O3 0.0001~0.06%
Co 0~1%
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~1%。
【0034】
ソーダ石灰ガラス組成物の別の一例は、以下の成分を含む。
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
Cr2O3 0.0001~0.8%
Co 0~1%
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~1.7%。
【0035】
1050~1650nmのIR線における高い透過率と、電磁スペクトルの可視部分における非常に低い透過とを併せ持つためのソーダ石灰ガラス組成物の別の一実施形態は、直前に記載されたCr2O3、Fe2O3及びCoの範囲を、以下の1つ:
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~1.1%;
マンガン(MnOとして表される) ≧0.005%;及び任意選択的に、
クロム(Cr2O3として表される) 0~1.3%
によって置き換え、及び
- 重量パーセント値として表される全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe2O3+MnO+Cr2O3)≧1%、
- Fe2O3
*/(49+0.43(Cr2O3
*-MnO*))として定義される比R1<1;
- Fe2O3
*/(34+0.3(Cr2O3
*-MnO*))として定義されるR2<1(ここで、Fe2O3
*、MnO*及びCr2O3
*は、合計(Fe2O3+MnO+Cr2O3)に対する相対パーセント値である)
を有する。
【0036】
このようなガラスシートは、自動車両中にLiDAR検出装置に使用されるIR線に対して非常に高い透過率を有する。透明壁部分(12)もガラスから作られていることができる。好ましくは、透明壁部分(12)は、ガラスから作られており、ガラスシートに関して前述した範囲内の組成を有する。取り外し可能な保護層と透明壁部分(12)との両方が、同じ(又は類似の)組成を有するガラスから作られている場合、これらの2つのガラス間の接着性が向上し、より少ない接着剤若しくはより安価な接着剤しか必要としなくなるか、又はさらにこれらの2つの表面が平滑で完全に適合するのであれば、接着剤が全く不要になる。しかし、安全のために、少なくともある程度の接着剤を使用することが好ましい。
【0037】
別の一実施形態では、取り外し可能な保護シートは、ポリマーシートであることができ、このポリマーシートは、例えば、接着剤によって透明壁部分に接着される。ポリマーシートは、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、それらのコポリマー又はブレンドでできていることができる。多くのポリマーは、ガラスよりも実質的に延性が高く、砂利の衝突による衝撃エネルギーを吸収する能力が高い。ポリマーシートは、対応するガラスシートよりも薄くすることができ、好ましくは500μm以下、好ましくは150μm以下の厚さを有する。
【0038】
ガラスシートの場合と同様に、接着剤は、PSAであることができ、このPSAは、ポリマーシートを除去できる必要があり、透明壁部分とポリマーシートとの組立体の光学的性質に影響を与えてはならない。それは、ポリマーシートと接着的に適合性であることも必要である。ガラスと異なり、ポリマーは、一般に、より低い表面エネルギーを有し、そのため、すべての接着剤がポリマーシートの表面に十分に接着するわけではない。当業者であれば、それぞれのポリマーの種類に適切な接着剤の一覧を供給元のカタログ中に見出すことができる。
【0039】
透明壁部分(12)は、ガラスシートに関して前述で規定された範囲内の組成のガラスから作られていることができる。ガラスは、一般に、高い表面エネルギーを有し、PSAに十分に接着し、そのため、ポリマーシートへの接着に適切なPSAは、一般に、ガラス表面に十分に接着する。代わりに、透明壁部分(12)は、ポリマーから作られていることができる。好ましくは、透明壁部分のポリマーは、ポリマーシートのポリマーと適合性であり、好ましくは同じ種類である。これらの条件では、透明壁部分と取り外し可能な保護層との両方に対して接着的に適合性であるPSAの選択は、より容易になる。場合により、2つの表面間の接着は、接着剤なしで可能である。安全のために、少なくともある程度の接着剤を使用することが好ましい。
【0040】
第3の実施形態では、取り外し可能な保護層は、ディップコーティング、吹き付け、又はスパッタリングなどの任意の周知の技術によって透明壁部分(12)の外面(12o)上に適用された被覆層であることができる。この被覆は、水以外(雨の理由で)の溶媒を用いて、被覆が付着する透明壁部分に悪影響が生じない熱処理又は被覆を機械的にこすり取ることにより除去可能である必要がある。
【0041】
透明壁部分(12)の外面(12o)は、3次元(3D)形状を有することができる。取り外し可能な保護層(31)は、外面の3次元形状に適合する必要がある。ガラスシートの場合、外面(12o)の3D形状に適合するように実施すべきである。ポリマーシートは、一般に、あらゆる形状に適合するのに十分に可撓性である。被覆は、明らかにあらゆる形状に適合する。
【0042】
保護層(31)の光学的性質
本発明の取り外し可能な保護層(31)は、750~1650nmの波長範囲内のIR線に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%、さらに少なくとも95%の平均透過率を有する必要がある。取り外し可能な保護層が透明壁部分(12)の外面(12o)に適用されると、取り外し可能な保護層で覆われた透明壁部分の組立体は、IR線に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%の平均透過率を有する。
【0043】
取り外し可能な保護層(31)は、400~700nmに含まれる波長の可視光に対して、60%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満の平均透過率を有することができる。着色された層を適用すること又は取り外し可能な保護層全体を染色することのいずれかにより、取り外し可能な保護層は、着色された外面を有するように処理することができる。例えば、取り外し可能な保護層は、黒色であることができるか、又はそれが適用される車両の車体の色に適合する色を有することができる。
【0044】
取り外し可能な保護層により生じる反射を減少させることは、当然ながら、透過率を増加させることができるため、非常に重要である。反射の減少は、反射防止層を取り外し可能な保護層(31)に適用することによって高めることができる。したがって、取り外し可能な保護層(31)は、低屈折率多孔質シリカの一つの層を含む反射防止層を含む積層体であるか、又は低屈折率及び高屈折率を有し、且つ低屈折率を有する層で終了する誘電材料の交互層のいくつかの層の積層体であるか、又はそれらの組み合わせである。取り外し可能な保護層は、好ましくは、7%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満のIR線に対する反射率を有する。ここで、反射率は、反射光(ir)の束Trの、入射光(i0)の束T0に対する比Tr/T0として定義される。
【0045】
(新しい)取り外し可能な保護層で覆われた透明壁部分の組立体は、好ましくは、ASTM-D1003-11、手順Aに準拠してヘイズメーターを用いて測定される3%以下、好ましくは2%以下のヘイズHを有する。ヘイズは、LiDAR検出装置の精度を低下させる不確実性の原因となる。したがって、ヘイズは、好ましくは、できる限り低く維持すべきである。
【0046】
雨及び霜は、透明壁部分(12)と取り外し可能な保護層(31)との組立体の光学的性質を一時的に妨害することがあるため、取り外し可能な保護層(31)は、透明壁部分(12)を覆うときに大気にさらされる疎水性外面(31o)を含むことができる。疎水性は、低表面エネルギーを有するポリマーシート若しくはコーティングを選択すること又は取り外し可能な保護層(31)に疎水性層を適用することのいずれかによって得ることができる。表面上に置かれた水滴が90°超の静水接触角を形成する場合、表面が疎水性であると見なされる。
【0047】
材料のほとんどの光学的性質は、供給元のテクニカルシートに示されている。したがって、取り外し可能な保護層用に光学的に適切な材料は、カタログ上であらかじめ選択することができる。あらかじめ選択された材料は、公式のデータを確認するために試験することができる。光学的性質は、層の厚さ及び材料の品質グレードに伴って変動し得る。
【0048】
前述の議論の光学的性質により、透明壁部分を通過する光ビームの透過に基づくLiDAR検出装置の良好な機能を、取り外し可能な保護層が妨害しないことが保証される。しかし、取り外し可能な保護層(31)の主要な目的は、透明壁部分(12)の外面(12o)の保護である。これは、以下に議論する機械的性質によって実現できる。
【0049】
保護層(31)の機械的性質
取り外し可能な保護層(31)は、好ましくは、それによって覆われた透明壁部分に、SAE J400において規定されるストーンチップによる複数回の衝突に対する耐性を与え、それにより、保護層の除去後、透明壁部分の外面(12o)は、3mm以下の衝突サイズに対応するサイズ分類A及びBの場合に少なくとも8A及び8B、好ましくは少なくとも9A及び/若しくは9B又はさらに10A及び/若しくは10Bの等級を有し、好ましくは3mmを超える衝突サイズに対応するサイズ分類C及びDの場合に10C及び10Dの等級を有する。SAE J400に準拠した衝撃試験方法は、以下により詳細に説明される。
【0050】
代わりに又は加えて、取り外し可能な保護層(31)は、それによって覆われた透明壁部分に、ISO 20567-1:2017の方法Aにおいて規定される金属グリットによる複数回の衝突に対する耐性を与えることができ、それにより、保護層の除去後、透明壁部分の外面(12o)は、0.5の等級での試験後、0.2%以下の影響を受けた面積を有する。
【0051】
試験方法SAE J400及びISO 20567-1:2017の両方は、実際には、自動車の露出した塗装面に衝突する砂利又は他の媒体の影響を再現するために計画された試験である。両方の方法は、透明壁部分の外面(12o)に塗料が存在しない領域、つまり塗料が剥がれた領域を評価することからなる評価ステップを含む。透明壁部分の外面は、試験によって損傷すると、くぼみを含む。低角度の光を用いて外面(12o)の写真を撮影することにより、これらのくぼみのコントラストを強調することができる。代わりに、くぼみの内部が着色しないように注意しながら、ローラーを用いて塗布される着色層を外面にコーティングすることができる。
【0052】
前述の光学的要求を満たす取り外し可能な保護層(31)が透明壁部分に適用される場合、これは、SAE J400又はISO 20567-1:2017によって規定される機械的要求に適用され、同じ組成であるが、より大きい厚さを有する取り外し可能な保護層を用いて試験を繰り返すことができる。より大きい厚さの新しい保護層で光学的要求が依然として満たされるように注意する必要がある。これらの機械的要求に到達しない場合、別の材料を選択する必要がある。ガラスシートの機械的性質が不十分である場合、これを化学的又は熱的急冷によって硬化させ、最初と同じ厚さで、且つ十分でない場合にはある層の厚さで再び試験することができる。
【0053】
衝撃試験方法SAE J400
SAE J400には、被覆表面の耐チッピング性を試験するための試験方法が記載されている。この試験は、砂利又は他の媒体が自動車の露出した塗料又は被覆表面に衝突することによる影響を再現するように計画される。この試験は、表面試験パネル上に制御されたエアブラストにより、9.5~15.9mmに含まれるサイズのふるいで構成されるサイズの規格化された道路の砂利を放出することからなる。ここでは、周囲温度における試験方法Cが適用される。
【0054】
結果は、傷(chip)の密度、すなわち単位面積当たりの数を規定する10~0の数の分類(10は、低い傷密度を意味し、0は、高い傷密度を意味する)と、傷のサイズを確定するサイズの分類A~D(Aは、小さいサイズを意味し、Dは、大きいサイズを意味する)とによる傷等級に関して示される。
【0055】
例えば、8Aの傷等級は、1試験片(10.6×10.6cm)当たり1mm未満のサイズの2~4個の傷に対応する。9Bの傷等級は、1試験片当たり1~3mmに含まれるサイズの1個の傷に対応する。等級10は、傷なしに対応する。以上の等級は、試験後及び取り外し可能な保護層の除去後の透明壁部分の外面に合致する等級である。SAE J400には、標準パターンと比較することにより、チッピングが生じた表面の評価に役立つ一連の標準パターンが示されている。
【0056】
衝撃試験方法ISO 20567-1:2017
試験方法ISO 20567-1:2017は、SAE J400試験方法と類似しているが、砂利の代わりに、規定されたサイズ分布により3.55~5mmに含まれるメッシュサイズのチルド鉄グリットが、試験される表面に対して放出されることが異なる。チルド鉄グリットは、砂利よりも再現性及び耐久性があり、各試験期間の後に迅速に腐食する。試験パネルは、100×100mmのサイズである。試験方法Aによると、2×500gのグリットが20秒間100kPaの圧力で放出される。
【0057】
SAE J400と同様に、取り外し可能な保護層を除去した後の試験で生じた外面(12o)の損傷の評価は、標準パターンとの比較によって完了することができる。これらのパターンは、0.5刻みで0.5~5.0に含まれる等級の範囲に及ぶ。取り外し可能な保護層(31)を除去した後の外面(12o)は、好ましくは、0.5以下の等級を有し、すなわちこの基準で提供される最小の標準パターンに対応する。
【0058】
検出装置を備えた自動車両
本発明による検出装置は、自動車両、船、飛行機などに使用することが特に適切である。好ましくは、本発明による検出装置は、自動車両上に搭載され、より好ましくは自動運転自動車両上に搭載される。自動車両としては、乗用車、バン、トラック、モーターバイク、バス、路面電車、列車などが挙げられる。
【0059】
図4は、典型的な乗用車を示し、囲まれた数字(1)による検出装置の配置の例も示す。検出装置は、フェンダー、バンパー、グリル、ウイングミラーカバー、バックミラーカバー、ボンネット、トランク、サイドドア、ピラー、又はバックドア、レンズリフレクターなどの非透明車体要素(41)の上に搭載することができる。検出装置は、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト、又はテールライトカバーなどの透明車体要素(42)の後ろに搭載することもできる。
【0060】
図5は、透明壁部分が外側に向かうように本発明による検出装置を搭載するための種々の選択肢を示す。
図5(a)では、車両の車体の非透明要素(41)は、検出装置(1)のハウジング(11)を取り付けるための開口部を備えている。検出装置は、溶接、ねじ、スナップ嵌めなどの当業者に周知のあらゆる手段によって車体に固定することができる。
【0061】
図5(b)では、透明壁部分(12)を除くハウジング(11)は、車両(40)の車体の非透明要素(41)の一体部分であることができる。透明壁部分(41)は、LiDAR装置を取り付けた後に開口部の周囲に接着することができる。前述のように、自動車両(40)の非透明要素(41)としては、フェンダー、バンパー、グリル、ウイングミラーカバー、バックミラーカバー、ボンネット、トランク、サイドドア、ピラー、又はバックドア、レンズリフレクターなどを挙げることができる(
図4を参照されたい)。
【0062】
図5(c)中に示される第3の選択肢は、透明壁部分(12)を除くハウジング(11)を車両(40)の透明要素(42)の内面に取り付けることである。したがって、透明壁部分は、自動車両の透明要素の一部によって形成される。検出装置の収容に適切な車両の透明要素(42)としては、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ヘッドライト、又はテールライトカバーなどが挙げられる(
図4を参照されたい)。
【0063】
以上の選択肢のすべてにおいて、取り外し可能な保護層は、透明壁部分(12)の外面(12o)に適用することができる。したがって、本発明は、固体LiDARを密閉するハウジングの透明壁部分(12)を保護するための、前述で規定された取り外し可能な保護層(31)の使用に関する。
【0064】
本発明は、前述の検出装置を修理する方法であって、取り外し可能な保護層(31)の外面(31o)は、損傷領域(31d)を含み、方法は、以下のステップを含む、方法にも関する。
(a)損傷領域を含む取り外し可能な保護層(31)を透明壁部分(12)の外面(12o)から除去するステップ。損傷した取り外し可能な保護層の除去は、溶媒(水と異なる)の使用により、熱の適用により、又は機械的にこすり取ることにより支援することができる。
(b)透明壁部分(12)の外面(12o)に、新しい取り外し可能な保護層(31n)を、新しい取り外し可能な保護層(31n)が透明壁部分(12)の外面(12o)に接着し、且つそれから除去されることができるように適用するステップ。
取り外し可能な保護層の透明壁部分の外面に対する良好な接着を保証するために、PSAなどの接着剤を使用することができる。2つの間の界面に現れるふくれは、取り外し可能な保護部分で覆われた透明壁部分によって形成される組立体の光学的性質を妨害することがある。適切な光学的性質、接着される両方の表面との適切な接着適合性を有するように、前述のように接着剤を選択する必要があり、溶媒、熱、又は機械的なこすり取りを使用して、又は使用せずに、新しい取り外し可能な保護層の除去を可能にする必要がある。
【0065】
本発明は、透明壁(12)の外面(12o)上に取り外し可能な保護層(31)を適用することにより、検出装置の耐用寿命を延長するための解決策を提供する。取り外し可能な保護層(31)は、摩耗した場合に除去して、新しい取り外し可能な保護層と交換できる犠牲層として機能する。この解決策は、装置(1)の機能不全がハウジングの透明壁部分(及び取り外し可能な保護層)の光学的性質の劣化による場合、検出装置全体を交換するよりも実質的に安価で環境に優しい。
【符号の説明】
【0066】
1 検出装置
11 ハウジング
12 透明壁部分
12o 透明壁部分の外面
21 固体LiDAR
22 IR放射線
31 取り外し可能な保護層
31d 取り外し可能な保護層の損傷領域
31n 新しい取り外し可能な保護層
31o 取り外し可能な保護層の外面
32 接着剤
40 自動車両
41 非透明車体要素
42 透明車体要素
51 砂利
i0 入射放射線
i1 透過放射線
ia 吸収放射線
if 回折放射線
ir 反射放射線
is 散乱放射線
T0 入射放射線の束
T1 入射放射線の束
Td 拡散透過率=Ts/T1
Ts 散乱放射線の束
Tt 透過率
【国際調査報告】