(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】試験対象物の機械的特性を求めるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/317 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
G01N3/317
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021535971
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2018086516
(87)【国際公開番号】W WO2020126026
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511198863
【氏名又は名称】テーエムデー フリクション サービシス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】スゥエッティ、アンドレ ガルシア リマ
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA13
2G061AB04
2G061AB05
2G061BA20
2G061CA20
2G061DA01
2G061DA12
2G061EA06
2G061EB07
2G061EB08
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】強磁性材料成分を有する試験対象物の機械的特性を高信頼性でかつ迅速に求めること。
【解決手段】強磁性材料成分を有する試験対象物(1)の、とりわけ自動車用ブレーキパッドの、機械的特性、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための装置。該試験対象物(1)に力のインパルスを加え、該試験対象物(1)を振動させるよう、該試験対象物(1)に対し磁気吸引力を及ぼすための電磁式アクチュエータ(2)が設けれられている。該振動のスペクトルは該試験対象物(1)の少なくとも1つの固有振動数振動を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性材料成分を有する試験対象物(1)の、とりわけ自動車用ブレーキパッドの、機械的特性、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための装置(10)であって、
該試験対象物(1)に力のインパルスを加え、該試験対象物(1)を振動させるよう、該試験対象物(1)に対し磁気吸引力を及ぼすための電磁式アクチュエータ(2)、とりわけ電磁石が設けれられていること、該振動のスペクトルは該試験対象物(1)の少なくとも1つの固有振動数振動を含むこと
を特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(10)において、
前記アクチュエータ(2)は、出発状態において前記試験対象物(1)に対向するよう、とりわけ保持装置(11)によって、吊下状態で配置されていること
を特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置(10)において、
前記アクチュエータ(2)は、少なくとも1つの減衰要素(9)によって前記保持装置(11)に保持されていること
を特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の装置(10)において、
順次並んで配置された複数の試験対象物(1)を該装置(10)を通って移送するための移送装置が設けられていること、前記アクチュエータ(2)は磁気吸引力を該試験対象物(1)に対し周期的に及ぼすこと
を特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記移送装置は、非強磁性材料で製造されていること
を特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の装置において、
前記アクチュエータ(2)は、前記試験対象物(1)に対し力のインパルスを導入するための作動ヘッド(3)を有すること
を特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の装置において、
加振された試験対象物(1)の固有振動数振動を光学的及び/又は音響的に検出するためのセンサユニット(5)、とりわけマイクロフォン又はレーザ振動計、が設けられていること
を特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記センサユニット(5)は、力のインパルス中の力-時間-関数(Kraft-Zeit-Funktion)を測定するための力センサ(7)を有すること
を特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の装置において、
前記アクチュエータ(2)を制御するための及び/又は前記センサユニット(5)と前記試験対象物(1)への力のインパルスの導入を同期するための制御ユニット(6)が設けられていること
を特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の装置において、
好ましくはセンサユニット(5)によって測定された及び/又は記憶されているデータの比較、計算及び/又は試験をするための評価装置(8)が設けられていること
を特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置において、
作動ヘッド(3)は実質的にドーム状又はピラミッド状に形成されていること
を特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の装置(10)によって、強磁性材料成分を有する試験対象物(1)の、とりわけ自動車用ブレーキパッドの、機械的特性、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための方法であって、
該試験対象物(1)に力のインパルスを加えるために、該試験対象物(1)に対し磁気吸引力が及ぼされること、かくして、該試験対象物(1)は振動させられること、該振動のスペクトルは該試験対象物(1)の少なくとも1つの固有振動数振動を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
作動ヘッド(3)が作用を及ぼす時点において、実質的に前記試験対象物(1)の自由振動条件が存在すること
を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法において、
前記試験対象物(1)の固有振動に属する固有振動数が測定されること、及び、測定された固有振動数は基準値と対比されること
を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
測定値と基準値との対比によって、前記試験対象物(1)の圧縮率の値を決定するための基礎として使用される照合が実行されること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び請求項12の上位概念に応じた、試験対象物の、とりわけ自動車のブレーキパッド(ないしブレーキライニング)の、機械的特性、例えば固有振動数を求める(決定する)ための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の例えば固有振動数又はモード減衰のような機械的特性は、とりわけ自動車分野において、例えば部品製造の際の品質管理の枠内において使用される。
【0003】
自動車の発展における例えば自動車のブレーキパッドの部品又は他の部材は、運転時に不所望の振動、過負荷、それらによって場合によっては不所望の騒音発生や余分なエネルギ消費を引き起こす欠陥を製造時に有し得る。この種の振動は、変化された物理的特性、幾何学的特性、回転部材のアンバランス、部品の不均一な摩擦、質量、湿気又は応力(歪力)によって引き起こされ得る。
【0004】
自動車ブレーキ産業においては、ブレーキパッドの品質パラメータの1つは圧縮率である。しかしながら、このパラメータを測定するための試験はしばしば極めて費用が掛かり大掛かりなものとなる。なぜなら、この試験は無作為抽出試験に基づく圧縮分析が使用される大規模生産ラインにおいては実行するのが極めて困難だからである。
【0005】
一般的に、加振(励振)された試験対象物の振動挙動は、その固有振動数における固有振動(複数)の発生に基づいて決定される。固有振動(複数)は種々異なるモードを有し得る。固有振動数(複数)はシステムないし部品特性値、即ちこの部品について特徴的な振動である。これらの固有振動数の各々について、分析されるべき部品がこの振動数で振動する際に示すであろうな変形である1つの関連する(対応する)固有振動モード(Egenform)が存在する。部品の固有振動数及び固有モードによって、動的荷重時の物体又は系の挙動についての示唆(情報)が得られる。モード分析を用いることによって、試験対象物の生成する振動挙動は固有振動数と固有モードを求める(検出する)ことによって試験及び定量化されることができる。モード分析の結果即ち固有値、固有振動数及び固有モードは、動的荷重に関する構造体の設計のための重要なパラメータである。モードモデルの基礎は、1つ以上の測定された伝達関数である。
【0006】
モード分析の際、試験されるべき試験対象物の1つの点に(1つの)力が導入(印加)される、更なる1つの点において該試験対象物の応答信号ないし応答が測定され、該応答信号ないし応答から伝達関数が計算される。試験対象物の複数の点における伝達関数を決定することによって、いわゆるモード形状(Modenformen)即ち振動モードが求められる。この情報を用いることにより、試験対象物の振動挙動を決定することができる。試験対象物の固有振動数の個数及び分布についての決定的ファクタ(複数)は、材料の幾何学的形状ないし外形(Geometrie)及び物理的特性即ち質量及び剛性(スチフネス)又は減衰率)である。
【0007】
モードパラメータの決定のために、試験されるべき試験対象物は一般的に適切な加振源、例えばインパルスハンマ又は動電型ないし液圧型振動機(シェーカー)を用いた力のインパルスないし衝撃(衝撃力)によって加振される。加振する力は圧電式ロードセルによって測定可能である。同時に、構造体応答は、例えば加速度測定装置(ピックアップ)、測定用マイクロフォン又はレーザ振動計によって検出される。そして、高速フーリエ変換(FFT/FRF)によって、振動数応答(ないし振移:Frequenzgaenge)ないし加振(刺激)と応答の間の伝達関数が計算される。
【0008】
インパルスハンマ法の場合、伝達関数を求めるために、好ましくはモードないしインパルスハンマによるインパルスを用いて試験対象物の加振が達成される。インパルスハンマはインパルスによって試験対象物を加振するよう構成されたハンマである。インパルスハンマは力センサを備えることもできる。
【0009】
試験対象物に配される更なるセンサによって、試験対象物内におけるこのインパルスの伝達を試験することができる。そのような試験によって、例えば、対象物の構造的特性又は音響的特性を(逆算的に)導き出す(逆推定する)ことができる。この方法によって、夫々の試験対象物の、例えば構成材料ないし原材料の内部の材料欠陥を確認し、その程度を評価することができる。音響的測定技術の場合、インパルスハンマは物体音響(物体内伝播音響)の惹起のために使用される。
【0010】
特定の試験対象物の伝達挙動を決定するために、インパルスハンマによって、該試験対象物は、通常は力センサによって既知の力推移で加振される。物体音響ピックアップによって試験対象物の振動が、マイクロフォンによって放出される空気音響が決定されることができる。これらの測定された信号から、試験対象物の伝達挙動を計算することができる。
【0011】
理想的な力のインパルスはほぼ無限に短い時間内における無限大の振幅であり、かくして、すべての振動数について一定のスペクトルパワー密度を生成する。
【0012】
適切な結果を得るために、試験対象物は、当該試験対象物が自由に振動できるよう、配置(支持)される必要がある。一般的には、試験対象物は弾性的に吊下されるか又はフォーム(発泡)材料製マットに載置(支持)される。
【0013】
例えば自動車における騒々しい騒音を防止するために、そのため例えばその作動時に人間によって不快に感じられる騒音を不規則な態様で生成する傾向があることが知られている自動車の摩擦ブレーキの場合、大掛かりな(複雑な)方法が採用される。生成する振動の振動数が大型のブレーキ部品ないしブレーキシステム全体の固有振動数の範囲内に入る場合、これらのブレーキ部品ないしブレーキシステムは、減衰率(ダンピング性)が相対的に小さい場合の共振振動時に生じるような大規模に生じる変位振幅(Wegamplituden)を有する振動へと加振される。その結果生じる周囲雰囲気(大気)中の圧力波は騒音として人間の聴覚に入り込む(捉えられる)。対抗措置として、ブレーキパッドの物理的特性及び幾何学的形状並びにその設計が、不所望な振動の発生が可及的に抑制されるよう、適合化される。しかしながら、これは実現するのが極めて困難であると共に、不完全にしか実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】DE19903757A1
【特許文献2】DE248438A1
【特許文献3】DE102016221761A1
【特許文献4】EP0906560B1
【特許文献5】DE102014116034A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
DE19903757A1は、例えば、摩擦ブレーキないし摩擦クラッチの少なくとも1つの摩擦により誘導される加振(励振)周波数でブレーキ部品ないしクラッチ部品へ導入される振動エネルギが、該部品に結合された少なくとも1つの共振器の加振によって変換されること、その第1固有振動数は加振周波数に調整されておりかつその面積は騒音を雰囲気(大気)伝達するには十分ではないこと、を提案している。この理由から、部品(複数)の1つは少なくとも1つの共振器に結合されており、その第1固有振動数はブレーキ装置ないしクラッチ装置の摩擦により誘導される加振振動数に調整されておりかつその面積は騒音を雰囲気(大気)伝達するには十分ではない。
【0016】
部品の振動を例えば自動車に組み込む前に既に検出可能にするために、通常、振動センサが使用される。試験対象物を分析するために、試験対象物は、通常、工業生産ラインから取り出され、その後初めて分析に供される。測定法は大掛かりであるため、個別部品の無作為抽出的な試験のみが行われる。
【0017】
DE248438A1からは、例えばディスク状物体の非破壊試験のための方法が既知である。試験されるべきワークピースはその表面に対する衝撃によって振動させられる。振動ピックアップを用いることによって、該ワークピースの機械的振動が検出され、電気的振動信号に変換される。この電気的振動信号は精密・インパルス・騒音計(サウンドレベルメータ)に供給される。複数回の増幅及びフィルタ処理後、振動数(周波数)重み付け交流電圧信号と直流電圧実効値が生成され、これらは評価回路へ供給され、電子的に評価される。試験されるべきワークピースは、振動励起時に生じる振動節点に減衰及びストレスフリーの状態で支持され(配置され)ている。加振機は、ワークピースの表面に打撃を加える埋込型硬化スチールボールを有する振り子体として構成可能であるが、これ(この打撃)により、物体は自由減衰振動を行い、同時に音響が生成する。
【0018】
DE102016221761A1からは、振動する機械部品の動的特性を処理するための方法及び装置が既知である。分析装置は機械部品の振動をリアルタイムで監視する。機械部品の動的特性が閾値未満かつ閾値に近い場合、分析装置は機械部品の振動が閾値に近いことについてのリアルタイム表示を提供する。分析装置は、閾値未満かつ閾値に近い振動データに基づく機械部品の動的特性を受け取る。動的特性の変化は、この閾値に対する振動の近さの程度に影響を及ぼす。
【0019】
EP0906560B1からは、試験対象物の剛性(スチフネス)、強度及び/又は構造的特性を非破壊的に決定するための方法及び装置が既知である。そのために、試験対象物は、旋回可能アームと打撃ヘッドを備えた試験装置内へ移送される。打撃ヘッドによって、試験対象物は少なくとも1つの固有共振振動を有する自由振動に付され、その結果、振動を求めることによって、試験対象物の機械的特性を求めることができる。
【0020】
最後に、DE102014116034A1からは、フレキシブルな測定対象物の機械的特性を求めるための装置及び方法が既知であり、該装置は、測定対象物を第1部位において着脱自在に強固に固定することができる第1固定装置と、測定対象物を第1部位の向い側において着脱自在に強固に固定することができる第2固定装置を有する。第1固定装置は機械的励振(刺激)を測定対象物に導入可能な第1アクチュエータと結合している。更に、該装置は、アクチュエータを制御するための制御ユニットと、固定状態にある測定対象物の3D表面をスキャンするための光学センサシステムを有する。測定対象物の機械的特性は、第1及び第2評価ユニットによるモード分析によって求められる。
【0021】
モード分析の実行及びそれに引き続く個別試験対象物の固有振動数の推論(ないし導出:Ableitung)のための条件は、試験対象物が測定中にいわゆる「自由振動状態」にあることである。これは、試験対象物が物理的環境から動的に分離(隔絶)され、試験対象物と他の表面との接触が排除されることを意味する。理想的な場合、試験対象物はいわゆる「浮遊(Schwebe)状態」にある必要がある。しかしながら、固有振動数を決定するための既知の方法は、試験対象物をフレキシブルなワイヤ又は糸(フィラメント)によって吊下すること又は通常は柔らかいフォーム(発泡)材料製マット上に試験対象物を載置することを想定しており、そのため、この「浮遊状態」は達成されない。
【0022】
従来技術の方法及び装置には、測定方法が煩雑であるが故に、例えば生産ライン上のすべての部品の試験(全数検査)は実行することができないという欠点がある。例えば生産ラインから試験のために取り出さなければならない個別の試験対象物の分析のみが専ら行われる。従って、この試験方法は極めて煩雑であり、無作為抽出試験の結果しか提供しない。
【0023】
従来技術の方法及び装置には、使用される測定装置が極めて故障を起こしやすい可動部品を有するという更なる欠点もある。とりわけ既知の打撃アクチュエータは可動ピストンを有するマグネットシステムを使用する。
【0024】
既述の欠点を背景とし、本発明の課題は、強磁性材料成分を有する試験対象物の機械的特性、例えば固有振動数又は固有振動を求めるための装置及び方法であって、試験対象物の機械的特性を高信頼性でかつ迅速に求めることを可能にする装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この課題は、請求項1に応じた試験対象物の機械的(力学的)特性を求めるための装置及び請求項12に応じた方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
【0027】
本発明は、強磁性材料成分を有する試験対象物の、とりわけ自動車用ブレーキパッド(ないしブレーキライニング)の、機械的(力学的)特性、例えば固有振動数、モード減衰(性)又は固有振動モードを求めるための装置に関する。
【0028】
本発明に応じ、試験対象物に力のインパルスないし衝撃(力衝撃:Kraftstoss)を加え、該試験対象物を振動させるよう、試験対象物に対し磁気吸引力を及ぼすための電磁式アクチュエータ、とりわけ電磁石が設けれられており、該振動のスペクトルは試験対象物の少なくとも1つの固有振動数(の)振動を含む。
【0029】
電磁式アクチュエータは試験対象物に磁気吸引力を及ぼし、その結果、磁気吸引力が十分な大きさであれば、試験対象物は電磁式アクチュエータの方向へ吸引される。この吸引力は、試験対象物がアクチュエータに衝突し、そのため、力のインパルスが試験対象物に加えられ、それによって、機械的励振(振動ないし刺激)が試験対象物に導入されるよう(な大きさに)設定される。
【0030】
磁気吸引力の持続時間は、通常は作業台上にないし工業生産ラインの搬送ベルト上に載置されているか又は運動する試験対象物が、力のインパルス(の生成)が実現可能であるよう、当該試験対象物の上方に位置するアクチュエータに向かって上方へ引き寄せられるよう(な長さに)設定される。
【0031】
従って、力のインパルスの(生成の)瞬間に、試験対象物はいわゆる「浮遊状態」にある。即ち、試験対象物は物理的環境から動的に[分離ないし隔絶される]。このため、従来技術から既知のような、(試験対象物の)吊下又はフォーム(発泡)材料製マット等による試験対象物のダンピングは必要ではない。このため、本装置は、自由振動状態の条件の順守を維持したまま、生産ライン、作業台等を有する工業プロセス中に組み入れられることができる。
【0032】
本装置は可動ピストンを有する既知の打撃アクチュエータとは異なり可動部材を有していないため、装置の全体的として長い寿命、更には、単純な構造(構築)が達成される。
【0033】
本発明に基づき、更に、固有振動数試験の実行が可能になるが、この固有振動数試験は、モード分析試験に基づくものであり、迅速かつコスト的に好都合に、とりわけ有利には部品のとりわけブレーキパッドの大規模(大量)生産(物)の百パーセント(全部)について実行可能である。このため、本発明は、強磁性試験対象物のモード試験の自動化及び標準化に著しい貢献をする。なぜなら、試験対象物の固有振動数又は減衰率(ダンピング性)は、少数のサンプルについてのみ適用される代わりに、製造物の百パーセント(全部)について適用(全数検査)可能であるからである。
【0034】
既述のように、試験対象物を吸引するための電磁石を備えることが可能である。試験対象物に固有振動数を加振(励振)するために電磁石を使用することは有利である。なぜなら、試験対象物が作動ヘッドへ向かって吸引されるが電磁石にくっつき続けることは回避されるとともに、凡そ10kHzまでの振動数範囲での加振(励振)が可能であるように、その磁気吸引力も持続時間も調節可能であるからである。更に、電磁石の制御によって、作動ヘッドに対する試験対象物の複数回の衝突を回避することも可能である。
【0035】
作動ヘッドに対する試験対象物の衝突の時間は比較的短く、百分の一ないしミリ秒の範囲である。
【0036】
本発明の第1の有利な実施形態によれば、アクチュエータは、出発(初期)状態において試験対象物に対向するよう、とりわけ保持装置によって、吊下状態で配置される。出発(初期)状態とは、アクチュエータの磁気吸引力が試験対象物に作用しておらず、そのため、試験対象物が支障なく基台(Unterlage)上に載置されている状態として理解されるものである。アクチュエータを備えた保持装置は、例えば、運転時に、試験対象物の上方において、とりわけ保持装置に、吊下された状態で配置されたアクチュエータが該アクチュエータを通過する全ての試験対象物の測定を可能にするように、移送装置の傍に、とりわけコンベアベルトの傍に配設されることによって、品質保証のために格別に簡単に既存の生産ラインに使用されることができる。
【0037】
アクチュエータは吊下状態で配設されるため、試験対象物とアクチュエータの接触時の力のインパルス(の生成)の間に試験対象物の自由振動条件が存在する。なぜなら、試験対象物は磁気吸引力によって力のインパルスの(生成の)時点に浮遊状態にもたらされ、そのため、弾性ロープやフォーム材料製マットのような支持部材は必要ないからである。
【0038】
本発明の有利な一変形形態によれば、アクチュエータは、少なくとも1つの減衰要素によって(を介して)保持装置に保持される。この減衰要素は、運転中に本装置の高い安定性が保証されるよう、本装置に生成する振動を減衰するために、ワッシャ(リング状体)として構成されることができる。
【0039】
本発明の更なる有利な一実施形態では、本装置を貫通して順次(前後に)並んで配置された複数の試験対象物を移送するための移送装置が設けられる。アクチュエータは磁気吸引力を試験対象物に対し周期的に(サイクリックに)及ぼす。既述のように、保持装置は工業生産ラインに組み込み可能である。通常、コンポーネントは、工業生産ラインにおける製造時に、とりわけ1つの製造工程から次の製造工程へ移送するために、例えばコンベアベルト上に前後に並べて配置されて移送される。製造プロセスの終点において又はコンポーネントの中間分析のためにも、本発明に応じた装置は、そこで移送される全てのコンポーネントの分析が保証されるよう、この生産ラインにおいて使用されることができる。
【0040】
1つのコンポーネントが本装置を通過するとき、アクチュエータは、磁気吸引力が該コンポーネントに作用しかつ該コンポーネントが力のインパルスを与える(印加する)アクチュエータに向かって吸引されるよう、活性化(作動)される。通常は、残りのコンポーネントは、この時、移送装置によって引き続き移送される。試験対象物の分析後、アクチュエータは、試験対象物が落下して再び移送装置へ戻り、更に移送されるよう、無電流状態に切り換えられる(スイッチオフされる)。
【0041】
試験対象物(複数)に磁気吸引力を周期的に印加することによって、これらの試験対象物は移送装置によって連続的に(継続的に)引き続き移送されることができる。そのための条件は、隣り合う試験対象物間の距離が全ての試験対象物の分析が可能であるように選択されること及び1つの試験対象物の分析がまだ行われている間に次の試験対象物が本装置を通り過ぎることによって個別試験対象物間の衝突が生じないことである。
【0042】
測定エラー及び分析時の不具合を回避するために、移送装置は非強磁性材料で製造されることができる。これによって、とりわけ、移送装置の、例えばコンベアベルトの部分が試験対象物に対する磁気吸引力の作用時にそれ自体が一緒に吸引ないし持ち上げされることが阻止される。
【0043】
本発明の更なる有利な一実施形態に応じ、アクチュエータは試験対象物に対し力のインパルス(衝撃力)を導入するための作動ヘッドを有する。作動ヘッドの運動、形状、質量及び剛性(スチフネス)は、振動数及びエネルギ量について試験対象物の適切な物理的衝突が達成されるように、決定される。作動ヘッドは、とりわけ、衝突された試験対象物が顕著に知覚(認識)可能な振動スペクトルを有するよう、力のインパルスのほぼ点状の導入を可能にするために、突出(突起)部分を有することが可能である。
【0044】
作動ヘッドは、その打撃インパルスによって、フラットな連続スペクトルを提供する。該スペクトルは、適切な作動ヘッドを使用することによって、関連する振動数範囲に調節されることができる。作動ヘッドは実質的にドーム状又はピラミッド状に形成されることができる。加振(励振)スペクトルの持続時間ないしモードは、作動ヘッドの質量及び剛性(スチフネス)とその構造から得られる。相対的に小さい作動ヘッドによって加振される堅固な構造の場合、主として作動ヘッドの剛性(スチフネス)がスペクトルに影響を及ぼす。異なる材料からなる複数の作動ヘッドを使用することによって、試験されるべき振動数範囲への加振(励振)機スペクトルの適合化が可能になる。
【0045】
作動ヘッドは、例えば実質的にスチール又はプラスチック又はゴムから製造可能である。それによって、一方では、試験対象物への力のインパルスの質が十分であることが保証され、同時に、作動ヘッドの良好な耐久性が保証される。
【0046】
本発明の更なる一実施形態によれば、加振(励振)された試験対象物の固有振動数振動を光学的及び/又は音響的に検出するためのセンサユニット、とりわけマイクロフォン又はレーザ振動計が設けられる。
【0047】
レーザ振動計は機械的振動を定量化する測定装置である。レーザ振動計は振動の振動数(周波数)及び振動の振幅の測定のために使用可能である。レーザ光は試験されるべき表面に合焦される。測定されるべき表面の運動時、例えば試験対象物の振動時、後方散乱されたレーザ光の周波数は、ドップラ効果に基づいて、シフトされる。この周波数シフトは、振動計において干渉計によって評価され、電圧信号として又はデジタルデータ流として出力される。この種の振動計は例えば自動車分野において個別コンポーネントの又は完全な自動車の振動モードの測定のために使用されている。
【0048】
このセンサユニットのトリガ(励起)は、力のインパルスの開始と同期されることができる。このため、更なる有利な一変形形態に応じた本装置は、アクチュエータを制御するための及び/又はセンサユニットと試験対象物に対する力のインパルスの導入とを同期化するための制御装置を有することができる。
【0049】
本発明の更なる有利な一変形形態に応じ、センサユニットは、力関数(Kraftfunktion)を測定するための力センサを有する。本発明に応じたアクチュエータは、試験対象物の固有振動数を検出する(求める)ために設けられるだけではないことが可能である。更に、アクチュエータに直列接続された力センサは力のインパルス(の生成)中の力関数を検出することも可能である。力センサは、作動ヘッドの打撃側に配設されることができる。力信号の測定は、力のインパルスがどのような力でかつどのようなスペクトルで実現されているかについての情報を提供する。マイクロフォンないしレーザ振動計の信号は、例えば不均一な加振を補正(差引計算)する(herausrechnen)ために、力センサの信号で数学的に補償(調整)される(verrechnet)ことができる。
【0050】
本発明の一発展形態では、好ましくはセンサユニットによって測定された及び/又は記憶されているデータの比較、計算及び/又は試験をするための評価装置が設けられる。データは品質保証のために及び製造プロセスの判断(評価)のために記憶されることができる。
【0051】
オンライン測定によって、各コンポーネントについて、当該コンポーネントが無欠陥であるか又は欠陥を有するか否かについての評価が行われる。欠陥のあるコンポーネントは排出装置によって更なる製造プロセスから除去されることができる。
【0052】
本発明の一独立思想に応じ、上記の何れかの装置によって、強磁性材料成分を有する試験対象物の、とりわけ自動車用ブレーキパッドの機械的(物理的)特性、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための方法が提供される。該方法において、該試験対象物に力のインパルスを導入する(印加する)ために、該試験対象物に対し磁気吸引力が及ぼされ、かくして、該試験対象物は振動させられ、該振動のスペクトルは該試験対象物の少なくとも1つの固有振動数(の)振動を含む。
【0053】
試験対象物は、磁気的吸引力に基づいて、アクチュエータの、とりわけアクチュエータの作動ヘッドの方向へ動かされ、アクチュエータ又はその作動ヘッドと当接し、その結果、試験対象物に対する衝撃(打撃)が、作動ヘッドに対する試験対象物の力のインパルスによって生成する。
【0054】
本発明に応じた方法の第1の有利な実施形態に応じ、作動ヘッドが作用を及ぼす時点において、実質的に試験対象物の自由振動条件が存在する。
【0055】
本発明の更なる有利な一実施形態によれば、試験対象物の固有振動に属する固有振動数(複数)が測定され、及び、測定された固有振動数は基準値(参照値)と対比される。
【0056】
本発明の更なる一変形形態では、測定値と基準値との対比によって、試験対象物の圧縮率の値を決定するための基礎として使用される照合(ないし一致:Uebereinstimmung)が実行される。
【0057】
本発明の更なる目的、利点、特徴及び使用可能性は図面を用いた実施例についての以下の説明から明らかになる。なお、説明される及び/又は図で示される全ての特徴は、それ自体で又は有意な任意の組み合わせで、(特許)請求の範囲におけるそれらの記載又は(特許)請求の範囲の参照引用に拘わらず、本発明の対象を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】第1位置にある試験対象物の機械的特性を求めるための装置の一例の側断面図a)及び上から見た断面図b)。
【実施例】
【0059】
同じ又は同じ機能の構成要素は、実施例を用いて以下に説明する図面においては、可読性を改善するために、(同じ)図面参照符号が付記されている。
【0060】
図1から、強磁性材料成分を有する試験対象物1の、とりわけ自動車用ブレーキパッド(ないしブレーキライニング)の機械的(物理的)特性(値)、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための装置10が見出される。電磁式アクチュエータ2、とりわけ電磁石4は試験対象物1に対し磁気的吸引力を及ぼすために設けられている。
【0061】
この磁気的吸引力は、試験対象物1がアクチュエータ2の方向へ吸引され、その結果、アクチュエータ2が磁気的吸引力に基づいて試験対象物1に対し力のインパルスを与えるよう(な大きさに)設定されている。試験対象物1は力のインパルスによって振動させられるが、この振動のスペクトルは試験対象物1の少なくとも1つの固有振動数(の)振動を含む。
【0062】
図1及び
図2から明らかなように、アクチュエータ2は保持装置11によって吊下されるようにして試験対象物1の向い側に配設されている。アクチュエータ2は、この実施例では、当該アクチュエータ2が運転位置において試験されるべきコンポーネントないし試験対象物1の上方において吊下された状態で存在するよう、ネジ12によって保持装置11に固定されている。
【0063】
アクチュエータ2は、更に、2つの減衰要素9によって保持装置11に保持されている。これらの減衰要素9は、運転中の装置10の高い安定性が保証されるよう、力のインパルスによって装置10の内部に生成する振動を減衰するために、ワッシャ(リング状体)として構成されることができる。
【0064】
アクチュエータ2は、試験対象物1に力のインパルスを導入するための作動ヘッド3を有する。この作動ヘッド3はその打撃インパルスによってフラットな連続スペクトルを提供する。作動ヘッド3は実質的にドーム状ないしピラミッド状に構成されることができる。励振(加振)スペクトルの持続時間ないしモード(Form)は作動ヘッド3の質量及び剛性(スチフネス)及びその構造から生じる。異なる材料からなる複数の作動ヘッド3を使用することによって、加振機スペクトルを試験されるべき振動数範囲へ適合化する可能性が得られる。
【0065】
作動ヘッド3は例えば実質的にスチール又はプラスチック又はゴムから製造可能である。
【0066】
アクチュエータ2を備えた保持装置11は、例えば移送装置の傍に、とりわけコンベアベルトの傍に配設されることによって、コンポーネントの品質保証のために既存の工業生産ラインに使用されることができる。
【0067】
アクチュエータ2の活性化(作動)の時点において、磁気的吸引力は、試験対象物1が、
図2に示されているように、吊下されているアクチュエータ2の方向へ、即ち上方へ、吸引されるよう、試験対象物1に作用する。磁気的吸引力が十分な大きさに設定されていれば、力のインパルスが試験対象物1に印加され、機械的励振(振動)が試験対象物1に導入されるよう、試験対象物1はアクチュエータ2の作動ヘッド3に衝突する。作動ヘッド3に対する試験対象物1の衝突の持続時間は比較的短く、百分の一秒ないしミリ秒の範囲にある。
【0068】
アクチュエータ2は吊下状態で配設されているため、試験対象物1とアクチュエータ2との当接の際に、試験対象物1の自由振動条件が存在する。なぜなら、試験対象物1は力のインパルス(の生成)の時点において、いわゆる浮遊状態にされるからである。この浮遊状態では、試験対象物1は物理的環境から動的に分離(隔絶)されており、他の表面と接触していない。このため、試験対象物1の吊下又はフォーム材料製マット等による試験対象物1の弾性的支持は必要ではない。
【0069】
試験対象物1に固有振動数を惹起するための電磁石4の使用は有利である。なぜなら、試験対象物1が作動ヘッド3に向かって吸引されるが電磁石4にくっついた状態に維持されることが回避されるよう、磁気的吸引力の大きさも活性化(作動)の期間も調節することができるからである。更に、電磁石4の制御によって、作動ヘッド3に対する試験対象物1の複数回の衝突を阻止することもできる。
【0070】
本装置10は、工業的製造プロセスに使用される場合、既存の生産ラインにも格別に簡単かつ効果的に組み込まれることができる。通常は、この種の生産ラインには、相前後して並べられる複数のコンポーネントを移送するための移送装置が設けられている。
【0071】
このように組み込まれた本装置10のアクチュエータ2は、分析されるべき試験対象物1に対し、力のインパルスのための磁気的吸引力を印加する。移送装置上にある残りの試験対象物1は、この時、移送装置によって引き続き動かされる(移送される)。試験対象物1に力のインパルス(の印加)を実行した後、アクチュエータ2は無電流状態に切り換えられ(スイッチオフされ)、その結果、該試験対象物1は、次の試験対象物が磁気的に吸引される前に、落下して再び移送装置の上に戻り、更に移送される。
【0072】
試験対象物1に対し磁気的吸引力を周期的に(サイクリックに)印加することによって、該試験対象物1は移送装置によって連続的に(常時的に)動かされ続けることができる。そのための条件は、隣り合う試験対象物1間の距離が例えば1つの試験対象物1の分析がまだ行われている間に次の試験対象物1が本装置10を通り過ぎることによって個別試験対象物1間の衝突が生じないよう選択されることである。
【0073】
分析時の測定エラー及び障害を回避するために、移送装置は非強磁性材料で製造されることができる。
【0074】
図3に模式的に示されているように、センサユニット5によって、励振された試験対象物1の固有振動数(の)振動(複数)の固有振動数(複数)が光学的に及び/又は音響的に検出される。試験対象物1の振動の測定は、例えば振動センサ、とりわけマイクロフォン又はレーザ振動計のようなセンサユニット5によって実行可能である。このセンサ5のトリガは、力のインパルスの開始と同期されることができる。このため、本装置10は、アクチュエータ2の制御のための及び/又はセンサユニット5と試験対象物1に対する力のインパルスの導入との同期化のための制御ユニット6を有することができる。
【0075】
付加的に、センサユニット5は、力関数(Kraftfunktion)を測定するための力センサ7を備えることができる。この力センサ7はアクチュエータ2に直列接続されることができ、力のインパルス(の生成)中の力関数を検出することができる。力信号の測定は、力のインパルスがどのような力でかつどのようなスペクトルで実現されているかについての情報を提供する。例えば、マイクロフォン/レーザ振動計の信号は、不均一な加振(励振)が補正(差引計算)される(herausgerechnt)ことができるように、力センサ7の信号で数学的に補償(調整)される(verrechnet)ことができる。
【0076】
測定されたデータを評価するために、評価装置8が設けられている。評価装置8においては、分析された試験対象物1が欠陥を有するか及び場合によっては選別除去されるべきかについて決定するために、測定されたデータと、例えば予め記憶されている基準(参照)データとの対比・照合が行われる。更に、評価装置8においては、測定されたデータの換算及び/又は検査も実行可能である。
【0077】
試験対象物1がブレーキパッド支持プレートとそれに対された摩擦パッドを有するブレーキパッドである場合、力のインパルスがブレーキパッドの支持プレート側に導入されるよう、ブレーキパッドはその支持プレート側がアクチュエータ2の作動ヘッド3に向かって磁気的に吸引される。かくして、ブレーキパッドは振動される。この振動(複数)が、既述のように、分析される。ブレーキパッドのそのようにして測定された固有振動数から、ブレーキパッドの圧縮率とブレーキパッドの状態を(逆算的に)導き出すことができる。この測定によって、各コンポーネントについて、無欠陥であるか又は欠陥を有するかについての評価が行われる。欠陥があるコンポーネントは、排出装置によって更なる生産プロセスから除去されることができる。
【0078】
測定された又は計算されたデータは、製造プロセスを監視(モニタ)するために、(予め)定義されたばらつきの範囲(Streuband)から外れた部材を選別除去するために、又は、欠陥を検出するために、使用されることができる。
【0079】
品質分析を行うために(ブレーキ)パッド(ライニング)を個別に(生産ラインから)取り出す必要はない。なぜなら、機械的特性(値)を求めるために本装置によって全ての(ブレーキ)パッド(ライニング)が試験される(全数検査される)からである。
【0080】
従って、本発明に基づき、迅速かつコスト的に好都合に、とりわけ有利には部品のとりわけブレーキパッドの大規模(大量)生産(物)の百パーセント(全部)について実行可能な固有振動数試験の実行が可能になる。このため、本発明は、強磁性試験対象物1のモード試験の自動化及び標準化に著しい貢献をする。
【0081】
【符号の説明】
【0082】
1 試験対象物
2 電磁式アクチュエータ
3 作動ヘッド
4 電磁石
5 センサユニット
6 制御ユニット
7 力センサ
8 評価装置
9 減衰要素
10 本発明の装置
11 保持装置
12 ネジ
【手続補正書】
【提出日】2021-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性材料成分を有する試験対象物(1)
の機械的特
性を求めるための装置(10)であって、
該試験対象物(1)に力のインパルスを加え、該試験対象物(1)を振動させるよう、該試験対象物(1)に対し磁気吸引力を及ぼすための電磁式アクチュエータ(2
)が設けれられていること、該振動のスペクトルは該試験対象物(1)の少なくとも1つの固有振動数振動を含むこと
を特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(10)において、
前記アクチュエータ(2)は、出発状態において前記試験対象物(1)に対向するよう
、保持装置(11)によって、吊下状態で配置されていること
を特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置(10)において、
前記アクチュエータ(2)は、少なくとも1つの減衰要素(9)によって前記保持装置(11)に保持されていること
を特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の装置(10)において、
順次並んで配置された複数の試験対象物(1)を該装置(10)を通って移送するための移送装置が設けられていること、前記アクチュエータ(2)は磁気吸引力を該試験対象物(1)に対し周期的に及ぼすこと
を特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記移送装置は、非強磁性材料で製造されていること
を特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の装置において、
前記アクチュエータ(2)は、前記試験対象物(1)に対し力のインパルスを導入するための作動ヘッド(3)を有すること
を特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の装置において、
加振された試験対象物(1)の固有振動数振動を光学的及び/又は音響的に検出するためのセンサユニット(5
)が設けられていること
を特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記センサユニット(5)は、力のインパルス中の力-時間-関数(Kraft-Zeit-Funktion)を測定するための力センサ(7)を有すること
を特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の装置において、
前記アクチュエータ(2)を制御するための及び/又は前記センサユニット(5)と前記試験対象物(1)への力のインパルスの導入を同期するための制御ユニット(6)が設けられていること
を特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の装置において
、
センサユニット(5)によって測定された及び/又は記憶されているデータの比較、計算及び/又は試験をするための評価装置(8)が設けられていること
を特徴とする装置。
【請求項11】
請求項
6に記載の装置において、
作動ヘッド(3)は実質的にドーム状又はピラミッド状に形成されていること
を特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の装置(10)によって、強磁性材料成分を有する試験対象物(1)
の機械的特
性を求めるための方法であって、
該試験対象物(1)に力のインパルスを加えるために、該試験対象物(1)に対し磁気吸引力が及ぼされること、かくして、該試験対象物(1)は振動させられること、該振動のスペクトルは該試験対象物(1)の少なくとも1つの固有振動数振動を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
作動ヘッド(3)が作用を及ぼす時点において、実質的に前記試験対象物(1)の自由振動条件が存在すること
を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法において、
前記試験対象物(1)の固有振動に属する固有振動数が測定されること、及び、測定された固有振動数は基準値と対比されること
を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
測定値と基準値との対比によって、前記試験対象物(1)の圧縮率の値を決定するための基礎として使用される照合が実行されること
を特徴とする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
この課題は、請求項1に応じた試験対象物の機械的(力学的)特性を求めるための装置及び請求項12に応じた方法によって解決される。
即ち、本発明の第1の視点により、強磁性材料成分を有する試験対象物の機械的特性を求めるための装置が提供される。該装置において、該試験対象物に力のインパルスを加え、該試験対象物を振動させるよう、該試験対象物に対し磁気吸引力を及ぼすための電磁式アクチュエータが設けれられていること、該振動のスペクトルは該試験対象物の少なくとも1つの固有振動数振動を含むことを特徴とする(形態1)。
更に、本発明の第2の視点により、本発明の装置によって、強磁性材料成分を有する試験対象物の機械的特性を求めるための方法が提供される。該方法において、該試験対象物に力のインパルスを加えるために、該試験対象物に対し磁気吸引力が及ぼされること、かくして、該試験対象物は振動させられること、該振動のスペクトルは該試験対象物の少なくとも1つの固有振動数振動を含むことを特徴とする(形態12)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1の装置において、前記アクチュエータは、出発状態において前記試験対象物に対向するよう、保持装置によって、吊下状態で配置されていることが好ましい。
(形態3)形態2の装置において、前記アクチュエータは、少なくとも1つの減衰要素によって前記保持装置に保持されていることが好ましい。
(形態4)形態1~3の何れかの装置において、順次並んで配置された複数の試験対象物を該装置を通って移送するための移送装置が設けられていること、前記アクチュエータは磁気吸引力を該試験対象物に対し周期的に及ぼすことが好ましい。
(形態5)形態4の装置において、前記移送装置は、非強磁性材料で製造されていることが好ましい。
(形態6)形態1~5の何れかの装置において、前記アクチュエータは、前記試験対象物に対し力のインパルスを導入するための作動ヘッドを有することが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかの装置において、加振された試験対象物の固有振動数振動を光学的及び/又は音響的に検出するためのセンサユニットが設けられていることが好ましい。
(形態8)形態7の装置において、前記センサユニットは、力のインパルス中の力-時間-関数(Kraft-Zeit-Funktion)を測定するための力センサを有することが好ましい。
(形態9)形態1~8の何れかの装置において、前記アクチュエータを制御するための及び/又は前記センサユニットと前記試験対象物への力のインパルスの導入を同期するための制御ユニットが設けられていることが好ましい。
(形態10)形態1~9の何れかの装置において、センサユニットによって測定された及び/又は記憶されているデータの比較、計算及び/又は試験をするための評価装置が設けられていることが好ましい。
(形態11)形態6の装置において、作動ヘッドは実質的にドーム状又はピラミッド状に形成されていることが好ましい。
(形態12)上記本発明の第2の視点参照。
(形態13)形態12の方法において、作動ヘッドが作用を及ぼす時点において、実質的に前記試験対象物の自由振動条件が存在することが好ましい。
(形態14)形態12又は13の方法において、前記試験対象物の固有振動に属する固有振動数が測定されること、及び、測定された固有振動数は基準値と対比されることが好ましい。
(形態15)形態14の方法において、測定値と基準値との対比によって、前記試験対象物の圧縮率の値を決定するための基礎として使用される照合が実行されることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
本発明の更なる目的、利点、特徴及び使用可能性は図面を用いた実施例についての以下の説明から明らかになる。なお、説明される及び/又は図で示される全ての特徴は、それ自体で又は有意な任意の組み合わせで、(特許)請求の範囲におけるそれらの記載又は(特許)請求の範囲の参照引用に拘わらず、本発明の対象を構成する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
以下に本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]強磁性材料成分を有する試験対象物の、とりわけ自動車用ブレーキパッドの、機械的特性、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための装置。
該試験対象物に力のインパルスを加え、該試験対象物を振動させるよう、該試験対象物に対し磁気吸引力を及ぼすための電磁式アクチュエータ、とりわけ電磁石が設けれられている。該振動のスペクトルは該試験対象物の少なくとも1つの固有振動数振動を含む。
[付記2]上記の装置において、前記アクチュエータは、出発状態において前記試験対象物に対向するよう、とりわけ保持装置によって、吊下状態で配置されている。
[付記3]上記の装置において、前記アクチュエータは、少なくとも1つの減衰要素によって前記保持装置に保持されている。
[付記4]上記の装置において、順次並んで配置された複数の試験対象物を該装置を通って移送するための移送装置が設けられている。前記アクチュエータは磁気吸引力を該試験対象物に対し周期的に及ぼす。
[付記5]上記の装置において、前記移送装置は、非強磁性材料で製造されている。
[付記6]上記の装置において、前記アクチュエータは、前記試験対象物に対し力のインパルスを導入するための作動ヘッドを有する。
[付記7]上記の装置において、加振された試験対象物の固有振動数振動を光学的及び/又は音響的に検出するためのセンサユニット、とりわけマイクロフォン又はレーザ振動計、が設けられている。
[付記8]上記の装置において、前記センサユニットは、力のインパルス中の力-時間-関数(Kraft-Zeit-Funktion)を測定するための力センサを有する。
[付記9]上記の装置において、前記アクチュエータを制御するための及び/又は前記センサユニットと前記試験対象物への力のインパルスの導入を同期するための制御ユニットが設けられている。
[付記10]上記の装置において、好ましくはセンサユニットによって測定された及び/又は記憶されているデータの比較、計算及び/又は試験をするための評価装置が設けられている。
[付記11]上記の装置において、作動ヘッドは実質的にドーム状又はピラミッド状に形成されている。
[付記12]上記の装置によって、強磁性材料成分を有する試験対象物の、とりわけ自動車用ブレーキパッドの、機械的特性、例えば固有振動数、減衰率又は固有振動モードを求めるための方法。
該試験対象物に力のインパルスを加えるために、該試験対象物に対し磁気吸引力が及ぼされる。かくして、該試験対象物は振動させられる。該振動のスペクトルは該試験対象物の少なくとも1つの固有振動数振動を含む。
[付記13]上記の方法において、作動ヘッドが作用を及ぼす時点において、実質的に前記試験対象物の自由振動条件が存在する。
[付記14]上記の方法において、前記試験対象物の固有振動に属する固有振動数が測定される。測定された固有振動数は基準値と対比される。
[付記15]上記の方法において、測定値と基準値との対比によって、前記試験対象物の圧縮率の値を決定するための基礎として使用される照合が実行される。
【国際調査報告】