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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】水素化触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/50 20060101AFI20220218BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20220218BHJP
   B01J 23/96 20060101ALI20220218BHJP
   B01J 23/62 20060101ALI20220218BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20220218BHJP
   C07C 29/149 20060101ALI20220218BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220218BHJP
【FI】
B01J38/50
B01J38/10
B01J23/96 Z
B01J23/62 Z
C07C31/20 Z
C07C29/149
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537054
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 KR2019017330
(87)【国際公開番号】W WO2020138762
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0173038
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520263899
【氏名又は名称】ハンファ ソルーションズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ユク ソヌ
(72)【発明者】
【氏名】キム チョンクォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ボンシク
(72)【発明者】
【氏名】ミョン ワンジェ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BC17A
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169BC64A
4G169BC66A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169CB02
4G169CB70
4G169DA06
4G169EC25
4G169FB27
4G169FB44
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC10
4G169GA05
4G169GA10
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA11
4H006BA23
4H006BA55
4H006BD36
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
本発明は、カルボン酸又はカルボン酸-エステル水素化触媒の再生方法に関し、さらに詳しくはジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換する反応で使用される水素化触媒の再生方法に関する。本発明によれば、ジカルボン酸官能基をジオール官能基に転換する反応で生成されるエステル(ester)物質の沈積による触媒の非活性化を回復する効果を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応に使用した触媒を再生する方法であって、
(a)使用された(used)触媒を有機溶媒に投入し攪拌しながら洗浄するステップ;
(b)前記洗浄後、ろ過して触媒を分離及び回収するステップ;及び
(c)分離及び回収された触媒を乾燥して再活性化させるステップを含む触媒の再生方法。
【請求項2】
カルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応に使用した触媒を再生する方法であって、
(i)反応器に使用された(used)触媒及び溶媒を投入するステップ;
(ii)反応器内部ガスの組成を水素に置換するステップ;及び
(iii)反応器内部温度は100~400℃で、1Mpa~20Mpaの水素ガス圧力条件で攪拌しながら、水熱水素化反応を行って触媒を再活性化させるステップを含む触媒の再生方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はアセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、トルエン及びジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒の再生方法。
【請求項4】
前記(a)ステップの攪拌しながら洗浄するステップは0~150℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の触媒の再生方法。
【請求項5】
前記(c)ステップの乾燥時の温度は40~200℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の触媒の再生方法。
【請求項6】
前記(i)ステップでの溶媒は水、カルボン酸、アルコール及びカルボン酸エステルのうち少なくともいずれか1つ以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の触媒の再生方法。
【請求項7】
前記溶媒100重量部に対して、水50~100重量部、カルボン酸、アルコール及びカルボン酸-エステルのうち少なくともいずれか1つ以上を0~50重量部で含むことを特徴とする請求項6に記載の触媒の再生方法。
【請求項8】
前記(iii)ステップの水熱水素化反応は0.5~48時間行うことを特徴とする請求項2に記載の触媒の再生方法。
【請求項9】
前記水素化反応はジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換することを特徴とする請求項1及び2に記載の触媒の再生方法。
【請求項10】
前記カルボン酸官能基は、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)、スベリン酸(suberic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、フタル酸(phthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、シクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid)及びテレフタル酸(terephthalic acid)からなる群から選択された1つであることを特徴とする請求項1及び2に記載の触媒の再生方法。
【請求項11】
前記使用された(used)触媒はジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換する過程で生成される物質の沈積によるファウリング現象(fouling)によって活性が低下したことを特徴とする請求項1及び2に記載の触媒の再生方法。
【請求項12】
前記生成される物質はエステル(ester)を含むことを特徴とする請求項11に記載の触媒の再生方法。
【請求項13】
前記触媒は貴金属-遷移金属が担体に担持されたことを特徴とする請求項1及び2に記載の触媒の再生方法。
【請求項14】
前記貴金属はパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上を含み、
前記遷移金属はスズ(Sn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)及びガリウム(Ga)からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上を含むことを特徴とする請求項13に記載の触媒の再生方法。
【請求項15】
前記担体はシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア及び炭素からなる群から選択される少なくともいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項13に記載の触媒の再生方法。
【請求項16】
前記炭素は活性炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)及び炭素ナノチューブからなる群から選択される少なくともいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項15に記載の触媒の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、水素化触媒の再生方法に関し、さらに詳しくはジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換する反応で使用される水素化触媒の再生方法に関する。有機溶媒を用いた触媒の洗浄及び水熱水素化反応を利用して触媒の再生方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ジオール(Diol)はpolyesters、polyurethanes、vanishes、adhesives pharmaceuticalsなど基盤産業の素材として広範囲に使用されている。さらに、最近では、環境に優しく生分解が可能なdiolの需要が大きく増加しているのが現状である。いくつかのジオール化合物のうち特にシクロヘキサンジメタノール(cyclohexanedimethanol、CHDM)はポリエステルレジンを作る時、エチレングリコール及び他のポリオールを代替して使用する場合、高い熱的安定性と絶縁性、透明性及び耐化学性が高いので大きく注目を浴びている。
【0003】
かかるジオール化合物はジカルボン酸(dicarboxylic acid)或いはその誘導体から水素化触媒(hydroprocessing catalyst)を用いた水素化脱酸素(hydrodeoxygenation)反応によって生成され得る。これを可能にする従来の触媒工程は大半がルテニウム-スズ-カーボン複合体、ルテニウム-カーボン複合体、ルテニウム酸化物又はCu-Cr若しくはZr-Crに基づく触媒工程であって、上記の触媒工程は高温(150~300℃)/高圧(100~300bar)での反応が必要である。
【0004】
日本登録特許第3726504号の三菱ケミカル社の登録特許では、カルボン酸及びカルボン酸エステルの水素化反応に使用して活性が低下した触媒の再生方法を開示している。ここでは触媒の再生方法として活性が低下した触媒を塩基で処理することを特徴とする。しかし、塩基を用いた場合、Snがスズ酸ナトリウム(sodium stannate)の形態で溶出される問題が存在する。
【0005】
米国登録特許第4533648号のThe Procter&Gamble Company社の登録特許では、カルボン酸又はカルボン酸エステルの水素化反応に使用されるCu-Cr触媒の再生方法として触媒に残留する有機物の含量を減少させるために高温のvacuum及び酸化処理(oxidation treatment)を開示する。しかし、炭素を含む触媒の場合、上記酸化処理の条件で触媒が燃焼され得る可能性が存在するという点で限界がある。
【0006】
大韓民国公開特許第2009-0031793号のジョンソンマシーデイビーテクノロジーズリミテッド社の公開特許文献では、カルボン酸又はその誘導体の水素化触媒として使用され得るルテニウム/ホスフィン均一系触媒及びその再生方法を公知した。上記公開特許文献における公知の再生方法は、触媒を水素及び水の存在下で反応させることであるが、この時、一酸化炭素によって被毒された触媒が一酸化炭素を水、水素と反応しこれを二酸化炭素及びメタンに転換させて触媒の活性が回復すると報告した。しかし、この場合は均一系触媒を使用しており、従来の不均一系触媒で現れる触媒の非活性化の原因(エステル(ester)及び有機物質による触媒の沈積)を解決するとは言えない。
【0007】
大韓民国登録特許第10-2012-0056040号のLG化学社の登録特許では、アルコール製造のための水素化触媒の再生方法として水素ガスを高温常圧下で流すことを開示した。ただし、この場合も触媒再生工程の目的は、リン又は酸などの物質によって被毒された触媒の再生を目的とする点で限界がある。
【0008】
よって、カルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応でファウリング(fouling)によって非活性化された水素化触媒を再生できる方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本登録特許第3726504号(2005.10.07)
【特許文献2】米国登録特許第4533648号(1985.08.06)
【特許文献3】大韓民国公開特許第2009-0031793号(2009.03.27)
【特許文献4】大韓民国登録特許第10-2012-0056040号(2014.08.06)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、上記のような従来技術の問題点と過去から求められてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0011】
本発明の目的は、カルボン酸又はカルボン酸-エステル水素化反応触媒の再生方法において、有機溶媒を用いて触媒の再生方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、水熱水素化反応を利用してカルボン酸又はカルボン酸-エステル水素化反応触媒の再生方法を提供することにある。
【0013】
特に、有機溶媒を用いる場合は比較的簡単な再生方法を提供することができ、上記再生方法は触媒の活性を初期のものと類似するように回復させることに目的がある。
【0014】
本発明の目的は、特にジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid)をジオール官能基(diol group)に転換する反応で生成されるエステル(ester)などによる触媒ファウリング(fouling)現象を除去して触媒の活性を再生することを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するために、本発明は、カルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応に使用した触媒を再生する方法として、有機溶媒を用いる触媒を再生する方法及び水熱水素化反応を利用して触媒を再生する方法を提供する。
【0016】
有機溶媒を用いる触媒の再生方法は(a)使用された(used)触媒を有機溶媒に投入して攪拌しながら洗浄するステップ、(b)上記洗浄後にろ過して触媒を分離及び回収するステップ、(c)分離及び回収された触媒を乾燥して再活性化させるステップを含む触媒の再生方法を提供する。
【0017】
上記有機溶媒はアセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、トルエン及びジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0018】
上記(a)ステップの攪拌しながら洗浄するステップは0~150℃で好ましくは室温で0.15~12時間の間行うことができ、このステップは少なくとも1回以上であり得る。
【0019】
上記(c)ステップの乾燥は40~200℃で1~24時間の間行うことができ、乾燥時の圧力は0~1気圧の間が提供され得る。
【0020】
一方、水熱水素化反応を利用した触媒の再生方法は(i)反応器に使用された(used)触媒及び溶媒を投入するステップ;(ii)反応器内部ガスの組成を水素に置換するステップ;(iii)反応器内部温度は100~400℃で、圧力は1Mpa~20Mpa水素ガス圧力条件で攪拌しながら、水熱水素化反応を行って触媒を再活性化させるステップを含む触媒の再生方法を提供する。
【0021】
また、上記(iii)ステップの水添水素化反応は0.5~48時間行い、好ましくは12時間が提供される。
【0022】
(iii)ステップの水添水素化反応は200℃~300℃でより好ましく行われ得る。上記(iii)ステップの水添水素化反応での水素圧力は3Mpa~15Mpaでより好ましく行われ得る。
【0023】
本発明の実施例によれば、上記触媒による水素化反応はカルボン酸官能基、カルボン酸-エステル官能基、アルデヒド官能基又はケトン官能基をアルコール官能基に転換することを特徴とすることができる。
【0024】
特に、カルボン酸官能基において、ジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換することを特徴とすることができる。
【0025】
また、本発明の実施例によれば、上記使用された(used)触媒はジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換する過程で生成される物質の沈積によるファウリング現象(fouling)によって活性が低下したものであり得る。この場合、沈積される生成物質は好ましくはエステル(ester)であり得る。
【0026】
本発明の実施例によれば、上記非活性化された触媒は貴金属-遷移金属が担体に担持されたことを特徴とする。
【0027】
上記貴金属はパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上を含み、上記遷移金属としてスズ(Sn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上を含むことを提供する。
【0028】
加えて、上記担体はシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア及び炭素から選択される少なくともいずれか1つ以上であることを含むことができる。炭素の場合は、活性炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)及び炭素ナノチューブからなる群から選択される少なくともいずれか1つ以上であることができるが、これに限定されない。
【0029】
本発明の実施例によれば、上記水素化反応圧力は1~20Mpaで反応温度が100~400℃で反応時間が0.5~48時間が提供される。
【0030】
本発明の実施例によれば、上記カルボン酸は、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)、スベリン酸(suberic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、フタル酸(phthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、シクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid)及びテレフタル酸(terephthalic acid)からなる群から選択された1つであり得る。
【0031】
本発明の実施例によれば、上記アルデヒド官能基はホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、3-メチルブチルアルデヒド、2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド、カプロンアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、3-メチルバレルアルデヒド、4-メチルバレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2,2-ジメチルブチルアルデヒド、3,3-ジメチルブチルアルデヒド、カプリルアルデヒド及びカプリンアルデヒド、グルタルジアルデヒドからなる群から選択された1つであり得る。
【0032】
本発明の実施例によれば、上記ケトン官能基はアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン及びアセトフェノンからなる群から選択された1つであり得る。
【発明の効果】
【0033】
以上で説明したように、本発明によれば、カルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応に使用した触媒の再生方法において、有機溶媒を用いて触媒を洗浄する再生方法を提供する。
【0034】
これは比較的簡単な再生方法を提供するとともに、触媒の活性を初期のものと類似するように回復させることに目的がある。
【0035】
また、本発明によれば、水熱水素化反応を利用してカルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応に使用した触媒を再生する方法を提供し、これを用いて触媒の活性を初期のものと類似するように回復させる効果を提供する。
【0036】
特に、本発明は、ジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid)をジオール官能基(diol group)に転換する反応で生成されるエステル(ester)による触媒ファウリング(fouling)現象を除去して触媒の活性を再生することを提供する効果がある。
【0037】
これにより再生された触媒は環境に優しく生分解が可能なジオールを製造することに再利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1は非活性化が起こった水素化触媒の有機溶媒洗浄後の反応活性を示した結果である。
図2は非活性化が起こった水素化触媒の水熱水素化処理後の反応活性を示した結果である。
図3は非活性化が起こった水素化触媒の塩基性水溶液洗浄後の反応活性を示した結果である。
図4は塩基性水溶液(NaOH、NH)を用いて洗浄したルテニウム(Ru)-スズ(Sn)/C触媒のSTEM及びEDX分析結果を示した結果である。
図5は500℃で水素を流しながら再還元した触媒のSTEM及びXRD分析結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように十分に詳細に説明される。本発明の多様な実施例は互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の技術的思想及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。
【0040】
したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0041】
また、本明細書で特に言及しない限り、“置換”乃至“置換された”は、本発明の作用基のうち1つ以上の水素原子がハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)、ハイドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換又は非置換されたアルキル基、置換又は非置換された脂環族有機基、置換又は非置換されたアリール基、置換又は非置換されたアルケニル基、置換又は非置換されたアルキニル基、置換又は非置換されたヘテロアリール基、及び置換又は非置換されたヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基に置換されたことを意味し、上記置換基らは互いに連結されて環を形成することもできる。
【0042】
本発明で、上記“置換”は特に言及しない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基などの置換基に置換されたことを意味する。
【0043】
また、上記“炭化水素基”は特に言及しない限り、線状、分枝状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基を意味し、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線状、分枝状又は環状であり得る。
【0044】
また、本明細書で特に言及しない限り、“アルキル基”とはC1~C30アルキル基を意味し、“アリール基”とはC6~C30アリール基を意味する。本明細書で、“ヘテロ環基”とはO、S、N、P、Si及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1つ~3つ含有する基を意味し、例えば、ピリジン、チオフェン、ピラジンなどを意味するが、これに限定されない。
【0045】
本発明の詳細な説明で、用語ジカルボン酸(dicarboxylic acid)は1つの分子の中に2つのカルボン酸官能基を持つ有機酸を意味する。例えば、ジカルボン酸の分子式はHOOC-R-COOHで示し、本発明では、Rがアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0046】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0047】
本発明の実施例によれば、カルボン酸又はカルボン酸-エステルの水素化反応に使用した触媒を再生する方法が提供される。詳しくは、有機溶媒を用いて再生する方法及び水熱水素化反応を利用して触媒を再生する方法をそれぞれ提供する。
【0048】
まず、有機溶媒を用いる再生方法は(a)使用された(used)触媒を有機溶媒に投入して攪拌しながら洗浄するステップ、(b)上記洗浄後にろ過して触媒を分離及び回収するステップ、(c)分離及び回収された上記触媒を乾燥して再活性化させるステップを含む触媒の再生方法を提供する。
【0049】
上記有機溶媒はアセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、トルエン及びジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。好ましくはアセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノールが提供される。この場合、有機溶媒100重量部に対して非活性触媒は1~20重量部が含まれ得る。好ましくは0.5~5重量部が提供され得る。上記範囲で触媒の攪拌及び洗浄を十分に行って、触媒のファウリングを招いて活性化を妨げる有機物質の除去が可能である。
【0050】
また、上記(a)ステップの攪拌しながら洗浄するステップは0~150℃で0.15~12時間の間行われ得る。好ましくは室温で1~3時間の間行われ得る。
【0051】
上記(a)ステップの攪拌しながら洗浄するステップでの温度が0℃未満の場合はファウリングを招く有機物質(エステル)を効果的に除去することが難しく、150℃以上の場合は洗浄する有機溶媒の蒸発が起こりやすいので適合しない。
【0052】
攪拌速度は高速磁石撹拌機を用いて100~1000rpmが提供され、好ましくは300rpmが提供される。
【0053】
また、攪拌しながら洗浄するステップは1回が提供されることができ、さらには2回以上行われ得る。洗浄回数が増加すると、触媒にファウリングされている物質をより円滑に除去することができ、これにより初期触媒の活性を取り戻すことにより役立つことができる。ただし、必要以上行った場合、時間又はコストの面で無理があるので、好ましくは2~4回が提供される。
【0054】
ただし、以上で述べた触媒の洗浄方法はこれに限定されず、触媒の量、種類、回数などは必要に応じて当業者のレベルで若干の変形が可能である。
【0055】
洗浄が終わった後、本発明の実施例によれば、ろ過して触媒を分離及び回収するステップが提供される。ろ過ステップで真空ポンプ又はアスピレータを用いることができ、触媒の流失を最少化するためにメンブレンフィルタ(membrane filter)又はペーパーフィルタ(paper filter)を使用できる。この時、フィルタ(filter)の細孔大きさは0.5um~5umを使用できる。ただし、ろ過に用いられる機構及び方法はこれに限定されず、ろ過する触媒の量に応じて適当に変形できる。
【0056】
上記分離及び回収された触媒は乾燥して再使用できる。上記(c)ステップの乾燥は40~200℃で2~24時間の間行われ得る。好ましくは100℃で8~12時間の間行われ得る。より速やかな乾燥のために、真空オーブンを使用することもでき、この時の圧力は0~0.5気圧で好ましく行われ得る。
【0057】
上記(c)ステップの乾燥温度が40℃未満の場合は効果的に乾燥が行われない問題が生じ、200℃以上の場合は触媒の変形が生じる場合があるので好ましくない。
【0058】
次に、水熱水素化反応を利用した触媒再生方法を提供する。上記水熱水素化反応は触媒の再生のために高温で高圧の水素と溶媒条件下で行われる水素化反応のみを意味し、本発明で述べる一般の水素化反応とは区別されるべきである。
【0059】
本発明の実施例によれば、(i)反応器に使用された(used)触媒及び溶媒を投入するステップ;(ii)反応器内部ガスの組成を水素に置換するステップ;(iii)反応器内部温度は100~400℃で、圧力は1Mpa~20Mpa水素ガス圧力条件で攪拌しながら、水熱水素化反応を行って触媒を再活性化させるステップを含む触媒の再生方法を提供する。
【0060】
上記反応器に非活性触媒及び溶媒を投入するが、この場合、溶媒は蒸留水が提供され、蒸留水としてはイオン交換水又は超純水(DIW)などの高純度の水が提供される。使用する蒸留水に不純物を含有する場合は不純物が触媒に付着して触媒の活性を低下させる場合がある。溶媒100重量部の場合、上記触媒は0.1~30重量部が含まれることができ、好ましくは2重量部を提供できる。
【0061】
上記水熱水素化反応を利用した再生方法で使用される溶媒として水のみならずカルボン酸、アルコール及びカルボン酸-エステル物質が含有された溶媒も使用可能である。この場合、上記溶媒100重量部に対して、水50~100重量部、カルボン酸、アルコール及びカルボン酸-エステルのうち少なくともいずれか1つ以上を0~50重量部で含むことができ、好ましくは10~20重量部を提供できる。このような条件での水熱水素化反応は連続式工程及びバッチ(batch)工程で反応溶液を水で入れ替える必要がないので工程効率性の面で有利である。
【0062】
次に、水熱水素化反応のために、反応器内部ガスの組成を水素に置換する方法が提供される。水素ガスに反応器内に存在する他の気体をすべて置換した後、100~400℃温度で、水素圧力1~20MPaの条件で攪拌しながら、水熱水素化反応を行って使用された(used)触媒を再活性化させるステップを提供する。この時、温度は好ましくは200~300℃が提供され、水素圧力は3MPa~15MPaが提供される。上記範囲で有機物(エステル)によってファウリングが起こった触媒を再生する効果を提供する。この時、上記温度が200℃未満の場合はファウリングを招くエステル物質の分解速度が十分でないので好ましくなく、300℃以上の場合は触媒の変形及び使用される溶媒の水素化反応が起こる場合があるので好ましくない。また、上記水素圧力が3MPa未満の場合は反応に参加する水素が十分に溶媒に存在しないので好ましくなく、15MPaを超える場合は過度に高い水素圧力によって工程安定性に問題が生じる場合がある。
【0063】
上記水熱水素化反応の反応時間は0.5~48時間行うことができ、好ましくは12時間が提供される。この時、上記反応時間が0.5時間未満の場合はエステルの分解が十分に起こらない可能性があるので好ましくなく、48時間を超える場合は工程効率性の面で好ましくない。
【0064】
本発明の実施例によれば、触媒が用いられる反応として、水素化反応はカルボン酸官能基、カルボン酸-エステル官能基、アルデヒド官能基又はケトン官能基に転換することを提供できる。より好ましくは水素化反応触媒を用いて、反応物のジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)を生成物のジオール官能基(diol group)に転換することであり得る。この場合、製造されたジアルコール物質の収率は85~100%の範囲を有し、ジカルボン酸の転化率は95~100の範囲であり得る。また、以上で述べた触媒の再生方法で再活性化された触媒も初期活性範囲値を有することができる。
【0065】
上記カルボン酸官能基は、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)、スベリン酸(suberic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、フタル酸(phthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、シクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid)及びテレフタル酸(terephthalic acid)からなる群から選択された1つであり得るが、ただし、これに限定されない。
【0066】
また、上記水素化反応の温度は150~300℃の範囲で0.5~12時間の間行われ、圧力は50~150barの範囲で行われ得る。好ましくは上記CHDAの水素化反応温度は200℃~270℃の範囲で行われ、圧力は70~130barの範囲で行われ得る。この時、上記温度が150℃未満の場合はCHDAの水素化反応が十分に活性化されないので好ましくなく、300℃を超える場合はCHDAの分解反応などの副反応が起こる場合があり、上記圧力が50bar未満の場合はCHDAの水素化反応時に反応に参加する水素が十分に溶媒に存在しないので好ましくなく、上記水素化反応の圧力が150barを超える場合は水素を多く使用して工程安定性に問題が生じる場合がある。最も好ましくは、上記水素化反応圧力は7~15Mpaで反応温度が230~250℃で反応時間が0.5~6時間であり得る。そして、水素化反応は多様な反応器で行われ得るが、好ましくは、連続槽型反応器(CSTR)又はループ反応器内で行われ得る。
【0067】
本発明の実施例によれば、上記使用された(used)触媒はジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジオール官能基(diol group)に転換する過程で生成される物質の沈積によるファウリング現象(fouling)によって活性が低下したものであり得る。上記生成される物質はエステル(ester)を含む。
【0068】
上記水素化反応条件ではジオール化合物とジカルボン酸化合物の間のエステル化(esterification)反応が自発的に起こり、これにより生成されたエステル化合物は水素化反応過程で触媒表面に沈積されてファウリングを起こして触媒の非活性化を招く。よって、反応後又は反応中に水素化触媒に沈積されたエステル化合物を効果的に除去することが長寿命を示す触媒工程の開発において必須である。
【0069】
よって、本発明による有機溶媒洗浄及び水熱水素化反応による水素化触媒の再生方法を利用して、触媒表面に沈積されてファウリングを招くエステル(ester)を含む沈積物を除去できる。上記沈積物が除去された触媒は再活性化され、初期活性の値と類似するように触媒の再生が可能であることを提供できる。これに対する結果は[図1]乃至[図2]を参照する。
【0070】
本発明の実施例によれば、上記非活性化された触媒は貴金属-遷移金属が担体に担持されたことを含むことができる。この時、貴金属はパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上を含み、遷移金属はスズ(Sn)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0071】
また、上記触媒で、好ましくは貴金属としてはルテニウム(Ru)が提供されることができ、遷移金属としてはスズ(Sn)が提供されることができる。
【0072】
上記担体はシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア及び炭素から選択される少なくともいずれか1つ以上であることが提供される。上記炭素担体は特に限定されないが、活性炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)及び炭素ナノチューブからなる群から選択された少なくとも1つを使用することができる。
【0073】
本発明の実施例によれば、上記再生された触媒は粉末、粒子、顆粒の形態であることができ、好ましくは粉末の形態である。ただし、これに限定されない。
【0074】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例(example)を提示する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例によって限定されるわけではない。
【実施例
【0075】
<実施例>
[実験例1]シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexanedicarboxylic acid)転換実験
公称(nominal)容積が250mlで最大使用圧力が10.0Mpaである、チタニア-ライニングされたステンレス鋼オートクレーブ内でシクロヘキサンジカルボン酸転化実験を行った。この時、触媒0.65g及び反応物(cyclohexanedicarboxylic acid)2.44g及び溶媒(HO)150gを投入し、反応器を水素を用いて90barまで加圧し、水素ガス検知器によって反応器のリーク(leak)有無を確認した後、減圧及び換気(purge)して初期反応器内部の酸素をすべて除去した。最終的には、反応器内部圧力を1barに合わせた後、反応器内部温度を230℃まで加熱し、水素を90barの圧力で加圧した後、6時間反応を進めた。この時、攪拌はオーバーヘッドインペラ(overhead impeller)を用いて1000rpmの速度を維持した。反応後、常温まで冷却及び解圧した後、触媒と液相生成物をろ過法で分離してHP-1カラムが装着されたガスクロマトグラフィーで分析した。
【0076】
[実験例2]非活性化が起こったシクロヘキサンジカルボン酸水素化触媒の非活性化原因分析
上記[実験例1]の条件で複数回使用されて非活性化が起こった水素化触媒3gを回収してアセトン(Acetone)300mlに入れ室温で1時間の間300rpmの速度で攪拌させた後、これをろ過法で分離して回収した。その後、ろ過されたアセトン洗浄溶液をロータリーエバポレータ(Rotary evaporator)を用いて蒸発させて触媒に沈積していた有機物質を分離した。分離された有機物質をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で分析した。触媒に沈積していた有機物質の種類/比率と反応溶液に残っていた有機物質の種類/比率を[表1]に示した。
【表1】
【0077】
[実施例1]非活性化が起こった水素化触媒の有機溶媒洗浄
非活性化が起こった水素化触媒3gを有機溶媒(アセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol))300mlに入れ室温で1時間の間300rpmの速度で攪拌させた後、これをろ過法で分離して回収した。上記の洗浄方法を各3回ずつ繰り返した。最終的に回収された触媒は50℃温度で真空オーブンを用いて真空状態で12時間乾燥した。上記のように洗浄された触媒をそれぞれ“Deactivated Catalyst - Acetone washed”、“Deactivated Catalyst - Pyridine washed”、“Deactivated Catalyst - HFIP washed”と表記した。有機溶媒で洗浄された各触媒を[実験例1]によってシクロヘキサンジカルボン酸転換実験を行い、その結果を[図1]に示した。
【0078】
[実施例2]非活性化が起こった水素化触媒の水熱水素化処理
非活性化が起こった水素化触媒を公称(nominal)容積が250mlで最大使用圧力が10.0Mpaである、チタニア-ライニングされたステンレス鋼オートクレーブ内に入れた後、水熱水素化処理を行った。この時、反応器には触媒3g及び溶媒(HO)150gを投入し、反応器を水素を用いて90barまで加圧し、水素ガス検知器によって反応器のリーク有無を確認した後、減圧及び換気(purge)して初期反応器内部の酸素をすべて除去した。最終的には、反応器内部圧力を1barに合わせた後、反応器内部温度を230℃まで加熱し、水素を90barの圧力で加圧した後、12時間反応を進めた。この時、攪拌はオーバーヘッドインペラを用いて1000rpmの速度を維持した。反応が終わった後、上記触媒をろ過法で分離して回収した。上記のように水熱水素化処理を行った触媒を“Deactivated Catalyst-Hydrothermal hydrogenation”と表記した。水熱水素化処理された触媒を[実験例1]によってシクロヘキサンジカルボン酸転換実験を行い、その結果を[図2]に示した。
【0079】
[比較例1]非活性化が起こった水素化触媒の塩基性水溶液処理
非活性化が起こった水素化触媒3gを1M塩基性水溶液(NaOH、NH)300mlに入れ室温で1時間の間300rpmの速度で攪拌させた後、これをろ過法で分離して回収した。上記の洗浄方法を各3回ずつ繰り返した。最終的に回収された触媒は50℃温度で真空オーブンを用いて真空状態で12時間乾燥した。上記のように洗浄された触媒をそれぞれ“Deactivated Catalyst - NaOH washed”、“Deactivated Catalyst - NH washed”と表記した。塩基性水溶液で洗浄された各触媒を実験例1によってシクロヘキサンジカルボン酸転換実験を行い、その結果を[図3]に示した。
【0080】
[比較例2]非活性化が起こった水素化触媒の還元処理
非活性化が起こった水素化触媒3gを管状石英反応器(tubular quartz reactor)に入れた後、水素を300ml/minの速度で流しながら500℃温度で3時間の間還元した。この時、昇温速度は5℃/minで、還元が終わった後、水素を300ml/minの速度で流しながら室温に冷却した。その後、室温で窒素300ml/minを30分間流した後、5%酸素/窒素混合ガス600ml/minを1時間の間流しながら上記触媒を不動化させた。上記触媒のSTEM、XRD分析を行い、その結果を[図5]に示した。
【0081】
前述のように、[表1]に示したように、非活性化が起こった水素化触媒を有機溶媒で洗浄した場合、反応溶液より多量のエステルが存在することがわかる。これによりdicarboxylic acid to dialcohol転換反応で生成されるエステルは触媒の表面に持続的に沈積して触媒のファウリングを招き、これにより触媒の非活性化が現れる点が認められる。
【0082】
図1]に示したように、非活性化が起こった水素化触媒を有機溶媒(Aceonte、Pyridine、HFIP)を用いて洗浄した場合、その活性が初期のものとほぼ類似するように回復することが認められる。
【0083】
図2]に示したように、非活性化が起こった水素化触媒を230℃で水熱水素化処理した場合、その活性が初期のものとほぼ類似するように回復することが認められる。
【0084】
図3]に示したように、非活性化が起こった水素化触媒を1M濃度の塩基性水溶液(NaOH、NH)を用いて洗浄した場合、その活性がさらに悪化することが認められ、そのSTEM-EDX分析結果を[図4]に示した。上記結果から塩基性水溶液洗浄過程でルテニウム(Ru)-スズ(Sn)/炭素触媒のスズ(Sn)の相当部分が溶出されたと判断される。これにより、下記の[反応式1]及び[反応式2]によってスズ酸ナトリウム(Sodium stannate)が形成されることが認められた。
【0085】
【化1】
【化2】
【0086】
図5]では500℃で水素を流しながら再還元した触媒の場合もその活性がさらに悪化することが認められ、これをSTEM-EDX分析した結果は[図6]でも認められる。
【0087】
以上、本発明の実施例による図面を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば上記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】