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特表2022-516453ホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/04 20100101AFI20220218BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20220218BHJP
   H01S 5/11 20210101ALI20220218BHJP
【FI】
H01L33/04
H01S5/026 618
H01S5/026 612
H01S5/11
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537056
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2019112932
(87)【国際公開番号】W WO2020134429
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811624876.8
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518371489
【氏名又は名称】南京郵電大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF POSTS AND TELECOMMUNICATIONS
【住所又は居所原語表記】No.66 Xin Mofan Road, Gulou Nanjing, Jiangsu 210003 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 永進
(72)【発明者】
【氏名】倪 曙▲ゆ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 欣
【テーマコード(参考)】
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
5F173AA01
5F173AD15
5F173AF03
5F173AF32
5F173AF52
5F173AG05
5F173AG11
5F173AH14
5F173AP33
5F173AR94
5F241AA42
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA14
5F241CA22
5F241CA39
5F241CA74
5F241CA75
5F241CA83
5F241CB05
5F241CB11
5F241CB32
5F241FF14
(57)【要約】
ホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法は、情報材料及びデバイスの技術分野に関する。前記ホモ集積の赤外線フォトニックチップは、基板層20及びいずれも前記基板層20の表面に位置しているデバイス構造と導波路構造を備え、前記デバイス構造は、前記基板層20に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層22、量子井戸層23及び上部接触層13を含み、前記基板層20、前記下部接触層22、前記量子井戸層23及び前記上部接触層13の材料は、いずれもIII-V族材料であり、前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層10を含み、前記導波路層10と前記下部接触層22は同じ層に配置されている。当該ホモ集積の赤外線フォトニックチップによれば、チップ内の赤外線帯域での不可視光の伝送を実現し、赤外線光通信デバイスの製造難しさ及び製造コストを低減させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層及びいずれも前記基板層の表面に位置しているデバイス構造と導波路構造を備え、
前記デバイス構造は、前記基板層に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層、量子井戸層及び上部接触層を含み、前記基板層、前記下部接触層、前記量子井戸層及び前記上部接触層の材料は、いずれもIII-V族材料であり、
前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層を含み、前記導波路層と前記下部接触層は同じ層に配置されていることを特徴とするホモ集積の赤外線フォトニックチップ。
【請求項2】
前記基板層の表面に位置し、III-V族材料により製造されたバッファ層をさらに備え、前記下部接触層及び前記導波路層は、いずれも前記バッファ層の表面に位置していることを特徴とする請求項1に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップ。
【請求項3】
前記下部接触層は、階段状を呈しており、階段状の前記下部接触層は、下台面及び前記下台面の表面に凸設された上台面を含み、前記量子井戸層と前記上部接触層は前記上台面に順次積み重ねられ、前記導波路層と前記下部接触層は同じ材料であることを特徴とする請求項1に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップ。
【請求項4】
前記基板層は、InP基板層であり、前記下部接触層及び前記導波路層は、いずれもn-InP層であり、前記上部接触層は、p-InGaAs層であり、
前記デバイス構造は、前記上台面の表面で前記基板層から前記デバイス構造を指す方向に順次積み重ねられた前記量子井戸層と、p-InPスペーサー層と、エッチングストップ層と、p-InPクラッド層と、p-PQギャップ・バッファ層と、p-InGaAs層と、を含んでいることを特徴とする請求項3に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップ。
【請求項5】
前記基板層の表面に、2つの前記デバイス構造と、2つの前記デバイス構造の間に位置している導波路分離溝とを有し、前記導波路構造は、前記導波路分離溝の底部に位置しており、2つの前記デバイス構造の間で光信号を伝送するために使用されることを特徴とする請求項1に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップ。
【請求項6】
ホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法において、
III-V族材料により製造された基板層を提供するステップと、
前記基板層の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップと、を含み、前記デバイス構造は、前記基板層に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層、量子井戸層及び上部接触層を含み、前記下部接触層、前記量子井戸層及び前記上部接触層の材料がいずれもIII-V族材料であり、前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層を含み、前記導波路層と前記下部接触層は同じ層に配置されることを特徴とするホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法。
【請求項7】
前記基板層の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップの前に、
バッファ層を形成するために、第1のIII-V族材料を前記基板層の表面に堆積するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法。
【請求項8】
前記基板層の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップは、具体的に、
前記バッファ層の表面に第2のIII-V族材料、量子井戸材料、第3のIII-V族材料を順次堆積させて積層構造を形成するステップと、
前記積層構造をエッチングして前記デバイス構造及び前記導波路構造を形成するステップと、を含み、前記デバイス構造は、一部の前記第2のIII-V族材料からなる前記下部接触層、前記量子井戸材料からなる量子井戸層、及び前記第3のIII-V族材料からなる上部接触層を含み、前記導波路構造は、一部の前記第2のIII-V族材料からなる前記導波路層を含むことを特徴とする請求項7に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法。
【請求項9】
前記積層構造をエッチングすることは、具体的に、
前記積層構造でデバイス領域及び導波路領域を定義するステップと、
前記積層構造をエッチングして階段状の第2のIII-V族材料層を形成するステップと、を含み、
前記第2のIII-V族材料層は、下台面及び前記下台面に凸設けられた上台面を含み、前記量子井戸層と前記上部接触層は前記上台面に順次積み重ねられ、前記上台面と前記デバイス領域に位置している前記下台面が前記下部接触層を構成し、前記下台面が前記導波路領域まで延在して前記導波路層を形成することを特徴とする請求項8に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法。
【請求項10】
前記基板層の表面に、2つの前記デバイス構造及び2つの前記デバイス構造の間に位置している導波路分離溝を有し、前記導波路構造は、前記導波路分離溝の底部に位置しており、2つの前記デバイス構造の間で光信号を伝送するために使用されることを特徴とする請求項6に記載のホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報材料及びデバイスの技術分野に関し、特に、ホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線発光ダイオードは、赤外線を放射できるダイオードであり、セキュリティモニタリング、ウェアラブルデバイス、赤外線通信、赤外線リモートコントロール装置、センサー用光源及び夜間照明等の分野、特にガス検出分野で使用される。しかし、現在、市場には独立した赤外線発光ダイオード又は赤外線受信ダイオードしかない。従って、赤外線光通信デバイスを製造する場合、異なる材料にダイオードデバイス及び導波路デバイスを別々に製造する必要がある。即ち、従来技術における赤外線光通信デバイスはいずれもヘテロ集積デバイスであり、赤外線光通信デバイスの製造難しさ及び製造コストを大幅に増加している。
【0003】
従って、赤外線光通信デバイスの製造難しさ及び製造コストをどのように低減するかは、現在、解決されるべき緊急の技術的問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の赤外線光通信デバイスの製造が難しく、製造コストが高いという問題を解決するために使用されるホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明は、基板層及びいずれも前記基板層の表面に位置しているデバイス構造と導波路構造を備え、
前記デバイス構造は、前記基板層に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層、量子井戸層及び上部接触層を含み、前記基板層、前記下部接触層、前記量子井戸層及び前記上部接触層の材料は、いずれもIII-V族材料であり、
前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層を含み、前記導波路層と前記下部接触層は同じ層に配置されているホモ集積の赤外線フォトニックチップを提供する。
【0006】
好ましくは、前記基板層の表面に位置し、III-V族材料により製造されたバッファ層をさらに備え、前記下部接触層及び前記導波路層は、いずれも前記バッファ層の表面に位置している。
【0007】
好ましくは、前記下部接触層は、階段状を呈しており、階段状の前記下部接触層は、下台面及び前記下台面の表面に凸設された上台面を含み、前記量子井戸層と前記上部接触層は前記上台面に順次積み重ねられ、前記導波路層と前記下部接触層は同じ材料である。
【0008】
好ましくは、前記基板層は、InP基板層であり、前記下部接触層及び前記導波路層は、いずれもn-InP層であり、前記上部接触層は、p-InGaAs層であり、
前記デバイス構造は、前記上台面の表面で前記基板層から前記デバイス構造を指す方向に順次積み重ねられた量子井戸層と、p-InPスペーサー層と、エッチングストップ層と、p-InPクラッド層と、p-PQギャップ・バッファ層と、p-InGaAs層と、を含んでいる。
【0009】
好ましくは、前記基板層の表面に、2つの前記デバイス構造と、2つの前記デバイス構造の間に位置している導波路分離溝とを有し、前記導波路構造は、前記導波路分離溝の底部に位置しており、2つの前記デバイス構造の間で光信号を伝送するために使用される。
【0010】
上記の問題を解決するために、本発明は、ホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法も提供しており、
III-V族材料により製造された基板層を提供するステップと、
前記基板層の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップと、を含み、前記デバイス構造は、前記基板層に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層、量子井戸層及び上部接触層を含み、前記下部接触層、前記量子井戸層及び前記上部接触層の材料がいずれもIII-V族材料であり、前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層を含み、前記導波路層と前記下部接触層は同じ層に配置される。
【0011】
好ましくは、前記基板層の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップの前に、
バッファ層を形成するために、第1のIII-V族材料を前記基板層の表面に堆積するステップをさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記基板層の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップは、具体的に、
前記バッファ層の表面に第2のIII-V族材料、量子井戸材料、第3のIII-V族材料を順次堆積させて積層構造を形成するステップと、
前記積層構造をエッチングして前記デバイス構造及び前記導波路構造を形成するステップと、を含み、前記デバイス構造は、一部の前記第2のIII-V族材料からなる前記下部接触層、前記量子井戸材料からなる量子井戸層、及び前記第3のIII-V族材料からなる上部接触層を含み、前記導波路構造は、一部の前記第2のIII-V族材料からなる前記導波路層を含む。
【0013】
好ましくは、前記積層構造をエッチングすることは、具体的に、
前記積層構造でデバイス領域及び導波路領域を定義するステップと、
前記積層構造をエッチングして階段状の第2のIII-V族材料層を形成するステップと、を含み、
前記第2のIII-V族材料層は、下台面及び前記下台面に凸設けられた上台面を含み、前記量子井戸層と前記上部接触層は前記上台面に順次積み重ねられ、前記上台面と前記デバイス領域に位置している下台面が前記下部接触層を構成し、前記下台面が前記導波路領域まで延在して前記導波路層を形成する。
【0014】
好ましくは、前記基板層の表面に、2つの前記デバイス構造と、2つの前記デバイス構造の間に位置している導波路分離溝とを有し、前記導波路構造は、前記導波路分離溝の底部に位置しており、2つの前記デバイス構造の間で光信号を伝送するために使用される。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提供するホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法は、導波路構造及びデバイス構造をIII-V族材料からなる基板上に集積し、同様に、III-V族材料により前記導波路構造及び前記デバイス構造を製造し、前記デバイス構造における下部接触層と前記導波路構造における導波路層を同じ層に配置することで、導波路構造とデバイス構造をホモ集積する目的が達成され、さらにチップ内の赤外線帯域での不可視光の伝送が実現され、赤外線光通信デバイスの製造難しさ及び製造コストを低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明の特定の実施形態におけるホモ集積の赤外線フォトニックチップの構造を示す模式的な上面図である。
図1B】本発明の特定の実施形態における他のホモ集積の赤外線フォトニックチップの構造を示す模式的な上面図である。
図2図1AのX軸方向に沿った断面模式図である。
図3図1AのY軸方向に沿った断面模式図である。
図4図1BのY軸方向に沿った断面模式図である。
図5】本発明の特定の実施形態におけるホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法のフローチャートである。
図6A-6L】本発明の特定の実施形態によるホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造過程における主なプロセスの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下面、本発明が提供するホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法の特定の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
当該特定の実施形態は、ホモ集積の赤外線フォトニックチップを提供しており、図1Aは本発明の特定の実施形態におけるホモ集積の赤外線フォトニックチップの構造を示す模式的な上面図であり、図1Bは本発明の特定の実施形態における他のホモ集積の赤外線フォトニックチップの構造を示す模式的な上面図であり、図2図1AのX軸方向に沿った断面模式図であり、図3図1AのY軸方向に沿った断面模式図であり、図4図1BのY軸方向に沿った断面模式図である。
【0019】
図1A図1B及び図2図4に示すように、当該特定の実施形態が提供するホモ集積の赤外線フォトニックチップは、基板層20及びいずれも前記基板層20の表面に位置しているデバイス構造と導波路構造を備え、前記デバイス構造は、前記基板層20に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層22、量子井戸層23及び上部接触層13を含み、前記基板層20、前記下部接触層22、前記量子井戸層23及び前記上部接触層13の材料は、いずれもIII-V族材料であり、前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層10を含み、前記導波路層10と前記下部接触層22は同じ層に配置されている。
【0020】
当該特定の実施形態では、前記基板層20の表面に前記デバイス構造及び前記導波路構造を同時に集積しており、図1中のY軸方向に沿った断面図において、デバイス構造における前記下部接触層22、前記量子井戸層23及び前記上部接触層13が前記基板層20に垂直な方向に沿って順次積層されている。図1中のX軸方向に沿った断面図において、前記デバイス構造と前記導波路構造の導波路層10は、前記基板層20に平行な方向に沿って配置され、赤外線光信号は前記デバイス構造と前記導波路構造との間で伝送される。当該特定の実施形態は、チップ内の赤外線帯域での不可視光の伝送を実現し、赤外線光通信デバイスの製造難しさ及び製造コストを低減させる。同時に、ホモ集積構造によりチップ内の発光ダイオードの光源の利用効率が向上され、光通信及び光センシング用のフォトニックデバイスの開発に新しい方向性を提供している。
【0021】
好ましくは、前記ホモ集積の赤外線フォトニックチップは、前記基板層20の表面に位置し、III-V族材料により製造されたバッファ層21をさらに備え、前記下部接触層22及び前記導波路層10は、いずれも前記バッファ層21の表面に位置している。
【0022】
具体的には、前記バッファ層21は、前記基板層20の表面にエピタキシャル成長し、前記バッファ層21の材料は前記基板層20の材料と同じであっても異なってもよく、前記基板層20と前記デバイス構造との間の応力を調整するために使用される。前記導波路層10は、前記導波路層10の真下の領域に位置する一部の前記バッファ層21と一緒に前記導波路構造を構成する。
【0023】
好ましくは、前記下部接触層22は、階段状を呈しており、階段状の前記下部接触層22は、下台面及び前記下台面の表面に凸設けられた上台面を含み、前記量子井戸層23と前記上部接触層13は前記上台面に順次積み重ねられ、前記導波路層10と前記下部接触層22は同じ材料である。
【0024】
好ましくは、前記基板層20は、InP基板層であり、前記下部接触層22及び前記導波路層10は、いずれもn-InP層であり、前記上部接触層13は、p-InGaAs層であり、前記デバイス構造は、前記上台面の表面で前記基板層から前記デバイス構造を指す方向に順次積み重ねられた量子井戸層23と、p-InPスペーサー層24と、エッチングストップ層25と、p-InPクラッド層26と、p-PQギャップ・バッファ層27と、p-InGaAs層と、を含んでいる。
【0025】
ここで、p-PQギャップ・バッファ層27におけるPQは、In、P、Ga、及びAsの4つの元素から構成される化合物を表す。上記の様々な材料を組み合わせて製造された前記ホモ集積の赤外線フォトニックチップにおいて、前記デバイス構造によって生成できる光の波長は1550nmであり、これは赤外線帯域の不可視光に属する。もちろん、当業者であれば、赤外線光信号を生成することができる限り、必要に応じて他のIII-V族材料を選択して前記デバイス構造を製造することができる。
【0026】
具体的に、前記バッファ層21はInP層又はGaAs層であり得る。前記バッファ層21の表面は、前記デバイス構造を有するデバイス領域と、前記導波路層10を有する導波路領域と、を含んでいる。前記デバイス領域に位置する前記n-InP層は前記下部接触層22を構成し、前記下部接触層22は階段状を呈しており、前記量子井戸層23、前記p-InPスペーサー層24、前記エッチングストップ層25、前記p-InPクラッド層26、前記p-PQギャップ・バッファ層27、及び前記p-InGaAs層は、前記基板層20に垂直な方向に沿って前記上台面に順次積み重ねられる。前記導波路領域に位置する前記n-InP層が前記導波路層10を構成する。製造プロセスを簡素化するために、前記導波路層10は前記下台面と同じ厚さを有する。
【0027】
当該特定の実施形態では、図1A及び図3に示すように、前記導波路層10と前記下部接触層22との間に、前記基板層20に垂直な方向に沿って前記n-InP層を貫通する開口がある。
【0028】
他の特定の実施形態では、図1B及び図4に示すように、前記導波路層10は、前記下部接触層22の前記下台面に接続されている。即ち、前記下部接触層22の前記下台面は前記導波路領域まで延在して、前記導波路層10を形成する。
【0029】
p-電極12は、前記p-InGaAs層の表面に位置しており、n-電極11は、前記下部接触層22の前記下台面の表面に位置している。前記p-電極12及び前記n-電極11の材料は、いずれもチタン、白金又は金であり得る。
【0030】
好ましくは、前記基板層20の表面に、2つの前記デバイス構造と、2つの前記デバイス構造の間に位置している導波路分離溝とを有し、前記導波路構造は、前記導波路分離溝の底部に位置しており、2つの前記デバイス構造の間で光信号を伝送するために使用される。
【0031】
具体的に、前記導波路分離溝は、2つの前記デバイス構造を電気的に分離するために使用される。前記導波路構造は、2つの完全に同一の前記デバイス構造の間に位置しており、2つの前記デバイス構造の一方は光信号の送信端として機能し、他方は光信号の受信端として機能することで、赤外線光信号は前記導波路構造を介して前記送信端と前記受信端との間を伝送する。2つの前記デバイス構造と2つの前記デバイス構造の間に位置している前記導波路構造とが1対のフォトニック通信デバイスを構成する。当該特定の実施形態により提供される前記ホモ集積の赤外線フォトニックチップにおいて、1対のフォトニック通信デバイスのみを含んでもよく、複数対のフォトニック通信デバイスを含んでもよい。当業者であれば、実際の必要に応じて選択することができる。
【0032】
当該特定の実施形態では、前記デバイス構造における前記下部接触層22が前記導波路構造における前記導波路層10に接続されているかどうかに関係なく、2つの前記デバイス構造は、いずれも前記導波路層10の上方の前記導波路分離溝によって電気的に分離することができ、赤外線フォトニックチップのホモ集積や、不可視光のチップ内の伝送を実現すると共に、前記ホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造プロセスを簡素化することができる。前記下部接触層22が前記導波路層10に接続されていない場合、2つの前記デバイス構造をより良好に電気的に分離することができ、前記下部接触層22が前記導波路層10に接続されている場合、製造プロセスを大幅に簡素化することができる。
【0033】
それだけでなく、この特定の実施形態はホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法も提供している。図5は本発明の特定の実施形態におけるホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法のフローチャートであり、図6A図6Lは本発明の特定の実施形態によるホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造過程における主なプロセスの断面模式図である。この特定の実施形態で製造されたホモ集積の赤外線フォトニックチップの構造は、図1A図1B、及び図2図4を参照すればよい。図1A図1B図2図5、及び図6A図6Lに示すように、当該特定の実施形態で提供されるホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造方法は、以下のステップを含む。
【0034】
ステップS41:III-V族材料により製造された基板層20を提供する。
【0035】
ステップS42:前記基板層20の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成する。前記デバイス構造は、前記基板層に垂直な方向に順次積み重ねられた下部接触層22、量子井戸層23及び上部接触層13を含み、前記下部接触層22、前記量子井戸層23及び前記上部接触層13の材料がいずれもIII-V族材料であり、前記導波路構造は、III-V族材料により製造された導波路層10を含み、前記導波路層10と前記下部接触層22は同じ層に配置されている。
【0036】
好ましくは、前記基板層20の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップの前に、バッファ層21を形成するために、第1のIII-V族材料を前記基板層20の表面に堆積するステップをさらに含む。
【0037】
好ましくは、前記基板層20の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップは、具体的に、図6Aに示すように、前記バッファ層21の表面に第2のIII-V族材料、量子井戸材料、第3のIII-V族材料を順次堆積させて積層構造を形成するステップと、前記積層構造をエッチングして前記デバイス構造及び前記導波路構造を形成するステップと、を含み、前記デバイス構造は、一部の前記第2のIII-V族材料からなる前記下部接触層22、前記量子井戸材料からなる量子井戸層23、及び前記第3のIII-V族材料からなる上部接触層13を含み、前記導波路構造は、一部の前記第2のIII-V族材料からなる前記導波路層10を含む。
【0038】
好ましくは、前記積層構造をエッチングすることは、具体的に、
前記積層構造でデバイス領域及び導波路領域を定義するステップと、
前記積層構造をエッチングして階段状の第2のIII-V族材料層を形成するステップと、を含み、
前記第2のIII-V族材料層は、下台面及び前記下台面に凸設けられた上台面を含み、前記量子井戸層23と前記上部接触層13は前記上台面に順次積み重ねられ、前記上台面と前記デバイス領域に位置している下台面が前記下部接触層22を構成し、前記下台面が前記導波路領域まで延在して前記導波路層10を形成する。
【0039】
この時、図1A図2、及び図3に示すように、形成されたホモ集積の赤外線フォトニックチップの構造において、前記下部接触層22は前記導波路層10に接続される。
【0040】
他の特定の実施形態において、図1B及び図4に示すような構造を得るために、前記積層構造をエッチングした後に、前記導波路領域と前記デバイス領域との間の前記下台面をエッチングして、前記バッファ層まで貫通する開口を形成すると共に、一部の前記下台面からなる前記導波路層10を形成する。
【0041】
前記第1のIII-V族材料はInP材料であり、前記第2のIII-V族材料はn-InP材料であり、前記第3のIII-V族材料はp-InGaAsであり、前記基板層20の材料はInP材料である。以下、図1B及び図4に示すような構造を形成することを例として説明する。前記基板層20の表面にデバイス構造及び導波路構造を形成するステップは、具体的に以下のステップを含む。
【0042】
(1)図6Aに示すように、前記基板層20の表面にInP層、n-InP層、量子井戸層、p-InPスペーサー層、エッチングストップ層、p-InPクラッド層、p-PQギャップ・バッファ層、及びp-InGaAs層を順次堆積して積層構造を形成する。
【0043】
(2)図6Bに示すように、前記積層構造の表面に第1のフォトレジスト層501を均一にコーティングし、前記第1のフォトレジスト層501でデバイス領域及び導波路領域を定義する。
【0044】
(3)反応性イオンビームを用いて前記積層構造をエッチングし、図6Cに示すような階段状構造を形成し、残りの前記第1のフォトレジスト層501を除去した後、最終的に図6Dに示すような構造が得られる。具体的に、エッチングすることで階段状の前記n-InP層を形成する。ここで、前記デバイス領域に位置する前記n-InP層は、下台面及び前記下台面の表面に凸設けられた上台面を含み、前記n-InP層の下台面は前記導波路領域まで延在する。同時に、前記上台面に位置している前記量子井戸層、前記p-InPスペーサー層、前記エッチングストップ層、前記p-InPクラッド層、前記p-PQギャップ・バッファ層、及び前記p-InGaAs層のみを残し、前記下台面に位置している前記量子井戸層、前記p-InPスペーサー層、前記エッチングストップ層、前記p-InPクラッド層、前記p-PQギャップ・バッファ層、及び前記p-InGaAs層はいずれも除去し、導波路分離溝を形成すると共に、前記上台面に位置する前記量子井戸層23、前記p-InPスペーサー層24、前記エッチングストップ層25、前記p-InPクラッド層26、前記p-PQギャップ・バッファ層27、及び前記上部接触層13を形成し、前記デバイス領域に位置している階段状の前記n-InP材料層が前記下部接触層22を構成する。
【0045】
(4)図6Eに示すように、図6Dに示すような構造の表面に第2のフォトレジスト層502を均一にコーティングし、図6Fに示すように、前記第2のフォトレジスト層502でp-電極窓口領域121及びn-電極窓口領域111を定義し、図6Gに示すように、前記p-電極窓口領域121と前記n-電極窓口領域111にチタン、白金又は金を蒸着して、オーミック接触を形成し、p-電極12及びn-電極11を得る。残りの前記第2のフォトレジスト層502を除去して、最終的に図6Hに示すような発光ダイオード構造が得られる。
【0046】
(5)図6Iに示すように、図6Hに示すような発光ダイオード構造が形成された前記基板層20の表面に第3のフォトレジスト層503を均一にコーティングし、図6Jに示すように、前記第3のフォトレジスト層で前記導波路領域、前記デバイス領域及び前記導波路領域と前記デバイス領域との間のスペーサー領域51を再び定義し、次に、図6Kに示すように、反応性イオンビームによるエッチングプロセスを用いて、前記スペーサー領域51に位置する下台面から前記バッファ層21までの前記n-InP材料層をエッチングして、前記下台面を貫通する開口を形成し、残りの前記第3のフォトレジスト層503を除去した後、最終的に図6Lに示すような構造が得られる。
【0047】
好ましくは、前記基板層20の表面に、2つの前記デバイス構造と、2つの前記デバイス構造の間に位置している導波路分離溝とを有し、前記導波路構造は、前記導波路分離溝の底部に位置しており、2つの前記デバイス構造の間で光信号を伝送するために使用される。
【0048】
具体的に、2つの前記デバイス構造が完全に同一であるため、2つの前記デバイス構造と前記導波路構造は同期製造することができ、前記ホモ集積の赤外線フォトニックチップの製造プロセスをさらに簡素化し、製造コストを削減する。
【0049】
この特定の実施形態が提供するホモ集積の赤外線フォトニックチップ及びその製造方法は、導波路構造及びデバイス構造をIII-V族材料からなる基板上に集積し、同様に、III-V族材料により前記導波路構造及び前記デバイス構造を製造し、前記導波路構造と前記デバイス構造との間にギャップを形成して、導波路構造とデバイス構造をホモ集積する目的が達成され、さらにチップ内の赤外線帯域での不可視光の伝送が実現され、赤外線光通信デバイスの製造難しさ及び製造コストを低減させる。
【0050】
上記は、本発明の好ましい実施形態の説明に過ぎず、本技術分野の当業者であれば、本発明の原理から逸脱しない前提の下で、いくつかの改善及び修正をこともでき、これらの改善及び修正も本発明の保護範囲とみなされることに留意されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
【国際調査報告】