(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】圧力下または真空下のガスネットワーク内の漏れを検出するための方法、およびガスネットワーク
(51)【国際特許分類】
F17D 5/02 20060101AFI20220218BHJP
G01M 3/28 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
F17D5/02
G01M3/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021537856
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 IB2019060290
(87)【国際公開番号】W WO2020136475
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521234870
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・エアパワー・ナームロゼ・ベンノートシャープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・グエンス
(72)【発明者】
【氏名】エブラヒム・ルアーローディ
【テーマコード(参考)】
2G067
3J071
【Fターム(参考)】
2G067AA14
2G067BB04
2G067BB22
2G067BB36
2G067CC04
2G067DD05
2G067EE08
2G067EE09
2G067EE15
3J071AA02
3J071CC07
3J071EE19
3J071EE24
3J071EE25
3J071EE37
3J071EE38
3J071FF01
(57)【要約】
供給源(6)、コンシューマ(7)、センサー(9a、9b、9d)を備えるガスネットワーク内の漏れ(12)を検出するための方法が提供され、この方法は、センサー(9a、9b、9c、9d)の第1および第2のセットの測定値間の物理モデルを決定するトレーニングまたは推定段階(15)と、センサーの第1および第2のセットの測定値間の確立された物理モデルがガスネットワーク(1)内の漏れ(12)を予測するために使用される運転段階(18)とを含むことを特徴とし、運転段階(18)は、センサー(9a、9b、9c、9d)の第1のグループからの読み出し値から、物理モデルを使用してセンサーの第2のグループの値を計算するステップと、計算された値の差をセンサーの第2のグループの読み出された値により決定するステップと、残差値分析に基づき、ガスネットワーク(1)内に漏れ(12)があるかどうかを決定するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下または真空下のガスネットワーク(1)内の漏れ(12)を検出し、定量化するための方法であって、前記ガスネットワーク(1)は
- 圧縮ガスまたは真空の1つもしくは複数の供給源(6)と、
- 圧縮ガスの1つもしくは複数のコンシューマ(7)もしくはコンシューマ領域、または真空アプリケーションと、
- 前記ガスまたは真空を前記供給源(6)から前記コンシューマ(7)、コンシューマ領域、またはアプリケーションに輸送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)と、
- 前記ガスネットワーク(1)内の異なる時刻および位置での前記ガスの1つまたは複数の物理的パラメータをもたらす複数のセンサー(9a、9b、9d)とを備え、
前記ガスネットワーク(1)は、1つもしくは複数の供給源(6)、コンシューマ(7)、コンシューマ領域またはアプリケーションの状態またはステータスを記録することができる1つまたは複数のセンサー(9c)も設けられ得ることと、前記方法は
- 前述のセンサー(9a、9b、9c、9d)が使用前にキャリブレートされる起動段階(14)と、
- 推定アルゴリズムを使用して物理法則に基づきセンサー(9a、9b、9c、9d)の第1のセットの測定値とセンサー(9a、9b、9c、9d)の第2のセットの測定値との間の物理モデルまたは数学的関係を決定するトレーニングまたは推定段階(15)と、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第1のセットの前記測定値とセンサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のセットの前記測定値との間の確立された物理モデルまたは数学的関係が、前記ガスネットワーク(1)内の漏れ(12)を予測するために使用される運転段階(18)とを含むこととを特徴とし、
前記運転段階(18)は、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の第1のグループを読み出すステップと、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第1のグループからの読み出し値から、前記物理モデルまたは数学的関係を使用してセンサー(9a、9b、9c、9d)の第2のグループの前記値を計算するか、または決定するステップと、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のグループの計算されるか、または決定された値を、センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のグループの読み出された値と比較し、それらの間の差を決定するステップと、
- 残差値分析に基づき、前記ガスネットワーク(1)内に漏れ(12)があるかどうかを決定するステップと、
- 漏れ(12)が検出された場合にアラームを発生させ、および/または漏れ率を生成し、および/または対応する漏れコストを生成するステップとを含む方法。
【請求項2】
センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第1のグループは、前記ガスネットワーク(1)内の異なる位置にある異なる圧力および/または差圧センサー(9b、9d)を備え、1つまたは複数の流量センサー(9a)および場合によっては複数のセンサー(9c)は前記供給源(6)、コンシューマ(7)、コンシューマ領域またはアプリケーションのステータスを決定することができ、センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のグループは、流量センサー(9a)を含み、前記運転段階(18)は、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第1のグループを読み出すステップと、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第1のグループの前記読み出し値から、前記物理モデルまたは数学的関係を使用してセンサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のグループの前記流量センサー(9a)の前記値を計算するか、または決定するステップと、
- センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のグループの前記流量センサー(9a)の前記計算されるか、または決定された値を、センサー(9a、9b、9c、9d)の前記第2のグループの前記流量センサー(9a)の読み出された値と比較し、2つの間の前記差またはその微分に基づき前記ガスネットワーク(1)内に漏れ(12)があるかどうかを決定するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサー(9a、9b、9c、9d)は、in-situ自己キャリブレーションによってキャリブレートされることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前述のセンサー(9a、9b、9d)は、前記ガスの物理的パラメータである圧力、差圧、温度、ガス速度、流量、湿度のうち1つまたは複数を測定できることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記運転段階(18)は、ある瞬間に一時的に中断されるか、または停止され、その後、前記運転段階(18)が再開される前に異なるセンサー(9a、9b、9c、9d)の測定値間の物理モデルまたは数学的関係を再定義するために、前記トレーニング段階(15)が再開されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記運転段階(18)のステップは、特定の時間間隔で順次的に繰り返されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
圧力下または真空下のガスネットワークであって、前記ガスネットワーク(1)は、少なくとも、
- 圧縮ガスまたは真空の1つもしくは複数の供給源(6)、
- 1つもしくは複数のコンシューマ(7)、圧縮ガスのコンシューマ領域、または真空アプリケーション、
- 前記ガスまたは真空を前記供給源(6)から前記コンシューマ(7)、コンシューマ領域、またはアプリケーションに輸送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)、
- 前記ガスネットワーク(1)内の異なる時刻および位置での前記ガスの1つまたは複数の物理的パラメータをもたらす複数のセンサー(9a、9b、9d)、が設けられ、
前記ガスネットワーク(1)は、さらに、
- 場合により、1つもしくは複数の供給源(6)、コンシューマ(7)、コンシューマ領域、またはアプリケーションの状態もしくはステータスを記録することができる1つまたは複数のセンサー(9c)と、
- 前記センサー(9a、9b、9c、9d)からデータを収集するためのデータ取得制御ユニット(10)と、
- 請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するためのコンピューティングユニット(11)とが設けられることを特徴とするガスネットワーク。
【請求項8】
前記センサー(9a、9b、9c、9d)のうちの少なくともいくつかは、供給源(6)、コンシューマ(7)、コンシューマ領域、またはアプリケーションとともに1つのモジュール内に一体化されることを特徴とする請求項7に記載のガスネットワーク。
【請求項9】
前記ガスネットワーク(1)は、漏れ(12)、漏れ率、漏れコスト、および可能な位置を表示するか、または信号化するためのモニター(13)をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載のガスネットワーク。
【請求項10】
前記コンピューティングユニット(11)は、クラウドベースのコンピューティングユニット(11)であり、これは前記ガスネットワーク(1)に、ワイヤレス方式で、またはワイヤレス方式を使わずに、接続されることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力下または真空下のガスネットワーク(gas network)内の漏れを検出するための方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ガスネットワーク内に生じる漏れを定量化することができることを意図されている。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、「ガス」は、たとえば、必ずというわけではないが、空気を意味する。しかし、窒素または天然ガスも可能である。
【0004】
圧力下のガスネットワークを監視するか、または制御するための方法は、すでに知られており、それによってこれらの方法は、注目するガスが圧縮可能であることにより流入流量は流出流量に必ずしも等しくない、長くてまっすぐなパイプラインに対してセットアップされる。
【0005】
これらの方法は、1つまたは複数のコンプレッサプラントが、圧力がかかったガスをコンシューマ(consumer)の複雑なネットワークに供給する圧力がかかっている複雑なガスネットワークには適さない、パイプラインが非常に長い、パイプラインがまっすぐであるなどの多数の仮定に基づく。
【0006】
また、米国特許第7.031.850 B2号および米国特許第6.711.502 B2号において説明されているように、最終コンシューマそれ自体の空気圧コンポーネントまたはツール内の漏れを検出する方法が定着している。最終コンシューマは、個別の最終コンシューマであり得るか、またはいわゆるコンシューマ領域または個別の最終コンシューマのグループを含み得る。
【0007】
発生源側の総漏れ率を推定するための方法は、たとえば、ドイツ特許第DE 20.2008.013.127 U1号およびドイツ特許第DE 20.2010.015.450 U1号からも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7.031.850 B2号
【特許文献2】米国特許第6.711.502 B2号
【特許文献3】ドイツ特許第DE 20.2008.013.127 U1号
【特許文献4】ドイツ特許第DE 20.2010.015.450 U1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような知られている方法の欠点は、供給源とコンシューマまたはコンシューマ領域との間の複雑なパイプラインネットワーク内の漏れを検出することができないことである。それに加えて、ガスまたは真空ネットワークのパイプラインのネットワークは、過小評価されるべきではない漏れの発生源である。
【0010】
本発明の目的は、この問題に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、圧縮ガスネットワーク内の漏れを検出し、定量化するための方法に関し、ガスネットワークは
- 圧縮ガスまたは真空の1つもしくは複数の供給源と、
- 圧縮ガスの1つもしくは複数のコンシューマ、もしくはコンシューマ領域、または真空アプリケーションと、
- ガスまたは真空を供給源からコンシューマ、コンシューマ領域、またはアプリケーションに輸送するためのパイプラインまたはパイプラインのネットワークと、
- ガスネットワーク内の異なる時刻および位置でのガスの1つまたは複数の物理的パラメータを決定する複数のセンサーとを含み、
ガスネットワークは、供給源、コンシューマ、コンシューマ領域、またはアプリケーションの状態(たとえば、オン/オフ)を示す追加のセンサーをさらに設けられ得ることと、この方法は、
- 前述のセンサーが使用されることになる任意の起動段階と、
- 推定アルゴリズムを使用して物理法則に基づきセンサーの第1のセットの測定値とセンサーの第2のセットの測定値との間の物理モデルまたは数学的関係が決定されるトレーニングまたは推定段階と、
- センサーの第1のセットの測定値とセンサーの第2のセットの測定値との間の確立された物理モデルまたは数学的関係が、ガスネットワーク内の漏れを予測するために使用される運転段階とを含むことを特徴とし、
運転段階は、
- センサーの第1のグループとセンサーの第2のグループとを読み出すステップと、
- センサーの第1のグループからの読み出された測定値から、物理モデルまたは数学的関係を使用してセンサーの第2のグループの値を計算するか、または決定するステップと、
- センサーの第2のグループの計算値またはいくつかの値を、センサーの第2のグループの読み出された値と比較し、それらの間の差を決定するステップと、
- 残差値分析に基づき、ガスネットワーク内に漏れがあるかどうかを決定するステップと、
- 漏れが検出された場合にアラームを発生させ、および/または漏れ率を生成し、および/または対応する漏れコストを生成するステップを含む。
【0012】
利点は、このような方法が、ガスネットワークそれ自体の中の漏れを知り、検出し、さらに定量化することを可能にすることである。
【0013】
言い換えると、この方法によって検出され、定量化される漏れは、圧縮ガスの供給源またはコンシューマ、すなわちコンプレッサプラントおよび空気圧ツールまたはコンポーネントにおける漏れに限定されず、ガスネットワークそれ自体のパイプライン内の漏れにも関わり得る。
【0014】
圧力下にあるガスネットワークの場合、外部への漏れが生じ、ガスが周囲に漏出することに留意されたい。真空下にあるガスネットワークでは、漏れは「内向き」に発生し、周囲空気がガスネットワーク内に入る。
【0015】
トレーニング段階では、知られている物理法則に基づき、また様々なセンサーの測定値を使用して、センサーのこのグループの間の数学的関係が確立される。
【0016】
これにより、推定アルゴリズムが使用される。
【0017】
これは、最初の場合にガスネットワーク内に漏れがないという仮定に基づく、言い換えると、ガスネットワークの正常な状況、いわゆる「ベースライン」に基づく。
【0018】
このようにして、センサーによって測定される異なるパラメータの間の関係を表す物理モデル、すなわち数学モデルが作成され得る。
【0019】
次いで、このモデルは、モデルの結果とセンサーの測定値とを比較することによってセンサーの将来の測定における不規則を即座に検出するために使用される。
【0020】
このようにして、漏れは、非常に素早く検出され、漏れが検出された場合に、対策が講じられ、漏れが閉鎖され得る。
【0021】
好ましくは、ある瞬間に運転段階が一時的に中断されるか、または停止され、その後、トレーニング段階が再開されて異なるセンサーの測定値間の物理モデルまたは数学的関係を再定義し、その後、運転段階が再開される。
【0022】
プロセス、すなわち供給源、パイプライン、コンシューマを含めたガスネットワークがシャットダウンされるのではなく、方法だけがシャットダウンされることに留意されたい。言い換えると、運転段階が一時的に中断されるか、または停止される場合に、供給源はそれでもコンシューマにガスまたは真空を供給する。
【0023】
運転段階を中断し、トレーニング段階を再開することには、物理モデルまたは数学的関係が更新されるという利点がある。
【0024】
これは、ガスネットワークまたはシステムの時間的に変化する挙動を考慮することを可能にし、したがって、漏れの検出は、ガスネットワークの変化する挙動に依存しない。これは、たとえば、エネルギー監査、ガスネットワークの拡張、および/またはネットワーク内の導入された閉塞の後に、漏れが検出され、対処される場合ある。この場合、検出システムは、新しい「ベースライン」またはゼロから始まる。
【0025】
本発明は、圧力下または真空下のガスネットワークにも関しており、ガスネットワークは、少なくとも、
- 圧縮ガスまたは真空の1つもしくは複数の供給源と、
- 圧縮ガスの1つもしくは複数のコンシューマ、もしくはコンシューマ領域、または真空アプリケーションと、
- ガスまたは真空を供給源からコンシューマ、コンシューマ領域、またはアプリケーションに輸送するためのパイプラインまたはパイプラインのネットワークと、
- ガスネットワーク内の異なる時刻および位置でのガスの1つまたは複数の物理的パラメータを決定する複数のセンサーとが設けられ、
ガスネットワークは、さらに、
- 場合により、1つもしくは複数の供給源、コンシューマ、コンシューマ領域、またはアプリケーションの状態またはステータスを記録することができる、1つまたは複数のセンサー、
- センサーからデータを収集するためのデータ取得制御ユニット、
- 本発明による方法を実行するためのコンピューティングユニットを設けられることを特徴とする。
【0026】
そのような配置構成は、本発明による方法を適用するために使用され得る。
【0027】
本発明の特徴をよりよく示すために、本発明による方法およびガスネットワークの多数の好ましい変更形態が、いかなる制限的な性質を有しない例により、添付図面を参照しつつ、以下に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明による方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1のガスネットワーク1は、主に、供給源側2と、コンシューマ側3と、両者の間のパイプライン5のネットワーク4とを含む。
【0030】
この場合のガスネットワーク1は、圧力下にあるガスネットワーク1である、すなわち、大気圧よりも高い圧力がある。
【0031】
ガスは、空気、酸素もしくは窒素、または任意の他の非毒性および/もしくは有害なガスもしくはガスの混合物であってもよい。
【0032】
供給源側2は、圧縮空気を生成する、多数の、この場合は3つの、コンプレッサ6を備える。
【0033】
コンプレッサ6は、圧縮空気乾燥機を収容することも可能である。
【0034】
コンシューマ側3は、圧縮空気の多数のコンシューマ7を含み、この場合も3つである。
【0035】
コンプレッサ6が、ガスネットワーク1の下流に配置され得ることも除外されない。これは、「ブーストコンプレッサ」と称される。
【0036】
圧縮空気は、パイプライン5のネットワーク4を通して、コンプレッサ6からコンシューマ7へと送られる。
【0037】
このネットワーク4は、ほとんどの場合に、パイプライン5の非常に複雑なネットワークである。
【0038】
図1は、このネットワーク4を極めて概略的に簡略化して示している。それに加えて、
図1の単純さを維持するために、ガスネットワーク1内の関連する遮断弁およびバイパス弁は明示的に示されていない。
【0039】
たいていの現実的な状況では、パイプライン5のネットワーク4は、コンシューマ7を互いに、またコンプレッサ6と、直列および並列に接続する多数のパイプライン5からなる。ネットワーク4の一部がリング構造を採用するか、または含むことは除外されない。
【0040】
これは、ガスネットワーク1が、追加のコンシューマ7またはコンプレッサ6を伴って時間をかけて拡張されることが多く、それによって、既存のパイプライン5の間に新たなパイプライン5が敷設されなければならず、延いてはパイプライン5が絡み合うことになるからである。
【0041】
ガスネットワーク1は、圧力容器8を備えるものとしてもよく、すべてのコンプレッサ6がこの圧力容器8の前にある。
【0042】
ガスネットワーク1の下流に1つまたは複数の圧力容器8があってもよいことは除外されない。
【0043】
それに加えて、フィルタ、セパレータ、アトマイザおよび/またはレギュレータなどのコンポーネント19も、ガスネットワーク1内に設けられ得る。これらのコンポーネント19は、様々な組合せで見つけることができ、圧力容器8の近くおよび個別のコンシューマ7の近くの両方で見つけることができる。
【0044】
図示されている例では、これらのコンポーネント19は、緩衝容器8の後、および個別のコンシューマ7の近くに設けられる。
【0045】
ネットワーク4は、また、ネットワーク4内の異なる配置で配置されている、多数のセンサー9a、9b、9c、9dを備える。
【0046】
この場合、1つの流量センサー9aが前述の圧力容器8の直後に留置され、すべてのコンプレッサ6によって供給される総流量qを測定する。コンプレッサ6の個別の流量が単独で測定されることも可能である。
【0047】
それに加えて、図は、ネットワーク4内の異なる配置での圧力を測定する、4つの圧力センサー9bを示している。
【0048】
圧力容器8内の圧力を測定するための圧力センサー9bは、大きな濃縮体積に対して「物質流入-物質流出」原理を補正するためにも推奨される。
【0049】
4つよりも多い、または4つよりも少ない圧力センサー9bが設けられ得ることも明らかである。それに加えて、流量センサー9aの数は、本発明の制限要因ではない。
【0050】
流量センサー9aまたは圧力センサー9bに加えて、追加的に、または代替的に、センサー9a、9bが、ガスの物理的パラメータである、差圧、ガス速度、温度、または湿度のうちの1つまたは複数を決定するために使用され得る。
【0051】
ガスの物理的パラメータを測定する前述のセンサー9aおよび9bに加えて、場合によっては、コンプレッサ6、コンシューマ7またはコンシューマ領域の近くに配置される、センサー9c、すなわち「状態センサー9c」も多数ある。好ましくは、これらのセンサー9cは、コンシューマ7それ自体の一部であり、これはスマートコンシューマと称される。
【0052】
次いで、これらのセンサー9cは、コンプレッサ6、コンシューマ7またはコンシューマ領域の状態またはステータス、たとえば、オンまたはオフを決定する。後で説明されるように、これらの状態センサー9cを使用することによって、推定アルゴリズムの交差感受性が低減されるものとしてよく、したがってこれらの推定アルゴリズムは信頼性が高くなる。
【0053】
また、センサー9a、9b、9cのうちの少なくともいくつかが、供給源6および/またはコンシューマ7とともに、1つのモジュール内に一体化されることも可能である。これは、「スマート接続空気圧デバイス」と称される。
【0054】
また、センサー9a、9bを使用することも可能であり、これらはコンシューマ7またはコンシューマ領域でガスの圧力または流量を測定する。また、コンシューマ7のところで、またはコンシューマ領域内で、ガスの温度を測定するセンサーを使用することも可能である。
【0055】
追加の、または代替的なセンサー9a、9bのグループのものである前述の差圧センサー9dは、好ましくは、フィルタ、セパレータ、アトマイザ、および/またはレギュレータコンポーネント19の上に留置される。差圧センサー9dの数は、
図1に示されているのと異なり得ることは言うまでもない。
【0056】
追加の、または代替的なセンサー9a、9bのグループからのものである前述の湿度および温度センサーは、好ましくは、コンプレッサ6およびコンシューマ7の入口および/または出口に装着される。
【0057】
図示されている例では、前述の追加の、または代替的なセンサー9a、9bは、すべてがガスネットワーク1に含まれているわけではないが、これも可能であることは言うまでもない。確かに、より広範で複雑なガスネットワーク1では、そのようなセンサー9a、9bが使用され得るが、質量流量の代わりに体積流量のみが測定されるネットワーク1においても同様に使用され得る。
【0058】
本発明により、ガスネットワーク1は、前述のセンサー9a、9b、9c、9dからデータを収集するためのデータ取得制御ユニット10をさらに設けられている。
【0059】
言い換えると、センサー9a、9b、9c、9dは、ガスの物理的パラメータと、コンプレッサ6、コンシューマ7および/またはコンシューマ領域の状態とを決定するか、または測定し、このデータをデータ取得制御ユニット10に送信する。
【0060】
本発明により、ガスネットワーク1は、センサー9a、9b、9c、9dからのデータを処理するためのコンピューティングユニット11をさらに備えており、これによって、コンピューティングユニット11は、以下で説明されるように、本発明によりガスネットワーク1における漏れ12を検出し、定量化するための方法を実行することができる。
【0061】
前述のコンピューティングユニット11は、ガスネットワーク1の物理的部分である物理的モジュールであってよい。コンピューティングユニット11が物理的モジュールではなく、ガスネットワーク1にワイヤレス方式で接続され得るか、または接続され得ない、いわゆるクラウドベースのコンピューティングユニット11であることも除外され得ない。これは、コンピューティングユニット11またはコンピューティングユニット11のソフトウェアが「クラウド」内に配置されていることを意味する。
【0062】
この場合、ガスネットワーク1は、この方法を使用して検出された漏れ12を表示するか、または信号化するためのモニター13をさらに備える。
【0063】
ガスネットワーク1および本発明による方法の動作は、非常に単純であり、次の通りである。
【0064】
図2は、
図1のガスネットワーク1内の漏れ12を検出し、定量化するための方法の概略を示している。
【0065】
第1の段階14、すなわち起動段階14において、必要な場合に使用前にセンサー9a、9b、9c、9dがキャリブレートされる。他のセンサーがあれば、それらも使用前にキャリブレートされ得ることは言うまでもない。
【0066】
これは、センサー9a、9b、9c、9dがガスネットワーク1に留置されたときに1回だけ行われる。もちろん、センサー9a、9b、9c、9dが時間の経過とともに再度キャリブレートされ得ることもあり得る。
【0067】
好ましくは、センサー9a、9b、9c、9dは、動作中に、または、in-situ自己キャリブレーションを用いてキャリブレートされる。これは、ガスネットワーク1内のセンサー9a、9b、9c、9dが、すなわち、取り付けられた後に、キャリブレートされることを意味する。「動作中」または「in situ」とは、ガスネットワーク1からセンサー9a、9b、9c、9dを取り外すことなくキャリブレートすることを意味する。
【0068】
このようにして、センサー9a、9b、9c、9dを留置した後にのみキャリブレーションが実行されるので、センサー9a、9b、9c、9dの留置はその測定に影響を及ぼさないことを確認することができる。
【0069】
次いで、第2の段階15、すなわちトレーニング段階15が開始する。
【0070】
この段階では、センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループの測定値とセンサー9a、9b、9c、9dの第2のグループの測定値との間の物理モデルまたは数学的関係が、推定アルゴリズムを使用する物理法則に基づき決定される。コンプレッサ6、コンシューマ7またはコンシューマ領域から追加の状態センサー9c(たとえば、オン/オフ)を追加することによって、推定アルゴリズムのノイズ感度が低減され、推定アルゴリズムの信頼性を高めることができる。
【0071】
知られている物理法則に基づき、センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループとセンサー9a、9b、9c、9dの第2のグループとの間でモデルが作成され得る。
【0072】
センサー9a、9b、9c、9dのこの第1のグループは、好ましくはすべて、ガスの同じ物理的パラメータ、たとえば圧力pおよび/または圧力差dpを、ガスネットワーク1内の異なる配置で測定する。センサー9a、9b、9c、9dの第2のグループは、好ましくはすべて、ガスの同じ物理的パラメータ、たとえば、流量qを測定する。
【0073】
たとえば、モデルは、行列または同様のものなどの数学的関係からなり、そこには、なおも多数のパラメータまたは定数がある。
【0074】
これらのパラメータまたは定数は、対応するセンサー9a、9b、9c、9dを読み出し、推定アルゴリズムを使用することによって決定され得る。
【0075】
これは、一種のベースライン状況、または漏れ12のないガスネットワーク1の正常な状況に基づくものである。
【0076】
数学モデルは、パイプライン5の抵抗が変化せず、ネットワーク4のトポロジーが固定されているという仮定にも基づく。
【0077】
データ取得制御ユニット10は、センサー9a、9b、9c、9dを読み出し、これらのデータをコンピューティングユニット11に送信し、そこで、必要な計算が実行され、前述のパラメータまたは定数を決定することになる。
【0078】
パラメータまたは定数が決定された後、センサー9a、9b、9c、9dの2つのグループの間の数学的関係の形式で物理モデルが決定される。
【0079】
図示されている例では、第1の状況16は、
図2の右側に示されており、
図1に示されているように第2のグループが1つの流量センサー9aを含んでいる、第2の状況17は、
図2の左側に示されており、第2のグループが複数の流量センサー9aを含み得る。
【0080】
第2の状況17については、いくつかの流量センサー9aが、コンシューマ7またはコンシューマ領域の近くなど、ネットワーク4内に留置され、これによりセンサー9aの第2のグループを形成する。
【0081】
両方の場合のセンサー9a、9b、9c、9dの第1のグループは、ガスネットワーク1内の異なる配置にある異なる圧力センサー9bおよび/または差圧センサー9dと、場合によっては1つまたは複数の流量センサー9aとを含む。第2のグループの流量センサー9aは、第1のグループの流量センサー9aとは異なることに留意することが重要である。したがって、唯一の条件は、センサー9a、9b、9c、9dの2つのグループの断面が空でなければならないことである。
【0082】
両方の状況16、17において、物理モデルを決定する方法はほぼ同一である。
【0083】
センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループの測定値と第2のグループの測定値の間の数学的関係の形式の物理モデルは、ガスネットワーク1内の漏れ12を検出し、定量化するために運転段階18で使用され得る。
【0084】
運転段階18は、ガスネットワーク1の動作中、すなわち、コンプレッサ6がパイプライン5のネットワーク4を通して異なるコンシューマ7に圧縮ガスを供給するときに実行される。漏れ12を検出して定量化できることが重要なのは、ガスネットワーク1の動作中である。
【0085】
運転段階18は、前述の状況の両方に対して類似しており、これは
- センサー9a、9b、9cの第1のグループを読み出し、
- センサー9a、9b、9cの第1のグループからの読み出し値から、物理モデルまたは数学的関係を使用してセンサー9a、9b、9cの第2のグループの値を計算するか、または決定し、
- センサー9a、9b、9c、9dの第2のグループの決定された、または計算された値を、センサー9a、9b、9c、9dの第2のグループの読み出された値と比較し、それらの間の差を決定し、
- 残差値分析および場合によっては状態センサー9cに基づき、システム内に漏れ12がある場合に計算し、
- 漏れ12が場合によっては対応する漏れ流量および/または漏れコストとともに検出された場合にアラームを生成することである。
【0086】
また、ここでは、データ取得制御ユニット10は、センサー9a、9b、9cから異なるデータを収集し、コンピューティングユニット11は、前の段階15で確立された物理モデルを使用して必要な計算を実行する。
【0087】
運転段階18のこれらのステップは、好ましくは、特定の時間間隔で順次繰り返される。
【0088】
その結果、ガスネットワーク1の運転期間全体において、1回だけでなく、たとえば、ガスネットワーク1の起動中または起動直後に、漏れ12が検出され、追跡されるものとしてよい。
【0089】
前述の時間間隔は、ガスネットワーク1に応じて選択され、設定され得る。
【0090】
図2の右側に示されているように、前述の第1の状況16では、運転段階18は、
- センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループを読み出すステップと、
- センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループの読み出し値から、物理モデルまたは数学的関係を使用してセンサー9a、9b、9c、9dの第2のグループの前述の流量センサー9aの値を計算するか、または決定するステップと、
- この流量センサー9aの計算されるか、または決定された値を、この流量センサー9aの読み取り値と比較し、残差値分析を使用して、ガスネットワーク1内に漏れ12があるかどうかを決定するステップとを含む。
【0091】
この方法は、トレーニング段階15と運転段階18の両方において、流量センサー9aが1つだけであればよいという利点を有する。
【0092】
流量センサー9aは、一般的に、圧力センサー9bおよび/または差圧センサー9dよりも技術的に実現が難しく、より複雑で、より高価である。流量センサー9aの数を1つに減らすことによって、システムはより安価になる。
【0093】
ガスネットワーク1内の漏れ12を決定するために、最後のステップで、流量qの決定されるか、または計算された値が、状態センサー9cから来るあらゆる情報を考慮して流量センサー9aの読み取り値と比較される。
【0094】
これら2つの間の差がある閾値を超えた場合、これはガスネットワーク1内に漏れ12のあることを示している。
【0095】
この閾値は、事前に設定されるか、または選択され得る。
【0096】
漏れ12が検出されると、アラームが発生する。この場合、これはアラームを表示するモニター13の助けを借りて行われる。
【0097】
ガスネットワーク1のユーザは、このアラームに気付き、適切な措置を取ることができる。
【0098】
図2の右側に示されているように、前述の第2の状況17では、運転段階18は、
- センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループを読み出すステップと、
- センサー9a、9b、9c、9dの第1のグループの読み出し値から、物理モデルまたは数学的関係を使用してセンサー9a、9b、9c、9dの第2のグループの前述の流量センサー9aの値を計算するか、または決定するステップと、
- これらの流量センサー9aの計算されるか、または決定された値を、流量センサー9aの読み取り値と比較し、残差値分析に基づき、ガスネットワーク1内に漏れ12があるかどうかを決定するステップとを含む。
【0099】
(加重)和などの、差分またはその微分のうちの一方がある閾値を超えた場合、これはガスネットワーク1内に漏れ12のあることを示し、第1の状況と類似する方法でアラームが引き起こされる。
【0100】
この場合も、1つまたは複数の閾値が事前に設定されるか、または選択され得る。
【0101】
複数の流量センサー9aから始めると、この第2の状況17における方法は、漏れ12をより容易に特定できるという利点を有する。
【0102】
前述のように、運転段階のこれらのステップは、順次的に、また循環的に繰り返される。
【0103】
本発明の好ましい一変更形態において、ある瞬間に運転段階18が一時的に中断されるか、または停止され、その後、トレーニング段階15が再開されて異なるセンサーの測定値間の物理モデルまたは数学的関係を再定義し、その後、運転段階18が再開される。
【0104】
「ある瞬間に」は、たとえば週に1回、月に1回、年に1回にプリセットされている瞬間、またはユーザに合うようにユーザによって選択され得る瞬間と解釈されるべきである。
【0105】
物理モデルは、システムの可能な時間的に変化する挙動を考慮して更新される。
【0106】
これは、たとえば、関連する部品もしくはシールを交換することによって閉鎖されるネットワーク4内の漏れ12、ネットワーク4内の追加の閉塞、またはネットワーク4のトポロジーの変化を含むこともあり得る。
【0107】
図1の例では、圧力下のガスネットワーク1に関するものであるが、真空下のガスネットワーク1であってもよい。
【0108】
次いで、供給源側2は、真空の多数の供給源、すなわち、真空ポンプまたは類似のものを備える。
【0109】
この場合、コンシューマ7は、真空を必要とするアプリケーションで置き換えられている。
【0110】
さらに、この方法は、漏れがガスネットワーク1内に周囲の空気を導き入れることをもちろん考慮して、同じである。好ましくは、アラームを発生させるために他の好適な閾値が設定される。
【0111】
本発明は、例を用いて、図に示されている、実施形態に決して限定されるものではなく、本発明において請求されているような方法およびガスネットワークは、本発明の範囲を超えることなく、異なる変更形態において実施され得る。
【符号の説明】
【0112】
1 ガスネットワーク
2 供給源側
3 コンシューマ側
4 ネットワーク
5 パイプライン
6 コンプレッサ
7 コンシューマ
8 圧力容器
9a センサー、流量センサー
9b センサー、圧力センサー
9c センサー、状態センサー
9d センサー、差圧センサー
10 データ取得制御ユニット
11 コンピューティングユニット
12 漏れ
13 モニター
14 第1の段階、起動段階
15 トレーニング段階、トレーニングまたは推定段階
16 第1の状況
17 第2の状況
18 運転段階
19 コンポーネント
dp 圧力差
p 圧力
q 流量
【国際調査報告】