(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサのダイナミック温度較正
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20220218BHJP
【FI】
G01F1/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537944
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 US2019066715
(87)【国際公開番号】W WO2020139612
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(71)【出願人】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】アナンド ダバック
(72)【発明者】
【氏名】スリナス ラマスワミ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス フェルナンド レイノソ コヴァルビアス
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA10
2F035DA14
2F035DA19
(57)【要約】
コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス(106)が機械命令を格納し、機械命令は、一つ又は複数の中央処理装置(CPU)コア(102)によって実行されるとき、一つ又は複数のCPUコアに、第1の超音波トランスデューサ(95)及び第2の超音波トランスデューサ(98)を使用させて、現在の測定周波数を用いて流体の流れを測定させ、温度較正プロセスを実施させる。温度較正プロセスは第1の超音波トランスデューサに対する複数の電気信号の順次生成を含み、生成された電気信号は各々異なる周波数を有する。各周波数に対し、温度較正プロセスは第2の超音波トランスデューサからの信号の振幅の測定を含む。第2の超音波トランスデューサからの信号の測定振幅に基づいて、温度較正プロセスは新しい測定周波数の判定を含む。第1及び第2の超音波トランスデューサ(95、98)は新しい測定周波数を用いて流体の流れを測定するために用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械命令を格納するコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、一つ又はそれ以上の中央処理装置(CPU)コアによって実行されるとき、前記一つ又はそれ以上のCPUコアに、
現在の励起周波数を用いて流体の流れを測定するため、第1の超音波トランスデューサ及び第2の超音波トランスデューサを用いること、
温度較正プロセスを実行すること、及び
新しい励起周波数を用いて流体の流れを測定するために前記第1及び第2の超音波トランスデューサを用いること、
をさせ、
前記温度較正プロセスを実行することが、
前記第1の超音波トランスデューサに対する、各々異なるそれぞれの周波数を有する複数の電気信号を逐次生成することと、
各それぞれの周波数について、前記第2の超音波トランスデューサからの信号の振幅を測定することと、
前記第2の超音波トランスデューサからの信号の前記測定された振幅に基づいて、前記新しい励起周波数を判定することと、
を含む、
コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、前記一つ又は複数のCPUコアによって実行されるとき、前記機械命令が、前記一つ又は複数のCPUコアに、前記測定された振幅の中からピーク測定振幅を示す周波数を選択することを介して前記新しい励起周波数を判定させる、コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、前記一つ又は複数のCPUコアによって実行されるとき、前記機械命令が、前記一つ又は複数のCPUコアに、
前記測定された振幅の中からのピーク振幅に対応する第1の周波数を判定することと、
前記ピーク振幅に基づいて、前記第1の周波数より小さい第2の周波数を判定することと、
前記ピーク振幅に基づいて、前記第1の周波数より大きい第3の周波数を判定することと、
前記第2及び第3の周波数に基づいて前記新しい励起周波数を判定することと、
によって、前記新しい励起周波数を判定させる、
コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、前記一つ又は複数のCPUコアによって実行されるとき、前記機械命令が、前記一つ又は複数のCPUコアに、前記新しい励起周波数を前記第2及び第3の周波数の平均として判定させる、コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項5】
請求項3に記載のコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、前記一つ又は複数のCPUコアによって実行されるとき、前記機械命令が、前記一つ又は複数のCPUコアに、前記新しい励起周波数を前記第2及び第3の周波数の中央値(メジアン)として判定させる、コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項6】
請求項3に記載のコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、前記一つ又は複数のCPUコアによって実行されるとき、前記機械命令が、前記一つ又は複数のCPUコアに、一つ又は複数のレジスタの構成を介して前記複数の電気信号の各々を、
前記電気信号を生成するための複数のパルスを示す第1の値、
各パルスが第1の電圧レベルにある間の第1の時間期間を示す第2の値、及び
各パルスが第2の電圧レベルにある間の第2の時間期間を示す第3の値、
を含むように生成させる、
コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能ストレージデバイスであって、前記一つ又は複数のCPUコアによって実行されるとき、前記機械命令が、前記一つ又は複数のCPUコアに、M分毎に1回、前記温度較正プロセスを実施させ、Mが少なくとも5である、コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス。
【請求項8】
マイクロコントローラユニット(MCU)であって、
一つ又はそれ以上の中央処理装置(CPU)コアを含み、
前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、
現在の励起周波数を用いて流体の流れを測定するために第1の超音波トランスデューサ及び第2の超音波トランスデューサを用い、
前記第1の超音波トランスデューサについて、異なるそれぞれの周波数を各々有する複数の電気信号を順次生成し、
各それぞれの周波数について、前記第2の超音波トランスデューサからの信号の振幅を測定し、
前記第2の超音波トランスデューサからの前記信号の測定された振幅に基づいて、新しい測定周波数を判定し、
前記新しい励起周波数を用いて流体の流れを測定するために前記第1及び第2の超音波トランスデューサを使用するためである、
MCU。
【請求項9】
請求項8に記載のMCUであって、前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、前記測定された振幅の中からピーク測定振幅を示す周波数の選択を介して前記新しい励起周波数を判定する、MCU。
【請求項10】
請求項8に記載のMCUであって、前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、
前記測定された振幅の中からのピーク振幅に対応する第1の周波数を判定すること、
前記ピーク振幅に基づいて、前記第1の周波数より小さい第2の周波数を判定すること、及び
前記ピーク振幅に基づいて、前記第1の周波数より大きい第3の周波数を判定すること、及び
前記第2及び第3の周波数に基づいて前記新しい励起周波数を判定すること、
によって、前記新しい測定周波数を判定する、
MCU。
【請求項11】
請求項10に記載のMCUであって、前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、前記新しい励起周波数を判定するために、前記第2及び第3の周波数を合わせて平均する、MCU。
【請求項12】
請求項10に記載のMCUであって、前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、前記第2及び第3の周波数の中央値(メジアン)として新しい励起周波数を判定する、MCU。
【請求項13】
請求項10に記載のMCUであって、前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、
前記電気信号を生成するための複数のパルスを示す第1の値、
各パルスが第1の電圧レベルにある間の第1の時間期間を示す第2の値、及び
各パルスが第2の電圧レベルにある間の第2の時間期間を示す第3の値、
を含むよう、一つ又はそれ以上のレジスタの構成を介して前記複数の電気信号の各々を生成する、
MCU。
【請求項14】
請求項8に記載のMCUであって、
前記複数の電気信号を生成するために前記一つ又は複数のCPUコアによってプログラム可能である、プログラマブルパルス生成器、及び
前記第2の超音波トランスデューサからの前記信号をデジタル値に変換するためのアナログデジタルコンバータ、
をさらに含む、MCU。
【請求項15】
請求項8に記載のMCUであって、前記複数の電気信号の順次生成、前記振幅の測定、及び前記新しい励起周波数えの判定が、温度ベースの較正プロセスを含み、前記一つ又はそれ以上のCPUコアが、前記温度ベースの較正プロセスを繰り返し自動的に実施する、MCU。
【請求項16】
方法であって、
現在の励起周波数を用いて流体の流れを測定するために第1の超音波トランスデューサ及び第2の超音波トランスデューサを用いること、
前記第1の超音波トランスデューサについて複数の電気信号を順次生成することであって、各生成された電気信号がそれぞれ異なる周波数を有すること、
各それぞれの周波数について、前記第2の超音波トランスデューサからの信号の振幅を測定すること、
前記第2の超音波トランスデューサからの前記信号の前記測定された振幅に基づいて、新しい励起周波数を判定すること、
前記新しい励起周波数を用いて流体の流れを測定するための前記第1及び第2の超音波トランスデューサを用いること、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記新しい励起周波数を判定することが、前記測定された振幅の中からピーク測定振幅を示す周波数を選択することを含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記新しい測定周波数を判定することが、
前記測定された振幅の中からピーク振幅に対応する第1の周波数を判定すること、
前記ピーク振幅に基づいて、前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を判定すること、
前記ピーク振幅に基づいて、前記第1の周波数よりも大きい第3の周波数を判定すること、
前記第2及び第3の周波数に基づいて、新しい励起周波数を判定すること、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記新しい励起周波数を判定することが、前記第2及び第3の周波数を平均することを含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記新しい励起周波数を判定することが、前記第2及び第3の周波数の中央値(メジアン)を計算することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
流量計は、管を通る流体の流れを測定するために用いられる。流量計の中には、2つの超音波トランスデューサ間の流体の流れの下流方向で超音波信号が流体の流れに注入される超音波トランスデューサを用いるものがあり、絶対タイムオブフライト(TOF)が下流方向で判定される。別の超音波信号が上流方向で注入され、その方向のトランスデューサ間の絶対TOFも判定される。上流と下流方向間のTOFの違いは、流体の流れの速度を計算するために、管の断面面積、流量の知見とともに用いることができる。
【発明の概要】
【0002】
コンピュータ読み取り可能ストレージデバイスは機械命令を格納し、機械命令は、一つ又は複数の中央処理装置(CPU)コアによって実行されると、一つ又は複数のCPUコアに、第1の超音波トランスデューサ及び第2の超音波トランスデューサを使用させて、現在の測定周波数を用いて流体の流れを測定させ、温度較正プロセスを実施させる。温度較正プロセスは、第1の超音波トランスデューサについて複数の電気信号を順次生成することを含み、生成された電気信号はそれぞれ異なる周波数を有する。各周波数について、温度較正プロセスは、第2の超音波トランスデューサからの信号の振幅の測定を含む。温度較正プロセスは、第2の超音波トランスデューサからの信号の測定振幅に基づいた、新しい測定周波数の判定を含む。第1及び第2の超音波トランスデューサは、新しい測定周波数を用いて流体の流れを測定するために用いられる。
【0003】
種々の例の詳細な説明のため、ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【0005】
【
図2】超音波トランスデューサの周波数応答が少なくとも部分的に温度依存性であることを図示する。
【0006】
【
図3】温度ベースの較正プロセスの間に実施される周波数掃引を図示する。
【0007】
【
図4】温度ベースの較正プロセスの間に用いられるパルス列を図示する。
【0008】
【
図5】温度ベースの較正プロセスを実施するために使用可能な超音波トランスデューサ回路の例を示す。
【0009】
【
図6】温度ベースの較正プロセスのための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
流量計に用いられる少なくとも一部の超音波トランスデューサでは、トランスデューサの感度は周波数によって変化する。例えば、最大トランスデューサ感度は、特定の周波数であり得る。また、トランスデューサの感度は、温度と共に変化し得る。すなわち、トランスデューサの最大感度に対応する周波数は、流量計が監視している流量の流体の温度によって変化し得る。
【0011】
記載される例は、温度ベースの較正プロセスを実施する流量計のための回路(例えば、集積回路(IC))に関する。流量計は複数の超音波トランスデューサを含む。温度ベースの較正プロセスは、或る範囲の周波数を通してトランスデューサの1つを、より低い周波数からより高い周波数まで掃引すること(すなわち、或る範囲の励起周波数をトランスデューサに提供すること)、流量計内の別のトランスデューサからの信号の振幅を監視すること、及び周波数範囲内の最大感度に対応する周波数を判定することを含む。次いで、流量計は、流体の流量を測定する際に進む較正プロセスから判定される周波数を励起周波数として使用するように構成される。温度ベースの較正プロセスは、時間の経過と共に繰り返され得、それによって、温度の変化に応答してその励起周波数を動的に調整することができる。このように、温度ベースの較正プロセスは動的に行われる。すなわち、流量計は管内の流体の流れの流量測定をするために用いられている。
【0012】
図1は、流量計100の例を示す。例示の流量計100は、一つ又は複数の中央処理装置(CPU)コア102、超音波トランスデューサ(UST)回路104、ストレージ106、及びディスプレイ108を含む。ここで用いられる「CPUコア」(単数)とは、単一のCPUコア又は複数のCPUコアを指す。一実装において、流量計100は、一般的な半導体基板上の集積回路として製造されるマイクロコントローラユニット(MCU)を含む。流量計100はまた、超音波トランスデューサ95及び98を含んでいるか、又はそれに結合しており、これらは、矢印99の方向に流体が流れる管90に結合されて示されている。超音波信号リフレクタ92及び93の対が、この例では管90内に含まれる。UST回路104は、トランスデューサ95又は98のいずれかに電気信号を提供し、他方のトランスデューサから生じる信号を監視することができる。例えば、トランスデューサ95は、UST回路104からの電気信号を、管90内の流体の流れに注入される超音波信号に変換することができる。超音波信号は矢印96(下流方向)によって示されるように、リフレクタ92、次いでリフレクタ93で反射する。次いで、超音波信号は、トランスデューサ98によって受け取られ、再び電気信号に変換され、UST回路104に供給される。あるいは、UST回路104は、トランスデューサ98を送信トランスデューサとして使用し、トランスデューサ95を受信トランスデューサとして用いることによって、超音波信号を矢印97の方向(上流方向)で流体を介して通すことができる。いくつかの実装では、管90はリフレクタ92及び93を含む。
【0013】
UST回路104は、超音波信号があるトランスデューサから別のトランスデューサへ流体の流れを介して通るのに要する時間を測定する。トランスデューサ95、98に対して流体の流れがない状態では、流体内の超音波信号の速度は、管90内の流体のタイプの関数である。時間は距離/速度であり、したがって、超音波信号が下流方向(すなわち、トランスデューサ95から流体を通ってトランスデューサ98まで)で通過するのに必要な時間はL/(c+v)であり、ここで、Lはトランスデューサ95からリフレクタ92へ、リフレクタ93へ、及びトランスデューサ98へのあわせた距離であり、既知の値であり、cは監視されている流体に対する超音波の速度であり、vは方向99の流体の流れの速度である。上流方向(すなわち、トランスデューサ98からトランスデューサ95)では、超音波信号がトランスデューサ98からトランスデューサ95に通過するのに必要な時間はL/(c-v)である。時間値の差はDTであり、流体の速度は、
であり、ここで、T1はトランスデューサ95からトランスデューサ98までの測定時間であり、T2はトランスデューサ98からトランスデューサ95までの測定時間である。したがって、UST回路104を用いてT1及びT2を測定することによって、流体の流れの速度を計算することができる。管90の断面積も既知であり、トランスデューサ95と98との間の管の内部の容積は、計算して事前に知ることができる。管が流体で満たされていると仮定すると、流体流量は計算された速度に基づいて判定され得る。
【0014】
ストレージ106は、揮発性又は不揮発性メモリ(非一時的コンピュータ読み取り可能ストレージデバイス)を含み、ファームウェア(機械命令)111を含む。ファームウェア111は、一つ又は複数のCPUコア102によって実行可能である。ファームウェア111の実行時、CPUコア102はUST回路104と相互作用して、(a)管90内の流体の流量を判定し、(b)管90内の流体の現在の温度が与えられた場合の流量を測定するために使用する励起周波数を判定するための温度較正プロセスを実施する。いくつかの実装では、温度較正プロセスは、周期的に(例えば、5分毎、10分毎など)、及び、流量判定の間に(流量評価と干渉しないように)実実施される。ディスプレイ108は、流量、状態等を表示するためにCPUコア102によって用いられ得る。
【0015】
図2は、超音波トランスデューサに対する2つの例示の周波数応答曲線202及び204を示す。各曲線202、204は、周波数の或る範囲にわたる超音波信号の受領に応答して、トランスデューサによって生成される電気信号の振幅を表す。トランスデューサが受信する超音波信号の振幅は、各周波数で同じである。トランスデューサは、受信した超音波信号に基づいて電気的出力信号を生成する。各曲線202、204は、トランスデューサからの電気的出力信号の振幅が周波数によって変化することを示している。振幅応答は、曲線202では周波数Fm1で最大であり、曲線204では周波数Fm2で最大であり、周波数応答曲線202は、トランスデューサが動作する1つの温度についての超音波トランスデューサの周波数応答を表し、振幅応答204は、別の周波数での同じトランスデューサの周波数応答を表す。見てのとおり、ピーク振幅(最大感度)は温度の関数である。本明細書に記載される温度較正プロセスは、所与の流体温度に対するピーク振幅を判定し、流量を判定するために対応する周波数を使用する。
【0016】
再び
図1を参照すると、UST回路104は、一つ又は複数のレジスタを含むレジスタセット110を含む。少なくとも幾つかのレジスタは、CPUコア102によって構成可能及び/又は読み出し可能である。一実装において、CPUコア102は、UST回路104がトランスデューサ95、98のうちの1つに対して生成すべき周波数を示す一つ又は複数の値を用いてレジスタセット110をプログラムする。温度較正プロセスの間、CPUコア102は、第1の周波数から第2の周波数への周波数の範囲を通して順に行う。第1の周波数は第2の周波数よりも低くてもよく、又はその逆であってもよい。すなわち、周波数掃引は、より低い周波数からより高い周波数へ、又はより高い周波数からより低い周波数へとし得る。周波数の範囲は、管90内の流体の現在の温度が提供されたときの最大トランスデューサ感度に対応するであろう励起周波数を含むのに充分に広くなければならない。一例では、第1の周波数は160KHzであり、第2の周波数は260KHzである。
【0017】
各周波数について、CPUコア102は、レジスタセット110に或る値を構成する。UST回路104は、その値を用いて、CPUコア102によってプログラムされた値に対応する周波数を有する電気信号を生成する。一例では、UST回路は、パルス列の或る特定された数のパルスとして、かつ特定の周波数で、電気信号を生成する。CPUコア102は、UST回路104が生成する周波数及びパルスの数(例えば、10パルス)を符号化する値をレジスタセット110にプログラムする。
【0018】
次いで、UST回路104はトランスデューサ95、98のうちの1つに対して所望の電気信号を生成し、それによって超音波信号を生成する。どちらのトランスデューサが励起トランスデューサとして用いられるかは問題ではない。UST回路104は、他方のトランスデューサから信号を受け取り、その信号の振幅に比例する値を判定する。次に、UST回路104は、判定された振幅を、例えば、ストレージ106に格納する。次に、CPUコア102は、種々の値をレジスタセット110にプログラムして、UST回路104に異なる周波数で励起電気信号を発生させる。得られたトランスデューサ振幅は、その励起周波数を示す値とともにストレージ106に格納される。このプロセスは、第2の周波数に達するまで繰り返される。隣り合う周波数ステップ間の分離は、応用例固有である。一例では、160KHzから260KHzまでの周波数が1KHzステップで較正プロセスの間に用いられる。
【0019】
図3は、較正プロセスが行われたときの管90内の流体の温度について、第1の周波数FIと第2の周波数F2との間の励起周波数について求めた振幅302の一例を示す。周波数Fmは、一般に、最大振幅305に対応する周波数を指定する。F1は、最大振幅での周波数についての最低予測値よりも低く設定されるべきであり、F2は、周波数掃引が管90内に存在し得る任意の流体温度についての最大振幅での周波数を確実に含むように、最大振幅での周波数についての最高予測値よりも大きく設定されるべきである。
【0020】
図1におけるCPUコア102は、ストレージ106から振幅値を読み戻し(すべての振幅値が取得され、格納された後、又は各振幅値が格納された後のいずれか)、ピーク振幅(すなわち最大感度)に対応する励起周波数を判定する。一実装において、CPUコア102が、ストレージ106に格納された振幅値の中から最大振幅値を判定し、次に、その値に関連する周波数を、前に進む流量を判定する際に使用する励起周波数として選択する。
【0021】
他の実装において、CPUコア102が、周波数掃引の間に判定された振幅302の中から最大振幅を識別する。CPUコア102は、各振幅をデシベル(dB)に変換し、例えば、10×log(振幅)とし、最大のdB値からXdBを減算する。一例では、XdBは1dBである。次に、CPUコア102は、最大のdB値よりもX小さいdB値に対応する2つの周波数を判定する。
図3は、これらの周波数をF_下側及びF_上側として図示している。CPUコア102は、F_下側及びF_上側に基づいて、流量測定に使用する励起周波数を判定する。例えば、CPUコア102は、F_下側とF_上側を合わせて平均することができる。別の例において、CPUコア102は、F_下側及びF_上側の中央値(メジアン)を励起周波数として計算する。
【0022】
上述したように、UST回路104は、特定の周波数でのパルス列の複数のパルスとしてトランスデューサ95、98に提供されるべき電気信号を生成する。
図4は、パルス列400の例を示す。パルス列400はN個のパルス402を含み、ここで、Nは一つ又はそれ以上である。一例では、Nは10である。パルス列の各サイクルは、時間値TU及びTLによって特徴付けられる。ここで、TUはパルスがより高い電圧レベルにある時間であり、TLはパルスがより低い電圧値にある時間である。各サイクルの周期は、TU+TLであり、周波数の逆数である。このように、所望の周波数がTUとTLとの合計を判定する。TUとTLとは等しくすることができるが、等しくする必要はない。TUとTLが等しい場合、得られるパルス列は50%のデューティサイクルを有するが、TUがTLより大きい場合はデューティサイクルは50%よりも大きく、TUがTLよりも小さい場合は50%よりも小さくなり得る。一例において、CPUコア102は、ターゲットのパルス列を定義するために3つの値で回路104をプログラムする。3つの値は、TU、TL、及び、パルス列のパルス402の数を含む。
【0023】
図5は、CPUコア102、ストレージ106、及び超音波トランスデューサ96及び98に結合されたUST104の例示の実装を示す。
図5の例におけるUST回路104は、プログラマブルパルス生成器(PPG)510、ドライバ520、マルチプレクサ530及び535、プログラマブル利得増幅器(PGA)540、アナログデジタルコンバータ(ADC)550、発振器(OSC)560、及び位相ロックループ(PLL)570を含む。CPUコア102は、所望のパルス列を規定する値を、PPG510に含まれているか又はPPG510にアクセス可能なレジセット110にプログラムする。発振器560が、外部共振器562から受け取った信号に基づいて、クロック565を生成する。外部共振器は、水晶共振器又はセラミック共振器を含み得る。発振器560からのクロック565は、PLL570への基準クロックとして提供され、PPG510へのクロック575を生成する。幾つかの例において、PLL570によって生成されるクロック575は、クロック565に位相ロックされるが、クロック565よりも高い周波数を有する。例えば、クロック565の周波数は8MHzであり得、クロック575の周波数は68~80MHzの範囲であり得る。
【0024】
PPG510は、クロック575を用いてパルス列を生成する。パルス列のパルスの数及びパルス列の周波数は、CPUコア102によってレジスタセット110に書き込まれた値(例えば、TU、TL、及びパルスの数)によって指示される。得られたパルス列は、トランスデューサ95、98のうちの1つを駆動するためにパルス列を条件付けするドライバ520に供給される。ドライバ520によって実施される条件は、電圧レベルシフト、増幅等を含み得る。
【0025】
本明細書に記載される温度較正プロセスに関して、トランスデューサの1つは超音波信号を生成するために用いられ、他方のトランスデューサが超音波信号受信トランスデューサとして機能する。マルチプレクサ530は、ドライバ520からパルス列を受信するために、トランスデューサ95、98のうちの1つを選択するように、制御信号CTL1によって構成される。この例におけるPPG510はCTL1を生成する。また、PPG510は、制御信号CTL2をアサートして、受信トランスデューサによって生成された電気信号をPGA540に供給するようにマルチプレクサ535を構成する。温度較正プロセスを実施するために、例えば、PPG510は、CTL1をアサートしてドライバ520をトランスデューサ95に電気的に結合し、それによって超音波信号502を生成し、また、CTL2をアサートしてトランスデューサ98をPGA540に電気的に結合する。
【0026】
検知トランスデューサからの信号は、マルチプレクサ535を介してPGA540に供給され、そこで信号が増幅される。次いで、増幅されたアナログ信号はADC550に供給され、ADC550は、増幅されたアナログ信号をデジタル表現に変換する。一実装において、ADC550がシグマデルタ変調器(例えば、3次シグマデルタ変調器)を含む。得られたデジタル値は、超音波トランスデューサによって受け取られた信号の振幅を示すものであり、例えば、ストレージ106に格納される。そして、CPUコア102は、デジタル値をストレージ106から読み出すことができる。上述したように、複数の励起周波数が用いられ、得られたデジタル値はストレージ106に格納される。CPUコア102は、得られたデジタル値に基づいて、使用する励起周波数を判定する。
【0027】
温度較正プロセスの以前の実行によって生成された励起周波数を用いて流量を判定するために、CPUコア102は、PGA540に供給されるべき他のトランスデューサの信号と共にまず一つのトランスデューサに供給されるパルス列を生成するようにPPG510を構成する。CPUコア102は、或る値をレジスタセット110に書き込んで、どのトランスデューサを用いて超音波信号を生成し、どのトランスデューサを超音波信号受信トランスデューサとして使用するかを指定することができる(例えば、超音波信号を生成するためにトランスデューサ95を用い、トランスデューサ98からの電気信号がPGA540に供給される)。AD変換器550からの得られたデジタル値は、ストレージ106に格納される。次いで、CPU102は、トランスデューサ95及び98の役割を逆にするために(例えば、超音波信号を生成するためにトランスデューサ98を用い、トランスデューサ95からの電気信号がPGA540に供給される)、レジスタセット110に値を書き込むことができる。PLL出力から導出されたタイマーを用いて、PPG510の開始時間とADCサンプリングの開始とを制御するシーケンサを駆動し得る。これら2つの事象間の差は、上流及び下流タイムオブフライト両方に対する静止オフセットを表す。ADC550によってデジタル化された信号を用いて、複数の多様な方法のいずれかを用いて、TOFを計算することができる。一例において、信号の包絡線が計算され、包絡線が所定の閾値と交差するときの時間が判定される。閾値は、信号の最大振幅に基づいて計算され得る。閾値を交差する信号の振幅を用いて信号の存在を判定される。
【0028】
図6は、温度較正プロセスの例を説明する方法を示す。温度較正プロセスは、CPU102がファームウェア111を実行し、USC回路104と相互作用することによって制御される。温度較正プロセスは、参照番号601によって示されるように、動作604~616を含む。動作602は、励起周波数の現在の値を用いて流量測定することを含む。現在の励起周波数は、温度較正プロセスの事前性能に従って判定されていてもよい。流量速度(したがって流量)を判定するためのUST回路104の使用は、上記で説明されている。
【0029】
604において、温度較正プロセスは、周波数掃引の一部として、初期周波数を選択することを含む。いくつかの実装において、初期周波数は、最大トランスデューサ振幅について予想される最低周波数よりも低い値を有する。他の実装において、初期周波数は、最大トランスデューサ振幅について予想される最高周波数よりも高い値を有する。初期周波数は、ファームウェア111を介して、選択されるか又は他の方式でCPUコア102にプログラムされる。
【0030】
606において、温度較正プロセスは、超音波トランスデューサ95、98のうちの1つについて、選択された周波数で電気信号を生成することを含む。場合によっては、この動作は、CPUコア102が、選択された周波数についてT1及びT2の値、ならびにパルスの回数を判定し、対応する値をUST回路104内のレジスタセット110に書き込むことを含む。次いで、PPG510は、マルチプレクサ530(PPG510からのCTL1によって制御される)を介してトランスデューサの1つ(例えば、トランスデューサ95)に提供されるプログラマブルパルス列を生成する。
【0031】
608において、他方のトランスデューサ(例えば、トランスデューサ98)によって生成された電気信号の振幅が測定される。この動作は、検出された信号をPGA540によって増幅し、増幅された信号をADC550によってデジタル表現に変換することによって実施され得る。得られたデジタル値はストレージ106に格納される(610)。
【0032】
温度較正プロセスは、周波数掃引を実装し、したがって、612において、CPU102が、別の周波数が周波数掃引に用いられるべきままであるか否かを判断する。一例では、周波数掃引は、160KHzと260KHzとの間の1KHz刻みの周波数を含む。こういった周波数は、幾つかの例において昇順又は降順で用いられるが、他の例において昇順又は降順以外の順で用いられてもよい。別の周波数が用いられるべきままである場合、掃引における次の周波数が614で選択され、プロセスは動作606で反復する。周波数掃引の範囲内の全ての周波数が振幅値を生成するために用いられると、616において、温度較正プロセスは、振幅のデジタル値表現に基づいて将来の流量測定のために用いる新しい周波数を判定する。使用する励起周波数を判定する方法の例は、上記で提供されている。新たに判定された励起周波数は、次にCPU102がUST回路104を用いて流量速度(速度)を判定する620で用いられる。
【0033】
或る場合において、温度較正プロセス601は、連続する流量測定値のすべての対の間で実施される。他の場合において、温度較正プロセス601は連続した流量測定値の対の間で実施されるが、必ずしも連続した流量測定値のすべての対の間で行われるわけではない。例えば、流量測定は1分間隔で実施され得るが、温度較正プロセスは、5分間隔又は10分(又は他の)間隔で実施される。場合によっては、温度較正プロセスは、少なくとも5分間隔である間隔で行われる。
【0034】
本明細書において、「結合する」という語は、間接的又は直接的な有線又は無線接続のいずれかを意味する。したがって、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は直接的接続を介するものであり得、又は他のデバイス及び接続を介した間接的接続を介するものであり得る。「に基づく」という記載は、「少なくともに部分的に~に基づく」ことを意味する。したがって、XがYに基づく場合、Xは、Y及び任意の数の他の要因の関数とし得る。
【0035】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
【国際調査報告】