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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】米及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20220218BHJP
   A23L 33/21 20160101ALN20220218BHJP
【FI】
A23L7/10 A
A23L33/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537972
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2019129325
(87)【国際公開番号】W WO2020135757
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811642236.X
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514297958
【氏名又は名称】▲豊▼益(上海)生物技▲術▼研▲発▼中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】▲う▼ 娟
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 妍
(72)【発明者】
【氏名】高 霓思
(72)【発明者】
【氏名】徐 学兵
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE06
4B018MD14
4B018MD27
4B018MD50
4B018MD94
4B018ME01
4B018ME03
4B018MF04
4B018MF14
4B023LC02
4B023LC05
4B023LC09
4B023LE02
4B023LE12
4B023LE14
4B023LE16
4B023LE23
4B023LE30
4B023LG01
4B023LK02
4B023LK05
4B023LK06
4B023LK20
4B023LL04
4B023LP05
4B023LP08
4B023LP20
4B023LQ01
(57)【要約】
本発明は、アミロース溶出率が1.5%未満、糊化エンタルピー値が3.5~8.0J/gである米及びその調製方法を提供する。前記米の調製方法は、原料として通常の米を使用し、媒体として水中油型エマルジョンを使用して米を浸漬、超高圧処理する。前記米を熟成処理、蒸し煮処理することにより得られた米飯は、乳香の風味があり、特に遅消化性澱粉の含有量が45%以上で、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出されるという特徴があり、糖尿病患者などの特別な人々に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米のアミロース溶出率が1.5%未満、好ましくは1.1%未満であり、糊化エンタルピーが3.5~8.0J/g、好ましくは4.5~6.5J/gであり、好ましくは、米のアミロース溶出率が0.9%未満、糊化エンタルピーが4.0~7.2J/gであることを特徴とする米。
【請求項2】
前記米は、任意の熟成処理、蒸し煮処理によって、澱粉の総重量に基づいて、遅消化性澱粉の含有量が45%以上であり、
好ましくは、前記熟成処理の温度が-10℃~10℃、好ましくは0℃~4℃であり、
好ましくは、前記熟成処理の時間が2~7日、好ましくは3~5日であり、
好ましくは、前記蒸し煮処理は、米と水の重量比を1:1~1:2、好ましくは、1:1.3~1:1.5に調整し、15~20分間蒸し煮し、10~20分間蒸らすことを含むことを特徴とする請求項1に記載の米。
【請求項3】
媒体として水中油型エマルジョンを使用し、米を浸漬処理及び超高圧処理し、好ましくは、超高圧処理の後に熟成処理を行うことを特徴とする請求項1又は2の米の調製方法。
【請求項4】
前記水中油型エマルジョンは、油相及び水相を含み、前記油相は基質の油脂を含み、前記水相は水を含み、前記油相及び/又は水相は乳化剤を含み、
好ましくは、前記基質の油脂は、大豆油、菜種油、米油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、牛油又は乳脂肪から選択される1種又は複数種であり、好ましくは、大豆油、菜種油、ひまわり油、トウモロコシ油、米油、及び落花生油から選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記乳化剤は、HLB値が10以上である水相乳化剤から選択され、好ましくはショ糖エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、及びポリオキシエチレンモノステアレートから選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記油相と水相の重量比は10:90~70:30、好ましくは、20:80~40:60であり、
好ましくは、エマルションの総重量に基づいて、乳化剤の添加量は0.5~5%、好ましくは、1~2%であり、
好ましくは、前記水中油型エマルジョン液滴の粒子径は、50~1000nm、好ましくは、200~550nmであり、
好ましくは、前記水中油型エマルションの調製方法は、油相と水相を混合し、剪断し、均質化して水中油型エマルションを得ることを含み、
好ましくは、油相と水相を混合する前に、基質の油脂を撹拌し、40~80℃、好ましくは50~60℃に加熱し、任意に乳化剤を添加し、撹拌して溶解させ、油相を得、
好ましくは、油相と水相を混合する前に、水を40~80℃、好ましくは50~60℃に加熱し、任意に乳化剤を添加し、撹拌して溶解させ、水相を得、
好ましくは、油相と水相を混合する時に、油相を水相にゆっくりと添加し、
好ましくは、剪断速度は5000~20000rpm、好ましくは10000~15000rpmであり、
好ましくは、剪断時間は2~10分間、好ましくは2~5分間であり、
好ましくは、均質化圧力は20~60MPa、好ましくは30~50MPaであり、
好ましくは、均質化時間は、1~10分間、好ましくは3~5分間であることを特徴とする請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
水中油型エマルジョンを媒体として米原料を浸漬処理する場合、
米原料とエマルジョンとの重量比は、1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5であり、及び/又は
浸漬温度は10~50℃、好ましくは20~40℃であり、及び/又は
浸漬時間は10~120分間、好ましくは20~60分間であることを特徴とする請求項3又は4に記載の調製方法。
【請求項6】
超高圧処理の圧力は、200~600MPa、好ましくは400~600MPaであり、及び/又は
超高圧処理の温度は、5~40℃、好ましくは10~30℃であり、及び/又は
超高圧処理の時間は、10~60分、好ましくは20~40分間であり、及び/又は
真空包装条件下で超高圧処理を行い、及び/又は
熟成処理の温度は-10℃~10℃、好ましくは0℃~4℃であり、及び/又は
熟成処理の時間は2~7日、好ましくは3~5日であることを特徴とする請求項3に記載の調製方法。
【請求項7】
原料が請求項1又は2に記載の米を含み、遅消化性澱粉の含有量が45%以上である米飯。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の米を熟成処理し、さらに熟成処理後の請求項1又は2に記載の米を含む米飯原料を蒸し煮処理し、
好ましくは、熟成処理の温度は-10℃~10℃、好ましくは0℃~4℃であり、
好ましくは、熟成処理の時間は2~7日、好ましくは、3~5日であり、
好ましくは、蒸し煮処理は、米と水の重量比を1:1~1:2、好ましくは、1:1.3~1:1.5に調整し、15~20分間蒸し煮し、10~20分間蒸らすことを含むことを特徴とする請求項7に記載の米飯の調製方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の米、又は請求項3~6のいずれかに記載の調製方法により得られた米、又は請求項7に記載の米飯、又は請求項8に記載の調製方法により得られた米飯を含む食品又は食品原料であり、
好ましくは、前記食品はインスタント米飯、おにぎり、寿司、ちまき、又は餅である食品又は食品原料。
【請求項10】
前記水中油型エマルジョンは、油相及び水相を含み、前記油相は基質の油脂を含み、前記水相は水を含み、前記油相及び/又は水相は乳化剤を含み、前記油相と水相の重量比は10:90~70:30であり、エマルションの総重量に基づいて、乳化剤の添加量は0.5~5%であり、
好ましくは、前記基質の油脂は、大豆油、菜種油、米油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、牛油又は乳脂肪から選択される1種又は複数種であり、好ましくは、大豆油、菜種油、ひまわり油、トウモロコシ油、米油、及び落花生油から選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記乳化剤は、HLB値が10以上である水相乳化剤から選択され、好ましくはショ糖エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、及びポリオキシエチレンモノステアレートから選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記油相と水相の重量比は20:80~40:60であり、
好ましくは、エマルションの総重量に基づいて、乳化剤の添加量は1~2%であり、
好ましくは、前記水中油型エマルジョン液滴の粒子径は、50~1000nm、好ましくは、200~550nmであることを特徴とする米を浸漬するための媒体としての水中油型エマルジョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品加工の技術分野に属し、具体的に米及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界の糖尿病患者数は驚くべき速さで増加しており、特にII型糖尿病は、人の心身の健康に深刻な影響を与える3つの慢性疾患の1つになっている。国際糖尿病連合の最新の報告によると、世界中で2億人以上の糖尿病患者がいる。その中で、わが国には約3000万人の患者と4000万人の耐糖能以上者がいる。わが国は、既に世界最大の糖尿病人口を持つ国になった。如何に糖尿病を予防および管理するのは我が国で最も重要な公衆衛生問題の1つになっている。わが国で最も重要な主食である米は、高血糖反応を引き起こしやすく、糖尿病患者の血糖値のコントロールには不利である。
【0003】
この問題について、専門家や学者たちは食後の血糖値を調節できる米の主食を次々と開発してきた。例えば、中国特許出願CN105360889Aは、血糖低下効果を達成するために、葛根、ジャノヒゲなどのさまざまな中国の漢方薬成分を使用する血糖降下米飯を開示している。丁慧ら(瀋陽農業大学学報,2017,48,42-54)は、そばアルカリが豊富なそば米と米を使用して、食後の血糖調節を促進する複合米飯を調製し、味がよく、健康に良い主食プログラムを人々に提供するが、当該方法にはそばの種類に一定の要件がある。王嫻ら(食品化学,2018,11,60)は、イヌリン、大豆多糖類、オートブランなどの血糖低下機能を持つ補助材料を、米の原料粉末に追加して複合米を調製したが、イヌリンの添加量が5%を超えると、その蒸し煮損失率が大幅に増加し、また、大豆多糖類及びオートブランの添加は複合米の明るさを低下させる。柳嘉ら(現代食品技術,2018,3,19-24)が裸麦、オーツ麦などの粗粒や雑穀を押し出し、再結合して作った米は、低炭水化物、高食用繊維、及び高タンパク質などの特徴を有する。上記の方法はすべて、追加の機能性成分の添加を必要とし、製造コストが増加し、さらに、これらの成分は、米飯の味、風味、食感などに悪影響を与える可能性がある。
【0004】
米の主成分は澱粉で、人体内にアミラーゼの作用でブドウ糖に分解されてエネルギーを供給し、その消化特性は、糖尿病患者の糖代謝と密接に関連している。Englystらは、澱粉の人体での消化とブドウ糖の放出の速度に応じて、澱粉を易消化性澱粉(RDS,rapid digestiable starch,20分で消化)、遅消化性澱粉(SDS,slowly digestiable starch,20~120分で消化)、および難消化性澱粉(RS,resisitant starch,120分後に消化)の3種類に分けた。SDSは、RDSと比較して、食後の血糖値の急激な上昇や低下を引き起こすことなく、食後の血糖値のゆっくりとした上昇を維持し、長期間安定した血糖値を維持することができ、糖尿病、心血管疾患及び肥満の患者の状態の調節と管理に対して有利である。従来の米飯の澱粉は、主にRDSの易消化性澱粉の形で存在し、小腸で消化吸収されやすく、血糖値が急に上昇するため、糖尿病患者の消費に向いていない。本願の発明は、血糖値のゆっくりとした増加を制御するために他の機能性成分を追加することなく、米飯中のSDS遅消化性澱粉の含有量を増やすための物理的手段のみを使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、米及びその調製方法を提供することを目的とし、当該方法は、原料として通常の米を使用し、媒体として水中油型エマルジョンを使用して米を浸漬、超高圧処理し、超高圧処理後の米を熟成、蒸し煮、蒸らして、乳香の風味があり、特に遅消化性澱粉の含有量が45%以上で、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出されるという特徴があり、糖尿病患者などの特別な人々に適している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の観点では、米を提供する。
【0007】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米のアミロース溶出率は、1.5%未満、好ましくは1.1%未満または0.9%未満である。
【0008】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米の糊化エンタルピーは3.5~8.0J/g、好ましくは4.5~6.5J/gである。
【0009】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米の糊化エンタルピーは4.0~7.2J/gである。
【0010】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米は、熟成されていなく、かつ熟成処理、蒸し煮処理の後に遅消化性澱粉の含有量が45%以上である。
【0011】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米は、熟成されており、かつ蒸し煮処理の後に遅消化性澱粉の含有量が45%以上である。
【0012】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記熟成処理には、超高圧処理後の米の乳濁液を排出し、熟成処理を実施することが含まれ、熟成温度は-10℃~10℃、好ましくは0℃~4℃であり、熟成時間は2~7日、好ましくは3~5日である。
【0013】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記蒸し煮処理には、蒸し煮、蒸らしが含まれ、即ち、米/水の重量比を1:1~1:2、好ましくは1:1.3~1:1.5に調整して15~20分間蒸し煮した後に、10~20分間蒸らして、米飯を得る。
【0014】
本発明の第二の観点では、前記米の調製方法を提供する。
【0015】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米の調製方法には、媒体として水中油型エマルジョンを使用し、米を浸漬処理及び超高圧処理することが含まれている。
【0016】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記水中油型エマルジョンは、油相及び水相を含み、前記油相は基質の油脂を含み、前記水相は水を含み、油相及び/又は水相は乳化剤を含む。
【0017】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記基質の油脂は、大豆油、菜種油、米油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、牛油又は乳脂肪から選択される1種又は複数種の混合物であり、好ましくは、大豆油、菜種油、ひまわり油、トウモロコシ油、米油、及び落花生油から選択される1種又は複数種の混合物などの室温で液状の油脂である。
【0018】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記乳化剤は、HLB値が10以上である水相乳化剤から選択され、好ましくはショ糖エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンモノステアレートのうちの1種又は複数種である。
【0019】
1つ又はいくつかの実施形態において、エマルションの総重量に基づいて、乳化剤の添加量は0.5~5%、好ましくは1~2%である。
【0020】
1つ又はいくつかの実施形態において、油相と水相の重量比は10:90~70:30、好ましくは20:80~40:60である。
【0021】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記水中油型エマルションの液滴サイズは50~1000nm、好ましくは200~550nmである。
【0022】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記水中油型エマルションの調製方法は、基質の油脂と水を混合し、剪断し、均質化して水中油型エマルションを得ることを含む。
【0023】
1つ又はいくつかの実施形態において、基質の油脂を撹拌し、40~80℃、好ましくは50~60℃に加熱する。
【0024】
1つ又はいくつかの実施形態において、水を40~80℃、好ましくは50~60℃に加熱し、乳化剤を添加し、攪拌して溶解させる。
【0025】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記油相と水相の混合温度範囲は、40~80℃、好ましくは50~60℃であり、混合物は、高速剪断下で乳化され、好ましくは剪断速度が5000~20000rpmであり、剪断時間が2~10分間であり、より好ましくは、剪断速度が10000~15000rpmであり、剪断時間が2~5分間である。
【0026】
1つ又はいくつかの実施形態において、混合物を高速剪断にかけた後、高圧均質化によって水中油型エマルションが得られ、均質化圧力は20~60MPa、好ましくは30~50MPaであり、均質化時間は1~10分間であり、好ましくは3~5分間である。
【0027】
1つ又はいくつかの実施形態において、水中油型エマルションを媒質として米を浸漬処理する場合、米とエマルジョンの重量比は1:1~1:10、好ましくは1:1.5~1:5であり、浸漬温度は10~50℃、好ましくは20~40℃であり、浸漬時間は10~180分間、好ましくは20~60分間である。
【0028】
1つ又はいくつかの実施形態において、水中油型エマルションを媒質として米を浸漬した後に、超高圧処理を行う。
【0029】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記超高圧処理は、水中油型エマルションに浸漬された米を超高圧装置に入れ、200~600MPa、好ましくは400~600MPaの圧力をかけ、圧力保持温度を5~40℃、好ましくは10~30℃とし、圧力保持時間を10~60分間、好ましくは20~40分間とすることを含む。
【0030】
1つ又はいくつかの実施形態において、水中油型エマルジョンに浸漬された米を真空包装し、超高圧装置に入れる。
【0031】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米を超高圧処理した後に、熟成処理を施す。好ましくは、熟成処理の温度は-10℃~10℃、より好ましくは0℃~4℃であり、熟成処理の時間は2~7日、好ましくは3~5日である。
【0032】
本発明の第三の観点では、米飯を提供する。
【0033】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米飯のアミロース溶出率は、1.5%未満、好ましくは1.1%未満であり、糊化エンタルピー値は3.5~8.0J/g、好ましくは4.5~6.5J/gであり、遅消化性澱粉の含有量は45%以上である。
【0034】
本発明は、さらに上記米飯の調製方法を提供する。
【0035】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米飯は、本発明の米を含む材料を原料として使用する。
【0036】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記米飯の調製方法は、本発明のいずれか1つの実施形態に記載の米の調製方法により調製された米を米飯原料として使用することを含む。
【0037】
1つ又はいくつかの実施形態において、本発明で前処理により得られた米を原料として使用し、蒸し煮処理を行う。本発明において、前処理には、本発明のいずれか1つの実施形態に記載の浸漬処理、超高圧処理が含まれる。
【0038】
1つ又はいくつかの実施形態において、前記蒸し煮処理には、米と水の重量比を1:1~1:2、好ましくは1:1.3~1:1.5に調整し、15~20分間蒸し煮した後に、10~20分間蒸らして、米飯を得ることが含まれる。
【0039】
1つ又はいくつかの実施形態において、蒸し煮処理の前に熟成処理を行い、熟成処理の温度は-10℃~10℃、好ましくは0℃~4℃であり、熟成処理の時間は2~7日、好ましくは3~5日である。
【0040】
本発明で前処理により得られた米、又は蒸し煮た後に得られた米飯は、米製品のような食品の調製の様々な側面に適用することができ、インスタント米飯、おにぎり、寿司、ちまき、餅などの米製品が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0042】
通常の米を水中油型エマルジョンによって室温、超高圧で浸漬し、さらに熟成処理を行い、米のアミロース溶出率が浸漬プロセス中に低下し、蒸し煮処理の後に米飯における易消化性澱粉(RDS)の含有量が大幅に減少し、遅消化性澱粉(SDS)の含有量が45%以上に増加する。本発明によって提供される米飯は、小腸で迅速に消化および吸収され、血糖値の急激な上昇を引き起こすことなく、血糖の安定性の維持、糖尿病の予防及び管理に明らかな効果を有する。当該米飯は、利便性、栄養及び機能を考慮しているだけでなく、現代の食品技術開発のトレンドに適合し、消費者の健康ニーズにも応える。
【発明を実施するための形態】
【0043】
当業者が本発明の特徴及び効果を理解できるようにするために、以下、明細書及び請求の範囲に記載されている術語及び用語について一般的な説明及び定義をする。特に明記しない限り、本文で使用されているすべての技術的及び科学的用語は、本発明の当業者によって理解される通常の意味を指し、矛盾する場合、本明細書の定義が優先するものとする。
【0044】
本明細書に記載及び開示される理論又はメカニズムは、正しいか間違っているかにかかわらず、いかなる方式でも本発明の範囲を制限するべきではない。即ち、本発明の内容は、いかなる特定の理論又はメカニズムによって制限されることなく実施することができる。
【0045】
本文では、数値範囲又はパーセント範囲の形式で定義された数値、数量、含有量、濃度などのすべての特徴は、単純に簡潔さと利便性のために使用されている。従って、数値範囲又はパーセント範囲の説明は、すべての可能なサブ範囲及び範囲内の個々の値(整数及び分数を含む)をカバーし、具体的に開示したと見なされるものとする。本文では、特に明記されていない限り、パーセントは質量パーセントを指し、比率は質量比を指す。
【0046】
本文では、説明を簡潔にするために、各実施形態又は実施例における各々技術的特徴のすべての可能な組み合わせが説明されているわけではない。従って、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、様々な実施形態又は実施例における様々な技術的特徴を任意に組み合わせることができ、すべての可能な組み合わせは、本明細書の範囲内にある考慮されるべきである。
【0047】
本文では、特に明記しない限り、本文に記載されている原材料は当技術分野の従来の原材料を採用することができ、記載されているプロセスは当技術分野の従来の操作方法を採用することができ、当技術分野の当業者は本文に開示されている内容と先行技術によって合理的に確定できる。
【0048】
本発明によれば、米原料を媒体としての水中油型エマルジョンに浸漬し、超高圧処理して得られた米が熟成処理、蒸し煮処理によって得られた米飯は、乳香の風味があり、かつ遅消化性澱粉(SDS)の含有量が45%以上で、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出されるという特徴があり、糖尿病患者などの特別な人々に適している。上記の米原料を媒体としての水中油型エマルジョンに浸漬し、超高圧処理して得られた米は、アミロース溶出率が1.5%未満であり、糊化エンタルピー値が3.5~8.0J/gであるという特徴を有する。
【0049】
従って、本発明は、アミロース溶出率が1.5%未満であり、糊化エンタルピー値が3.5~8.0J/gである米を含む。本発明の米のアミロース溶出率は、好ましくは1.3%未満、さらに好ましくは1.1%未満である。本発明の米の糊化エンタルピー値は、好ましくは4.0~7.0J/gであり、より好ましくは4.5~6.5J/gである。
【0050】
本発明は、米を調製するための方法を含み、この方法は、米原料を媒体としての水中油型エマルジョンに浸漬処理し、超高圧処理することを含む。
【0051】
本発明の米を調製する場合、まず、媒体としての水中油型エマルジョンにより米原料を浸漬処理する。
【0052】
本発明に適した米原料は特に限定されるものではなく、例えば、通常の米を原料として使用することができる。
【0053】
本発明の米原料を浸漬するために使用される水中油型エマルジョンは、油相及び水相を含む。油相は通常、基質の油脂を含み、水相は水を含み、油相及び/又は水相は乳化剤を含んでいる。いくつかの実施形態において、水相は、乳化剤を含んでいる。
【0054】
本発明に適する基質の油脂は、大豆油、菜種油、米油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、牛油又は乳脂肪から選択される1種又は複数種の混合物であり、好ましくは、大豆油、菜種油、ひまわり油、トウモロコシ油、米油、及び落花生油から選択される1種又は複数種の混合物などの室温で液状の油脂である。いくつかの実施形態において、基質の油脂は大豆油、菜種油、及び/又は米油である。
【0055】
本発明に適する乳化剤は、HLB値が10以上である水相乳化剤から選択され、好ましくはショ糖エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、及び/又はポリオキシエチレンモノステアレートである。
【0056】
好ましい実施形態において、エマルションの総重量に基づいて、乳化剤の添加量は0.5~5%、例えば0.5~2%、1~2%などである。
【0057】
好ましい実施形態において、エマルションにおける油相と水相の重量比は10:90~70:30、例えば、20:80~70:30、30:70~70:30、20:80~40:60、30:70~40:60などである。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明の水中油型エマルジョン液滴の粒子径は、50~1000nm、例えば200~900nm、200~550nmなどである。
【0059】
本文に記載されている水中油型エマルジョンは、油相と水相を混合し、剪断し、均質化することにより調製されたものである。
【0060】
油相と水相を混合する前に、基質の油脂及び/又は水を40~80℃、好ましくは50~60℃に加熱し、油相及び/又は水相に乳化剤を添加し、撹拌して溶解させ、油相及び/又は水相が得られ、さらに油相と水相を混合する。いくつかの実施形態において、水相は乳化剤を含んでおり、油相と水相を混合する時に、油相を水相にゆっくりと添加する。
【0061】
水中油型エマルジョンを調製する場合、剪断速度は好ましくは5000~20000rpm、より好ましくは10000~15000rpmであり、剪断時間は好ましくは2~10分間、より好ましくは2~5分間であり、均質化圧力は好ましくは20~60MPa、より好ましくは30~50MPaであり、均質化時間は、好ましくは1~10分間、より好ましくは3~5分間である。
【0062】
本発明において、水中油型エマルジョンを媒体として米原料を浸漬処理する場合、米原料とエマルジョンとの重量比は、好ましくは1:1~1:10、例えば1:1~1:5、1:1.5~1:10、1:1.5~1:5、1:2~1:10、1:2~1:5などであり;浸漬温度は好ましくは10~50℃、例えば20~50℃、20~40℃などであり;浸漬時間は好ましくは10~120分間、例えば10~60分間、20~60分間、10~40分間、30~40分間などである。
【0063】
いくつかの実施形態において、水中油型エマルションに浸漬された米原料を真空包装した後、本文に記載の浸漬処理を行う。即ち、浸漬処理を真空包装条件下で行う。
【0064】
本発明の米を調製する場合、水中油型エマルションを媒体とし、米原料に対して本文に記載の浸漬処理を行い、さらに超高圧処理を行う。超高圧処理を行う場合、米原料はまだ水中油型エマルジョンに浸漬されており、つまり、超高圧処理は依然として水中油型エマルジョンを媒体として使用する。いくつかの実施形態において、真空包装条件下で超高圧処理を行う。
【0065】
本文において、超高圧処理は、当技術分野で周知の意味を有し、これは、処理される材料を密閉容器に入れ、流体媒体を介して超高圧(通常、100Mpaを超える圧力は、超高圧であると認められる)を加えることを指す。
【0066】
本発明において、超高圧処理を行う場合、超高圧処理の圧力は、好ましくは、200~600MPa、例えば400~600MPaなどであり;超高圧処理の温度は、好ましくは、5~40℃、例えば10~40℃、10~30℃などであり;超高圧処理の時間は、好ましくは10~60分、例えば10~40分間、20~40分間などである。
【0067】
本発明によれば、浸漬された米原料を超高圧処理して得られた米は、超高圧処理されない米と比較して、低い糊化エンタルピー値(3.5~8.0J/g)を有し、かつ遅消化性澱粉の含有量が高く(45%以上)、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出するという特徴を有する米飯を調製できる。
【0068】
媒体としての水中油型エマルジョンにより米原料を浸漬処理し、超高圧処理した後、エマルジョンを日常的に水切りして、本発明の米を得る。
【0069】
好ましい実施形態において、超高圧処理の後に、熟成処理も行われる。好ましくは、熟成処理の温度は-10℃~10℃、より好ましくは0℃~4℃であり、熟成処理の時間は2~7日、好ましくは3~5日である。本発明によれば、熟成処理の後、本発明の米は、アミロース溶出率が0.9%未満であり、糊化エンタルピー値が4.0~7.2J/gであり、かつ当該米を蒸し煮して得られた米飯は、遅消化性澱粉の含有量が高い(45%以上)である。
【0070】
本発明は、本発明の米の調製方法により得られた米を含む。
【0071】
本発明によれば、本発明では、水中油型エマルジョンを媒体として使用し、米原料を浸漬処理、超高圧処理し、任意に熟成処理を行うことにより得られた米は、1.5%未満のアミロース溶出率、及び3.5~8.0J/gの糊化エンタルピー値を有し、かつ遅消化性澱粉の含有量が高く(45%以上)、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出するという特徴を有する米飯を調製できる。一方、他の媒体を使用し、浸漬、超高圧処理により得られた米は上記性質を有さず、上記の特徴を有する米飯も調製できない。
【0072】
従って、本発明はさらに、米を浸漬するための媒体としての水中油型エマルジョンの使用を含む。好ましくは、水中油型エマルジョンは、本文の実施形態のいずれかに記載される通りである。好ましくは、前記使用は、水中油型エマルジョンを媒体として、米を、本文に記載されるように浸漬処理及び/又は超高圧処理することを含む。
【0073】
本発明は、さらに、アミロース溶出率が1.5%未満、好ましくは1.3%未満、より好ましくは1.1%であり、糊化エンタルピー値が3.5~8.0J/g、好ましくは4.0~7.0J/g、より好ましくは4.5~6.5J/gである米の調製における本発明の実施形態のいずれかに記載の水中油型エマルジョンの使用を含む。好ましくは、前記使用は、水中油型エマルジョンを媒体として、米を、本文に記載されるように浸漬処理及び/又は超高圧処理することを含む。
【0074】
本発明は、蒸し煮により得られた米飯の遅消化性澱粉の含有量が45%以上、好ましくは50%以上又は55%以上であり、易消化性澱粉(RDS)の含有量が45%以下、又は40%以下である米の調製における本発明の実施形態のいずれかに記載の水中油型エマルジョンの使用を含む。好ましくは、前記使用は、水中油型エマルジョンを媒体として、米を、本文に記載されるように浸漬処理、超高圧処理及び熟成処理することを含む。
【0075】
本発明は、遅消化性澱粉の含有量が45%以上である米飯を含み、その原料には、本発明の米が含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の米飯は、遅消化性澱粉の含有量が50%以上、又は55%以上である。いくつかの実施形態において、本発明の米飯は、易消化性澱粉(RDS)の含有量が45%以下、又は44%以下である。
【0077】
本発明は、本発明の米飯を調製する方法を含み、当該方法は、本発明の米を熟成処理し、次いで、熟成処理された米を含む米飯原料を蒸し煮することを含む。本発明の米が熟成処理された米である場合、当該米を蒸し煮する。
【0078】
本文では、熟成処理は、当技術分野で周知されている意味を有し、すなわち、米に分散した澱粉分子が再結合して結晶構造になるように、米を低温で一定期間保存することである。本発明では、熟成処理する場合、熟成処理の温度は、好ましくは-10℃~10℃、より好ましくは0℃~4℃であり、熟成処理の時間は2~7日、例えば2~6日、2~5日、3~6日、3~5日などである。
【0079】
本発明によれば、本発明の米を熟成処理した後に、蒸し煮処理することによって得られた米飯は、遅消化性澱粉の含有量が高く(45%以上)、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出するという特徴を有する。一方、熟成処理されない米は、上記特徴を有する米飯を調製できない。
【0080】
本発明では、蒸し煮処理は、蒸し煮ステップ及び蒸らしステップを含み、蒸し煮処理の場合、米原料と水との重量比は、好ましくは1:1~1:2、より好ましくは1:1.3~1:1.5とし、蒸し煮時間は好ましくは15~20分間とし、蒸らし時間は好ましくは10~20分間とする。
【0081】
本発明は、さらに本発明の米飯を調製する方法を含み、当該方法は、以下のステップを含む。
【0082】
(1)媒体としての水中油型エマルジョンによって米原料を浸漬処理し、超高圧処理して、超高圧処理された米が得られ;
(2)ステップ(1)で得られた超高圧処理された米を熟成処理し、熟成処理された米が得られ、及び
(3)ステップ(2)で得られた熟成処理された米を含む米飯原料を蒸し煮処理する。
【0083】
好ましくは、当該方法において、水中油型エマルジョン、浸漬処理、超高圧処理、熟成処理、及び蒸し煮処理は、本文の実施形態のいずれかに記載された通りである。
【0084】
本発明は、本発明の米飯の調製方法により得られた米飯を含む。
【0085】
本発明は、本発明の米又は米飯を含むか、或いはその原料が本発明の米又は米飯を含む、食品又は食品原料を含む。食品は、例えば急速冷凍調理製品、又はインスタント食品であり得る。食品原料は、例えば、急速冷凍原材料であり得る。好ましくは、本発明の食品は、インスタント米飯、おにぎり、寿司、ちまき、又は餅である。
【0086】
本文では、アミロース溶出率=浸漬媒体中のアミロース含有量/米原料中のアミロース含有量×100%、米原料中のアミロース含有量は、任意の処理を行わず、通常の米中のアミロース含有量を指し、浸漬媒体中のアミロース含有量は、媒体に浸漬された後の米(水中油エマルジョン又はその他の液体を媒体として浸漬処理及び/又は超高圧処理された米を含む)が室温で自然に1時間水切りされて、得られた媒体中のアミロース含有量を指す。
【0087】
本文では、前記製品米は、浸漬、高圧及び/又は熟成処理の後に得られた米を指す。
【0088】
以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものであり、本発明の内容は以下の内容に限定されるものではない。本発明の明細書における実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本発明に開示された実施形態に基づいて当業者が行った如何なる省略、置き換え、修正はすべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0089】
以下の実施例では、当分野の通常の機器や設備が使用されている。以下の実施例において特定の条件を示さない実験方法は、通常、従来の条件又はメーカー推奨の条件に従う。以下の実施例に使用される各種の原料は、特に断りのない限り、従来の市販品を使用する。本発明の明細書及び以下の実施例において、特に断りのない限り、「%」は重量パーセントを意味し、「部」はすべて重量部を意味する。
【0090】
本発明の以下の実施例及び比較例において採用する測定方法は、以下の通りである。
【0091】
エマルション粒子径の測定:
水中油型エマルションを希釈後、振とうして均一に混合し、レーザー式粒度分布計(Malvern,ZS90)を用いてエマルションの粒子径を測定した。各試料について、測定を3回繰り返して、その平均値を使う。
【0092】
アミロース溶出率の測定:
アミロース含有量は、GB/T 15683-2008を参照して測定される。
【0093】
媒体浸漬後のアミロース溶出率=浸漬媒体中のアミロース含有量/米原料中のアミロース含有量×100%、そのうち、米原料中のアミロース含有量は、任意の処理を行わず、通常の米中のアミロース含有量を指し、浸漬媒体中のアミロース含有量は、媒体に浸漬された後の米(各実施例及び比較例について、それぞれ、実施例1~5、比較例1~3、5の高圧処理後の米、比較例4の浸漬処理後の米である。)が室温で自然に1時間水切りされて、得られた媒体中のアミロース含有量を指す。
【0094】
製品米中のアミロース溶出率=製品米浸水中のアミロース含有量/製品米中のアミロース含有量×100%、そのうち、熟成後の米(各実施例及び比較例について、それぞれ、実施例1~5のステップ4、比較例1~4のステップ3で得られた米である。)について、一定重量になるまで凍結乾燥し、そのアミロース含有量を測定して製品米におけるアミロース含有量を求め、さらに、上記の一定重量になるまで乾燥した米100gを取り、500mLの脱イオン水を加え、1時間撹拌し、濾過し、分離して浸水が得られ、浸水中のアミロース含有量を測定する。
【0095】
糊化特性の測定:
処理後の米(各実施例及び比較例について、それぞれ、実施例1~5、比較例1~3、5の高圧処理、水切り後の米であり、比較例4の浸漬処理、水切り後の米である。)を凍結乾燥し、100メッシュに粉砕する。粉末試料2mgと脱イオン水4μLをるつぼに混合して密封し、示差走査熱量計(DSC,TA Q2000)に入れ、測定温度範囲を20~120℃とし、昇温速度を10℃/minとし、ブランクるつぼをコントロールとして、米粉の糊化曲線を求め、その糊化ピーク面積を積算して米粉の糊化エンタルピー値ΔH(J/g)を求める。
【0096】
易消化澱粉(RDS)及び遅消化澱粉(SDS)の含有量の測定:Englyst法を使用する。具体的には、谷物食品2gを取り、50mlの遠心管に入れる。ペプシン(250U/mg)0.05g、グアーガム0.05gを含む塩酸溶液(0.05M)10mlを遠心管に入れ、37℃で30分間反応させる。次に、0.25M酢酸ナトリウム溶液10ml、腸膵臓混合酵素5ml(ブタパンクレアチン8×USPの4.5ml、グルコアミラーゼ260U/mlの0.2ml、インベルターゼ300U/mgの0.3mlを含む)を加え、37℃恒温水槽に入れ、振とうして、20分間及び120分間加水分解した後、ブドウ糖キットを使用して505nm比色により、生成したブドウ糖含有量G20及びG120を測定する。
【0097】
すべてのサンプル遠心管を取り出し、十分にボルテックスしてサンプルを分散させる。沸騰水で30分間煮して、冷却する。7M KOHの10mlを加え、氷水浴中で30分間反応させる。反応液1mlを取り、0.5M酢酸10ml、グルコアミラーゼ(260U/ml)溶液0.2mlを加え、60℃で30分間反応させ、沸騰水で10分間煮やし、冷却、脱イオン水40mlを加え、グルコースキットを使用して505nm比色により、生成したブドウ含有量Gを測定する。
【0098】
計算式:RDS%=G20/(G120+G)×100%;
SDS%=(G120-G20)/(G120+G)×100%。
【0099】
実施例1
(1)エマルション媒体の調製:水237gを60℃に加熱し、ショ糖エステルS1670の3gを加えて攪拌して完全に溶解させ、大豆油60gを60℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、12000rpmで2分間高速剪断させ、次に高圧下で3分間均質化し、圧力を30MPaにして、平均粒子径が213nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0100】
(2)通常の米原料200gを量り、上記水中油型エマルジョン300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は30℃、浸漬時間は30分である。
【0101】
(3)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、10℃で30分間保持する。
【0102】
(4)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、4℃で4日間保存し、熟成する。
【0103】
(5)ステップ(4)における米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0104】
実施例2
(1)エマルション媒体の調製:水208.5gを40℃に加熱し、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートTween80の1.5gを加えて攪拌して完全に溶解させ、大豆油90gを40℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、10000rpmで5分間高速剪断させ、次に高圧下で5分間均質化し、圧力を40MPaにして、平均粒子径が390nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0105】
(2)通常の米原料150gを量り、上記水中油型エマルジョン300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は20℃、浸漬時間は40分間である。
【0106】
(3)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、20℃で20分間保持する。
【0107】
(4)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、0℃で4日間保存し、熟成する。
【0108】
(5)ステップ(4)における米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0109】
実施例3
(1)エマルション媒体の調製:水85gを80℃に加熱し、ポリオキシエチレンモノステアレートPEG400の15gを加えて攪拌して完全に溶解させ、菜種油210gを80℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、20000rpmで5分間高速剪断させ、次に高圧下で5分間均質化し、圧力を60MPaにして、平均粒子径が874nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0110】
(2)通常の米原料30gを量り、上記水中油型エマルジョン300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は50℃、浸漬時間は10分間である。
【0111】
(3)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、40℃で10分間保持する。
【0112】
(4)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、4℃で7日間保存し、熟成する。
【0113】
(5)ステップ(4)における米と水の比率を1:1に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0114】
実施例4
(1)エマルション媒体の調製:水237gを60℃に加熱し、ショ糖エステルS1670の3gを加えて攪拌して完全に溶解させ、米油60gを60℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、12000rpmで2分間高速剪断させ、次に高圧下で3分間均質化し、圧力を30MPaにして、平均粒子径が213nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0115】
(2)通常の米原料300gを量り、上記水中油型エマルジョン300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は40℃、浸漬時間は30分間である。
【0116】
(3)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、400MPaの圧力をかけ、5℃で40分間保持する。
【0117】
(4)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、10℃で6日間保存し、熟成する。
【0118】
(5)ステップ(4)における米と水の比率を1:2に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0119】
実施例5
(1)エマルション媒体の調製:水267gを60℃に加熱し、ショ糖エステルS1670の3gを加えて攪拌して完全に溶解させ、菜種油30gを60℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、5000rpmで10分間高速剪断させ、次に高圧下で10分間均質化し、圧力を20MPaにして、平均粒子径が271nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0120】
(2)通常の米原料100gを量り、上記水中油型エマルジョン500gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は20℃、浸漬時間は30分間である。
【0121】
(3)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、200MPaの圧力をかけ、10℃で60分間保持する。
【0122】
(4)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、-10℃で2日間保存し、熟成する。
【0123】
(5)ステップ(4)における米と水の比率を1:1に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0124】
比較例1
(1)通常の米原料200gを量り、脱イオン水300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は30℃、浸漬時間は30分間である。
【0125】
(2)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、10℃で30分間保持する。
【0126】
(3)上記の高圧処理後の米を水切りし、4℃で4日間保存し、熟成する。
【0127】
(4)ステップ(3)における米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0128】
比較例2
(1)通常の米原料200gを量り、大豆油297gとショ糖エステルS1670の3gとの混合物に浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は30℃、浸漬時間は30分間である。
【0129】
(2)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、10℃で30分間保持する。
【0130】
(3)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、4℃で4日間保存し、熟成する。
【0131】
(4)ステップ(3)における米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0132】
比較例3
(1)通常の米原料200gを量り、水240gと大豆油60gとの混合物に浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は30℃、浸漬時間は30分間である。
【0133】
(2)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、10℃で30分間保持する。
【0134】
(3)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、4℃で4日間保存し、熟成する。
【0135】
(4)ステップ(3)における米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0136】
比較例4
(1)エマルション媒体の調製:水237gを60℃に加熱し、ショ糖エステルS1670の3gを加えて攪拌して完全に溶解させ、大豆油60gを60℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、12000rpmで2分間高速剪断させ、次に高圧下で3分間均質化し、圧力を30MPaにして、平均粒子径が213nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0137】
(2)通常の米原料200gを量り、上記水中油型エマルジョン300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は30℃、浸漬時間は30分である。
【0138】
(3)上記の浸漬処理後の米のエマルジョンを水切りし、4℃で4日間保存し、熟成する。
【0139】
(4)ステップ(3)における米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0140】
比較例5
(1)エマルション媒体の調製:水237gを60℃に加熱し、ショ糖エステルS1670の3gを加えて攪拌して完全に溶解させ、大豆油60gを60℃に加熱した後、上記の水相にゆっくりと加え、12000rpmで2分間高速剪断させ、次に高圧下で3分間均質化し、圧力を30MPaにして、平均粒子径が213nmである安定した水中油型エマルジョンが得られる。
【0141】
(2)通常の米原料200gを量り、上記水中油型エマルジョン300gに浸漬させ、袋詰め後、真空包装する。浸漬温度は30℃、浸漬時間は30分間である。
【0142】
(3)上記の室温で浸漬処理後の米を超高圧装置に入れ、600MPaの圧力をかけ、10℃で30分間保持する。
【0143】
(4)上記の高圧処理後の米のエマルジョンを水切りし、米と水の比率を1:1.3に調整し、20分間蒸し煮し、その後15分間蒸らして、米飯を得る。
【0144】
実施例及び比較例における米及び米飯の機能特性を表1に示す。そのうち、RDS含有量(%)及びSDS含有量(%)は、各実施例及び比較例の最終ステップで得られた米が分析及び検出により得られたものである(具体的には、実施例1~5のステップ5及び比較例1~5のステップ4で得られた米)。アミロース溶出率及び糊化エンタルピー値は、各実施例及び比較例で得られた米が分析及び検出により得られたものである(具体的には、実施例1~5のステップ4及び比較例1~5のステップ3で得られた米である)。
【0145】
【表1】

官能評価:
10人からなる官能評価チームは、米飯の乳香の風味を評価し、及び風味の強さに応じて採点し、その結果を表2に記録する。
【0146】
【表2】

注:風味の評価では、「-」、「+」、「++」、「+++」は、乳香の風味が順次に強くなることを表し、乳香の風味の強さに従う順序は「-」<「+」<「++」<「+++」である。
【0147】
実施例及び比較例並びに表1、表2から、実施例1~5の高圧処理後の米は、アミロースの溶出率が低く、糊化エンタルピー値が高く、実施例1~5の高圧処理及び熟成処理後の米は、アミロースの溶出率が低く、糊化エンタルピー値が高く、実施例1~5の米飯は、より高い量の遅消化性澱粉(SDS≧45%)を含有し、吸収が遅く、エネルギーが継続的に放出されるという特徴があり、糖尿病患者などの特別な人々に適している。また、実施例1~5の米飯は、より強い乳香の風味を有する。
【国際調査報告】