(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】生物活性コーティングおよびインプラント
(51)【国際特許分類】
A61L 27/28 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
A61L27/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538400
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2019127936
(87)【国際公開番号】W WO2020135423
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811642573.9
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521285045
【氏名又は名称】スーチョウ マイクロポート オーソレコン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,リンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ユウ,チェンユン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA17
4C081DA04
4C081DC02
4C081DC04
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】表面層(110)を備え、表面層(110)は、不規則に接続されている複数の第1単一体を備え、複数の第1の貫通孔が複数の第1単一体の間および複数の第1単一体内部に形成されている生物活性コーティング(100)を提供する。表面層(110)は、生物活性コーティング(100)の最外側に配置され、表面層(110)は、不規則に接続されている複数の第1単一体を備え、複数の第1の貫通孔が、複数の第1単一体の間および複数の第1単一体内部に形成されている、すなわち、表面層(110)中の複数の第1単一体は、不規則に接続されており、したがって、表面層(110)中の複数の第1の貫通孔が不規則な状態になることができる結果、対応する骨組織の細胞が表面層(110)の中へ成長することを促進し、それにより、骨の内部成長作用と長期安定性を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性コーティングであって、
表面層を備え、
前記表面層は、不規則に接続されている複数の第1単体を備え、
前記複数の第1単体の間および前記複数の第1単体の内部に複数の第1の気孔が形成されている生物活性コーティング。
【請求項2】
少なくとも1つの中間層をさらに備え、
前記表面層が前記生物活性コーティングの最外側に配置され、
前記表面層および前記少なくとも1つの中間層が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って配置され、
前記生物活性コーティングの気孔率が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に低下する、請求項1に記載の生物活性コーティング。
【請求項3】
前記少なくとも1つの中間層が、規則正しく接続されている複数の第2単体を備え、
前記複数の第2単体の間および前記複数の第2単体の内部に複数の第2の気孔が形成されている、請求項2に記載の生物活性コーティング。
【請求項4】
前記少なくとも1つの中間層が、不規則に接続されている複数の第2単体を備え、
前記複数の第2単体の間および前記複数の第2単体の内部に複数の第2の気孔が形成されている、請求項2に記載の生物活性コーティング。
【請求項5】
前記表面層中の前記第1単体が、前記少なくとも1つの中間層中の前記第2単体に対して異なる構造を有する、請求項3または請求項4に記載の生物活性コーティング。
【請求項6】
前記第1単体が、N≧10であるN-面体構造を有し、
前記第2単体が、M<10であるM-面体構造を有する、請求項5に記載の生物活性コーティング。
【請求項7】
前記第1単体の構造が、菱形十二面体、二十面体、および二十・十二面体からなる群から選択される構造であり、
前記第2単体の構造が、ダイヤモンド構造体、セル状構造、四面体、立方体、および八面体からなる群から選択される構造である、請求項5に記載の生物活性コーティング。
【請求項8】
前記第2単体が、互いに接続されている4つの第2コネクティングロッドから形成されているダイヤモンド構造を有し、
前記4つの第2コネクティングロッドは、それらの第1の端部で互いに接続されている一方、前記4つの第2コネクティングロッドの第2の端部は互いに離れており、
前記4つの第2コネクティングロッドの前記接続されている第1の端部が正四面体の中心に位置しており、前記4つの第2コネクティングロッドの第2の端部が、それぞれ、前記正四面体の4つの頂点に位置している、請求項5に記載の生物活性コーティング。
【請求項9】
前記少なくとも1つの中間層が、少なくとも2つの中間層を有し、
異なる種類の第2単体が提供される、請求項3または請求項4に記載の生物活性コーティング。
【請求項10】
前記中間層および前記表面層の気孔率が、各単一層内部で均一かつ一定で、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って異なる層の間で徐々に低下する、または、前記中間層および前記表面層の気孔率が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って各単一層内部で徐々に低下するとともに前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って異なる層の間で徐々に低下する、または、前記生物活性コーティングの気孔率が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って勾配を持って連続的に変化する、請求項3または請求項4に記載の生物活性コーティング。
【請求項11】
前記第1単体が、互いに接続されている複数の第1コネクティングロッドから構成されており、
前記第2単体が、互いに接続されている複数の第2コネクティングロッドから構成されており、
前記第1コネクティングロッドの直径は、前記第2コネクティングロッドの直径より小さく、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドが同一の直径を有し、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドが同一の直径を有し、および/または、
前記第1コネクティングロッドが、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドと比較して、より小さい密度で前記表面層中に配置されており、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドが均一の密度で配置されており、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドが均一の密度で配置されており、または、
前記表面層中の前記第1コネクティングロッドの直径が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドの直径が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドの直径が前記中間層中の前記第2コネクティングロッドの直径より小さい、および/または、
前記表面層中の前記第1コネクティングロッドは、密度が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されており、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドは、密度が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されており、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドは、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドと比較して、より小さい密度で配置されており、または
前記生物活性コーティングが有する前記第1コネクティングロッドおよび前記第2コネクティングロッドの直径が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなる、および/または、前記生物活性コーティングが有する前記第1コネクティングロッドおよび前記第2コネクティングロッドは、密度が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されている、請求項3または請求項4に記載の生物活性コーティング。
【請求項12】
コンピュータのソフトウェアで設計され3D印刷によって一体的に形成される、請求項1から11のいずれか1項に記載の生物活性コーティング。
【請求項13】
インプラントであって、
基体層と、
請求項1から11のいずれか1項に記載の生物活性コーティングと、
を備え、
前記生物活性コーティングが前記基体層の上に配置され、前記生物活性コーティングの前記表面層が前記インプラントの最外側に配置されている、インプラント。
【請求項14】
前記インプラントの全体が3D印刷によって一体的に形成されている、請求項13に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療機器の技術分野、特に、生物活性コーティングおよびインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインプラント用の生物活性コーティングは、通常、チタンビーズ焼結、プラズマ溶射、およびコランダムブラスト等の技法を用いて製造される。しかしながら、これらの技法では、生物活性コーティングの気孔率を制御可能に変更することが困難である。それに加えて、これらの技法では、気孔間の接続性を確保することができず、その結果、応力遮蔽が生じやすくなる。さらに、このような生物活性コーティングでは、層間のボンディングおよびコーティングと基体間のボンディングが接着剤により実施されることが多いので安定性に欠き、骨の内部成長ならびに生物活性コーティングおよびインプラントの機械特性に対して有害となる。従来の技法は、また、非常に複雑であること、製造サイクルが長いこと、および高コストであること等の欠点も有する。
【0003】
気孔サイズが勾配を持って変化している3D印刷された多孔質金属骨組織足場が開示されている。その足場は、高密度に配置された構成部品A,B,およびCから成る六面体構造となっている。構成部品Aは、六面体構造の最外層としてマトリクス状に配置されている。構成部品Bは、六面体構造の中間層としてマトリクス状に配置されている。構成部品Cは、六面体構造の最内層としてマトリクス状に配置されている。構成部品Aの気孔サイズは、構成部品Bの気孔サイズより大きく、同様にして、構成部品Bの気孔サイズは構成部品Cの気孔サイズより大きい。しかしながら、構成部品A,B,およびCのそれぞれが六面体構造を有し、さらに足場内で規則正しくかつ秩序だって配置されているので、その足場は、なお、単一の構造を有する。このような足場は、気孔がつながった不規則な多孔質網状構造を有する骨梁とは明らかに異なった構造を有する結果、長期的な安定性が低く、骨の内部成長作用が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の目的は、既存の生物活性コーティングおよびインプラントは長期的な安定性が低く、骨の内部成長作用が制限されているという問題を解決する生物活性コーティングおよびインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、表面層を備える生物活性コーティングを提供する。前記表面層は、不規則に接続されている複数の第1単体を備え、前記複数の第1単体の間および前記複数の第1単体の内部に複数の第1の気孔が形成されている。
【0006】
任意選択として、生物活性コーティングは、少なくとも1つの中間層をさらに備える。前記表面層は、前記生物活性コーティングの最外側に配置されている。前記表面層および前記少なくとも1つの中間層は、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って配置されている。前記生物活性コーティングの気孔率は、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。
【0007】
生物活性コーティングの気孔率が、生物活性コーティングの外側から生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に小さくなるのは、前記中間層および前記表面層の気孔率が、各単一層内部で均一かつ一定で、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って異なる層の間で徐々に低下するケース、または、前記中間層および前記表面層の気孔率が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って各単一層内部で徐々に低下するとともに前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って異なる層の間で徐々に低下するケース、または、前記生物活性コーティングの気孔率が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って勾配を持って連続的に変化するケースでもよい。
【0008】
任意選択として、前記中間層が、規則正しく接続されている複数の第2単体を備え、前記複数の第2単体の間および前記複数の第2単体の内部に複数の第2の気孔が形成されている。
【0009】
任意選択として、前記1つの中間層が、不規則に接続されている複数の第2単体を備え、前記複数の第2単体の間および前記複数の第2単体の内部に複数の第2の気孔が形成されている。
【0010】
任意選択として、前記表面層中の前記第1単体が、前記少なくとも1つの中間層中の前記第2単体に対して異なる構造を有する。
【0011】
任意選択として、前記第1単体が、N≧10であるN-面体構造を有し、前記第2単体が、M<10であるM-面体構造を有する。
【0012】
任意選択として、前記第1単体の構造が、菱形十二面体、二十面体、および二十・十二面体からなる群から選択される構造であり、前記第2単体の構造が、ダイヤモンド構造体、セル状構造、四面体、立方体、および八面体からなる群から選択される構造である。
【0013】
任意選択として、前記第2単体が、互いに接続されている4つの第2コネクティングロッドから形成されているダイヤモンド構造を有している。前記4つの第2コネクティングロッドは、それらの第1の端部で互いに接続されている一方、前記4つの第2コネクティングロッドの第2の端部は互いに離れている。前記4つの第2コネクティングロッドの前記接続されている第1の端部が正四面体の中心に位置しており、前記4つの第2コネクティングロッドの第2の端部が、それぞれ、前記正四面体の4つの頂点に位置している。
【0014】
任意選択として、前記少なくとも1つの中間層が、少なくとも2つの中間層を有し、異なる種類の第2単体が提供されている。
【0015】
任意選択として、前記第1単体が、互いに接続されている複数の第1コネクティングロッドから構成されている。前記第2単体が、互いに接続されている複数の第2コネクティングロッドから構成されている。前記第1コネクティングロッドの直径は、前記第2コネクティングロッドの直径より小さく、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドが同一の直径を有し、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドが同一の直径を有し、および/または、前記第1コネクティングロッドが、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドと比較して、より小さい密度で前記表面層中に配置されており、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドが均一の密度で配置されており、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドが均一の密度で配置されている。あるいは、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドの直径が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドの直径が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドの直径が前記中間層中の前記第2コネクティングロッドの直径より小さい、および/または、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドは、密度が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されており、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドは、密度が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されており、前記表面層中の前記第1コネクティングロッドは、前記中間層中の前記第2コネクティングロッドと比較して、より小さい密度で配置されている。あるいは、前記生物活性コーティングが有する前記第1コネクティングロッドおよび前記第2コネクティングロッドの直径が、前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなる、および/または、前記生物活性コーティングが有する前記第1コネクティングロッドおよび前記第2コネクティングロッドは、密度が前記生物活性コーティングの外側から前記生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されている。
【0016】
本願明細書は、基体層と、上記に定義したとおりの生物活性コーティングとを備えるインプラントをも提供する。前記生物活性コーティングは、前記基体層の上に配置され、前記生物活性コーティングの前記表面層が前記インプラントの最外側に配置されている。
【0017】
本願により提供される生物活性コーティングおよびインプラントは、以下の利点を提供する。
【0018】
第1に、表面層が生物活性コーティングの最外側に配置され、不規則に接続された複数の第1単体と、複数の第1単体の間および複数の第1単体の内部に形成されている複数の第1の気孔とを含む。表面層中の第1単体の間の不規則な接続により、表面層中の複数の第1の気孔が不規則な配置になることが可能となって対応する骨組織の細胞の表面層の中への成長を促進されるので、骨の内部成長作用の向上および長期安定性が可能となる。
【0019】
第2に、生物活性コーティングは、少なくとも1つの中間層をさらに含み、表面層および少なくとも1つの中間層が生物活性コーティングの外側から生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って順番に配置され、生物活性コーティングの気孔率が生物活性コーティングの外側から生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。このようにして、生物活性コーティングの表面層が良好な骨の内部成長作用および長期安定性を有することができ、さらに生物活性コーティングの中間層が良好な機械特性を有することができるため、生物活性コーティングの全体的な安定性を提供することが可能となる。
【0020】
本願の実施形態において、中間層中の複数の第2単体の間の規則正しい接続に起因して、中間層中の複数の第2の気孔は、規則正しい配置となることが可能となって中間層および生物活性コーティングに対して良好な機械特性を提供する。
【0021】
本願の他の実施の形態において、不規則に接続された第1単体および第2単体のそれぞれと、不規則に接続された第1単体の第1の気孔と、不規則に接続された第2単体の第2の気孔とが、天然の3次元構造および生理的機能が天然の海綿骨に非常によく似た構造を形成するので、生物活性コーティングの微細構造および生体力学的特性をさらに向上させることが可能となる。
【0022】
本願のさらに他の実施の形態において、表面層中の第1単体は、中間層中の第2単体に対して異なる構造を有するので、表面層は、中間層に対して異なる気孔率および機械特性を有する。第1単体の第1コネクティングロッドおよび第2単体の第2コネクティングロッドの単に様々な直径および/または第1単体の第1コネクティングロッドおよび第2単体の第2コネクティングロッドに対する配置の単に様々な密度により様々な気孔率を有する生物活性コーティングと比較して、このような実施形態では、過度に小さい直径および非常に疎な配置に起因して第1コネクティングロッドまたは第2コネクティングロッドが容易に破損することを回避できる。これに加えて、このような実施形態では、過度に大きな直径およびコネクティングロッドの非常に稠密な配置から生じる困難な粉体除去という問題を回避することができる。
【0023】
他の実施形態において、表面層および中間層の気孔率は、生物活性コーティングの外側から生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って勾配を持って連続的に変化し、特性(例えば、気孔率、ロッド径、密度等)の不連続性から生じる層間の破砕を起こりにくくする。これにより、中間層に対する機械特性がさらに向上し、表面層の骨の内部成長作用が良好になる。さらに、表面層と中間層との間で良好な移行がもたらされるので、生物活性コーティングは、より優れた安定性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願の実施形態1に係る生物活性コーティングの構造概略図である。
【
図2】
図1の生物活性コーティングの一部分の概略拡大図である。
【
図3】本願の実施形態1に係る菱形十二面体の概略図である。
【
図4】本願の実施形態1に係る生物活性コーティング中の気孔率の変化を概略的に示す。
【
図5】本願の一実施形態に係る生物活性コーティング中の気孔率の変化を概略的に示す。
【
図6】本願のさらに他の実施形態に係る生物活性コーティング中の気孔率の変化を概略的に示す。
【
図7】本願の実施形態1に係るインプラントの構造概略図である。
【
図8】本願の実施形態2に係る生物活性コーティングの構造概略図である。
【
図9】
図8の生物活性コーティングの一部分の概略拡大図である。
【
図10】本願の実施形態2に係るインプラントの構造概略図である。
【
図11】本願の実施形態3に係る生物活性コーティングの構造概略図である。
【
図12】
図11の生物活性コーティングの一部分の概略拡大図である。
【
図13】本願の実施形態3に係るダイヤモンド構造の概略図である。
【
図14】本願の実施形態3に係るインプラントの構造概略図である。
【
図15】本願の実施形態4に係る生物活性コーティングの構造概略図である。
【
図16】
図15の生物活性コーティングの一部分の概略拡大図である。
【
図17】本願の実施形態4に係るインプラントの構造概略図である。
【
図18】本願の実施形態5に係る生物活性コーティングの構造概略図である。
【
図19】
図18の生物活性コーティングの一部分の概略拡大図である。
【
図20】本願の実施形態5に係るインプラントの構造概略図である。
【
図21】本願の実施形態6に係る二十面体の構造概略図である。 図において、100は生物活性コーティング、110は表面層、120は中間層、140は第1コネクティングロッド、150は第2コネクティングロッド、および200は基体層である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願は、不規則に接続された複数の単体(単一構造体)と、複数の第1単体の間および複数の第1単体の内部に形成されている複数の気孔とを含む表面層を備える生物活性コーティングを提供する。表面層中の第1単体の間の不規則な接続により、表面層中の複数の第1の気孔が不規則な配置となることが可能になって対応する骨組織の細胞の表面層の中への成長を促進するので、骨の内部成長作用の向上および長期安定性が可能となる。
【0026】
このように、本願は、基体層と、基体層上に設けられる生物活性コーティングとを備えるインプラントをも提供する。生物活性コーティングの表面層中の複数の気孔の不規則な配置により、インプラントの骨の内部成長作用および長期安定性の向上を可能とする。
【0027】
添付の図面および具体的な実施形態を参照して、本願で提案される生物活性コーティングおよびインプラントを以下に詳細に説明する。本願の特徴および利点は、以下の説明と添付の特許請求の範囲によってより明らかになるであろう。図面は非常に簡略化された形で提供されていて、必ずしも実寸どおりに描かれてなく、簡潔かつ明瞭に実施形態を説明することを容易にすることのみを意図していることに留意されたい。
実施形態1
【0028】
本実施形態は、生物活性コーティング100を提供する。ここで、本願の実施の形態1に係る生物活性コーティング100の構造概略図である
図1、および
図1の生物活性コーティング100の部分Aの概略拡大図である
図2を参照する。生物活性コーティング100は、表面層110と中間層120とを含む。表面層110は中間層120の上に配置されている。表面層110は、生物活性コーティング100の最外層に配置されている。表面層110の気孔率は、中間層120の気孔率より高い。
【0029】
表面層110は、不規則に接続されている複数の第1単体を含む。複数の第1の気孔は、複数の第1単体の間および複数の第1単体の内部に形成されている。ここで、本願の実施形態1に係る菱形十二面体の概略図である
図3を参照する。本実施形態では、第1単体は、互いに接続している複数の第1コネクティングロッド140から構成される菱形十二面体構造を有し、第1単体の内部に複数の第1の気孔が形成される。第1の気孔は、互いに接続されている隣接する第1単体によって画定することも可能である。
【0030】
表面層110中の複数の第1単体の間の不規則な接続により、表面層110中の複数の第1の気孔が不規則な配置となることが可能になって対応する骨組織の細胞の表面層110の中への成長を促進するので、骨の内部成長作用の向上および長期安定性が可能となる。
【0031】
第1の気孔は、100μm~1,000μmの気孔サイズを有してもよく、表面層110は50%~80%の気孔率を有してもよい。これにより、生物活性コーティング100は良好な骨の内部成長作用および長期安定性を有することが可能となるとともに、表面層110は、生物活性コーティング100の良好な短期安定性を可能にする高粗度および高摩擦係数を有することが可能となる。
【0032】
中間層120は、規則正しく接続されている複数の第2単体を含む。複数の第2の気孔は、複数の第2単体の間および複数の第2単体の内部に形成されている。本実施形態では、第2単体は、互いに接続されている複数の相互接続されている第2コネクティングロッドから構成されている菱形十二面体構造を有し、その結果、第2単体の内部に複数の第2の気孔が形成されている。第2の気孔は、互いに接続されている隣接する第2単体によって画定することも可能である。
【0033】
中間層120中の複数の第2単体の間の規則正しい接続に起因して、中間層120中の複数の第2の気孔は、規則正しい配置となることが可能になって中間層120および生物活性コーティング100に対して良好な機械特性を提供する。
【0034】
第2の気孔は、100μm~1,000μmの気孔サイズを有してもよく、中間層120は、10%~60%の気孔率を有してもよい。
【0035】
本実施形態では、生物活性コーティング100は、合計0.5mm~5.0mmの厚さおよび高い気孔率を有してもよい。生物活性コーティング100は、コンピュータのソフトウェアで設計されてもよく、また3Dプリンティングにより一体的に形成されてもよい。これにより、表面層110および中間層120の気孔率を制御可能に変化させることが可能となる結果、生物活性コーティング100の第1の気孔の間、第2の気孔の間、および第1の気孔と第2の気孔の間の相互接続性が良好になる。
【0036】
ここで、本願の実施の形態1に係る生物活性コーティング100中の気孔率の変化を示す概略図である
図4を参照する。中間層120の気孔率は、表面層110の気孔率より低い。中間層120および表面層110のそれぞれは、均一な気孔率を有している。すなわち、気孔率の変化は、中間層120と表面層110の間でのみ生じる。表面層110のより高い気孔率により、組織細胞に対して十分な内部成長空間が提供されるとともに栄養素の輸送および代謝廃棄物の除去が促進され、骨の内部成長作用の向上が可能となる。中間層120のより低い気孔率により、機械特性の向上が可能となる。
【0037】
気孔率の変化は、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径の差異および/または密度の差異によって可能である。具体的には、第1コネクティングロッド140は、直径が第2コネクティングロッドより小さく、表面層110中の第1コネクティングロッド140は同一の直径を有し、中間層120中の第2コネクティングロッドは同一の直径を有する、および/または、第1コネクティングロッド140は、表面層110中で、中間層120中の第2コネクティングロッドと比較してより小さい密度で配置されており、表面層110中の第1コネクティングロッド140は、均一の密度で配置されており、中間層120中の第2コネクティングロッドは、均一の密度で配置されている。
【0038】
他の実施形態では、生物活性コーティング100は、本実施形態とは異なる気孔率の変化を有してもよい。
【0039】
ここで、本願の一実施形態に係る生物活性コーティング100の気孔率の変化の概略的説明図である
図5を参照する。中間層120の気孔率は、表面層110の気孔率より低く、中間層120および表面層110の各単一層中において、気孔率は、外側から内側にかけて徐々に低下する。ここで、中間層120から離れた表面層110の側が生物活性コーティング100の外側であり、表面層110から離れた中間層120の側が生物活性コーティング100の内側である。表面層110のより高い気孔率により、組織細胞に対して十分な内部成長空間が提供されるとともに栄養素の輸送および代謝廃棄物の除去が促進され、骨の内部成長作用の向上が可能となる。中間層120のより低い気孔率により、より優れた機械特性が得られる。表面層110中の第1コネクティングロッド140の直径は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、中間層120中の第2コネクティングロッドの直径は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、表面層110中の第1コネクティングロッド140の直径は中間層120中の第2コネクティングロッドの直径より小さい、および/または、表面層110中の第1コネクティングロッド140の密度は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置されており、中間層120中の第2コネクティングロッドの密度は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置され、表面層110中の第1コネクティングロッド140は、中間層120中の第2コネクティングロッドと比較してより小さい密度で配置されている。
【0040】
本願の他の実施形態に係る生物活性コーティング100の気孔率の変化の概略説明図である
図6を参照すると、中間層120の気孔率は表面層110の気孔率より低く、生物活性コーティング100全体の気孔率は、外側から内側に向かって徐々に低下する。生物活性コーティング100の気孔率は、外側から内側に向かう方向に沿って勾配を持って連続的に変化することが好ましく、ここで、勾配を持って連続的に変化するとは気孔率が直線的に変化することを指す。勾配を持った変化と比較して、急な変化(例えば、気孔率が各単一層中でのみ徐々に低下する)を含むと、応力集中に起因して層間の境界面で破断を引き起こす傾向がある。勾配を持って連続的に変化させることで、層間で破断を引き起こす著しい応力集中を回避することが可能となる。これにより、中間層120の機械特性が向上され、表面層110の骨の内部成長作用が向上される。これに加えて、中間層120と表面層110との間の滑らかな移行に起因して、生物活性コーティング100は高い安定性を保有することが可能となる。さらに、生物活性コーティング100における第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなり、および/または、生物活性コーティング100における第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドは、密度が生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に大きくなるように配置される。
【0041】
一実施形態において、少なくとも1つの中間層120は、少なくとも2つの中間層を有する。表面層110および複数の中間層120は、生物活性コーティングの外側から生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って順番に配置されている。生物活性コーティング100の中間層120と表面層110の気孔率は、各単一層内部で均一かつ一定であり、外側から内側に向かう方向に沿って異なる層の間で徐々に低下する。
【0042】
他の実施形態では、中間層120のそれぞれまたはより多くの中間層120の気孔率は、外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下し、および/または、表面層110の気孔率は、外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。
【0043】
さらに他の実施形態では、複数の中間層120のそれぞれの気孔率は、表面層110の気孔率より低く、生物活性コーティング100の気孔率は、外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。
【0044】
上記の実施形態では、生物活性コーティング100は、骨梁に類似した構造を有する。
【0045】
本実施形態はインプラントも提供する。本願の実施形態1に係るインプラントの構造概略図である
図7を参照すると、インプラントは、基体層200と実施形態1に係る生物活性コーティング100とを含む。生物活性コーティングの中間層120は、基体層200の上に配置され、表面層110は、インプラントの最外側に配置されている。基体層200も、気孔率が中間層120よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0046】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成されてもよい。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
実施形態2
【0047】
本実施形態は生物活性コーティング100を提供する。本実施形態の生物活性コーティング100は、中間層120中の複数の第2単体が不規則に接続されている点で実施形態1の生物活性コーティング100とは異なる。
【0048】
ここで、本願の実施形態2に係る生物活性コーティング100の構造概略図である
図8、および
図8の生物活性コーティング100の部分Bの概略拡大図である
図9を参照する。生物活性コーティング100は、表面層110と中間層120とを含む。表面層110は、中間層120の上で生物活性コーティング100の最外側に配置されている。表面層110の気孔率は中間層120の気孔率よりも高い。中間層120は不規則に接続されている複数の第2単体を含む。
【0049】
生物活性コーティング100中の複数の第1の気孔の間、複数の第2の気孔の間、および複数の第1の気孔と第2の気孔との間の接続性は、生物活性コーティング100の血管新生に影響を及ぼす。換言すると、接続性が低いと、新しく形成された骨の間の相互接続性不良を引き起こしやすくなる結果、一体性や連続性が不十分となる。中間層120中の規則正しく接続されている複数の第2単体は、生物活性コーティング内部で良好な気孔率および接続性を確保することができるが、そのような生物活性コーティングの構造は、天然の海綿骨の構造とはまったく異なる。天然の海綿骨は、気孔が正規分布した気孔サイズを有し、様々なサイズの気孔が異なる生物活性機能(生物学的機能)を与える複雑な構造を有する。不規則に接続されている第1単体中の第1の気孔および不規則に接続されている第2単体中の第2の気孔により形成されている構造は、天然の3次元構造および生理的機能が天然の海綿骨に非常に似ており、そのため、生物活性コーティング100の微細構造および生体力学的特性のさらなる向上を可能とする。
【0050】
気孔率の変化は、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径の変化および/または密度の変化を通して達成することができる。中間層120および表面層110の気孔率は、各単一層内部で均一かつ一定であり、異なる層の間で変化する。あるいは、中間層120および表面層110の気孔率は、各単一層内部で外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。あるいは、生物活性コーティング全体の気孔率は、外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。
【0051】
本実施形態は、インプラントをも提供する。本願の実施形態2に係るインプラントの構造概略図である
図10を参照すると、インプラントは、基体層200と実施形態2に係る生物活性コーティング100とを含む。生物活性コーティングの中間層120は、基体層200の上に配置され、表面層110は、インプラントの最外側に配置されている。基体層200も、気孔率が中間層120よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0052】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成することが可能である。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
実施形態3
【0053】
本実施形態は生物活性コーティング100を提供する。本実施形態の生物活性コーティング100は、第2単体がダイヤモンド構造を有する点で、実施形態1の生物活性コーティング100とは異なる。
【0054】
ここで、本願の実施形態3に係る生物活性コーティング100の構造概略図である
図11、および
図11の生物活性コーティング100の部分Cの概略拡大図である
図12を参照する。生物活性コーティング100は、表面層110と中間層120とを含む。表面層110は、中間層120の上に配置されている。表面層110は、生物活性コーティング100の最外層に配置されている。表面層110の気孔率は、中間層120の気孔率より高い。中間層120は、規則正しく接続された複数の第2単体を含む。第2単体は、複数の第2コネクティングロッドから構成されているダイヤモンド構造を有する。
【0055】
本願の実施形態3に係るダイヤモンド構造の概略図である
図13を参照すると、ダイヤモンド構造は、互いに接続されている4つの第2コネクティングロッド150から構成されている。4つの第2コネクティングロッド150は、それらの第1の端部で互いに接続されていて、4つの第2コネクティングロッド150の第2の端部は互いに離れている。4つの第2コネクティングロッド150の接続されている第1の端部は、正四面体の中心に位置しており、4つの第2コネクティングロッド150の第2の端部は、それぞれ、正四面体の4つの頂点に位置している。
【0056】
本実施形態では、表面層110中の第1単体は菱形十二面体の構造を有し、中間層120中の第2単体はダイヤモンド構造を有する。表面層110と中間層120において単体の構造が異なる結果、表面層110と中間層120の気孔率および機械特性が異なる可能性がある。第1コネクティングロッドおよび第2コネクティングロッドの単に様々な直径および/または第1コネクティングロッドおよび第2コネクティングロッドに対する配置の単に様々な密度により様々な気孔率を有する生物活性コーティングと比較して、本実施形態の生物活性コーティング100は、過度に小さな直径および非常に疎な配置に起因して第1コネクティングロッド140または第2コネクティングロッド150が容易に破損することを回避できる。これに加えて、本実施形態の生物活性コーティング100は、また、コネクティングロッドの過度に大きな直径および非常に稠密な配置から生じる困難な粉体除去の問題を回避することができる。
【0057】
本実施形態では、気孔率の変化も、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径および/または密度の変化によって達成できることが好ましい。本実施形態では、表面層110と中間層120とで異なる単体を用いることによる気孔率への影響は、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッド150の直径および/または密度の変化による気孔率への影響と組み合わせてもよく、それによって、気孔率に対するこれら2つの調整手法の利点を組み合わせることができるので、生物活性コーティング100の高い安定性とより優れた骨の内部成長作用を達成することが可能となる。
【0058】
中間層120および表面層110の気孔率は、各単一層内部で均一かつ一定であり、異なる層の間で異なる。あるいは、中間層120および表面層110の気孔率は、各単一層内部で外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。あるいは、生物活性コーティング全体の気孔率が、外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。
【0059】
本実施形態は、インプラントも提供する。本願の実施形態3に係るインプラントの構造概略図である
図14を参照すると、インプラントは、基体層200と実施形態3に係る生物活性コーティング100とを含む。生物活性コーティングの中間層120は、基体層200の上に配置され、表面層110は、インプラントの最外側に配置されている。基体層200も、気孔率が中間層120よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0060】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成されてもよい。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
実施形態4
【0061】
本実施形態は生物活性コーティング100を提供する。本実施形態の生物活性コーティング100は、中間層120中の第2単体が不規則に接続されており、各単体がダイヤモンド構造を有する点で、実施形態1の生物活性コーティング100とは異なる。
【0062】
ここで、本願の実施形態4に係る生物活性コーティング100の構造概略図である
図15、および
図15の生物活性コーティング100の部分Dの概略拡大図である
図16を参照する。生物活性コーティング100は、表面層110と中間層120とを含む。表面層110は中間層120の上で生物活性コーティング100の最外側に配置されている。表面層110は中間層120の気孔率よりも高い気孔率を有している。中間層120は不規則に接続されている複数の第2単体を含む。第2単体は、複数の第2コネクティングロッドから構成されているダイヤモンド構造を有する。
【0063】
実施形態3と同様にして、ダイヤモンド構造は、互いに接続されている4つの第2コネクティングロッド150から構成されている。4つの第2コネクティングロッドは、それらの第1の端部で互いに接続され、第2コネクティングロッドの第2の端部は互いに離れている。4つの第2コネクティングロッドの接続されている第1の端部は、正四面体の中心に位置しており、4つの第2コネクティングロッド150の第2の端部は、それぞれ、正四面体の4つの頂点に位置している。
【0064】
本実施形態では、表面層110中の第1単体は菱形十二面体の構造を有し、中間層120中の第2単体はダイヤモンド構造を有する。表面層110と中間層120とにおいて単体の構造が異なる結果、表面層110および中間層120の気孔率および機械特性が異なる可能性がある。第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの単に様々な直径および/または第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドに対する配置の単に様々な密度により様々な気孔率を有する生物活性コーティング100と比較して、本実施形態の生物活性コーティング100は、過度に小さい直径および非常に疎な配置に起因して第1コネクティングロッド140または第2コネクティングロッド150が容易に破損することを回避できる。これに加えて、本実施形態の生物活性コーティング100は、また、コネクティングロッドの過度に大きな直径および非常に稠密な配置から生じる困難な粉体除去の問題を回避することができる。
【0065】
本実施形態では、気孔率の変化が、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径および/または密度の変化によって達成できることが好ましい。本実施形態では、表面層110と中間層120とで異なる単体を用いることによる気孔率への影響は、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径および/または密度の変化による気孔率への影響と組み合わせてもよく、それによって、気孔率に対するこれら2つの調整手法の利点を組み合わせることができるので、生物活性コーティング100の高い安定性とより優れた骨の内部成長作用を達成することが可能となる。
【0066】
これに加えて、天然の海綿骨は、気孔が正規分布した気孔サイズを有し、様々なサイズの気孔が異なる生物活性機能を与える複雑な構造を有する。したがって、不規則に接続されている第1単体中の第1の気孔および不規則に接続されている第2単体中の第2の気孔により形成されている構造は、天然の3次元構造および生理的機能が天然の海綿骨に非常に似ており、そのため、生物活性コーティング100の微細構造および生体力学的特性のさらなる向上を可能とする。
【0067】
これに加えて、中間層120および表面層110の気孔率は、各単一層内部で均一かつ一定であり、異なる層の間で変化する。あるいは、中間層120および表面層110の気孔率は、各単一層内部で外側から内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。
【0068】
本実施形態は、インプラントも提供する。本願の実施形態4に係るインプラントの構造概略図である
図17を参照すると、インプラントは、基体層200と実施形態4に係る生物活性コーティング100とを含む。生物活性コーティングの中間層120は、基体層200の上に配置され、表面層110は、インプラントの最外側に配置されている。基体層200も、気孔率が中間層120よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0069】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成されてもよい。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
実施形態5
【0070】
本実施形態は生物活性コーティング100を提供する。本実施形態の生物活性コーティング100は、中間層120中の第2単体が不規則に接続されており、各単体がダイヤモンド構造を有し、生物活性コーティング100全体の気孔率が外側から内側にかけて勾配を持って連続的に変化する点で、実施形態1の生物活性コーティング100とは異なる。
【0071】
ここで、本願の実施形態5に係る生物活性コーティング100の構造概略図である
図18、および
図18の生物活性コーティング100の部分Eの概略拡大図である
図19を参照する。生物活性コーティング100は、表面層110と中間層120とを含む。表面層110は中間層120の上で生物活性コーティング100の最外側に配置されている。表面層110は中間層120の気孔率よりも高い気孔率を有している。中間層120は不規則に接続されている複数の第2単体を含む。第2単体は、複数の第2コネクティングロッドから構成されているダイヤモンド構造を有する。
【0072】
実施形態4と同様にして、ダイヤモンド構造は、互いに接続されている4つの第2コネクティングロッド150から構成されている。4つの第2コネクティングロッドは、それらの第1の端部で互いに接続され、第2コネクティングロッドの第2の端部は互いに離れている。4つの第2コネクティングロッドの接続されている第1の端部は、正四面体の中心に位置しており、4つの第2コネクティングロッド150の第2の端部は、それぞれ、正四面体の4つの頂点に位置している。
【0073】
本実施形態では、表面層110中の第1単体は菱形十二面体の構造を有し、中間層120中の第2単体はダイヤモンド構造を有する。表面層110と中間層120において単体の構造が異なる結果、表面層110と中間層120の気孔率および機械特性が異なる可能性がある。第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの単に様々な直径および/または第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドに対する配置の単に様々な密度により様々な気孔率を有する生物活性コーティング100と比較して、本実施形態の生物活性コーティング100は、過度に小さい直径および非常に疎な配置に起因して第1コネクティングロッド140または第2コネクティングロッド150が容易に破損することを回避できる。これに加えて、本実施形態の生物活性コーティング100は、また、コネクティングロッドの過度に大きな直径および非常に稠密な配置から生じる困難な粉体除去の問題を回避することができる。
【0074】
本実施形態では、気孔率の変化も、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径および/または密度の変化によって達成できることが好ましい。本実施形態では、表面層110と中間層120とで異なる単体を用いることによる気孔率への影響は、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッドの直径および/または密度の変化による気孔率への影響と組み合わせてもよく、それによって、気孔率に対するこれら2つの調整手法の利点を組み合わせることができるので、生物活性コーティング100の高い安定性とより優れた骨の内部成長作用を達成することが可能となる。
【0075】
これに加えて、天然の海綿骨は、気孔が正規分布した気孔サイズを有し、様々なサイズの気孔が異なる生物活性機能を与える複雑な構造を有する。したがって、不規則に接続されている第1単体中の第1の気孔および不規則に接続されている第2単体中の第2の気孔により形成されている構造は、天然の3次元構造および生理的機能が天然の海綿骨に非常に似ており、そのため、生物活性コーティング100の微細構造および生体力学的特性のさらなる向上を可能とする。
【0076】
中間層120の気孔率は、表面層110の気孔率より低く、生物活性コーティング100全体の気孔率は、外側から内側にかけて徐々に低下する。換言すると、中間層120および表面層110の気孔率は、外側から内側に向かう方向に沿って勾配を持って連続的に変化し、特性(例えば、気孔率、ロッド径、密度等)の不連続性から生じる層間の破砕を起こりにくくする。これにより、中間層120に対する機械特性がさらに向上し、表面層110の骨の内部成長作用が良好になる。さらに、表面層110と中間層120との間で良好な移行がもたらされるので、生物活性コーティングは、より優れた安定性を得ることができる。
【0077】
本実施形態は、インプラントも提供する。本願の実施形態5に係るインプラントの構造概略図である
図20を参照すると、インプラントは、基体層200と実施形態5に係る生物活性コーティング100とを含む。生物活性コーティングの中間層120は、基体層200の上に配置され、表面層110は、インプラントの最外側に配置されている。基体層200も、気孔率が中間層120よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0078】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成されてもよい。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
【0079】
実施形態3、4および5のそれぞれにおいて、中間層中の第2単体は、ダイヤモンド構造を有し、実施形態4および5では複数のダイヤモンド構造は不規則に接続されているが、実施形態3では複数のダイヤモンド構造は規則正しく接続されている。規則正しく接続されているダイヤモンド構造の場合、互いに接続されている4つの第2コネクティングロッドから形成されている。4つの第2コネクティングロッド150は、それらの第1の端部で互いに接続され、4つの第2コネクティングロッド150の第2の端部は互いに離れている。4つの第2コネクティングロッド150の接続されている第1の端部は、正四面体の中心に位置しており、4つの第2コネクティングロッド150の第2の端部は、それぞれ、正四面体の4つの頂点に位置している。不規則に接続されているダイヤモンド構造の場合、第2コネクティングロッド間の角度は変化し、第2コネクティングロッドの長さも変化する。すなわち、不規則に接続されているダイヤモンド構造は、実際には正四面体構造ではなく、変形した四面体構造である。
【0080】
正四面体は、4つの面を有し、各面は三角形である。そのような構造は非常に安定していて優れた機械特性を提供する。それとともに、四面体構造は、各頂点で接続される4つの第2コネクティングロッドのみを有するが、4つの第2コネクティングロッドは、空間で3次元構造を安定化させるために必要なロッドの最小限の数である。したがって、同じ空間で、そのような構造は、4つの第2コネクティングロッドの間の気孔が良好な安定性を達成することを可能にする一方で、大きくなることを可能にする。第2コネクティングロッドの直径の調整により気孔率を調整する場合、これにより、過度に小さい直径および非常に疎な配置に起因してロッドが容易に破損することを回避可能にしつつ中間層に対して良好な気孔率が提供される、または、これにより、コネクティングロッドの過度に大きな直径および非常に緻密な配置から生じる困難な粉体除去の問題の回避を可能にしながら中間層に対して良好な機械特性が提供される。したがって、中間層中の第2単体がダイヤモンド構造を有することが最も好ましい。しかしながら、他の実施形態においては、中間層中の第2単体は別の構造であってもよく、本願は上記の構造に限定されない。
実施形態6
【0081】
本実施形態は生物活性コーティング100を提供する。生物活性コーティング100は、表面層110と中間層120とを含む。表面層110は、中間層120の上で生物活性コーティング100の最外層に配置されている。表面層110の気孔率は、中間層120の気孔率より高い。
【0082】
表面層110は、不規則に接続されている複数の第1単体を含む。複数の第1の気孔は、複数の第1単体の間および複数の第1単体の内部に形成されている。
【0083】
第1単体は、N-面体構造を有してもよい。ここでN≧10である。例えば、第1単体は、菱形十二面体、二十面体、および二十・十二面体(フラーレン)からなる群から選択される構造であってもよい。二十面体構造は、本願の実施形態6に係る二十面体構造を概略的に示す
図21を参照することができる。
【0084】
中間層120は、規則正しく接続されている複数の第2単体を含む。複数の第2の気孔は複数の第2単体の間および複数の第2単体の内部に形成されている。
【0085】
第2単体は、M-面体構造を有してもよい。ここでM<10である。例えば、第2単体は、四面体、立方体、および八面体から成る群から選択される構造を有してもよい。
【0086】
第2単体は、また、ダイヤモンド構造またはセル状構造の構造を有してもよい。
【0087】
他の実施形態では、第2単体は、不規則に配置されていてもよい。
【0088】
本実施形態は、基体層200と実施形態6に係る生物活性コーティング100とを含むインプラントも提供する。生物活性コーティングの中間層120は、基体層200の上に配置され、表面層110はインプラントの最外側に配置されている。基体層200も、気孔率が中間層120よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0089】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成されてもよい。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
実施形態7
【0090】
本実施形態は、表面層110のみを含む生物活性コーティング100を提供する。
【0091】
表面層110は、不規則に接続されている複数の第1単体を含む。複数の第1の気孔は、複数の第1単体の間および複数の第1単体の内部に形成されている。
【0092】
第1単体は、K-面体構造を有してもよい。ここでK≧4である。例えば、第1単体は、菱形十二面体、二十面体、二十・十二面体(フラーレン)、四面体、立方体、および八面体からなる群から選択される構造であってもよい。
【0093】
第1単体は、また、ダイヤモンド構造またはセル状構造の構造を有してもよい。
【0094】
本実施形態は、基体層200と実施形態7に係る生物活性コーティング100とを含むインプラントも提供する。基体層200も、気孔率が表面層110よりも低い多孔質コーティング層であってもよい。
【0095】
基体層200は、3D印刷によって一体的に形成されてもよい。あるいは、インプラント全体が3D印刷によって一体的に形成される。
【0096】
上記実施形態において、表面層110は、生物活性コーティング100の最外側に配置され、不規則に接続されている複数の第1単体と、複数の第1単体の間および複数の第1単体の内部に形成されている複数の第1の気孔とを含む。すなわち、表面層110中の第1単体の間の不規則な接続により、表面層110中の複数の第1の気孔が不規則な配置になることが可能になり、対応する骨組織の細胞が表面層110の中へ成長することを促進するので、骨の内部成長作用の向上および長期安定性が可能となる。
【0097】
上記実施形態において、生物活性コーティング100は、少なくとも1つの中間層120をさらに含み、表面層110および少なくとも1つの中間層120は、生物活性コーティングの外側から生物活性コーティングの内側に向かう方向に沿って順に配置されており、生物活性コーティング100の気孔率は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って徐々に低下する。このようにして、生物活性コーティングの表面層110が良好な骨の内部成長作用および長期安定性を有することができ、生物活性コーティング100の中間層120が良好な短期安定性を有することができることで、生物活性コーティング100に対する全体的な安定性を提供することが可能となる。
【0098】
上記実施形態において、中間層120中の複数の第2単体の間の規則正しい接続に起因して、中間層120中の複数の第2の気孔は、規則正しい配置となることが可能になり、中間層120および生物活性コーティング100に対して良好な機械特性を提供する。
【0099】
上記実施形態において、第1単体および第2単体の両方、したがって、それら(第1単体および第2単体)の中の第1の気孔および第2の気孔の両方が不規則に相互接続されている。これにより、天然の海綿骨の自然な3次元的特性および生理学的特性が厳密にエミュレートされ、生物活性コーティング100の微細構造および生体力学的特性のさらなる向上を可能とする。
【0100】
上記実施形態において、第1単体および第2単体のそれぞれは不規則に接続されているので、不規則に接続されている第1単体の第1の気孔と不規則に接続されている第2単体の第2の気孔とが、自然な3次元的構造および生理学的機能が天然の海綿骨に非常に類似している構造を形成し、生物活性コーティング100の微細構造および生体力学的特性のさらなる向上を可能とする。
【0101】
上記実施形態において、表面層110中の第1単体は、中間層120中の第2単体に対して異なる構造を有するので、表面層110は、中間層120に対して異なる気孔率および機械特性を有する。第1単体の第1コネクティングロッド140および第2単体の第2コネクティングロッド150の単に様々な直径および/または第1単体の第1コネクティングロッド140および第2単体の第2コネクティングロッド150に対する配置の単に様々な密度により様々な気孔率を有する生物活性コーティング100と比較して、このような実施形態では、過度に小さい直径および非常に疎な配置から生じる第1コネクティングロッド140または第2コネクティングロッド150が容易に破損することを回避できる。これに加えて、このような実施形態では、また、第1コネクティングロッド140および第2コネクティングロッド150の過度に大きな直径および非常に稠密な配置から生じる困難な粉体除去の問題を回避することができる。
【0102】
上記実施形態において、表面層110および中間層120の気孔率は、生物活性コーティング100の外側から生物活性コーティング100の内側に向かう方向に沿って勾配を持って連続的に変化し、特性(例えば、気孔率、ロッド径、密度等)の不連続性から生じる層間の破砕を起こりにくくする。これにより、中間層120に対する機械特性がさらに向上し、表面層110の骨の内部成長作用が良好になる。さらに、表面層110と中間層120との間で良好な移行がもたらされるので、生物活性コーティングは、より優れた安定性を得ることができる。
【0103】
上記実施形態において、生物活性コーティングは、3D印刷により一体的に形成されてもよい。これにより、表面層110および中間層120の気孔率を制御可能に変化させることが可能となる結果、生物活性コーティング100の第1の気孔の間、第2の気孔の間、および第1の気孔と第2の気孔の間の相互接続性が良好となる。
【0104】
上記の説明は、本願のいくつかの好ましい実施形態の説明に過ぎず、いかなる意味においても本願の範囲を限定することを意図するものではない。上記の開示に基づいて当業者によって行われたすべての変更および修正は、添付の特許請求の範囲の保護範囲内に含まれる。
【国際調査報告】