(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】修飾IL-2ポリペプチドを含むポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/26 20060101AFI20220218BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20220218BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220218BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220218BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220218BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220218BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220218BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220218BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220218BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220218BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220218BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220218BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220218BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220218BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220218BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220218BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220218BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220218BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220218BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20220218BHJP
【FI】
C12N15/26
C07K14/55 ZNA
C07K16/18
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K38/20
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K38/19
A61K35/768
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538982
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 US2020012296
(87)【国際公開番号】W WO2020146221
(87)【国際公開日】2020-07-16
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199744
【氏名又は名称】インヒブルクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティマー ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】エッケルマン ブレンダン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス ケイトリン マッケイブ
(72)【発明者】
【氏名】スルツマイアー フロリアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベックランド ブライアン アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
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4C087AA02
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
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4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA04
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書では、修飾IL-2を含むポリペプチドであって、修飾IL-2は、野生型IL-2と比べてIL-2受容体に対する親和性が低下している、ポリペプチドが提供される。幾つかの実施形態では、活性化T細胞に結合して作動する、修飾IL-2を含むポリペプチドが提供される。修飾IL-2を含むポリペプチドの使用も提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾IL-2を含むポリペプチドであって、前記修飾IL-2は、P65、D84、E95、M23、及びH16から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
前記修飾IL-2は、修飾ヒトIL-2である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記アミノ酸位置は、配列番号1中のアミノ酸位置に対応する、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置P65に置換を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記置換は、P65R、P65E、P65K、P65H、P65Y、P65Q、P65D、及びP65Nから選択される、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置H16に置換を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記置換は、H16A、H16G、H16S、H16T、H16V、及びH16Pから選択される、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置D84に置換を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記置換は、D84S、D84G、D84A、D84T、D84V、及びD84Pから選択される、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置P65、H16、及びD84に置換を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、及びD84Sを含む、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置M23に置換を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記置換は、M23A、M23G、M23S、M23T、M23V、及びM23Pから選択される、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、及びM23Aを含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置E95に置換を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記置換は、E95Q、E95G、E95S、E95T、E95V、E95P、E95H、及びE95Nから選択される、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、及びE95Qを含む、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、M23A、及びE95Qを含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置F42に置換を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記F42での置換は、F42K、F42A、F42R、F42A、F42G、F42S、及びF42Tから選択される、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記修飾IL-2は、Y45及びL72から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記修飾IL-2は、Y45A及びL72Gから選択される少なくとも1つの置換を含む、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記修飾IL-2は、T3及びC125から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記修飾IL-2は、T3A及びC125Aから選択される少なくとも1つの置換を含む、請求項23に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記修飾IL-2は、H16A-F42K、D84S-F42K、E15S-F42K、M23A-F42K、E95Q-F42K、P65R-H16A、P65R-D84S、P65R-E15S、P65R-M23A、P65R-E95Q、T3A-C125S、T3A-P65R-C125S、T3A-H16A-C125S、T3A-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-C125S、T3A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-M23A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-D84S-E95Q-C125S、及びT3A-H16A-M23A-P65R-D84S-E95Q-C125Sから選択される一連の置換を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記修飾IL-2は、前記一連の置換を含み、任意の付加的な置換を含まない、請求項25に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記修飾IL-2は、配列番号84と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
前記修飾IL-2は、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記修飾IL-2は、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記ポリペプチドは、Fc領域を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記修飾IL-2は、前記Fc領域のN末端又はC末端に融合している、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記Fc領域は、Kabatアミノ酸位置T366に置換を含む、請求項30又は31に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記Fc領域は、T366W置換を含む、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記Fc領域は、T366、L368、及びY407から選択される少なくとも1つのKabatアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記Fc領域は、T366S、L368A、及びY407V変異を含む、請求項34に記載のポリペプチド。
【請求項36】
前記Fc領域は、S354及びY349から選択されるKabat位置に置換を含む、請求項30~35のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項37】
前記Fc領域は、S354C又はY349C置換を含む、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項38】
前記Fc領域は、Kabatアミノ酸位置H435に置換を含む、請求項30~37のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項39】
前記Fc領域は、H435R及びH435Kから選択される置換を含む、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記Fc領域は、M252及びM428から選択される少なくとも1つのKabatアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、請求項30~39のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項41】
前記Fc領域は、M252Y及びM428V置換を含む、請求項40に記載のポリペプチド。
【請求項42】
前記Fc領域は、Kabatアミノ酸E233、L234、及びL235の欠失を含む、請求項30~41のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項43】
前記Fc領域は、L234、L235、及びP329から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、請求項30~41のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項44】
前記Fc領域は、L234A、L235A、及びP329G置換を含む、請求項43に記載のポリペプチド。
【請求項45】
前記Fc領域は、配列番号47~配列番号83から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項30~44のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項46】
前記Fc領域は、重鎖定常領域の一部である、請求項30~44のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項47】
前記重鎖定常領域は、IgG定常領域である、請求項46に記載のポリペプチド。
【請求項48】
前記重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域である、請求項47に記載のポリペプチド。
【請求項49】
前記修飾IL-2は、前記Fc領域又は重鎖定常領域のC末端に融合している、請求項30~48のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項50】
前記修飾IL-2は、1個~20個のアミノ酸を含むリンカーによって前記Fc領域又は重鎖定常領域のC末端に融合している、請求項49に記載のポリペプチド。
【請求項51】
前記リンカーは、グリシンアミノ酸を含む、請求項50に記載のポリペプチド。
【請求項52】
前記リンカーは、グリシン及びセリンアミノ酸を含む、請求項51に記載のポリペプチド。
【請求項53】
前記リンカー中の前記アミノ酸の大部分又は全てがグリシン及びセリンである、請求項50~52のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項54】
前記ポリペプチドは、配列番号86、配列番号87、配列番号102、配列番号103、又は配列番号104のアミノ酸配列を含む、請求項30~33、42、及び49~53のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項55】
前記ポリペプチドは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項1~54のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項56】
前記ポリペプチドは、2つ、3つ、又は4つの抗原結合ドメインを含む、請求項55に記載のポリペプチド。
【請求項57】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、T細胞抗原又はナチュラルキラー細胞抗原に特異的に結合する、請求項55又は56に記載のポリペプチド。
【請求項58】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、CD4
+T細胞抗原又はCD8
+T細胞抗原に特異的に結合する、請求項55~57のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項59】
前記少なくとも1つの抗原結合ドメインは、活性化CD4
+T細胞又は活性化CD8
+T細胞上の抗原に特異的に結合する、請求項58に記載のポリペプチド。
【請求項60】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、アゴニストである、請求項55~59のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項61】
前記抗原結合ドメインは、アンタゴニストである、請求項55~59のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項62】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、4-1BB、OX40、GITR、CD8a、CD8b、CD4、NKp30、NKG2A、TIGIT、TGFβR1、TGFβR2、Fas、NKG2D、NKp46、PD-L1、CD107a、ICOS、TNFR2、又はCD16aに特異的に結合する、請求項55~61のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項63】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1に特異的に結合する、請求項55~62のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項64】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、ヒト又はヒト化抗原結合ドメインである、請求項55~63のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項65】
各抗原結合ドメインは、独立してヒト又はヒト化抗原結合ドメインである、請求項64に記載のポリペプチド。
【請求項66】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、VHHドメインを含む、請求項55~65のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項67】
各抗原結合ドメインは、VHHドメインを含む、請求項66に記載のポリペプチド。
【請求項68】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、VHドメイン及びVLドメインを含む、請求項55~65のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項69】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、AMP-514、TSR-042、STI-A1110、イピリムマブ、トレメリムマブ、ウレルマブ、ウトミルマブ、アテゾリズマブ、及びデュルバルマブから選択される抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む、請求項68に記載のポリペプチド。
【請求項70】
前記少なくとも1つの抗原結合ドメインは、一本鎖Fv(scFv)を含む、請求項68又は69に記載のポリペプチド。
【請求項71】
前記ポリペプチドは、重鎖定常領域を含み、前記VHドメインは、前記重鎖定常領域に融合し、前記VLドメインは、前記VHドメインと結合している、請求項68又は69に記載のポリペプチド。
【請求項72】
前記VLドメインは、軽鎖定常領域に融合している、請求項71に記載のポリペプチド。
【請求項73】
前記軽鎖定常領域は、カッパ及びラムダから選択される、請求項72に記載のポリペプチド。
【請求項74】
前記抗原結合ドメインは、それぞれ同じである、請求項55~73のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項75】
前記抗原結合ドメインは、それぞれ同じ抗原に特異的に結合する、請求項55~74のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項76】
前記抗原結合ドメインの少なくとも1つは、他の抗原結合ドメインの少なくとも1つとは異なる抗原に特異的に結合する、請求項55~73のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項77】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1に特異的に結合し、少なくとも1つの他の抗原結合ドメインは、PD-1以外のT細胞抗原又はナチュラルキラー細胞抗原に特異的に結合する、請求項55~73のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項78】
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、4-1BB、OX40、GITR、CD8a、CD8b、CD4、NKp30、NKG2A、TIGIT、TGFβR1、TGFβR2、Fas、NKG2D、NKp46、PD-L1、CD107a、ICOS、TNFR2、又はCD16aに結合する、請求項55~77のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項79】
前記ポリペプチドは、生理学的条件下でホモ二量体を形成する、請求項31~78のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項80】
前記修飾IL-2は、IL-2Rに対するヒト野生型IL-2の親和性より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い親和性でヒトIL-2Rに結合する、請求項1~79のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項81】
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む複合体であって、前記第1のポリペプチドは、請求項1~79のいずれか一項に記載のポリペプチドである、複合体。
【請求項82】
前記第1のポリペプチドは、第1のFc領域を含み、前記第2のポリペプチドは、第2のFc領域を含む、請求項81に記載の複合体。
【請求項83】
各Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるアイソタイプである、請求項81又は82に記載の複合体。
【請求項84】
各Fc領域は、ヒトIgG1である、請求項83に記載の複合体。
【請求項85】
各Fc領域は、アミノ酸E233、L234、及びL235の欠失を含む、請求項81~84のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項86】
各Fc領域は、H435R又はH435K変異を含む、請求項81~85のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項87】
前記Fc領域は、変異M252Y及びM428L又は変異M252Y及びM428Vを含む、請求項81~86のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項88】
前記第1のFc領域又は前記第2のFc領域は、T366W変異を含み、他方のFc領域は、変異T366S、L368A、及びY407Vを含む、請求項81~87のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項89】
前記第1のFc領域又は前記第2のFc領域は、S354C変異を含む、請求項88に記載の複合体。
【請求項90】
各Fc領域は、独立して配列番号47~配列番号83から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項81~89のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項91】
前記第2のポリペプチドは、修飾IL2を含まない、請求項81~90のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項92】
前記第1のポリペプチドは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項81~91のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項93】
前記第2のポリペプチドは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項81~92のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項94】
前記第1のポリペプチドは、第1の抗原結合ドメイン、Fc領域、及び修飾IL-2を含む、請求項81~93のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項95】
前記第1の抗原結合ドメインは、前記Fc領域のN末端に融合し、前記修飾IL-2は、前記Fc領域のC末端に融合する、請求項94に記載の複合体。
【請求項96】
前記第2のポリペプチドは、第2の抗原結合ドメイン及びFc領域を含む、請求項94又は95に記載の複合体。
【請求項97】
前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインは、同じか又は異なる、請求項96に記載の複合体。
【請求項98】
a)前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインは、どちらもPD-1に結合し、
b)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、LAG3に結合し、
c)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、
d)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、4-1BBに結合し、
e)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、OX40に結合し、
f)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、GITRに結合し、
g)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD8aに結合し、
h)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD8bに結合し、
i)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD4に結合し、
j)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKp30に結合し、
k)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKG2Aに結合し、
l)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TIGITに結合し、
m)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKG2Dに結合し、
n)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFBR2に結合し、
o)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
p)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD107aに結合し、
q)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、
r)前記第1の抗原結合ドメインは、CD8aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
s)前記第1の抗原結合ドメインは、CD8aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
t)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Dに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
u)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Dに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
v)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
w)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
x)前記第1の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
y)前記第1の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
z)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、LAG3に結合し、
aa)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Tim3に結合し、
bb)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、OX40に結合し、
cc)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、GITRに結合し、
dd)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD107aに結合し、
ee)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、又は、
ff)前記第1の抗原結合ドメインは、ICOSに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TNFR2に結合する、請求項97に記載の複合体。
【請求項99】
前記修飾IL-2は、IL-2Rに対するヒト野生型IL-2の親和性より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い親和性でヒトIL-2Rに結合する、請求項81~98のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項100】
請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項101】
請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体をコードする単離された核酸。
【請求項102】
請求項101に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項103】
請求項101に記載の核酸又は請求項102に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項104】
請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体を発現する単離された宿主細胞。
【請求項105】
請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体を生産する方法であって、前記ポリペプチド又は複合体の発現に適した条件下で請求項103又は104に記載の宿主細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【請求項106】
前記ポリペプチド又は複合体を単離することを更に含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
CD4
+T細胞及び/又はCD8
+T細胞の増殖を増加させる方法であって、T細胞を請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体と接触させることを含む、方法。
【請求項108】
前記CD4
+T細胞及び/又はCD8
+T細胞は、in vitroで存在する、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記CD4
+T細胞及び/又はCD8
+T細胞は、in vivoで存在する、請求項107に記載の方法。
【請求項110】
前記増加は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍である、請求項107~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
NK細胞増殖を増加させる方法であって、NK細胞を請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体と接触させることを含む、方法。
【請求項112】
前記増加は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
癌を治療する方法であって、癌を伴う被験体に請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項81~99のいずれか一項に記載の複合体、又は請求項100に記載の医薬組成物を薬学的有効量、投与することを含む、方法。
【請求項114】
前記癌は、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、胃腸癌、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、並びに慢性骨髄芽球性白血病から選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
追加の療法剤を投与することを更に含む、請求項113又は114に記載の方法。
【請求項116】
前記追加の療法剤は、抗癌剤である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記抗癌剤は、化学療法剤、抗癌生物製剤、放射線療法薬、CAR-T療法薬、及び腫瘍溶解性ウイルスから選択される、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記追加の療法剤は、抗癌生物製剤である、請求項116又は117に記載の方法。
【請求項119】
前記抗癌生物製剤は、PD-1及び/又はPD-L1を阻害する作用物質である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記抗癌生物製剤は、VISTA、gpNMB、B7H3、B7H4、HHLA2、CTLA4、又はTIGITを阻害する作用物質である、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
前記抗癌剤は、抗体である、請求項116~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記抗癌生物製剤は、サイトカインである、請求項118に記載の方法。
【請求項123】
前記抗癌剤は、CAR-T療法薬である、請求項116に記載の方法。
【請求項124】
前記抗癌剤は、腫瘍溶解性ウイルスである、請求項116に記載の方法。
【請求項125】
腫瘍切除及び/又は放射線療法を更に含む、請求項113~124のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年1月7日付で出願された米国仮出願第62/789,075号の優先権の利益を主張し、その全体があらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、CD25及びCD122に対する親和性が低下した修飾IL-2、並びに標的化部分に融合された、かかる修飾IL-2に関する。本発明は、限定されるものではないが、癌を治療する方法を含む、修飾IL-2及び修飾IL-2を含むポリペプチドを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
IL-2は、CD25、CD122及びCD132から構成されるヘテロ三量体IL-2受容体(IL-2R)、又はCD122及びCD132のみから構成されるヘテロ二量体IL-2受容体のいずれかを介してT細胞及びNK細胞の増殖を刺激する強力なサイトカインである。どちらの形態のIL-2RもT細胞の生存、増殖、及び全体的な活性化状態の強力なメディエーターである。IL-2は概して、T細胞及びNK細胞によって活性化後に産生され、局所微小環境におけるシス及びトランスのシグナル伝達を媒介する。IL-2Rシグナル伝達は、エフェクターT細胞及び記憶T細胞へのナイーブT細胞の分化を誘導することができ、抑制性制御性T細胞を刺激することもできる。三量体形態のIL-2Rは、IL-2に対して二量体形態よりも高い親和性を有するが、どちらも適度に高い親和性であり、急速な受容体媒介性の内在化及び分解を引き起こし、極めて短い半減期をもたらす。組換えヒトIL-2(rhIL-2、プロロイキン)が腎細胞癌及び悪性黒色腫の治療に臨床的に使用されているが、強い毒性を伴う。高親和性IL-2Rを発現する内皮細胞に対するIL-2シグナル伝達の影響により、血管漏出症候群がプロロイキンで治療された癌患者にとって主な毒性の問題となっている。
【0004】
T細胞は、TCR複合体のクラスター形成及びNFATを介したシグナル伝達を引き起こす、それらのTCRと相補性ペプチドが結合したMHCを提示する隣接細胞とのライゲーションによって活性化される。CD28を介したT細胞の共刺激がCD80及びCD86によって引き起こされ、これによりT細胞活性化が増強される。初期活性化後に、T細胞はサイトカイン受容体、並びにT細胞応答を調節する働きをする多くの共刺激受容体及びチェックポイント受容体を含む様々なタンパク質を上方調節する。
【0005】
持続的な抗腫瘍臨床応答が近年、CTLA-4、PD-1、及びPD-L1等のチェックポイント受容体に対するアンタゴニスト抗体について報告されている。しかしながら、最も応答性が高い適応症であっても、奏効率は患者の約30%に限られる。したがって、改善されたT細胞調節療法薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む修飾IL-2を含むポリペプチドが提供される。幾つかの実施の形態では、修飾IL-2は、野生型IL-2と比べてCD25、CD122、及び/又はIL-2Rに対する結合親和性が低下している。幾つかの実施の形態では、修飾IL-2は、野生型IL-2と比べて休止T細胞又は活性化T細胞に対する活性が低下している。
【0007】
実施形態1.
修飾IL-2を含むポリペプチドであって、前記修飾IL-2は、P65、D84、E95、M23、及びH16から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、ポリペプチド。
【0008】
実施形態2.
前記修飾IL-2は、修飾ヒトIL-2である、実施形態1のポリペプチド。
【0009】
実施形態3.
前記アミノ酸位置は、配列番号1中のアミノ酸位置に対応する、実施形態1又は2のポリペプチド。
【0010】
実施形態4.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置P65に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0011】
実施形態5.
前記置換は、P65R、P65E、P65K、P65H、P65Y、P65Q、P65D、及びP65Nから選択される、実施形態4のポリペプチド。
【0012】
実施形態6.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置H16に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0013】
実施形態7.
前記置換は、H16A、H16G、H16S、H16T、H16V、及びH16Pから選択される、実施形態6のポリペプチド。
【0014】
実施形態8.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置D84に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0015】
実施形態9.
前記置換は、D84S、D84G、D84A、D84T、D84V、及びD84Pから選択される、実施形態8のポリペプチド。
【0016】
実施形態10.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置P65、H16、及びD84に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0017】
実施形態11.
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、及びD84Sを含む、実施形態10のポリペプチド。
【0018】
実施形態12.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置M23に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0019】
実施形態13.
前記置換は、M23A、M23G、M23S、M23T、M23V、及びM23Pから選択される、実施形態12のポリペプチド。
【0020】
実施形態14.
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、及びM23Aを含む、実施形態13のポリペプチド。
【0021】
実施形態15.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置E95に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0022】
実施形態16.
前記置換は、E95Q、E95G、E95S、E95T、E95V、E95P、E95H、及びE95Nから選択される、実施形態15のポリペプチド。
【0023】
実施形態17.
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、及びE95Qを含む、実施形態16のポリペプチド。
【0024】
実施形態18.
前記修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、M23A、及びE95Qを含む、実施形態17のポリペプチド。
【0025】
実施形態19.
前記修飾IL-2は、アミノ酸位置F42に置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0026】
実施形態20.
前記F42での置換は、F42K、F42A、F42R、F42A、F42G、F42S、及びF42Tから選択される、実施形態19のポリペプチド。
【0027】
実施形態21.
前記修飾IL-2は、Y45及びL72から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0028】
実施形態22.
前記修飾IL-2は、Y45A及びL72Gから選択される少なくとも1つの置換を含む、実施形態21のポリペプチド。
【0029】
実施形態23.
前記修飾IL-2は、T3及びC125から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0030】
実施形態24.
前記修飾IL-2は、T3A及びC125Aから選択される少なくとも1つの置換を含む、実施形態23のポリペプチド。
【0031】
実施形態25.
前記修飾IL-2は、H16A-F42K、D84S-F42K、E15S-F42K、M23A-F42K、E95Q-F42K、P65R-H16A、P65R-D84S、P65R-E15S、P65R-M23A、P65R-E95Q、T3A-C125S、T3A-P65R-C125S、T3A-H16A-C125S、T3A-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-C125S、T3A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-M23A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-D84S-E95Q-C125S、及びT3A-H16A-M23A-P65R-D84S-E95Q-C125Sから選択される一連の置換を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0032】
実施形態26.
前記修飾IL-2は、前記一連の置換を含み、任意の付加的な置換を含まない、実施形態25のポリペプチド。
【0033】
実施形態27.
前記修飾IL-2は、配列番号84と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0034】
実施形態28.
前記修飾IL-2は、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0035】
実施形態29.
前記修飾IL-2は、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0036】
実施形態30.
前記ポリペプチドは、Fc領域を含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0037】
実施形態31.
前記修飾IL-2は、前記Fc領域のN末端又はC末端に融合している、実施形態30のポリペプチド。
【0038】
実施形態32.
前記Fc領域は、Kabatアミノ酸位置T366に置換を含む、実施形態30又は31のポリペプチド。
【0039】
実施形態33.
前記Fc領域は、T366W置換を含む、実施形態32のポリペプチド。
【0040】
実施形態34.
前記Fc領域は、T366、L368、及びY407から選択される少なくとも1つのKabatアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、実施形態31のポリペプチド。
【0041】
実施形態35.
前記Fc領域は、T366S、L368A、及びY407V変異を含む、実施形態34のポリペプチド。
【0042】
実施形態36.
前記Fc領域は、S354及びY349から選択されるKabat位置に置換を含む、実施形態30~35のいずれか1つのポリペプチド。
【0043】
実施形態37.
前記Fc領域は、S354C又はY349C置換を含む、実施形態36のポリペプチド。
【0044】
実施形態38.
前記Fc領域は、Kabatアミノ酸位置H435に置換を含む、実施形態30~37のいずれか1つのポリペプチド。
【0045】
実施形態39.
前記Fc領域は、H435R及びH435Kから選択される置換を含む、実施形態38のポリペプチド。
【0046】
実施形態40.
前記Fc領域は、M252及びM428から選択される少なくとも1つのKabatアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、実施形態30~39のポリペプチド。
【0047】
実施形態41.
前記Fc領域は、M252Y及びM428V置換を含む、実施形態40のポリペプチド。
【0048】
実施形態42.
前記Fc領域は、Kabatアミノ酸E233、L234、及びL235の欠失を含む、実施形態30~41のいずれか1つのポリペプチド。
【0049】
実施形態43.
前記Fc領域は、L234、L235、及びP329から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む、実施形態30~41のいずれか1つのポリペプチド。
【0050】
実施形態44.
前記Fc領域は、L234A、L235A、及びP329G置換を含む、実施形態43のポリペプチド。
【0051】
実施形態45.
前記Fc領域は、配列番号47~配列番号83から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、実施形態30~44のいずれか1つのポリペプチド。
【0052】
実施形態46.
前記Fc領域は、重鎖定常領域の一部である、実施形態30~44のいずれか1つのポリペプチド。
【0053】
実施形態47.
前記重鎖定常領域は、IgG定常領域である、実施形態46のポリペプチド。
【0054】
実施形態48.
前記重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域である、実施形態47のポリペプチド。
【0055】
実施形態49.
前記修飾IL-2は、前記Fc領域又は重鎖定常領域のC末端に融合している、実施形態30~48のいずれか1つのポリペプチド。
【0056】
実施形態50.
前記修飾IL-2は、1個~20個のアミノ酸を含むリンカーによって前記Fc領域又は重鎖定常領域のC末端に融合している、実施形態49のポリペプチド。
【0057】
実施形態51.
前記リンカーは、グリシンアミノ酸を含む、実施形態50のポリペプチド。
【0058】
実施形態52.
前記リンカーは、グリシン及びセリンアミノ酸を含む、実施形態51のポリペプチド。
【0059】
実施形態53.
前記リンカー中の前記アミノ酸の大部分又は全てがグリシン及びセリンである、実施形態50~52のいずれか1つのポリペプチド。
【0060】
実施形態54.
前記ポリペプチドは、配列番号86、配列番号87、配列番号102、配列番号103、又は配列番号104のアミノ酸配列を含む、実施形態30~33、42、及び49~53のいずれか1つのポリペプチド。
【0061】
実施形態55.
前記ポリペプチドは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、上記の実施形態のいずれか1つのポリペプチド。
【0062】
実施形態56.
前記ポリペプチドは、2つ、3つ、又は4つの抗原結合ドメインを含む、実施形態55のポリペプチド。
【0063】
実施形態57.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、T細胞抗原又はナチュラルキラー細胞抗原に特異的に結合する、実施形態55又は56のポリペプチド。
【0064】
実施形態58.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、CD4+T細胞抗原又はCD8+T細胞抗原に特異的に結合する、実施形態55~57のいずれか1つのポリペプチド。
【0065】
実施形態59.
前記少なくとも1つの抗原結合ドメインは、活性化CD4+T細胞又は活性化CD8+T細胞上の抗原に特異的に結合する、実施形態58のポリペプチド。
【0066】
実施形態60.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、アゴニストである、実施形態55~59のいずれか1つのポリペプチド。
【0067】
実施形態61.
前記抗原結合ドメインは、アンタゴニストである、実施形態55~59のいずれか1つのポリペプチド。
【0068】
実施形態62.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、4-1BB、OX40、GITR、CD8a、CD8b、CD4、NKp30、NKG2A、TIGIT、TGFβR1、TGFβR2、Fas、NKG2D、NKp46、PD-L1、CD107a、ICOS、TNFR2、又はCD16aに特異的に結合する、実施形態55~61のいずれか1つのポリペプチド。
【0069】
実施形態63.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1に特異的に結合する、実施形態55~62のいずれか1つのポリペプチド。
【0070】
実施形態64.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、ヒト又はヒト化抗原結合ドメインである、実施形態55~63のいずれか1つのポリペプチド。
【0071】
実施形態65.
各抗原結合ドメインは、独立してヒト又はヒト化抗原結合ドメインである、実施形態64のポリペプチド。
【0072】
実施形態66.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、VHHドメインを含む、実施形態55~65のいずれか1つのポリペプチド。
【0073】
実施形態67.
各抗原結合ドメインは、VHHドメインを含む、実施形態66のポリペプチド。
【0074】
実施形態68.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、VHドメイン及びVLドメインを含む、実施形態55~65のいずれか1つのポリペプチド。
【0075】
実施形態69.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、AMP-514、TSR-042、STI-A1110、イピリムマブ、トレメリムマブ、ウレルマブ、ウトミルマブ、アテゾリズマブ、及びデュルバルマブから選択される抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む、実施形態68のポリペプチド。
【0076】
実施形態70.
前記少なくとも1つの抗原結合ドメインは、一本鎖Fv(scFv)を含む、実施形態68又は69のポリペプチド。
【0077】
実施形態71.
前記ポリペプチドは、重鎖定常領域を含み、前記VHドメインは、前記重鎖定常領域に融合し、前記VLドメインは、前記VHドメインと結合している、実施形態68又は69のポリペプチド。
【0078】
実施形態72.
前記VLドメインは、軽鎖定常領域に融合している、実施形態71のポリペプチド。
【0079】
実施形態73.
前記軽鎖定常領域は、カッパ及びラムダから選択される、実施形態72のポリペプチド。
【0080】
実施形態74.
前記抗原結合ドメインは、それぞれ同じである、実施形態55~73のいずれか1つのポリペプチド。
【0081】
実施形態75.
前記抗原結合ドメインは、それぞれ同じ抗原に特異的に結合する、実施形態55~74のポリペプチド。
【0082】
実施形態76.
前記抗原結合ドメインの少なくとも1つは、他の抗原結合ドメインの少なくとも1つとは異なる抗原に特異的に結合する、実施形態55~73のポリペプチド。
【0083】
実施形態77.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1に特異的に結合し、少なくとも1つの他の抗原結合ドメインは、PD-1以外のT細胞抗原又はナチュラルキラー細胞抗原に特異的に結合する、実施形態55~73のいずれか1つのポリペプチド。
【0084】
実施形態78.
少なくとも1つの抗原結合ドメインは、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、4-1BB、OX40、GITR、CD8a、CD8b、CD4、NKp30、NKG2A、TIGIT、TGFβR1、TGFβR2、Fas、NKG2D、NKp46、PD-L1、CD107a、ICOS、TNFR2、又はCD16aに結合する、実施形態55~77のいずれか1つのポリペプチド。
【0085】
実施形態79.
前記ポリペプチドは、生理学的条件下でホモ二量体を形成する、実施形態31~78のいずれか1つのポリペプチド。
【0086】
実施形態80.
前記修飾IL-2は、IL-2Rに対するヒト野生型IL-2の親和性より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い親和性でヒトIL-2Rに結合する、実施形態1~79のいずれか1つのポリペプチド。
【0087】
実施形態81.
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む複合体であって、前記第1のポリペプチドは、実施形態1~79のいずれか1つのポリペプチドである、複合体。
【0088】
実施形態82.
前記第1のポリペプチドは、第1のFc領域を含み、前記第2のポリペプチドは、第2のFc領域を含む、実施形態81の複合体。
【0089】
実施形態83.
各Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるアイソタイプである、実施形態81又は82の複合体。
【0090】
実施形態84.
各Fc領域は、ヒトIgG1である、実施形態83の複合体。
【0091】
実施形態85.
各Fc領域は、アミノ酸E233、L234、及びL235の欠失を含む、実施形態81~84のいずれか1つの複合体。
【0092】
実施形態86.
各Fc領域は、H435R又はH435K変異を含む、実施形態81~85のいずれか1つの複合体。
【0093】
実施形態87.
前記Fc領域は、変異M252Y及びM428L又は変異M252Y及びM428Vを含む、実施形態81~86のいずれか1つの複合体。
【0094】
実施形態88.
前記第1のFc領域又は前記第2のFc領域は、T366W変異を含み、他方のFc領域は、変異T366S、L368A、及びY407Vを含む、実施形態81~87のいずれか1つの複合体。
【0095】
実施形態89.
前記第1のFc領域又は前記第2のFc領域は、S354C変異を含む、実施形態88の複合体。
【0096】
実施形態90.
各Fc領域は、独立して配列番号47~配列番号83から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、実施形態81~89のいずれか1つの複合体。
【0097】
実施形態91.
前記第2のポリペプチドは、修飾IL2を含まない、実施形態81~90のいずれか1つの複合体。
【0098】
実施形態92.
前記第1のポリペプチドは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、実施形態81~91のいずれか1つの複合体。
【0099】
実施形態93.
前記第2のポリペプチドは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、実施形態81~92のいずれか1つの複合体。
【0100】
実施形態94.
前記第1のポリペプチドは、第1の抗原結合ドメイン、Fc領域、及び修飾IL-2を含む、実施形態81~93のいずれか1つの複合体。
【0101】
実施形態95.
前記第1の抗原結合ドメインは、前記Fc領域のN末端に融合し、前記修飾IL-2は、前記Fc領域のC末端に融合する、実施形態94の複合体。
【0102】
実施形態96.
前記第2のポリペプチドは、第2の抗原結合ドメイン及びFc領域を含む、実施形態94又は95の複合体。
【0103】
実施形態97.
前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインは、同じか又は異なる、実施形態96の複合体。
【0104】
実施形態98.
a)前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインは、どちらもPD-1に結合し、
b)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、LAG3に結合し、
c)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、
d)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、4-1BBに結合し、
e)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、OX40に結合し、
f)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、GITRに結合し、
g)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD8aに結合し、
h)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD8bに結合し、
i)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD4に結合し、
j)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKp30に結合し、
k)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKG2Aに結合し、
l)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TIGITに結合し、
m)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKG2Dに結合し、
n)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFBR2に結合し、
o)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
p)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD107aに結合し、
q)前記第1の抗原結合ドメインは、PD-1に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、
r)前記第1の抗原結合ドメインは、CD8aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
s)前記第1の抗原結合ドメインは、CD8aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
t)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Dに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
u)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Dに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
v)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
w)前記第1の抗原結合ドメインは、NKG2Aに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
x)前記第1の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TGFRβR2に結合し、
y)前記第1の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Fasに結合し、
z)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、LAG3に結合し、
aa)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、Tim3に結合し、
bb)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、OX40に結合し、
cc)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、GITRに結合し、
dd)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、CD107aに結合し、
ee)前記第1の抗原結合ドメインは、CTLA-4に結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、NKp46に結合し、又は、
ff)前記第1の抗原結合ドメインは、ICOSに結合し、かつ前記第2の抗原結合ドメインは、TNFR2に結合する、実施形態97の複合体。
【0105】
実施形態99.
前記修飾IL-2は、IL-2Rに対するヒト野生型IL-2の親和性より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い親和性でヒトIL-2Rに結合する、実施形態81~98のいずれか1つの複合体。
【0106】
実施形態100.
実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【0107】
実施形態101.
実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体をコードする単離された核酸。
【0108】
実施形態102.
実施形態101の核酸を含む発現ベクター。
【0109】
実施形態103.
実施形態101の核酸又は実施形態102の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
【0110】
実施形態104.
実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体を発現する単離された宿主細胞。
【0111】
実施形態105.
実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体を生産する方法であって、前記ポリペプチド又は複合体の発現に適した条件下で実施形態103又は104の宿主細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【0112】
実施形態106.
前記ポリペプチド又は複合体を単離することを更に含む、実施形態105の方法。
【0113】
実施形態107.
CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を増加させる方法であって、T細胞を実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体と接触させることを含む、方法。
【0114】
実施形態108.
前記CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞は、in vitroで存在する、実施形態107の方法。
【0115】
実施形態109.
前記CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞は、in vivoで存在する、実施形態107の方法。
【0116】
実施形態110.
前記増加は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍である、実施形態107~109のいずれか1つの方法。
【0117】
実施形態111.
NK細胞増殖を増加させる方法であって、NK細胞を実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体と接触させることを含む、方法。
【0118】
実施形態112.
前記増加は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍である、実施形態111の方法。
【0119】
実施形態113.
癌を治療する方法であって、癌を伴う被験体に実施形態1~80のいずれか1つのポリペプチド、又は実施形態81~99のいずれか1つの複合体、又は実施形態100の医薬組成物を薬学的有効量、投与することを含む、方法。
【0120】
実施形態114.
前記癌は、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、胃腸癌、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、並びに慢性骨髄芽球性白血病から選択される、実施形態113の方法。
【0121】
実施形態115.
追加の療法剤を投与することを更に含む、実施形態113又は114の方法。
【0122】
実施形態116.
前記追加の療法剤は、抗癌剤である、実施形態115の方法。
【0123】
実施形態117.
前記抗癌剤は、化学療法剤、抗癌生物製剤、放射線療法薬、CAR-T療法薬、及び腫瘍溶解性ウイルスから選択される、実施形態116の方法。
【0124】
実施形態118.
前記追加の療法剤は、抗癌生物製剤である、実施形態116又は117の方法。
【0125】
実施形態119.
前記抗癌生物製剤は、PD-1及び/又はPD-L1を阻害する作用物質である、実施形態118の方法。
【0126】
実施形態120.
前記抗癌生物製剤は、VISTA、gpNMB、B7H3、B7H4、HHLA2、CTLA4、又はTIGITを阻害する作用物質である、実施形態118の方法。
【0127】
実施形態121.
前記抗癌剤は、抗体である、実施形態116~120のいずれか1つの方法。
【0128】
実施形態122.
前記抗癌生物製剤は、サイトカインである、実施形態118の方法。
【0129】
実施形態123.
前記抗癌剤は、CAR-T療法薬である、実施形態116の方法。
【0130】
実施形態124.
前記抗癌剤は、腫瘍溶解性ウイルスである、実施形態116の方法。
【0131】
実施形態125.
腫瘍切除及び/又は放射線療法を更に含む、実施形態113~124のいずれか1つの方法。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1A-1H】様々なIL-2融合タンパク質のフォーマットの概略を示す図である。
図1Aは、ヘテロ二量体ノブインホール(knob-in-hole)IgG1 FcのN末端に連結されたIL-2を示す。
図1Bは、シングルドメイン抗体のヘテロ二量体IgG1 FcのC末端に連結されたIL-2を示す。
図1C~
図1Eは、1つのVHH(
図1E)、2つの同一のVHH(
図1C)、又は2つの異なるVHH(
図1D)に連結されたIL-2を示す。
図1Fは、従来の抗体のホモ二量体重鎖定常領域のC末端に連結されたIL-2を示す。
図1Gは、従来の抗体のヘテロ二量体重鎖定常領域のC末端に連結されたIL-2を示す。
図1Hは、ヘテロ二量体scFv抗体のC末端に融合されたIL-2を示す。
【
図2A-2C】フローサイトメトリーによって測定される、IL-2受容体(CD25、CD122、及びCD132)の様々な組合せを一過的にトランスフェクションした293F細胞に対する、
図1Aに示されるようにヘテロ二量体FcのN末端に融合された野生型IL-2(
図2A)又は修飾IL-2(
図2A~
図2C)を含むIL-2融合タンパク質の結合を示す図である。「UT 293F」は、トランスフェクションされていない293F細胞を示す。
【
図3A-3B】フローサイトメトリーによって測定される、CD25及びCD122を一過的にトランスフェクションした293F細胞に対する、
図1Aに示されるようにヘテロ二量体FcのN末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2を含む融合タンパク質の結合を示す図である。
【
図4A-4B】フローサイトメトリーによって測定される、CD122及びCD132、又はCD25、CD122、及びCD132を一過的にトランスフェクションした293F細胞に対する、
図1Aに示されるようにヘテロ二量体FcのN末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2を含む融合タンパク質の結合を示す図である。
【
図5A-5B】フローサイトメトリーによって測定される、休止CD4
+T細胞及び活性化CD4
+T細胞に対する、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2を含む融合タンパク質の結合を示す図である。「アイソタイプコントロール」は、IL-2を含まないコントロールタンパク質を示す。
【
図6A-6B】フローサイトメトリーによって測定される、濃縮された制御性T細胞(Treg、
図6A)、誘導された制御性T細胞(誘導されたTreg、
図6B)、及び濃縮されたレスポンダーCD4
+T細胞(Tresp、
図6C)に対する、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2を含む融合タンパク質の結合を示す図である。
【
図7A-7D】休止CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞に対する、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2を含む融合タンパク質の活性を示す図である。増殖(
図7A及び
図7C)及びCD71レベル(
図7B及び
図7D)を測定した。
図7E及び
図7Fは、細胞内リン酸化STAT5レベルのフローサイトメトリー検出によって測定される、休止CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞に対する、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2の活性を示す。「アイソタイプ」は、IL-2を含まないコントロールタンパク質を示す。
【
図8A-8B】
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又は修飾IL-2を含む融合タンパク質での7日間の処理後の濃縮されたTregの活性化のマーカーとしての増殖及びCD25レベルを示す図である。
【
図9A-9D】CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞に対するペンブロリズマブ、
図1Fに示されるようにIL-2-RASが重鎖C末端に融合されたペンブロリズマブの類縁体、及びIL-2-RAS単独(
図9C及び
図9D)の活性及び結合を示す図である。CD8
+(
図9A)及びCD4
+(
図9B)T細胞に対する活性をCellTrace(商標) Violetのフローサイトメトリー検出によって測定した。CD8
+T細胞(
図9C)及びCD4
+T細胞(
図9D)に対する結合の程度をフローサイトメトリーによって測定した。
【
図10A-10D】IL-2に対するCD8
+T細胞及びCD4
+T細胞の増殖の誘導の依存性を示す図である。プレブロッキング(pre-blocking)を行わない(
図10A及び
図10B)又は飽和濃度のペンブロリズマブでプレブロッキングした(
図10C及び
図10D)場合のCD8
+T細胞(
図10A及び
図10C)又はCD4
+T細胞(
図10B及び
図10D)の増殖に対するペンブロリズマブ、非標的化IL-2-RAS、及び
図1Fに示されるようにIL-2-RASが重鎖C末端に融合されたペンブロリズマブの類縁体の影響を示す。
【
図11】
図1Fに示されるようにIL-2-RASが重鎖C末端に融合されたペンブロリズマブの類縁体、並びに
図1Bに示されるように非標的化VHHのC末端に融合されたIL-2-RAS、及び
図1Bに示されるように非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2によるCD4
+Tレスポンダー(Tresp)細胞増殖の回復を示す図である。Tresp増殖をCD3結合(Tresp+ビーズ)によって誘導した後、自家制御性T細胞(Treg)を用いて抑制した。「Tresp+ビーズ」の線は、Treg細胞の非存在下でのCD3結合によるベースラインTresp細胞増殖を示す。「No Ab」の線は、Treg細胞の存在下でのCD3結合によるベースラインTresp細胞増殖を示す。
【
図12A-12B】プレートに結合した、
図1Bに示されるように非標的化VHHのC末端に融合された非標的化野生型IL-2(「IL-2 WT」)又はIL-2-RASによるT細胞のトランス活性化を示す図である。T細胞活性化を細胞内リン酸化STAT5レベルのフローサイトメトリー検出によって測定した。CD8
+T細胞(
図12A)及びCD4
+T細胞(
図12B)の応答を示す。
【
図13A-13I】NK細胞、CD8
+T細胞、及びCD4
+T細胞に対する、
図1Hに示されるようにNKp46を標的とするヘテロ二量体scFv抗体のC末端に融合されたIL-2-RAS、NKp46を標的とするヘテロ二量体scFv抗体単独、及び
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又はIL-2-RASを含む融合タンパク質の活性及び結合を示す図である。NK細胞(
図13A)、CD8
+T細胞(
図13B)、及びCD4
+T細胞(
図13C)の増殖、並びにNK細胞(
図13D)、CD8
+T細胞(
図13E)、及びCD4
+T細胞(
図13F)のpSTATレベルをフローサイトメトリーによって測定した。NK細胞(
図13G)、CD8
+T細胞(
図13H)及びCD4
+T細胞(
図13I)に対する指定のポリペプチドの結合もフローサイトメトリーによって測定した。
【
図14A-14H】CD8
+T細胞又はCD4
+T細胞に対する、
図1Gに示されるように従来の抗LAG3ヘテロ二量体抗体(MAb)のC末端に融合されたIL-2-RAS、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcを有する抗LAG3 VHHのC末端に融合されたIL-2-RAS、
図1Bに示されるように非標的化VHHのC末端に融合されたIL-2-RAS、
図1Bに示されるように非標的化ヘテロ二量体FcのC末端に融合された野生型IL-2、又はIL-2を有しないLAG3標的化MAb若しくはLAG3標的化VHH-Fc分子の活性及び結合を示す図である。CD8
+T細胞(
図14A)及びCD4
+T細胞(
図14B)の増殖、並びにCD8
+T細胞(
図14C及び
図14E)及びCD4
+T細胞(
図14D及び
図14F)上での活性化マーカーCD25(
図14C及び
図14D)及びCD71(
図14E及び
図14F)の発現をフローサイトメトリーによって測定した。
図14G及び
図14Hは、活性化前(pre-activated)CD8
+T細胞(
図14G)及びCD4
+T細胞(
図14H)に対する結合を示す。
【
図15】VHHの標的抗原を発現せず、したがってレポーター遺伝子の誘導について過剰発現されたIL-2受容体に対する修飾IL-2の結合のみに依存するHEK-Blue IL-2レポーター細胞に対する、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcを有するVHHのC末端に融合された指定の修飾IL-2を含む融合タンパク質の活性を示す図である。レポーター細胞においてpSTAT5シグナル伝達のIL-2受容体媒介性誘導に応答して発現された分泌型胚性アルカリホスファターゼの活性を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0133】
本明細書に示される実施形態は、T細胞の活性を調節する修飾IL-2を含むポリペプチド、及び癌を治療する様々な方法におけるそれらの使用に関する。
【0134】
定義及び様々な実施形態
本明細書に使用されるセクションの見出しは編成のみを目的とし、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。
【0135】
特許出願、特許公報、及びGenbankアクセッション番号を含む本明細書で引用される全ての参考文献は、各個別の参考文献が、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすと具体的かつ個別に示されているかのように、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0136】
本明細書に記載又は参照される技術及び手順は、一般に十分に理解されており、通常、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. AuSable, et al. eds., (2003))、the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.)、PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995))、Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL、及びANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987))、Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984)、Methods in Molecular Biology, Humana Press、Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press、Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press、Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell eds., 1993-8) J. Wiley and Sons、Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987)、PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994)、Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al. eds., 1991)、Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999)、Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997)、Antibodies (P. Finch, 1997)、Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989)、Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000)、Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999)、The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)、及びCancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)並びにそれらの最新版に記載される広く利用されている方法論等の当業者による慣例的な方法論を用いて使用される。
【0137】
別段の規定がない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により別段の要求がない限り、又は明白に特段の指示がない限り、単数名辞は複数を含み、複数名辞は単数を含むものとする。様々な出典又は参考文献の間での定義の矛盾については、本明細書に示される定義が優先される。
【0138】
一般に、免疫グロブリン重鎖における残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)でのようなEUインデックスの番号付けである。「KabatでのようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0139】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「からなる(consisting)」実施形態及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態を含むと理解される。本明細書で使用される場合に、単数形("a", "an", and "the")は、特段の指示がない限り複数の参照を含む。本明細書での「又は」という用語の使用は、選択肢が互いに排他的であることを意味すると解釈されない。
【0140】
本出願では、「又は」の使用は、明白に特段の指定がない限り又は当業者によって理解されない限り、「及び/又は」を意味する。多項従属請求項の文脈では、「又は」の使用は、2項以上の先行する独立請求項又は従属請求項を引用する。
【0141】
「参照試料」、「参照細胞」、又は「参照組織」という語句は、少なくとも1つの未知の特徴を有する試料との比較として使用され得る少なくとも1つの既知の特徴を有する試料を示す。幾つかの実施形態では、参照試料は、陽性又は陰性の指標として使用され得る。参照試料を使用することで、未知の特徴を有する試料中に存在するタンパク質及び/又はmRNAのレベルに対して、例えば、健康な組織中に存在するタンパク質及び/又はmRNAのレベルを確立することができる。幾つかの実施形態では、参照試料は、同じ被験体に由来するが、試験される部分とは異なる被験体の部分に由来する試料である。幾つかの実施形態では、参照試料は、癌を取り囲む又は癌に隣接する組織領域に由来する試料である。幾つかの実施形態では、参照試料は、試験される被験体に由来するものではなく、対象の障害(例えば、特定の癌又はT細胞関連障害)を有する又は有しないことが既知の被験体に由来する試料である。幾つかの実施形態では、参照試料は、同じ被験体に由来するものであるが、被験体が癌を発症する前の時点での試料である。幾つかの実施形態では、参照試料は、同じ被験体又は異なる被験体からの良性癌試料に由来する試料である。比較のために陰性参照試料が使用される場合に、陰性参照試料における対象の分子の発現レベル又は量は、当業者が本開示を考慮して、該分子が存在しない及び/又は低いレベルの該分子が存在することを認識するレベルを示す。比較のために陽性参照試料が使用される場合に、陽性参照試料における対象の分子の発現レベル又は量は、当業者が本開示を考慮して、或るレベルの該分子が存在することを認識するレベルを示す。
【0142】
療法剤の投与から恩恵を受ける又は療法剤の投与に応答するという文脈において本明細書で使用される「便益」、「臨床的便益」、「応答性」、及び「治療的応答性」という用語は、様々なエンドポイント、例えば、減速及び完全な停止を含む疾患進行の或る程度の抑止、疾患エピソード及び/又は症状の数の減少、病変サイズの縮小、隣接する末梢器官及び/又は末梢組織内への疾患細胞浸潤の抑止(すなわち、減少、減速、又は完全な停止)、病気蔓延の抑止(すなわち、減少、減速、又は完全な停止)、障害に関連する1つ以上の症状の或る程度の軽減、治療後の無病提示、例えば無増悪生存期間の長さの増加、全生存期間の延長、より高い奏効率、及び/又は治療後の所与の時点での死亡率の低下を評価することによって推し量ることができる。「非応答性」又は「応答しない」被験体又は癌は、「応答する」という上記の条件を満たさないものである。
【0143】
「核酸分子」、「核酸」、及び「ポリヌクレオチド」という用語は、区別なく使用され、ヌクレオチドのポリマーを指し得る。そのようなヌクレオチドのポリマーは、天然及び/又は非天然のヌクレオチドを含み、限定されるものではないが、DNA、RNA、及びPNAを含み得る。「核酸配列」は、核酸分子又はポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドの線状配列を指す。
【0144】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために区別なく使用され、最小の長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは、天然又は非天然のアミノ酸残基を含み、限定されるものではないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、及び多量体を含み得る。この定義には、完全長タンパク質及びその断片の両方が含まれる。これらの用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化等を含む。さらに、本開示の目的で、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加、及び置換等の修飾(一般に性質について保存的)を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発によるような意図的なものであり得る、又はタンパク質を産生する宿主の変異若しくはPCR増幅によるエラーによるような偶発的なものであり得る。「アミノ酸配列」は、ポリペプチド又はタンパク質に含まれるアミノ酸の線状配列を指す。
【0145】
本明細書で使用される「IL-2」又は「インターロイキン-2」は、細胞内でのIL-2前駆体のプロセシングから生ずるあらゆる天然の成熟IL-2を指す。この用語は、特段の指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル又はアカゲザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物起源からのIL-2を含む。この用語はまた、スプライス変異体又はアレル変異体等のIL-2の天然に存在する変異体を含む。非限定的な例示的なヒトIL-2アミノ酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_000577.2に示されている。配列番号1(成熟型)を参照されたい。
【0146】
本明細書で使用される「修飾IL-2」は、少なくとも1つのアミノ酸位置での置換により野生型IL-2アミノ酸配列とは異なるポリペプチドを指す。
【0147】
抗原又はエピトープに「特異的に結合する」という用語は、当該技術分野で十分に理解されている用語であり、そのような特異的な結合を決定する方法も当該技術分野で十分に知られている。別の細胞又は物質と反応又は会合するよりも特定の細胞又は物質とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間及び/又はより高い親和性で反応又は会合する場合に、分子は「特異的な結合」又は「優先的な結合」を示すと言及される。抗原結合ドメインは、他の物質に結合するよりも高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/又はより長い持続時間で結合する場合に、抗原に「特異的に結合」又は「優先的に結合」する。例えば、エピトープに特異的に又は優先的に結合するsdAb又はVHH含有ポリペプチドは、同じ標的抗原上の他のエピトープ又は他の標的抗原上のエピトープに結合するよりも高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/又はより長い持続時間でこのエピトープと結合するsdAb又はVHH含有ポリペプチドである。また、この定義を解釈することにより、例えば、第1の抗原に特異的又は優先的に結合する抗原結合ドメインが、第2の抗原に特異的又は優先的に結合し得る又は結合し得ないことも理解される。したがって、「特異的な結合」又は「優先的な結合」は、排他的な結合を(含み得るものの)必ずしも必要としない。一般に、必ずしもそうとは限らないが、結合への言及は優先的な結合を意味する。「特異性」は、結合性タンパク質が抗原に選択的に結合する能力を指す。
【0148】
本明細書で使用される場合に、IL-2の活性に関する「調節する」という用語は、IL-2の活性の変化を指す。幾つかの実施形態では、「調節する」とは、IL-2活性の増加を指す。
【0149】
本明細書で使用される場合に、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば、抗原結合ドメイン含有ポリペプチド)が結合する標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質等の抗原)上の部位を指す。エピトープは、しばしば、アミノ酸、ポリペプチド、又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面編成物を含み、特定の3次元構造的特徴及び特定の電荷特徴を有する。エピトープは、標的分子の連続残基及び/又は並置された非連続残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)の両方から形成され得る。連続残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されるエピトープは、通常、変性溶剤への曝露で保持されるが、三次フォールディングにより形成されるエピトープは、通常、変性溶剤による処理で失われる。エピトープは、限定されるものではないが、少なくとも3個、少なくとも5個、又は8個~10個の残基(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)を含み得る。幾つかの実施形態では、エピトープは、20残基(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)未満、15残基未満、又は12残基未満の長さである。2つの抗体は、それらが抗原に対して競合的結合を示す場合に、抗原内の同じエピトープに結合し得る。幾つかの実施形態では、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基との或る特定の最小距離によって特定され得る。幾つかの実施形態では、エピトープは、上記距離によって特定され得て、抗原結合分子の残基と抗原残基との間の結合(例えば、水素結合)に関与するそれらの残基に更に限定され得る。エピトープは、様々なスキャンによっても同様に特定され得る。例えば、アラニンスキャン又はアルギニンスキャンは、抗原結合分子が相互作用し得る1つ以上の残基を示すことができる。明示的に示されない限り、エピトープとしての残基のセットは、特定の抗原結合ドメイン又は分子に対するエピトープの一部であることから他の残基を除外するものではない。むしろ、そのようなセットの存在は、最小のエピトープの列(又は種類のセット)を示す。したがって、幾つかの実施形態では、エピトープとして特定された残基のセットは、抗原上のエピトープについての残基の排他的リストではなく、抗原に関連する最小のエピトープを示す。
【0150】
「非線状エピトープ」又は「立体構造エピトープ」は、エピトープに特異的な抗原結合分子(例えば、抗原結合ドメイン含有ポリペプチド)が結合する抗原性タンパク質内の非連続的なポリペプチド、アミノ酸及び/又は糖を含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの残基がエピトープの他の示された残基と非連続的であるが、1つ以上の残基が他の残基と連続的である場合もある。
【0151】
「線状エピトープ」は、エピトープに特異的な抗原結合分子(例えば、抗原結合ドメイン含有ポリペプチド)が結合する抗原性タンパク質内の連続的なポリペプチド、アミノ酸及び/又は糖を含む。幾つかの実施形態では、線状エピトープ内の残基の全てが、抗原結合分子によって直接的に結合される(又は結合に関与する)必要があるわけではないことに留意されたい。幾つかの実施形態では、線状エピトープは、事実上線状エピトープの配列からなるペプチドによる免疫化に由来し得る、又はタンパク質の残部から相対的に分離されたタンパク質の構造区間に由来し得る(こうして、抗原結合分子は、少なくとも主として、まさにその配列区間と相互作用し得る)。
【0152】
「抗体」及び「抗原結合分子」という用語は、最も広い意味で区別なく使用され、限定されるものではないが、慣例的な抗体(典型的には、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含む)、シングルドメイン抗体(sdAb、典型的には重鎖に類似している1つだけの鎖を含む)、VHH含有ポリペプチド(少なくとも1つの重鎖のみの抗体可変ドメイン、すなわちVHHを含むポリペプチド)、及び所望の抗原結合活性を示す限り上述のいずれかのフラグメントを含む抗原結合ドメインを含む様々なポリペプチドを包含する。幾つかの実施形態では、抗体は二量体化ドメインを含む。そのような二量体化ドメインとしては、限定されるものではないが、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3を含み、CH1は典型的には、軽鎖定常ドメインCLと対をなす一方で、ヒンジは二量体化を介在する)及びFc領域(ヒンジ、CH2、及びCH3を含み、ヒンジは二量体化を介在する)が挙げられる。抗体という用語には、限定されるものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びラクダ(ラマを含む)、サメ、マウス、ヒト、カニクイザル等の様々な種の抗体も含まれる。
【0153】
「シングルドメイン抗体」及び「sdAb」という用語は、単一の単量体ドメイン、典型的には、軽鎖を有しない重鎖(又はVHH)を有する抗体を指すために、本明細書では区別なく使用される。
【0154】
本明細書で使用される「VHH」又は「VHHドメイン」又は「VHH抗原結合ドメイン」という用語は、ラクダ抗体又はサメ抗体等のシングルドメイン抗体の抗原結合部分を指す。幾つかの実施形態では、VHHは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4と表される3つのCDRと4つのフレームワーク領域とを含む。幾つかの実施形態では、VHHは、VHHが実質的に抗原結合及び特異性を維持する限り、部分的なFR1及び/又はFR4のみを含むように又はそれらのフレームワーク領域の一方若しくは両方を欠くように、N末端又はC末端で切断されていてもよい。
【0155】
「VHH含有ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つのVHHドメインを含むポリペプチドを指す。幾つかの実施形態では、VHHポリペプチドは、2つ、3つ、又は4つ以上のVHHドメインを含み、ここで、各VHHドメインは、同じ又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、VHH含有ポリペプチドは、Fc領域を含む。幾つかのそのような実施形態では、VHHポリペプチドは、二量体を形成し得る。VHH含有ポリペプチドの非限定的な構造としては、VHH1-Fc、VHH1-VHH2-Fc、及びVHH1-VHH2-VHH3-Fcが挙げられ、ここで、VHH1、VHH2、及びVHH3は、同じ又は異なっていてもよい。そのような構造の幾つかの実施形態では、或るVHHは、リンカーによって別のVHHに連結され得る、又は或るVHHは、リンカーによってFcに連結され得る。幾つかのそのような実施形態では、リンカーは、1個~20個のアミノ酸、好ましくは、主にグリシン及び任意にセリンから構成される1個~20個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、VHH含有ポリペプチドがFcを含む場合に、それは二量体を形成する。したがって、構造VHH1-VHH2-Fcは、それが二量体を形成する場合に、四価であるとみなされる(すなわち、二量体は4つのVHHドメインを有する)。同様に、構造VHH1-VHH2-VHH3-Fcは、それが二量体を形成する場合に、六価であるとみなされる(すなわち、二量体は6つのVHHドメインを有する)。
【0156】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団の抗体(sdAb又はVHH含有ポリペプチドを含む)を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に生じる可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する抗体である。したがって、モノクローナル抗体の試料は、抗原上の同じエピトープに結合することができる。「モノクローナル」という修飾成句は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の性質を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得る、又は米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によって作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty et al., 1990, Nature 348:552-554に記載される技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離され得る。
【0157】
「CDR」という用語は、少なくとも1つの当業者に対する特定様式によって定義される相補性決定領域を示す。幾つかの実施形態では、CDRは、Chothia番号付けスキーム、Kabat番号付けスキーム、KabatとChothiaとの組合せ、AbM定義、及び/又は接触定義(contact definition)のいずれかに従って定義され得る。VHHは、CDR1、CDR2、及びCDR3と表される3つのCDRを含む。
【0158】
本明細書で使用される「重鎖定常領域」という用語は、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、すなわち、CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3を含む領域を指す。当然ながら、ドメイン内の機能を変えない欠失及び改変は、特段の指定がない限り、「重鎖定常領域」という用語の範囲内に含まれる。非限定的な例示的な重鎖定常領域としては、γ、δ、及びαが挙げられる。非限定的な例示的な重鎖定常領域としては、ε及びμも挙げられる。それぞれの重鎖定常領域は、1つの抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体である。さらに、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。或る特定のアイソタイプは、更にサブクラスに細分化され得る。例えば、IgG抗体としては、限定されるものではないが、IgG1(γ1定常領域を含む)抗体、IgG2(γ2定常領域を含む)抗体、IgG3(γ3定常領域を含む)抗体、及びIgG4(γ4定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgA抗体としては、限定されるものではないが、IgA1(α1定常領域を含む)抗体及びIgA2(α2定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgM抗体としては、限定されるものではないが、IgM1及びIgM2が挙げられる。
【0159】
本明細書で使用される「Fc領域」は、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域の一部を指す。幾つかの実施形態では、Fc領域は、ヒンジ、CH2、及びCH3を含む。様々な実施形態では、Fc領域がヒンジを含む場合に、ヒンジは、2つのFc含有ポリペプチド間の二量体化を介在する。Fc領域は、本明細書で論じられる任意の抗体重鎖定常領域アイソタイプのものであり得る。幾つかの実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。
【0160】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」は、本明細書で論じられるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来するアクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むことができる、又はアミノ酸配列の変化を含み得る。幾つかの実施形態では、アミノ酸の変化の数は、VHH等の単一の抗原結合ドメイン内の全てのヒトフレームワークにわたって10個未満、又は9個未満、又は8個未満、又は7個未満、又は6個未満、又は5個未満、又は4個未満、又は3個未満である。
【0161】
「親和性」は、分子(例えば、抗体又はVHH含有ポリペプチド)の単一の結合部位及びその結合相手(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の合計の強さを指す。分子Xのその相手Yに対する親和性又は見かけの親和性は、一般に、それぞれ解離定数(KD)又はKD(見かけ)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されている方法を含む、当該技術分野で既知の通常の方法(例えば、ELISA KD、KinExA、フローサイトメトリー、及び/又は表面プラズモン共鳴デバイス等)によって測定され得る。このような方法としては、限定されるものではないが、BIAcore(商標)、Octet(商標)、又はフローサイトメトリーを要する方法が挙げられる。
【0162】
本明細書で使用される「KD」という用語は、抗原結合分子/抗原相互作用の平衡解離定数を指す。本明細書で「KD」という用語が使用される場合に、それには、KD及びKD(見かけ)が含まれる。
【0163】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子のKDは、フローサイトメトリーによって、抗原発現細胞系統を使用し、各抗体濃度で測定された平均蛍光を非線形1サイト結合方程式(graphpad社のPrism Software)にフィッティングして測定される。幾つかのそのような実施形態では、KDはKD(見かけ)である。
【0164】
「生物学的活性」という用語は、分子の任意の1つ以上の生物学的特性(in vivoで見られるように天然に存在するか、又は組換え手段によって提供される若しくは可能となるかどうか)を指す。生物学的特性としては、限定されるものではないが、リガンドの結合、細胞増殖(T細胞増殖等)の誘導又は増加、及びサイトカインの発現の誘導又は増加が挙げられる。
【0165】
本明細書で使用される「IL-2活性」又はIL-2の「生物学的活性」という用語には、IL-2の任意の生物学的作用又は生物学的関連機能の少なくとも1つが含まれる。幾つかの実施形態では、IL-2活性としては、IL-2がT細胞増殖を誘導し、及び/又はナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する能力が挙げられる。非限定的な例示的なIL-2活性としては、pSTAT5発現の増加、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖の増加、T細胞上でのCD71発現の増加、並びにCD4+T細胞及びCD8+T細胞の活性化及び増殖に対するTreg細胞の抑制活性の低下が挙げられる。
【0166】
「アゴニスト」抗体又は「活性化」抗体(sdAb又はVHH含有ポリペプチド等)は、標的抗原の生物学的活性を増加及び/又は活性化する抗体である。幾つかの実施形態では、アゴニスト抗体は、抗原に結合し、その生物学的活性を少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%以上増加させる。
【0167】
「アンタゴニスト」抗体、「ブロッキング」抗体、又は「中和」抗体は、標的抗原の生物学的活性を低下及び/又は不活性化する抗体である。幾つかの実施形態では、中和抗体は、抗原に結合し、その生物学的活性を少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%、90%、95%、99%以上低下させる。
【0168】
「親和性成熟」VHH含有ポリペプチドは、VHH含有ポリペプチドの抗原に対する親和性に改善をもたらす改変を有しない親VHH含有ポリペプチドと比較して1つ以上のCDRに1つ以上のそのような改変を有するVHH含有ポリペプチドを指す。
【0169】
本明細書で使用される「ヒト化VHH」は、1つ以上のフレームワーク領域が実質的にヒトフレームワーク領域で置き換えられたVHHを指す。幾つかの場合には、ヒト免疫グロブリンの或る特定のフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化VHHは、当初のVHHにもヒトフレームワーク配列にも見られないが、VHH又はVHH含有ポリペプチドの性能を更に改良及び最適化するために含まれる残基を含み得る。幾つかの実施形態では、ヒト化VHH含有ポリペプチドは、ヒトFc領域を含む。理解されるように、ヒト化配列は、その一次配列によって特定され得て、必ずしも抗体が作製された過程を示すわけではない。
【0170】
「機能的Fc領域」は、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、Fc受容体結合、Clq結合及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、並びにB細胞活性化等が挙げられる。このようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域を結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせることを要し、様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0171】
「天然配列のFc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域としては、天然配列のヒトIgG1 Fc領域(非Aアロタイプ及びAアロタイプ)、天然配列のヒトIgG2 Fc領域、天然配列のヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列のヒトIgG4 Fc領域、並びにそれらの天然に存在する変異体が挙げられる。
【0172】
「変異型Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、「変異型Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるが、天然配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、変異型Fc領域は、天然配列のFc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然配列のFc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、少なくとも1個のアミノ酸置換、例えば、約1個~約10個のアミノ酸置換、好ましくは、約1個~約5個のアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態では、本明細書の変異型Fc領域は、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性、それらと少なくとも約90%の配列同一性、それらと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0173】
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載している。幾つかの実施形態では、FcγRは、天然のヒトFcRである。幾つかの実施形態では、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRIサブクラス、FcγRIIサブクラス、及びFcγRIIIサブクラスの受容体であって、これらの受容体のアレル変異体及び選択的スプライシングされた形態を含む受容体を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは同様のアミノ酸配列を有するが、主にその細胞質ドメインが異なる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照されたい)。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)、Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994)、及びde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)でレビューされている。将来特定されるものを含む他のFcRは、本明細書では「FcR」という用語によって包含される。例えば、「Fc受容体」又は「FcR」という用語はまた、胎児性受容体FcRnを含み、これは、母体のIgGの胎児への移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))及び免疫グロブリンの恒常性の調節の役割を担う。FcRnへの結合を測定する方法は既知である(例えば、Ghetie and Ward, Immunol. Today 18(12):592-598 (1997)、Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997)、Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004)、国際公開第2004/92219号(Hintonら)を参照されたい)。
【0174】
本明細書で使用される「実質的に同様」又は「実質的に同じ」という用語は、当業者が2つ以上の値の間の差を、上記値によって測定される生物学的特徴の文脈内で生物学的意義及び/又は統計学的有意性が殆どない又は全くないとみなすような、2つ以上の数値の間の十分に高度な類似性を示す。幾つかの実施形態では、2つ以上の実質的に同様の値は、5%、10%、15%、20%、25%、又は50%のいずれか1つの概数以下だけ異なる。
【0175】
ポリペプチド「変異体」とは、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後に、配列同一性の部分として保存的置換を一切考慮せずに、天然配列のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体としては、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端で1つ以上のアミノ酸残基が付加又は欠失されているポリペプチドが挙げられる。幾つかの実施形態では、変異体は、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する。幾つかの実施形態では、変異体は、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する。幾つかの実施形態では、変異体は、天然配列のポリペプチドと少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0176】
本明細書で使用される場合に、ペプチド配列、ポリペプチド配列、又は抗体配列に関する「パーセント(%)のアミノ酸配列同一性」及び「ホモロジー」は、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後に、配列同一性の部分として保存的置換を一切考慮せずに、特定のペプチド配列又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントのアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR社)ソフトウェア等の公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技能の範囲内である様々な方法で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0177】
アミノ酸置換には、限定されるものではないが、ポリペプチド中の或るアミノ酸を別のアミノ酸により置き換えることが含まれ得る。例示的な置換を表1に示す。アミノ酸置換を対象の抗体に導入し、産物を所望の活性、例えば、抗原若しくはレセプター結合の保持/改善、抗原若しくはレセプター結合の減少、免疫原性の減少、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【0178】
【0179】
共通の側鎖特性に従ってアミノ酸をグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0180】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0181】
「ベクター」という用語は、宿主細胞内で増殖され得る、クローニングされたポリヌクレオチド(単数又は複数)を含むように操作することができるポリヌクレオチドを記載するために使用される。ベクターは、以下のエレメントのうちの1つ以上を含み得る:複製起点、対象のポリペプチドの発現を調節する1つ以上の調節配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー等)、及び/又は1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子及び比色アッセイで使用することができる遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼ等)。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において対象のポリペプチドを発現するために使用されるベクターを指す。
【0182】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得る又はレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。例示的な真核細胞としては、霊長類動物細胞又は非霊長類動物細胞等の哺乳動物細胞、酵母等の真菌細胞、植物細胞、及び昆虫細胞が挙げられる。非限定的な例示的な哺乳動物細胞としては、限定されるものではないが、NSO細胞、PER.C6(商標)細胞(Crucell社)、並びに293F細胞及びCHO細胞、並びにそれらの派生物、例えば293-6E細胞、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO-S細胞、及びCHO-DS細胞が挙げられる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれるが、自然変異、偶発変異、又は意図的変異のため、子孫は必ずしも当初の親細胞と完全に同一(形態又はゲノムDNA相補において)であるとは限らない。宿主細胞には、本明細書で提供されるポリヌクレオチド(複数の場合もある)と共にin vivoでトランスフェクションされた細胞も含まれる。
【0183】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、典型的に天然に一緒に見出される又は一緒に産生される成分の少なくとも幾つかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それを産生した細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合に、「単離された」と称される。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合に、ポリペプチドを含む上清を、それを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」とみなされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的に天然に見られるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合に、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNA等)の一部ではない場合に、又は例えば、RNAポリヌクレオチドの場合に、それを産生した細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合に、「単離された」と称される。したがって、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と称され得る。
【0184】
「個体」及び「被験体」という用語は、動物、例えば哺乳動物を指すために本明細書では区別なく使用される。幾つかの実施形態では、限定されるものではないが、ヒト、齧歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳動物実験動物、哺乳動物家畜、哺乳動物競技用動物(sport animals)、及び哺乳動物ペットを含む哺乳動物を治療する方法が提供される。幾つかの例では、「個体」又は「被験体」は、疾患又は障害の治療を必要とする個体又は被験体を指す。幾つかの実施形態では、治療を受ける被験体は、被験体が治療に関連する障害を有する又は障害を患う十分なリスクがあると特定されたことを表す患者であり得る。
【0185】
本明細書で使用される「疾患」又は「障害」は、治療が必要とされる及び/又は所望される状態を指す。
【0186】
「腫瘍細胞」、「癌細胞」、「癌」、「腫瘍」、及び/又は「新生物」という用語は、特段の指定がない限り、本明細書では区別なく使用され、身体器官及び系の正常な機能を妨げる制御不能な増殖及び/又は異常な細胞生存の増加及び/又はアポトーシスの阻害を示す細胞(又は複数の細胞)を指す。この定義には、良性及び悪性の癌、ポリープ、過形成、並びに潜伏腫瘍又は微小転移が含まれる。
【0187】
「癌」及び「腫瘍」という用語は、固形癌及び血液癌/リンパ腺癌を包含するとともに、異形成等の悪性腫瘍、前悪性腫瘍、及び良性腫瘍も包含する。また、この定義には、免疫系(例えば、免疫回避メカニズム及び免疫エスケープメカニズム)によって妨げられない異常な増殖を伴う細胞(例えば、ウイルス感染細胞)も含まれる。例示的な癌としては、限定されるものではないが、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌(胃腸癌を含む)、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌(唇、舌、口、及び咽頭)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHLを含む)、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、並びにその他の癌腫及び肉腫、並びに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連する浮腫等)及びメイグス症候群に関連する異常血管増殖が挙げられる。
【0188】
本明細書で使用される「非腫瘍細胞」という用語は、正常な細胞又は組織を指す。例示的な非腫瘍細胞としては、限定されるものではないが、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、間質性腎臓細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、骨芽細胞、及び乳房、骨格筋、膵臓、胃、卵巣、小腸、胎盤、子宮、精巣、腎臓、肺、心臓、脳、肝臓、前立腺、結腸、リンパ器官、骨に位置する細胞、及び骨由来の間葉系幹細胞が挙げられる。本明細書で使用される「末梢に位置する細胞又は組織」という用語は、腫瘍細胞の近く及び/又は腫瘍微小環境内に位置しない非腫瘍細胞を指す。
【0189】
本明細書で使用される「腫瘍微小環境内の細胞又は組織」という用語は、腫瘍細胞を取り囲む及び/又は腫瘍細胞に栄養を与える細胞、分子、細胞外マトリックス及び/又は血管を指す。例示的な腫瘍微小環境内の細胞又は組織としては、限定されるものではないが、腫瘍血管系、腫瘍浸潤リンパ球、線維芽細網細胞、内皮前駆細胞(EPC)、癌関連線維芽細胞、周皮細胞、他の間質細胞、細胞外マトリックス(ECM)の成分、樹状細胞、抗原提示細胞、T細胞、制御性T細胞(Treg細胞)、マクロファージ、好中球、骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び腫瘍の近位に位置する他の免疫細胞が挙げられる。腫瘍細胞及び/又は腫瘍微小環境内に位置する細胞/組織を特定する方法は、本明細書で以下に記載されるように当該技術分野で十分に知られている。
【0190】
幾つかの実施形態では、「増加」又は「減少」は、それぞれ、統計学的に有意な増加又は減少を指す。当業者に明らかであるように、「調節」はまた、試験作用物質が存在することを除き同じ条件と比較した、標的又は抗原のそのリガンド、結合相手、ホモ多量体形若しくはヘテロ多量体形へと会合する相手又は基質の1つ以上に対する親和性、アビディティー、特異性及び/又は選択性の変化(増加又は減少のいずれかであり得る)を引き起こすこと、標的又は抗原が存在する培地又は環境における1つ以上の条件(pH、イオン強度、補因子の存在等)に対する標的又は抗原の感受性の変化(増加又は減少のいずれかであり得る)を引き起こすこと、及び/又は細胞増殖若しくはサイトカイン産生を含み得る。これは、関与する標的に応じて、それ自体が既知の又は本明細書に記載される任意の適切な方法で及び/又は任意の適切なアッセイを使用して決定され得る。
【0191】
本明細書で使用される場合に、「免疫応答」は、疾患(例えば、癌又は癌転移)の発症を抑止若しくは未然防止する又はその症状を改善するのに十分である細胞性免疫応答及び/又は体液性免疫応答を包含することが意図される。「免疫応答」は、自然免疫系及び適応免疫系の両方の側面を包含し得る。
【0192】
本明細書で使用される場合に、「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法である。本明細書で使用される「治療」は、ヒトを含む哺乳動物における疾患用の療法薬の任意の投与又は適用を対象とする。本開示の目的では、有益な又は所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の進展(例えば、転移、例えば肺又はリンパ節への転移)の未然防止又は遅延、疾患の再発の未然防止又は遅延、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善、疾患又は疾患の進行の抑止、疾患又はその進行の抑止又は減速、その発達の阻止、及び寛解(部分的でも全体的でも)のいずれか1つ以上が挙げられる。「治療」には、増殖性疾患の病理学的結果の軽減も含まれる。本明細書で提供される方法は、治療のこれらの側面のいずれか1つ以上を企図している。上記に従って、治療という用語は、障害の全ての側面を100パーセント除去する必要はない。
【0193】
「改善する」とは、療法剤を投与しない場合と比べて、1つ以上の症状が軽減又は向上することを意味する。「改善」には、症状の持続期間が短縮又は減少することも含まれる。
【0194】
「抗癌剤」という用語は、本明細書では、その最も広い意味で、1つ以上の癌の治療に使用される作用物質を指すために使用される。そのような作用物質の例示的なクラスとしては、限定されるものではないが、化学療法剤、抗癌生物製剤(サイトカイン、受容体細胞外ドメイン-Fc融合物、及び抗体等)、放射線療法薬、CAR-T療法薬、治療用オリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNA等)、及び腫瘍溶解性ウイルスが挙げられる。
【0195】
「生体試料」という用語は、生きている生き物又はかつて生きていた生き物からの或る量の物質を意味する。そのような物質としては、限定されるものではないが、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、羊水、滑液、内皮細胞、白血球、単球、他の細胞、器官、組織、骨髄、リンパ節、及び脾臓が挙げられる。
【0196】
「コントロール」又は「参照」という用語は、分析物を含まないことが既知の組成物(「ネガティブコントロール」)又は分析物を含むことが既知の組成物(「ポジティブコントロール」)を指す。ポジティブコントロールは、既知の濃度の分析物を含み得る。
【0197】
「抑止」又は「抑止する」という用語は、任意の表現型特徴の減少若しくは停止、又はその特徴の発生率、程度、若しくは可能性の減少若しくは停止を指す。「低減する」又は「抑止する」とは、参照と比較して、活性、機能、及び/又は量を減少させる、低減する、又は停止することである。幾つかの実施形態では、「低減する」又は「抑止する」とは、10%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施形態では、「低減する」又は「抑止する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施形態では、「低減する」又は「抑止する」とは、75%、85%、90%、95%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施形態では、上記の量は、或る期間にわたって、同じ期間にわたるコントロールに対して抑止又は減少される。
【0198】
本明細書で使用される場合に、「疾患の発症を遅延させる」とは、疾患(癌等)の発症を遅らせる、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定化させる、抑制する、及び/又は引き延ばすことを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療される個体に応じて、様々な長さの時間となり得る。当業者に明らかであるように、十分な又は大幅な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で未然防止を包含し得る。例えば、転移の発生等の末期癌を遅延させることができる。
【0199】
本明細書で使用される「未然防止」は、疾患の素因を有し得るが、まだ疾患と診断されていない被験体における疾患の発生又は再発に対する予防をもたらすことを含む。特段の指示がない限り、「低減する」、「抑止する」、又は「未然防止する」という用語は、全期間にわたる完全な未然防止を示すのではなく又は必要とするのではなく、測定される期間だけにわたる未然防止を示す又は必要とする。
【0200】
物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストが個体において所望の応答を誘発する能力等の要因によって変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な作用が物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの任意の有毒作用又は有害作用を上回る量である。治療有効量は、1回以上の投与で送達され得る。治療有効量は、必要な投与量で必要な時間にわたって、所望の治療的結果及び/又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0201】
「医薬製剤」及び「医薬組成物」という用語は、有効成分(複数の場合もある)の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であり、製剤を投与する被験体に対して許容不可能なほど有毒な追加の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は滅菌され得る。
【0202】
「薬学的に許容可能な担体」は、被験体に投与するための「医薬組成物」を一緒に含む療法剤とともに使用される当該技術分野において慣用の非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容可能な担体は、使用される製剤にとって適切である。
【0203】
1つ以上の更なる療法剤と「組み合わせて」の投与には、同時(併用)投与及び任意の順序での連続投与が含まれる。
【0204】
「同時に」という用語は、本明細書では、2つ以上の療法剤の投与であって、投与の少なくとも一部が時間的に重複する、又は1つの療法剤の投与が他の療法剤の投与に対して短い期間に含まれる、又は両方の療法剤の治療効果が少なくとも或る期間にわたり重複する、投与を指すために使用される。
【0205】
「連続的に」という用語は、本明細書では、2つ以上の療法剤の投与であって、時間的に重複しない、又は療法剤の治療効果が重複しない、投与を指すために使用される。
【0206】
本明細書で使用される場合に、「~と組み合わせて」は、或る治療法の施与に別の治療法を加えることを指す。したがって、「~と組み合わせて」は、或る治療法を、個体に他の治療法を施す前、その間、又はその後に施すことを指す。
【0207】
「添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通例含まれる使用説明書であって、そのような治療製品の使用に関する指示、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む、使用説明書を指すために使用される。
【0208】
「製造品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患若しくは障害(例えば、癌)の治療用の医薬、又は本明細書に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するプローブを含む任意の製造物(例えば、パッケージ又は容器)又はキットである。幾つかの実施形態では、製造物又はキットは、本明細書に記載される方法を実施するユニットとして宣伝、配送、又は販売される。
【0209】
「標識」及び「検出可能な標識」という用語は、例えば、抗体又は抗原に結合されて、特異的結合ペアのメンバー間の反応(例えば、結合)を検出可能にする部分を意味する。特異的結合ペアの標識されたメンバーは、「検出可能に標識された」と称される。したがって、「標識された結合性タンパク質」という用語は、結合性タンパク質の特定をもたらす標識が組み込まれたタンパク質を指す。幾つかの実施形態では、標識は、視覚的に又は機器的手段により検出可能なシグナルを生成し得る検出可能なマーカー、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込み又はマーキングされたアビジン(例えば、蛍光マーカー又は光学的方法若しくは比色法により検出され得る酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部のポリペプチドへの結合である。ポリペプチドの標識の例としては、限定されるものではないが、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Sm)、色素原、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される予め決められたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、及びガドリニウムキレート等の磁性剤が挙げられる。イムノアッセイに通常使用される標識の代表的な例としては、光を発する部分、例えば、アクリジニウム化合物、及び蛍光を発する部分、例えば、フルオレセインが挙げられる。この点について、その部分自体は検出可能に標識されていない場合もあるが、更に別の部分と反応すると検出可能になり得る。
【0210】
例示的な修飾IL-2含有ポリペプチド
本明細書では、修飾IL-2を含むポリペプチドが提供される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、IL-2受容体に対する修飾IL-2の親和性を野生型IL-2と比較して低下させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。様々な実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2を含むポリペプチドは、IL-2Rのアゴニストである。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は修飾ヒトIL-2であり、IL-2RはヒトIL-2Rである。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、IL-2Rに対するヒト野生型IL-2の親和性より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い親和性でヒトIL-2Rに結合する。
【0211】
様々な実施形態では、修飾IL-2を含むポリペプチドは、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2を含むポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの抗原結合ドメインを含み、ここで、少なくとも1つ又は全てがT細胞又はナチュラルキラー細胞抗原に結合する。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2を含むポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、又は4つの抗原結合ドメインを含み、ここで、少なくとも1つ又は全てがT細胞又はナチュラルキラー細胞抗原に結合する。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、抗原結合ドメインの非存在下でIL-2Rに結合しない又はIL-2Rを活性化しない。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、ポリペプチドがIL-2Rと同じ細胞上の抗原に結合する抗原結合ドメインを含む場合にのみ細胞上のIL-2Rに結合し、及び/又はIL-2Rを活性化する。
【0212】
様々な実施形態では、修飾IL-2は、P65、D84、E95、M23、及びH16から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、アミノ酸位置P65、H16、及びD84に置換を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、アミノ酸位置P65、H16、D84、及びM23に置換を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、アミノ酸位置P65、H16、D84、及びE95に置換を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、アミノ酸位置P65、H16、D84、M23、及びE95に置換を含む。
【0213】
幾つかの実施形態では、アミノ酸位置P65での置換は、P65R、P65E、P65K、P65H、P65Y、P65Q、P65D、及びP65Nから選択される。幾つかの実施形態では、アミノ酸位置H16での置換は、H16A、H16G、H16S、H16T、H16V、及びH16Pから選択される。幾つかの実施形態では、アミノ酸位置D84での置換は、D84S、D84G、D84A、D84T、D84V、及びD84Pから選択される。幾つかの実施形態では、アミノ酸位置M23での置換は、M23A、M23G、M23S、M23T、M23V、及びM23Pから選択される。幾つかの実施形態では、アミノ酸位置E95での置換は、E95Q、E95G、E95S、E95T、E95V、E95P、E95H、及びE95Nから選択される。
【0214】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、アミノ酸位置F42に置換を更に含む。幾つかのそのような実施形態では、F42での置換は、F42K、F42A、F42R、F42A、F42G、F42S、及びF42Tから選択される。
【0215】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、Y45及びL72から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を更に含む。幾つかのそのような実施形態では、修飾IL-2は、Y45A及びL72Gから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0216】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、T3及びC125から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置に少なくとも1つの置換を更に含む。幾つかのそのような実施形態では、修飾IL-2は、T3A及びC125Aから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0217】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、置換P65R、H16A、及びD84Sを含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、及びM23Aを含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、及びE95Qを含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、置換P65R、H16A、D84S、M23A、及びE95Qを含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、H16A-F42K、D84S-F42K、E15S-F42K、M23A-F42K、E95Q-F42K、P65R-H16A、P65R-D84S、P65R-E15S、P65R-M23A、P65R-E95Q、T3A-C125S、T3A-P65R-C125S、T3A-H16A-C125S、T3A-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-C125S、T3A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-M23A-P65R-D84S-C125S、T3A-H16A-P65R-D84S-E95Q-C125S、及びT3A-H16A-M23A-P65R-D84S-E95Q-C125Sから選択される置換を含む。
【0218】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、修飾IL-2が修飾ヒトIL-2であってもよい。様々な実施形態では、置換のアミノ酸位置は、配列番号1中のアミノ酸位置に対応する。
【0219】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、配列番号84と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含み、本明細書で論じられる置換の1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、本明細書で論じられる置換の1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、配列番号3、配列番号5~配列番号9、配列番号12~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0220】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、T細胞又はナチュラルキラー細胞抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、又は4つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む。幾つかの実施形態では、Fc領域は、生理学的条件で修飾IL-2含有ポリペプチドの二量体化を介在し、こうして二量体が形成されることにより、抗原結合部位の数が2倍となる。例えば、3つの抗原結合ドメインとFc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、単量体としては三価であるが、生理学的条件では、Fc領域が二量体化を介在することができ、こうして修飾IL-2含有ポリペプチドは、そのような条件下で六価の二量体として存在する。
【0221】
様々な実施形態では、修飾IL-2を含むポリペプチドは、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択される配列を含む。様々な実施形態では、修飾IL-2を含むポリペプチドは、配列番号3、配列番号5~配列番号9、及び配列番号12~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択される配列を含む。様々な実施形態では、修飾IL-2を含むポリペプチドは、配列番号21を含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、抗原結合ドメインを更に含む。幾つかの実施形態では、抗原結合ドメインはヒト化されている。
【0222】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインは、天然の(natural or native)同種結合相手、Anticalin(操作されたリポカリン)、Darpin、Fynomer、Centyrin(操作されたフィブロネクチンIII型ドメイン)、シスチンノットドメイン、Affilin、Affibody、又は操作されたCH3ドメインである。幾つかの実施形態では、天然の同種結合相手は、腫瘍関連抗原(TAA)の天然の同種結合相手又はTAAに対する結合活性を示すその変異体のリガンド若しくは細胞外ドメイン、又はその結合フラグメントを含む。
【0223】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2と少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含むポリペプチドは、抗腫瘍T細胞応答又はナチュラルキラー細胞応答を増強する一方でTreg、末梢T細胞、及び内皮細胞を回避する。幾つかのそのような実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインが修飾IL-2を活性化T細胞に対して標的化する。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、IL-2Rが、少なくとも1つの抗原結合ドメインが結合する抗原と同じ細胞上にある場合にのみIL-2Rに結合してIL-2Rを調節する。幾つかの実施形態では、修飾IL-2は、IL-2Rが、少なくとも1つの抗原結合ドメインが結合する抗原を発現する細胞とは異なる細胞上にある場合にIL-2Rに結合しない又はIL-2Rを活性化しない。
【0224】
様々な実施形態では、抗原結合ドメインは、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、4-1BB、OX40、GITR、CD8a、CD8b、CD4、NKp30、NKG2A、TIGIT、TGFβR1、TGFβR2、Fas、NKG2D、NKp46、PD-L1、CD107a、ICOS、TNFR2、及びCD16aから選択されるタンパク質に結合する。幾つかの実施形態では、修飾IL-2を含むポリペプチドは、ニボルマブ(BMS社;PD-1)、ペンブロリズマブ(Merck社;PD-1)、AMP-514(Amplimmune社;PD-1)、TSR-042(Tesaro/AnaptysBio社、ANB-011;PD-1)、STI-A1110(Sorrento Therapeutics社;PD-1)、イピリムマブ(BMS社;CTLA-4)、トレメリムマブ(AstraZeneca社、CTLA-4)、ウレルマブ(BMS、4-1BB)、ウトミルマブ(Pfizer社、4-1BB)、アテゾリズマブ(Roche社、PD-L1)、デュルバルマブ(AstraZeneca社、PD-L1)、モナリズマブ(NKG2A、Innate Pharma社及びAstraZeneca社)、BMS-986016(Bristo- Meyers Squibb社、LAG-3)の抗原結合ドメインを含む。
【0225】
幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、PD-1に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、LAG3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、NKp46に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、NKG2Dに特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、CD8aに特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。
【0226】
幾つかの実施形態では、抗原結合ドメインはヒト化され得る。ヒト化抗原結合ドメイン(VHH含有ポリペプチド等)を含むポリペプチドは、治療分子として有用である。それというのも、ヒト化抗原結合ドメイン及びヒト化抗体は、抗体療法薬に対する免疫応答をもたらして療法薬の有効性を低下させ得る非ヒト抗体に対するヒト免疫応答を低減又は排除するからである。一般に、ヒト化抗原結合ドメイン又はヒト化抗体は、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗原結合ドメイン又はヒト化抗体はまた、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態では、ヒト化抗原結合ドメイン又はヒト化抗体における幾つかのFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の元となる抗体)からの対応する残基で置換される。
【0227】
ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson, (2008) Front. Biosci. 13: 1619-1633においてレビューされており、例えば、Riechmann et al., (1988) Nature 332:323-329、Queen et al., (1989) Proc. Natl Acad. Sci. USA 86: 10029-10033、米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号、及び米国特許第7,087,409号、Kashmiri et al., (2005) Methods 36:25-34、Padlan, (1991) Mol. Immunol. 28:489-498(「リサーフェイシング(resurfacing)」を記載している)、Dall'Acqua et al., (2005) Methods 36:43-60(「FRシャッフリング(FR shuffling)」を記載している)、並びにOsbourn et al., (2005) Methods 36:61-68及びKlimka et al., (2000) Br. J. Cancer, 83:252-260(FRシャッフリングに対する「ガイド選択(guided selection)」アプローチを記載している)で更に記載されている。
【0228】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、限定されるものではないが、「ベストフィット(best-fit)」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al. (1993) J. Immunol. 151 :2296を参照されたい)、重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285、及びPresta et al. (1993) J. Immunol, 151:2623を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, (2008) Front. Biosci. 13:1619-1633を参照されたい)、及びFRライブラリーのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al., (1997) J. Biol. Chem. 272: 10678-10684、及びRosok et al., (1996) J. Biol. Chem. 271 :22611-22618を参照されたい)が挙げられる。典型的には、VHHのFR領域をヒトFR領域と置き換えることで、ヒト化VHHが作製される。幾つかの実施形態では、ヒトFRの或る特定のFR残基を置き換えることで、ヒト化VHHの1つ以上の特性が改善される。そのような置き換えられた残基を有するVHHドメインも、本明細書では更に「ヒト化」と称される。
【0229】
様々な実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域であるか、又はヒトFc領域に由来する。
【0230】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、IgG1 E233、L234、及びL235に対応する3つのアミノ酸欠失を下部ヒンジに含み、本明細書で「Fc xELL」と称される。Fc xELLポリペプチドはFcγRと結合しないため、「エフェクターサイレント」又は「エフェクターヌル」と称されるが、幾つかの実施形態では、xELL Fc領域はFcRnに結合するため、半減期の延長及びFcRn媒介性リサイクリング(FcRn mediated recycling)と関連したトランスサイトーシスを伴う。
【0231】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、変異M252Y及びM428Vを含み、本明細書で「Fc-YV」と称される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、変異M252Y及びM428Lを含み、本明細書で「Fc-YL」と称される。幾つかの実施形態では、そのような変異は、エンドソームの酸性pH(6.5近く)でFcRnへの結合を増強するのに対し、中性pH(約7.2)では検出可能な結合が失われることから、FcRn媒介性リサイクリングの増強及び半減期の延長が可能となる。
【0232】
幾つかの実施形態では、本明細書で修飾IL-2含有ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、ヘテロ二量体化のために設計された変異を含み、本明細書において「ノブ」及び「ホール」と称される。幾つかの実施形態では、「ノブ」Fc領域は、変異T366Wを含む。幾つかの実施形態では、「ホール」Fc領域は、変異T366S、L368A、及びY407Vを含む。幾つかの実施形態では、ヘテロ二量体化に使用されるFc領域は、ヘテロ二量体Fcペアの第1のメンバー上の変異S354C等の追加の変異を含み、この変異は、ヘテロ二量体Fcペアの第2のメンバー上の対応する変異Y349Cと非対称ジスルフィドを形成する。幾つかの実施形態では、ヘテロ二量体Fcペアの一方のメンバーは、修飾H435R又はH435Kを含むことで、FcRn結合を維持しつつプロテインAの結合を妨げる。幾つかの実施形態では、ヘテロ二量体Fcペアの一方のメンバーは、修飾H435R又はH435Kを含むのに対して、ヘテロ二量体Fcペアの第2のメンバーは、H435で修飾されていない。様々な実施形態では、ホールFc領域は、修飾H435R又はH435Kを含むが(修飾がH435Rである場合に、場合によっては「ホール-R」と称される)、ノブFc領域はそれを含まない。幾つかの場合には、ホール-R変異は、存在し得るホモ二量体ホールFc領域に対するヘテロ二量体の精製を改善する。
【0233】
修飾IL-2含有ポリペプチドで使用され得る非限定的な例示的なFc領域としては、配列番号47~配列番号83のアミノ酸配列を含むFc領域が挙げられる。
【0234】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列のC末端に融合されたFc領域とを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号3、配列番号5~配列番号9、配列番号12~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列のC末端に融合されたFc領域とを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列のC末端に融合されたFc領域とを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号3~配列番号9、配列番号11~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列のN末端に融合されたFc領域とを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号3、配列番号5~配列番号9、配列番号12~配列番号21、及び配列番号23~配列番号31から選択されるアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列のN末端に融合されたFc領域とを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列のN末端に融合されたFc領域とを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドは、配列番号34~配列番号43及び配列番号46から選択されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号43と、T細胞又はナチュラルキラー細胞上で発現される抗原に結合する抗原結合ドメインとを含む。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号46と、T細胞又はナチュラルキラー細胞上で発現される抗原に結合する抗原結合ドメインとを含む。
【0235】
修飾IL-2含有ポリペプチドの例示的な活性
様々な実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、IL-2R活性のアゴニストである。アゴニスト活性は、幾つかの実施形態では、本明細書の実施例に示される方法を使用して、例えば293F細胞又は同様の細胞を使用して決定され得る。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、T細胞に標的化される場合にIL-2R活性のアゴニストであるが、標的化の非存在下でアゴニスト活性を殆ど又は全く示さない。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、NK細胞及び/又はT細胞に標的化される場合にIL-2R活性のアゴニストであるが、標的化の非存在下でアゴニスト活性を殆ど又は全く示さない。幾つかの実施形態では、T細胞又はNK細胞を標的とする修飾IL-2含有ポリペプチドは、T細胞又はNK細胞上で発現される抗原に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。
【0236】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を増加させる。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を増加させる。幾つかのそのような実施形態では、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞は、活性化CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞である。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitroで活性化CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を増加させる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、活性化CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を、ポリペプチドの非存在下でのCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖と比べて少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させる。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、活性化CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させ、休止CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を、ポリペプチドの非存在下で観察される増殖と比べて実質的に増加させない。
【0237】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでNK細胞の増殖を増加させる。幾つかのそのような実施形態では、NK細胞は活性化NK細胞である。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitroで活性化NK細胞の増殖を増加させる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、活性化NK細胞の増殖を、ポリペプチドの非存在下でのNK細胞増殖と比べて少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させる。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、活性化NK細胞の増殖を少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させ、休止NK細胞の増殖を、ポリペプチドの非存在下で観察される増殖と比べて実質的に増加させない。
【0238】
活性化CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖の増加は、例えば、本明細書の実施例に示される方法等の当該技術分野における任意の方法によって決定され得る。非限定的な例示的なアッセイは以下の通りである。CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞を1人以上の健康なヒトドナーから分離することができる。T細胞は、CellTrace Violet(CTV)で染色し、抗CD3抗体で活性化し、修飾IL-2含有ポリペプチドと接触させた後に、FACSで分析する。CTV染色の喪失は増殖を示す。幾つかの実施形態では、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖の増加は、例えば、異なる健康なヒトドナーから分離されたCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を測定することによって、一連の実験又はプールされたT細胞からの平均として決定される。幾つかの実施形態では、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖の増加は、少なくとも5人若しくは少なくとも10人の異なる健康なドナーからのT細胞を使用して実施される実験からの、又は少なくとも5人若しくは少なくとも10人の異なる健康なドナーからのT細胞のプールからの平均として決定される。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でさえもCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖を増加させる。
【0239】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を増加させる。CD71発現はT細胞の活性化を示している。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitroでCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を増加させる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を、ポリペプチドの非存在下でのCD71発現と比べて少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させる。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、活性化CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させ、休止CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を、ポリペプチドの非存在下で観察されるCD71発現と比べて実質的に増加させない。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を増加させる。
【0240】
CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現の増加は、例えば、本明細書の実施例に示される方法等の当該技術分野における任意の方法によって決定され得る。非限定的な例示的なアッセイは以下の通りである。CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞を、1人以上の健康なヒトドナーから分離し、抗CD3抗体で刺激し、修飾IL-2含有ポリペプチドと接触させた後に、FACSによってCD71発現について分析することができる。幾つかの実施形態では、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現の増加は、例えば、異なる健康なヒトドナーから分離されたCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を測定することによって、一連の実験又はプールされたT細胞からの平均として決定される。幾つかの実施形態では、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現の増加は、少なくとも5人若しくは少なくとも10人の異なる健康なドナーからのT細胞を使用して実施される実験からの、又は少なくとも5人若しくは少なくとも10人の異なる健康なドナーからのT細胞のプールからの平均として決定される。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でさえもCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのCD71発現を増加させる。
【0241】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞におけるpSTAT5発現を増加させる。pSTAT5発現はT細胞の活性化を示している。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitroでCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞におけるpSTAT5発現を増加させる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのpSTAT5発現を、ポリペプチドの非存在下でのpSTAT5発現と比べて少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させる。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのpSTAT5発現を増加させる。CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞におけるpSTAT5発現の増加は、例えば、本明細書の実施例に示される方法等の当該技術分野における任意の方法によって決定され得る。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でさえもCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞におけるpSTAT5発現を増加させる。
【0242】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでNK細胞におけるpSTAT5発現を増加させる。pSTAT5発現はNK細胞の活性化を示している。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、in vitroでNK細胞におけるpSTAT5発現を増加させる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、NK細胞上でのpSTAT5発現を、ポリペプチドの非存在下でのpSTAT5発現と比べて少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍増加させる。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、Treg細胞の存在下でNK細胞におけるpSTAT5発現を増加させる。NK細胞におけるpSTAT5発現の増加は、例えば、本明細書の実施例に示される方法等の当該技術分野における任意の方法によって決定され得る。
【0243】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、制御性T細胞(Treg)の抑制活性を低減又は減弱させる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞に対するTreg抑制活性を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも50%低減させる。慣例的なCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞上でのTreg抑制活性の減少は、例えば、本明細書の実施例に示される方法等の当該技術分野における任意の方法によって決定され得る。非限定的な例示的なアッセイは以下の通りである。Treg及びCD4+T細胞を、健康なヒトドナーPBMCから分離した後に、増殖性細胞用蛍光色素で異なる様式で標識する。CD4+T細胞を抗CD3抗体で刺激し、一方で、Treg細胞を本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドの存在下でインキュベートする。2つのT細胞集団を3日間共培養し、CD4+T細胞の増殖及び活性化をフローサイトメトリーでモニターする。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、例えば、Treg細胞の存在下であるが本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドの非存在下でのCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の活性化及び増殖と比較して、Treg細胞の存在下でCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の活性化及び増殖を増加させる。
【0244】
ポリペプチドの発現及び産生
修飾IL-2含有結合性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。したがって、様々な実施形態では、修飾IL-2を含むポリペプチドをコードする核酸分子が提供される。幾つかの実施形態では、核酸分子は、修飾IL-2及び少なくとも1つの抗原結合ドメインをコードする。様々な実施形態では、核酸分子は、修飾IL-2と、Fc領域と、任意に少なくとも1つの抗原結合ドメインとをコードする。幾つかの実施形態では、Fc領域は、「ノブ」又は「ホール」変異等のヘテロ二量体化のために設計された変異を含む。幾つかの実施形態では、修飾IL-2と、少なくとも1つの抗原結合ドメインと、Fc領域とを含む修飾IL-2含有ポリペプチドをコードする核酸分子が提供され、ここで、Fc領域は少なくとも1つの抗原結合ドメインのC末端に融合され、修飾IL-2はFc領域のC末端に融合される。上述の実施形態のいずれかにおいて、核酸分子はまた、修飾IL-2含有ポリペプチドの分泌を指示するリーダー配列もコードすることができ、そのリーダー配列は、典型的には、これが分泌されたポリペプチド中に存在しないように切断される。リーダー配列は、天然の重鎖(又はVHH)リーダー配列であり得る、又は別の異種リーダー配列であり得る。
【0245】
核酸分子は、当該技術分野で慣用の組換えDNA技術を使用して構築され得る。幾つかの実施形態では、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現に適した発現ベクターである。
【0246】
本明細書に記載される修飾IL-2含有ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターが提供される。そのようなベクターとしては、限定されるものではないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられる。幾つかの実施形態では、293F細胞、CHO細胞若しくはCHO由来細胞等の所望の細胞型、又はNSO細胞におけるポリペプチドの発現のために最適化されたベクターが選択される。例示的なそのようなベクターは、例えば、Running Deer et al., Biotechnol. Prog. 20:880-889 (2004)に記載されている。
【0247】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、細菌細胞等の原核細胞において、又は真菌細胞(酵母等)、植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞等の真核細胞において発現され得る。そのような発現は、例えば、当該技術分野で既知の手順に従って実施され得る。ポリペプチドの発現に使用され得る例示的な真核細胞としては、限定されるものではないが、COS7細胞を含むCOS細胞、293F細胞を含む293細胞、CHO-S、DG44、Lec13 CHO細胞及びFUT8 CHO細胞を含むCHO細胞、PER.C6(商標)細胞(Crucell社)、並びにNSO細胞が挙げられる。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、酵母において発現され得る。例えば、米国特許出願公開第2006/0270045号を参照されたい。幾つかの実施形態では、特定の真核宿主細胞は、ポリペプチドに対して所望の翻訳後修飾を行うその能力に基づいて選択される。例えば、幾つかの実施形態では、CHO細胞は、293F細胞で産生される同じポリペプチドよりも高レベルのシアリル化を有するポリペプチドを産生する。
【0248】
所望の宿主細胞への1つ以上の核酸(ベクター等)の導入は、限定されるものではないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染等を含むあらゆる方法によって達成され得る。非限定的な例示的な方法は、例えばSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。核酸は、任意の適切な方法に従って、所望の宿主細胞に一過的又は安定的にトランスフェクションされ得る。
【0249】
本明細書に記載される核酸又はベクターのいずれかを含む宿主細胞も提供される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される修飾IL-2含有ポリペプチドを発現する宿主細胞が提供される。宿主細胞で発現された修飾IL-2含有ポリペプチドは、任意の適切な方法によって精製され得る。そのような方法としては、限定されるものではないが、親和性マトリックス又は疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用が挙げられる。適切なアフィニティーリガンドとしては、ROR1 ECD及びFc領域に結合する作用物質が挙げられる。例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、又は抗体アフィニティーカラムを使用して、Fc領域に結合することで、Fc領域を含む修飾IL-2含有ポリペプチドを精製することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチルカラム又はフェニルカラムもまた、抗体等の幾つかのポリペプチドを精製するのに適切であり得る。イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー)もまた、抗体等の幾つかのポリペプチドを精製するのに適切であり得る。混合モードクロマトグラフィー(例えば、逆相/陰イオン交換、逆相/陽イオン交換、親水性相互作用/陰イオン交換、親水性相互作用/陽イオン交換等)も、抗体等の幾つかのポリペプチドを精製するのに適切であり得る。ポリペプチドを精製する多くの方法が当該技術分野で知られている。
【0250】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、無細胞系において産生される。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44 (2009)、Spirin, Trends Biotechnol. 22: 538-45 (2004)、Endo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713 (2003)に記載されている。
【0251】
幾つかの実施形態では、上記の方法によって作製された修飾IL-2含有ポリペプチドが提供される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、宿主細胞において作製される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、無細胞系において作製される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは精製される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドを含む細胞培養培地が提供される。
【0252】
幾つかの実施形態では、上記の方法によって作製された抗体を含む組成物が提供される。幾つかの実施形態では、該組成物は、宿主細胞において作製された修飾IL-2含有ポリペプチドを含む。幾つかの実施形態では、該組成物は、無細胞系において作製された修飾IL-2含有ポリペプチドを含む。幾つかの実施形態では、該組成物は、精製された修飾IL-2含有ポリペプチドを含む。
【0253】
修飾IL-2含有ポリペプチドを使用して疾患を治療する例示的な方法
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドを投与することを含む、個体における疾患を治療する方法が提供される。このような疾患としては、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞の増殖及び活性化の増加から恩恵を受けるあらゆる疾患が挙げられる。幾つかの実施形態では、個体における癌を治療する方法が提供される。該方法は、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドを有効量、個体に投与することを含む。そのような治療方法は、ヒト又は動物における治療方法であり得る。幾つかの実施形態では、ヒトを治療する方法が提供される。本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドを使用して治療することができる非限定的な例示的な癌としては、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、胃腸癌、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、並びに外陰癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、並びに慢性骨髄芽球性白血病が挙げられる。
【0254】
修飾IL-2含有ポリペプチドは、必要に応じて被験体に投与され得る。投与の頻度の決定は、治療される病態、治療される被験体の年齢、治療される病態の重症度、治療される被験体の全般的健康状態等の考慮に基づいて、主治医等の当業者によって行われ得る。幾つかの実施形態では、有効用量の修飾IL-2含有ポリペプチドが被験体に1回以上投与される。幾つかの実施形態では、有効用量の修飾IL-2含有ポリペプチドが、被験体に毎日、週に2回、毎週、2週間ごとに、月に1回等で投与される。有効用量の修飾IL-2含有ポリペプチドが被験体に少なくとも1回投与される。幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドの有効用量は、少なくとも1ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年間にわたる複数回を含む複数回で投与され得る。
【0255】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドを含む医薬組成物は、癌を治療する(癌の予防を含む)及び/又はT細胞増殖を増加させるのに有効な量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される被験体の体重、その被験体の身体的状態若しくは健康状態、治療される病態の広範さ、又は治療される被験体の年齢に依存する。一般に、ポリペプチドは、用量当たり約0.05mg/kg(体重)~約100mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約10μg/kg(体重)~約100mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約50μg/kg(体重)~約5mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約100μg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約100μg/kg(体重)~約20mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約0.5mg/kg(体重)~約20mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約0.5mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約0.05mg/kg(体重)~約20mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、用量当たり約0.05mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、約5mg/kg(体重)以下、例えば、4mg/kg未満、3mg/kg未満、2mg/kg未満、又は1mg/kg未満の範囲の抗体の量で投与され得る。
【0256】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドは、限定されるものではないが、静脈内、動脈内、非経口、腹腔内、又は皮下を含む様々な経路によってin vivoで投与され得る。意図される用途に応じて、適切な製剤及び投与経路を選択することができる。
【0257】
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドを使用する治療的処置は、T細胞の増殖及び/又は活性化を増加させることによって達成される。幾つかの実施形態では、T細胞の増殖及び/又は活性化の増加は、癌の成長を抑止する。
【0258】
医薬組成物
幾つかの実施形態では、修飾IL-2含有ポリペプチドを含む組成物は、多種多様な薬学的に許容可能な担体を含む製剤で提供される(例えば、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons: Drugfacts Plus, 20th ed. (2003)、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th ed., Lippencott Williams and Wilkins (2004)、Kibbe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd ed., Pharmaceutical Press (2000)を参照されたい)。賦形剤、アジュバント、及び希釈剤を含む様々な薬学的に許容可能な担体が利用可能である。さらに、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤等の様々な薬学的に許容可能な補助物質も利用可能である。非限定的な例示的な担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0259】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mL、175mg/mL、200mg/mL、225mg/mL、又は250mg/mLの濃度で修飾IL-2含有ポリペプチドを含む。
【0260】
併用療法
修飾IL-2含有ポリペプチドは、単独で又は他の抗癌剤等の他の治療方式と組み合わせて投与され得る。修飾IL-2含有ポリペプチドは、他の治療方式の前、実質的にそれと同時に、又はその後に供給され得る(すなわち、同時に又は連続的に)。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法は、放射線療法、化学療法、ワクチン接種、標的腫瘍療法、CAR-T療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、癌免疫療法、サイトカイン療法、外科的切除、クロマチン修飾、切除、冷却療法、腫瘍標的に対するアンチセンス剤、腫瘍標的に対するsiRNA剤、腫瘍標的に対するマイクロRNA剤若しくは抗癌剤/抗腫瘍剤、又は抗体、サイトカイン若しくは受容体細胞外ドメイン-Fc融合物等の生物製剤を施すことを更に含み得る。
【0261】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、第2の療法剤、例えば、PD-1抗体と同時に与えられる。PD-1抗体の例としては、ニボルマブ(BMS社)、ペンブロリズマブ(Merck社)、AMP-514(Amplimmune社)、TSR-042(Tesaro/AnaptysBio社、ANB-011)、STI-A1110(Sorrento Therapeutics社)、及びプログラム死-1(PD-1)に対する他の作用物質が挙げられる。
【0262】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、第2の療法剤、例えば、PD-L1療法薬と同時に与えられる。PD-L1療法薬の例としては、ピディリズマブ(CureTech社、CT-011)、デュルバルマブ(Medimmune/AstraZeneca社)、アテゾリズマブ(Genentech/Roche社)、アベルマブ(Pfizer社)、AMP-224(Amplimmune社)、BMS-936559(Bristol-Myers Squibb社)、STI-A1010(Sorrento Therapeutics社)、及びプログラム死-1リガンド(PD-L1)に対する他の作用物質が挙げられる。
【0263】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される修飾IL-2含有ポリペプチドは、CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法薬、腫瘍溶解性ウイルス療法薬、サイトカイン療法薬、及び/又はVISTA、gpNMB、B7H3、B7H4、HHLA2、CD73、CTLA4、TIGIT等の他のチェックポイント分子を標的とする作用物質と同時に与えられる。
【0264】
診断及び治療の非限定的な例示的な方法
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、被験体及び/又は被験体(例えば、癌患者)からの検体を評価するのに有用である。幾つかの実施形態では、評価は、診断、予後診断、及び/又は治療への奏効のうちの1つ以上である。
【0265】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、タンパク質の存在、非存在、又はレベルを評価することを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、核酸の存在、非存在、又は発現のレベルを評価することを含む。これらの測定に本明細書に記載される組成物を使用することができる。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、腫瘍の検体又は腫瘍から培養された細胞を、本明細書に記載される療法剤と接触させることを含む。
【0266】
幾つかの実施形態では、評価により、治療(本明細書に記載されるポリペプチドによる治療を含む)が指示され得る。幾つかの実施形態では、評価により、切除後の補助療法を使用する又は差し控えることが指示され得る。補助治療とも呼ばれる補助療法は、一次治療、主治療、又は初回治療に加えてなされる治療である。非限定的な例として、補助療法は、全ての検出可能な疾患が取り除かれたが、潜在疾患のため再燃の統計的リスクが残っている場合に、通常は手術後になされる追加の治療であり得る。幾つかの実施形態では、上記ポリペプチドは、癌の治療における補助療法薬として使用される。幾つかの実施形態では、上記抗体は、癌の治療における単独補助療法薬として使用される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、癌の治療における補助療法薬としては差し控えられる。例えば、患者が本明細書に記載される抗体に応答する可能性が低い又は最小限の応答しか有しない場合に、生活の質のために、及び無効な化学療法による不必要な毒性を避けるために、治療を施さなくてもよい。このような場合に、緩和ケアが使用される場合がある。
【0267】
幾つかの実施形態では、切除前に術前補助療法薬として上記ポリペプチドが投与される。幾つかの実施形態では、術前補助療法薬は、任意の手術の前に腫瘍を縮小及び/又はダウングレードする療法薬を指す。幾つかの実施形態では、術前補助療法薬は、手術前に癌患者に投与される化学療法薬を意味する。幾つかの実施形態では、術前補助療法薬は、手術前に癌患者に投与されるポリペプチドを意味する。術前補助化学療法薬が通常考慮される癌型としては、例えば、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、及び肺癌が挙げられる。幾つかの実施形態では、上記抗体は、癌の治療における術前補助療法薬として使用される。幾つかの実施形態では、その使用は切除前である。
【0268】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法で企図される腫瘍微小環境は、腫瘍血管系、腫瘍浸潤リンパ球、線維芽細網細胞、内皮前駆細胞(EPC)、癌関連線維芽細胞、周皮細胞、他の間質細胞、細胞外マトリックス(ECM)の成分、樹状細胞、抗原提示細胞、T細胞、制御性T細胞、マクロファージ、好中球、及び腫瘍の近位に位置する他の免疫細胞の1つ以上である。
【0269】
キット
本明細書に記載される修飾IL-2含有ポリペプチドのいずれか及び適切な包装を含む製造品及びキットも提供される。幾つかの実施形態では、本発明は、(i)修飾IL-2含有ポリペプチドと、(ii)該キットを使用して修飾IL-2含有ポリペプチドを個体に投与するための使用説明書とを備えるキットを含む。
【0270】
本明細書に記載される組成物に適切な包装は、当該技術分野で知られており、例えば、バイアル(例えば、密封バイアル)、容器、アンプル、ボトル、広口瓶、フレキシブルな包装(例えば、密封マイラー又はプラスチックバッグ)等が含まれる。これらの製造品は、更に滅菌及び/又は密封され得る。本明細書に記載される組成物を含む単位剤形も提供される。これらの単位剤形は、単回又は多回単位剤形で適切な包装内で保存され得て、更に滅菌及び密封もされ得る。本発明のキットに提供される使用説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた指示であるが、機械可読の指示(例えば、磁気記憶ディスク又は光学記憶ディスクに保持された指示)も許容可能である。抗体の使用に関する使用説明書は一般に、意図された治療又は工業的使用のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。キットは、個々の適切な治療を選択することの説明を更に含み得る。
【0271】
容器は、単位用量、バルク包装(例えば、多回用量包装)又はサブユニット用量であり得る。例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月以上のいずれかの概数の期間等の長期間にわたって個体に効果的な治療をもたらすのに十分な用量の本明細書に開示される分子を含むキットも提供され得る。キットはまた、多回単位用量の分子及び使用説明書を含むことができ、薬局、例えば、病院薬局及び調剤薬局での保存及び使用に十分な量で包装され得る。幾つかの実施形態では、キットは、再構成、再懸濁、又は再水和することで、一般的にポリペプチドの安定な水性懸濁液を形成することができる乾燥(例えば、凍結乾燥)組成物を含む。
【実施例】
【0272】
以下で論じられる実施例は、本発明を純粋に例示することが意図され、決して本発明を限定するとみなされるべきではない。これらの実施例は、以下の実験が、実施された全て又は唯一の実験であることを表すとは意図されない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを保証するための努力がなされたが、幾らかの実験誤差及び偏差が考慮に入れられるべきである。特段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧であるか又は近大気圧である。
【0273】
実施例1:IL-2のP65R変異は、CD25結合を本質的に排除する
IL-2変異体を、立体閉塞(steric occlusion)によってCD25界面を破壊するように設計し(P65R及びP65E)、IL-2受容体の1つ以上の成分(CD25、CD122、及び/又はCD132)を一過的にトランスフェクションした293F細胞に対する結合について試験した。変異体を、CD25に対する親和性が低下していることが報告された変異体であるIL-2-F42Kと比較した。「ノブ」FcのN末端に融合され、「ホール」Fc(配列番号44)と複合された野生型ヒトIL-2(配列番号32)、IL-2-F42K(配列番号33)、IL-2-P65R(配列番号35)、又はIL-2-P65E(配列番号34)を含む漸増濃度の融合タンパク質を、トランスフェクションされた293F細胞に添加し、4℃で45分間インキュベートした。
【0274】
結合を、実質的に以下のようにフローサイトメトリーによって分析した。細胞を200μLのFACSバッファー(PBS、2%FBS、0.05%アジ化ナトリウム)中で1回洗浄し、細胞ペレットを100μlの表面マーカー染色溶液(FACSバッファー中に1:300の希釈率でA647結合抗ヒトFcg二次抗体を含有する)中に再懸濁した。細胞を4℃で45分間インキュベートした後に、最終洗浄し、フローサイトメーターで分析した。細胞デブリをFSC/SSCでのサイズ排除によって除外し、死細胞をそれらのヨウ化プロピジウムの陽性シグナルに基づいて除外した。FSC-A/FSC-Hでのダブレット及び凝集物の除外を使用して単一細胞を選択した。一過的にトランスフェクションされた細胞も細胞質EGFPを発現し、FL1陽性であった細胞を分析した。抗ヒト二次抗体のMFIレベルの増加は、IL-2結合を示していた。細胞集団の分析にFlowJoソフトウェアを使用した。次いで、各マーカーについての生の平均蛍光強度(「MFI」)をエクスポートし、Excel及びGraphPad PRISMを使用して分析した。値をグラフ化し、力価測定曲線をフィッティングさせて、非線形回帰One-site -- Total曲線フィットを使用して用量反応関係を評価した。
【0275】
図2A~
図2Cに示されるように、IL-2-P65E変異体を含む融合タンパク質は、野生型IL-2を含む融合タンパク質と比べて僅かに低下したIL-2Rに対する親和性を示した。IL-2 F42Kを含む融合タンパク質は、IL-2-P65Eを含む融合タンパク質よりも低い親和性を示したが、IL-2-P65Rを含む融合タンパク質は、ヘテロ三量体IL-2Rに対して最も低い親和性を示した(
図2A)。さらに、IL-2-P65Rを含む融合タンパク質は、CD25/CD132に対して検出可能な結合を示さず、CD25/CD122に弱くしか結合しなかったが(
図2C)、IL-2-F42Kを含む融合タンパク質は、CD25/CD132に対して幾らかの親和性を保持し(
図2B)、IL-2-P65Rを含む融合タンパク質よりも高い親和性でCD25/CD122に結合した(
図2B及び
図2C)。したがって、P65Rで変異したIL-2は、CD25含有IL-2受容体に対する結合が顕著に低下していた。
【0276】
実施例2:CD122に対する親和性を低下させるIL-2修飾
実施例1で述べたように、P65R IL-2変異は、立体閉塞によってCD25界面を破壊するように設計された。加えて、IL-2変異を、或る特定の接触残基相互作用の排除によってCD122界面に対する親和性を低下させるように設計した(例えば、D84S、E95Q、M23A、H16A、及びE15S)。単一又は二重変異体を、IL-2Rに対する一価IL-2結合のためにヘテロ二量体Fc(ジスルフィドにより「ホール」Fc配列番号44を含むホールにノブを安定化させた)の「ノブ」部分のN末端に融合させた。相対結合親和性を、293F細胞にCD25及びCD122を一過的にトランスフェクションすることによって評価した(CD132との同時トランスフェクションは、同様の結果を示したが、付加的な結合アビディティーにより観察される親和性の差が減少した)。結合したIL-2-Fc融合タンパク質を、実施例1に実質的に記載されるように蛍光抗ヒト二次抗体で検出し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0277】
図3A及び
図3Bに示されるように、CD122界面に変異を有するF42Kを組み込んだ二重IL-2変異体を含む融合タンパク質(配列番号36~配列番号39)は全て、IL-2-F42K-E15S(配列番号85)を除き、単一変異体IL-2-F42K(配列番号33)を含むものと比べて、CD25/CD122に対する結合親和性の低下を示した。
【0278】
実施例3:IL-2-RAS(P65R、H16A、及びD84S)は、三量体及び二量体形態のIL-2Rの状況でCD122に対する親和性が低下した
実施例2に記載のCD122親和性を低下させる変異をP65R変異と組み合わせて、IL-2二重及び三重変異体を構築した。IL-2変異体を、IL-2受容体(IL-2R)に対する一価IL-2結合のためにヘテロ二量体Fc「ノブ」部分のN末端に融合させ、配列番号44を含む「ホール」Fcと対合させた。得られる融合タンパク質の相対結合親和性を、実施例1に実質的に記載されるように、IL-2Rサブユニットを一過的にトランスフェクションした293F細胞において評価した。
【0279】
野生型IL-2(配列番号32)を含む融合タンパク質と比べて、IL-2-P65R-H16A(配列番号41)を含む融合タンパク質及びIL-2-P65R-D84S(配列番号42)を含む融合タンパク質は、CD122/CD132(ヘテロ二量体IL-2R)(
図4A)及びヘテロ三量体IL-2R(
図4B)の両方に対する親和性が低下したが、三重変異体IL-2 P65R-H16A-D84S(「IL-2-RAS」、配列番号43)を含む融合タンパク質の親和性は、更に一層減弱した(
図4A及び
図4B)。最大結合及びEC
50の両方においてこれらのIL-2変異体について観察された結合のシフトは、これらの変異がオンレート(EC
50の右へのシフト)及びオフレート(最大結合の低下)を低下させたことを示唆している。
【0280】
実施例4.IL-2-RASは、休止T細胞及び活性化前T細胞に対する親和性が低下した
T細胞を単離するために、非T細胞集団を、CD14、CD16、CD19、CD20、CD36、CD56、CD123、TCRγ/δに対するビオチン化された抗系譜マーカー抗体(BioLegend社)で室温にて20分間標識した。次いで、磁性ストレプトアビジン粒子と一緒に室温で20分間インキュベートすることにより、非T細胞集団を減少させた(500μlのビーズスラリーに加えて100×106個当たり500μlの細胞懸濁液、マグネット上で2×8分間インキュベートする)。非結合細胞の上清は単離したT細胞を含んでいた。
【0281】
一部の単離T細胞(3mL中5.5×106個)を、1μg/ml抗CD3 OKT3抗体(BD Biosciences社)でプレコートした6ウェルプレートにおいて2日間インキュベートすることによって活性化した後、PBS/2%FBSで洗浄し、RPMI+10%FBS中2×106個/mLで1日静置した。休止T細胞又は活性化前T細胞を結合アッセイに直接使用した。休止T細胞又は活性化前T細胞に対する、非標的化VHH-Fcアイソタイプコントロール、及びヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合されたIL-2-RAS又は野生型IL-2を含む融合タンパク質の結合を、以下の二次抗体:AF647抗ヒトFc(1:1000)、PI(1:2000)、BV785-CD4(1:300)、APC/Fire-CD8(1:500)及びPE/Cy7-CD25(1:100)を使用した以外は実施例1に実質的に記載されるように、フローサイトメトリーによって測定した。
【0282】
非標的化IL-2-RAS融合タンパク質(配列番号46を含む)は、休止T細胞(
図5A)及び活性化前T細胞(
図5B)に対し、非標的化VHHドメイン及び野生型IL-2(配列番号45を含む)を含む融合タンパク質と比較して低下した親和性で結合した。IL-2を含まないアイソタイプコントロールは、
図5A及び
図5Bに示されるように休止T細胞又は活性化前T細胞に結合しなかった。
【0283】
実施例5:IL-2-RASは、Tregに対する親和性が低下した
制御性T細胞(「Treg」)はCD25、並びにCD122及びCD132の高い内因性発現を有し、野生型IL-2に対して高度に応答性であった。非標的化VHHのヘテロ二量体Fc(ジスルフィドによりホールにノブを安定化させた)の「ノブ」部分のC末端に融合された野生型IL-2(配列番号45を含む)又はIL-2-RAS三重変異体(配列番号46を含む)を含む融合タンパク質のTregに対する結合を測定した。
【0284】
EasySep Human CD4+CD127lowCD25+制御性T細胞分離キット(Stemcell社)を製造業者の指示に従って使用することにより、Treg及びCD4+Tレスポンダー細胞(Tresp)を新鮮で健康なドナーPBMCから濃縮し、単離した。rhTGF-B1、オールトランスレチノイン酸、CD3/CD28 T Cell Activator及びIL-2を補充したImmunoCult-XF T Cell Expansion Medium中で7日間の培養によってTregをナイーブCD4+T細胞から生成した。
【0285】
2つの細胞集団を区別するために、濃縮されたTreg及びCD4+レスポンダーT細胞を、それぞれ増殖色素CellTrace Violet(CTV)及びCFSEにより37℃で10分間標識した。洗浄後に、Treg及びCD4+T細胞を10%FBS及び1×抗生物質/抗真菌剤を補充したRPMI中で1.5×106細胞/mlに再懸濁した。Tregを50μlの容量で播種することで、96ウェル丸底プレートにおいて75000個のTreg/ウェルを得た。10nMのIL-2-RASの存在下で、Tregを37℃にて一晩インキュベートし、実施例1に記載のようにフローサイトメトリーによって分析した。
【0286】
図6に示されるように、野生型IL-2を含む融合タンパク質とは対照的に、IL-2-RASを含む融合タンパク質は、PBMCから濃縮されたTreg(
図6A)、誘導されたTreg(
図6B)、又はCD4
+Tレスポンダー(
図6C)に対して観察可能な結合を示さなかった。
【0287】
実施例6:IL-2-RASは、休止T細胞に対する活性を低下させた
T細胞を、実施例4に実質的に記載されるように磁性ビーズ分離によって単離し、CellTrace Violet(CTV)で標識し、ヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2(配列番号45を含む)又はIL-2-RAS(配列番号46を含む)を含む融合タンパク質で処理した。CD4、CD8、CD71、及びCTVのレベルをフローサイトメトリーによって測定した。増殖T細胞はCTVレベルが低下している。
【0288】
図7A及び
図7Cに示されるように、休止CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の増殖を誘導するのに必要とされるIL-2-RASを含む融合タンパク質の濃度は、同じ増殖の誘導を達成するのに必要とされる野生型IL-2を含む融合タンパク質の濃度又はIL-2v-類縁体を含む融合タンパク質の濃度よりも100倍超高かった。
【0289】
図7B及び
図7Dに示されるように、CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞上でT細胞活性化のマーカーであるCD71発現を誘導するのに必要とされるIL-2-RASを含む融合タンパク質の濃度は、同じ活性化の誘導を達成するのに必要とされる野生型IL-2又はIL-2v-類縁体を含む融合タンパク質の濃度よりも少なくとも100倍高かった。
【0290】
T細胞活性化は、活性化T細胞において増加するリン酸化STAT5レベルによっても測定することができる。T細胞を磁性ビーズ分離によって単離し、ヘテロ二量体Fcを含む非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2(配列番号45を含む)を含む融合タンパク質又はヘテロ二量体Fcを含む非標的化VHHのC末端に融合されたIL-2-RAS(配列番号46を含む)を含む融合タンパク質で15分間処理した。細胞をBD Cytofix/Cytoperm(商標)(BD Biosciences社)で固定し、90%氷冷メタノール中で透過処理し、CD4+T細胞及びCD8+T細胞上でのリン酸化STAT5(「pSTAT5」)のレベルを、抗pSTAT5-PE抗体(1:70)を使用するフローサイトメトリーを用いて測定した。細胞を以下の抗体:抗CD3-FITC(1:200)、CD56-BV421(1:100)、CD4-BV785(1:200)、CD8-APC-Fire(1:300)で共染色した。
【0291】
図7E及び
図7Fに示されるように、非標的化IL-2-RAS融合タンパク質は、試験した最も高い濃度であっても休止CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞においてSTAT5の最小のリン酸化しか達成しなかったが、非標的化IL-2-野生型融合タンパク質は、試験した最も高い濃度よりも1000倍超低い濃度でSTAT5リン酸化を誘導した。
【0292】
実施例7:IL-2変異体は、Tregに対する活性が低下した
EasySep(商標) Human CD4+CD127lowCD25+制御性T細胞分離キット(Stemcell社)を使用して、TregをPBMCから単離した。TregをCellTrace Violetで標識し、100μlのRPMI/10%FBS中において1ウェル(96ウェル、U型底)当たり0.15×106個の細胞で播種した。細胞を100nMから開始する100μlの融合タンパク質の力価測定と組み合わせ、1:4で力価測定した。細胞を7日間インキュベートした。7日目に、増殖及び活性化のマーカーであるCD25を、以下の抗体:BV785-CD4(1:300)、APC/Fire-CD8(1:500)、PE/Cy7-CD25(1:100)、PI(1:2000)を使用した以外は実施例1に実質的に記載されるように、フローサイトメトリー(Novocyte)によって測定した。
【0293】
図8A及び
図8Bに示されるように、ヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2(配列番号45を含む)を含む融合タンパク質は、Tregの増殖及び活性化マーカーCD25の発現を誘導したが、野生型IL-2の代わりにIL-2-RASを含む融合タンパク質(配列番号46を含む)では誘導されなかった。
【0294】
実施例8:PD-1を発現する活性化T細胞は、PD-1標的化IL-2-RASによって刺激される
PD-1発現T細胞に結合してこの細胞を刺激する能力を、ペンブロリズマブ(従来の抗PD-1抗体)、並びにペンブロリズマブ類縁体及び重鎖のC末端に連結されたIL-2-RASを含む融合タンパク質(
図1Fを参照されたい)を使用して試験した。
【0295】
健康なドナーに由来する濃縮されたT細胞を、実施例4に実質的に記載されるように活性化した。6ウェルプレートを1μg/ml OKT3抗体で4℃にて一晩コーティングした。翌日、プレートを2回洗浄して非結合OKT3抗体を除去した。濃縮されたT細胞を、CTL培地を用いて融解し、完全RPMI中で5.5×106個の細胞/mLに再懸濁し、コーティングしたプレートに1ウェル当たり3mLで播種した。2日後に、活性化T細胞を収集し、1回洗浄した後、OKT3抗体を含まない培地中に24時間播種して静置した。細胞を増殖色素CellTrace(商標) Violet(CTV)で標識した。T細胞を計数した後、2×106個の細胞/mLに再懸濁した。1ウェル当たり100μLの再懸濁した細胞を96ウェル丸底プレートに播種した。ペンブロリズマブ又はペンブロリズマブ類縁体-IL-2-RAS融合物を100nMの最終濃度から開始して添加し、1:5で力価測定した。3日目に、T細胞を生存率マーカーPI及び以下の蛍光標識抗体:CD4-BV785、CD8-APC/Fire、CD25-PE/Cy7、CD71-FITC、及びCD69-APCにより室温で20分間染色した。プレートを、増殖の測定について実施例7に実質的に記載されるように、また結合については実施例1のように、Novocyteフローサイトメーターで読み取り、更なる分析のためにデータをExcelにエクスポートした。
【0296】
図9に示されるように、ペンブロリズマブ類縁体-IL-2-RAS融合タンパク質は、CD8
+T細胞増殖(
図9A)及びCD4
+T細胞増殖(
図9B)を刺激したが、ペンブロリズマブ単独では刺激しなかった。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、観察された増殖の二相性の性質により、低濃度での活性がPD-1標的化活性によるものであり、より高濃度での活性の増加が非標的化活性によるものであることが示唆され得る。
図9C及び
図9Dに示されるように、ペンブロリズマブ及びペンブロリズマブ類縁体-IL-2-RASは、どちらも同様の親和性で活性化CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞に結合したが、但し、付加的な結合が10nM超の希釈範囲の上限でIL-2-RASを含む融合タンパク質について観察され、これはIL-2Rに対するIL-2-RASの結合によって媒介された可能性がある。
【0297】
実施例9:活性化T細胞上でのPD-1のプレブロッキングは、PD-1標的化IL-2-RASによるシグナル伝達を妨げる
実施例4に実質的に記載されるように、T細胞を健康なドナーから磁性ビーズ分離によって単離して濃縮し、OKT3抗体をコーティングしたプレート上でインキュベートして、T細胞を活性化した。細胞をCTVで標識した。活性化前T細胞を、PD-1結合部位をブロッキングするために抗PD-1抗体であるペンブロリズマブと一緒にインキュベートするか、又はコントロールとして非標的化抗体と一緒にインキュベートした。次いで、細胞を、ペンブロリズマブ類縁体に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質、又はコントロールとして非標的化抗体に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質と一緒に3日間インキュベートした。IL-2シグナル伝達の程度を、実施例7に実質的に記載されるように、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって測定することで評価した。
【0298】
図10A~
図10Dに示されるように、野生型IL-2は、CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞の両方の強い増殖を誘導したが、ペンブロリズマブ又はIL-2-RAS及び非標的化抗体を含む融合タンパク質で処理したCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞は、PD-1のプレブロッキングの影響を受けない低レベルの増殖を示した。対照的に、IL-2-RAS及びペンブロリズマブ類縁体を含む融合タンパク質で処理したCD4
+T細胞(
図10B及び
図10D)及びCD8
+T細胞(
図10A及び
図10C)は、どちらも顕著なPD-1依存性増殖を示し(
図10A及び
図10B)、これは抗PD-1抗体とのプレインキュベーションによってブロッキングされた(
図10C及び
図10D)。したがって、IL-2-RAS及び抗PD-1抗体を含む融合タンパク質は、PD-1がT細胞上で発現され、かつ接近可能な場合にのみT細胞を活性化した。
【0299】
実施例10:PD-1標的化IL-2-RASは、Treg抑制を克服する
CD4
+Tレスポンダー細胞及びTregを、実施例5に記載されるように単離した。CD4
+レスポンダー細胞をCTVで標識し、単離されたTregと2:1の比率で混合し、抗CD3ビーズ(2個のT細胞につき1個のビーズ)により活性化した。得られる混合物を、
図1Bに示されるように非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2、
図1Bに示されるように非標的化VHHのC末端に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質、又は抗PD-1抗体に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質(ペンブロリズマブ類縁体-IL-2-RAS)の希釈系列で7日間処理した。実施例7に実質的に記載されるように、増殖をフローサイトメトリーによって測定した。
【0300】
図11に示されるように、Tレスポンダー細胞はTregによって抑制されたが、非標的化野生型IL-2、並びにIL-2-RAS及び抗PD-1抗体を含む融合タンパク質(ペンブロリズマブ類縁体-IL-2-RAS)は、Tregの存在に関わらず、CD4
+Tレスポンダー細胞の増殖を誘導した。IL-2-RAS及び非標的化抗体を含む融合タンパク質での細胞の処理は、増殖を同程度まで回復させなかった。非標的化IL-2-RASのみが、PD-1標的化IL-2-RAS融合タンパク質よりもはるかに高い濃度でTレスポンダーに対するTregの抑制効果を打ち消すことができた。したがって、PD-1標的化IL-2-RASは、Tregの抑制効果を克服し、この活性はT細胞上で発現されるPD-1への結合に依存していた。
【0301】
実施例11:PD-1標的化IL-2-RASは、トランスでシグナル伝達しない
ビーズを、製造業者の推奨コーティング手順に従って、4×108個のビーズ当たり200μgのPD-1抗原でコーティングする。簡潔には、ビーズをバッファー1(0.1Mのリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4~8.0)中で1回洗浄した後に、チューブローテーターにおいてPD-1抗原を含むバッファー1中で室温にて18時間インキュベートする。次いで、ビーズをバッファー2(PBS、0.1%BSA、2mMのEDTA pH7.4)で4回洗浄する。ビーズをバッファー3(0.2MのTris、0.1%BSA、pH8.5)中で37℃にて4時間インキュベートすることにより、遊離トシル基を不活性化させる。次いで、ビーズをバッファー2中で1回洗浄し、400×106個のビーズ/mLの濃度に再懸濁する。
【0302】
コーティングされたビーズを、野生型IL-2又は抗PD-1抗体に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質と一緒にインキュベートし、洗浄する。次いで、ビーズを単離された休止T細胞と一緒にインキュベートする。IL-2シグナル伝達を、フローサイトメトリーによってpSTAT5レベルを測定することで評価する。
【0303】
ビーズに結合した野生型IL-2を含む融合タンパク質は、CD8+T細胞及びCD4+T細胞を強く活性化するが、ビーズに結合したIL-2-RASを含む融合タンパク質は、試験した最も高い濃度までCD4+T細胞又はCD8+T細胞に対して活性を有しない。したがって、IL-2-RASのT細胞標的化がIL-2シグナル伝達に必要とされ、標的化IL-2-RASのシグナル伝達は、トランスでは起こらない。
【0304】
実施例12:IL-2-RASは、トランスでシグナル伝達しない
1000nMから開始して1:4で希釈した非標的化野生型IL-2及び非標的化IL-2-RASの希釈系列をアッセイプレートにコーティングし、一晩インキュベートし、洗浄した。T細胞を添加し、37℃で30分間インキュベートした。CD8+T細胞及びCD4+T細胞の活性化を、実施例6に実質的に記載されるように、リン酸化STAT5レベルを検出することによって測定した。
【0305】
図12A及び
図12Bに示されるように、CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞は、pSTAT5誘導によって測定したところ、野生型IL-2によってトランスで活性化されたが、非標的化IL-2-RASはトランスで活性化することができなかった。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、CD25及びCD122に対するIL-2-RASの親和性の低下は、下流のシグナル伝達を誘導するIL-2Rの効率的な結合及びクラスター形成を妨げた可能性がある。したがって、標的化IL-2-RAS融合タンパク質のみがpSTAT5シグナル伝達を引き起こす。
【0306】
実施例13:NKp46標的化IL-2-RASは、NK細胞増殖を特異的に引き起こす
図1Hに示されるようにNKp46を標的とするヘテロ二量体scFv抗体のC末端に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcに連結された非標的化VHHのC末端に融合された野生型IL-2又はIL-2-RASを含む融合タンパク質、及びNKp46を標的とするヘテロ二量体scFv抗体単独のNK細胞、CD4
+T細胞、及びCD8
+T細胞に対する影響を決定した。
【0307】
健康なドナーに由来する新鮮なPBMCをCellTrace(商標) Violetで標識し、丸底96ウェルプレートにおいて200000個の細胞/ウェルで播種した。融合タンパク質及びNKp46 scFv-Fcコントロールの希釈物を、播種した細胞に添加し、37℃で7日間インキュベートした。7日目に、以下の抗体:抗CD3-BV785(1:200)、抗CD56-APC(1:100)、抗CD4-PE(1:200)、抗CD8-APC-Fire(1:300)及びPI(1:2000)を使用した以外は実施例7に実質的に記載されるように、細胞増殖を測定した。
【0308】
加えて、健康なドナーに由来する新鮮なPBMCを、同じ融合タンパク質又はNKp46 scFv-Fcコントロールで処理し、37℃で15分間インキュベートした。CD8+T細胞、CD4+T細胞、及びNK細胞(CD3-、CD56+)におけるpSTAT5レベルを、実施例6に実質的に記載されるように、リン酸化STAT5レベルを検出することによって測定した。
【0309】
健康なドナーに由来する新鮮なPBMCに対する融合タンパク質及びNKp46 scFV-Fcコントロールの結合を、以下の抗体:抗CD3-FITC(1:100)、抗CD56-BV421(1:100)、抗CD4-BV785(1:200)、抗CD8-APC-Fire(1:300)、抗ヒトIgG-Alexa Fluor 647(1:500)、及びPI(1:2000)を使用した以外は実施例1に実質的に記載されるように測定した。
【0310】
図13A~
図13Iに示されるように、NKp46標的化IL-2-RASは、NK細胞の増殖及び活性化を強力に活性化したが、CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞には影響を及ぼさなかった。対照的に、非標的化野生型IL-2は、試験した全てのリンパ球(NK、CD4
+T細胞、及びCD8
+T細胞)の増殖及び活性化を引き起こした。NKp46 scFV-Fc(IL-2-RASを有しない)の結合は、NK増殖又はpSTAT5誘導を引き起こさなかった。したがって、NKp46標的化IL-2-RASは、NK細胞上でIL-2のシスシグナル伝達を引き起こしたが、CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞をトランスで活性化しなかった。
【0311】
実施例14:LAG3標的化IL-2-RASは、活性化前LAG3
+T細胞を刺激する
図1Gに示されるように従来の抗LAG3ヘテロ二量体抗体(MAb)のC末端に融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質、
図1Bに示されるようにヘテロ二量体Fcを含む抗LAG3 VHHに融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質、
図1Bに示されるように非標的化VHHに融合されたIL-2-RASを含む融合タンパク質、又は
図1Bに示されるように非標的化ヘテロ二量体FcのC末端に融合された野生型IL-2を含む融合タンパク質、又はLAG3標的化Mab(コントロール)、又はLAG3標的化VHH-Fc(コントロール)のCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞に対する影響をアッセイした。
【0312】
健康なドナーに由来する濃縮されたT細胞を、コーティングした1μg/mL抗CD3(OKT3)及び10μg/mL可溶性抗CD28で48時間刺激した後、24時間静置した。活性化前細胞をCellTrace(商標) Violetで標識し、200000細胞/ウェルで播種した。融合タンパク質及びコントロールタンパク質の希釈物を添加し、3日間インキュベートした。活性化マーカーであるCD25及びCD71の増殖及び発現を、実質的に実施例7のように、但し付加的な抗体:抗CD25-FITC(1:100)及び抗CD71-PE/Cy7を用いて測定した。
【0313】
刺激されたCD8+T細胞は、LAG3をCD8+T細胞の45%まで上方調節し、CD4+T細胞は、LAG3をCD4+T細胞の22%まで上方調節した。対照的に、非刺激T細胞は、CD8+T細胞又はCD4+T細胞のいずれについてもLAG3発現に対してほぼ0%陽性である。
【0314】
図14A~
図14Dに示されるように、抗LAG3 Mab-IL-2-RAS及び抗LAG3 VHH-IL-2-RASの両方が、CD25(
図14C及び
図14D)及びCD71(
図14E及び
図14F)の発現レベルによって示されるCD8
+及びCD4
+の増殖(
図14A及び
図14B)及び活性化を増加させた。非標的化野生型IL-2は、CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞の増殖及び活性化の強力な誘導因子であり、刺激されたT細胞により高い親和性及び飽和度で結合した。
【0315】
実施例15:IL-2の変異体の組合せは、非標的化活性を更に低下させる
HEK-Blue IL-2レポーター細胞(InvivoGen社)を使用して、非標的化IL-2変異体の相対活性を測定した。レポーター細胞を、非標的化VHHのC末端に融合されたIL-2-変異体の希釈物で処理し、Quanti-Blue分析の前に20時間インキュベートした。
【0316】
図15に示されるように、IL-2変異体は広範な活性を示した。上記の実験から、IL-2-RAS(P65R、H16A、及びD84S)がIL-2Rに対する結合を野生型IL-2と比較して劇的に低下させ(
図4~
図6を参照されたい)、活性を野生型IL-2と比較して低下させた(
図7A~
図7Eを参照されたい)ことが示された。付加的なM23A変異を有するIL-2-RAS及び付加的なE95Q変異を有するIL-2-RASは、どちらもIL-2-RASと比較して活性の低下を示し、IL-2-RASとM23A及びE95Qの両方との組合せは、活性を更に一層減弱させた。PD-1発現レポーター細胞を用いた実験では、これらの親和性が低下したIL-2変異体が全て同等のPD-1標的化活性を示し(データは示さない)、PD-1に対するシスでの高親和性結合が、IL-2Rに対するIL-2変異体の親和性の低下を相殺し得ることが示唆される。HEK-Blue IL-2レポーター系は相対活性の測定に有用であったが、レポーター系においてIL-2変異体について観察されたEC
50は、おそらくは初代細胞上でのより低いIL-2Rレベルと比較したレポーター細胞におけるIL-2R成分の過剰発現のために、初代リンパ球と比較して顕著に左にシフトした。
【0317】
本開示は、本発明の趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、上述の実施形態は、全ての点で例示としてみなされるべきであって、本開示を限定するものとはみなされない。したがって、本開示の範囲は、上述の詳細な説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示されるため、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内にある全ての変更は、本明細書に含まれることが意図される。
【0318】
【0319】
囲み又は下線を有する配列では、個々の文字の周りの囲みは、対応する野生型又は親配列に対するアミノ酸置換を示し、文字の群の周りの囲みは、リンカー配列を示す。下線付きの文字は、リンカー配列を示す。
【配列表】
【国際調査報告】