(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】細胞外マトリクスの脱水方法およびそれにより形成される粒子
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
A61L27/36 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539108
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(85)【翻訳文提出日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2020012587
(87)【国際公開番号】W WO2020146391
(87)【国際公開日】2020-07-16
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517335857
【氏名又は名称】ミロマトリックス メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ステイナー ベン
(72)【発明者】
【氏名】シータプン ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】カタネ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ロス ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081CD34
4C081DA12
4C081EA01
4C081EA11
(57)【要約】
細胞外マトリクス(ECM)粒子形成方法および当該方法により製造される組成物が、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリクス(ECM)を含む灌流脱細胞化哺乳類器官の1つまたは複数の部分を提供する工程;
1つまたは複数のECM部分を周囲温度で脱水する工程;および
脱水したECM部分をミーリングに供し、それによってECMの粒子の集団を提供する工程
を含む、ECM粒子形成方法。
【請求項2】
前記部分を脱水前に圧縮する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の部分を、脱水前にガスで膨張させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記細胞外マトリクスを含む灌流脱細胞化哺乳類器官を、その1つまたは複数の部分を提供する前にガスで膨張させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ECMが、肝臓、心臓、肺または腎臓ECMである、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ECMが、ブタまたはヒトである、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記部分を、約1℃~約30℃の温度で脱水する、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記部分を、脱水前に生理学的に適合する溶液中に入れる、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、水またはPBSを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約2 mm未満のサイズである集団が生成される、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約0.15 mm未満のサイズである集団が生成される、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記粒子の集団をサイズにより分離する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記分離が、ふるいにより、前記集団を音響エネルギーに供することにより、前記集団を密度分離に供することにより、または流体を用いることにより行われる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記粒子を酵素消化に供する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記酵素消化された粒子が高分子量コラーゲンを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記集団が、約10%未満の含水量を有する、請求項1~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
周囲温度下で、ECMを含む平面的構成の灌流脱細胞化哺乳類器官またはその1つもしくは複数の部分を脱水する工程;および
脱水された部分を凍結ミーリングに供し、それによってECMの粒子の集団を提供する工程
を含む、ECM粒子形成方法。
【請求項18】
前記部分を圧縮する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ECMが肝臓ECMである、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記部分を、約1℃~約30℃の温度で脱水する、請求項17~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約2 mm未満のサイズである集団が生成される、請求項17~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約0.15 mm未満のサイズである集団が生成される、請求項17~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記粒子の集団をサイズにより分離する工程をさらに含む、請求項17~22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記粒子を酵素消化に供する工程をさらに含む、請求項17~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記集団が、約10%未満の含水量を有する、請求項17~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項記載の方法により製造される、粒子の集団。
【請求項27】
少なくとも95%の粒子が、約2 mm未満のサイズである、請求項26記載の集団。
【請求項28】
少なくとも95%の粒子が、約0.15 mm未満のサイズである、請求項26記載の集団。
【請求項29】
請求項26、27または28記載の集団を含む、ゲル。
【請求項30】
哺乳類細胞をさらに含む、請求項29記載のゲル。
【請求項31】
前記哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項30記載のゲル。
【請求項32】
請求項26、27もしくは28記載の集団または請求項29、30もしくは31記載のゲルの使用。
【請求項33】
3Dプリントのための、請求項33記載の集団またはゲルの使用。
【請求項34】
創傷治療のための、請求項26、27または28記載の集団の使用。
【請求項35】
請求項26、27もしくは28記載の集団または請求項29、30もしくは31記載のゲルを含むバイオインク組成物を提供する工程;および
3D構造を形成するようバイオインク組成物を適用する工程
を含む、3Dプリントのためにバイオインクを使用する方法。
【請求項36】
前記バイオインク組成物が細胞をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記バイオインク組成物が、単離されたタンパク質または糖タンパク質をさらに含む、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
請求項35~37のいずれか1項記載の方法により調製される、3D構造物。
【請求項39】
細胞を含む、請求項38記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年1月7日に出願された米国出願第62/789,218号の出願日の恩典を主張し、その開示を参照により本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
背景
三次元(3D)プリントは、組織工学用のスキャホールドおよびデバイスを製造する一般的な技術となりつつある。これは、患者特異的な設計、高い構造的複雑さ、および低コストでの迅速なオンデマンド製造を提供する3Dプリントの能力による。バイオ製造業における3Dプリントの広範囲の普及を制限する大きなボトルネックの1つは、「バイオ素材インク」の多様性の欠如である。
【0003】
多くのプリント可能な素材は、体外用途ではすばらしい特性を有しているが、移植可能なバイオ素材は、生理学的条件および身体との相互作用の両方に基づく特定の特徴を必要とし、これが開発をより困難にしている。一般に、プリント可能なバイオ素材は、(1)プリント可能でなければならず、(2)生体適合性でなければならず、(3)適切な機械的特性を有していなければならず、(4)良い分解動態を有していなければならず、(5)安全な分解副産物を形成しなければならず、(6)組織への生物擬態性(biomimicry)を示さなければならない。これらの要件の各々をどのように充足するかは、どのプリント方法を使用するかおよび計画されているデバイスの末端用途に依存して若干異なる。さらに、これらの特徴の多くは、相互に対して逆に作用し得る。例えば、骨組織においては、骨芽細胞の発生および耐荷重性のために硬い素材を有することが望ましいが、これは分解を遅らせるかまたは分解されない可能性がある。柔らかい素材は、プリント可能であり素早く生分解され得るが、それらの、取り扱われる能力および特定の組織タイプに適用される能力が懸念され得る。大部分の3Dプリント構築物は、骨または軟骨用途で使用されているが、それは、大部分のプリントされるバイオ素材が、ヒドロゲルシステムの外側で、これらの組織の自然の剛性を模倣する剛性を本来的に有しているからである。
【発明の概要】
【0004】
要旨
本開示は、例えば約10 x Yインチ、5 x Yインチ、2 x Yインチ、1 x Yインチ、0.5 x Yインチ、0.25 x Yインチまたは0.1 x Yインチであり、Yが0.1~1インチ、0.5~5インチ、0.2~1インチ、1~5インチまたは1~10インチであり得る寸法を有するその部分を含む、哺乳類の器官、例えばブタまたはヒトの器官、例えば肝臓、膵臓、腎臓、肺、脾臓または心臓由来の脱細胞化細胞外マトリクスを、熱の適用なしで脱水する方法を提供し、例えば、脱水は、約75°F未満、約70°F未満、約68°F未満、約25℃未満、約22℃未満または約19℃未満の温度で行われる。1つの態様において、当該部分は、脱水前に圧縮され得る。例えば、哺乳類器官由来の脱細胞化細胞外マトリクスの部分の厚みは、少なくとも0.01%、0.5%、1%、5%、10%、20%、50%、90%またはそれ以上圧縮され得る。1つの態様において、脱水された部分は、脱細胞化器官部分から水分を除去する周囲温度での脱水および任意の圧縮後に、元の器官の組成の大部分を維持している。脱水物は、その後、ミーリング(milling)、例えば凍結ミーリングに供され、ミーリングまたはミーリングおよび例えばふるいもしくは他のサイズ分離デバイスもしくは方法を用いるサイジング(sizing)を通じて獲得され得る、約0.01 mm~約0.05 mm、約0.05 mm~約0.1 mm、0.1 mm~約5 mm、約0.25 mm~約0.5 mm、約0.4 mm~約4 mm、約1 mm~約2 mm、約0.5 mm~約1.5 mm、約1.5 mm~約3 mmまたは約3 mm~約4 mmを含む、約0.001~0.005 mmから最大約10 mmの範囲のサイズの粒子の集団が提供され得る。全器官の細胞外マトリクスの元の組成は、脱水およびミーリングされた細胞外マトリクス粒子において、治療を可能にするまたは器官の機能を補助する3D構造のプリントに利用する器官特異的なインクを調製するための構造を提供する。インクは、溶媒、例えば水性溶媒、例えば水もしくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で組み合わせる前に脱水された粒子をサイジングすることによりまたは脱水された粒子を化学的もしくは酵素的消化に供することにより調製され得る。インクのバイオプリントは、サーマルインクジェットバイオプリント、ピエゾインクジェットバイオプリント、空気圧押し出しバイオプリント、機械押し出しバイオプリントまたはレーザー支援バイオプリントを含むがこれらに限定されない任意の方法を通じて行われ得る。したがって、粒子は、エクスビボ細胞アッセイを含むがこれらに限定されない方法またはインビボ用の組織工学構築物、例えばインビボ再モデリングのために移植されるもしくは機能的なインプラントを提供するよう細胞と組み合わされる灌流脱細胞化ECMに基づくプリントされた構造物の調製において有用な組成物で使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図3】非破壊的方法で(例えば、周囲温度で)乾燥させた灌流脱細胞化肝臓細胞外マトリクス(脱水ECM;dECM)の生産物のサイズを示すゲル。1)MWマーカー(Biorad);2)1 mg/mL、10μL;3)1 mg/mL、10μL;4)2.5 mg/mL;5)2.5 mg/mL;6)5 mg/mL;7)5 mg/mL;8)10 mg/mL;9)10 mg/mL;10)1 mg/mL、10μL;11)1 mg/mL、10μL;12)2.5 mg/mL;13)2.5 mg/mL;14)5 mg/mL;15)5 mg/mL。レーン2~9、NaOHなし;レーン10~15、NaOH添加。偶数番号のレーンは反応を室温で行ったサンプルを含み、奇数番号のレーンは反応を4℃で行ったサンプルを含む。
【
図4】灌流脱細胞化マトリクスの乾燥および凍結ミーリングの例。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本開示は、脱細胞化全器官物、例えば、灌流脱細胞化全器官物の脱水により調製される脱細胞化粒子生産物を提供する。多くの脱水法は、液体の除去を達成するために高温を用いる。本発明の方法は、脱細胞化物の選択またはサイジング、任意の圧縮、その後の、定義された時間の、例えばラミナーフローフード内での、スペーシング(spacing)を用いる。1つの態様において、脱水は、生産物中の含水量を、10%未満、例えば約9%、8%、7%、または5%未満にする。1つの態様において、圧縮および脱水は、生産物中の含水量を8%未満、例えば約7%、6%、5%または4%未満にする。脱水プロセスの周囲温度は、あらゆる細胞外マトリクス成分に対して非破壊的であり、それによってより高い効能を有する可能性のある生産物を生成する。この物質は、その後、3Dプリントを含むがこれらに限定されない多くの態様において微粒子として使用され得る微粒子粉末に凍結ミーリングされ得る、またはプロテアーゼ消化を含むがこれに限定されない、温度、化学的架橋、UV架橋もしくは他の手段よる再編成を通じてプリントされ得る溶液への消化により、ゲル形成のための液体に溶解され得、3Dプリントのインクとして使用するための液体に溶解され得る。この粒子はまた、直接的な治療能、例えば、創傷への直接適用、空隙部の充填、筋内注射、トンネル状の創傷および瘻孔への適用を有し得る。
【0007】
脱細胞化ECMのソース
1つの態様において、哺乳類器官または組織を脱細胞化する方法は、その器官または組織へのカニューレ挿入を含む。器官または組織の脈管、導管および/または空隙部は、当技術分野で公知の方法および材料を用いてカニューレ挿入され得る。器官または組織を脱細胞化する上での次の工程は、細胞破壊媒体を用いてカニューレ挿入された器官または組織を灌流することである。器官を通じた灌流は、多方向(例えば、順行および逆行)であり得る。
【0008】
心臓のランゲンドルフ灌流は、生理学的灌流として、当技術分野における慣用技術である(4室動作モード灌流としても公知)。例えば、Dehnert, The Isolated Perfused Warm-Blooded Heart According to Langendorff, In Methods in Experimental Physiology and Pharmacology: Biological Measurement Techniques V. Biomesstechnik-Verlag March GmbH, West Germany, 1988を参照のこと。簡潔に述べると、ランゲンドルフ灌流において、大動脈がカニューレ挿入され、細胞破壊媒体を含むリザーバに接続される。細胞破壊媒体は、例えば、輸注もしくはローラーポンプにより送達される一定の流速でまたは一定の静水圧によりのいずれかで動脈を逆方向に送達され得る。両方の例において、大動脈弁は強制的に閉鎖され、灌流液は冠動脈口に向けられ(それにより、心臓の心室全体を灌流し)、ついで冠静脈洞を通じて右心房に排出される。動作モード灌流においては、第2のカニューレが左心房に接続され、灌流が逆行から順行に切り替えられ得る。肺、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、脳および手足を含む他の器官または組織を灌流する方法は、当技術分野で公知である。
【0009】
器官または組織を脱細胞化するために、1つまたは複数の細胞破壊媒体が使用され得る。細胞破壊媒体は、通常、少なくとも1つの界面活性剤、例えばSDS、PEGまたはTriton Xを含む。細胞破壊媒体は、浸透圧的に細胞と不適合となるよう水を含み得る。あるいは、細胞破壊媒体は、細胞との浸透圧適合のために緩衝液(例えば、PBS)を含み得る。細胞破壊媒体はまた、酵素、例えば、非限定的に、1つもしくは複数のコラゲナーゼ、1つもしくは複数のジスパーゼ、1つもしくは複数のDNase、またはプロテアーゼ、例えばトリプシンを含み得る。いくつかの例において、細胞破壊媒体はまた、またはあるいは、1つまたは複数の酵素の阻害剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤および/またはコラゲナーゼ阻害剤)を含み得る。
【0010】
特定の態様において、カニューレ挿入された器官または組織は、2つの異なる細胞破壊媒体を用いて連続的に灌流され得る。例えば、第1の細胞破壊媒体は、アニオン性界面活性剤、例えばSDSを含み得、第2の細胞破壊媒体は、イオン性界面活性剤、例えばTriton X-100を含み得る。少なくとも1つの細胞破壊媒体を用いた灌流の後、カニューレ挿入された器官または組織は、例えば、洗浄溶液および/または1つもしくは複数の酵素、例えば本明細書に開示されるものを含む溶液を用いて灌流され得る。
【0011】
灌流の方向の交替(例えば、順行および逆行)は、器官または組織全体を効果的に脱細胞化するのを助け得る。本明細書に記載される脱細胞化は、本質的に、器官をその内側から外側に脱細胞化し、ECMにほとんどダメージを与えない。器官または組織は、4~40℃の間の適切な温度で脱細胞化され得る。器官または組織のサイズおよび重量ならびに細胞破壊媒体中の個々の界面活性剤および界面活性剤濃度に依存して、器官または組織は、通常、固形器官または組織1グラムあたり約2~約12時間、細胞破壊媒体により灌流される。洗浄を含めて、器官は、組織1グラムあたり最大約12時間~約72時間灌流され得る。灌流は通常、拍動流速度および圧を含む生理学的条件に調節される。
【0012】
脱細胞化器官または組織は、血管樹のECM成分を含む、器官または組織のすべてまたは大部分の領域の細胞外マトリクス(ECM)成分から本質的になる。ECM成分は、以下:フィブロネクチン、フィブリリン、ラミニン、エラスチン、コラーゲンファミリーのメンバー(例えば、コラーゲンI、IIIおよびIV)、グリコサミノグリカン、基質、細網線維およびトロンボスポンジン、のいずれかまたはすべてを含み得、これらは定義された構造、例えば基底板として組織化された状態で残存し得る。脱細胞化の成功は、標準的な組織学的染色手順を用いて組織学的切片において検出可能なミオフィラメント、内皮細胞、平滑筋細胞および核の非存在と定義される。好ましくは、しかし必ずそうである必要はないが、残留する細胞残骸もまた、脱細胞化器官または組織から除去される。
【0013】
(脱水前の)ECMの形態および構造は、視覚的におよび/または組織学的に試験され得る。例えば、固形器官の外表面上または器官もしくは組織の脈管構造内の基底板は、除去されるべきでないまたは脱細胞化により大きなダメージを与えるべきでない。加えて、ECMの原線維は、脱細胞化されていない器官または組織のそれと同様であるまたはそれから有意に変化していない状態であるべきである。それ以外のことが示されていない限り、本明細書で使用される脱細胞化は、灌流脱細胞化を表し、それ以外のことが示されていない限り、本明細書で参照される脱細胞化器官またはマトリクスは、本明細書に記載される灌流脱細胞化を用いて行われる。本明細書に記載される灌流脱細胞化は、例えば、米国特許第6,753,181号および同第6,376,244号に記載される浸漬脱細胞化と比較され得る。いずれの方法も、本明細書に開示される方法のためのECMのソースとして使用され得る。
【0014】
したがって、固形器官の脱細胞化は、細胞外マトリクス(ECM)および脈管床を実質的に維持しつつ細胞成分のほとんどまたはすべてを除去する。固形器官を得ることができる哺乳類は、非限定的に、げっ歯類、ブタ、ウサギ、ウシ、ヒツジ、イヌおよびヒトを含む。本明細書に記載される方法において使用される器官および組織は、死体のものであり得、または胎児、新生児もしくは成体のものであり得る。本明細書において参照される固形器官は、非限定的に、心臓、肝臓、肺、骨格筋、脳、膵臓、脾臓、腎臓、胃、子宮および膀胱を含む。1つの態様において、固形器官は、「実質的に閉鎖された」脈管系を有する器官を表す。器官に関連していう「実質的に閉鎖された」脈管系は、液体を用いた灌流の際に、液体の大部分が固形器官内に含まれ、固形器官外に漏出せず、主要な脈管がカニューレ挿入、結紮またはそれ以外の方法で制限されていることが推定されることを意味する。「実質的に閉鎖された」脈管系を有するにもかかわらず、上で列挙されている固形器官の多くは、灌流の間にその器官を通して液体を導入および移動させるのに有用である、定義された「流入」および「流出」管を有する。
【0015】
上記の固形器官に加えて、他のタイプの脈管化された器官または組織、例えば、関節(例えば、膝、肩、臀部もしくは椎骨)、気管、皮膚、腸間膜もしくは腸、小腸および大腸、食道、卵巣、陰茎、精巣、脊髄、または一岐もしくは分岐脈管のすべてまたは部分が、本明細書に開示される方法を用いて脱細胞化され得る。さらに、本明細書に開示される方法はまた、脈管化されていない(または相対的に脈管化されていない)組織、例えば、軟骨または角膜を脱細胞化するために使用され得る。
【0016】
本明細書に記載される脱細胞化器官または組織(例えば、心臓もしくは肝臓)またはその任意の部分(例えば、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁、肺静脈、肺動脈、冠血管、隔膜、右心房、左心房、右心室、左心室または肝葉)は、ECMベースの粒子を脱水するおよび形成する方法におけるECMのソースとして使用され得る。
【0017】
例示的な方法
脱水の前に、脱細胞化物は、様々なバッチで処理され、プールするおよび後日まとめて処理する目的で保管され得る。1つの態様において、当該方法は、穏やかな攪拌下での約5分間の、pH中性滅菌剤、例えば、500 ppm過酢酸(PAA)浴(5~10L)中での圧縮された脱細胞化全器官物のインキュベートを含む。乳酸、アルコール、過酸化水素、次亜塩素酸塩、二酸化炭素、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロラミン-T等を含むがこれらに限定されない他の滅菌剤も使用され得る。1つの態様において、この後に、穏やかな攪拌下での5分間の脱イオン水浴(5~10L)に供される。滅菌および洗浄の後、物質は、その物質が乾燥しないよう、脱イオン水または他の生理学的に適合する溶液を用いて無菌的に包装され得る。包装物は、その後、4℃で保管される。数ロットの物質を蓄積した後、その物質はプールされ、他のクラスの製品を製造するために使用され得る。
【0018】
したがって、1つの態様において、このプロセスから、哺乳類器官もしくはその部分の灌流脱細胞化および任意の器官の緩やかな圧縮により生成される物質が得られる。物質は、脱水されるまで4℃で保管され得る。脱水のために、1つの態様において、物質は、約1'' x 1''の細片にサイジングされ、ついで滅菌環境下のラミナーフローフード(LFH)内に置かれる。細片は、使用されるLFHにおいて約24~48時間の期間、またはそれらが十分に脱水されたように見えるまで、静置され得る。完全な脱水は、その物質における視覚的に区別できる色変化により決定され得る。乾燥および処理の後、物質は、含水量について分析され得る。
【0019】
脱水の後、乾燥された脱細胞化ECMは、その後、(粒子を有する)細かなECM粉末が生成するようミーリング、例えば凍結ミーリングされ得、かつ任意でサイジングされ得、これが包装され得、無菌的に使用され得、またはe-ビームもしくはガンマ照射を含む様々な方法を通じて滅菌され得る。粉末状ECMは、その後、3Dプリント用のプリント可能なインクを実現する増加した表面積を提供するよう酵素消化を通じてさらに処理され得る。
【0020】
押し出しベースの3Dプリント法
脱水およびサイジングにより生成された粒子は、組織工学用のデバイスおよびスキャホールドを製造するために、押し出しベースの3Dプリント法、例えば、熱溶解積層モデリング(FDM)およびダイレクトインクライティング(DIW)において使用され得る。これらの方法において、インクは、レイヤー毎に3Dオブジェクトを構築するコンピュータモデルにより決定された事前に規定されたパスにしたがい粘性液としてノズルを通じて射出される。溶媒流延ダイレクトライティングインクは、押し出し後に構造を維持するヒドロゲルを含む。
【0021】
インクジェットプリント
インクジェットプリントは、固化後に構造物を形成する目的で、非常に小さな容積(1~100ピコリットル)の個々の液滴をノズルからプリント表面に付着させることを可能にする。このプリントプロセスを加速させるよう、数百の個別のノズルを含む多ノズルインクジェットプリントヘッドが開発されている。インクジェットプリンターは、液滴の生成機構に基づき、連続式インクジェット(CIJ)プリントおよびドロップオンデマンド(DOD)インクジェットプリントの2つのグループに大別される。CIJプリントにおいては、連続する液滴(直径約100μm)の流れが生成され、未使用のインクが再利用される。DODインクジェットプリントにおいては、(直径25~50μmの範囲の)個々の液滴が必要なときに生成される。組織工学用途においては、DOD型プリンターが一般的に使用されている。インクジェットプリントの能力は、空間分解能、例えば、位置的に高精度(x-y軸において約10μm)なECM粒子を含むピコリットルの液滴の配置である。インクの最も重要な特性は、粘性および表面張力である。インクの粘性は、適切に、1 x 105~1 x 106-1の間の高せん断速度の下で通常10 cP(mPa s)を下回る程度に低くすべきである。表面張力は、ノズルから射出される液滴の形状および基材上での液滴の形状を決定する。インクの表面張力値は、一般に、28~350 mN m-1の範囲である。プリントされるオブジェクトの分解能および精度は、隣接する液滴間(癒着)および個々の液滴と基材の間(例えば、表面張力およびぬれ性)の相互作用により決定される。液体から固体への相転移(すなわち、溶媒蒸発、温度制御転移、または前駆体溶液のゲル化)は、プリントされるオブジェクトの最終的な形状およびサイズを制御する。
【0022】
レーザー支援3Dバイオプリント
レーザー支援3Dバイオプリント(LAB)は、例えば本明細書に記載されるECM粒子を含むバイオインクを含む「リボン」を通じてレーザーパルスを送る非接触でノズルを使わないプリントプロセスである。リボンは、エネルギーを吸収しその後にエネルギーをリボンに伝達することができるチタンまたは金の層によって支持される。バイオインクおよび任意で細胞は、リボンの底部で懸濁され、レーザーパルスによって蒸散されたときに、高圧のバブルを生成し、これが最終的に、リボンのちょうど向こう側に位置する受取側基材に個々の液滴を推進する。この工程は、3D構造物を機能的に作製するよう繰り返し行われる。LABは、プリント後の表現型および細胞生存性の高い保持力が実証されている。
【0023】
光造形
光造形(SLA)バイオプリント法は、UV光またはレーザーが光重合可能な液体ポリマーの経路にパターン状に送られ、それによってそのポリマーを架橋し硬化した層にするプロセスである光重合を利用する。各層が重合されると、プリントプラットフォームは、ポリマー溶液中にさらに降下し、それによって3D構造物を形成するための複数回のサイクルが可能となる。
【0024】
ヒドロゲルインク
ヒドロゲルは、多量の水分を保持する能力を有する三次元ポリマーネットワークであり、調整可能な機構、分解性および官能化性を有する微小環境を提供する。ヒドロゲルインクは、それらが細胞および/または生化学分子、例えばECM成分を含む場合、バイオインクと称され得る。インクジェット、光支援および押し出しベースの3Dプリントシステムが、ヒドロゲルプリントの最も一般的な方法である。ヒドロゲルインクを設計する古典的アプローチは、プリント後直ちにネットワークを形成するポリマー溶液を調製することである。このネットワークは、外部刺激、例えば温度、光またはイオン濃度に応じて物理的または化学的に架橋され得る。物理架橋ヒドロゲルの主な利点は、その物質の毒性を低下させる化学的薬剤の非存在である。他方、化学架橋ヒドロゲルは、共有結合の形成を通じて調製され、得られるヒドロゲルは、機械的な力に対してより高い耐性を有するが、それは通常、物理的に架橋されたネットワークよりも大きな容積変化を引き起こす。
【0025】
ECMを含めて形成されるヒドロゲルの物理化学特性およびゲル化法は、化学的、物理的および/もしくは酵素的機構を通じて調整され得るまたは熱/pH感受性により調節され得る。ECMベースのバイオインクは、例えば溶液(例えば、3%)として調製され得、15℃以下では溶液として維持され、37℃で30分以内にゲル化し、生理学的pHに調節されたpHであり得る。
【0026】
例示的な態様
1つの態様において、本開示は、ECM粒子形成方法を提供する。当該方法は、ECMを含む脱細胞化哺乳類器官の1つまたは複数の部分を提供する工程;1つまたは複数の部分を周囲温度で(例えば、加熱の非存在下で)および任意で正圧エアフローの下で脱水する工程;ならびに脱水された部分をミーリングに供し、それによってECMの粒子の集団を提供する工程を含む。1つの態様において、当該部分は、脱水前に圧縮される。1つの態様において、ECMは肝臓ECMである。1つの態様において、肝臓ECMはブタまたはヒト肝臓ECMである。1つの態様において、当該部分は約1℃~約30℃の温度で脱水される。1つの態様において、当該部分は約4℃~約25℃の温度で脱水される。1つの態様において、当該部分は約15℃~約25℃の温度で脱水される。1つの態様において、当該部分は約20℃~約25℃の温度で脱水される。1つの態様において、当該部分は約10℃~約20℃の温度で脱水される。1つの態様において、当該部分は、脱水前に生物学的に適合する溶液中に入れられる、例えば、溶液は水またはPBSを含む。1つの態様において、ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約2 mm未満のサイズである集団が生成される。1つの態様において、ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約0.15 mm未満のサイズである集団が生成される。1つの態様において、当該方法はさらに、粒子の集団をサイズにより分離する工程を含む。1つの態様において、分離はふるいにより行われる。1つの態様において、当該方法はさらに、粒子を酵素消化に供する工程を含む。1つの態様において、酵素消化された粒子は高分子量コラーゲン、例えば少なくとも150 kDaを含む。1つの態様において、集団は、約10%未満、5%未満、2%未満または1%未満の含水量を有する。
【0027】
当該方法によって調製される粒子の集団は、単独でまたは混合物、例えばゲル、例えばヒドロゲルまたはバイオインクを形成するために使用され得る。ゲルまたはインクは、3Dプリントプロセスを用いて構造物を形成するために使用され得る。
【0028】
本発明は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明されるであろう。
【実施例】
【0029】
実施例1
乾燥およびブレンドした灌流脱細胞化肝臓サンプルを、ラミナーフローフードにおいてサイジングした。脱細胞化肝臓ECM(MMまたはMD)の異なるサイズの細片、例えば0.5インチ x 0.5インチまたは1インチ x 1インチの細片(約15グラム)を、ポリカーボネート製グラインド用バイアルに入れた。バイアルの内容物を、SPEX Cryogrinderにおけるグラインドに供した。2つの異なるプロトコルを使用した。1つは、4グラインドフェーズ、10 CPS、5分予備冷却、2分冷却を含むものとした。他方のプロトコルは、2グラインドフェーズ、10 CPS、5分予備冷却、2分冷却を含むものとした。両方の生成物を、粒子サイズ分析のために2 mmふるいにかけた。4グラインドフェーズの生成物は、144 mgの>2.0 mm(1.1%)および13,051 mgの<2.0 mm(98.9%)を有した。2グラインドフェーズの生成物は、233 mgの>2.0 mm(2.2%)および10,228 mgの<2.0 mm(97.8%)を有した。各生成物(約1500 mg)を、非滅菌5 mL琥珀ガラスバイアルで包装し、ブチルストッパおよびアルミニウムシールにより封止した。含水量分析を行った(70℃)。表1は、各プロトコルおよび元ソース(MMまたはMD、両方とも肝臓由来灌流脱細胞化ECM)についての2つの異なるサンプルのデータを示している。
【0030】
【0031】
表1のデータは、周囲温度のラミナーフローフード内での脱水が<10%含水量をもたらしたことを示している。
【0032】
実施例2
図1のデータは、実施例1の7つのサンプルタイプの圧縮および脱水が、ECMから高分子量コラーゲン(例えば、コラーゲン > 150 kDa)を除去しないことを示している。
図2は、実施例1の7つのサンプルタイプについての粒子サイズ分析を示している。
【0033】
酵素消化がどのように構造を変化させるかを決定するため、26.2 mgペプシン(Sigma)、26.2 mL H
2Oおよび262マイクロリットルの1N HClを混合した。1、2.5、5および10 mgの凍結ミーリングされた脱細胞化、脱水ECM粒子を含む10 mM HCl中1 mg/mLペプシンの500マイクロリットル反応液を2つのチューブに分割し、室温または4℃で約20分間インキュベートし、その後にサンプルの半分に1N NaOH(55マイクロリットル)を添加して反応を停止させた。サンプルを、サンプル緩衝液で1:1希釈し、7.5% SDS-PAGE上で180 Vで35分間泳動させた(
図3)。
【0034】
図5は、当該方法の1つの態様における工程の概要を提供する。
【0035】
実施例3
試験条件:
・凍結ミーリングされた肝臓粒子の6つのバイアルを包装し、3つのグループに分けた(表2が実施例1を要約している)
・対照:ベースラインMC%
・陽性対照:37℃、加湿環境下での72時間のインキュベートの間、バイアルを開放した
・試験:37℃、加湿環境下での72時間のインキュベートの間、バイアルを封止したまま維持した
【0036】
【0037】
実施例4
1つの態様において、細胞外マトリクス(ECM)を含む脱水脱細胞化哺乳類器官の1つまたは複数の部分は、ミーリングに供され、それによってECMの粒子の集団が提供される。1つの態様において、当該部分は、脱水前に圧縮される。1つの態様において、ECMは、肝臓ECM、例えばブタまたはヒト肝臓ECMである。1つの態様において、当該部分は、約1℃~約30℃の温度で脱水される。1つの態様において、当該部分は、脱水前に生理学的に適合する溶液中に入れられる、例えば、溶液は水またはPBSを含む。1つの態様において、ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約2 mm未満のサイズであり任意で約0.01 mm超のサイズである集団が生成される。1つの態様において、ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約0.15 mm未満のサイズであり任意で約0.01 mm超のサイズである集団が生成される。1つの態様において、当該方法はさらに、粒子の集団をサイズにより分離する工程を含む。1つの態様において、分離はふるいにより、集団を音響エネルギーに供することにより、集団を密度分離に供することによりまたは流体を適用することにより行われる。1つの態様において、当該方法はさらに、粒子を酵素消化に供する工程を含む。1つの態様において、酵素消化された粒子は高分子量コラーゲンを含む。1つの態様において、集団は、約10%未満の含水量を有する。
【0038】
1つの態様において、脱水の前に、細胞外マトリクスは、ガスで膨張させられる。1つの態様において、膨張後の細胞外マトリクスは、対応する膨張させていない細胞外マトリクスのそれと比較して約0.2 cmより大きく最大約0.6 cm、例えば約0.4 cmを含む約0.3 cm~約0.5 cmの高さを有する。例えば、膨張後の大型哺乳類の肝葉の細胞外マトリクスは、対応する膨張させていない肝葉の細胞外マトリクスのそれと比較して、約0.4 cmを含む、約0.3 cmより大きく約0.5 cmまでの高さを有する。1つの態様において、膨張後の細胞外マトリクスは、対応する膨張させていない細胞外マトリクスと比較して、少なくとも25%から最大1000%、例えば、少なくとも50%から最大約500%または約75%から最大約250%増大した高さを有する。1つの態様において、器官または組織のガス充填脱細胞化細胞外マトリクスは、対応する元の器官または組織のそれの約25%~125%、例えば、約50%~約150%または約75%~約110%の形状、サイズまたは容積を有する。その生来の脈管または任意の他の導管(conduit)、例えば道管(duct)または空隙部を通じた器官または組織の脱細胞化細胞外マトリクスへのガス、例えば蒸気(粒子または液滴を有するガス)の能動的導入は、その非膨張形状と比較して拡張された、およびいくつかの態様において脱細胞化前の元の(細胞化されていた)器官または組織の本来の形状を有する、器官または組織マトリクスのガス充填脱細胞化細胞外マトリクスを提供する。ガス充填脱細胞化細胞外マトリクス、例えば、空気を充填されたもの、の形状は、そのガスが組織または器官内で捕捉され、元々は細胞により占有されていた空間を埋める結果として保持される。1つの態様において、ガスは、普通の空気、CO2、アルゴン、窒素もしくは酸素、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0039】
1つの態様において、ECMを含む灌流脱細胞化哺乳類器官の脱水された平面的構成、またはその1つもしくは複数の部分は、凍結ミーリングに供され、それによってECMの粒子の集団が提供される。1つの態様において、平面的構成または1つもしくは複数の部分は、圧縮される。1つの態様において、ECMは肝臓ECMである。1つの態様において、平面的構成または1つもしくは複数の部分は、約1℃~約30℃の温度で脱水される。1つの態様において、ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約2 mm未満のサイズである集団が生成される。1つの態様において、ミーリングにより、少なくとも90%の粒子が約0.15 mm未満のサイズである集団が生成される。1つの態様において、当該方法はさらに、粒子の集団をサイズにより分離する工程を含む。1つの態様において、当該方法はさらに、粒子を酵素消化に供する工程を含む。1つの態様において、集団は、約10%未満の含水量を有する。
【0040】
例えば少なくとも95%の粒子が約2 mm未満のサイズもしくは約0.15 mm未満のサイズである、当該方法によって生成される粒子の集団、または当該集団を含むゲルが、3Dプリントにおいてまたは創傷治療において使用され得る。1つの態様において、集団またはゲルは、3Dプリント用のバイオインクのために使用される。1つの態様において、3Dプリントされた構造物は、埋め込まれた細胞の機能的試験のために使用される、例えば、3Dプリント構造物が形成された後に細胞が添加され得る。1つの態様において、集団またはゲルは、懸濁ECM粒子複合インクを形成するよう異なるバイオインクに注入もしくは添加または異なるバイオインクと混合される。例えば、異なるバイオインクは、細胞、タンパク質、例えば1つもしくは複数の成長因子、または他のスキャホールド物質、例えばアガロース、ゼラチン、Pluronics(ポロキサマー)、アルギネート、コラーゲン、ヒアルロン酸、フィブリン、シルクもしくはセルロースを含み得る。
【0041】
1つの態様において、灌流脱細胞化器官部分の脱水または凍結ミーリングは、特に、環境条件に依存して約5~20%の含水量をもたらす。
【0042】
1つの態様において、凍結ミーリングされた粒子の全体サイズは、凍結ミーリング時に使用された条件に依存して0.02 mm~約4 mmの範囲である。
【0043】
1つの態様において、凍結ミーリングされた器官の粒子は、全器官由来ECMを含む3D構造物のプリントのための3Dプリント用インクに添加される。
【0044】
1つの態様において、凍結ミーリングされた器官の粒子は、3Dプリントにおいてインクとして使用できる溶液を形成するよう、様々な酵素で消化される。1つの態様において、酵素消化は、2 mm未満のECMサイズ、例えば、1.8未満、1.6未満、1.4未満、1.2未満または1.0 mm未満のECMサイズをもたらす。
【0045】
1つの態様において、全器官部分に基づく3Dプリント構造物は、哺乳類に移植され得る。
【0046】
すべての刊行物、特許および特許出願が、参照により本明細書に組み入れられる。上記の詳細な説明において、本発明はその特定の好ましい態様に関連して記載されおり、説明の目的で多くの詳細が示されているが、本発明からさらなる態様を導くことが可能なこと、および本発明の基本的原理から逸脱することなく本明細書に記載される詳細が相当に変更され得ることが、当業者に明らかであろう。
【国際調査報告】