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特表2022-516571HTRA阻害物質及びCAGA阻害物質並びに同物質の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】HTRA阻害物質及びCAGA阻害物質並びに同物質の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220218BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220218BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220218BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/04
A61P35/00
A61K38/10 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539533
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020012347
(87)【国際公開番号】W WO2020142764
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】62/788,939
(32)【優先日】2019-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/788,958
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/788,953
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/788,955
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/788,957
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520021048
【氏名又は名称】プソマーゲン, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PSOMAGEN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アプト, ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】リッチマン, ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】アルモナシッド, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マルケス, バレリア
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084DA42
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB351
4C084ZB352
(57)【要約】
【課題】HTRA阻害物質及びCAGA阻害物質並びに同物質の使用。
【解決手段】本出願は、新規のHtrA阻害物質と同物質の使用に関連する。さらに、本出願は、CagAを阻害する新規のペプチドと同ペプチドの使用にも関連する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)を有するHtrA阻害物質及び賦形剤を含有した、患者への投与に好適な薬学的に許容可能な形態の製剤。
【化1】
(式中、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、表1に挙げられた基より選択された原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルコキシ、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基は、さらに独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択される1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。)
【請求項2】
は、表1に挙げられた基より選択され、Rは、表2に挙げられた基より選択され、Rは、表3に挙げられた基より選択され、Rは、表4に挙げられた基より選択され、Rは、表5に挙げられた基より選択され、Rは、表6に挙げられた基より選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
N’-ベンジル-N-[2-[(2R)-1-(4-メチルフェニル)スルフォニルピペリジン-2-イル]エチル]オキサミド;1-[2-[メチル(ナフタレン-2-イルスルフォニル)アミノ]アセチル]ピペリジン-4-カルボキサミド;8-(4-メチルフェニル)スルフォニル-4-(2,4,6-トリメチルフェニル)スルフォニル-1-オキサ-4,8-ジアザスピロ[4.5]デカン;N-{1-[2-(2-ビフェニリルオキシ)エチル]-3-ピロリジニル}-3,4-ジフルオロベンゼンスルフォンアミド;1-(2-アンスリルスルフォニル)-3-ピペリジンカルボン酸;(3S)-1-カルバミミドイル-N-({(2S)-1-[N-(2-ナフチルスルフォニル)グリシル]-2-ピロリジニル}メチル)-3-ピペリジンカルボキサミド;(3S)-1-カルバミミドイル-N-({(2S)-1-[N-(2-ナフチルスルフォニル)-L-アラニル]-2-ピロリジニル}メチル)-3-ピペリジンカルボキサミド;シクロヘキシル[4-(1-ナフチルスルフォニル)-2-(トリフルオロメチル)-1-ピペラジニル]メタノン;及び、2-[(8S,11R)-11-{(1R)-1-ヒドロキシ-2-[(3-メチルブチル)(フェニルスルフォニル)アミノ]エチル}-6,9-ジオキソ-2-オキサ-7,10-ジアザビシクロ[11.2.2]ヘプタデカ-1(15),13,16-トリエン-8-イル]アセトアミド
からなる群より選択されるHtrA阻害物質及び賦形剤を含有した、患者への投与に好適な薬学的に許容可能な形態の製剤。
【請求項4】
細菌感染の治療方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載のHtrA阻害物質を有効薬量で、必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項5】
前記細菌感染は、ヘリコバクター・ピロリ感染である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
101112の配列を有するCagA阻害物質であって、
は、D、R、H、I、F、P、W、又はYであり、
は、T、又はNであり、
は、D、N、又はYであり、
は、P、E、L、又はYであり、
は、T、R、又はLであり、
は、A、又はSであり、
は、P、R、E、I、又はLであり、
は、P、I、L、又はWであり、
は、F、又はYであり、
10は、D、F、又はWであり、
11は、S、A、D、E、H、I、L、又はYであり、
12は、L、A、N、W、又はYであるCagA阻害物質。
【請求項7】
DTDPTAPPYDSLの配列を有する請求項6に記載のCagA阻害物質。
【請求項8】
表13に挙げた配列を有する請求項6に記載のCagA阻害物質。
【請求項9】
表13に挙げたSEQ ID NO:1~38の配列のいずれかと少なくとも80%同一の配列を有するCagA阻害物質。
【請求項10】
胃癌の治療方法であって、
請求項6~9のいずれか一項に記載のCagA阻害物質を有効薬量で、必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項11】
病原性細菌を阻害、下方制御、低減、及び/又は、死滅する方法であって、
a.抗菌化合物を生成する微生物をスクリーニングするステップと、
b.前記抗菌化合物の構造解析を実施するステップと、
c.前記抗菌化合物を修飾して標的細菌への親和性を高めるステップと、
を含む方法。
【請求項12】
BLAST、FASTA、又はCLUSTALがステップa)の配列解析に使用される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗菌化合物の少なくとも1つのアミノ酸が、ステップc)において変異される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記構造解析は、溶媒露出表面積を使用して実施される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗菌化合物は、サリバリシンA、ルミノコッシンA、又はバクテリオシン・スタフィロコッカス188である請求項11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月7日出願の米国仮特許出願第62/788,955号の表題「微生物叢からの抗菌化合物により細菌を標的にする方法及びシステム」、2019年1月7日出願の米国仮特許出願第62/788,957号の表題「腸上皮の細胞結合タンパク質を保護する方法及びシステム」、2019年1月7日出願の米国仮特許出願第62/788,958号の表題「宿主タンパク質を模倣する微生物叢を標的にする方法及びシステム」、2019年1月6日出願の米国仮特許出願第62/788,939号の表題「ヘリコバクター・ピロリにおけるHpHtRAの阻害物質としての小分子」、2019年1月7日出願の米国仮特許出願第62/788,953号の表題「H.ピロリ及び/又は胃癌に関連のCagA阻害物質」の利益を主張するものであり、これら全体を参照として本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
ヒト微生物叢によって生成されるいくつかの抗菌化合物が、ヒトの健康及び/又は疾病の条件に関連付けられた異なる生物的機能に含まれる。最も一般的な抗菌化合物には、ランチビオティック、バクテリオシン、及びミクロシンが含まれ得る。
【0003】
バクテリオシン及びランチビオティックは、他の微生物を阻害又は死滅する細菌によって合成された抗菌ペプチド又はタンパク質(20~60のアミノ酸)である。抗菌化合物は、殺菌性又は静菌性の効果を促進し、細胞成長を阻害し得る。バクテリオシンは、ヒトの消化管で容易に消化されるため、安全な食品保存料として主に使用されてきた。しかしながら、健康関連用途では、いくつかのバクテリオシン及びランチビオティックが使用される。枯草菌由来のサブチロシンAは、抗ウィルス性及び殺精子の活性を示す。ラクトコッカス及び連鎖球菌種を含む、いくつかのグラム陽性細菌によって生成されるナイシンは、肺炎レンサ球菌、エンテロコッカス、及びクロストリジウム-ディフィシル等、グラム陽性多くのグラム陽性病原体を制御する能力を有する。ミクロシンは、排他的に腸内細菌科に由来する小さなペプチド(10kDa未満)であり、これを生成する、密接に関連の細菌に対して潜在的な抗菌活性を有する。感受性の大腸菌細胞に対するミクロシンB17の作用により、DNA複製の停止を引き起こし、結果として、SOS応答を誘発する。抗菌化合物のうちの一部は、FDAにより、「一般的に安全と認められる(GRAS)」化合物として認められているため、抗菌化合物の多様な用途が研究されている。
【0004】
バクテリオシンに使用例には、以下が含まれる。
●サリバリシンAで、ストレプトコッカス・サリバリウスK12によって生成されるバクテリオシンが、ストレプトコッカス・アンギノーサスT29、ユーバクテリウム・サブリウム、及びミクロモナス・ミクロス等、悪臭関連細菌種を阻害するものとして研究されている。
●C.パーフリンジェンスンス及びC.ディフィシルに対して、ルミノコッカス・グナバス及びクロストリジウム・ネキシルによって生成されるルミノコッシンAが研究されており、これらの病原体に対する治療薬として提案されている。これらの病原体は、ヒトの抗菌薬関連下痢症及び散発性下痢症に関連する。
●ニューカッスル病ウィルス、インフルエンザウィルスに対して、バクテリオシン・スタフィロコッカス188が研究されている。
【0005】
いくつかの微生物が、宿主の特性に接着、内部移行、及び/又は、これを利用する際に粘膜上皮が使用され、結果として疾病を引き起こすことが説明されてきた。例として、最も標的とされるタンパク質のうちの1つが、E-カドヘリンであり、癌予防に重要な役割を果たす、細胞接着及び腫瘍の抑制物質である。例として、大腸菌、赤痢菌、カンピロバクター・ジェジュニ、及びヘリコバクター・ピロリ等の微生物が、HtrA病原性因子を発現し、E-カドヘリンの細胞外部分の開裂をトリガする。E-カドヘリンが開裂すると、細胞同士の接着が弱まるため、微生物が細胞内上皮空間に入り、下痢から癌までの疾病を引き起こす。リステリア・モノサイトゲネス等、他の微生物が、胃腸炎、髄膜脳炎、及び/又は、敗血症等の疾病の原因となり、細胞壁インターナリンを生成してE-カドヘリンを結合し、宿主細胞への内部移行を促進する。したがって、E-カドヘリンを結合し得る病原性因子は、有望な薬剤標的である。
【0006】
腸内微生物叢は、腸上皮によってヒトの仕組みの残りの部分から分離される微生物の保有機能を備える。しかしながら、腸疾患(IBD)等の症状又は疾病、抗生物質の使用、老化、及び/又は、その他の好適な症状、及び/又は、疾病等により、「リーキーガット」又は「透過性腸」として周知の現象において、腸粘膜バリアが微生物叢によって生成される分子に対して透過性を有するようになることがある。
【0007】
分子模倣メカニズムは、自己免疫に繋がり得る(例えば、遺伝的素因とは別の)いくつかのメカニズムの1つである。この点に関して、細菌は、自己ペプチド(例えば、分子模倣)と同様の配列を有するペプチドを生成し得るもので、リーキーガットの環境においては、このようなペプチドは、T細胞、及び/又は、B細胞と接触し得る。このように、T細胞及び/又はB細胞は、ホストエピトープと相互作用して、自己免疫に繋がり得る。MHCクラスII分子が超管腔細胞上に発現し得るもので、これらの細胞がルミナルペプチドを処理して、これらをT細胞に付与し得るため、この現象が生じ得る。したがって、細胞ペプチドが、ヒトタンパク質に対して反応し得る抗体の生成を引き起こし、これらのタンパク質の機能を阻害し得る。この抗体の生成により、最終的に、代謝性、炎症性、及び/又は、自己免疫性の疾患を引き起こし、及び/又は、これらを悪化させることがある。
【0008】
いくつかのマウスにおける研究では、遺伝的に疾患にかかりやすいマウスにおいて、腸内微生物叢主の導入により、関節炎をトリガし得る。また研究では、微生物叢が、クローン病、ループス、リウマチ関節炎、及び/又は、乾癬等、その他の自己免疫疾患のトリガに関与し得ることが示されている。
【0009】
ヘリコバクター・ピロリは、世界保健機構により、胃癌の原因となるクラスI発癌性物質として分類されてきた。H.ピロリは、宿主細胞の胃上皮細胞にコロニー形成することができ、胃粘膜を改変し、潰瘍、慢性胃炎、及び/又は、胃癌等、いくつかの感染性症状を引き起こす。さらに、H.ピロリは、ここ数十年の間に抗生物質に対して耐性を備えてきている。
【0010】
宿主細胞への付着及び侵入の際に微生物によって使用される一般的な標的の1つが、E-カドヘリンを通じたものである。胃上皮細胞において、E-カドヘリンは、細胞結合を維持する重要な役割を果たし、細菌の侵入を防ぎ、及び/又は、癌細胞の増殖を防ぐ。E-カドヘリンは、5つの細胞外ドメインと、細胞内ドメインと、膜透過ドメインとを有する、単一の膜透過タンパク質として説明することができる。
【0011】
HtrAは、いくつかの細菌及び真核生物における同族体を備えた熱衝撃誘導セリンプロテアーゼである。HtrAは、通常、異常タンパク質のタンパク質分解に貢献する。HtrAタンパク質は、基質の結合に関与するタンパク質ドメイン及びC-末端PDZ等、共通のアーキテクチャを共有する。H.ピロリにおいて、HtrAは、E-カドヘリンの外部ドメインを開裂するものということが示されている。また、カンピロバクター・ジェジュニ等、他の微生物におけるHtrAが細菌の侵入及びE-カドヘリンの開裂に関与する。C.ジェジュニ及びH.ピロリの双方が、HtrAタンパク質を細胞外環境に活発に分泌し、これらが宿主細胞因子を標的にする。最近では、HtrAによって開裂されたE-カドヘリンからのモチーフは([VITA]-[VITA]-x-x-D-[DN])と記され得る。
【0012】
いくつかのHtrAタンパク質の配列の並びが、3つの重要な残基、HIS116、ASP147、及びSER221を含む、保存されたキモトリプシン様タンパク質ドメインを示している。HtrAタンパク質は、例えば、以下のうちの1つ以上を含む、薬剤の標的として、いくつかの効果を示している。
【0013】
細胞外環境又は細菌表面に分泌された後、薬剤によってアクセス可能となる。
【0014】
酵素活性部位が特性化及び記述可能である。
【0015】
E-カドヘリン、プロテオグリカン、フィブロネクチン等、HtrAタンパク質によって標的とされる宿主因子が、細菌病原体中で重要な機能を有する。
【0016】
細菌におけるHtrA遺伝子の消失が致死的であることがわかっている。HtrAタンパク質の選択的阻害により、細胞が胃腸組織にアクセスすることを防ぐことで、抗生物質治療を助けてもよい。
【0017】
胃癌(GC)は、世界癌研究所(http://gco.iarc.fr)によると、世界で5つめに最も一般的な癌であり(すべての癌のうち5.7%の発生率)、癌による死の3つ目の主な原因(8.2%)である。
【0018】
さらに、ヘリコバクター・ピロリは、世界の非噴門部胃癌の負担のほぼ90%の原因としてラベル付けされており、胃癌に関連付けられた最も関連性の高い感染性因子である。同時に、腸内吸収悪化、妊娠高血圧腎症等、さらには治療薬としての効果が乏しいが故に、B12及び鉄分不足等、多数の副次的影響が、胃癌及びH.ピロリに関連付けられている。
【0019】
H.ピロリ感染メカニズム:
H.ピロリからの多数の代謝経路が、胃損傷による胃癌に関連付けられており、これらの経路には、細胞毒性関連遺伝子A(CagA)、結合アドへシンA(BabA)、シアル酸結合アドへシン(SabA)、細胞空胞化毒素(VacA)、外部炎症タンパク質A(OipA)等、ウレアーゼ、侵襲性毒性タンパク質が含まれる。特に、CagAは、よく形成された3つのドメイン(I、II、III)、病原性ドメイン(EPIYAモチーフ)、及びC-末端多量体化ドメイン(CM)を含む多数のヒトタンパク質と相互作用可能な能力を有するために、GCの主な誘発因子のうちの1つとして説明される病原性因子タンパク質である。CagA病原性は、運動性、増殖、有糸分裂、極性、及び接合等、細胞の多数の細胞応答と折り合う。特に、CMドメインは、上皮カドヘリン(E-カドヘリン)との相互作用と特に関連付けられ、GCに関連付けられた主要経路のうちの1つであるWnt経路及び結合タンパク質を途絶させる。結合タンパク質は、上皮の凝集における役割が故に、細胞形態と細胞の細胞骨格の再配置とを統制するもので、関連性があり、このように、いくつかの癌タイプを包含し得る。したがって、上皮カドヘリン(E-カドヘリン)は、細胞間の連通を媒介する上で最も重要なタンパク質のうちの1つであり、細胞の成長及び増殖の機会、又は細胞内の方法による成長のインジケータとして振る舞う。
【0020】
正常な状況下では、E-カドヘリンは、Wntシグナル伝達カスケード(非活性である)の正常部分としてβ-カテニンを結合する。しかしながら、胃癌において、CagAは、β-カテニン結合プロセスと競合するEカドヘリンと結合して相互作用し、β-カテニンの蓄積を促進し、可能性のある発癌性遺伝子を含む、細胞増殖のシグナル伝達に関与する多数の因子の転写を促進し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
細菌のシャペロン及びセリンプロテアーゼ-高温要件A(HtrA)-は、いくつかの感染性疾患の成立及び進行に密接に関連付けられる。本開示は、1つ以上のHtrA阻害物質に関連する。このような阻害物質は、抗感染症薬として使用可能である。例えば、HtrA阻害物質は、化学式(I)を有し、
【化1】
式中、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、表1に挙げられた基より選択された原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルコキシ、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、
は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、
【0022】
は、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基は、さらに独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択される1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0023】
一実施形態において、HtrA阻害物質は、N’-ベンジル-N-[2-[(2R)-1-(4-メチルフェニル)スルフォニルピペリジン-2-イル]エチル]オキサミド;1-[2-[メチル(ナフタレン-2-イルスルフォニル)アミノ]アセチル]ピペリジン-4-カルボキサミド;8-(4-メチルフェニル)スルフォニル-4-(2,4,6-トリメチルフェニル)スルフォニル-1-オキサ-4,8-ジアザスピロ[4.5]デカン;N-{1-[2-(2-ビフェニリルオキシ)エチル]-3-ピロリジニル}-3,4-ジフルオロベンゼンスルフォンアミド;1-(2-アンスリルスルフォニル)-3-ピペリジンカルボン酸;(3S)-1-カルバミミドイル-N-({(2S)-1-[N-(2-ナフチルスルフォニル)グリシル]-2-ピロリジニル}メチル)-3-ピペリジンカルボキサミド;(3S)-1-カルバミミドイル-N-({(2S)-1-[N-(2-ナフチルスルフォニル)-L-アラニル]-2-ピロリジニル}メチル)-3-ピペリジンカルボキサミド;シクロヘキシル[4-(1-ナフチルスルフォニル)-2-(トリフルオロメチル)-1-ピペラジニル]メタノン;及び、2-[(8S,11R)-11-{(1R)-1-ヒドロキシ-2-[(3-メチルブチル)(フェニルスルフォニル)アミノ]エチル}-6,9-ジオキソ-2-オキサ-7,10-ジアザビシクロ[11.2.2]ヘプタデカ-1(15),13,16-トリエン-8-イル]アセトアミドからなる群より選択される。
【0024】
本開示はまた、細菌感染の治療方法であって、本明細書に記載のいずれか一つ以上のHtrA阻害物質を有効薬量で、必要とする被験者に投与することを含む方法にも関連する。一実施形態において、前記細菌感染は、ヘリコバクター・ピロリ感染である。
【0025】
本開示はまた、CagA、H.ピロリ病原性因子を阻害するペプチドにも関連する。このようなペプチドを、CagA媒介胃癌に対する治療薬として使用することができる。一実施形態において、CaGAを阻害するペプチドは、X101112の配列を有し、
は、D、R、H、I、F、P、W、又はYであり、
は、T、又はNであり、
は、D、N、又はYであり、
は、P、E、L、又はYであり、
は、T、R、又はLであり、
は、A、又はSであり、
は、P、R、E、I、又はLであり、
は、P、I、L、又はWであり、
は、F、又はYであり、
10は、D、F、又はWであり、
11は、S、A、D、E、H、I、L、又はYであり、
12は、L、A、N、W、又はYである。
【0026】
いくつかの実施形態において、CaGAを阻害するペプチドは、RTDPTAPPYDSL、又はDTDPTAPPYDSLの配列を有する。
【0027】
本開示はまた、胃癌の治療方法であって、本明細書に記載のペプチドを有効薬量で、必要とする被験者に投与することを含む方法にも関連する。このようなペプチドには、例えば、DTDPTAPPYDSL及びRTDPTAPPYDSLが含まれる。
【0028】
他の態様において、本開示はまた、病原性細菌を阻害、下方制御、低減、及び/又は、死滅する方法であって、
抗菌化合物を生成する微生物をスクリーニングするステップと、
前記抗菌化合物の構造解析を実施するステップと、
前記抗菌化合物を修飾して標的細菌への親和性を高めるステップと、を含む方法に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】微生物叢細菌によって生成される新たな抗菌化合物を検出する方法、及び/又は、システムを模式的に示している。
図2】抗菌化合物を修飾する方法、及び/又は、システムを模式的に示している。
図3】細胞結合を変更する新たな細菌病原性因子を検出する方法、及び/又は、システムを模式的に示している。
図4】細胞結合タンパク質としてE-カドヘリンの具体例を使用して、病原性因子に対するペプチド阻害物質を生成する方法、及び/又は、システムを模式的に示している。
図5】自己免疫反応をトリガすることのできる候補の細菌タンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の好適な成分を発見する方法、及び/又は、システムを模式的に示している。
図6】MHCクラスII結合ゾーン及びRNAゾーンを含む、ループスに関連付けられたバクテロイデスータイオタオミクロンにおいて発見されるRo60抗原オルソログタンパク質を示している。
図7】ヘリコバクター・ピロリからの三量体HtrAの相同性モデル(左側)と、HIS116、ASP147、及びSER221残基を描いたプロテアーゼの触媒部位(右側)と、を示している。
図8】HtrA受容体に対して>-9.5kcal/molで結合するドッキングエネルギーを備えるものとして選択された候補分子の具体例を示している。
図9】HtrA受容体に対して>-8.9kcal/molで結合するドッキングエネルギーを備えるものとして選択された候補分子の具体例を示している。
図10】HtrA受容体に対して>-8.9kcal/molで結合するドッキングエネルギーを備えるものとして選択された候補分子の具体例を示している。
図11】タイプ別の癌患者の推定死亡数を示している。
図12】細菌感染に起因する癌の推定数を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の詳細な説明
定義
本明細書及び添付の請求書において使用される不定冠詞は、文脈において明確に否定することのない限り、その冠詞の文法的対象1つ~1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指すものである。例として、不定冠詞を付した「要素」は、1つの要素であるか、又は1超の数の要素である。
【0031】
【化2】
は、E又はZの構成における二重結合を示す。
【0032】
「H」という用語は、単一の水素元素を示す。このラジカルは、例えば、酸素原子に結合してヒドロキシルラジカルを形成する。
【0033】
「アルキル」という用語を使用するとき、単独で使用するか、「ハロアルキル」又は「アルキルアミノ」等、他の用語内で使用するかに関わらず、1~約12の炭素原子を有した直鎖又は分岐ラジカルを包含する。より好ましいアルキルラジカルは、1~約6の炭素分子を有した「低級アルキル」である。このようならラジカルの例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル等が挙げられる。より好ましいのは、1又は2の炭素原子を有した低級アルキルラジカルである。「アルキレニル」又は「アルキレン」という用語は、メチレニル又はエチレニル等、二価アルキルをブリッジすることを包含する。「Rで置換した低級アルキル」という用語には、アセタール部分は含まれない。「アルキル」という用語はさらに、鎖内の1つ以上の炭素原子が、酸素、窒素、又は硫黄から選択されたヘテロ原子で置換されたアルキルラジカルを含む。
【0034】
「アルケニル」という用語は、2~約12の炭素原子のうち少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐ラジカルを包含する。より好ましいアルケニルラジカルは、2~約6の炭素原子を有した「低級アルケニル」である。最も好ましい低級アルケニルラジカルは、2~約4の炭素原子を有したラジカルである。アルケニルラジカルの例として、エテニル、プロペニル、アリル、プロペニル、ブテニル、及び4-メチルブテニルが挙げられる。「アルケニル」及び「低級アルケニル」という用語は、「シス」及び「トランス」配向か、又は「E」及び「Z」配向を有するラジカルを包含する。
【0035】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合と、2~約12の炭素原子とを有する直鎖又は分岐ラジカルを示す。より好ましいアルキニルラジカルは、2~約6の炭素原子を有する「低級アルキニル」ラジカルである。最も好ましい低級アルキニルラジカルは、2~約4の炭素原子を有するラジカルである。このようなラジカルの例として、プロパルギル、ブチニル等が挙げられる。
【0036】
アルキル、アルキレニル、アルケニル、及びアルキニルラジカルは、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロ等、1つ以上の官能基で任意に置換されてもよい。
【0037】
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲンを意味する。
【0038】
「ハロアルキル」という用語は、上に定義のとおり、アルキル炭素原子のうちのいずれか1つ以上がハロで置換されたラジカルを包含する。具体的には、パーハロアルキルを含む、モノハロアルキル、ジハロアルキル、及びポリハロアルキルラジカルが包含される。モノハロアルキルラジカルは、例えば、ラジカル内に、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、又は窒素原子のいずれかを有してもよい。ジハロ及びポリロハロアルキルラジカルは、同一のハロ原子又は異なるハロラジカルの組み合わせを2つ以上有してもよい。「低級ハロアルキル」は、1~6の炭素原子を有するラジカルを包含する。1~3の炭素原子を有する低級ハロアルキルラジカルがより好ましい。ハロアルキルラジカルの例として、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチル、及びジクロロプロピルが挙げられる。
【0039】
「パーフルオロアルキル」という用語は、すべての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキルラジカルを意味する。例として、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルが挙げられる。
【0040】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、いずれか1つが1つ以上のヒドロキシルラジカルで置換されてもよい1~約10の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキルラジカルを包含する。より好ましいヒドロキシルアルキルラジカルは、1~6の炭素原子と1以上のヒドロキシルラジカルを有する「低級ヒドロキシアルキル」ラジカルである。このようなラジカルの例として、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、及びヒドロキシヘキシルが挙げられる。1~3の炭素原子を有した低級ヒドロキシアルキルラジカルがより好ましい。
【0041】
「アルコキシ」という用語は、各々、1~約10の炭素原子のアルキル部分を有した直鎖又は分岐オキシ含有ラジカルを包含する。より好ましいアルコキシラジカルは、1~6の炭素原子を有した「低級アルコキシ」ラジカルである。このようなラジカルの例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びtert-ブトキシが挙げられる。1~3の炭素原子を有した低級アルコキシラジカルがより好ましい。アルコキシラジカルはさらに、フルオロ、クロロ、又はブロモ等の1つ以上のハロ原子で置換されて「ハロアルコキシ」ラジカルを与えてもよい。1~3の炭素原子を有した低級ハロアルコキシラジカルがさらに好ましい。このようなラジカルの例として、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシ、及びフルオロプロポキシが挙げられる。
【0042】
「アリール」という用語は、単独又は組み合わせにおいて、1又は2の環を有する炭素環芳香族系であって、このような環が縮合してともに結合することがある。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、インデニル、テトラヒドロナフチル、及びインダニル等の芳香族ラジカルを包含する。より好ましいアリールは、フェニルである。「アリール」基は、低級アルキル、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、及び低級アルキルアミノ等、1つ以上の置換基を有してもよい。-O-CH-O-で置換されたフェニルは、アリールベンゾジオキソリル置換基を形成する。
【0043】
「ヘテロシクリル」(又は「ヘテロシクロ」)という用語は、飽和、部分飽和、及び不飽和のヘテロ原子含有環状ラジカルを包含するもので、ヘテロ原子は、窒素、硫黄、及び酸素から選択されてもよい。-O-O-、-O-S-、又は-S-S-部分を含む環は含まれない。「ヘテロシクリル」基は、ヒドロキシル、Boc、ハロ、ハロアルキル、シアノ、低級アルキル、低級アラルキル、オキソ、低級アルコキシ、アミノ、及び低級アルキルアミノ等、1~4の置換基を有してもよい。
【0044】
飽和複素環式ラジカルの例として、1~4の窒素原子を含む飽和3~6員複素単環基[例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、ピペラジニル]、1~2の酸素原子と1~3の窒素原子とを含む飽和3~6員複素単環基[例えば、モルフォリニル]、1~2の硫黄原子と1~3の窒素原子とを含む飽和3~6員複素単環基[例えば、チアゾリジニル]が挙げられる。部分飽和複素環式ラジカルの例として、ジヒドロチエニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフリル、及びジヒドロチアゾリルが挙げられる。
【0045】
不飽和複素環式ラジカルは、「ヘテロアリール」ラジカルとも称されるが、この例として、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル[例えば、4H-1,2,4-トリアゾリル、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリル]等、1~4の窒素原子を含む不飽和5~6員複素単環基、例えば、ピラニル、2-フリル、3-フリル等、酸素原子1を含む不飽和5~6員複素単環基、例えば、2-チエニル、3-チエニル等、硫黄原子を含む5~6員複素単環基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル[例えば、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル]等、1~2の酸素原子と、1~3の窒素原子とを含む不飽和5~6員複素単環基、例えば、チアゾリル、チアジアゾリル[例えば、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル]等、1~2の硫黄原子と、1~3の窒素原子とを含む不飽和5~6員複素単環基が挙げられる。
【0046】
ヘテロシクリル(又は、ヘテロシクロ)という用語はまた、複素環式ラジカルがアリールラジカルと縮合されたラジカルであって、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル[例えば、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル]等、1~5窒素原子を含む不飽和縮合複素環基[例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル等]、1~2の酸素原子と、1~3の窒素原子とを含む不飽和縮合複素環基[例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル等]、1~2の硫黄原子と、1~3の窒素原子とを含む不飽和縮合複素環基[例えば、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、2,3-ジヒドローベンゾ[1,4]ジオキシニル、及びジヒドロベンゾフリル等]、1~2の酸素又は硫黄原子を含む飽和、部分飽和、及び不飽和縮合複素環基を包含する。好ましい複素環式ラジカルには、5~10員の縮合又は非縮合ラジカルが含まれる。より好ましいヘテロアリールラジカルの例として、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ピリジル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、フリル、及びピラジニルが挙げられる。その他好ましいヘテロアリールラジカルとして、5員又は6員のヘテロアリールであって、硫黄、窒素、酸素より選択された1又は2のヘテロ原子と、チエニル、フリル、ピロリル、インダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピペリジニル、及びピラジニルから選択された1つ以上のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロアリールが挙げられる。
【0047】
窒素非含有ヘテロアリールの特別な例として、ピラニル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、ベンゾフリル、及びベンゾチエニル等が挙げられる。
【0048】
部分飽和又は飽和ヘテロシクリルの特別な例として、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、モルフォリニル、テトラヒドロピラニル、チアゾリジニル、ジヒドロチエニル、2,3-ジヒドローベンゾ[1,4]ジオキサニル、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾフリル、イソクロマニル、クロマニル、1,2-ジヒドロキノリル、1,2,3,4-テトラヒドローイソキノリル、1,2,3,4-テトラヒドローキノリル、2,3,4,4a,9,9a-ヘキサヒドロ-1H-3-アザ-フルオレニル、5,6,7-トリヒドロ-1,2,4-トリアゾロ[3,4-a]イソキノリル、3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジニル、ベンゾ[1,4]ジオキサニル、2,3-ジヒドロ-1H-1λ’-ベンゾ[d]イソチアゾル-6-イル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフリル、及びジヒドロチアゾリル等が挙げられる。
【0049】
したがって、「ヘテロシクロ」という用語は、以下の環系を包含する。
【化3-1】
【化3-2】
等。
【0050】
「スルフォニル」という用語は、単独で使用されるか、又はアルキルスルフォニル等、他の用語と結び付けられるかに関わらず、各々、2価のラジカル-SO-をいう。
【0051】
「スルファミル」「アミノスルフォニル」及び「スルフォンアミジル」という用語は、アミンラジカルで置換されて、スルフォンアミド(-SONH2)を形成するスルフォニルラジカルをいう。
【0052】
「アルキルアミノスルフォニル」という用語は、スルフォニルラジカルが独立して1又は2のアルキルラジカルに置換される「N-アルキルアミノスルフォニル」を含む。より好ましいアルキルアミノスルフォニルラジカルは、1~6の炭素原子を有する「低級アルキルアミノスルフォニル」ラジカルである。1~3の炭素原子を有する低級アルキルアミノスルフォニルラジカルがより好ましい。このような低級アルキルアミノスルフォニルラジカルの例として、N-メチルアミノスルフォニル及びN-エチルアミノスルフォニルが挙げられる。
【0053】
「カルボキシ」又は「カルボキシル」という用語は、「カルボキシアルキル」等、単独で使用されるか、又は他の用語とともに使用されるかに関わらず、-COHをいう。
【0054】
「カルボニル」という用語は、「アミノカルボニル」等、単独で使用されるか、又は他の用語とともに使用されるかに関わらず、-(C=O)-をいう。
【0055】
「アミノカルボニル」という用語は、化学式C(=O)NHのアミド基をいう。
【0056】
「N-アルキルアミノカルボニル」及び「N,N-ジアルキルアミノカルボニル」という用語は、各々独立して、1又は2のアルキルラジカルで置換されたアミノカルボニルラジカルをいう。アミノカルボニルラジカルに結合した上述の低級アルキルラジカルを有する「低級アルキルアミノカルボニル」がより好ましい。
【0057】
「N-アリールアミノカルボニル」及び「N-アルキル-N-アリールアミノカルボニル」は、各々、1のアリールラジカル、又は1のアルキルと1のアリールラジカルとで置換されたアミノカルボニルラジカルをいう。
【0058】
「ヘテロシクリルアルキレニル」及び「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、複素環置換アルキルラジカルを包含する。より好ましいヘテロシクリルアルキルラジカルは、1~6の炭素原子のアルキル部分と、5員又は6員ヘテロアリールラジカルとを有する「5員又は6員ヘテロアリールアルキル」ラジカルである。1~3の炭素原子のアルキル部分を有する低級ヘテロアリールアルキレニルラジカルがより好ましい。例として、ピリジルメチル及びチエニルメチル等のようなラジカルが挙げられる。
【0059】
「アラルキル」という用語は、アリール置換アルキルラジカルを包含する。好ましいアラルキルラジカルは、1~6の炭素原子を有するアルキルラジカルに結合したアリールラジカルを有する「低級アラルキル」ラジカルである。1~3の炭素原子を有するアルキル部分に結合した「フェニルアルキレニル」がより好ましい。このようなラジカルの例として、ベンジル、ジフェニルメチル、及びフェニルエチルが挙げられる。前記アラルキル中のアリールは、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハルコアルキル、及びハロアルコキシでさらに置換されてもよい。
【0060】
「アルキルチオ」という用語は、2価硫黄原子に結合した、1~10の炭素原子の直鎖又は分岐アルキルラジカルを含むラジカルを包含する。1~3の炭素原子を有する低級アルキルチオラジカルがより好ましい。「アルキルチオ」の例として、メチルチオ(CHS-)が挙げられる。
【0061】
「ハロアルキルチオ」という用語は、2価硫黄原子に結合した1~10の炭素原子のハロアルキルラジカルを含むラジカルを包含する。1~3の炭素原子を有する低級ハロアルキルチオラジカルがより好ましい。「ハロアルキルチオ」の例として、トリフルオロメチルチオが挙げられる。
【0062】
「アルキルアミノ」という用語は、アミノ基が各々独立して、1のアルキルラジカルと2のアルキルラジカルとで置換された「N-アルキルアミノ」及び「N,N-ジアルキルアミノ」をいう。より好ましいアルキルアミノラジカルは、窒素原子に結合した1~6の炭素原子のうちの1又は2のアルキルラジカルを有する「低級アルキルアミノ」ラジカルである。1~3の炭素原子を有する低級アルキルアミノラジカルがより好ましい。好適なアルキルアミノラジカルは、N-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノ、及びN,N-ジエチルアミノ等、モノ又はジアルキルアミノであってもよい。
【0063】
「アリールアミノ」という用語は、N-フェニルアミノ等、1又は2のアリールラジカルで置換されたアミノ基をいう。アリールアミノラジカルはさらに、ラジカルのアリール環部分で置換されてもよい。
【0064】
「ヘテロアリールアミノ」という用語は、N-チエニルアミノ等、1又は2のヘテロアリールラジカルで置換されたアミノ基をいう。「ヘテロアリールアミノ」ラジカルはさらに、ラジカルのヘテロアリール環部分で置換されてもよい。
【0065】
「アラルキルアミノ」という用語は、1又は2のアラルキルラジカルで置換されたアミノ基をいう。N-ベンジルアミノ等、フェニル-C-C-アルキルアミノラジカルがより好ましい。アラルキルアミノラジカルはさらに、アリール環部分で置換されてもよい。
【0066】
「N-アルキル-N-アリールアミノ」及び「N-アラルキル-N-アルキルアミノ」という用語は各々独立して、アミノ基に対して1のアラルキル及び1のアルキルラジカル、又は、1のアリール及び1のアルキルラジカルで置換されたアミノ基をいう。
【0067】
「アミノアルキル」という用語は、いずれか1つが1以上のアミノラジカルで置換されてもよい1~約10の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキルラジカルを包含する。より好ましいアミノアルキルラジカルは、1~6の炭素原子と、1以上のアミノラジカルとを有する「低級アミノアルキル」ラジカルである。このようなラジカルの例として、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、及びアミノヘキシルが挙げられる。1~3の炭素原子を有する低級アミノアルキルラジカルがより好ましい。
【0068】
「アルキルアミノアルキル」という用語は、アルキルアミノラジカルで置換されたアルキルラジカルを包含する。より好ましいアルキルアミノアルキルラジカルは、1~6の炭素原子のアルキルラジカルを有する「低級アルキルアミノアルキル」ラジカルである。1~3の炭素原子のアルキルラジカルを有する低級アルキルアミノアルキルラジカルがより好ましい。好適なアルキルアミノアルキルラジカルは、N-メチルアミノメチル、N,N-ジメチル-アミノエチル、及びN,N―ジエチルアミノメチル等、モノ又はジアルキルで置換されてもよい。
【0069】
「アルキルアミノアルコキシ」という用語は、アルキルアミノラジカルで置換されたアルコキシラジカルを包含する。より好ましいアルキルアミノアルコキシラジカルは、1~6の炭素原子のアルコキシラジカルを有する「低級アルキルアミノアルコキシ」ラジカルである。1~3の炭素原子のアルキルラジカルを有する低級アルキルアミノアルコキシラジカルがより好ましい。好適なアルキルアミノアルコキシラジカルは、N-メチルアミノエトキシ、N,N-ジメチルアミノエトキシ、及びN,N-ジエチルアミノエトキシ等、モノ又はジアルキルで置換されてもよい。
【0070】
「アルキルアミノアルコキシアルコキシ」という用語は、アルキルアミノアルコキシラジカルで置換されたアルコキシラジカルを包含する。より好ましいあるキルアミノアルコキシアルコキシラジカルは、1~6の炭素原子のアルコキシラジカルを有する「低級アルキルアミノアルコキシアルコキシ」ラジカルである。1~3の炭素原子のアルキルラジカルを有する低級アルキルアミノアルコキシアルコキシラジカルがより好ましい。好適なアルキルアミノアルコキシアルコキシラジカルは、N-メチルアミノメトキシエトキシ、N-メチルアミノエトキシエトキシ、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシ、及びN,N-ジエチルアミノメトキシメトキシ等、モノ又はジアルキルで置換されてもよい。
【0071】
「カルボキシアルキル」という用語は、いずれか1つが1つ以上のカルボキシラジカルで置換されてもよい1~約10の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキルラジカルを包含する。より好ましいカルボキシアルキルラジカルは、1~6の炭素原子と、1のカルボキシラジカルとを有する「低級カルボキシアルキル」ラジカルである。このようなラジカルの例として、カルボキシメチル、カルボキシプロピル等が挙げられる。1~3のCH基を有する低級カルボキシアルキルラジカルがより好ましい。
【0072】
「ハロスルフォニル」という用語は、ハロゲンラジカルで置換されたスルフォニルラジカルを包含する。このようなハロスルフォニルラジカルの例として、クロロスルフォニル及びフルオロスルフォニルが挙げられる。
【0073】
「アリールチオ」という用語は、2価硫黄原子に結合した6~10の炭素原子のアリールラジカルを包含する。「アリールチオ」の例として、フェニルチオが挙げられる。
【0074】
「アラルキルチオ」という用語は、2価硫黄原子に結合した上述のアルキルラジカルを包含する。フェニル-C-C-アルキルチオラジカルがより好ましい。「アルキルチオ」の例として、ベンジルチオが挙げられる。
【0075】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子に結合した、上に規定の任意で置換したアリールラジカルである。このようなラジカルの例として、フェノキシが挙げられる。
【0076】
「アラルコキシ」という用語は、他のラジカルに対して酸素原子を通じて結合したオキシ含有アラルキルラジカルを包含する。より好ましいアラルコキシラジカルは、上述の低級アルコキシラジカルに結合した、任意で置換したフェニルラジカルを有する「低級アルコキシ」ラジカルである。
【0077】
「ヘテロアリールオキシ」という用語は、酸素原子に結合した、上に規定の任意で置換したヘテロアリールラジカルを包含する。
【0078】
「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、他のラジカルに対して酸素原子を通じて結合したオキシ含有ヘテロアリールアルキルラジカルを包含する。より好ましいヘテロアリールアルコキシラジカルは、上述の低級アルコキシラジカルに結合した、任意で置換したヘテロアリールラジカルを有する「低級ヘテロアリールアルコキシ」ラジカルである。
【0079】
「シクロアルキル」という用語は、飽和炭素環式基を含む。好ましいシクロアルキル基には、C-C環が含まれる。より好ましい化合物には、シクロペンチル、シクロプロピル、及びシクロヘキシルが含まれる。
【0080】
「シクロアルキルアルキル」という用語は、シクロアルキル置換アルキルラジカルを包含する。好ましいシクロアルキルアルキルラジカルは、1~6の炭素原子を有するアルキルラジカルに結合したシクロアルキルラジカルを有する「低級シクロアルキルアルキル」ラジカルである。1~3の炭素原子を有するアルキル部分に結合した「5員~6員シクロアルキルアルキル」がより好ましい。このようなラジカルの例として、シクロヘキシルメチルが挙げられる。前記ラジカルにおけるシクロアルキルは、ハロ、アルキル、アルコキシ、及びヒドロキシでさらに置換されてもよい。
【0081】
「シクロアルケニル」という用語は、「シクロアルキルジエニル」化合物を含む、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素環式基を含む。好ましいシクロアルケニル基は、C-C環を含む。より好ましい化合物には、例えば、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプタジエニルが含まれる。
【0082】
「含む」という用語は、制約のないものであることが意図されており、示された成分を含むが、それ以外の要素を除外するものでない。
【0083】
水素原子を置換する基又は原子はまた、置換基とも称される。
【0084】
いずれか特定の分子又は基は、置換可能な水素原子の数に応じて、1つ以上の置換基を有し得る。
【0085】
「-」という記号は、共有結合を表し、ラジカル基において他の基との結合箇所を示す際にも使用可能である。化学的構造において、この記号は、一般的に、分子内のメチル基を表すのに使用される。
【0086】
「有効薬量」という用語は、特定の疾病又は症状の1つ以上の症候を改善、緩和、又は排除するか、又は、特定の疾病又は症状の1つ以上の症候の進行を予防するか遅らせる化合物の量を意味する。
【0087】
「患者」及び「被験者」という用語は、相互変換可能に使用されることがあり、犬、猫、牛、馬、羊、及びヒト等の動物を意味する。特に、患者は哺乳動物である。患者という用語は、男性及び女性を含む。
【0088】
「薬学的に許容可能な」という用語は、化学式Iの化合物、化学式Iの化合物の塩、化学式Iの化合物を含む調剤、又は特定の賦形剤等、参照した物質が患者の投与に好適であることを意味する。
【0089】
「治療している」「治療する」又は「治療」等といった用語は、予防的(例えば、避妊)及び姑息的治療を含む。
【0090】
「賦形剤」という用語は、医薬品有効成分(API)以外の薬学的に許容可能な添加剤、キャリア、希釈材、補助薬、又はその他の成分を意味し、通常、調剤、及び/又は、患者への投与を目的に含有される。
【0091】
「癌」という用語は、統制されていない細胞成長を特徴とする、哺乳動物中の生物学的症状を意味する。通常クラスの癌には、癌腫、悪性リンパ腫、肉腫、及び芽腫が含まれる。
【0092】
実施形態に係る以下の説明は、実施形態を限定することが意図されるものでなく、当業者が作成及び使用できるようにすることが意図されている。
【0093】
実施形態において、方法(例えば、ピペリン等)及び/又はシステム(例えば、ピペリンの性能を向上する成分、治療用組成物等)(及び/又は、実施形態の好適な部分)は、微生物叢からの抗菌化合物を使用して、病原性細菌を阻害、下方制御、低減、及び/又は、死滅することを含むことができ、及び/又は、このように機能することができる。実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、微生物叢における化合物を同定するために、1つ以上のバイオインフォマティクスピペリジンを使用することができ、及び/又は、既存のものを基本として使用する等、新たな抗菌化合物の設計に1つ以上の構造的生物学技術を使用することができる。例において、得られた抗菌化合物は、ヘルスケア、バイオテクノロジー、及び薬学的用途等、1つ以上の疾病、及び/又は、症状の治療として使用可能である。例において、これらの抗菌化合物の他の使用には、追加又は代替として、以下のうちの1つ以上が含まれ得る。つまり、食品保存、活性プロバイオティック培養の生成、感染症の治療、従来の抗生物質に対する抗生物質耐性、感染性細菌の術後コントロール、抗癌剤、及び/又はその他の好適な使用である。
【0094】
実施形態において、本方法(例えば、ピペリジン等)及び/又はシステムには、微生物叢によって生成される新たな抗菌化合物を発見することが含まれ得る第1段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で実施され得る)が含まれ得る。例において、この段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度)において、細菌、及び/又は、その他の好適な微生物によって生成される抗菌化合物の1つ以上のデータベースを生成するなど、既知の抗菌化合物生成微生物、及び/又は、抗菌化合物のスクリーニングを実施することができる。例において、以下のうちの1つ以上を含む、すべての関連情報(例えば、後続のステップで使用可能なデータ等)を判定、及び/又は、記憶することができる。すなわち、抗菌の名称、それを生成する微生物、用途、宿主部位、阻害及び/死滅する標的微生物、及び/又は、その他任意の好適なデータである。例において、データベースに記憶される等、整理された抗菌化合物(例えば、ランチビオティック、バクテリオシン、ミクロシン等)は、1つ以上の配列並びアルゴリズム(例えば、中でも、BLAST、FASTA、Clustal等)を使用して、(例えば、Uniprot又はNCBIデータベース等)参照プロテオームに対して検索可能である。例において、この並びを使用して、他の微生物に対する抗菌化合物の結合領域を予測するのに有用となり得るペプチドモチーフを同定し、及び/又は、新たな細菌生成抗菌化合物を同定するのに使用可能である(例えば、この段階の例が図1に描かれている)。
【0095】
実施形態において、本方法(例えば、ピペリン等)及び/又はシステムには、抗菌化合物の改変により、抗菌活性を改善させることを含み、及び/又は、このように機能することのできる第2段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で実施可能である)が含まれ得る。例において、本方法、及び/又は、システムには、規定の3次元構造を有し、及び/又は、(例えば、中でも、タンパク質データバンク、Bactibase、BAGEL等の構造データベースから得られた)既知の特定の標的を有する抗菌ペプチドを改変することが含まれ得る。例において、これに応じて、及び/又は、第1段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度)からの関連ペプチドモチーフの同定に基づき、これらのモチーフが溶媒に露出されるか、したがって、他の微生物からのタンパク質と相互作用し得るかどうかを同定するために、構造解析を実施することが可能である。例において、この解析は、溶媒露出表面積(SASA)を使用して実施可能であるが、追加又は任意で他の方法で実施可能である。例において、その後、抗菌ペプチド、及び/又は、モチーフと、抗菌ペプチドの作用によって阻害されるということが既知の微生物からの標的との間の原子相互作用をモデル化するために、分子ドッキング(例えば、コントロールとして)を実施することができる。例において、双方の分子が剛性を有すると考えられる、すなわち、結合が二次構造を回転せず維持する。例において、これを考慮に入れると、新たな抗菌ペプチドを設計することができる。例において、このためには、抗菌活性の改善された新たな抗菌ペプチドを判定、及び/又は、取得するために、抗菌ペプチドのアミノ酸のセグメントの改変を実施することができる。改変には、残りの19のアミノ酸のうちの1つ以上について、ペプチドの各位置(及び/又は、任意の好適な位置)を変異させることが含まれ得る。例において、続いて、改変されたペプチドと標的との間のドッキングを実施することができる。したがって、例において、新たな抗菌ペプチドが標的と高い親和性で結合可能であるため、それらの抗菌活性を向上することができる(例えば、この手順の例が図2に示されている)。
【0096】
実施形態には、追加又は代替として、任意の好適な抗菌活性、疾病、及び/又は、症状(本明細書に記載のもの等)のため等、任意の好適なペプチド、タンパク質、及び/又は、その他の成分の同定、生成、適用、提供、及び/又は、その他の好適な使用(例えば、治療用組成物中等)のために、本明細書に記載の任意の好適なアプローチを適用することが含まれ得る。
【0097】
本方法、及び/又は、システムの実施形態は、追加又は代替で、以下を含み得る。
【0098】
ヒトの微生物叢によって生成された新たな抗菌化合物(例えば、ペプチド、タンパク質等)を同定するための1つ以上の方法論。
【0099】
新たなものを判定、及び/又は、取得するための抗菌化合物(例えば、ペプチド、タンパク質等)を改変する1つ以上の方法論。
【0100】
実施形態には、追加又は代替として、任意の好適な抗菌活性、疾病、及び/又は症状(例えば、本明細書に記載のもの等)のため等、任意の好適なペプチド、タンパク質、及び/又は、その他の成分の同定、生成、適用、提供、及び/又は、その他の好適な使用(例えば、治療用組成物中など)のために、本明細書に記載の任意の好適なアプローチを適用することが含まれ得る。
【0101】
実施形態において、方法(例えば、ピペリン等)及び/又はシステム(例えば、ピペリンの性能を向上する成分、治療用組成物等)(及び/又は、実施形態の好適な部分)が、以下のうちの1つ以上等、これらの細菌(及び/又は好適な微生物)によって引き起こされる疾病、及び/又は、症状の防止に役立ち得る薬剤の新たな標的等、ヒトの細胞結合タンパク質(例えば、E-カドヘリン等)を結合する、細菌(及び/又は、他の好適な微生物)中の病原性因子の同定、及び/又は、標的化するように機能可能であり、及び/又は、これらを含むことができる。すなわち、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、慢性下痢、腹部感染、及び/又は、その他の好適な疾病、及び/又は、症状である。追加又は代替として、本方法、及び/又は、システムの実施形態には、細菌病原性因子の結合によって媒介された開裂から細胞結合タンパク質を保護することが含まれ得る。例において、この保護は、新たなペプチド薬剤の開発を通じて対応される。追加又は代替として、実施形態には、細胞結合タンパク質を標的にする新たな毒性タンパク質の同定を可能にする、パイプライン、及び/又は、好適なアプローチが含まれ得る。例において、タンパク質間の結合界面を解析することにより、細胞結合タンパク質の結合、及び/又は、開裂を防ぐことを目指して、病原性因子を標的にすることのできるあらたなペプチドを生成することができる。例において、本方法、及び/又は、システムには、細菌、及び/又は、その他の好適な微生物からのアドヘレンタンパク質によって引き起こされる疾病の予防、改善、及び/又は、さもなければ向上が可能な新たな薬剤を含むことができ、及び/又は、さもなければこれらのために使用可能である。
【0102】
実施形態において、本方法(例えば、ピペリン)及び/又はシステムは、参照プロテオーム(例えば、NCBIで入手可能)との配列照合によって既知のものに対するオーソロガス細菌病原性因子を発見することを目指す。例において、これを達成するには、1つ以上の並びアルゴリズムを使用することができる(例えば、中でも、BLAST、FASTA、CLUSTAL)。追加又は代替として、既知の病原性因子(例えば、タンパク質データバンク(PDB)で入手可能なもの)と、細胞結合タンパク質(例えば、E-カドヘリン)に対して予測される結合との構造情報を使用して、結合部位におけるタンパク質モチーフを同定することができ、利用可能な細菌プロテオーム中に新たな病原性因子を同定することができるようにする。例において、配列類似性ネットワークを使用して、タンパク質が細胞結合タンパク質(例えば、E-カドヘリン等)を分裂させるのに使用するメカニズムに応じて、細胞結合タンパク質(例えば、E-カドヘリン等)を結合する異なるクラスの病原性因子を分類することができる。
【0103】
例において、細胞結合を変更し得る新たな病原性因子が、追加又は代替として同定され得る。追加又は代替として、構造データベース(例えば、PDB等)で入手可能な構造情報を使用して、細胞結合タンパク質(例えば、E-カドヘリン)と異なる病原性因子との間の結合部位を判定することができる。例において、特定の病原性因子が発見されない場合、構造の相同性モデルを取得することができ、結合部位を発見することができる。例において、一旦結合部位が判定されると、元々の細胞結合タンパク質結合部位よりも親和性の高いペプチドをin-silico再設計技術(例えば、分子ドッキング、フラグメントベース発見、フリーエネルギー計算等)で得ることができる。例において、したがって、新たなペプチド薬剤が高い親和性で病原性因子と結合することができ、当初の細胞結合タンパク質との結合と競合して阻害することができる。
【0104】
しかしながら、以上、及び/又は、本明細書中に記載の任意の好適な部分、アプローチ、及び/又は、ステップは、任意の好適なシーケンス、及び任意のタイミングと頻度とで実施可能である。
【0105】
本方法、及び/又は、システムの実施形態には、追加又は代替として、以下を含み得る。
【0106】
細胞結合タンパク質の結合等により、細胞結合を変更し得る病原性因子として、新たなタンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の成分を同定する1つ以上のパイプライン。
【0107】
細胞結合タンパク質(例えば、E-カドヘリン等)/病原性因子の結合の阻害物質として、ペプチド、タンパク質、及び/又は、その他の好適な成分を同定するための1つ以上のパイプライン。
【0108】
実施形態には、追加又は代替として、任意の好適な症状(例えば、本明細書に記載のもの等)等のために、細胞結合を標的化する任意の好適なタンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の成分の同定、生成、適用、提供、及び/又は、その他の好適な使用(例えば、治療用組成物中等)のために、本明細書に記載の任意の好適なアプローチを適用することが含まれ得る。
【0109】
実施形態において、本開示の方法(例えば、パイプライン等)及び/又はシステム(例えば、パイプラインの性能を向上する成分。治療用組成物等。)(及び/又は、実施形態の好適な部分)は、ヒトのタンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の成分と相互作用を生じ得る1つ以上の細菌タンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の成分を同定するように機能し得る。追加又は代替として、実施形態には、(例えば、ヒトのタンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の成分と相互作用することを阻害するために)このような細菌タンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の成分の作用を阻害する1つ以上のアプローチが含まれ得る。
【0110】
方法、及び/又は、システム(例えば、治療用組成物等)の実施形態は、ヒトのタンパク質と相互作用を生じ得る細菌タンパク質を同定することと、小分子又はペプチドを使用してこのような細菌タンパク質を標的化することであり得る。実施形態において、本方法には、宿主タンパク質との相互作用に繋がり得る細菌タンパク質を同定する手順が含まれ得る。例において、得られた細菌タンパク質は、MHCクラスIIエピトープの発見のためにスクリーニングされ、引いては、これらのエピトープを有するタンパク質が同定されて抗体生成することができる。追加又は代替として、同定されたタンパク質は、ペプチド阻害物質の設計にための新たな標的となり得る。具体例において、相互反応タンパク質を標的とする新たなペプチドベース薬剤を使用して、自己免疫疾患をトリガすることを緩和又は予防することができる。
【0111】
実施形態において、本方法(例えば、パイプライン等)及び/又はシステムには、ヒトのプロテオーム、及び/又は、その他の好適な成分に対して、(例えば、Uniprot及び/又はNCBI等)ヒトの胃腸微生物叢参照間で実施される1つ以上の配列同定検索を含み得る第1段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で実施可能である)が含まれ得る。ヒトの胃腸において(例えば、任意の好適なデータベースにより)検出される、及び/又は、検出可能な生物(例えば、分類群、すべての生物等)の任意の好適な組み合わせが考慮されるが、任意の好適なデータベース(例えば、ヒト微生物叢プロジェクト等)を追加又は代替として使用することができる。具体例において、配列並びアルゴリズム(例えば、pBLAST)を使用して、同様の検索を実施するが、任意の好適な類似の検索アプローチを追加又は代替として使用可能である。具体例において、ヒトタンパク質と合致する細菌タンパク質領域が保存される。
【0112】
実施形態において、本方法、及び/又は、システムには、HLAクラスIIエピトープを発見するために解析される、第1段階で(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で)得られた細菌タンパク質領域を含み得る第2段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で実施可能である)が含まれ得る。具体例において、HLAクラスIIあれるは、各健康状態又は疾病に応じて考慮される。具体例において、これは、1つ以上のツール(例えば、Prpred、IEDB等)によって実施可能である。そして、具体例において、エピトープ配列を有するものと予測されたタンパク質、及び/又は、ペプチドフラグメントは、自己免疫疾患、及び/又は、症状と(例えば、文献整理により)相互に対応付けられ得る。具体例において、クラスター可視化を実施して、具体的な疾患、及び/又は、症状において示されたタンパク質を有すると予測される細菌の支配的な分類学的秩序を同定することができる。
【0113】
実施形態において、本方法、及び/又は、システムには、細菌タンパク質を標的化するペプチド阻害物質の生成を含むことのできる後段階(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で実施可能である)が含まれ得る。例において、まず、細菌タンパク質及び/又はエピトープの構造モデルが構造データベース(例えば、タンパク質データバンク(PDB)等)から得られなければならない。例において、配列が短い場合、ペプチドモデル化が、追加又は代替として適用可能である。例において、タンパク質フラグメントが大きい場合、相同性モデルが構築可能である。受容体、MHCクラスII分子が、構造データベース(例えば、PDB等)から得られ、及び/又は、研究下にある健康状態に関連付けられた対立遺伝子により、モデル化可能である(例えば、ループスリスク対立遺伝子は、HLA-DR3及びHLA-DR15である)。
【0114】
本方法及び/又はシステムの実施形態は、追加又は代替として、以下を含み得る。
【0115】
自己免疫反応のトリガの原因となる細菌タンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の好適な成分を同定する1つ以上の方法論。
【0116】
自己免疫反応を媒介する細菌タンパク質、ペプチド、及び/又は、その他の好適な成分に対する阻害物質ペプチド、タンパク質、及び/又は、その他の好適な成分を得る1つ以上の方法論。
【0117】
実施形態には、追加又は代替として、任意の好適な自己免疫症状(例えば、本明細書に記載のもの等)に対するもの等、任意の好適なペプチド、タンパク質、及び/又はその他の成分の同定、生成、適用、提供、及び/又はその他の好適な使用(例えば、治療用組成物中等)を行うため、本明細書に記載の任意の好適なアプローチを適用することが含まれ得る。
【0118】
具体例
例として、阻害物質リードペプチドは、MHCクラスII受容体における細菌タンパク質領域から得られる。例において、分子ドッキングによって助けられるin-silico再設計を使用して、つまり、リードペプチド中の単一又は二重の変異を生じることにより、もともとのMHCクラスII結合部位よりも細菌タンパク質との親和性が高いペプチドを生成することができる。したがって、例において、新たなペプチドがMHCクラスII受容体と結合する細菌タンパク質を競合によって阻害することができることが予測される。具体例において、いくつかの考察を考慮に入れることができ、例えば、阻害物質ペプチドは、他の自己免疫反応をトリガするヒトのタンパク質と相互作用してはならない。この要件に合うためには、阻害物質ペプチドが、第1段階で(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で)発見されたタンパク質/ペプチドに対して検索可能であり、これが自己免疫タンパク質候補の候補である。
【0119】
実施例において、実施形態は、Ro60抗原オルソログ細菌タンパク質の標的化を含むことができ、及び/又は、さもなければこれに適用可能である。ヒトにおいて、Ro60タンパク質は、RNAを修復する役割(例えば、図2に示される)を有する。しかしながら、ループス疾患の患者では、この抗原に対する抗体が生成される。さらに、この抗原は、微生物叢(胃腸内のバクテロイデスシータイオタオミクロン)中にオルソログを有し、したがって、免疫反応の増加(及び過剰な抗体生成)が引き起こされる。この点、細菌からのRo60は、慢性的刺激を生じ得る。具体例において、Ro60細菌タンパク質に対するMHC-II結合を防ぐ1つ以上のペプチド、タンパク質、及び/又は、その他の好適な成分が設計、生成、提供、適用、及び/又は、さもなければ使用可能である(例えば、治療用組成物等において)。
【0120】
しかしながら、上述、及び/又は、本明細書に記載の任意の好適な部分、アプローチ、及び/又は、ステップを、任意の好適なシーケンスで、任意の好適なタイミング及び頻度で実施可能である。
【0121】
実施形態において、以上の記載によると、新たな病原体選択HtrA阻害物質は、新たな薬剤発見の機会を表すことがある。実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、H.ピロリからHtrAタンパク質によって媒介されるE-カドヘリンの開裂を含み、及び/又は、さもなければこれを予防することができる。実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、E-カドヘリンの結合及び開裂を防ぐことを目指して、H.ピロリからHtrAタンパク質のタンパク質分解領域の阻害物質を含むことができ、及び/又は、さもなければこれを同定及び生成することができる。実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、H.ピロリによって媒介される付着、及び/又は、開裂を防ぎ、引いては、胃癌、及び/又は、その他任意の好適な胃腸の症状、癌、及び/又は、その他の好適な症状に対する姑息、及び/又は、治療に使用可能な薬剤等、新たな薬剤を包含、判定、提供、生成、投与、及び/又は、さもなければこれを促進することができる。
【0122】
3.08Aの解像度でPDZ2ドメイン(PDB ID:5Y28)を削除したH.ピロリHtrAの結晶構造を得ることができ、この構造に関する追加特性が、追加又は代替として判定可能である。バリエーションにおいて、本方法、及び/又は、システムは、E-コリからのDegSタンパク質がテンプレート(PDB:4RQY)として使用されるが、任意の好適なタンパク質、及び/又は、微生物がテンプレート用に使用可能なもの等、PDZ2ドメイン(配列UNIPROT ID:G2J5T2)を含む、1つ以上の三量体相同性モデルを生成することを含むことができ、及び/又は、この生成のために使用可能である。具体例において、双方のタンパク質間の相同性領域は、37%の配列同一性と、67%の配列類似性を有する。例において、相同性モデル及びPDB ID:5Y28における結晶構造は、構造的に並べることができ、PDZI及びタンパク質分解ドメインは、構造的に類似である(RMSD)。三量体のうち各単量体における潜在なアロステリック部位が、薬剤結合のための潜在的部位(例えば、理想的部位)として作用可能であり、胃上皮細胞バリアを横断する病原体の移行の防止を促進可能である。
【0123】
例において、本方法、及び/又は、システムは、HtrA相同性モデルが構築された後(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で)、in-silicoで報告された阻害物質のコントロール結合親和性を、ドッキングシミュレーションを通じて参照として計算することを含むことができ、及び/又は、このために使用可能である。具体例において、この結合エネルギーは、-7.5kcal/molで計算された。化合物が存在可能であり(K=13μm及びIC50=26μM)、我々のドッキング計算によると、-7.7kcal/mol及び-8.1kcal/molのHtrA結合エネルギーを有する。実施形態は、HtrAタンパク質分解機能を備えた新たに可能な阻害物質の検索において、膨大な分子ドッキングシミュレーション(及び/又は、その他の好適なin-silicoアプローチ、及び/又は、その他の好適なアプローチ等)を使用して、HtrA酵素に対する好適なソース(例えば、CHEMBLデータベース、及び/又は、その他任意の好適なデータベース、及び/又は、その他の好適なソース)から分子のセットをスクリーニングすることを含み得る。実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、任意の好適な指標(例えば、閾値等)のセットを適用することを含み得る。例において、このセットから、報告された阻害物質と比較して0.5より高いタニモト類似係数を有する分子のみが考慮された。しかしながら、任意の好適な閾値(例えば、任意の好適なタニモト類似係数値等)及び/又は、タニモト類似係数のための好適な指標、他の類似係数、及び/又は、他の好適な測定法を使用することができる。そして、例において、創薬可能性に係るLipinskiルール(及び/又は、任意の好適な指標)を適用することで、これらの分子がフィルタリングされる。具体例において、創薬可能性に係るLipinskiルールは、以下のうちのいずれか1つ以上を含み得る。すなわち、分子量<500ダルトン、H結合ドナーの数<5、H結合受容体の数<10、N及びO原子の数<15、分割係数logPの範囲-2~5、回転可能な結合の数<10、環の数<10、及び/又は、その他任意の好適な指標である。
【0124】
本出願は、本明細書に記載のHtrA阻害物質を有効薬量で、必要とする被験者に投与することを含む、細菌感染を治療する方法にも関連する。実施形態において、細菌感染は、ヘリコバクター・ピロリの感染である。
【0125】
以下には、主要な骨格(化学式(I))の具体例が含まれる。
【化4】
標準SMILES:
O=S(=O)(clc([*:1])c([*:2])c([*:3])c([*:4])c1[*:5])[*:6]
リードライクネス=はい
MW~156.20g/mol
LogP=0.60
回転可能な結合数<=7
式中R~Rについては、以下に規定するとおりであり、点線は、その結合がないか、単一結合か、二重結合であることを示す。簡易さのため、表1~6の各細胞は、一番上に置換基の化学的構造を示し、一番下に標準SMILESを示している。「A」は、基のH又は接続位置のいずれかを示している。例えば、「A-Cl」は、置換基が-Clであることを示し、「A-」は、置換基が「-CH」であることを示している。化学構造内に2つ以上の「A」がある場合、各Aは、独立して、H又は接続位置である。
【0126】

は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、Rは、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基はさらに独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択された1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0127】
いくつかの実施形態において、Rは、表1に挙げられた基より選択される。
【0128】
【表1】
【0129】

は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルコキシ、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、Rは、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基はさらに独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択される1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0130】
いくつかの実施形態において、Rは、表2に挙げられる群より選択される。
【0131】
【表2-1】
【0132】
【表2-2】
【0133】
【表2-3】
【0134】

は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1以上のR基で任意に置換されてもよく、Rは、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基はさらに独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択された1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0135】
いくつかの実施形態において、Rは、表3に挙げられた群より選択される。
【0136】
【表3-1】
【0137】
【表3-2】
【0138】
【表3-3】
【0139】
【表3-4】
【0140】
【表3-5】
【0141】
【表3-6】
【0142】
【表3-7】
【0143】

は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、Rは、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、であり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基はさらに、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択される1つ以上の基によって置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0144】
いくつかの実施形態において、Rは、表4に挙げられた基より選択される。
【0145】
【表4-1】
【0146】
【表4-2】
【0147】
【表4-3】
【0148】
【表4-4】
【0149】

は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のR基で任意に置換されてもよく、Rは、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基はさらに、独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択された1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0150】
いくつかの実施形態において、Rは、表5に挙げられた基より選択される。
【0151】
【表5-1】
【0152】
【表5-2】
【0153】

は、H、ハロ、シアノ、OH、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)カルボキシアルキル、N-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルコキシ、(C-C)スルフォニル、(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールとすることができ、このうちのいずれかが、原子価で許容される1つ以上のRで任意に置換されてもよく、Rは、それぞれ個別に独立して、H、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロサイクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルであり、前記アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルアルキル、及びヘテロシクロアルキル基がさらに、独立して、ハロ、シアノ、オキソ(C-C10)ヘテロシクロ、(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)シクロアルキル、-(CH-(C-C10)ヘテロシクロ、-(CH-アリール、-(CH-ヘテロアリール、アリール、及びヘテロアリールからなる群より選択された1つ以上の基で置換されてもよく、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。
【0154】
いくつかの実施形態において、Rは、表6に挙げられた基より選択される。
【0155】
【表6-1】
【0156】
【表6-2】
【0157】
【表6-3】
【0158】
【表6-4】
【0159】
【表6-5】
【0160】
【表6-6】
【0161】
【表6-7】
【0162】
【表6-8】
【0163】
【表6-9】
【0164】
【表6-10】
【0165】
【表6-11】
【0166】
【表6-12】
【0167】
【表6-13】
【0168】
【表6-14】
【0169】
【表6-15】
【0170】
【表6-16】
【0171】
【表6-17】
【0172】
【表6-18】
【0173】
【表6-19】
【0174】
【表6-20】
【0175】
【表6-21】
【0176】
【表6-22】
【0177】
【表6-23】
【0178】
【表6-24】
【0179】
【表6-25】
【0180】
【表6-26】
【0181】
【表6-27】
【0182】
【表6-28】
【0183】
【表6-29】
【0184】
【表6-30】
【0185】
【表6-31】
【0186】
【表6-32】
【0187】
【表6-33】
【0188】
【表6-34】
【0189】
【表6-35】
【0190】
【表6-36】
【0191】
【表6-37】
【0192】
【表6-38】
【0193】
【表6-39】
【0194】
【表6-40】
【0195】
【表6-41】
【0196】
【表6-42】
【0197】
【表6-43】
【0198】
【表6-44】
【0199】
【表6-45】
【0200】
【表6-46】
【0201】
【表6-47】
【0202】
【表6-48】
【0203】
【表6-49】
【0204】
【表6-50】
【0205】
【表6-51】
【0206】
【表6-52】
【0207】
【表6-53】
【0208】
【表6-54】
【0209】
追加又は代替の例
例において、仮想スクリーニングの後で(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で)、HtrA酵素に対して-9.5kcal/mol未満(但し、任意の好適な結合エネルギー閾値等、任意の好適な指標を使用可能である)の結合エネルギーを備えた最初の9つの分子を選択候補(例えば、図7の「データセット1」と称する)として選択した。追加又は代替として、500Da超(但し、任意の好適な分子量閾値等、任意の好適な指標を使用可能である)の分子量の3つの追加又は代替の分子も、結合エネルギーが高い故にデータセットに考慮される(例えば、CHEMBL83186、CHEMBL421919、CHEMBL342904等)が、任意の好適な指標が追加又は代替で使用可能である。
【0210】
【表7】
【0211】
【表8】
【0212】
例において、第2のフィルタ(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で適用可能な任意の好適なフィルタ等)では、-9.4kcal/mol超、及び、-8.9kcal/mol未満の結合エネルギーを有する分子(例えば、報告された化合物において改良となり得るもの)(しかしながら、任意の好適な結合エネルギー閾値等、任意の好適な指標を使用することができる)をデータセット2として選択した。具体例において、MW>500の2つの分子も、高い結合親和性を示したため、データセット2に加えた。
【0213】
【表9-1】
【0214】
【表9-2】
【0215】
【表9-3】
【0216】
【表10】
【0217】
【表11】
【0218】
【表12】
【0219】
実施形態には、追加又は代替として、H.ピロリによって媒介される付着、及び/又は、開裂を防止するための使用等、任意の好適な薬剤、ペプチド、タンパク質、及び/又は、その他の成分の(例えば、治療用組成物等における)同定、生成、適用、付与、及び/又は、その他の好適な使用のために、本明細書に記載の任意の好適なアプローチを適用することが含まれ得るもので、及び/又は、したがって、これらは、胃癌、及び/又は、その他任意の好適な胃腸症状、癌、及び/又はその他の好適な症状に対する緩和剤として、及び/又は、治療として使用可能である。
【0220】
実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、GC進行、及び/又は、その他の好適な症状について報告されているルートのうちの1つを含む、CagAとE-カドヘリンとの間の相互作用を(例えば、診断、及び/又は、治療等のために)阻害する小分子(例えば、ペプチド。治療用組成物等の形態。)を判定すること、生成すること、提供すること、及び/又は、さもなければ促進することを含み、及び/又は、このように機能し得る。
【0221】
実施形態において、本方法、及び/又は、システムには、胃癌、及び/又は、その他の好適な症状を誘発する経路のうちの1つとして説明した、(H.ピロリからの)CagAとヒトのE-カドヘリンとの結合を含む経路を(例えば、小分子、薬剤、治療用組成物等により)阻害することを含み得るか、及び/又は、このように機能し得る。
【0222】
実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、(例えば、CagAのE-カドヘリンとの相互作用が、E-カドヘリンとβ-カテニンとの間の異常な相互作用を引き起こすため)CagA/E-カドヘリン相互作用を阻害し得る新たなペプチド様薬剤を設計、判定、生成、提供、及び/又は、さもなければ促進することを含み得るか、及び/又は、このように機能し得る。
【0223】
実施形態において、本方法、及び/又は、システムは、追加又は代替として、H.ピロリ、胃癌、及び/又は、その他の好適な症状に対する他の治療として等、治療用、及び/又は、緩和剤として使用可能なペプチド様薬剤を判定、生成、提供、及び/又は、さもなければ促進することを含み得るか、及び/又は、さもなければこのように機能し得る。
【0224】
特定の例において、本方法、及び/又は、システムは、ペプチドの配列を判定することを含み得る、第1段階(及び/又は、任意のタイミング、及び/又は、頻度等で実施される)を含み得る。特定の例において、その後、(及び/又は、任意の好適なタイミング及び頻度で)in vitro、及び/又は、in vivoの分析を試験に使用することができる。結果として得られるペプチド、及び/又は、その他の好適な分子の製剤を胃癌の診断、及び/又は、治療に使用可能である。
【0225】
具体例-分子構造
第1に(及び/又は、任意のタイミング、及び/又は、頻度等で実施される)、テンプレートとしてのハツカネズミ(PDBコード:1I7X)のE-カドヘリンの結晶構造と、標的としてのUniprotからのP12830のサブ配列とを使用して、細胞内ドメイン(ID)の分子構造をモデル化することができる(例えば、相同性モデル等)。しかしながら、任意の好適な分子、及び/又は、成分をテンプレート及び標的として使用することができる。
>sp|P12830|731-882
LRRRAVVKEPLLPPEDDTRDNVYYYDEEGGGEEDQDFDLSQLHRGLDARPEVTRNDVAPT
LMSVPRYLPRPANPDEIGNFIDENLKAADTDPTAPPYDSLLVFDYEGSGSEAASLSSLNS
SESDKDQDYDYLNEWGNRFKKLADMYGGGEDD
【0226】
細菌毒性タンパク質CagA-CM(特に、CagAのCMドメイン)の結晶構造は、タンパク質データバンク(PDBコード:3EIC)より得ることができる。しかしながら、任意の好適なデータベースを使用することができ、及び/又は、任意の好適なテンプレート(例えば、好適な領域、好適な菌株等)を使用することができる。
【0227】
具体例-分子ドッキング
CDドメインタンパク質の非特定箇所におけるCagA-CMの相互作用における、特定の結合部位を特性化に使用するため等、原子レベルでE-カドヘリン及びCagAの間の相互作用をモデル化するため、分子ドッキングを使用することができる。具体例において、ドッキングでは、「DTDPTAPPYDSL」ペプチドに対応する領域において明確に示している。
【0228】
しかしながら、相互作用のモデル化、及び/又は、その他の好適な目的のために、任意の好適なドッキング特性化アプローチ、及び/又は、好適なin-silicoアプローチ、及び/又は、好適なアプローチを実施することができる。
【0229】
具体例-再設計
以上のこと(及び/又は、本明細書に記載の好適なアプローチ)を考慮すると、本方法、及び/又は、システムの実施形態には、細胞毒素gen A(CagA)等の阻害に基づく)GC細胞成長、及び/又は、腫瘍形成反応の無効化等、ヘリコバクター・ピロリの阻害物質を設計することが含まれ得る。例として、本方法、及び/又は、システムは、ドッキング法アプローチを使用して、「DTDPTAPPYDSL」阻害物質ペプチド(及び/又は、分子ドッキング特性等に基づく、選択されたその他の好適なペプチド)を再設計することが含まれ得るが、任意の好適なアプローチが、再設計に使用され得る。この再設計には、残りの19の(及び/又は、その他の任意の数の)アミノ酸に対する「DTDPTAPPYDSL」ペプチドの組み合わせ、及び/又は、各位置を変異させることが含まれ得る。したがって、コントロールペプチドとCagAとの間のコントロールドッキングを実施することができる。特定の例において、コントロールドッキングは、結果として、-4.0kcal/molの結合エネルギーを生じた。再設計ペプチドとCagAとの間のドッキングを実施した。結果の例を以下の表に示しており、最も好ましい置換についてはハイライトで示している。
【0230】
【表A-1】
【0231】
【表A-2】
【0232】
実施形態は、追加又は代替として、以下を含み得る。
-CagA-H.ピロリの阻害物質であり、ペプチドDTDPTAPPYDSLに基づくもので、
位置1:R、H、I、F、P、W、Y
位置2:N
位置3:N、Y
位置4:E、L、Y
位置5:R、L
位置6:S
位置7:R、E、I、L
位置8:I、L、W
位置9:F
位置10:F、W
位置11:A、D、E、H、I、L、Y
位置12:A、N、W、Y
である。
【0233】
いくつかの実施形態において、CagA阻害物質は、X101112の配列を有し、
は、D、R、H、I、F、P、W、又はYであり、
は、T、又はNであり、
は、D、N、又はYであり、
は、P、E、L、又はYであり、
は、T、R、又はLであり、
は、A、又はSであり、
は、P、R、E、I、又はLであり、
は、P、I、L、又はWであり、
は、F、又はYであり、
10は、D、F、又はWであり、
11は、S、A、D、E、H、I、L、又はYであり、
12は、L、A、N、W、又はYである。
【0234】
本開示の実施形態は、表13に挙げられたSEQ ID NO:1~38の配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するペプチドを含む。本開示の実施形態はまた、非天然アミノ酸を有するペプチドも含む。
【0235】
【表13-1】
【0236】
【表13-2】
【0237】
しかしながら、結合エネルギーの向上のためなどに、任意の好適な代替を行うことができる。
【0238】
本方法、及び/又は、システムの実施形態は、追加又は代替として、以下を含むことができる。
・H.ピロリが関与するGC、及び/又は、健康状態、及び/又は、任意の好適な症状を診断、及び/又は、治療するための、上述の阻害物質(及び/又は、本明細書に記載のアプローチで導出可能な分子等、本明細書に記載の好適な分子)の使用。
・H.ピロリが関与するGC、及び/又は、健康状態、及び/又は、任意の好適な症状(例えば、胃腸症状、癌症状等)を診断、及び/又は、治療するための、本明細書に記載の(及び/又は、本明細書に記載のアプローチで導出可能な)特定の阻害物質の使用。
・タンパク質の阻害物質を得るための方法論であって、タンパク質のモデル化を行うことと、分子(例えば、ペプチド)のドッキングを行うための結合部位を特定することと、及び/又は、モデル化されたタンパク質に対して最適なバインダーとしての分子を選択することと、を含む方法論。
・H.ピロリに関連のGC、症状、及び/又は、任意の好適な症状(例えば、胃腸症状、癌症状等)の診断、及び/又は、治療を促進する等、本明細書に記載の1つ以上のペプチドを含み、及び/又は、さもなければこれに関連した、阻害物質、結合部位、及び/又は、分子に基づく、1つ以上の治療組成物。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】