(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(54)【発明の名称】睡眠の改善方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20220218BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220218BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220218BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALN20220218BHJP
【FI】
A61K31/343
A61P25/20
G01N33/53 M
C12Q1/6827 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547803
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020018082
(87)【国際公開番号】W WO2020168056
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006588
【氏名又は名称】バンダ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VANDA PHARMACEUTICALS INC.
(71)【出願人】
【識別番号】520341670
【氏名又は名称】ポリメロプロス、ミハエル
(71)【出願人】
【識別番号】521359335
【氏名又は名称】スミースゼク、サンドラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロプロス、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】スミースゼク、サンドラ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR55
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4B063QS25
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4B063QS36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA06
4C086MA01
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4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA05
(57)【要約】
本発明は、概日リズム睡眠障害(CRSD)である睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)に関連している種々のcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型のバリアントを有する患者において睡眠を改善する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概日リズム睡眠障害(CRSD)を治療するのに有効な量のタシメルテオンを患者に投与することから本質的になる、概日リズム睡眠障害(CRSD)を有する患者を治療する方法において、改善が、
患者が前記障害に関連しているcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型を有することを同定することにより前記治療のための患者を選択すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記障害に関連しているCRY1遺伝子型が少なくとも1コピーのrs184039278アレルを含む、請求項1に記載の改善。
【請求項3】
前記障害に関連しているCRY1遺伝子型が少なくとも1コピーのrs780614131アレルを含む、請求項1に記載の改善。
【請求項4】
前記障害に関連しているCRY1遺伝子型が機能喪失型(LOF)の遺伝子型である、請求項1に記載の改善。
【請求項5】
前記障害が睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)である、請求項1に記載の改善。
【請求項6】
前記患者を治療することが前記患者にタシメルテオンを就寝前に1日1回投与することを含む、請求項1に記載の改善。
【請求項7】
前記患者にタシメルテオンを投与することが20mgのタシメルテオンを投与することを含む、請求項6に記載の改善。
【請求項8】
タシメルテオンで前記患者を治療することが、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される少なくとも1つの睡眠パラメーターを改善する、請求項1に記載の改善。
【請求項9】
概日リズム睡眠障害の1又は複数の症状を示す患者を治療するための方法であって、
前記患者が前記障害に関連しているcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型を有していることを同定すること、及び
前記障害を治療するのに有効な量のタシメルテオンを前記患者に投与すること
を含む前記方法。
【請求項10】
前記障害に関連しているCRY1遺伝子型が少なくとも1コピーのrs184039278アレルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記障害に関連しているCRY1遺伝子型が少なくとも1コピーのrs780614131アレルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記CRY1遺伝子型が機能喪失型(LOF)の遺伝子型である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記障害が睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記タシメルテオンの量が20mgである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記障害を治療することが、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される少なくとも1つの睡眠パラメーターを改善することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するための方法であって、
前記個人が概日リズム睡眠障害(CRSD)に関連しているcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型のバリアントを有していることを同定すること、及び
前記個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するのに有効な量のタシメルテオンを、前記個人の確立された就寝時間の直前の時間に前記個人に毎日投与すること
を含む前記方法。
【請求項17】
前記CRSDに関連しているCRY1遺伝子型のバリアントがrs184039278アレルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CRSDに関連しているCRY1遺伝子型のバリアントがrs780614131アレルを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記CRSDに関連しているCRY1遺伝子型のバリアントが機能喪失型(LOF)の遺伝子型である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記CRSDが睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記タシメルテオンの量が20mgである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
睡眠を改善することが、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される少なくとも1つの睡眠パラメーターを改善することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
概日リズム睡眠障害(CRSD)を治療するのに有効な量のタシメルテオンを患者に投与することから本質的になる、概日リズム睡眠障害(CRSD)を有する患者を治療する方法において、改善が、
患者が前記障害に関連しているperiod 1(PER1)遺伝子型を有することを同定することにより前記治療のための患者を選択すること
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記障害に関連しているPER1遺伝子型が少なくとも1コピーのrs112474322アレルを含む、請求項23に記載の改善。
【請求項25】
前記PER1遺伝子型が機能喪失型(LOF)の遺伝子型である、請求項23に記載の改善。
【請求項26】
前記障害が睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)である、請求項23に記載の改善。
【請求項27】
前記患者を治療することが前記患者にタシメルテオンを就寝前に1日1回投与することを含む、請求項23に記載の改善。
【請求項28】
前記患者にタシメルテオンを投与することが20mgのタシメルテオンを投与することを含む、請求項27に記載の改善。
【請求項29】
タシメルテオンで前記患者を治療することが、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される少なくとも1つの睡眠パラメーターを改善する、請求項23に記載の改善。
【請求項30】
概日リズム睡眠障害の1又は複数の症状を示す患者を治療するための方法であって、
前記患者が前記障害に関連しているperiod 1(PER1)遺伝子型を有していることを同定すること、及び
前記障害を治療するのに有効な量のタシメルテオンを前記患者に投与すること
を含む前記方法。
【請求項31】
前記障害に関連しているPER1遺伝子型が少なくとも1コピーのrs112474322アレルを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記障害に関連しているPER1遺伝子型が機能喪失型(LOF)の遺伝子型である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記障害が睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記タシメルテオンの量が20mgである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記障害を治療することが、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される少なくとも1つの睡眠パラメーターを改善することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するための方法であって、
前記個人が概日リズム睡眠障害(CRSD)に関連しているperiod 1(PER1)遺伝子型のバリアントを有していることを同定すること、及び
前記個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するのに有効な量のタシメルテオンを、前記個人の確立された就寝時間の直前の時間に前記個人に毎日投与すること
を含む前記方法。
【請求項37】
前記CRSDに関連しているPER1遺伝子型のバリアントがrs112474322アレルを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記CRSDに関連しているPER1遺伝子型のバリアントが機能喪失型(LOF)の遺伝子型である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記CRSDが睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記タシメルテオンの量が20mgである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
睡眠を改善することが、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される少なくとも1つの睡眠パラメーターを改善することを含む、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、完全に記載されているかのように本明細書に取り込まれる、2019年2月13日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/805,057号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
概日リズム及び睡眠
ヒトの睡眠のタイミングは2つの制御過程によって調節される。1つ目は睡眠ホメオスタット(sleep homeostat)であり、疲労が蓄積する期間である覚醒時間と、回復性であり個人が次の覚醒エピソードに備える睡眠時間との間のバランスを保つ。2つ目は視交叉上核(SCN)における概日ペースメーカーにより制御される内在性のリズムであり、概日ペースメーカーにから発せられるシグナルによって疲労の効果に拮抗する。夕方、睡眠に対する恒常性欲求が高い場合、覚醒促進シグナルが最大になる。次に、個人の就寝時間が近づくにつれて、SCNからの出力が低下し、結果として睡眠が起こる。
【0003】
睡眠覚醒障害は、個人の概日ペースメーカーと個人の予定された睡眠時間とのずれに起因する可能性がある。このような障害は概日リズム睡眠障害(CRSD)に分類され、交代勤務睡眠障害(SWSD)、睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)、時差障害(jet lag)、及び非24時間睡眠覚醒障害(非24)を含む、種々の亜型が含まれる。
【0004】
いくつかの概日時計遺伝子が同定されている。これらには、cryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子、cryptochrome circadian clock 2(CRY2)遺伝子、period 1(PER1)遺伝子、period 2(PER2)遺伝子、及びperiod 3(PER3)遺伝子が含まれる。これらの遺伝子における多様性(variation)は、概日周期及び睡眠/覚醒周期の表現型の違いをもたらし得る。
【0005】
CRY1遺伝子における変異は、例えば、入眠及び出眠が遅い時間に変位(shift to later times)した不眠症の一種である睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)に関連している。DSWPDは、最も多く診断されている種類のCRSDであり、一般集団の0.2%~10%において発生すると推定されている。現在、明暗周期などの環境同調因子に対する個人の概日時計の感受性の差異及び周期の長さに影響を与える振動体の特性の変化を含む疑わしい原因により、DSWPDの病態生理学は曖昧である。特定のCRY1アレルであるrs184039278は、家族性DSPDに関連している。この機能獲得型のCRY1バリアントにより、主要な転写標的の発現が低下し、概日分子リズムの期間が長くなり、DSWPD症状につながるメカニズムがもたらされる。動物実験において、このタンパク質の発現により概日期間の約30分の増加がもたらされた。
【0006】
メラトニン
メラトニンは明確な概日パターンを有する。健康な夜間睡眠の個人においては、循環メラトニン濃度は、起きている昼間は低く、就寝時間の約1~3時間前に明確な上昇を示し、睡眠中は高いままであり、起床時間が近づくと低下する。開始(onset)、消失(offset)、及び中間(midpoint)は、内在的なメラトニンリズムの相を示すためにしばしば用いられる。メラトニン分泌開始時刻(dim light melatonin onset)(DLMO)などの概日相の測定により、睡眠覚醒障害の診断及び治療が改善される。DLMOは、信頼性のある非侵襲的な概日相マーカーを収集することにより測定されてもよい。DSWPD患者においては、相の後退と一致して、同調したDLMOが、顕著に遅い、正常なクロノタイプの対象において期待される時間よりかなり後に起こる。
【0007】
タシメルテオン
タシメルテオンは、メラトニンI型受容体(MT1)及びメラトニンII型受容体(MT2)で選択的な活性を有するメラトニン受容体アゴニストとして機能する概日制御因子である。タシメルテオン(HETLIOZ(登録商標))は、食品医薬品局により18歳以上の人について、特に欧州医薬品庁により全盲の人について、概日リズム睡眠覚醒障害である非24の治療に関して製造承認を受けている。
【0008】
臨床研究により、非24を有する全盲患者において、概日タイミング系(CTS)を相前進させ、夜間睡眠を改善し日中の睡眠を低減させ、体内時計の同調を加速するというタシメルテオンの有効性が実証されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、概日リズム睡眠障害(CRSD)を治療するのに有効な量のタシメルテオンを患者に投与することから本質的になる、概日リズム睡眠障害(CRSD)を有する患者を治療する方法において、改善が、患者が前記障害に関連しているcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型を有することを同定することにより前記治療のための患者を選択することを含む方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、概日リズム睡眠障害の1又は複数の症状を示す患者を治療するための方法であって、前記患者が前記障害に関連しているcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型を有していることを同定すること、及び前記障害を治療するのに有効な量のタシメルテオンを前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するための方法であって、前記個人が概日リズム睡眠障害(CRSD)に関連しているcryptochrome circadian clock 1(CRY1)遺伝子型のバリアントを有していることを同定すること、及び前記個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するのに有効な量のタシメルテオンを、前記個人の確立された就寝時間の直前の時間に前記個人に毎日投与することを含む方法を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、概日リズム睡眠障害(CRSD)を治療するのに有効な量のタシメルテオンを患者に投与することから本質的になる、概日リズム睡眠障害(CRSD)を有する患者を治療する方法において、改善が、患者が前記障害に関連しているperiod 1(PER1)遺伝子型を有することを同定することにより前記治療のための患者を選択することを含む方法を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、概日リズム睡眠障害の1又は複数の症状を示す患者を治療するための方法であって、前記患者が前記障害に関連しているperiod 1(PER1)遺伝子型を有していることを同定すること、及び前記障害を治療するのに有効な量のタシメルテオンを前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するための方法であって、前記個人が概日リズム睡眠障害(CRSD)に関連しているperiod 1(PER1)遺伝子型のバリアントを有していることを同定すること、及び前記個人において1又は複数の睡眠パラメーターを改善するのに有効な量のタシメルテオンを、前記個人の確立された就寝時間の直前の時間に前記個人に毎日投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にしたがってタシメルテオンで処置された個人の2つの群、すなわち、cryptochrome circadian clock 1(CRY1)のrs184039278アレルを有していない野生型(WT)の個人、及びCRY1のrs184039278アレルを少なくとも1コピー有する変異型(MT)の個人についての総睡眠時間(TST)のデータを示す。
【
図2】PER1のrs112474322アレルを有していない野生型の個人(0/0)、及び少なくとも1コピーのrs112474322アレルを有するMT個人についての3分夜の最後の期間のTSTを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
睡眠覚醒パターンに関連している遺伝的多様性の研究において、出願人は、CRY1のrs184039278アレルとタシメルテオンによる治療の効果との間の顕著な関連を見出した。具体的には、就寝前のタシメルテオンの投与に続き、CRY1のrs184039278アレルを少なくとも1コピー有する個人は、持続睡眠潜時(LPS)、3分夜(thirds of the night)の1番目の期間、3分夜の2番目の期間、及び/又は3分夜の最後の期間の睡眠効率(%)、レム(REM)睡眠の継続時間、3分夜の1番目及び2番目の期間における睡眠時間を含む総睡眠時間(TST)、並びに中途覚醒時間(WASO)からなる群から選択される1又は複数の睡眠パラメーターの改善を示した。
【0017】
以下の表1は、DSWPDと診断され、CRY1のrs184039278アレルを少なくとも1コピー有し、就寝前に20mgのタシメルテオンを投与された2人の個人についてのTST及び睡眠効率のデータを示す。示されるように、これらの個人はTSTが長く、睡眠効率が高かった。
【0018】
【0019】
図1は、CRY1のrs184039278アレルの少なくとも1コピーを有していない(WT)個人と比較した、CRY1のrs184039278アレルを少なくとも1コピー有する(MT)個人についてのTSTデータを示す。両群とも、就寝前に20mgのタシメルテオンで処置された。示されるように、WTの個人についてのTSTはいずれも低く、MTの個人についてのTSTよりも変動が大きかった。
【0020】
上述のように、CRY1のrs184039278アレルは家族性DSWPDに関連している。文献から知られておらず予測可能ではなかったことは、通常の睡眠障害、又は特にDSWPDの治療における、CRY1のrs184039278アレルとタシメルテオンの効率との関連であった。
【0021】
CRY1遺伝子及びPER1遺伝子の他のバリアントもまたDSWPDに関連していることが分かっている。これらには、エクソン6の欠失を引き起こす、稀なrs780614131アレルが含まれる。
【0022】
例えば、以下の表2は、rs780614131アレルについてヘテロ接合体であると決定された3人の個人の観察された睡眠時間を示す。示されるように、各個人の睡眠時間は、正常な睡眠時間又は典型的な睡眠時間であると考えられ得る期間と比較して遅延している。
【0023】
【0024】
同様に、rs112474322対立遺伝を有していない個人と比較して、rs112474322対立遺伝についてヘテロ接合体である個人は、3分夜の最後の期間に、後退した(late-shifted)睡眠を示した。これらの結果は
図2に示されている。
【0025】
本発明の態様は、機能喪失型(LOF)の遺伝子型を有する任意の個人の治療にも適用可能である。LOF遺伝子型は、CRSDに関連する遺伝子(例えば、CRY1及び/又はPER1)の機能が、野生型又は非LOF遺伝子型と比較して、低減しているか、又は失われている遺伝子型である。当業者であれば理解できるように、遺伝子機能の完全な喪失をもたらす遺伝子型はLOF遺伝子型である。また、当業者であれば理解できるように、野生型の遺伝子型と比較して低減した遺伝子機能をもたらす遺伝子型もまた、この遺伝子機能の低減が臨床的又は表現型的に測定可能である場合は、LOF遺伝子型を構成し得る。
【0026】
本発明を上記で説明される特定の実施形態と共に記載したが、多くの改変、改良、及び変形は、当該技術分野の当業者に明らかになるか、又は包含されることが意図されることは明らかである。したがって、上記に記載の本発明の実施形態は例示を意図しており、限定するものではない。以下の特許請求の範囲に定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更が加えられ得る。本明細書で引用される全ての特許、特許出願、科学論文、及びその他の出版物は、それらの開示の要旨についてその全体が本明細書に取りこまれる。
【国際調査報告】