(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-01
(54)【発明の名称】コーヒー抽出プロセス及びコーヒー製品
(51)【国際特許分類】
A23F 5/36 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
A23F5/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537821
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2019086859
(87)【国際公開番号】W WO2020136146
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516386029
【氏名又は名称】コーニンクレイケ ダウ エグバーツ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘンソン, シアン
(72)【発明者】
【氏名】アシュワース, ポール
(72)【発明者】
【氏名】フォックス, サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ケニー, フランシスコ ハビエル シランス
(72)【発明者】
【氏名】エッジ, チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】エスピノ オルドニェス, エバ
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB22
4B027FC01
4B027FK10
4B027FQ04
4B027FQ06
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4B027FQ18
4B027FQ19
4B027FR03
4B027FR04
4B027FR05
(57)【要約】
本発明は、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物を提供し、組成物は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析されるとき、1重量%以下のアラビノースを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物であって、
前記組成物が、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、前記不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析されるとき、1重量%以下のアラビノースを含む、インスタントコーヒー組成物。
【請求項2】
前記組成物が、7.5~15重量%の前記不溶性コーヒー沈降画分を含む、請求項1に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項3】
前記不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析されるとき、0.5~1重量%のアラビノースを含む、請求項1又は2に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項4】
前記不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析されるとき、5重量%未満のガラクトース、好ましくは2~4重量%のガラクトースを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項5】
前記インスタントコーヒー組成物が、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイル、好ましくは1~5重量%のコーヒーオイルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項6】
1.5重量%の濃度での湿式レーザー回折によって分析されるとき、前記組成物が、10マイクロメートル未満、好ましくは2.5~7.5マイクロメートルのD50を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項7】
前記組成物がコーヒーからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項8】
前記組成物が噴霧乾燥又は凍結乾燥されるか、又は前記インスタントコーヒー組成物が液体コーヒー濃縮物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のインスタントコーヒー組成物。
【請求項9】
コーヒー抽出製品を製造する方法であって、
(a)100~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(b)前記焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成する工程と、
(c)前記第1のスラリーをアロマ分離工程に通してコーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する工程と、
(d)前記脱アロマ化スラリーを90~150℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物及び第1の濾過ケーキを形成する工程と、
(e)水を前記第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(f)前記再構成スラリーを150~205℃の温度で熱処理する工程と、
(g)次いで、前記熱処理された再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物及び第2の濾過ケーキを形成する工程と、
(h)前記第1及び第2のコーヒー抽出物を組み合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(i)前記第3のコーヒー抽出物を濃縮して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(j)前記コーヒーアロマ画分を前記第4のコーヒー抽出物に添加して、液体コーヒー抽出製品を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
前記焙煎粉砕コーヒーが、400~600マイクロメートルの平均粒径を有する、又は前記焙煎粉砕コーヒーが、250~400マイクロメートルの平均粒径を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コーヒー抽出製品が可溶性粉末であり、前記方法が、
(k)前記液体コーヒー抽出製品を乾燥させて可溶性粉末を形成する工程を更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体コーヒー抽出製品が、40~50重量%のコーヒー固形分を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)及び/又は工程(e)における前記水が、80~100℃の温度である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)で形成された前記再構成スラリーが、12~30重量%の固形分を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の濾過ケーキが、更なる高温抽出プロセスに供されて、更なるコーヒー抽出物を得、工程(h)において、前記第1及び第2のコーヒー抽出物と混合されて、前記第3のコーヒー抽出物を形成する、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(f)がプラグフロー反応器内で実施される、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(i)が蒸発器ユニット内で実施される、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(c)が真空下で実施される、請求項9~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記コーヒー抽出製品を包装することを更に含む、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が連続プロセスである、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項9~20のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるコーヒー抽出製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎粉砕コーヒーを水で抽出するためのプロセスに関し、特に、改善されたフレーバー及び口当たりを有するコーヒー飲料製品を提供するためのコーヒースラリーの処理を伴うプロセスに関する。本発明は更に、プロセスによって得ることができるコーヒー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎粉砕コーヒーを水で抽出して、高コーヒー固形分のコーヒー抽出物を得ることは周知である。更に、このような抽出物を噴霧乾燥又は凍結乾燥により乾燥させて、可溶性飲料粉末を得ることは周知である。次いで、この飲料粉末を消費者の都合の良い時に温水で再構成して、コーヒー飲料を得ることができる。このようなホームメイドのコーヒー飲料は、コーヒーショップの飲料と類似の味を有することが望ましい。
【0003】
可溶性コーヒー製品の工業的生産は、コーヒーショップのブリューシステムよりも高温及び高圧を伴う。これにより、豆から得られる収量が多くなり、収益性が高くなるが、コーヒーに好ましくない加工フレーバーノートがつく可能性があるという副次的な悪影響がある。これを避けるために、多数の技術が採用されており、最初の低温抽出工程でフレーバー分子を確実に保持するためのアロマ捕捉法などが挙げられる。
【0004】
従来のコーヒー抽出プロセスの例は、以下の工程を伴う。未加工コーヒー豆は、所望の焙煎範囲に焙煎され、2~3mmの粒径に粉砕する。これは、約150℃の第1の工程と、約185℃のより高い温度の第2の工程とを有するカラム抽出プロセスに供される。各抽出工程で豆から洗浄されたコーヒー抽出物を合わせ、濃縮し、乾燥させる。プロセスは、複数の抽出カラムを使用した半連続式である。
【0005】
欧州特許第0826308号では、可溶性コーヒー固形分の向流抽出のためのプロセスが開示されている。可溶性コーヒー固形分は、80℃~160℃の温度で一次抽出液を使用して、第1の抽出段階の焙煎粉砕コーヒーから抽出する。次いで、可溶性コーヒー固形分を、160℃~190℃の温度で二次抽出液を使用して、第2の抽出段階で部分抽出された粉砕物から抽出し、コーヒー粉砕物は、それらから抽出された可溶性コーヒー固形分の少なくとも25%重量%を有する。第2の抽出段階から得られたコーヒー粉砕物を排出し、160℃~220℃の温度で1~15分間、加水分解段階で熱加水分解する。可溶性コーヒー固形分を、170℃~195℃の温度で三次抽出液を使用して、第3の抽出段階で加水分解コーヒー粉砕物から可溶性コーヒー固形分を抽出し、抽出したコーヒー粉砕物及び加水分解コーヒー抽出物を提供する。1%未満のフルフラール誘導体、4%未満の単糖類、10%未満のオリゴ糖、及び少なくとも19%の多糖類を含む、少なくとも30%の糖類を含有する可溶性コーヒー製品が得られ、この糖類は、3超の多分散度を有する2000単位を超える加重平均分子量を有する。
【0006】
欧州特許第0916267号では、1つ以上の抽出段階で抽出製品を提供するための、焙煎粉砕コーヒーなど、それらを含有する固体粒子から水溶性固形分を連続的に抽出するプロセスが開示されている。各抽出段階では、抽出される粒子及び抽出物を含有するスラリーを抽出反応器、例えば、固液分離器の直上に導入して、上方に移動する充填床を形成する。粒子は、充填床の上面を区画するために充填床から掻き取られる。抽出液は、充填床の上面の上方の抽出反応器へと導入される。充填床中の粒子から水溶性物質を抽出するために充填床を通して浸出する抽出液の一部が得られ、抽出物を形成する。抽出液の残りの部分は、使用済み粒子スラリーを提供するために、充填床から掻き取られた粒子を捕捉する。使用済み粒子スラリーを抽出反応器から除去する。抽出物は、充填床の下から除去され、抽出物の少なくとも一部が抽出製品を形成する。抽出段階は、1つ以上の可溶化段階によって分離されてもよい。
【0007】
欧州特許第1069830号では、コーヒーからアロマ成分を回収するためのプロセスが開示されている。水性液体中のコーヒー粉砕物のスラリーを、スラリーからアロマ成分をストリップするためにストリップする。ストリップは、アロマ成分を含有するアロマガスを提供するために、実質的に向流方式でガスを使用して実施される。アロマ成分は、次いで、アロマガスから回収される。アロマ成分は、抽出物の乾燥前に濃縮コーヒー抽出物に添加してもよい。生成されたコーヒー粉末は、アロマ及びフレーバーを大幅に増加させ、改善し、より高濃度のフラン及びジケトンを含有する。
【0008】
米国特許第3682649号では、全豆又は粉砕状態で、焙煎コーヒーを冷水加圧抽出し、高品質のコーヒー抽出物、及び更に加工可能な部分的抽出されたコーヒーを得ることが開示されている。コーヒー抽出物を乾燥させて、上等な可溶性コーヒーを得ることができる。部分的抽出されたコーヒーは、標準的な浸出技術によって更に抽出することができ、又は乾燥させ、レギュラー焙煎粉砕コーヒーとして使用することができる。
【0009】
米国特許第3652292号では、水性媒体として抽出することによって調製された可溶性コーヒー固形分を含み、その中に焙煎又は抽出された焙煎コーヒーの湿式粉砕コロイド粒子が添加される、インスタントコーヒー粉末の製造が開示されている。コロイド粒子は、コーヒー製品の総重量の約3重量%~40重量%を表す。コロイド粒子は、pH5.2を超えないようにpHを調節することによって凝集に対して安定化され、その粒子は、乾燥した可溶性コーヒー固形分中に入れられて、淹れたてのコーヒーアロマフレーバー及び濁度を有するインスタントコーヒー製品を形成する。
【0010】
欧州特許第1795074号は、焙煎コーヒー豆を粉砕時に放出されるアロマ成分が豊富で、用途及び目的に応じてコーヒーオイルの量を制御できる濃縮コーヒー抽出物を提供する方法と、それを工業的に製造するプロセスに関する。本発明によれば、上記目的は、焙煎コーヒー豆を湿式粉砕して得られたスラリーから、アロマ成分含有留出物と、コーヒーオイル含有液と、コーヒー抽出物を分離し、コーヒー抽出物を濃縮した後、アロマ成分含有留出物及びコーヒーオイル含有液を添加し戻すことによって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0826308号明細書
【特許文献2】欧州特許第0916267号明細書
【特許文献3】欧州特許第1069830号明細書
【特許文献4】米国特許第3682649号明細書
【特許文献5】米国特許第3652292号明細書
【特許文献6】欧州特許第1795074号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
液体(すなわち、水性)コーヒー抽出物及び乾燥した可溶性コーヒー製品の製造は、コーヒーショップ環境における出来立てのコーヒー飲料と比較して、フレーバーが異なるため、製造方法を改善して、改善された製品を実現することが常に求められている。乾燥した可溶性コーヒー製品のフレーバーを改善するための通常のアプローチの1つは、乾燥前に微粉砕焙煎コーヒー粒子をコーヒー抽出物に加えることである。このような粒子の含有は、典型的には、飲料中の過度の沈降物を回避するように制御されるが、概ね、製品のフレーバーに有益な効果を有する。小粒子の存在は、観察される口当たりにも寄与し得る。
【0013】
したがって、コーヒー製品を製造するための改善された方法、改善されたコーヒー製品を提供すること、及び/又は先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に利用可能な代替物をそれに提供することが望ましい。
【0014】
第1の態様によれば、コーヒー抽出製品の製造方法が提供され、本方法は、
(a)100~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(b)焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成する工程と、
(c)第1のスラリーをアロマ分離工程に通してコーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する工程と、
(d)脱アロマ化スラリーを90~150℃の温度で第1の濾過装置に通して、第1のコーヒー抽出物及び第1の濾過ケーキを形成する工程と、
(e)水を第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(f)再構成スラリーを150~205℃の温度で熱処理する工程と、
(g)次いで、熱処理された再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物及び第2の濾過ケーキを形成する工程と、
(h)第1及び第2のコーヒー抽出物を組み合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(i)第3のコーヒー抽出物を濃縮して、35~70重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(j)コーヒーアロマ画分を第4のコーヒー抽出物に添加して、液体コーヒー抽出製品を形成する工程と、を含む。
【0015】
本発明を、ここで更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。このように定義された各態様は、反対のことが明示されない限り、他の態様又は他の複数の態様と組み合わせることができる。特に、好適であるか又は有利であることが示されるいずれかの特徴は、好適であるか又は有利であることが示される他の特徴又は他の複数の特徴と組み合わせることができる。
【0016】
本発明は、コーヒー抽出製品の製造方法を提供する。すなわち、本発明は、コーヒー抽出物から得られるコーヒー製品を提供する。このような製品の例としては、バッグインボックスコーヒー製品として販売される液体濃縮物、又は凍結乾燥若しくは噴霧乾燥粉末若しくは錠剤などの可溶性コーヒー製品が挙げられる。液体濃縮物及び可溶性コーヒー製品は、水を加えると直ちに飲料を形成するため、両方とも「インスタント」コーヒー製品と見なされる。これらの異なる製品タイプの全ては、当該技術分野において周知である。このような製品は、当該技術分野において周知のように、フレーバー又は外観を改善するために少量の微粉砕の焙煎粉砕コーヒーを加えることによって添加することができる。
【0017】
本出願は、「固形分」を指す。これらは、全ての水が除去された後に残る物質である。したがって、コーヒー飲料を取り、水を除去した場合(蒸発によって)、コーヒー固形分が残される。これらのコーヒー固形分は、可溶性コーヒー固形分及び不溶性コーヒー固形分を含む。不溶性コーヒー固形分は、焙煎粉砕コーヒー材料及びコーヒーオイルを含む。本明細書では、不溶性コーヒー固形分の非オイル部分である不溶性コーヒー沈降画分について、更なる区別がなされる。
【0018】
本発明は、水抽出のみに依存しながら、インスタントコーヒーのフレーバー及び味を根本的に変えることができる新しい抽出プロセスを利用する。このような変化をもたらす主な条件は、より低い抽出及び加水分解温度と組み合わせるが、プロセスの収率を損なうことなく、はるかに微細な粉砕サイズを使用することである。
【0019】
本発明は、以下の考察から明らかになるように、従来技術の方法に勝る多数の利点を有する。本プロセスの1つの利点は、完全に連続プロセスで実施することができることである。これにより、処理装置におけるコスト及び複雑性が抑えられる。別の利点は、少量の水で操作可能であると言う利点もあり、これはもちろん環境的にも望ましいことであるが、除去する必要のある水が少ないため、液体濃縮物又は乾燥粉末の提供を目指す場合、大きなエネルギー節約につながる。
【0020】
本発明はまた、より望ましいコーヒーフレーバーの回収を促進する初期熱処理において、従来の温度よりも低い温度を使用する。本方法は、より高温の二次加熱処理を有するため、高収率が確実に維持される。
【0021】
更に、本発明は、改善されたフレーバー及び味を有するコーヒー製品を提供する。特に、従来の方法で得られた製品とは驚くほどフレーバー及び味が異なり、より濃厚な口当たり及び優れたフレーバーノートを有する飲料となった。
【0022】
本方法は、いくつかの工程を含む。いくつかのこれらの工程は、加工される材料の所与の部分上で連続的に実施されなければならないことは明らかであるが、これらの工程は、連続プロセス、バッチ式、又はその2つの組み合わせの一部として実施され得ることも理解されたい。
【0023】
第1の工程(工程(a))によれば、100~600マイクロメートル、好ましくは200~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーが提供される。焙煎粉砕コーヒーは、当該技術分野において十分に確立された技術を使用して焙煎粉砕されたコーヒー豆から得られる。平均粒径は、標準的な測定条件下で、Helos乾式レーザー回折計を使用して測定されるD50である。
【0024】
本明細書で採用される粉砕サイズは、典型的には約2mmの粒径を使用する従来のコーヒー抽出プロセスに用いられるものよりもはるかに細かい。微細粒径は、抽出のための表面積を増大させながら、ポンプ輸送可能なスラリーの形成を可能にする。逆に、コーヒーをこのサイズに粉砕するために必要なエネルギーは大きすぎず、粉砕中の豆の望ましくない熱劣化をもたらさない。
【0025】
好ましくは、焙煎粉砕コーヒーは、200~400マイクロメートル、より好ましくは250~350マイクロメートルの平均粒径に粉砕され、これは、従来、エスプレッソコーヒー飲料の製造のために粉砕された粒径の領域にある。これは、以下に説明するように、スラリーを作製するために添加する必要がある水が少ないため、特に有利である。更に、250マイクロメートル未満では、濾過は、より困難になり、効率的ではなくなる。100マイクロメートル未満の粒径では、粒子が、フィルタをブロックし得る。
【0026】
別の実施形態では、好ましくは焙煎粉砕コーヒーは、400~600マイクロメートルの平均粒径を有する。これは、液体コーヒー濃縮物を製造するのに特に有利である。これは、液体製品の場合、オイルが液体のクレマの不安定性に寄与するため、製品のオイル含有量を減らすために、粒子を大きくすることがより良好であるからである。粒径が大きいほど、得られた抽出物に放出されるオイルは少なくなる。
【0027】
更なる工程(工程(b))によれば、焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成する。すなわち、コーヒー豆が混合物全体の15~30重量%、好ましくは20~25重量%を提供するような比率で水がコーヒー豆に添加される。コーヒー固形分には、不溶性コーヒー固形分及び可溶性コーヒー固形分が含まれ、その一部は、添加された水に溶解する。この濃度の水は、ポンプ輸送可能なスラリーを提供する。ポンプ輸送可能なスラリーに必要とされる水の量は、使用される粉砕物の大きさに依存し、粗い粉砕物は、ポンプ輸送のためにより多くの水を必要とする。約250マイクロメートルの粉砕サイズでは、例えば25%固形分を達成するために希釈を使用することが容易に可能である。約100マイクロメートルの粉砕サイズでは、例えば30%固形分を達成するために希釈を使用することが容易に可能である。しかしながら、400~600マイクロメートルの粒径では、15%固形分を得るために、より多くの水を添加することが望ましい。
【0028】
更なる工程(工程(c))によれば、第1のスラリーをアロマ分離工程に通してコーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する。アロマ分離システムは、可溶性コーヒー製造分野において周知である。例示的な処理ユニットは、アロマを抽出するように操作することができるスピニングコーンカラムである。これは、後の使用のために保存される水性アロマ流として回収することができる、コーヒーからアロマをストリップするスラリーへの蒸気の導入を伴う。工程(c)は、真空下で実施してもよい。
【0029】
アロマ分離工程におけるスラリーの温度は、必要に応じて調節することができるが、典型的には、処理の開始時に、70~100℃、例えば、90~100℃の領域内である。この熱処理(すなわち、アロマ分離)は、好ましくは10秒~2時間、1分~25分、好ましくは1~5分間実施される。代替的な実施形態では、持続時間は15~25分であってもよい。当然のことながら、アロマ回収技術が使用される場合、温度は、蒸気添加によって影響を受ける場合がある。アロマ分離は、真空下で行うことができる。
【0030】
スラリーの温度は、スラリーが形成される前又は後のいずれかに添加された水を加熱することによって、アロマ分離工程の前に上昇させることができる。温度変化は、例えば、従来の熱交換器を使用することによって、プロセスの他の工程から回収された熱を使用して行うことができる。好ましくは、工程(b)における水は、コーヒーと混合されるとき、80~100℃の温度である。これは、豆と一緒に加熱したり、又は蒸気を使用してスラリーを加熱したりするよりも、温水を加える方が安価だからである。水がコーヒーと混合される前に加熱されない場合、水は15~40℃の温度で添加され、その後のスラリーは80~100℃に加熱される。この選択肢は、改善されたプロセスの簡略化と言う利点を有する。
【0031】
本プロセスのこの時点で、工程(c)の後、スラリーは、脱アロマ化された、可溶性コーヒー固形分、不溶性コーヒー固形分、及び水を含む。
【0032】
更なる工程(工程(d))によれば、脱アロマ化スラリーを、90~150℃、好ましくは90~120℃、より好ましくは90~100℃の温度で第1の濾過装置に通過させて、第1のコーヒー抽出物及び第1の濾過ケーキを形成する。好ましい実施形態では、脱アロマ化スラリーを、140~150℃の温度で第1の濾過装置に通過させる。したがって、このプロセスは、可溶性コーヒー固形分の大部分及び水を不溶性コーヒー固形分から分離する。第1の濾過装置は、沈降槽、フィルタ、及び遠心分離機を含む、いくつかの既知の濾過システムのうちの1つであり得る。フィルタは、効率的な連続処理が可能で、微粒子の取り扱いにおける汎用性があるため、好ましい。連続濾過装置が使用されることが最も望ましい。これにより、不溶性固形分が水から効率的に分離され、可溶性固形分の回収率は90%超である。
【0033】
濾過ケーキ中のコーヒー固形分は、可溶性コーヒー固形分の抽出を増加させるために、洗浄又はプレスに供され得る。濃縮コーヒー液である第1のコーヒー抽出物は、プロセスでの後の使用のために保存されてもよく、又はプロセスの連続バージョンで後の工程に直接添加されてもよい。
【0034】
更なる工程(工程(e))に従い、水を第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する。すなわち、水は、第1のスラリー形成工程よりも、わずかに低い固形分濃度を有するスラリーを生成するのに必要な量で添加される。好ましくは、工程(e)で形成された再構成スラリーは、12~30重量%の固形分、より好ましくは12~20重量%を有する。この固形分濃度は、望ましいポンプ能力を達成するように選択される。また、再構成は、必要に応じて加熱した水で実施することができる。
【0035】
好ましくは、工程(e)における水は、80~100℃の温度である。これは、温水を足すと安価であり、また、以下の工程で必要とされる温度の一部を達成するのに役立つからである。熱は、プロセスの他の工程から回収されてもよい。
【0036】
更なる工程(工程(f))に従い、再構成スラリーは、150~205℃、好ましくは170~205℃、より好ましくは180~205℃の温度で熱処理される。この加熱は、抽出速度を向上させるために、高圧で行われることが好ましい。好ましい圧力は、2~30バール、例えば15バールである。この熱処理は、好ましくは5分~2時間、好ましくは5~15分、好ましくは5~10分間実施される。代替的な実施形態では、持続時間は15~25分であってもよい。この工程の間、不溶性コーヒー固形分の一部は、可溶性固形分に加水分解され、次いで回収され得る。この工程は、プラグフロー反応器を使用して実施することができる。
【0037】
本プロセスにおけるこの時点で、スラリーは、可溶性コーヒー固形分、不溶性コーヒー固形分、及び水を再び含む。これは、圧力低下が任意の望ましくないアロマフレーバーの除去を可能にするフラッシュ処理に供され得る。
【0038】
更なる工程(工程(g))に従い、熱処理された再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物及び第2の濾過ケーキを形成する。濾過装置は、上述のような任意の濾過装置であってもよい。これは、溶解した可溶性コーヒー固形分を含有するコーヒー液を不溶性コーヒー固形分から分離する役割を果たす。第2の濾過ケーキを再度、洗浄及び/又はプレスして、追加のコーヒー抽出物を回収することができる。第2のコーヒー抽出物は、概ね、第1のコーヒー抽出物よりも低い可溶性固形分濃度を有する。
【0039】
濃縮コーヒー液である第2のコーヒー抽出物は、プロセスでの後の使用のために保存され得る。
【0040】
更なる工程(工程(h))に従い、第1及び第2のコーヒー抽出物を組み合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する。2つのコーヒー抽出物は、概ね組み合わされて、単純な混合によって第3のものを提供する。
【0041】
更なる工程(工程(i))に従い、第3のコーヒー抽出物は濃縮されて、35~70重量%のコーヒー固形分、好ましくは35~65重量%、より好ましくは40~50%を有する第4のコーヒー抽出物を形成する。以下の工程(j)でアロマを添加する場合、希釈して有用な最終濃度を達成できるようにするために、工程(i)の後に55~60%の固形分の濃度が好ましい。これは、濃縮物として使用するのに好適なコーヒー抽出物(すなわち、流動性)を提供するか、又は乾燥プロセスで使用して、乾燥製品を製造するのに好適なコーヒー抽出物(すなわち、除去する水が少ない)を提供する役割を果たす。好ましくは、工程(i)は蒸発器ユニット内で実施される。
【0042】
更なる工程(工程(j))に従い、コーヒーアロマ画分(工程(c)から)を第4のコーヒー抽出物に添加して、液体コーヒー抽出製品を形成する。これにより、固形分濃度を損なうことなく抽出物のフレーバーが改善される。濃縮工程の後にアロマを戻すことで、限られた量のアロマが製品から失われるのを防ぐ。得られるコーヒー抽出物は、好ましくは35~65重量%、好ましくは45~65重量%のコーヒー固形分を有する。
【0043】
好ましくは、コーヒー抽出製品は可溶性粉末である。すなわち、本方法は、液体コーヒー抽出製品を乾燥させて可溶性粉末を形成する工程(k)を更に含む。好ましくは、乾燥工程は、製品の改善されたアロマ特性を保持するのに役立つため、凍結乾燥である。好ましくは、粉末製品は、200~3000マイクロメートル、より好ましくは500~2000マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0044】
あるいは、液体コーヒー濃縮物製品が所望される場合、プロセスは、抽出物が希釈されて固形分濃度を低下させる工程(j)の後の工程(L)の後の更なる工程を含んでもよく、これにより、最終製品が、25~55重量%、好ましくは25~35%の可溶性固形分含有量を有する。これは、液体濃縮物に適した固形分濃度である。
【0045】
工程(g)の後に残っているコーヒー固形分は、廃液流として処理してもよく、プロセスのためのエネルギーを提供する(水を加熱するなど)ために焼却されてもよい。あるいは、第2の濾過ケーキは、更に高温抽出プロセスに供されて、第1及び第2のコーヒー抽出物と工程(h)で混合されて第3のコーヒー抽出物を形成する更なるコーヒー抽出物を得ることができる。この更なる高温処理工程の好適な条件は、190~215℃の温度である。この熱処理は、好ましくは5分~2時間、好ましくは15~25分間実施される。この更なる工程は、スラリー形成及び濾過工程の更なるセットを使用して、又は従来の抽出技術を使用して行うことができる。
【0046】
一般に、特許請求される方法は、従来の抽出方法よりも少ない水の使用を伴う。高固形分濃度の使用は、関連する濃縮工程のためのエネルギー消費を低減する。このプロセスはまた、異なる段階で加熱された水と高温抽出工程の製品から回収できる熱を加えることにより、異なる段階間の熱の効率的なリサイクルを可能にする。
【0047】
好ましくは、本方法は、コーヒー抽出製品を包装することを更に含む。
【0048】
本方法の好ましい実施形態によれば、本方法は、
(a)200~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーを準備する工程と、
(b)焙煎粉砕コーヒーを水と混合して、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリーを形成する工程と、
(c)第1のスラリーをアロマ分離工程に通してコーヒーアロマ画分を回収し、脱アロマ化スラリーを形成する工程と、
(d)脱アロマ化スラリーを90~100℃の温度で第1の濾過装置に通過させて、第1のコーヒー抽出物及び第1の濾過ケーキを形成する工程と、
(e)水を第1の濾過ケーキに添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリーを形成する工程と、
(f)再構成スラリーを180~205℃の温度で熱処理する工程と、
(g)次いで、熱処理された再構成スラリーを第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物及び第2の濾過ケーキを形成する工程と、
(h)第1及び第2のコーヒー抽出物を組み合わせて、第3のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(i)第3のコーヒー抽出物を濃縮して、35~60重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物を形成する工程と、
(j)コーヒーアロマ画分を第4のコーヒー抽出物に添加して、液体コーヒー抽出製品を形成する工程と、を含む。
【0049】
この好ましい実施形態は、第1の態様の全ての更なる特徴と自由に組み合わせることができる。
【0050】
更なる態様によれば、本明細書に記載の方法によって得ることができるコーヒー抽出製品が提供される。
【0051】
完成したインスタントコーヒー製品は、より少ない加工フレーバーの改善されたフレーバー及び淹れたてのコーヒーに近い改善されたフレーバーを示す。より高温での処理によって生み出される望ましくない加工酸味もまた低減される。
【0052】
本発明者らは、上記のプロセスが、固有のインスタントコーヒー製品(すなわち、液体コーヒー濃縮物又は可溶性コーヒー粉末)につながることを見出した。特に、製品は、従来の市販のコーヒー製品と比較して、改善されたアロマ及び口当たりを有する。本発明者らは、アロマ及び口当たりの観察された改善を生じさせる製品の特有の性質を特定することを目指した。
【0053】
このプロセスにより、製品内に不溶性コーヒー沈降画分が存在する。この画分は、従来のコーヒー抽出物のアロマを改善するために、コーヒー製品に添加されることが多い焙煎粉砕コーヒー添加物に非常に類似している。しかしながら、不溶性コーヒー沈降画分は、プロセスの直接的な結果として製品中に存在し、コーヒー抽出物に焙煎粉砕コーヒーを添加する追加の工程を必要としない。したがって、本発明の製品は、追加の焙煎粉砕コーヒーが添加されていない市販のコーヒー製品と区別する不溶性コーヒー沈降画分の存在によって特徴付けることができる。
【0054】
驚くべきことに、本発明者らは、プロセスの直接的な結果として得られた不溶性コーヒー沈降画分が、添加後の焙煎粉砕コーヒー抽出物よりも抽出物から沈降する可能性が低いことを見出した。これは、飲料を容器内でかき混ぜた後に、容器の壁に堆積した沈降物又はスカムが著しく減少した最終飲料において観察される。
【0055】
上記のプロセスで得られた不溶性コーヒー沈降画分は、従来の焙煎粉砕コーヒー添加物を添加したコーヒーについて観察された不溶性コーヒー沈降画分とは更に異なる。これは、画分がコーヒー抽出プロセスを経て、加熱された水性環境に曝され、不溶性コーヒー材料中の炭水化物のバランスが変化するからである。したがって、本発明の製品は、追加の焙煎粉砕コーヒーを添加した市販のコーヒー製品と区別する不溶性コーヒー沈降画分の炭水化物分析によって特徴付けることができる。
【0056】
加えて、本プロセスは、コーヒー製品中でより高いオイル画分をもたらす。これは、本方法で使用されるコーヒー粒子粉砕サイズがより微細な結果である。より微細な粉砕物は、抽出のためにコーヒーのより多くの表面積を露出させるため、抽出プロセスにおいてより多量のオイルが放出されることが理解される。したがって、本発明の製品は、従来の抽出プロセスによって得られる市販のコーヒー製品と区別する、より高いオイル画分の存在によって特徴付けることができる。
【0057】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、該不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析されるとき、1重量%以下のアラビノースを含む。
【0058】
不溶性コーヒー沈降画分は、本明細書に記載の繰り返し遠心分離プロセスを使用して得られる沈降物である。これは、水に不溶性である製品中に存在する固形分材料(オイルではない)を表す。
【0059】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、不溶性コーヒー沈降画分を含み、該不溶性コーヒー沈降画分が、酸加水分解後に分析されるとき、1重量%以下のアラビノースを含み、該組成物は、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイル、好ましくは1~5重量%のコーヒーオイルを含む。
【0060】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分と、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイル、好ましくは1~5重量%のコーヒーオイルとを含む。
【0061】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、該不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析されるとき、1重量%以下のアラビノースを含み、該組成物は、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイル、好ましくは1~5重量%のコーヒーオイルを含む。
【0062】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、少なくとも6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含み、該組成物は、1.5重量%の濃度で湿式レーザー回折により分析されるとき、単峰性粒径分布を有する。
【0063】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、酸加水分解後に分析されるとき、1重量%以下のアラビノースを含む不溶性コーヒー沈降画分を含み、該組成物は、1.5重量%の濃度で湿式レーザー回折により分析されるとき、単峰性粒径分布を有する。
【0064】
本発明の更なる態様によれば、コーヒー飲料を形成するためのインスタントコーヒー組成物が提供され、該組成物は、1.5重量%の濃度で湿式レーザー回折により分析されるとき、単峰性粒径分布を有し、該組成物は、乾燥重量で少なくとも0.8重量%のコーヒーオイル、好ましくは1~5重量%のコーヒーオイルを含む。
【0065】
インスタントコーヒー組成物に関する上記態様のそれぞれにおいて、用語「インスタント」は、可溶性コーヒー粉末などの乾燥粉末製品と、液体コーヒー抽出物(例えば、水中30重量%のコーヒー固形分(可溶性及び不溶性))の両方を包含する。好ましくは、組成物は乾燥され、より好ましくは噴霧乾燥又は凍結乾燥されるか、又は真空乾燥される。このような乾燥製品は、より長い製品寿命を有する傾向がある。
【0066】
組成物は、好ましくは、7.5~15重量%の不溶性コーヒー沈降画分を含む。この量の不溶性コーヒー沈降画分は、バランスのとれたアロマを提供し、口当たりに悪影響を及ぼす恐れがあり、望ましくない沈降物を引き起こす恐れがある、過度に多量の不溶性物質を有さない。
【0067】
好ましくは、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析されるとき、0.5~1重量%のアラビノースを含む。
【0068】
好ましくは、不溶性コーヒー沈降画分は、酸加水分解後に分析されるとき、5重量%未満のガラクトース、好ましくは2~4重量%のガラクトースを含む。
【0069】
好ましくは、インスタントコーヒー組成物は、乾燥重量で少なくとも1重量%のコーヒーオイル、好ましくは1.5~5重量%のコーヒーオイルを含む。オイルの濃度が増加すると、製品の口当たりが改善される。オイルは、プロセスの結果として得られ、抽出物内に十分に分布していることが判明しており、最終飲料上で視認される望ましくないオイル・スリックなしに、口当たりを改善するのに役立つ。
【0070】
好ましくは、1.5重量%の濃度(固形分)での湿式レーザー回折によって分析されるとき、インスタントコーヒー組成物は、単峰性粒径分布を有する。これは、焙煎粉砕コーヒーが可溶性コーヒー粉末(概ね乾燥前のコーヒー抽出物中)に添加物として添加される製品を識別する。具体的には、コーヒー豆を破砕する従来のミリング技術は、概ね、コーヒー豆の破砕に基づいて二峰性分布を生じさせ、最も細かい細胞壁断片から生じる、より低いピークを有する。対照的に、本発明の方法の後に保持されたコーヒー粒子、又は浸出カラムを流出した従来の抽出物に保持されたコーヒー粒子は、二峰性分布を有する。
【0071】
好ましくは、同じ粒子測定の下で、インスタントコーヒー組成物はまた、10マイクロメートル未満、好ましくは2.5~7.5マイクロメートルのD50を有する。この微細な粒径は、上述のコーヒープロセスから得られる抽出物への影響を反映する。実際、D90が通常30マイクロメートルを超えており、広い粒径分布を反映しているため、観察された粒径分布は通常とは異なる。
【0072】
好ましくは、組成物はコーヒーからなる。すなわち、好ましくは、コーヒー組成物は、いかなるコーヒー以外の成分又は添加物も含まない。
【0073】
不溶性コーヒー沈降画分の定量及び分析は、可溶性コーヒー固形分から不溶性コーヒー固形分を分離する必要がある。液体コーヒー製品のこの評価を容易にするために、同じ分析を行うことができるように、製品を粉末に乾燥させる必要がある。
【0074】
不溶性コーヒー沈降画分(沈降物としても知られる)を単離及び定量化するために、所与のコーヒー試料(乾燥粉末)30グラムを70グラムの煮沸水に添加し、2分間振盪する。次いで、試料を10,000gで15分間遠心分離する。遠心分離後、上清を移し、沈降物を70グラムの熱湯で再溶解し、2分間振盪し、次いで、上記と同じ条件下で再度遠心分離する。この洗浄プロセスは、合計4回の遠心分離工程で3回繰り返される。次いで、最終洗浄から沈降物を凍結乾燥させ、次いで、沈降物の割合を30gの出発試料に関連させる(例えば、1.8gの沈降物は、6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を表す)。任意の分析が行われる前に、乾燥沈降物試料を単純な撹拌によって均質化する。
【0075】
不溶性コーヒー沈降画分を分析する方法を考慮すると、画分は、不溶性であると考えられるが、存在し得る任意のコーヒーオイルを含まない。これは、オイルが遠心分離工程において容易に分離されるためである。
【0076】
単離した不溶性コーヒー沈降画分内の炭水化物を試験するために、総炭水化物分析は、ISO 11292-1995に準拠して、高性能陰イオン交換パルス電流検出(HPAEC-PAD)を使用して実施される。試料は、既に単離した沈降物を50mlの1M HClと混合し、次いで95℃で150分間試料を振盪することによって調製される。単糖類の定量化は、通常の単糖類の外部標準を分析することによって実施される。
【0077】
インスタントコーヒー製品の粒径分布を決定するために、Hydro MVタンクを有するMalvern Mastersizer 3000を使用して粒度分布分析を行った。1.5gの試料(±0.0005g)を、100℃で沸騰した脱イオン水で100g(±0.05g)まで作製し、60秒間攪拌し、わずかに冷却し、Malvern単位に滴加して、約10%の不透明度を達成した。平均3回の読み取りを行った。また、この液体コーヒー製品の評価を容易にするために、同じ分析を行うことができるように、製品を粉末に乾燥させる必要がある。
【0078】
オイル含有量を決定するために、製品の試料(製品が液体コーヒー濃縮物である場合には、まず乾燥させた)を、Soxtec H6を使用して評価した。2gの試料を石油エーテル40-60と混合し、2時間煮沸した後、約0.5時間すすいだ。次いで、得られた縮合物を加熱して溶媒を回収する。このようにしてオイル濃度の評価は、当該技術分野において周知である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明のインスタントコーヒー組成物は、既知の方法によって得られた従来のコーヒーとブレンドされ得る。例えば、製品は、従来のコーヒーの残部とブレンドされた、本明細書に記載のコーヒーの10~100%、例えば20~50%を含有してもよい。これは液体製品のために容易に達成することができるが、可溶性製品は、混合液体抽出物から、又は異なる粉末製品の乾燥混合物によって形成されてもよい。これは、本発明の口当たり及び味覚の良さを控えめにして、従来の飲料での経験に近いものを提供したい場合に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
ここで、本発明を図と対応させて更に説明する。
【
図2】異なる剪断速度における様々な試料の粘度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1に示されるように、コーヒー抽出製品の製造方法は、いくつかの工程を含む。
【0082】
工程(a)では、100~600マイクロメートル、好ましくは200~600マイクロメートルの平均粒径を有する焙煎粉砕コーヒーが提供される。この範囲内では、より大きなサイズが液体抽出製品に有利であるのに対し、より小さいサイズは、乾燥可溶性コーヒー製品に有利である。
【0083】
工程(b)では、焙煎粉砕コーヒーと水5は、15~30重量%のコーヒー固形分を含有する第1のスラリー10を形成する。水5は、80~100℃、好ましくは90~95℃の温度で添加される。必要に応じて最小量の水5が使用されてポンプ輸送可能スラリー10を得ることから、固形分濃度は粒径によって決定される。ポンプ輸送可能スラリー10を得るためには、粒径が大きいほど、より多くの水5が必要である(固形分が低いほど)。
【0084】
工程(c)では、第1のスラリーをアロマ分離工程に通してコーヒーアロマ画分15を回収し、脱アロマ化スラリー20を形成する。この方法に対する典型的なアプローチは、ポンプ輸送可能スラリー10に蒸気を加えることを伴い、その際、蒸気はスピニングコーン処理ユニットで処理される。
【0085】
工程(d)では、脱アロマ化スラリー20を、90~150℃、例えば90~100℃の温度で第1の濾過装置に通過させて、第1のコーヒー抽出物25及び第1の濾過ケーキ30を形成する。温度は、先行する工程から保持されるか、又は抽出収率を増加させるために更に増加させることができる。濾過ケーキ30を洗浄し、プレスして、可溶性コーヒー固形分の最大可能量を得ることができる。
【0086】
工程(e)では、水5を第1の濾過ケーキ30に添加して、少なくとも12重量%のコーヒー固形分を有する再構成スラリー35を形成する。水5は好ましくは高温であり、第1の濾過ケーキ30を分解するための機械的撹拌が存在し得る。スラリーを再構成するために必要とされる水の量は、工程(b)において必要とされる量よりも多い傾向がある。
【0087】
工程(f)では、再構成スラリー35を、150~205℃、例えば180~205℃の温度で熱処理して、熱処理された再構成スラリー40を形成する。すなわち、プラグフロー反応器などの熱処理ユニットを通してポンプ注入される。熱処理における滞留時間は、典型的には、良好な抽出を確実にするために、少なくとも5分である。
【0088】
工程(g)では、熱処理された再構成スラリー40を第2の濾過装置に通して、第2のコーヒー抽出物45及び第2の濾過ケーキ50を形成する。第2の濾過ケーキ50を洗浄し、プレスして、最大可能量の可溶性コーヒー固形分を得ることができる。この工程の温度は、前述の工程から保持されてもよく、又は工程(b)で使用するために熱を回収する際に、例えば80~100℃の温度まで低下させてもよい。
【0089】
次いで、工程Mで第2の濾過ケーキ50を燃焼させて、プロセスのための熱を生成してもよく、又は更なる高温抽出工程Mに供して、更なるコーヒー抽出物52を得てもよい。
【0090】
工程(h)において、第1のコーヒー抽出物25及び第2のコーヒー抽出物45を組み合わせて、第3のコーヒー抽出物55を形成する。他の水性コーヒー抽出物がまた、この工程で添加されてもよい(例えば、更なるコーヒー抽出物52など)。
【0091】
工程(i)において、第3のコーヒー抽出物55が濃縮されて、35~60重量%のコーヒー固形分など35~70重量%のコーヒー固形分を有する第4のコーヒー抽出物60を形成する。
【0092】
工程(j)において、コーヒーアロマ画分15を第4のコーヒー抽出物60に添加して、液体コーヒー抽出製品65を形成する。
【0093】
液体コーヒー抽出製品65は、工程Kで処理されて、可溶性コーヒー粉末70などの乾燥コーヒー製品を形成してもよい。液体コーヒー抽出製品65を工程Lで希釈して、液体コーヒー濃縮物80を形成してもよい。
【0094】
図3では、現行技術が、最小四辺形によって表される。他の2つの四辺形は、70%が現行製品、30%が新技術製品という異なるプロトタイプを表す。軸は、以下の通りである:正のx(粘度);正のy(濁度);負のx(粉末状);負のy(乾燥)。
【0095】
次に、本発明を、以下の非限定例に関連して更に説明する。
【実施例】
【0096】
実施例1
焙煎した全豆を、3段階ローラー粉砕機で200μm~400μmに粉砕した。
【0097】
焙煎粉砕コーヒーを、20℃~30℃で、25%コーヒー対75%水の比率でスラリー化した。
【0098】
スラリーを熱交換器に供給し、95℃まで加熱した後、スピニングコーンカラムに移動させ、アロマをスラリーからストリップした。
【0099】
スピニングコーンから出ると、スラリーを熱交換器に供給し、温度を120℃~150℃に2~5分間上昇させた。
【0100】
次いで、スラリーを、コーヒー液を粉砕物から分離するフィルタに供給した。次いで、粉砕物を、130℃~150℃で更に2回洗浄工程に供し、追加の固形分を除去した。
【0101】
次いで、粉砕物を、真水で、12%~17%の固形分の比率で再スラリー化した。得られたスラリーを、180℃~205℃(185℃)に加熱した加水分解工程に供給し、5~20分間保持した。
【0102】
次いで、得られたスラリーを、第1の分離工程の分離及び洗浄を繰り返す第2の濾過工程を通過させる前に、100℃未満まで冷却した。
【0103】
各濾過工程から得られたコーヒー抽出物を組み合わせ、濃縮した。第1のスラリーからストリップしたアロマ化合物を、次いで混合物に添加する。次いで、完全に組み合わされた3つの成分を従来のプロセスで凍結乾燥して、可溶性コーヒー粉末を得た。
【0104】
このプロセスは、水の使用量が低減された現行技術よりも、2%の焙煎コーヒーの増分収率が回復した。
【0105】
実施例2
アラビカ及び/又はロブスタ豆を、3段階ローラー粉砕機を使用して、300μmの平均粒径まで焙煎粉砕した。次いで、粉砕コーヒーを、20~25℃の水で、25%コーヒー対75%水の比率でスラリー化した。
【0106】
スラリーを熱交換器に供給し、70℃まで加熱した後、スピニングコーンカラムに移動させ、アロマをスラリーからストリップした。
【0107】
次いで、スラリーを、95℃の温度でフィルタに供給し、コーヒー液を粉砕物から分離した。次いで、粉砕物を2回の更なる洗浄工程に供し、追加の固形分を除去した。
【0108】
次いで、粉砕物を、真水で、12%~17%の固形分の比率で再スラリー化した。得られたスラリーを、170℃まで加熱したプラグフロー反応器(加水分解工程)に供給し、5~10分間保持した。
【0109】
次いで、得られたスラリーを、第1の分離工程の分離及び洗浄を繰り返す第2の濾過工程を通過させる前に、100℃未満まで冷却した。
【0110】
各濾過工程から得られたコーヒー抽出物を組み合わせ、濃縮した。第1のスラリーからストリップされたアロマ化合物を、次いで混合物に添加する。次いで、完全に組み合わされた3つの成分を従来のプロセスで凍結乾燥して、可溶性コーヒー粉末を得た。
【0111】
本実施例の製品は、現行技術を使用して製造された製品よりも、より多くのボディ/口当たりを有することが見出された。
【0112】
実施例3
実施例1に記載のようにコーヒースラリーを調製した。
【0113】
スラリーを熱交換器に供給し、95℃まで加熱した後、スピニングコーンカラムに移動させ、アロマをスラリーからストリップした。
【0114】
スピニングコーンから出ると、スラリーを熱交換器に供給し、温度を145~150℃に4~5分間上昇させた。
【0115】
次いで、スラリーを、コーヒー液を粉砕物から分離するフィルタに供給した。次いで、粉砕物を140℃で2回更なる洗浄工程に供して、追加の固形分を除去した。
【0116】
次いで、スラリーを、コーヒー液を粉砕物から分離するフィルタに供給した。
次いで、粉砕物を、真水で、12%~17%の固形分の比率で再スラリー化した。得られたスラリーを、200℃まで加熱したプラグフロー反応器(加水分解工程)に供給し、7~10分間保持した。
【0117】
次いで、得られたスラリーを、第1の分離工程の分離及び洗浄を繰り返す第2の濾過工程を通過させる前に、100℃未満まで冷却した。
【0118】
各濾過工程から得られたコーヒー抽出物を組み合わせ、濃縮した。第1のスラリーからストリップされたアロマ化合物を、次いで混合物に添加する。次いで、完全に組み合わされた3つの成分を従来のプロセスで凍結乾燥して、可溶性コーヒー粉末を得た。
【0119】
本実施例の製品は、現行技術を使用して製造された製品よりも、より多くのボディ/口当たりを有することが見出された。
【0120】
実施例4
アラビカ及び/又はロブスタ豆を、3段階ローラー粉砕機を使用して、400μmの平均粒径まで焙煎粉砕した。次いで、粉砕コーヒーを、20~25℃の水で、15%コーヒー対85%水の比率でスラリー化した。
【0121】
プロセスの残りは、実施例1と同様に実施した。
【0122】
得られた製品は、実施例1の製品よりも低い濃度のオイルを有する。
【0123】
実施例5
本明細書に記載の方法によって得られた試料を、市販の可溶性コーヒー製品の範囲と比較して評価した。包括的な試験から分かるように、プロセスによって得られる製品は新しいものであり、従来のプロセスから得られた製品と容易に区別することができる。
【0124】
【0125】
実施例7、8、9、及び10は、本明細書に記載の方法に従って製造されている。実施例1~6は市販製品であり、そのうち2及び4は、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加した製品である(表中「全豆インスタント」と表記)。
【0126】
ロブスタ豆中のオイルの濃度は、アラビカ豆よりも低いことを概ね理解されたい。このことは、本発明の実施例9を含む、ロブスタ豆を含む製品のオイルの濃度が概して低いことに反映されている。試料10は、高オイル濃度で知られているダークブラジルである。
【0127】
見てとれるように、純粋なインスタントコーヒー、すなわち焙煎粉砕コーヒー添加物を添加していない試料1、3、5及び6には、低濃度のオイルが存在する。オイル濃度は、焙煎粉砕コーヒー添加物のオイル含有量に起因して、試料2及び4においてわずかに高く、試料2は、約5%の焙煎粉砕コーヒーを含有し、試料4は、より多くの焙煎粉砕コーヒーを含有する。
【0128】
試料7、8、及び10は、抽出物中により多くのオイルを放出する新しいプロセスにおける焙煎コーヒーの微砕物により、高濃度のオイルを含有する。
【0129】
見てとれるように、従来の可溶性コーヒー製品は、著しい濃度のオイルを含有しない。実際に、これらの製品の一部について観察されたオイルの濃度を、乾燥粉末の表面に後に添加して、そのアロマを改善することが推測される。
【0130】
高オイル濃度を含有する唯一の従来技術の製品は、焙煎粉砕コーヒー添加物を製品に加えた結果である。対照的に、本明細書に記載される方法は、ロブスタ豆製品であっても、高濃度のオイルを達成する。
【0131】
沈降物濃度
沈降物濃度は、30グラムの所与のコーヒー試料を70グラムの煮沸水に加え、2分間振盪することによって決定した。次いで、試料を10,000gで15分間遠心分離する。遠心分離後、上清を移し、沈降物を70グラムの熱湯で再溶解し、2分間振盪し、次いで、上記と同じ条件下で再度遠心分離する。この洗浄プロセスは、合計4回の遠心分離工程で3回繰り返される。次いで、最終洗浄から沈降物を凍結乾燥させ、次いで、沈降物の割合を30gの出発試料に関連させる(例えば、1.8gの沈降物は、6重量%の不溶性コーヒー沈降画分を表す)。
【0132】
【0133】
実施例7、8、及び9は、本明細書に記載の方法に従って製造されている。実施例1~6は市販品であり、そのうち4、5、及び6は、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加した製品である。
【0134】
見てとれるように、全ての市販のインスタントコーヒー製品は、ある程度の不溶性コーヒー沈降画分を有する。これは、抽出システムを通過してコーヒー抽出物に入るコーヒー細胞壁の小さな断片であると予想される。不溶性コーヒー沈降画分の濃度は、典型的には、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加した製品に対して増加する。
【0135】
見てとれるように、本明細書に記載の方法に従って製造された製品は全て、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加していないインスタントコーヒー製品よりも著しく高濃度の不溶性コーヒー沈降画分を有する。
【0136】
【0137】
実施例7、8、及び9は、本明細書に記載の方法に従って製造されている。実施例1~6は市販品であり、そのうち4、5、及び6は、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加した製品である。
【0138】
複数の遠心分離工程を伴う沈降物定量法は、大量の非常に微細な粒子を回収することを可能にする。
【0139】
粒径分布は、乾燥製品の1.5%の高温ブリュー、例えば、200mlの温水中で3gの乾燥製品を作製した後、Malvern 3000で測定されている。
【0140】
3つのクラスに沈降物を区別することができる:
クラス1 L’Or Intense、Kenco Rich、及びCarte Noir:
単峰性分布D10:1.5未満及びD90:15μm未満
5.5重量%未満の相対的に少量の沈降物
粒径(低D90など)が非常に小さいのは、これらの粒子が抽出カラムから抽出物へと流出したこと、又は蒸発器内に沈降したマンナンを反映していると思われる。
【0141】
クラス2:Kenco Milicano、Nescafe Gold、及びAzeraは、クラス1及び3と明らかに異なる
1~10μmのピーク1と10~100μmのピーク2の二峰性分布(2ピーク)。
【0142】
クラス3:本発明の試料
単峰性分布であるが、クラス1よりも広い分布D10:1.0超及びD90:15μm超、かつ7.5重量%超などの相対的に多量の沈降物。
【0143】
炭水化物分析
この分析は、酸加水分解後の単糖類のものである。
【0144】
【0145】
実施例7、8、及び9は、本明細書に記載の方法に従って製造されている。実施例1~6は市販品であり、そのうち4、5、及び6は、焙煎粉砕コーヒー添加物を添加した製品である。
【0146】
見てとれるように、本発明の製品の不溶性コーヒー沈降画分は、焙煎粉砕コーヒーを添加していない可溶性コーヒー製品のものとほぼ同様の濃度のアラビノースを有する。典型的には、焙煎粉砕コーヒーを添加した可溶性コーヒー製品よりも低濃度のガラクトースも有する。
【0147】
理論に束縛されるものではないが、添加製品中の高濃度のアラビノースは、抽出されていないコーヒー材料の存在の結果であると考えられる。対照的に、本発明の製品では、濃度は、本発明のプロセスによってアラビノースが可溶性コーヒー画分に既に抽出されているという事実を反映してより低い。
【0148】
感覚試験
本発明の製品の2つのプロトタイプを、現行技術の製品と、30(POI):70(現行製品)の比率で組み合わせた。次いで、これらを、100%の現行技術の製品の更なる試料を有するセットで試験した。3つの試料を、感覚専門家のパネルに与え、次いで、3番目のものとの類似性/相違点に従って製品をペアリングするように求めた。
【0149】
結果は、現行製品とのブレンドにおいて30%のみの濃度であっても、プロトタイプは、より粘性/乾燥かつ粉末状であると考えられ、全ての属性が口当たり/ボディに寄与することを示す。濃度は、トライボロジーデータと直接相関する。オイルが多ければ潤滑性が高くなり、口当たり/ボディが良くなることを意味する。効果を
図3に示す。
【0150】
崩壊温度
結晶性製品は、明確に定義された「共晶」凍結/融点を有し、この点はその崩壊温度と呼ばれる。濃縮コーヒー抽出物を凍結乾燥するとき、抽出物は、真空下で約-50℃の初期凍結温度から加熱される。これにより、水含有量を昇華させることができる。加熱速度は抽出物に依存し、それを超えると製品がメルトバックし、損なわれることになる崩壊温度が存在する。次いで、製品が暖かすぎたことを示す、崩壊又はメルトバックの徴候が見られるまで、その後のサイクルで温度及び圧力を上昇させることができる。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の製品のいくつかの試料の崩壊温度が、標準的なコーヒー製品の崩壊温度よりも高かったことを見出した。
【0151】
【0152】
85℃の水40gに溶解した10gのコーヒーを用いて試料を調製した。150rpmで25mmの撹拌棒を用いて2分間撹拌しながら完全溶解を達成した。
【0153】
これらの試料は、Discovery HR-2レオメーター、試料体積8mlを使用して、循環浴を-4℃に設定して、0.01~1000s-1の剪断速度間の単純な剪断掃引で試験した。試料を20及び65℃の温度、かつ1.5及び20重量%の濃度で試験した。
【0154】
次いで、データは、内部構造単位(SU)懸濁液の理論に基づいて、流体レオロジーに洞察を与えるQuemadaモデルに適合されている。
【0155】
濃縮システム内では、単一の粒子及び小さな凝集塊は、次第に大きな群を形成してもよく、そのサイズは、適用される剪断速度に依存する。
【0156】
したがって、粘度(η)は構造の関数である(η=f(s))。構造は、適用される剪断のレベルに依存し(増加した剪断速度は単に、個々のサブユニット内へと凝集塊のマクロ構造及びメソ構造を分散させるように作用するだけであるため)、粘度は、充填率/密集度として表すことができ、SUが密集しているほど充填率が高くなり、その結果、構造(粘度)が高くなる。
【0157】
これは、SUの密集度が構造の濃度に寄与するためである。
【数1】
式中、ηは粘度であり、Φは密集度の尺度である。
【0158】
図2は、この測定からの結果を示す。このプロットでは、重要な情報は、試験試料の初期構造を表す、y軸を有するプロットの切片によって提供される。頂部から底部までの線は、試料9、8、10、4、7、3、2、1、6、5である。
【0159】
本発明者らは、65℃(消費温度に近い)で20重量%(すなわち、濃縮試料)で、試料4(Milicano)及び7~10が著しく高いη0を有すると結論付けることができる。これは、咀嚼時を表し、口当たりを反映した、低剪断速度(1s-1)での微細構造的観点から、これらの試料は、他の試料に対してより多くの構造を有することを意味する。このことは、これらの低剪断速度では、これらの構造単位の密集度がより高い、すなわち構造単位のより良好な充填であることを意味する。
【0160】
試料のトライボロジーも観察した。「トライボロジーは、相対運動における相互作用表面の科学及び工学である。これは、摩擦、潤滑、及び摩耗の原理の研究及び適用を含む。」したがって、注目すべきパラメータは、各試料で観測された最大の摩擦を表すμmaxである。潤滑性は、本明細書において口当たりを示し、μmaxが高いほど、潤滑性が低いことを示し、それが口当たりの良さの低下を意味すると考えられる。
【0161】
65℃(消費温度)では、試料7、8及び10はμmaxの値が著しく低く、摩擦が少ないため口当たりが良いことが観察された。例外は、オイル含有量がより低い試料9(ロブスタブレンド)である。
【0162】
特に指示しない限り、本明細書における全ての割合は、重量によるものである。
【0163】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に詳細に記載したが、当業者であれば、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなくこれらに変更がなされてもよいことを理解するであろう。
【国際調査報告】