(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-02
(54)【発明の名称】入力部と出力部と音声ファイルの音量調整された音声信号を有するエフェクタとを備えた装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533249
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 DE2020000003
(87)【国際公開番号】W WO2020143872
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】102019100551.5
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521251383
【氏名又は名称】クロノトン・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KRONOTON GMBH
【住所又は居所原語表記】Voelckers Park 13,21465 Reinbek,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】クロン、グンナー
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AB08
(57)【要約】
本発明は、入力部(11、12、15、16)と、出力部(13、14、17、18)と、音声ファイル又は音源の音量調整された音声信号を有するエフェクタとを備えた装置(100)に関し、その際、音声信号はエフェクタの入力部には入力レベルを、エフェクタの出力部には出力レベルを有する。可能な限り最適なバックグラウンド音響放射を達成するために、本発明によって、音声ファイル又は音源のコンテンツに関係なく、各入力レベルが事前設定された出力レベルに対応付けられていて、その際、入力レベルが出力レベルに調整されていることが推奨される。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの入力部(11、12、15、16)と、少なくとも1つの出力部(13、14、17、18)と、音声ファイル又は音源の音量調整された音声信号を有する1つのエフェクタとを備え、前記音声信号が前記エフェクタの入力部に入力レベルを、前記エフェクタの出力部に出力レベルを有する装置(100)であって、前記音声ファイル又は音源のコンテンツに関係なく、各入力レベルが事前設定された出力レベルに対応付けられていて、その際、前記入力レベルが前記出力レベルに調整されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記エフェクタがオーディオコンプレッサ(10)であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記出力レベルが測定値によって得られた非直線的特性線(24)の値であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記出力レベルが測定値によって得られた直線的特性線の値であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記装置の入力部と前記エフェクタの間にレベラ(57)が配置されていて、これが前記入力部及び前記エフェクタと接続されていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置の出力部と前記エフェクタの間にリミッタが配置されていて、これが前記出力部及び前記エフェクタと接続されていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置の出力部とリミッタの間に立体化装置(58)が配置されていて、これが前記出力部及び前記リミッタと接続されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置の出力部と前記立体化装置の間にフィルタが配置されていて、これが前記出力部及び前記立体化装置(58)と接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置の出力部と前記フィルタの間にレベラ(60)が配置されていて、これが前記出力部及び前記フィルタと接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が箱型容器、USBメモリ又はヘッドホンとして存在することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記エフェクタがバイパス回路を有することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
センサ(63)が前記エフェクタと接続されていて、その際、前記エフェクタに、前記エフェクタを制御し、前記センサ(63)のデータ及び/又は信号を処理する制御装置が組み込まれていることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記センサ(63)が前記音量調整された音声信号を生成するエフェクタ回路(64)と接続されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記エフェクタがクロスフェーダ(65)を有し、その際、前記クロスフェーダ(65)に、前記クロスフェーダ(65)を制御し、前記センサ(63)のデータ及び/又は信号を処理する制御装置が組み込まれていることを特徴とする、請求項12又は請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の装置(100)を備え、前記装置(100)が音源(48)と音響装置(49)との間に配置されていて、これらと接続されていることを特徴とする、音源と音響装置とを備えたオーディオ配置。
【請求項16】
センサ(63)が前記エフェクタと接続されていて、その際、前記エフェクタに、前記エフェクタを制御し、前記センサ(63)のデータ及び/又は信号を処理する制御装置が組み込まれていることを特徴とする、請求項15に記載のオーディオ配置。
【請求項17】
前記センサ(63)が前記音量調整された音声信号を生成するエフェクタ回路(64)と接続されていることを特徴とする、請求項15又は請求項16に記載のオーディオ配置。
【請求項18】
前記センサ(63)がクロスフェーダ(65)と接続されていて、その際、前記クロスフェーダ(65)に、前記クロスフェーダ(65)を制御し、前記センサ(63)のデータ及び/又は信号を処理する制御装置が組み込まれていることを特徴とする、請求項15から請求項17のいずれか一項に記載のオーディオ配置。
【請求項19】
音声ファイル又は音源の音声信号の入力レベルをエフェクタにおいて出力レベルに調整する、空間における音響改善方法であって、前記音声ファイル又は前記音源のコンテンツに関係なく、前記音声信号の入力レベルが事前設定された前記音声信号の出力レベルに対応付けられ、その際、前記入力レベルが前記出力レベルに調整されることを特徴とする、空間における音響改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部に記載の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そうした装置は特許文献1より知られている。
【0003】
上記の既知の装置では、ラウドネスを音声信号のレベルと平行して最大化することによって、音声信号を可能な限り大きく鳴動させるために、エフェクタとしてオーディオコンプレッサが組み込まれる。特許文献1における目標は、既に最大限大きい音で制作された音楽トラックを、ラジオ放送局において更により大きく鳴動させることである。この目的で、音がより小さいサウンド部分をより大きく出現させるために、音声信号のピークレベルが切り取られる(いわゆるトランジェント)。この場合に聴取可能な歪みを減少させるために、特許文献1ではローパスフィルタが17kHzに設定されている。すなわち音声信号の17kHz~20kHzの周波数域がある程度遮断される。この損失を多少補償するために、15kHzの周波数帯が4dB引き上げられる。この目的で3バンドコンプレッサが使用される。中帯域においてエネルギーピークが出現すると、該コンプレッサは3つの帯域全てを一様に調整する。エネルギーピークが低域(150Hzより下)及び/又は高域(6Khzより上)の周波数帯において出現すると、3つの帯域がそれぞれ別様に圧縮される。その後、該帯域は個別に再調整され、これはしばしばラジオ聴取者には知られている聴取可能な音響のダウンポンピングを伴って現れる。
【0004】
しかし、特許文献1から知られている装置では、いわゆるバックグラウンド音響放射の問題は解決されない。
【0005】
バックグラウンド音響放射においては、聴き手に知覚されるが、聴き手に不快感を与えたり、聴き手の注意を反らしたりしないよう意図されている音響環境がバックグラウンドにおいて提供されることになる。これは、音源の音量と音の角度、及び音源同士に対する周波数放射能力、及び必要に応じて更に伝達時間が、音源の音量がより小さい場合でも均一な平面音響放射を発生させることができるように調節されることによって達成される。いわゆるラウドスピーカ‐グリッド、すなわち互いに対する間隔、厳密には前後方向及び左右方向の間隔が大抵の場合等しいラウドスピーカ配置によって、平面に音響が供給される。ラウドスピーカ/音源は大抵の場合天井に水平に位置するが、壁に垂直に、又はその両者の混合形態で設置されていてもよい。その際、非常に様々な種類と大きさのラウドスピーカ/音源が、音響放射するべき平面の種類に応じて使用される。例えば天井高10メートルで面積3000平方メートルのホームセンタには、70平方メートルで天井高3.90メートルのレストランとは別のラウドスピーカ/音源が場合によっては必要となる。音響放射するべき空間の表面も、使用するべき音響機器の選択において役割を果たす。ガラス表面で直角の場合は、例えば布地で隅が曲線状に延びる吸音表面の場合とは、その音響効果が非常に大きく異なる。したがって当業者は従来の音響解析方法を利用して適切な音響放射装置を算出して構築することができる。
【0006】
しかし、この場合は音響放射するべき多くの平面において音響放射装置が音楽聴取用に考案されていないという問題が発生する。例えばショッピングセンタ、大型スーパーマーケット、空港、駅、及び巡航客船において、音響放射装置はしばしば警戒状況において大きく明瞭に相応の緊急指示を再生し、音響放射できるようにするためにのみ考案されていて、これは音楽トラックの音量がトラック自体において、またトラック同士に対しても変動することによっても明らかになる。例えば、70年代に制作された音楽トラックの知覚されたラウドネスは、2018年に制作された音楽トラックよりはるかに音が小さい。この原因は、快適なバックグラウンドミュージックには有効でない従来のラウドネスの圧縮技術と最大化技術である。所望の全面的な音響放射も、非常に多くのラウドスピーカを互いの間隔が狭すぎる状態で使用することでは、ラウドスピーカの音が重なり合い、それによって音響集中が発生することから達成されず、この音響集中には大抵の場合伝達時間差と位相変位も含まれ、これらはどちらも音響感度に対して不利な影響を及ぼす。
【0007】
その上、再生された音響作品に応じた音量と音響密度の変動によって、音響は従来技術においては空間に満たされるよりむしろ音源付近に局限される。知覚は、音源/ラウドスピーカ付近においてのほうが、音源/ラウドスピーカの間で若干離れているより音が多量に知覚されるということである。これらの、音響強度がより弱い、いわゆる音響空隙によって、望ましくない、音響強度のより強いゾーンとより弱いゾーンに音響空間が分割される。この典型例は、一部のテーブルの客には聞こえる音響が過大で、他のテーブルの客には過小であるレストランである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第4249042号明細書
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の課題は上記の短所を回避することである。
【0010】
上記の課題は請求項1の特徴を用いて解決される。本発明の有利な実施態様は従属クレームから明らかになる。
【0011】
本発明において、音声ファイル又は音源のコンテンツに関係なく、入力レベルが設定された出力レベルに対応付けられていて、その際、入力レベルが出力レベルに調整されていることが考慮される。
【0012】
本発明の基本的考えは、音声ファイル又は音源の全コンテンツの音量、したがって全楽曲の音量も互いに均一化し、その結果、音楽が、厳密には音楽の方向性(テクノ、クラシック等)に関係なく常に同じ音量を有することである。これによって、歌の中の様々な楽曲部分も選択された音量に調整される。したがって、第一に最高品質の均一な音響放射が可能である。音量が均一化され、音響空隙が満たされる。
【0013】
したがって、本発明による装置においては、音声信号の入力レベルが例えば-24dBであるクラシック楽曲が、正に、テクノ楽曲の入力レベルが-24dBの場合に備える出力レベルを有する。
【0014】
この目的で、音量すなわち出力レベルは、エフェクタにおいて事前設定されていて、可能な限り最適なバックグラウンド音響放射が達成される経験値に基づく。その際、調整は選択可能な入力レベルによって開始し得る。
【0015】
事前設定された出力レベルは経験値に基づく。本明細書では、より長い聴取コンテキストにおける音楽的聴感覚が焦点となっている。激しい音量調整プロセスは避けられ、それはそうでなければ結果として聴取可能なレベルジャンプが発生することによる。調整プロセスにも関わらず、聴き手は調整プロセスに気づかず、音声コンテンツが聞こえるとおりに制作されたという感覚を持つように意図されている。事前設定により、音が小さいコンテンツの音を全体的により大きくするために、主として下部の音量域において静的直線領域が設けられ、その後、音量増加率が下がり続けて、主として最大レベルの0dBに至るまで、厳密には主として最大レベルの0dBを越えるレベルジャンプが発生しないように抑制されて、動的に調整され得るように、上部の音量域における非直線領域が開始される。音量調整プロセスの後にリミッタを接続することが有利である。その際、音量の均一化にも関わらず可能な限り動的な聴感覚を達成するために、主として出力レベルに対する入力レベルの処理方式が、例えばアタックとリリースといった動的に調整する遅延値によって精密化される。アタックは、入力レベルが直線性から非直線性への所定の閾値を上回った後に、ダイナミクスを制限する音量調整曲線が作動を開始する時間を調整する。リリースは、入力レベルが非直線性から直線性への所定の閾値を下回った後に、ダイナミクスを制限する音量調整曲線が作動を停止する時間を調整する。
【0016】
エフェクタにおける調整のために、すなわち入力レベルを事前設定された出力レベルに調整するために、相応のソフトウェアを備えたプロセッサを装備しておくことができ、ソフトウェアの側にはプロセッサによって実行されるアルゴリズムが含まれる。
【0017】
音響心理学的調査によって、本発明による装置が特に以下の利点と解決策を提供することが明らかになった。
【0018】
-本発明による装置は、バックグラウンドミュージックの動的変動を調節する。複数の音声コンテンツに渡っても、またそれぞれ1つの音声コンテンツ内部においても、本発明による装置は、知覚された音量は一定に維持されるが、音声コンテンツはバックグラウンドでの聴取に対して最適化されたダイナミクスにより基本的音質を保持するように、動的変動を調節する。
【0019】
-本発明による装置は、音源の放射挙動を強化するという方法で全周波数に渡って音響を安定させる。したがって音源は、聴取側でより大きい放射半径として知覚される一定の音圧を放出する。本発明による装置によって最適化されたそれぞれ1つの音源が、上記のより大きい放射半径を有することによって、第一に、平面に均一に音響放射するために組み込む音源をより少なくすることが可能である。
【0020】
-本発明による装置は、あらゆる種類の既存の音響装置を、その個々の構成要素の処理を必要とせずに最適化し、その音響をリアルタイムで最適化することによって、既存の音響装置の性能を明確に向上させる。
【0021】
-本発明による装置によって、音の大きさの異なる音源の音量が、音が過大又は過小な音源がもはや発生しないように、相互調整されることが達成される。
【0022】
-本発明による装置によって、音が小さい、また大きいパッセージ/音響コンテンツが均一な先読みコンテキストの中で捉えられることによって、その知覚された音量において均一な音響的背景が形成されるが、それ自体の中では躍動的に維持されるように、音量挙動が変更される。音響エネルギーとその方向と含まれる空間性は、音響コンテンツが互いに細かく調整され、その音響強度が全体的に強化されるように調整される。
【0023】
-本発明による装置の結果として、均一に知覚され得る音場も得られ、これは、音量がより少なく、音源の数が従来技術に比べてより僅かである場合にも隙間なく実現され得る。音の大きさが異なる音響コンテンツは自動的に互いに調和の取れたコンテキスト全体の中で捉えられる。
【0024】
-更に音声ファイルの純粋な言語コンテンツに対するテストによって、このコンテンツも本発明による装置によって音源を介して一定に再生され得ること、またこれが話者の話し方とは無関係であることが証明された。声量とマイクまでの距離が均一化され、言語又は話し声が自然性を失うことなく、音量が統一され得る。
【0025】
本発明の有利な発展形態により、エフェクタがオーディオコンプレッサであることが考慮される。オーディオコンプレッサは音響技術において制御増幅器として使用され、音声信号の音量を調整する。コンプレッサの重要なパラメータは例えばアタック、リリース、スレッショルド、ゲインである。オーディオコンプレッサによって音楽素材が圧縮される。ダイナミクスは減少する。ダイナミクスは楽曲における最小音と最大音の間の差である。コンプレッサの使用は大抵の場合、音声信号のラウドネスを明確に上昇させることを目標とする。本発明による装置におけるエフェクタとしてのオーディオコンプレッサは、同様に音量調整器であるが、これは入力レベルを事前設定された出力レベルに調整する。この目的でオーディオコンプレッサは相応のソフトウェアを備えたダイナミクスプロセッサとして形成されていて、その際、ソフトウェアの側には該プロセッサによって実行されるアルゴリズムが含まれる。
【0026】
オーディオコンプレッサを使用する利点は、これが制御曲線、すなわちいわゆる特性線を自由に形成する可能性を有することである。この特性線は全ダイナミックレンジにおける出力レベルに対する入力レベルの比率を調整し、したがってこの比率が全ダイナミックステップに渡って非常に厳密に調節され得る。この特性線の構成は、例えば直線的又は非直線的、静的又は動的であり得ることから、音声素材の全ダイナミックレンジを、求められる音響的目標に応じて非常に細かく個別に調節する可能性を提供する。特性線による出力レベルに対する入力レベルの自由な対応付け、並びに例えばアタック、リリース及びホールドという制御プロセスによる制御閾値と制御時間の微調節によって、オーディオコンプレッサは楽器の創造的可能性に非常に接近している。本発明によって、そのコンテキストにおいて一緒に聞かれる複数の音声コンテンツの音量を、音響的損失を甘受することなく互いに均一化することも可能である。音響的損失は音声コンテンツにおいて、特に、音声圧縮がラウドネスの最大化を目指す場合に発生する。音声素材のラウドネスを最大化するためには、大抵の場合トランジェント、例えばドラムの打音が含まれるピークレベルの切取りが同時に行われつつ、音声素材が極度に圧縮される必要がある。
【0027】
主として音声ファイルの信号の出力レベルは、測定値によって得られた非直線的特性線の値であり、この特性線は、主としていわゆるソフトニー特性を有することによって、聴取側における均一な音量の調和を支持する。ソフトニー特性は特定の入力レベルを出発点として、穏やかな、曲がった形状の制御曲線を開始する。しかし、本発明の枠内で測定値によって算定された直線的特性線も考えられ得る。
【0028】
事前設定によって、音が小さいコンテンツの音を全体的により大きくするために、下部の音量域において静的直線的に音量が増加し、その後、最大レベルの0dBを越えてレベルジャンプが発生してはならないという事実を顧慮して、音量増加率が下がり続けて、最大レベルの0dBに至るまで抑制されて、動的に調整され得るように、上部の音量域における非直線的特性線が開始される。
【0029】
主としてオーディオコンプレッサが使用される場合、これは非直線的特性線で作動する。この特性線は直線的特性線とは異なり、制御プロセスが開始する所定の閾値/作動点すなわちスレッショルドを有することを特徴とする。このスレッショルド以降は、ソフトニー特性を備えた非直線的領域の使用が有利である。ソフトニー特性はスレッショルドを出発点として、穏やかな、曲がった形状の制御曲線を開始し、それによって、本発明による装置の内部における音量調整が緩やかに実行される。この目的で、圧縮パラメータのアタックすなわちコンプレッサの開始時間と、リリースすなわちコンプレッサの解放時間に対する長い制御時間の使用、並びにホールドパラメータの使用も有利である。ホールドはスレッショルドを下回った後、リリースプロセスが開始されるまでの時間である。
【0030】
本発明による装置内部のエフェクタは、ゆっくりとした制御挙動を有し得ることから、若干の急速に出現するピークレベルが調整されないことを完全に排除することはできない。これを、したがって起こり得るレベルのオーバーロードを回避するために、リミッタがエフェクタの後に接続され得る。これにより、本発明の更なる有利な発展形態によって、本装置の出力部とエフェクタの間にリミッタが配置されていて、これが該出力部及びエフェクタと接続されていることが考慮される。
【0031】
該リミッタも主として制御プロセスが開始するスレッショルドを有する。この制御プロセスの開始は、例えば前段に接続されたエフェクタとしてのコンプレッサより基本的に効力が大きく、それは、該リミッタがピークレベルのみを抑制し、しかし音響は抑制せず、音響自体は更に影響を及ぼすよう意図されていることによる。コンプレッサの直線的特性線とは異なり、該リミッタの制御曲線は、-7dBにおけるハードニー特性の主な、しかし排他的ではない使用の下で曲折可能であり、その後、ヘッドルームを備えて0dBの限界値より下の水準点に至るまで導かれる。該リミッタの立上り及び立下り時間(アタック、リリース、ホールド)は、いわゆるポンピングが発生しないように、しかし、可能性のあるピークレベル発生の防止に該リミッタが効力を発揮できるように、制御時間は長すぎないように選択されていなければならない。
【0032】
本発明の実用的な変形形態によって、本装置の入力部とエフェクタの間にレベラ、すなわち入力部に隣接する音声信号の音量を処理するための更なるエフェクタが配置されていて、これが該入力部及びエフェクタと接続されていることが考慮される。レベラによって、例えば入力部に接続された音源の音量変化が激しすぎ、したがって本装置の許容される入力ピークレベルを上回った場合に、オーバーロードが発生し得ないことが達成される。
【0033】
音響事象において空間的により広いサウンドステージを生み出すために、立体化装置の使用が有利である。サウンドステージと呼ばれるのは、例えば、音声がステレオで聴取される場合に2つのラウドスピーカの間に形成される音場である。立体化装置はこのサウンドステージを該装置の音の方向に拡張することを目標とする。すなわち、音響はラウドスピーカを越えて左右に出なければならない。通常のステレオフィールドにおいてはラウドスピーカが音場の左右の外側境界である。例えば非常に小さいラウドスピーカシステムに取り組む場合、音場の拡張が有意義であるのは、それによって、小さいラウドスピーカシステムが、ラウドスピーカが互いにより広く間隔を開けて配置されているかのように鳴動することによる。また、立体化装置は音場を例えば上方に引き伸ばし、空間的に、ラウドスピーカの前に位置する聴き手の方向にも広げることができる。これはいわゆる「バーチャルサラウンド」効果と呼ばれる。立体化装置は入力チャンネルを互いに一定の比率で加算又は減算することによってサウンドステージを拡張し、その結果、より広いサウンドステージが発生する。入力チャンネルの加算と減算の設定と式、及び場合に応じてその伝達時間の相互調整は、音響事象の種類によって異なり、個別又は全体的に設定され得る。自動的音量調整の他に、これらの音響的可能性を実現するために、エフェクタにおいて主として立体化装置が後段に接続されている。すなわち特に好ましくは該出力部と音響最適化装置の間に立体化装置が配置されていて、これが該出力部及び主としてフィルタ・エフェクトユニットと接続されている。
【0034】
立体化装置の後には、フィルタの配置が有利である。これによって、音像がその周波数画像において調整され、必要に応じて、処理された音響事象の音響を強化するために、例えばホール効果及びエコー効果といった効果を備えることができる。このフィルタは手動又は自動で作動し、例えばアナログ又はデジタル技術に基づき得る。本発明の更なる実用的な変化形態によって、本装置の出力部と立体化装置の間にフィルタが配置されていて、これが該出力部及び立体化装置と接続されていることが考慮される。フィルタの後に、本発明による装置の出力レベルを調節するために、主としてもう1つのレベラが接続されていてもよい。
【0035】
本発明による装置のエフェクタを外部から制御することもできるように、本発明の更なる有利な発展形態によって、センサがエフェクタと接続されていて、その際、エフェクタには、エフェクタを制御し、センサのデータ及び/又は信号を処理する制御装置が組み込まれていることが考慮される。その際、例えば速度センサが、従来の方法で自動車の速度とその変化を把握し、従来の方法でこの場合に算定されたデータを信号に変えることができ、この信号がエフェクタの構成要素である制御装置に導かれる。エフェクタ回路に埋め込まれた制御装置のプロセッサにおいて、把握されたセンサのデータが処理される。その際、該プロセッサが把握された速度に応じてエフェクタ回路を制御する、すなわち、音声ファイル又は音源のコンテンツに関係なく、エフェクタの入力部の各入力レベルがエフェクタの出力部の事前設定された出力レベルに、厳密には把握された速度に応じて対応付けられているように、該プロセッサが相応のソフトウェアのアルゴリズムを実行するように、該プロセッサはプログラミング技術的に調節されていて、その際、入力レベルは出力レベルに調整されている。したがって例えば、音量調整された音声信号の音量はエフェクタにおいて速度の上昇と共に増加し得る。
【0036】
その上、エフェクタの外部制御のために、エフェクタがクロスフェーダを有してもよく、その際、クロスフェーダには、クロスフェーダを制御し、センサのデータ及び/又は信号を処理する制御装置が組み込まれている。この場合にもプロセッサが、クロスフェーダがミキシングユニットとしてエフェクタ内の2つのチャンネルに異なる音量を割り当て得ること、すなわちクロスフェーダが2つの音声チャンネルを互いにクロスフェードし、それによって、両チャンネルの音量すなわち信号強度が変化し得ることによって、クロスフェーダを制御する。クロスフェーダの1つの位置において、第1チャンネルの信号強度は第2チャンネルに対して100対0の比率であり得る。クロスフェーダの中央位置において両チャンネルの音量は等しい。この目的でエフェクタ回路におけるチャンネル、すなわちエフェクタによって音量調整されたステレオ信号を有するチャンネルと、主として同様にエフェクタ内に位置するバイパスチャンネルが備わっている。両チャンネルは、主としてエフェクタの入力部における入力信号に相当する、同じ入力信号を有する。その際、該プロセッサが把握された速度に応じてクロスフェーダを制御する、すなわち、速度に応じてエフェクタの入力信号の音量がエフェクタ回路内のチャンネル又は未調整のバイパスチャンネルにおいて増加又は減少するように、該プロセッサが相応のソフトウェアのアルゴリズムを実行するように、該プロセッサはプログラミング技術的に調節されている。
【0037】
本発明による装置は少なくとも1つの音源と少なくとも1つの音響装置の間に配置されていてもよい。その際、例えばアクティブラウドスピーカといったあらゆる種類の音源とあらゆる種類の音響装置が用いられ得る。接続方式は本明細書において、例えば有線接続又は無線による信号接続を対象とするか、また、アナログ方式、デジタル方式、ネットワーク経由又は他の方法で伝達されるモノラル接続、ステレオ接続又はマルチチャンネル接続を対象とするか、自由に選択可能である。
【0038】
音声ファイル又は音源の音声信号の入力レベルがエフェクタにおいて出力レベルに調整される、空間における音響改善方法は、請求項19の対象である。該方法は、音声ファイル又は音源のコンテンツに関係なく、音声信号の入力レベルに事前設定された音声信号の出力レベルが対応付けられ、その際、入力レベルが出力レベルに調整されることを特徴とする。
【0039】
本発明は図面を基に、以下により詳細に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1b】
図1aの装置のオーディオコンプレッサの特性線図である。
【
図3】本発明による音量調整された音声信号と音量が未調整の音声信号の経時変化図である。
【
図4】本発明による
図1aの装置の前面概略図である。
【
図5a】本発明による
図1aの装置の接続の変形形態の概略図である。
【
図5b】本発明による
図1aの装置の接続の変形形態の概略図である。
【
図6】本発明による
図1aの装置の更なる接続の変形形態の概略図である。
【
図7】
図1aの装置において更なるエフェクタの配置された本発明による方法の実施形態と、センサを備えた該配置のブロック図である。
【
図8】
図7による方法のリミッタの特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1aにおいて、参照符号100が付され、携帯用の箱型容器の形態で存在する、本発明による装置が示される。
【0042】
装置100は、装置100に組み込まれて、
図1aに示された実施形態においてはオーディオコンプレッサ10として存在する、エフェクタを有する。
【0043】
図1aから更に看取できるように、装置100の裏面は音声信号用の音声入力部11、12と音声出力部13、14とを有する。音声入力部11、12と音声出力部13、14は本装置の内部に延在する信号ケーブル11a、12a、13a、14aを介してオーディオコンプレッサ10と接続されている。
【0044】
図1aに示された本装置の実施形態においては、音声入力部11、12は、左右の音声チャンネル用音声入力部を形成する2つの左右非対称のRCAソケットである。音声出力部13、14は相応の左右非対称の音声出力部であり、左右非対称のRCAソケットとして存在する。
【0045】
更に、装置100の裏面には、
図1aが更に明らかにするように、左右対称の音声入力部15、16と左右対称の音声出力部17、18が設けられていて、これらは同様に‐しかし
図1aには図示されていない‐装置100の内部に延在する信号ケーブルを介して、装置100と接続されている。音声入力部と音声出力部15、16、17、18の対象となるのは、XLR/6.3mmジャック入力部とXLR/6.3mmジャック出力部である。装置100は電力供給用のソケット19を有する。電力供給は装置100では5VのUSB接続として設計されている。
【0046】
オーディオコンプレッサ10は音量調整装置の機能を果たす。この目的でオーディオコンプレッサ10において、信号ケーブル11a、12aを介してオーディオコンプレッサ10に達した音声ファイルの音声信号の入力レベルが、出力レベルに調整され、該出力レベルは信号ケーブル13a、14aを介して装置100の音声出力部13、14に達し、その際、オーディオコンプレッサ10において音声ファイルのコンテンツに関係なく、各入力レベルが事前設定された出力レベルに対応付けられていて、その際、該入力レベルは該出力レベルに調整されている。この目的でオーディオコンプレッサ10は相応のソフトウェアを備えたダイナミクスプロセッサとして形成されていて、その際、ソフトウェアの側には、該プロセッサによって実行されるアルゴリズムが含まれる。その際、オーディオコンプレッサ10における音量すなわち出力レベルは事前設定されていて、経験値に基づき、この値は一方で記録された特性線の値でもある。そうした特性線は
図1bに示される。
【0047】
図1bにおいて、非直線領域25と直線領域20で構成される特性線24が示され、その際、縦軸21には音声ファイルの音声信号の出力レベルの値、また横軸22にはその入力レベルの値が示されている。
【0048】
図1bの特性線23はオーディオコンプレッサ10によって調整されていない音声信号の特性線を示す。
【0049】
それに対して、
図1bが明らかにするように、特性線24で明らかになる出力レベルの事前設定によって、下部の音量域すなわち直線領域20においては、音が小さいコンテンツの音を全体的により大きくするために直線的な音量増加が行われ、その後、音量増加率が下がり続けて、最大レベルの0dBにほぼ接近するまで抑制されて、動的に調節され得るように、上部の音量域においては音量増加が非直線的に開始する。これによって生じた効果は
図2a~
図2cに示されている。
【0050】
全面的な音響放射を達成するために、従来技術により、
図2aに示された円錐形の放射特性を有する音源26が、音響放射するべき平面に応じた数と方式でいわゆるグリッド状に又は形状と構成無しでも設置される。この設置の目標は、音源26の音量が互いに加算されたり、あるいは意図せずに聴取可能な伝達時間差と位相変位を引き起こしたりしないように、
図2bに示された音源間の音響重複部30を発生させることでもなく、また、音の空隙/音響空隙27が生じないように、音源26を、
図2aに示されるように互いに間隔を過大に開けて配置することでもない。それにも関わらず、音源26が過少であることによって、音響放射するべき平面の全面的な音響が供給されず、又は音源26が過多であることによって、一方では音響放射するべき平面の異なる位置において音知覚の強度が異なることになり、これは均一な音知覚の理想とは矛盾する。
【0051】
それに対して、
図1aの装置100は全周波数に渡って音声信号の音響を安定させ、その結果、音源の放射挙動が強化される。したがって音源は一定の音圧を放出し、これは
図2cが明らかにするように、聴取側においてより大きい放射半径31として知覚される。装置100によって最適化された全音源26の放射半径31がより大きいことによって、第一に、平面に均一に音響放射するために組み込む音源26をより少なくすることが可能である。
【0052】
図1aに示した装置100の効果は、音声信号の推移を示す
図3によっても明らかになり、その際、振幅軸には参照符号32、時間軸には参照符号33が付されている。
【0053】
エフェクタを備えた
図1aの装置100によって、いわゆるトランジェント34が維持される。トランジェント34は、音響事象開始時の高レベルの短い打撃音である。トランジェント34は音の高さとは無関係でなければならず、しばしばこれは非調和的である。むしろその対象となるのは短く衝撃的に出現する音響部分である。トランジェント34は、重要な音響成分、すなわち音響事象の特徴的開始、例えばドラムの一打、バイオリンやコントラバスの弦の撥弦音が対象となることから、音響事象の音質を維持するために重要である。
図1aの装置100は、音が過小なトランジェント34の音量を音響事象の残部と共に増加させるが、その形状は変更しないことによって、高価値の音響結果を達成し、これは
図3に示した波形35によって明らかになり、その際、既に最適な音量を有する音声信号の領域36は処理されず、したがって変更されない。すなわち
図3の音声信号の下部の2つの推移に示されている未処理の音声信号も、装置100によって調整された、
図3の音声信号の上部の2つの推移に示されている音声信号も、未処理の音声信号が既に最適な音量を有する領域36においては同じ波形を有する。
【0054】
図4において、少なくとも1つの隣接する音声入力信号をモノラル処理又はステレオ処理に切替え可能なスイッチユニット37を有する、
図1aの装置100の前面が示される。
図4から更に看取できるように、装置100には、処理された音声入力信号に対する未処理の音声入力信号の比較をリアルタイムで可能にするために、装置100をアクティブ(バイパス‐アウト)又は非アクティブ(バイパス‐イン)に切り替えるバイパススイッチであるスイッチ38が位置する。可視的インジケータ39は、装置100がバイパス‐インモードであるか、バイパス‐アウトモードであるかを表示する。
【0055】
その上、
図4から更に明らかになるように、装置100には更なる可視的インジケータ40、41、42、43が位置し、これらは音声信号の入力レベルのあり得るオーバーロードを表示する。
図4に示された入力レベルコントローラ44は、オーバーロードが入力部に隣接していないように相応に調整される。出力レベルコントローラ45はエフェクタ10において調整された入力レベルの出力レベルを調整し、その結果、
図4には図示されていない音響装置の入力部においてオーバーロードは発生しない。有線接続による信号伝送の他に、
図4に示された装置100はBluetooth(登録商標)接続部46として形成されている無線通信も備えている。
【0056】
図5a、
図5bと
図6においては、
図1aの装置100の、他のオーディオシステム構成要素との接続の様々な可能性が示される。
図5aには、装置100の音声入力部51と接続されている音源48の配置47に属する該複数の音源48の間における接続の変形形態が示される。
図5bにおいては、複数のオーディオコンプレッサ53を備えた装置100と、音声入力部52を備えた音響装置の配置50に属する該複数の音響装置49との間における接続の変形形態が示される。
【0057】
図6から、
図1aの装置100の複数のコンプレッサ53の配置が看取でき、その音量調整された音声信号はミキシングユニット55において混合され、その後混合信号として音響装置49の少なくとも1つの音声入力部に導かれる。ミキシングユニット55は数Aの音声入力信号を数Bの音声出力信号に混合する装置である。そうしたミキシングユニットは特に、例えば楽器といった複数の音源が、ステレオ音源すなわち2つのチャンネルにダウンミックスされる音楽スタジオで広く用いられている。音源の純粋なミキシング機能の他に、最新のミキシングユニットには更に、ミキシングプロセスの間の音響結果を改善するために内部及び外部エフェクトユニットを装備する可能性が含まれる。
【0058】
図7は、少なくとも1つの
図7には示されていない音源からの、本発明による
図1の装置100に隣接する音声入力信号56の音量レベルが、音源の基本音量が異なることによって装置100の内部でオーバーロードの状態になり得ないように、レベラ57による調整を行うことを開始する、本発明の方法の実施形態を示す。レベラ57は手動又は自動で、隣接する単数又は複数の音源の単数又は複数の音量をコンプレッサ10による更なる処理のために調整し得る。音量レベルがレベラ57によって調整されると、該信号はコンプレッサ10に更に導かれ、この後段には
図7に示されていないもう1つのリミッタが接続されている。音声入力信号56が該リミッタを通過した後、音声入力信号56は立体化装置58に、またその後フィルタ&エフェクトユニット59に達する。本明細書では、音像がその周波数画像において調整され、必要に応じて、処理された音響事象の音響を強化するために、例えばホール効果及びエコー効果といった効果を備えることができる。このフィルタ&エフェクトユニット59は手動又は自動で作動し、アナログ又はデジタル技術に基づく。フィルタ&エフェクトユニット59の後に、音声入力信号56は、音声出力信号61になる前に、後段に接続された出力レベラ60を通過する。
【0059】
任意選択で、
図7が更に明らかにするように、エフェクタは例えば速度センサであるセンサ63と接続されていてもよく、該センサもまた同様に、
図7に示されている本発明の実施形態においては
図1に記載の装置100の外部に位置する。
図7に示された本発明の実施形態においては、センサ63はコンプレッサ10と接続されている。
【0060】
センサ63は従来の方法で、
図7に示されていない自動車の速度とその変化を把握し、従来の方法でこの場合に算定されたデータを信号に変え、この信号は
図7に同様に示されていない、コンプレッサ10の構成要素である制御装置に導かれる。コンプレッサ回路64の形態のエフェクタ回路に埋め込まれた制御装置のプロセッサにおいて、把握されたセンサ63のデータが処理される。その際、該プロセッサが把握された速度に応じてコンプレッサ回路64を制御する、すなわち、音声ファイル又は音源のコンテンツに関係なく、コンプレッサ10の入力部の各入力レベルがコンプレッサ10の出力部の事前設定された出力レベルに、厳密には把握された速度に応じて対応付けられているように、該プロセッサが相応のソフトウェアのアルゴリズムを実行するように、該プロセッサはプログラミング技術的に調節されていて、その際、入力レベルは出力レベルに調整されている。
図7に示された本発明の実施形態においては、音量調整された音声信号の音量は、コンプレッサ10において、センサ63によって測定された速度の上昇と共に増加する。
【0061】
代替として、更に
図7から看取できるように、センサ63はコンプレッサ10のクロスフェーダ65と接続されている。該プロセッサは、クロスフェーダ65がミキシングユニットとしてコンプレッサ10における2つのチャンネルに異なる音量を割り当てることができる、すなわち、クロスフェーダ65が2つの音声チャンネルを互いにクロスフェードすることによって、クロスフェーダ65も制御し、その結果両チャンネルの音量すなわち信号強度が変化し得る。クロスフェーダ65の1つの位置において、第1チャンネルの信号強度は第2チャンネルに対して100対0の比率であり得る。クロスフェーダ65の中央位置において両チャンネルの音量は等しい。このためにコンプレッサ回路64におけるチャンネル、すなわちコンプレッサ10によって音量調整されたステレオ信号を有するチャンネルと、同様にコンプレッサ10内に位置するバイパスチャンネル66が装備されている。両チャンネルは、該コンプレッサの入力部における入力信号に相当する、同じ入力信号を有する。その際、該プロセッサが把握された速度に応じてクロスフェーダ65を制御する、すなわち、速度に応じてコンプレッサ10の入力信号の音量がコンプレッサ回路64内のチャンネル又は未調整のバイパスチャンネル66において増加又は減少するように、該プロセッサが相応のソフトウェアのアルゴリズムを実行するように、該プロセッサはプログラミング技術的に調節されている。
【0062】
図7に基づく後段に接続されたリミッタも、
図8において示されている特性線62で作動し、その際、
図8における軸は
図1bの縦軸と横軸に相応する。
【0063】
該リミッタは制御プロセスが開始するスレッショルドパラメータ63を有する。この制御プロセスの開始は、前段に接続されたコンプレッサ10より効力が大きく、それは、該リミッタがピークレベルのみを抑制し、しかし音響は抑制せず、音響自体は更に影響を及ぼすよう意図されていることによる。特性線62の直線領域と比較すると、-7dBにおけるハードニー特性の使用の下で曲線領域64があり、該領域はヘッドルームを備えて0dBの限界値より下の水準点に至るまで更に導かれる。該リミッタの立上り時間と立下り時間(アタック、リリース、ホールド)は、ポンピングが発生しないように、しかし、可能性のあるピークレベル発生の防止に該リミッタが効力を発揮できるように、制御時間が長すぎないように選択されている。
【国際調査報告】