(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-02
(54)【発明の名称】インピーダンスディスクを使用して押出ダイに蒸着被覆するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
C23C16/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537810
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 US2019066137
(87)【国際公開番号】W WO2020139580
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブリュー,トーマス ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエハオ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ミン
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030EA03
4K030EA04
4K030EA05
4K030KA05
(57)【要約】
押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法は、蒸着チャンバ内に押出ダイを置く工程、押出ダイの面上にインピーダンスディスクを置く工程であって、インピーダンスディスクは複数の貫通孔を有し、押出ダイの面は、複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを有する工程、および1種類以上の堆積ガスを複数の貫通孔に通して、複数のスロット中に流して、複数のピンの側壁上に無機粒子を堆積させる工程を有してなる。インピーダンスディスクおよび押出ダイを横切る堆積ガスの流れに対する全インピーダンスは、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに押出ダイのダイインピーダンスを加えたものと等しいことがあり、そのディスクインピーダンスは、堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%であることがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットおよび複数の押出ダイピンを含む面を備えた押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法において、1種類以上の堆積ガスを、該押出ダイの上流の蒸着システムの蒸着チャンバ内に配置されたインピーダンスディスク内の複数の貫通孔に通して、該複数のスロット中に流して、該複数のピンの側壁上に無機粒子を堆積させる工程を有してなり、該インピーダンスディスクおよび該押出ダイを横切る該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスが、該インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに該押出ダイのダイインピーダンスを加えたものと等しく、該ディスクインピーダンスが、該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%である、方法。
【請求項2】
前記ディスクインピーダンスが、前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも50%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ディスクインピーダンスが、前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの40%から60%である、実施形態1に記載の方法。
【請求項4】
複数の供給孔および複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを含む面を備えた押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法であって、
1種類以上の堆積ガスを、前記押出ダイの上流にある蒸着チャンバ内に位置付けられたインピーダンスディスクの複数の貫通孔に通して、前記複数のスロット中に流して、前記複数のピンの側壁上に無機粒子を堆積させる工程、
を有してなり、
前記押出ダイの有効径が、前記蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%であり、
前記貫通孔が中心間横方向間隔を有し、前記供給孔が中心間横方向間隔を有し、該貫通孔の中心間横方向間隔は、該供給孔の中心間横方向間隔の10%以内にあり、
前記インピーダンスディスクおよび前記押出ダイを横切る前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスは、該インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに該押出ダイのダイインピーダンスに加えたものと等しく、該ディスクインピーダンスは、該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%である、方法。
【請求項5】
蒸着チャンバシステムにおいて、
チャンバ壁を有する蒸着チャンバと、
前記蒸着チャンバ内に配置され、前記チャンバ壁により取り囲まれた押出ダイであって、該チャンバ壁により画成された該蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%の有効径、複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを有する面、および複数の供給孔を備えた押出ダイと、
前記蒸着チャンバ内に配置され、該蒸着チャンバの注入口に対して前記押出ダイの面の上流に置かれたインピーダンスディスクであって、複数の貫通孔を含むインピーダンスディスクと、
を備え、
前記貫通孔は、1種類以上の堆積ガスの圧力を、前記インピーダンスディスクおよび前記押出ダイのピンを横切る該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%だけ減少させるように形状が決められた平均有効径を有する、蒸着チャンバシステム。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容がここに全て引用される、2018年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/785766号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、蒸着システムに使用するためのインピーダンスディスク(impedance disk)に関する。詳しくは、本開示は、ハニカム押出ダイの蒸着被覆中の堆積ガスの流れを制御するインピーダンスディスクに関する。
【背景技術】
【0003】
押出ダイは、セル状またはハニカムセラミック体などの様々な物品の成形に有用である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、蒸着過程、例えば、化学的気相成長法に使用するための、インピーダンスディスクを通るまたは通過するガスの流れに圧力降下を生じる特徴(例えば、貫通孔)を有するインピーダンスディスクに関する。このインピーダンスディスクは、インピーダンスディスクの両側の1種類以上の堆積ガスの圧力を制御することによって、押出ダイ、例えば、ハニカム押出ダイ上の均一なコーティング層の塗布を促進させることができる。そのインピーダンスディスクは、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスが押出ダイのダイインピーダンスとほぼ等しいように選択された平均有効径を有する複数の貫通孔を備えることができる。
【0005】
いくつかの実施の形態は、押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法であって、蒸着チャンバ内に押出ダイを置く工程、押出ダイの面上にインピーダンスディスクを置く工程であって、インピーダンスディスクは複数の貫通孔を有し、押出ダイの面は、複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを有する工程、および1種類以上の堆積ガスを複数の貫通孔に通して、複数のスロット中に流して、複数のピンの側壁上に無機粒子を堆積させる工程を有してなる方法に関する。インピーダンスディスクおよび押出ダイを横切る1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスが、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに押出ダイのダイインピーダンスを加えたものと等しく、そのディスクインピーダンスは、1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%である。
【0006】
いくつかの実施の形態において、前の段落の実施の形態による方法は、1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも50%であるディスクインピーダンスを含む。
【0007】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの40%から60%であるディスクインピーダンスを含む。
【0008】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、ダイインピーダンスの65%から150%であるディスクインピーダンスを含む。
【0009】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、ダイインピーダンスの90%から150%であるディスクインピーダンスを含む。
【0010】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態によるインピーダンスディスクは、1種類以上の堆積ガスの注入口と、押出ダイの面との間に配置されている。
【0011】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、平均有効径を有する貫通孔を持つインピーダンスディスクを含み、その平均有効径は、ディスクインピーダンスを、1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%に設定する。いくつかの実施の形態において、貫通孔の平均有効径は、0.007インチ(約0.18mm)から0.04インチ(約1.0mm)の範囲にある。いくつかの実施の形態において、貫通孔の平均有効径は、0.02インチ(約0.51mm)から0.03インチ(約0.76mm)の範囲にある。
【0012】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、複数の供給孔を備えた押出ダイを含み、その押出ダイのピンは、その供給孔とインピーダンスディスクとの間に配置されている。いくつかの実施の形態において、その供給孔は、0.03インチ(約0.76mm)から0.07インチ(約1.8mm)の範囲の平均有効径を有する。いくつかの実施の形態において、その貫通孔は中心間横方向間隔を有し、供給孔は中心間横方向間隔を有し、貫通孔の中心間横方向間隔は、供給孔の中心間横方向間隔の60%以内である。いくつかの実施の形態において、その貫通孔は中心間横方向間隔を有し、供給孔は中心間横方向間隔を有し、貫通孔の中心間横方向間隔は、供給孔の中心間横方向間隔の10%以内である。いくつかの実施の形態において、貫通孔の中心間横方向間隔は、0.04インチ(約1.0mm)から0.06インチ(約1.5mm)の範囲内にある。
【0013】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、押出ダイを取り囲むチャンバ壁を有する蒸着チャンバを含み、そのチャンバ壁は、チャンバ内の1種類以上の堆積ガスの流れに対して垂直に測定された最小内のり断面寸法を有し、押出ダイは、その最小内のり断面寸法の少なくとも70%と等しい有効径を有する。
【0014】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%である最大外のり寸法を有する押出ダイを含む。
【0015】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、ホウ素ドープ炭窒化チタン、炭窒化チタン、または窒化チタンの内の少なくとも1つを含む無機粒子を堆積させる工程を含む。
【0016】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、ステンレス鋼から作られている押出ダイを含む。
【0017】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、ハニカム形状を有する押出ダイを含む。
【0018】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態による方法は、化学的気相成長チャンバである堆積チャンバを含む。
【0019】
いくつかの実施の形態は、複数の供給孔および複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを含む面を備えた押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法であって、1種類以上の堆積ガスを、その押出ダイの上流にある蒸着チャンバ内に位置付けられたインピーダンスディスクの複数の貫通孔に通して、複数のスロット中に流して、複数のピンの側壁上に無機材料を堆積させる工程を有してなり、押出ダイの有効径が、蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%であり、貫通孔が中心間横方向間隔を有し、供給孔が中心間横方向間隔を有し、貫通孔の中心間横方向間隔は、供給孔の中心間横方向間隔の10%以内にあり、インピーダンスディスクおよび押出ダイを横切る1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスは、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに押出ダイのダイインピーダンスに加えたものと等しく、ディスクインピーダンスは、1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%である、方法に関する。
【0020】
いくつかの実施の形態において、前の段落の実施の形態による方法は、ハニカム形状を有する押出ダイを含む。
【0021】
いくつかの実施の形態は、蒸着システムにおいて、チャンバ壁を有する蒸着チャンバと、蒸着チャンバ内に配置され、チャンバ壁により取り囲まれた押出ダイであって、チャンバ壁の最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%の有効径、複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを有する面、および複数の供給孔を備えた押出ダイとを備えた、蒸着システムに関する。その蒸着システムは、蒸着チャンバ内に配置され、押出ダイの面の上に置かれたインピーダンスディスクをさらに備え、そのインピーダンスディスクは複数の貫通孔を含み、その貫通孔は、1種類以上の堆積ガスの圧力を、インピーダンスディスクおよび押出ダイのピンを横切る1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%だけ減少させるように形状が決められた平均有効径を有する。
【0022】
いくつかの実施の形態において、前の段落の実施の形態による押出ダイは、ハニカム形状を有する。
【0023】
いくつかの実施の形態において、2つの前の段落のいずれかの実施の形態による押出ダイは、中心間横方向間隔を有する貫通孔、および中心間横方向間隔を有する供給孔を含み、貫通孔の中心間横方向間隔は、供給孔の中心間横方向間隔の10%以内にある。
【0024】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態によるシステムは、ダイインピーダンスの65%から150%であるディスクインピーダンスを含む。
【0025】
いくつかの実施の形態において、前の段落のいずれかの実施の形態によるシステムは、ダイインピーダンスの90%から150%であるディスクインピーダンスを含む。
【0026】
ここに含まれる添付図面は、明細書の一部を形成し、本開示の実施の形態を示す。これらの図面は、説明と共に、開示された実施の形態の原理を説明し、当業者がその開示された実施の形態を構成し、使用できるようにする働きをする。これらの図面は、制限ではなく、説明に役立つことを意図するものである。本開示は、概して、これらの実施の形態との関連で記載されているが、開示の範囲をこれらの特定の実施の形態に限定する意図はないことを理解すべきである。図面において、同様の参照番号は、同一のまたは機能的に類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】いくつかの実施の形態によるインピーダンスディスクの説明図
【
図2】いくつかの実施の形態による押出ダイの一部を示す説明図
【
図3】押出ダイのいくつかのピンが、他の特徴を明確にするために示されていない、いくつかの実施の形態による押出ダイの上面図
【
図4】いくつかの実施の形態による押出ダイおよびインピーダンスディスクの説明図
【
図5】いくつかの実施の形態による押出ダイ被覆のための蒸着システムの概略図
【
図6】蒸着チャンバ内の堆積ガスの圧力の変化を示すグラフ
【
図7】様々なインピーダンスディスクに関する堆積ガスの圧力を示すグラフ
【
図8】様々なインピーダンスディスクに関する堆積ガスの圧力の変化を示すグラフ
【
図9】例示のインピーダンスディスクを有する蒸着チャンバ内で被覆された押出ダイ、およびいくつかの実施の形態によるインピーダンスディスクを有する蒸着チャンバ内で被覆された押出ダイ上のコーティング厚のばらつきを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の例は、本開示を限定するものではなく、説明するものである。この分野で通常遭遇し、当業者に明白であろう様々な条件およびパラメータの他の適切な改変および適用は、本開示の精神と範囲に含まれる。
【0029】
例えば、ハニカム押出ダイとしての押出ダイの製造は、ダイの耐用期間を延ばすように働く摩耗保護のための被覆工程を含むことがある。耐摩耗性コーティングは、ハニカム押出ダイの隣接するピンの間のスロット幅など、ダイの特徴の寸法(およびそれゆえ、ダイにより形成される押出物の寸法精度)を制御し、維持するのに役立つこともある。
【0030】
蒸着被覆過程、例えば、化学的気相成長(CVD)被覆過程を使用して、金属基体、例えば、押出ダイ上に無機保護層を形成することができる。ここに記載されるように、押出ダイの摩耗を減少し、寸法精度を維持し、耐用期間を延ばすために、押出ダイの表面(例えば、供給孔またはスロットを画成する表面)上に無機粒子が堆積される。ハニカム形状を有する物品を製造するために作られた押出ダイにおいて、蒸着を使用して形成されたコーティング層は、押出ダイのスロットのサイズまたは寸法(幅)を減少させる、例えば、未被覆(「切断されたまま」)よりも薄いスロット寸法を達成する働きをすることもある。
【0031】
無機粒子は、工具(例えば、押出ダイ)の耐摩耗性を改善するために堆積させることができる。それらの粒子は、工具の表面上に耐摩耗性コーティングを形成するために堆積させることができる。ここに用いられているように、堆積過程中に堆積される「粒子」は、堆積チャンバ内にバルクで形成する、または堆積チャンバ内の表面上に直接形成する(例えば、目標基体上に直接)、またはその組合せで形成することができる。バルクで堆積される粒子は、蒸気粒子間の反応により堆積チャンバ内に形成され、形成後、これらの粒子は表面上に堆積する。表面上に直接形成される粒子は、堆積チャンバ内の表面上の蒸気粒子の反応により形成される。粒子を表面上に堆積させて、その表面上に材料の連続または不連続の膜、層、またはコーティングを形成することができる。
【0032】
ハニカム押出ダイのための1つ以上の所望のスロット幅を得るために、インピーダンスディスクを使用することができる。インピーダンスディスクは、特定の有効径を有する複数の貫通孔を有する有孔ディスクである。ここに開示されたいくつかの実施の形態において、インピーダンスディスクは、等しいサイズの貫通孔を有する。いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスクは、薄いステンレス鋼製ディスク、例えば、薄い410系ステンレス鋼板から製造されているが、他の材料、特に、選択された堆積過程の条件(例えば、高温など)に耐えることのできるものが可能である。
【0033】
ある場合には、「ニュートラル」インピーダンスディスクが使用される。ニュートラルインピーダンスディスクは、それと共に使用されるように設計された押出ダイの有効径とほぼ同じ有効径を有するインピーダンスディスクである。いくつかの実施の形態において、押出ダイの有効径より大きいかまたは小さい有効径を有するインピーダンスディスクが使用される。「有効径」という用語は、様々な構成部材または特徴(インピーダンスディスク、押出ダイ、貫通孔など)のサイズに関してここに使用されるが、この用語は、対応する構成部材または特徴が円形の形状を有することを要求すると解釈されるべきではないことを認識すべきである。それよりむしろ、これらの構成部材および特徴は、非円形の形状をとることができ、そのような実施の形態において、「有効径」という用語は、その形状の最大外のり断面寸法を称することが意図されている。例えば、正方形の断面形状を有する押出ダイ、インピーダンスディスク、または貫通孔の「有効径」は、その正方形の面に亘る対角線寸法であろう。
【0034】
ここに開示されたようなインピーダンスディスクは、蒸着チャンバ内の堆積ガス圧を制御し、それゆえ、蒸着チャンバ内で押出ダイ上に被覆される無機材料のコーティング厚を制御するために使用することができる。望ましくない堆積ガス圧およびコーティング厚は、例えば、黒鉛工具および押出ダイなどの特定の材料の間の相互作用、蒸着チャンバ壁と押出ダイとの間の相互作用、または蒸着チャンバ内の温度変化(例えば、押出ダイ自体の内部の望ましくない温度変化)により、生じ得る。
【0035】
ここに記載されたインピーダンスディスクは、押出ダイのピンの側壁上、すなわち、押出ピンにより画成された押出ダイのスロット内の側壁上の無機粒子のコーティング厚を制御するために使用することができる。それゆえ、ここに記載されたインピーダンスディスクは、被覆後に1つ以上の所望のスロットを達成するために利用することができる。この制御は、押出ダイを流れる1種類以上の堆積ガスの濃度(すなわち、種の濃度)に影響を与えるインピーダンスディスク中の貫通孔のサイズのためである。ある場合には、種の濃度の関係は、押出ダイのピンの側壁上に所望の厚さおよび厚さの均一性を有するコーティングを提供するために、例えば、様々なインピーダンスディスクの孔寸法のモデル化および/または実験の実施により、作成することができる。ある場合には、最小孔寸法は、異なるダイの設計について、予測被覆速度に基づいて経験的に選択することができる。そのような経験的関係は、ダイの外のり有効径が蒸着チャンバの関連する内のり寸法(例えば、有効径)(例えば、「最小内のり断面寸法」とここでは称され、下記に定義される)より著しく小さい場合、押出ダイのタイプには関係ないことが実証されている。
【0036】
例えば、先に記載された経験的種の濃度の技法は、蒸着チャンバの寸法と比べて比較的小さい外のりダイ有効径を有する押出ダイ、例えば、約18~20インチ(約45.7~50.8cm)の有効径を有する堆積チャンバ内の9.25インチ(約23.5cm)以下の外のり有効径を有するダイについて、蒸着被覆過程に適応することができる。しかしながら、例えば、より大きい有効径のダイは、同様の有効径を有する堆積チャンバ内で被覆されたときに(例えば、18~20インチ(約45.7~50.8cm)の有効径を有する堆積チャンバ内の18インチ(約45.7cm)の有効径のダイ)、不均一なコーティング厚パターンを被ることがあり、これは、望ましくない押出ダイのスロット幅をもたらし得る。これにより、これらのより大きい有効径のダイから押し出される製品の性能が低下してしまう。より大きい有効径のダイ(例えば、約18~20インチ(約45.7~50.8cm)の有効径を有する堆積チャンバ内の18インチ(約45.7cm)の有効径のダイ)は、蒸着チャンバの内のりチャンバ寸法に非常に近いであろうから、その蒸着チャンバの壁は、コーティング厚パターンに強い影響を有し得る。
【0037】
被覆されている押出ダイの外縁に著しく近い蒸着チャンバの壁からの効果(ここでは、「境界層効果」と称される)は、押出ダイ上に著しいコーティング厚の変動を生じ得る。一般に、理論で束縛する意図なく、境界層効果は、蒸着チャンバ内の1種類以上の堆積ガスの濃度の関数として制御されている被覆材料の堆積とは対照的に、基体上に堆積される被覆材料の量を制御する蒸着チャンバの壁に近接した領域に1種類以上の堆積ガスの流れ場をもたらす。言い換えると、重ねて、理論で束縛する意図はないが、蒸着チャンバの壁に近い境界層効果は、押出ダイを通る蒸着ガスの所望の均一な流れに影響するであろう。これにより、無機粒子の堆積によって形成されるコーティングの厚さの均一性が著しく低下するので、このことは望ましくない。すなわち、境界層効果により生じるそのような不均一流れは、望ましくないコーティング厚の変動をもたらし、したがって、押出ダイについて望ましくない被覆されたスロット幅の変動をもたらし得る。
【0038】
個々のダイの構成部材の、そして多数の異なるダイの間の寸法変動を減少させることは、そのダイまたは一連の多数のダイから寸法が一貫した物品(例えば、セラミックハニカム構造)を製造するための1つの検討事項である。既存の蒸着設計および方法は、押出ダイ上に所望の均一なコーティング厚を確実に生じるわけではないであろう。具体的に、その蒸着チャンバの内のり寸法とサイズが近いダイについて、境界層効果は、堆積ガスの流れプロファイル(すなわち、蒸着チャンバ内の異なる位置でのガスの流れ場および/またはガスの流量)を決定づけ、個々の押出ダイについて、および異なるダイ間で、不均一な中心から外側のコーティング厚およびそれゆえ、不均一な押出ダイのスロット幅をもたらし得る。有利には、ここに述べられたようなインピーダンスディスクは、ガスがダイに入る前に境界層ガス流効果を減少または緩和するために、全システムインピーダンスの少なくとも閾値割合であるインピーダンスを与える。このようにして、ここに開示されているシステムおよび方法は、ダイの外のり寸法(例えば、有効径)が蒸着チャンバの内のり寸法(例えば、有効径)に近づく状況においてさえ、ダイの全幅に亘りより均一なコーティング厚を生じるために使用することができる。
【0039】
ここに述べられたような方法、システム、およびインピーダンスディスクは、コーティング厚における上述した望ましくない変動を軽減することができる。ここに述べられたインピーダンスディスクは、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスが、蒸着チャンバ内の押出ダイのダイインピーダンスと同じか近いように、ガスの流れ場を制御するように設計されている。ダイインピーダンスに近いディスクインピーダンスを作ることによって、押出ダイを通る1種類以上の堆積ガスの実質的に均一な流れを達成することができる。1つの実施の形態において、ディスクインピーダンスおよびダイインピーダンスの合計として定義される全インピーダンスを有する堆積システムについて、ディスクインピーダンスは、そのシステムの全インピーダンスの少なくとも40%である。
【0040】
ここに述べられたインピーダンスディスクおよびディスク設計の方法論は、ガスの流れ場の不規則(例えば、上述したような境界層効果により生じる)を修正し、克服するために、インピーダンスディスクのインピーダンスを利用する。ここに述べられたインピーダンスディスクおよび方法は、上述したようなコーティング厚の分布(または変動)の問題に対処する。詳しくは、ここに述べられたインピーダンスディスクおよび方法は、蒸着チャンバの内のりチャンバ寸法に近い有効径を有する押出ダイについて、上述したようなコーティング厚の分布の問題に対処する。ここに述べられたインピーダンスディスクおよび方法を使用して、境界層ガス流効果を緩和(減少)し、それによって、ガスが押出ダイのスロットに入る前に、1種類以上の堆積ガスの流れ場を修正することができる。いくつかの実施の形態において、ディスクインピーダンスは、全システムインピーダンスの特定の割合以上である。
【0041】
ここに用いられているように、「全システムインピーダンス」または「全インピーダンス」(「圧力の全変化」に相当する)は、システムの関連する構成部材の気流インピーダンスの合計を意味する。例えば、システムが押出ダイおよびインピーダンスディスクを有する場合、全システムインピーダンスは、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスおよび押出ダイのダイインピーダンスの合計である。システムの全インピーダンスは、そのシステムを通る圧力の全変化(例えば、ディスクインピーダンスによるインピーダンスディスクを横切る第1の圧力降下およびダイインピーダンスによる押出ダイを横切る第2の圧力降下)に相当する。したがって、ここに用いられているように、「ディスクインピーダンス」は、ガスがインピーダンスディスクの貫通孔を流れるときに生じる、1種類以上の堆積ガスの圧力の降下をもたらすインピーダンスディスクのインピーダンスを意味する。したがって、ここに用いられているように、「ダイインピーダンス」は、ガスが押出ダイの開口(例えば、供給孔およびスロット)を流れるときに生じる、1種類以上の堆積ガスの圧力の降下をもたらす押出ダイのインピーダンスを意味する。
【0042】
堆積ガスは、(i)ここに述べられた無機粒子またはコーティングの1種類以上の元素の原料ガス、および(ii)原料ガスの搬送ガスを含む。例示の原料ガスとしては、以下に限られないが、四塩化チタン(TiCl4)、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(TDMAT)、ボラン、ジボラン、三塩化ホウ素、トリメチルアミンボラン((CH3)3NBH3)(TMAB)、またはその組合せが挙げられる。例示の搬送ガスは水素(H2)である。ここに述べられた無機粒子は、ホウ素ドープ炭窒化チタン、炭窒化チタン、または窒化チタンの内の少なくとも1つを含む。
【0043】
実験の実施に加え、またはその代わりに、計算流体力学モデル化を利用して、堆積ガスの流れおよび圧力を制御して、所望のコーティング厚および/または所望のスロット幅を達成するために必要なインピーダンスディスクの孔の有効径を規定することができる。ここに記載された技法は、ダイインピーダンスが全システムインピーダンスに影響を与えるので、ダイ依存性である。これにより、ここに記載された技法を、様々なサイズの押出ダイおよび蒸着チャンバに適用することができる。ここに述べられたインピーダンスディスクおよび方法論の試験は、従来の技法と比較して、コーティング厚の変動、およびしたがって、スロット幅の変動の著しい改善(すなわち、ダイの幅に亘るコーティング厚の変動の低下)を示す。
【0044】
図1は、いくつかの実施の形態によるインピーダンスディスク100を示す。インピーダンスディスク100は、有孔中央部分102および中央部分102のエッジ106の周りに配置された中実縁部分104を備える。中央部分102内には、中央部分102の拡大部分に詳しく示された、複数の貫通孔112がある。いくつかの実施の形態において、全ての貫通孔112は同じ有効径113を有する。いくつかの実施の形態において、貫通孔112は、様々な有効径113を有する。貫通孔112の有効径は、ここに記載されたような所望のディスクインピーダンスを生じるように選択することができる。
【0045】
いくつかの実施の形態において、貫通孔112の有効径は、部分的範囲を含む、0.007インチ(約0.18mm)から0.04インチ(約1.0mm)の範囲にある。多くの貫通孔112があるので、有効径の値は、ここでは、「平均有効径」、すなわち、全ての貫通孔112の有効径の平均値として与えられることがある。例えば、いくつかの実施の形態において、貫通孔の平均有効径は、0.007インチ(約0.18mm)、0.01インチ(約0.25mm)、0.02インチ(約0.51mm)、0.03インチ(約0.76mm)、または0.04インチ(約1.0mm)、もしくは端点としてこれらの値の内の任意の2つを有する範囲内にある。いくつかの実施の形態において、貫通孔112の平均有効径は、インピーダンスディスク100のディスクインピーダンスが、蒸着過程中に押出ダイ上に無機粒子を被覆するために使用される1種類以上の堆積ガスの流れに対するシステムの全インピーダンスの少なくとも40%であるように選択される。いくつかの実施の形態において、貫通孔112の平均有効径は、そのディスクインピーダンスが、蒸着過程中に押出ダイ上に無機粒子を被覆するために使用される1種類以上の堆積ガスの流れに対するシステムの全インピーダンスの少なくとも50%であるように選択される。いくつかの実施の形態において、貫通孔112の平均有効径は、そのディスクインピーダンスが、蒸着過程中に押出ダイ上に無機粒子を被覆するために使用される1種類以上の堆積ガスの流れに対するシステムの全インピーダンスの少なくとも60%であるように選択される。
【0046】
いくつかの実施の形態において、貫通孔112の有効径にかかわらず、各貫通孔112の間の中心間横方向間隔114は、中央部分102において一定である。ここに用いられているように、「中心間横方向間隔」は、あるパターンで配列された複数の孔の間の間隔を記載する用語である。「中心間横方向間隔」は、ある孔の幾何学的中心と、孔のパターンでその孔の最も近い孔の幾何学的中心との間を真っ直ぐに結んだ距離を意味する。孔パターンの中心間横方向間隔を測定する目的のために、そのパターンのエッジ(例えば、中央部分102のエッジ106)の2つの横方向間隔内の貫通孔112は、全ての側で隣接した孔により取り囲まれているわけではないので、排除される。
【0047】
いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、インピーダンスディスク100をそれと共に使用するように設計された押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔(例えば、
図2~3の押出ダイ200の供給孔206の中心間横方向間隔250)に相当する。いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔の60%以内にある。いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔の50%以内にある。いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔の40%以内にある。いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔の30%以内にある。いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔の20%以内にある。いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、押出ダイの供給孔の中心間横方向間隔の10%以内にある。
【0048】
いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、部分的範囲を含む、0.04インチ(約1.0mm)から0.06インチ(約1.5mm)の範囲内にある。例えば、いくつかの実施の形態において、中心間横方向間隔114は、0.04インチ(約1.0mm)、0.045インチ(約1.1mm)、0.05インチ(約1.3mm)、0.055インチ(約1.4mm)、または0.06インチ(約1.5mm)、もしくは端点としてこれらの値の内の任意の2つを有する範囲内にある。
【0049】
図2~3は、例示の押出ダイ200を示す。押出ダイ200は、複数の供給孔206および一連のピン208が設けられたダイ本体204を備える。ピンの外面(側壁)210は、十字模様のまたは交差した一連の吐出スロット214を画成する。ピン208の表面210は、無機粒子の堆積前に、被覆されていないことがあり得る、または追加の有機粒子の堆積前に堆積された既存のコーティングを備え得る。押出ダイ200の吐出面216は、ピン208の端面212およびピン208の側面210の間に形成された吐出スロット214の対応する開口により形成される。図示された実施の形態において、押出ダイ200は、ハニカム押出ダイである。いくつかの実施の形態において、供給孔206およびスロット214は、スロット214が重複領域220で供給孔206と重複するように、それぞれの深さまで切断することができる。重複領域220は、押出過程中に供給孔206からスロット214を通るバッチ材料の流れを促進させるであろう。
【0050】
図3(ピン208のいくつかが、供給孔206の特徴の明瞭さを増すために、示されていない)に示されるように、供給孔206は、各供給孔206の有効径252により画成された平均有効径を有する。供給孔206は、中心間横方向間隔250だけ間隔が空けられており、これは、インピーダンスディスク100の貫通孔112の中心間横方向間隔114の距離に対応し得る。いくつかの実施の形態において、供給孔206は、部分的範囲を含む、0.03インチ(約0.76mm)から0.07インチ(約1.8mm)の範囲にある平均有効径を有する。例えば、いくつかの実施の形態において、供給孔206は、0.03インチ(約0.76mm)、0.035インチ(約0.89mm)、0.039インチ(約0.99mm)、0.04インチ(約1.0mm)、0.045インチ(約1.1mm)、0.05インチ(約1.3mm)、0.055インチ(約1.4mm)、0.06インチ(約1.5mm)、0.065インチ(約1.7mm)、または0.07インチ(約1.8mm)の平均有効径、もしくは端点としてこれらの値の内の任意の2つを有する範囲内にある平均有効径を有する。
【0051】
いくつかの実施の形態において、ピン208は、押出ダイ200の単体要素として、ダイ本体204の一部、または金属対金属結合によりダイ本体204と接続された複合ダイ吐出部分のいずれかとして、製造される。単一体として形成されない場合、様々なダイ要素の任意の一緒の結合は、当該技術分野で公知のまたは発見されたどの方法で行われても差し支えない。積層押出ダイの組立てに使用するために、例えば、半田付け、蝋付け、および拡散接合技術が公知である。単体ダイ構造の使用は、支持層に対するピンの結合が難しいであろう(例えば、比較的小さいサイズのピンに関するように)、ダイの製造に特にうまく適している。
【0052】
押出ダイ200は、当該技術分野で公知のまたは発見されたどの材料から製造されても差し支えない。主要なダイ要素の製造に適した材料の例としては、工具鋼、いわゆる高速度鋼、マルテンサイト系鋼、析出硬化鋼、およびマルテンサイト系ステレンス鋼などのステンレス鋼が挙げられる。例示のマルテンサイト系ステンレス鋼としては、以下に限られないが、422ステンレス鋼および450ステンレス鋼などの400系ステンレス鋼、および17-4PHステンレス鋼などの析出硬化ステンレス鋼が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施の形態において、押出ダイ200を製造する方法は、少なくとも一部には、組み立てるべきダイ本体204および吐出スロット214に選択されたデザインに基づいて、選択または決定される。例えば、
図2~3に示された押出ダイ200の構造について、形成された供給孔延長部についての放電加工(EDM)と、スロットとピンの形状を形成するためのワイヤEDMスロット法との組合せを使用することができる。
【0054】
図4は、いくつかの実施の形態による押出ダイおよびニュートラルインピーダンスディスクアセンブリ400を示す。アセンブリ400は、有孔中央部分412および中実縁部分414を有するインピーダンスディスク410と、押出ダイ420とを備える。押出ダイ420は、押出ダイ200と同じであっても、似ていても差し支えない。インピーダンスディスク410は、インピーダンスディスク100と同じであっても、似ていても(特徴および/または構成部材の任意の組合せを含む)差し支えない。
【0055】
インピーダンスディスク410は厚さ416を有する。いくつかの実施の形態において、厚さ416は、部分的範囲を含む、0.005インチ(約0.13mm)から0.05インチ(約1.3mm)の範囲にある。例えば、いくつかの実施の形態において、厚さ416は、0.005インチ(約0.13mm)、0.006インチ(約0.15mm)、0.007インチ(約0.18mm)、0.008インチ(約0.20mm)、0.009インチ(約0.22mm)、0.01インチ(0.25mm)、0.02インチ(約0.51mm)、0.03インチ(約0.76mm)、0.04インチ(約1.0mm)、0.05インチ(約1.3mm)、または端点としてこれらの値の内の任意の2つの間の値を有する範囲内にある。インピーダンスディスク410は、外縁442に関して測定された有効径440を有する。
【0056】
押出ダイ420は、外縁432に関して測定された有効径430を有する。いくつかの実施の形態において、有効径430は、部分的範囲を含む、8インチ(約20cm)から20インチ(約51cm)の範囲内にある。例えば、有効径430は、8インチ(約20cm)、9インチ(約22cm)、10インチ(約25cm)、11インチ(約28cm)、12インチ(約30cm)、13インチ(約33cm)、14インチ(約36cm)、15インチ(約38cm)、16インチ(約41cm)、17インチ(約43cm)、18インチ(約46cm)、19インチ(約48cm)、または20インチ(約51cm)、もしくは端点としてこれらの値の内の任意の2つの間の値を有する範囲内の有効径であり得る。いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク410の有効径440は、押出ダイ420の有効径430と同じである(すなわち、インピーダンスディスク410はニュートラルインピーダンスディスクであり得る)。
【0057】
図5は、いくつかの実施の形態による押出ダイ被覆のための蒸着システム500の概略図を示す。システム500は、ガス注入口502およびガス排出口506を有する蒸着チャンバ570を備える。チャンバ570内には、ダイホルダ512により保持された押出ダイ510、およびインピーダンスディスク560が配置されている。インピーダンスディスク560は、チャンバ570内で、押出ダイ510の面上に位置付けることができる。インピーダンスディスク560は、複数の貫通孔562を有し、インピーダンスディスク100またはインピーダンスディスク410と同じであっても、似ていても差し支えない。押出ダイ510は、押出ダイ200と同じであっても、似ていても(例えば、特徴または構成部材の任意の組合せを含む)差し支えなく、その中を延在する複数の開口(例えば、複数の押出ダイピンにより画成されたスロット、供給孔など)を有する。
【0058】
システム500は、化学的気相成長システムまたは物理的気相成長システムであり得る。いくつかの実施の形態において、蒸着システム500は、回転式t(rotary-t)504を備える。使用中、1種類以上の堆積ガス(例えば、原料ガスまたは搬送ガス)を、ガス注入口502から、回転式t504を通して、チャンバ570の内部に流すことができる。実際に、1種類以上の堆積ガスが、ガス注入口502から、インピーダンスディスク560内の貫通孔562を通して、押出ダイ510内の開口中に流されて、開口を画成する側壁または側面(例えば、供給孔を画成する壁、またはスロットを画成するピン)上に無機粒子を堆積させるように、インピーダンスディスク560は、ガス注入口502と押出ダイ510の面との間に配置されている。押出ダイ510が、供給孔(例えば、供給孔206と同種の)およびスロット(例えば、スロット214と同種の)の両方を有するダイ200と似ている実施の形態において、ダイ510は、1種類以上の堆積ガスが、押出ダイ510中のスロットを最初に流れた後、押出ダイ510の供給孔を流れるようにチャンバ570内に向けることができる。
【0059】
1種類以上の堆積ガスがチャンバ570に入るときに、そのガスは、第1のガス圧520を有する。しかしながら、ガスがインピーダンスディスク560を流れるときに、そのガス圧は、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスのために、第2のガス圧530に低下する。同様に、ガスが押出ダイ510を通って移動するときに、ガス圧は、押出ダイ510のダイインピーダンスのために、第3のガス圧540に低下する。そのようにして、インピーダンスディスク560および押出ダイ510を通るチャンバ570内のガス圧の全変化は、第1のガス圧520から第3のガス圧540を引いたものに等しい。いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスは、チャンバ570内の構成部材(例えば、インピーダンスディスクと押出ダイ)の全流れインピーダンスの少なくとも40%である。いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスは、チャンバ570内の全流れインピーダンスの少なくとも50%である。いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスは、部分的範囲を含む、チャンバ570内の流れに対する全インピーダンス(すなわち、全システムインピーダンス)の40%から60%の範囲内である。例えば、いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスは、チャンバ570内の流れに対する全インピーダンスの40%、45%、50%、55%、または60%、もしくは端点としてこれらの値の内の任意の2つを有する範囲内にある。
【0060】
いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスは、部分的範囲を含む、押出ダイ510のダイインピーダンスの65%から150%の範囲内にある。例えば、いくつかの実施の形態において、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスは、押出ダイ510のダイインピーダンスの65%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、または150%、もしくは端点としてこれらの値の任意の2つを有する範囲内にある。詳しくは、ここに述べたように、ディスクインピーダンスをダイインピーダンスとほぼ等しいかまたはそれより大きく設定すると、堆積チャンバを通るガスの流れ場に都合よく影響を与えることができ(例えば、ダイインピーダンスに対して、好ましくは80%、90%、またはそれより大きいディスクインピーダンス)、それによって、特に、堆積チャンバの有効径に近い有効径を有するダイについて(例えば、堆積チャンバの有効径の70%以内、および/またはダイの外周と堆積チャンバの内壁との間の約1~2インチ(約2.5~5.1cm)未満の間隔で)、押出ダイの特徴に亘る堆積材料のより均一な分布(すなわち、低下したコーティング厚の変動)が可能になる。
【0061】
図5に示されるように、押出ダイ510の有効径514(
図4に有効径430としても示されている)は、ほぼ、チャンバ570の最小内のり断面寸法550と同じくらい大きい。ここに用いられているように、「最小内のり断面寸法」は、チャンバ内であるが、堆積目標(例えば、押出ダイ)を収容することを目的とするチャンバの領域内の堆積ガスの意図する流れに対して垂直に測定された蒸着チャンバの壁(例えば、
図5の壁572)の最小の内のり断面寸法である。ここでの目的のために、蒸着チャンバの最小内のり断面寸法は、一般に、押出ダイがチャンバ内に配置されたときに、押出ダイの外縁とチャンバの内壁との間に最小の間隙または空間をもたらす、チャンバの寸法に相当する。例えば、円形の断面形状を有するチャンバ壁について、最小内のり断面寸法は、その円形の有効径である。別の例として、正方形の断面形状を有するチャンバ壁について、最小内のり断面寸法は、その正方形の長さまたは幅である。
【0062】
先に述べたように、境界層効果は、特に、ダイ510のサイズ(例えば、有効径)がチャンバ570の最小内のり断面寸法550に近づいた場合、チャンバ570内で行われる堆積過程の結果に影響することがある(例えば、施されるコーティングの厚さの変動に影響することがある)。例えば、本出願の発明者等は、押出ダイの外縁が、内壁から数インチ未満(例えば、3インチ(約7.6cm)未満)に位置付けられている実施の形態、特に、押出ダイの外縁が、堆積チャンバの内壁から1.5インチ(約3.8cm)未満、または特に、1インチ(約2.5cm)未満に位置付けられている実施の形態において、境界層効果が存在するであろうことを確認した。
【0063】
いくつかの実施の形態において、ダイ510の有効径514は、チャンバ570の最小内のり断面寸法550の少なくとも70%である。いくつかの実施の形態において、ダイ510の有効径514は、チャンバ570の最小内のり断面寸法550の少なくとも75%である。いくつかの実施の形態において、ダイの有効径514は、チャンバ570の最小内のり断面寸法550の少なくとも80%である。いくつかの実施の形態において、ダイ510の有効径514は、チャンバ570の最小内のり断面寸法550の少なくとも85%である。いくつかの実施の形態において、ダイの有効径514は、チャンバ570の最小内のり断面寸法550の少なくとも90%である。いくつかの実施の形態において、ダイの有効径514は、チャンバ570の最小内のり断面寸法550の少なくとも95%である。ここに述べたように、有効径514がチャンバ570の最小内のり断面寸法550とほぼ同じである場合、インピーダンスディスク560のディスクインピーダンスが、ダイインピーダンスとほぼ同じまたはそれより大きい(例えば、ディスクインピーダンスは全インピーダンスの少なくとも40%である)ことが重要である。
【0064】
図6は、例えば、
図5に示されたシステム500のような、例示の押出ダイ蒸着被覆システム内の堆積ガスに関する全体の圧力変化をモデル化したグラフ600である。
図6の線は、以下を表す:線Aは、堆積ガスが、モデル化蒸着チャンバ内のインピーダンスディスクに入る位置を表し;線Bは、堆積ガスが、モデル化蒸着チャンバ内のインピーダンスディスクから出る位置を表し;線Cは、堆積ガスが、モデル化蒸着チャンバ内の押出ダイに入る位置を表し;線D(すなわち、X位置=ゼロ)は、堆積ガスが、モデル化蒸着チャンバ内の押出ダイの重複領域、例えば、
図2に示された重複領域220から出る位置を表す(重複領域後に供給孔を通る任意の追加の圧力降下は、このモデルにおいて取るに足りないと考えられる)。
【0065】
グラフ600に示されるように、インピーダンスディスクを利用する蒸着システムにおいて、堆積ガスの圧力は、グラフ600における線AおよびBの間の減少により示されるように、インピーダンスディスクを流れるときに減少する。この圧力降下は、ここでは、ディスクインピーダンスと称される。押出ダイの有効径および蒸着チャンバの最小内のり断面寸法に応じて、この圧力降下は、線Cの後に起こる圧力の低下により示されるように、押出ダイを流れるときの堆積ガスの圧力降下と比べて、非常に低いであろう。この圧力降下は、ここでは、ダイインピーダンスと称される。ダイおよびチャンバの寸法が近い場合、ディスクインピーダンスとダイインピーダンスとの間の差は、押出ダイ上に望ましくない不均一なコーティング厚を有する堆積コーティングをもたらし得るので、問題となり得る。例えば、蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法に近い(例えば、最小内のり断面寸法の少なくとも70%、および/またはダイの外縁とチャンバの内壁との間の1から1.5インチ(約2.5から3.8cm)未満の間隙)外のり有効径を有する押出ダイについて、ダイインピーダンスとディスクインピーダンスとの間の差は、境界層効果のために概して大きく、これにより、望ましくない不均一なコーティング厚が生じる。
【0066】
上述したように、境界層効果は、1種類以上の堆積ガスの濃度を左右する堆積ガスの流れ場をもたらす。例えば、チャンバ内の堆積ガスの濃度により一貫して制御されているコーティングの厚さの代わりに、チャンバの壁に近接したコーティングの厚さは、境界層効果の影響も受ける。これにより、蒸着チャンバ内の無機粒子の堆積、それゆえ、無機粒子の堆積により形成されるコーティングの均一性の制御において、インピーダンスディスクが有する影響が著しく低下するので、このことは望ましくない。
【0067】
また、上述したように、ここに述べられたようなインピーダンスディスクは、前記堆積過程により施されたコーティングの厚さにおける望ましくない変動を軽減することができる。ここに述べられたインピーダンスディスクは、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスが、蒸着チャンバ内の押出ダイのダイインピーダンスと同じか、または近いようにガスの流れ場を制御するように設計されている。ダイインピーダンスに近い(例えば、ダイインピーダンスの65%から150%以内、またはより好ましくはダイインピーダンスの90%から150%以内)ディスクインピーダンスを作ることによって、押出ダイを通る1種類以上の堆積ガスの実質的に均一な流れを達成することができる。いくつかの実施の形態において、ディスクインピーダンスは、先に述べたように、堆積チャンバ内の流れに対する全インピーダンスの40%から60%の範囲内、および/またはダイインピーダンスの65%から150%の範囲内にある。インピーダンスディスクのディスクインピーダンスを制御することは、蒸着システム500にとって特定のディスクインピーダンスを得るために、インピーダンスディスク内の貫通孔のサイズ(例えば、貫通孔112の有効径113)を調整することによって達成することができる。
【0068】
図7のグラフ700は、様々な貫通孔の有効径を有するインピーダンスディスクを備えた押出ダイ蒸着被覆システム内の堆積ガスに関するモデル化された圧力降下分布を示す。グラフ600におけるように、堆積ガスが蒸着チャンバを進むときに、線A(インピーダンスディスクを流れるところ)で圧力の第1の降下を、次いで、線C(押出ダイを流れるところ)で圧力の第2の降下を経験する。グラフ700のモデル化結果により示されるように、堆積ガスの圧力降下は、0.02インチ(約0.51mm)の平均有効径を持つ貫通孔を有するインピーダンスディスクについて最小であり、0.042インチ(約1.1mm)の平均有効径を持つ貫通孔を有するインピーダンスディスクについて最大であった。それゆえ、グラフ700は、より小さい平均孔有効径は、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスを増加させ得ることを示す。したがって、より小さい平均孔有効径は、ディスクインピーダンスが蒸着チャンバの圧力の全変化に寄与する割合を増加させ得る。割合におけるこの増加は、インピーダンスディスクのディスクインピーダンスを、蒸着チャンバ内の押出ダイを流れるときの堆積ガスの圧力降下(すなわち、ダイインピーダンス)に近くなるように調整するために利用することができる。
【0069】
図8は、一定のガス流量(速度=1.0m/秒)でのインピーダンスディスクの孔寸法に対する蒸着チャンバの圧力における全変化へのディスクインピーダンスの寄与をモデル化したグラフ800である。グラフ800において、「cpsi 600」の線は、約600セル毎平方インチ(「cpsi」)を有する焼成セラミックを生成する押出ダイに使用するために設計され、そのような押出ダイについてモデル化されたインピーダンスディスクに関する圧力降下の割合(ディスクインピーダンス)を示す。押出ダイのピンが最終ハニカム体のセル(または通路)を最終的に形成するので、押出ダイは、約600ピン毎平方インチを有することに留意されたい。しかしながら、押出後の、例えば、押し出された未焼成状態からセラミック状態への焼成中のハニカム体の収縮(例えば、15%までの収縮)およびときには増大(例えば、2%までの増大)のために、押出ダイは、いくつかの実施の形態において、その増大または収縮を考慮して、平方インチ当たり異なる数のピンを有する。そして、「cpsi 400」の線は、約400セル毎平方インチ(「cpsi」)を有するハニカム体を生成する押出ダイに使用するために設計され、そのような押出ダイについてモデル化されたインピーダンスディスクに関する圧力降下の割合(ディスクインピーダンス)を示す。「cpsi 600」のインピーダンスディスクと、「cpsi 400」のインピーダンスディスクとの間の差は、それぞれ「cpsi 600」および「cpsi 400」の押出ダイ上のピンと供給孔の配置に対応する、これらのディスク上の貫通孔の中心間横方向間隔である。
【0070】
グラフ800に示されるように、600cpsiに対応するダイに関する40%のディスクインピーダンスの寄与を達成するための適切な貫通孔の有効径は0.025インチ(約0.64mm)であり、一方で、400cpsiのセル密度に対応するダイに関する40%のディスクインピーダンスの寄与を達成するための適切な貫通孔の有効径は0.033インチ(約0.84mm)である。グラフ800に示された結果は、ディスクインピーダンスは、インピーダンスディスクの貫通孔の平均孔寸法および/または中心間横方向間隔を調整することによって制御できることを証明している。
【0071】
グラフ800においてモデル化されたインピーダンスディスクに行われた経験的試験は、例えば、蒸着チャンバのサイズと比べて比較的大きい押出ダイのために、境界層効果が蒸着システムに存在する場合、蒸着システムの圧力(インピーダンス)の全変化の40%以上をもたらすインピーダンスディスクは、どのサイズの押出ダイに関する境界層効果を制御するのにも適切であろうことを示した。
【0072】
図9は、無機粒子で被覆された押出ダイに関する平均コーティング厚の変動を示すグラフ900である。「ディスクA」の結果は、押出ダイ上に無機粒子を被覆するために使用した1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの40%未満のディスクインピーダンスを有するインピーダンスディスクを備えた化学的気相成長チャンバ内で被覆された18インチ(約46cm)の押出ダイに関する。「ディスクB」の結果は、押出ダイ上に無機粒子を被覆するために使用した1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの40%超のディスクインピーダンスを有するインピーダンスディスクを備えた化学的気相成長チャンバ内で被覆された18インチ(約46cm)の押出ダイに関する。押出ダイの直径は、「ディスクA」および「ディスクB」の両方の結果に関する最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%であった。試験した全てのディスクは、ニュートラルインピーダンスディスクであった。試験した押出ダイは、600cpsiを有するハニカム体を製造するように設計された。グラフ900に報告された平均コーティング厚の変動は、少なくとも5つの測定された押出ダイに関する、押出ダイ面の中心から押出ダイ面のエッジまで測定されたコーティング厚の平均変化である。
【0073】
グラフ900に示されるように、より高いディスクインピーダンスを有するインピーダンスディスク(「ディスクB」)を使用すると、ゼロに近い平均コーティング変動(所望の変動レベル)がもたらされた。「ディスクA」の結果は、4.8マイクロメートルの標準偏差で、約-2.4マイクロメートル(μm)の平均コーティング変動を示した。これは、試験した押出ダイのエッジに向かって移動した場合、平均コーティング厚は、約2.4マイクロメートルだけ減少したことを意味する。「ディスクB」の結果は、1.5マイクロメートルの標準偏差で、約-0.03マイクロメートルの平均コーティング変動を示した。これは、試験した押出ダイのエッジに向かって移動した場合、平均コーティング厚は、約0.03マイクロメートルだけ減少したことを意味する。それゆえ、蒸着システムの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%のディスクインピーダンスを有するインピーダンスディスクは、コーティング厚の変動を著しく減少させ、それゆえ、スロット幅の変動を著しく減少させる。400cpsiを有するハニカム体を製造するように設計された押出ダイで、類似の結果が達成された。
【0074】
様々な実施の形態をここに記載してきたが、それらは、限定ではなく、例として提示されている。ここに提示された教示および手引きに基づいて、適応および改変は、開示された実施の形態の同等物の意味および範囲内にあることが意図されていることが明白であろう。したがって、本開示の精神および範囲から逸脱せずに、形態および詳細の様々な変更を、ここに開示された実施の形態に行えることが当業者に明白であろう。ここに提示された実施の形態の要素は、必ずしも、相互排他的ではなく、当業者に認識されるであろうように、様々な状況にかなうために置き換えることができる。
【0075】
本開示の実施の形態は、同一のまたは機能的に類似の要素を示すために、同様の参照番号が使用されている、添付図面に示されるように、実施の形態に関連して、ここに詳しく記載されている。「1つの実施の形態」、「ある実施の形態」、「いくつかの実施の形態」、「特定の実施の形態において」などへの言及は、記載された実施の形態が、特定の特徴、構造または特性を含むが、全ての実施の形態が、必ずしも、その特定の特徴、構造、または特性を含まなくてもよいことを示す。さらに、そのような句は、必ずしも、同じ実施の形態を称するものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある実施の形態に関連して記載されている場合、明白に記載されていようとなかろうと、他の実施の形態に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識に含まれることが考えられる。
【0076】
実施例は、本開示を限定するものではなく、説明に役立つものである。当該分野で通常遭遇し、当業者に明白であろう様々な条件およびパラメータの他の適切な改変および適用は、本開示の精神および範囲に含まれる。
【0077】
上限値と下限値を含む数値の範囲がここに列挙されている場合、特定の状況において他に述べられていない限り、その範囲は、その端点、およびその範囲内の全ての整数と分数を含むことが意図されている。特許請求の範囲は、範囲を定義する場合、列挙された特定の値に限定されることは、意図されていない。さらに、量、濃度、もしくは他の値またはパラメータが、範囲、1つ以上の好ましい範囲、または好ましい上限値と好ましい下限値のリストとして与えられている場合、これは、任意の上限または好ましい値と、任意の下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を、そのような対が独立して開示されていようとなかろうと、具体的に開示しているものと理解されるものとする。最後に、「約」という用語が、範囲の値または端点を記載する上で使用されている場合、その開示は、言及されている特定の値または端点を含むと理解されるべきである。範囲の数値または端点に「約」が付いている場合、範囲の数値または端点が、教示されている、すなわち、「約」により修飾されていない値または端点を含むことが意図されている。
【0078】
本実施の形態は、その特定の機能と関係の実施を説明する機能的構成要素を用いて先に記載されてきた。これらの機能的構成要素の境界は、記載の便宜上、ここに自由裁量で定義されている。その特定の機能と関係が適切に遂行される限り、代わりの境界を定義することができる。
【0079】
ここに使用した用語または専門用語は、限定ではなく、説明の目的のためであることが理解されよう。本開示の広さと範囲は、上述した例示の実施の形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物にしたがって定義されるべきである。
【0080】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0081】
実施形態1
複数のスロットおよび複数の押出ダイピンを含む面を備えた押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法において、1種類以上の堆積ガスを、該押出ダイの上流の蒸着システムの蒸着チャンバ内に配置されたインピーダンスディスク内の複数の貫通孔に通して、該複数のスロット中に流して、該複数のピンの側壁上に無機粒子を堆積させる工程を有してなり、該インピーダンスディスクおよび該押出ダイを横切る該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスが、該インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに該押出ダイのダイインピーダンスを加えたものと等しく、該ディスクインピーダンスが、該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%である、方法。
【0082】
実施形態2
前記ディスクインピーダンスが、前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも50%である、実施形態1に記載の方法。
【0083】
実施形態3
前記ディスクインピーダンスが、前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの40%から60%である、実施形態1に記載の方法。
【0084】
実施形態4
前記ディスクインピーダンスが前記ダイインピーダンスの65%から150%である、実施形態1に記載の方法。
【0085】
実施形態5
前記ディスクインピーダンスが前記ダイインピーダンスの90%から150%である、実施形態1に記載の方法。
【0086】
実施形態6
前記蒸着チャンバが、前記1種類以上の堆積ガスを該蒸着チャンバに供給する注入口を備え、前記インピーダンスディスクが該注入口と前記押出ダイの面との間に配置されている、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態7
前記貫通孔が平均有効径を有し、該貫通孔の平均有効径が、前記ディスクインピーダンスを、前記インピーダンスディスクおよび前記押出ダイを横切る前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%に設定する、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態8
前記貫通孔の平均有効径が、0.007インチ(約0.18mm)から0.04インチ(約1.0mm)の範囲にある、実施形態7に記載の方法。
【0089】
実施形態9
前記貫通孔の平均有効径が、0.02インチ(約0.51mm)から0.03インチ(約0.76mm)の範囲にある、実施形態7に記載の方法。
【0090】
実施形態10
前記押出ダイが複数の供給孔をさらに備え、該押出ダイのピンが、該供給孔と前記インピーダンスディスクとの間に配置されている、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態11
前記供給孔が、0.03インチ(約0.76mm)から0.07インチ(約1.8mm)の範囲の平均有効径を有する、実施形態10に記載の方法。
【0092】
実施形態12
前記貫通孔が中心間横方向間隔を有し、前記供給孔が中心間横方向間隔を有し、該貫通孔の中心間横方向間隔の値は、該供給孔の中心間横方向間隔の値の60%以内である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態13
前記貫通孔が中心間横方向間隔を有し、前記供給孔が中心間横方向間隔を有し、該貫通孔の中心間横方向間隔は、該供給孔の中心間横方向間隔の10%以内である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態14
前記貫通孔の中心間横方向間隔が、0.04インチ(約1.0mm)から0.06インチ(約1.5mm)の範囲内にある、実施形態13に記載の方法。
【0095】
実施形態15
前記蒸着チャンバが、前記押出ダイを取り囲むチャンバ壁を備え、該チャンバ壁は、該蒸着チャンバ内の前記1種類以上の堆積ガスの流れに対して垂直に測定された最小内のり断面寸法を有し、該押出ダイは、該最小内のり断面寸法の少なくとも70%と等しい有効径を有する、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態16
前記押出ダイが、前記蒸着チャンバの最小内のり断面寸法の少なくとも70%である最大外のり寸法を有する、実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態17
前記無機粒子が、ホウ素ドープ炭窒化チタン、炭窒化チタン、または窒化チタンの内の少なくとも1つを含む、実施形態1から16のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態18
前記押出ダイがステンレス鋼から作られている、実施形態1から17のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態19
前記押出ダイがハニカム形状を有する、実施形態1から18のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態20
前記蒸着チャンバが化学的気相成長チャンバである、実施形態1から19のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態21
複数の供給孔および複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを含む面を備えた押出ダイ上に無機材料を堆積させる方法であって、
1種類以上の堆積ガスを、前記押出ダイの上流にある蒸着チャンバ内に位置付けられたインピーダンスディスクの複数の貫通孔に通して、前記複数のスロット中に流して、前記複数のピンの側壁上に無機粒子を堆積させる工程、
を有してなり、
前記押出ダイの有効径が、前記蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%であり、
前記貫通孔が中心間横方向間隔を有し、前記供給孔が中心間横方向間隔を有し、該貫通孔の中心間横方向間隔は、該供給孔の中心間横方向間隔の10%以内にあり、
前記インピーダンスディスクおよび前記押出ダイを横切る前記1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスは、該インピーダンスディスクのディスクインピーダンスに該押出ダイのダイインピーダンスに加えたものと等しく、該ディスクインピーダンスは、該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%である、方法。
【0102】
実施形態22
前記押出ダイがハニカム形状を有する、実施形態21に記載の方法。
【0103】
実施形態23
蒸着チャンバシステムにおいて、
チャンバ壁を有する蒸着チャンバと、
前記蒸着チャンバ内に配置され、前記チャンバ壁により取り囲まれた押出ダイであって、該チャンバ壁により画成された該蒸着チャンバの最小内のり断面チャンバ寸法の少なくとも70%の有効径、複数の押出ダイピンにより画成された複数のスロットを有する面、および複数の供給孔を備えた押出ダイと、
前記蒸着チャンバ内に配置され、該蒸着チャンバの注入口に対して前記押出ダイの面の上流に置かれたインピーダンスディスクであって、複数の貫通孔を含むインピーダンスディスクと、
を備え、
前記貫通孔は、1種類以上の堆積ガスの圧力を、前記インピーダンスディスクおよび前記押出ダイのピンを横切る該1種類以上の堆積ガスの流れに対する全インピーダンスの少なくとも40%だけ減少させるように形状が決められた平均有効径を有する、蒸着チャンバシステム。
【0104】
実施形態24
前記押出ダイがハニカム形状を有する、実施形態23に記載のシステム。
【0105】
実施形態25
前記貫通孔が中心間横方向間隔を有し、前記供給孔が中心間横方向間隔を有し、該貫通孔の中心間横方向間隔は、該供給孔の中心間横方向間隔の10%以内である、実施形態23または24に記載のシステム。
【0106】
実施形態26
ディスクインピーダンスがダイインピーダンスの65%から150%である、実施形態23から25のいずれか1つに記載のシステム。
【0107】
実施形態27
ディスクインピーダンスがダイインピーダンスの90%から150%である、実施形態23から25のいずれか1つに記載のシステム。
【符号の説明】
【0108】
100、410、560 インピーダンスディスク
102、412 有孔中央部分
104、414 中実縁部分
106 エッジ
112、562 貫通孔
113、252、430、440 有効径
114、250 中心間横方向間隔
200、420、510 押出ダイ
204 ダイ本体
206 供給孔
208 ピン
210 側面
212 端面
214 スロット
216 吐出面
220 重複領域
400 ニュートラルインピーダンスディスクアセンブリ
432 外縁
500 蒸着システム
502 ガス注入口
504 回転式t
506 ガス排出口
512 ダイホルダ
570 蒸着チャンバ
【国際調査報告】