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特表2022-516719信号品質の自動定量化のための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-02
(54)【発明の名称】信号品質の自動定量化のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/308 20210101AFI20220222BHJP
【FI】
A61B5/308
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537824
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2019061313
(87)【国際公開番号】W WO2020136570
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/784,962
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099409
【氏名又は名称】アナリティクス フォー ライフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バートン, ティモシー ウィリアム フォーセット
(72)【発明者】
【氏名】ラムチャンダニ, シャムラル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥームラ, アビナブ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127AA04
4C127CC01
4C127CC02
4C127GG11
4C127GG13
(57)【要約】
取得した信号の品質を定量化するためのシステム及び方法が、評価のために、及び後続の分析のために取得した信号をゲーティングするために、提供される。信号を取得し、取得に関して問題点があるかどうか(例えば、取得した信号が、受容可能であるか受容不可能であるか、また、後続の評価のために充分な品質のものであるかどうか)を、リアルタイムで決定する。問題点がある場合には、本明細書において説明するシステム及び方法を介して、出力が提供されることにより、信号取得を再度実行する必要があることが示される(例えば、取得した信号が受容不可能である場合には、取得した信号を拒絶して、新たな信号を取得する)。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床分析のために生物物理学的信号データセットを取得するための方法であって、
プロセッサによって、測定のために被検体に関する生物物理学的信号データセット又はその一部を取得することであって、前記生物物理学的信号データセット又は前記一部を、1つ又は複数の対応するチャネル上において非侵襲的測定システムの1つ又は複数の表面プローブを介して取得するとともに、後続の評価に適した取得持続時間にわたって取得し、前記取得持続時間を、事前に規定されたものあるいは動的に決定されるものあるいはユーザによって設定されるものとする、取得することと、
前記プロセッサによって、及び/又は、1つ又は複数のクラウドベースのサービス又はシステムによって遠隔的に、前記取得した生物物理学的信号データセットに関して、1つ又は複数の信号品質パラメータを決定することであって、前記1つ又は複数の信号品質パラメータのうちの少なくとも1つを、電力線ノイズ混入に関連した電力線干渉パラメータ、高周波ノイズ混入に関連した高周波ノイズパラメータ、高周波ノイズバースト混入に関連したノイズバーストパラメータ、突発的移動混入に関連した突発的移動パラメータ、及び、骨格筋混入又は心周期変動に関連した非同期ノイズパラメータ、からなる群から選択されるものとする、決定することと、
前記1つ又は複数の信号品質パラメータが、前記1つ又は複数の信号品質パラメータに対して実行されたノイズ品質評価に不合格であった時には、前記プロセッサによって、前記取得した生物物理学的信号データセットを又はその評価部分を、拒絶することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記非侵襲的測定システムにおいて不合格であった評価に関しての、視覚的インジケータ、音声インジケータ、振動インジケータ、及びレポート、のうちの1つ又は複数を出力することをさらに含み、前記出力を、前記測定と同時に行う、あるいは、ほぼ同時に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取得した生物物理学的信号データセットに関する非拒絶という評価後におけるすなわち受容という評価後における遠隔的な臨床分析のために、前記取得した生物物理学的信号データセットを、前記プロセッサによって、ネットワークを介して送信することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定システムの1つ又は複数の取得回路によって、前記1つ又は複数のチャネル上において電圧勾配信号を取得することであって、前記電圧勾配信号を、約1kHzよりも大きな周波数で取得することと、
前記1つ又は複数の取得回路によって、前記取得した電圧勾配信号から前記取得した生物物理学的データセットを生成することと、をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも第1表面プローブを、被検体の身体を左側から右側へと通過する第1軸のところに配置することと、
少なくとも第2表面プローブを、前記被検体の前記身体を上側から下側へと通過する第2軸のところに配置することと、
少なくとも第3表面プローブを、前記被検体の前記身体を前方から後方へと通過する第3軸のところに配置することであって、前記第1軸、前記第2軸、及び前記第3軸を、相互に直交する軸とする、配置することと、をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数のチャネルのいずれかに関する前記電力線干渉パラメータが、電力線干渉条件に不合格であった時には、前記取得した生物物理学的信号データセット又は前記評価部分を拒絶する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して高周波ノイズ混入に関連した前記高周波ノイズパラメータが、高周波ノイズ条件に不合格であった時には、前記取得した生物物理学的信号データセット又は前記評価部分を拒絶する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して高周波ノイズバースト混入に関連した前記ノイズバーストパラメータが、ノイズ条件に不合格であった時には、前記取得した生物物理学的信号データセット又は前記評価部分を拒絶する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して突発的移動混入に関連した前記突発的移動パラメータが、突発的移動条件に不合格であった時には、前記取得した生物物理学的信号データセット又は前記評価部分を拒絶する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して骨格筋混入又は心周期変動を含み得る非同期ノイズパラメータが、非同期ノイズ条件に不合格であった時には、前記取得した生物物理学的信号データセット又は前記評価部分を拒絶する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電力線干渉パラメータに関連した電力線係数を、
前記プロセッサによって、前記取得した生物物理学的信号データセット又は前記一部に対してフーリエ変換を実行することと、
前記プロセッサによって、複数の周波数範囲における電力線エネルギの最大値を決定することと、により決定する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記評価を、冠状動脈疾患又は肺高血圧症に関しての前記被検体に対する後続の分析のためのゲーティングステージとする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
受領する前記生物物理学的信号データセットを、心臓信号データセットを含むものとする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生物物理学的信号データセットを、生物物理学的信号を取得することに対して、ほぼリアルタイムで生成する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生物物理学的信号を、スマートデバイス内のあるいはハンドヘルド医療診断機器内のセンサから取得する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物物理学的信号データセットは、前記被検体の心臓に近接した身体表面上に配置した複数の表面電極から同時に取得する広帯域位相勾配心臓信号データを含むものとする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
取得した生物物理学的信号を拒絶するための方法であって、
プロセッサによって、被検体の生物物理学的信号データセットを受領することと、
前記プロセッサによって、及び/又は、1つ又は複数のクラウドベースのサービス又はシステムによって遠隔的に、前記受領した生物物理学的信号データセットを、電力線干渉、高周波ノイズ、高周波ノイズバースト、突発的ベースライン移動、及び周期変動、のうちの少なくとも1つと比較することと、
前記比較に基づいて、前記プロセッサによって、前記受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記受領した生物物理学的信号データセットを前記電力線干渉と比較することは、前記生物物理学的信号データセットの電力線係数を決定することを含むものとし、前記受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、前記電力線係数が所定しきい値を超えた時に前記生物物理学的信号データセットを拒絶することを含むものとする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記受領した生物物理学的信号データセットを前記高周波ノイズと比較することは、前記生物物理学的信号データセットの高周波ノイズスコアを決定することを含むものとし、前記受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、前記高周波ノイズスコアが所定しきい値を超えた時に前記生物物理学的信号データセットを拒絶することを含むものとする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
前記受領した生物物理学的信号データセットを前記高周波ノイズバーストと比較することは、1秒ウィンドウをテストするために高周波時系列を使用して前記生物物理学的信号データセットの高周波ノイズバーストを決定することと、前記1秒ウィンドウをしきい値と比較することと、を含むものとし、前記受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、前記1秒エネルギがしきい値よりも大きい時に前記生物物理学的信号データセットを拒絶することを含むものとする、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記受領した生物物理学的信号データセットを前記突発的ベースライン移動と比較することは、信号の所定時間ウィンドウ内のベースラインが前のウィンドウに対して所定量を超えて変化している時に突発的ベースライン移動を決定することを含むものとし、前記受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、前記突発的ベースライン移動が決定された時に前記生物物理学的信号データセットを拒絶することを含むものとする、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記受領した生物物理学的信号データセットを前記周期変動と比較することは、前記周期変動ノイズを決定することを含むものとし、前記受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、前記周期変動ノイズが所定しきい値を超えた時に前記生物物理学的信号データセットを拒絶することを含むものとする、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記比較は、事前に規定されたしきい値を超える値又はエネルギを有した前記取得した生物物理学的信号データセット内に存在する非同期ノイズの存在を決定することを含むものとする、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記プロセッサによって、前記生物物理学的信号データセットの取得が不合格であった旨の通知を生成することをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記通知により、前記生物物理学的信号データセットの取得をその後に実行するように促す、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記プロセッサに、ネットワークを介して、前記受領した生物物理学的信号データセットを、外部の分析システムに対して送信させることをさらに含み、前記分析システムを、病状又は臨床的症状の存在又は程度について、前記受領した生物物理学的信号データを分析するように構成する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
システムであって、
1つ又は複数のプロセッサと、
前記1つ又は複数のプロセッサ上に格納された命令を有したメモリであって、前記1つ又は複数のプロセッサによる前記命令の実行により、前記1つ又は複数のプロセッサに、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法を実行させる、メモリと、を含む、システム。
【請求項28】
格納された命令を有した非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つ又は複数のプロセッサによる前記命令の実行により、前記1つ又は複数のプロセッサに、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この国際PCT出願は、2018年12月26日付けで出願された「Method and System for Automated Quantification of Signal Quality」と題する米国特許仮出願第62/784,962号明細書の優先権及び利益を主張するものであり、この特許文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、一般に、心血管循環器系及び他の生理学的系統を特徴付けるための非侵襲的な方法及びシステムに関する。より具体的には、一態様では、本開示は、取得した生物物理学的信号(例えば、心臓信号、脳/神経学的信号、他の生物学的系統に関連した信号、等)の品質評価、及び、分析用に取得した信号のゲーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
虚血性心疾患は、心臓虚血又は心筋虚血としても知られ、通常は冠状動脈疾患(CAD)に起因した心筋への血液供給の減少を特徴とする疾患又は疾患グループである。CADは、典型的には、心筋に対して血液を供給する冠状動脈の内膜がアテローム性動脈硬化症(内膜が硬化する又は硬くなり、そこにプラークが蓄積し、異常な炎症を伴うことが多い)を発症することにより、発生する。時間の経過とともに、CADは、心筋を弱らせ、例えば、狭心症、心筋梗塞(心停止)、心不全、不整脈、などの原因となり得る。不整脈とは、異常な心臓のリズムであり、心臓の正常な電気伝導シーケンスからの何らかの変化を含み得るものであって、場合によっては、心停止に至ることもあり得る。
【0004】
CADの評価は複雑である可能性があり、症状の存在及び重症度を評価するために多くの技術及びツールが使用される。心臓の電気的活動度を分析して心臓の構造及び機能に関する情報を取得する心臓学の一分野である心電図検査の場合には、深刻な虚血性心疾患は、冠状動脈の狭窄箇所又は閉塞箇所よりも下流側に位置した灌流床内における心筋の心室伝導特性を変化させ得る。この病状は、心臓の様々な場所及び重症度の様々な段階において発現し得るものであり、このことが、正確な診断を困難としている。さらに、心筋の電気伝導特性は、人によって異なり得るものであり、測定プローブの配置に関連した測定のばらつきやそのようなプローブ及びその関連部品に関連した寄生損失などの他の要因も、また、心臓の電気生理学的検査時に取得される生物物理学的信号に影響を与える可能性がある。さらにまた、心筋の伝導特性が、比較的長い心臓位相勾配信号として取得される場合には、従来的なモデリング技術では効率的に取得し得ない複雑な非線形変動を示すことがあり得る。
【0005】
心臓信号、神経信号、又は他の生物物理学的信号、のいずれであるかにかかわらず、取得した生物物理学的信号の信号品質は、ノイズによって影響を受け得る。様々な発生源から発生し得るそのようなノイズは、患者の生物学的系統又はそのような信号に関連した系統に関する臨床評価並びにあらゆる関連した症状や病状を含めて、患者の評価に影響を与え得る。心臓信号の場合、そのようなノイズは、取得した信号の一部又は全部に対して影響を与え得るものであり、CAD、不整脈、肺高血圧、心不全、に対する評価の有効性を低下させ、例えば、心臓信号に関連する又は関係する又は(直接的に又は間接的に)影響するあらゆる症状又は病状に対する評価の有効性を低下させ、それにより、患者に対して誤った評価及び誤った診断を与えたりするリスクをもたらす。
【0006】
加えて、信号品質の低下などの問題点が悪影響を及ぼしてしまう場合には、取得した信号の一部又は全部を無視して、患者から新たな信号を取得しなければならない場合がある。場合によっては、このために、評価を再取得しなければならない場合があり、診療所や病院や又は他の診療現場へと戻らなければならないという不便さを患者に与え、医療システムに追加的なコストが発生する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において説明する例示的な方法及びシステムは、評価のために、及び後続の分析用に取得した信号をゲーティングするために、取得した信号の信号品質を定量化することを容易とする。
【0008】
本明細書において使用した際には、「心臓信号」という用語は、心血管系の構造、機能、及び/又は活動度、に関連した1つ又は複数の信号を指し、その信号の電気的/電気化学的伝導度に関する態様を含み、例えば心筋の収縮を引き起こす態様を含む。心臓信号は、いくつかの実施形態では、例えば心電図(ECG)又は他のモダリティを介して取得したものなどの、心電図信号を含んでもよい。
【0009】
本明細書において使用した際には、「神経学的信号」という用語は、脳、脊髄、神経、並びに、それらに関連したニューロン及び他の構造、等を含む中枢神経系及び末梢神経系の構造、機能、及び/又は活動度、に関連した1つ又は複数の信号を指し、その信号の電気的/電気化学的伝導に関する態様を含む。神経学的信号は、いくつかの実施形態では、例えば脳波(EEG)又は他のモダリティを介して取得したものなどの、脳波信号を含んでもよい。
【0010】
本明細書において使用した際には、「生物物理学的信号」という用語は、心臓信号、神経学的信号、又は、光電脈波信号、に限定されるものではなく、情報を取得し得るあらゆる生理学的信号を包含する。例示によって限定することを意図するものではないが、生物物理学的信号を、タイプ又はカテゴリに分類することができ、それは、例えば、電気的なもの(例えば、時間及び/又は周波数などの様々な領域における電圧/電位、インピーダンス、抵抗率、導電率、電流、等の測定などの技法によって、観測、識別、及び/又は定量化され得る特定の心臓系及び神経系関連の信号)、磁気的なもの、電磁気的なもの、光学的なもの(例えば、反射率、干渉計、分光法、吸光度、透過率、視覚的観測、光電脈波法、及び同種のものなどの技法によって、観測、識別、及び/又は定量化され得る信号)、音響的なもの、化学的なもの、機械的なもの(例えば、流体の流れ、圧力、動き、振動、変位、歪み、に関連した信号)、熱的なもの、電気化学的なもの(グルコースなどの特定の分析物の存在に相関され得る信号)、を含むことができる。生物物理学的信号は、場合によっては、生理学的系統(例えば、呼吸器系、循環器系(心臓血管、肺)、神経系、リンパ系、内分泌系、消化器系、排泄系、筋肉系、骨格系、腎/尿/排泄系、免疫系、外皮/外分泌系、生殖器系)、器官系(例えば、心臓及び肺が一緒に働く時に心臓及び肺に固有であり得る信号)、の状況で説明されてもよく、あるいは、組織(例えば、筋肉、脂肪、神経、結合組織、骨)、細胞、小器官、分子(水、タンパク質、脂肪、炭水化物、ガス、フリーラジカル、無機イオン、ミネラル、酸、他の化合物、元素、及び、それらの素粒子成分)の状況で説明されてもよい。別段の記載がない限り、「生物物理学的信号の取得」という用語は、一般に、哺乳類又は非哺乳類の生物などの、生理学的系統から生物物理学的信号を取得するための、任意の受動的な又は能動的な手段を指す。受動的な生物物理学的信号の取得とは、一般に、身体組織に関しての、自然の又は誘導された、電気的な、磁気的な、光学的な、及び/又は音響的な、エミッタンスを観測することを指す。受動的な及び能動的な生物物理学的信号の取得手段に関する非限定的な例は、例えば、身体組織に関しての、電圧/電位的な、電流的な、磁気的な、音響的な、光学的な、及び、自然のエミッタンスを観測するための他の非能動的な、方法を含み、場合によっては、そのようなエミッタンスを誘導する方法を含む。受動的な及び能動的な生物物理学的信号の取得手段に関する非限定的な例は、例えば、超音波、ラジオ波、マイクロ波、赤外光及び/又は可視光(例えば、パルスオキシメトリ又は光電脈波法において使用するため)、可視光、紫外光、並びに、イオン化エネルギ又は放射線(例えば、X線)を伴わずに身体組織を能動的に調査する他の方法、を含む。能動的な生物物理学的信号の取得は、また、イオン化エネルギ又は放射線(例えば、X線)(「イオン化生物物理学的信号」とも称される)を身体組織に対して伝達することを含んでもよい。受動的な及び能動的な生物物理学的信号の取得手段は、侵襲的な手順を介して(例えば、手術を介して、あるいは、侵襲的な放射線介在プロトコルを介して)、あるいは、非侵襲的に(例えば、撮像を介して)、実行することができる。
【0011】
本開示は、心臓関連の病状及び症状、及び/又は、神経関連の病状及び症状、に関する診断及び処置における、生物物理学的信号品質の有益な定量化を対象とするものであるけれども、このような定量化は、生物物理学的信号が生体の任意の関連系統に関与する任意の病状及び症状に関しての、診断及び治療(外科的な、低侵襲的な、及び/又は薬理学的な、処置を含む)に対して適用することができる。心臓の状況における一例は、CADの診断と、冠状動脈内へのステント配置、アテローム切除術の実行、血管形成術の実行、薬物療法の処方、及び/又は、運動や栄養や他のライフスタイルの変更に関する処方、等の任意数の治療法とを、単独であるいは組み合わせて、行うことである。診断され得る他の心臓関連の病状又は症状は、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例えば、肺動脈性肺高血圧症、左心疾患による肺高血圧症、肺疾患による肺高血圧症、慢性血栓による肺高血圧症、及び、血液などの他の疾患による又は他の障害による肺高血圧症)、並びに、他の心臓関連の、病状、症状、及び/又は疾患、を含む。診断され得る神経関連の、疾患、病状、又は症状に関する非限定的な例は、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び、他のすべての形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、運動障害、認知障害、言語障害、様々な精神病、脳/脊髄/神経の損傷、慢性外傷性脳症、群発性頭痛、片頭痛、神経障害(末梢神経障害を含む様々な形態)、幻肢/幻肢痛、慢性疲労症候群、急性及び慢性の疼痛(腰痛、脊椎手術不成功症候群、等を含む)、運動障害、不安障害、感染症又は外来物質によって引き起こされる症状(例えば、ライム病、脳炎、狂犬病)、居眠り病及び他の睡眠障害、心的外傷後ストレス障害、脳卒中や動脈瘤や出血性損傷等に関連した神経症状/影響、耳鳴り及び他の聴覚関連の疾患/症状、並びに、視覚関連の疾患/症状、を含む。
【0012】
骨格-筋肉関連の信号(例えば、筋電図(EMG)など)は、心臓信号、神経信号、等に関して、多くの場合、「帯域内ノイズ」であるとして特徴付けられる、つまり、取得した関心のある生物物理学的信号内において同一の又は同様の周波数範囲で発生することが多い。例えば、心臓信号の場合、生成される信号の主要な周波数成分は、約0.5Hz~約80Hzであることが多い。また、脳信号などの神経学的信号の場合、周波数成分は、約0.1Hz~約50Hzであることが多い。また、混入の程度に応じて、骨格-筋肉関連の信号は、また、典型的な心臓ベースの波形及び神経ベースの波形等と同一の又は同様の振幅を有することもできる。実際、骨格-筋肉関連の信号が、心臓信号や神経学的信号や他の生物物理学的信号等と類似していると、関心のある生物物理学的信号の分析に関して、重大な問題点を引き起こし得る。したがって、測定された生物物理学的信号の信号品質を定量化することは、例えば、取得した関心のある生物物理学的信号の品質評価するために、また、混入した取得信号を後続の分析において使用することを拒絶するために、さらに、混入の補償を可能とするよう、後続の分析において有用な情報を提供すること等のために、重要となり得る。
【0013】
本明細書の様々な実施形態において説明する方法及びシステムは、そのように限定されるものではなく、生体の別の1つ又は複数の生理学的系統、器官、組織、細胞、等に関する任意の状況において利用されてもよい。例示に過ぎないが、心血管の状況で有用とし得る2つの生物物理学的信号のタイプは、従来的な心電図(ECG/EKG)機器を介して取得され得る心臓信号、本明細書において説明するものなどの他の機器から取得され得る双極性広帯域生体電位(心臓)信号、及び、例えば光電脈波法などの様々なプレチスモグラフ技法によって取得され得る信号、を含む。
【0014】
本開示の文脈では、生物物理学的信号を取得して分析するための技法は、特に、例えば肺高血圧症(PH)、冠状動脈疾患(CAD)、及び、心不全(例えば、左側心不全又は右側心不全)を含めて、心血管(又は心臓)系における又はそれに関連した又はそれに影響を与える、特定の疾病状態状又は疾病症状の、存在、非存在、局在(該当する場合)、及び/又は重症度、を診断するために使用することに関して、説明する。
【0015】
肺高血圧症、心不全、及び冠状動脈疾患は、心血管系又は心臓系に関連した3つの疾患/病状である。肺高血圧症(PH)は、一般に、肺の動脈内における高血圧を指し、様々な症状を含むことができる。PHは、典型的には、複雑で多因子性の病因を有し、重症度に差はあるものの潜行性の臨床的発症を呈する。PHは、右心不全などの合併症を引き起こす可能性があり、多くの場合、死に至る。世界保健機関(WHO)は、PHを、5つのグループ又はタイプに分類している。WHOが分類した第1のPHグループは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)である。PAHは、とりわけ肺の動脈壁が引き締まって硬くなってしまう慢性疾患で、現在は不治の病である。PAHの診断には、少なくとも心臓カテーテル検査が必要である。PAHは、肺動脈の血管障害を特徴とするものであり、心臓カテーテル検査において、平均肺動脈圧が25mmHg以上であるとして定義される。肺動脈性肺高血圧症の1つの形態は、特発性肺動脈性肺高血圧症として知られており、これは、明確な原因が存在することなく発症するPAHである。とりわけ、PAHのサブカテゴリは、遺伝性PAH、薬物及び毒素誘発性PAH、及び、例えば結合組織病やHIV感染や門脈圧亢進症や先天性心疾患などの他の全身性疾患に関連したPAH、を含む。PAHは、肺血管の構造的な狭窄につながるすべての原因を含む。PAHの場合、肺動脈床の進行性狭窄は、プロスタサイクリン、一酸化窒素、及びエンドセリン-1、を含む血管作用性メディエータの不均衡に起因する。その結果、右心室の後負荷が増大し、右心不全を引き起こし、早死ににつながってしまう。WHOが分類した第2のPHグループは、左心疾患による肺高血圧症である。このグループの障害は、一般に、心臓の左側に問題点があることを特徴としている。このような問題点は、時間の経過とともに、肺動脈内の変化を引き起こし得る。具体的なサブグループは、左心室収縮機能障害、左心室拡張機能障害、弁膜症、さらには、弁膜症によらない先天性の心筋症及び閉塞、を含む。この第2のPHグループの処置は、根本的な問題点に焦点を当てる傾向がある(例えば、心臓弁を交換するための手術、様々な薬物療法、等)。WHOが分類した第3のPHグループは、大規模かつ多様であり、一般に、肺疾患又は低酸素症に関連している。サブグループは、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠時呼吸障害、肺胞低換気障害、慢性高高度曝露、発達性肺疾患、を含む。第4のPHグループは、WHOが慢性血栓塞栓性肺高血圧症として分類しているものであって、血栓が肺の中に入り込んだり形成されたりすることによって、肺動脈を通る血流が阻害されることにより引き起こされる。第5のPHグループは、血液疾患、肺病変を伴うサルコイドーシスなどの全身性疾患、代謝性疾患、及び、他の疾患からなるサブグループ、などのPHを引き起こす稀少な疾患を含むものとして、WHOが分類している。この第5グループのPHのメカニズムは、よくわかっていない。
【0016】
PHの最も一般的な症状(息切れ、疲労、胸痛、浮腫、動悸、めまい)が、非常に多くの他の病状と関連していることのために、そのすべての形態のPHを日常的な診察で診断することは、困難であり得る。血液検査、胸部X線検査、心電図及び心エコー図、肺機能検査、運動耐容能検査、及び、核医学検査は、すべて、医師が特定の形態でPHの診断をするのに役立つ様々な態様で使用される。上述したように、PHを診断するに際しての、特にPAHを診断するに際しての、「ゴールドスタンダード」は、肺動脈の圧力を直接的に測定することによる右心室の心臓カテーテル検査である。被検体にPAHが疑われる場合には、とりわけ、心電図検査、胸部X線検査、肺機能検査などの、いくつかの検査を実行して、病状を確認してもよい。心電図検査での右心緊張という証拠、及び、胸部X線検査での肺動脈の隆起又は心臓肥大という証拠が、典型的には見られる。しかしながら、心電図及び胸部X線の写真が正常であっても、必ずしもPAHの診断を除外することはできない。診断を確定して、原因及び重症度を確定するためには、更なる検査が必要となる場合がある。例えば、血液検査、運動負荷試験、及び、夜間酸素濃度試験を、実行してもよい。さらにまた、画像検査を実行してもよい。画像検査の例は、同位体灌流肺スキャン、高解像度コンピュータ断層撮影、コンピュータ断層撮影肺血管造影、及び、磁気共鳴肺血管造影、を含む。これらの(そして、場合によっては他の)非侵襲的な検査によってPAHの診断が下された場合、肺動脈圧を直接的に測定することで診断を確定するために、典型的には、右心カテーテル検査が必要とされる。また、心拍出量の測定と、肺動脈楔入圧を使用した左心房圧の推定も、可能である。被検体にPAHが存在する可能性があるかどうかを決定するための非侵襲的な技法が存在するけれども、これらの技法では、侵襲的な右心カテーテル検査が実行されない限り、PAHの診断を信頼性高く確定することができない。PHを評価するための方法及びシステムに関する態様及び実施形態は、共通して所有している米国特許出願第16/429,593号明細書に開示されており、この特許文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0017】
心不全は、米国だけでも約600万人が罹患しており、毎年870,000人超が心不全と診断されている。「心不全」(時に、うっ血性心不全又はCHFと称される)という用語は、一般に、心筋が弱くなったり硬くなったりすることのために、あるいは、適切な循環を妨げる欠陥が存在することのために、心筋が身体の要求を満たすのに充分な血液を送り出し得ない慢性的で進行性の病状又はプロセスを指す。これは、例えば、肺への血液及び体液の滞留、浮腫、倦怠感、めまい、失神、急速な及び/又は不規則な心拍、空咳、吐き気、及び、息切れ、をもたらす。心不全の一般的な原因は、冠状動脈疾患(CAD)、高血圧、心筋症、不整脈、腎臓病、心臓欠陥、肥満、タバコの使用、及び、糖尿病、である。拡張期心不全(DHF)、左の又は左側の心不全/疾患(左心室心不全とも称される)、右の又は右側の心不全/疾患(右心室心不全とも称される)、及び収縮期心不全(SHF)は、心不全の一般的なタイプである。
【0018】
左側心不全は、さらに、収縮期不全(又は、駆出率が低下した心不全、又は、左心室機能が低下した心不全)と、拡張期不全/機能不全(又は、駆出率が保持された心不全、又は、左心室機能が保持された心不全)、という2つの主要なタイプに分類される。患者が左側心不全であるかどうかを決定するために一般的に使用される手順及び技術は、心臓カテーテル検査、X線検査、心エコー検査、心電図検査(EKG)、電気生理学検査、放射性核種イメージング、ピークVOを測定するテストを含む様々なトレッドミルテスト、を含む。駆出率(EF)は、心室が収縮するたびに送り出す(左側心不全の場合は左心室が送り出す)血液の量のパーセンテージとして表される測定値であって、ほとんどの場合、心エコー図によって非侵襲的に取得される。通常の左心室駆出率(LVEF)は、約55%~約70%の範囲である。
【0019】
収縮期不全が発生した時には、左心室は、血液を全身に正常に循環させ続けるのに充分な力で収縮することができず、これにより、身体に対して血液が正常に供給されなくなる。左心室のポンプ機能を補償することが困難になると、左心室は、弱くなり、薄くなる。その結果、血液が臓器に逆流し、肺に体液が溜まったり、身体の他の部分が腫れたりする。心エコー検査、磁気共鳴画像法、及び、核医学スキャン(マルチゲート取得、等)は、駆出率(EF)を非侵襲的に測定するために使用される技法であって、左心室の充填容積に対しての、左心室から送り出される血液のパーセンテージとして表され、収縮期不全の診断に役立つ。特に、55%未満という左心室駆出率(LVEF)は、心臓のポンプ機能が正常を下回っていることを示し、重症の場合には、約35%未満として測定されることもある。一般に、収縮期不全の診断は、これらのLVEF値が正常値を下回っている場合に行うことができる又は支援されることができる。
【0020】
拡張期心不全が発生した時には、左心室は、硬くなったり厚くなったりして、正常に弛緩する能力を失い、このことは、心臓の左下室が血液によって適切に満たされなくなることを意味する。これにより、身体に対して送り出される血液の量が減少する。これが続くと、左心房の内部に血液が溜まり、さらに肺にも血液が溜まり、体液が滞留して、心不全の症状が出てくる。この場合、LVEF値は、正常範囲内に保持される傾向がある。そのため、侵襲的なカテーテル検査などの他のテストを使用して、左心室拡張末期圧(LVEDP)を測定することにより、拡張期心不全や、EFが保持されるような他の形態の心不全を、診断することに役立ててもよい。通常、LVEDPは、左心室内にカテーテルを配置することによって直接的に測定される、あるいは、肺動脈内にカテーテルを配置することによって肺毛細管楔入圧を測定することにより間接的に測定される。このようなカテーテル技法は、その性質上、患者の感染症や他の合併症のリスクを増大させ、コストも高くなる傾向にある。そのため、拡張期心不全の有無及び/又は重症度を診断するに際して、また、EFが保持される心不全の無数の他の形態を診断するに際して、LVEDPを決定又は推定するための非侵襲的な方法及びシステムが要望される。加えて、異常なLVEDPの決定又は推定を必ずしも含むことなく、拡張期心不全の有無及び/又は重症度を診断するための、また、EFが保持される心不全の無数の他の形態を診断するための、非侵襲的な方法及びシステムが要望される。本開示の実施形態は、これらの要望のすべてに対処する。
【0021】
右側心不全は、弱くなった及び/又は硬くなった左心室が、血液を身体の残部に対して効率的に送り出す力を失った時に、左側心不全が原因で発生することが多い。その結果、体液が肺を通って逆流して、心臓の右側が弱くなり、右側心不全を引き起こす。この逆流は、静脈を逆流させ、脚、足首、消化管、及び、肝臓において、体液の浮腫の原因となる。他の場合、慢性閉塞性肺疾患及び肺線維症などの特定の肺疾患は、心臓の左側が正常に機能しているにもかかわらず、右側心不全を引き起こし得る。患者が左側心不全であるかどうかを決定するために一般的に使用される手順及び技術は、血液検査、心臓CTスキャン、心臓カテーテル検査、X線、冠状動脈造影、心エコー検査、心電図(EKG)、心筋生検、肺機能検査、及び、トレッドミルテストなどの様々な形態のストレステスト、を含む。
【0022】
肺高血圧症は、心不全と密接に関連している。上述したように、PAH(WHOの分類による第1のPHグループ)は、右心室後負荷の増大、右側心不全、及び早死に、をもたらし得る。左側心不全によるPH(WHOの分類による第2のPHグループ)は、PHの最も一般的な原因であると考えられている。
【0023】
心臓虚血又は心筋虚血としても知られている虚血性心疾患、及び関連する症状又は病状も、また、本明細書において開示する技法を使用して推定又は診断され得る。虚血性心疾患とは、通常は冠状動脈疾患(CAD)が原因で、心筋への血液供給が低下することを特徴とする疾患又は疾患グループである。CADは、心不全と密接に関連しており、その最も一般的な原因である。CADは、典型的には、心筋すなわち心臓の筋肉に対して血液を供給する冠状動脈の内膜が、アテローム性動脈硬化症(内膜が硬化する又は硬くなり、そこにプラークが蓄積し、異常な炎症を伴うことが多い)を発症した時に、発生する。時間の経過とともに、CADは、心筋を弱らせ、例えば、狭心症、心筋梗塞(心停止)、心不全、及び、不整脈、などの原因となり得る。不整脈とは、異常な心臓リズムであり、心臓の正常な電気伝導シーケンスからの何らかの変化を含み得るものであって、場合によっては、心停止に至ることもあり得る。PH、心不全、CAD、他の疾患及び/又は症状、に関する評価は、複雑なものである可能性があり、上述したように、症状の存在及び重症度を評価するために、多くの侵襲的な技法及びツールが使用される。加えて、これらの疾患及び/又は病状に関する症状における共通性、また、呼吸器系と心血管系との間の基本的な連携は、それらが互いに協力して身体の細胞及び組織に対して酸素を供給していることのために、複雑な生理学的相互関係が指摘されており、このような疾患及び/又は病状に関する検出及び最終的な処置を改良するために利用される可能性がある。この文脈において、これらの生物物理学的信号を評価するための従来的な方法論では、そのような疾患及び症状の有無を正確に検出/診断するためのツールを医療従事者に対して提供するに際しては、依然として重大な課題が提起される。
【0024】
例えば、心臓の構造及び機能に関する情報を得るために心臓の電気的活動度を分析する心臓学の一分野である心電図検査では、重大な虚血性心疾患が、冠状動脈の狭窄箇所又は閉塞箇所よりも下流側に位置した灌流床内における心筋の心室伝導特性を変化させることが観測されており、病状は、心臓の異なる場所において及び重症度の異なる段階において発現する可能性があり、正確な診断を困難なものとしている。さらに、心筋の電気伝導特性は、人によって異なる可能性があり、測定プローブの配置に関連した測定のばらつきなどの、及び、そのようなプローブ及びその関連部品に関連した寄生損失などの、他の要因も、また、心臓の電気生理学的検査時に取得される生物物理学的信号に影響を与え得る。さらになお、心筋の伝導特性が、比較的長い心臓位相勾配信号として取得される時には、従来的なモデリング技法では効率的に取得し得ない複雑な非線形変動を示す可能性がある。
【0025】
一態様では、臨床分析のために(例えば、機械学習データセットの一部として、又は、臨床診断のために)生物物理学的信号データセットを取得するための方法が開示され、本方法は、プロセッサによって、測定のために被検体に関する(例えば、被検体の心臓、脳、肺、等に関しての)生物物理学的信号データセット又はその一部を取得することであって、生物物理学的信号データセット又は一部を、1つ又は複数の対応するチャネル上において非侵襲的測定システムの1つ又は複数の表面プローブ(例えば、被検体の胸部上に配置される)を介して取得するとともに、後続の評価に適した取得持続時間(例えば、約120秒超、例えば、約210秒程度)にわたって取得し、取得持続時間を、事前に規定されたものあるいは動的に決定されるものあるいはユーザによって設定されるものとする、取得することと、プロセッサ(例えば、非侵襲的測定システムのプロセッサ)によって、取得した生物物理学的信号データセットに関して、1つ又は複数の信号品質パラメータを決定することであって、1つ又は複数の信号品質パラメータのうちの少なくとも1つを、電力線ノイズ混入に関連した電力線干渉パラメータ、高周波ノイズ混入に関連した高周波ノイズパラメータ、高周波ノイズバースト混入に関連したノイズバーストパラメータ、突発的移動混入に関連した突発的移動パラメータ、及び、骨格筋混入又は心周期変動に関連した非同期ノイズパラメータ、からなる群から選択されるものとする、決定することと、1つ又は複数の信号品質パラメータが、1つ又は複数の信号品質パラメータに対して実行されたノイズ品質評価に不合格であった時には、プロセッサによって、取得した生物物理学的信号データセットを又はその評価部分を、拒絶すること(例えば、拒絶は、プロセッサに、非侵襲的測定システムにおいて不合格であった評価に関しての視覚的インジケータ、非侵襲的測定システムにおいて不合格であった評価に関しての音声インジケータ、又は、非侵襲的測定システムにおいて不合格であった評価に関してのレポート、を出力させ、この出力を、測定と同時に行う、あるいは、ほぼ同時に行う)(例えば、拒絶は、生物物理学的信号の取得の直後に、被検体に関する第2の生物物理学的信号データセット又はその一部の取得を促す)(例えば、取得した生物物理学的信号データセットに関する非拒絶という評価は、すなわち受容という評価は、遠隔的な臨床分析のために、取得した生物物理学的信号データセットを、プロセッサに、ネットワークを介して送信させる)と、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、非侵襲的測定システムにおいて不合格であった評価に関しての、視覚的インジケータ、音声インジケータ、振動インジケータ、及びレポート、のうちの1つ又は複数を出力することをさらに含み、出力は、測定と同時に行われる、あるいは、ほぼ同時に行われる(例えば、生物物理学的信号の取得直後に、被検体に関する第2の生物物理学的信号データセット又はその一部の取得を促すため)。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、取得した生物物理学的信号データセットに関する非拒絶という評価後におけるすなわち受容という評価後における遠隔的な臨床分析のために、取得した生物物理学的信号データセットを、プロセッサによって、ネットワークを介して送信することをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、測定システムの1つ又は複数の取得回路によって、1つ又は複数のチャネル上において電圧勾配信号を取得することであって、電圧勾配信号を、約1kHzよりも大きな周波数で取得することと、1つ又は複数の取得回路によって、取得した電圧勾配信号から取得した生物物理学的データセットを生成することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも第1表面プローブを、被検体の身体を左側から右側へと通過する第1軸のところに配置することと、少なくとも第2表面プローブを、被検体の身体を上側から下側へと通過する第2軸のところに配置することと、少なくとも第3表面プローブを、被検体の身体を前方から後方へと通過する第3軸のところに配置することであって、第1軸、第2軸、及び第3軸を、相互に直交する軸とする、配置することと、をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のチャネルのいずれかに関する電力線干渉パラメータが、電力線干渉条件に不合格であった時に(例えば、電力線干渉しきい値を超えた時に)、取得した生物物理学的信号データセット又は評価部分が拒絶される。
【0030】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して高周波ノイズ混入に関連した高周波ノイズパラメータが、高周波ノイズ条件に不合格であった時に(例えば、高周波ノイズスコアが、所定の高周波ノイズしきい値を超えた時に)、取得した生物物理学的信号データセット又は評価部分が拒絶される。
【0031】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して高周波ノイズバースト混入に関連したノイズバーストパラメータが、ノイズ条件に不合格であった時に、取得した生物物理学的信号データセット又は評価部分が拒絶される(例えば、高周波時系列を使用して1秒ウィンドウをテストし、1秒ウィンドウを、高周波エネルギの中央値と比較し、1秒エネルギが中央値の2倍よりも大きい時に、生物物理学的信号データセットが拒絶される)。
【0032】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して突発的移動混入に関連した突発的移動パラメータが、突発的移動条件に不合格であった時に(例えば、信号の1秒ウィンドウ内のベースラインが、チャネルの心室脱分極振幅の25%を超えて、前のウィンドウに対して変化した時に)、取得した生物物理学的信号データセット又は評価部分が拒絶される。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のチャネルのいずれかに関して骨格筋混入又は心周期変動を含み得る非同期ノイズパラメータが、非同期ノイズ条件に不合格であった時に(例えば、周期変動ノイズが、所定しきい値を超えた時に)、取得した生物物理学的信号データセット又は評価部分が拒絶される。
【0034】
いくつかの実施形態では、電力線係数は、プロセッサが、取得した生物物理学的信号データセット又は一部に対してフーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換)を実行することと、プロセッサが、複数の周波数範囲(例えば、例えば約48Hz~約52Hzにおいて約50Hz程度、例えば約58Hz~約62Hzにおいて約60Hz程度、例えば約145Hz~約155Hzにおいて約150Hz程度、例えば約175Hz~約185Hzにおいて約180Hz程度、及び、例えば約295Hz~約305Hzにおいて約300Hz程度)における電力線エネルギの最大値を決定することと、により決定される。
【0035】
いくつかの実施形態では、評価は、冠状動脈疾患、肺高血圧症、あるいは、他の病状又は疾病状態、に関しての被検体に対する後続の分析のためのゲーティングステージとされる。
【0036】
いくつかの実施形態では、受領する生物物理学的信号データセットは、心臓信号データセットを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、生物物理学的信号データセットは、生物物理学的信号を取得することに対して、ほぼリアルタイムで生成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、生物物理学的信号は、スマートデバイス内のあるいはハンドヘルド医療診断機器内のセンサから取得される。
【0039】
いくつかの実施形態では、生物物理学的信号データセットは、被検体の心臓に近接した身体表面上に配置された複数の表面電極から同時に取得される生体電位信号から導出された広帯域位相勾配心臓信号データを含む。
【0040】
別の態様では、取得した生物物理学的信号を拒絶するための方法が開示され、本方法は、プロセッサによって、被検体の生物物理学的信号データセットを受領することと、プロセッサによって、受領した生物物理学的信号データセットを、電力線干渉、高周波ノイズ、高周波ノイズバースト、突発的ベースライン移動、及び周期変動、のうちの少なくとも1つと比較することと、比較に基づいて、プロセッサによって、受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することと、を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、受領した生物物理学的信号データセットを電力線干渉と比較することは、生物物理学的信号データセットの電力線係数を決定することを含み、受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、電力線係数が所定しきい値を超えた時に生物物理学的信号データセットを拒絶することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、受領した生物物理学的信号データセットを高周波ノイズと比較することは、生物物理学的信号データセットの高周波ノイズスコアを決定することを含み、受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、高周波ノイズスコアが所定しきい値を超えた時に生物物理学的信号データセットを拒絶することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、受領した生物物理学的信号データセットを高周波ノイズバーストと比較することは、1秒ウィンドウをテストするために高周波時系列を使用して生物物理学的信号データセットの高周波ノイズバーストを決定することと、1秒ウィンドウをしきい値と比較することと、を含み、受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、1秒エネルギがしきい値よりも大きい時に生物物理学的信号データセットを拒絶することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、受領した生物物理学的信号データセットを突発的ベースライン移動と比較することは、信号の所定時間ウィンドウ内のベースラインが前のウィンドウに対して所定量を超えて変化している時に突発的ベースライン移動を決定することを含み、受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、突発的ベースライン移動が決定された時に生物物理学的信号データセットを拒絶することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、受領した生物物理学的信号データセットを周期変動と比較することは、周期変動ノイズを決定することを含み、受領した生物物理学的信号データセットを拒絶することは、周期変動ノイズが所定しきい値を超えた時に生物物理学的信号データセットを拒絶することを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、比較は、事前に規定されたしきい値を超える値又はエネルギを有した取得した生物物理学的信号データセット内に存在する非同期ノイズの存在を決定することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロセッサによって、生物物理学的信号データセットの取得が不合格であった旨の通知を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、通知は、生物物理学的信号データセットの取得をその後に実行するように促す。
【0048】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロセッサに、ネットワークを介して、受領した生物物理学的信号データセットを、外部の分析システムに対して送信させることをさらに含み、分析システムは、病状又は臨床的症状の存在又は程度について、受領した生物物理学的信号データを分析するように構成される。
【0049】
別の態様では、システムであって、1つ又は複数のプロセッサと、1つ又は複数のプロセッサ上に格納された命令を有したメモリであって、1つ又は複数のプロセッサによる命令の実行により、1つ又は複数のプロセッサに、上述したいずれかの方法を実行させる、メモリと、を含む、システムが開示される。
【0050】
別の態様では、格納された命令を有した非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つ又は複数のプロセッサによる命令の実行により、1つ又は複数のプロセッサに、上述したいずれかの方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体が開示される。
【0051】
本明細書内に組み込まれて本明細書の一部を構成する添付図面は、実施形態を図示したものであって、本明細書と一緒に、本明細書内に含まれる方法及びシステムに関する原理を説明するように機能する。実施形態は、添付図面と併せて読むことにより、以下の詳細な説明に基づいて、より良好に理解され得る。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A図1Aは、例示的な実施形態による、生物物理学的信号を有した生物学的系統などの準周期系統における複雑な非線形変動をより正確に評価するために、非同期ノイズ及びアーティファクト混入を定量化して除去するように構成された例示的なシステムを示す図である。
図1B図1Bは、別の例示的な実施形態による、非同期ノイズ及びアーティファクト混入の定量化に基づいて、取得した生物物理学的信号を拒絶するように構成された例示的なシステムを示す図である。
図2図2は、例示的な実施形態による例示的な評価システムを示す図である。
図3図3は、例示的な実施形態による例示的な信号品質評価システムを示す図である。
図4図4は、別の例示的な実施形態による、信号品質を評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図5図5は、別の例示的な実施形態による、電力線干渉を評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図6図6は、別の例示的な実施形態による、例えば図5の電力線干渉評価操作における、最大電力線干渉という観測可能な特性を示す図である。
図7図7は、例示的な実施形態による、例えば図5の電力線干渉評価操作における、しきい値での電力線干渉という観測可能な特性を示す図である。
図8図8は、例示的な実施形態による、高周波ノイズを評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図9図9は、例示的な実施形態による、例えば図8の高周波ノイズ評価操作における、最大高周波ノイズという観測可能な特性を示す図である。
図10図10は、例示的な実施形態による、例えば図8の高周波ノイズ評価操作における、しきい値での高周波ノイズという観測可能な特性を示す図である。
図11図11は、例示的な実施形態による、高周波ノイズバーストを評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図12図12は、例示的な実施形態による、例えば図11の高周波ノイズバースト評価操作における、最大高周波ノイズバーストという観測可能な特性を示す図である。
図13図13は、例示的な実施形態による、例えば図11の高周波ノイズバースト評価操作における、第2の最大高周波ノイズバーストという観測可能な特性を示す図である。
図14図14は、例示的な実施形態による、突発的ベースライン移動を評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図15図15は、例示的な実施形態による、例えば図14の突発的ベースライン移動評価操作における、最大突発的移動という観測可能な特性を示す図である。
図16図16は、例示的な実施形態による、例えば図14の突発的ベースライン移動評価操作における、50%突発的移動という観測可能な特性を示す図である。
図17図17は、例示的な実施形態による、周期変動を評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図18図18は、例示的な実施形態による、例えば図17の周期変動評価操作における、最大周期変動ノイズという観測可能な特性を示す図である。
図19図19は、例示的な実施形態による、例えば図17の周期変動評価操作における、より小さな周期変動ノイズという観測可能な特性を示す図である。
図20図20は、例示的な実施形態による、信号品質を評価するための方法の実装に関する操作フロー図である。
図21A図21A及び図21Bは、例示的な実施形態による、例示的な信号品質評価構成要素に関するアーキテクチャ及びデータフローを示している。
図21B】同上。
図22図22は、例示的な実施形態による、例示的な実施形態及び態様を実装し得る例示的なコンピューティング環境を示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書において説明する各特徴点及びすべての特徴点は、並びにそれら特徴点の2つ以上の各組合せ及びすべての組合せは、そのような組合せ内に含まれる特徴点どうしが相互に矛盾しない限りにおいて、本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
本明細書においてさらに説明するように、取得した信号の信号品質は、リアルタイムで評価され、取得した信号がノイズによって破損している場合には、通知が生成されて、担当技術者に対して提供される。1つ又は複数の実装では、評価は、(1)電力線干渉の検出、(2)突発的移動の検出、(3)ノイズバーストの検出、(4)最小の信号ノイズ比(SNR)の確認、及び/又は(5)非同期ノイズ(例えば、筋電図(EMG)ノイズ)の検出、を含む。
【0055】
本明細書においてさらに説明するように、信号が取得され、取得に問題点があるかどうかの決定がリアルタイムで行われ(例えば、取得した信号が、受容可能であるか又は受容不可能であるかを決定するために、あるいは、取得した信号が、後続の評価のための充分な品質のものであるかどうかを決定するために、等々のために、取得した信号が、即座に処理される)、そして、問題点がある場合には、信号取得を再度実行する必要があることを示すための出力が提供される(すなわち、取得した信号が、受容不可能である場合には、取得した信号を拒絶する)。
【0056】
図1Aは、例示的な実施形態による、骨格筋関連アーティファクトノイズ混入などの非同期ノイズを定量化して除去し、そのような定量化を使用して、準周期系統における複雑な非線形変動をより正確に評価するように構成された、例示的なシステム100を示す図である。本明細書において使用した際には、「除去する」という用語は、及び他の同様の用語は、後続の分析を向上させるようにあるいは後続の分析にとって有益であるように、ノイズ混入を全体的に又は部分的にいくらかでも有意に低減させることを指す。
【0057】
図1Aでは、測定システム102は、任意の数の測定プローブ114(図1のシステム100では、6個のこのようなプローブ114a、114b、114c、114d、114e、及び114f、を含むものとして図示されている)を介して、被検体106から、複数の生物物理学的信号104を取得し、そして、臨床出力112を決定するために非侵襲的生物物理学的信号評価システム110において利用可能な生物物理学的信号データセット108を生成する、非侵襲的な実施形態(「測定システム(生物物理学的)」102として図示されている)である。いくつかの実施形態では、臨床出力は、疾病の有無の評価、及び/又は、研究対象をなす生理学的系統に関して推定された生理学的特性、を含む。他の実施形態では、臨床出力はなく、むしろ、信号が評価されている患者に関連した情報を独自に臨床的に評価するために、臨床医が使用し得る情報として出力される。
【0058】
いくつかの実施形態では、図1Aに示すように、測定システム102は、フロントエンドでの増幅及びデジタル化操作116によって処理/調整された増幅及びデジタル化済み生物物理学的信号データセット117から、非同期ノイズ混入を(例えば、操作118を介して)除去するように構成される。混入ノイズ除去操作118は、データセット117内に潜在的に存在する非同期ノイズを定量化することに基づいている。非同期ノイズを除去するいくつかの実施形態では、操作118は、例えば取得した生物物理学的信号データセット108のいくつかのサンプルなどから代表的な周期データセットが確立された後に、例えばプロセッサ及び対応した命令を介してなどのようにしてあるいはデジタル回路(例えば、CPLD、マイクロコントローラ、及び同種のもの)を介してなどのようにして、ほぼリアルタイムで実行され得る。取得した生物物理学的信号データセット108とは、フロントエンドでの増幅及びデジタル化操作116の後に、測定システム102によってあるいは測定システム102内において生成された任意のデータセット(例えば、117、108)を指す。いくつかの実施形態では、数百個のサンプルを使用することにより、代表的な周期データセットを確立することができる。他の実施形態では、数千個のサンプルを使用することにより、代表的な周期データセットを確立することができる。いくつかの実施形態では、非同期ノイズの定量化は、フロントエンドでの増幅及びデジタル化操作116内へと統合されていてそのような操作と一緒に動作するハードウェア回路内で実行される。
【0059】
測定システム102は、いくつかの実施形態では、身体の生体電位に基づき得る生物物理学的信号を、生体電位センシング回路を介して、生体電位生物物理学的信号として取得するように構成される。心臓及び/又は心電図の状況では、測定システム102は、生体電位心臓信号データセットとして、生きている被検体(例えば、人間など)に関する心臓関連の生体電位信号又は電気生理学的信号を取得するように構成される。いくつかの実施形態では、測定システム102は、生体電位信号又は他の信号タイプ(例えば、電流信号、インピーダンス信号、磁気信号、光信号、超音波又は音響信号、等)として、広帯域の心臓位相勾配信号を取得するように構成される。取得した信号及びそれに対応したデータセットに関する「広帯域」という用語は、関心のある生理学的系統の最大支配的周波数のナイキストサンプリングレートよりも実質的に大きな周波数範囲を有した信号を指す。典型的には約0.5Hz~約80Hzに支配的周波数成分を有した心臓信号の場合、広帯域心臓位相勾配信号又は広帯域心臓生物物理学的信号は、約0.1Hz~約1KHz、約0.1Hz~約2KHz、約0.1Hz~約3KHz、約0.1Hz~約4KHz、約0.1Hz~約5KHz、約0.1Hz~約6KHz、約0.1Hz~約7KHz、約0.1Hz~約8KHz、約0.1Hz~約9KHz、約0.1Hz~約10KHz、及び、約0.1Hz~10KHz超(例えば、0.1Hz~50KHz、あるいは、0.1Hz~500KHz)、からなる群から選択される周波数における心臓周波数情報を含む。支配的周波数成分を取得することに加えて、広帯域での取得は、また、関心のある他の周波数を取得することも容易とする。このような関心のある周波数の例は、とりわけ、QRS周波数プロファイル(250Hzまでの周波数範囲を有し得る)を含むことができる。取得した信号及び対応したデータセットに関する「位相勾配」という用語は、関心のある生理学的系統の一連の異なる事象/機能に関する位相情報を観測するために、身体の異なる視点で取得した信号を指す。信号取得の後には、「位相勾配」という用語は、歪みのない信号処理及び前処理のための、ハードウェア、ソフトウェア、及び技法(例えば、位相線形フィルタ、信号処理演算子及び/又は、信号処理アルゴリズム)を使用して、位相情報を保存することを指す。
【0060】
神経学的な状況では、測定システム102は、神経学的生物物理学的信号データセットとして、生きている被検体(例えば、人間など)に関する神経学関連の生体電位信号又は電気生理学的信号を取得するように構成される。いくつかの実施形態では、測定システム102は、生体電位信号又は他の信号タイプ(例えば、電流信号、インピーダンス信号、磁気信号、超音波、光信号、超音波又は音響信号、等)として、広帯域の神経学的位相勾配信号を取得するように構成される。測定システム102の例は、米国特許出願公開第2017/0119272号明細書及び米国特許出願公開第2018/0249960号明細書に記載されており、これら特許文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、測定システム102は、信号の1つ又は複数のスペクトル成分が変更されないように、フィルタリングされていない電気生理学的信号として、広帯域の生体電位生物物理学的位相勾配信号を取得するように構成される。実際、そのような実施形態では、広帯域の生体電位生物物理学的位相勾配信号は、(例えば、ハードウェア回路、及び/又は、デジタル信号処理技法、等を介して)フィルタリングされることなく(例えば、デジタル化の前に)、関心のある生物物理学的信号の位相線形性に影響を与えることなく、取得され、そして変換され、さらには分析さえされる。いくつかの実施形態では、広帯域の生体電位生物物理学的位相勾配信号は、従来的な心電図や脳波や他の生物物理学的信号に関する取得機器のノイズフロアのところに位置しているあるいはそのようなノイズフロアを大幅に下回っているマイクロボルト又はサブマイクロボルトの解像度で取得される。いくつかの実施形態では、広帯域の生体電位生物物理学的信号は、約1マイクロ秒よりも小さな時間的スキュー又は「ラグ」を有しつつ、同時にサンプリングされ、他の実施形態では、約10フェムト秒を超えない時間的スキュー又はラグを有している。注目すべきことに、例示されたシステムは、そこに含まれる情報に影響を与えないように、取得した広帯域の位相勾配信号内における非線形の歪み(例えば、特定のフィルタを介して導入され得る歪み)を最小化することである。
【0062】
なおも図1Aを参照すると、評価システム110は、取得した生物物理学的信号データセット108(この実施形態では、ノイズ除去されたデータセット108)を、例えばネットワークなどを介して受信するように構成され、そして、いくつかの実施形態では、変換操作120(「位相空間変換」120として表記されている)によって、1つ又は複数の3次元ベクトル心電図データセット122を生成するように構成され、さらに、例えば、位相勾配生物物理学的信号データセット108に関する1つ又は複数の機械学習分析操作及び/又は1つ又は複数の予測操作(ステップ124として図示されている)などを介して分析される。変換操作並びに機械学習/予測器操作の例については、以下で説明するとともに、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2013/0096394号明細書にも記載されている。いくつかの実施形態では、取得した生物物理学的信号データセット108は、明示的に変換されることなく、後続の処理のために多次元データセットとして構造化され、これは、例えば、中間データセットが視覚化されない場合などである。
【0063】
いくつかの実施形態では、測定システム102は、取得した生物物理学的信号の信号品質を評価するように、そして、そのような評価に基づいて、取得した信号データセットの一部又は全部を拒絶するように、構成される。図1Bは、別の例示的な実施形態による、非同期ノイズ及びアーティファクト混入の定量化により、取得した生物物理学的信号品質を評価することに基づいて、取得した生物物理学的信号を拒絶するように構成された例示的なシステムを示す図である。いくつかの実施形態では、測定システム102は、非同期ノイズの定量化に基づいて、非同期ノイズ除去操作118及び信号品質評価操作130を実行するように構成される。
【0064】
取得した生物物理学的信号108の臨床分析が、いくつかの実施形態では、測定システム102とは別個のシステム(例えば、評価システム110)上で実行され得ることのために、信号品質チェックは、取得した生物物理学的信号データセット108が後続の臨床分析に適していることを、確保する。この操作は、非侵襲的測定システム102が生物物理学的信号データセットを再取得することを容易に促すことができ、これにより、生物物理学的信号データセットが、臨床評価のための更なる処理及び分析を受ける前に、あるいは、臨床評価のための更なる処理及び分析に対して利用可能となる前に、取得した生物物理学的信号データセットが、非同期ノイズ(例えば、骨格筋関連ノイズなど)が混入していないことが、確保される。
【0065】
いくつかの実施形態では、信号品質評価操作130は、ほぼリアルタイムで実行され、例えば、約1分間未満で又は約5分間未満で実行され、これに応答して、システム102は、生物物理学的信号データセットの再取得を促すことができる。このほぼリアルタイムでの評価は、必要であれば、患者が検査室を離れる前に、あるいは、患者が、生物物理学的信号が取得される他の場所を離れる前に、生物物理学的信号データセットの再取得を可能とする。臨床出力を決定するために評価システム110によって実行される分析は、いくつかの実施形態では、およそ10分間~15分間で実行される。他の実施形態では、この分析は、約5分間未満で実行される。さらに他の実施形態では、この分析は、およそ5分間~10分間で実行される。なおも他の実施形態では、この分析は、約15分間超で実行される。
【0066】
いくつかの実施形態では、信号評価は、患者の場所と同じ物理的な場所(例えば、患者の寝室内に配置されたあるいは臨床医の診察室に配置された1つ又は複数のコンピューティング及び/又はストレージデバイス上)において全体的に実行される。いくつかの実施形態では、信号評価は、患者の場所とは異なる物理的な場所(例えば、別の部屋、別の建物、別の州、別の国、等に配置された1つ又は複数のコンピューティングデバイス及び/又はストレージデバイス上)において全体的に実行される。いくつかの実施形態では、信号評価は、複数の物理的な場所並びに複数のコンピューティングデバイス及び/又は複数のストレージデバイスを含めて、ネットワーク化された環境内において実行される。このようなネットワーク化された環境は、例えば、様々なプライバシー要件を遵守するために、信号が評価される患者のプライバシーを確実に保護するものとすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、信号評価は、信号が患者から取得されている際に、例えば、信号評価システムが動作可能であるのと同程度の速さで又はほぼ同程度の速さで(例えば、信号評価システムの構成、ネットワークの制約、等に応じて、リアルタイムで又はほぼリアルタイムで)実行される。他の実施形態では、信号評価は、信号が取得される際に部分的に行われ、かつ、患者から取得され終わって保存された後に部分的に行われる。さらに他の実施形態では、患者から取得される際には、いずれの信号も評価されることはなく、その代わりに、患者から取得した時点と比較して後の時点で評価するために保存される。当然のことながら、すべての信号は、評価され得る時間に関係なく、後の評価又は再評価のために、取得後には保存されてもよい。
【0068】
1人又は複数人の臨床医は、本明細書において説明するシステム及び方法によって実行された患者の信号評価に対して全体的に又は部分的に基づいて、患者の臨床評価を実行してもよい。そのような臨床医は、物理的に患者と一緒にいてもよく、及び/又は、患者とは物理的に離間した場所にいてもよい。本明細書において説明する信号評価システムは、また、例えば信号評価システムが実行する1つ又は複数の操作の臨床出力などによって、全体的に又は部分的に、患者の臨床評価を実行することもできる。これに代えて、信号評価システムは、臨床医が患者に対して独自の臨床評価を行う際に使用するために、臨床評価に満たない情報を単に提供してもよい。そして、信号評価システムが臨床出力を提供する場合、臨床医は、例えばそのような臨床医の関与及び最終的な意思決定が要望されるあるいは(例えば、法律、プロトコル、保険要件、等によって)要求されるケースでは、患者に関する独自の最終的な臨床評価を行う際に、そのような臨床出力を受容するかあるいは拒絶するかを選択してもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、非侵襲的測定システム102は、生物物理学的信号データセットの取得が不合格であったあるいはそのような取得が不適切であったことの通知126(図1Bでは、「信号品質評価が不合格であったことを表示する」126として表記されている)を生成するように構成され、この通知は、また、生物物理学的信号の再取得を促してもよい。通知は、任意の形態であってもよく、例えば、技術者又は臨床医に対して提供される及び/又は患者に対して提供されるような、視覚的出力(例えば、画面上の1つ又は複数のインジケータライト又はインジケータ)、音声出力、触覚的/振動的出力(又はこれらの任意の組合せ)、などであってもよい。測定システム102のうちの、例えば通知126を提示し得るユーザインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース)の例は、2016年8月26日付けで出願された「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題する米国特許出願公開第2017/0119272号明細書、及び、「Display with Graphical User Interface」と題する米国意匠出願第29/578,421号、に記載されており、これら文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。この目的のため、拒絶された生物物理学的信号データセットの全部又は一部は、臨床出力112を得るための後続の分析(例えば、120、124)においては使用されなくてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、拒絶された生物物理学的信号データセットは、任意選択的に、取得した信号を拒絶する原因となった欠陥及び/又は他の理由に関する更なる(トラブルシューティング)分析(132)のために、任意の適切なメモリ(128)に格納されてもよい。この目的のため、拒絶された生物物理学的信号データセットの全部又は一部は、任意のそのような分析132における成果に依存して、臨床出力112を得るための後続の分析(例えば、120、124)において使用されなくてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、システム200は、臨床出力112を得るために、あるいは、例えばシステム200の動作能力を向上させる等のために、後続の分析(例えば、120、124)において、拒絶された生物物理学的信号データセットの全部又は一部を使用してもよい。
【0072】
他の実施形態では、臨床医又は他のオペレータは、単独であるいはシステム200と関連させてあるいはシステム200に補助されて、拒絶された生物物理学的信号データセットの全部又は一部が使用され得るかあるいは使用され得ないかを、及びどのように使用されるあるいは使用されないかを、制御してもよい。
【0073】
図2は、例示的な実施形態による例示的な評価システム200を示す図である。システム200では、CADの評価を提供するために、冠状動脈疾患(CAD)評価アルゴリズムの異なる構成要素どうしが組み立てられる。これは、信号の受信によって開始され、CADの最終的な評価、1つ又は複数の患部動脈に対してのそのCADの局在化、及び/又は、1つ又は複数の位相空間断層データセット/画像(「PSTデータセット/画像」とも称される)、からなるセットを返すことで終了する。よって、システム200は、例えば被検体の冠状動脈のいずれかに病変があるかどうかなどを決定するに際して使用されてもよい。CAD局在化評価は、また、例えば冠状動脈疾患が決定された場合などに提供されてもよく、その存在は、左回旋動脈(LCX)、左前下行動脈(LAD)、右冠状動脈(RCA)、他の動脈、あるいは、これらのいくつかの組合せ、などの適切な冠状動脈に局在化し得る。加えて、PSTデータセット/画像は、例えば評価に関する2次元的な又は3次元的なグラフィック表現が、位相空間分析を介して生成されて出力されてもよい。
【0074】
有用な位相空間の概念及び分析の例は、「Non-invasive Method and System for Measuring Myocardial Ischemia, Stenosis Identification, Localization and Fractional Flow Reserve Estimation」と題する米国特許出願公開第2018/0000371号明細書、2018年12月26日付けで出願された「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Volumetric Objects」と題する米国特許出願公開第2019/0214137号明細書、「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と題する米国特許出願公開第2019/0200893号明細書、に記載されており、これら特許文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、システム200は、位相空間分析及び/又は血管造影等価レポートでは、疾病の存在及び/又は非存在の評価、及び/又は、研究対象をなす生理学的系統に関して推定された生理学的特性(他の中間データセットの中で)などの、保存された位相空間データセット/画像及び/又は臨床出力112を表示するように構成された医療提供者ポータル(本明細書では「ポータル」とも称される)を含む。医療提供者ポータルは、いくつかの実施形態では、医師ポータル又は臨床医ポータルと称され得るものであって、リポジトリ(例えば、ストレージエリアネットワーク)からレポート及び/又は位相空間容積データセット/画像及び/又はレポートのための臨床出力112(及び他のデータ)に対してアクセスしたり、それらを取得したり、及び/又は、それらを表示又は提示したり、するように構成される。
【0076】
いくつかの実施形態では、医療提供者ポータルは、位相空間体積データセット/画像(あるいは、それから派生する中間データセット)及び/又は臨床出力112を、解剖学的マッピングレポート、冠状動脈ツリーレポート、及び/又は、17セグメントレポートの中で、あるいはそれらと一緒に、表示するように構成される。医療提供者ポータルは、データを、例えばリアルタイムで(例えば、ウェブオブジェクトとして)、電子文書として、及び/又は、他の標準化又は非標準化されたデータセット視覚化/画像視覚化/医療データ視覚化/科学データ視覚化フォーマットで、提示してもよい。医療提供者ポータルは、いくつかの実施形態では、リポジトリ(例えば、ストレージエリアネットワーク)から、レポート及び/又は位相空間体積データセット/画像及び/又はレポートのための臨床出力(及び他のデータ)に対してアクセスしてそれらを取得するように構成される。医療提供者ポータル及び/又はリポジトリは、患者情報及び他の個人データのプライバシーに関する法律及び規制(例えば、1996年の米国医療保険の相互運用性及び説明責任に関する法律、及び、EU一般的データ保護規則、など)、並びに、医療デバイスの販売に関する法律(例えば、米国連邦食品医薬品法、及び、EU医療デバイス規則、など)に準拠することができる。例示的な医療提供者ポータルに関する更なる説明は、「Method and System for Visualization of Heart Tissue at Risk」と題する米国特許出願公開第2018/0078146号明細書に記載されており、この特許文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。特定の実施形態では、医療提供者ポータルは、医療従事者に対して患者の医療情報を提示するように構成されているけれども、他の実施形態では、医療提供者ポータルは、患者、研究者、学者、及び/又は、他のポータルユーザがアクセスし得るものとすることができる。
【0077】
解剖学的マッピングレポートは、いくつかの実施形態では、影響を受けた心筋の心臓領域に関する回転可能なかつ任意選択的に拡縮可能な3次元解剖学的マップについての、1つ又は複数の描写を含む。解剖学的マッピングレポートは、いくつかの実施形態では、心筋の識別された領域を有したモデルに関する1つ又は複数の3次元ビューのセット及び/又は2次元ビューのセットの間にわたって、表示して切り替えるように構成される。冠状動脈ツリーレポートは、いくつかの実施形態では、主要な冠状動脈に関する1つ又は複数の2次元ビューを含む。17セグメントレポートは、いくつかの実施形態では、心筋の対応する領域に関する1つ又は複数の2次元の17セグメントビューを含む。レポートのそれぞれでは、心筋内の位置における心疾患又は症状の存在を示す値、並びに、心疾患の存在を示すラベルが、例えば、影響を受けた心筋の領域に関するカラーハイライト、及び、影響を受けた1つ又は複数の冠状動脈の領域をハイライトするアニメーションシーケンス、などを使用して、予測される閉塞領域を示す静的と動的との双方の視覚化要素としてレンダリングされてもよい。いくつかの実施形態では、レポートのそれぞれは、心疾患の有無(例えば、深刻な冠状動脈疾患の存在など)を示すためのテキストラベルと、所与の冠状動脈疾患における心疾患の存在(すなわち、位置)を示すためのテキストラベルと、を含む。
【0078】
心血管システムの状況においては、いくつかの実施形態では、医療提供者ポータル(及び、対応したユーザインターフェース)は、リスクのある心筋及び/又は閉塞された冠状動脈を識別する心筋組織の要約情報視覚化を提示するように構成される。ユーザインターフェースは、入力機能を有したタッチ感知式画面又はプレタッチ感知式画面を備えたグラフィカルユーザインターフェース(「GUI」)とすることができる。ユーザインターフェースは、例えば、患者の診断及び処置を指示するために、及び/又は、研究対象をなす患者を評価するために、使用することができる。視覚化は、研究に関する所与のレポートに関して、影響を受けた心筋の心臓領域に関する回転可能な3次元解剖学的マップ、主要な冠状動脈に関する対応した2次元ビュー、及び、主要な冠状動脈に関する対応した2次元17セグメントビュー、についての複数の描写を含んでもよく、これにより、心臓機能及び心血管機能における異常を特徴付けるための心筋の構造的特徴点の解釈及び評価を容易とすることができる。
【0079】
図2に示す実施形態では、評価システム200の実行は、いくつかの実施形態においてさらに説明するように、信号が後続の評価のために充分な品質であるという要件によって、その開始時にゲーティングされる。システム200の他の実施形態では、この信号品質要件は、任意選択的なものであってもよく(例えば、システム200及び/又はユーザによって選択的に活性化される)、また、全く存在しないものであってもよい。
【0080】
システム200では、被検体(例えば、患者)の性別及び/又は年齢210を示すデータと一緒に、位相信号レコーダ(PSR)信号205が、入力として受信されてもよい。一実施形態では、PSR信号205(及び、その対応したデータセット)は、広帯域の位相勾配生物物理学的信号の一例である未修正信号である。特定の実装では、「ORTH1」、「ORTH2」、及び「ORTH3」と名付けられた3つのチャネルからのデータ(信号205に関連する)は、ストレージエリアネットワーク(例えば、「位相信号データリポジトリ」(PSDR)と称される)からダウンロードされたPSRファイルから解析される。図1A及び図1Bにおいて概略的に示すように、一組をなす6個のプローブ又は電極(例えば、プローブ114a~114f)が、被検体106上に配置される。これらの電極114は、例えば被検体の身体に関する3つの直交軸に沿ってなどのようにして、配置されてもよい。一実装では、チャネル「ORTH1」からのデータは、被検体の身体を被検体の左側から右側へと通過するこれら直交軸のうちの1つに沿って配置されたあるいはそのような直交軸の近傍に配置された電極114から位相空間レコーダによって記録されるバイポーラ取得チャネルデータシリーズに対応する。また、チャネル「ORTH2」からのデータは、被検体の身体を被検体の上側から下側へと通過するこれら直交軸のうちの第2の軸に沿って配置されたあるいはそのような第2の軸の近傍に配置された他の2つの電極114から位相空間レコーダによって記録される第2のバイポーラ取得チャネルデータシリーズに対応する。そして、チャネル「ORTH3」からのデータは、被検体の身体を前方から後方へと通過するこれら直交軸のうちの第3の軸に沿って配置されたあるいはそのような第3の軸の近傍に配置された2つの更なる電極114から位相空間レコーダによって記録される第3のバイポーラ取得チャネルデータシリーズに対応する。ORTH1、ORTH2、及びORTH3の信号、及びそれらに対応したデータセットは、例えば、位相空間座標内において、相互に直交した軸内に、配置することができる。ORTH1信号、ORTH2信号、及びORTH3信号(例えば、広帯域の位相勾配生物物理学的信号の例)が、ベクトル心電図デバイスからより明確に区別するために、いくつかの実施形態において参照されることに、留意されたい。
【0081】
図3図21に関するいくつかの実施形態においてさらに説明するように、例えば操作130を実行するために図1の測定システム102内に設けられ得る信号品質評価システムモジュール300は、入力信号383(例えば、PSR信号205、など)を評価することにより、後続の処理を進めてもよいかどうかを決定する、あるいは、信号が受容不可能であって(例えば、ノイズが多すぎる)、後続の処理を進める前に別の入力信号を取得すべきであるかどうかを決定する。よって、図示の実施形態では、信号品質評価システムモジュール300の出力は、更なる分析を進めるかどうかの評価(例えば、図2から理解されるように、中間処理構成要素220~240によって実行される)と、分析に適した信号のための時間ウィンドウの決定と、である。評価が、例えば取得したPSR信号205がとても適している(すなわち、受容可能である)などのことを示している場合には、PSR信号と、その対応したデータセットと、決定された時間ウィンドウとは、中間処理構成要素による後続の処理のために提供され、そうでない場合には、信号品質評価システムモジュール300は、取得したPSR信号(例えば、信号205)が適していない(すなわち、受容不可能である)こと、そして、後続の処理を進めるために、別のPSR信号を取得しなければならないことを、(例えば、ユーザに対して)示す。上述したように、他の実施形態では、モジュール300によってレンダリングされた受容不可能な信号品質表示は、システム200及び/又はユーザによって上書きされてもよく、入力信号383の一部又は全部は、後続の処理において使用されてもよい。加えて、入力信号383の全部又は一部が、信号品質評価システムモジュール300に関連して使用されるかどうかにかかわらず、そのような信号383は、任意選択的に、全体的に又は部分的に、分析のために及び/又は将来の使用のために、メモリ内に格納されてもよい。
【0082】
図2の実施形態における中間処理構成要素は、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)予測モジュール220と、視覚的予測生成モジュール225と、メタデータ予測生成モジュール230と、予測組合せモジュール235と、CVMGD(周期変動を媒介した性別依存)補償モジュール240と、を含む。すべてのこれら中間処理構成要素又はモジュールのいくつかは、他の実施形態で想定されているように、システム200の他の構成において存在してもよいし、あるいは、存在しなくてもよい。
【0083】
CNN予測生成モジュール220は、信号品質評価モジュール300から、未修正のPSR信号205(PSDRからダウンロードされたPSRファイルから解析された、ORTH1及びORTH3からのチャネルデータ)と、分析に適した信号に関する時間ウィンドウとを、入力として受領する。CNN予測生成モジュール220の出力は、1つの例示的な実装では、CNNモデル129及びCNNモデル85などの例えば2つの個別のCNNモデルの加重和などを使用した全体的なCAD評価である。システム200の他の実施形態は、1つのCNNの使用、あるいは、3つ以上のCNNsの使用、を想定している。
【0084】
視覚的予測生成モジュール225は、信号品質評価300から、未修正のPSR信号205(PSDRからダウンロードされたPSRファイルから解析された、ORTH1、ORTH2、及びORTH3からのチャネルデータ)を、入力として受領するとともに、視覚的特徴点の抽出により、さらに、それらの視覚的特徴点にわたっての線形関係の適用により、全体的なCAD評価を出力する(以下においては、「視覚的特徴点評価」と称す)。
【0085】
メタデータ予測生成モジュール230は、信号品質評価モジュール300から、未修正のPSR信号205を、入力として受領する。モジュール230は、また、被検体の性別(すなわち、生物学的性別)及び/又は年齢に関連したあるいはそのような性別及び/又は年齢を示すデータ210を、入力として受領する。モジュール230は、性別及び/又は年齢に関するデータを考慮に入れた線形関係(以下の例示的な式では、「メタデータ」と称される)の使用を通して、被検体に関する全体的にCAD評価を出力する。
【0086】
図2の実施形態では、予測組合せモジュール235は、CNN予測生成モジュール220からの全体的なCAD評価と、視覚的予測生成モジュール225からの全体的なCAD評価と、メタデータ予測生成モジュール230からの全体的なCAD評価とを、入力として受領する。
【0087】
予測組合せモジュール235からの出力は、中間的で連続的(非二値的)で全体的なCAD評価(以下の例示的な式では、「中間CAD評価」と称される)を含む。予測組合せモジュール235がどのように動作し得るかに関する詳細は、以下において提供される。
【0088】
zスコア正規化は、分布をゼロにおいて中心合わせするとともに、標準偏差が1となるように分布を拡縮する統計的技法であり、このプロセスからの出力は、「zスコア」と称される。いくつかの実施形態で使用されるように、zスコア正規化は、評価(例えば、220、225、230からの評価)が、平均化操作によって組み合わされ得るだけでなく、すべての評価が組み合わされた時に1つ又は複数の評価が、望ましくない態様(例えば、支配する)で1つ又は複数の他の評価に影響を与えないように、すなわち、各評価が均等に重み付けされているように及び/又は分配されているように、同等であること(例えば、それぞれが、同じ平均値及び標準偏差を有している)を確保するために使用される。他の実施形態では、zスコア正規化は、改変されてもよく、異なる態様で使用されてもよく、追加的な処理と関連して使用されてもよく、全く使用されなくてもよく、あるいは、例えば1つ又は複数の評価の優先的な重み付け及び/又は分配などを所望に応じて与えるために、全体が1つ又は複数の他の技法によって置き換えられてもよい。
【0089】
一実装では、構成要素220からの「組み合わされたCNN評価」(この例では、2つの個別のCNNモデルであるCNNモデル129及びCNNモデル85の加重和として既に示した)は、式1に示すように、構成要素/モジュール230の全体的なCAD(メタデータ)評価に関する出力に対して、1対3(CNN対メタデータ)という重み付けで、加算される。その後、結果として得られた組み合わされたCNN評価(式1)は、N=411ステージI PSRテストセットの平均値を表す事前計算された定数(「N=411_CNN_平均値」)を減算することによって正規化され、この正規化された値は、その同じセットの標準偏差を表す第2の事前計算された定数(「N=411_CNN_標準偏差」)によって割算され、これらの2つの操作を実行した結果が、式2に示すように、組み合わされたCNN評価に関するzスコアである。
【数1】
【0090】
この実装では、視覚的予測生成モジュール225が出力したCAD評価を、メタデータ予測生成構成要素230が出力したCAD評価と結合させ、これにより、女性に対しては、これらの出力の平均値を使用する(式3)けれども、男性に対しては、メタデータ予測生成モジュール230の出力のみを使用する(式4)。その後、女性と男性の「視覚的特徴点評価」の値どうしを、例えばユニオン演算子
【数2】
のセットを介してなどによって結合し、これにより、第1の女性セットと第2の男性セットとからなるメンバーを含む新たなセットを提供する。その後、これらの結合された値は、N=411ステージI PSRテストセットの視覚的特徴点評価の平均値を表す事前に計算された定数(「N=411_VF_平均値」)を減算することによって正規化される。その後、得られた正規化された値は、同じセットの標準偏差を表す2番目の事前計算された定数(「N=411_VF_標準偏差」)によって割算される。これら2つの演算を実行した結果が、式6に示すようなzスコアである。
【数3】
【0091】
実施形態のこの例示的な実装を続けると、次に、CNN評価からの出力(すなわち、式2によるzスコア)と、視覚的特徴点評価からの出力(すなわち、式6によるzスコア)と、を平均化することにより、式7に示すように、予測組合せモジュール235からの最終出力として「中間CAD評価」値を作成する。言い換えれば、モジュール235は、各患者について、これらのzスコアの出力を合計し、その後、その合計値を2で割算する。
【数4】
【0092】
実施形態のこの実装を続けると、CVMGD補償モジュール240は、被検体の性別及び/又は年齢データ210と、予測組合せモジュール235から出力された中間CAD評価と、の双方を、入力として受領するとともに、「最終的で連続的なCAD評価」と称され得る最終的で連続的な(非二値的)CAD評価値を出力する。構成要素240は、周期変動スコアの概念を利用し、ORTH1及びORTH3に関する(さらに、いくつかの実施形態では、ORTH2に関する)最大変動スコアを計算する。この周期変動スコアは、心周期どうしの間の変化に関する情報を取得し、そのスコアの所与の範囲内で、男性被検体に対して特に適用可能であることが観測されるCAD症状に関する情報内容を埋め込む電気生理学的変動を取得する。モジュール240内に実装された補償操作は、男性被検体に関するその周期変動情報を活用することにより、全体的な疾病評価(例えば、視覚的特徴点評価及び機械学習評価を通して提供されるものなど)を改良する。実際、CVMGD補償モジュール240は、周期変動の所与の範囲内で、予測組合せ構成要素235から出力された際の男性被検体に関する正のCAD評価が、実際には負のCAD評価である可能性が高く、逆に、男性被検体に関して予測組合せ構成要素235が生成した負のCAD評価が、正のCAD評価である可能性が高い、という基礎的根拠に基づいて動作している。
【0093】
いくつかの実施形態では、CVMGD補償モジュール240は、(i)男性被検体の周期変動スコア(例えば、モジュール300によって計算される)が、事前に規定された範囲内(例えば、0.0071~0.0079)であるかどうかと、(ii)モジュール235によって出力された際の、所与の男性被検体に関する中間CAD評価値が、事前規定された「しきい値」(例えば、モジュール240内に格納されている)と比較して、量Xの分以上であるかどうかと、の両方を決定するように構成される。両方の条件が満たされる場合(例えば、特定の周期変動シグネチャを有した男性被検体に関する正のCAD評価の場合)には、CVMGD補償モジュール240は、男性被検体に関する最終的で連続的なCAD評価値を、しきい値から量Xを差し引いたものとして出力する(すなわち、負のCAD評価を提供する)ことを決定するように構成されており、ここで、Xは、しきい値から、中間CAD評価スコアとしきい値との間の差を差し引いたものとして、決定される。すなわち、CVMGD補償モジュールは、式7を介して決定された中間CAD評価値を、しきい値からXを引いた値と同等な又は同じ大きさの値へと、調整する。逆に、CVMGD補償モジュール240は、(i)男性被検体の周期変動スコア(モジュール300内に格納されている)が、周期変動スコアのその同じ事前規定された範囲内にあることと、(ii)中間CAD評価値が、その同じ事前規定されたしきい値と比較して、量Yの値の分よりも小さいことと、の両方を決定するように構成されている。両方の条件が満たされた場合(特定の周期変動シグネチャを有した男性被検体に関する負のCAD評価の場合)には、CVMGD補償モジュール240は、最終的で連続的なCAD評価スコアを、しきい値に量Yを加算したものとして決定する(すなわち、正のCAD評価を提供する)ように構成されており、ここで、Yは、しきい値に、しきい値と中間CAD評価スコアとの間の差を加算したものとして、決定される。すなわち、CVMGDモジュールは、中間CAD評価値を、しきい値にYを加算したものと同等又は同じ大きさの値へと調整する。被検体が上記シナリオのいずれにも該当しない場合には、被検体のスコアは、モジュール240によって修正されることはなく、元の値が、変更されることなく通過する。修正される場合、この変更は、先に規定したように、周期変動の所定の範囲内では、男性に関する正のCAD評価(予測組合せ構成要素235からの出力として)が、負である可能性が高く、逆に、男性に関する負のCAD評価が、正である可能性が高いという情報を埋め込む。
【0094】
図2の実施形態に関するモジュール240の例では、(i)0.14460082598168という中間CAD評価スコア、並びに、0.0071及び0.0079という事前規定された(周期変動)しきい値(0.0071より大きく、かつ、0.0079より小さい)内にある周期変動スコア(ORTH1及びORTH3の最大値)と、(ii)0.13460082598168という事前規定された(CAD評価)しきい値と、を有した男性被検体を想定しており、この場合、CAD評価は、モジュール240によって実行される補償操作によって、被検体に対して0.124600825981680という中間CAD評価スコアが割り当てられるように修正される(例えば、0.13460082598168から、事前の中間CAD評価スコア0.14460082598168からしきい値0.13460082598168を差し引いたもの、を差し引いた値として計算される)。結果として得られた最終的で連続的なCAD評価スコアは、ここでは、しきい値と、入力された中間CAD評価値との間の差の分だけ、0.13460082598168というしきい値を下回るようになったため、(以前はしきい値よりも大きかった)中間CAD評価スコアは、ここでは、しきい値よりも小さくなるように調整される。そして、修正されたスコアが、モジュール240から出力される。実際、男性被検体に関して予測組合せ構成要素235によって生成された際の正のCAD評価は、ここでは、負の評価として出力される。
【0095】
信号品質評価モジュール300及びCVGMD補償構成要素240の出力は、様々な終了ブロック又はモジュール/構成要素によって実行される後続の終了処理において様々に使用され、様々な終了ブロック又はモジュール/構成要素は、図2のシステム200では、最終的なCAD予測モジュール250と、局在化予測生成モジュール255と、位相空間体積データセット/画像生成モジュール260(「PST生成」260として図示されている)と、を含む。
【0096】
最終的なCAD予測モジュール250は、CVMGD補償構成要素240からの最終的で連続的なCAD評価を使用し、最終的な二値CAD評価を、出力として提供する。一実装では、最終的で連続的なCAD評価が、0.13460082598168というしきい値以上である場合には、被検体は、CAD陽性と予測され、そうでない場合には、被検体は、CAD陰性と予測される。しきい値(例えば、0.13460082598168)の精度は、この例において生成された際にはしきい値が特定の被検体に属したスコアに対応していることのために、及び、分析時及び進展時にしきい値源を特定するために使用し得ることのために、14桁の有効数字を有している。他の実施形態では、他の様々な精度を有したそのようなしきい値の値を、使用してもよい。
【0097】
局在化予測生成モジュール255は、最終的CAD予測モジュール250から出力された最終的な二値CAD評価と、被検体の冠状動脈(例えば、LCX、LAD、RCA)の二値局在化評価とを、入力として使用し、CAD局在化評価を出力する。
【0098】
PST生成モジュール260は、いくつかの実施形態では、未修正のPSR信号205を(信号品質評価システム300を介して)使用し、PSTデータセット/画像を出力する。他の実施形態では、PST生成モジュール260は、評価システム110内の他のモジュールによって前処理されたPSR信号を使用する。
【0099】
図3は、例示的な実施形態による例示的な信号品質評価システム300を示す図であり、図4は、別の例示的な実施形態による、信号品質を評価するための方法400の実装に関する操作フロー図である。信号品質評価システム300の構成要素は、信号品質評価のための、後続の分析を可能とする効果的な方法論を作成するために組み合わされる。この信号品質評価方法400は、後続の分析のためのゲーティングステージとして機能することができる。
【0100】
システム300は、信号品質評価器305と、測定システム380と、を含む。信号品質評価器305及び測定システム380は、同一のコンピューティングデバイス内に設けられてもよく、あるいは、本開示全体を通して説明するシステムのすべての構成要素と同様に、互いに通信している(互いに直接的に接続又は結合されている、あるいは、有線ネットワーク又は光学ネットワーク又は無線ネットワークを介して互いに通信可能に接続又は結合されている、など)別個のコンピューティングデバイス内に設けられてもよい。ネットワークは、公衆交換電話ネットワーク(PSTN)、セルラー/携帯電話ネットワーク、有線又は無線のイーサーネット(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)、近距離無線通信(NFC)又は他の無線周波数ベースの技術及び規格(例えば、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標)低エネルギ、等)を含むネットワーク、パケット交換ネットワーク(例えば、インターネット)、等を含めた、1つ又は複数の様々なネットワークタイプのものであってもよく、あるいは、それらから構成されていてもよい。図3には、1つの測定システム380のみが図示されているけれども、支持され得る測定システム380の数に制限はない。信号品質評価器305及び測定システム380は、本開示全体を通して説明するシステムのすべての構成要素と同様に、それぞれが、スマートフォン、スマートウォッチ、デスクトップコンピュータ、サーバコンピュータ、メインフレームコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、及びセットトップボックス(それらの任意の組合せを含む)、などの任意の様々なコンピューティングデバイスに関連した1つ又は複数のプロセッサを使用して実装されてもよい。他のタイプのコンピューティングデバイスが支持されてもよい。適切なコンピューティングデバイスは、図22において、コンピューティングデバイス2200として図示されている。
【0101】
測定システム380は、測定システム102などの任意の測定システムであってよく、信号品質評価器305は、測定システム102とは別個に実装されてもよい、あるいは、測定システム102内に実装されてもよい。
【0102】
本明細書において説明するPSR信号などの生物物理学的信号(例えば、約8kHzで取得した信号)を含む任意の電気信号の品質は、様々な発生源に起因し得るノイズによって影響を受ける可能性がある。このようなノイズは、様々な方法で取得した信号品質に影響を与える可能性がある。例えば、ノイズは、被検体又は患者の臨床的徴候又は疾病症状に関連して本明細書において説明するように、後続の分析の性能に対して悪影響を及ぼす可能性がある。後続の分析の性能に対して悪影響を与えることは、様々な態様で現れ得る。処理が遠隔的に(例えば、クラウドサービス内で)実行される時には、信号のリアルタイムでの又はほぼリアルタイムでの拒絶は、患者の再取得又は再測定を容易なものとし、信号の再取得のために、患者が例えば診療所や病院や又は他の診療現場へと戻らなければならないという患者の不便さ及びコストを低減する。さらに、後続の分析が、医師による解釈のためのデータセット/又は画像(例えば、位相空間データセット/画像)の生成を伴う場合には、その画像が、被検体の生理学的状態を正確に表現し得ないことのために、誤った解釈をもたらしかねず、潜在的に、診断及び/又は処置が遅れたりあるいは誤ったものとなったりする可能性がある。後続の分析が、被検体の所与の疾病状態に関する明示的な定量的評価を伴う場合、否定的な実行は、疾病状態の誤った定量化を伴う可能性があり、その結果、処置が遅れたり、誤って保留されたり、する可能性があり、あるいは、追加的な検査又は介入が不必要に行われる可能性があり、患者にとって有害となりかねない。さらに、分析のタイプにかかわらず、ノイズは、出力を生成するための処理時間及び/又はコスト(計算リソースにおいて)を増大させ得る。したがって、ノイズを識別して定量化することを有用なものとすることができ、これにより、全体的に又は部分的に(あるいは、場合によっては、関連する1つ又は複数の信号と一緒にさえ)、除去、最小化、又は他の処理、を行ってもよく、これにより、そのような悪影響を排除又は最小化してもよい。本開示に関連したノイズの例は、例えば、電力線干渉、高周波ノイズ、高周波ノイズバースト、(突発的)ベースライン移動、及び、周期変動、を含む。本開示の目的のために、本明細書において開示する信号内のあらゆる不要な妨害は、その発生源に関係なく、「ノイズ」とみなされ得る。
【0103】
図3及び図4に示す例示的な方法から理解されるように、信号取得ステップ410では、測定システム380は、PSR信号205などの入力信号383を取得し、それを、信号品質評価器305に対して提供する。入力信号383は、被検体に関して取得した生物物理学的信号又は生物物理学的信号データセットであってもよい。心臓信号の場合、ハンドヘルドデバイス又は他のデバイスを使用することにより、例えば、単一のプローブ/センサから、あるいは、任意の数のプローブ/センサ又は電極(例えば、6個のプローブ114a~114f)のセットから、例えば6個のプローブの場合には、上述したように、ORTH1、ORTH2、及びORTH3チャネルに対応した3つの直交軸に沿って配置されたものから、被検体の安静時の胸部生理学的信号を収集してもよい。非侵襲的測定システム102の一部としての電極は、電離放射線、造影剤、運動、又は薬理学的ストレス要因、を使用せずに、(上述したように、セット108が導出される)位相勾配生物物理学的信号を取得することができるけれども、いくつかの実施形態では、それにもかかわらず、関心のある生物物理学的信号は、そのようなプロトコル又は機器と組み合わせて使用することができる。非侵襲的測定システム102は、いくつかの実施形態では、約30秒間~約1400秒間という持続時間にわたって、好ましくは約210秒間という持続時間にわたって、約8kHzでサンプリングする。取得したデータポイントは、データセット108の一部として評価システム110へと転送され、例えば、機械学習したアルゴリズム/予測器を採用する内部の分析エンジンによって、評価される。本明細書において開示する方法及びシステムを適用するに際しては、他の電極セット及び電気写真取得方法論が使用されてもよい。
【0104】
本明細書においてさらに説明するように、ステップ420では、信号品質評価器305は、電力線干渉モジュール320、高周波ノイズモジュール330、高周波ノイズバーストモジュール340、突発的移動モジュール350、及び、周期変動ノイズモジュール360、のうちの1つ又は複数を、あるいはそれらのうちの任意のものを、あるいはそれらのすべてを、決定モジュール310と組み合わせて使用することにより、品質評価を実行して、出力386などの出力を生成する。信号品質評価器305と、及び/又は、電力線干渉モジュール320、高周波ノイズモジュール330、高周波ノイズバーストモジュール340、突発的移動モジュール350、周期変動ノイズモジュール360、のうちの1つ又は複数と、及び/又は、決定モジュール310とは、測定システム102又は信号品質評価システム300を収容した又はそれらを他の態様で含んだデバイス又は装置上にあるいはそのようなデバイス又は装置の内部に常駐されてもよく又は他の方法で配置されてもよく、あるいは、局地的にかつ遠隔的に配置されてもよく(例えば、「クラウド」内で存在及び/又は動作し、インターネットなどのネットワークを介してローカルサーバ/プロセッサと通信する、サーバ/プロセッサ、ソフトウェア、及びサービス、等)、あるいは、品質評価操作の一部がデバイス上で実行され、品質評価操作の一部が遠隔的に実行される、ハイブリッドシステム/ハイブリッド構成であってもよい。適切なデバイス又は装置の一例は、図22において、コンピューティングデバイス2200として図示されている。
【0105】
ステップ430では、出力386を、測定システム380及びユーザに対して提供する。一実装では、出力386は、後続の処理及び分析(例えば、図2に関して説明した中間処理構成要素及び終端処理構成要素によって実行される)のために、取得した1つ又は複数の信号を受容する又は拒絶するためのインジケータを含む。
【0106】
一実装では、入力信号383は、未修正のPSR信号(PSDR(位相信号データリポジトリ)からダウンロードされたPSRファイルから解析された、ORTH1、ORTH2、及びORTH3、からのチャネルデータ)である。上述したように、チャネル「ORTH1」からのデータは、被検体の身体を被検体の左側から右側へと通過する1つの直交軸に沿って配置されたあるいはそのような直交軸の近傍に配置された電極114から位相空間レコーダによって記録されるバイポーラ取得チャネルデータシリーズに対応する。また、チャネル「ORTH2」からのデータは、被検体の身体を被検体の上側から下側へと通過する第2の直交軸に沿って配置されたあるいはそのような第2の直交軸の近傍に配置された他の2つの電極114から位相空間レコーダによって記録される第2のバイポーラ取得チャネルデータシリーズに対応する。そして、チャネル「ORTH3」からのデータは、被検体の身体を前方から後方へと通過する第3の直交軸に沿って配置されたあるいはそのような第3の直交軸の近傍に配置された2つの更なる電極114から位相空間レコーダによって記録される第3のバイポーラ取得チャネルデータシリーズに対応する。ORTH1、ORTH2、及びORTH3の信号、及びそれらに対応したデータセットは、例えば、位相空間座標内において、相互に直交した軸内に、配置することができる。
【0107】
一実装では、出力386は、更なる分析を進めるかどうかの評価と、分析に適した信号の時間ウィンドウであって、最終的には患者がCAD陽性とみなされるかどうかを決定するために使用される時間ウィンドウと、を含む。
【0108】
図3及び図5図7に関してさらに説明するように、電力線干渉モジュール320は、電力線干渉ノイズ(例えば、60Hzの電力線(カナダ、韓国、台湾、米国、及び、日本の一部の地域、などにおいて一般的に使用されている周波数)及びその高調波がもたらすノイズと、50Hzの電力線(中国、フランス、ドイツ、香港、インド、イタリア、スイス、英国、及び、日本の一部の地域、において一般的に使用されている周波数)及びその高調波がもたらすノイズ)を検出するあるいは他の方法で決定する。決定された電力線干渉ノイズは、例えば本明細書においてさらに説明するような処理などの処理のために、決定モジュール310に対して提供される。
【0109】
図3及び図8図10に関してさらに説明するように、高周波ノイズモジュール330は、過剰な信号周波数成分(例えば、一実装では、170Hzよりも大きな周波数成分であり、このような170Hz超の周波数成分は、必ずしも周期的ではなく、パルス及び他のそのようなアーティファクトを含み得る)を、検出するあるいは他の方法で決定する。高周波ノイズモジュール330の出力は、例えば本明細書においてさらに説明するような処理などの処理のために、決定モジュール310に対して提供される。
【0110】
図3及び図11図13に関してさらに説明するように、高周波ノイズバーストモジュール340は、上記の過剰な高周波成分の短いバーストを、検出するあるいは他の方法で決定する。高周波ノイズバーストモジュール340の出力は、例えば本明細書においてさらに説明するような処理などの処理のために、決定モジュール310に対して提供される。
【0111】
図3及び図14図16に関してさらに説明するように、突発的移動モジュール350は、信号の特定のセグメントに局在化した極端なベースラインふらつきであって、信号の歪みを引き起こすのに充分な大きさのふらつきを、検出するあるいは他の方法で決定する。突発的移動モジュール350の出力は、例えば本明細書においてさらに説明するような処理などの処理のために、決定モジュール310に対して提供される。
【0112】
図3及び図17図19に関してさらに説明するように、周期変動ノイズモジュール360は、骨格筋の活性化によって生成された電位を含み得る、心周期に対して非同期的なノイズの定量化を提供する。周期変動ノイズモジュール360の出力は、例えば本明細書においてさらに説明するような処理などの処理のために、決定モジュール310に対して提供される。本明細書において説明する概念は、心臓の状況外の他の周期的な生理学的信号に対して非同期的なノイズを定量化するために適用され得る。
【0113】
一実装では、本明細書において説明する評価は、チャネルレベルで実行され、例えば、ORTH1チャネル、ORTH2チャネル、ORTH3チャネル、上において独立して評価され、処理の後続の段階で結合される。
【0114】
図5は、別の例示的な実施形態による、電力線干渉を評価する方法500の実装に関する操作フロー図である。一実施形態では、電力線係数は、電力線ノイズの混入に関するインジケータとすることができ、より大きな値は、より大きな混入を示す。
【0115】
ステップ510では、電力線係数を、高速フーリエ変換(FFT)を使用して、時間領域から周波数領域へと切り替えることによって、計算する。ステップ520では、FFTピリオドグラムにおける偏向又はピークの存在を、例えば60Hzで、定量化する。いくつかの実施形態では、この方法は、55Hz~58Hz及び62Hz~65Hzにおける平均デシベル値を通してベース局所周波数エネルギを決定すること(例えば、ベース=絶対値(平均値(パワー(55≦周波数≦58又は62≦周波数≦65))))を含み、これにより、その範囲(例えば、58Hz~62Hz)の中央で発生したピークが存在するかどうかを検出するためのベースラインパワーを提供する。その後、方法は、58Hz~62Hzにおける最大デシベル値を通して電力線エネルギの最大値を決定し(例えば、ピーク高さ=ベース-絶対値(平均値(パワー(58≦周波数≦62))))、これにより、58Hz~62Hzにおけるピークを定量化する。その後、方法は、ベースと比較した場合のベース上のピークの高さの比率を決定する。すなわち、以下を決定する。
【数5】
要するに、決定された比率は、60HzのFFTピリオドグラムにおける偏向(又はピーク)の存在を定量化する。
【0116】
ステップ530では、電力線係数を、60Hzの場合に電力線係数に関して上述したのと同じ方法論を使用して計算された、180Hz及び300Hzでの、(60Hzからの)高調波の小さな重み付けでの加算を含めることによって、さらに拡張する。実装に応じて、他の周波数及び高調波を使用してもよいことが想定される。この評価からの出力は、「電力線係数」という基本名称(データチャネルを示すためだけに修正される)を有した、ORTH1チャネル、ORTH2チャネル、及びORTH3チャネル、のそれぞれに関する電力線係数である。ステップ540では、出力(すなわち、電力線係数)を、しきい値と比較されるスコアとして決定することにより、電力線干渉に基づいて入力信号を拒絶するかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、電力線係数スコアは、以下のようにして決定される。
【数6】
一実装では、電力線係数が、486.6というしきい値よりも大きい場合には、電力線干渉に基づいて信号が拒絶される。いくつかの実装では、このスコアを定量化する際に、例えば使用されているデバイスに関して、地理的な考慮が必要な場合がある。例えば、50Hzを使用している地域では、50Hzでの電力線ノイズを定量化するために、スコアの計算を修正してもよい。
【0117】
本明細書では、異なるタイプのノイズに関する説明を補助するために、そして、共通のタイプのラベルを共有するために、図面(プロット)が使用され(例えば、図6図7図9図10図12図13図15図16図18図19)、時間が、横軸(サンプルのユニットにおける時間ポイント)に沿うものとされ、ここでは、8kHzの信号におけるデータポイントの数として反映され(8000サンプル/秒が、取得される)、振幅が、縦軸に沿うものとされていることに、留意されたい。これらの図では、振幅は、mVで示されているけれども、いくつかの実装では、信号の平均を引き算して標準偏差で割算することによって正規化された振幅を使用してもよい(よって、信号を、zスコアへと変換し、例えば、データポイントの平均値からの標準偏差の数へと変換し、符号は、方向性を示す)。
【0118】
例えば、図6は、別の例示的な実施形態による、図5の電力線干渉評価操作の心臓の状況における、例えば最大電力線干渉特性という観測可能な特性を示す図600である。図6は、チャネルレベルでの最大電力線係数を示している。電力線干渉は、-9.15mV~-9.45mVという振幅範囲の周期的な振動として、心室脱分極信号どうしの間において、明瞭に見ることができる。
【0119】
図7は、例示的な実施形態による、例えば図5の電力線干渉評価操作の方法における、しきい値での電力線干渉という観測可能な特性を示す図700である。図7は、狭く受容される電力線係数を示しており、例えば、受容されるであろう第1係数を示しており、この第1係数よりも大きなものは、拒絶される。すなわち、このデータでは、60Hzに関する電力線係数が、受容されることがわかったけれども、180Hz及び300Hzに関する電力線係数は、受容されないことがわかった。
【0120】
図8は、例示的な実施形態による、高周波ノイズを評価する例示的な方法800の実装に関する操作フロー図である。高周波ノイズスコアは、810において、まず定常ウェーブレット変換(SWT)を実行することにより計算される。SWTが、周波数の詳細を犠牲にして時間内の周波数の局在化を可能とすることを除いては、これが機能的に高速フーリエ変換と同様であることに留意されたい。ステップ820では、170Hzよりも大きな成分に対応した第9レベル~第13レベルでのエネルギを保存し、ステップ830では、逆SWTを実行する。これらの変換の結果は、時間領域に戻った高周波成分である(その中間出力がプロットされた場合には、見えるようになる)。
【0121】
ステップ840では、元の信号と、時間領域でSWTによって抽出されたノイズと、の比較を通して、信号ノイズ比(SNR)を、高周波ノイズスコアとして計算する。この評価からの出力は、「高周波ノイズ対信号比」という基本名称を有し、この基本名称は、ソースチャネルを示すためにのみ修正される。
【0122】
ステップ850では、出力(すなわち、高周波ノイズスコア)をしきい値と比較することにより、高周波ノイズに基づいて入力信号を拒絶するかどうかを決定する。一実装では、高周波ノイズスコアが0.05273よりも大きい場合に、信号は、高周波ノイズに基づいて拒絶される。
【0123】
図9は、例示的な実施形態による、例えば図8の高周波ノイズ評価操作における、心臓の状況における最大高周波ノイズという観測可能な特性を示す図900である。ここでは、高周波ノイズは、例えば図9においてボックス902によって部分的に囲まれて示された太くて濃いラインとして見ることができる。図9のこのノイズは、約3mV~約4mVという振幅範囲で始まり、約-2mV~約-4mVへと、ゆっくりとしたベースラインのふらつきを伴って、時間とともに下降傾向である。
【0124】
図10は、心臓の状況における例示的な実施形態による、図8の高周波ノイズ評価操作に関するしきい値における高周波ノイズを示す図1000である。ここでは、信号は、ちょうど受容可能である。x軸の時間スケールは、図9のものよりも小さく、位相波形が、明瞭に識別可能である(例えば、QRS波形、T波形、等)。この特定の例では、高周波ノイズは、心室再分極のオフセットと、心房脱分極事象と、の間におけるインパルスとして、見ることができる。ノイズは、例えばボックス1010で示すように、心室再分極(例えば、「T波」)の後で、かつ、心房脱分極(「P波」)の前に、ベースライン全体に沿って最も顕著である。このようなノイズは、すべての周期において発生している。
【0125】
図11は、高周波ノイズバーストを評価する方法1100の例示的な実装に関する操作フロー図である。方法1100から得られるスコアは、図8に関して説明したのと同じ高周波ノイズを定量化するものではあるけれども、代わりに、1秒セグメントに対して局所化される。このスコアの値は、突発的な又は極端なベースラインのふらつき(本明細書においてさらに説明する)と一緒に、それ自体で後続の分析から信号を除去し得ないけれども、高周波ノイズバースト又は突発的ベースライン移動が起こることなく、信号長さが不充分である(例えば、最低で連続した16秒間、及び、すべてのチャネルにわたって同じ期間)場合には、発生することとなる。
【0126】
この例示的な方法1100に関連したこのスコアの計算は、本明細書の他の箇所で説明する全体的な高周波スコアの計算と同様である。例えば、ステップ1110、1120、及び1130では、図8に関して説明したのと同一の又は同様の方法(それぞれ、810、820、及び830と同様のステップ)を使用して、信号から高周波成分を抽出する。
【0127】
ステップ1140では、図示した例示的なプロセスは、ステップ1130に関連して取得したこの高周波時系列データを使用して、1秒ウィンドウをテストし、その結果を、全信号において計算された際の全体的な中央値の高周波エネルギと比較する。ステップ1150では、一実装において、所与の1秒ウィンドウ、又は、所与の1秒ウィンドウのセットにおいて得られたエネルギが、全体の中央値の2倍よりも大きい場合に、そのセグメントを、高周波ノイズを含有するものとしてフラグ立てする。一実装では、任意の単一の1秒ウィンドウをフラグ立てすることができる。1秒ウィンドウのセットをフラグ立てする場合は、すべてが、全体の中央値エネルギの2倍である1秒ウィンドウと同じ基準を満たさなければならない。したがって、基準は、ウィンドウのセットに関しても、単一のウィンドウに対するものと同じである。
【0128】
一実装では、この評価からの出力は、ソースデータチャネルを示すために修正される2つのスコアである。例えば、スコアは、「中央値高周波信号エネルギ」(全体に中央値の高周波エネルギを示す)及び「高周波ノイズバースト係数」(中央値高周波信号エネルギの4倍よりも大きな任意のウィンドウの1秒エネルギを示す)と表記して出力されてもよい。そのようなウィンドウが複数ある場合には、最大値が返される。
【0129】
図12は、例示的な実施形態による、例えば図11の高周波ノイズバースト評価操作における、最大高周波ノイズバースト1210という観測可能な特性を示す図1200である。この場合、高周波ノイズバースト1210は、数データポイント(例えば、1ミリ秒未満)にわたって持続するインパルスとして特徴付けられる。他の図(図6図7図9図10図13図15図16図18図19)と同様に、x軸の単位は、サンプルであり、y軸の単位は、mV(正規化されていない)である。
【0130】
図13は、例示的な実施形態による、例えば図11の高周波ノイズバースト評価操作における、高周波ノイズバースト図1300の別の観測可能な特性を示す図である。これは、図12に図示したものよりも、高周波ノイズバーストに関するより典型的な特性であり、この図では、図示された時間フレームにわたって観測される1310で示された複数の高周波バーストが存在する。
【0131】
図14は、心臓の状況における例示的な実施形態による、ベースラインの突発的な移動を評価する方法1400の実装に関する操作フロー図である。ベースラインの移動は、この例では、信号の1秒ウィンドウのベースラインが、(前のウィンドウのベースラインと比較して)チャネルの心室脱分極振幅の25%超にわたって変化した場合に、「突発的」として規定される。この文脈における「突発的」に関する他の規定は、取得されて分析される生物物理学的信号のタイプ、患者の生理学的状態、及び、必要に応じた他の要因、に依存して確立されてもよい。
【0132】
ステップ1410では、入力信号の1秒ウィンドウ内におけるベースラインを決定する。ステップ1420では、信号の次の1秒ウィンドウ内におけるベースラインを決定する。ステップ1430では、2つのウィンドウ間におけるベースライン移動に基づいて、スコアを決定する。
【0133】
一実装では、ウィンドウ内における移動が25%未満である場合には、ゼロというスコアが割り当てられる。1秒ウィンドウ内において25%よりも大きな複数の移動が存在する場合には、そのウィンドウには、それらの移動の最大値が割り当てられる。この評価からの出力は、「最大の突発的移動パーセンテージ」という基本名称を有し、この基本名称は、ソースチャネルを示すためにのみ修正される。
【0134】
図15は、心臓の状況における例示的な実施形態による、例えば図14の突発的ベースライン移動評価操作における、被検体に関する最大の突発的移動という観測可能な特性を示す例示的な図1500である。ここで、位相信号は、最初は100mVの振幅で安定しているが、それに続いて、まずこのベースラインの値が、20mV程度低下し、続いて30mV付近にまで、大きく低下している。これらの突発的なベースラインの変化の際には、位相信号は、ひどく減少する、あるいは存在しない。
【0135】
図16は、心臓の状況における例示的な実施形態による、例えば図14の突発的ベースライン移動評価操作における、約50%の突発的移動という観測可能な特性を示す例示的な図1600である。これは、突発的ベースライン移動に関するより典型的な例であって、ここでは1610として図示されており、1610は、信号振幅に関する上向き移動と、この直後に続く同程度の下向き移動と、を図示しており、この信号振幅の移動によって、移動の頂部での心室脱分極事象が、その1秒ウィンドウの前の心室脱分極事象よりもおよそ50%大きな振幅を有することとなる。
【0136】
図17は、心臓の状況における例示的な実施形態による、周期変動を評価する方法1700の実装に関する操作フロー図である。位相周期変動(心臓系において、また、他の生理学的系統において、あるいは、それらの組合せにおいて)の検査は、非同期ノイズを明らかにし、これは、筋ノイズアーチファクトの存在を、及び、位相周期とのアライメントを欠く他のタイプのノイズを、定量化することができる。
【0137】
周期変動ノイズは、位相信号の周波数範囲の帯域内にあって同様の振幅を有した成分を検出する、図17の例示的な技法を使用して計算され得る。
【0138】
ステップ1710では、各心室脱分極事象(例えば、心室の電気的活性度が最大となる各位相周期中の時点)にフラグ立てすることによって、選択されたチャネル内のすべての位相周期を検出する。
【0139】
ステップ1720では、検出したすべての位相周期を代表するテンプレート位相周期を作成する。ステップ1730では、検出した各位相周期を、テンプレートと比較し、その差を定量化する。
【0140】
ステップ1740では、本技法において、検出した位相周期にわたって結果的に得られた差のすべてを圧縮することにより、チャネルに関する最終的な周期変動スコアを作成する。
【0141】
一実装では、最終的な周期変動スコアは、チャネルORTH1及びORTH3のそれぞれについて計算され、これら2つのスコアのうち大きい方が、信号に関する全体的なスコアを生成するために使用される。この例では、ORTH2は、ORTH1及びORTH3と比較して、3分の2以上の時間にわたって、3分の1の時間よりもはるかに大きな最大の最終的な周期変動スコアを有することが判明したため、この計算からは除外されている(3つのチャネルのそれぞれの最終的な周期変動が最大となる可能性が等しい場合には統計的に予想されること)。したがって、ORTH2チャネルから得られた信号に関する最終的な周期変動スコアを含めることは、他の2つのチャネルからの寄与と比較して、全体的なスコアの値に不均衡に影響を与える又は促進することとなる。しかしながら、代替可能な実装では、最大値を、3つのチャネル(ORTH1、ORTH2、及びORTH3)のすべてから計算してもよい。この代替可能な最大値は、ORTH1及びORTH3に基づく値よりも大きくなることが予想されるけれども、この技法は、信号品質に関する基準をより厳密にするものであり、これは、特定の状況下では有用であり得る。
【0142】
心臓の状況における人間の被検体では、ORTH2ベクトルは、典型的には、被検体の左の鎖骨の真下から、胸郭の端部の真下にまで、広がっており、理論に縛られることなく、他のチャネルと比較して、関連する大きな最終的な周期変動スコアを、よってより大きな関連するノイズレベルを、説明し得るだけの、信号取得に関する2つの問題点が生じる可能性がある。第一に、胸郭の直下におけるORTH2ベクトルの終端は、胃の上に配置され、CADに関して評価を受けるべき被検体は、一般集団と比較して、より大きなボディマス指数(BMI)を有する傾向にある(BMIは、CADに関するリスク要因である)。BMIが大きいということは、典型的には、信号取得に際して使用される2つの電極間のインピーダンスを変化させる腹部脂肪が、過剰に存在することを示している。第二に、ORTH2ベクトルは、左胸筋の横紋筋に対して垂直であり、胸筋に関連したノイズが信号に侵入したり及び/又は影響を与えたりする可能性が高くなる。筋肉のノイズは、収縮によって発生するけれども、収縮は、必ずしも動きを意味するわけではない。例えば、等尺性収縮は、関節の角度に目に見える動きがない筋肉の静的な収縮である。
【0143】
図18は、心臓の状況における例示的な実施形態による、例えば図17の周期変動評価操作における、最大周期変動ノイズという観測可能な特性を示す図1800である。ノイズは、位相周期どうしの間において、心室再分極事象のオフセットの後の期間に、かつ、心房脱分極事象の前の期間に、最も見ることができ、外来の位相波形(1つ又は複数の追加的な心室再分極事象、など)と同様に見える。このノイズの例は、ボックス1810によって示されている。ノイズが、すべての周期で発生していること、及び、被検体の心拍どうしの間において最も見ることができることに、留意されたい(例えば、QRS波形は、「スパイク」として図示されている)。
【0144】
図19は、心臓の状況における例示的な実施形態による、例えば図17の周期変動評価操作における、より小さな周期変動ノイズという観測可能な特性を示す図1900である。この図は、例えば図18のノイズシグネチャと比較して、より小さなレベルのノイズ混入を示している。他の違いは、ここでも見られ、例えば、ノイズは、比較的低い周波数と比較的大きな振幅範囲とを有し、後者は、図19の例では、よりインパルスに似たシグネチャをもたらす。
【0145】
図20は、例示的な実施形態による、信号品質を評価する方法2000の実装に関する操作フロー図である。特に、図20に関して説明した信号ユーザビリティワークフローにおいて、スコアを評価する。
【0146】
ステップ2005では、入力信号を受信する(例えば、PSR信号205)。
【0147】
ステップ2010では、電力線干渉テストを実行して、入力信号の電力線係数が、しきい値よりも大きいかどうかを決定する。そうであれば、ステップ2060において、入力信号を拒絶する。そうでなければ、入力信号は、このテストに合格したとみなされ、この例では、合格したテスト#1を示す2進数が、ブーリアン「論理積」演算子に対して提供される。
【0148】
ステップ2015では、別の高周波ノイズテスト(テスト#2)を実行し、高周波ノイズ対信号比がしきい値よりも大きいかどうかを決定する。そうであれば、ステップ2060において、入力信号を拒絶する。そうでなければ、入力信号は、このテスト#2に合格したとみなされ、この例では、合格したテスト#2を示す2進数が、ブーリアン「論理積」演算子に対して提供される。
【0149】
ステップ2020、2025、及び2030では、突発的移動テスト(総称的に、「テスト#3」)を実行して、突発的移動及び高周波ノイズバーストのためにクリーンな信号セグメントが利用できないかどうかを決定する。ステップ2020、2025、及び2030のそれぞれにおけるテスト#3の部分テストのいずれか1つ以上について、そのようなクリーンな信号セグメントが利用できないことが示された場合には、ステップ2060において、入力信号を拒絶する。そうでなければ、入力信号は、ステップ2020、2025、及び2030での各テストに合格したとみなされ、入力信号がテスト#3であり、合格したテストを示す2進数が、ブーリアン「論理積」演算子に対して提供される。
【0150】
ステップ2030では、入力信号に対して周期変動テスト(テスト#4)を実行して、しきい値よりも大きな周期変動ノイズ(例えば、ORTH1上において又はORTH3上において)が存在するかどうかを決定する。そうであれば、ステップ2060において、入力信号を拒絶する。そうでなければ、入力信号は、このテスト#4に合格したとみなされ、合格したテスト#4を示す2進数が、ブーリアン「論理積」演算子に対して提供される。
【0151】
テストが完了し、上記の2進数がブーリアン「論理積」演算子に対して提供された後に、ステップ2040におけるこの演算子は、その後、これらの入力に基づいてブール演算を実行し、すべての入力2進数が、テストに合格したことを示す場合には、ステップ2070において、入力信号を受容する。この論理では、信号が合格して受容されるためには、すべてのテストに合格しなければならないことを規定している(ステップ2070)。いずれかのテストに不合格であった場合には、その信号は拒絶される(ステップ2060)。
【0152】
よって、任意の所与の信号に関して、(1)患者又は被検体のいずれかのチャネルが、ステップ2010での電力線干渉基準テスト#1に不合格であった場合には、患者の入力信号は拒絶され、(2)被検体のいずれかのチャネルが、高周波ノイズ基準に不合格であった場合には、被検体の入力信号は拒絶され、(3)患者のチャネルORTH1、ORTH2、及び/又はORTH3が、周期変動しきい値に不合格であった場合には、患者の入力信号は拒絶され、(4)患者の入力信号内に、突発的移動又は高周波ノイズバーストが検出された場合には、信号のうちの、突発的移動又はノイズバーストが検出されない少なくとも1つの16秒間セグメントを見つける試みが行われ、そのセグメントが、すべてのチャネルにわたって同じである(例えば、すべてのチャネルが、そのセグメントの間はクリーンである)かどうかが検証され、そのようなウィンドウが見つからなかった場合には、患者の入力信号は拒絶され、そうでない場合(すなわち、そのようなウィンドウが見つかった場合)には、患者の入力信号は、発見されたウィンドウを使用して処理され、(5)患者の入力信号のすべてのチャネルが、すべての基準に合格した場合に、被検体の入力信号は通常に処理され、これは、図20において、「ブーリアン論理積」演算子2040として表示されている(すなわち、すべてのテストに合格しなければならない)。
【0153】
一実装におけるテスト及びしきい値に対して例示的な表を、表1に示す。
【表1】
【0154】
北米では、例えば電力線周波数の検出に関して、典型的には60Hzが使用されるけれども、中国、EU、インド、等の他の地域では、典型的には、60Hzではなく50Hzの電力線周波数が使用されるため、その特定の周波数を対象とするスコアの修正が望まれる場合がある。
【0155】
図21A及び図21Bは、例示的な実施形態による、例示的な信号品質評価構成要素に関するアーキテクチャ及びデータフロー図2100を示している。
【0156】
いずれかのテストの不合格は、例示的な例示では、評価システム200の後続の実行を妨げるものではなく、むしろ、不合格は、以下の機構を通して報告されてもよく、PST評価が試みられることに留意されたい。
【0157】
入力は、位相空間レコーダファイルから解析された未修正のORTH1データ、ORTH2データ、ORTH3データ、を含んでもよい。
【0158】
出力は、データ転送APIs(DTAPI)及びレポートデータベース(RD)へと受け渡されてもよい。一実装では、DTAPI構成要素及びRD構成要素内の後方互換性を維持するために、レガシーフィールド「ノイズボリューム」及び「ノイズレベル平均値」が再使用される。いくつかの実施形態では、レポートデータベースは、他のすべての信号品質評価テストに合格している場合には、ノイズボリュームパラメータを周期変動スコアとして格納するように構成される。(周期変動以外の)いずれかのテストに不合格であった場合には、その状態を表すために、10000というフラグが使用される。周期変動は、一実装では、0.0106というしきい値を有してもよい。
【0159】
例えば、いくつかの実施形態では、ノイズレベル平均値は、表2に提供されるような以下の可能な状態を有した、状態コードを格納する。
【表2-1】
【表2-2】
【0160】
図22は、例示的な実施形態による例示的な実施形態及び態様を実装し得る、例えば評価システム110及び信号品質評価器305を実装し得る、例示的なコンピューティング環境を示している。コンピューティングデバイス環境は、好適なコンピューティング環境の一例に過ぎず、使用範囲又は機能に関するいかなる制限も示唆することを意図したものではない。
【0161】
多数の他の汎用の又は特殊目的のコンピューティングデバイス環境又は構成を、使用してもよい。使用に適した周知のコンピューティングデバイス及び/又は環境及び/又は構成の例は、限定するものではないが、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドデバイス又はラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、ネットワークパーソナルコンピュータ(PCs)、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、組み込みシステム、上記システム又は上記デバイスのいずれかを含む分散型コンピューティング環境、及び同種のもの、を含む。
【0162】
プログラムモジュールなどのコンピュータ実行可能な命令であって、コンピュータによって実行されるコンピュータ実行可能な命令を、使用してもよい。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行したり特定の抽象データタイプを実装したりするような、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造、等を含む。通信ネットワーク又は他のデータ伝送媒体を介してリンクされた遠隔型処理デバイスによってタスクを実行する分散型コンピューティング環境を、使用してもよい。分散型コンピューティング環境では、プログラムモジュール及び他のデータは、メモリストレージデバイスを含めた局所的なかつ遠隔的なコンピュータストレージ媒体内に配置されてもよい。
【0163】
図22を参照すると、本明細書において説明する態様を実装するための例示的なシステムは、コンピューティングデバイス2200などのコンピューティングデバイスを含む。その最も基本的な構成では、コンピューティングデバイス2200は、典型的には、少なくとも1つの処理ユニット2202と、メモリ2204と、を含む。コンピューティングデバイスの詳細な構成及びタイプに応じて、メモリ2204は、揮発性(ランダムアクセスメモリ(RAM)、など)であってもよく、あるいは、不揮発性(リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、等)であってもよく、あるいは、これら2つのいくつかの組合せであってもよい。この最も基本的な構成は、図22において破線2206によって図示されている。
【0164】
コンピューティングデバイス2200は、追加的な特徴点/機能を有してもよい。例えば、コンピューティングデバイス2200は、磁気ディスク又は光学ディスク又はテープを含むがこれらに限定されない追加的なストレージ(取り外し可能なもの、及び/又は、取り外し不可能なもの)を含んでもよい。そのような追加的なストレージは、図22において、取り外し可能なストレージ2208及び取り外し不可能なストレージ2210によって図示されている。
【0165】
コンピューティングデバイス2200は、典型的には、様々なコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、デバイス2200がアクセスし得る任意の利用可能な媒体とすることができ、揮発性媒体と不揮発性媒体との双方、及び、取り外し可能な媒体と取り外し不可能な媒体との双方、を含む。
【0166】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータ、などの情報を記憶するための、任意の方法又は技術で実装される、揮発性及び不揮発性の、並びに取り外し可能な及び取り外し不可能な、媒体を含む。メモリ2204と、取り外し可能なストレージ2208と、取り外し不可能なストレージ2210とのすべては、コンピュータストレージ媒体の例である。コンピュータストレージ媒体は、限定するものではないが、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光学的ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又は他の磁気的ストレージ、あるいは、所望の情報を記憶するために使用され得るとともにコンピューティングデバイス2200がアクセスし得る他の任意の媒体、を含む。任意のそのようなコンピュータストレージ媒体は、コンピューティングデバイス2200の一部であってもよい。
【0167】
コンピューティングデバイス2200は、デバイスを他のデバイスに対して通信可能とする1つ又は複数の通信接続2212を含んでもよい。コンピューティングデバイス2200は、また、キーボード、マウス、ペン、音声入力デバイス、タッチ入力デバイス、等の1つ又は複数の入力デバイス2214を、単独で又は組合せで有してもよい。ディスプレイ、スピーカ、プリンタ、振動機構、等の1つ又は複数の出力デバイス2216を、また、単独で又は組合せで含んでもよい。これらのデバイスすべては、当該技術分野において周知であり、ここで詳細に説明する必要はない。
【0168】
本明細書において説明する様々な技法が、ハードウェア構成要素又はソフトウェア構成要素に関連して、あるいは適切な場合にはこれらの組合せに関連して、実装され得ることは、理解されよう。使用可能なハードウェア構成要素に関する例示的なタイプは、グラフィック処理ユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、等を含む。本開示の主題に関する方法及び装置、あるいは、その特定の態様もしくは部分は、フロッピーディスク、CD-ROM、ハードドライブ、あるいは、プログラムコードがコンピュータなどの機械によって読み込まれて実行された時にはその機械が本開示の主題を実施するための装置となるような任意の他の機械読み取り可能なストレージ媒体、などの有形媒体内において具現されたプログラムコード(すなわち、命令)の形態を取ってもよい。
【0169】
例示的な実装は、1つ又は複数の自立型コンピュータシステムの文脈で本開示の主題に関する態様を利用することに言及し得るけれども、主題は、そのように限定されるものではなく、むしろ、ネットワーク又は分散型コンピューティング環境などの任意のコンピューティング環境に関連して実装されてもよい。さらにまた、本開の主題に関する態様は、複数の処理チップ又はデバイスにあるいはそれらにまたがって実装されてもよく、ストレージは、同様に、複数のデバイスにまたがって効果を発揮してもよい。そのようなデバイスは、例えば、パーソナルコンピュータ、ネットワークサーバ、ハンドヘルドデバイス、及びウェアラブルデバイス、を含むことができる。
【0170】
構造的特徴点及び/又は方法論的行為に特有の言語で主題について説明したけれども、添付の特許請求の範囲において規定される主題が、必ずしも上述した特定の特徴点又は行為に限定されないことは、理解されよう。むしろ、上述した具体的な特徴点及び行為は、特許請求の範囲を実装するための例示的な形態として開示されている。
【0171】
例示された方法及びシステムと一緒に使用され得る様々な処理に関する更なる例は、「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems」と題する米国特許第9,289,150号明細書、「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems」と題する米国特許第9,655,536号明細書、「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems」と題する米国特許第9,968,275号明細書、「System and Method for Evaluating an Electrophysiological Signal」と題する米国特許第8,923,958号明細書、「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems and All-Cause Mortality and Sudden Cardiac Death Risk」と題する米国特許第9,408,543号明細書、「Non-invasive Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems and All-Cause Mortality and Sudden Cardiac Death Risk」と題する米国特許第9,955,883号明細書、「Noninvasive Electrocardiographic Method for Estimating Mammalian Cardiac Chamber Size and Mechanical Function」と題する米国特許第9,737,229号明細書、「Noninvasive Electrocardiographic Method for Estimating Mammalian Cardiac Chamber Size and Mechanical Function」と題する米国特許第10,039,468号明細書、「Noninvasive Method for Estimating Glucose, Glycosylated Hemoglobin and Other Blood Constituents」と題する米国特許第9,597,021号明細書、「Method and System for Characterizing Cardiovascular Systems From Single Channel Data」と題する米国特許第9,968,265号明細書、「Methods and Systems Using Mathematical Analysis and Machine Learning to Diagnose Disease」と題する米国特許第9,910,964号明細書、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題する米国特許出願公開第2017/0119272号明細書、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題するPCT国際出願公開第WO2017/033164号明細書、「Non-invasive Method and System for Measuring Myocardial Ischemia, Stenosis Identification, Localization and Fractional Flow Reserve Estimation」と題する米国特許出願公開第2018/0000371号明細書、「Non-invasive Method and System for Measuring Myocardial Ischemia, Stenosis Identification, Localization and Fractional Flow Reserve Estimation」と題するPCT国際出願公開第WO2017/221221号明細書、「Method and System for Visualization of Heart Tissue at Risk」と題する米国特許第10,292,596号明細書、「Method and System for Wide-band Phase Gradient Signal Acquisition」と題する米国特許出願公開第2018/0249960号明細書、2018年12月26日付けで出願された「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Volumetric Objects」と題する米国特許出願公開第2019/0214137号明細書、「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Volumetric Objects」と題するPCT国際出願公開第IB/2018/060708号明細書、「Method and Systems of De-Noising Magnetic-Field Based Sensor Data of Electrophysiological Signals」と題する米国特許出願公開第US2019/0117164号明細書、2018年12月26日付けで出願された「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と題する米国特許出願公開第2019/0214137号明細書、「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と題するPCT国際出願公開第PCT/IB2018/060709号明細書、2019年6月18日付けで出願された「Method and Systems to Quantify and Remove Asynchronous Noise in Biophysical Signals」と題する米国特許出願公開第2019/0384757号明細書、「Method and System to Assess Pulmonary Hypertension Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と題する米国特許出願公開第2019/0365265号明細書、本明細書と同時に出願された「Method and System to Assess Disease Using Phase Space Tomography and Machine Learning」と題する米国特許出願第__/__/__号明細書(10321-034us1という弁理士整理番号を有し、米国特許仮出願第62/784,984号明細書及び米国特許仮出願第62/835,869号明細書の優先権を主張する)、「Method and System to Configure and Use Neural Network To Assess Medical Disease」と題する米国特許出願第__/__/__号明細書(10321-037pv1という弁理士整理番号を有し、米国特許仮出願第62/784,925号明細書の優先権を主張する)、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題する米国特許出願第15/653,433号明細書、「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題する米国特許出願第15/653,431号明細書、「Method and System to Assess Disease Using Dynamical Analysis of Cardiac and Photoplethysmographic Signals」と題する米国特許出願第__/__/__号明細書(10321-041pv1という弁理士整理番号を有し、出願の優先権を主張するもの)、「Method and System to Assess Disease Using Dynamical Analysis of Biophysical Signals」と題する米国特許出願第__/__/__号明細書(10321-040pv1という弁理士整理番号を有し、出願の優先権を主張するもの)、に記載されており、これら特許文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書、に援用される。
【0172】
他に明確に記載されていない限り、本明細書に記載したいずれの方法も、そのステップが特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることは全く意図していない。したがって、方法に関する請求項が、そのステップに従うべき順序を実際に記載していない場合には、あるいは、ステップが特定の順序に限定されることが請求項又は説明において別の態様で具体的に記載されていない場合には、いかなる点においても順序が推論されることは全く意図していない。このことは、ステップの構成又は操作フローに関する論理的事項、文法的構成又は句読点から導出される平易な意味、明細書に記載されている実施形態の数又はタイプ、を含めて、解釈のためのあらゆる可能な非明示的な根拠についても同様である。
【0173】
方法及びシステムについて、特定の実施形態及び特定の例に関連して説明したけれども、本明細書の実施形態がすべての点において限定的ではなく例示的であることを意図していることのために、範囲を、記載された特定の実施形態に限定することは、意図していない。
【0174】
本明細書において説明する方法、システム、及びプロセスは、生きている(例えば、人間の)被検体の動脈などの血管内への血管ステントの配置などの処置に関連して使用するために、並びに他の介入的な及び外科的なシステム又はプロセスに関連して使用するために、狭窄及びFFR出力を生成するために使用されてもよい。一実施形態では、本明細書において説明する方法、システム、及びプロセスは、FFR/狭窄出力を使用することにより、とりわけ所与の血管内に配置される最適な位置を含めて、生体(例えば、人間)内に配置されるべきステントの数を、イントラ操作で決定及び/又は修正するように構成することができる。
【0175】
例示的な方法及びシステムを使用して全体的に又は部分的に分析され得る他の生物物理学的信号の例は、限定するものではないが、心電図(ECG)データセット、脳波(EEG)データセット、ガンマ同期信号データセット、呼吸機能信号データセット、パルスオキシメトリ信号データセット、灌流データ信号データセット、準周期的生物学的信号データセット、胎児ECGデータセット、血圧信号、心臓磁場データセット、及び、心拍信号データセット、を含む。
【0176】
例示的な分析は、心臓関連の病状及び症状及び/又は神経関連の病状及び症状に関する診断及び処置に使用することができ、そのような評価は、生体の任意の関連系統において生物物理学的信号が関与する任意の病状又は症状に関する診断及び処置(外科的な、低侵襲的な、及び/又は薬理学的な、処置を含む)に対して適用することができる。心臓の状況における一例は、CADの診断と、冠状動脈内へのステント配置、アテローム切除術の実行、血管形成術の実行、薬物療法の処方、及び/又は、運動や栄養や他のライフスタイルの変更に関する処方、等の任意数の治療法とを、単独であるいは組み合わせて、行うことである。診断され得る他の心臓関連の病状又は症状は、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例えば、肺動脈性肺高血圧症、左心疾患による肺高血圧症、肺疾患による肺高血圧症、慢性血栓による肺高血圧症、及び、血液などの他の疾患による又は他の障害による肺高血圧症)、並びに、他の心臓関連の、病状、症状、及び/又は疾患、を含む。診断され得る神経関連の、疾患、病状、又は症状に関する非限定的な例は、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び、他のすべての形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、運動障害、認知障害、言語障害、様々な精神病、脳/脊髄/神経の損傷、慢性外傷性脳症、群発性頭痛、片頭痛、神経障害(末梢神経障害を含む様々な形態)、幻肢/幻肢痛、慢性疲労症候群、急性及び慢性の疼痛(腰痛、脊椎手術不成功症候群、等を含む)、運動障害、不安障害、感染症又は外来物質によって引き起こされる症状(例えば、ライム病、脳炎、狂犬病)、居眠り病及び他の睡眠障害、心的外傷後ストレス障害、脳卒中や動脈瘤や出血性損傷等に関連した神経症状/影響、耳鳴り及び他の聴覚関連の疾患/症状、並びに、視覚関連の疾患/症状、を含む。
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【国際調査報告】