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特表2022-516800試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置
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  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図1
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図2
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図3
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図4
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  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図6
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図7a
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図7b
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図8a
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図8b
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図9a
  • 特表-試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置 図9b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-02
(54)【発明の名称】試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540187
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2019098729
(87)【国際公開番号】W WO2020143219
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】201910027921.X
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520157668
【氏名又は名称】広州万孚生物技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU WONDFO BIOTECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.8 LIZHISHAN ROAD, SCIENTIFIC CITY, LUOGANG DISTRICT, GUANGZHOU, 510663 GUANGDONG (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒙 玄
(72)【発明者】
【氏名】杜 嘉銘
(72)【発明者】
【氏名】黄 錫栄
(57)【要約】
試料添加用プレート(300、600、810、820、831)及びこの試料添加用プレート(300、600、810、820、831)を含むイムノクロマトグラフィー検出装置(10)において、この試料添加用プレート(300、600、810、820、831)を設計する際に、試料添加領域に多階段構造の試料添加部(310、833)を設け、この試料添加部は、高さの異なる多階段を有し、その基準面(311)は、試料溶液を受け取るように構成されている。カバープレート(100、500、834)に被覆された後、試料溶液が基準面(311)に落ちて上向きに流れ、多階段構造によって遮断されて緩衝された後、最後に最上段の階段(340、640)の上面(342、642)に流れた試料溶液は、基本的に同時に各イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域に流れることができる。このように、複数のイムノクロマトグラフィー検出部材は、基本的に同時に試料溶液を受け入れることができ、時間及び試料の平行線の統一の問題はなく、テスト精度が高く、試料を1回しか添加しないため、検出効率が高くなり、エラーのリスクも比較的小さくなる。検出中、各イムノクロマトグラフィー検出部材は、独立して検出を行い、同時に試料添加を行い、相互干渉が発生しないため、検出結果の精度が高くなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料添加用プレートであって、
高さが段階的に増加する多階段構造である試料添加部を備え、前記多階段構造の最底部にある基準面は試料溶液を受け取るように構成され、前記多階段構造の最上段の階段は、検出部材を設置するための複数の設置部位を有し、隣接する前記設置部位は間隔を置いて配置されている、
ことを特徴とする試料添加用プレート。
【請求項2】
前記試料添加部上に前記試料添加部を被覆可能な平面状のカバープレートが設けられる場合、前記基準面の前端に近い位置に試料を添加し、試料溶液は、前記多階段構造によって遮断・緩衝された後、基本的に同じ時間に各前記設置部位に流れる、
ことを特徴とする請求項1に記載の試料添加用プレート。
【請求項3】
前記検出部材は、試料添加領域が前記設置部位上に位置するイムノクロマトグラフィー試験紙である、
ことを特徴とする請求項1に記載の試料添加用プレート。
【請求項4】
複数の前記設置部位が、以下の条件のうちの少なくとも1つを満たすこと、
条件1:複数の前記設置部位の端部は面一に配置され、
条件2:複数の前記設置部位は平行に配置され、
条件3:隣接する前記設置部位間の距離は1mm~4mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の試料添加用プレート。
【請求項5】
前記基準面と前記多階段構造の各階段の上面は両方とも平面構造であり、前記基準面は、各階段の上面と平行に配置されている、
ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の試料添加用プレート。
【請求項6】
前記基準面は、底辺が最下段の階段の側面に接続されている二等辺三角形である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の試料添加用プレート。
【請求項7】
前記最下段の階段の上面の長さは、接続された一段高い階段に近づくにつれて徐々に長くなる、
ことを特徴とする請求項6に記載の試料添加用プレート。
【請求項8】
前記最下段の階段の上面の両端は円弧状であり、両端の円弧は対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の試料添加用プレート。
【請求項9】
中間の各階段は、最上段の階段の上面と、各箇所での長さが同じである、
ことを特徴とする請求項7に記載の試料添加用プレート。
【請求項10】
最上段の階段の側面は対称的な弧状であり、弧状の側面は、両端から中間に向かって基準面が位置する端に向けて徐々に突出している、
ことを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の試料添加用プレート。
【請求項11】
前記試料添加部は、3段の階段構造である、
ことを特徴とする請求項10に記載の試料添加用プレート。
【請求項12】
イムノクロマトグラフィー検出装置であって、
カバープレートと、イムノクロマトグラフィー検出部材と、請求項1~11のいずれか1項に記載の試料添加用プレートとを含み、前記カバープレートは、前記試料添加用プレートと組み合わせて検出キャビティを形成し、前記試料添加部は、前記検出キャビティ内に位置しており、前記カバープレートには、前記試料添加部の基準面に対応するように試料添加孔が設けられており、前記イムノクロマトグラフィー検出部材は、複数あり、複数の前記イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域は、それぞれ対応して複数の前記設置部位上に設置されている、
ことを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項13】
前記試料添加孔は、最下段の階段から離れた前記基準面の端に近い、
ことを特徴とする請求項12に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項14】
前記試料添加孔の軸方向は、前記カバープレートに対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項15】
前記試料添加孔の内径は、入口端から出口端に向かって徐々に小さくなる、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項16】
前記カバープレートと前記試料添加部との間の距離は、以下の条件を満たすこと、
条件1:試料溶液は前記試料添加部の最上段の階段の上面と前記カバープレートとの間の空間に流れ、
条件2:試料溶液は、毛細管現象の推進力の下で、前記試料添加部の表面に沿って前記イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域の位置に流れる、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項17】
前記試料添加部の最上段の階段の上面から前記カバープレートまでの距離は2mm以下である、
ことを特徴とする請求項16に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項18】
各前記設置部位は、前記最上段の階段の上面に沿って延びる長尺状の溝構造であり、長尺状のイムノクロマトグラフィー検出部材を嵌め込んで設置するために構成されている、
ことを特徴とする請求項12、13又は17に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項19】
前記イムノクロマトグラフィー検出部材は、基板と、前記基板上に配置され、前記基板の一端から他端まで順次接続された試料パッド、結合パッド、検出膜、及び吸収パッドとを含み、前記試料パッドは、前記試料添加領域を有し、前記検出膜は、検出ラインを有している、
ことを特徴とする請求項18に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項20】
前記カバープレートには、各前記イムノクロマトグラフィー検出部材の検出ラインを観察するための検出ウィンドウが設けられている、
ことを特徴とする請求項19に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項21】
各前記設置部位は、前記最上段の階段の上面に軸方向に垂直である、両端が開いている柱状の孔構造であり、積層構造のイムノクロマトグラフィー検出部材を嵌め込んで設置するために構成され、上端の開口部は、試料溶液が試料添加領域に流入するように構成され、下端の開口部は検出ウィンドウを構成している、
ことを特徴とする請求項12、13又は17に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項22】

前記イムノクロマトグラフィー検出部材は、順番に積層して配置された支持層、反応層、及び拡散層を含み、前記拡散層は前記試料添加領域を有し、前記反応層は、標的物質と反応可能な反応試薬及び発色剤を含む、
ことを特徴とする請求項21に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項23】
前記反応層は、積層して配置された試薬層と、前記支持層により近い発色層とを含み、
前記試薬層には、標的物質と反応可能な反応試薬が含まれ、前記発色層には発色剤が含まれ、或いは、前記試薬層には発色剤が含まれ、前記発色層には、標的物質と反応可能な反応試薬が含まれている、
ことを特徴とする請求項22に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【請求項24】
前記カバープレートには、前記イムノクロマトグラフィー検出部材に対応する領域において前記検出キャビティに連通した通気孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項22又は23に記載のイムノクロマトグラフィー検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロ診断の技術分野に関し、特に、試料添加用プレート及び当該試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インビトロ診断(In vitro Diagnosis (IVD))の分野では、通常、クロマトグラフィー技術により疾患などの項目に対して診断・検出が行われている。例えば、金コロイド免疫試験紙法、乾式化学試験紙法や蛍光免疫試験紙などは、いずれもクロマトグラフィーの原理に基づいて、試料を前処理し、試薬と反応させることで、最終的に疾患の有無を反映する診断の結果を取得するものである。蛍光イムノクロマトグラフィー試験紙の機能プロセスは次のとおりである。試料(全血、血漿など)を試料パッドに滴下した後、液体は吸収性濾紙の端に流れる。試料パッドにおいて試料を処理し、赤血球をろ過して不純物を除去する。試料は、結合パッドを流れ、抗原-抗体と免疫学的に結合して蛍光基を持ち、ニトロセルロース膜を流れると、事前に結合した抗原-抗体と特異的に結合する。テストラインとコントロールラインに集積した蛍光基によってテストの結果が反映され、結合していない他の不純物が吸収性濾紙に吸収される。蛍光イムノクロマトグラフィー技術は、操作が簡単で、特異性が高く、感度が高く、定量化できるという特徴があるため、近年、POCT検出の分野で広く適用されている。ただし、ここ数十年間で、イムノクロマトグラフィー検査カードの大部分は、単一のカードに対して単一の試験紙を用いて単一の項目検査を行うものである。しかし、医療技術の発達に伴い、より正確な判断を下すために、疾患の診断には、例えば、心筋3項目セット検査や心筋5項目セット検査などのように複数の標的を同時に検出する必要がある。ある場合では、疾患を判定するために、心肺5項目セット検査などのように複数の臓器の状態を同時に検出する必要がある。
【0003】
現在、国内外で多くの企業が、単一のカードに試料を一回添加して複数の項目の検査を行う研究に取り組んでいる。たとえば、Alere社はマイクロ流体チップを使用して、チップ上で直列に心筋の5項目セット検査を行った。この技術には利点を持っているが、明らかな欠点もある。例えば、マイクロ流体チップのコストが高く、処理が難しく、直列検出なので互いに干渉しやすい。しかも、この技術はマイクロ流体技術であり、免疫クロマトグラフィーの範疇に属さない。H-Guard(China)株式会社は、蛍光免疫クロマトグラフィー試験紙で直列に3項目検査を行うことを研究した。ただし、この方法では、抗体の固定、項目間の相互干渉を回避することには欠点がある。Baiaosen株式会社は、多項目検査カードで毛細管を使用して分流し、試料を試験紙にガイドした。しかし、毛細管の加工が難しく、試料中の不純物が毛細管の機能に影響を及ぼしやすい。また、このカードを操作する際に、試料添加後にバリア試験紙を除去する必要があるため、操作の簡便性が損なわれる。上記の理由により、多項目検査カード製品はまだ市場で広く適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、構造が簡単で、検出部材間の干渉が少ない試料添加用プレート及びこの試料添加用プレートを含むイムノクロマトグラフィー検出装置を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
試料添加用プレートであって、高さが段階的に増加する多階段構造である試料添加部を備え、前記多階段構造の最底部にある基準面は試料溶液を受け取るように構成され、前記多階段構造の最上段の階段は、検出部材を設置するための複数の設置部位を有し、隣接する前記設置部位は間隔を置いて配置されている、試料添加用プレート。
【0006】
一実施例において、前記試料添加部上に前記試料添加部を被覆可能な平面状のカバープレートが設けられる場合、前記基準面の前端に近い位置に試料を添加すると、試料溶液は前記多階段構造によって遮断・緩衝された後、基本的に同じ時間に各前記設置部位に流れる。
【0007】
一実施例において、前記検出部材は、試料添加領域が前記設置部位に位置するイムノクロマトグラフィー試験紙である。
【0008】
一実施例において、複数の前記設置部位は、以下の条件の少なくとも1つを満たしている。
【0009】
複数の前記設置部位の端部は面一に配置されている。
【0010】
複数の前記設置部位は平行に配置されている。
【0011】
隣接する前記設置部位間の距離は1mm~4mmである。
【0012】
一実施例において、前記基準面及び前記多階段構造の各階段の上面は、両方とも平面構造であり、かつ、前記基準面は、各階段の上面と平行に配置されている。
【0013】
一実施例において、前記基準面は、底辺が最下段の階段の側面に接続されている二等辺三角形である。
【0014】
一実施例において、前記最下段の階段の上面の長さは、それに接続された一段高い階段に近づくにつれて徐々に長くなる。
【0015】
一実施例において、前記最下段の階段の上面の両端は円弧状であり、両端の円弧は対称に配置されている。
【0016】
一実施例において、中間の各階段は、最上段の階段の上面と、各箇所での長さが一致している。
【0017】
一実施例において、最上段の階段の側面は対称的な弧状であり、弧状の側面は、両端から中間に向かって基準面が位置する端に向けて徐々に突出している。
【0018】
一実施例において、前記試料添加部は3階段の構造である。
【0019】
イムノクロマトグラフィー検出装置であって、カバープレートと、イムノクロマトグラフィー検出部材と、上記の実施例のいずれか1つに記載の試料添加用プレートとを含み、前記カバープレートは、前記試料添加用プレートと組み合わせて検出キャビティを形成し、前記試料添加部は、前記検出キャビティ内に位置しており、前記カバープレートには、前記試料添加部の基準面に対応するように試料添加孔が設けられており、前記イムノクロマトグラフィー検出部材は複数あり、複数の前記イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域は、それぞれ対応して複数の前記設置部位上に設置されている、イムノクロマトグラフィー検出装置。
【0020】
一実施例において、前記試料添加孔は、最下段の階段から離れた前記基準面の端に近い。
【0021】
一実施例において、前記試料添加孔の軸方向は、前記カバープレートに対して傾斜している。
【0022】
一実施例において、前記試料添加孔の内径は、入口端から出口端に向かって徐々に小さくなる。
【0023】
一実施例において、前記カバープレートと前記試料添加部との間の距離は、以下の条件を満たしている。試料溶液は前記試料添加部の最上段の階段の上面と前記カバープレートとの間の空間に流れると、試料溶液は、毛細管現象の推進力の下で、前記試料添加部の表面に沿って前記イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域の位置に流れる。
【0024】
一実施例において、前記試料添加部の最上段の階段の上面から前記カバープレートまでの距離は2mm以下である。
【0025】
一実施例において、各前記設置部位は、前記最上段の階段の上面に沿って延びる長尺状の溝構造であり、長尺状のイムノクロマトグラフィー検出部材を嵌め込んで設置するために構成されている。
【0026】
一実施例において、前記イムノクロマトグラフィー検出部材は、基板と、前記基板上に配置され、前記基板の一端から他端まで順次接続された試料パッド、結合パッド、検出膜、及び吸収パッドとを含み、前記試料パッドは、前記試料添加領域を有し、前記検出膜は、検出ラインを有している。
【0027】
一実施例において、前記カバープレートには、各前記イムノクロマトグラフィー検出部材の検出ラインを観察するための検出ウィンドウが設けられている。
【0028】
一実施例において、各前記設置部位は、前記最上段の階段の上面に軸方向に垂直である、両端が開いている柱状の孔構造であり、積層構造のイムノクロマトグラフィー検出部材を嵌め込んで設置するために構成され、上端の開口部は、試料溶液が試料添加領域に流入するように構成され、下端の開口部は、検出ウィンドウを構成している。
【0029】
一実施例において、前記イムノクロマトグラフィー検出部材は、順番に積層して配置された支持層、反応層、及び拡散層を含み、前記拡散層は、前記試料添加領域を有し、前記反応層は、標的物質と反応可能な反応試薬及び発色剤を含む。
【0030】
一実施例において、前記反応層は、積層して配置された試薬層、及び前記支持層により近い発色層を含む。
【0031】
前記試薬層には、標的物質と反応可能な反応試薬が含まれ、前記発色層には発色剤が含まれている。或いは、前記試薬層には発色剤が含まれ、前記発色層には、標的物質と反応可能な反応試薬が含まれている。
【0032】
一実施例において、前記カバープレートには、前記イムノクロマトグラフィー検出部材に対応する領域において前記検出キャビティに連通した通気孔が設けられている。
【0033】
多項目検査又は同じ項目の並行検査では、異なる又は同じ単一項目のイムノクロマトグラフィー検出試験紙などのイムノクロマトグラフィー検出部材を使用して試料を添加して検出を行うことにより得られた効果が比較的良い。これは、単一項目のイムノクロマトグラフィー検出試験紙などの検出技術は比較的成熟しており、それらの技術及びプロセスも非常に完全であるからである。したがって、本発明のイムノクロマトグラフィー検出装置は、現在広く使用されている複数の単一項目のイムノクロマトグラフィー検出部材に基づいて設計されたものである。しかしながら、研究した結果、複数のイムノクロマトグラフィー検出部材による検出に影響する主な要因は、複数回の試料添加に起因する時間及び試料の平行線の統一が困難になることであることを見出した。その結果、検出結果の精度に影響し、試料を複数回添加すると検出効率が低下し、エラーのリスクも高まる。
【0034】
上記のイムノクロマトグラフィー検出装置を設計する際に、試料添加領域に多階段構造の試料添加部を設けている。この試料添加部は、高さの異なる多階段を有し、その基準面は、試料溶液を受け取るように構成され、試料溶液が基準面に落ちた後上向きに流れ、多階段構造によって遮断・緩衝された後、最後に最上段の階段の上面に流れた試料溶液は、基本的に同時に各イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域に流れることができる。このように、複数のイムノクロマトグラフィー検出部材は、基本的に同時に試料溶液を受け入れることができ、時間及び試料の平行線の統一の問題はなく、テスト精度が高く、試料を1回しか添加しないため、検出効率が高くなり、エラーのリスクも比較的小さくなる。このイムノクロマトグラフィー検出装置の検出中、各イムノクロマトグラフィー検出部材は、独立して検出を行い、同時に試料添加を行い、相互干渉が発生しないため、検出結果の精度がさらに向上する。
【0035】
それだけでなく、上記のイムノクロマトグラフィー検出装置では、イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域の上流には一定の長さの湿潤領域が設けられているため、試料溶液が湿潤領域に流れると、毛細管現象が発生して、湿潤領域での試料溶液の流れを推進することができる。これにより、この領域での試料溶液の流速を高めるだけでなく、異なる設置部位での検出部材に対する基本的に同時の試料添加も実現され、試料添加の一致性と均一性を向上させるのに有益である。
【0036】
従来の多項目セットカードイムノクロマトグラフィー検出装置は、試料添加の一致性が悪いため、異なる設置部位でのイムノクロマトグラフィー検出部材に対する同時の試料添加は困難となり、試料添加の量も均一ではない。その結果、通常、3項目セット又は4項目セットの検出だけを実現でき、5項目セット以上の検出を実行することはできない。上記構造を有する試料添加用プレートを使用すること、及び/又は試料添加用プレートとカバープレートとの間の距離を制御して湿潤領域に毛細管現象を発せさせることにより、本発明のイムノクロマトグラフィー検出装置は、5項目セット及び6項目セットの試料添加検出を実現することができ、試料添加の一致性が良好であり、検出結果の精度と信頼性が効果的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の一実施例に係るイムノクロマトグラフィー検出装置の概略的な部分分解図である。
図2図2は、組み立て後の図1に示されるイムノクロマトグラフィー検出装置の断面図である。
図3図3は、図1に示されるイムノクロマトグラフィー検出装置におけるイムノクロマトグラフィー検出部材の概略構造図である。
図4図4は、本発明の他の一実施例に係るイムノクロマトグラフィー検出装置の概略的な部分分解図である。
図5図5は、組み立て後の図4に示されるイムノクロマトグラフィー検出装置の断面図である。
図6図6は、図5に示されるイムノクロマトグラフィー検出装置におけるイムノクロマトグラフィー検出部材の概略構造図である。
図7図7a及び図7bは、それぞれ他の階段構造を備える緩衝構造の上面図及び対応する断面図である。
図8図8a及び図8bは、それぞれ他の階段構造を備える緩衝構造の上面図及び対応する断面図である。
図9図9a及び図9bは、それぞれ他の階段構造を備える緩衝構造の上面図及び対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を容易に理解するために、図面を参照しながら本発明をより完全に説明する。図面には、本発明の最適な実施例が示されている。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実現されてもよく、本明細書に記載されている実施形態に限定されていない。むしろ、これらの実施形態は、本発明の開示に対する理解がより徹底的且つ完全になるように提供される。
【0039】
なお、素子が別の素子に「固定される」、「配置される」と記載される場合、この素子は別の素子に直接固定されてもよいし、又は中間素子が存在してもよい。1つの素子が別の素子に「接続される」と記載される場合、この素子は別の素子に直接接続されてもよいし、又は中間素子が同時に存在してもよい。
【0040】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明に属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の明細書で使用される用語は具体的な実施例の説明のみを目的とし、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される用語「及び/又は」は、挙げられた1つ又は複数の関連項目の任意のあらゆる組み合わせを含む。
【0041】
図1図2及び図3を参照すると、本発明の一実施例は、カバープレート100と、イムノクロマトグラフィー検出部材200と、試料添加用プレート300とを含むイムノクロマトグラフィー検出装置10を提供する。カバープレート100は、試料添加用プレート300と組み合わせて検出キャビティ102を形成している。試料添加用プレート300は、試料添加部310を有している。当該試料添加部310は、検出キャビティ102内に位置している。カバープレート100には、試料添加部310に対応するように試料添加孔110が設けられている。イムノクロマトグラフィー検出部材200は、複数あり、複数のイムノクロマトグラフィー検出部材200は、試料添加用プレート300上に設置されている。
【0042】
好ましくは、試料添加孔110は、イムノクロマトグラフィー検出部材200から離れた試料添加部310の一端に対応している。このように、試料溶液(例えば血液、血清、唾液など)を基本的に同じ開始点から流して移すことができ、試料溶液の試料添加距離をある程度長くすることもできるため、比較的長い距離にわたって試料溶液の流れを減速及び緩衝することには有益であり、試料添加の一致性を確保することが可能となる。
【0043】
更に好ましくは、試料添加孔110の軸方向は、カバープレート100に対して傾斜している。試料添加管20から流出するときに試料溶液が受ける力及び液体を案内する方向に応じて傾斜して配置されることにより、試料添加管20を試料添加孔110に挿入して試料溶液を押し出すと、試料添加の効果は、カバープレート100に垂直な方向の場合より良いため、試料溶液が均一で迅速に分布することにはより有益である。更に好ましくは、試料添加孔110は、入口端から出口端に向かってイムノクロマトグラフィー検出部材200が配置された部位に傾斜して近づいている。試料添加孔110の軸方向とカバープレート100との間の夾角は、40°~70°、例えば、40°、45°、50°、55°、60°、65°、又は70°であり得るが、これらに限定されない。なお、他の特定の例では、試料添加孔110の軸方向は、カバープレート100に対して垂直となってもよい。
【0044】
更に好ましくは、試料添加孔110の内径は、入口端から出口端に向かって徐々に小さくなる。すなわち、試料添加孔110全体は、逆円錐台の形状である(底部のサイズが小さい)。このように、試料添加管20の形状にフィットし、試料添加管20をより安定して固定することができ、試料添加中に試料添加管20が前後左右に揺れるのを防ぎ、試料添加の位置の一致性を確保することができる。それは、各イムノクロマトグラフィー検出部材200の試料添加領域への試料溶液のその後の流れの一致性を確保することに有益である。
【0045】
図1に示される特定の例では、カバープレート100には、イムノクロマトグラフィー検出部材200の検出領域に対応するように検出ウィンドウ120が設けられている。検出ウィンドウ120は、検出結果を観察するためだけでなく、試料溶液が検出キャビティ102内をスムーズに流れるように通気のために用いられる。
【0046】
図1図3に示される特定の例では、前記イムノクロマトグラフィー検出部材200は、共通の長尺状のイムノクロマトグラフィー検出試験紙であり、基板210と、基板210に配置され、基板210の一端から他端まで順次接続された試料パッド220、結合パッド230、検出膜240、及び吸収パッド250とを含む。基板210は、PVC基板であってもよい。試料パッド220は、試料添加領域を有している。結合パッド230は、蛍光基又は発色剤で標識された抗体を含む。検出膜240は、検出ライン242を有するニトロセルロース膜であってもよい。検出膜240には、品質管理ライン(図示しない)が更に設けられてもよい。検出ウィンドウ120は、少なくとも検出ライン242を被覆している。
【0047】
本実施例において、試料添加用プレート300の試料添加部310は、高さが段階的に増加する多階段構造である。この多階段構造の最底部にある基準面311は、試料溶液を受け取るように構成されている。最上段の階段340は、イムノクロマトグラフィー検出部材200などの検出部材を設置するための複数の設置部位(図示しない)を有している。隣接する設置部位は、例えば、1mm~4mmに限定されない間隔をおいて配置されていてもよい。カバープレート100を置いた後、試料溶液は、基準面311から上向きに流れ、多階段構造によって遮断・緩衝された後、基本的に同じ時間に各設置部位に到達することができる。
【0048】
前記基本的に同じ時間とは、例えば、対応する設置部位に最初に到達する時間と最後に到達する時間との差が、1.0秒、0.6秒、0.5秒、0.4秒、0.3秒、又は0.2秒などを超えないことを指してもよい。好ましくは、対応する設置部位に最初に到達する時間と最後に到達する時間との差が、0.3秒を超えない。
【0049】
図示した特定の例では、基準面311及び多階段構造の各階段の上面は両方とも平面構造であり、基準面311は、各階段の上面と平行に配置されている。検出中、基準面311は、各階段の上面と水平に配置されることにより、試料添加の安定性を確保することができる。
【0050】
好ましくは、基準面311は二等辺三角形であり、その底辺は最下段の階段320の側面321に接続されている。二等辺三角形の基準面311は、三角形の底辺への液体の均一な拡散を助長する。試料溶液が基準面311を流れると円弧状になり、中央の液体は最初に三角形の底辺に接触し、即ち、二等辺三角形の底辺の中央領域が液体に最初に接触し、両端が後で接触することになる。中央を流れる試料溶液が最初に最下段の階段320の側面321に接触すると、側面321は一定の高さを有するため、中央の試料溶液は、側面321に接触した後、速度が低下しながら両端に流れる。基準面311の両側の液体は、側面321の両端にまだ接触していないので、元の比較的速い速度で流れる。したがって、側面321に沿って両側に流れる試料溶液が、基準面311の元両側の試料溶液と集積すると、基準面311の元両側の試料溶液の流速は中和されて平衡化される。つまり、中央を流れる試料溶液及び両側の試料溶液の流速は互いに平衡化されて、流速差は小さくなる。
【0051】
試料添加孔110は、最下段の階段320から離れた基準面311の端に対応している。二等辺三角形の基準面311の場合、試料添加孔110は、二等辺三角形の重心とその頂角との間の位置に対応している。
【0052】
図示した特定の例では、最下段の階段320の上面322の長さは、それに接続された2段目の階段330に近づくにつれて徐々に増加する。それにより、試料溶液が上面322に沿って流れる際に幅が徐々に増加するので、流速はさらに減少し、各位置での流速差はさらに減少する。
【0053】
好ましくは、当該最下段の階段320の上面322の両端は円弧状であり、両端の円弧は対称に配置されている。これにより、安定な遷移緩衝を形成し、部分的な位置の非対称性による全体的な流速制御バランスへの影響を防ぐことができる。
【0054】
中間の各階段は、最上段の階段340の上面342と、各箇所での長さが一致していてもよい。基準面311及び1段目の最下段の階段320の緩衝減速及び平衡作用下では、中間の各階段及び最上段の階段340の上面342に到達する試料溶液の流速は比較的低くなるので、試料添加の速度を確保するために、中間の各階段の各箇所での長さを最上段の階段340の上面342と一致させることにより、試料溶液は安定的に上向きに流れることができる。
【0055】
さらに、最上段の階段340の側面341は対称的な弧状であり、当該弧状の側面341は、両端から中央に向かって基準面311が位置する端に向けて徐々に突出しており、即ち、2段目高い階段の上面の幅は、中央から両端に向かって徐々に増加している。前の多階段構造によって遮断・緩衝された後、2段目高い階段の上面に到達する試料溶液は、基本的に一定の速度で前向きに流れることができる。試料溶液はこの弧状の側面341に接触すると、弧状の表面に導かれ、両端に素早く流れる。この弧状の側面341は分流として機能し、両端に流れる試料溶液は、元の両端に流れる試料溶液と集積することにより、中央及び両端を流れる試料溶液の流速及び流量はさらにバランスが取れている。
【0056】
好ましくは、例えば、図1図3に示される例では、当該試料添加部310は、3段階構造を有し、基準面311とカバープレート100との間に初期緩衝領域が形成され、最も低い1段目の階段320及び中間の2段目の階段330とカバープレート100との間に二次遷移緩衝領域が形成され、最も高い3段目の階段340とカバープレート100との間は、設置された検出センサの試料添加領域に試料を添加するための湿潤領域として使用される。
【0057】
図1図3に示される特定の例では、各設置部位は、最上段の階段340の上面342に沿って延びる長尺状の溝構造である。イムノクロマトグラフィー検出部材200は、この溝構造に嵌め込まれて設置されたイムノクロマトグラフィー検出試験紙である。複数の設置部位の端部は面一に配置されている。その結果、最上段の階段340の上面342において、試料溶液は、基本的に同時に各試料添加領域に到達するように制御され得る。好ましくは、複数の設置部位が平行に配置されている。その結果、イムノクロマトグラフィー検出試験紙が設置された後、試験紙の試料添加端は、最上段の階段340の上面342から突出している。
【0058】
カバープレート100と試料添加用プレート300とは、両面接着テープ又はスナップ部材などの固定手段によって固定され得るが、これらに限定されない。
【0059】
特定の例では、カバープレート100と試料添加部310との間の距離は、以下の条件を満たしている。試料溶液が湿潤領域(図1図3に対応すると、すなわち、最上段の階段340の上面342とカバープレート100との間の空間)に流れると、試料溶液は、毛細管現象の推進力の下で、試料添加部310の表面に沿って、イムノクロマトグラフィー検出部材200の試料添加領域の位置に流れる。
【0060】
好ましくは、湿潤領域の高さ(即ち、カバープレート100と最上段の階段340の上面342との間の距離)は2mm以下である。実験的研究により、湿潤領域の高さが2mmを超える場合、湿潤領域には層流が形成されにくく、気泡が発生しやすく、毛細管現象の発生が困難となることが分かった。さらに好ましくは、湿潤領域の高さは0.1mmから1mmである。湿潤領域の高さが0.1mm未満の場合、高さの制御が難しく、加工の難易度が高く、試料添加の速度に影響を与える。より好ましくは、湿潤領域の高さは0.25mmから0.7mmであり、この範囲内では、液体の層流効果がより良く、気泡が発生しにくい。
【0061】
構造設計により、試料溶液は、毛細管現象下で対応する領域に流れることができ、特に、最上段の階段340の上面342とカバープレート100との間でこの上面342を迅速に被覆することができる。このように、毛細管現象によってすべての試料溶液を検出部材に添加することができるだけでなく、試料添加の速度を大幅に向上させることもでき、多階段構造の遮断及び緩衝による試料溶液の流速低下及び試料添加効率への影響を軽減し、試料添加効率を高めて検出効率を向上させる。
【0062】
図1図3に示される特定の例では、試料溶液が多階段構造によって遮断・緩衝された後、実質的同時に各長尺状のイムノクロマトグラフィー検出試験紙に到達することができる。試料パッド220は試料溶液に接触すると、試料溶液を素早く吸収し、吸収された液体は、この領域で処理が完了された後、結合パッド230を通過し、抗原及び抗体と免疫学的に結合して蛍光基を持ち、検出膜240を流れると、事前に結合した抗原-抗体と特異的に結合する。過剰な未反応物質が吸収パッド250に吸収され、検出膜240の検出ライン242に集積した蛍光基によってテストの結果が反映される。複数の試験において、各イムノクロマトグラフィー検出部材200の基本的な構造は同じであり、上記の抗原及び抗体のみが異なり、抗原及び抗体は吸水効果に影響を及ぼさないので、各イムノクロマトグラフィー検出部材200が同時に試料と接触して吸着を引き起こすことは、試料を各イムノクロマトグラフィー検出部材200に均等に分配することと同等であることが保証される。試験の結果により、上記のイムノクロマトグラフィー検出装置10の平行度誤差が5%未満であるので、イムノクロマトグラフィーのインビトロ診断試験の必要性を満たすことができる。
【0063】
このイムノクロマトグラフィー検出装置は、元の単一のイムノクロマトグラフィー検出部材200の条件を変更することなく、元のイムノクロマトグラフィー検出部材200を直接適用して、単一の試料添加を直接行い、多項目の検出を同時に実行することができる。このイムノクロマトグラフィー検出装置は、構造が簡単で、処理と製造が容易で、低コストで、試料の添加が便利で、時間がかからず、安定性が高く、試料量を均等に分配する精度が高い。
【0064】
他の実施例では、図4図6に示すように、各設置部位は、最上段の階段640の上面642に軸方向に垂直である、両端が開いている柱状の孔構造であり、積層構造の例えば乾式化学試験紙のイムノクロマトグラフィー検出部材700を嵌め込んで設置するために構成されてもよい。上端の開口部は、試料溶液が流入するための試料添加領域を形成するように構成され、下端の開口部は、検出ウィンドウを構成してもよい。
【0065】
この積層構造のイムノクロマトグラフィー検出部材700は、順番に積層して配置された支持層710、反応層720、及び拡散層730を含む。拡散層730は、試料添加領域を有し、反応層720は、標的物質と反応可能な反応試薬及び発色剤を含む。
【0066】
具体的には、反応層720は、積層して配置された試薬層721と、支持層710により近い発色層722とを含む。試薬層721は、標的物質と反応可能な反応試薬を含み、発色層722は発色剤を含む。或いは、試薬層721は発色剤を含み、発色層722は、標的物質と反応可能な反応試薬を含む。
【0067】
好ましくは、カバープレート500は、通気を容易にし、試料溶液がスムーズに流れるように検出キャビティ502内の空気圧バランスを確保するために、イムノクロマトグラフィー検出部材700に対応する領域で検出キャビティ502に連通した通気孔510を備えている。
【0068】
本発明の試料添加用プレートは、例えば、上記の長尺状のイムノクロマトグラフィー検出試験紙又は積層構造のイムノクロマトグラフィー乾式化学試験紙などのイムノクロマトグラフィー検出部材に対して試料を添加するためのものに限定されず、電気化学的検出部材などの他の検出部材であってもよい。カバープレートと試料添加用プレートとを組み合わせることにより、異なる検出部材に対する試料添加の均一性と一致性を実現できる。
【0069】
上記のイムノクロマトグラフィー検出装置を設計する際に、試料添加領域に多階段構造の試料添加部を設けている。この試料添加部は、高さの異なる多階段構造を有し、その基準面は、試料溶液を受け取るように構成される。カバープレートに被覆された後、試料溶液が基準面に落ちて上向きに流れ、多階段構造によって遮断・緩衝された後、最後に最上段の階段の上面に流れた試料溶液は、基本的に同時に各イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域に流れることができる。このように、複数のイムノクロマトグラフィー検出部材は、基本的に同時に試料溶液を受け入れることができ、時間及び試料の平行線を一致させる問題はなく、テスト精度が高く、試料を1回しか添加しないため、検出効率が高くなり、エラーのリスクも比較的小さくなる。このイムノクロマトグラフィー検出装置の検出中、各イムノクロマトグラフィー検出部材は、独立して検出を行い、同時に試料添加を行い、相互干渉が発生しないため、検出結果の精度がさらに向上する。
【0070】
それだけでなく、上記のイムノクロマトグラフィー検出装置では、イムノクロマトグラフィー検出部材の試料添加領域の上流には一定の長さの湿潤領域が設けられているため、試料溶液が湿潤領域に流れると、毛細管現象が発生して、湿潤領域での試料溶液の流れを推進することができる。これにより、この領域での試料溶液の流速を高めるだけでなく、異なる設置部位での検出部材に対する基本的に同時の試料添加も実現され、試料添加の一致性と均一性を向上させるのに有益である。
【0071】
従来の多項目セットカードイムノクロマトグラフィー検出装置は、試料添加の一致性が悪いため、異なる設置部位でのイムノクロマトグラフィー検出部材に対する同時の試料添加は困難となり、試料添加の量も均一ではない。その結果、通常、3項目セット又は4項目セットの検出だけを実現でき、5項目セット以上の検出を実行することはできない。上記構造を有する試料添加用プレートを使用すること、及び/又は試料添加用プレートとカバープレートとの間の距離を制御して湿潤領域に毛細管現象を発せさせることにより、本発明のイムノクロマトグラフィー検出装置は、5項目セット及び6項目セットの試料添加検出を実現することができ、試料添加の一致性が良好であり、検出結果の精度と信頼性が効果的に向上する。
【0072】
図7a、図7b、図8a、図8b、図9a及び図9bを参照すると、本発明は、異なる構造を有する試料添加用プレートの試料添加効果について比較及び分析する。
【0073】
1. 検出部材の試料添加領域と接触した湿潤領域の高さの比較と分析
図9a及び図9bに示される試料添加用プレート831を例とすると、試料添加用プレート831は階段構造を有さず、試料添加孔の下方からイムノクロマトグラフィー検出部材832の試料添加領域までの間に配置された試料添加部833は、フラット構造である。試料添加部833とカバープレート834との間には、湿潤領域が形成されている。
【0074】
湿潤領域の高さをそれぞれ0.1mm、0.25mm、0.5mm、0.7mm、1mm、1.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mmに制御し、5項目セットイムノクロマトグラフィー検出試験紙の試料添加状況を観察する。
【0075】
結果により、湿潤領域の高さは0.1mm、0.25mm、0.5mm、0.7mm、1mm、1.5mmである場合、高さが3mm、3.5mm、4mm、4.5mmである場合に比べて、試料添加の一致性が大幅に向上し、特に、高さが0.25mm、0.5mm、0.7mmである場合、試料添加の一致性がより良好である。
【0076】
撮影したビデオのスローモーションにより、高さが0.1mm、0.25mm、0.5mm、0.7mm、1mm、1.5mmの場合、試料溶液がこの湿潤領域を速やかに流れることができることが示されている。分析により、この領域で毛細管現象が発生したため、試料溶液の速やかな流れを促進し、速やかな試料添加を促進し、異なる設置部位での検出部材に試料を添加する時間差をある程度低減することが確認された。湿潤領域の高さが3mm、3.5mm、4mm、4.5mmである場合、湿潤領域で気泡が形成され、毛細管現象が影響を受け、試料添加の一致性も影響を受ける。
【0077】
同様に、図1又は図4図7a及び図7b、図8a及び図8bに示された試料添加用プレートに対しても、異なる高さの湿潤領域の試験を行った。結果は、図9a及び図9bに示された構造の場合とほぼ同じである。
【0078】
したがって、検出部材の試料添加領域の前に湿潤領域を形成し、湿潤領域の高さを制御することにより、試料溶液が湿潤領域に入るときに毛細管現象を発生させ、試料溶液の流速を増加させ、異なる位置での試料添加の時間差をある程度減少させて、試料添加の一致性を向上させる。
【0079】
2.試料添加の一致性に対する異なる構造の試料添加部の影響の実験と分析
異なる構造の緩衝領域、湿潤領域及び緩衝領域の弧度及び緩衝階段の段数は、いずれも液体の均一な分配に影響を与える。図1及び図4に示される試料添加用プレート300及び600は、本発明の好ましい実施例である。この設計により、液体の均一な分配の偏差CV値が最も小さく、3%未満であり、安定性が優れた。試験により、5つのイムノクロマトグラフィー検出部材のうち、試料が添加されなかったのは1つ又は2つある確率は1%未満である。
【0080】
図9a及び図9bに示される試料添加用プレート831では、緩衝領域を備えないため、5つのイムノクロマトグラフィー検出部材の中央のイムノクロマトグラフィー検出部材が最初に液体に接触し、液体の均一な分配のCV偏差が比較的大きい。図7a及び図7bに示される試料添加用プレート810の実施例では、基準面は円弧状である。図1図4、及び図9aに示す二等辺三角形と比較すると、この実施例の実験結果により、最も外側のイムノクロマトグラフィー検出部材は、試料添加に失敗しやすい可能性があるが、三角形は、液体が両端に流れるようにガイドし、両端の液体が添加されないという現象を回避するのに役立つことが分かった。したがって、図7a及び図7bに示される試料添加用プレート810は実行可能であるが、その試料添加効果は、図1及び図4に示される試料添加用プレート300及び600よりもわずかに悪く、図9a及び9bに示される試料添加用プレート831よりも著しく良好である。
【0081】
図8a及び図8bに示される試料添加用プレート820の実施例では、5つの緩衝領域を備える。緩衝領域が密集しているため、液体の上向きの流れに対する抵抗が比較的大きいため、液体が湿潤領域(即ち、最上段の階段の上面)に入ることができない可能性があり、試料を添加できない可能性が比較的高くなる。また、緩衝領域の深さが深いため、イムノクロマトグラフィー検出部材が液体を吸収する際に、流れが遮断されたり、基準面及び最下段の階段の最初の緩衝領域の液体をよく吸収できなくなったりする可能性があり、残留物の一部が試料添加の精度に直接影響している。したがって、図8a及び図8bに示される試料添加用プレート820は実行可能であるが、その試料添加効果は、図1及び図4に示される試料添加用プレート300及び600よりもわずかに悪く、図9a及び9bに示される試料添加用プレート831よりも著しく良好である。
【0082】
したがって、全体として、試料添加部の構造設計については、適切な緩衝領域が液体の均一な分配に直接影響している。多くのシミュレーションと実験により、図1図4に示される実施例の方が好ましく、均一な分配誤差が小さく、試料添加の失敗の可能性が非常に低いことが分かった。ある場合では、図7a及び図8aに示される実施例も実行可能である。
【0083】
要するに、湿潤領域の高さを制御して、湿潤領域で毛細管現象を形成すること、或いは、適切な緩衝領域の構造設計により、液体の均一な分配を改善し、異なる設置部位での検出構造に対する試料添加の一致性を改善することができる。好ましくは、毛細管現象と適切な緩衝領域の構造設計とを組み合わせて使用してもよい。その結果、試料添加の効果をさらに改善することができる。
【0084】
なお、湿潤領域で毛細管現象を形成することができる検出装置については、試料添加用プレートの試料添加部は、図1図4図7a又は図8aに示される階段状構造に限定されないが、図9aと図9bに示されるフラット構造であってもよいことを理解されたい。このように、従来の検出装置と比較して、異なる検出部材の試料添加の一致性をある程度改善することもでき、構造が簡単で、異なる検出部材間の干渉も減少し、検出結果の精度を向上させることができる。毛細管現象を使用して試料添加の一致性を改善する検出装置については、湿潤領域の高さは、好ましくは2mm以下、例えば、0.1mm~1mm、より好ましくは0.25mm~0.7mmであってもよい。
【0085】
前記実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができ、説明の便宜上、前記実施例の各技術的特徴の全ての組合せを説明していないが、これらの技術的特徴の組合せは矛盾しなければ、本明細書の記載範囲に含まれると理解されるのが当然である。
【0086】
上述した実施例は、具体的且つ詳細に記述されたが、本発明のいくつかの実施形態を示したものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるものではない。なお、当業者にとって、本発明の精神を逸脱しないかぎり、様々な変形や改良も本発明の保護範囲に含まれる。よって、本発明の保護範囲は、請求項の限定した範囲を基準とする。
【符号の説明】
【0087】
10 イムノクロマトグラフィー検出装置
20 試料添加管
100、500、834 カバープレート
102、502 検出キャビティ
110 試料添加孔
120 検出ウィンドウ
200、700、832 イムノクロマトグラフィー検出部材
210 基板
220 試料パッド
230 結合パッド
240 検出膜
242 検出ライン
250 吸収パッド
300、600、810、820、831 試料添加用プレート
310、833 試料添加部
311 基準面
320 最下段の階段
321 最下段の階段の側面
322 最下段の階段の上面
330 2段目の階段
340、640 最上段の階段
341 最上段の階段の側面
342、642 最上段の階段の上面
510 通気孔
710 支持層
720 反応層
721 試薬層
722 表示層
730 拡散層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
【国際調査報告】