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特表2022-516842二つの前側操舵輪を備えた車両用前輪部及び前記前輪部を備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】二つの前側操舵輪を備えた車両用前輪部及び前記前輪部を備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20220224BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20220224BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20220224BHJP
   B62K 25/24 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/08
B62K5/05
B62K25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533132
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 IB2019060526
(87)【国際公開番号】W WO2020121144
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】102018000010942
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
【テーマコード(参考)】
3D011
3D014
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AD01
3D011AD03
3D014DD03
3D014DE06
3D014DE14
(57)【要約】
【要約】
車両(1)は、前輪部(2)と、傾斜式四節リンク(21)によって前輪部(2)に接続された一対の前側操舵輪(3',3'')とを備えている。各前側操舵輪(3',3'')には、サスペンション四節リンク(25',25'')が設けられており、サスペンション四節リンクは、それぞれの関節接合軸線(47A',47A'',48A',48A'' ,47B',47B'';48B',48B'')を中心に相互にヒンジ接合された四つの構成要素(23',23'';42A',42A'' ;42B',42B'' ;41',41'')と、ショックアブソーバ(26',26'')とを備えている。ショックアブソーバ(26',26'')は、サスペンション四節リンク(25',25'')の二つの構成要素(23',23'';41',41'')に拘束されている。各サスペンション四節リンク(25',25'')の四つの構成要素(23',23'';42A',42A'';42B',42B'';41',41'')の間の関節接続軸線(47A',47A'' ,48A',48A'' ,47B',47B'';48B',48B'')は、各前輪(3',3'')の軸線(43',43'')を含む平面に直交する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の前輪部(2)であって、
相互にヒンジ接続された第一クロスバー(31)、第二クロスバー(23)、第一直立部(35')及び第二直立部(35'')を有する傾斜式四節リンク(21)と、
各直立部(35',35'')に関連付けされた各サスペンションユニット(28',28'')と
を備え、
前記サスペンションユニットが、
車両の車輪(3',3'')用の車輪支持部(41',41'')であって、車輪(3',3'')の回転軸線(43',43'')を画定する車輪支持部(41',41'')と、
操舵軸線(27',27'')を中心に回転するように各直立部(35',35'')に回転可能に接続された支持アーム(23',23'')と、
各第一関節接合軸線(47A',48A';47A'',48A'')を介して車輪支持部(41',41'')及び支持アーム(23',23'')に接続された第一クランク(42A',42A'')及び各第二関節接合軸線(47A',48A';47A'',48A'')を介して車輪支持部(41',41'')及び支持アーム(23',23'')に接続された第二クランク(42B',42B'')であって、第一クランク(42A',42A''),第二クランク(42B',42B'')、車輪支持部(41',41'')及び支持アーム(23',23'')が、サスペンション四節リンク(25'、25'')を形成し、前記角第一関節軸線及び前記角第二関節軸線が、車輪(3',3'')の回転軸線(43',43'')を含む平面と垂直である第一及び第二クランクと、
サスペンション四節リンク(25',25'')の二つの点(26A',26A'';26B',26B'')で拘束され、前記二つの点の相互距離が、サスペンション四節リンク(25',25'')が動いて、ショックアブソーバの長さが変わった時に変わるように前記二つの点がされているショックアブソーバ(26',26'')と
を備えていることを特徴とする車両用前輪部。
【請求項2】
前記ショックアブソーバ(26',26'')が、前記支持アーム(23',23'')及び前記車輪支持部(41',41'')に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の前輪部。
【請求項3】
車輪支持部(41',41'')が、第一クランク(42A',42A'')及び第2のクランク(42B',42B'')が互いに間隔をおいた二点で接合される本体を有し、
前記本体が、第一クランクの関節接合点及び第二クランクの関節接合点を超えて、ショックアブソーバ(26',26'')が接合される付属物(41A',41A'')を備えて延びている
ことを特徴とする請求項2に記載の前輪部。
【請求項4】
ショックアブソーバ(26',26'')が、第1クランク(42A',42A'')及び第2クランク(42B',42B'')に二点で接合された補助ロッカー(71',71'')及び支持アーム(23',23'')に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の前輪部。
【請求項5】
前記補助ロッカー(71',71'')が、前記車輪支持部(41',41'')と前記支持アーム(23',23'')との間の中間位置に配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の前輪部。
【請求項6】
車輪支持部(41',41'')が、ブレーキユニット(51',51'')を支持している
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項7】
前記支持アーム(23',23'')が、操舵システムに接続するための接続部材(24',24'')を備えている
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項8】
ショックアブソーバ(26',26'')が、減衰要素(63',63'')及び弾性要素(61'、61'')、特にらせん状ばねを備えている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項9】
減衰要素(63',63'')及び弾性要素(6、61'')が、共通の軸線周り、又は二つの実質的に平行な軸線周りに配置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の前輪部。
【請求項10】
前記二つの支持アーム(23',23'')が、操舵リンク(29)によって一緒に接続されている
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項11】
傾斜式四節リンク(21)の二つの直立部(35',35'')が、各々ハウジングを形成し、各ハウジング内で、各サスペンションユニット(28',28'')の各支持アーム(23',23'')が回転可能に支持されている
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項12】
前記傾斜式四節リンク(21)が、前記サスペンション四節リンク(25',25'')よりも高い位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項13】
操舵スリーブ(11)が一体に形成された前輪部フレーム(9)を備え、操舵スリーブ(11)内に操舵柱(13)が回転可能に収容され、操舵柱(13)が、操舵リンク(29)によって二つの支持アーム(23',23'')に拘束されている
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項14】
少なくとも一つの後側駆動輪(7)と、
請求項1~13の何れか一項に記載の前輪部(2)と、
車輪支持部(41',41'')の一方によって各々支持された一対の前側操舵輪(3',3'')と
を有することを特徴とする車両。
【請求項15】
前記車両が、
前輪部(2)と、
傾斜式四節リンク(21)によって前輪部(2)に接続された一対の前側操舵輪(3'、3'')と
各前側操舵輪(3',3'')用のサスペンション四節リンク(25',25'')と、
を備え、
前記サスペンション四節リンク(25',25'')が、
各関節接合軸線(47A',47A'',48A',48A'',47B',47B'',48B',48B'')を中心に結合された四つの構成要素(23',23'';42A',42A'' ;42B',42B'' ;41',41'')とショックアブソーバ(26',26'')とを有し、
前記ショックアブソーバ(26',26'')が、サスペンション四節リンク(25',25'')の動きに応じて、ショックアブソーバ(26',26'')の長さが変化するように、サスペンション四節リンク(25',25'')の二つの構成要素(23',23'';41',41'')に拘束された
車両(1)において、
各サスペンション四節リンク(25',25'')の四つの構成要素(23',23'';42A',42A'' ;42B,42B'' ;41',41'')の間の各関節接合軸線(47A',47A'',48A',48A'',47B',47B'';48B',48B'')が、各前輪(3',3'')の回転軸線(43',43'')を含む平面に直交している
ことを特徴とする車両。
【請求項16】
各サスペンション四節リンク(25',25'')が、傾斜式四節リンク(21)に向かって延びる直立部(23',23'')を備え、前記傾斜式四節リンクが前側操舵輪(3',3'')よりも高い位置に設けられている
ことを特徴とする請求項15に記載の車両。
【請求項17】
各サスペンション四節リンク(25',25'')の直立部(23',23'')が、各操舵軸線(27',27'')を中心に回転するように、傾斜式四節リンク(21)の各直立部(35',35'')に回転可能に結合されている
ことを特徴とする請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前輪部(2)が、請求項1~13の何れか一項に記載の特徴を備えている
ことを特徴とする請求項15~17の何れか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜式車両の分野、即ち、車両に沿って長手方向に延びる中心面の周りで傾斜運動をする車両の分野に関する。傾斜式車両は、典型的には、二つの前側操舵輪及び一つの後側駆動輪を備えた三輪車である。傾斜運動により、車両を、その動作中、例えば、カーブを走行する時に、傾斜させることができる。
【背景技術】
【0002】
車両の分野では、扱いやすさというオートバイの特性と、四輪車の安定性とを組み合わせた車両の供給が増え続けている。
【0003】
これらのモデルとしては、例えば、二つの前側操舵車輪及び一つの後側駆動車輪を備えた三輪車両及び通常はクワッドバイク(バギー)と呼ばれる四輪車両がある。
【0004】
より詳細には、上述した三輪車両は、実質的に走行方向に向けられた軸線を中心として揺動運動、即ち、傾斜運動をしながら、横方向にローリング、即ち、傾斜する。また、これらの三輪車両は、後側駆動輪に連結されたエンジンを備え、一対の前側車輪が車両の方向を制御する一方で、後側駆動輪にトルクを供給してトラクションを得る。
【0005】
この解決手段により、二つの前側駆動輪を有する車両は、自動車と同様に、地面に対する前輪の二重支持によって、二輪車両に比べてより高い安定性を有する。
【0006】
前輪は、例えば、前輪を前輪部フレームに連結する四節リンクを介在させることで、前輪の傾斜及び操舵を実質的に同期させることができる機構を用いて相互に運動学的に連結されている。また、これらの車両には、前輪に一つずつ二つの独立したサスペンションが設けられている。各サスペンションには、弾性体(スプリング)と粘性体(ショックアブソーバー)が設けられている。
【0007】
従って、傾斜式三輪車両は、二輪車両の操作性と四輪車両の安定性及び安全性を同時に使用者に保証することを目的とする。
【0008】
このタイプの傾斜式三輪車両は、例えば、国際公開WO2017/115294、国際公開WO2017/115295、国際公開WO2017/115296、国際公開WO2017/115297、及び国際公開WO2018/104906に開示されている。
【0009】
このタイプの車両のサスペンション及び操舵システムの設計は、運転の快適性及び安全性を提供しなければならないため、重要な側面である。
【0010】
従って、二つの前側操舵輪を有する傾斜式車両用サスペンション及び操舵システムの継続的な改善が必要である。
【発明の概要】
【0011】
第一の態様によれば、本発明は、傾斜式四節リンク及び二つの前輪用の二つのサスペンションユニットを備えた車両用前輪部に関する。傾斜式四節リンクは、相互にヒンジ接続された第一クロスバー、第二クロスバー、第一直立部及び第二直立部を備えている。前記第一クロスバー及び前記第二クロスバーは、車両の中心面に対して横方向に延びており、即ち、右左方向に延びている。前記第一直立部及び前記第二直立部の各々は、互いに間隔をあけた二点で、前記第一クロスバー及び前記第二クロスバーにヒンジ結合されている。前記第一クロスバー及び前記第二クロスバーの各々は、各中間点で、前輪部フレーム又は前記前輪部フレームに剛体的に接続された要素、例えば、操舵スリーブにヒンジ結合されている。
【0012】
各サスペンションユニットは、各直立部に関連付けられている。各サスペンションユニットは、車両の各前輪用の車輪支持部を備えている。車輪支持部は、各車輪の回転軸線を画定する。各サスペンションユニットは、操舵軸線を中心に回転するように、各直立部に回転可能に接続された支持アームをさらに備える。
【0013】
各サスペンションユニットはまた、各サスペンション四節リンクを備える。幾つかの実施形態では、支持アーム、又は、その一部が、サスペンション四節リンクの要素の一つであり、車輪支持部が、サスペンション四節リンクの第二の要素である。
【0014】
本明細書に開示された実施形態では、各サスペンション四節リンクは、また、車輪支持部及び支持アームを接合する一対のクランクを有する。特に、各四節リンクは、車輪支持部及び支持アームにヒンジ結合された第一クランクと、車輪支持部及び支持アームにヒンジ結合された第二クランクとを備える。各サスペンションユニットの第一クランク、第二クランク、車輪支持部及び支持アームは、互いにヒンジ結合され、各サスペンション四節リンクを形成しており、各サスペンション四節リンクは、各前側操舵輪の中心面に実質的に直交する中心面に沿って本質的に延びている。言い換えれば、クランクが支持アーム及び車輪支持部に接合されるヒンジ軸線、すなわち、互いに平行なサスペンション四節リンクの構成要素の回転軸線は、各前側操舵輪の回転軸線を含む平面に直交し、かつ、各前側操舵輪の中心面に平行である。
【0015】
一般に、各前側操舵輪のサスペンション四節リンクは、各前側操舵輪の中心面に直交している。サスペンション四節リンクの二つの構成要素の相互連結の各軸線は、各前側操舵輪の回転軸線を含む平面に直交する。
【0016】
各サスペンションユニットは、さらに、サスペンション四節リンクの二点で拘束されたショックアブソーバを備えている。前記二点は、サスペンション四節リンクが動いた時に、その相互の距離が変化するようになっている。これにより、例えば、各前側操舵輪の上下運動によって、四節リンクが動く時に、それに応じてショックアブソーバの長さが変化する。
【0017】
このタイプの前輪部は、地面と車輪の間の接触点が、車両の中心面上の投影において、車両に対して直線的な動きで移動することを可能にし、例えば、以下の文献に開示されたサスペンションシステムで生じるような回転並進的な動きではない。国際公開W02018/104906には、各操舵輪のサスペンション四節リンクが車輪の中心面と平行であり、従って、各前側操舵輪の回転軸線と平行なヒンジ軸線を有していることが開示されている。このようにして得られたサスペンションは、フォークサスペンションと同等の働きをするが、コストが大幅に削減され、運動学的な利点も加わる。実際、フォークサスペンションでは、それらの間に摺動支持体、即ち、並進運動のための支持体が配置される相互に可動する要素を設ける必要があるが、本明細書に記載されているようなサスペンション四節リンクでは、車輪の上下運動により、サスペンション四節リンクの構成要素が、並進支持体ではなく回転支持体を中心に回転運動する。従って、摩擦の少ないシステムが得られ、より良い運転の快適さ、摩耗の少なさ、並びに生産及びメンテナンスコストの削減を実現するように適合されている。
【0018】
また、幾つかの実施形態では、上述の前輪部は、従来技術の構成と比較して、さらなる利点を有する。特に、各前側操舵輪の中心面に対して直交して展開するサスペンション四節リンクは、各前側操舵輪のキャンバー角を制御することを可能にし、高性能車やレーシングカーで起こるように、サスペンションの沈み込み中、即ち、ショックアブソーバの圧縮中にキャンバー角が変化され得る。
【0019】
さらに、本明細書に開示されているサスペンション四節リンクによって、各操舵軸線を中心とした操舵輪の回転中、四節リンクがある平面と、車輪がある平面とが、常にお多難いに対して90°の向きになる。
【0020】
別の実施態様によれば、本発明は、少なくとも一つの後側駆動輪と、二つの前側操舵輪と、上述した前輪部とを備えた自動車であって、二つの車輪支持部が、車両の二つの操舵輪を支持する自動車に関する。
【0021】
また、前輪部と、傾斜式四節リンクを用いて前輪部に連結された一対の前側操舵輪を有する車両が開示されている。さらにまた、前記車両は、各前側操舵輪のために、サスペンション四節リンク及びショックアブソーバを備えている。各ショックアブソーバは、サスペンション四節リンクの二つ構成要素に二点で拘束され、サスペンション四節リンクの動きに伴ってショックアブソーバが長さを変えるように構成されている。各サスペンション四節リンクは、各前側操舵輪がある平面と直交する平面に沿って延びている。実際には、サスペンション四節リンクの二つの構成要素間の相互関節連結の各軸線が、各前側操舵輪の回転軸線を含む平面に直交するような構成になっている。
【0022】
有利には、各サスペンション四節リンクの四つの要素の一つである車輪支持アームが、傾斜式四節リンクに向かって延びる直立部を形成し得る。このようにして、各前側操舵輪の支持アームが、前記車輪を運動学的に四節リンクに接続し、有利には、前記傾斜式四節リンクは、二つのサスペンション四節リンクより高いレベルに配置され得る。このようにして、二つの前側操舵輪間に構成される領域におけるサスペンション部材は、例えば国際公開W02018/104906に開示されているものよりも嵩張らない。これにより、前輪間に傾斜式四節リンクのためのスペースを残す必要がないため、二つの前輪をより近くに、即ち、車両の中心面に近づけて配置することが可能になる。
【0023】
本発明による前輪部及び車両の可能な実施形態では、ショックアブソーバは、支持アームと車輪支持部との間に介在される。
【0024】
例えば、車輪支持体は、第一クランク及び第二クランクが互いに離間した二点で接合される本体を有し得る。本体は、第一クランクのヒンジポイント及び第二クランクのヒンジポイントを超えて延び、ショックアブソーバが接合される付属物を有し得る。
【0025】
上述した前輪部及び/又は車両の他の実施形態では、ショックアブソーバは、支持アームと、第一クランク及び第二クランクに二点で接合される補助ロッカーとの間に介在され得る。補助ロッカーは、有利には、車輪支持部と支持アームとの間の中間位置に配置され得る。この配置により、ショックアブソーバの荷重を両方のクランクに分散させることができる。さらに、ショックアブソーバと補助ロッカーとの間の拘束点は、ショックアブソーバがサスペンション四節リンクの一方のクランクに直接拘束されている場合に移動する軌道とは異なる軌道で移動する。このようにして、サスペンションの様々な構成要素の機械的な大きさに応じて、ショックアブソーバをより自由に配置することができ、各車輪の上下動の間にショックアブソーバの十分に広いストロークを得ることができる。
【0026】
二つの前側操舵輪の各支持アームは、操舵システムに接続するための接続要素を有し得、例えば、前輪部フレームに一体に設けられた操舵スリーブに回転可能に収容された操舵管に接続される操舵棒に二つの支持アームを接続する。
【0027】
特にコンパクトな配置にするために、前輪部は、各サスペンションユニットの各支持アームを回転可能に各々収容する各ハウジングを形成するように適合された、傾斜式四節リンクの直立部を有し得る。
本発明は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を示す以下の説明及び添付の図面に従って、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による三輪車両の側面図である。
図2図1のII-II線視平面図である。
図3図1及び図2のIII-III線視正面図である。
図4図1図2及び図3に示した車両の前部の斜視図である。
図5A】前輪のサスペンションの一実施形態の部分切断拡大正面図である。
図5B】前輪のサスペンションの一実施形態の部分切断拡大正面図である。
図6A】前輪のサスペンションの別の実施形態の部分切断拡大正面図である。
図6B】前輪のサスペンションの別の実施形態の部分切断拡大正面図である。
図7図6AのVII-VII線視図である。
図8図7のVIII-VIII線視正面図である。
図9】サスペンションユニットのさらに別の実施形態の、図5A及び図6Aと同様の、部分切断図である。
図10図9のX-X線視図である。
図11図10のXI-XI線視図である。
図12】車両の前輪部の一実施形態の運動学的な図である。
図13】車両の前輪部の別の実施形態の運動学的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面は、三輪車両、即ち、一つの後側駆動輪を有する車両に適用された本発明の実施形態を示しているが、上述したように、本発明の前輪部は、いわゆるクワッドバイクのような四輪車両にも適用することができる。
【0030】
本発明によるサスペンション及び操舵システムの様々な実施形態の新規な特徴をよりよく理解するために、図1から図11はその実際の実施形態を示し、図12及び図13は、サスペンションを定義する構成要素と、車両の傾斜動作及び前輪の操舵動作を可能にする部材との運動学的な図を示す。
【0031】
車両1は、符号2で示した前輪部分、即ち、前輪部を有し、該前輪部2には、二つの前側操舵輪3'及び3''が関連付けられている。以下の説明では、車両1の中心面Mに関して対称となる構成要素、グループ、又は要素は、同じ符号号で示され、符号の後に、中央面Mの一方の側の要素、例えば運転者の左側の要素にはカンマ(')を付し、中央面Mの他方の側の要素、例えば運転者の右側の要素にはカンマ('')を付す。中心面の右側及び左側の各要素を示すためにカンマ('')及び(')が使用される符号が、カンマ無しで使用されている場合は、右側の要素又は左側の要素を差別せずに参照し得ることを意味する。
【0032】
また、車両1は、エンジン5と、詳細を図示しない伝達部材を備えた後側駆動輪7とを備えている。
【0033】
前輪部2は、前輪部フレーム9を備え、前輪部9には、操舵スリーブ11が一体的に設けられている。操舵スリーブ11内には、操舵管13が回転可能に収容されており、ハンドルバー15にねじり結合されており、図12及び図13の運動学的図にも示すように、このハンドルバー15を介して、運転者が前側操舵輪3',3''に操舵を付与する。
【0034】
以下でより詳細に説明するように、車両1の前輪部2は、車輪3',3''が接続される傾動式四節リンク21を備えている。傾斜式四節リンクにより、カーブを走行する時に車両を傾斜させることができる。各車輪3',3''は、各サスペンション四節リンク25',25''の一部である各支持アーム23',23''によって、傾斜式四節リンク21に接続されている。各サスペンション4節リンク25',25''は、ショックアブソーバ26',26''を備えている。各ショックアブソーバ26',26''を備えた各サスペンション4節リンク25',25''は、符号28',28''で全体として示される車輪3',3''用サスペンションユニットの一部である。各サスペンションユニット28',28''は、各支持アーム23',23''を介して傾斜式四節リンク21に接続されており、前記支持アーム23',23''は、サスペンション四節リンク25',25''の要素の一つの直立の形態の延長部を構成する。
【0035】
各支持アーム23',23''は、ハンドルバー15によって制御される各操舵軸線27',27''を中心に、それに対して回転可能に、傾斜式四節リンク21に接続されている。この目的のために、各支持アーム23',23''は、支持アーム23',23''を操舵管13に接続する操舵リンクの一部であるス操舵バー29に接続するための接続部材24',24''を備えている。
【0036】
より詳細には、傾斜式四節リンク21は、第一クロスバー31(上側クロスバー)及び第二クロスバー33(下側クロスバー)を備えている。各クロスバー31,33は、クロスバー31の場合は符号31Aで、クロスバー33の場合は符号33Aで示される中心点で、前輪部フレーム9に、より正確には、図示の例では、操舵スリーブ11に接合されている。このようにして、クロスバー31及び33は、クロスバーを前輪部フレームに接続するヒンジによって定義される傾斜軸線を中心に回転し得る。図3に示すように、車両1の傾斜角がゼロに等しい場合、傾斜軸線は互いに実質的に平行であり、車両1の中心面M上に位置する。
【0037】
また、傾斜式四節リンク21は、二つの直立部35'及び35''を備えている。より具体的には、上側クロスバー31は、符号32'の位置で直立部35'に接合され、符号32''の位置で直立部35''に接合されている。下側クロスバー33は、符号34'の位置で直立部35'に接合され、符号34''の位置で直立部35''に接合されている。図7において、符号32X及び34Xは、直立部35及びクロスバー31,33を接続する接合部の軸線を示している。
【0038】
図示の実施形態では、直立部35',35''は、円筒形ハウジングのような形状をしており、その内部には、各支持アーム23',23''の上部が支持されている。図示されていない回転軸受又はブッシュは、各直立部35',35''によって形成されたハウジングの内部で、支持アーム23',23''の回転を可能にする。
【0039】
各支持アーム23',23''は、傾斜式四節リンク21から下方に延びており、そこには各サスペンション四節リンク25',25''が形成されている。従って、傾斜式四節リンク21は、二つのサスペンション四節リンク25',25''及び各車輪3',3''よりも高い位置に配置されている。
【0040】
各サスペンション四節リンク25',25''は、四つの要素によって形成されており、そのうちの一つは、対応する支持アーム23',23''であり、支持アーム23',23''は、実際には、サスペンション四節リンク25',25''のロッカーを構成しており、直立の形で上向きにかつ傾斜式四節リンクに向けて延びている。二つの支持アーム23',23''の各々には、車輪支持部41',41''が接続されている。
【0041】
各車輪支持部41',41''は、各車輪3',3''の回転軸線43',43''を規定している。符号45',45''は、各車輪3',3''の回転軸線を示している(特に図5A、5B;6A、6Bを参照)。
【0042】
各車輪支持部41',41''は、一対のクランク42A',42B'及び42A'',42B''によって、各支持アーム23',23''に連結されている。符号47A',47B'は、クランク42A',42B'の支持アーム23'に対する関節接合ヒンジを示し、符号47A'',47B''は、クランク42A'',42B''の支持アーム23''に対する関節接合ヒンジを示している。図7において、符号47X及び47Yは、クランク42A'',42B''の支持部23''への関節接合ヒンジ47A''及び47B''の回転軸線を示している。同様に、符号48A',48B'は、クランク42A',42B'の車輪支持部41'に対する関節接合ヒンジを示し、符号48A'',48B''は、クランク42A'',42B''の車輪支持部41''に対する関節接合ヒンジを示している。各サスペンション四節リンク25の四つの要素23,41,42A及び42Bの関節接合ヒンジ47A,47B,48A及び48Bの軸線は、互いに平行であり、かつ、車輪3',3''の回転軸線43',43''を含む平面に直交している。
【0043】
各サスペンション四節リンク25',25''は、各車輪の回転軸線43',43''に平行な平面に沿って延びている。従って、各サスペンション4節リンク25',25''がある平面は、各前側操舵輪3',3''がある平面と直交している。「一つ以上の部材がある平面」とは、本明細書では、部材の要素を通る中心面を意味する。従って、サスペンション四節リンク25',25''のような四節リンクの場合、前記平面、即ち、前記四節リンクがある平面は、クランク42A,42Bの中心面であり、クランク42A,42Bが接合されている車輪支持部41の一部分及びサスペンションアーム23の一部分の中心面である。なお、図12及び図13の簡略化した運動学的な図では、簡略化して示したサスペンション四節リンク25がある平面は、図面の平面とほぼ一致しており、車輪3のある面は、図面の平面と直交する平面である。本実施形態では、例えば図7に示すように、サスペンション四節リンク25がある平面は、垂直面に対して、例えば約10°後方に傾斜している。サスペンション四節リンク25の中心面又はそれがある平面は、図7において符号M25で示されている。
【0044】
車輪3がある平面は、特に図5A、5B及び6A、6Bを参照すると分かるように、符号3A'及び3A''で示される同じ車輪の中心面である。
【0045】
各サスペンション四節リンク25',25''は、本質的に、その中心面、即ち、上述したように四節リンク25',25''がある平面が、各前輪3',3''がある平面と実質的に直交するように配置されている。
【0046】
実用的な実施形態では、より大きな機械的強度を持たせるために、図3、特に図7に見られるように、各クランク42A',42A'',42B'及び42B''は、二重にすることができる。図5A、5B及び6A、6Bでは、各二重クランクの一つの構成要素のみが示されており、より正確には、それぞれの図において、ショックアブソーバ26',26''の後ろに配置されている構成要素が示されており、ショックアブソーバの前に配置されている対応する構成要素は、ショックアブソーバ26',26''のレイアウトをより良く示すために省略されている。他の実施形態では、各クランクは、U字型又はH字型であってもよく、即ち、二重であってもよいが、共通の軸にヒンジ止めされた二つの構成要素からなるのではなく、単一の部材で作られていてもよい。
【0047】
各車輪支持部41',41''は、各車輪3',3''の回転軸線45',45''に加えて、ブレーキのディスク53',53''に作用するブレーキユニット51',51''も支持するように適合され得る。
【0048】
各ショックアブソーバ26',26''は、一般に、弾性要素、例えばヘリカルスプリング61',61''と、減衰要素63',63''とを有し得る。図示実施例では、各弾性要素61と、各減衰要素63とが互いに同軸に配置されているが、これは必須ではない。例えば、減衰要素と弾性要素とが互いに平行に、かつ隣接して配置されていてもよい。
【0049】
適切には、各ショックアブソーバ26',26''は、好ましくはその端部で、各サスペンション四節リンク25',25''の二つの異なる点に、直接的又は間接的に拘束される。より正確には、サスペンション四節リンク25',25''及び対応するショックアブソーバ26',26''の正しい動作を可能にするために、ショックアブソーバ26',26''は、車輪の上下動により各四節リンクが変形する時に相互距離が変化する二つの点で拘束される。図1、2、3、4、6A、6B、7、8及び12の実施形態では、各ショックアブソーバ26',26''は、点26A',26A''のある頂部で、支持アーム23',23''にヒンジ結合され、また、点26B',26B''がある底部で、クランク42A',42B',及び42A''、42B''が接合されている対応する車輪支持部41',41''の本体から延びる付属品又は延長部41A',41A''にヒンジ結合されている。
【0050】
四節リンク25',25''が変形すると、各ショックアブソーバ26',26''の二つのヒンジ点26A',26B',;26A''、26B''は、互いに向かって移動したり、遠ざかったりする(その結果、ショックアブソーバが短くなったり、長くなったりする)。
【0051】
ショックアブソーバ26とサスペンション四節リンク25',25''の要素との間の上述の拘束方法は、可能な唯一のものではない。図5A、5B、及び13の実施形態では、各ショックアブソーバ26は、符号26A',26A''で示す位置において、図1~4、6A、6B、7、8及び12の実施形態と実質的に同様に、対応する支持アーム23',23''にヒンジ結合されているが、底部では、各ショックアブソーバ26',26''は、符号26B',26B''で示す位置において、補助ロッカー71',71''にヒンジ結合されており、前記補助ロッカー71',71''は、付属品71A',71A''を有し、順番に、各々、クランク42A',42B'及び42A'',42B''にヒンジ結合されている。好ましくは、補助ロッカー71',71''(特に図5A、5B参照)は、車輪支持部41',41''及び支持アーム23',23''の間の中間位置に配置されている。
【0052】
特に有利な実施形態では、添付図面に示すように、各支持アーム23',23''は、二つの前側操舵輪3',3''の間の低減された距離を維持しつつ、ショックアブソーバ26',26''を取り付けるためのより多くのスペースを有するように、対応する操舵軸線27',27''に対して車両1の中心線に向かって変位された下側湾曲部を有する。二つの支持アーム23',23''は、上方に離れて広がり、傾斜式四節リンク21の直立部35',35''に結合される。
【0053】
図9図10及び図11は、右側サスペンションユニット28''に関する第三実施形態を示す図である。同一の符号は、前の図に図示され、既に説明された部材と同じ又は等価の部材を示す。これらの部材については、改めて説明しない。図9は、図5Aと同様に、サスペンション四節リンク25''の延伸平面、即ち、サスペンション四節リンク25''が横たわる平面に平行な、ほぼ垂直な平面に従った部分断面図である。図10は、図9の矢印X-Xから見た、車両1の側面図、即ち、本質的に車両1の中心面MMからの図であり、図11は、サスペンションユニット28''の、図10のXI-XI視正面図である。
【0054】
図9図11の実施形態は、補助ロッカー71''を備えているので、図5A図5B及び図13の実施形態と運動学的に等価である。ショックアブソーバ26''の底部は、補助ロッカー71''に対して符号71A''で示す位置で関節接合されている。図9、10及び11の実施形態が、図5A及び5Bの実施形態と異なる点は、補助ロッカー71''の形状が異なることであり、この場合、サスペンション四節リンク25''の下に突出していない。より具体的には、ロッカー71''は、クランク42A'',42B''によって画定された容積内に完全に収容されている。これにより、ショックアブソーバ26''は、地面からの距離が大きくなり、その下端が見えなくなり、結果として、美的及び機能的な利点が得られる。
【0055】
さらに、図1図8の実施形態では、ヒンジ軸線32X,34Xが互いに平行であり、かつ、ヒンジ軸線47X,47Yに対して平行であるが(特に図7参照)、図9図11の実施形態では、特に図10に見られるように、軸線47X,47Yは、軸線32X,34Xに対して平行ではなく、それに対して、例えば、約5°傾斜している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】