(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】フレキソ印刷用の液体フォトポリマー樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220224BHJP
B41N 1/00 20060101ALI20220224BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20220224BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220224BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220224BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G03F7/004 501
B41N1/00
B41C1/00
G03F7/027 512
G03F7/027 513
G03F7/027 514
G03F7/038 501
G03F7/027 502
G03F7/004 502
G03F7/00 502
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538109
(86)(22)【出願日】2020-01-02
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 US2020012012
(87)【国際公開番号】W WO2020142579
(87)【国際公開日】2020-07-09
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506314391
【氏名又は名称】マクダーミッド グラフィックス ソリューションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ヴェスト、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、デボラ
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084CC01
2H084CF10
2H114AA01
2H114BA02
2H114DA60
2H114DA61
2H196AA02
2H196BA05
2H196EA02
2H225AC21
2H225AC33
2H225AC64
2H225AC75
2H225AD02
2H225AD12
2H225AN02P
2H225AN22P
2H225AN72P
2H225BA09P
2H225CA02
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、b)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、c)少なくとも1つの光開始剤と、d)少なくとも1つのポリチオールと、を含む液体フォトポリマー樹脂組成物、並びに同組成物を使用して、良好な引張強度及び伸びを有する軟質レリーフ画像印刷版を作製する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体フォトポリマー樹脂組成物であって、
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、
b)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
c)少なくとも1つの光開始剤と、
d)少なくとも1つのポリチオールと、を含む、液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和プレポリマーが、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、不飽和ポリアミド樹脂、及び不飽和ポリ(メタ)アクリレート樹脂のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の液体フォトポリマー樹脂。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマーが、1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーと、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとの混合物を含む、請求項1に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリチオールが、1分子当たり2つ以上のチオール基を有する分子を含む化合物である、請求項1に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリチオールが、チオグリコール酸、α-メルカプトプロピオン酸、及びβ-メルカプトプロピオン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステルからなる群から選択される、請求項4に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリチオールが、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β-メルカプトプロピオネート)、及び前述のうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリチオールが、前記液体フォトポリマー樹脂組成物中に、約0.10~約3.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリチオールが、前記液体フォトポリマー樹脂組成物中に、約0.25~約2.0重量%の量で存在する、請求項7に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項9】
酸化防止剤、促進剤、染料、阻害剤、活性化剤、充填剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、チキソトロープ剤、表面活性剤、光散乱剤、粘度調整剤、延伸油、可塑剤、粘着防止剤、及び前述の1つ以上の組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項10】
前記添加剤が酸化防止剤を含む、請求項9に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項11】
前記酸化防止剤が、立体障害モノフェノール、アルキル化チオビスフェノール及びアルキリデンビスフェノール、ヒドロキシベンジル、トリアジン、重合トリメチルジヒドロキノン、ジブチル亜鉛ジチオカルバメート、ジラウリルチオジプロピオネート、亜リン酸塩、及び前述のうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項12】
性能向上添加剤を更に含む、請求項1に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項13】
前記性能向上添加剤が高分子量脂肪酸を含む、請求項12に記載の液体フォトポリマー樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の光化学反応生成物を含む、フレキソレリーフ画像印刷版。
【請求項15】
前記印刷版が、約30未満のショアA硬度を有する、請求項14に記載のフレキソレリーフ画像印刷版。
【請求項16】
前記印刷版が、約25未満のショアA硬度を有する、請求項15に記載のフレキソレリーフ画像印刷版。
【請求項17】
前記印刷版が、約20未満のショアA硬度を有する、請求項16に記載のフレキソレリーフ画像印刷版。
【請求項18】
液体フォトレジンからレリーフ画像印刷版を作製する方法であって、
a)カバーフィルム上に液体フォトレジン組成物を既定の厚さまでキャスティングする工程であって、前記液体フォトレジン組成物は、
i)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、
ii)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
iii)少なくとも1つの光開始剤と、
iv)少なくとも1つのポリチオールと、を含む、工程と、
b)前記キャスティングされた液体フォトポリマーの上に裏張りシートを積層する工程と、
c)前記フォトポリマーを化学線に露光して、前記液体フォトポリマーを選択的に架橋かつ硬化させる工程であって、化学線に露光されない前記液体フォトポリマーは液体状態に留まる、工程と、
d)前記液体フォトポリマーを除去する工程と、を含み、
硬化したフォトポリマーのレリーフ画像が得られる、方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのポリチオールが、1分子当たり2つ以上のチオール基を有する分子を含む化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのポリチオールが、チオグリコール酸、α-メルカプトプロピオン酸、及びβ-メルカプトプロピオン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステルからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのポリチオールが、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β-メルカプトプロピオネート)、及び前述のうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのポリチオールが、前記液体フォトポリマー樹脂組成物中に、約0.10~約3.0重量%の量で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのポリチオールが、前記液体フォトポリマー樹脂組成物中に、約0.25~約2.0重量%の量で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
酸化防止剤、促進剤、染料、阻害剤、活性化剤、充填剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、チキソトロープ剤、表面活性剤、光散乱剤、粘度調整剤、延伸油、可塑剤、粘着防止剤、及び前述のうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記添加剤が酸化防止剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
性能向上添加剤を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記印刷版が、約30未満のショアA硬度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記印刷版が、25未満のショアA硬度を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記印刷版が、20未満のショアA硬度を有する、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光重合によるレリーフ画像印刷要素及びコーティングの製造において使用可能な液体フォトポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、一般的に大量部数のために使用される印刷方法である。フレキソ印刷は、紙、板紙ストック、波形板、フィルム、フォイル、及びラミネートなどの様々な基材に印刷するために使用される。新聞及び買い物袋は、顕著な例である。粗い表面及び延伸性のフィルムは、フレキソ印刷によってのみ経済的に印刷することができる。
【0003】
感光性印刷要素は一般に、支持層と、1つ以上の光電性層と、任意選択のスリップフィルム剥離層と、任意選択の保護カバーシートと、を含む。保護カバーシートは、使用準備が整うまで版又は光硬化性要素を損傷から保護し得る、プラスチック又は任意の他の取り外し可能な材料から形成される。使用される場合、スリップフィルム剥離層は、典型的には、保護カバーシートと光硬化性層(複数可)との間に配置されて、版を汚染から保護し、扱いやすさを向上させ、インク受容層としての役割を果たす。露光及び現像の後、フォトポリマーフレキソ印刷版は、フロア層によって支持され、裏張り基材に固定された様々な画像要素からなる。
【0004】
フレキソ印刷版は、広範な条件下で良好に機能することが非常に望ましい。例えば、印刷版は、厚紙、コーティング紙、新聞、カレンダー紙、及びポリプロピレンなどの高分子フィルムを含む広範囲の基材にそれらのレリーフ画像を付与することができるべきである。重要なことに、画像は、印刷者が作製することを望むだけの多くの印刷に対応するため、迅速かつ忠実に転送されるべきである。
【0005】
フレキソ印刷版に課される要求はかなりのものである。例えば、フレキソ印刷版(pate)は、印刷シリンダの周囲を包むのに十分な可撓性を有する必要があるが、典型的な印刷プロセスの間に経験される過酷さに耐えるのに十分な強さである必要がある。印刷版は、印刷中のインクの移動を促進するために、低い硬度を示すべきである。印刷版の表面は、保管中に寸法的に安定していることも重要である。加えて、印刷版はまた、フレキソ印刷で典型的に使用される水性又はアルコール系インクに対して化学抵抗を有するレリーフ画像を有しなければならない。最後に、印刷版の物理的及び印刷特性が安定し、印刷中に変化しないままであることも非常に望ましい。
【0006】
フレキソ印刷要素は、シート状ポリマーの使用、及び液体フォトポリマー樹脂の加工を含む様々な方法で製造され得る。液体フォトポリマー樹脂から作製されたフレキソ印刷要素は、未硬化樹脂が印刷要素の非画像領域から回収され、追加印刷版の作製に使用され得るという利点を有する。液体フォトポリマー樹脂は、シート状ポリマーと比較して可撓性の点で更なる利点を有し、機械設定を変更するだけで、任意の必要な版ゲージの製造を可能にする。
【0007】
例えば、Battistiらに対する米国特許出願公開第2012/0082932号、Maneiraに対する米国特許出願公開第2014/0080042号、Kojimaらに対する米国特許第5,213,949号、Strongらに対する米国特許第5,813,342号、Longらに対する米国特許出願公開第2008/0107908号、及びGushに対する米国特許第3,597,080号に記載されているように、液体フォトポリマー樹脂から印刷版を製造するための様々なプロセスが開発されており、これらのそれぞれの主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
液体製版プロセスにおける典型的な工程は、
(1)キャスティングと、
(2)回収と、
(3)洗浄と、
(4)後露光と、
(5)乾燥と、
(6)不粘着化と、を含む。
【0009】
キャスティング及び露光工程では、写真用ネガを底部ガラスプラテン上に配置し、露光ユニット内のネガの上にカバーフィルムを配置する。露光ユニットは、一般的に、その下にUV光源(下部光)を備えた底部ガラスプラテンと、その上にUV光源(上部光)を備えたフラットトップガラスプラテンを有する蓋と、を含む。
【0010】
真空によって空気が全て除去され、それによってネガ又はカバーフィルムのあらゆるしわが取り除かれ得る。加えて、底部ガラスプラテンは、カバーフィルムとネガとの間の全ての空気を更に除去するために溝付きであってもよい。その後、液体フォトポリマーの層及び裏張りシート(すなわち、ポリエステル又はポリエチレンテレフタレートの薄層)がカバーフィルム及びネガの頂部に既定の厚さまでキャスティングされる。片面をコーティングして液体フォトポリマーと接合され得る裏張りシートは、キャスティングされた液体フォトポリマー層の上に積層されて、露光後に版の裏面として機能する。
【0011】
上及び/又は下の化学線源(すなわち、上部光及び下部光)が使用されて、フォトポリマーを化学線に露光させて、ネガに覆われていない領域内の液体フォトポリマー層を選択的に架橋かつ硬化させる。上部光が使用されて、印刷版のフロア層を形成し(すなわち、背面露光)、その一方では、下部光が使用されて、ネガを通してフォトポリマーを化学線に露光させて、レリーフ画像を作製する。版ゲージは、保護された底部露光ガラス上に液体フォトポリマーを分配した後に、底部露光ガラスから所望の距離に上部露光ガラスを位置付けることによって設定され得る。
【0012】
上部光を所定の時間オンにして、基材に隣接するフォトポリマーを版の表面全体にわたって均一に架橋させ、フロアを形成する。その後、画像化される領域は、下部光からの(すなわち、底部ガラスプラテンを通した)化学線に露光される。化学線は、ネガの透明な領域を通って輝き、それらの領域においてフォトポリマーに架橋させ、フロア層に結合するレリーフ画像を形成する。下部光に露光されていない液体フォトポリマー(すなわち、未硬化のフォトポリマー)は、液体状態のままであり、回収され再利用され得る。
【0013】
露光が完了した後、印刷版は露光ユニットから除去される。紫外線に露光されていない全領域において、樹脂は、露光後に液体のままであり、その後、回収され得る。典型的なプロセスでは、未硬化樹脂は、加工工程において版から物理的に除去され、その結果、未硬化樹脂は、追加の版を作製する際に再使用され得る。この「回収」工程は、典型的には、印刷版の表面上に残っている液体フォトポリマーをスクィージング、真空引き、ないしは別の方法で除去することを伴い、フォトポリマー樹脂の材料コストを節約するだけでなく、化学開発の使用及びコストを削減し、より安全で扱いやすい軽量の版を作製する。
【0014】
回収工程後は、洗浄溶液を使用してノズル洗浄又はブラシ洗浄することによって、残っている液体樹脂のいかなる残留跡も除去して、洗浄済みの版を得て、硬化レリーフ画像を残すことができる。典型的には、版は、石鹸及び/又は洗剤を含む水溶液を使用して、あらゆる未露光の残留フォトポリマーを洗い流す洗浄装置に入れられる。現像後に、硬化光重合性樹脂で形成されたレリーフ画像が得られる。硬化樹脂は、同様に特定のインクに不溶性であり、フレキソ印刷において使用可能である。
【0015】
洗浄工程が完了した後、印刷版は、様々な後露光及び不粘着化工程に供され得る。後露光は、版を水及び食塩水に浸漬することと、印刷版の化学線(UV光)への追加的露光を実施して、印刷版を完全に硬化させ、版強度を高めることと、を伴い得る。次いで、版に熱風を吹き付けることにより、赤外線ヒータを使用することにより、又は印刷版を後露光オーブンに入れることにより、印刷版をすすいで乾燥させることができる。
【0016】
使用する場合、不粘着化工程は、確実に全く粘着性のない版表面にするために殺菌装置(光仕上げ剤)の使用を伴い得る。特定の樹脂は非粘着性であり、したがって、不粘着化工程を必要とせずに印刷機の準備を整えることができるため、この工程は全ての版に必要とされるわけではない。
【0017】
液体フォトポリマー組成物は、例えば、Plambeckに対する米国特許第2,760,863号、Ibataらに対する米国特許第3,960,572号及び同第4,006,024号、Pohlに対する米国特許第4,137,081号、同第4,174,218号、及び同第4,442,302号、Klingerに対する米国特許第4,857,434号、Huangに対する米国特許出願公開第2003/0152870号に記載されており、これらのそれぞれの主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
液体フォトポリマー材料から軟質の印刷版を調製するための従来の配合方法は、一般に、フォトポリマー組成物中の軟質プレポリマーの使用を伴い、これは次に、プレポリマー中のポリオール及びイソシアネートの化学量論量の変更を必要とし、これは、例えば、Huangに対する米国特許出願公開第2003/0152870号に記載されており、この主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、この手法は、新たなプレポリマーの開発を必要とし得るか、又は結果として得られる版の軟度、並びにより低い引張強度のために、物理的特性の低下をもたらし得るかのいずれかとなる。他の配合方法は、二官能性モノマー又は三官能性モノマーなどの多官能性モノマーの還元を伴う。しかしながら、これはまた、結果として得られる樹脂の物理的強度に影響を及ぼし得る。
【0019】
フレキソ印刷のための1つの重要な基材は、例えば、2枚の平坦なシート間にフルーティングの層を有する段ボールなど、フルーティングを施された裏張りを有するライナーボードである。印刷が望ましく配置される平坦なシートは、基礎となるフルーティングの不均一な支持により、多くの場合はわずかな陥凹を有する。段ボール基板上に印刷する際に良好な結果を得るためには、印刷版が段ボールの表面により容易に適合し得るように、可能な限り印刷版を柔らかくすることが望ましい。しかしながら、同時に、版はまた、耐久性及び弾力性を含む他の重要な特性を依然として示す必要がある。
【0020】
液体フォトポリマー樹脂から調製される、改善された軟質レリーフフォトポリマー印刷要素が当該技術分野において依然として必要とされており、このような印刷版は、段ボール基板上への印刷に特に適しており、印刷業界に求められる印刷品質及び耐久性を満たすか又はそれらを超える。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、改善された液体フォトポリマー樹脂組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、良好な耐久性を示す軟質レリーフ画像印刷版を製造することができる、改善された液体フォトポリマー樹脂組成物を提供することである。
【0023】
本発明の更に別の目的は、十分な弾力性を示す軟質レリーフ画像印刷版を製造することができる、改善された液体フォトポリマー樹脂組成物を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、段ボール基板に印刷するときに良好な結果を生むのに好適である軟質レリーフ画像印刷版を製造することができる、改善された液体フォトポリマー樹脂組成物を提供することである。
【0025】
本発明の更に別の目的は、印刷品質及び耐久性の標準を満たす又は超える軟質レリーフ画像印刷版を製造することができる、改善された液体フォトポリマー樹脂組成物を提供することである。
【0026】
その目的のために、一実施形態では、本発明は、概して、液体フォトポリマー樹脂組成物であって、
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和ポリウレタンプレポリマーと、
b)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
c)少なくとも1つの光開始剤と、
d)少なくとも1つのポリチオールと、を含む、液体フォトポリマー樹脂組成物に関する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、概して、液体フォトレジン(photoresin)からレリーフ画像印刷版を作製する方法であって、方法は、
a)カバーフィルム上に液体フォトレジン組成物を所定の厚さまでキャスティングする工程であって、液体フォトレジン組成物は、
i)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、
ii)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
iii)少なくとも1つの光開始剤と、
iv)少なくとも1つのポリチオールと、を含む、工程と、
b)キャスティングされた液体フォトポリマーの上に裏張りシートを積層する工程と、
c)フォトポリマーを化学線に露光して、液体フォトポリマーを選択的に架橋かつ硬化させる工程であって、化学線に露光されない液体フォトポリマーは液体状態に留まる、工程と、
d)液体フォトポリマーを除去する工程と、を含み、
硬化したフォトポリマーのレリーフ画像が得られる、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載のとおり、一実施形態では、本発明は、概して、液体フォトポリマー樹脂組成物であって、
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、
b)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
c)少なくとも1つの光開始剤と、
d)少なくとも1つのポリチオールと、を含む、液体フォトポリマー樹脂組成物に関する。
【0029】
本発明は、特別なプレポリマー構造を必要とせず、架橋密度の意図的な除去又は著しい低減を必要としない、典型的な配合手法を利用する。結果として、得られるフォトポリマーの強度を著しく低下させることもない。
【0030】
組成物におけるチオールの使用は、アクリレート/メタクリレートモノマーの存在下で架橋機構の調整をもたらし、結果としてフォトポリマーの物理的強靭性をほとんど又は全く変化させずにショアAのより低い材料が得られる。本明細書に記載のフォトレジンは、液体フォトポリマー樹脂であり、これは、未硬化のフォトレジンが室温では液体であることを意味する。したがって、液体フォトレジンの一部が架橋されて硬化されると、残りのフォトレジンが回収され再使用され得る。
【0031】
エチレン性不飽和プレポリマーとしては、例えば、ポリエーテルウレタンポリマー、又はポリエーテルポリエステルウレタンメタクリレートフォトポリマーなどのポリエーテルポリエステルウレタンコポリマーなど、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、不飽和ポリアミド樹脂、及び不飽和ポリ(メタ)アクリレート樹脂が例として挙げられ得る。
【0032】
典型的には、エチレン性不飽和プレポリマーは、液体感光性組成物中に感光性樹脂組成物の約60~約80重量%、より好ましくは感光性樹脂組成物の約65~約75重量%の濃度で存在する。
【0033】
エチレン性不飽和モノマーは、イソボルニルエステル、t-ブチルエステル、ラウリルエステル、アクリル酸若しくはメタクリル酸のモノエステル若しくはジエステル、及び/又はトリメチロールプロパノール若しくはプロポキシル化トリメチロールプロパノールのトリエステルなど、任意の一般に入手可能なアクリレート又はメタクリレートであってもよい。しかしながら、モノマー中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの使用は、得られる印刷版の硬度を増大させる。したがって、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの量を制御する必要がある。
【0034】
好適なモノマーとしては、例えば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と一価又は多価アルコールとのエステル、例えば、限定するものではないが、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェノエトキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールジアクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ、トリ、及びテトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパンモノ、ジ、及びトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びアクリル酸を有するオリゴマーポリブタジエン、すなわち、活性化された光重合可能なオレフィン性二重結合を有するオリゴマーポリブタジエン、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノエトキシメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールジメタクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジ、トリ、及びテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパンモノ、ジ、及びトリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びメタクリル酸を有するオリゴマーポリブタジエン、すなわち、活性化された光重合可能なオレフィン性二重結合を有するオリゴマーポリブタジエンが挙げられる。
【0035】
エチレン性不飽和モノマーは、一部は1つのエチレン性不飽和基を有し、一部は2つ以上のエチレン性不飽和基を有する、モノマーの混合物を含むことが好ましい。混合物の最適比は、得られる印刷版の所望の硬度によって部分的に決定される。モノマー又はモノマー混合物の量はまた、感光性樹脂の粘度に影響を及ぼす。モノマー又はモノマー混合物の量が多いほど、感光性樹脂の結果的な粘度は低下する。感光性樹脂の粘度は、好ましくは室温で10,000cps~100,000cps、より好ましくは20,000cps~50,000cpsである。
【0036】
典型的には、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーは、液体感光性組成物の総量中に、感光性樹脂組成物の約10~約40重量%、より好ましくは感光性樹脂組成物の約15~約30重量%で存在する。
【0037】
光開始剤は、フォトレジン組成物に一般的に使用されるいくつかの光開始剤のいずれか、及びそれらの組み合わせであってもよい。好適な光開始剤の例としては、例えば、中でも、アセナフテンキノン、アシルホスフィンオキシド、α-アミノアセトフェノン、ベンゾアントラキノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルアセタール、ベンジル1-メチル1-エチルアセタール、カンファーキノン、クロロアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、ジベンゾスベロン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(すなわち、Irgacure(登録商標)651)、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-エチルアントラキノン、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ヘキサノフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルイソプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、3-ケトクマリン、o-メトキシベンゾフェノン、(メチル)-ベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルホルメート、ミヒラーケトン、4’-モルホリノデオキシベンゾイン、4-モルホリノベンゾフェノン、α-フェニルブチロフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートナトリウム、チオキサノン、チオキサントン、10-チオキサンテノン、チオキサンテン-9-オン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)-ベンゾフェノン、トリクロロアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、バレロフェノン、アキサネトン(axanethone)、p-ジアセチルベンゼン、4-アミノベンゾフェノン、4’-メトキシアセトフェノン、ベンズアルデヒド、α-テトラロン、9-アセチルフェナントレレン、2-アセチルフェナントレレン、3-アセチルフェナントレン、3-アセチルインドン(acetylindone)、9-フルオレノン、1-インダノン、1,3,5-トリアセチルベンゼン、キサンテン-9-オン、7-H-ベンズ[de]アントラセン-7-オン、1-ナフトアルデヒド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン、フルオレン-9-オン、1’-アセトナフトン、2’-アセトナフトン、2,3-ブタンジオン、アセトラセン7.12ジエンのうちの1つ以上が挙げられる。トリフェニルホスフィン及びトリ-o-トリルホスフィンなどのホスフィンも本明細書では、光開始剤として使用可能である。
【0038】
本明細書に記載の光開始剤は、単独で、又は共開始剤、例えば、エチルアントラキノンと4,4’,-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテルとトリフェニルホスフィン、ジアシルホスフィンオキシ度と三級アミン、又はアシルジアリールホスフィンオキシドとベンジルジメチルアセタールとの組み合わせで使用され得る。
【0039】
光開始剤の量は、妥当な長さの時間のバック露光及び必要な画像解像度を有するレリーフ画像の形成を介してフレキソ印刷版へのフロア層の形成を可能にする、任意の有効濃度であり得る。この時間は、形成される画像の種類、並びに所望のフレキソ印刷版の厚さに関連する。有効量の光開始剤は、選択される開始剤の種類に依存する。しかしながら、光開始剤の約0.1~約10重量%、より好ましくは約0.5~約5重量%の濃度範囲が一般的に好ましい。
【0040】
特に好ましい光開始剤としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及びベンゾフェノンのうちの1つ以上が挙げられる。
【0041】
フォトポリマー混合物を熱酸化及び大気酸素による酸化による分解から保護するために、有効量の酸化防止剤も、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの立体障害モノフェノール、2,2-メチレンビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)及び2,2-ビス(1-ヒドロキシ-4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)硫化物などのアルキル化チオビスフェノール及びアルキリデンビスフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどのヒドロキシベンジル、2-(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチルアニリノ)-4,6-ビス-(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン、重合トリメチルジヒドロキノン、ジブチル亜鉛ジチオカルバメート、チオジプロピオン酸ジラウリル、及びトリス(ノニルフェニル)亜リン酸塩などの亜リン酸塩を含むフォトポリマー混合物に添加されてもよい。一実施形態では、酸化防止剤はBHTである。
【0042】
本明細書に記載されるように、本発明の組成物はまた、樹脂の強度を維持しながら、周囲条件で約30未満、より好ましくは約25未満、及び最も好ましくは約20未満のショアAデュロメータを有するリリーフ画像印刷版を作製することができる軟質液体フォトポリマー樹脂の開発を可能にするポリチオールを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、ポリチオールは、1平均分子当たり複数のペンダント又は末端に位置付けられた-SH官能基を有する単純又は複雑な有機化合物である。好適なポリチオールは、約100~約20,000以上、より好ましくは約100~約10,000の分子量を有する。
【0044】
ポリチオールは、一般に、1分子当たり2個以上のチオール基を有する分子を含む任意の化合物であり得る。それらの比較的低い臭気レベルによる好ましいポリチオール化合物の例としては、限定するものではないが、チオグリコール酸(HS-CH2COOH)、α-メルカプトプロピオン酸(HS-CH(CH3)-COOH、及びβ-メルカプトプロピオン酸(HS-CH2CH2COOH)のエステルと、グリコール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサノールなどのポリヒドロキシ化合物とのエステルが挙げられる。好ましいポリチオールの具体例としては、限定するものではないが、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β-メルカプトプロピオネート)が挙げられ、これらは全て市販されている。ポリ-α-メルカプトアセテート又はポリ-β-メルカプトプロピオネートエステル、特にトリメチロールプロパントリエステル又はペンタエリスリトールテトラエステルが好ましい。好適に用いられ得る他のポリチオールとしては、1,2-ジメルカプトエタン、1,6-ジメルカプトヘキサンなどのアルキルチオール官能性化合物が挙げられる。また、チオール末端ポリスルフィド樹脂が用いられてもよい。
【0045】
脂肪族及び環式脂肪族ジチオールの好適な例としては、1,2-エタンジチオール、ブタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、ジチオエリスリトール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、1,8-オクタンジチオールヘキサンジチオール、ジチオジグリコール、ペンタンジチオール、デカンジチオール、2-メチル-1,4-ブタンジチオール、ビス-メルカプトエチルフェニルメタン、1,9-ノナンジチオール(1,9-ジメルカプトノナン)、グリコールジメルカプトアセテート、3-メルカプト-β,4-ジメチル-シクロヘキサンエタンチオール、シクロヘキサンジメタンジチオール、及び3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオールが挙げられる。
【0046】
芳香族ジチオールの好適な例としては、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、2,4,6-トリメチル-1,3-ベンゼンジメタンチオール、デュレン-α.1、α.2-ジチオール、3,4-ジメルカプトトルエン、4-メチル-1,2-ベンゼンジチオール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、4,4’-チオビスベゼンジチオール(thiobisbezenedithiol)、ビス(4-メルカプトフェニル)-2,2’-プロパン(ビスフェノールジチオール)、及び[1,1’-ビフェニル]-4,4-ジチオール、及びp-キシレン-α,α-ジチオールが挙げられる。
【0047】
オリゴマージチオールの好適な例としては、ヒドロキシエチルメルカプタン、ヒドロキシプロピルメルカプタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトエタンのエンドキャップ部分から誘導される二官能性メルカプト官能性ウレタンオリゴマーが挙げられる。好適なトリチオール官能性化合物の例としては、トリメチロールエタントリス-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス-メルカプトプロピオネート、トリメチロールエタントリス-メルカプトアセテート、及びトリメチロールプロパントリス-メルカプトアアセテート(mercaptoaacetate)グリセロールトリ(1,1-メルカプトウンデケート)、トリメチロールプロパントリ(1,1-メルカプトウンデート)が挙げられる。1つの好ましいトリチオールは、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)である。
【0048】
好適な四官能性チオールの例としては、ペンタエリスリトールテトラメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート、及びペンタエリスリトールテトラ(1,1-メルカプトウンデケート)が挙げられる。
【0049】
多官能性チオールは、チオアルキルカルボン酸、例えば、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸を高官能性アルコール、アミン、及びチオールと反応させることによって得られ得る。更に、多官能性チオールは、メルカプトアルキルトリアルコキシシランをポリマー又はシリカ系シラノールであり得るシラノールと反応させることによって得られ得る。
【0050】
他の好ましい多官能性チオールは、チオールカルボン酸(HS-R-COOH)を使用して得られる。ここで、Rは、アルキル基又はアリール基、例えば、COOH基が多官能性である反応性エン、アルコール、チオール又はアミンと反応するチオウンデカン酸である。
【0051】
本明細書に記載の組成物に使用するのに特に好ましいポリチオールとしては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)及びペンタエリスリトールテトラキス(β-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0052】
ポリチオールは、好ましくは、液体感光性組成物中に感光性樹脂組成物の約0.10~約3.0重量%、より好ましくは感光性樹脂組成物の約0.25~約2.0重量%の量で使用される。
【0053】
液体フォトレジン組成物はまた、任意選択的に、しかし好ましくは、典型的に感光性樹脂組成物に添加される同様の性質の様々なスリップ添加剤、染料、安定剤、及び他の添加剤を含んでもよい。
【0054】
したがって、液体フォトポリマー樹脂としては、例えば、酸化防止剤、促進剤、染料、阻害剤、活性化剤、充填剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、チキソトロープ剤、表面活性剤、光散乱剤、粘度調整剤、延伸油、可塑剤、及び粘着防止剤のうちの1つ以上が挙げられ得るが、これらは例であり、制限するものではない。これらの添加剤は、重合される1つ又は複数のモノマー又は他の化合物と事前ブレンドされてもよい。例えば、天然及び合成樹脂、カーボンブラック、ガラス繊維、木粉、粘土、シリカ、アルミナ、炭素塩、酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ホウ酸塩、リン酸塩、珪藻土、タルク、カオリン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アンチモンなどを含む様々な充填剤も、光硬化反応又は版作成プロセスにおける他の工程を妨害するか、ないしは別の方法で阻害しない量で、フォトポリマー組成物に含まれてもよい。
【0055】
更に、液体フォトポリマー樹脂組成物は、洗浄された版の後硬化後に乾燥した無粘着表面を確保するために、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル、安定剤、消泡剤、染料、及びミリスチン酸などの高分子量脂肪酸を含む、ある範囲の更なる性能向上添加剤のうちの任意の1つ以上を含有してもよい。
【0056】
液体フォトポリマー樹脂は、特に段ボール基材に印刷するときに良好な印刷結果を生むためのショアA硬度、伸び、及び引張強度の所望の特性を有するリリーフ画像印刷要素を生成するように、液体版作製プロセスで加工されてもよい。
【0057】
版作製プロセスを通して液体フォトポリマー樹脂組成物を加工した後、得られるレリーフ画像印刷版は、好ましくは、周囲条件下で約30未満、より好ましくは約25未満、最も好ましくは約20未満のショアA硬度を有する。レリーフ画像印刷版はまた、150~300%範囲、より好ましくは約200~約250%の伸び、及び約375~約700の範囲、より好ましくは約450~約600psiの引張強度を有する(Instronシステムで2インチ/分の試料速度で測定)。
【0058】
実施例1:
下の表1に提供される以下の配合は、本発明による、レリーフ画像印刷要素を製造するための1つの例示的な液体フォトポリマー配合を示す。
【0059】
【0060】
上記成分に加えて、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)をフォトレジン組成物に0.50重量%、1.0重量%、及び1.5重量%の濃度で添加した。0.25インチの厚さを有するブロックを架橋かつ硬化させ、配合のそれぞれのショアA値を、ショアS1デジタルデュロメータを使用して測定した。結果を下の表2に示す。
【0061】
【0062】
表2に見られるように、ポリチオールを含有する液体フォトレジン組成物から製造された印刷版は、所望のショア特性を示した。
【0063】
本発明はまた、概して、約30未満のショアA硬度を有する印刷版であって、印刷版は、
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、
b)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
c)少なくとも1つの光開始剤と、
d)少なくとも1つのポリチオールと、からなる光化学反応生成物を含む、印刷版に関する。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、概して、液体フォトレジンからレリーフ画像印刷版を作製する方法であって、方法は、
a)カバーフィルム上に液体フォトレジン組成物を所定の厚さまでキャスティングする工程であって、液体フォトレジン組成物は、
i)少なくとも1つのエチレン性不飽和プレポリマーと、
ii)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、
iii)少なくとも1つの光開始剤と、
iv)少なくとも1つのポリチオールと、を含む、工程と、
b)キャスティングされた液体フォトポリマーの上に裏張りシートを積層する工程と、
c)フォトポリマーを化学線に露光して、液体フォトポリマーを選択的に架橋かつ硬化させることであって、化学線に露光されない液体フォトポリマーは液体状態に留まる、工程と、
d)液体フォトポリマーを除去する工程と、を含み、
硬化したフォトポリマーのレリーフ画像が得られる、方法に関する。
【0065】
本発明によって製造されたレリーフ画像印刷版は、段ボール基材上に印刷する際に良好な結果をもたらす。得られる印刷版は、良好な印刷結果を生むために所望の軟度を有するが、プレス摩耗及び損傷を低減するために必要な、物理的強靭性及びポリマー強度も有する。
【国際調査報告】