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特表2022-516888エルゴチオネインを産生する菌株及びそのスクリーニングのための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】エルゴチオネインを産生する菌株及びそのスクリーニングのための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
C12N1/14 E ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538152
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2019118948
(87)【国際公開番号】W WO2020134689
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811605008.5
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282033
【氏名又は名称】ブルーメイジ バイオテクノロジー コーポレイション リミティド
(71)【出願人】
【識別番号】521282044
【氏名又は名称】シャントン ブルーメイジ ハインク バイオファーム コーポレイション リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ユイチエ
(72)【発明者】
【氏名】ルー チェン
(72)【発明者】
【氏名】チア ユイチエン
(72)【発明者】
【氏名】スン ユアンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】シー イェンリー
(72)【発明者】
【氏名】ルアン イーホン
(72)【発明者】
【氏名】クオ シュエピン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA71X
4B065AC14
4B065BA22
4B065BB15
4B065BB16
4B065BB18
4B065BB20
4B065BB23
4B065BB26
4B065BD01
4B065BD08
4B065BD16
4B065CA17
4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、微生物学的な技術分野に属し、そして特に、CCTCC No:M 2018567の寄託番号を有する、ヤマブシタケ菌HT-3の菌株に関する。また、本発明はヤマブシタケ菌HT-3のためのスクリーニング方法に関する。本スクリーニング方法は、組織片からヤマブシタケ菌株を精製し、そしてその菌株を発酵及び培養し、その発酵ブロスの菌糸体細胞からエルゴチオネインを浸出抽出し、その発酵ブロスのエルゴチオネイン含量を検出するステップを含む。本発明に従ってスクリーニングしたヤマブシタケ菌株は、高いエルゴチオネイン収量を有し、そしてそのスクリーニング方法は単純なプロセスであり、容易に操作され、そして低い生産コストである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号CTTCC No:M 2018567を有する、ヤマブシタケ菌。
【請求項2】
SEQ ID NO.1において示されるように18rRNA遺伝子配列を有する、請求項1に記載のヤマブシタケ菌。
【請求項3】
SEQ ID NO:2において示されるようにITS配列を有する、請求項1に記載のヤマブシタケ菌。
【請求項4】
発酵ブロスにおいて41mg/Lより多いエルゴチオネインを産生し、前記発酵ブロスが炭素源、窒素源、無機塩類及びビタミン類を含んでいる発酵培地より産生される、請求項1に記載のヤマブシタケ菌。
【請求項5】
ヤマブシタケ菌及び発酵ブロスを含む組成物であって、エルゴチオネインを含む前記発酵ブロスであって、ここで前記発酵ブロスのエルゴチオネイン量が41mg/Lより多く、かつここで前記発酵ブロスが炭素源、窒素源、無機塩類及びビタミン類を含んでいる発酵培地から産生される、組成物。
【請求項6】
前記ヤマブシタケ菌が請求項1~4のいずれか一項に記載のヤマブシタケ菌である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法であって、
(1)抗生物質を含むポテトデキストロース寒天培地上にヤマブシタケ菌の組織片を置き、23~28℃で5~12日間培養し、ヤマブシタケ菌糸を入手し;ポテトデキストロース寒天培地上にヤマブシタケ菌糸を播種し、23~28℃で5~12日間培養し、ヤマブシタケ菌株を入手すること;
(2)ステップ(1)において入手したヤマブシタケ菌株を発酵培地に播種し、23~26℃で12~20日間培養し、ここで前駆物質を培養中の7日目から10日目に供給し、発酵ブロスを入手すること;
(3)前記発酵ブロスを遠心分離し、前記上清をとり、濾過にかけ、前記濾過物のエルゴチオネイン量を検出し、そしてエルゴチオネインの産生について前記菌株をスクリーニングすること;のステップを含む方法であって、
好ましくは、さらに前記スクリーニング方法が、ステップ(2)の後に、菌糸体細胞から前記細胞の外側へ細胞内エルゴチオネインの浸出抽出の、ステップを含んでいる前記スクリーニング方法。
【請求項8】
前記菌糸体細胞からのエルゴチオネインの浸出抽出の前記ステップが、
菌糸体の前記発酵ブロスをホモジナイズし、そして続けて加熱し、それによって前記菌糸体細胞から前記細胞の外側へ前記エルゴチオネインを抽出すること;又は
菌糸体発酵ブロスの固相-液相分離によって菌糸体を回収し、水を加えることによって菌糸体懸濁液を調製し、ホモジナイズし、そして続いて加熱し、それによって前記菌糸体細胞から前記細胞の外側へ前記エルゴチオネインを抽出すること:
によって行われる、請求項7に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
ステップ(1)の前記抗生物質がペニシリン、ストレプトマイシン及びクロラムフェニコールのいずれか1つ又は2以上の組み合わせを含む、請求項7に記載のヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法。
【請求項10】
ステップ(2)の前記前駆物質がシステイン、メチオニン及びヒスチジンのいずれか1つ又は2以上の組み合わせを含む、請求項7に記載のヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法。
【請求項11】
前記発酵培地が20~60g/Lの炭素源、10~30g/Lの窒素源、2~5g/Lの無機塩類、及び0.001~0.005g/Lのビタミン類を含む、請求項7に記載のヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物学的な技術分野に属し、そして特にヤマブシタケ菌HT-3の菌株及びそのスクリーニングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エルゴチオネインは、2-メルカプト-L-ヒスチジントリメチル-、分子内塩という学名であり、天然の2-チオイミダゾール系アミノ酸の一種である。溶解した状態のエルゴチオネインは二つの互変異性異性体である、チオール及びチオンを有し、かつ生理学的なpH条件下で主にチオンの形状において存在する。エルゴチオネインは第一に麦角(ライ麦に寄生する真菌によって形成される菌核)からTanret Cにより、1909年に単離された。その純産物は白色結晶であって、室温で最大0.9 mol/Lを有する良好な水溶性を有し、そして生理学的なpH条件下及び強塩基条件下で非常に安定的である。
【0003】
エルゴチオネインは、抗酸化、フリーラジカルを除去すること、金属イオンをキレートすること、UV照射の損傷に対する保護、癌を阻害すること等のような、独特な生理学的な機能を有し、そしてある側面において、グルタチオンのような天然の抗酸化物質よりも優れている。
【0004】
エルゴチオネインは、様々な植物及び動物において存在している。しかしながら、動物はエルゴチオネインを自身で合成できず、そして食物からのみエルゴチオネインを得ることができる。真菌及び放線菌のような多くの微生物はエルゴチオネインを合成できるが、細菌はこの化合物を内部で合成できない。今までのところ、真菌を利用することによってエルゴチオネインの産生を行っている。
【0005】
中国特許出願CN103184246A「Method for biosynthetic preparation of ergothioneine」では、大型菌類(コムラサキシメジ、ウスヒラタケ、及び野生型プレウロタス・サピダス(wild Pleurotus sapidus))の菌糸体の播種及び発酵によってエルゴチオネインを合成し、ここで、その発酵ブロス中のエルゴチオネインの最大含量は、コムラサキシメジについて51mg/L、ウスヒラタケについて48mg/L、及び野生型プレウロタス・サピダス(wild Pleurotus sapidus))について37mg/Lだった。そのエルゴチオネイン収量は未だに高くなく、そしてその真菌の増殖サイクルは長い。
【0006】
中国特許出願CN103734022A「Strain for producing ergothioneine and methods for producing ergothioneine」では、ヒラタケの発酵及び菌糸体細胞からのエルゴチオネインの抽出によりエルゴチオネインを合成することのステップを開示しているが、ヒラタケ菌株のスクリーニングのための方法は開示していない。
【0007】
中国特許出願CN102978121A「Method for producing ergothioneine by microorganism transformation」では、微生物Lepista caespitosaの変換によるエルゴチオネインの産生を開示している。しかしながら、その生体内変換は真菌細胞の生存率に影響を与え、そしてその変換効率は低い。
【0008】
また、Lion’s Mane Mushroomとして知られている、ヤマブシタケは、その形がライオンのたてがみ(hericium)に似ていることから命名された。ヤマブシタケの菌糸は、隔壁及びかすがい連結による薄い細胞壁を有する。その子実体は、傘の表面上に毛深い多肉質のとげを有する、平らな半球又は頭形の凝集塊である。その真菌は新鮮な場合に白色であり、そして乾燥した場合には薄黄色から薄茶色である。それは、狭い底部又は少し短い茎を有し、そして3.5~10cmの直径を有する肥大した上部を有する。それは、遠くから見ると、黄金のライオンのたてがみのように見えるので、「ライオンのたてがみキノコ(ヤマブシタケ)」と呼ばれている。ヤマブシタケはおいしく、そのキノコ体は新鮮で、柔らかく、そして良い香りであり、「ベジタリアンの肉料理」として知られている。ヤマブシタケはおいしいだけでなく、また、ヒトの身体に必須である8つの、様々なアミノ酸を含み、またそれはポリ多糖、様々なビタミン類、無機塩類、ペプチド及び不飽和脂肪酸に富んでいる。ヤマブシタケは容易に発酵及び培養され、生育が早く、そして短い成長周期及び高い収量をもたらす。
【発明の概要】
【0009】
先行技術における問題を解決するために、本発明は、ヤマブシタケHT-3の菌株を提供し、それは2018年8月23日に中国典型培養物保存センター(CCTCC)に寄託され、そしてその寄託番号は、CCTCC No:M 2018567である。また、本発明はヤマブシタケ及び発酵ブロスを含む組成物、並びにヤマブシタケをスクリーニングする方法を提供する。本発明は、以下のような態様を含む:
【0010】
1.寄託番号CTTCC No:M 2018567を有する、ヤマブシタケ菌。
【0011】
2. SEQ ID NO:1
(TTGTACTGTGAAACTGCGAATGGCTCATTAAATCAGTTATAGTTTATTTGATGGTACCTTGCTACATGGATAACTGTGGTAATTCTAGAGCTAATACATGCAATTAAGCCCCGACTTCCGGAAGGGGTGTATTTATTAGATAAAAAACCAACGCGGCTCGCCGCTCCTTTGGTGATTCATAATAACTTCTCGAATCGCATGGCCTTGTGCCGGCGATGCTTCATTCAAATATCTGCCCTATCAACTTTCGATGGTAGGATAGAGGCCTACCATGGTTTCAACGGGTAACGGGGAATAAGGGTTCGATTCCGGAGAGGGAGCCTGAGAAACGGCTACCACATCCAAGGAAGGCAGCAGGCGCGCAAATTACCCAATCCCGACACGGGGAGGTAGTGACAATAAATAACAATATAGGGCTCTTTTGGGTCTTATAATTGGAATGAGTACAATTTAAATCCCTTAACGAGGAACAATTGGAGGGCAAGTCTGGTGCCAGCAGCCGCGGTAATTCCAGCTCCAATAGCGTATATTAAAGTTGTTGCAGTTAAAAAGCTCGTAGTTGAACTTCAGGCCTGGCCGGGCGGTCTGCCTAACGGTATGTACTGTCTGGCCGGGCCTTACCTCCTGGTGAGCCGGCATGCCCTTCACTGGGTGTGTCGGGGAACCAGGACTTTTACCTTGAGAAAATTAGAGTGTTCAAAGCAGGCCTATGCCCGAATACATTAGCATGGAATAATAAAATAGGACGTGCGGTTCTATTTTGTTGGTTTCTAGAATCGCCGTAATGATTAATAGGGATAGTTGGGGGCATTAGTATTGCGTTGCTAGAGGTGAAATTCTTGGATTTACGCAAGACTAACTACTGCGAAAGCATTTGCCAAGGATGTTTTCATTAATCAAGAACGAAGGTTAGGGGATCGAAAACGATCAGATACCGTTGTAGTCTTAACAGTAAACTATGCCGACTAGGGATCGGGCGACCTCAATTTAATGTGTCGCTCGGCACCTTACGAGAAATCAAAGTCTTTGGGTTCTGGGGGGAGTATGGTCGCAAGGCTGAAACTTAAAGGAATTGACGGAAGGGCACCACCAGGAGTGGAGCCTGCGGCTTAATTTGACTCAACACGGGGAAACTCACCAGGTCCAGACATAACTAGGATTGACAGATTGATAGCTCTTTCTTGATTTTATGGGTGGTGGTGCATGGCCGTTCTTAGTTGGTGGAGTGATTTGTCTGGTTAATTCCGATAACGAACGAGACCTTAACCTGCTAAATAGCCCGGCCGGCTTTTGCTGGTCGCTGGCTTCTTAGAGGG)
において示されるように、18rRNA遺伝子配列を有する、項目1に従うヤマブシタケ菌。
【0012】
3. SEQ ID NO:2
(TGCGGAAGGATCATTAATGAATTTGAAAGGAGTTGTTGCTGGCCTGAAACCCAGGCATGTGCACGCTCCAATCTCATCCATCTTACACCTGTGCACCCTTGCGTGGGTCCGTCGGCTTTGCGGTCGATGGGCTTGCGTTTTTCATAAACTCTTATGTATGTAACAGAATGTCATAATGCTATAAACGCATCTTATACAACTTTCAACAACGGATCTCTTGGCTCTCGCATCGATGAAGAACGCAGCGAAATGCGATAAGTAATGTGAATTGCAGAATTCAGTGAATCATCGAATCTTTGAACGCACCTTGCGCCCCTTGGTATTCCGAGGGGCACGCCTGTTCGAGTGTCGTGAAATTCTCAACTCAATCCTCTTGTTATGAGAGGGCTGGGCTTGGACTTGGAGGTCTTGCCGGTGCTCCCTCGGGAAGTCGGCTCCTCTTGAATGCATGAGTGGATCCCTTTTGTAGGGTTTGCCCTTGGTGTGATAATTATCTACGCCGCGGGTAGCCTTGCGTTGGTCTGCTTCTAACCGTCTTCGGACAACTTTCATCTCAACTTGACCTCGAATCAGGCGGGACTACCCGCTGAACTTAAGCATATCA)
において示されるように、ITS配列を有する、項目1に従うヤマブシタケ菌。
【0013】
4.発酵ブロスにおいてエルゴチオネインを産生し、ここでその発酵ブロスにおいてエルゴチオネインの量が41mg/Lより多く、ここでその発酵ブロスが炭素源、窒素源、無機塩類及びビタミン類を含む発酵培地から産生される、項目1に従うヤマブシタケ菌。
【0014】
5.ヤマブシタケ菌及び発酵ブロスを含む組成物であって、エルゴチオネインを含むその発酵ブロスであって、ここでその発酵ブロスのエルゴチオネイン量が41mg/Lより多く、かつここでその発酵ブロスが炭素源、窒素源、無機塩類及びビタミン類を含む発酵培地から産生される、組成物。
【0015】
6.そのヤマブシタケ菌が項目1~4のいずれか一項に従うヤマブシタケ菌である、項目5に従う組成物。
【0016】
7.ヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法であって、
(1)抗生物質を含むポテトデキストロース寒天培地上にヤマブシタケ菌の組織片を置き、23~28℃で5~12日間培養し、ヤマブシタケ菌糸を入手し;ポテトデキストロース寒天培地上にヤマブシタケ菌糸を播種し、23~28℃で5~12日間培養し、ヤマブシタケ菌株を入手すること;
(2)ステップ(1)において入手したヤマブシタケ菌株を発酵培地に播種し、23~26℃で12~20日間培養し、ここで前駆物質を培養中の7日目から10日目に供給し、発酵ブロスを入手すること;
(3)その発酵ブロスを遠心分離し、その上清をとり、濾過にかけ、その濾過物のエルゴチオネイン量を検出し、そしてエルゴチオネインの産生についてその菌株をスクリーニングすること;のステップを含む方法であって、
好ましくは、さらにそのスクリーニング方法が、ステップ(2)の後に、その菌糸体細胞からその細胞の外側へエルゴチオネインの浸出抽出の、ステップを含んでいるそのスクリーニング方法。
【0017】
8.その菌糸体細胞からのエルゴチオネインの浸出抽出のステップが、
菌糸体のその発酵ブロスをホモジナイズし、そして続けて加熱し、それによってその菌糸体細胞からその細胞の外側へそのエルゴチオネインを抽出すること;又は
菌糸体発酵ブロスの固相-液相分離によってその菌糸体を回収し、水を加えることによって菌糸体懸濁液を調製し、ホモジナイズし、そして続いて加熱し、それによってその菌糸体細胞からその細胞の外側へそのエルゴチオネインを抽出すること:
によって行われる、項目7に従うスクリーニング方法。
【0018】
9.ステップ(1)のその抗生物質がペニシリン、ストレプトマイシン及びクロラムフェニコールのいずれか1つ又は2以上の組み合わせを含むことにおいて特徴づけられる、項目7に従うヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法。
【0019】
10.ステップ(2)のその前駆物質がシステイン、メチオニン及びヒスチジンのいずれか1つ又は2以上の組み合わせを含むことにおいて特徴づけられる、項目7に従うヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法。
【0020】
11.その発酵培地が20~60g/Lの炭素源、10~30g/Lの窒素源、2~5g/Lの無機塩類、及び0.001~0.005g/Lのビタミン類を含むことにおいて特徴づけられる、項目7に従うヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法。
【0021】
本発明の利点は、本発明によって提供されるヤマブシタケ菌株HT-3 CCTCC No:M 2018567が容易に培養され、そして高いエルゴチオネイン収量をもたらすことを含む。
【0022】
本発明により提供されるヤマブシタケ菌のためのスクリーニング方法は、単純であり、容易に操作でき、低コストで、かつラージスケールスクリーンを適用可能であり、そして高収量の菌株を容易にスクリーニングする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヤマブシタケHT-3 CTTCC NO:M 2018567のコロニーの形態学的な特徴を示す写真。
【0024】
図2】ヤマブシタケHT-3 CTTCC NO:M 2018567の菌糸体の顕微鏡写真。
【0025】
図3】ヤマブシタケHT-3 CTTCC NO:M 2018567の18s rRNA遺伝子の配列。
【0026】
図4】ヤマブシタケHT-3 CTTCC NO:M 2018567のITSの配列。
【0027】
図5】HPLCによって決定される、ヤマブシタケHT-3 CTTCC NO:M 2018567の発酵ブロスにおけるエルゴチオネイン含量を示す、HPLCクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の以下の記載は、本発明を実行するための特定の態様を例示することを意図されるだけであり、かつこれらの態様は本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。本発明の精神及び原理から逸脱せずに行われる任意の他の変化、修飾、置換、組み合わせ及び単純化は、同等のものとみなされ、本発明の保護の範囲に含まれる。
【0029】
以下に用いられる本実施例の方法は、特別な要求が指示されていない場合の慣習の方法である。
【0030】
以下に用いられる材料及び試薬は、特に指定のない限り商用利用可能である。
【0031】
本発明の特定の態様のように、ヤマブシタケHT-3 CCTCC No:M 2018567はポテトデキストロース寒天培地(すなわち、PDA寒天培地)上で迅速に生育する。25℃で8日間生育した後のコロニーは、直径50~55mmに到達し、かつ白色及びビロード状であり、かつ放射状に伸び;そのコロニーの裏面は、薄茶色である:コロニーの形態学的な特徴については図1に参照される。その菌株の菌糸は強くかつ厚く、そして薄い細胞壁内のチューブ状の細胞を構成し、かつ隔壁及び枝、及びかすがい連結を有し、図2に参照される。
【0032】
Lion’s Mane Mushroomは、ヤマブシタケ(Hericium erinaceus(Rull ex F.)Pers.)、歯菌類(Hydnaceae)、担子菌類(Basidiomycetes)、真菌であり、腐生の、かつ有名な食用の真菌類である。その全体の形態はハリネズミ又はライオンのたてがみ(hericium)に似ており、ライオンのたてがみ(hericium)又はLion’s Mane Mushroomとして一般に名付けられている。本発明において、ヤマブシタケは好ましくはヤマブシタケCCTCC No:M 2018567であり、2018年8月23日に中国典型培養物保存センター(CCTCC)に寄託されている。
【0033】
ヤマブシタケHT-3 CCTCC No:M 2018567の18s rRNA遺伝子配列は、SEQ ID NO:1に示され、図3に参照される。
【0034】
ヤマブシタケHT-3 CCTCC No:M 2018567のITS配列は、SEQ ID NO:2に示され、図4に参照される。
【0035】
本発明の特定の態様のように、エルゴチオネイン産生Hericium株(ヤマブシタケHT-3)は:
(1)ヤマブシタケ菌から約0.5×0.5cmの組織片を切り、そして抗生物質を含むPDA寒天培地上に置き、5~12日間、好ましくは7~10日間、23~28℃で、好ましくは24℃で培養し、ヤマブシタケ菌糸を入手し;PDA寒天培地上にヤマブシタケ菌糸を播種し、5~12日間、好ましくは8日間、23~28℃で、好ましくは24℃で培養し、ヤマブシタケ菌株を入手することであって;
ここで、慣習の固形培地として、そのPDA寒天培地は、半合成培地であって、以下のように処方される:pH調整せずに、200gのジャガイモ、20gのグルコース、15~20gの寒天及び1000mLの水より調製される浸出液である。
(2)ステップ(1)において入手したヤマブシタケ菌を発酵培地に播種し、12~20日間、好ましくは15日間、23~26℃で、好ましくは24℃で培養し、ここで前駆物質を培養中7日目~10日目に供給し、発酵ブロスを入手すること。
(3)発酵ブロスを8000~10000rpmで、好ましくは8000rpmで10~20分間、好ましくは20分間遠心分離し、上清をとり、0.22μmの微小孔性のフィルターを介して濾過し、その濾過物のエルゴチオネイン量を検出し、そしてエルゴチオネインの産物についてその菌株をスクリーニングした。ステップ(1)のヤマブシタケからの組織片は傘、傘と茎との接点、茎の中間部分及び底部、好ましくは傘を意味する。
【0036】
ステップ(1)の抗生物質は、ペニシリン、ストレプトマイシン及びクロラムフェニコールのいずれか1つ又は2以上の組み合わせ、好ましくはストレプトマイシンを含む。
【0037】
その抗生物質の濃度は0.01~0.1g/Lである。
【0038】
ステップ(2)の前駆物質は、システイン、メチオニン及びヒスチジンのいずれか1つ又は2以上の組み合わせを含む。
【0039】
ステップ(2)の各前駆物質の濃度はそれぞれ1~3mMである。
【0040】
ステップ(3)の濾過物のエルゴチオネイン量の検出は高速液体クロマトグラフィーにより実施される。HPLC条件は:クロマトグラフィーカラム:Hypersil ODS C18 column(250mm×4.6mm、粒子径5μm);カラム温度:30℃;移動相:アセトニトリル-水(3:97);流速:1.0mL/分;検出波長:254nm;負荷量:20μLでありうる。
【0041】
特定の態様において、そのスクリーニング方法はさらに、ステップ(2)の後に、その菌糸体細胞からその細胞の外側へのエルゴチオネインの浸出抽出の、ステップを含む。特定の態様において、その菌糸体細胞からその細胞の外側へのエルゴチオネインの浸出抽出のステップは:菌糸体のその発酵ブロスを1000~6000rpm、好ましくは4000rpmで、20~100分間、好ましくは60分間ホモジナイズし、そして続いてその発酵ブロスの温度を60~100℃、好ましくは80℃に上昇させ、そして20~100分間、好ましくは50分間加熱し、それによって菌糸体細胞からその細胞の外側へエルゴチオネインを抽出することによって実施される。
【0042】
特定の態様において、その菌糸体細胞からのエルゴチオネインの浸出抽出のステップは、以下のように実施される:菌糸体発酵ブロスの固相-液相分離によってその菌糸体を回収し、水を加えることによって菌糸体懸濁液を調製し、続いて1000~6000rpmで、好ましくは4000rpmで、20~100分間、好ましくは60分間ホモジナイズし、続いて発酵ブロスの温度を60~100℃、好ましくは80℃に上昇させ、そして20~100分間、好ましくは60分間加熱し、それによってその菌糸体細胞からその細胞の外側へエルゴチオネインを抽出すること。
【0043】
その発酵培地は20~60g/Lの炭素源、10~30g/Lの窒素源、2~5g/Lの無機塩類、及び0.001~0.005g/Lのビタミン類を含む。
【0044】
さらに、その発酵培地に含まれる炭素源は、可溶性でんぷん、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、及びコーンフラワーのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含み;
好ましくは、その発酵培地に含まれる炭素源は、グルコース及びマルトースのいずれか1つ又は2つの組み合わせを含む。
【0045】
その発酵培地に含まれる窒素源は、トリプトン、酵母パウダー、大豆ミール、ふすま、大豆ペプチドパウダー、コムギペプトン、カゼインペプトン、コーンスティープリカー、牛肉エキス及び硫酸アンモニウムのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0046】
好ましくは、その発酵培地に含まれる窒素源は、牛肉エキス及びトリプトンのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0047】
その発酵培地に含まれる無機塩は、NaHPO、KHPO、KHPO及びMgSOのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0048】
好ましくは、その発酵培地に含まれる無機塩はNaHPOである。
【0049】
その発酵培地に含まれるビタミン類は、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB、ビタミンH及びビタミンB12のいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含み;
好ましくは、その発酵培地に含まれるビタミン類は、ビタミンB及びナイアシンのいずれか1つ又は2つの組み合わせを含む。
【0050】
また、本発明は、ヤマブシタケHT-3発酵ブロスを含む組成物に関し、前記組成物はエルゴチオネインを含んでおり、ここでその発酵ブロス中のエルゴチオネイン量は少なくとも41mg/L、好ましくは少なくとも60mg/L、より好ましくは少なくとも70mg/L、さらにより好ましくは少なくとも80mg/L、最も好ましくは90mg/L、100mg/L、110mg/L、120mg/L、130mg/L、140mg/L又は150mg/Lである。ヤマブシタケHT-3は、本発明のヤマブシタケHT-3 CCTCC No:M 2018567である。
【実施例
【0051】
実施例1:
【0052】
エルゴチオネインの産生のためのヤマブシタケ菌株のスクリーニング
【0053】
(1)約0.5×0.5cmの組織片を、異なる場所において産生されたヤマブシタケの子実体の傘から切除し、抗生物質を含むPDA寒天培地に置き、24℃で培養し、そして結果として生じる菌糸を精製培養のためにPDA寒天培地に播種した。その精製した菌株をPDA傾斜培地に播種し、後の使用ために3~4℃で貯蔵した;
(2)ステップ(1)から入手した固形の菌株をその発酵培地に播種し、そして24℃で16日間培養し、菌糸体発酵ブロスを入手した。その発酵培地は35g/Lのスクロース、20g/Lのコーンスティープリカー、3g/L KHPO、3mg/L ビタミンB及び水を含んでいた。10日間の発酵後、前駆アミノ酸、システイン、メチオニン及びヒスチジンを各2mMの濃度でそれぞれ供給した。
(3)その発酵の最後に、その菌糸体発酵ブロスを4000rpmで60分間ホモジナイズし、続いてそのホモジナイズした発酵ブロスを80℃で50分間加熱し、そのエルゴチオネインをその発酵ブロス内の菌糸体細胞から浸出抽出し、8000rpmで20分間遠心分離し、その上清をとり、0.22μmの微小孔性のフィルターを介して濾過し、そしてその濾過物の最高のエルゴチオネイン含量を有する菌株をスクリーニングし、ヤマブシタケHT-3(Hericum erinaceus HT-3)と名付けた。
【0054】
実施例2
【0055】
ヤマブシタケHT-3の形態学的な観察
【0056】
ヤマブシタケHT-3 CCTCC NO:M 2018567は、ポテトデキストロース寒天培地上で迅速に生育し、その培地表面に付着し、その培地表面から広がった。25℃で8日間生育した後、そのコロニーは直径50~55mmに到達し、白色でかつ柔らかく、そして周囲に放射状に広がり、薄茶色の背面を有した。そのコロニーの形態学的な特徴を図1に示しうる。その菌株の菌糸は強くかつ厚く、そして薄い細胞壁を有するチューブ状の細胞を含み、そして隔壁及び枝、並びにかすがい連結を有し、図2に参照される。
【0057】
実施例3
【0058】
ヤマブシタケHT-3の同定及び分類
【0059】
ヤマブシタケHT-3を、Shanghai Shenggong Biological Engineering(SHanghai)Co.,Ltdによるゲノムシークエンシングによって同定した。その菌株はヤマブシタケとして同定され、そしてその分類は:真菌、ディカリア、担子菌門、ハラタケ亜門、ハラタケ亜綱、ベニタケ目、サンゴハリタケ科だった。18s rRNA遺伝子の結果を図3に示し、そしてITSシークエンシングの結果を図4に示す。
【0060】
実施例4
【0061】
エルゴチオネインの検出
【0062】
実施例1におけるHT-3発酵ブロスを試験試料として用いて、そしてエルゴチオネインの含量を高速液体クロマトグラフィーによって決定した。HPLC条件:クロマトグラフィーカラム:Hypersil ODS C18 column(250nm×4.6mm、粒子サイズ5μm);カラム温度:30℃;移動相:アセトニトリル-水(3:97);流速:1.0mL/分;検出波長:254nm;負荷量:20μL。そのクロマトグラムを図4に示し、a)は規格品(9.4μg/mLのエルゴチオネインの濃度)であり、そしてb)はHT-3発酵ブロスである。
【0063】
実施例5
【0064】
発酵培地の最適化
本実施例において、異なる成分、含量及びpH値を有する5つの発酵培地を本試験のために選択した。各発酵培地の組成物及びpHを以下の表1に示した。
【0065】
(1)斜面培地のヤマブシタケCCTCC NO:M 2018567の菌糸を液体シード培地に播種し、そして5~10日間、15~30℃で、100~300rpmで培養した。
【0066】
液体シード培地:4%(w/v)スクロース、1.5(w/v)大豆ミールパウダー、0.2%(w/v)リン酸二水素ナトリウム、0.1%(w/v)硫酸ナトリウム及び水を加えて100%にする。
【0067】
(2)ステップ(1)において入手したシードブロスを、添加した前駆物質による発酵のための発酵培地に播種し、7~15日間、15~30℃で、100~300rpmで培養した。発酵の最後に、その発酵ブロスを回収した。その前駆アミノ酸、システイン、メチオニン及びヒスチジンは、各2mMの濃度で、発酵の10日目に追加した。
【0068】
(3)発酵の最後に、その菌糸体発酵ブロスを4000rpmで60分間ホモジナイズし、続いてそのホモジナイズした発酵ブロスを80℃で50分間加熱し、そのエルゴチオネインを菌糸体細胞から細胞外の発酵ブロスへと抽出し、8000rpmで20分間遠心分離し、その上清をとり、0.22μmの微小孔性のフィルターを介して濾過し、そして濾過物のそのエルゴチオネイン含量を決定した。
【0069】
5つの異なる発酵培地を選択し、そして最終濾過物において測定したエルゴチオネイン含量を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
現在、生物学的な発酵によってエルゴチオネインを調製するためのいくつかの方法が報告されている。例えば、エルゴチオネインは、例えば液内培養におけるエリンギ菌糸体の培養により、発酵終了時に62.20mg/Lに到達する収量を有して;液内培養におけるシイタケ菌糸体を培養することにより、発酵終了時に23.6mg/Lに到達する収量を有して;コムラサキシメジの液体発酵により、最大51mg/Lの収量を有して;ウスヒラタケの液体発酵により、最大48mg/Lの収量を有して;野生型プレウロタス・サピダス(wild Pleurotus sapidus))の液体発酵により、最大37mg/Lの収量を有して産生されうる。生物学的な発酵方法により調製されるエルゴチオネインの収量は高くないことが分かりうる。しかしながら、本発明に従う菌株を使用することにより、より高収量のエルゴチオネインをわずかに最適化した培地の条件下で入手できる。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
【配列表】
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【国際調査報告】