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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220224BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20220224BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220224BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20220224BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/67 010
C08G18/48
C09D175/14
C09D4/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539535
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020050397
(87)【国際公開番号】W WO2020144260
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】19151466.0
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505365965
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンデケンス、リュック
(72)【発明者】
【氏名】ルーセ、パトリス
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034FA01
4J034FB01
4J034FC01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB14
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA14
4J038FA071
4J038FA281
4J038KA03
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA04
4J038PA17
4J038PB04
4J038PC08
4J127AA03
4J127AA06
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC02
4J127BC151
4J127BD431
4J127BD471
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF191
4J127BF19X
4J127BF201
4J127BF20X
4J127BF611
4J127BF61X
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG271
4J127BG27X
4J127BG27Y
4J127CB141
4J127CB151
4J127CC021
4J127CC091
4J127FA00
4J127FA02
4J127FA06
4J127FA07
4J127FA08
4J127FA14
4J127FA15
4J127FA37
4J127FA38
(57)【要約】
本発明は、一般に、少なくとも1種の単官能性モノマーおよび少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラートから調製され、極低温条件の温度を含む広範囲の使用温度で高性能コーティング特性を示す低温フレキシブル用途用の硬化性樹脂組成物、これらの硬化性組成物を製造するための方法ならびにそれらの使用の分野に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物(X)であって、当該硬化性樹脂組成物(X)は、
-A)少なくとも1種の希釈剤(D)であって、前記少なくとも1種の希釈剤(D)の総重量に対して少なくとも80重量%の少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含み、前記少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)は40℃を超えるガラス転移温度(T)を有するポリマーになる、少なくとも1種の希釈剤(D)と、
-B)以下;
1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)、
2)少なくとも1種のポリイソシアナート(P)および
3)2000~5000g/モルの範囲の平均モル質量を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)
の反応生成物である少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)と、
-C)少なくとも1種のラジカル開始剤(I)と
から調製され、
-前記少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)は、2000~6000g/モルの範囲の平均モル質量を有し、
-前記少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と前記少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量とのモル質量比は、≦1.5であり、
-フリーラジカル重合後の前記硬化性樹脂組成物(X)は、以下;
-少なくとも50MPaの23℃でのヤング率(E 23)および
-少なくとも0.5J/cmの-20℃での靭性(U -20
を示し、
-前記硬化性樹脂組成物(X)は、当該硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して20重量%~50重量%の前記少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)を含む、低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して50重量%~80重量%の前記少なくとも1種の希釈剤(D)を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項3】
前記少なくとも1種のラジカル開始剤(I)が、硬化促進剤または他の硬化助剤と組み合わされるか否かにかかわらず、熱開始剤、レドックス開始剤または光開始剤からなる群から選択される、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項4】
前記硬化性樹脂組成物(X)が、0.05重量%~10重量%の量の前記少なくとも1種のラジカル開始剤(I)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項5】
フリーラジカル重合に供した後の前記硬化性樹脂組成物(X)が、少なくとも500MPaの23℃でのヤング率(E 23)を示す、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項6】
フリーラジカル重合に供した後の前記硬化性樹脂組成物(X)が、少なくとも0.7J/cmの-20℃での靭性(U -20)を示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項7】
前記少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)が、式(1):
-(1)ヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)-ポリイソシアナート(P)-ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)-ポリイソシアナート(P)-ヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項8】
前記少なくとも1種の希釈剤(D)が、単官能性モノマー(M1)の混合物または少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)と、少なくとも1種の二官能性モノマー(M2)または三官能性モノマー(M3)との混合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項9】
前記少なくとも1種の希釈剤(D)が、メチルメタクリラート(MMA)、n-ブチルメタクリラート(BuMA)、tert-ブチルメタクリラート(tBuMA)、シクロヘキシルメタクリラート(CHMA)、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、イソボルニルアクリラート(IBOA)、イソボルニルメタクリラート(IBoMA)、ベンジルメタクリラート(BMA)およびそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項10】
前記少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)が、ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリラート(HPA)、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシブチルアクリラート(HBA)、ヒドロキシブチルメタクリラート(HBMA)、Carduraアクリラートおよびそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリイソシアナート(P)が、1,6-ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアナート、HDI)、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(トルエンジイソシアネート(TDI))、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトベンゼン](MDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアナート(NDI)、トルイジンジイソシアナート(TODI)、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)およびp-フェニレンジイソシアナート(PPDI)、トリメチル1,6ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-ジイソシアナトジフェニルメタンおよびそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項12】
前記少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)が、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールおよびそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項13】
ウレタン結合が0.1molkg-1~1.0molkg-1である、請求項1から12のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項14】
前記低温フレキシブル用途が、防水コーティング用途、付加製造(3D印刷)、繊維強化複合材料、接着剤用途、構造接着剤用途、電気絶縁用途、食品包装用途、食品包装接着剤用途、プリント回路基板コーティング、コンフォーマルコーティング用途、およびソーラーパネル用修復コーティングからなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)を調製するプロセスであって、
-前記少なくとも1種の希釈剤(D)と前記少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)とを混合するステップ、および
-溶解または混合により前記フリーラジカル重合の活性化のための前記少なくとも1種のラジカル開始剤(I)を添加するステップ
を含む、プロセス。
【請求項16】
防水コーティング用途、付加製造(3D印刷)、繊維強化複合材料、接着剤用途、構造接着剤用途、電気絶縁用途、食品包装用途、食品包装接着剤用途、プリント回路基板コーティング、コンフォーマルコーティング用途、およびソーラーパネル用修復コーティングからなる群から選択される低温フレキシブル用途のための請求項1から14のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)の使用。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)から調製されたコーティング、接着剤、フィルム、層、または任意のパーツ。
【請求項18】
基材を請求項1から14のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物(X)でコーティングする方法であって、以下のステップ:
-ステップ1:前記硬化性樹脂組成物(X)を基材の少なくとも一方の表面に適用するステップ、ならびに
-ステップ2:コーティングされた前記基材を放射線、周囲温度および/または熱に供することによって前記硬化性樹脂組成物(X)を硬化させるステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、少なくとも1種の単官能性モノマーおよび少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラートから調製され、極低温条件の温度を含む広範囲の使用温度で高性能コーティング特性を示す硬化性組成物に使用される樹脂、これらの硬化性組成物を製造するための方法ならびにそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー系材料は、比強度が高く、加工し易く、基材に適用されたときの保護能力に優れているため、幅広い用途に使用されている。化学薬品、メカニクスおよび湿度に関する全体的な耐性特性を考慮すると、緻密な架橋が化学薬品、水、汚れおよび損傷に対する耐性と共に機械的強度をもたらすことから、熱硬化性樹脂が好ましい。課題は、ポリマーネットワークが機械的なストレスを受けたとき、変形時のエネルギー散逸(減衰)のチャネルを持たない場合に生じ得る脆性を回避することである。通常、硬化したネットワークのガラス転移は、減衰を最適化するために使用温度の近くに調整される。適切に設計された材料は、ヤング率が高いガラス状態のいわゆる脆性-延性遷移領域において、ガラス転移温度(T)を下回る限られた温度範囲で脆性破損(破断)に耐えることができる。しかしながら、ヤング率(E)が十分に高く、脆性破損が回避される温度範囲は、一般に、均一な材料の通常の周囲条件で20~30℃をカバーする。
【0003】
靭性(U)は、破損前のかなりの程度まで変形を維持する(延性がある)大きなヤング率を特徴とする材料を適切に表す特性である。これは、特定の負荷条件下で破損前に材料に蓄えられることができる最大機械エネルギー密度に対応し、多くの場合、破壊に至るまでの応力-歪み曲線下の総面積によって決定される。
【0004】
所与の使用温度で靭性を改善するための周知の例として、低T化合物(例えば、ゴム)が複数の戦略(ブレンド、押出、反応誘起)に従ってガラス質環境に組み込まれる熱可塑性樹脂のゴム靭性がある。基本的に、ソフトドメインを応力散逸経路として組み込むことで、致命的な破損の発生が遅らせられ、靭性が高められる。限られた温度範囲で効率的であるため、この手法に従って広範囲の変動する温度で適正なE/Uバランスを達成することは依然として課題である。
【0005】
特に、低温範囲での性能の改善は、低温凍結条件を含む周囲条件および大気条件に従って使用温度が広範囲で変化し得るいくつかの特定のコーティング用途にますます必要とされている。これらの用途のほとんどでは、調整可能な流れ特性を有する液体前駆体が所望され、コーティングまたは材料の最終的な特性は、硬化ステップの後に達成され、この硬化ステップは、多くの場合、促進剤の助けを借りて、または放射線源によって周囲条件で活性化される。
【0006】
建築、自動車、包装または電子機器の分野におけるコーティングおよび層状材料は、大きな温度変化に耐えられることが必須条件となる典型的な例である。
【0007】
具体的な例として、屋根、コンクリート床、駐車場、ガレージおよび倉庫の表面、バルコニーなどに防湿性および耐湿性の表面保護として適用される防水膜は、環境条件および周囲条件の永続的な変動を受け、地理的位置に応じて通常は-30℃~30℃で永続的な材料応力に曝される。
【0008】
高まりつつある別の用途は、ソーラーパネル修理に使用される屋外コーティングである。
【0009】
他の例は、自動車の世界に見出すことができ、例えば車のボンネット下のパーツが、190℃、すなわち-40℃~150℃という広い温度範囲で機械的完全性、寸法安定性および耐薬品性を示すことが求められる。また、電子産業におけるプリント回路基板のコーティング(コンフォーマルコーティング)についても、多くの場合、-40℃~120℃の熱衝撃の要件が課される。
【0010】
欧州特許第0329441号明細書は、コンフォーマルコーティングに使用することができる脂肪族モノアクリラート、脂肪族二環式モノ(メタ)アクリラートおよび任意に多官能性(メタ)アクリラートと組み合わせた、1000~6000ダルトンの分子量(Mw)を有するウレタンアクリラートの混合物を記載している。
【0011】
しかしながら、0℃をはるかに下回る大きな温度窓で剛性および耐破損性を兼ね備えるフリーラジカル重合後のコーティング、フィルム、層、接着剤またはパーツをもたらす硬化性樹脂組成物を開発する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、機械的破損の点で大きな温度変動に耐えられるフリーラジカル重合後のコーティング、フィルム、層、接着剤またはパーツをもたらす熱もしくは放射線硬化性材料またはコーティング組成物用の樹脂を提供することを目的とする。得られたコーティング、フィルム、層、接着剤またはパーツは、零下範囲に大きく広がる広範囲の温度で適切な靭性(U)と共に十分な引張弾性率(ヤング率E)とを有することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の技術的課題を克服するために、本発明は以下を提供する:
低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物(X)であって、
この組成物は、
-A)少なくとも1種の希釈剤(D)であって、少なくとも1種の希釈剤(D)の総重量に対して少なくとも80重量%の少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含み、少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)は40℃を超えるガラス転移温度(T)を有するポリマーになる、少なくとも1種の希釈剤(D)と、
-B)以下;
1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)、
2)少なくとも1種のポリイソシアナート(P)および
3)2000~5000g/モルの範囲の平均モル質量を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)
の反応生成物である少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)と、
-C)少なくとも1種のラジカル開始剤(I)と
から調製され、
-少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)は、2000~6000g/モルの範囲の平均モル質量を有し、
-少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量との比は、≦1.5であり、
-フリーラジカル重合後の硬化性樹脂組成物(X)は、以下;
-少なくとも50MPaの23℃でのヤング率(E 23)および
-少なくとも0.5J/cmの-20℃での靭性(U -20
を示し、
-硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性組成物(X)の総重量に対して20重量%~50重量%の少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)を含む、
低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物(X)。
【0014】
低温フレキシブル用途は、フリーラジカル重合後の硬化性樹脂組成物(X)が-40℃~+150℃、好ましくは-30℃~+30℃、より好ましくは-20℃~+23℃、最も好ましくは-20℃~+20℃の広範囲の温度に供される用途を指す。フリーラジカル重合後の硬化性樹脂組成物(X)は、この広範囲の温度に供されているが、23℃でのヤング率(E 23)は少なくとも50MPaであり、-20℃での靭性(U -20)は少なくとも0.5J/cmである。これは、フリーラジカル重合後の硬化性樹脂組成物(X)が、機械的破損の点で大きな温度変動に耐えられることを意味する。低温フレキシブル用途は、特に、防水コーティング用途、付加製造(3D印刷)、繊維強化複合材料、接着剤用途、構造接着剤用途、電気絶縁用途、食品包装用途、食品包装接着剤用途、プリント回路基板コーティング、コンフォーマルコーティング用途、およびソーラーパネル用修復コーティングを指す。
【0015】
ヤング率または引張弾性率(E)は、固体材料の剛性の程度の指標を提供する機械的特性である。これは、一軸変形時の線形弾性領域における材料の引張応力(単位面積当たりの力)と引張歪み(相対変形)との間の関係を定義する。本発明の文脈において、ヤング率は、引張特性を決定するための以下の標準的な方法、ASTM D 638(Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics(プラスチックの引張特性の標準試験方法))、ASTM D 882(Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheeting(薄いプラスチックシートの引張特性の標準試験方法))、またはISO 527-1(Plastics-Determination of tensile properties(プラスチック-引張特性の決定))のうちの1つに従って23℃の温度で測定および報告される。一実施形態によれば、ヤング率を測定するための標準的な方法は、ISO 527-1(プラスチック-引張特性の決定))である。ヤング率は温度の低下と共に増加するため、23℃での値(E 23)が適切な下限を規定する。
【0016】
靱性(U)は、材料を破壊するのに必要な単位体積当たりの機械的エネルギー量の指標である。本発明の文脈において、靭性は、-20℃の温度(U -20)で、ヤング率の決定に使用されるのと同じ標準方法、すなわちASTM D 638(プラスチックの引張特性の標準試験方法)、ASTM D 882(薄いプラスチックシートの引張特性の標準試験方法)またはISO 527-1(プラスチック-引張特性の決定)に従って測定される破損に至るまでの応力-歪み曲線下の総面積として決定される。一実施形態によれば、靭性を決定するための標準的な方法は、ISO 527-1(プラスチック-引張特性の決定)である。靱性値は、通常、高温になるほど増加するため、-20℃での靱性値(U -20)が適切な下限を規定する。
【0017】
本発明によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、フリーラジカル重合後、23℃でのヤング率(E 23)が少なくとも50MPaであり、-20℃での靭性(U -20)が少なくとも0.5J/cmである。これらのバランスのとれた機械的特性により、得られた硬化樹脂コーティング、フィルム、層、接着剤またはパーツは、防水、バリアコーティング、食品包装接着剤、電気絶縁、コンフォーマルコーティング、ソーラーパネル用修復コーティングなどのような用途に必要な0℃をはるかに下回る大きな温度範囲で剛性および耐破壊性を兼ね備える。
【0018】
フリーラジカル重合後の硬化性樹脂組成物(X)の特性バランスは、ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)骨格を有するウレタン(メタ)アクリラート(U)と、希釈剤(D)であって、希釈剤(D)の総重量に対して少なくとも80重量%の単官能性モノマー(M1)を含み、この少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)は40℃を超えるガラス転移温度(T)を有するポリマーになる、希釈剤(D)との組み合わせによって付与される。少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量との比は、≦1.5である。
【0019】
実際、希釈剤(D)は、ウレタン(メタ)アクリラート(U)のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)骨格に対する極性の大きな差を示す。
【0020】
硬化性樹脂組成物(X)の重合時に構築されるウレタン(メタ)アクリラート(U)のポリエーテル(PE)骨格と単官能性モノマー(M1)の直鎖ポリマーセグメントとの間の極性コントラストおよび平均モル質量の差は、活性化の種類にかかわらず最終材料中の組成の勾配を誘起する。組成の勾配は、重合後のウレタン(メタ)アクリラート(U)と単官能性モノマー(M1)を含む希釈剤(D)との相分離から生じる。この相分離は、硬化樹脂組成物(X)中のウレタン(メタ)アクリラート(U)および希釈剤(D)の特定の分布をもたらす。フリーラジカル重合反応と共にこの熱力学的に駆動されるプロセスは、最終的に、伸長時の破損の遅れによって実証される低温での靱性の向上を示す高弾性のネットワークをもたらす。本発明の硬化性樹脂組成物(X)は、広い温度範囲で使用することができる。特に、硬化性樹脂組成物(X)は、-40℃~+150℃、好ましくは-30℃~+30℃、より好ましくは-20℃~+23℃、最も好ましくは-20℃~+20℃の温度範囲で使用するのに適している。実際、硬化性樹脂組成物(X)は、これらの温度範囲で適切なヤング率および靱性バランス(または機械的破損に対する耐性)を示す。
【0021】
加えて、硬化性樹脂組成物(X)は周囲温度で硬化させることができるため、適用工程は簡略化される。さらに、硬化性樹脂組成物(X)は、広い温度範囲および相対湿度条件の用途に使用される2Kポリウレタン樹脂系によく用いられる遊離ポリイソシアナートの使用を回避する。これは、毒性物質(ポリイソシアナート)に対する懸念が高まっていることを考慮すると有利である。
【0022】
本発明の別の態様は、硬化性樹脂組成物(X)を調製する方法であって、
-少なくとも1種の希釈剤(D)と少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)とを混合するステップ、および
-溶解または混合によりフリーラジカル重合の活性化のための少なくとも1種のラジカル開始剤(I)を添加するステップ
を含む方法である。
ラジカル開始剤(I)は、硬化促進剤または他の硬化助剤と組み合わされるか否かにかかわらず、熱開始剤、レドックス開始剤または光開始剤から選択することができる。
本発明はまた、好ましくは、防水コーティング用途、付加製造(3D印刷)、繊維強化複合材料、接着剤用途、構造接着剤用途、電気絶縁用途、食品包装用途、食品包装接着剤用途、プリント回路基板コーティングおよびコンフォーマルコーティング用途からなる群から選択される、低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物(X)の使用に関する。特に、硬化性樹脂組成物(X)は、例えば、屋根、バルコニー、駐車場、ガレージおよび倉庫の表面を保護する周囲条件硬化型の防水膜、自動車用途に使用されるUV接着剤、プリント回路基板を保護するのに使用されるコンフォーマルコーティングおよびソーラーパネル用修復コーティングのために使用され得る。
本発明の別の態様は、硬化性樹脂組成物(X)から調製されたコーティング、接着剤、層、フィルムまたはパーツである。
本発明の別の態様は、基材を硬化性樹脂組成物(X)でコーティングする方法であって、この方法は、以下のステップ:
-ステップ1:硬化性樹脂組成物(X)を基材の少なくとも一方の表面に適用するステップと、
-ステップ2:コーティングされた基材を放射線、周囲温度および/または熱に供することによって硬化性樹脂組成物(X)を硬化させるステップと
を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、
低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物(X)であって、
-A)少なくとも1種の希釈剤(D)であって、少なくとも1種の希釈剤(D)の総重量に対して少なくとも80重量%の少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含み、少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)は40℃を超えるガラス転移温度(T)を有するポリマーになる、少なくとも1種の希釈剤(D)と、
-B)以下;
1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)、
2)少なくとも1種のポリイソシアナート(P)および
3)2000~5000g/モルの範囲の平均モル質量を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)
の反応生成物である少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)と、
-C)少なくとも1種のラジカル開始剤(I)と
から調製され、
-少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)は、2000~6000g/モルの範囲の平均モル質量を有し、
-少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量との比は、≦1.5であり、
-フリーラジカル重合後の硬化性樹脂組成物(X)は、以下;
-少なくとも50MPaの23℃でのヤング率(E 23)および
-少なくとも0.5J/cmの-20℃での靭性(U -20
を示し、
-硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性組成物(X)の総重量に対して20重量%~50重量%の少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)を含む、低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物を提案する。
【0024】
「硬化性樹脂組成物」という用語は、促進剤を使用するか否かにかかわらず、または放射線(例えば、UV光、電子ビーム)への曝露によって、加熱または周囲温度(もしくは室温)での熱活性化後にフリーラジカル重合に供することができる(または硬化させることができる)組成物を表す。好ましくは、硬化性樹脂組成物(X)は、熱硬化性組成物または蒸発性の硬化性組成物である。
【0025】
「フリーラジカル重合」という用語は、活性中心がラジカルである連鎖重合を指す。ラジカル重合は、光(光分解)、温度(熱分解)、またはレドックス反応による開始剤の分解を介したフリーラジカルの形成を伴い、それらの反応はポリマーまたはポリマーネットワークの形成をもたらす。
【0026】
ガラス転移温度(T)は、ゴム状または流動性でさえあり得るポリマーまたはポリマーネットワークのガラス質の剛性状態とより柔らかい緩和状態との間の境界を示す。固体ポリマーまたはポリマーネットワークのガラス転移温度を決定するための適切な方法は、例えば、標準的な方法ASTM D 4065-01(Standard test method for the assignment of the glass transition temperature by Dynamic Mechanical Analysis(動的機械分析によるガラス転移温度の割り当てのための標準試験方法))によって記載される動的機械熱分析である。
【0027】
「希釈剤」という用語は、別の組成物に混ぜることによって希釈するか、またはより薄くするかもしくは粘度をより低くするかもしくは濃度をより低くするのに使用される溶媒または他の液体組成物を指す。
【0028】
一実施形態によれば、フリーラジカル重合に供された後(または硬化された後)の硬化性樹脂組成物(X)は、少なくとも50MPa(メガパスカル)、好ましくは少なくとも100MPa、より好ましくは少なくとも200MPa、最も好ましくは少なくとも500MPa、さらに最も好ましくは少なくとも700MPaの23℃でのヤング率(E 23)を示し得る。23℃でのヤング率(E 23)が高いほど、得られた硬化コーティングまたは材料はより硬く剛性が高い。
【0029】
好ましくは、フリーラジカル重合に供された後(または硬化された後)の硬化性樹脂組成物(X)は、-20℃で少なくとも0.5J/cmの靭性、より好ましくは少なくとも0.7J/cmの靭性、最も好ましくは少なくとも1J/cmの靭性(U -20)を示す。靱性が高いほど、硬化樹脂は機械的破損に耐えられる。
【0030】
硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して20重量%~50重量%のウレタン(メタ)アクリラート(U)の量を含む。好ましくは、ウレタン(メタ)アクリラート(U)の量は、硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して20重量%~40重量%、より好ましくは20重量%~35重量%、最も好ましくは25重量%~35重量%である。
【0031】
希釈剤(D)の量に関して、硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して50重量%~80重量%を含んでもよい。好ましくは、硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して60重量%~80重量%、より好ましくは65重量%~80重量%、最も好ましくは65重量%~75重量%の希釈剤(D)を含んでもよい。
【0032】
一実施形態によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して25重量%~40重量%の少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)と、60重量%~75重量%の少なくとも1種の希釈剤(D)とを含む。
【0033】
一実施形態によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、希釈剤(D)、ウレタン(メタ)アクリラート(U)およびラジカル開始剤(I)から本質的になる。この場合、希釈剤(D)の重量%、ウレタン(メタ)アクリラートの重量%およびラジカル開始剤(I)の重量%の合計は100%である。
【0034】
本発明によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、少なくとも1種の希釈剤(D)であって、少なくとも1種の希釈剤(D)の総重量に対して少なくとも80重量%の少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含み、少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)は40℃を超えるガラス転移温度(T)を有するポリマーになる、少なくとも1種の希釈剤(D)を含む。好ましくは、少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)から得られるポリマーのガラス転移温度(T)は、50℃を超えてもよく、より好ましくは60℃を超えてもよく、最も好ましくは70℃を超えてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、希釈剤(D)は、希釈剤(D)の総重量に対して少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含んでもよく、少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)は40℃を超えるガラス転移温度(T)を有するポリマーになる。希釈剤(D)はまた、希釈剤(D)の総重量に対して100重量%の少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)を含んでもよい。
【0036】
適切な単官能性モノマー(M1)は、メタクリル酸、メチルメタクリラート(MMA)、エチルメタクリラート、n-ブチルメタクリラート(BuMA)、tert-ブチルメタクリラート(tBuMA)、シクロヘキシルメタクリラート(CHMA)、グリシジルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート(IBOMA)、(ヒドロキシエチル)メタクリラート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、アクリル酸、メチルアクリラート(MA)、エチルアクリラート(EA)、n-ブチルアクリラート(BuA)、tert-ブチルアクリラート(tBuA)、2-エチルヘキシルアクリラート(2EHA)、イソオクチルアクリラート(IOA)、イソボルニルアクリラート(IBOA)、イソボルニルメタクリラート(IBoMA)、ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、環状トリメチロールホルマールアクリラート(CTFA)、ビニルアセタート(VoAc)、ベンジルメタクリラート(BMA)およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0037】
より好ましくは、単官能性モノマー(M1)は、メチルメタクリラート(MMA)、n-ブチルメタクリラート(BuMA)、tert-ブチルメタクリラート(tBuMA)、シクロヘキシルメタクリラート(CHMA)、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリラート(HPMA)、イソボルニルアクリラート(IBOA)、イソボルニルメタクリラート(IBoMA)、ベンジルメタクリラート(BMA)およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0038】
希釈剤(D)はまた、単官能性モノマー(M1)に加えて、少なくとも1種の二官能性モノマー(M2)および/または少なくとも1種の三官能性モノマー(M3)を含んでもよい。
【0039】
二官能性モノマー(M2)および三官能性モノマー(M3)の例は、ジおよびトリ(メタ)アクリラート化モノマー、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート(HDD(M)A)、ジまたはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート(DPGD(M)A、TPGD(M)A)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート(TMPT(M)A)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート(PETI(M)A)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、グリセロールトリ(メタ)アクリラートならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ジアンヒドロヘキシトールジ(メタ)アクリラート(イソソルビドジ(メタ)アクリラートなど)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ビスフェノールAジ(メタ)アクリラートならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体である。
【0040】
希釈剤(D)が少なくとも一種の二官能性モノマー(M2)および/または少なくとも一種の三官能性モノマー(M3)を含む場合、単官能性モノマー(M1)の量は、好ましくは少なくとも95重量%であるのに対して、二官能性モノマー(M2)および/または少なくとも1種の三官能性モノマー(M3)の量は、好ましくは5重量%未満である。
【0041】
一実施形態によれば、希釈剤(D)は、少なくとも1種の単官能性モノマー(M1)または単官能性モノマー(M1)の混合物から本質的になり、いかなる多官能性モノマーも含まない。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、
1)少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)、
2)少なくとも1種のポリイソシアナート(P)および
3)2000~5000g/molの範囲の平均モル質量を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)
からの反応生成物である。
【0043】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、好ましくは、末端基としてヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)から調製される。
【0044】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、好ましくは、以下の反応物モル比:[PE]/[P]/[HA]=1/2/2に従って調製される。
【0045】
一実施形態によれば、ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、式(1)を有するものであってもよい:
【0046】
(1)ヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)-ポリイソシアナート(P)-ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)-ポリイソシアナート(P)-ヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)。
【0047】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)は、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリラートならびにそれらの(ポリ)エトキシ化および/または(ポリ)プロポキシ化等価物などの少なくとも2個の(メタ)アクリル官能基を含むモノヒドロキシ化合物であり得る。より好ましいポリ(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物は、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラートである。最も好ましいのはアクリラート誘導体である。
【0048】
適切なモノヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)は、好ましくは、ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリラート(HPA)、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシブチルアクリラート(HBA)、ヒドロキシブチルメタクリラート(HBMA)、Carduraアクリラート、それらのエトキシル化、プロポキシル化および/またはラクトン誘導体、ならびにそれらの任意の混合物からなるモノ(メタ)アクリラートの群から選択される。
【0049】
好ましいヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)は、ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0050】
「ポリイソシアナート」(P)とは、少なくとも2個、通常は最大6個のイソシアナート基を含む有機化合物を指すことを意味する。ポリイソシアナート化合物は、通常、6個以下のイソシアナート基、好ましくは3個以下のイソシアナート基を含む。ポリイソシアナート(P)は、最も好ましくはジイソシアナート(DI)である。ポリイソシアナート(P)は、一般に、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式ポリイソシアナートまたはそれらの組み合わせから選択される。ポリイソシアナート(P)は、アロファネート基、ビウレット基および/またはイソシアヌレート基を含む場合がある。
【0051】
使用され得る芳香族ポリイソシアナートの例は、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(トルエンジイソシアナート(TDI))、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトベンゼン](MDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアナート(NDI)、トルイジンジイソシアナート(TODI)、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)およびp-フェニレンジイソシアナート(PPDI)である。本発明の文脈において使用され得るポリイソシアナートの他の例は、トリメチル1,6ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-ジイソシアナトジフェニルメタンを伴う工業用混合物、それに上記ジイソシアナートの高級同族体、2,4-ジイソシアナトトルエンおよびそれらと2,6-ジイソシアナトトルエンとの工業用混合物、ならびに3-イソプロペニル-a,a’-ジメチルベンジルイソシアナート(TMI)の共重合生成物である。脂肪族および脂環式ポリイソシアナートの例は、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)である。3個以上のイソシアナート基を含有するポリイソシアナートは、例えば、1,6-ジイソシアナトヘキサンビウレットおよびイソシアヌラートのような上記ジイソシアナートの誘導体である。
【0052】
一実施形態によれば、ポリイソシアナート(P)は、1,6-ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアナート、HDI)、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(トルエンジイソシアナート(TDI))、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトベンゼン](MDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアナート(NDI)、トルイジンジイソシアナート(TODI)、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)およびp-フェニレンジイソシアナート(PPDI)、トリメチル1,6ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-ジイソシアナトジフェニルメタンおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明の文脈において好ましいのは、脂肪族および/または脂環式ポリイソシアナート、より好ましくはジイソシアナートである。特に好ましいのは、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)および/またはイソホロンジイソシアナート(IPDI)である。
【0054】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)の骨格は、2000~5000g/mol、好ましくは2500~4700g/mol、より好ましくは3000~4500g/molを含む平均モル質量を有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)である。
【0055】
適切なヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)は、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、2000~6000g/mol、好ましくは3000~5300g/mol、より好ましくは3200~5200g/mol、最も好ましくは3500~5100g/molを含む平均モル質量を有する。特定の一実施形態によれば、ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、≦5500g/mol、好ましくは≦5200g/mol、より好ましくは≦5100g/molの平均モル質量を有する。加えて、少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量とのモル質量比は、≦1.5である。具体的な一実施形態によれば、少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量とのモル質量比は、好ましくは≦1.4であり、より好ましくは≦1.3である。別の実施形態によれば、少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量と少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量とのモル質量比は、≦1.2であり得る。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量およびヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量は、以下のようにして求められる。
【0058】
ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)の平均モル質量(MPE)は、ヒドロキシル価(OHV(mg KOH/g)、ASTM E 222)から推定される。例えば、二官能性ポリエーテルの場合、MPE=1000×56.1×2/OHVである。ウレタン(メタ)アクリラート(U)の平均モル質量(M)は、少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)、少なくとも1種のポリイソシアナート(P)および少なくとも1種のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)の間の化学量論比ならびに構成成分のそれぞれのモル質量から理論的に推定される。
【0059】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)のモル質量(M)は、M=1×MPE+2×M+2×MHAのようにして算出される。
【0060】
ウレタン結合の濃度(mol/kg)は、全組成物(希釈剤、PI等を含む)1kg当たりのウレタン結合(NHCOO)のモル数として計算される。
【0061】
一実施形態によれば、ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、0.1molkg-1~1.0molkg-1、好ましくは0.3~0.8molkg-1、より好ましくは0.4~0.6molkg-1、最も好ましくは約0.5molkg-1のウレタン結合を示す。
【0062】
一実施形態によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、ウレタン(メタ)アクリラートとして少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)のみを含み、更なるウレタン(メタ)アクリラートを含まない。
【0063】
一実施形態によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、単一のウレタン(メタ)アクリラート(U)のみを含み、他のウレタン(メタ)アクリラートを含まない。
【0064】
本発明によれば、硬化性樹脂組成物(X)は、少なくとも1種のラジカル開始剤(I)を含む。
【0065】
好ましくは、硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性樹脂組成物(X)の総重量に対して0.05重量%~10重量%、より好ましくは0.2重量%~4重量%、最も好ましくは0.5重量%~2.5重量%の少なくとも1種のラジカル開始剤(I)の量を含む。
【0066】
ラジカル開始剤(I)は、硬化促進剤または他の硬化助剤と組み合わされるか否かにかかわらず、熱開始剤、レドックス開始剤または光開始剤から選択することができる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、ラジカル開始剤(I)は、アゾ化合物、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンニトリル)、1,1’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、C-C不安定化合物、例えばベンゾピナコール、過酸化物、およびそれらの混合物などの熱開始剤であってもよい。
【0068】
別の実施形態によれば、ラジカル開始剤(I)は、過酸化物を含む熱開始剤であってもよい。過酸化物には、有機過酸化物および無機過酸化物が含まれる。一実施形態では、熱開始剤は組成物に可溶である。過酸化物の例としては、例えば、(式-OC(O)O-の)過炭酸塩、(式-C(O)OO-の)ペルオキシエステル、(式-C(O)OOC(O)-の)過酸化無水物としても知られるジアシルペルオキシド、(式-OO-の)ジアルキルペルオキシドまたは過酸化エーテル(perether)、(式-OOH-の)ヒドロペルオキシドなどが挙げられる。過酸化物はまた、本質的にオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0069】
過酸化物の例としては、例えば、(式-OC(O)O-の)過炭酸塩、(式-C(O)OO-の)ペルオキシエステル、(式-C(O)OOC(O)-の)過酸化無水物としても知られるジアシルペルオキシド、(式-OO-の)ジアルキルペルオキシドまたは過酸化エーテル、(式-OOH-の)ヒドロペルオキシドなどが挙げられる。過酸化物はまた、本質的にオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0070】
熱開始剤は、例えば、過炭酸塩、過酸エステルまたは過酸無水物を含んでいてもよい。過酸無水物は、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)および過酸化ラウロイル(Laurox(商標)として市販されている)である。過酸エステルは、例えば、t-ブチルパーベンゾエートおよび2-エチルヘキシルパーラウラートである。過炭酸塩は、例えば、ジ-t-ブチルパーカーボナートおよびジ-2-エチルヘキシルパーカーボナートまたはモノ過炭酸塩である。
【0071】
一実施形態では、熱開始剤は有機過酸化物である。有機過酸化物の例は、第三級アルキルヒドロペルオキシド(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシドなど)、他のヒドロペルオキシド(例えば、クメンヒドロペルオキシドなど)、ケトンペルオキシド(過酸化水素とケトンとの付加生成物である過酸ケトン、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシドおよびアセチルアセトンペルオキシド)、ペルオキシエステルまたは過酸(例えば、t-ブチル過酸エステル、過酸化ベンゾイル、過酢酸塩および過安息香酸塩、ラウロイルペルオキシド((ジ)ペルオキシエステルを含める)、過酸エーテル(例えば、ペルオキシジエチルエーテルなど)である。
【0072】
一実施形態では、熱開始剤は、過酸無水物、例えば、過酸化ベンゾイルまたは過酸化ラウロイル、ペルオキシジカーボナート、例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)-ペルオキシジカーボナート、ジセチルペルオキシジカーボナート、またはジミリスチルペルオキシジカーボナートを含む。
【0073】
好ましくは、ラジカル開始剤(I)は、過酸化ベンゾイル、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、o,o-tert-ブチル-o-イソプロピルモノペルオキシカーボナート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(-2エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1-シアノ-1(t-ブチルアゾ)シクロヘキサンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0074】
適切な促進剤は、例えば、アミン促進剤(アルキルアニリン)であり得る。アルキルアニリンは過酸化物と反応してアミンラジカルカチオンおよび過酸化物ラジカルを形成し、この反応は過酸化物の熱分解よりも低い温度で起こる。
【0075】
この目的のために使用されるアルキルアニリンのいくつかの例は、N,N-ジメチルアニリン(DMA)、N,N-ジエチルアニリン(DEA)、N,N-ジメチル-パラ-トルイジン(DMpT)、N,N-ジイソプロピル-パラ-トルイジン(DiPpT)、N,N-ジヒドロキシエチル-パラ-トルイジン(DHEpT)、エトキシル化ジヒドロキシエチル-パラ-トルイジンである。
【0076】
適切なラジカル光開始剤は、ベンゾイルホスフィンオキシド、アリールケトン、ベンゾフェノン、ヒドロキシル化ケトン、1-ヒドロキシフェニルケトン、ケタール、メタロセン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0077】
一実施形態によれば、ラジカル開始剤(I)は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1-ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、4-イソプロピルフェニル(1-ヒドロキシイソプロピル)ケトン、オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、カンファーキノン、4,4’-ビス(ジエチルミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ビス(eta5-2-4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるラジカル光開始剤である。
【0078】
更なるラジカル光開始剤としては、ベンジルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFからのルシリン(Lucirin)TPO)および2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキシド(BASFからのルシリンTPO-L)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(CibaのIrgacure 819またはBAPO)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1(CibaのIrgacure 907)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(CibaのIrgacure 369)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(CibaのIrgacure 379)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(ChitecのChivacure BMS)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecのChivacure EMK)、4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、カンファーキノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecのChivacure EMK)、4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(CibaのIrgacure 819またはBAPO)など、およびメタロセン、例えばビス(eta5-2-4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン(CibaからのIrgacure784)、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
具体的な一実施形態によれば、ラジカル開始剤(I)は、過酸化ベンゾイル(BPO)および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0080】
本発明の組成物はまた、任意選択で、不活性または機能性樹脂、顔料、着色剤、充填剤および/または基材上への配合された組成物の適用を改善するのに適した他の添加剤を含んでいてもよく、以下のものに限定されないが、湿潤剤、酸化防止剤、流動改質剤、スリップ剤、難燃剤、UV保護剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、湿潤剤、スリップ添加剤、安定剤、消泡剤、アルコキシシラン、水およびそれらの混合物が挙げられる。
【0081】
本発明はまた、硬化性樹脂組成物(X)を調製するプロセスであって、
-少なくとも1種の希釈剤(D)と少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリラート(U)とを混合するステップ、および
-溶解または混合によりフリーラジカル重合の活性化のための少なくとも1種のラジカル開始剤(I)を添加するステップ
を含む、プロセスに関する。ラジカル開始剤(I)は、硬化促進剤または他の硬化助剤と組み合わされるか否かにかかわらず、熱開始剤、レドックス開始剤または光開始剤から選択することができる。
【0082】
本発明はまた、好ましくは、防水コーティング用途、付加製造(3D印刷)、繊維強化複合材料、接着剤用途、構造接着剤用途、電気絶縁用途、食品包装用途、食品包装接着剤用途、プリント回路基板コーティング、コンフォーマルコーティング用途、およびソーラーパネル用修復コーティングからなる群から選択される、低温フレキシブル用途向けの硬化性樹脂組成物(X)の使用に関する。
【0083】
本発明の別の態様は、硬化性樹脂組成物(X)から調製されたコーティング、接着剤、フィルム、または任意の層もしくはパーツである。
【0084】
本発明はまた、基材を硬化性樹脂組成物(X)でコーティングする方法であって、この方法は、以下のステップ:
-ステップ1:硬化性樹脂組成物(X)を基材の少なくとも一方の表面に適用するステップ、ならびに
-ステップ2:コーティングされた基材を放射線、周囲温度および/または熱に供することによって硬化性コーティング組成物を硬化させるステップ
を含む、方法に言及する。
【0085】
前述のすべての実施形態は、個別に実施されてもよいし、合理的な範囲内で組み合わされてもよい。
【0086】
ここで、本発明を以下の例においてさらに詳細に説明するが、これらは決して本発明またはその用途を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0087】
実験データ
材料のリスト:
-BHT=ブチル化ヒドロキシルトルエン
-DBTL=ジブチルスズジラウラート
-PPG=ポリプロピレングリコール(Dow)
-PTMG=ポリテトラメチレングリコール(三菱)
-IPDI=イソホロンジイソシアナート
-HDI=ヘキサメチレンジイソシアナート
-TDI=トルエンジイソシアナート
-HEA=ヒドロキシエチルアクリラート
-HEMA=ヒドロキシエチルメタクリラート
-MMA=メチルメタクリラート
-IBoA=イソボルニルアクリラート
-BPO-FT=ジベンゾイルペルオキシド50重量%活性(United Initiators)
-DiPpT=N,N-ジイソプロピルパラ-トルイジン(Lanxess)
-HCPK=1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF)
【0088】
例1:ウレタン(メタ)アクリラート(U):希釈剤(D)=25:75の質量比の周囲条件硬化型樹脂組成物
【0089】
1.1 ウレタン(メタ)アクリラート(U)の合成
【0090】
本発明の一実施形態に従って、ウレタン(メタ)アクリラート(U)を、ウレタン(メタ)アクリラート(U)とヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)とのモル質量比が≦1.5、好ましくは≦1.3となるように、ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)、ポリイソシアナート(P)およびヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)から調製する。例で使用したすべてのウレタン(メタ)アクリラート(U)の組成およびモル質量の説明を表1に示す。表1のウレタン(メタ)アクリラート(U)を識別するための文字列コードは、[#PE単位]+[おおよそのモル質量を有するPEの種類]+[アクリラート(UA)またはメタクリラート(UMA)]+[使用したジイソシアナートを指す数字(1=IPDI;2=HDI;3=TDI)]である。ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)のモル質量(MPE)は、ヒドロキシル価(OHV、ASTM E222)から推定される。ウレタン(メタ)アクリラート(U)のモル質量(M)は、ヒドロキシ官能性ポリエーテル(PE)、ポリイソシアナート(P)およびヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(HA)の間の化学量論比ならびに構成成分のそれぞれのモル質量から理論的に推定される。例えば、1PPG4K-UA-1の文字列コード(表1の7行目)は、2モルのIPDIおよび2モルのHEAと反応させた1モルのPPG4000を指す。PPG4000のモル質量は、ヒドロキシル価(25mgKOH/g)から、MPE=1000×56.1×2/25=4488g/molと推定され、ウレタン(メタ)アクリラート(U)のモル質量は、M=1×MPE+2×MIPDI+2×MHEA=5164g/molである。比M/MPEも表1に報告する。
【0091】
ウレタン(メタ)アクリラート(U)は、1PPG4K-UA-1の合成について詳細に説明したのと同じプロトコルに従って、表1に記載の反応物および反応物の量を使用して調製する。油浴に接続され、撹拌装置を備えた5リットルの二重ジャケット付き反応容器に、1モル当量のPPG4000(2000g)および2モル当量のIPDI(197.9g)を装入する。次に、ジオール含有量に対して0.1重量%のBHTを添加する。反応物を混合したら、反応器を60℃に加熱し、続いて0.05重量%のDBTL(PPG4000含有量に基づく)を添加する。反応時に放出される熱は、温度を約70℃まで上昇させる。反応は、イソシアナート含有量が0.45mmol/gに達した時点(ISO 14896-determination of isocyanate content(イソシアナート含有量の決定))、通常は1時間後に中断する。次に、温度を70℃に調整し、2モル当量のHEA(103.4g)を装入する。反応は、残留イソシアナート含有量が0.02mmol/gになるまで続ける。
【0092】
【表1】
【0093】
*=比較例
【0094】
1.2 硬化性樹脂組成物の配合
【0095】
本発明の一実施形態に従って、反応性希釈剤(D)およびラジカル開始剤(I)をウレタン(メタ)アクリラート(U)に添加する必要がある。25重量%の1PPG4K-UA-1および75重量%のMMA(Tg,PMMA=105℃)に2.5重量%のBPOおよび2.3重量%のDiPpT(表2で使用)を加えた周囲条件硬化配合物の調製を以下に詳述する。Mix-1の場合、5gの1PPG4K-UA-1を11gのMMAで希釈する。次いで、1gのBPO-FT(50重量%活性)を混合時にMix-1に溶解する。Mix-2の場合、促進剤DiPpT 0.46gをMMA 2.54gに溶解する。Mix-1およびMix-2は、適用直前に一緒にブレンドする。
【0096】
1.3 硬化樹脂の自立層の調製
【0097】
引張特性の測定には、硬化樹脂の自立(free-standing)フィルムまたは層が必要である。いくつかの実施形態に従う周囲条件硬化型の樹脂組成物の自立層は、以下のように調製する。清浄なガラス板に固定したポリプロピレンフィルムの上に厚み2mmの両面テープを貼り付けることにより、6cm×10.5cmの矩形領域を画定する。前述のMix-1およびMix-2をブレンドし、得られた配合物15gを使用して矩形キャスティング領域を充填し、このキャスティング領域は、希釈剤の蒸発を回避するために、別のポリプロピレンフィルムおよびガラス板で直ちに覆われる。この2Kシステムの発熱反応は迅速に開始する。少なくとも24時間後、硬化層は、約2mmの厚みを有する孤立した自立層として取り除かれる。
【0098】
1.4 -20℃および23℃での引張特性
【0099】
引張特性は、Zwick Z010万能材料試験機により50mm/分のクロスヘッド速度で測定した。実験は、室温(23℃)で周囲条件において、および温度制御された対流チャンバ内で電気加熱と窒素冷却とを組み合わせて-20℃で行った。試験のために、ダンベル形状のサンプルを自立層から切断した。クランプ間の距離は30mmであり、ダンベルの内幅は3mmであった。サンプルの中央の厚みは、Heidenhain MT25Bデジタル測長機を用いて測定した。硬化層当たり少なくとも3つのサンプルを試験した。引張応力および歪みは、曲線における工学値(初期部分に対する)として表した。ASTM D638(プラスチックの引張特性の標準試験方法)、ASTM D882(薄いプラスチックシートの引張特性の標準試験方法)またはISO 527-1(プラスチック-引張特性の測定)のガイドラインに従って、引張曲線の初期線形部分の勾配からヤング率(E)を推定した。靱性(U)は、曲線下面積から推定した。表2のデータは、表1の一連の二官能性ウレタン(メタ)アクリラート(U)を、質量比25:75においてMMAである希釈剤(D)で希釈したものを指す。本発明の好ましい実施形態に従って、23℃で50MPaの最小ヤング率と共に-20℃での向上した靱性(U≧0.5J/cm)を生じさせるためには、比M/MPE≦1.5、より好ましくは≦1.3が必要である。表2の例2-1~2-9は、硬化樹脂中のウレタン(メタ)アクリラート(U)を25重量%とした場合のこの態様を示している。重合後の希釈剤(D)の量により、Tは50℃を大幅に超えており、23℃でのヤング率が高くなる。課題は、限られた量のウレタン(メタ)アクリラート(U)を含む系に対して-20℃で十分な靱性を達成することである。表1は、本発明を実証する。2つの比較例2-10および2-11は、質量比M/MPE>1.5の場合、特に硬化樹脂が脆くなる-20℃で優れた特性バランスが失われることを示している。
【0100】
【表2】
【0101】
*=比較例
【0102】
比較例2-11の場合、得られた硬化樹脂が-20℃で脆くなりすぎたため、E -20 およびU -20 の値は測定しなかった。
【0103】
例2:ウレタン(メタ)アクリラート(U):希釈剤(D)=50:50の質量比の周囲条件硬化型樹脂組成物
【0104】
この例では、ウレタン(メタ)アクリラートと希釈剤との質量比は、例1の25:75の代わりに50:50である。Mix-1の場合、10gのウレタン(メタ)アクリラート(U)を6gのMMAである希釈剤(D)で希釈する配合ステップを除いて、説明はすべて同じままである。次いで、1gのBPO-FT(50重量%活性)を混合時にMix-1に溶解する。Mix-2の場合、促進剤DiPpT 0.46gをMMA 2.54gに溶解する。Mix-1およびMix-2は、適用直前に一緒にブレンドする。
【0105】
2.1 -20℃および23℃での引張特性(例1を参照)
【0106】
表3の3-1~3-8列の結果は、配合物がウレタン(メタ)アクリラート(U)に富む本発明を示している。例1とは対照的に、多量のウレタン(メタ)アクリラート(U)を用いると、-20℃での靭性は有意に向上するが、課題は23℃で大きなヤング率を維持することである。結果3-1~3-9は、本発明による-20℃および23℃での固有の引張特性バランスに対する質量比M/MPE≦1.5の重要性を示す。結果3-10は、Uの比M/MPE>1.5に基づいており、不十分なヤング率を有する硬化樹脂を生成する。
【0107】
【表3】
【0108】
*=比較例
【0109】
例3:ウレタン(メタ)アクリラート(U):希釈剤(D)=30:70の質量比での紫外線(UV)硬化樹脂組成物
【0110】
好ましい一実施形態に従って、本発明は、この例では、光重合によって硬化される硬化性樹脂組成物を例示している。加えて、本発明は、他の反応性希釈剤についても強調される。ウレタン(メタ)アクリラート(U)1PPG4K-UA-2は、UV硬化性配合物を調製するための例1(そこで合成が記載されている)から選択される。
【0111】
3.1 UV硬化性樹脂組成物の配合
【0112】
1PPG4K-UA-2である30重量%のウレタン(メタ)アクリラート(U)と70重量%の希釈剤(D)とを含むUV硬化性配合物を以下のように調製する:9gの1PPG4K-UA-2を21gの希釈剤(D)で希釈する。次いで、この配合において、90mgのHCPKを混合時に溶解する。
【0113】
3.2 硬化樹脂の自立層の調製
【0114】
引張特性の測定には、硬化樹脂の自立フィルムまたは層が必要である。UV硬化樹脂組成物の自立層を以下のように調製する。最適な湿潤力および保持力のために、矩形シリコーンシート片(1.5mm)をガラス板上にプレスする。次に、シリコーンの矩形スペーサー(下層と同じサイズ)をシリコーンシートと接触させて押し込んで、矩形のキャスティング領域を作り出す。最後に、固定クランプを使用して3mmのガラスパネルでアセンブリを閉じる。アセンブリを直立位置に維持しながら、樹脂はシリコーンスペーサーの小さな開口部を通して充填する。次いで、ガラス積層体を、(365nmで)3mW/cm-2のUV-A強度に対応するUV-Aランプ(Panacol UV450)から距離をとって上方位置で光重合する。照射を20分間維持し、硬化樹脂を自立層として分離する。
【0115】
3.3 -20℃および23℃での引張特性(例1を参照)
【0116】
表4の結果4-1~4-3は、フリーラジカル重合が光で誘発される場合や、IBoAおよびHEMAなどの高Tモノ(メタ)アクリラートに基づいて他の希釈剤が使用される場合にも本発明が適用されることを示す。ヤング率は23℃で50MPaを大幅に超えているが、質量比30:70で予想されるように、-20℃で十分な靱性が達成される。4.4列の結果は、質量比M/MPE>1.5の場合、光硬化樹脂が-20℃で脆く、靭性値が低いことを示す例である。ウレタン(メタ)アクリラート(U)の比M/MPE≦1.5を有する同じ配合物は、-20℃での靭性の向上および23℃でなお高い弾性率をもたらす。
【0117】
【表4】
【0118】
例4:ウレタン(メタ)アクリラート(U):希釈剤(D)=40:60の質量比での樹脂組成物のUV光造形法(SLA 3D印刷)による付加製造
【0119】
本例では、光重合により硬化される硬化性樹脂組成物について、付加製造(3D印刷)の分野における本発明の適用を例示する。ウレタン(メタ)アクリラート(U)1PPG4K-UMA-1は、UV硬化性配合物を調製するための例1(そこで合成が記載されている)から選択される。
【0120】
4.1 UV硬化性樹脂組成物の配合
【0121】
1PPG4K-UMA-1である40重量%のウレタン(メタ)アクリラート(U)とIBoAである60重量%の希釈剤(D)とを含むUV硬化性配合物を以下のように調製する:120gの1PPG4K-UMA-1を180gのMMAで希釈する。この配合において、次に1.5gのトリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)を混合時に溶解する。
【0122】
4.2 硬化樹脂の自立サンプルの調製
【0123】
引張特性の測定には、硬化樹脂の自立部分が必要である。ダンベル型および矩形型のパーツを、装置供給元によって予め定義された曝露条件に従って、Formlabs SLAステーション(Form 2)を使用して印刷した。このパーツは、視覚的な非対称性(曲がり、ねじれ)のない明確な寸法バランスおよび優れた鮮明度を示した。100Wの水銀ランプを備えたUVオーブン(Uvacube 100、Honle)を使用して、パーツの後硬化処理を行った。重合を完了させるために、サンプルをオーブン内に30分間放置した。
【0124】
4.3 -20℃および23℃での引張特性(例1を参照)
【0125】
表5の結果5-1は、本発明が光誘起フリーラジカル重合に基づく付加製造によって調製されたパーツにも適用されることを示す。ヤング率は23℃で50MPaよりも高いが、質量比40:60で予想されるように、-20℃で著しく高いレベルの靱性が達成される。
【0126】
【表5】


【国際調査報告】