(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】アモルファスストリップマスター合金およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
C22C 33/04 20060101AFI20220224BHJP
C22C 45/02 20060101ALI20220224BHJP
C22C 1/00 20060101ALI20220224BHJP
C22C 1/03 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C22C33/04 A
C22C45/02 A
C22C1/00 A
C22C1/03
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539919
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 CN2020071117
(87)【国際公開番号】W WO2020143703
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】201910020121.5
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521206176
【氏名又は名称】王静然
【氏名又は名称原語表記】WANG, Jingran
【住所又は居所原語表記】Room 102, Unit 2, Building 18,West of Baiwangjiayuan, Haidian Beijing 100193 CN
(71)【出願人】
【識別番号】521206187
【氏名又は名称】王佳皓
【氏名又は名称原語表記】WANG, Jiahao
【住所又は居所原語表記】Room 102, Unit 2, Building 18,West of Baiwangjiayuan, Haidian Beijing 100193 CN
(71)【出願人】
【識別番号】521206198
【氏名又は名称】王佳▲フイ▼
【氏名又は名称原語表記】WANG, Jiahui
【住所又は居所原語表記】Room 102, Unit 2, Building 18,West of Baiwangjiayuan, Haidian Beijing 100193 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】王静然
(57)【要約】
アモルファス材料の分野に属するアモルファスストリップマスター合金およびその作製方法を提供する。当該作製方法は、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cを準備するステップと、前記アモルファス合金と前記セメンタイトFe3Cを製錬炉に置いて製錬処理を行うことにより、前記アモルファスストリップマスター合金を得るステップと、を含む。ここで、前記アモルファス合金を構成する元素は、Fe元素、Si元素、およびB元素を含む。原料としてアモルファス合金とセメンタイトFe3Cを使用して製錬することにより、アモルファス合金にセメンタイトFe3Cを添加し、本発明の実施例の望ましいアモルファスストリップマスター合金を形成することができ、セメンタイトが磁性を有するため、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を著しく向上させることができる。当該アモルファスストリップマスター合金がアモルファスストリップの作製に用いられる場合、同様にアモルファスストリップの磁気誘導強度を著しく向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス合金とセメンタイトFe
3Cを準備するステップと、
前記アモルファス合金と前記セメンタイトFe
3Cを製錬炉に置いて製錬処理を行うことにより、アモルファスストリップマスター合金を得るステップと、
を含み、
ここで、前記アモルファス合金を構成する元素は、Fe元素、Si元素、およびB元素を含む、
アモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項2】
前記方法は、さらに、
窒化物Fe
3Nを準備するステップと、
前記アモルファス合金、前記セメンタイトFe
3Cおよび前記窒化物Fe
3Nを製錬炉に置いて製錬処理を行うステップと、
含む、
請求項1に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項3】
前記アモルファス合金は、Fe-Si-B合金である、
請求項1または2に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項4】
前記アモルファス合金を構成する元素は、さらに、Cu元素、Nb元素、Ni元素のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項5】
前記アモルファス合金は、Fe-Si-B-Nb合金である、
請求項4に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項6】
前記アモルファス合金は、Fe-Ni-Si-B合金である、
請求項4に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項7】
前記アモルファス合金は、Fe-Cu-Nb-Si-B-Ni合金である、
請求項4に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項8】
前記アモルファス合金と前記セメンタイトFe
3Cとの質量比は、1:0.005~0.5である、
請求項4に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項9】
前記Fe-Si-B合金と前記セメンタイトFe
3Cとの質量比は、1:0.005~0.5である、
請求項3に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項10】
前記製錬処理の間の製錬温度は、1300℃~1500℃である、
請求項1に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項11】
セメンタイトFe
3C完成品または白鉄を使用することにより、前記セメンタイトFe
3Cを準備する、
請求項1に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項12】
白鉄とセメンタイトFe
3C完成品を同時に使用することにより、前記セメンタイトFe
3Cを準備する、
請求項1に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項13】
前記Fe-Si-B合金において、各元素の原子百分率は、それぞれ次のとおりであり、即ち、Siは6at%~12at%であり、Bは3at%~14at%であり、残りはFeである、
請求項3に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項14】
前記Fe-Si-B合金において、各元素の原子百分率は、それぞれ、Siは6at%~12at%であり、Bは8at%~14at%であり、残りはFeである、
請求項13に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項15】
前記アモルファス合金、前記セメンタイトFe
3C、および前記窒化物Fe
3Nは、粉末または塊状の形態である、
請求項2に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項16】
前記粉末の粒径は、ナノスケールである、
請求項15に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項17】
前記粉末の粒径は、5ナノメートル~50ナノメートルである、
請求項16に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項18】
前記アモルファス合金は、Fe-Si-B合金である、
請求項15に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項19】
前記Fe-Si-B合金の粉末は、次のステップで得られ、即ち、
鉄基アモルファス合金ストリップに対して、脆化、熱処理、機械的破砕、気流破砕を順次に行うことにより、前記Fe-Si-B合金の粉末を得る、
請求項18に記載のアモルファスストリップマスター合金の作製方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の作製方法により作製される、アモルファスストリップマスター合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年01月09日に提出された出願番号201910020121.5、発明の名称「アモルファスストリップマスター合金およびその作製方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本開示に援用する。
【0002】
本出願は、アモルファス材料の分野に関し、特にアモルファスストリップマスター合金およびその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
金属材料は、一般的に、結晶性材料とアモルファス材料を含み、アモルファス材料で作製された薄いリボン材料は、アモルファスストリップと呼ばれ、高強度、高硬度、高可塑性などの利点がある。アモルファスストリップを作製する際に使用されるアモルファス原料は、一般にアモルファスストリップマスター合金と呼ばれる。
【0004】
アモルファスストリップは、モーター、変圧器などの電気機器などの多くの分野で使用されることができる。しかし、アモルファスストリップの磁気誘導強度(B値とも呼ばれる)が高くなく、電気機器への適用が制限され、例えば、アモルファスストリップの使用量が多くなり、コストの増加に繋がる。
【0005】
従って、アモルファスストリップの磁気誘導強度を高めることは非常に重要であるが、アモルファスストリップの磁気誘導強度をどのように高めるかについては、これまで効果的な解決策が見つからなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の実施例では、アモルファスストリップの磁気誘導強度が低いという問題を解決するために使用できるアモルファスストリップマスター合金およびその作製方法を提供する。かかる技術案は、次のとおりである。
【0007】
具体的には、以下の技術案が含まれる。
【0008】
一側面によると、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cを準備するステップと、
【0009】
前記アモルファス合金と前記セメンタイトFe3Cを製錬炉に置いて製錬処理を行うことにより、前記アモルファスストリップマスター合金を得るステップと、
を含み、
【0010】
ここで、前記アモルファス合金を構成する元素は、Fe元素、Si元素、およびB元素を含む、
アモルファスストリップマスター合金の作製方法に関する。
【0011】
一実現可能な実施形態において、前記作製方法は、
【0012】
窒化物Fe3Nを準備するステップと、
【0013】
前記アモルファス合金、前記セメンタイトFe3Cおよび前記窒化物Fe3Nを製錬炉に置いて製錬処理を行うことと、
をさらに含む。
【0014】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金は、Fe-Si-B合金である。
【0015】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金を構成する元素は、Cu元素、Nb元素、Ni元素のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0016】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金は、Fe-Si-B-Nb合金である。
【0017】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金は、Fe-Ni-Si-B合金である。
【0018】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金は、Fe-Cu-Nb-Si-B-Ni合金である。
【0019】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金と前記セメンタイトFe3Cとの質量比は、1:0.005~0.5である。
【0020】
一実現可能な実施形態において、前記Fe-Si-B合金と前記セメンタイトFe3Cとの質量比は、1:0.005~0.5である。
【0021】
一実現可能な実施形態において、前記製錬処理を行う場合、製錬温度は、1300℃~1500℃である。
【0022】
一実現可能な実施形態において、セメンタイトFe3C完成品または白鉄を使用することにより、前記セメンタイトFe3Cを準備する。
【0023】
一実現可能な実施形態において、白鉄とセメンタイトFe3C完成品を同時に使用することにより、前記セメンタイトFe3Cを準備する。
【0024】
一実現可能な実施形態において、前記Fe-Si-B合金において、各元素の原子百分率は、それぞれ次のとおりであり、即ち、
【0025】
Siは6at%~12at%であり、Bは3at%~14at%であり、残りはFeである。
【0026】
一実現可能な実施形態において、前記Fe-Si-B合金において、各元素の原子百分率は、それぞれ次のとおりであり、即ち、
【0027】
Siは6at%~12at%であり、Bは8at%~14at%であり、残りはFeである。
【0028】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金、前記セメンタイトFe3C、および前記窒化物Fe3Nは、粉末または塊状の形態である。
【0029】
一実現可能な実施形態において、前記粉末の粒径は、ナノスケールである。
【0030】
一実現可能な実施形態において、前記粉末の粒径は、5ナノメートル~50ナノメートルである。
【0031】
一実現可能な実施形態において、前記アモルファス合金は、Fe-Si-B合金である。
【0032】
一実現可能な実施形態において、前記Fe-Si-B合金の粉末は、以下の方法で得られ、即ち、
【0033】
鉄基アモルファス合金ストリップに対して、熱処理、機械的破砕、気流破砕を順次に行うことにより、前記Fe-Si-B合金の粉末を得る。
【0034】
別の側面によると、本発明の実施例では、上記のいずれかの作製方法により作製されるアモルファスストリップマスター合金をさらに提供する。
【0035】
本出願の実施例に係る技術案による有益な効果は、少なくとも以下のことを含む。
【0036】
本出願の実施例によるアモルファスストリップマスター合金の作製方法では、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cを原料として共同で製錬し、製錬プロセスにおいて、アモルファス合金にセメンタイトFe3Cを添加して、本出願の実施例の望ましいアモルファスストリップマスター合金を形成することができ、セメンタイトFe3Cが磁性を有するため、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度(磁束密度またはB値とも呼ばれる)を著しく向上させることができる。当該アモルファスストリップマスター合金がアモルファスストリップの作製に用いられる場合、同様にアモルファスストリップの磁気誘導強度を著しく向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の技術的な態様と利点をより明確にするために、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0038】
一側面によると、本出願の実施例では、アモルファスストリップマスター合金の作製方法を提供し、当該作製方法は、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cを提供することと、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cを製錬炉に置いて製錬処理を行うことにより、アモルファスストリップマスター合金を得ることと、を含む。ここで、アモルファス合金を構成する元素は、Fe元素、Si元素、およびB元素を含む。
【0039】
本出願の実施例によるアモルファスストリップマスター合金の作製方法では、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cを原料として共同で製錬し、製錬プロセスにおいて、アモルファス合金にセメンタイトFe3Cを添加して、本出願の実施例の望ましいアモルファスストリップマスター合金を形成することができ、セメンタイトFe3Cが磁性を有するため、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度(磁束密度またはB値とも呼ばれる)を著しく向上させることができる。当該アモルファスストリップマスター合金がアモルファスストリップの作製に用いられる場合、同様にアモルファスストリップの磁気誘導強度を著しく向上させることができる。
【0040】
さらに、当該作製方法では、アモルファス合金、セメンタイトFe3Cおよび窒化物Fe3Nを製錬炉に置いて製錬処理を行うことをさらに含む。
【0041】
セメンタイトFe3Cと窒化物Fe3Nを併用することにより、アモルファス合金にセメンタイトFe3Cと窒化物Fe3Nを同時に添加することができ、作製されたアモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度をさらに向上させることができる。
【0042】
応用する場合に、アモルファス合金、セメンタイトFe3C、窒化物Fe3Nの質量比は、1:0.005~0.5:0.005~0.5であってもよい。
【0043】
一例として、当該アモルファス合金は、Fe-Si-B合金であってもよく、即ち、本出願の実施例によるアモルファスストリップマスター合金の作製方法は、Fe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを提供することと、Fe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを製錬炉に置いて製錬処理を行うことにより、アモルファスストリップマスター合金を得ることと、を含むことができる。
【0044】
原料としてFe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを使用して共同で製錬し、製錬プロセスにおいて、Fe-Si-B合金に磁性を有するセメンタイトFe3Cを添加することができ、製錬されたアモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を著しく向上させることができる。当該アモルファスストリップマスター合金がアモルファスストリップの作製に用いられる場合、同様にアモルファスストリップの磁気誘導強度を著しく向上させることができる。
【0045】
アモルファス合金がFe-Si-B合金である場合、上記の作製方法で作製されたアモルファスストリップマスター合金の化学式は、Fe-Si-B-Fe3Cであってもよいことが理解できる。
【0046】
本出願の実施例では、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を高める前提で、当該当該アモルファスストリップマスター合金によって作製されたアモルファスストリップが高強度、高硬度、高可塑性などの性能を有することを保証するために、Fe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cとの質量比を1:0.005~0.5とし、例を挙げると、1:0.005、1:0.01、1:0.05、1:0.1、1:0.15、1:0.2、1:0.25、1:0.3、1:0.35、1:0.4、1:0.45、1:05等であってもよい。
【0047】
ここで、使用されたFe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cは、いずれも本分野で一般的なものであり、Fe-Si-B合金については、各元素の原子百分率をそれぞれ以下のようにすることができ、即ち、Siは6at%~12at%であり、Bは3at%~14at%であり、残りはFeである。
【0048】
さらに、当該Fe-Si-B合金において、各元素の原子百分率は、それぞれ次のとおりであってもよく、即ち、Siは6at%~12at%であり、Bは8at%~14at%であり、残りはFeである。
【0049】
例を挙げると、本出願の実施例では、以下の原子百分率の各元素を含むFe-Si-B合金を提供することができ、即ち、Siは7at%であり、Bは8at%であり、残りはFeである。
【0050】
本出願の実施例では、以下の原子百分率の各元素を含むFe-Si-B合金をさらに提供することができ、即ち、Siは7at%であり、Bは9at%であり、残りはFeである。
【0051】
別の例では、アモルファス合金は、Fe元素、Si元素およびB元素を含む以外に、当該アモルファス合金を構成する元素は、Cu元素、Nb元素、Ni元素のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0052】
例を挙げると、当該アモルファス合金は、Fe-Si-B-Nb合金、Fe-Ni-Si-B合金、またはFe-Cu-Nb-Si-B-Ni合金を含むが、これらに限定されない。
【0053】
当該例におけるアモルファス合金については、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cとの質量比を1:0.005~0.5とすることにより、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を高める前提で、当該アモルファスストリップマスター合金によって作製されたアモルファスストリップが高強度、高硬度、高可塑性などの性能を有することが保証される。例を挙げると、アモルファス合金とセメンタイトFe3Cとの質量比は、1:0.005、1:0.01、1:0.05、1:0.1、1:0.15、1:0.2、1:0.25、1:0.3、1:0.35、1:0.4、1:0.45、1:05等であってもよい。
【0054】
セメンタイトFe3C完成品を使用することにより、セメンタイトFe3Cを提供してもよく、また白鉄を使用することにより、セメンタイトFe3Cを提供してもよく、白鉄には大量のセメンタイトFe3Cが含まれ、コストも低いので、優れた選択肢として使用できる。もちろん、白鉄とセメンタイトFe3C完成品を同時に使用することにより、セメンタイトFe3Cを提供してもよい。応用する場合に、白鉄および/またはセメンタイトFe3C完成品とFe-Si-B合金を製錬炉に置いて製錬する。
【0055】
本出願の実施例では、再溶融プロセスにおいて、セメンタイトFe3Cを添加することができ、例えば、Fe-Si-B合金が投入された製錬炉にセメンタイトFe3Cを添加する。
【0056】
アモルファス合金については、既製品(例えば、従来のFe-Si-B合金完成品、または鉄基アモルファスストリップ)を使用してもよく、製錬の時に作製してもよい。Fe-Si-B合金を例に挙げると、結晶シリコン、ホウ素、鉄を製錬炉で直接溶融することにより、Fe-Si-B合金を得ることができる。
【0057】
結晶シリコン、ホウ素、鉄を直接溶融することによりFe-Si-B合金を作製するプロセスにおいて、セメンタイトFe3Cを添加することにより、アモルファスストリップマスター合金を作製することができる。
【0058】
ここで、上記の例で添加されたセメンタイトFe3Cについては、セメンタイトFe3C完成品および/または白鋳鉄を含むことができる。
【0059】
製錬プロセスにおいて、Fe-Si-B合金、セメンタイトFe3Cおよび選択可能な窒化物Fe3Nは、粉末状の形態であってもよく、塊状の形態であってもよい。
【0060】
形成されたアモルファスストリップマスター合金の成分をより均一にするために、本出願の実施例では、例えばFe-Si-B合金およびセメンタイトFe3Cのようなアモルファス合金を粉末の形態とすることができる。そして、当該粉末の粒径をナノスケールに制御でき、例えば5ナノメートルから50ナノメートルの間に制御でき、例を挙げると、10ナノメートル、15ナノメートル、20ナノメートル、25ナノメートル、30ナノメートル、35ナノメートル、40ナノメートル、45ナノメートル等であってもよい。
【0061】
Fe-Si-B合金の粉末は、超微結晶合金粉末またはナノ結晶粉末とも呼ばれ、セメンタイトFe3Cの粉末とともに本分野で一般的な破砕方法によって得られることができる。
【0062】
Fe-Si-B合金の粉末を例に挙げると、以下の方法で得られ、即ち、
【0063】
鉄基アモルファス合金ストリップに対して、脆化、熱処理、機械的破砕、気流破砕を順次に行うことにより、Fe-Si-B合金の粉末を得る。
【0064】
製錬処理プロセスにおいて、上記アモルファス合金に対してより良い製錬効果を得るために、製錬温度を1300℃~1500℃(例えば1300℃、1350℃、1400℃、1450℃、1500℃など)に制御する。
【0065】
製錬時間は、アモルファス合金およびセメンタイトの量に応じて決定され、12時間から24時間などであってもよい。
【0066】
別の側面によると、本出願の実施例では、アモルファスストリップマスター合金を提供し、当該アモルファスストリップマスター合金は、上記のいずれかの作製方法で作製される。
【0067】
本出願の実施例によるアモルファスストリップマスター合金は、アモルファス合金へのセメンタイトFe3Cの添加に基づいて得られ、セメンタイトFe3Cが磁性を有するため、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度(磁束密度またはB値とも呼ばれる)を著しく向上させることができる。当該アモルファスストリップマスター合金がアモルファスストリップの作製に用いられる場合、同様にアモルファスストリップの磁気誘導強度を著しく向上させることができる。
【0068】
一例として、当該アモルファス合金は、Fe-Si-B合金、Fe-Si-B-Nb合金、Fe-Ni-Si-B合金、Fe-Cu-Nb-Si-B-Ni合金等を含むが、これらに限定されない。
【0069】
本出願の実施例によるアモルファスストリップマスター合金は、磁気誘導強度の高いアモルファスストリップを作製するために使用されることができる。
【0070】
本出願の実施例によるアモルファスストリップマスター合金を用いてアモルファスストリップを作製する場合に、ストリップを吹き付ける前に一定の量のセメンタイトFe3Cを添加して再溶融することも可能であり、且つ再溶融温度を1300℃~1400℃の間に制御することで、アモルファスストリップの磁気誘導強度の向上により有利である。
【0071】
本出願の実施例に係る方法では、アモルファス合金は、鉄基アモルファス合金であってもよく、同様に鉄ニッケル基アモルファス合金、コバルト基アモルファス合金にも適し、即ち、鉄ニッケル基アモルファス合金またはコバルト基アモルファス合金を一定の割合のセメンタイトFe3C、および選択可能な窒化物Fe3Nとともに製錬し、対応するマスター合金を得ることができる。
【0072】
以下では、本出願について具体的な例によってさらに説明することができる。
【0073】
一例では、Fe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを質量比1:0.05で製錬炉に置いて製錬処理を行い、製錬温度を1400℃とすることにより、アモルファスストリップマスター合金を得る。ここで、使用されたFe-Si-B合金は、以下の原子百分率の元素を含み、即ち、Siは9at%であり、Bは13at%であり、残りはFeである。
【0074】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を測定し、測定結果から、当該アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度が1.74Tであることが示された。
【0075】
別の例では、Fe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを質量比1:0.06で製錬炉に置いて製錬処理を行い、製錬温度を1450℃とすることにより、アモルファスストリップマスター合金を得る。ここで、使用されたFe-Si-B合金は、以下の原子百分率の元素を含み、即ち、Siは10at%であり、Bは10at%であり、残りはFeである。
【0076】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を測定し、測定結果から、当該アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度が1.78Tであることが示された。
【0077】
さらに別の例では、Fe-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを質量比1:0.08で製錬炉に置いて製錬処理を行い、製錬温度を1500℃とすることにより、アモルファスストリップマスター合金を得る。ここで、使用されたFe-Si-B合金は、以下の原子百分率の元素を含み、即ち、Siは9at%であり、Bは13at%であり、残りはFeである。
【0078】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を測定し、測定結果から、当該アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度が1.82Tであることが示された。
【0079】
さらに別の例では、Fe-Cu-Nb-Si-B-Ni合金とセメンタイトFe3Cを質量比1:0.1で製錬炉に置いて製錬処理を行い、製錬温度を1500℃とすることにより、アモルファスストリップマスター合金を得る。ここで、使用されたFe-Cu-Nb-Si-B-Ni合金は、以下の原子百分率の元素を含み、即ち、Siは9at%であり、Bは13at%であり、Cuは3at%であり、Nbは2at%であり、Niは1at%であり、残りはFeである。
【0080】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を測定し、測定結果から、当該アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度が1.80Tであることが示された。
【0081】
さらに別の例では、Fe-Ni-Si-B合金とセメンタイトFe3Cを質量比1:0.1で製錬炉に置いて製錬処理を行い、製錬温度を1500℃とすることにより、アモルファスストリップマスター合金を得る。ここで、使用されたFe-Ni-Si-B合金は、以下の原子百分率の元素を含み、即ち、Siは9at%であり、Bは13at%であり、Niは5at%であり、残りはFeである。
【0082】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度を測定し、測定結果から、当該アモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度が1.81Tであることが示された。
【0083】
上記の具体的な例から分かるように、本出願の実施例による作製方法で作製されたアモルファスストリップマスター合金の磁気誘導強度が著しく向上する。
【0084】
上記は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願を限定するものではなく、本出願の精神および原則の範囲内で行われたいかなる修正、均等置換、改善などは、本出願の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】