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特表2022-517013検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/14 20060101AFI20220224BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20220224BHJP
   F01D 25/34 20060101ALI20220224BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G01M15/14
F01D25/00 X
F01D25/00 F
F01D25/34
F02C7/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540290
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019087156
(87)【国際公開番号】W WO2020148081
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】102019100823.9
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503371373
【氏名又は名称】ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,ヤン オケ
(72)【発明者】
【氏名】ティース,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ポット,ヨハン
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087AA04
2G087BB40
2G087DD01
(57)【要約】
本発明は、検査目的でジェットエンジン(80)のシャフト(81)を駆動するための装置(1)に関する。一実施形態では、装置(1)は、シャフトとの共回転部(11)を有する駆動ユニット(10)を備え、駆動ユニット(10)の共回転部(11)は、シャフト(81)のスピナー(82)に対して当たるように設計されており、少なくとも1つのストラップ(13)を用いてシャフト(81)に配置された1つ以上のファンブレード(83)に非回転的な態様で固定されている。他の実施形態では、シャフト(81)上に配置されたジェットエンジン(80)のファンブレード(83)に駆動ユニット(10)を取り外し可能かつ非破壊的に固定するためのクランプ要素(18)と、駆動ユニット(10)によって駆動される摩擦ホイール(19)とを有する記駆動ユニット(10)を備え、摩擦ホイールは、ジェットエンジン(80)のハウジング(84)に対して当たるように設計されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査目的でジェットエンジン(80)のシャフト(81)を駆動するための装置(1)であって、
前記シャフトとの共回転部(11)を有する駆動ユニット(10)を備え、
前記駆動ユニット(10)の前記共回転部(11)は、前記シャフト(81)のスピナー(82)に対して当たるように設計されており、少なくとも1つのストラップ(13)を用いて前記シャフト(81)に配置された1つ以上のファンブレード(83)に非回転的な態様で固定されている、装置。
【請求項2】
前記駆動ユニット(10)の非共回転部(12)は、前記ジェットエンジン(80)のハウジング(84)に支持されるための連結アセンブリ(15)、好ましくは伸縮式連結アセンブリを有していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動ユニットの非共回転部(12)には、釣合重り(17)用の延長アーム(16)が設けられており、前記釣合重りは、前記シャフト(81)にトルクを加えるのに適していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのストラップ(13)は、一端で前記駆動ユニット(10)の前記共回転部(11)に固定可能であり、他端で前記ファンブレード(83)に引っ掛けるためのフック要素(14)を有していることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのストラップ(13)は両端で前記駆動ユニット(10)の前記共回転部(11)に固定可能であり、前記ストラップ(13)の一端は前記駆動ユニットに好ましくは固定して接続されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記スピナー(82)と対向するように設けられた前記駆動ユニット(10)の前記共回転部(11)の接触面には、グリップ性を向上させる表面コーティングが施されているか、または、前記駆動ユニット(10)の前記共回転部(11)と前記スピナー(82)との間に配置可能なグリップ性を向上させる要素(20)が設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(1)は、前記駆動ユニット(10)の非共回転部(12)に対する前記駆動ユニット(10)の前記共回転部(11)の角度を検出するための角度送信器を有し、
好ましくは、前記駆動ユニット(10)を介して所定の角度位置に近づくように設計された制御ユニット(30)が設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
検査目的でジェットエンジン(80)のシャフト(81)を駆動するための装置(1)であって、
前記シャフト(81)上に配置された前記ジェットエンジン(80)のファンブレード(83)に駆動ユニット(10)を取り外し可能かつ非破壊的に固定するためのクランプ要素(18)と、前記駆動ユニット(10)によって駆動される摩擦ホイール(19)とを有する前記駆動ユニット(10)を備え、
前記摩擦ホイールは、前記ジェットエンジン(80)のハウジング(84)に対して当たるように設計されている、装置。
【請求項9】
前記クランプ要素(18)は三角形に配置された3つのポイントクランプで構成されており、その2つのクランプジョーは好ましくはU字部の反対側に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記摩擦ホイール(19)を前記ジェットエンジン(80)の前記ハウジング(84)に押し付けるためのバネ要素(24)が設けられていることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記バネ要素(24)は、圧縮された状態で選択的に固定され、無負荷での取り付けが可能である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記クランプ要素(18)と前記バネ要素との間に、前記クランプ要素(18)と前記バネ要素との相対的な位置を調整するためのロック可能なボールジョイントが設けられていることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置(1)は、外部電源を接続するためのカップリングを備えていることを特徴とする、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置(1)は、鉛直方向に対する前記駆動ユニット(10)の角度を決定するための角度送信器を備えており、好ましくは、前記駆動ユニット(10)を介して所定の角度位置に近づくように構成された制御ユニット(30)が設けられていることを特徴とする、請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のジェットエンジンは、技術的な安全要件に準拠していることを確認し、損傷を早期に特定するために、定期的な検査を受ける必要がある。特に翼上検査では、技術者が直接またはボアスコープを使用してジェットエンジンの内部を調べることができるように、ジェットエンジンの側方のフラップを開いたり、個々のコンポーネントを取り外したりする。
【0003】
ジェットエンジンの回転部を検査するために、ジェットエンジンに設けられた検査口を、またはジェットエンジンに挿入されたボアスコープを、ジェットエンジンの回転部の全周が検査口またはボアスコープの視野範囲を順次通過するように案内することもこの技術分野では知られている。もちろん、ジェットエンジンの回転部を、その回転部の所定の部分が検査口またはボアスコープを通して検査できるように移動させることもあり得る。
【0004】
ファンブレードおよび少なくとも1つの低圧タービン段を備えるジェットエンジンの回転部を検査するためには、通常2人の技術者を要する。1人の技術者はボアスコープを使用して問題となっている個々のタービンブレードを1つずつ検査し、もう1人の技術者は非回転的に接続されたファンブレードを回転させることにより、ボアスコープを通過するように個々のタービンブレードを案内する。この不利な点は、労働力となる2人のメンバーが前述のタービンブレードを検査する際に拘束されることである。
【発明の概要】
【0005】
本発明によって解決される課題は、従来技術で知られている不利な点を回避または少なくとも軽減できる装置を作ることである。
【0006】
この課題は、主請求項および並列の請求項8に記載の装置によって解決される。有利な発展は、従属請求項の主題となっている。
【0007】
その結果、本発明は、検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための装置であって、前記シャフトとの共回転部を有する駆動ユニットを備え、前記駆動ユニットの前記共回転部は、前記シャフトのスピナーに対して当たるように設計されており、少なくとも1つのストラップを用いて前記シャフトに配置された1つ以上のファンブレードに非回転的な態様で固定されている、装置に関する。
【0008】
さらに、本発明は、検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための装置であって、前記シャフト上に配置された前記ジェットエンジンのファンブレードに駆動ユニットを取り外し可能かつ非破壊的に固定するためのクランプ要素と、前記駆動ユニットによって駆動される摩擦ホイールとを有する前記駆動ユニットを備え、前記摩擦ホイールは、前記ジェットエンジンのハウジングに対して当たるように設計されている、装置に関する。
【0009】
本発明が認めることには、エンジンのファンブレードがシャフト上に配置されているジェットエンジンのシャフトの回転を適切な装置によって達成できる。シャフトを回転させることにより、直接またはギア機構を介して接続されたジェットエンジンのコンポーネント、例えば低圧タービン段のタービンブレードが回転される。これにより、説明したように、問題のコンポーネントを検査できる。この場合、本発明の基礎となるノウハウは、従来技術に勝る実質的な利点を提供するために、適切な装置が便利で操作が容易でなければならない。これはまさに、本発明に係る装置によって達成されるものである。
【0010】
本発明に関連して使用されるいくつかの用語をまず説明する。
【0011】
「ジェットエンジン」とは、ガスタービンの原理に基づく航空機エンジンを指す。特に、この用語は、実際のガスタービンが外部気流に囲まれ、外部気流が複数のファンブレードを有するエンジンのファンによって加速されるターボファンを包含する。ファンは、ケースに入れられていてもよいし、オープンローター設計であってもよい。また、ターボプロップは、本発明の意味の範囲内のジェットエンジンであり、プロペラの個々のブレードは、明確性の観点から本発明に関して同様にファンブレードともいう。
【0012】
「ストラップ」という用語は広く解釈されるべきである。それは、本発明に係る装置で使用されるのに十分に柔軟な任意の種類のベルトおよびロープを含む。
【0013】
「スピナー」とは、エンジン吸気口でのジェットエンジンのシャフトの流線型ケーシングを指す。
【0014】
第1実施形態では、本発明に係る装置は、ジェットエンジンのシャフトとの共回転部と非共回転部とに分割された駆動ユニットを備える。この場合の駆動ユニットは、当該2つの部分が相対的に駆動され得るように構成され、その結果、当該2つの部分の間で相対的な回転運動が発生する。
【0015】
駆動ユニットの共回転部は、スピナーに対して当たるように設計されている。装置が特定の種類のジェットエンジン用に設計されている場合、駆動ユニットの共回転部は、ジェットエンジンのスピナーの形状に適合した雌型形状を有し得る。そのため、装置の形状適合取付が可能になる。本発明に係る装置が異なる種類のジェットエンジンに使用できる場合、駆動ユニットの共回転部は、可能な限り多くの異なる種類のジェットエンジンへの取り付けを実現できる態様で、構成および/または調整可能な1つ以上のより小さな接触面を示し得る。
【0016】
駆動ユニットの共回転部は、1つ以上のファンブレードに非回転的な態様で固定される。換言すれば、共回転部は、駆動ユニットの共回転部とジェットエンジンのシャフトとの間に実質的に相対的な回転運動が生じないように、ジェットエンジンのシャフトに固定される。
【0017】
対応する固定は、少なくとも1つのストラップが、一端で共回転部に固定できるかまたは直接固定され、他端でファンブレードに引っ掛けるためのフック要素を有するときに生じ得る。ストラップは、フック要素を使用してファンブレードの後端に引っ掛けることができ、それによって所望の非回転的な固定においてストラップに生じる引張力を吸収できる。
【0018】
代替的には、少なくとも1つのストラップが、両端で駆動ユニットの共回転部に固定され得る。この場合、ストラップの一端を駆動ユニットに固定して接続することが好ましく、これはストラップの他端のみが自由端になることを意味する。
【0019】
ストラップは、ファンブレードの周りに案内され、その両端で駆動ユニットの共回転部に固定されてもよい。ここでも、駆動ユニットの共回転部の非回転的な固定が生じる。
【0020】
個々の場合には1本のストラップで固定するだけで十分であるが、駆動ユニットの共回転部を回転させずに固定するためには、2本、3本、または4本のストラップを用意することが好ましい。原則として、確実な非回転的な固定は、対応する数のストラップによって達成でき、同時に、本発明に係る装置をジェットエンジンに固定するコストは十分に低く保たれる。ストラップを駆動ユニットの共回転部に取り外し可能に固定できるように、例えばストラップの目と係合するためのフックを駆動ユニットに設けてもよい。
【0021】
特に、原理的には、単純にストラップを介して、即ち駆動ユニットの共回転部とファンブレードとの間で複数のストラップを適切に配置することにより、本発明が達成されるのに十分非回転的なジェットエンジンのシャフトに対する駆動ユニットの共回転部の固定を実現できる。ただし、好ましくは、駆動ユニットの共回転部の接触面は、スピナーに対して当たるように設けられ、グリップ性を改善する表面コーティングが施されている。このようにして、駆動ユニットの共回転部と非回転的な固定を促進するスピナーとの間の静止摩擦を増加させることができ、静止摩擦に関連する軸方向の力は主にストラップを介して達成される。代替的には、例えばスピナー上に取り付けることができるキャップの形態のグリップ性を改善する要素を、駆動ユニットの共回転部とスピナーとの間に設けてもよい。グリップ性を向上させる表面コーティングやグリップ性を向上させる要素は、例えばエラストマーで作られてもよく、ゴムベースであることが好ましい。
【0022】
本発明に係る装置、特に駆動ユニットが最終的にジェットエンジンのシャフトの回転につながるトルクを加えることができるように、駆動ユニットの非共回転部は、静止していることが必要であり、即ち、移動できないか、または少なくとも適切な反トルクを加えることができる必要がある。
【0023】
第1変形例において提供されるのは、駆動ユニットの非共回転部が、ジェットエンジンのハウジングに対して支持されるための連結アセンブリ、好ましくは伸縮式連結アセンブリを有することである。対応する連結アセンブリを介して、駆動ユニットの非共回転部は、静止態様で、とりわけジェットエンジンのハウジングに関して非回転的な態様で固定できる。駆動ユニットの当該2つの部分が相対的に回転すると、ジェットエンジンのシャフトがすぐに回転することとなる。
【0024】
この場合の連結アセンブリは、駆動ユニットに固定して接続できる。しかしながら、連結アセンブリは、取り外し可能な態様で駆動ユニットに固定可能であることが好ましい。次に、本発明に係る装置は、比較的小さなサイズで通常組み立てることができ、その結果、装置の輸送がより容易になる。また、連結アセンブリが標準部品で構成されている限り、装置の遠隔展開では、必要に応じて少なくとも1つのストラップを使用し、駆動ユニットのみを輸送し、現場で対応する標準部品を利用して連結アセンブリを構成してもよい。
【0025】
代替的な変形例では、シャフトにトルクを加えるのに適した釣合重り用の延長アームが、駆動ユニットの非共回転部に設けられる。例えば、対応する釣合重りを延長アームの自由端に固定でき、その結果、延長アームが鉛直方向から傾くたびに、ジェットエンジンのシャフトに作用するトルクが生成される。また、中央に取り付けられたクロスバーの両端に延長アームとして2つの釣合重りを設けてもよく、その結果、延長アームが水平方向から外れると、ジェットエンジンのシャフトにトルクが発生する。もちろん、延長アームおよび釣合重りについて他の設計変形例も考えられる。しかしながら、延長アームが最終的にどのように具体化されるかに関係なく、実際上、延長アームの傾き(偏角)は、原則として、駆動ユニットの当該2つの部分の互いに対する回転によって、およびジェットエンジンのシャフトの慣性モーメントによって達成される。
【0026】
釣合重りは、装置の不可欠なコンポーネントであり得る。ただし、釣合重りは、装置が展開される場所にすでに存在する重りまたは他の質量体を釣合重りとして使用できるように、設計において交換可能とすることが好ましい。また、釣合重りを液体の入れ物として、例えば液体バッグとして構成してもよく、最終的に必要な質量は入れ物に水などの液体を選択的に充填することによって達成される。
【0027】
装置は、駆動ユニットの非共回転部に対する駆動ユニットの共回転部の角度を検出するための角度送信機を有することが好ましい。さらに、駆動ユニットを介して所定の角度位置に近づくように設計された制御ユニットが設けられてもよい。換言すれば、制御ユニットは、所定の角度位置を受信し、ジェットエンジンのシャフトの対応する回転とそれに続く繰り返しの減速によって制御ユニットが所定の角度位置に近づくように設計される。この制御ユニットおよび/または追加的な制御ユニットは、延長アームを備えた変形例の場合に延長アームを使用して延長アームの適切な傾き(偏角)によって発生する可能性のある回転振動を減衰させるようにさらに設計されることが好ましい。
【0028】
第2実施形態では、検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための本発明に係る装置は、ジェットエンジンのファンブレードに駆動ユニットを取り外し可能かつ非破壊的に固定するためのクランプ要素と、駆動ユニットによって駆動される摩擦ホイールとを有する駆動ユニットを備え、当該摩擦ホイールは、ジェットエンジンのハウジングに対して当たるように設計されている。この実施形態の駆動ユニットは、シャフト上に配置されたファンブレードに非回転的に固定され、ジェットエンジンのハウジングに沿って走る摩擦ホイールを駆動するということにおいてシャフトの所望の回転を可能にする。
【0029】
クランプ要素は、好ましくは、三角形に配置されたポイントクランプを含む。ポイントクランプの2つのクランプジョーは、例えば、U字部の反対側にそれぞれ配置され得る。対応する実施形態を介して、クランプ要素は、任意のファンブレードの形状にランダムに適合させることができ、結果として、この装置は非常に多様な適用性を持つことになる。対応するクランプ要素を使用すると、装置をファンブレードの入口端に固定するだけで十分である。これは、追加の固定用のコンポーネント、たとえばファンブレードの後端に係合するコンポーネントが不要になることを意味する。少なくとも1つポイントクランプが両側にて調整可能なクランプジョーを有している場合、多様性をさらに高めることができる。
【0030】
摩擦ホイールとジェットエンジンのハウジングとの間での十分な接触のために、バネ要素を使用して摩擦ホイールがハウジングに押し付けられてもよい。この場合、クランプ要素とバネ要素との間にロック可能なボールジョイントを設けることが好ましく、ボールジョイントにより、クランプ要素とバネ要素との相対位置を調整できる。このようにして、バネ要素によって達成される、摩擦ホイールとジェットエンジンのハウジングとの間の接触での接触圧力の方向を調整できる。
【0031】
さらに、バネ要素は、圧縮された状態で選択的に固定されることが好ましく、これにより装置を無負荷で取り付けることができる。取り付けが完了すると、固定具を取り外すことができるようにしてもよく、その結果、バネ要素が緩み、摩擦ホイールがジェットエンジンのハウジングに押し付けられる。また、これに代えてまたはこれに加えて、バネ要素は、バネ力を調整可能であってもよい。
【0032】
また、装置は、外部電源を接続するためのカップリングを備えていることが好ましい。本発明に係る装置を使用する場合、原則として、電源として使用できるエンジンの近くに電源接続があると想定されるべきである。これは、装置が独自のエネルギー貯蔵装置を必要とせず、それに応じてより軽量な設計とすることができることを意味する。しかしながら、もちろん、カップリングを介して外部の携帯エネルギー貯蔵装置を介して装置に電気エネルギーを供給してもよい。カップリングは、クランプ要素に関して回転可能であることが好ましく、これは、例えば、スリップリング配置の助けを借りて達成可能である。これにより、カップリングに接続されたケーブルが、装置の使用時に、ねじれたり、キンクしたりするのを防ぐ。
【0033】
装置は、鉛直方向に対する駆動ユニットの角度を決定するための角度送信機を有することが好ましい。さらに、駆動ユニットを介して所定の角度位置に近づくように構成された制御ユニットが設けられてもよい。換言すれば、制御ユニットは、駆動ユニットの適切な制御を通じて、所定の角度位置を調整するように設計される。この場合の角度位置は、最初は鉛直方向に対する装置の角度に関連するが、ジェットエンジンのシャフトの他の所定の角度位置に簡単に変換できる。多くの場合、これに必要なのは、一定の差分を追加することだけである。
【0034】
最終的な形態に関係なく、本発明は、検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動するための装置を提供し、これは、使いやすく、複雑さの程度が低いために費用対効果の高い方法で製造できる。この場合、この装置により、検査目的でジェットエンジンのシャフトを駆動でき、最終的にシャフトを回転させるために2人目の技術者を配置する必要がなくなる。代わりに、従来技術では通常2人の技術者を必要としていた低圧タービンのタービンブレードの検査を、1人の技術者が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る装置の第1の例示的な実施形態を示す。
図2a】本発明に係る装置の第2の例示的な実施形態を示す。
図2b】本発明に係る装置の第2の例示的な実施形態を示す。
図3】本発明に係る装置の第3の例示的な実施形態を示す。
図4】本発明に係る装置の第4の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本発明は、有利な実施形態の助けを借りて、添付の図面を参照して例として説明される
【0037】
図1は、本発明に係る装置1の第1の例示的な実施形態を示している。
【0038】
装置1は、ジェットエンジン80のシャフト81を駆動するように設計されており、スピナー82は外側から視認できるジェットエンジン80のノーズコーンであり、ファンブレード83がジェットエンジン80に非回転的な態様で固定されている。
【0039】
装置1は、相対的に回転可能な2つの部分11,12を有する駆動ユニット10を備え、一方の部分11はジェットエンジン80のシャフト81と共回転し、他方の部分12は共回転しない。
【0040】
共回転部11は、シャフト81のスピナー82に対して当たるように設計されており、このためにスピナー82の形状に適合した雌型形状の座面を有する。この座面とスピナー82との間のグリップ性を改善するために、スピナー82上に取り付けることができるゴム状のエラストマーからなるキャップの形態のグリップ性を改善する要素20が、駆動ユニット10の共回転部11とスピナー82との間に設けられている。
【0041】
駆動ユニット10または駆動ユニット10の共回転部11は、一端で共回転部11に固定して接続された緊密に張力がかけられたストラップ13を介して固定され、他端でジェットエンジン80の個々のファンブレード83の後端で係合するフック要素14を有する。したがって、ストラップ13およびグリップ性を改善する要素20を介して駆動ユニット10の共回転部11とジェットエンジン80のシャフト81との間に回転固定の接続が形成される。
【0042】
駆動ユニット10の非共回転部12は、伸縮式連結アセンブリ15を介してジェットエンジンのハウジング84の内側でハウジング84に対して静止するように支持される。換言すれば、駆動ユニット10の非共回転部12は、ハウジング84に関して並進自由度も回転自由度も持たない。駆動ユニット10の両方の部分11,12を相対的に回転させることにより、ジェットエンジン80のシャフト81の回転が達成される。
【0043】
シャフト81の回転運動を制御するために、駆動ユニット10を制御できる制御ユニット30が設けられている。この場合、制御ユニット30は、駆動ユニット10(図示せず)に配置された角度送信機から、駆動ユニット10の両方の部分11,12の互いに対する角度位置に関する情報を受信し、その情報は、必要に応じて所定の差分を考慮して制御ユニット30のディスプレイ31に表示される。また、駆動ユニット10の2つの部分11,12の相互の角度位置を指定してもよく、または制御ダイヤル32による制御ユニット30上でのジェットエンジン80のシャフト81の所定の一定の差分を考慮してもよく、制御ユニット30は、この角度位置を達成するために駆動ユニット10を適切に制御するように設計されている。
【0044】
図2は、本発明に係る装置1の第2の例示的な実施形態を示している。この装置1もまた、相対的に回転可能な2つの部分11,12を有する駆動ユニット10を備え、一方の部分11がジェットエンジン80のシャフト81に対して共回転するが、他方の部分12は共回転しない。
【0045】
駆動ユニット10の共回転部11の基本設計と、共回転部11とスピナー82との間に配置された要素20とについても、図1の対応する実施形態を参照するものとする。
【0046】
図2を参照して、装置1の場合、駆動ユニット10の共回転部11もまたストラップ13によって固定されている。これらのストラップ13は、図示のように、ジェットエンジン80の個々のファンブレード83の周りに流線型の態様でそれらを配置できるように、一端で固定的に、他端で取り外し可能に、問題の駆動ユニット10の部分11に接続されている。図1に関連してすでに説明したように、緊密に張力をかけられたストラップ13によって、駆動ユニット10の共回転部11とジェットエンジン80のシャフト81との間で非回転的な接続が達成される。
【0047】
駆動ユニット10の非共回転部12には、延長アーム16が設けられており、延長アーム16の自由端には釣合重り17が固定されている。延長アーム16は、例示的な実施形態では実際のアームとして図示されている。しかしながら、例えば、釣合重り17が回転軸の反対側でハウジングに直接固定されるという点で、延長アーム16が駆動ユニット10の非共回転部12のハウジングによって直接形成されてもよい。
【0048】
延長アーム16を鉛直方向から傾ける(偏角)ことにより、ジェットエンジン80のシャフト81にトルクを加えることができる。これは、最終的にシャフト81の所望の回転につながる。当該偏角は、駆動ユニット10の2つの部分11,12の相対的な回転を通じて達成できる。ここでは、共回転部11が非回転的な方法で固定されているジェットエンジン80のシャフト81の慣性が利用される。
【0049】
制御装置30は、図1と同様に構成されているため、対応する参照符号が付されている。前述の角度送信機とは別に、制御装置30はまた、鉛直方向に対する延長アーム16の角度位置に関する追加情報を受信する。ジェットエンジン80のシャフト81の角度位置は、この情報から計算でき、結果として制御することもできる。さらに、角度位置に関する前述の情報は、例えば、シャフト81の回転運動の制動中に発生する可能性のある任意の回転振動を減衰させることを可能にする。対応する減衰は、延長アーム16がそれに応じて反対方向に制御されるという点で、制御装置30によって直接制御される。
【0050】
図3に示すのは、ジェットエンジン80のシャフト81を駆動するための本発明に係る他の装置1であり、そのスピナー82は外側から視認できるジェットエンジン80のノーズコーンである。
【0051】
装置1は、取り外し可能かつ非破壊的な方法でファンブレード83の自由端に固定できるクランプ要素18を有する駆動ユニット10を備える。代替的には、クランプ要素18はまた、2つの隣接するファンブレード83の間をクランプするように構成されてもよい。
【0052】
さらに、駆動ユニット10は、内部にあるため視認できないバネ要素によってジェットエンジンのハウジング84の内側に押し付けられる摩擦ホイール19を備える。摩擦ホイール18を駆動することにより、ファンブレード83およびファンブレード83に非回転的な態様で接続されたシャフト81の回転が達成される。
【0053】
駆動ユニット10は、鉛直方向に対する駆動ユニット10の角度位置を与える角度送信機(図示せず)を備える。この情報は、駆動ユニットを制御するために、図1,2に関連して説明されたような制御ユニット30によって使用され得る。
【0054】
図4は、図3の装置と原理的に同様の方法で使用される本発明に係る装置1の第4の例示的な実施形態を示しており、ここではこの点での使用に関するコメントおよび特別なもののみを参照する。図4による装置1の構造の特徴を以下に示す。
【0055】
装置1をファンブレード83の入力端に固定できるクランプ要素18は三角形に配置された3つのポイントクランプ21からなり、そのクランプジョー22はU字部23の反対側にそれぞれ配置されている。
【0056】
クランプ要素18と摩擦ホイール19との間にはバネ要素24が設けられており、装置1を使用するときに摩擦ホイール19をジェットエンジン80のハウジング84に押し付けることができる。この場合の押圧力の方向を調整できるようにするために、クランプ要素18とバネ要素24との間にはロック可能なボールジョイント25が設けられる。このボールジョイント25を使用して、バネ要素24および摩擦ホイール19はクランプ要素18に対して傾斜させることができ、これによりジェットエンジン80のハウジング84に対する摩擦ホイール19の接触力の方向を調整できる。
【0057】
負荷力なしでの装置1の取り付けを容易にするために、バネ要素24は割りピンの形の固定部24’を有する。バネ要素24が手動で圧縮されると、固定部24’がバネ要素24の適切な開口部を通過し、固定部24’が再び引き出されるまでバネ要素24は圧縮されたままである。装置1は、固定されたバネ要素24の場合、負荷力なしで取り付けることができる。使用に必要なジェットエンジン80のハウジング84に対する摩擦ホイール19の接触力は、固定部24’が引き抜かれた後に達成される。
【0058】
装置1はさらに、摩擦ホイール19の駆動ユニット27に電気エネルギーを供給するための内部ケーブルを有するケーブルガイド26と、内部のために視認できない角度送信機のためのデータラインとを備える。ケーブルガイド26の自由端において、スリップリング機構28は、外部電源および外部データラインの接続のためにその上に直接配置されたカップリング29を備えている。スリップリング機構28により、外部電源および/または制御ユニットを使用してデバイスを操作することが可能となる。これにより、装置1自体を容易かつ効果的に取り扱うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 装置
10 駆動ユニット
11 共回転部(部分)
12 非共回転部(部分)
13 ストラップ
14 フック要素
15 連結アセンブリ(伸縮式連結アセンブリ)
16 延長アーム
17 釣合重り
18 クランプ要素
19 摩擦ホイール
20 要素
21 ポイントクランプ
22 クランプジョー
23 U字部
24 バネ要素
24’ 固定部
25 ボールジョイント
26 ケーブルガイド
27 駆動ユニット
28 スリップリング機構
29 カップリング
30 制御装置(制御ユニット)
31 ディスプレイ
32 制御ダイヤル
80 ジェットエンジン
81 シャフト
82 スピナー
83 ファンブレード
84 ハウジング
図1
図2a
図2b
図3
図4
【国際調査報告】