(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(54)【発明の名称】分光光度計
(51)【国際特許分類】
G01J 3/02 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
G01J3/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540830
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 BY2020000001
(87)【国際公開番号】W WO2020146933
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521309488
【氏名又は名称】エッセント・オプティックス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ESSENTOPTICS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリベツキ,コスタンティン・ニコラエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】フィアドトカ,アルテム・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】リソウスキ,タラス・クタニスラボビッチ
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020CB02
2G020CB03
2G020CB07
2G020CB14
2G020CC29
2G020CC47
2G020CD12
2G020CD13
2G020CD22
2G020CD60
(57)【要約】
本発明は、光学機器の分野に関し、工業研究所での分析に使用されること、および、各種材料のスペクトル特性の分析研究における科学的調査を目的とすることが、意図されている。技術的結果として、角度依存測定および複雑なプリズムの測定の品質および精度が高くなる。分光光度計は、筐体(1)と、測定室(2)と、単色放射線源(3)とを含み、放射線源(4)と、モノクロメータ(5)と、偏光子(6)のアセンブリと、ミラー素子(7)と、レンズ(13)を有し光検出器(12)のアセンブリ(8)を有する測定チャネルと、レンズ(15)を有し光検出器(14)のアセンブリ(9)を有する参照チャネルと、中空の回転シャフト(16)および試料(11)を備えた対象物回転テーブル(10)と、鉛直回転シャフト(17)を用いて測定チャネルの光検出器(12)のアセンブリ(8)を移動させるための装置とが、設置されている。この分光光度計の対象物回転テーブル(10)は、測定実行時に試料(11)の三重露光を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(1)を含む分光光度計であって、測定室(2)および単色放射線源(3)が前記筐体の中に位置し、前記分光光度計は、放射線源(4)と、モノクロメータ(5)と、偏光子(6)のアセンブリと、前記モノクロメータ(5)からの光ビームを、光検出器(12)のアセンブリ(8)を有する測定チャネルと光検出器(14)およびレンズ(15)の変更アセンブリ(9)を有する参照チャネルとに分割するミラー素子(7)と、測定のための試料(11)が設けられる対象物回転テーブル(10)とを含み、本発明に従い、対象物回転テーブルは、測定中に前記試料(11)の三重露光が可能となるように構成され、この場合、前記対象物回転テーブル(10)は、自身の回転シャフト(16)を中心として時計回りまたは反時計回りに、前記モノクロメータ(5)からの光ビームが試料(11)の端面と交差する瞬間まで、回転するように設計され、前記測定チャネルの前記アセンブリ(8)は、前記対象物回転テーブル(10)の回転シャフト(16)を中心として時計回りまたは反時計回りに、前記モノクロメータ(5)からの光ビームと交差する瞬間まで回転するように構成され、同時に、前記測定チャネルの前記光検出器(12)の前記アセンブリ(8)を鉛直回転シャフト(17)を中心として時計回りまたは反時計回りに、前記測定チャネル(8)の前記光検出器(12)のレンズ(13)に入る光ビームと交差する瞬間まで、独立して回転させることで、確実に、前記光検出器(12)の前記レンズ(13)で光ビームを受け、測定される試料(11)を通過した光ビームまたは測定される試料(11)から反射した光ビームは、変位を伴ってまたは伴うことなく、正確に垂線に沿う、分光光度計。
【請求項2】
前記測定チャネルの前記光検出器のアセンブリ(8)は1つ以上の光検出器(12)で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記参照チャネルの前記光検出器のアセンブリ(9)は1つ以上の光検出器(14)で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の分光光度計。
【請求項4】
前記対象物回転テーブル(10)の前記回転シャフト(16)は中空であり、その空洞に電力ケーブルを通すことにより、前記測定室(2)を開かずに、前記モノクロメータ(5)から出た光ビームに対し、前記対象物回転テーブル(10)の回転および前記試料(11)の移動を遠隔制御できることを特徴とする、請求項1に記載の分光光度計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器の分野に関し、工業研究所での分析に使用されること、および、各種材料のスペクトル特性の分析研究における科学的調査を目的とすることが、意図されている。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、構造的には1つの筐体内に設置された光学機械および電子アセンブリからなる、さまざまな種類の分光光度計が知られており、その動作の一般原則は、研究対象物を通過した放射線の強度の、この物体を通過しなかった放射線の強度に対する比率の測定に基づく。通常、装置は付属部品をさらに備えている[1,2,3]。
【0003】
Cary 7000分光光度計[1]は、さらに2層検出器を備え、この2層検出器は、360度の回転テーブル上の付属部品の中心に配置された試料の周囲で移動することができる。付属部品は、反射の測定を提供することもでき、光ファイバープローブとして、またはその他の目的のために作られてもよい。
【0004】
Agilent Cary 60分光光度計[2]は、Czerny-Turner型モノクロメータを備え、動作波長範囲が190~1100nm、固定波長帯が1.5nmである。Cary 60の設計は、対にされたSiダイオード検出器および石英でコーティングされた光学部品を使用する。これは、最大24,000nm/分のスペクトル掃引速度および最大80回/秒のデータサンプリングレートを提供する。この装置は、測定が一時停止されたときに波長をチューニングできるようにし、周囲光の影響を受けない。Agilent Cary 60は、Windows(登録商標)のPCを用いて中央制御される。
【0005】
周知のUVI範囲のシングルビーム分光光度計である、SF-56[3]は、測定周期間の時間間隔を指定し、オペレータが指定した波長で、1つ以上の試料の液体および固体透明物質のスペクトル透過率の自動シングルおよびマルチ測定を提供し、全体をスキャンし、指定されたスペクトルの部分を定性分析のためにビデオモニタ上に出力し、動力学的測定および測定結果に対する数学的処理を実行し、これは、光学密度および濃度の計算と、研究対象物の色の特徴の計算とを含む。この分光光度計は制御され、測定結果が、機能的キーボード、モニタおよびプリンタを有する専用コントローラを用いて、または外部IBM互換コンピュータを用いて処理される。
【0006】
周知の類似物の欠点は、測定中に対象物テーブルの上で試料を移動させる能力に限界があることであり、このことは、結果として装置の機能性の低下につながり、専用の付属部品を使用することなく試料による放射線の透過または反射を測定する可能性を排除する。
【0007】
変位可能な光学素子を有する周知の分光光度計がある[4]。この分光光度計は、高次光を除去するための光学フィルタを含み、このような素子を、専用の駆動装置を必要とすることなく、回折格子を回転させるための駆動機構によって駆動する。光路に着脱可能に挿入するための機構として使用される、光学フィルタのまたは他の装置の制御回路は、専用のソフトウェアを使用して実現される。この機構は、分光器の回折格子と一体化され回折格子によって回転させられる駆動レバーを有する。従動アームが、光路から退避させることができる位置にある光学素子を支持するために使用される。駆動レバーは、回折格子の波長走査のための回転範囲外の回転角度範囲において駆動アームと当接する位置に配置される。駆動レバーは、駆動アームとの当接により駆動されて光学素子を光路上の位置と光路から外れた位置との間で移動させるように変位可能に構成されている。
【0008】
類似物の欠点は、光路に着脱可能に挿入するための機構として使用される光学フィルタおよびその他の装置の制御回路が提供する試料の移動の自由度が、限られていることである。
【0009】
プロトタイプとして採用される、光ビームを2ビームに分割する分光光度計[5]は、本発明に比較的近い。この分光光度計の、ビームを分割するための装置は、測定室を有する筐体を含み、反射部を有する光学系が設置され、モータおよび回転シャフトが設けられ、当該回転シャフトの中心を中心としてさらに回転可能となるようにされている。光学系は、放射線源と、モノクロメータと、ミラー素子とを含み、ミラー素子は、モノクロメータからの光ビームを、光検出器のアセンブリを有する測定チャネルと、光検出器のアセンブリを有する参照チャネルとに分割し、測定中に、対象物回転テーブル上に配置された試料を移動させるための一組の装置が設けられている。この場合、対象物回転テーブルは3つの構造を備え、そのうち、第1の構造は、光ビームが直接通過する光透過部を意図しており、第2の構造は、反射光ビームの反射部であり、第3の構造は、光ビームをブロックし光ビームの暗部を吸収するように設計されている。光透過部分、反射部分、および暗部は、周縁に沿って予め定められた順序で分散配置されている。この回転盤はさらに、回転シャフトの中心を中心として回転する回転素子を含む。回転素子には、回転周期の測定貫通孔またはリセスが設けられている。回転周期は、複数の貫通孔またはリセスおよび複数の回転周期によって決まる。通過開口部またはリセスが、回転部の縁に沿って均等に分散配置されており、光電スイッチをさらに含み、回転部の縁に溝が設けられ、したがって、回転素子および発光源の両側で感光する。感光受光部および光源の発光部は、それぞれ溝壁の両側のうちの一方側と他方側に位置し、通過開口またはリセスの回転周期を決定するように構成されている。モータは、回転素子を回転させることが可能な回転シャフトに接続され、回転シャフトを介して所定の速度で回転を同期させる回転ホイールに接続される。反射部は、第1のミラーと、第2のミラーと、第3のミラーとを含み、これらはそれぞれ、対象物回転テーブルの表側と裏側に位置する。第1のミラーおよび第3のミラーは対象物回転テーブルの同じ側に配置され、第1のミラーは光ビームを対象物回転テーブルに向って反射するために使用され、第1のミラーから反射した光ビームは、光ビームの一部を第2のミラー上に送ることによって予め定められたシーケンスを有する参照光ビームを形成する。第1のミラーから反射したビームは、反射部および第3のミラーを介して、予め定められたシーケンスを有するサンプリングビームを形成する。第1のミラーから反射したビームは、暗部によって吸収され、予め定められたシーケンスを有する閉鎖ビームを形成する。対象物回転テーブルの第1の構造は、光ビームが直接通過する光透過部分である。第2の構造は、反射ビームの一部である。第3の構造は、光ビームをブロックしそのテンポ(tempo)部分を吸収するように設計される。光透過部分、反射部分、および暗部は、対象物回転テーブル上の円の上において予め定められた順序で分散し、光透過部分、反射部分および暗部は対にされて対称に配置される。
【0010】
このプロトタイプの欠点は、対象物回転テーブルの動きが1面の中なので、研究対象の試料を測定する能力が限定されることであり、このことは測定動作の正確さを減じることになる。
【0011】
本発明の目的は、研究対象の試料の実施および測定精度を改善することである。
本発明の技術的結果として、角度依存測定および複雑なプリズムの測定の品質および精度が、部品の厚さまたはプリズムの幾何学的複雑さとは関係なく、改善される。
【0012】
この技術的結果は、以下の分光光度計によって達成される。分光光度計は筐体を含み、測定室および単色放射線源が筐体の中に位置し、分光光度計は、放射線源と、モノクロメータと、偏光子のアセンブリと、モノクロメータからの光ビームを、光検出器のアセンブリを有する測定チャネルと光検出器およびレンズの変更アセンブリを有する参照チャネルとに分割するミラー素子と、測定のための試料が設けられる対象物回転テーブルとを含み、本発明に従い、対象物回転テーブルは、測定中に試料の三重露光が可能となるように構成され、この場合、対象物回転テーブルは、自身の回転シャフトを中心として時計回りまたは反時計回りに、モノクロメータからの光ビームが試料の端面と交差する瞬間まで、回転するように設計され、測定チャネルのアセンブリは、対象物回転テーブルの回転シャフトを中心として時計回りまたは反時計回りに、モノクロメータからの光ビームと交差する瞬間まで回転するように構成され、同時に、測定チャネルの光検出器のアセンブリを鉛直回転シャフトを中心として時計回りまたは反時計回りに、測定チャネルの光検出器のレンズに入る光ビームと交差する瞬間まで、独立して回転させることで、確実に、光検出器のレンズで光ビームを受け、測定される試料を通過した光ビームまたは測定される試料から反射した光ビームは、変位を伴ってまたは伴うことなく、正確に垂線に沿う。
【0013】
測定チャネルの光検出器のアセンブリは1つ以上の光検出器で構成されている。
参照チャネルの光検出器のアセンブリは1つ以上の光検出器で構成されている。
【0014】
対象物回転テーブルの回転シャフトは中空であり、その空洞に電力ケーブルを通すことにより、測定室を開かずに、モノクロメータから出た光ビームに対し、対象物回転テーブルの回転および試料の移動を遠隔制御することができる。
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】測定チャネルの光検出器のアセンブリを示す図である。
【
図3】参照チャネルの光検出器のアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
分光光度計は、筐体1と、測定室2と、単色放射線源3とを含み、放射線源4と、モノクロメータ5と、偏光子6のアセンブリと、ミラー素子7と、レンズ13を有し光検出器12のアセンブリ8を備えた測定チャネルと、レンズ15を有し光検出器14のアセンブリ9を備えた参照チャネルと、中空回転シャフト16および試料11が設けられた対象物回転テーブル10と、測定チャネルの光検出器12のアセンブリ8を回転鉛直シャフト17を用いて移動させるための装置とが、設置されている。
【0018】
この分光光度計は以下のように動作する。指示に従って装置をオンにし準備が整った状態にする。測定を実行するために、筐体1内の測定室3の内部にある対象物回転テーブル10の上に、予め試料11を置いておく。試料11を固定し測定室2を閉じる。測定中、試料11の三重露光を実施する。そのために、対象物回転テーブル10を、試料11とともに、試料11の端面が光源4からの光ビームと交差するまで、シャフト16を中心として時計回りまたは反時計回りに回転させる。この光ビームは、光源4から出た後に、偏光子6を通過しモノクロメータ5から出た光である。光束の一部はミラー素子7によって参照チャネルのアセンブリ9のレンズ15を通して光検出器14に導かれ、光束の他の部分は試料11に導かれ、光ビームは、透過または反射後に、測定チャネルのレンズ13を通ってアセンブリ8の光検出器12に入る。同時に、光検出器12のアセンブリ8を、光検出器12上のレンズ13に入るビームと交差するまで、鉛直回転シャフト17を中心として時計回りまたは反時計回りに回転させる。光検出器12のアセンブリ8を、対象物回転テーブル10の回転軸16を中心として独立して回転させ、光検出器12のレンズ13で光ビームを受け、測定される試料11を通過したまたは測定される試料11から反射した光ビームは、変位を伴ってまたは伴うことなく、正確に垂線に沿う。
【0019】
対象物回転テーブル10は回転シャフト16に設けられ、この回転シャフト16を中空にすることで(図示せず)、その空洞に電力ケーブル(図示せず)を通すことができるようにしており、そうすることで、測定室2を開かずに、モノクロメータ5から出た光ビームに対し、対象物回転テーブル10を試料11とともに遠隔制御することができる。また、この分光光度計は、交換可能な一組の対象物回転テーブル10および電動駆動装置(図示せず)を備える。対象物回転テーブル10は、その設置のために(たとえば蟻継ぎの形態で)アセンブリの嵌合部に装着される嵌合電気コネクタ(図示せず)を有する。電動対象物回転テーブル10を電気コネクタを介して設置する場合、電力を、測定室2を開かずに、対象物回転テーブル10のコントローラおよびコンピュータ遠隔制御を用いて、制御盤の電気回路に供給する。
【0020】
測定チャネルの光検出器12のアセンブリ8の筐体(図示せず)および参照チャネルの光検出器14のアセンブリ9の筐体(図示せず)の内部には、それぞれ、一組の光検出器12および一組の光検出器14(冷却を伴うまたは伴わない、1~4個のたとえばPMT、Si、InGaAs、PbS、PbSe、MCTなどの各種組み合わせ)、ならびに、要求される測定のスペクトル範囲に応じて使用される、ビーム軸上に検出器12および14を自動的に位置決めするための機構(図示せず)が、設置される。
【0021】
測定中に、対象物回転テーブル10の回転と、対応する光検出器12のアセンブリ8の回転とを組み合わせることで、試料11の三重露光を実現することにより、クレームされている技術的結果を確実に達成し、その結果、透過および反射の角度依存偏光測定の、品質および精度を高めるとともに、試料の厚さまたはプリズムの幾何学的な複雑さを問わない、複雑なプリズムの測定の、品質および精度を高める。
【0022】
引用文献
1.New Universal Spectrophotometer Cary 7000. ALSI-CHROM LLC, http://www.alsichrom.com, (C) 2014
2.Spectrophotometer Agilent Cary 60. North House Business Center, Millab. www.millab.ru, 2018
3.UVI Spectrophotometer SF-56. OKB SPEKTR LLC, http://ok.b- spectr.ru/products/sf/sf56/, 2018
4.特開2010-160025、2010年7月22日
5.CN 107796514(A)、2017年11月24日(プロトタイプ)
【国際調査報告】