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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(54)【発明の名称】発電機ロータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/60 20160101AFI20220225BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20220225BHJP
   H02K 1/28 20060101ALI20220225BHJP
   H02K 9/02 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F03D80/60
H02K7/18 A
H02K1/28 A
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540258
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 DK2020050005
(87)【国際公開番号】W WO2020143888
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】62/790,558
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PA201970067
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】モンジュ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラングヴァルト クローグ,ラース
(72)【発明者】
【氏名】マニク,ヘンリック ザー
(72)【発明者】
【氏名】ベルクマン,イェンス
【テーマコード(参考)】
3H178
5H601
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB52
3H178CC25
3H178DD12X
3H178DD63Z
5H601AA16
5H601BB26
5H601BB30
5H601CC02
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD27
5H601EE18
5H601GA02
5H601GA22
5H601JJ05
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC05
5H607CC09
5H607DD02
5H607DD19
5H607FF26
5H609BB03
5H609BB12
5H609BB18
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP17
5H609QQ02
5H609QQ08
(57)【要約】
発電機ロータアセンブリは、中心中空部を画定し、回転軸線の周りに回転するように配置された円筒状リング構造体を含む。円筒状リング構造体は、回転軸の周りに同軸的に配置された複数の永久磁石パッケージを含み、永久磁石パッケージは、同軸的に積層された環状セグメント層、複数のタイロッド孔、および複数のタイロッドを含む。同軸に積層された環状セグメント層は、リング状層を形成するために回転軸の周りに配置された複数の連続するセグメントシートを含み、積層された層は、一方の層における2つの連続するセグメントシートの間のセグメントの分離部が、隣接する層における2つの連続するセグメントシートの間のセグメントの分離部に対して角度的にオフセットされるように、千鳥状である。タイロッド孔は、永久磁石パッケージの層を通って軸方向に延び、隣接する永久磁石パッケージの複数のタイロッド孔は、複数のタイロッド孔が画定されるように、寸法および位置が相補的である。タイロッドは、複数のタイロッド孔のそれぞれを貫通して延びている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン用の発電機ロータアセンブリ(42)であって、前記発電機ロータアセンブリ(42)は、中央中空部を画成すると共に回転軸回りに回転するように配置された円筒状リング構造体(46)を備え、前記円筒状リング構造体(46)は、
前記回転軸の周りに同軸的に配置された複数の永久磁石パッケージ(48)を備え、前記永久磁石パッケージ(48)は、
前記回転軸の周りに配置されて環状層を形成する複数の連続するセグメントシート(82)を含む複数の同軸に積層された環状セグメント層(80)であって、前記積層された層(80)は、一の層における2つの連続するセグメントシート(82)間のセグメント分離部が、隣接する層における2つの連続するセグメントシート(82)間のセグメント分離部に対して角度的にオフセットされるように千鳥状に配置されている、複数の積層された環状セグメント層と、
前記永久磁石パッケージ(48)の層を軸方向に貫通して延びる複数のタイロッド孔(86)であって、隣接する永久磁石パッケージ(48)の複数のタイロッド孔(86)は、該複数のタイロッド孔が画定されるように、寸法および位置が相補的である、複数のタイロッド孔と、
前記複数のタイロッド孔のそれぞれを貫通して延びる複数のタイロッド(54)と、を有する、発電機ロータアセンブリ。
【請求項2】
前記セグメントシート(82)のすべては、タイロッド分離角にわたって間隔をおいて配置された多数のタイロッド孔(86)を含み、2つの隣接する層の間の角度オフセットが、タイロッド分離角の倍数である、請求項1に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項3】
前記永久磁石パッケージ(48)における任意の2つの隣接する層の間の角度オフセットが少なくとも2つのタイロッド分離角度である、請求項1又は2に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項4】
前記永久磁石パッケージ(48)の各層について、隣接する層との角度オフセットが、後続する層との角度オフセットよりも大きい、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項5】
前記永久磁石パッケージ(48)内の各層の間で互いに角度オフセットしていない層の数は、セグメントシート当たりのタイロッド孔(86)の総数から1を引いた数に等しい、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項6】
前記セグメントシート当たりのタイロッド孔(86)の総数が、前記永久磁石パッケージ(48)内の層の数以下であり、前記永久磁石パッケージ(48)内のすべての層が、互いに対して角度的にオフセットされている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項7】
前記セグメントシートの各々が、内部永久磁石を受け入れて磁極を確立するための多数の磁石孔のペア(88)をさらに含み、前記磁石孔のペア(88)の数は前記タイロッド孔(86)の数と等しいか、又は倍数である、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項8】
前記複数の層が互いに接着されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項9】
前記タイロッド(54)上で、かつ隣接する前記永久磁石パッケージ(48)の間に配置された複数のスペーサ(56)をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項10】
複数の前記永久磁石パッケージ(48)は、前記円筒状リング構造体(46)の対向する端部に配置された2つの端部パッケージ(50)を含み、
前記円筒状リング構造体(46)は、前記端部パッケージ(50)の1つに強固に取り付けられたロータ連結部(58)を含む環状フランジ(57)と、駆動軸に直接又は間接的に接続されるように構成された駆動軸連結部(60)とをさらに含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項11】
前記端部パッケージ(50)は、前記円筒状リング構造体(46)の駆動端部および非駆動端部に配置され、
前記非駆動端部は、使用時に、風力タービンの駆動ラインとは反対側を向いており、前記環状フランジ(57)が、前記非駆動端部で前記端部パッケージ(50)に強固に取り付けられている、請求項10に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項12】
前記ロータ連結部(58)は、前記ロータ連結部(58)を軸方向に貫通して延びる複数のタイロッド孔を含み、
前記ロータ連結部(58)の前記複数のタイロッド孔は、前記複数のタイロッド(54)を受け入れて、前記環状フランジ(57)をそれに取り付けるために配置される、請求項10又は11に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項13】
前記ロータ連結部(58)は、前記端部パッケージ(50)に平行にかつ直接接触して取り付けられる、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項14】
前記駆動軸連結部(60)は、前記ロータ連結部(58)と一致するか、又は平行な平面内に延びる、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項15】
前記駆動軸連結部(6)の周長は、前記ロータ連結部(58)の周長よりも短い、請求項10乃至14のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項16】
前記環状フランジ(57)は、前記ロータ連結部(58)を前記駆動軸連結部(60)に連結する中間部(62)をさらに備え、
前記中間部(62)は、前記ロータ連結部(58)に対して、90度から180度、好ましくは105度から165度、さらに好ましくは120度から150度で配置され、前記駆動軸連結部(60)に対して、90度から180度、好ましくは105度から165度、さらに好ましくは120度から150度で配置される、請求項10乃至15のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項17】
前記中間部(62)は、前記ロータ連結部(58)に沿って所定の間隔でかつ前記回転軸の周りに同心円状に配置された複数のブリッジ部(64)を含み、ブリッジ間隙(66)が隣接するブリッジ部(64)間に画定される、請求項16に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項18】
前記ロータ連結部(58)は、前記ロータ連結部(58)を前記端部パッケージ(50)にクランプする複数のクランプをさらに備える、請求項10乃至17のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項19】
前記環状フランジ(57)の周長は、前記端部パッケージ(50)の周長と実質的に等しい、請求項10乃至18のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項20】
前記駆動軸連結部(60)は、環状要素を含む、請求項10乃至19のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項21】
前記環状フランジ(57)は、前記駆動軸連結部(60)に連結された駆動軸連結フレーム(68)をさらに備え、
前記駆動軸連結フレーム(68)は、前記中央中空部内に延び、前記駆動軸連結フレーム(68)は、前記環状フランジ(57)を前記駆動軸に連結するように構成されている、請求項10乃至20のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項22】
端面の少なくとも一つが少なくとも部分的に開放されており、冷却空気流が発電機ロータアセンブリ(42)の外部から前記中央中空部に流れることを可能にしている、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項23】
前記複数の永久磁石パッケージ(48)の少なくとも一部の間に設けられ、前記中央中空部から前記冷却流路を通って前記発電機ロータアセンブリ(42)の外部に向かう冷却空気流を可能にする冷却流路をさらに備える、請求項1乃至22のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項24】
前記セグメントシート(82)の各々は、少なくとも3つ又は少なくとも4つの磁石対(84)のような少なくとも2つの磁石対(84)を含む、請求項1乃至23のいずれか1項に記載の発電機回転子アセンブリ。
【請求項25】
前記セグメントシート(80)の各々は、20未満のセグメントシート(80)が、10未満のセグメントシートのような環状層(80)となる360度を構成するような寸法にされる、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項26】
前記アセンブリが、中央ハブからの支持なしに自立するように構成されている、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか1項に記載の発電機ロータアセンブリ(4)を有する発電機を備える風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機ロータアセンブリに関する。より詳細には、本発明は、風力タービン用の発電機ロータアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、多数のロータブレードを備えた大きなロータを用いて、風からの運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。典型的な水平軸風力タービン(HAWT)は、タワーと、タワーの頂部上のナセルと、ナセルに取り付けられたロータハブと、ロータハブに結合された複数の風力タービンロータブレードと、を含む。ナセルを回転させるヨーシステムとブレードを回転させるピッチシステムとにより、風の方向に応じてナセルとロータブレードとを最適な方向に回転し、向けさせる。
【0003】
ナセルは、例えば発電機、ギアボックス、駆動系、およびロータブレーキアセンブリを含む風力タービンの多くの機能的構成要素、並びに、ロータにおける機械的エネルギーをグリッドに供給するための電気エネルギーに変換するための変換装置を収容する。ギアボックスは低速主軸の回転速度を上げ、ギアボックス出力軸を駆動する。ギアボックス出力軸はさらに発電機を駆動し、発電機はギアボックス出力軸の回転を電気に変換する。次いで、発電機によって生成された電気は、適切な消費者、例えば配電システムに供給される前に、必要に応じて変換され得る。ギアボックスを使用しない、いわゆる 「直接駆動」 風力タービンも知られている。直接駆動風力タービンでは、発電機はロータに接続されたシャフトによって直接駆動される。
【0004】
通常、風力タービンの発電機は、内部ロータアセンブリを取り囲む外部ステータアセンブリからなるIPM(内部永久磁石)電気機械である。IPM内部ロータアセンブリは、典型的には、中心軸に支持された複数の環状の永久磁石パッケージから構成される。ギアボックス出力軸は、ロータアセンブリの中心軸とインターフェースする。
【0005】
他の電気機械と同様に、永久磁気パッケージは、典型的には、必要な磁場を生成する永久磁石を受け入れるための整列された孔を有する環状の金属層の積層体からなる。大型風力タービンの発電機のような大型発電機の場合、永久磁石パッケージの製造は、リングが単純に大きすぎて一体で製造することができないため困難である。金属層を多数のより小さなセグメントシートから組み立てることが知られており、これらのシートは全て中央ハブ上に設けられ、環状層を形成する。セグメント化された層は、単一の層金属片で作られた層と同じ強度および構造的一体性を有していなくてもよいが、中央ハブは、使用中にロータに作用する全ての遠心力および他の力に耐えるのに十分すぎるほどの構造的な支持をロータに提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力タービン発電機の設計に対する別の技術的考慮事項は、発電機が使用中に加熱されると、発電機の効率が低下することである。これは、ギアボックスなど、風力タービンのその他の主要コンポーネントにも適用される。風力タービンの性能と寿命とは、したがって発電機の効率的な冷却に依存する。
【0007】
空冷は、発電機を冷却する費用効果の高い方法である。しかしながら、発電機ハウジングの限定された空間内にあるメガワット規模の発電機は、発電機を効果的に冷却するための現在の空冷方法に対して過剰な熱を発生する。発電機の効率的な冷却の欠如は、回転子アセンブリのような発電機構成要素の内部および周囲の温度上昇をもたらす。
【0008】
本発明の目的は、上述の1つ以上の問題に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、上述した目的は、風力タービン用の発電機ロータアセンブリを備え、前記発電機ロータアセンブリが、中央中空部を画定し、回転軸回りに回転するように配置された円筒状リング構造体を備えることによって達成される。円筒状リング構造体は、回転軸の周りに同軸に配置された複数の永久磁石パッケージを含み、該永久磁石パッケージは、複数の同軸に積み重ねられた環状セグメント化層、複数のタイロッド孔、および複数のタイロッドを含む。同軸に積層された環状セグメント化層は、環状層を形成するために回転軸の周りに配置された複数の連続するセグメントシートを含み、積層された層は、層のうちの1つにおける2つの連続するセグメントシート間のセグメントブレーク(セグメント分離部)が、隣接する層における2つの連続するシート間のセグメントブレークに対して角度的にオフセットされるように千鳥配置(staggered)される。タイロッド孔は、永久磁石パッケージの層を軸方向に貫通して延び、隣接する永久磁石パッケージの複数のタイロッド孔は、複数のタイロッド孔が画定されるように、寸法および位置が相補的である。タイロッドは、複数のタイロッド孔のそれぞれを貫通して延びている。
【0010】
環状のセグメント化された層の千鳥配置は、永久磁石パッケージの積み重ねられた層の間の摩擦を増大させる。それに加えて、軸方向タイボルト予圧力は、個々の永久磁石パッケージおよび円筒リング構造全体の強度構造および構造的一体性を高める。これらの利点は、固体リングと同様の強度を有し、典型的な風力タービン発電機においてそれに加えられる遠心力(および他の力)に耐えることができる大きな永久磁石パッケージを製造することを可能にする。その結果、これにより、永久磁石パッケージを中央ハブ上に組み立てる必要なく、大型発電機ロータアセンブリ構造を製造することができる。
【0011】
ロータアセンブリ内に中央ハブを有しないことは、コストおよび重量の低減並びに冷却空気流の改善のような多くの重要な利点をもたらす。発電機の中央に供給される冷却空気は、軸方向および半径方向に自由に流れることができ、ロータおよびその直接近傍に位置する発電機部品を効果的に冷却することができる。本発明によるロータ構造の更なる重要な利点は、ロータアセンブリのモジュール特性である。ロータアセンブリの技術仕様は、例えば、永久磁石パッケージの適切な数およびパッケージ当たりの層の数を選択することによって、要求される性能に容易に適合させることができる。
【0012】
好ましい実施形態では、発電機ロータアセンブリは、冷却空気流が発電機ロータアセンブリの外部から中央中空部に流れることを可能にするために、その端面の少なくとも1つが少なくとも部分的に開放されている。冷却流路は、複数の永久磁石パッケージの少なくとも一部の間に設けられて、冷却空気流が中央中空部から冷却流路を通って発電機ロータアセンブリの外部に向かって流れることを可能にする。
【0013】
好ましくは、発電機ロータアセンブリは、タイロッド上および隣接する永久磁石パッケージ間に配置された複数のスペーサをさらに含む。このようなスペーサは、後続の永久磁石パッケージ間の空隙を提供し、この空隙を通して、冷却空気流は、ステータおよび発電機の外部ハウジングに近い任意の部分にも到達することができる。
【0014】
好ましい実施形態では、すべてのセグメントシートは、タイロッド分離角度にわたって間隔を置いて配置された多数のタイロッド孔を含み、2つの隣接する層の間の角度オフセットは、タイロッド分離角度の倍数である。タイロッドが全ての永久磁石パッケージを貫通して延びることができることを確実にするために、隣接する層のタイロッド孔が整列されることが重要であり、また、層が千鳥配置され、層間の角度オフセットが導入される場合も重要である。すべてのセグメントシートが複数のタイロッド孔を有する場合、これは、必要なタイロッド孔を形成することを可能にするより多くの異なる角度オフセットを可能にする。
【0015】
一実施形態によると、永久磁石パッケージ内の任意の2つの隣接層の間の角度オフセットは、少なくとも2つのタイロッド分離角度である。隣接する層のセグメントブレーク間の距離が大きいほど、各セグメントシートの重なりが大きくなり、2つの層の間の摩擦が大きくなる。摩擦の増加は、磁石パッケージ全体の強度および構造的完全性の向上につながる。
【0016】
特別な実施形態では、永久磁石パッケージ内のすべての層について、隣接層との角度オフセットは、後続の層との角度オフセットよりも大きい。得られたジグザグ配列は、永久磁石パッケージの強度および構造的一体性をさらに高める。
【0017】
これらの態様をさらに改善するために、永久磁石パッケージ内の2つの層ごとに互いに角度的にオフセットしていない層の数は、セグメントシート当たりのタイロッド孔の総数から1を引いた数に等しい。このような実施形態では、利用可能な全ての異なる角度オフセットが使用される。
【0018】
例えば、接着剤又はバックラックのような接着ワニスを用いて、複数の層を一緒に接着することによって、より強固で強力な永久磁石パッケージを得ることができる。
【0019】
円筒状リング構造体は、該円筒状リング構造体の端部パッケージの1つに確実に取り付けられるロータ連結部を備える環状フランジをさらに備えてもよい。このフランジはさらに、駆動軸に直接又は間接的に接続するように構成された駆動軸連結部を含む。このフランジは、ロータ中心を通って永久磁石パッケージおよびステータへの冷却空気の流れを妨げることなく、ハブレスロータを例えばギアボックスの出力軸に接続することを可能にする。
【0020】
環状フランジは、ロータの非駆動端部で端部パッケージに確実に取り付けられてもよい。フランジはタイロッドを介して端部パッケージに接続することができる。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、風力タービンは、上述又は以下に記載される発電機ロータアセンブリを有する発電機を備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】典型的な風力タービンを示す正面概略図である。
図2】典型的な風力タービンのナセル内に収容された主要機能構成要素の概略図および斜視図である。
図3】ギアボックスに連結された図2に示すナセルの発電機の等角図である。
図4図3に示す発電機の断面図である。
図5】本発明の一実施形態による、コネクタに接続された発電機ロータの非駆動端側斜視図である。
図6図5に示す発電機ロータアセンブリの駆動端斜視図である。
図7図5および図6に示す発電機ロータアセンブリの一部を形成する環状層の正面図である。
図8A図7に示す環状層のセグメントシートの正面図である。
図8B図8Aに示すセグメントシートの一部の正面図である。
図9図5および図6に示す発電機ロータアセンブリの永久磁石リングを形成するために積層された複数の環状層の側面概略図である。
図10図5および図6に示す発電機ロータアセンブリの部分断面図である。
図11図5図6および図10に示す発電機ロータアセンブリの側方断面図である。
図12】コネクタを取り外した図5に示す発電機ロータアセンブリの非駆動端部の斜視図である。
図13】本発明の一実施形態による、発電機ハウジング、発電機ロータアセンブリ、および発電機ステータアセンブリの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を一例として説明する。
【0024】
次に、本発明の具体的な実施形態について説明するが、この実施形態では、特許請求の範囲に定義されている発明概念の完全な理解を提供するために、多数の特徴が詳細に検討される。しかしながら、当業者には、本発明が特定の詳細なしに実施され得ること、および、いくつかの例では、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知の方法、技術および構造が詳細に記載されていないことが明らかであろう。
【0025】
本発明の実施形態を適切な文脈に置くために、まず、本発明の実施形態による発電機ロータアセンブリを実装することができる典型的な水平軸風車(HAWT)を示す図1を参照する。この特定の画像は陸上の風力タービンを示すが、同様の特徴が洋上の風力タービンにも見られることが理解されよう。さらに、該風力タービンは「水平軸」と呼ばれるが、実際的な目的のために、軸は、通常、強風の場合にロータブレードと風力タービンタワーとの間の接触を防止するためにわずかに傾斜していることが当業者には理解されよう。
【0026】
風力タービン1は、タワー2と、タワー2の頂部にヨーシステムにより回転可能に連結されたナセル4と、ナセル4に取り付けられたロータハブ8と、ロータハブ8に連結された複数の風力タービンロータブレード10とを備える。ナセル4およびロータブレード10は、ヨーシステムによって風向方向に旋回される。
【0027】
ナセル4は、発電機、ギアボックス、駆動系、およびロータブレーキアセンブリを含む風力タービンの多くの機能部品、並びに風力の機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換してグリッドに供給するための変換装置を収容する。図2を参照すると、ナセル4は、シャフトハウジング20、ギアボックス22、および発電機24を含むことができる。メインシャフト26は、シャフトハウジング20を貫通して延び、ベアリング(図示せず)に支持されている。メインシャフト26は、ロータ8に連結されて駆動され、ギアボックス22に入力駆動を提供する。ギアボックス22は、図示しないインターナルギアを介して低速主軸の回転数を上昇させ、ギアボックス出力軸を駆動する。ギアボックス出力軸は、続いて発電機24を駆動し、発電機はギアボックス出力軸の回転を電気に変換する。次いで、発電機24によって生成された電気は、適切な消費者、例えば配電システムに供給される前に、必要に応じて他の構成要素(図示せず)によって変換され得る。ギアボックスを使用しない、いわゆる「直接駆動」風力タービンも知られている。したがって、ギアボックスはオプションとみなすことができる。
【0028】
ギアボックス22および発電機24は、一体化されたユニット内で一緒に結合されてもよい。図3は、発電機24をより詳細に示す。図3では、ギアボックス22の最終段のハウジングも、発電機24のハウジングに連結されているように示されている。
【0029】
最初にギアボックス22を参照すると、ギアボックスハウジングは、形状が概ね円筒状であり、その主要回転軸が図面の向きで水平になるように方向付けられる。ギアボックスハウジングの円筒形状は、図示の実施形態で使用される特定のタイプのギアボックスによるものであり、それは遊星歯車ギアボックスである。当業者であれば知っているように、遊星歯車ギアボックスは、中央太陽歯車の周りに配置された一連の遊星歯車からなり、これらの遊星歯車は、環状リング歯車内に集合的に配置されている。環状ギア、遊星ギア、太陽ギア間の歯数の比率によって、ギアボックスのギア比が決まる。ギアボックスは本発明の主要な主題ではないので、ここでは、明確にするために、ギアボックスの詳細な説明は省略する。現在のところ、遊星歯車ギアボックスは、風力タービンナセルの領域に適合するエレガントな解決策を提供すると考えられているが、他のギアボックス構成も使用することができると言うだけで十分である。
【0030】
ギアボックス22の出力軸は、発電機24のロータ32と連結する。したがって、ギアボックス出力軸の主軸は、発電機24の回転軸を規定する。図4では、発電機24のみの断面図が提供される。図示の実施形態における発電機24は、ロータ32を取り囲む外部ステータを有するIPM(内部永久磁石)電気機械である。ステータは、ステータ巻線38と、ステータコア40と、ステータ巻線38およびステータコア40を囲み支持するステータフレームとを含む。しかしながら、本発明は、特定のタイプのステータに限定されないことに留意されたい。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、発電機24のロータ32の一部を形成する発電機ロータアセンブリ42が提供される。このような発電機ロータアセンブリ42について、図6から図11を参照して以下に説明する。発電機ロータアセンブリ42は、非駆動端を有しており、これにより、該非駆動端は、風力タービンが使用されているときには、風力タービンドライブラインとは反対の方向を向いており、また、タービンが使用されているときには、駆動ラインの方向を向いている駆動端を有している。発電機ロータアセンブリ42の非駆動端面図を図5に、発電機ロータアセンブリ42の駆動端面図を図6に示す。
【0032】
発電機ロータアセンブリ42は、中央中空部を規定する円筒状のリング構造体46からなり、回転軸を中心に回転するように配置されている。円筒状リング構造体46は、複数の永久磁石パッケージ48を含む。本実施形態では、永久磁石パッケージ48は、全て同じ円周および厚さである。いくつかの実施形態では、永久磁石パッケージ48の厚さは、互いに異なってもよい。例えば、ロータは、2つの異なる厚さの永久磁石パッケージ48を含むことができ、ここで、異なる厚さの永久磁石パッケージ48は、交互に配置される。永久磁石パッケージ48は、回転軸の周りに同軸に配置され、組み立てられたときに、永久磁石パッケージ48の配置は、中央中空部を有する円筒構造を画定する。永久磁石パッケージ48は、間隙が永久磁石パッケージ48の各対の間に画定されるように、等しい距離だけ離間される。これらの間隙は、発電機の中心に供給される空気がロータ構造を通って流れ、発電機ロータアセンブリおよびロータアセンブリ42の半径方向外側に位置する部分を含む発電機の他の部分を冷却することを可能にする。この空気流は、ロータアセンブリ42の構造および支持を提供するために中央ハブを必要としないという事実によってさらに強化される。
【0033】
円筒状リング構造体46は、2つの端部パッケージと、それらの間に設けられた複数の永久磁石パッケージ48とによって画定される。2つの端部パッケージは、第1の端部パッケージ50と、円筒状リング構造体46の対向する端部に配置された第2の端部パッケージとを含む。すなわち、図5に示すように、第1の端部パッケージ50は、円筒状リング構造体46の非駆動端部に位置し、第2の端部パッケージは、円筒状リング構造体46の駆動端部に位置する。
【0034】
端部パッケージ50は、円筒状リング構造体46内の他の永久磁石パッケージ48と同様に、一般的には単なる通常の永久磁石パッケージであるが、円筒状リング構造体46の端部に設けられる点が唯一の例外であることに留意されたい。あるいは、端部パッケージの一方又は両方は、他の永久磁石パッケージ48よりも厚い厚さを有してもよい。端部パッケージ50は、円筒状リング構造体46の発電機の他の部分への接続、又は円筒状リング構造体46の外面を覆うコーティングを可能にする追加の特徴をさらに備えてもよい。端部リング52は、端部パッケージ50の一方又は両方に接続されてもよく、端部リング52は、永久磁石自体を含んでいてもよい。
【0035】
永久磁石パッケージ48は、永久磁石パッケージ48を軸方向に貫通して延びる複数のタイロッド孔を含む。該孔は、各永久磁石パッケージ48の本体の周囲に配置される。該孔は、好ましくは、等しい距離、すなわち角度だけ離間される。隣接する永久磁石パッケージ48の孔は、複数のタイロッド孔が画定されるように、寸法および位置が相補的である。タイロッド孔は、回転軸線の周りに同心円状に配置される。タイロッド孔は、円筒状リング構造体46のパッケージ48を通って、第1の端部パッケージ50から第2の端部パッケージまで延在し、場合によっては、任意の追加の端部リング52又は円筒状リング構造体46に直接接続された他の構造要素をも通って延在する。
【0036】
複数のタイロッド54は、複数のタイロッド孔のそれぞれを貫通して延びている。タイロッド54上および隣接する永久磁石パッケージ48間には、複数のスペーサ又はワッシャ56が配置される。したがって、タイロッド孔は、タイロッド孔の内面とワッシャ56との繰り返しパターンによって画定される。他の実施形態では、ワッシャ56を全く使用せず、それによって、複数のロッド54によっても支持される単一の永久磁石パッケージロータを提供することに留意されたい。
【0037】
永久磁石パッケージ48は、その一実施形態が図7~9に示されており、複数の同軸に積層された環状のセグメント化層80を含み、各セグメント化層は、環状層80を形成するために回転軸の周りに配置された複数の連続するセグメントシート82を含む。タイロッド孔86は、永久磁石パッケージ48の層を軸方向に貫通して延び、隣接する永久磁石パッケージ48の複数のタイロッド孔86は、複数のタイロッド孔が画定され、タイロッド54は、複数のタイロッド孔のそれぞれを貫通して延びるように、寸法および位置が相補的である。
【0038】
完全な環状層80の正面図を図7に示す。セグメントシート82の拡大図を図8Aおよび8Bに示す。環状層80は、回転軸を中心に同心円状に配置された複数のセグメントシート82からなる。本実施形態の環状層80は、6枚のセグメントシート82から構成されているが、他の実施形態では、他の数のセグメントシート82を用いてもよい。効果的には、発電機ロータアセンブリの永久磁石パッケージ48は、積層された層80から形成され、それにより、各層80は、それらのセグメント端部において互いに接合されてセグメント分離部を有する環状層80を形成する複数のセグメントシート82から形成される。好ましくは、全てのセグメントシート82は同一であり、全てのセグメントシート82が完全な環状層80の360度を構成するような寸法である。
【0039】
セグメントシート82は、図8Aに示すように、外周90、内周92および頂角94(図7参照)によって画定される円弧である。頂角94は、使用されるすべてのセグメントシート82が同一であり得るように、360度を層80当たりのセグメントシート82の数で割った値に等しいことが好ましい。セグメントシート82は、セグメントシート82の両端に配置され、外周90と内周92とを連結する2つのセグメント端部を有する。2つのセグメント端部は、隣接するセグメントシート82の端部に隣接している。
【0040】
図7に示すセグメントシート82は、6つの磁石対84と同数のタイロッド孔86とを含む。6つの連続するセグメントシート82は、6つの分離セグメント、36個の磁極、および36個のタイロッド孔86を有する環状層80を形成する。ここで、磁極は、磁石孔88に配置された一対の永久磁石によって形成される。この例では、各セグメントシート82は、6つのタイロッド孔86を有し、6つのN極磁極および6つのS極磁極を備えている。代替の実施形態では、セグメントシート82当たりのタイロッド孔86の数は、磁石対の量とは異なり、セグメントシート82当たりのタイロッド孔86および/又は磁石孔88の量が異なることになる。また、磁極を提供するために使用される永久磁石の数も変化し得る。磁石孔88の数は、タイロッド孔86の数の倍数であることが好ましい。
【0041】
ここに示す実施形態では、セグメントシート82におけるタイロッド孔86の位置は、部分タイロッド孔86がセグメント端部に配置されるようになっている。完全な環状層80に組み立てられると、セグメントの各側の部分タイロッド孔86は、一緒に分離して完全タイロッド孔86を形成する。別の配置では、完全タイロッド孔86のみを有するセグメントシート82となる。例えば、セグメントの分離は、磁石対の2つの磁石孔88の間に設けられてもよく、磁石孔88の中間に設けられてもよい。
【0042】
セグメントシート82からなる環状層80は、図9に示すように、同軸に積層されて永久磁石パッケージ48を形成する。層80は、隣接する層80A~80Fのセグメントシート82が互いに角度的にオフセットするように積層される。図9に示すように、これにより、永久磁石パッケージ48の層80が千鳥状になる。
【0043】
永久磁石パッケージ48を貫通するタイロッド孔の形成を可能にするために、2つの隣接する層80の角度オフセットは、タイロッド分離角度、すなわち2つの隣接するタイロッド孔86間の角度距離に等しいか、又はその倍数である必要がある。対称なセットアップでは、タイロッド分離角度は、360度を円筒状リング構造体46で使用されるタイロッドの総量で割った値、すなわちセグメントシート頂点角度94をセグメントシート当たりのタイロッド孔86の数で割った値に等しい。この例では、各セグメントシート82が6つのタイロッド孔86を有しているので、第1の層80Aに対する5つの異なる角度オフセットが可能である(すなわち、層80A~80F当たり6つの異なる可能な配向)。
【0044】
図9に示す好ましい実施形態によれば、永久磁石パッケージ48内の任意の2つの隣接する層80A~80Fの角度オフセットは、タイロッド分離角度の少なくとも2倍である。タイロッド分離角度にのみ対応するオフセットと比較して、この構成は、隣接する層80間に付加的な摩擦を提供し、磁石パッケージ48全体としての強度および構造的一体性を改善する。図中左側から始まる、第1の層80Aに対する第2の層80Bの角度オフセットは、2つのタイロッド分離角度である。第1の層80Aに対する第3の層80Cの角度オフセットは、5つのタイロッド分離角度である。第1の層80Aに対する第4の層80Dの角度オフセットは、3つのタイロッド分離角度である。第1の層80Aに対する第5の層80Eの角度オフセットは、1つのタイロッド分離角度である。第1の層80Aに対する第6の層80Fの角度オフセットは、4つのタイロッド分離角度である。これらは、2つ、3つ、2つ、2つ、および3つのタイロッド分離角度の6つの連続する層80A~80F間の層間オフセットに変換されるが、依然として6つの利用可能な向きすべてを使用する。6つの層80A~80Fの後、パッケージ48が完成するまで同じパターンを繰り返してもよい。その結果、2つの層の間には、同じ配向を有する5つの層80が常に存在し、それによって、磁石パッケージ48全体の強度および構造的完全性が再び増大する。より一般的には、永久磁石パッケージ48内の各層の間で互いに角度オフセットしていない層の数は、セグメントシート82当たりのタイロッド孔86の総数から1を引いた数に等しい。
【0045】
層80A~80F間にさらなる摩擦を加え、永久磁石パッケージ48全体の強度および構造的一体性を向上させるために、一方の方向におけるすべてのオフセットは、他方の方向におけるオフセットに続く。換言すれば、永久磁石パッケージ48内の各層80A~80Fについて、隣接する層80A~80Fでの角度オフセットは、後続する層80A~80Fでの角度オフセットよりも大きい。6つの連続する層80A~80Fの間の既にリスト化された層間オフセット(タイロッド分離角度で測定される)に方向性を加えると[+2、+3、-2、-2、+3、+2]であり、それによって+3および-3は、層80当たり6つのタイロッド孔86を有する対称ナセットアップにおいて同じオフセットをもたらす。このジグザグ配列は、全てのオフセットが同じ方向にある場合よりも、永久磁石パッケージ48の異なる層80間デの摩擦結合をはるかに強くする。
【0046】
本実施形態では、利用可能な角度方向(6、タイロッド孔86の数に等しい)の数は、永久磁石パッケージ(12)内の層の数よりも少ない。したがって、隣接する層80間の角度オフセットは、第6の層まで異なることができる。第7層から始めて、永久磁石パッケージ48の残りの層80について回転のパターンが繰り返される。永久磁石パッケージ48は、任意の数の層80を含むことができ、その数は必ずしもセグメントシート82当たりのタイロッド孔86の数の倍数ではないことに留意されたい。代替的に、より薄い永久磁石パッケージ48では、より厚い層80を使用する場合、又はセグメントシート当たりより多くのタイロッド孔86を有するより大きなセグメントシート82を使用する場合、可能な配向の総数は、永久磁石パッケージ48内の層80の数に等しいか、又はそれより少なくてもよい。この場合、永久磁石パッケージ48内のすべての層80は、互いに角度的にオフセットすることができる。
【0047】
千鳥状になることによって環状層80間の摩擦力が増大し、特別な千鳥状パターンによってさらに増大することによって、同じ寸法の単一の中実リングと同様の強度および構造的一体性を有する層80の積層体が得られる。構造的一体性をさらに改善するために、積層された環状層80は、バックラックのような接着剤又は接着ワニスによって互いに接着されてもよい。
【0048】
この千鳥状の構成は、固体リングと同様の強度を有し、典型的な風力タービン発電機においてそれに加えられる遠心力(および他の力)に耐えることができる大きな永久磁石パッケージ48の製造を可能にする。したがって、それは、固体リングから発電機ロータアセンブリを製造することが不可能な、大型の発電機ロータアセンブリ構造を、永久磁石パッケージ48を中央ハブ上に組み立てる必要なしに製造することを可能にする。ロータアセンブリ内に中央ハブを有しないことは、コストおよび重量の低減並びに冷却空気流の改善のような多くの重要な利点をもたらす。中央ハブがないということは、発電機の中央に供給された空気が軸方向および半径方向に自由に流れ、発電機ロータアセンブリ42およびその直接近傍に位置する発電機の他の部分を冷却することを意味する。分割された環状層80の千鳥状の配置と組み合わせて、タイロッド54およびワッシャ56は、層が互いに対してスリップするのをさらに防止する剪断ピンとして機能してもよい。
【0049】
ロッド54および永久磁石パッケージ48は、好ましくはワッシャ56と共に、ロータの主要構造を提供する。ハブレスロータを駆動軸、例えばギアボックスの出力軸に接続できるようにするために、円筒状リング構造体46は、図5に見られるように、環状フランジ57を含み、これは非駆動端部にある第1の端部パッケージ50に強固に取り付けられる。いくつかの実施形態において、環状フランジは、駆動端にある第2の端部パッケージに確実に取り付けられてもよい。端部リング52は、端部パッケージと環状フランジ57との間に設けられてもよい。
【0050】
環状フランジ57は、第1の端部パッケージ50に強固に固定されたロータ連結部58と、駆動軸とも称されるギアボックス出力軸に間接的に連結されるように構成された駆動軸連結部60とを含む。発電機ロータアセンブリ42は、更なる部品、例えばブレーキディスクのためにコネクタ44(図5参照)とインターフェース接続されている。
【0051】
環状フランジ57のロータ連結部58は、永久磁石パッケージ48を共に保持して円筒状リング構造体46を形成する、タイロッド54を用いて、第1の端部パッケージ50に取り付けられる。環状フランジ57のロータ連結部58の周長は、第1の端部パッケージ50の周長と略同一である。ロータ連結部58は、ロータ連結部58を軸方向に貫通する複数の孔を有している。ロータ連結部58の複数の孔は、複数のタイロッド54を受け入れ、環状フランジ57を第1の端部パッケージ50に取り付けるために配置される。ロータ連結部58は、第1の端部パッケージ50と平行にかつ直接接触して取り付けられている。これは、図10および11にそれぞれ示される発電機ロータアセンブリの部分断面図および側面断面図において特に明確に見ることができる。
【0052】
環状フランジ57の駆動軸連結部60は、図10および図11に明確に示されており、ロータ連結部58に平行な平面内に延びている。駆動軸連結部60の周長は、ロータ連結部58の周長よりも短い。駆動軸連結部60は、環状の要素からなる。また、駆動軸連結部60は、円筒状リング構造体46によって形成される中央中空部内に位置している。
【0053】
環状フランジ57は、その半径方向外側部分がロータ連結部58を形成し、半径方向内側部分が駆動軸連結部60を形成する単一のリングであってもよい。あるいは、環状フランジ57は、ロータ連結部58を駆動軸連結部60に連結する中間部62(図10参)をさらに備えてもよい。この中間部62は、環状フランジ57が発電機ロータアセンブリ42の中空部分内に部分的に突出するように、2つの連結部分58、60に対して角度をつけてもよい。図10の実施形態では、中間部62とロータ連結部58との共通点(頂点)を中心とした角度は約135度である。中間部62と駆動軸連結部60との共通点を中心とした角度は約135度である。
【0054】
中間部62は、ロータ連結部58に沿って所定の間隔で回転軸を中心に同心円状に配置された複数のブリッジ部64を有しており、隣接するブリッジ部64間にはブリッジ間隙66が形成されている。ブリッジ間隙66は、冷却空気流が環状フランジ57を通過して発電機の内部構造に入ることを許容する。
【0055】
また、環状フランジ57は、駆動軸連結部60に連結された駆動軸連結フレーム68を有している。駆動軸連結フレーム68は、中央中空部内に延びている。この例では、連結フレーム68は、環状フランジ57の中間部62にほぼ平行な外面を有する円錐台形形状を有する。外側表面は、冷却空気流が発電機の内部構造を通って流れ、内部構造に到達することを可能にする開口部を含むことが好ましい。駆動軸連結フレーム68は、環状フランジ57を駆動軸に連結するように構成されている。環状フランジ57および駆動軸連結フレーム68は、発電機ロータアセンブリ42の円筒状リング構造体46を駆動軸に連結するための安定した省スペースな構造を提供する。
【0056】
駆動軸連結フレーム68は、コネクタ44が取り外された状態の、図5の発電機ロータアセンブリの非駆動端部斜視図である図12において、より明確に見ることができる。駆動軸連結フレーム68は、略円錐台形形状をなしており、フレーム68の基部の円形外縁72と駆動軸連結部60の円形外縁74とが接合されている。フレーム68は、駆動軸連結部60から円筒状リング構造体46の中空部内に延びている。フレーム68は、発電機ロータアセンブリ42の円筒状リング構造体46と共に回転軸の周りを回転するように配置された円形チャネル76を含む。円形チャネル76は、ギアボックス出力軸を受け入れるためのものである。フレーム68はまた、フレーム68の基部の円形外縁72から円形チャネル76まで延びる有孔壁78を含む。有孔壁78内の穿孔は、発電機ロータアセンブリを通る空気流を促進する。
【0057】
発電機ロータアセンブリ内の永久磁石パッケージ48は、円筒状リング構造体内に含まれる永久磁石リングの数を変更するためにモジュール構造内で接続可能である。したがって、本発明の発電機ロータアセンブリの構造は、任意の所望の数およびタイプの永久磁石パッケージ48のロータを使用することができるモジュール式アプローチを可能にする。
【0058】
発電機の組み立て時には、発電機ロータアセンブリ42が外部ステータアセンブリ36に取り囲まれることにより、外部ステータアセンブリ36は、ステータコア40と、ステータコア40を取り囲み支持するステータフレームとを含む。発電機ロータアセンブリ42および発電機ステータアセンブリ36の両方は、発電機ハウジング70によって取り囲まれ、これは、図13の発電機ハウジング70、発電機ロータアセンブリ42、および発電機ステータアセンブリ36の分解図に見ることができる。
【0059】
発電機ロータアセンブリ42および駆動軸への連結部は、冷却空気流が円筒状リング構造体46によって画定される中央中空部を通り、隣接する永久磁石パッケージ48間を通ることを可能にする。
【0060】
添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、上述した特定の実施形態に対して多くの改変を行うことができる。一実施形態の特徴は、他の実施形態においても、そのような実施形態への追加として、又はその代替として使用することができる。
【0061】
例えば、円筒状リング構造体46内の永久磁石パッケージ48の一部は、円筒状リング構造体46内の他の永久磁石パッケージとは異なる周長を有してもよい。円筒状リング構造体46内の永久磁石パッケージ48の一部は、円筒状リング構造体46内の他の永久磁石パッケージと異なる厚さを有してもよい。
【0062】
例えば、発電機ロータアセンブリの円筒状リング構造体46は、ロータアセンブリの駆動端部にある第2の端部リングに強固に取り付けられたロータ連結部を有する環状フランジを備えることができる。駆動軸連結部は、駆動軸に直接連結されるように構成されてもよい。
【0063】
環状フランジは、上述した実施形態でその目的のために使用されるタイロッド54以外の手段によって、いずれかの端部パッケージに取り付けられてもよい。
【0064】
駆動軸連結部は、単にロータ連結部と平行ではなく、ロータ連結部と一致する平面内に延びていてもよい。
【0065】
ロータ連結部と駆動軸連結部との間に形成される中間部は、ロータ連結部に対して90~180度、好ましくは105~165度、さらに好ましくは120~150度であり、駆動軸連結部に対しても同様の角度である。角度が同じで方向が異なる場合には、ロータ連結部と駆動軸連結部とが平行な平面内に位置し、ギアボックス出力軸とロータアセンブリとを連結する点で実用的である。しかしながら、両方の角度は必ずしも等しいとは限らず、それが望ましい場合には異なることがあることに留意されたい。
【0066】
ロータ連結部は、ロータ連結部をそれぞれの端部リングにクランプする複数のクランプをさらに備えてもよい。ロータ連結部は、端部パッケージの1つに平行に取り付けられてもよいが、直接接触していなくてもよい。例えば、スペーサは、端部パッケージとロータ連結部との間に配置されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】