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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(54)【発明の名称】デンプン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/00 20060101AFI20220225BHJP
   C08L 3/04 20060101ALI20220225BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20220225BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20220225BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220225BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220225BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220225BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220225BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08L3/00
C08L3/04
C08L29/04 B
C08L31/04 B
C08L71/02
C08K3/013
C08K3/34
C08J5/18 CEP
B32B9/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021550235
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 AU2020050184
(87)【国際公開番号】W WO2020172722
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】2019900640
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502247341
【氏名又は名称】プランティック・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】マキャフリー,ニコラス ジョン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA08
4F071AA29
4F071AB30
4F071AC09
4F071AE04
4F071AF23Y
4F071AF30Y
4F071AH04
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F100AC03A
4F100AD11A
4F100AD11H
4F100AJ07A
4F100AK21A
4F100AK22A
4F100AK54A
4F100AT00A
4F100BA01
4F100CA04A
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100EH17A
4F100JA06A
4F100JB05A
4F100JB06A
4F100JK10
4F100JN01A
4J002AB04W
4J002BE02X
4J002BF02X
4J002CH02X
4J002DA017
4J002DJ007
4J002DJ037
4J002EC046
4J002EC056
4J002FD017
4J002FD026
4J002GG02
(57)【要約】
押出デンプン組成物及びその調製方法を提供する。組成物は、特定の粘度特性を付与する高い調理度を有する。組成物は、低ヘイズ、高強度及び高ガスバリア性などの有利な特性を有するフィルムに形成され得る。デンプン組成物は、広範囲の用途、特に包装用薄膜を製造するのに使用されるが、これに限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン、又はそれらの混合物を含むデンプン組成物であって、
前記デンプン組成物が、約700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、デンプン組成物。
【請求項2】
前記ピーク冷粘度が、約750mPa.s超、又は約800mPa.s超、又は約850mPa.s超、又は約900mPa.s超、又は約950mPa.s超、又は約1000mPa.s超、又は約1150mPa.s超、又は約1200mPa.s超、又は約1250mPa.s超、又は約1300mPa.s超である、請求項1に記載のデンプン組成物。
【請求項3】
前記ピーク冷粘度が、約1350mPa.s超、又は約1400mPa.s超、又は約1450mPa.s超、又は約1500mPa.s超、又は約1550mPa.s超、又は約1600mPa.s超である、請求項1に記載のデンプン組成物。
【請求項4】
前記デンプン組成物の前記ピーク冷粘度が、約700mPa.s~約1300mPa.s、又は約800mPa.s~約1300mPa.s、又は約900mPa.s~約1300mPa.s、又は約700mPa.s~約1200mPa.s、又は約700mPa.s~約1100mPa.s、又は約700mPa.s~約1000mPa.s、又は約700mPa.s~約900mPa.sである、請求項1に記載のデンプン組成物。
【請求項5】
前記デンプン組成物の前記ピーク冷粘度が、約1300mPa.s~約2000mPa.s、又は約1300mPa.s~約1900mPa.s、又は約1300mPa.s~約1800mPa.s、又は約1300mPa.s~約1700mPa.s、又は約1400mPa.s~約2000mPa.s、又は約1400mPa.s~約1900mPa.s、又は約1500mPa.s~約1900mPa.sである、請求項1に記載のデンプン組成物。
【請求項6】
前記デンプン組成物の最終粘度が、約700mPa.s超、又は約800mPa.s超、又は約900mPa.s超、又は約1000mPa.s超、又は約1100mPa.s超である、請求項1~5のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項7】
前記デンプン組成物の最終粘度が、約300mPa.s超、又は約400mPa.s超、又は約500mPa.s超、又は約600mPa.s超である、請求項1~5のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項8】
前記デンプン組成物の最終粘度が、約700mPa.s~約1200mPa.s、又は約800mPa.s~約1200mPa.s、又は約900mPa.s~約1200mPa.sである、請求項1~5のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項9】
前記デンプン組成物の最終粘度が、約400mPa.s~約900mPa.s、又は約500mPa.s~約800mPa.s、又は約500mPa.s~約700mPa.sである、請求項1~5のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項10】
前記デンプン組成物の最終粘度に対する前記デンプン組成物のピーク冷粘度の比が約1.0以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項11】
前記デンプン組成物の最終粘度に対する前記デンプン組成物のピーク冷粘度の比が、約1.1以上、又は約1.2以上、又は約1.3以上、又は約1.4以上、又は約1.5以上、又は約1.6以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項12】
前記デンプン組成物の最終粘度に対する前記デンプン組成物のピーク冷粘度の比が、約2.0以上、又は約2.1以上、又は約2.2以上、又は約2.3以上、又は約2.4以上、又は約2.5以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項13】
前記デンプン組成物が、約700mPa.sを超えるピーク冷粘度及び約1.0以上の最終粘度に対するピーク冷粘度の比を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項14】
前記デンプン組成物が、約1500mPa.sを超えるピーク冷粘度及び約2.5以上の最終粘度に対するピーク冷粘度の比を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項15】
少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%の調理度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項16】
前記デンプンのアミロース含有量が、約10重量%超、又は約20重量%超、又は約30重量%超、又は約40重量%超、又は約50重量%超、又は約60重量%超、又は約70重量%超、又は約80重量%超である、請求項1~15のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項17】
前記デンプンのアミロース含有量が、約50重量%~約80重量%である、請求項1~16のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項18】
前記修飾デンプンが、ヒドロキシル官能性をエーテル、エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される官能性で置換するように化学修飾されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項19】
前記修飾デンプンが、ヒドロキシアルキルC2-6基を含むように化学修飾されているか、又はカルボン酸の無水物との反応によって修飾されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項20】
前記修飾デンプンが、0.01~1.5の置換度を有するように化学修飾されている、請求項1~19のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項21】
前記デンプン又は修飾デンプンが、小麦デンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、キャッサバデンプン、エンドウデンプン、カラスムギデンプン、クズウコンデンプン、米デンプン及びそれらの混合物から独立して選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項22】
少なくとも1種の水溶性高分子をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種の水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリオキシアルキレン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項24】
前記デンプンが少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の可塑剤が水ではない、請求項24に記載のデンプン組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1種の可塑剤が、1種以上のポリオールを含む、請求項25に記載のデンプン組成物。
【請求項27】
1種以上のフィラー又はナノ材料をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項28】
フィラーの量が、前記デンプン組成物の総乾燥重量に基づいて最大20重量%である、請求項27に記載のデンプン組成物。
【請求項29】
前記ナノ材料が、デンプン・ナノコンポジット内で少なくとも部分的に剥離されている、請求項27又は28に記載のデンプン組成物。
【請求項30】
前記ナノ材料が、粘土、カーボンナノチューブ、セルロースナノウィスカ及びキチンウィスカを含む、請求項27に記載のデンプン組成物。
【請求項31】
前記粘土が、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、マイカ、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト、マガダイト、ケニヤアイト、スチーブンサイト、ボルコンスコアイト又はそれらの混合物を含む、請求項30に記載のデンプン組成物。
【請求項32】
前記ナノ材料が疎水的又は親水的に変性されている、請求項27~31のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項33】
前記ナノ材料が、変性粘土、特に疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土を含む、請求項32に記載のデンプン組成物。
【請求項34】
前記フィラー又はナノ材料が、前記デンプン組成物の総重量に基づいて、10重量%まで、又は5重量%まで、又は3重量%までの量で存在する、請求項27~33のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1項に記載のデンプン組成物を含むフィルム。
【請求項36】
フィルムが5~750ミクロンの厚さを有する、請求項35に記載のフィルム。
【請求項37】
前記フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定した場合に25%未満のヘイズを有する、請求項35又は36に記載のフィルム。
【請求項38】
前記ヘイズが20%未満又は18%未満である、請求項37に記載のフィルム。
【請求項39】
ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、請求項35~38のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項40】
50%相対湿度(RH)で0.05cmmm/m.24h.atm未満、又は0.03cm.mm./m.day.atm未満、又は、50%相対湿度(RH)で0.01cmmm/m.24h.atm未満の酸素透過係数を有する、請求項35~39のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項41】
請求項35~40のいずれか一項に記載のフィルムを含む層と、少なくとも1つの他の層とを含む多層フィルム。
【請求項42】
前記少なくとも1つの他の層が、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ二塩化ビニリデン、セルロース、耐水性タンパク質層、シリカ含有耐水層及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の多層フィルム。
【請求項43】
少なくとも約450kJ/kgの比機械エネルギーを付与するのに十分な条件下でデンプン組成物を溶融加工する工程を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載のデンプン組成物の製造方法。
【請求項44】
前記デンプン組成物に付与される前記比機械エネルギーが、少なくとも約500kJ/kg、又は少なくとも約600kJ/kg、又は少なくとも約700kJ/kg、又は少なくとも約800kJ/kg、又は少なくとも約900kJ/kgである、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、押出デンプン組成物及びその調製方法に関する。組成物は、低ヘイズ、高強度及び高ガスバリア性などの有利な特性を有するフィルムに形成され得る。デンプン組成物は、広範囲の用途、特に包装用薄膜を製造するのに使用されるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
デンプン材料の押出クッキングは、過去20年間に広く研究されてきた。押出機におけるデンプン特性の転化率は、装置及び原料パラメータにおける多数の変数に依存する。独立したプロセスパラメータには、スクリュー速度、スクリュー構成、製品水分含有量、温度、総質量流量、及びダイ構成が含まれる。
【0003】
デンプン組成物の押出加工は、デンプンの分解及び組成物中の他の成分とのその相互作用に関する。デンプン、並びに熱的及び機械的投入によるその変換の程度は、最終製品特性を決定する際に支配的な役割を果たす。したがって、デンプン変換の測定は、最終製品の品質を評価するための合理的なアプローチである。デンプン変換の程度は、「調理度」によって説明することができる(Paton,D.and Spratt,W.A.(1981),Simulated approach to the estimation of degree of cooking of an extruded cereal product,Cereal Chem.58:216-220を参照)。
【0004】
オフラインペースト粘度測定は、デンプンの調理度を適切に測定することが示されている(Harper,J.M.(1994),Extrusion Processing of Starch.R.Alexander,J.and Zobel,H.F.(eds.)Developments in Carbohydrate Chemistry,Amer.Assoc.Cereal Chem.,St Paul MN.37-64を参照)。この方法は、温度及び時間の関数としてデンプン組成物溶液の粘度を監視することに関する。
【0005】
これは、水溶性「調理済み」成分、試験中にペースト化する粒状「未調理」成分、及びデンプン転化率の程度を示す全体的な粘度を定量化するために使用されている。Ryuらは、Rapid Visco Analyser(RVA)がデンプン分解の比較的迅速な測定を提供するので、オフライン制御に使用できることを示唆した(Ryu,G.H.,Neumann,P.E.and Walker,C.E.(1993),Pasting of wheat flour extrudates containing conventional baking ingredients.J.Food Sci.58(3):567-573)。RVAは、過剰水中で比較的低い剪断下で粘度を測定し、試験全体を通してペースト粘度を測定することによって、サンプルがどのように調理されているかの指標を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Paton,D.and Spratt,W.A.(1981),Simulated approach to the estimation of degree of cooking of an extruded cereal product,Cereal Chem.58:216-220
【非特許文献2】Harper,J.M.(1994),Extrusion Processing of Starch.R.Alexander,J.and Zobel,H.F.(eds.)Developments in Carbohydrate Chemistry,Amer.Assoc.Cereal Chem.,St Paul MN.37-64
【非特許文献3】Ryu,G.H.,Neumann,P.E.and Walker,C.E.(1993),Pasting of wheat flour extrudates containing conventional baking ingredients.J.Food Sci.58(3):567-573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デンプン加工の進歩にもかかわらず、望ましい特性、特に、薄膜において有利な機械的、光学的及びガスバリア性能を付与する特性を有するデンプン組成物を提供する必要性が依然として存在する。本開示は、この必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書における任意の先行刊行物(又はそれに由来する情報)又は任意の既知の事項への言及は、先行刊行物(又はそれに由来する情報)又は既知の事項が、本明細書が関連する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成することの認識又は承認又は任意の形態の示唆として解釈されず、そのように解釈されるべきではない。
【0009】
一態様において、本開示は、少なくとも一種のデンプン、化学修飾デンプン、又はこれらの混合物を含み、約700mPa.sを超えるピーク冷粘度(cold viscosity)を有するデンプン組成物を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、ピーク冷粘度(低温粘度)は、約750mPa.s超、又は約800mPa.s超、又は約850mPa.s超、又は約900mPa.s超、又は約950mPa.s超、又は約1000mPa.s超、又は約1050mPa.s超、又は約1100mPa.s超、又は約1150mPa.s超、又は約1200mPa.s超、又は約1250mPa.s超、又は約1300mPa.s超であり得る。
【0011】
他の実施形態では、ピーク冷粘度は、約1350mPa.s超、又は約1400mPa.s超、又は約1450mPa.s超、又は約1500mPa.s超、又は約1550mPa.s超、又は約1600mPa.s超であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物のピーク冷粘度は、約700mPa.s~約1300mPa.s、又は約800mPa.s~約1300mPa.s、又は約900mPa.s~約1300mPa.s、又は約700mPa.s~約1200mPa.s、又は約700mPa.s~約1100mPa.s、又は約700mPa.s~約1000mPa.s、又は約700mPa.s~約900mPa.sであり得る。
【0013】
他の実施形態では、デンプン組成物のピーク冷粘度は、約1300mPa.s~約2000mPa.s、又は約1300mPa.s~約1900mPa.s、又は約1300mPa.s~約1800mPa.s、又は約1300mPa.s~約1700mPa.s、又は約1400mPa.s~約2000mPa.s、又は約1400mPa.s~約1900mPa.s、又は約1500mPa.s~約1900mPa.sであり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物の最終粘度は、約700mPa.s超、又は約800mPa.s超、又は約900mPa.s超、又は約1000mPa.s超、又は約1100mPa.s超である。
【0015】
他の実施形態において、デンプン組成物の最終粘度は、約300mPa.s超、又は約400mPa.s超、又は約500mPa.s超、又は約600mPa.s超である。
【0016】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物の最終粘度は、約700mPa.s~約1200mPa.s、又は約800mPa.s~約1200mPa.s、又は約900mPa.s~約1200mPa.sであり得る。
【0017】
他の実施形態では、デンプン組成物の最終粘度は、約400mPa.s~約900mPa.s、又は約500mPa.s~約800mPa.s、又は約500mPa.s~約700mPa.sであり得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物のピーク冷粘度の、デンプン組成物の最終粘度に対する比は、約1.0以上である。
【0019】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物のピーク冷粘度の、デンプン組成物の最終粘度に対する比は、約1.1以上、又は約1.2以上、又は約1.3以上、又は約1.4以上、又は約1.5以上、又は約1.6以上である。
【0020】
他の実施形態において、デンプン組成物のピーク冷粘度の、デンプン組成物の最終粘度に対する比は、約2.0以上、又は約2.1以上、又は約2.2以上、又は約2.3以上、又は約2.4以上、又は約2.5以上である。
【0021】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物は、約700mPa.sを超えるピーク冷粘度及び約1.0以上の最終粘度に対するピーク冷粘度の比を有する。
【0022】
他の実施形態では、デンプン組成物は、約1500mPa.sを超えるピーク冷粘度及び約2.5以上の最終粘度に対するピーク冷粘度の比を有する。
【0023】
本明細書で使用される場合、ピーク冷粘度及び最終粘度は、Rapid Visco Analyser Model RVA Super 3(Newport Scientific、シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)を使用して以下の手順によって測定される粘度として定義される。
【0024】
試験すべき2.5gのデンプン組成物(乾燥重量基準)を約25gの蒸留水と混合して、デンプン成分に基づいて28gの総試験溶液重量を得る。機器の混合パラメータは以下の通りである:960rpmで30秒間及び160rpmで36.5分間混合する。機器の温度パラメータは以下の通りである:30℃で15分間、30℃から95℃に5分間加熱し、95℃で3分間保持し、95℃から30℃に3分間冷却し、30℃で11分間保持し、合計37分間である。ピーク冷粘度は、加熱開始前の最大粘度、すなわち30℃での最初の15分間の最大粘度である。最終粘度は、30℃での11分間の保持期間中の最大粘度である。
【0025】
本明細書に開示される粘度特性を有するデンプン組成物は、有利な機械的、ガスバリア性及び/又は光学的特性を有し得ることが発見された。
【0026】
本開示の別の態様は、少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はこれらの混合物を含み、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%の調理度を有するデンプン組成物を提供する。
【0027】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つによるデンプン組成物を製造する方法であって、デンプン組成物に少なくとも約400kJ/kgの比機械エネルギー(SME)を付与するのに十分な条件下でデンプン組成物を溶融加工する工程を含む方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、デンプン組成物に付与される比機械エネルギーは、少なくとも約500kJ/kg、又は少なくとも約600kJ/kg、又は少なくとも約700kJ/kg、又は少なくとも約800kJ/kg、又は少なくとも約900kJ/kgである。
【0029】
<デンプン又は化学修飾デンプン>
いくつかの実施形態では、デンプン又は化学修飾デンプンは、小麦デンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、キャッサバデンプン、エンドウデンプン、カラスムギデンプン、クズウコンデンプン又は米デンプン及びそれらの混合物から独立して選択され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、化学修飾デンプンは、存在する場合、未修飾デンプンと同じデンプンに基づいていてもよい。
【0031】
他の実施形態では、化学修飾デンプンは、未修飾デンプンとは異なるデンプンに基づいていてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、デンプン組成物は、デンプン及び/又は化学修飾デンプンの混合物、例えば高アミロースデンプン及び低アミロースデンプンの混合物を含んでいてもよく、デンプン成分の1つ以上が化学修飾されていてもよい。
【0033】
本明細書に開示される態様のいずれか1つ以上によれば、少なくとも1種のデンプン及び/又は修飾デンプンのアミロース含有量は、10重量%超、又は20重量%超、又は30重量%超、又は40重量%超、又は50重量%超、又は60重量%超、又は70重量%超、又は80重量%超であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、デンプン及び/又は修飾デンプンのアミロース含有量は、50重量%~80重量%であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、化学修飾デンプンは、ヒドロキシル官能基をエーテル及びエステル並びにそれらの混合物からなる群から選択される官能基で置換するように修飾される。
【0036】
好ましいエステルは、ヘプタノエート又は低級同族体を含む。特に好ましいエステルにはアセテートが含まれる。
【0037】
いくつかの実施形態において、化学修飾デンプンは、ヒドロキシアルキルC2-6基を含むように修飾されてもよく、又はカルボン酸の無水物との反応によって修飾されてもよい。好ましくは、修飾デンプンは、ヒドロキシC2-4基を含むように修飾されていてもよい。より好ましくは、修飾デンプンは、ヒドロキシプロピル基を含むように修飾されていてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、化学修飾デンプンは、0.01~3.0、又は0.01~2.5、又は0.01~2.0、又は0.01~1.5の置換度を有するように修飾され得る。置換度は、無水グルコース単位当たりの置換基の平均数を定義する。したがって、定義により、デンプンの可能な最大置換度は3.0である。
【0039】
<水溶性高分子>
いくつかの実施形態において、デンプン組成物は、1種以上の水溶性高分子をさらに含む。
【0040】
例としては、限定されないが、水溶性高分子は、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン又はそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキシド並びにそれらの混合物は、好ましい水溶性高分子である。
【0041】
好ましくは、デンプン組成物は、1~20重量%の水溶性高分子、より好ましくは4~12重量%の水溶性高分子を含む。
【0042】
デンプン組成物の水溶性高分子成分は、好ましくは生分解性であり、デンプンの加工温度に適合する低い融点を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、デンプン組成物は、水、好ましくは最大20重量%の水、より好ましくは最大12重量%の水を含み得る。いくつかの実施形態では、水は可塑剤として機能し得る。いくつかの実施形態では、水は、組成物中に存在する唯一の可塑剤であり得る。
【0044】
<可塑剤>
いくつかの実施形態において、デンプン組成物は、水以外の少なくとも1種の可塑剤をさらに含む。
【0045】
デンプン組成物は、1種以上のポリオール可塑剤、例えば最大50重量%の1種以上のポリオール可塑剤、又は最大25重量%の1種以上のポリオール可塑剤を含み得る。例としては、限定されないが、ポリオール可塑剤は、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0046】
デンプン組成物は、5重量%未満のポリオール可塑剤を含み得る。いくつかの実施形態において、デンプン組成物は、ポリオール可塑剤を実質的に含まなくてもよい。
【0047】
様々な可塑剤及び保湿剤は、特に水分含有量及び相対湿度への依存性の低減において、加工及び制御を助け、機械的特性を安定化するための、デンプン組成物への有用な添加剤である。所望の可塑剤含有量は、主に、押出及び任意のその後のブロー又は延伸プロセス中の必要な加工挙動、並びに最終製品の必要な機械的特性に依存する。
【0048】
可塑剤は三重の役割を果たす:
1.押出配合プロセスに適したレオロジーを提供する
2.製品の機械的特性にプラスの影響を及ぼす
3.老化防止剤又は結晶化防止剤として作用し得る。
【0049】
ソルビトール、グリセロール及びマルチトールのブレンドは、キシリトール並びにキシリトールとソルビトール及びグリセロールとのブレンドのように、製剤の機械的特性を改変するのに特に適している。OH基の数が多いほど、可塑剤は結晶化を低減するのにより効果的である。ソルビトール、マルチトール及びキシリトールは、特に良好な保湿剤である。グリセロールは、加工中にポリビニルアルコールを溶解するのに役立つ。ソルビトールを単独で使用すると、結晶化が観察される。いくつかのポリオール(特にソルビトール及びグリセロール)は、表面への移動を示すことがあり、ソルビトールの場合は不透明な結晶膜、又はグリセロールの場合は油性膜のいずれかが形成され得る。様々なポリオールをブレンドすると、この効果は様々な程度に抑制される。乳化剤としてモノステアリン酸グリセロール及びステアロイル乳酸ナトリウムを添加することにより、安定化を向上させることができる。
【0050】
<その他の可塑剤>
ポリエチレングリコール化合物は、乳化剤、可塑剤又は保湿剤として使用することができ、耐水性を高めることもできる。
【0051】
代替的な可塑剤は、エポキシ化亜麻仁油又はエポキシ化大豆油である。これらの添加剤は疎水性であるため、材料の水分感受性を改善させ得る。好ましくは乳化系で安定化されたこれらの可塑剤は、加工を助けるが、ヤング率の有意なさらなる低下をもたらさない。クエン酸トリブチル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、及びアセチルトリエチルシトレートを含む、PVC産業でより一般的に使用される他の可塑剤が適切であり得る。
【0052】
カラギーナン、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム又はゼラチンなど、(共)可塑剤として作用し得る20%までの保湿剤又は水結合剤又はゲル化剤がデンプン組成物中に存在し得る。糖又はグルコースなどの他の保湿剤を使用してもよい。典型的には増粘剤として食品に使用され、冷水に部分的に可溶性であり、温水に完全に可溶性である、カラギーナンなどのバイオポリマーは、機械的特性を調整するのに適している。水を結合することにより、これらの成分は有意な可塑化機能を有し得る。機械的特性を改善し、水分感受性を低下させるためにゼラチンを添加してもよい。キサンタンガムは、高い保水能力を有し、乳化剤としても作用し、デンプン組成物において抗老化効果を有する。アラビアガムはまた、品質改良剤及びフィルム形成剤として使用されてもよく、親水性炭水化物及び疎水性タンパク質は、その親水コロイド乳化及び安定化特性を可能にする。グアーガムは、デンプン組成物において同様の結晶化防止効果を有する。別の適切な保湿剤は、グリセリルトリアセテートである。
【0053】
<脂肪酸及び/又は脂肪酸塩>
さらなる実施形態では、デンプン組成物は潤滑剤を含み得る。好ましい潤滑剤は、C12-22脂肪酸及び/又はC12-22脂肪酸塩である。好ましくは、C12-22脂肪酸及び/又はC12-22脂肪酸塩は、5重量%までの量で存在する。
【0054】
デンプン組成物は、好ましくは0.1~1.5重量%のC12-22脂肪酸及び/又はC12-22脂肪酸塩を含む。脂肪酸及び/又は脂肪酸塩の成分は、より好ましくは0.3~1%の濃度で存在する。ステアリン酸が特に好ましい成分である。ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩も使用され得る。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸及びベヘン酸も好適な酸である。
【0055】
<フィラー及びナノ材料>
いくつかの実施形態では、デンプン組成物は、1種以上のフィラー又はナノ材料をさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、フィラーの量は、デンプン組成物の総乾燥重量に基づいて最大20重量%である。
【0057】
いくつかの実施形態では、フィラー又はナノ材料は、デンプン・ナノコンポジット内で剥離される。
【0058】
いくつかの実施形態では、ナノ材料は、粘土、カーボンナノチューブ、セルロースナノウィスカ及びキチンウィスカを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、粘土は、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、マイカ、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト、マガダイト、ケニヤアイト、スチーブンサイト、ボルコンスコアイト又はそれらの混合物を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、ナノ材料は、疎水的又は親水的に変性されている。
【0061】
いくつかの実施形態では、ナノ材料は、変性された粘土、特に疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土であってもよい。
【0062】
「疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土」又は「疎水性粘土」は、好ましくは、長鎖アルキル基を含む界面活性剤との交換によって変性された粘土である。長鎖アルキル基は、鎖あたり4又は5又は6を超える炭素原子を含み得る。好ましくは、アルキル基は極性置換基を含有しない。好ましい界面活性剤は、長鎖アルキルアンモニウムイオン、例えばモノ又はジC12-C22アルキルアンモニウムイオンを含む。好ましくは、ヒドロキシル又はカルボキシルなどの極性置換基は、長鎖アルキルに結合していない。疎水的に変性された粘土の適切な例としては、Nanocor,Inc.製のNANOMER I.40P又はSouthern Clay Products,Inc.製のCLOISITE(商標)20A又はCLOISITE(商標)10Aが挙げられる。
【0063】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される態様又は実施形態のいずれか1つ以上によるデンプン組成物を含む製造品を提供する。
【0064】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される態様又は実施形態のいずれか1つ以上によるデンプン組成物を含む熱成形物品を提供する。
【0065】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される態様又は実施形態のいずれか1つ以上によるデンプン組成物を含むフィルムを提供する。
【0066】
フィルムの厚さは、1ミクロン~1000ミクロン、又は5ミクロン~800ミクロン、又は10ミクロン~600ミクロンであってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、フィルムは例外的な透明度を有する。いくつかの実施形態では、膜は、厚さ150ミクロンの膜で測定した場合に20%未満のヘイズを有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、フィルムは、ASTM D3420によって測定される高いスペンサー衝撃強度(spencer impact strength)を有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、フィルムは、ASTM D3420に従って150ミクロンのフィルム上で測定した場合に18mN/μmを超えるスペンサー衝撃強度を有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、フィルムは、ASTM D3420に従って150ミクロンのフィルム上で測定した場合に、20%未満のヘイズ及び18mN/μmを超えるスペンサー衝撃(spencer impact)を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、フィルムは高いガスバリア性を有する。いくつかの実施形態では、フィルムは、50%相対湿度(RH)で0.05cmmm/m.24h.atm未満、又は50%相対湿度(RH)で0.01cmmm/m.24h.atm未満の酸素透過係数を有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示によるフィルムは、多層フィルム構造体の一部を形成してもよい。
【0073】
したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に開示される態様又は実施形態のいずれか1つ以上によるデンプン組成物を含む少なくとも1つの層と、少なくとも1つの他の層とを含む多層フィルムを提供する。
【0074】
他の層は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ二塩化ビニリデン、セルロース、耐水性タンパク質層、シリカ含有耐水層及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0075】
本開示のさらなる特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】温度及び時間の関数としてのデンプン組成物溶液粘度のプロットである。
【0077】
図2】温度及び時間の関数としてのデンプン組成物溶液粘度のプロットである。
【0078】
図3】転化率の関数としてのデンプン組成物の冷ピーク及び最終溶液粘度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下は、当業者が本開示を実施するのを助けるために提供される本開示の詳細な説明である。当業者は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態の修正及び変形を行うことができる。
【0080】
本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料もまた、本開示の実施又は試験に使用することができるが、ここで好ましい方法及び材料を説明する。
【0081】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。したがって、例えば、「デンプン」への言及は、1種よりも多いデンプンなどを含み得る。
【0082】
本明細書を通して、「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」という用語又はその文法的変形の使用は、記載された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するために解釈されるべきであるが、具体的に言及されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0083】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、又は文脈から明らかでない限り、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差内であると理解される。「約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で提供されるすべての数値は、「約」という用語によって修飾することができる。
【0084】
本明細書で提供される範囲は、範囲内のすべての値の省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0085】
本明細書で使用される場合、デンプン又はデンプン組成物に適用される場合の「調理度(degree of cook)」という用語は、デンプン又はデンプン組成物の転化率パーセンテージと同義であり、未調理の顆粒デンプンが糊化されるか又は水溶性熱可塑性デンプンに変換される程度を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、単位kJ/kgを有する「比機械エネルギー」(Specific Mechanical Energy, SME)という用語は、原料スループット1kg当たりのスクリューによって与えられる機械エネルギー入力を指す。
【0087】
<デンプンのアミロース含量>
本明細書に開示される態様又は実施形態のいずれか1つ以上によれば、少なくとも1種のデンプン又は修飾デンプンのアミロース含有量は、10重量%超、又は20重量%超、又は30重量%超、又は40重量%超、又は50重量%超、又は60重量%超、又は70重量%超、又は80重量%超であり得る。
【0088】
好ましくは、デンプン又は修飾デンプンのアミロース含有量は、50重量%以上である。
【0089】
いくつかの好ましい実施形態では、デンプン又は修飾デンプンのアミロース含有量は、50%~80%(重量基準)であり得る。
【0090】
好ましいデンプンは、50重量%以上のアミロース含有量を有するトウモロコシデンプンである。別の好ましいデンプンは、50%以上のアミロース含有量を有するタピオカデンプンである。
【0091】
<修飾デンプン>
好ましい修飾デンプン成分は、ヒドロキシプロピル化デンプンである。他の置換基は、ヒドロキシエーテル置換を形成するためのヒドロキシエチル若しくはヒドロキシブチルであってもよく、又は無水マレイン酸、フタル酸若しくはオクテニルコハク酸無水物などの無水物を使用してエステル誘導体を製造することができる。
【0092】
置換度(置換される単位中の水酸基の平均数)は、0.05~1.5であることが好ましい。
【0093】
別の好ましい修飾デンプンは、ヒドロキシプロピル化デンプンであり、ここで、デンプンは50重量%以上のアミロース含有量を有する。好ましい修飾デンプン成分は、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、例えばIngredionによって市販されているECOFILM(商標)又はPenfordによって市販されているGelose(商標)A939である。
【0094】
<水溶性高分子>
例としては、限定されないが、水溶性高分子は、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド又はそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキシド並びにそれらの混合物は、好ましい水溶性高分子である。
【0095】
好ましくは、デンプン組成物は、1~20重量%の水溶性高分子、より好ましくは4~12重量%の水溶性高分子を含む。
【0096】
デンプン組成物の水溶性高分子成分は、好ましくは生分解性であり、デンプンの加工温度に適合する低い融点を有する。
【0097】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、80~99.8モル%であることが好ましい。鹸化度は、85モル%以上であることがより好ましく、88モル%以上であることがより好ましい。ここで、鹸化度とは、ポリビニルアルコール中の水酸基とエステル基の合計に対する水酸基のモル分率をいう。
【0098】
ポリビニルアルコールは、ビニルアルコール単位以外の他の単量体単位をさらに含んでいてもよい。その他の単量体単位としては、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン;アクリル酸とその塩;メタクリレートエステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトリルアミドプロパンスルホネート及びその塩;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミドN-エチルメタクリルアミド、プロパンスルホネート及びその塩(例えば、四級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルエーテル、例えばn-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、及び2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパン;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどの塩化ビニル;塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデンなどのビニリド;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリールオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル;酢酸ビニルイソプロペニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバラン酸ビニル、シャプロン酸ビニル、キャリー酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ビニルエステル単量体、例えばオレイン酸ビニル、安息香酸ビニルが例示される。鹸化されていない不飽和単量体に由来する単量体単位も、他の単量体単位に含まれる。他の単量体単位の含有量は、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0099】
ポリビニルアルコールの製造方法は、特に限定されない。例えば、ビニルアルコール単量体及び任意に他の単量体を重合してもよく、得られた重合体を鹸化し、ビニルアルコール単位に変換してもよい。
【0100】
重合方法の例としては、バッチ重合、半バッチ重合、連続重合、半連続重合等が挙げられる。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の既知の方法が挙げられる。既知の方法を重合体の鹸化に適用することができる。例えば、重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解させた状態で行うことができる。このとき使用できるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましい。
【0101】
ポリビニルアルコールは、JIS Z 8803に準拠して測定される4%水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上であることが好ましく、2mPa・s以上であることがより好ましく、3mPa・s以上であることがより好ましく、45mPa・s以下であることが好ましく、35mPa・s以下であることがより好ましい。
【0102】
ポリオキシアルキレンは、ポリアルキレンオキシド及びポリアルキレングリコールを表し、下記式(1):
(式中、Rはアルキレン基であり、nは1以上である)
で表される単位を含む。ポリオキシアルキレンは、2種類以上の異なる単位(1)を有していてもよい。
【0103】
式(1)において、アルキレン基、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、及びデシレン基等のアルキレン基の炭素数は、2以上10以下である。これらの中でも、炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、エチレン基及び/又はプロピレン基がより好ましい。nが2以上である場合、これらのアルキレン基は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
【0104】
式(1)中、nは、好ましくは5以上、より好ましくは50以上、より好ましくは100以上、好ましくは120,000以下、より好ましくは70,000以下である。ポリオキシアルキレンが異なる単位を含む場合、各構成要素の繰り返し数nは同じであっても異なっていてもよい。
【0105】
ポリアルキレンオキシドとしては、例えば、炭素数2~6のアルキレンオキシドに由来する構造単位を有する重合体が挙げられ、具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリトリメチレンオキシド(ポリオキセタン)、ポリブチレンオキシド、ポリイソブチレンオキシド、又はこれらを構成する単量体の共重合体が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、炭素数2~6のアルキレングリコールに由来する構造単位を有する重合体が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコール、又はこれらを構成する単量体の共重合体が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はこれらを構成する単量体の共重合体であることが好ましい。共重合体としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などが好ましい。
【0106】
ポリオキシアルキレンは、単位(1)以外の他の単量体に由来する単位を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレンが共重合体である場合、該共重合体の重合体形態は特に限定されず、ランダム、ブロック、グラフト、テーパーなどであってもよい。
【0107】
ポリオキシアルキレンの重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、5,000,000以下であることが好ましく、3,000,000以下であることがより好ましい。
【0108】
市販のポリオキシアルキレンを用いることもできる。ポリオキシアルキレン(C)の代表的な市販品の例としては、住友精化株式会社製のAlcox(商標)E-75G、Alcox(商標)L-11、Alcox(商標)L-6、Alcox(商標)EP1010N、及びPeo(商標)PEO-1、PEO-2等が挙げられる。
【0109】
<用途>
本明細書に開示されるデンプン組成物は、様々な用途に有用であり得る。例えば、デンプン組成物は、当技術分野で十分に既知の方法を利用して物品に熱成形され得る。例示的な熱成形物品は、トレイ、容器又は蓋を含み得る。デンプン組成物はまた、例えば、肉、家禽、魚、パスタ、精肉、総菜及びチーズを含む傷みやすい食品の貯蔵寿命を延ばすためのバリアトレイを含む多層フィルム中の成分として有用であり得る。デンプン組成物は、ガス透過の制御を必要とするガス置換包装(MAP)にも有用であり得る。
【0110】
<多層フィルム>
本明細書に開示されるデンプン組成物は、多層フィルムを製造するのに有用であり得、前記多層フィルムは:
(a)本明細書に開示される態様又は実施形態のいずれか1つによるデンプン組成物を含む少なくとも1つの層;及び、
(b)少なくとも1つの他の層を備える。
【0111】
少なくとも1つの他の層は、38℃及び90%の相対湿度で測定して1g.mm/m.24hr.atm未満の水蒸気透過係数を有し得る。
【0112】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の総厚は、多層フィルムの総厚の20%より大きくてもよい。
【0113】
少なくとも1つの他の層の水蒸気透過係数は、38℃及び相対湿度90%で測定して0.5g.mm/m.24hr.atm未満、又は38℃及び相対湿度90%で測定して0.2g.mm/m.24hr.atm未満であってもよい。
【0114】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の総厚は、多層フィルムの総厚の30%超、又は多層フィルムの総厚の40%超、又は多層フィルムの総厚の50%超であり得る。デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の総厚は、多層フィルムの総厚の60%より大きくてもよい。
【0115】
デンプン層は、低い酸素透過係数(OPC)を有し得る。デンプン層は、50%相対湿度(RH)で0.6cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有する。デンプン層は、50%RHで0.3cmmm/m.24h.atm未満のOPC、又は50%RHで0.2cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。デンプン層は、50%RHで0.1cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよく、又はデンプン層は、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。
【0116】
デンプン層は、75%相対湿度(RH)で1.2cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。デンプン層は、75%RHで0.6cmmm/m.24h.atm未満のOPC、又は75%RHで0.2cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。デンプン層は、75%RHで0.1cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよく、又はデンプン層は、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。
【0117】
OPCは、長期間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、少なくとも10日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、20日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、30日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、30日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。
【0118】
OPCは、長期間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、少なくとも10日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、20日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、30日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、30日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。
【0119】
多層フィルムは、低い酸素透過係数(OPC)を有していてもよい。多層フィルムは、50%相対湿度(RH)で0.6cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有する。多層フィルムは、50%RHで0.3cmmm/m.24h.atm未満のOPC、又は50%RHで0.2cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。多層フィルムは、50%RHで0.1cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよく、又は多層フィルムは、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。
【0120】
多層フィルムは、75%相対湿度(RH)で1.2cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有し得る。多層フィルムは、75%RHで0.6cmmm/m.24h.atm未満のOPC、又は75%RHで0.2cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有し得る。多層フィルムは、75%RHで0.1cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよく、又は多層フィルムは、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のOPCを有してもよい。
【0121】
OPCは、長期間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、少なくとも10日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、20日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、30日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、30日間、50%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。
【0122】
OPCは、長期間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、少なくとも10日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、20日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得るか、又はOPCは、30日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。OPCは、30日間、75%RHで0.05cmmm/m.24h.atm未満のままであり得る。
【0123】
そのため、多層フィルムは、長期間にわたって酸素バリア性の性能が向上する。平衡含水率に達する時間は、制御された水蒸気透過率の他の層を使用して延長され得る。デンプン層内の平衡%含水率は、他の層材料内の%相対湿度/%含水率勾配のために低くなり得る。
【0124】
ガスバリア性能に関するこのような寿命は、包装された傷みやすい食品の貯蔵寿命を延ばす上で明らかに望ましい。
【0125】
有利には、再生可能な観点から、多層フィルムは、高い割合の生分解性デンプンを含有し得る。
【0126】
多層フィルム及び多層フィルム内の各層の厚さは、最終用途の正確な性質に応じて変化し得る。
【0127】
多層フィルムの総厚は、10~1000ミクロンであってもよい。多層フィルムの総厚は、10~100ミクロン、又は20~80ミクロンであってもよい。多層フィルムの総厚は、100~1000ミクロン又は200~800ミクロンであってもよい。
【0128】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の総厚は、5~600ミクロンであり得る。デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の総厚は、5~50ミクロン、又は10~40ミクロンであり得る。デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の総厚は、100~600ミクロン、又は150~450ミクロンであり得る。
【0129】
少なくとも1つの他の層の総厚は、5~400ミクロンであってもよい。少なくとも1つの他の層の総厚は、5~25ミクロン又は10~20ミクロンであってもよい。少なくとも1つの他の層の総厚は、30~400ミクロン、又は30~300ミクロンであってもよい。
【0130】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層は、100~600ミクロンの総厚を有してもよく、少なくとも1つの他の層は、10~400ミクロンの総厚を有してもよい。デンプン組成物を含む少なくとも1つの層は、100~400ミクロンの総厚を有してもよく、少なくとも1つの他の層は、40~250ミクロンの総厚を有してもよい。
【0131】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層は、10~60ミクロンの総厚を有してもよく、少なくとも1つの他の層は、5~40ミクロンの総厚を有してもよい。
【0132】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層は、水、好ましくは最大20重量%の水、より好ましくは最大12重量%の水を含み得る。水は可塑剤として機能し得る。
【0133】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層の含水率は、環境相対湿度%における平衡含水率であり得る。例えば、平衡含水率は、低%RHで約4%~高%RHで15%超の範囲であり得る。
【0134】
デンプン組成物を含む少なくとも1つの層はまた、最大50重量%の天然の未修飾デンプンを含み得る。
【0135】
デンプン組成物を含む層及び/又は他の層は着色剤を含み得る。
【0136】
<他の層>
他の層(単数又は複数)は、完成した多層フィルムに特定の物理的及び審美的特性を付与するように選択されてもよい。これらの特性は、例えば、土壌、水、海洋又は他の環境における生分解性、防曇性、強度、ヒートシール性、色又は透明性を含み得る。他の層は、低い水蒸気透過率を有する層であってもよい。
【0137】
少なくとも1つの他の層は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ二塩化ビニリデン、セルロース、耐水性タンパク質層、シリカ含有耐水層、又はそれらの混合物を含み得る。他の層の各々は、成分の混合物を含んでもよい。他の層の1つ以上は、異なる材料の複数の層から構成されてもよい。他の層の各々は、異なる材料を含んでもよい。層は、溶媒キャスト又はスパッタコーティングされてもよい。
【0138】
ポリオレフィンフィルム層の調製に適したポリオレフィンは、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン及びプロピレンのインターポリマー、並びにエチレン又はプロピレンと1種以上のC-C10α-オレフィンとのインターポリマー、環状オレフィンポリマー及びコポリマー、二軸配向ポリプロピレン、並びにそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0139】
適切なポリオレフィンは、エチレン又はプロピレンと1種以上のα-オレフィンとのコポリマーから選択されてもよい。高密度ポリエチレン及び直鎖低密度ポリエチレンの両方を利用することができる。
【0140】
適切な直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンとα-オレフィンとのコポリマー(約5~約15重量%)を含み得る。α-オレフィンには、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなど、及びそれらの混合物が含まれ得る。LLDPEの密度は、約0.865~約0.925g/cmの範囲内である。
【0141】
適切な高密度ポリエチレン(HDPE)は、エチレン及びα-オレフィン(約0.1~約10重量%)のエチレンホモポリマー及びコポリマーを含み得る。適切なα-オレフィンには、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなど、及びそれらの混合物が含まれ得る。HDPEの密度は、好ましくは約0.940~約0.970g/cmである。
【0142】
適切な環状オレフィンポリマー及びコポリマーは、ノルボルネン又はテトラシクロドデセンのポリマー及びノルボルネン又はテトラシクロドデセンと1種以上のα-オレフィンとのコポリマーを含み得る。例として挙げられる環状オレフィンポリマーとしては、Topas(Ticona)及びApel(Mitsui)がある。
【0143】
ポリオレフィンと他のポリマーとのブレンドを有利に使用することができる。キャストポリプロピレン(cPP)又は二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、改善された強度及び低いWVTRのために選択され得る。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、強度及び収縮性に関して選択され得る。
【0144】
グラフト化ポリオレフィンなどの修飾ポリオレフィンを利用してよい。好ましいグラフト化ポリオレフィンは、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンである。
【0145】
<ポリオレフィン>
適切なLLDPE、HDPE及びポリプロピレンは、チーグラー、シングルサイト、又は任意の他のオレフィン重合触媒によって製造することができる。チーグラー触媒及び助触媒は当技術分野で十分に既知である。メタロセン・シングルサイト触媒は、シクロペンタジエニル(Cp)又はCp誘導体配位子を含む遷移金属化合物である。例えば、米国特許第4,542,199号明細書は、メタロセン触媒の調製を教示している。ヘテロ原子配位子、例えば、ボラアリール、ピロリル、アザボロリニル又はキノリニルを含有する非メタロセン・シングルサイト触媒も当技術分野で十分に既知である。
【0146】
HDPEは、マルチモーダルであってもよい。「マルチモーダル」とは、重合体が少なくとも2つの成分を含み、その一方が比較的低い分子量を有し、他方が比較的高い分子量を有することを意味する。マルチモーダルポリエチレンは、マルチモーダル重合体生成物を生成する条件を使用する重合によって製造することができる。これは、2つ以上の異なる触媒部位を有する触媒系を使用することによって、又は、異なる段階で異なるプロセス条件(例えば、異なる温度、圧力、重合媒体、水素分圧など)を有する2つ又は多段階重合プロセスを使用することによって達成することができる。マルチモーダルHDPEは、一連の反応器を使用して、反応器の1つのみにコモノマーを添加して、多段階エチレン重合によって製造することができる。
【0147】
少なくとも1つの他の層は、1種以上の再生可能材料由来の1種以上の材料を含んでもよい。ポリエチレン又はポリプロピレンは、1種以上の再生可能材料由来であってもよい。ポリエチレンは、例えばサトウキビ、サトウダイコン又は小麦の穀粒由来のエタノールから調製されてもよい。ポリエチレンテレフタレートは、バイオポリオール由来であってもよい。
【0148】
<接着剤>
少なくとも1つの他の層は、適切な接着剤の使用によってデンプン組成物を含む少なくとも1つの層に固定されてもよい。これは、スリップを最小限に抑え、したがって優れたバリア性能を維持するのに役立ち得る。多数の適切な接着剤が、当業者には明らかであろう。接着剤は、デンプン組成物を含む少なくとも1つの層に化学的に結合するように選択され得る。有用な接着剤は、1種以上のポリウレタン又はエポキシを含み得る。
【0149】
有利には、接着剤の使用は、結合層として利用される変性又はグラフト化された他の層の必要性を克服又は最小化し得る。したがって、例えば、標準的なフィルムポリエチレングレードは、多層フィルム中のポリオレフィンの他の層として首尾よく使用され得る。これは、コストの考慮から望ましい場合がある。
【0150】
他の適切な接着剤としては、EVAコポリマー、アクリルコポリマー及びターポリマー、イオノマー、メタロセン由来ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、エチレンアクリルエステルターポリマー及びエチレンビニルアセテートターポリマーが挙げられ得る。
【0151】
当業者は、熱活性化システム及びUV活性化システムを含む様々なタイプのプラスチックを接着するのに適した他の接着積層技術に精通している。例示的な接着剤としては、ポリウレタン、エポキシ、ナイロン、アクリル及びアクリレートが挙げられ得る。
【0152】
ポリウレタン系接着剤は、デンプン組成物を含む層に他の層を固定するのに特に適し得る。ポリウレタン接着剤は、1種以上のイソシアネートとデンプン層との反応によってその場で調製され得る。デンプンの表面ヒドロキシル官能基とイソシアネートとの反応により、ウレタン官能基が形成される。好ましいイソシアネートはジイソシアネートである。当業者は、ポリウレタン合成の分野で典型的に使用される広範囲から適切なイソシアネートを選択することができるであろう。
【0153】
あるいは、ポリウレタン接着剤は、1種以上のポリオールを含んでもよい。ジイソシアネート及びポリオールを含むこのような2成分系は、当技術分野で十分に既知である。
【0154】
接着剤は、溶媒を含んでも含まなくてもよい。溶媒は、有機系又は水系であり得る。
【0155】
例示的なイソシアネートには、メチレンジフェニルジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートが含まれる。例示的なポリオールとしては、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール及びアジペート系ポリオールなどのポリエステルポリオールが挙げられる。
【0156】
<多層フィルムの製造方法>
多層フィルムは、様々なプロセスによって製造することができる。多層フィルムは、共押出、コーティング、押出コーティング、押出ラミネート及び他のラミネートプロセスによって製造することができる。フィルムはまた、キャスティング又はブローンフィルムプロセスによって製造されてもよい。
【0157】
共押出は結合層を使用する傾向があり、修飾(グラフト化)ポリオレフィンなどの修飾された他の層を利用する。共押出は、一般に、より薄い全体的なゲージを達成することができる。積層は、接着剤を利用するより厚い多層フィルムにより適している。押出コーティングは、インラインプロセスでコーティングされた製品を製造し得る。押出コーティングは、適切な接着樹脂を使用して、ポリオレフィン又はポリエステルのはるかに薄いポリマー層を基材上に塗布することができる。
【0158】
一実施形態において、デンプン組成物を含む内層及び2つの外側ポリオレフィン層を含む3層フィルムが提供される。他の実施形態では、デンプン組成物を含む層とポリオレフィン層との間に接着剤層を使用して、5層フィルムを得てよい。
【0159】
別の実施形態では、デンプン層は、フィルム基材、例えば二軸配向ポリプロピレン又は紙基材上に押出コーティングされてもよく、次いで別の層、例えばポリオレフィン又はポリエステル層がデンプン層上に押出コーティングされてもよい。
【0160】
<多層フィルムの用途>
3層又は5層のフィルムは、デンプン及び他の層を使用する多くの可能な実施形態のうちの1つにすぎないことが当業者には理解されよう。層の数及びそれらの相対的な厚さは、フィルムの機能又は最終用途に応じて調整され得る。
【0161】
さらに、バリアフィルム用途で一般的に利用される他の材料を含むさらなるフィルム層が想定され得る。例示的なさらなるフィルム層は、金属化フィルム、非重合体フィルムなどを含む。
【0162】
多層フィルムは、食料品袋、ストレッチラップ、食品包装フィルム、包装容器、水蒸気及び酸素の低い透過速度が必要とされる包装蓋を含む多くの用途を有し得る。
【0163】
以下、本開示の例示的な実施形態について詳細に説明する。
【0164】
<実施形態1>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、フィルム。
【0165】
<実施形態2>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有する、フィルム。
【0166】
<実施形態3>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有する、フィルム。
【0167】
<実施形態4>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、フィルム。
【0168】
<実施形態5>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有する、フィルム。
【0169】
<実施形態6>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有する、フィルム。
【0170】
<実施形態7>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0171】
<実施形態8>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0172】
<実施形態9>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0173】
<実施形態10>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0174】
<実施形態11>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0175】
<実施形態12>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0176】
<実施形態13>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムが、ASTM F1297に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0177】
<実施形態14>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムが、ASTM F1297に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0178】
<実施形態15>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムが、ASTM F1297に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0179】
<実施形態16>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物及び少なくとも1種のフィラーを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、フィルム。
【0180】
<実施形態17>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物及び少なくとも1種のフィラーを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有する、フィルム。
【0181】
<実施形態18>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物及び少なくとも1種のフィラーを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有する、フィルム。
【0182】
<実施形態19>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、フィルム。
【0183】
<実施形態20>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有する、フィルム。
【0184】
<実施形態21>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有する、フィルム。
【0185】
<実施形態22>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0186】
<実施形態23>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0187】
<実施形態24>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0188】
<実施形態25>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0189】
<実施形態26>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0190】
<実施形態27>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムがASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0191】
<実施形態28>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムが、ASTM F1927に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0192】
<実施形態29>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムが、ASTM F1927に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0193】
<実施形態30>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物を含むデンプン組成物、及び少なくとも1種のフィラーを含み;
上記少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み;
デンプン組成物が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムが、ASTM F1927に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0194】
実施形態1から30のいずれか1つにおいて、フィルムは、本明細書に開示される1種以上の水溶性高分子をさらに含んでもよい。
【0195】
実施形態1から30のいずれか1つ以上において、デンプン組成物は、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン及びそれらの混合物から選択される水溶性高分子をさらに含んでもよい。
【0196】
<実施形態31>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
デンプン組成物が、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、フィルム。
【0197】
<実施形態32>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
デンプン組成物が、1000mPa.sを超える最終粘度を有する、フィルム。
【0198】
<実施形態33>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
デンプン組成物が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有する、フィルム。
【0199】
<実施形態34>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する、フィルム。
【0200】
<実施形態35>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、1000mPa.sを超える最終粘度を有する、フィルム。
【0201】
<実施形態36>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有する、フィルム。
【0202】
<実施形態37>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0203】
<実施形態38>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0204】
<実施形態39>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムが、ASTM D-1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有する、フィルム。
【0205】
<実施形態40>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0206】
<実施形態41>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0207】
<実施形態42>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定して25%未満のヘイズを有し;
フィルムが、ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して、少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、フィルム。
【0208】
<実施形態43>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有し;
フィルムが、ASTM F1927に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0209】
<実施形態44>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、1000mPa.sを超える最終粘度を有し;
フィルムが、ASTM F1927に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0210】
<実施形態45>
10~600ミクロンの厚さを有するフィルムであって、
50~98重量%の少なくとも1種の化学修飾デンプンと、2~20重量%のポリビニルアルコール及び/又はポリオキシエチレンと、0.1~10重量%の親水的に変性された層状ケイ酸塩粘土とを含むデンプン組成物を含み;
上記少なくとも1つのデンプン、化学修飾デンプン又はそれらの混合物が、50重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンを含み:
デンプン組成物が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の調理度を有し;
フィルムが、ASTM F1927に従って0.03cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有する、フィルム。
【0211】
実施形態1から45のいずれか1つにおいて、フィルムは、ASTM F1927に従って相対湿度50%で測定して、0.02cm.mm./m.day.atm未満又は0.01cm.mm./m.day.atm未満又は0.005cm.mm./m.day.atm未満のOPCを有してもよい。
【0212】
実施形態1から45のいずれか1つにおいて、デンプン組成物は、少なくとも約450kJ/kg、又は少なくとも約500kJ/kg、又は少なくとも約600kJ/kg、又は少なくとも約700kJ/kg、又は少なくとも約800kJ/kg、又は少なくとも約900kJ/kgの比機械エネルギーを付与するのに十分な条件下でデンプン組成物を溶融加工する少なくとも工程によって調製され得る。
【0213】
実施形態1から45のいずれか1つに記載のフィルムを含む層と、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ二塩化ビニリデン、セルロース、耐水性タンパク質層、シリカ含有耐水層及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の層とを含む多層フィルムも提供される。
【実施例
【0214】
<粘度測定>
Rapid Visco Analyser Model RVA Super 3(Newport Scientific、シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)を使用して、デンプン組成物溶液の粘度を測定した。RVA粘度は、以下の手順で測定した粘度とする。
【0215】
測定対象のデンプン2.5gを含むデンプン組成物の重量(乾燥重量基準)を、約25gの蒸留水と混合して、組成物中のデンプンの量に基づいて合計重量が28gになるようにし、混合物を機器カップに添加した。機器の混合パラメータは以下の通りである:960rpmで30秒間及び160rpmで36.5分間混合する。機器の温度パラメータは以下の通りである:30℃で15分間、30℃から95℃に5分間加熱し、95℃で3分間保持し、95℃から30℃に3分間冷却し、30℃で11分間保持し、合計37分間である。ピーク冷粘度は、加熱開始前の最大粘度、すなわち30℃での最初の15分間の最大粘度である。最終粘度は、30℃での11分間の保持中の最大粘度である。
【0216】
<特性測定>
デンプン組成物のフィルムの酸素透過率を、ASTM F1927に従って相対湿度50%で測定した。
【0217】
デンプン組成物から調製したフィルムのヘイズを、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定した。
【0218】
デンプン組成物から調製した未成形シート及び二軸配向シート(延伸比2.2)の両方のスペンサー衝撃を、ASTM D3420に従って相対湿度35%で測定した。
【0219】
<デンプン組成物の調製>
<実施例1>
デンプン組成物は、約90重量%の修飾デンプン(ECOFILM(商標)、Ingredion)、約9重量%のポリビニルアルコール(Elvanol(商標) 71-30)及び0.5%のステアリン酸の混合物を押出加工することによって調製した。比機械エネルギー(SME)は、押出機のスクリュー速度を変えることによって制御した。
【0220】
様々なSMEで押し出されたデンプン組成物の溶液粘度を、上記の方法に従ってRVAを使用して測定した。結果を表1にまとめる。比は、RVA最終粘度に対するRVAピーク冷粘度の比を指す。
【表1】

【0221】
図1は、サンプル1~5のRVA粘度プロファイル及び測定中の温度プロファイルを示す。
【0222】
表1及び図1を参照すると、本発明のサンプル2~5の各々は、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有する。これらは、400kJ/kgを超える比機械エネルギーで調製された。低SMEで調製されたサンプル1(比較例)は、低いピーク冷粘度を有する。このサンプルはまた、光学的及び機械的特性が非常に劣っていた。
【0223】
2つの異なるデンプン組成物(表1の組成に従って調製)を用いて調製され、1255及び683mPa.sの冷ピーク粘度を有し、それぞれ1700kJ/kg及び250kJ/kgの比機械エネルギーで調製された150ミクロンフィルムの酸素透過率を、50%相対湿度で測定した。酸素透過率は、それぞれ<0.01及び0.25cm/m.day.atm.であった。高い冷ピーク粘度を有するデンプン組成物を用いて調製したフィルムは、はるかに優れた酸素バリア性を有することが明らかである。
【0224】
<実施例2>
実施例1のサンプル番号4の完全に調理されたデンプン組成物と未調理の組成物(すなわち、非押出加工材料)とのブレンドを、表2に従って調製した。サンプル4の%は、完全に調理されたデンプン組成物への転化率パーセンテージに等しい。これらのブレンドの粘度を測定し、未調理組成物(サンプル6)と比較した。図2は、測定中の温度プロファイルと共にこれらのブレンドのRVA溶液粘度プロファイルを示す。ピーク冷粘度は、サンプル6から11にかけて増加したことは明らかである。ピーク冷粘度及び転化率パーセンテージを使用して、以下の関係を提供する予測モデルを構築した:
ピーク冷粘度=A1*exp(A2*%転化率)
ここで、A1=3.2988695
A2=5.964065
【0225】
予測されたピーク冷粘度を表2にまとめ、測定されたピーク冷粘度及び最終粘度と共に図3に四角として示す。上記式を整理すると、以下の関係が得られ、ピーク冷粘度の測定に基づいて転化率パーセンテージの予測を行うことができる。
%転化率=ln(PCV/A1/A2)
ここで、PCVはピーク冷粘度である。
【0226】
表2を参照すると、700mPa.sを超えるピーク冷粘度を達成するためには、90%以上の調理度(%転化率)が必要である。
【表2】

【0227】
<実施例3>
さらなる一連の実験において、約2重量%のNanomer I.40P(Nanocor,Inc社)疎水的に変性された粘土も存在したことを除いて、実施例1に従ってデンプン組成物を調製した。組成物を様々なSMEで押出加工した。RVAの結果を、生成物の特性と共に表3にまとめる。
【表3】

【0228】
変性粘土の添加は、実施例1の粘土を含まない組成物と比較して衝撃強度及びヘイズの改善をもたらした。しかしながら、400kJ/kgを超えるSMEで処理されたサンプルはすべて、低いSMEで調製されたサンプル(サンプル12)と比較して、低いヘイズ及び高い衝撃強度を有するフィルムを生成した。
【0229】
高比機械エネルギー及び低比機械エネルギーで調製した2つの異なるデンプン組成物(表3の組成に従って調製)を用いて調製した150ミクロンフィルムの酸素透過率を50%相対湿度で測定した。酸素透過率は、それぞれ<0.01及び0.30cm/m.day.atm.であった。高いSMEの条件下で調製されたデンプン組成物を用いて調製されたフィルムは、はるかに優れた酸素バリア性を有したことが明らかである。
【0230】
<実施例4>
さらなる一連の実験では、アミロース含有量を調整するようにデンプン成分を変更したことを除いて、実施例1に従ってデンプン組成物を調製した。これは、アミロース含有量が70重量%である適切な量のECOFILM(商標)を、アミロース含有量が20%であるNational7(Ingredion)と混合することによって達成された。さらに、約2重量%の疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土(CLOISITE(商標) 20A)を添加した。得られた組成物、RVA結果及び生成物特性の詳細を表4にまとめる。
【表4】

【0231】
表4の結果は、デンプンのアミロース含有量を増加させると、フィルムヘイズ及びシート衝撃強度が改善されたことを明確に示している。
【0232】
<実施例5>
さらなる一連の実験では、アミロース含有量を調整するようにデンプン成分を変更したことを除いて、実施例1に従ってデンプン組成物を調製した。これは、アミロース含有量が70重量%である適切な量のECOFILM(商標)を、アミロース含有量が20%であるNational7(Ingredion)と混合することによって達成された。粘土成分は組成物中に存在しなかった。得られた組成物、RVA結果及び生成物特性の詳細を表5にまとめる。
【表5】

【0233】
表5の結果は、デンプンのアミロース含有量を増加させると、フィルムヘイズ及びシート衝撃強度が改善されたことを明確に示している。
【0234】
<実施例6>
さらなる一連の実験では、アミロース含有量を調整するようにデンプン成分を変更したことを除いて、実施例1に従ってデンプン組成(商標)調製した。これは、アミロース含有量が70重量%である適切な量のECOFILM(商標)を、アミロース含有量が20%であるNational7(Ingredion)と混合することによって達成された。さらに、約2重量%のNa+型の層状ケイ酸塩粘土(界面活性剤で修飾されていない)を添加した。得られた組成物、RVA結果及び生成物特性の詳細を表6にまとめる。
【表6】

【0235】
表6の結果は、デンプンのアミロース含有量を増加させると、フィルムヘイズ及びシート衝撃強度が改善されたことを明確に示している。しかしながら、非変性粘土は、粘土又は疎水的に変性された粘土を添加していない組成物と比較して、劣った特性をもたらした。
【0236】
<実施例7>
さらなる一連の実験では、デンプン組成物にポリオール可塑剤を添加したことを除いて、実施例1に従ってデンプン組成物を調製した。ポリオール可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及びキシリトールの混合物であった。得られた組成物及びRVA結果の詳細を表7にまとめる。
【表7】

【0237】
本出願を通して引用された公開特許及び特許出願を含むすべての参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0238】
本明細書に記載された詳細な例及び実施形態は、例示のみを目的として例として与えられており、決して本開示を限定すると見なされないことが理解される。その観点から様々な修正又は変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。例えば、成分の相対量は、所望の効果を最適化するために変更されてもよく、追加の成分が添加されてもよく、及び/又は記載された成分の1つ以上の代わりに類似の成分が置換されてもよい。本開示のシステム、方法、及びプロセスに関連する追加の有利な特徴及び機能は、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。さらに、当業者は、本明細書に記載の開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のデンプン、化学修飾デンプン、又はそれらの混合物を含む押出デンプン組成物であって、
前記押出デンプン組成物が、約700mPa.sを超えるピーク冷粘度を有かつ水溶性高分子を含む、押出デンプン組成物。
【請求項2】
前記ピーク冷粘度が、約750mPa.s超、又は約800mPa.s超、又は約850mPa.s超、又は約900mPa.s超、又は約950mPa.s超、又は約1000mPa.s超、又は約1150mPa.s超、又は約1200mPa.s超、又は約1250mPa.s超、又は約1300mPa.s超である、請求項1に記載のデンプン組成物。
【請求項3】
前記ピーク冷粘度が、約1350mPa.s超、又は約1400mPa.s超、又は約1450mPa.s超、又は約1500mPa.s超、又は約1550mPa.s超、又は約1600mPa.s超である、請求項1に記載のデンプン組成物。
【請求項4】
前記デンプン組成物の最終粘度が、約300mPa.s超、又は約400mPa.s超、又は約500mPa.s超、又は約600mPa.s超である、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項5】
前記デンプン組成物の最終粘度に対する前記デンプン組成物のピーク冷粘度の比が、約1.1以上、又は約1.2以上、又は約1.3以上、又は約1.4以上、又は約1.5以上、又は約1.6以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項6】
少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%の調理度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項7】
前記デンプンのアミロース含有量が、約10重量%超、又は約20重量%超、又は約30重量%超、又は約40重量%超、又は約50重量%超、又は約60重量%超、又は約70重量%超、又は約80重量%超である、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項8】
前記修飾デンプンが、ヒドロキシル官能性をエーテル、エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される官能性で置換するように化学修飾されている、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項9】
前記修飾デンプンが、ヒドロキシアルキルC2-6基を含むように化学修飾されているか、又はカルボン酸の無水物との反応によって修飾されている、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリオキシアルキレン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項11】
前記デンプンが少なくとも1種の可塑剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項12】
1種以上のフィラー又はナノ材料をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のデンプン組成物。
【請求項13】
フィラーの量が、前記デンプン組成物の総乾燥重量に基づいて最大20重量%である、請求項12に記載のデンプン組成物。
【請求項14】
前記ナノ材料が、変性粘土、特に疎水的に変性された層状ケイ酸塩粘土を含む、請求項12に記載のデンプン組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のデンプン組成物を含むフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが、ASTM D1003に従って150ミクロンのフィルム上で測定した場合に25%未満のヘイズを有する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
ASTM D3420に従って35%の相対湿度で測定して少なくとも20mN/μmのスペンサー衝撃を有する、請求項15又は16に記載のフィルム。
【請求項18】
50%相対湿度(RH)で0.05cmmm/m.24h.atm未満、又は0.03cm.mm./m.day.atm未満、又は、50%相対湿度(RH)で0.01cmmm/m.24h.atm未満の酸素透過係数を有する、請求項1517のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
請求項1518のいずれか一項に記載のフィルムを含む層と、少なくとも1つの他の層とを含む多層フィルム。
【請求項20】
少なくとも約450kJ/kgの比機械エネルギーを付与するのに十分な条件下でデンプン組成物を溶融加工する工程を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のデンプン組成物の製造方法。
【国際調査報告】