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特表2022-517149甲殻類からの筋細胞および脂肪細胞の単離および培養
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(54)【発明の名称】甲殻類からの筋細胞および脂肪細胞の単離および培養
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20220225BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220225BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20220225BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N5/10
A23L17/40 A
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564081
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 SG2020050016
(87)【国際公開番号】W WO2020149791
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】10201900357Q
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】62/856,479
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521311012
【氏名又は名称】シオク ミーツ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スリラム、サンディーヤ
(72)【発明者】
【氏名】リング、カー イー
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG70
4B042AG72
4B042AG74
4B042AH01
4B042AP30
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC12
4B065BA02
4B065BA06
4B065BB06
4B065CA41
(57)【要約】
本開示は、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター種由来の再生可能な筋および/または脂肪初代細胞株、不死化細胞株ならびに幹細胞株を形成および作製する方法、ならびに細胞株自体、ならびにそれらから製造されるヒトおよび動物が消費可能な肉製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで増殖される小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞を含む肉製品。
【請求項2】
インビトロで増殖される小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター脂肪細胞をさらに含む、請求項1に記載の肉製品。
【請求項3】
インビトロで増殖される他の小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の肉製品。
【請求項4】
有害な微生物汚染および/または寄生生物汚染が本質的にない、請求項1から3のいずれか一項に記載の肉製品。
【請求項5】
前記小エビおよび/またはエビ筋細胞が、ウシエビ属(Penaeus)、クダヒゲエビ属(Solenocera)、ヨシエビ属(Metapenaeus)、サケエビ属(Parapenaeus)、スベスベエビ属(Parapenaeopsis)、アカエビ属(Metapenaeopsis属)、トラキペナエウス属(Trachypenaeus)、プロトラキペネ属(Protrachypene)、キシホペナエウス属(Xiphopenaeus)、ヒメクダヒゲ属(Hymenopenaeus)、マイマイエビ属(Atypopenaeus)、エウシシオニア属(Eusicyonia)、イシエビ属(Sicyonia)またはリトペナエウス属(Litopenaeus)に属する種に由来する、請求項1から4のいずれか一項に記載の肉製品。
【請求項6】
前記小エビおよび/またはエビ筋細胞が、ウシエビ(Penaeus monodon)および/またはバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)に由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載の肉製品。
【請求項7】
小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター不死化筋細胞株および/または脂肪細胞株を作製する方法であって、
(a)小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞筋細胞および/または脂肪細胞を単離するステップと;
(b)少なくとも1つの筋肉特異的および/または脂肪特異的成長遺伝子をアデノウイルスベクターまたはlentiflash粒子に組み込んで、組換えアデノウイルス構築物またはlentiflash粒子を形成するステップと;
(c)前記単離された小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞筋細胞を(b)の前記組換えアデノウイルス構築物またはlentiflash粒子で形質導入するステップと;
(d)不死化筋細胞株および/または脂肪細胞株を作製するステップと
を含む上記方法。
【請求項8】
小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞人工多能性幹(iPS)細胞を作製する方法であって、
(a)小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞から筋細胞および/または脂肪細胞を単離するステップと;
(b)標的化因子を含むエピソームプラスミドでステップ(a)の前記細胞をトランスフェクトするステップと;
(c)ステップ(b)の前記トランスフェクトされた細胞を培養してiPS細胞を産生するステップと
を含む上記方法。
【請求項9】
消費するための小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞肉製品を製造する方法であって、
(a)小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞を単離するステップと;
(b)前記単離された小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターの筋細胞を再プログラミングして、多能性遺伝子を発現させるステップと;
(c)人工多能性幹(iPS)細胞を単離するステップと;
(d)前記iPS細胞を誘導して筋線維および/または脂肪を産生するステップと;
(e)前記筋繊維および/または脂肪を成長させて、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞肉製品を製造するステップと
を含む上記方法。
【請求項10】
少なくとも外因性MyoD、SMARCD3、Pax3、Pax7、ミオシン-1、インテグリンアルファ-7、カドヘリン-15、ミオゲニン、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子、ミオスタチンおよび成長分化因子、甲殻類血糖上昇ホルモンおよび/またはミオシン重鎖を含む、安定に形質導入された不死化小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞。
【請求項11】
増加したテロメラーゼ活性を示す、安定不死化小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞。
【請求項12】
請求項10に記載の不死化筋細胞を含む細胞培養物。
【請求項13】
請求項11に記載の不死化筋細胞を含む細胞培養物。
【請求項14】
少なくとも外因性MyoD、SMARCD3、Pax3、Pax7、ミオシン-1、インテグリンアルファ-7、カドヘリン-15、ミオゲニン、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子、ミオスタチンおよび成長分化因子、甲殻類血糖上昇ホルモンおよび/またはミオシン重鎖を含む、安定に形質導入された不死化小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター脂肪細胞。
【請求項15】
増加したテロメラーゼ活性を示す、安定不死化小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター脂肪細胞。
【請求項16】
請求項14に記載の不死化脂肪細胞を含む細胞培養物。
【請求項17】
請求項15に記載の不死化脂肪細胞を含む細胞培養物。
【請求項18】
初代小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞および/または脂肪細胞ならびに/あるいは不死化小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞および/または脂肪細胞に由来する、安定にトランスフェクトされた小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター人工多能性細胞。
【請求項19】
多能性小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター胚性幹細胞、例えば胚盤胞期細胞および/または受精卵細胞に由来する、安定にトランスフェクトされた小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター人工多能性細胞。
【請求項20】
請求項18に記載の人工多能性細胞を含む細胞培養物。
【請求項21】
請求項19に記載の人工多能性細胞を含む細胞培養物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター種からの再生可能な筋幹細胞株および脂肪幹細胞株の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
世界人口が増加し続ける一方で、スプロール現象および気象条件の変化により、耕作可能な農地の量が減少している。これにより、商業的な漁業および海洋「養殖」が増加し、世界の海および海洋にストレスがかかっている。結果として、小エビ、エビ、カニおよびロブスターなどの特定の人気のある種の乱獲が、それらの野生集団を著しく減少させた。
【0003】
動物肉生産および野生漁猟が環境に及ぼす歪みを緩和するために、組織工学肉および魚のための技術が開発されている。この種の細胞農業は、動物を成長させ、屠殺する必要のない食物の生産を可能にする。細胞農業における研究のほとんどは、胚筋肉発達、筋幹細胞、筋修復および筋再生の研究から入手可能な豊富な情報を有する動物、特に牛肉、豚肉および鶏肉に焦点を当てている。しかしながら、生きている動物から抽出された筋肉の「同種交換」レプリカである肉または魚製品を製造することには、多くの課題が存在する。
【0004】
しかしながら、海産食品種については、ほとんど研究が行われておらず、成功した細胞農業研究のために克服しなければならない障害をさらに大きくしている(Rubio et al.,(2019)Front.Sustain.Food Syst.doi:10.3389/fsufs.2019.00043)。バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)(以前は、Penaeus vannamei;別名、白足エビ/太平洋白エビ/キングエビ)およびウシエビ(Penaeus monodon)(別名、ブラックタイガー/アジアンタイガーシュリンプ)は、1.66(vannamei)/2.6(monodon)Gbゲノムサイズおよび44偽染色体(vannamei)/88染色体を有すると予測される(Zhang et al.(2019)Nature Communications 10:356 and Yuan et al.(2017)J.Marine Genomics doi.org/10.1016/j.margen.2017.12.006)。これらの大きなゲノムサイズおよび有意な数のゲノムリピートの存在は、エビ/小エビゲノムの配列決定および組み立てを困難にする(Yuan et al.(2017)J.Marine Genomics doi.org/10.1016/j.margen.2017.12.006 and Zhang et al.(2019)Nature Communications 10:356)。さらに、エビ/小エビに利用可能な少数のゲノムライブラリー検索エンジンは、堅牢でもなく、十分にアノテーションもされていない(Shrimp GPAT;Shrimp ESTプロジェクト;NCBI Taxonomyプロジェクト)。さらに、小エビ/エビに関するゲノム研究は、ゲノム進化(Yuan et al.(2017)Mar Biotechnol 19(1):76-88;Yuan et al.(2017)Mar Drugs 15(7):213)、遺伝連鎖(Yang et al.(2015)Scientific Reports 5:15612)、および発生遺伝子(Brown et al.(2018)Genome Biol Evol 10(1):143-156)に焦点を当てている。この状況は、所与の種に対する「小エビ」および「エビ」の一貫性のないおよび/または互換的な使用によってさらに複雑化される。それにもかかわらず、少なくとも2,000種の認識されている種があり、最も商業的に重要なのは、ウシエビ属(Penaeus)、クダヒゲエビ属(Solenocera)、ヨシエビ属(Metapenaeus)、サケエビ属(Parapenaeus)、スベスベエビ属(Parapenaeopsis)、アカエビ属(Metapenaeopsis属)、トラキペナエウス属(Trachypenaeus)、プロトラキペネ属(Protrachypene)、キシホペナエウス属(Xiphopenaeus)、ヒメクダヒゲ属(Hymenopenaeus)、マイマイエビ属(Atypopenaeus)、エウシシオニア属(Eusicyonia)、イシエビ属(Sicyonia)およびリトペナエウス属(Litopenaeus)の種である。
【0005】
いくつかの研究が、体の大きさおよび体重による身体的な動物の成長に関して小エビ/エビ種を調査している。外来のティラピア成長ホルモン遺伝子を小エビ胚に形質導入することによって、小エビの成長が改善された(Arenal et al.(2008)Biotechnol Lett 30(5):845-51)。抑制サブトラクティブハイブリダイゼーションにより、ウシエビ(Penaeus monodon)で体重に関連するいくつかの成長遺伝子が同定された(Tangprasittipap et al.(2010)Aquaculture 307(1-2):150-156)。筋肉成長遺伝子は、ウシエビ(Penaeus monodon)で同定されているが、他の種では同定されていない(Ngyuen et al.(2016)Aquaculture 464:545-553)。しかしながら、筋細胞を不死化または再プログラミングするための遺伝子の遺伝子改変は、試みられていない、または成功していない。
【0006】
カニ、ザリガニおよび/またはロブスター種の状況も同様である。例えば、ミステリークレイフィッシュ(プロカンバルス・ビルジナリス(Procambarus virginalis)(以前はプロカンバルス・ファラクスf.ビルジナリス(Procambarus fallax f.virginalis))は、276本の染色体を有して、ヒトのゲノムサイズよりも大きいと推定されるゲノムサイズを有し(すなわち3.5Gbp;Gutekunst et al.(2018)Nature Ecology&Evolution 2:567-573)、ワタリガニ(カリネクテス・サピドゥス(Callinectes sapidus))のゲノムは、未知の数の染色体を有し約2Gbpのサイズである(ゲノムサイズ(bp)=(0.978×10)×DNA含有量(pg)を定義する、インターネット上のIMET Guardians of the Blue Crabウェブサイト参照;2.35pgインターネット上のAnimal Genome Size Database;およびDolezel et al.(Cytometry(2003)Part A 51A:127-128)参照)。現在までロブスターのゲノムは完全には配列決定されていないが、推定では、アメリカンロブスター(ホマルス・アメリカヌス(Homarus americanus))のゲノムは、約4.40pg/4.3Gbp以上である(インターネット上のAnimal Genome Size DatabaseウェブサイトおよびGloucester Marine Genomics Instituteウェブサイト、American Lobster Genomeを参照されたい)。
【0007】
小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターに関する情報の欠如は、おそらく主に細胞培養における課題に起因する。例えば、小エビ/エビ細胞株は、リンパ器官および卵巣からしか確立されていない(Tapay et al.(1995)Proc Soc Exp Biol Med 209(1):73-8;Hsu et al.(1995)Aquaculture 136:43-55;US patent number 6143547;George and Dhar(2010)In Vitro Cell Dev Biol Anim 46(9):801-10;Ma et al.(2017)Reviews in Aquaculture 9:88-98)。さらに、小エビ/エビ初代筋肉培養物は12日間までしか持続せず(George and Dhar,2010)、脂肪細胞については既知の初代培養物も細胞株も記載されていない。
【0008】
さらに、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターの脂肪細胞を培養する試みは記載されていない。
【0009】
小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターの不死化細胞株の利用可能性は、細胞農業会社が細胞農業の次のステップに進むことを可能にするだろう(Rubio et al.,(2019)Front.Sustain.Food Syst.doi:10.3389/fsufs.2019.00043)。初代細胞を単離するという時間のかかる方法よりもむしろ、食品規制および研究グループは、細胞株の準備のできた供給源を有するだろう。これは、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターのウイルス性疾患の理解、それらのウイルスの存在についての試験、ならびに治療の開発を容易にするだろう(Ma et al.(2017)Reviews in Aquaculture 9:88-98)。その結果、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター由来の不死化筋細胞株および脂肪細胞株が依然として必要とされている。本明細書に提示される開示は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、組織工学小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター肉製品、ならびにそのような製品を製造する方法に関する。一態様では、肉製品は、エキソビボおよび/またはインビトロで増殖される筋細胞を含む。さらなる態様では、肉製品は、エキソビボおよび/またはインビトロで増殖される筋細胞および/または脂肪細胞を含む。さらに別の態様では、肉製品は、エキソビボおよび/またはインビトロで増殖される筋細胞、脂肪細胞、他の細胞およびそれらの組合せを含む。この肉製品には、いずれの有害な微生物汚染も寄生生物汚染も本質的にない。
【0011】
したがって、本開示はまた、再生可能な筋幹細胞株および/または脂肪幹細胞株を開発することによって、消費するための小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター肉製品を製造する方法を提供する。
【0012】
小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター不死化筋細胞株および/または脂肪細胞株を作製する1つの方法は、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞および/または脂肪細胞を単離するステップと、少なくとも1つの筋肉特異的および/または脂肪特異的成長遺伝子をアデノウイルスベクターまたは非組み込みレンチウイルスベクターに組み込んで、組換えアデノウイルス構築物または非組み込みレンチウイルスベクターを形成するステップと、単離された小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞を組換えアデノウイルス構築物または非組み込みレンチウイルスベクターで形質導入するステップとを含む。しかしながら、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター不死化筋細胞株および/または脂肪細胞株を作製する方法はまた、シクロアストラゲノール、ゲニステインおよび/またはレスベラトロールなどの化学活性化剤によって、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞および/または脂肪細胞の単離後にテロメラーゼの活性を誘導するステップも含む。
【0013】
小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター人工多能性幹(iPS)細胞を作製する方法も提示される。この方法は、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターから筋細胞および/または脂肪細胞を単離するステップと、標的化因子を含むエピソームプラスミドで細胞をトランスフェクトするステップと、次いで、トランスフェクトされた細胞を培養してiPS細胞を産生するステップとを含む。
【0014】
さらに、本開示は、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター筋細胞および/または脂肪細胞を単離するステップと、mir302a-d、mir367、Oct4、Sox2、Klf4、c-MycおよびLin28などのリプログラミングマイクロRNAおよびmRNAを含有するマイクロRNAで細胞をトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養してiPS細胞を産生するステップとを介して、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター人工多能性幹(iPS)細胞を作製する方法を提供する。
【0015】
本開示はさらに、小エビ、エビ、カニ、ザリガニ、および/またはロブスター筋細胞を単離するステップと、単離された小エビ、エビ、カニ、ザリガニ、および/またはロブスター筋細胞を再プログラミングして、多能性遺伝子を発現させるステップと、人工多能性幹(iPS)細胞を単離するステップと、iPS細胞を誘導して筋線維および/または脂肪を産生するステップと、筋線維および/または脂肪を成長させて小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター肉製品を製造するステップとによって、消費するための小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター肉製品を製造する方法をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】T75フラスコ内の、切開直後の培養培地中の小エビ外植片を示す図である。
図1B】ペトリ皿内の、切開直後の培養培地中の小エビ外植片を示す図である。
【0017】
図2】7日目の外植片細胞増殖を示す図である。
【0018】
図3A】80~90%コンフルエンスに達した後、1:3の比で希釈した細胞のTi-2 Nikon顕微鏡での20倍の明視野イメージングを示す図である。
図3B】80~90%コンフルエンスに達した後、1:3の比で希釈した細胞のTi-2 Nikon顕微鏡での20倍の明視野イメージングを示す図である。
【0019】
図4】懸濁培養物の生成の3日後に筋線維が形成し始めていることを示す図である(倍率40倍)。
【0020】
図5】7日間の成長後に収穫する準備ができた筋線維を示す図である(倍率40倍)。
【0021】
図6A図6A~6Gは、筋幹細胞を単離した尾節の組織学を示す。図6Aは最終体節を示す図である。
図6B】最終体節の拡大図である。
図6C】尾の中間翼を示す図である。
図6D】中間翼の拡大図である。
図6E】尾の側翼を示す図である。
図6F】側翼の拡大図である。
図6G】正中線幼若小エビの組織学を示す図である;筋肉領域は黒色で輪郭が描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示を通して、「a」または「an」実体という用語は、1つまたは複数のその実体を指す;例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0023】
さらに、「および/または」は、本明細書で使用される場合、他のものの有無にかかわらず、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、「Aおよび/またはB」などの句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの句で使用される「および/または」という用語は、以下の態様のそれぞれを包含することを意図している:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0024】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Press;Takahashi et al.(2007)Cell 131:861-872;およびYu et al.(2007)Science 21;318(5858):1917-20は、当業者に、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を提供する。
【0025】
単位、接頭辞および記号は、国際単位系(SI)で認められている形式で示される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。本明細書で提供される見出しは、全体として本明細書を参照することによって有することができる本開示の様々な態様の限定ではない。
【0026】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書中で他に指示されない限り、範囲内に入る各別個の値に個別に言及する簡易法として役立つことを単に意図しており、各別個の値はあたかも本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。値の具体的な範囲が提供される場合、介在する各値がその中に含まれることが意図されており、全てのより小さい部分範囲も含まれることが理解される。
【0027】
食用小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター製品、ならびに食用小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター製品に使用するために筋肉組織および/または脂肪組織を細胞源からインビトロで作製するための新規なおよび改良された方法が本明細書で開示される。そのような方法は、広範囲の養殖にも野生漁猟にも頼ることなく、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよびロブスターの筋肉組織または「肉」の製造に有用である。現在、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターの肉は、典型的には、尾、脚または爪の筋肉からのみ採取される。尾肉、脚肉または爪肉は、一般に、外骨格の除去後に全体としてまたは大きな断片で販売される;しかしながら、小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター肉製品には、「ミートボール」/「フィッシュボール」に含めるための挽肉などの派生物、ならびに燻製肉、裏ごし肉、調味肉および/または乾燥肉を含む製品も含まれる。
【0028】
本明細書で提供される方法のいずれかによって作製されたインビトロ作製小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター組織、例えば筋肉組織および/または脂肪組織も開示される。したがって、細胞源は、成体幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞および/または不死化細胞株であり得る。小エビおよび/またはエビ細胞源は、好ましくは、ウシエビ属(Penaeus)、クダヒゲエビ属(Solenocera)、ヨシエビ属(Metapenaeus)、サケエビ属(Parapenaeus)、スベスベエビ属(Parapenaeopsis)、アカエビ属(Metapenaeopsis属)、トラキペナエウス属(Trachypenaeus)、プロトラキペネ属(Protrachypene)、キシホペナエウス属(Xiphopenaeus)、ヒメクダヒゲ属(Hymenopenaeus)、マイマイエビ属(Atypopenaeus)、エウシシオニア属(Eusicyonia)、イシエビ属(Sicyonia)および/またはリトペナエウス属(Litopenaeus)の種から単離される。カニ細胞源は、好ましくは、キオノエセテス属(Chionoecetes)、カリネクテス属(Callinectes)、イシガニ属(Charybdis)、イチョウガニ属(Cancer)、コギリガザミ属(Scylla)および/またはメタカルシナス属(Metacarcinus)の種から単離される。ザリガニ細胞源は、好ましくは、カンバルス属(Cambarus)、ミナミイセエビ属(Jasus)、ウチワエビモドキ属(Thenus)、カンバレルス属(Cambarellus)、アジアザリガニ属(Cambaroides)、アスタコプシス属(Atacopsis)、アウストロポタモビウス属(Austropotamobius)、アスタクス属(Astacus)、アメリカザリガニ属(Procambarus)、オルコネクテス属(Orconectes)、ファキソネラ属(Faxonella)およびパシファスタクス属(Pacifastacus)から単離される。ロブスター細胞源は、好ましくは、アカンサカリス属(Acanthacaris)、ユーネフロプス属(Eunephrops)、ホミナリヌス属(Hominarinus)、ホマルス属(Homarus)、アカザエビ属(Metanephrops)、ネフロピデス属(Nephropides)、ネフロプス属(Nephrops)、オキナエビ属(Nephropsis)、オサテエビ属(Thaumastocheles)、ヨーロッパアカザエビ属(Thaumastochelopsis)、サイモピデス属(Thymopides)、サイモップ属(Thymops)またはサイモプシス属(Thymopsis)の種から単離される。
【0029】
甲殻類からの初代筋細胞および脂肪細胞の単離
本開示の一態様は、再生可能な筋幹細胞株および/または脂肪幹細胞株を開発することによって、消費するための小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター肉製品を製造する方法に関する。これは、様々な小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター種から筋細胞および/または脂肪細胞を単離し、それらをインビトロで培養することによって達成することができる。例えば、図6は、幹細胞が単離される小エビ尾節の組織学を示す。
【0030】
好ましくは、新たに犠牲にした小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターからの外植片を小片に分離する。典型的には、断片は少なくとも0.1mmのサイズであり、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、3mm、3.25mm、3.5mm、3.75mm、4mm、4.25mm 4.55mm、4.75mm、5mm、または0.1mm~5mmの間の任意の数値であり得る。外植片を使用して細胞培養のために細胞培養培地に播種する。
【0031】
使用する場合、外植片を、グレース昆虫培地、DMEM高グルコース(HyClone SH30022.01、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)、NUTRISTEM(登録商標)MSC XFサプリメントミックス(Biological Industries、クロムウェル、コネチカット州)、NUTRISTEM(登録商標)MSC XF基礎培地(Biological Industries、クロムウェル、コネチカット州)、Myocult(商標)SF増殖ヒト10x(Stemcell Technologies(商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、未分化間葉系幹細胞用HyClone(商標)培地(SH30879.01、GE Lifescience、ボストン、マサチューセッツ州)、Hyclone幹細胞10xサプリメント(HyClone(商標)SH30878.02、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)、ライボビッツ-15(L-15)培地(ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)、M199培地(ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)、MPS培地(ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)、Pj-2培地、NCTC 135培地(ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)、MM昆虫培地(Sigma-Aldrich(登録商標)、セントルイス、ミズーリ州)、またはTC 100培地((ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)、およびそれらの組合せなどの細胞培養培地でインキュベートする。細胞培養培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)および/または5%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS)をさらに含み得る。新鮮な培地を定期的に、好ましくは2~3日毎に添加する。
【0032】
場合により、外植片を、すすぎ工程中に外植片から脱落した細胞をさらに除去することなく、約5%ペニシリン-ストレプトマイシン濾過リン酸緩衝生理食塩水(PBS;0.137M NaCl、0.0027M KCl、0.01M NaHPO、0.0018M KHHPO、pH 7.4)で定期的にすすぐ。好ましくは、外植片が培養培地から除去されるまで、すすぎは2~3日毎に行われる。
【0033】
外植片/細胞培養物を二酸化炭素なしで、28℃でインキュベートする。培養を開始した約7日後、遠心分離、濾過、磁気ビーズ、および/または当業者に公知の他の手段によって外植片を除去し、単一細胞の大きな集団を後に残す。集団中の筋幹細胞の同一性を、形態学的同定および/または筋肉遺伝子のPCR増幅によって決定する。脂肪細胞の同一性も、形態学的同定および/または脂肪特異的遺伝子のPCR増幅によって決定する。培養物を、ブロス/寒天上での直接増殖、特異的DNA染色、PCR増幅、ELISA、RNA標識および酵素的手順(例えば、ADPのATPへの酵素的変換等)、PlasmoTest(商標)(InvivoGen、サンディエゴ、カリフォルニア州)、BAM 4/LST-MUG(Feng et al.(2002)fda.gov/food/laboratory-methods-foodウェブサイト、第4章および第5章から入手可能)、およびそれらの組合せなどの標準的な技術を使用して、マイコプラズマおよび/または他の病原体について日常的に試験する。
【0034】
外植片の除去後、残りの細胞集団を分割し、新鮮な細胞培養培地を添加し、インキュベーションを継続する。新鮮な培地を定期的に、好ましくは約2~3日毎に添加する。細胞がコンフルエンス、好ましくは約70%、80%、90%、95%、99%もしくはそれらの間の任意の値に近づいていたら、または細胞集団が10ml培地中約800万個細胞になったら、細胞を再度分割し、1:3の比で希釈する。培養工程は、細胞の凍結保存の前に、ペニシリン-ストレプトマイシンの量を5%から2%に、次いで0%にゆっくり減少させることを含み得る。
【0035】
標準的な凍結保存条件および標準的な凍結保存培地(例えば、インターネット上でThermo Fisher Scientific、Nippon Genetics、およびATCCから入手可能なプロトコルおよび試薬を参照されたい)を使用して、継代2の後に細胞を凍結保存することができる。例えば、細胞を1000×gで短時間遠心分離(例えば約5分)し、上清を除去し、細胞をクライオチューブ中1mlのBambanker凍結培地に再懸濁した後、-80℃で保存することができる。
【0036】
筋線維への分化
約200万個~300万個の初代筋細胞、不死化筋幹細胞および/または再プログラミング細胞を適切な培養培地に添加する。適切な培養培地には、DMEM高グルコース(HYCLONE(商標)、SH30022.01;Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)、グレース昆虫培地、DMEM高グルコース(HYCLONE(商標)SH30022.01、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)、NUTRISTEM(登録商標)MSC XFサプリメントミックス(Biological Industries、クロムウェル、コネチカット州)、NUTRISTEM(登録商標)MSC XF基礎培地(Biological Industries、クロムウェル、コネチカット州)、MYOCULT(商標)SF増殖ヒト10x(STEMCELL TECHNOLOGIES(商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、未分化間葉系幹細胞用HYCLONE(商標)培地(SH30879.01、GE Lifescience、ボストン、マサチューセッツ州)、HYCLONE(商標)幹細胞10xサプリメント(HYCLONE(商標)SH30878.02、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)およびそれらの組合せが含まれる。培養培地は、不活化ウシ胎児血清および/またはペニシリン-ストレプトマイシンによる増強を含み得る。細胞培養物を、好ましくは撹拌しながら28℃でインキュベートする。典型的には、筋線維は、懸濁培養の開始3日後に形成し始める。培地を、細胞を遠心分離する/筋線維を発達させること、培地上清を置き換えること、および細胞を再懸濁する/筋線維を発達させることによって定期的に(例えば3日毎に)交換する。筋線維を、一般的に、懸濁培養を開始した7日後に収穫する。
【0037】
単離された初代筋細胞および/または脂肪細胞の不死化
配列決定から同定された筋細胞および/または脂肪細胞に特異的な成長遺伝子を使用して、単離された筋細胞および/または脂肪細胞を不死化する。RNA配列決定を実施し、標準的な技術(例えば、Kukurba and Montgonery(2015)Cold Spring Harb Protoc 2015(11):951-969を参照されたい)を使用して分析する。これらの遺伝子には、例えば、MyoDおよびSMARCD 3、Pax3、Pax7(Chal and Pourquie(2017)Development 144:2104-2122に概説されている)、ミオシン-1、インテグリンアルファ-7、カドヘリン-15、ミオゲニン、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子、ミオスタチンおよび成長分化因子、甲殻類血糖上昇ホルモン、およびミオシン重鎖(Jung et al.(2013)Reviews in Aquaculture 5,77-110;Ngyuen et al.(2016)Aquaculture 464:545-553;Okita et al.(2011)Nat Methods 8:409-412)が含まれる。非組み込み不死化法、例えば組換えアデノウイルスベクター(adm);非組み込みレンチウイルスベクター、例えば、lentiflash粒子(vectalys)、誘導性レンチウイルスベクター(Bar-Nur et al.(2018)Stem Cell Reports 10:1505-1521)およびインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(Chick et al.(2012)Human Gene Therapy 23:1247-1257);および/またはミニサークル(Kim et al.(2017)Stem Cell Research 23:87-94)を使用して、目的の成長遺伝子を組み込み、過剰発現させる。アデノウイルスベクターには、ラウス肉腫ウイルスLTRの転写制御下で完全長マウスMyoD cDNAを発現するAd5由来E1A欠失アデノウイルスベクター(Lattanzi et al.(1998)J Clin.Invest.101(10):2119-2128);Ad-MyoD、Ad-m-MYOD1(Vector Biolabs、カタログ番号1492、ADV-265351);ヒト5型アデノウイルス(Suehiro et al.(2010)FEBS Letters 584:3545-3549)およびシロチョウザメアデノウイルス(WSAdV-1(Hendrick et al.(1985)Can J Fish Aquat Sci 42:1321-1325;Hendrick et al.(1990)Dis Aquat Org 8:39-44)が含まれる。非組み込みレンチウイルスベクターの例は、市販のlentiflash粒子(Vectalys)である;これには、筋肉成長遺伝子が、上記のように、ベクターにクローニングされ、pRLP-MCPおよびVSVGプラスミドと共に形質導入されるカスタマイズ可能なpRLP-MS 2プラスミド(Vectalys、トゥールーズ、フランス)が含まれる。あるいは、tetOP-MyoDおよびM2rtTAなどの誘導性レンチウイルスベクターを、単離された筋細胞で共発現させる(Bar-Nur et al.(2018))。同様に、pHR’SIN-cPPT-SFFV-eGFP-WPRE、pHR’SIN-cPPT-SFFV-NogoB-WPRE、およびpCMVデルタR8.74 D64Vプラスミドの組合せを含む、適切なインテグラーゼ欠損レンチウイルスプラスミドを、Chick et al.(2012)に従って構築することができる。最後に、Kim et al.(2017)に従って、hPax7を発現するDNAミニサークルをクローニングする。
【0038】
別な方法では、細胞の化学的不死化を、テロメラーゼ活性化剤、例えば、シクロアストラゲノール(Sigma、SMB00372-20MG;Fauce et al.(2008)J Immunol.181(10):7400-7406)、ダイズ(Glycine Max)(大豆)由来のゲニステイン(Sigma、G6776-5MG;Chau et al.(2007)Carcinogenesis 28(11):2282-2290)またはレスベラトロール(Sigma、R5010-100MG;Xia et al.(2008)British Journal of Pharmacology 155:387-394;Zhai et al.(2016)Oncology Letters 11:3015-3018)の使用によって刺激する。
【0039】
約70%コンフルエンスで単離された初代細胞を形質導入に使用する。細胞を、目的の遺伝子を含有するアデノウイルスベクター構築物と共にインキュベートし、28℃または28℃付近で1時間インキュベートし、48~72時間後にPCR、定量的PCRおよび/またはFACSによって形質導入について評価する。lentiflash粒子を、初代細胞と共に28℃または28℃付近で除去前に約12時間インキュベートする。場合により、形質導入工程を、最初の形質導入の約30時間後に繰り返す(Prel et al.(2015)Mol Ther Methods Clin Dev 21(2):15039)。誘導レンチウイルスベクターを、初代細胞と共に28℃または28℃付近で除去前に24時間インキュベートし、次いで、48時間および72時間で、4~8μg/mlのポリブレン導入試薬(Sigma-Aldrich)(Bar-Nur et al.(2018))を補充する。インテグラーゼ欠損レンチウイルスプラスミドを、8μg/mlのポリブレンの存在下、28℃または28℃付近で18時間、初代細胞と共にインキュベートする(Chick et al.(2012)Human Gene Therapy 23(12):1247-1257)。あるいは、Kim et al.(Stem Cell Research(2017)23:87-94)によって報告されるように、ミニサークルをGENEIN(商標)トランスフェクションキット(MTI-Global Stem、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いて3日毎に合計3回初代細胞に形質導入する。
【0040】
化学的不死化に頼る場合、細胞をシクロアストラゲノール(0.01~1μM、Sigma;Fauce et al.(2008)J Immunol.181(10):7400-7406);ゲニステイン(0.5~1μM、Sigma;Chau et al.(2007)Carcinogenesis 28(11):2282-2290)またはレスベラトロール(10~50μM、Sigma;Xia et al.(2008)British Journal of Pharmacology 155:387-394;Zhai et al.(2016)Oncology Letters 11:3015-3018)と共に合計72時間または144時間(72時間で補充)インキュベートする。
【0041】
初代細胞の不死性を、筋幹細胞および/または成長遺伝子のPCR発現によって、あるいは細胞が10回を超えて継代される能力によって検証する。テロメラーゼ活性をテロメラーゼ反復増幅ELISAによって評価する。
【0042】
単離された初代筋細胞および脂肪細胞からのiPS細胞の作製
初代筋細胞および/または脂肪細胞、ならびに/あるいは不死化筋細胞および/または脂肪細胞を、エピソームプラスミドによるトランスフェクションによって(例えば、Chandrobose et al.(2018)Stem Cell Research&Therapy 9:68;Slamecka et al.(2016)Cell Cycle 15(2):234-249参照)、または組み込みおよび異種由来成分不含mRNAトランスフェクション(Lee et al.(2016)Stem Cells International 2016:6853081)によって再プログラミングする。
【0043】
Yamanakaカクテルのエピソームプラスミド:pCXLEhOct 3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hULおよびpCXLE-EGFP(Addgene、ウォータータウン、マサチューセッツ州)、ならびにOct4、Sox2、Klf4およびMycのYamanakaカクテル(Takahashi et al.(2007)Cell 131:861-872;Okita et al.(2011)Nat Methods 8:409-412;Rosello et al.(2013)Elife 2:e00036)を使用する。
【0044】
トランスフェクション直後に、細胞を培養培地に入れる。適切な培養培地には、10% FBSおよび2% PSを補充したグレース昆虫培地(Ma et al.,2017;George and Dhar,2010)ならびに/あるいは間葉系幹細胞培地が含まれる。培地を毎日交換し、7日目に、フィーダー細胞を含まない人工多能性幹(iPS)細胞誘導のために細胞をMATRIGEl(登録商標)(Corning、テュークスベリー、マサチューセッツ州)に播種する。その後、培地を、好ましくは酪酸ナトリウムを補充したmTeSR1(STEMCELL TECHNOLOGIES(商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に交換する。次いで、初期コロニーが形成されるまで、培地に、好ましくは後日、小分子SMC4カクテル(小分子:PD0325901、CHIR99021、チアゾビビンおよびSB 431542(FOCUS Biomolecules,Plymouth meeting,PA)含有)を補充する。
【0045】
あるいは、リプログラミングマイクロRNAおよびmRNA(mir302a-d、mir367、Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc、Lin28;Stemgent Inc.、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を含有するマイクロRNAを、以前に記載されたように(Lee et al.,2016)トランスフェクトする。単離された初代筋細胞を、トランスフェクションの前日にビトロネクチンXFコーティングウェルに播種する。mRNAトランスフェクションは毎日一定期間、例えば11日間繰り返し、マイクロRNAトランスフェクションは播種後2回、例えば1日目および5日目に繰り返す。
【0046】
初代筋細胞および/または脂肪細胞が人工多能性細胞に再プログラミングされたことを確認するために、既知の多能性遺伝子を定量的PCRおよびFACSによって分析し、結果を配列決定によって検証する。例示的な多能性遺伝子には、PL10ファミリー遺伝子(Mochizuki et al.(2001)Dev Genes Evol 211(6):299-308);Lv-Vasa(Aflalo et al.(2007)Mol Repro Dev 74:172-177)、DEADファミリー遺伝子(Shukalyuk et al.(2007)Cell Biol Int 31(2):97-108);Pou5f1、klf、sall4、hsp60(Robles et al.(2011)Zebrafish 8(2):57-63);VVL、SoxN、dmyc、Lunaファミリー遺伝子(Rosello et al.(2013)Elife 2:e00036);およびpiwi(Alie et al.(2011)Dev Biol 350(1):183-97)が含まれるが、これらに限定されない。次いで、機能性試験を行って分化能を検証する。適切な試験の例には、インビトロ分化アッセイ、奇形腫形成、核型分析および亜硫酸水素塩配列決定が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
多能性胚性幹細胞からの筋細胞および脂肪細胞の作製
他の実施形態では、筋細胞および/または脂肪細胞は、胚盤胞期の細胞および受精卵などの多能性胚性幹細胞に由来する。
【0048】
多能性胚性幹細胞を、最初に本質的に上記のように培養する。筋細胞は、Salani et al.(J Cell Mol Med(2012)16(7):1353-1364)およびChai and Pourquie(Development(2017)144:2104-2122)に記載されているように、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞から分化させる。脂肪細胞は、Barberi et al.(PLoS Med(2005)2(6):e161)、Mohsen-Kanson et al.(Stem Cells(2014)32:1459-1467)およびHafner et al.(Scientific Reports(2016)6:Article Number 32490)に記載されているように、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞から分化させる。
【0049】

例1-小エビ/エビからの初代筋幹細胞の単離
生きた白足エビおよびクルマエビ(成体または後幼生(postlarval)期を含む)を、犠牲にする前に氷上で10分間保持する。小エビ/エビ全体を11%次亜塩素酸ナトリウム中で10秒間すすぎ、最後の体節および尾を切開する。残りの身体部分は氷上に保持する。
【0050】
切開した尾および付着した節を2%過マンガン酸カリウムに移し、10分間滅菌する。次いで、尾および付着した節をPBS緩衝液(0.137M NaCl、0.0027M KCl、0.01M NaHPO、0.0018M KHHPO、pH 7.4)中で1回、2%ペニシリン-ストレプトマイシン濾過PBS中で1回すすぎ、70%エタノール中で5~10分間保持した後、5%または10%ペニシリン-ストレプトマイシン濾過PBS中で5~10分間洗浄する。
【0051】
洗浄した尾および付着した節を、細胞培養培地を含有する別個の10cm皿で氷上に保持する。5つの異なる培地を使用する:(1)10%熱不活化ウシ胎児血清(HYCLONE(商標)SH30071.03、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)および5%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むグレース昆虫培地、(2)10%熱不活化ウシ血清および5%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEM高グルコース(HYCLONE(商標)SH30022.01、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)、(3)5%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むNUTRISTEM(登録商標)MSC XFサプリメントミックス(Biological Industries、クロムウェル、コネチカット州):NUTRISTEM(登録商標)MSC XF基本培地(Biological Industries、クロムウェル、コネチカット州)、(4)DMEM高グルコース(HYCLONE(商標)SH30022.01、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州):MYOCULT(商標)SF増殖ヒト10x(Stemcell Technologies(商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州):5%ペニシリン-ストレプトマイシン、および(5)未分化間葉系幹細胞用HYCLONE(商標)培地(SH30879.01、GE Lifescience、ボストン、マサチューセッツ州):HYCLONE(商標)幹細胞10xサプリメント(HYCLONE(商標)SH30878.02、Fischer Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州):5%ペニシリン-ストレプトマイシン。
【0052】
成体筋肉単離のために、尾を取り出して保存する一方、不透明な筋肉を体節から切開する。脂肪および表皮組織の層を除去する。
【0053】
後幼生筋肉単離のために、頭部を体から分離する。脚を可能な限り取り除き、体節を最初に電気ミンサーまたは携帯ブレンダーで刻む。
【0054】
成体または部分的に刻んだ後幼生筋肉を、約1mm断片に手動で刻んだ後、調製した10cm培地含有皿に移し、そこで2回目の刻みを実施する。成体の場合、次いで、筋肉を尾から取り出し、刻み、調製した培地皿に移し、再度刻む。次いで、この工程を、成体の翼端に対して繰り返す。切開が完了したら、外植片および培地を細胞培養フラスコおよび/または皿に移し、COを用いないで28℃でインキュベートする(図1参照)。
【0055】
2~3日毎に新鮮な培地を添加することによって培養物を維持する。単離後3~7日の間に、比重分離または10~30秒間の遠心分離によって外植片組織を除去する。残りの細胞集団を細胞密度に従って、通常は2つのT75フラスコに分割し、培地を各フラスコ中最終体積10~12mlに添加する(図2参照)。28℃でのインキュベーションを継続し、新鮮な培地を2~3日毎に添加する。細胞数が約800万個および/または約10mlの培地中約80~90%コンフルエントになったら、細胞集団を再度1:3の比で希釈し、継代2まで継続して同じ条件下でインキュベートする(図3参照)。その時点で、一部の細胞を1000×gで5分間遠心分離し、上清を除去し、細胞をクライオチューブ中で1mlのBambanker凍結培地に再懸濁した後、-80℃で保存する。他の細胞は、少なくとも継代4まで培地中でさらに培養する。これらの場合、培養培地中に存在する抗生物質は、継代2後に2%に減少し、継代4後に0%にさらに減少する。
【0056】
筋幹細胞の同一性を確認するために、筋遺伝子の発現を定量的PCRによって分析する。ここでは、ミオスタチンおよび成長分化因子、筋LIMタンパク質、アルファ骨格筋、ミオシン重鎖、ミオシン-1、Pax3、Pax7、インテグリンアルファ-7、カドヘリン-15、およびミオゲニンなどの筋細胞遺伝子(Jung et al.(2013)Reviews in Aquaculture 5,77-110;Ngyuen et al.(2016)Aquaculture 464:545-553;Okita et al.(2011)Nat Methods 8:409-412)を標的化する。脂肪細胞は、脂肪酸結合タンパク質(Ngyuen et al.(2016)Aquaculture 464)、血清アミロイドA(SAA)、膜貫通4L 6ファミリーメンバー1(TM4SF1)(Jernas et al.(2006)FASEB 20(9):1540-1542)、または表面抗原CD44、CD45およびCD105の組合せ(Wang et al.(2017)Exp Ther Med 13(3):1039-1043)の存在によって同定する。
【0057】
細胞株の無菌性を、マイコプラズマの非存在によって決定する。これは、Cell Culture Contamination Kit、MycoFluor(商標)Mycoplasma Detection Kit、MycoSEQ(商標)Mycoplasma Detection Kit(ThermoFisher Scientific)、MycoAlert PLUS検出キット、PyroGene(商標)Recombinant Factor C Endpoint Fluorescent Assay(Lonza)および/またはFTA Sample Collection Kit for PCR-based Mycoplasma Detection Service(ATCC)などの市販のキットを使用して試験する。
【0058】
例2-筋線維への分化
筋線維分化は、10%熱不活化ウシ血清および5%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEM高グルコース(HYCLONE(商標)SH30022.01、Fischer Scientific、ウォルサム マサチューセッツ州)培地に約200万個~300万個の初代または不死化成体筋幹細胞を添加することによって達成される。細胞を、速度3(IKA RCTベーシック)に設定したマグネチックスターラーで撹拌しながら28℃でインキュベートする。線維を1000×gで5分間遠心分離し、使用した培地を除去し、それを新鮮な培地と交換することによって、培地を3日毎に交換する。筋線維は、懸濁培養開始の約3日後に形成し始め(図4参照)、7日後に採取の準備が整う(図5参照)。
【0059】
例3-単離された初代筋細胞および脂肪細胞の不死化
非組み込み不死化法を使用して、目的の成長遺伝子を組み込み、過剰発現させることができる。これらの遺伝子には、例えば、MyoDおよびSMARCD3、Pax3、Pax7(Chal and Pourquie(2017)Development 144:2104-2122に概説されている)、ミオシン-1、ミオゲニン、インテグリンアルファ-7、カドヘリン-15、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子、ミオスタチンおよび成長分化因子、甲殻類血糖上昇ホルモン、およびミオシン重鎖(Jung et al.(2013)doi.org/10.1111/raq.12005;Ngyuen et al.(2016)Aquaculture 464:545-553;Okita et al.(2011)Nat Methods 8:409-412)が含まれる。しかしながら、化学的不死化を、テロメラーゼ活性を増加させるためのシクロアストラゲノール(Fauce et al.(2008)J Immunol.181(10):7400-7406)、ダイズ(Glycine Max)(大豆)由来のゲニステイン(Chau et al.(2007)Carcinogenesis 28(11):2282-2290)またはレスベラトロール(Xia et al.(2008)British Journal of Pharmacology 155:387-394;Zhai et al.(2016)Oncology Letters 11:3015-3018)などの活性化剤を使用して達成することもできる。
【0060】
初代細胞の不死性を、筋幹細胞および/または成長遺伝子のPCR発現によって、あるいは細胞が10回を超えて継代される能力によって検証する。化学的不死化を使用する場合、テロメラーゼ反復増幅ELISAアッセイを使用して、テロメラーゼの活性および長さの増加を評価する。
【0061】
例4-単離された初代筋細胞および脂肪細胞からのiPS細胞の作製
初代筋細胞および脂肪細胞を、本質的にChandrabose et al.,2018に記載されているようにエピソームプラスミドによって、またはLee et al.,2016に記載されているように組み込みおよび異種由来成分不含mRNAトランスフェクションによって再プログラミングする。
【0062】
小エビについての配列決定結果からのエピソームプラスミド(Addgene)標的化因子を使用する。さらに、Oct4、Sox2、Klf4およびMycのYamanakaカクテルも使用する。10% FBSおよび2% PSを補充したグレース昆虫培地(Ma et al.,2017;George and Dhar,2010)または間葉系幹細胞培地をトランスフェクション直後に使用する。培地を毎日交換する。7日目に、フィーダー細胞を含まないiPS誘導のために細胞をMatrigel(Corning)に播種する。翌日、培地を、酪酸ナトリウムを補充したmTeSR1(Stem Cell Technologies)に交換する。12日目に、酪酸ナトリウムをもはや添加せず、代わりに、初期コロニーが形成されるまで小分子SMC4カクテル(小分子:PD0325901、CHIR99021、チアゾビビンおよびSB431542(FOCUS Biomolecules)含有)と交換する。
【0063】
あるいは、リプログラミングマイクロRNAおよびmRNA(mir302a-d、mir367、Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc、Lin28;Stemgent Inc.、マサチューセッツ州)を含有するマイクロRNAを、以前に記載されたように(Leeら、2015)トランスフェクトする。単離された初代筋細胞を、トランスフェクションの前日にビトロネクチンXFコーティングウェルに播種する。mRNAトランスフェクションは2日目から11日間繰り返し、マイクロRNAトランスフェクションは播種後1日目および5日目に繰り返す。
【0064】
初代筋細胞および脂肪細胞が人工多能性細胞に再プログラミングされていることを確認するために、配列決定によって検証された既知の多能性遺伝子を定量的PCRおよびFACSによって分析する。例示的な多能性遺伝子には、PL10ファミリー遺伝子(Mochizuki et al.(2001)Dev Genes Evol 211(6):299-308);Lv-Vasa(Aflalo et al.(2007)Mol Repro Dev 74:172-177)、DEADファミリー遺伝子(Shukalyuk et al.(2007)Cell Biol Int 31(2):97-108);Pou5f1、klf、sall4、hsp60(Robles et al.(2011)Zebrafish 8(2):57-63);VVL、SoxN、dmyc、Lunaファミリー遺伝子(Rosello et al.(2013)Elife 2:e00036);およびpiwi(Alie et al.(2011)Dev Biol 350(1):183-97)が含まれるが、これらに限定されない。インビトロ分化アッセイ、奇形腫形成、核型分析および亜硫酸水素塩配列決定などの機能性試験を行って、分化能を検証する。
【0065】
iPS細胞の存在を確認したら、これらの細胞を80%コンフルエンスで凍結することができる。
【0066】
例5-小エビ、カニ、ザリガニおよびロブスターからの脂肪幹細胞の単離および増殖
段落[0045]、[0046]および/または[0049]で上記のように小エビ/エビ、カニ、ザリガニまたはロブスターを犠牲にし、洗浄した後、小エビ/エビ、カニ、ザリガニまたはロブスターの頭を、体節および尾節から分離する。脚も、小エビ/エビ、カニ、ザリガニまたはロブスターの体から分離する。殻を節から除去し;脂肪および表皮組織を、使い捨てメスおよび鉗子を用いて尾節および体節から剥がす。脂肪および表皮組織を、5%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するPBS中で広く洗浄する。次いで、組織をコラゲナーゼI型で消化し、Bunnell et al.(Methods 2008;45(2):115-120)に記載されているようにメスで刻む。脂肪幹細胞を、Bunnell et al.(Methods 2008;45(2):115-120)によって記載されているように表皮細胞または間質細胞から分離する。
【0067】
単離した細胞を、20% FBS、1% L-グルタミン(Mediatech)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したアルファ-MEM(Mediatech、ヘルンドン、バージニア州)に再懸濁する。細胞懸濁液を、Bunnell et al.(Methods 2008;45(2):115-120)に記載されているように70μmセルストレーナーで濾過する。細胞を、リジンコーティング培養プレート(Bunnell et al.Methods 2008;45(2):115-120)中で培養し、28℃でインキュベートする(George and Dhar(2010)In Vitro Cell Dev.Biol.-Animal 46:801-810)。
【0068】
培養培地を交換し、細胞を、Bunnell et al.(Methods 2008;45(2):115-120)に記載されているようにプレーティングの72時間後に洗浄する。その後細胞を維持するために、細胞が80~90%コンフルエンスに達するまで、培養培地を2日毎に交換する。Bunnell et al.(Methods 2008;45(2):115-120)に記載されているように、細胞が80~90%コンフルエンスに達したら、細胞を収穫するまたは分化させることができる。
【0069】
例6-カニ、ザリガニおよびロブスターからの初代筋幹細胞の単離
[0045]および[0046]に記載されている氷上でのカニまたはロブスターの犠牲および洗浄の後、カニの爪、脚および本体の筋肉を単離し、[0045]~[0047]に記載されているように処理する。カニ筋幹細胞は、Sashikumar and Desai(Cytotechnology(2008)56:161-169)に記載されているように20~24℃で培養する。
【0070】
ザリガニおよびロブスターの場合、爪、脚および尾の筋肉を単離し、処理し、[0045]~[0047]に記載されているように培養する。ザリガニ筋幹細胞を、Neumann et al.(In Vivo(2000)14(5):691-8)に記載されているように27℃で培養する。ロブスター筋幹細胞を、Stepanyan et al.(Chemical Senses(2004)29(3):179-187)に記載されているように5℃、飽和湿度で、またはロブスターが生きている間維持された温度で培養する。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
【手続補正書】
【提出日】2021-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初代筋細胞を含む再生可能な甲殻類の細胞株。
【請求項2】
前記細胞株が少なくとも10継代を終えている、請求項1に記載の再生可能な甲殻類の細胞株。
【請求項3】
前記初代筋細胞が幹細胞である、請求項1に記載の再生可能な甲殻類の細胞株。
【請求項4】
前記初代筋細胞が筋繊維へと分化する、請求項1に記載の再生可能な甲殻類の細胞株。
【請求項5】
前記初代筋細胞が不死化初代筋細胞である、請求項1に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞株。
【請求項6】
前記初代筋細胞が小エビ、エビ、ロブスター、カニ、およびザリガニからなる群から選択される、請求項1に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞株。
【請求項7】
前記初代筋細胞が小エビまたはロブスター初代筋細胞である、請求項1に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞株。
【請求項8】
請求項1に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞株を含む甲殻類組織。
【請求項9】
請求項1に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞を含む肉製品。
【請求項10】
の小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスター細胞をさらに含む、請求項に記載の肉製品。
【請求項11】
前記再生可能な甲殻類の筋細胞株が、ウシエビ属(Penaeus)、クダヒゲエビ属(Solenocera)、ヨシエビ属(Metapenaeus)、サケエビ属(Parapenaeus)、スベスベエビ属(Parapenaeopsis)、アカエビ属(Metapenaeopsis属)、トラキペナエウス属(Trachypenaeus)、プロトラキペネ属(Protrachypene)、キシホペナエウス属(Xiphopenaeus)、ヒメクダヒゲ属(Hymenopenaeus)、マイマイエビ属(Atypopenaeus)、エウシシオニア属(Eusicyonia)、イシエビ属(Sicyonia)またはリトペナエウス属(Litopenaeus)に属する種に由来する小エビおよび/またはエビ筋細胞である、請求項に記載の肉製品。
【請求項12】
前記再生可能な甲殻類の筋細胞株が、ウシエビ(Penaeus monodon)および/またはバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)に由来する小エビおよび/またはエビ筋細胞である、請求項に記載の肉製品。
【請求項13】
請求項1に記載の小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターの再生可能な筋細胞株を作製する方法であって、
(a)小エビ、エビ、カニ、ザリガニおよび/またはロブスターの筋組織を単離するステップと;
(b)単離された筋組織を滅菌し、必要に応じて脂肪および表皮組織を除くステップと;
(c)前記単離され滅菌された筋組織を刻み、刻まれた断片を細胞培養培地に入れるステップと;
(d)ステップ(c)の培地および刻まれた断片を二酸化炭素なしで、28℃で3~7日間インキュベートするステップと;
(e)残っている刻まれた断片を除き、新鮮な培地を加え、培地中に残っている細胞を二酸化炭素なしで、28℃で3~7日間インキュベートするステップと;
(f)細胞数が10mlの培養培地中に約800万個になったら、ステップ(e)を繰り返すステップと、ここでステップ(f)は少なくとも10回繰り返される、
を含む上記方法。
【請求項14】
請求項に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞を含む細胞培養物。
【請求項15】
請求項に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞を含む細胞培養物。
【請求項16】
請求項に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞を含む細胞培養物。
【請求項17】
請求項に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞を含む細胞培養物。
【請求項18】
請求項に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞を含む細胞培養物であって、前記再生可能な甲殻類の筋細胞株が、ウシエビ属(Penaeus)、クダヒゲエビ属(Solenocera)、ヨシエビ属(Metapenaeus)、サケエビ属(Parapenaeus)、スベスベエビ属(Parapenaeopsis)、アカエビ属(Metapenaeopsis属)、トラキペナエウス属(Trachypenaeus)、プロトラキペネ属(Protrachypene)、キシホペナエウス属(Xiphopenaeus)、ヒメクダヒゲ属(Hymenopenaeus)、マイマイエビ属(Atypopenaeus)、エウシシオニア属(Eusicyonia)、イシエビ属(Sicyonia)またはリトペナエウス属(Litopenaeus)に属する種に由来する小エビおよび/またはエビ筋細胞である、上記細胞培養物
【請求項19】
請求項に記載の再生可能な甲殻類の筋細胞株を含む細胞培養物であって、前記再生可能な甲殻類の筋細胞株が、ウシエビ(Penaeus monodon)および/またはバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)に由来する小エビおよび/またはエビ筋細胞である、上記細胞培養物
【国際調査報告】