(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法、再生リン酸鉄リチウムおよびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20220228BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20220228BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220228BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01M10/54
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021510453
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 CN2020112973
(87)【国際公開番号】W WO2021114747
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】201911251921.4
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521078067
【氏名又は名称】ビーティーアール(ティアンジン) ナノ マテリアル マニュファクチャー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】ユエ,ハイフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエキン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ヨウユアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,サイデ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シュンイ
(72)【発明者】
【氏名】シー,シャオビン
【テーマコード(参考)】
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH08
5H031RR02
5H050BA17
5H050CA02
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA02
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
本出願は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法、再生リン酸鉄リチウムおよびリチウムイオン電池を開示する。前記方法は、穏やかな酸化性気体の雰囲気で、廃棄リン酸鉄リチウムを1次焼結するステップと、リン酸鉄リチウム粉末を分離するステップと、リチウム源と炭素源を使用して、2次焼結により、リン酸鉄リチウム粉末に対してリチウム補填、炭素補填及び組成調節を行って、再生リン酸鉄リチウムを得るステップとを含み、前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気、CO
2気体、またはそれらの混合気体である。本出願の方法により、優れた性能を有するリン酸鉄リチウムを調製でき、上記材料は、電気化学的性能として優れた常温及び高温サイクル性能を備え、タップ密度が比較的に高く、コストが低い利点を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穏やかな酸化性気体の雰囲気で、廃棄リン酸鉄リチウムを1次焼結するステップと、
前記1次焼結によって得られたものからリン酸鉄リチウム粉末を分離するステップと、
リチウム源と炭素源を使用して、2次焼結により、前記リン酸鉄リチウム粉末に対してリチウム補填、炭素補填及び組成調節を行って、再生リン酸鉄リチウムを得るステップと、を含み、
前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気、CO
2気体、またはそれらの混合気体である
ことを特徴とする廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項2】
前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気及びCO
2気体の混合気体であり、前記水蒸気とCO
2気体の流速比は、1:9~9:1である特徴(1)と、
前記水蒸気は、脱イオン水及び超純水のうちの少なくとも1つであり、前記水蒸気の抵抗は、18MΩ以上である特徴(2)と、
前記CO
2気体の純度は、99.0%以上である特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項3】
前記廃棄リン酸鉄リチウムは、廃棄リン酸鉄リチウム電池の極片及び廃棄リン酸鉄リチウムスラリーのうちの少なくとも1つである特徴(1)と、
前記廃棄リン酸鉄リチウム電池の極片は、使用済みの廃棄された廃棄リン酸鉄リチウム電池を解体して得られた廃棄リン酸鉄リチウム極片、電池工場の廃棄された不良電池を解体して得られた廃棄リン酸鉄リチウム極片、電池工場の廃棄された不良リン酸鉄リチウム極片を含む特徴(2)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項4】
前記廃棄リン酸鉄リチウムと前記穏やかな酸化性気体の質量比は、1:(0.1~10.0)であり、前記穏やかな酸化性気体の導入流速は一定である特徴(1)と、
前記1次焼結過程で使用される加熱装置は、チューブ炉、箱型炉、ローラーハース窯及び回転窯のうちのいずれかの1つである特徴(2)と、
前記1次焼結は、300℃~700℃で0.5時間~15時間保温することで行われる特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項5】
前記1次焼結によって得られたものからリン酸鉄リチウム粉末を分離するステップは、具体的に、前記1次焼結によって得られたものを粉砕して、分離するステップであり、
任意選択で、前記1次焼結によって得られたものを機械的に粉砕して、スクリーンでふるい分けし、
任意選択で、0.2μm~10.0μmのメディアン径の範囲内に粉砕し、
任意選択で、前記スクリーンのメッシュ範囲は、10メッシュ~400メッシュである
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項6】
前記リチウム補填に使用されたリチウム源は、Li
2CO
3、LiOH・H
2O、Li
3PO
4またはLiNO
3のうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つを含む特徴(1)と、
前記リチウム源の純度は、工業用グレードまたは電池グレードである特徴(2)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項7】
前記リチウム補填方法は、湿式リチウム補填及び乾式リチウム補填を含む特徴(1)と、
前記Li
2CO
3をリチウム源として、乾式リチウム補填を行い、前記Li
2CO
3のメディアン径範囲は、0.2μm~10μmである特徴(2)と、
前記リチウム源の添加量は、Li:Feモル比で算出され、Liの過剰範囲は、0.1%~10.0%である特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項6に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項8】
前記炭素源は、グルコース、スクロース、クエン酸、アセチレンブラック、ポリプロピレンまたはポリエチレングリコールのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項9】
前記炭素補填方法は、湿式炭素補填及び乾式炭素補填を含む特徴(1)と、
前記炭素源の添加量は、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が1.0wt%~6.0wt%になるように算出される特徴(2)と、
グルコースとポリエチレングリコールの混合炭素源で乾式炭素補填を行い、前記混合炭素源のメディアン径範囲は、0.2μm~10.0μmであり、任意選択で、前記混合炭素源におけるグルコースとポリエチレングリコールの質量比の範囲は、1:9~9:1である特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項8に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項10】
リチウム源及び炭素源を使用して、2次焼結により、前記リン酸鉄リチウム粉末に対してリチウム補填、炭素補填及び組成調節を行って、再生リン酸鉄リチウムを得る前記ステップは、具体的に、リチウム源、炭素源及び前記リン酸鉄リチウム粉末を混合し、2次焼結により、再生リン酸鉄リチウムを得るステップであり、
任意選択で、前記混合方法は、VC混合、シングルコーン乾式混合またはダブルコーン乾式混合を含み、
任意選択で、前記混合時間は、0.1時間~8時間である
ことを特徴とする請求項8に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項11】
前記2次焼結は、不活性ガスの雰囲気で行われ、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む特徴(1)と、
前記リン酸鉄リチウム粉末と前記不活性ガスの質量比は、1:(0.1~10.0)である特徴(2)と、
前記2次焼結過程で、前記不活性ガスの導入流速は一定である特徴(3)と、
前記2次焼結は、700℃~800℃で2時間~20時間保温することで行われる特徴(4)と、
前記2次焼結で使用される加熱装置は、チューブ炉、箱型炉、ローラーハース窯または回転窯のうちのいずれかの1つである特徴(5)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項10に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項12】
再生リン酸鉄リチウムを得た後、再生リン酸鉄リチウムをふるい分けして、消磁するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項13】
廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ4:6~6:4の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/min~5℃/minの昇温速度で300℃~700℃まで昇温させ、0.5時間~15時間保温し、炉冷するステップと、
廃棄極片における有効成分である廃棄硫酸鉄リチウムと混合気体の質量比は、1:(0.1~10.0)であるステップと、
1次焼結を行ったあと、極片を機械的に粉砕させ、10~400メッシュのふるいで、粉末をふるい分けし、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe及びCの含有量を特定するステップと、
メディアン径が0.2~10μmであるLi
2CO
3と、質量比が1:9~9:1であるグルコース及びポリエチレングリコールからなる混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比でLiが0.1%~10.0%超えるようにリチウム補填を行い、炭素源の添加量は、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が1.0wt%~6.0wt%になるように算出され、0.1~8時間VC混合し、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2次焼結を行い、炉冷して再生リン酸鉄リチウムを得るステップとを含み、
2次焼結は、2℃/min~5℃/minの昇温速度で700℃~800℃まで昇温させ、2~20時間保温することで行われる。
ことを特徴とする廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法によって調製されることを特徴とする再生リン酸鉄リチウム。
【請求項15】
前記再生リン酸鉄リチウム材料のメディアン径は、0.1μm~10.0μmであり、好ましくは0.5μm~5.0μmである特徴(1)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料の比表面積は、1.0m
2/g~20.0m
2/gであり、好ましくは10.0m
2/g~15.0m
2/gである特徴(2)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料の粉体タップ密度は、1.0g/cm
3~2.8g/cm
3であり、好ましくは2.0g/cm
3~2.5g/cm
3である特徴(3)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料のpHは、6.0~12.0である特徴(4)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料の炭素含有量は、1.0wt%~6.0wt%である特徴(5)とのうちの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項14に記載の再生リン酸鉄リチウム。
【請求項16】
請求項14~15のいずれか1項に記載の再生リン酸鉄リチウムを含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願の相互参照
本出願は、2019年12月9日に中国専利局に提出された、出願番号が2019112519214であり、名称が「廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法、再生リン酸鉄リチウムおよびリチウムイオン電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、リチウムイオン電池の正極材料分野に関し、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法、再生リン酸鉄リチウム及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
中国では、リン酸鉄リチウム電池は、2019年から、徐々に大規模な廃棄段階に入り、不適切に処分されると、深刻な汚染問題が引き起こされ、該新エネルギー材料がグリーンエネルギー材料として利用できず、汚染源になってしまう場合がある。LiFePO4自体の構造は、比較的に安定であり、長期間サイクル使用して廃棄されたあと、適切なリチウム補填、被覆炭素の修復などによって電気化学的性能を回復させることができるので、比較的に高い再生価値を持っている。再生リン酸鉄リチウムは、エネルギー密度が高くないが、コストが低く、サイクル性能が優れ、熱安定性が高く、市場調達が容易などの特性を備えるので、エネルギー貯蔵分野に大規模に利用することができる。
【0004】
現在、廃棄リン酸鉄リチウムの直接再利用に関する多くの研究報告がある。主なプロセスは、電池分解、極片分類→極片からの廃棄リン酸鉄リチウムの剥離→成分及び粒度調節→焼結再生である。
【0005】
材料剥離は、最も重要な技術の一環であり、成分調節のマクロな観点から、廃棄極片から純度が比較的に高いLiFePO4を抽出することと同等である。そのうち、2つの重要な問題があり、その1つは、如何に高い剥離率を実現することであり、もう1つは、如何に分離および抽出工程においてAl粉末などの不純物が混入することを回避することである。上記問題に対して、研究者らは、乾式熱処理方法と湿式浸漬方法を開発した。乾式熱処理は、粘着剤であるPVDFとアルミニウム箔の融点の差に基づくものである。例えば、ある極片は、360℃~490℃で保温される場合、PVDFのみが溶融熱分解されて粘着剤の効果が失われる。このような極片に対して、粘着剤の効果を失わせ、さらに冷却した後、振動ふるい分けなどで、リン酸鉄リチウムを剥離することができる。湿式浸漬は、無機アルカリ溶液でアルミニウム箔を溶解させる方法と、有機溶剤でPVDFを溶解させる方法との2つの方法に分けられる。しかし、前記方法は、実験室から中ロット試作、量産に移す場合、まだいくつかの問題が残される。そのうち、比較的に大きな問題点は、下記の通りである。乾式熱処理方法で剥離する場合、一部の極片は、電解液がきれいに除去されないため、アルミニウム箔が粉末化されて燃焼され、その後の剥離工程において必ずアルミニウム粉末異物が混入される。また、一部の圧密された極片は、材料の粒子がアルミニウム箔に嵌入されて、完全に剥離することができない。また、共通問題として、スラリーの均一化のため加えられた導電性カーボンブラックSP、PVDFが焼成されると、残留炭素が生じるため、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が過剰になる。これらは、量産時の剥離率と異物の管理問題をもたらす。また、湿式浸漬方法において、アルカリ溶液湿式方法で剥離する場合、大量のアルカリ溶液が必要となり、さらに、リン酸鉄リチウムを剥離する工程において複数回洗浄しなければならず、大量の排水が生じる。また、有機溶剤方法の研究報告で、液固比が20:1と高いため、有機溶剤の使用コストが高く、さらに蒸留還流工程を追加すると、エネルギー消費が高くなるので、工業化を実現することは困難である。
【0006】
したがって、粘着剤の効力を失わせ、高効率的な剥離を実現するとともに、選択的に酸化して過剰な炭素を除去し、最終的に、少工程で廃棄リン酸鉄リチウムを再生する技術を実現することは、本技術分野の難点である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法、再生リン酸鉄リチウムおよびリチウムイオン電池を提供することを目的とする。この方法で調製された再生リン酸鉄リチウムは、コストが低く、サイクル性能が優れ、タップ密度が高いなどのメリットを有する。
【0008】
廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法は、
穏やかな酸化性気体の雰囲気で、廃棄リン酸鉄リチウムを1次焼結するステップと、
前記1次焼結によって得られたものからリン酸鉄リチウム粉末を分離するステップと、
リチウム源と炭素源を使用して、2次焼結により、前記リン酸鉄リチウム粉末に対してリチウム補填、炭素補填及び組成調節を行って、再生リン酸鉄リチウムを得るステップとを含み、
前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気、CO2気体、またはそれらの混合気体である。
【0009】
本出願は、廃棄LiFePO4(リン酸鉄リチウム)電池極片を原料として、水蒸気、CO2などの穏やかな酸化性気体の雰囲気で1次焼結し、廃棄リン酸鉄リチウムの粘着剤の効力を失わせると同時に、選択的に非晶質被覆炭素を酸化して除去し、これにより被覆炭素の黒鉛化を向上させ、黒鉛化炭素は、比較的に高い導電性を有するようになる。このため、リン酸鉄リチウム結晶粒の成長を抑制でき、結晶粒の過剰な成長が発生せず、廃棄リン酸鉄リチウムの2次焼結時の温度を上昇させることができる。したがって、さらに、適切なリチウム補填及び2次焼結によって、結晶粒のサイズが適切で、結晶性がより高い再生リン酸鉄リチウムを得ることができる。また、リン酸鉄リチウムは、穏やかな酸化性気体での1次焼結のときに、微量がFe3+に酸化され、さらにより高い温度での2次焼結のときにFe2+に還元されるので、最終的にLiFePO4化合物相を維持することができる。したがって、上記材料は、電気化学的性能として優れた常温及び高温サイクル性能を備え、タップ密度が比較的に高く、コストが低い利点を有する。
【0010】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気及びCO2気体の混合気体であり、前記水蒸気とCO2気体の流速比は、1:9~9:1である特徴(1)と、
前記水蒸気は、脱イオン水及び超純水のうちの少なくとも1つであり、前記水蒸気の抵抗は、18MΩ以上である特徴(2)と、
前記CO2気体の純度は、99.0%以上である特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する。
【0011】
実行可能な実施態様では、前記廃棄リン酸鉄リチウムは、廃棄リン酸鉄リチウム電池の極片および廃棄リン酸鉄リチウムスラリーのうちの少なくとも1つであり、
任意選択で、前記廃棄リン酸鉄リチウム電池の極片は、使用済みの廃棄された廃棄リン酸鉄リチウム電池を解体して得られた廃棄リン酸鉄リチウム極片、電池工場の廃棄された不良電池を解体して得られた廃棄リン酸鉄リチウム極片、電池工場の廃棄された不良リン酸鉄リチウム極片を含む。
【0012】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
前記廃棄リン酸鉄リチウムと前記穏やかな酸化性気体の質量比は、1:(0.1~10.0)であり、前記穏やかな酸化性気体の導入流速は一定である特徴(1)と、
前記1次焼結過程で使用される加熱装置は、チューブ炉、箱型炉、ローラーハース窯及び回転窯のうちのいずれかの1つである特徴(2)と、
前記1次焼結は、300℃~700℃で0.5時間~15時間保温し、好ましくは400℃~600℃で4時間~8時間保温することで行われる特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する。
【0013】
実行可能な実施態様では、前記1次焼結によって得られたものからリン酸鉄リチウム粉末を分離するステップは、具体的に、1次焼結によって得られたものを粉砕して、分離するステップであり、
任意選択で、1次焼結によって得られたものを機械的に粉砕して、スクリーンでふるい分けし、
任意選択で、0.2μm~10.0μmであり、好ましくは0.5μm~3.0μmのメディアン径の範囲内に粉砕し、
任意選択で、スクリーンのメッシュ範囲は、10メッシュ~400メッシュであり、好ましくは100メッシュ~325メッシュである。
【0014】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
前記リチウム補填に使用されたリチウム源は、Li2CO3、LiOH・H2O、Li3PO4またはLiNO3のうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つを含む特徴(1)と、
前記リチウム源の純度は、工業用グレードまたは電池グレードである特徴(2)とのうちの少なくとも1つを有する。
【0015】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
前記リチウム補填方法は、湿式リチウム補填及び乾式リチウム補填を含む特徴(1)と、
前記Li2CO3をリチウム源として、乾式リチウム補填を行い、前記Li2CO3のメディアン径範囲は、0.2μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~3μmである特徴(2)と、
前記リチウム源の添加量は、Li:Feモル比で算出され、Liの過剰範囲は、0.1%~10.0%であり、好ましくは2.0%~5.0%である特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する。
【0016】
実行可能な実施態様では、前記炭素源は、グルコース、スクロース、クエン酸、アセチレンブラック、ポリプロピレンまたはポリエチレングリコールのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0017】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
前記炭素補填方法は、湿式炭素補填及び乾式炭素補填を含む特徴(1)と、
前記炭素源の添加量は、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が1.0wt%~6.0wt%になるように算出される特徴(2)と、
グルコースとポリエチレングリコールの混合炭素源で乾式炭素補填を行い、前記混合炭素源のメディアン径範囲は、0.2μm~10.0μmであり、任意選択で、前記混合炭素源におけるグルコースとポリエチレングリコールの質量比の範囲は、1:9~9:1である特徴(3)とのうちの少なくとも1つを有する。
実行可能な実施態様では、前記リチウム源及び炭素源を使用して、2次焼結により、前記リン酸鉄リチウム粉末に対してリチウム補填、炭素補填及び組成調節を行って、再生リン酸鉄リチウムを得るステップは、具体的に、リチウム源、炭素源及び前記リン酸鉄リチウム粉末を混合し、2次焼結により、再生リン酸鉄リチウムを得るステップであり、
任意選択で、前記混合方法は、VC混合、シングルコーン乾式混合またはダブルコーン乾式混合を含み、
任意選択で、前記混合時間は、0.1時間~8時間であり、好ましくは1時間~3時間である。
【0018】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
前記2次焼結は、不活性ガスの雰囲気で行われ、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む特徴(1)と、
前記リン酸鉄リチウム粉末と前記不活性ガスの質量比は、1:(0.1~10.0)であり、好ましくは1:(0.8~3.0)である特徴(2)と、
前記2次焼結過程で、前記不活性ガスの導入流速は一定である特徴(3)と、
前記2次焼結は、700℃~800℃で2時間~20時間保温し、好ましくは730℃~770℃で6時間~16時間保温することで行われる特徴(4)と、
前記2次焼結で使用される加熱装置は、チューブ炉、箱型炉、ローラーハース窯または回転窯のうちのいずれかの1つであり、好ましくはローラーハース窯である特徴(5)のうちの少なくとも1つを有する。
【0019】
実行可能な実施態様では、再生リン酸鉄リチウムを得た後、再生リン酸鉄リチウムをふるい分けして、消磁するステップをさらに含む。
【0020】
実行可能な実施態様では、前記方法は、
廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ4:6~6:4の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/min~5℃/minの昇温速度で300℃~700℃まで昇温させ、0.5時間~15時間保温し、炉冷するステップと、
廃棄極片における有効成分である廃棄硫酸鉄リチウムと混合気体の質量比は、1:(0.1~10.0)であるステップと、
1次焼結を行ったあと、極片を機械的に粉砕させ、10~400メッシュのふるいで、粉末をふるい分けし、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe及びCの含有量を特定するステップと、
メディアン径が0.2~10μmであるLi2CO3と、質量比が1:9~9:1であるグルコース及びポリエチレングリコールからなる混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比でLiが0.1%~10.0%超えるようにリチウム補填を行い、炭素源の添加量は、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が1.0wt%~6.0wt%になるように算出され、0.1~8時間VC混合し、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2次焼結を行い、炉冷して再生リン酸鉄リチウムを得るステップとを含み、
2次焼結は、2℃/min~5℃/minの昇温速度で700℃~800℃まで昇温させ、2~20時間保温することで行われる。
【0021】
本出願は、前記方法で調製される再生リン酸鉄リチウムをさらに提供する。
実行可能な実施態様では、前記再生リン酸鉄リチウムは、
前記再生リン酸鉄リチウム材料のメディアン径は、0.1μm~10.0μmであり、好ましくは0.5μm~5.0μmである特徴(1)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料の比表面積は、1.0m2/g~20.0m2/gであり、好ましくは10.0m2/g~15.0m2/gである特徴(2)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料の粉体タップ密度は、1.0g/cm3~2.8g/cm3であり、好ましくは2.0g/cm3~2.5g/cm3である特徴(3)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料のpHは、6.0~12.0であり、好ましくは8.0~10.0である特徴(4)と、
前記再生リン酸鉄リチウム材料の炭素含有量は、1.0wt%~6.0wt%であり、好ましくは1.5wt%~2.5wt%である特徴(5)のうちの少なくとも1つを有する。
【0022】
本出願は、前記再生リン酸鉄リチウム材料を含むリチウムイオン電池をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本出願の実施例によるリン酸鉄リチウム正極材料のプロセスの模式図である。
【
図2】本出願の実施例1の再生リン酸鉄リチウム正極材料の電子顕微鏡写真である。
【
図3】本出願の実施例1の再生リン酸鉄リチウム正極材料のXRD図である。
【
図4】本出願の実施例1の再生リン酸鉄リチウム正極材料の初回充放電曲線図である。
【
図5】本出願の実施例1の再生リン酸鉄リチウム正極材料のサイクル性能曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、具体的な実施形態を用いて、本出願の技術案をさらに説明する。
【0025】
本出願は、上記目的を達成するために、下記の技術案を採用する。
【0026】
第1の態様では、一実施形態の廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法は、以下のステップS100~S300を含む。
ステップS100において、穏やかな酸化性気体の雰囲気で、廃棄リン酸鉄リチウムを1次焼結する。
ステップS200において、前記1次焼結によって得られたものからリン酸鉄リチウム粉末を分離する。
ステップS300において、リチウム源と炭素源を使用して、2次焼結により、前記リン酸鉄リチウム粉末に対してリチウム補填、炭素補填及び組成調節を行って、再生リン酸鉄リチウムを得る。
前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気、CO2気体、またはそれらの混合気体である。
【0027】
本出願の廃棄リン酸鉄リチウムは、炭素被覆されていないリン酸鉄リチウムであってもよいし、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムであってもよい。
【0028】
本出願の方法は、ステップS300において、リチウム源を使用してリチウム補填を行い、炭素源を使用して、炭素補填を行い、かつ、炭素源を還元剤として使用する。リチウム源及び炭素源の導入で調質を実現し、2次焼結によって、Liをリン酸鉄リチウム結晶格子に補填する。炭素補填は、被覆炭素を修復する役割を果たし、還元剤は、ステップS100で酸化されて生成された微量のFe3+をFe2+に再び還元させる。これによって、組成調節を実現でき、最終的に、LiFePO4化合物相を維持することができる。
【0029】
本出願は、廃棄リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を原料とし、水蒸気及び/又はCO2の穏やかな酸化性気体の雰囲気で1次焼結し、気固反応で廃棄リン酸鉄リチウムの粘着剤の効力を失わせるとともに、黒鉛化炭素を除去せず、選択的に残留被覆炭素における非晶質被覆炭素を酸化して除去するので、残留被覆炭素の黒鉛化を向上させることができる。黒鉛化炭素は、比較的に高い導電性を備えるため、リン酸鉄リチウム結晶粒の成長を抑制できるので、結晶粒の過剰な成長が生じせずに、リチウム補填、炭素補填および組成調節を行うステップS300での廃棄リン酸鉄リチウムの2次焼結の温度を高めることができる。これによって、適切なリチウム補填及び2次焼結で、結晶粒のサイズが適切で、結晶性がより高い再生リン酸鉄リチウムを得ることができる。得られた再生リン酸鉄リチウムは、電気化学的性能として優れた常温及び高温サイクル性能を備え、タップ密度が比較的に高く、コストが低い利点を有する。
【0030】
本出願の方法は、従来の技術と比べて、さらに以下の利点を有する。
【0031】
(1)本出願のステップS100において、穏やかな酸化性気体の雰囲気で、1次焼結を行うので、電解液における有機物と反応することができ、アルミニウム箔の浸食問題を防止することができる。これに対して、窒素ガスなど比較的不活性雰囲気が使用されると、有機物と反応できないので、アルミニウム箔の浸食問題が発生する可能性がある。
【0032】
(2)本出願の方法は、穏やかな酸化性気体の雰囲気で1次焼結するステップS100によって、粘着剤(例えばPVDF)の効力を失わせ、非晶質炭素(例えば導電性カーボンブラックSP)の酸化性を除去することができる。また、アルミニウム異物が存在する場合、前記方法で、リン酸鉄リチウムとアルミニウム粉末の反応界面を緩めることができるので、従来技術のアルミニウム粉末異物を除去できない問題を解決できる。
【0033】
以下は、本出願の選択的な技術案であり、本出願による技術案に対する制限ではない。以下の選択的な技術案により、本出願の技術的目的と有益な効果をよりよく達成および実現することができる。
【0034】
一部の実施形態において、前記穏やかな酸化性気体は、水蒸気とCO2気体の混合気体である。任意選択で、水蒸気とCO2気体の流速比は、1:9~9:1であり、例えば、1:9、2:8、3:7、3.5:6.5、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2または9:1などである。好ましくは、流速比が4:6~6:4である。
【0035】
本出願で水蒸気とCO2気体の混合気体を使用する原因は、単一気体の使用よりも効果的である。水蒸気のみが使用されると、その酸化性が高すぎて、ほぼすべてのリン酸鉄リチウムが酸化される。リン酸鉄リチウムがほぼ酸化されると、それを還元しても完全に還元されにくく、微量のFe3+が残留される。これに対して、混合気体は、より適切な酸化性を持ち、酸化脱炭処理が行われた後、微量のリン酸鉄リチウムのみが酸化され、2次焼結を行うときに徹底的に還元されることができる。また、二酸化炭素のみが使用されると、その中低温(例えば300~600℃)での酸化性が不足であり、酸化効果が微々たる。温度を700℃程度に上昇させると、アルミニウム箔が粉末化され、その後、分離されにくくなる。水蒸気と二酸化炭素の混合気体が使用される場合、適切な酸素ポテンシャルに調整することができるので、目標温度範囲内で非晶質炭素成分を酸化除去するとともに、リン酸鉄リチウムが酸化されないようにすることができる(微量のFe2+がFe3+に酸化されるが、含有量が少ないため、ステップ3の炭素修復プロセスで還元されることができる)。これにより得られた再生リン酸鉄リチウムは、Fe3+/Fe2+が正確に抑制されたので、より優れた比容量とサイクル性能を有する。
【0036】
一部の実施形態において、前記水蒸気は、脱イオン水及び超純水のうちの少なくとも1つである。任意選択で、前記水蒸気の抵抗は、18MΩ以上であり、例えば、18MΩ、20MΩ、30MΩ、35MΩ、40MΩまたは50MΩなどである。
【0037】
一部の実施形態において、前記CO2は、工業用グレードのCO2であり、その純度が99.0%以上である。
【0038】
本出願は、前記廃棄リン酸鉄リチウムの由来を限定せず、例えば、廃棄リン酸鉄リチウム電池の極片及び/又は廃棄リン酸鉄リチウムスラリーであってもよい。
【0039】
具体的に、前記廃棄リン酸鉄リチウム電池の極片は、使用済みの廃棄された廃棄リン酸鉄リチウム電池を解体して得られた廃棄リン酸鉄リチウム極片、電池工場の廃棄された不良電池(電解液が注入された製品であってもよく、電解液が注入されていない製品であってもよい)を解体して得られた廃棄リン酸鉄リチウム極片及び電池工場の廃棄された不良リン酸鉄リチウム極片を含む。
【0040】
一部の実施形態において、廃棄リン酸鉄リチウム(ここで、極片またはスラリーにおける有効成分であるリン酸鉄リチウムの量を指す)と穏やかな酸化性気体との質量比は、1:(0.1~10.0)であり、例えば、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:3.5、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8または1:10などであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、上記質量比が1:(0.8~3.0)である。穏やかな酸化性気体の使用濃度が低すぎると、粘着剤の効力が十分に失わられず、非晶質被覆炭素を酸化で効果的に除去できない。穏やかな酸化性気体の使用濃度が高すぎると、多くのリン酸鉄リチウムが酸化され、最終の再生リン酸鉄リチウムの性能に影響を及ぼす。
【0041】
本出願では、使用された穏やかな酸化性気体の総質量、材料供給から排出までの総時間に基づいて気体流速を算出することができる。
【0042】
一部の実施形態において、前記1次焼結を行う過程に、穏やかな酸化性気体の導入流速は一定である。
【0043】
一部の実施形態において、前記1次焼結で使用される加熱装置は、チューブ炉、箱型炉、ローラーハース窯および回転窯のうちのいずれかの1つである。好ましくは、加熱装置が回転窯である。
【0044】
一部の実施形態において、前記1次焼結の保温温度は、300℃~650℃であり、例えば、300℃、350℃、400℃、500℃、550℃、600℃または650℃などであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、保温温度が400℃~600℃である。1次焼結の温度が低すぎると、粘着剤の効力が十分に失わられず、非晶質被覆炭素を効果的に酸化で除去できない。1次焼結の温度が高すぎると(例えば700℃)、アルミニウム箔が粉末化されて、アルミニウム粉末が分離されにくくなり、また、多くのリン酸鉄リチウムが酸化されるので、最終の再生リン酸鉄リチウムの性能に影響を及ぼす。
【0045】
一部の実施形態において、前記1次焼結の保温時間は、0.5時間~15時間であり、例えば0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、10時間、11時間、13時間または14時間などであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、保温時間が4時間~8時間である。
【0046】
一部の実施形態において、ステップS200は、1次焼結で得られたものを粉砕し、分離することを含むが、これに限定されない。
【0047】
本出願のステップS200は、機械的な粉砕を行ったあと、スクリーンでふるい分けすること、または気流粉砕を行ったあと、サイクロン分離することを含むが、これらに限定されない。好ましくは、1次焼結で得られたものを機械的に粉砕した後、スクリーンでふるい分けする。
【0048】
一部の実施形態において、粉砕後のもののメディアン径の範囲は、0.2μm~10.0μmであり、例えば、0.2μm、0.5μm、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、6μm、8μmまたは10μmなどであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、メディアン径の範囲が0.5μm~3.0μmである。
【0049】
一部の実施形態において、スクリーンのメッシュ範囲は、10メッシュ~400メッシュであり、例えば、10メッシュ、40メッシュ、80メッシュ、100メッシュ、125メッシュ、150メッシュ、200メッシュ、240メッシュ、300メッシュまたは325メッシュなどであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、スクリーンのメッシュ範囲が100メッシュ~325メッシュである。
【0050】
一部の実施形態において、ステップS300の前記リチウム補填に使用されるリチウム源は、Li2CO3、LiOH.H2O、Li3PO4またはLiNO3のうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組合せを含むが、これらに限定されない。好ましくは、リチウム源がLi2CO3である。
【0051】
本出願において、前記リチウム源の純度は、工業用グレードまたは電池グレードであってもよく、好ましくは、電池グレードである。
【0052】
一部の実施形態において、ステップS300の前記リチウム補填方法は、湿式リチウム補填および乾式リチウム補填を含むが、これらに限定されない。好ましくは、リチウム補填が乾式リチウム補填である。
【0053】
一部の実施形態において、ステップS300で、Li2CO3をリチウム源として乾式リチウム補填を行い、Li2CO3のメディアン径の範囲は、0.2μm~10μmであり、例えば、0.2μm、0.5μm、1μm、3μm、5μm、6μm、7μm、8μmまたは10μmなどである。当業者は、適宜の粉砕方法でLi2CO3の粒度を前記範囲内に抑えることができる。任意選択で、炭酸リチウムは、従来のリン酸鉄リチウム生産で広く利用される原料であり、再生リン酸鉄リチウムの2次焼結温度下で、前記粒度範囲の炭酸リチウムにおけるLiを再生リン酸鉄リチウム結晶格子に効果的に補填して、活性Liを補うことができる。より好ましくは、メディアン径の範囲が0.5μm~3.0μmである。
【0054】
一部の実施形態において、ステップS300の前記リチウム源の添加量は、Li:Feのモル比で、Liの過剰範囲が、0.1%~10.0%であり、例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、6%、7%、8%または10%などである。好ましくは、Liの過剰範囲が2%~5%である。
【0055】
一部の実施形態において、ステップS300の前記炭素源は、グルコース、スクロース、クエン酸、アセチレンブラック、ポリプロピレンまたはポリエチレングリコールのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。典型的な例として、前記組み合わせは、グルコースとスクロースの組み合わせ、グルコースとクエン酸の組み合わせ、スクロースとアセチレンブラックの組み合わせ、スクロースとポリプロピレンの組み合わせ、グルコースとスクロースとアセチレンブラックの組み合わせ、グルコースとスクロースとクエン酸とエチレングリコールの組み合わせなどであるが、これらに限定されない。
【0056】
一部の実施形態において、前記炭素補填の方法は、湿式炭素補填および乾式炭素補填を含むが、これらに限定されない。好ましくは、炭素補填が乾式炭素補填である。
【0057】
一部の実施形態において、前記炭素源の添加量は、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が1.0wt%~6.0wt%になるように算出され、例えば、炭素含有量が、1wt%、2wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%、5wt%または6wt%などであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が、1.5wt%~2.5wt%である。
【0058】
一部の実施形態において、グルコースとポリエチレングリコールからなる混合炭素源で乾式炭素補填を行い、混合炭素源のメディアン径の範囲は、0.2μm~10.0μmであり、例えば、0.2μm、1μm、3μm、3μm、7μm、8μmまたは10μmなどである。当業者は、適宜の粉砕方法で混合炭素源の粒度を前記範囲内に抑えることができる。任意選択で、グルコースとポリエチレングリコールの組合せにより、熱分解温度の適合性がよりよくなり、適切なメディアン径の範囲内で、粉末と比較的に良く混合でき、相乗効果を実現することができる。より好ましくは、メディアン径の範囲が0.5μm~3.0μmである。
【0059】
一部の実施形態において、前記混合炭素源では、グルコースとポリエチレングリコールの質量比の範囲は、1:9~9:1であり、例えば、1:9、2:8、3:7、3.5:6.5、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2または9:1などであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、グルコースとポリエチレングリコールの質量比の範囲が4:6~6:4である。
【0060】
一部の実施形態において、ステップS300は、リチウム源及び炭素源とステップS200で分離されたリン酸鉄リチウム粉末とを混合し、2次焼結により、再生リン酸鉄リチウムを得るステップを含む。これは、乾式リチウム補填と乾式炭素補填の方法であり、結晶格子にLiを補填することと炭素修復を同時に実現することができる。
【0061】
一部の実施形態において、前記混合方法は、VC混合、シングルコーン乾式混合またはダブルコーン乾式混合のうちのいずれかの1つを含むが、これらに限定されない。
【0062】
一部の実施形態において、前記混合時間は、0.1時間~8時間であり、例えば、0.1時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、7時間または8時間などであるが、これらの数値に限定されず、前記数値範囲内のその他の数値であってもよい。好ましくは、混合時間が1時間~3時間である。
【0063】
一部の実施形態において、前記2次焼結は、不活性ガスの雰囲気で行われ、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0064】
一部の実施形態において、ステップS200で分離されたリン酸鉄リチウム粉末と不活性ガスの質量比は、1:(0.1~10.0)であり、例えば、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:3.5、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8または1:10などである。好ましくは、リン酸鉄リチウム粉末と不活性ガスの質量比が1:(0.8~3.0)である。
【0065】
一部の実施形態において、前記2次焼結を行う過程において、不活性ガスの導入流速は一定である。
【0066】
一部の実施形態において、前記2次焼結の保温温度は、700℃~800℃であり、例えば、700℃、725℃、750℃、765℃、780℃または800℃などである。この保温温度の範囲内で2次焼結を行うことにより、修復の目的をよりよく達成できる。好ましくは、2次焼結の保温温度が730℃~770℃である。
【0067】
一部の実施形態において、前記2次焼結の保温時間は、2時間~20時間であり、例えば、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、13時間、15時間、18時間または20時間などである。好ましくは、2次焼結の保温時間が6時間~16時間である。
【0068】
一部の実施形態において、前記2次焼結で使用される加熱装置は、チューブ炉、箱型炉、ローラーハース窯または回転窯のうちのいずれかの1つである。好ましくは、2次焼結で使用される加熱装置がローラーハース窯である。
【0069】
任意選択で、本出願の前記方法は、以下のとおりである。
【0070】
廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ4:6~6:4の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/min~5℃/minの昇温速度で300℃~700℃まで昇温させ、0.5時間~15時間保温し、炉冷する。
【0071】
廃棄極片における有効成分である廃棄硫酸鉄リチウムと混合気体の質量比は、1:(0.1~10.0)である。
【0072】
1次焼結を行ったあと、極片を機械的に粉砕し、10~400メッシュのふるいで、粉末をふるい分けし、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe及びCの含有量を特定する。
【0073】
メディアン径が0.2~10μmであるLi2CO3と、質量比が1:9~9:1であるグルコース及びポリエチレングリコールからなる混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比でLiが0.1%~10.0%超えるようにリチウムを補填し、再生リン酸鉄リチウムの炭素含有量が1.0wt%~6.0wt%になるように炭素源を加え、0.1~8時間VC混合し、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2次焼結を行い、炉冷して再生リン酸鉄リチウムを得る。
【0074】
2次焼結は、2℃/min~5℃/minの昇温速度で700℃~800℃まで昇温させ、2~20時間保温することで行われる。
【0075】
第2態様では、他の実施形態は、前記実施形態の方法により調製される再生リン酸鉄リチウムを提供する。
【0076】
一部の実施形態において、前記再生リン酸鉄リチウム正極材料のメディアン径は、0.1μm~10.0μmであり、例えば、0.1μm、0.5μm、1.5μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmまたは10μmなどである。好ましくは、再生リン酸鉄リチウム正極材料のメディアン径が0.5μm~5.0μmである。
【0077】
一部の実施形態において、前記再生リン酸鉄リチウム正極材料の比表面積は、1.0m2/g~20.0m2/gであり、好ましくは、10.0m2/g~15.0m2/gであり、例えば、10m2/g、12m2/g、14m2/g、15m2/g、17m2/g、18m2/gまたは20m2/gなどである。
【0078】
一部の実施形態において、前記再生リン酸鉄リチウム正極材料の粉体タップ密度は、1.0g/cm3~2.8g/cm3であり、好ましくは、2.0g/cm3~2.5g/cm3であり、例えば、2.0g/cm3、2.1g/cm3、2.2g/cm3、2.3g/cm3、2.4g/cm3または2.5g/cm3などである。
【0079】
一部の実施形態において、前記再生リン酸鉄リチウム正極材料のpHは、6.0~12.0であり、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、9.5、10.0、11.0または12.0などである。好ましくは、再生リン酸鉄リチウム正極材料のpHが8.0~10.0である。
【0080】
一部の実施形態において、前記再生リン酸鉄リチウム正極材料の炭素含有量(すなわち、残留炭素と補填炭素の合計)は、1.0wt%~6.0wt%であり、例えば、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%、3.0wt%、4.0wt%、4.5wt%、5.0wt%または6.0wt%などである。好ましくは、再生リン酸鉄リチウム正極材料の炭素含有量が1.5wt%~2.5wt%である。
【0081】
第3態様では、本出願は、第2態様の再生リン酸鉄リチウム正極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0082】
本出願において、リチウムイオン電池の種類が限定せず、例えば、従来のアルミニウムシェルリチウムイオン電池、スチールシェルリチウムイオン電池またはパウチ型リチウムイオン電池であってもよい。
【0083】
本出願において、前記再生リン酸鉄リチウム正極材料粉末を使用して電池を組み立てる方法が限定せず、当業者は、先行技術に開示された方法を参照しながら組み立てることができる。
【0084】
本出願は、前記再生リン酸鉄リチウムを使用して正極極片を調製する方法をさらに提供する。本出願の再生リン酸鉄リチウムを使用して正極極片を調製する方法は、95~96:1~2:2~4の質量比で再生リン酸鉄リチウム正極材料、導電剤及び粘着剤を溶剤で混合し、アルミニウム箔集電体に塗布し、真空雰囲気で乾燥することによって正極極片を調製する。
【0085】
一部の実施形態において、前記リチウムイオン電池の負極極片に使用される負極活性材料は、人工黒鉛、天然黒鉛、シリコン炭素材料、またはシリコン酸素材料のうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0086】
一部の実施形態において、前記導電剤は、グラファイト粉末及び/又はナノ導電液を含む。
【0087】
一部の実施形態において、前記ナノ導電液は、0.5wt%~20wt%のナノ炭素材料と分散溶剤からなる。
【0088】
一部の実施形態において、前記ナノ炭素材料は、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、カーボンブラック、またはアセチレンブラックのうちのいずれかの1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0089】
一部の実施形態において、前記グラフェンの黒鉛片の層数は、1~100である。
【0090】
一部の実施形態において、前記カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーの直径は、0.2nm~500nmである。
【0091】
一部の実施形態において、前記フラーレン、カーボンブラックおよびアセチレンブラックの粒径は、1nm~200nmである。
【0092】
一部の実施形態において、前記粘着剤は、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、ポリアクリル酸、カルボキシル化キトサン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、アクリロニトリル多元共重合体の1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0093】
以下の方法で、実施例1~8および比較例1~3の正極材料を測定した。
【0094】
本出願の粉体タップ密度は、CARVER粉体タップ密度計で測定される。そのうち、粉体タップ密度=測定サンプルの質量/測定サンプルの体積、極片タップ密度=(正極極片の質量-アルミニウム箔の質量)/(極片面積×極片圧密後の厚さ)。
【0095】
材料の比表面積は、米国Micromeritics社のTristar3000全自動比表面積および多孔度測定装置で測定される。
【0096】
材料の粒径範囲と原料粒子の平均粒径は、Malvern社のレーザー粒度測定装置MS 2000で測定される。
【0097】
材料の構造は、X線回折分析装置X'Pert Pro、PANalyticalで測定される。
【0098】
日立社のS4800走査型電子顕微鏡で、サンプルの表面形態と粒径などを観察する。
【0099】
以下の方法で、電気化学的サイクル性能を測定した。固形分を50%に抑えるように、正極材料、導電剤及び粘着剤を95:2:3の質量比で溶剤に溶解させて混合し、アルミニウム箔集電体に塗布し、真空乾燥して正極極片を調製した。次に、従来の成熟した技術で調製された人工黒鉛負極極片、1mol/LのLiPF6/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)の電解液、Celgard2400のセパレーター及びシェルを、従来の生産工程で18650円筒型の単電池になるように組み立てた。
【0100】
円筒型電池の充放電測定は、武漢金諾電子有限公司製のLAND電池測定システムで行われた。常温条件で、0.1Cの定電流で充放電させ、充放電電圧は2.5V~3.7Vに抑えられた。
【0101】
円筒型電池のサイクル性能測定は、武漢金諾電子有限公司製のLAND電池測定システムで行われた。常温条件で、1C/1C(充電レート/放電レート)、充放電電圧は2.0~3.65Vに抑えられた。
【0102】
実施例1
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の廃棄された不良品であるリン酸鉄リチウム極片を原料とし、炭酸リチウムをリチウム源とし、50wt%のグルコースと50wt%のポリエチレングリコールとの混合物を混合炭素源とした。
【0103】
図1は、本出願の実施例によるリン酸鉄リチウム正極材料のプロセスの模式図である。その調製方法は、
図1に示すように、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ4:6~6:4の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/minの昇温速度で500℃まで昇温させ、6時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が3.0μmとなるように、極片を機械的に粉砕し、200メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が2.0μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.05:1となるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が3wt%であり、2時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2℃/minの昇温速度で750℃まで昇温させ、8時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0104】
図2は、本実施例の再生リン酸鉄リチウム正極材料の電子顕微鏡写真である。
図2により、得られた材料が均一な粒径分布を有することを確認できた。
【0105】
図3は、本実施例の再生リン酸鉄リチウム正極材料のXRD図である。
図3により、材料において、リン酸鉄リチウムの回折ピークのみがあり、不純物ピークがないことを確認できた。
【0106】
図4は、本実施例の再生リン酸鉄リチウム正極材料の初回充放電曲線図である。
【0107】
図5は、本出願の実施例1の再生リン酸鉄リチウム正極材料のサイクル性能曲線図である。そのうち、不規則な太線は、実際の測定データを表し、細い直線は、太線の減衰傾向を表し、80%に減衰したときのサイクル回数を予測するために用いられる。
【0108】
図4および
図5により、材料は、従来のリン酸鉄リチウムに近い放電比容量を持ち、優れたサイクル性能を有していることを確認できた。
【0109】
実施例2
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の不良電池を解体して得られたリン酸鉄リチウム極片を原料とし、炭酸リチウムをリチウム源とし、60wt%のスクロースと40wt%のポリエチレングリコールとの混合物を混合炭素源とした。
【0110】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ3:7の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/minの昇温速度で530℃まで昇温させ、7時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が3.5μmとなるように、極片を機械的に粉砕し、200メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が2.2μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.02:1となるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が2.5wt%であり、3時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2℃/minの昇温速度で760℃まで昇温させ、8時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0111】
実施例3
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、使用済みの廃棄された電池を解体して得られたリン酸鉄リチウム極片を原料とし、水酸化リチウムをリチウム源とし、50wt%のスクロースと50wt%のポリプロピレンとの混合物を混合炭素源とした。
【0112】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を初期粉砕したあと、回転窯に入れ、一定の流速かつ3:7の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/minの昇温速度で550℃まで昇温させ、5時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が2.0μmとなるように、極片を細かく粉砕し、200メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が1.8μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.08:1となるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が2.5wt%であり、5時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2℃/minの昇温速度で740℃まで昇温させ、12時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0113】
実施例4
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の廃棄された不良リン酸鉄リチウム極片を原料とし、水酸化リチウムをリチウム源とし、40%のクエン酸と60%のポリプロピレンとの混合物を混合炭素源とした。
【0114】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を初期粉砕したあと、回転窯に入れ、一定の流速かつ5:5の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/minの昇温速度で570℃まで昇温させ、1時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が2.7μmとなるように、極片を細かく粉砕し、200メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が2.7μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.04:1になるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が2.8wt%であり、2時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2℃/minの昇温速度で720℃まで昇温させ、14時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0115】
実施例5
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の不良電池を解体して得られたリン酸鉄リチウム極片を原料とし、炭酸リチウムをリチウム源とし、60%のアセチレンブラックと40%のスクロースとの混合物を混合炭素源とした。
【0116】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を初期粉砕したあと、回転窯に入れ、一定の流速かつ3:7の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、2℃/minの昇温速度で510℃まで昇温させ、6時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が2.0μmとなるように、極片を細かく粉砕し、200メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が2.2μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.01:1になるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が2.2wt%であり、3時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、2℃/minの昇温速度で740℃まで昇温させ、10時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0117】
実施例6
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の廃棄された不良リン酸鉄リチウム極片を原料とし、LiNO3をリチウム源とし、スクロースを炭素源とした。
【0118】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ8:2の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、3℃/minの昇温速度で400℃まで昇温させ、8時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が2.5μmとなるように、極片を機械的に粉砕し、325メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が4.0μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.08:1になるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が3.5wt%であり、7時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、5℃/minの昇温速度で770℃まで昇温させ、6時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0119】
実施例7
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の廃棄された不良リン酸鉄リチウム極片を原料とし、Li3PO4をリチウム源とし、ポリプロピレンを炭素源とした。
【0120】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄極片を回転窯に入れ、一定の流速かつ7:3の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、4℃/minの昇温速度で450℃まで昇温させ、13時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が3.0μmとなるように、極片を機械的に粉砕し、150メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が1.3μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.02:1になるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が3.0wt%であり、5.5時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、5℃/minの昇温速度で715℃まで昇温させ、16時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0121】
実施例8
本実施例は、廃棄リン酸鉄リチウムの選択的酸化還元再生方法を提供する。そのうち、電池工場の廃棄されたリン酸鉄リチウムスラリーを原料とし、炭酸リチウムをリチウム源とし、ポリエチレングリコールとスクロースとを炭素源とした。
【0122】
その調製方法は、以下のとおりである。
(1)廃棄スラリーを遠心分離乾燥し、黒色の粉末を得、回転窯に入れ、一定の流速かつ7:3の流速比で水蒸気と二酸化炭素の混合気体を導入し、4℃/minの昇温速度で450℃まで昇温させ、10時間保温し、炉冷した。
(2)1次焼結を行ったあと、メディアン径が2.0μmとなるように、極片を機械的に粉砕し、150メッシュのふるいでふるい分けした。ふるい分けして得られた粉末に対して、ICP、高周波赤外線炭素硫黄分析でLi、Fe、C含有量を特定した。
(3)メディアン径が1.0μmであるリチウム源と、混合炭素源とを使用して、Li:Feモル比で1.02:1になるまでにリチウムを補填し、炭素残留量と補填炭素の合計が2.0wt%であり、5.5時間VC混合した。さらに、箱型炉へ保護ガスとして窒素ガスを導入し、5℃/minの昇温速度で745℃まで昇温させ、12時間保温し、炉冷して、再生リン酸鉄リチウムを得た。
【0123】
比較例1
実施例1と基本的に同じ方法で再生リン酸鉄リチウム正極材料を製造した。その相違点は、1次焼結において、保護ガスとして窒素ガスを使用し、ステップ(3)で炭素源を使用して炭素補填を行わない。その以外、実施例1と同じ方法で電池を製造した。
【0124】
比較例2
水蒸気と二酸化炭素の混合気体の代わりに、水蒸気を使用し、気体流量と元の混合気体の総流量が同じであること以外、ほかの内容は、実施例1と同じでるあ。
【0125】
比較例3
水蒸気と二酸化炭素の混合気体の代わりに、二酸化炭素気体を使用し、気体流量と元の混合気体の総流量が同じであること以外、ほかの内容は、実施例1と同じでるあ。
【0126】
各実施例及び比較例で製造された正極材料の性能パラメータ及び電気化学的測定結果は、表1に示される。
【表1】
【0127】
上記の表のデータから分かるように、各実施例の方法で調製された再生リン酸鉄リチウム正極材料は、初回の可逆容量、初回のクーロン効率、サイクルの容量維持率などの面で、電気化学的性能がすべて比較例の方法で調製された正極材料よりも優れ、したがって、本出願の選択的酸化還元再生方法により、電気化学的性能がより優れた再生リン酸鉄リチウムを製造できる。初回の可逆容量の増加の要因は、以下のとおりである。廃棄リン酸鉄リチウムは、初期のスラリー均一化工程によって電気化学的活性を持たない炭素の含有量が高すぎるようになる。本出願は、非晶質被覆炭素を選択的に除去することで、炭素含有量を低くさせ、材料における電気化学的活性を持つリン酸鉄リチウム比率を増加させるとともに、黒鉛化が比較的に高い被覆炭素が除去されず、リン酸鉄リチウムの導電性を大幅に向上させることができる。そして、より高い2次焼結の温度下で、リン酸鉄リチウム結晶粒の成長を抑制することができるので、結晶性の高い小結晶粒が得られ、材料により長いサイクル性能を持たせることができる。
【0128】
実施例1は、比較例1と比較例2と比べて、水蒸気と二酸化炭素の混合気体を使用するので、得られた再生リン酸鉄リチウムのFe3+/Fe2+を正確に抑制することができ、より良い比容量およびサイクル性能を得ることができる。
【0129】
出願人は、上記実施例を使用して本出願の方法の詳細を説明したが、本出願が上記の方法の詳細に限定されなく、即ち、本出願の実施が上記の方法の詳細に依存しなければならないことを意味しないことを主張する。当業者であれば、本出願に対するすべての改善、本出願の製品の各原料の均等置き換え、補助成分の追加、特定の方法の選択などが、本出願の保護および開示の範囲内に含まれることを理解するべきである。
【国際調査報告】