(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】乾燥粉末吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/06 20060101AFI20220228BHJP
A24F 42/60 20200101ALI20220228BHJP
【FI】
A61M15/06 C
A61M15/06 A
A24F42/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021535202
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2020050235
(87)【国際公開番号】W WO2020148633
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】コッカー ロビン クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】キング ベン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッドソン クリストファー イアン
(72)【発明者】
【氏名】ムッティ ポール
(72)【発明者】
【氏名】ステンツラー アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ハン スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ティバッツ ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA12
4B162AB12
4B162AC13
4B162AC41
(57)【要約】
本発明は、乾燥粉末を分配するための乾燥粉末吸入器(DPI)装置(100)、およびこの装置を使用するための方法を提供する。DPI装置は、ユーザーの肺の中への送達のために、ある量の乾燥粉末用量を同伴するために十分な乱流の様態で空気を方向付けるための渦機構を特徴とする。DPI装置は、交換可能な乾燥粉末カートリッジ(200)を特徴とする。DPI装置はまた、保管のための、および乾燥粉末の偶発的な分配のための格納可能な構成を特徴とする。DPI装置は、制御された用量で乾燥粉末を分配する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥粉末吸入器装置であって、
近位端、遠位端、および溝付き外部を有するカートリッジであって、乾燥粉末を保持するために適切な、カートリッジと、
前記カートリッジの遠位端に添付されたプライミングボタンと、
送達チャンバーを通る管腔、近位端、および遠位端を備える送達チャンバーであって、前記送達チャンバーの前記遠位端が前記カートリッジの前記近位端に当接する、送達チャンバーと、
前記送達チャンバーの前記近位端に当接するマウスピースであって、前記送達チャンバーの前記管腔に流体接続された管腔を備えるマウスピースと、
前記マウスピースと前記送達チャンバーの間に位置付けられた渦部材と、
前記カートリッジ、送達チャンバー、渦部材、およびマウスピースを中に包み込む管腔を備える細長いハウジングと、を備え、
前記プライミングボタンを作動することが、前記カートリッジから前記送達チャンバーの前記管腔の中に乾燥粉末を堆積させ、また前記装置が、使用時に空気が前記カートリッジを横切って引き出され、前記溝付き外部によって角度を付けられ、かつ前記送達チャンバーに乱流の様態で入って前記乾燥粉末を同伴し、次いで、さらなる乱流の様態で前記渦部材を通過して、前記マウスピースの前記管腔を通して引き出されるように構成されている、乾燥粉末吸入器装置。
【請求項2】
前記ハウジングが、円形の形状、卵形の形状、または三つ、四つ、五つ、または六つの側面を有する多角形形状を有する断面を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マウスピースの前記管腔が、前記マウスピースの前記管腔を通過する空気の乱流を増大させるための少なくとも一つの溝、隆起部、またはフィンをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記マウスピースが、前記細長いハウジングの中に格納可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記マウスピースが、前記細長いハウジング上のトラックに沿って延びる摺動タブによって格納可能かつ展開可能である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記マウスピースが、前記細長いハウジング内のばね機構および前記細長いハウジング上の解放ボタンによって格納可能かつ展開可能である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記マウスピースが前記送達チャンバーの中に格納され、かつ前記送達チャンバーの中への乾燥粉末の前記堆積を遮断する、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
乾燥粉末カートリッジであって、
近位端にある近位開口部と、遠位端にある遠位開口部と、これを通した長軸方向軸と、溝付き外部表面とを有する管腔を備える円筒状本体と、
前記管腔に流体接続された前記円筒状本体の前記近位端にある貯蔵部と、
近位端と遠位端を有し、前記本体の前記管腔および貯蔵部内に位置付けられ、前記円筒状本体の前記長軸方向軸に沿って移動可能な移動可能なスピンドルであって、前記移動可能なスピンドルが、その近位端の近くに少なくとも一つの溝を備える、移動可能なスピンドルと、を備え、
前記少なくとも一つの溝が、前記貯蔵部から前記本体の前記近位開口部を通して摺動可能に通るように構成されている、カートリッジ。
【請求項9】
前記カートリッジが、前記移動可能なスピンドルの前記近位端の近くの前記少なくとも一つの溝のサイズによって制御された用量を送達するように構成されている、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記スピンドルが、乾燥粉末吸入器の前記プライミングボタンと係合可能かつ移動可能である、請求項8または請求項9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
乾燥粉末を対象に送達する方法であって、
乾燥粉末を含有し、かつ溝付き外部を有するカートリッジと、プライミングボタンと、送達チャンバーと、マウスピースと、前記カートリッジ、送達チャンバー、およびマウスピースを中に包み込む細長いハウジングとを備える乾燥粉末吸入器装置を提供することと、
ある量の乾燥粉末を前記カートリッジから前記送達チャンバーの中に堆積するために、前記プライミングボタンを押圧することと、
前記マウスピースに真空を印加することと、を含み、
前記真空が前記カートリッジを横切って空気を引き出し、かつ前記空気が前記溝付き外部によって角度付けられて、前記送達チャンバーの中に乱流の様態で入って前記乾燥粉末を前記空気の中に同伴し、前記真空が、同伴された乾燥粉末を有する前記空気を、前記マウスピースを通して前記対象の中に引き出す、方法。
【請求項12】
前記カートリッジが、前記プライミングボタンの単一の押圧で送達される乾燥粉末の量に基づいて選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記送達される乾燥粉末の量を増加させるために、前記プライミングボタンが複数回押圧される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
乾燥粉末を送達するためのキットであって、請求項8に記載の乾燥粉末カートリッジと、プライミングボタンと、送達チャンバーと、マウスピースと、前記カートリッジ、送達チャンバー、およびマウスピースを中に包み込む細長いハウジングとを備える、乾燥粉末吸入器装置を含む、キット。
【請求項15】
マウスピース解放ボタンをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記細長いハウジングが、前記マウスピース解放ボタン用のスロットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記乾燥粉末吸入器装置が、前記マウスピース解放ボタンを押圧することによって、格納された構成から展開された構成に切り替えられる、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記マウスピースの前記遠位端に取り付けられたサイクロンチャンバーをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
サイクロンチャンバーの管腔が、一つ以上の溝、隆起部、フィン、およびこれに類するものなどの、気流の乱流を強化する特徴をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
喫煙者および傍観者に対する従来のたばこの立証された健康危害を理由に、対象者の肺へのニコチン送達に適した代替手段を見つけるために市場において変化が見られる。生理活性材料を対象者の肺に送達することが望ましい場合がある。例えば、副流煙を生じさせることなく、かつ従来のたばこの喫煙に伴う不快な臭気なく、対象者の肺にニコチンを送達することが望ましい場合がある。これを達成するために一つの機構は、乾燥粉末製剤としての生理活性材料の吸入によるものである。こうしたシステムにおいて、乾燥粉末吸入器を使用して、血流の中への吸収のために肺の内表面上に粉末を堆積させる。しかしながら、多くの乾燥粉末吸入器は、多数の望ましくない特徴を有する。
【0002】
例えば、多くの装置は、患者が薬剤の即時の、または完全な送達を必要とする医学的状態のために設計されている。これらの装置は、単一の吸入で医薬を送達する。それ故に、これらの装置は、複数回の吸入にわたって送達されることが好ましい医薬に適していない。さらに、これらの装置は、薬剤を直接通ってまたは横切って流れる気流に依存し、これは薬剤の一部が高速で移動し、対象者の気道の望ましくない部分に影響を与える原因となる。
【0003】
他の装置は、その使用のために過度に複雑なまたは扱いにくい機構に依存する。例えば、カプセルを回転させて遠心力によって粉末を排出するためにプロペラが使用されていたり、または離散的な量の粉末を吸入器の気流経路の中に堆積させるために、様々な回転機構もしくはスライド機構が使用されていたりする。これらの装置はまた、離散的に使用することが困難である。
【0004】
既存の装置が、Bulbrookに対する米国特許第6,234,169号(「Bulbrook」)に示されていて、これには円錐内部で渦様の効果を発生させるための乾燥粉末保管貯蔵部の中に突出する円錐形の装置が記述されている。この装置は渦を使用して貯蔵部内部に落ちて、粉末のスラグを拾い上げ、それを個人の気道に送達する。ところが、Bulbrookの設計上の制限は、粉末の凝集を十分に分散して望ましいエアロゾルをユーザーに送達するために、保管貯蔵部内部で適切なエネルギーを提供しないことである。Bulbrookの設計ではまた、偶発的な粉末の放出を防止する信頼できる方法や、保管貯蔵部を切り替えるための機能が欠如している。
【0005】
離散的な設計で使いやすさを維持しながら、吸入のために、増加した量の粉末を空気の中に捕らえることができるように、乾燥粉末チャンバー内部に十分な乱流を作り出す乾燥粉末吸入器を提供することが望ましいことになる。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本発明は、近位端、遠位端、および溝付きの外部を有するカートリッジであって、乾燥粉末を保持するために適しているカートリッジと、カートリッジの遠位端に添付されたプライミングボタンと、送達チャンバーを通る管腔、近位端、および遠位端を備える送達チャンバーであって、送達チャンバーの遠位端がカートリッジの近位端に当接する、送達チャンバーと、送達チャンバーの近位端に当接するマウスピースであって、送達チャンバーの管腔と流体接続された管腔を備えるマウスピースと、マウスピースと送達チャンバーの間に位置付けられた渦部材と、カートリッジ、送達チャンバー、渦部材、およびマウスピースを中に包み込む管腔を備える細長いハウジングとを含み、プライミングボタンを作動させることが、カートリッジから送達チャンバーの管腔の中に乾燥粉末を堆積させ、かつカートリッジを横切って引き出された空気が、溝付きの外部によって角度を付けられ、乱流の様態で送達チャンバーに入って乾燥粉末を同伴し、次いで、さらなる乱流の様態で渦部材を通過して、マウスピースの管腔を通して引き出される、乾燥粉末吸入器装置に関する。
【0007】
一実施形態において、ハウジングは、円形の形状、卵形の形状、または三つ、四つ、五つ、または六つの側面を有する多角形形状を有する断面を備える。一実施形態において、マウスピースの管腔は、マウスピースの管腔を通過する空気の乱流を増大させるための少なくとも一つの溝、隆起部、またはフィンをさらに備える。一実施形態において、マウスピースを細長いハウジングの中に格納可能である。一実施形態において、マウスピースは、細長いハウジング上のトラックに沿って延びる摺動タブによって格納可能かつ展開可能である。一実施形態において、マウスピースは、細長いハウジング内のばね機構、および細長いハウジング上の解放ボタンによって格納可能かつ展開可能である。一実施形態において、マウスピースは送達チャンバーの中に格納され、かつ送達チャンバーの中への乾燥粉末の堆積を遮断する。
【0008】
カートリッジは、ある量の乾燥粉末を保存するように構成されてもよい。カートリッジは、ある量の乾燥粉末を含有してもよい。
【0009】
乾燥粉末は、生理活性材料を含んでもよい。本明細書で使用される「生理活性材料」という用語は、生体、組織、または細胞に影響を及ぼす材料を指す。生理活性材料は、薬物を含んでもよい。生理活性材料は、何らかの予防的または薬理学的効果を提供してもよい。生理活性材料は、対象において局所的または全身的効果を生じさせる少なくとも一つの生理学的または薬理学的に活性な物質を含みうる。
【0010】
生理活性材料は、抗生物質、抗体、抗ウイルス剤、抗てんかん薬、鎮痛剤、抗炎症剤、および気管支拡張剤のうちの少なくとも一つを含んでもよい。生理活性材料は、無機化合物および有機化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。生理活性材料は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経エフェクター接合部、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化系および排出系、ヒスタミン系、中枢神経系のうちの少なくとも一つに作用するように構成されてもよい。
【0011】
生理活性材料は、多糖類、ステロイド、睡眠剤または鎮静剤、精神賦活薬、精神安定剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、抗パーキンソン剤、筋収縮剤、抗微生物剤、抗マラリア剤のうちの少なくとも一つを含んでもよい。生理活性材料は、ホルモン剤を含んでもよい。例えば、生理活性材料は、避妊薬、交感神経刺激薬、ポリペプチド、および生理学的効果を引き出す能力を有するタンパク質、利尿剤、脂質調節剤、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫剤、新生物薬、抗悪性腫瘍薬、血糖降下剤のうちの少なくとも一つを含んでもよい。生理活性材料は、栄養剤およびサプリメント、成長サプリメント、ビタミンまたはミネラル、抗腸炎剤、電解質、診断薬のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0012】
生理活性材料は、カルシトニン、エリスロポエチン(EPO)、第Vlll因子、第IX因子、セレダーゼ、セレザイム、シクロスポリン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、アルファ-1プロテイナーゼ阻害剤、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ロイプロリド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似体、バソプレシン類似体、卵胞刺激ホルモン(FSH)、免疫グロブリン、インスリン様成長因子、インスリントロピン、インターロイキン-1受容体拮抗薬、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-6、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、神経成長因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、チモシンアルファl、llb/llla阻害剤、アルファ-1抗トリプシン、呼吸器合胞体ウイルス抗体、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性/浸透性増大タンパク質(BPI)、抗CMV抗体、インターロイキン-1受容体、l3-シスレチノイン酸、ニコチン、酒石酸水素ニコチン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、アムホテリシン、アミカシン、トブラマイシン、ペンタミジンイセチオネート、硫酸アルブテロール、硫酸メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、臭化イプラトロピウム、フルニソリド、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、キシナホ酸サルメテロール(salmeterol xinofoate)、フマル酸ホルモテロール(formeterol fumarate)、クロモリンナトリウム、エルゴタミン酒石酸、ニコチン、上記の類似体、作動薬、拮抗薬のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0013】
本発明の乾燥粉末吸入器は、生理活性材料を対象者の気道の領域に送達するように構成されうる。生理活性材料の肺送達は、比較的に非侵襲的であり、生理活性材料が対象者の代謝を最初に通過するのを回避する可能性があり、呼吸器疾患の治療のために作用部位への生理活性材料の直接的な送達を可能にする可能性があり、生理活性材料が対象者の気道の大きい表面積に送達されることを可能にしうるので、有利である場合がある。
【0014】
乾燥粉末は、肺障害および全身性障害の治療および予防のための予防薬または治療薬を含む場合がある。肺障害は、従来の投与方法によって効果的に治癒することは困難な場合がある。肺障害および全身性障害には、慢性閉塞性肺疾患、肺がん、嚢胞性線維症、結核、喘息が含まれる。
【0015】
肺障害および全身性障害の治療および予防のための予防薬または治療薬は、β2アドレナリン作動薬、コルチコステロイドおよびクロモン、抗コリン薬のうちの少なくとも一つを含んでもよい。コルチコステロイド吸入器(乾燥粉末または定量吸入器)は、成人のための一次抗炎症治療となっていて、小児において非常に広く使用されている。全身的に活性なコルチコステロイド(例えば、プレドニゾンまたはデキサメタゾン)は吸入することができる。
【0016】
乾燥粉末は、ペプチドまたはタンパク質のうちの少なくとも一つを含んでもよい。局所作用のために肺に直接投与することは、全身性の有害作用を回避しながら、高用量のタンパク質およびペプチドを分布させることを可能にする。例えば、乾燥粉末は、インスリン、ヒト成長ホルモン(hGH)、カルシトニン、副甲状腺のうちの少なくとも一つを含んでもよい。これらはそれぞれ、糖尿病、ホルモン欠乏症、骨粗しょう症を治療するために使用されてもよい。他の例には、骨障害を治療するための組み換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子が含まれるが、これに限定されない。
【0017】
乾燥粉末は、少なくとも一つの抗生物質を含んでもよい。例えば、乾燥粉末は、慢性緑膿菌感染を有する嚢胞性線維症(CF)患者の維持療法としてのトブラマイシンを含んでもよい。
【0018】
乾燥粉末は、少なくとも一つのワクチンを含んでもよい。ワクチンは、予防ワクチンまたは治療ワクチンであってもよい。例えば、乾燥粉末は、全身性、粘膜液性、ならびに細胞媒介性免疫反応を誘発するために、噴霧凍結乾燥によって調製されたイヌリン安定化インフルエンザサブユニットワクチンを含んでもよい。
【0019】
乾燥粉末は、ニコチンを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「ニコチン」という用語は、ニコチンおよび任意の形態のニコチン誘導体を指し、これには遊離塩基ニコチン、ニコチン塩、または糖基質などの基質または有機金属錯体の状態にあるものなどを含むがこれらに限定されない。ニコチン塩は、乳酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、およびこれに類するものを含んでもよい。
【0020】
別の態様において、本発明は、近位端にある近位開口部、遠位端にある遠位開口部、およびこれらを通る長軸方向軸を有する管腔を備える円筒状本体と、管腔に流体接続された円筒状本体の近位端にある貯蔵部と、近位端および遠位端を有し、かつ本体の管腔および貯蔵部内に位置付けられた移動可能なスピンドルであって、円筒状本体の長軸方向軸に沿って移動可能なスピンドルであって、移動可能なスピンドルが、その近位端の近くの少なくとも一つの溝を備える、スピンドルとを備え、少なくとも一つの溝が、貯蔵部から本体の近位開口部を通して摺動可能に通るように構成されている、乾燥粉末カートリッジに関する。
【0021】
一実施形態において、円筒状本体は、少なくとも一つの溝を有する外部表面を備える。一実施形態において、カートリッジは、移動可能なスピンドルの近位端の近くの少なくとも一つの溝のサイズによって制御された用量を送達する。一実施形態において、スピンドルは、乾燥粉末吸入器のプライミングボタンと係合可能かつ移動可能である。一実施形態において、移動可能なスピンドルと円筒状本体の間のいかなる間隙も、少なくとも一つのガスケットで密封される。一実施形態において、カートリッジは使い捨てである。
【0022】
別の態様において、本発明は、乾燥粉末を対象に送達する方法に関し、方法は、乾燥粉末を含有するカートリッジと、プライミングボタンと、送達チャンバーと、マウスピースと、カートリッジ、送達チャンバー、およびマウスピースを中に包み込む細長いハウジングとを備える乾燥粉末吸入器装置を提供する工程と、カートリッジから送達チャンバーの中に、ある量の乾燥粉末を堆積するためにプライミングボタンを押圧する工程と、マウスピースに真空を印加する工程であって、真空が送達チャンバーの中に空気を引き出して、乾燥粉末を空気の中に同伴させ、真空が同伴された乾燥粉末とともに空気を、マウスピースを通して対象の中に引き出す、工程とを含む。
【0023】
一実施形態において、カートリッジは、プライミングボタンの単一の押圧で送達される乾燥粉末の量に基づいて選択される。一実施形態において、プライミングボタンは、送達される乾燥粉末の量を増加させるために複数回押圧される。
【0024】
別の態様において、本発明は、乾燥粉末を送達するためのキットに関し、キットはカートリッジと、プライミングボタンと、送達チャンバーと、マウスピースと、カートリッジ、送達チャンバー、およびマウスピースを中に包み込む細長いハウジングとを備える乾燥粉末吸入器装置を含む。
【0025】
一実施形態において、キットは、追加的なカートリッジをさらに含む。一実施形態において、キットは、乾燥粉末吸入器装置を使用するための取扱説明資料をさらに含む。
【0026】
以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と併せて読む場合により良く理解される。本発明を例証する目的で、図面では現時点で好ましい実施形態が示されている。しかし当然のことながら、本発明は図面に示された実施形態の正確な配設および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、例示的な乾燥粉末吸入器(DPI)装置の等角図を図示する。
【
図2】
図2は、例示的なDPI装置の近位構成要素の分解組立図を図示する。
【
図3】
図3は、例示的なDPI装置の遠位構成要素の分解組立図を図示する。
【
図4】
図4は、例示的なDPI装置の断面図を図示する。
【
図5】
図5は、格納されたマウスピースを有する例示的なDPI装置を図示する。
【
図6】
図6は、格納されたマウスピースを有する例示的なDPI装置の切り欠き図を図示する。
【
図7】
図7は、摺動タブおよびトラック機構を有する例示的なDPI装置の様々な図を図示する。
【
図8】
図8は、例示的なDPI装置カートリッジの構成要素の様々な図を図示する。
【
図9】
図9は、例示的なDPI装置カートリッジおよびプライミングボタン組立品の様々な図を図示する。
【
図10A-10C】
図10A~
図10Cは、例示的なプライミング機構を実証する、例示的なDPI装置の様々なクローズアップ図を図示する。
【
図11A-11B】
図11Aおよび
図11Bは、例示的なプライミング機構を実証する、例示的なDPI装置のクローズアップ切り欠き図を示す。
【
図12】
図12は、例示的なDPI装置を通る空気の流れを実証する線図を図示する。
【
図13】
図13は、例示的なDPI装置の例示的なカートリッジ交換方法を実証する線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、乾燥粉末を分配するための乾燥粉末吸入器(DPI)装置、およびそれを使用するための方法を部分的に提供する。DPI装置は、ユーザーの肺の中に送達するための、ある量の乾燥粉末用量を同伴するために、気流の方向を変化させるための渦機構を特徴とする。DPI装置は、交換可能な乾燥粉末カートリッジを特徴とする。DPI装置はまた、保管のための、および乾燥粉末の偶発的な分配のための格納可能な構成を特徴とする。DPI装置は、制御された用量で乾燥粉末を分配することができる。
【0029】
本発明の図および説明は、本発明の明確な理解に必要な要素を図示するために簡略化されている一方、当技術分野で典型的に見いだされる多くの他の要素が明確化の目的で省かれていることが理解される。当業者は、本発明の実施において、他の要素または工程が望ましいか、または必要であることを認識しうる。しかしながら、こうした要素および工程は当業界で周知であるため、またこれらは本発明のより良好な理解を促進しないため、こうした要素および工程の考察は本明細書では提供されていない。本明細書の開示は、当業者にとって周知のこうした要素および方法に対するすべてのこうした変形および修正を対象とする。
【0030】
本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、どこかに定義されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実践または試験で使用することができるものの、好ましい方法および材料について説明する。
【0031】
本明細書で使用する以下の用語の各々は、このセクションにおいてその用語と関連付けられた意味を有する。
【0032】
本明細書で使用する「一つ」という用語は、この用語の被修飾語の一つ、または一つ以上(すなわち、少なくとも一つ)を指すために使用される。一例として、「一つの要素」は、一つのある要素または二つ以上のある要素を意味する。
【0033】
ここで
図1を参照すると、例示的な乾燥粉末吸入器(DPI)装置100の外部が図示されている。DPI装置100は、マウスピース102、マウスキャップ104、スリーブまたは外部ハウジング106、マウスピース解放ボタン108、気流開口部109、プライミングボタンキャップ110、およびプライミングボタン112を備える。
【0034】
ここで
図2を参照すると、例示的なDPI装置100の内部近位構成要素が詳述されている。例示的なDPI装置100は、サイクロンチャンバー114、渦部材116、マウスピースばね118、ガスケット120、送達チャンバー122、ラッチ124、およびカートリッジ200を含む渦機構を特徴とする。
【0035】
ここで
図3を参照すると、第一のカートリッジガスケット202、第二のカートリッジガスケット204、第三のカートリッジガスケット206、スピンドル208、およびプライミングばね126を含む、例示的なDPI装置100の内部遠位構成要素が詳述されている。
【0036】
ここで
図4を参照すると、例示的なDPI装置100の断面図が示されていて、幾つかの構成要素の配設を実証している。幾つかの構成要素の構築は、プラスチックまたは金属などの任意の適切な材料から作製することができる。特定の実施形態において、特定の構成要素は、追加的な材料を含んでもよい(言及されている場合)。
【0037】
ハウジング106は、幾つかの内部構成要素を収容する。ハウジング106は、全体を通る管腔を有する細長い管状形状を備える。その遠位端にて、ハウジング106は、少なくとも一つの気流開口部109を備える。特定の実施形態において、ハウジング106は、マウスピース解放ボタン108用のスロットを備えてもよく、これはマウスピース解放ボタン108へのアクセスを簡単にするために、当該スロットの周りにへこみをさらに備えてもよい。ハウジング106の外部は、丸みのある形状およびファセット付きの形状を含む、任意の適切な形状であってもよい。ハウジング106の形状は、その断面の形状から説明されてもよい。例えば、正面から見ると、ハウジング106は、円形断面、卵形断面、または三つ、四つ、もしくはそれ以上の側面を有する多角形断面を有してもよい。一部の実施形態において、ハウジング106は、一つ以上の隆起部、溝、突起、およびこれに類するものなどの、把持を強化するための外部特徴をさらに備えてもよい。ハウジング106は、金属、プラスチック、および木製材料などの任意の適切な材料を備えてもよい。
【0038】
マウスピース102は、ハウジング106の近位端の中に挿入される。一部の実施形態において、マウスピース102は、空気および同伴された粒子を通過させるのに適した管腔を有する管状形状を備える。一部の実施形態において、マウスピース102の管腔は、一つ以上の溝、隆起部、フィン、およびこれに類するものなどの、気流の乱流を強化する特徴をさらに備える。一部の実施形態において、マウスピース102は、ユーザーの口に対して適切な輪郭を有する外部表面を備える。マウスピース102は、その遠位端にフランジ103をさらに備える。
【0039】
マウスキャップ104は、ハウジング106の近位端に取り付けられて、マウスピース102を少なくとも部分的にハウジング106内に固定する。マウスキャップ104は、丸みのある形状およびファセット付きの形状を含む、任意の適切な形状を有することができる。一部の実施形態において、マウスキャップ104は、ハウジング106と同一の断面形状を備える。マウスキャップ104は、嵌合するオスねじとメスねじ(
図4)、ペグとスロットのシステム、摩擦嵌めシステム、およびこれに類するものなどの任意の適切な手段によって取り付けることができる。マウスキャップ104は、マウスピース102が通過することを可能にするが、フランジ103を通過することを可能にしないようにサイズ設定された開口を備え、それによってマウスピース102がハウジング106から完全に出ることを防止する。
【0040】
サイクロンチャンバー114は、マウスピース102の遠位端に取り付けられている。サイクロンチャンバー114は、マウスピース102の管腔に流体接続された管腔を有する管状形状を備え、また空気および同伴された粒子を通過させるためにも適切である。一部の実施形態において、サイクロンチャンバー114の管腔は、一つ以上の溝、隆起部、フィン、およびこれに類するものなどの、気流の乱流を強化する特徴をさらに備える。サイクロンチャンバー114は、その遠位端にフランジ115をさらに備える。
【0041】
渦部材116は、サイクロンチャンバー114の遠位端に取り付けられる。渦部材116は、空気および同伴された粒子を方向付けるための少なくとも一つのチャネルを備える。一部の実施形態において、少なくとも一つのチャネルは、気流の乱流を強化するために角度を有していてもよく、または湾曲していてもよい。
【0042】
一部の実施形態において、マウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116は、ハウジング106の管腔内の単一のユニットとして摺動可能である。ここで
図5を参照すると、マウスピース102は、マウスピース102の近位端がマウスキャップ104の近位端と同一平面上であるか、またはマウスキャップ104の近位端内に陥凹しているように、ハウジング106の中に摺動して、格納された位置に摺動してもよい。一部の実施形態において、マウスピースばね118は、マウスピース102に近位移動を提供し、マウスピースばね118は、フランジ103に対してばね力を加える(
図4)。
【0043】
送達チャンバー122は、ハウジング106の中心の近くに置かれている。送達チャンバー122の外部寸法は、ハウジング106の管腔内に嵌合するようにサイズ設定されている。送達チャンバー122は、サイクロンチャンバー114および渦部材116に少なくとも部分的に嵌合するようにサイズ設定された空洞を備える。例えば、一部の実施形態において、サイクロンチャンバー114および渦部材116は、送達チャンバー122の空洞の中に少なくとも部分的に格納されてもよく(
図5)、一方で他の実施形態において、送達チャンバー122の空洞には障害物がない(
図4)。一部の実施形態において、送達チャンバー122は、空気が送達チャンバー122の空洞の中に流れることを許容する気道開口部123を備える。
【0044】
特定の実施形態において、送達チャンバー122は、マウスピース解放ボタン108およびラッチ124を嵌合するためのスロットを備える。マウスピース解放ボタン108は、ラッチ124に取り付けられ、かつラッチ124を作動する。ラッチ124は、サイクロンチャンバー114のフランジ115と係合して、サイクロンチャンバー114を格納された位置に固定する(
図6)。
【0045】
図7に示す通り、一部の実施形態において、摺動タブ140が提供されていて、摺動タブ140は、ハウジング106上のトラック142に沿って摺動可能である。摺動タブ140は、マウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116に取り付けられていて、これによって、トラック142に沿って摺動タブ140を移動させることが、三つの構成要素をハウジング106の中に、およびハウジング106の外に摺動させる。
【0046】
特定の実施形態において、摺動機構は、ばね(図示せず)をさらに備えてもよい。一実施形態において、ばねは、マウスピース102をハウジング106の外に展開するように強制する力を加える。別の一実施形態において、ばねは、マウスピース102をハウジング106の中に格納するように強制する力を加える。特定の実施形態において、摺動タブ140は、少なくとも一つの係止機構をさらに備え、これによって、摺動タブ140がマウスピース102をばね力に対して摺動させる時、係止機構はマウスピース102を一時的に定位置に係止してもよい。
【0047】
ガスケット120が、送達チャンバー122の近位端に提供されている。一部の実施形態において、ガスケット120は、サイクロンチャンバー114の外径に嵌合するようにサイズ設定された内径を備え、これによってガスケット120は、ハウジング106および送達チャンバー122内のサイクロンチャンバー114が摺動する際に、サイクロンチャンバー114との密封を維持する。ガスケット120は、プラスチック、ゴム、シリコン、または他の弾性材料などの任意の適切なガスケット材料を含んでもよい。
【0048】
カートリッジ200は、ハウジング106内の送達チャンバー122の遠位端に当接する。ここで
図8を参照すると、例示的なカートリッジ200が図示されている。カートリッジ200は、第一のカートリッジガスケット202、第二のカートリッジガスケット204、第三のカートリッジガスケット206、およびスピンドル208を備える。カートリッジ200は、実質的に円筒状であり、長軸方向軸と、乾燥粉末を保持するための内側貯蔵部220と、外部表面とを有する。カートリッジ200は、その近位端および遠位端に開口をさらに備える。
【0049】
一部の実施形態において、カートリッジ200の外部表面は、角度を有する渦溝210の領域を備える(
図8)。他の実施形態において、カートリッジ200の外部表面は、実質的に真っ直ぐな渦溝210の少なくとも一つの領域と、角度を有する渦溝210の少なくとも一つの領域とを備える(
図10C)。
【0050】
スピンドル208は、実質的に円筒状であり、かつその近位端の近くの送達リング溝216と、その遠位端の近くのプライミングリング溝218と、その中心の近くのストッパーフランジ214とを備える。送達リング溝216は、単一の用量で送達される、ある量の乾燥粉末を保持し、また複数のサイズおよび体積を含んでもよい。スピンドル208は、カートリッジ200の開口内に位置付けられていて、スピンドル208は、カートリッジ200の長軸方向軸と整列している。スピンドル208の遠位端は、カートリッジ200の遠位開口から外に突出する。一部の実施形態において、少なくとも一つのシース212が、スピンドル208の不注意による押圧を防止するために、カートリッジ200の遠位端に提供されている。
【0051】
第一のカートリッジガスケット202および第二のカートリッジガスケット204は、カートリッジ200の近位開口とこれを通過するスピンドル208との間の空間を密封する。第三のカートリッジガスケット206は、カートリッジ200の遠位開口とこれを通過するスピンドル208との間の空間を密封する。第二のカートリッジガスケット204および第三のカートリッジガスケット206は、ストッパーフランジ214を遮ることによって、スピンドル208の近位の移動と遠位の移動をそれぞれ制限する。
【0052】
一部の実施形態において、第一のカートリッジガスケット202は、渦部材116の寸法に適合するようにサイズ設定されている。例えば、格納された位置にある渦部材116は、第一のカートリッジガスケット202内に嵌合してもよい(
図6)。第一のカートリッジガスケット202、第二のカートリッジガスケット204、および第三のカートリッジガスケット206は、プラスチック、ゴム、シリコン、または他の弾性材料などの任意の適切なガスケット材料を含んでもよい。
【0053】
DPI装置100の遠位端は、プライミングボタン112、プライミングボタンキャップ110、およびプライミングばね126を備えるプライミング組立品によってキャップ付けされている。プライミングボタン112は、ハウジング106の遠位端の中に挿入される。プライミングボタン112は、丸みのある形状およびファセット付きの形状を含む、任意の適切な形状を備えることができる。一部の実施形態において、プライミングボタン112は、ハウジング106と同一の断面形状を備える。
【0054】
ここで
図9を参照すると、プライミングボタン112とカートリッジ200の間の接続を例証する、一連の線図が図示されている。プライミングボタン112は、タブ113と、プライミングリングスロット130を有するプライミングボタンシャフト128とをさらに備える。プライミングリングスロット130は、プライミングリング溝218をスピンドル208の遠位端に嵌合するように形作られている。特定の実施形態において、プライミングボタンシャフト128は、プライミングリングスロット130をプライミングリング溝218に係合するために、少なくとも一つのシース212の間に嵌合するように寸法設定されている。
【0055】
プライミングキャップ110は、ハウジング106の遠位端に取り付けられて、プライミングボタン112を少なくとも部分的にハウジング106内に固定する。プライミングキャップ110は、丸みのある形状およびファセット付きの形状を含む、任意の適切な形状を有することができる。一部の実施形態において、プライミングキャップ110は、ハウジング106と同一の断面形状を備える。プライミングキャップ110は、嵌合するオスねじとメスねじ、ペグとスロットのシステム(
図11)、摩擦嵌めシステム、およびこれに類するものなどの任意の適切な手段によって取り付けることができる。プライミングキャップ110は、プライミングボタン112が通過することを可能にするが、少なくとも一つのタブ113を通過することを可能にしないようにサイズ設定された開口を備え、それによってプライミングボタン112がハウジング106から完全に出ることを防止する。
【0056】
一部の実施形態において、プライミングばね126は、遠位移動をプライミングボタン112に提供し、プライミングばね126は、プライミングボタン112の内部に対してばね力を加える(
図4)。
【0057】
DPI装置100は、展開された構成(
図1、
図4)と、格納された構成(
図5、
図6)との二つの構成を備える。展開された構成において、マウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116は、DPI装置100の外に完全に延ばされる。送達チャンバー122の空洞には、障害物がない。一部の実施形態において、展開された構成は、マウスピース102のフランジ103上に加えられるばね力によって維持されている。
【0058】
格納された構成において、マウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116は、DPI装置100の中に完全に引き入れられている。本明細書のどこかに記載の通り、格納された構成において、マウスピース102の近位端は、DPI装置100の近位端と同一平面上であるか、またはDPI装置100の近位端内に陥凹している。サイクロンチャンバー114および渦部材116は、送達チャンバー122の空洞の中に少なくとも部分的に引き入れられている。一部の実施形態において、格納された構成は、ラッチ124によって維持されていて、サイクロンチャンバー114の少なくとも一つのフランジ115と係合し、かつそれを保持する。渦部材116の遠位端は、第一のカートリッジガスケット202内に着座していて、スピンドル208の近位端に対して当接し、またプライミングボタン112によってスピンドル208が押圧されるのを防止する。
【0059】
一部の実施形態において、DPI装置100は、マウスピース102の近位端に対して力を加えることによって、展開された構成から、格納された構成に切り替えることができる。この力は、マウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116がハウジング106の中に格納されることを可能にするために、マウスピースばね118のばね力に対抗するのに十分な力でなければならない。少なくとも一つのフランジ115がラッチ124の下を通ると、ラッチ124は、格納された構成でマウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116と係合し、それらを保持する。一部の実施形態において、クリック音などの聴覚信号は、ラッチ124が少なくとも一つのフランジ115と係合したことを示す。
【0060】
一部の実施形態において、DPI装置100は、マウスピース解放ボタン108を押圧することによって、格納された構成から、展開された構成に切り替えることができる。マウスピース解放ボタン108を押圧すると、少なくとも一つのフランジ115からラッチ124を係脱し、マウスピースばね118からのばね力がフランジ103を押すことを可能にし、これは次にマウスピース102、サイクロンチャンバー114、および渦部材116を完全に延ばす。
【0061】
ここで
図7を参照すると、一部の実施形態において、DPI装置100は、トラック142に沿って摺動タブ140を移動させることによって、展開された構成と格納された構成の間で切り替えることができる。
【0062】
DPI装置100は、送達のための乾燥粉末の用量を準備するためにプライミングされる。乾燥粉末の用量は、プライミングの前に選択されてもよく、ユーザーは、1回の用量当たり特定の量の粉末を送達するために、送達リング溝216を有するカートリッジ200またはスピンドル208を選択する。
【0063】
ここで
図10A~
図10Cを参照すると、例示的なプライミング機構を例証する線図が図示されている。
図10Aは、プライミング工程の前のプライミング組立品、カートリッジ200、および送達チャンバー122を図示する。プライミングボタン112は、プライミングばね126からプライミングボタン112上に加えられたばね力によって完全に延びている。スピンドル208は遠位位置にあり、貯蔵部220内に送達リング溝216を位置付ける(
図11Aの切り欠き図)。貯蔵部220は、送達リング溝216によって提供された空間に充填される乾燥粉末を含む。
【0064】
図10Bは、プライミング工程を図示し、ここではプライミングボタン112が押圧されている。プライミングボタン112の近位移動は結果として、スピンドル208を近位方向に押し、貯蔵部220の外側に、かつ送達チャンバー122の中に送達リング溝216を位置付け(
図11Bの切り取り図)、するとすぐに送達リング溝216内に運ばれた乾燥粉末が重力によって送達チャンバー122の中に堆積する。
図10Cは、貯蔵部220の外側に位置付けられた送達リング溝216の、遮るもののない図を提供する。
【0065】
プライミング工程の後、プライミングボタン112は解放される。次いで、プライミングばね126は、プライミングボタン112を、
図10Aに図示したその延びた位置に遠位方向に押すことができる。プライミングボタン112の遠位移動は結果として、スピンドル208を遠位方向に格納し、貯蔵部220内の送達リング溝216を再び位置付け、するとすぐに乾燥粉末が、送達リング溝216によって提供された空間に補充されてもよい。
【0066】
一部の実施形態において、単一のプライミング工程は、プライミングボタン112を完全に押圧して、送達チャンバー122の中に単一の用量を堆積させる。一部の実施形態において、送達チャンバー122の中に、より大きい用量を提供するために、プライミング工程を繰り返してもよい。一部の実施形態において、プライミングボタン112は、完全に延びた位置と完全に押圧された位置の間に複数の段付き位置を含み、各段付き位置は、用量と相関する。
【0067】
ここで
図12を参照すると、例示的なDPI装置100を通る気流経路を図示する線図が図示されている。気流は、吸入などによってマウスピース102上に真空を印加するユーザーによって開始される。空気は、複数の気流開口部109を通してDPI装置100に入ることによって、第一の空気経路300に追従する。空気は次に、カートリッジ200の外部にある少なくとも一つの渦溝210を通って流れることによって第二の空気経路302に追従し、少なくとも一つの渦溝210は、乱流気流のために空気の流れに角度を付ける。
【0068】
乱流空気は、少なくとも一つの気流開口部123を通して送達チャンバー122に入り、送達チャンバー122中に存在する乾燥粉末は、乱流空気によって同伴されるようになる。同伴された乾燥粉末を有する乱流空気は次に、渦部材116中の少なくとも一つのチャネルを通して空気経路304に追従して、サイクロンチャンバー114に入り、渦部材116中の少なくとも一つのチャネルは空気の流れに、より鋭い角度を提供する。混入された乾燥粉末を有する乱流空気は次に、空気経路306に追従してサイクロンチャンバー114、マウスピース102を通過し、ユーザーの中に入る。
【0069】
ここで
図13を参照すると、DPI装置100中のカートリッジを交換する例示的な方法を例証する線図が図示されている。カートリッジの交換は、最初にプライミングボタンキャップ110をDPI装置100から係脱することによって実施される。カートリッジ200は、本明細書のどこかに記載の通り、プライミングリング溝218とプライミングリングスロット130の間の嵌合接続に起因して、DPI装置100から抜き取られる。カートリッジ200はプライミングボタンシャフト128から分離され、また新しいカートリッジ200は、プライミングリング溝218とプライミングリングスロット130の間の接続を嵌合することによって、プライミングボタンシャフト128に結合される。新しいカートリッジ200は、DPI装置100の中に挿入され、またプライミングボタンキャップ110は、DPI装置100に再係合される。
【0070】
本発明の装置は、当業界で周知の任意の適切な方法を使用して作製することができる。作製方法は使用する材料に依存して異なる場合がある。例えば、金属を実質的に含む装置は、より大きい金属のブロックからフライス加工されてもよく、または溶融金属から鋳造されてもよい。同様に、プラスチックまたはポリマーを実質的に含む装置は、より大きいブロックからフライス加工されてもよく、または射出成形されてもよい。一部の実施形態において、装置は、当技術分野で一般的に使用される3D印刷技法を使用して作製されてもよい。
【0071】
本発明は、DPI装置を使用して乾燥粉末をユーザーに分配する方法を提供する。
【0072】
乾燥粉末を分配する前に、マウスピース102は最初に、マウスピース解放ボタン108を押して解放されなければならない。マウスピース102を解放することは、乾燥粉末を受け入れるための送達チャンバー122をきれいにする。本明細書のどこかに記載の通り、少なくとも1回の用量の乾燥粉末は、プライミングボタン112を作動させることによって送達チャンバー122の中に堆積される。次いで、ユーザーは、マウスピース102に真空を印加することによって、送達チャンバー122中の乾燥粉末を吸入してもよく、気流開口部109に入る空気は、送達チャンバー122中の乾燥粉末を同伴し、マウスピース102を通してユーザーの肺の中に出る。
【0073】
ユーザーは望む通りに、プライミングボタン112を作動する工程と、堆積した乾燥粉末用量を吸入する工程とを繰り返すことによって、さらなる用量を投与してもよい。ユーザーが乾燥粉末の用量の投与を完了した時、DPI装置100は、マウスピース102が定位置に係止されるまでマウスピース102をDPI装置100の中に押し込むことによって、かつ同時に装置のサイズを小さくすることによって、かつプライミングボタン112の移動を阻止して乾燥粉末の漏れを防止することによって、保管のために準備されてもよい。
【0074】
本発明は、乾燥粉末の分配で使用する、本明細書に記載の装置を含むキットを提供する。特定の実施形態において、キットは、
図1のDPI装置100などの少なくとも一つのDPI装置を含む。特定の実施形態において、キットは、一つ以上のカートリッジ200などの他の構成要素を随意に含んでもよい。特定の実施形態において、キットは、取扱説明資料を含む。取扱説明資料は、本明細書に記載の装置のいずれかの有用性を伝えるために使用されることができる、出版物、記録、線図、または任意のその他の表現の媒体を含んでもよい。取扱説明資料はまた、本明細書に記載の方法のうちのいずれかを実施するための一つ以上の工程の説明を含んでもよい。キットの取扱説明資料は、例えば一つ以上のキットまたは装置を包含するパッケージに貼り付けられてもよい。別の方法として、取扱説明資料は、パッケージとは別個に発送されてもよく、または電子的に利用可能である(例えば、インターネットからアクセス可能である)か、または任意のダウンロード可能な電子文書ファイル形式であってもよい。
【0075】
ありとあらゆる特許、特許出願、および本明細書で引用した出版物の開示はその全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。特定の実施形態を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態および変形が他の当業者によって考案されうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、こうしたすべての実施形態および均等物の変形を含むように解釈されることが意図される。
【国際調査報告】