(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】船舶の排出物が削減された航行のための方法及び船舶
(51)【国際特許分類】
C02F 1/66 20060101AFI20220228BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20220228BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20220228BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20220228BHJP
C02F 1/76 20060101ALI20220228BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20220228BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20220228BHJP
B63H 21/32 20060101ALI20220228BHJP
B63B 83/40 20200101ALI20220228BHJP
F01N 3/04 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
C02F1/66 510L
B01D53/92 215
C02F1/50 510E
C02F1/50 531P
C02F1/50 531R
C02F1/50 540A
C02F1/50 540B
C02F1/50 560C
C02F1/32 ZAB
C02F1/50 520F
C02F1/76 A
C02F1/78
C02F1/66 521C
C02F1/66 521B
C02F1/66 530B
C02F1/68 540B
C02F1/68 540G
B01D53/92 331
B63H21/32 Z
B63B83/40
F01N3/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540084
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2020070485
(87)【国際公開番号】W WO2020143578
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】201910023421.9
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910030414.1
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910039789.4
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/076278
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/077445
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/085980
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/109302
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518376886
【氏名又は名称】彭斯干
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】彭斯干
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091BA13
3G091CA15
4D002AA02
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4D002CA07
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4D050BB02
4D050BB06
4D050BD06
4D050CA12
4D050CA13
(57)【要約】
本発明は、船舶の排出物が削減された航行のための方法に関し、a)エンジンの排気ガスを海水で洗浄して洗浄海水を生じるステップと、b)開ループ動作モードでの洗浄海水の中和を含む、開ループ動作モードでの洗浄海水の処理ステップと、及び/又はc)閉ループ動作モードにおける、i)洗浄海水を貯蔵容器に貯蔵するステップと、ii)閉ループ動作モードで洗浄海水を中和するステップと、を含む洗浄海水の処理ステップとを含む。本発明はまた船舶に関する。本発明の目的は、船舶の経済及び環境保護での独自の利点を維持し、安全な航行を確保しながら、船舶の硫黄規制に関する国連の新たな世界的規制に適合させることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の排出物が削減された航行のための方法であって、
a)エンジンの排気ガスを海水で洗浄して洗浄海水を生じるステップと、
b)開ループ動作モードでの前記洗浄海水の中和を含む、開ループ動作モードでの前記洗浄海水の処理ステップと、及び/又は
c)閉ループ動作モードにおける、
i)前記洗浄海水を貯蔵容器に貯蔵するステップと、
ii)閉ループ動作モードで前記洗浄海水を中和するステップと
を含む前記洗浄海水の処理ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記貯蔵容器がバラストタンクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記バラストタンク内で前記洗浄海水とバラスト水を混合することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記洗浄海水を前記貯蔵容器に貯蔵し、前記洗浄海水をバラスト水として使用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)がステップii)の前に実行されるか、又はステップi)がステップii)の後に実行されるか、又はステップi)とステップii)が同時に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、開ループ及び閉ループ動作のための中和設備を提供することを更に含み、開ループ動作モードでの前記中和及び閉ループ動作モードでの前記中和の両方が、前記中和設備において実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、開ループ動作のための中和設備及び閉ループ動作のための中和設備を提供することを更に含み、開ループ動作モードでの前記中和は、前記開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作モードでの前記中和は、前記閉ループ動作のための中和設備で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、開ループ動作のための中和設備を提供することを更に含み、開ループ動作モードでの前記中和は、前記開ループ動作のための中和設備で行われ、開ループ動作モードでの前記中和は、前記貯蔵容器内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
開ループ動作モードでの前記中和は、前記洗浄海水と天然海水を混合すること、及び/又は前記洗浄海水とアルカリ性の化学物質を混合することを含み、閉ループ動作モードでの前記中和は、前記洗浄海水と天然海水を混合すること、及び/又は前記洗浄海水とアルカリ性の化学物質を混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ性の化学物質は、マグネシウム系のアルカリ性の化学物質、カルシウム系のアルカリ性の化学物質、ナトリウム系のアルカリ性の化学物質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
閉ループ動作モードでの前記洗浄海水の処理ステップは、iii)前記洗浄海水の生物を殺滅処理するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄海水の生物を殺滅処理するステップは、UV殺滅処理、及び/又は次亜塩素酸塩殺滅処理、及び/又はオゾン殺滅処理を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記貯蔵容器の内壁、前記洗浄海水を前記貯蔵容器に輸送するためのパイプの内壁及びポンプは、耐酸性にされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法を実施するための船舶であって、
前記排気ガスを洗浄するために前記海水が使用されて、前記洗浄海水を生じるスクラバーと、
貯蔵容器と
を含む、船舶。
【請求項15】
前記貯蔵容器は、前記船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くに位置する、請求項14に記載の船舶。
【請求項16】
前記船舶は、開ループ及び閉ループ動作のための中和設備を備えることを更に含み、開ループ動作モードでの前記中和及び閉ループ動作モードでの前記中和の両方が、前記開ループ及び閉ループ動作のための中和設備で行われる、請求項14に記載の船舶。
【請求項17】
前記船舶は、天然海水を供給するための設備を更に含み、該天然海水を供給するための設備は、中和処理のために前記開ループ及び閉ループ動作のための中和設備に天然海水を提供するように構成される、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記船舶は、アルカリ性の化学物質を供給するための設備を更に含み、該アルカリ性の化学物質を供給するための設備は、中和処理のために前記開ループ及び閉ループ動作のための中和設備にアルカリ性の化学物質を提供するように構成される、請求項16に記載の船舶。
【請求項19】
前記船舶は、開ループ動作のための中和設備と閉ループ動作のための中和設備とを更に含み、開ループ動作モードの前記中和は前記開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作モードの前記中和は前記閉ループ動作のための中和設備で行われる、請求項14に記載の船舶。
【請求項20】
前記船舶は、天然海水を供給するための設備を更に含み、該天然海水を供給するための設備は、中和処理のために前記開ループ動作のための中和設備及び/又は前記閉ループ動作のための中和設備に天然海水を提供するように構成される、請求項19に記載の船舶。
【請求項21】
前記船舶は、アルカリ性の化学物質を供給するための設備を更に含み、該アルカリ性の化学物質を供給するための設備は、中和処理のために前記開ループ動作のための中和設備及び/又は前記閉ループ動作のための中和設備にアルカリ性の化学物質を提供するように構成される、請求項19に記載の船舶。
【請求項22】
前記船舶は、開ループ動作のための中和設備を更に含み、開ループ動作モードでの前記中和は前記開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作モードでの前記中和は前記貯蔵容器内で行われる、請求項14に記載の船舶。
【請求項23】
前記船舶は、天然海水を供給するための設備を更に含み、該天然海水を供給するための設備は、中和処理のために前記開ループ動作のための中和設備及び/又は前記貯蔵容器に天然海水を提供するように構成される、請求項22に記載の船舶。
【請求項24】
前記船舶は、アルカリ性の化学物質を供給するための設備を更に含み、該アルカリ性の化学物質を供給するための設備は、中和処理のために前記開ループ動作のための中和設備及び/又は前記貯蔵容器にアルカリ性の化学物質を提供するように構成される、請求項22に記載の船舶。
【請求項25】
前記船舶は、生物を殺滅処理するための設備を更に含み、該生物を殺滅処理するための設備は、UV殺滅処理設備、及び/又は次亜塩素酸塩殺滅処理設備、及び/又はオゾン殺滅処理設備を含む、請求項14に記載の船舶。
【請求項26】
前記スクラバーには、前記海水と前記排気ガスの接触面積を増やすための充填物が備えられる、請求項14に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の排出物が削減された航行のための方法及び船舶に関する。本発明の目的は、船舶の経済及び環境保護での独自の利点を維持し、安全な航行を確保しながら、船舶の硫黄規制に関する国連の新たな世界的規制に適合させることである。本発明は、船舶の汚染防止及び海洋工学の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
締約国によって署名された船舶からの汚染防止のための国際条約(MARPOL附属書VI)及び関連規則によれば、国際海事機関(IMO)は、2020年1月1日から世界的な船舶の硫黄規制を実施する。具体的には、2020年3月1日以降、排気基準を満たすために排気ガス浄化システム(EGC)を設置していない船舶では、硫黄含有量が0.5%を超える船舶燃料を搭載することは許されない。世界的な船舶の硫黄規制に適合するための手段に関し、低硫黄燃料を使用する方法は、現在低硫黄燃料の価格が高く、将来的に輸送コストが高くなる可能性があるという欠点を有するため(低硫黄油精製過程での炭素排出量の大幅な増加は、パリ協定で制限されることになっている)、航海全体でEGC手段を採用することへの期待は、海運業界でますます高くなっている。しかし、船舶にEGC手段を採用することでの問題は、主に次のことを含む。1.一部の船舶は開ループEGCを設置しており、排気ガスの浄化と脱硫にIMO EGCガイドライン(USA VGPを含む)の標準技術的スキームを使用している。それは、人工的な化学添加物なしで天然海水のみを使用し、許容基準を満たしかつ仕様に適合した洗浄水を海洋に排出する熟慮したスキームである。このスキームは、かつては海運業界の経済及び環境保護の独自の利点を維持及び発展させるための最も可能性のあるスキームであった。しかし、一部の海域や港では、洗浄水のいかなる排出も禁止されている又はこれから禁止されるという制限により、航海全体で開ループEGCを船舶に使用することはできない。2.閉ループEGCを設置した船舶は、人工のアルカリ化学溶剤を使用して排気ガスを洗浄し、生じた洗浄残留物と廃水は船舶に貯蔵され、港に到着した後に陸上施設に降ろされる。そのため、システムが複雑になり、船舶で多くのスペースを取り、製造と運転のコストが高くなる。大量のアルカリ性物質、残留物及び廃水を港で積み、それらを陸地で排出するように構成された施設及びネットワークの製造及び運転のコストは、特に管理が難しい(世界の港の収容設備ネットワークは、硫黄規制の実施に追い付いていない)。3.ハイブリッドEGCを搭載する既存の船舶は、様々な海洋環境に適していることが示されている。開ループシステムは閉ループシステムに基づいて追加されるのでより複雑であり、船舶でより多くのスペースを取り、製造と運転のコストが高くなる。更に、上記の理由でハイブリッドシステムの一方である閉ループを使用できない場合、ハイブリッドシステムは現実的でない。別のハイブリッドEGCスキームでは、洗浄水は排出されずに一時的に船舶に貯蔵されるが、後処理の経済コストと環境コスト及び船舶に貯蔵された大量の洗浄水が管理不能になることによる航行の安全性の問題が生じる。船舶の安定性や航行の安全性に対する加えられた余剰の貯蔵水の影響は、洗浄水の量が概して多い場合に特に顕著である。更に、大量の洗浄水が排気抵抗に影響を与えるため、エンジンの運転に大きな影響を与える可能性があり、それは更に風や波に対抗する船舶の能力及び安全な航行を危険に曝す。
【0003】
したがって、IMOの世界的な船舶の硫黄規制を満たすという状況は、MARPOL条約及びパリ協定を履行するだけでなく、経済及び環境保護の本来の利点を維持するという課題を海運業界にもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、海水排気ガス洗浄及び海洋排出の既存のスキーム、すなわち、開ループEGCを採用している脱硫船に関して、その排出が一部の海域で禁止されているので、航海全体での合法的な航行が影響を受けるという欠点を克服することであり、航海全体における脱硫のための船舶の排気ガスを海水で洗浄するための合法的な方法、船舶及び適用を提供する。本発明の他の目的は、次の通りである。1つ目は、船舶の既存の安全性と安定性を維持し、硫黄規制に適合するための技術的手段によって引き起こされる船舶の航行安全性の低下を防ぐことである。2つ目は、海上輸送コストの既存の利点を維持し、硫黄規制に適合するための技術的手段によって引き起こされる運転コスト及び固定費の大幅な増加を防ぐことである。3つ目は、船舶での海水洗浄と脱硫のスキームにおける環境保護の既存の利点を維持し、硫黄規制に適合するための技術的手段によって引き起こされる陸域と海域の自然環境への人工的な化学物質の大幅な増加を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様は、船舶の排出物が削減された航行のための方法を提供することであり、
a)エンジンの排気ガスを海水で洗浄して洗浄海水を生じるステップと、
b)開ループ動作モードでの洗浄海水の中和を含む、開ループ動作モードでの洗浄海水の処理ステップと、及び/又は
c)閉ループ動作モードにおける、
i)洗浄海水を貯蔵容器に貯蔵するステップと、
ii)閉ループ動作モードで洗浄海水を中和するステップと
を含む洗浄海水の処理ステップと
を含む。
【0006】
更に好ましい実施形態は、以下のように提供される。
【0007】
貯蔵容器にはバラストタンクが含まれる。
【0008】
この方法は、バラストタンク内で洗浄海水とバラスト水を混合することを更に含む。
【0009】
この方法は、洗浄海水を貯蔵容器に貯蔵し、洗浄海水をバラスト水として使用することを更に含む。
【0010】
ステップi)はステップii)の前に実行される。または、ステップi)はステップii)の後に実行される。または、ステップi)とステップii)が同時に実行される。
【0011】
この方法は、開ループ及び閉ループ動作のための中和設備を提供することを更に含み、開ループ動作モードでの中和及び閉ループ動作モードでの中和の両方が中和設備で行われる。
【0012】
この方法は、開ループ動作のための中和設備と閉ループ動作のための中和設備とを提供することを更に含み、開ループ動作モードでの中和は開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作での中和は閉ループ動作のための中和設備で行われる。
【0013】
この方法は、開ループ動作のための中和設備を提供することを更に含み、開ループ動作モードでの中和は開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作モードでの中和は、貯蔵容器内で行われる。
【0014】
開ループ動作モードでの中和は、洗浄海水と天然海水を混合すること、及び/又は洗浄海水とアルカリ性の化学物質を混合することを含む。閉ループ動作モードでの中和は、洗浄海水と天然海水を混合すること、及び/又は洗浄海水とアルカリ性の化学物質を混合することを含む。
【0015】
アルカリ性の化学物質は、マグネシウム系のアルカリ性の化学物質、カルシウム系のアルカリ性の化学物質、ナトリウム系のアルカリ性の化学物質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
閉ループ動作モードでの洗浄海水の処理ステップは、iii)洗浄海水の生物を殺滅処理するステップを更に含む。
【0017】
洗浄海水の生物を殺滅処理するステップは、UV殺滅処理、及び/又は次亜塩素酸塩殺滅処理、及び/又はオゾン殺滅処理を含む。
【0018】
貯蔵容器の内壁、洗浄海水を貯蔵容器に輸送するためのパイプの内壁及びポンプは、耐酸性にされる。
【0019】
本発明の第2の態様は、上記の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶を提供することであり、
排気ガスを洗浄するために海水が使用されて、洗浄海水を生じるスクラバーと、
貯蔵容器と
を含む。
【0020】
更に好ましい実施形態は、以下のように提供される。
【0021】
貯蔵容器は、船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くに位置する。
【0022】
船舶は、開ループ及び閉ループ動作のための中和設備を備えることを更に含み、開ループ動作モードでの中和及び閉ループ動作モードでの中和の両方が、開ループ及び閉ループ動作のための中和設備で行われる。
【0023】
船舶は、天然海水を供給するための設備を更に含み、天然海水を供給するための設備は、中和処理のために開ループ及び閉ループ動作のための中和設備に天然海水を提供するように構成される。
【0024】
船舶は、アルカリ性の化学物質を供給するための設備を更に含み、アルカリ性の化学物質を供給するための設備は、中和処理のために開ループ及び閉ループ動作のための中和設備にアルカリ性の化学物質を提供するように構成される。
【0025】
船舶は、開ループ動作のための中和設備と閉ループ動作のための中和設備とを更に含み、開ループ動作モードの中和は開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作モードの中和は閉ループ動作のための中和設備で行われる。
【0026】
船舶は、天然海水を供給するための設備を更に含み、天然海水を供給するための設備は、中和処理のために開ループ動作のための中和設備及び/又は閉ループ動作のための中和設備に天然海水を提供するように構成される。
【0027】
船舶は、アルカリ性の化学物質を供給するための設備を更に含み、アルカリ性の化学物質を供給するための設備は、中和処理のために開ループ動作のための中和設備及び/又は閉ループ動作のための中和設備にアルカリ性の化学物質を提供するように構成される。
【0028】
船舶は、開ループ動作のための中和設備を更に含み、開ループ動作モードでの中和は開ループ動作のための中和設備で行われ、閉ループ動作モードでの中和は貯蔵容器内で行われる。
【0029】
船舶は、天然海水を供給するための設備を更に含み、天然海水を供給するための設備は、中和処理のために開ループ動作のための中和設備及び/又は貯蔵容器に天然海水を提供するように構成される。
【0030】
船舶は、アルカリ性の化学物質を供給するための設備を更に含み、アルカリ性の化学物質を供給するための設備は、中和処理のために開ループ動作のための中和設備及び/又は貯蔵容器にアルカリ性の化学物質を提供するように構成される。
【0031】
船舶は、生物を殺滅処理するための設備を更に含み、生物を殺滅処理するための設備は、UV殺滅処理設備、及び/又は次亜塩素酸塩殺滅処理設備、及び/又はオゾン殺滅処理設備を含む。
【0032】
スクラバーには、海水と排気ガスの接触面積を増やすための充填物が備えられる。
【0033】
本発明の第3の態様は、船舶の排気ガスを浄化するための方法を提供することであり、以下のステップを含む。
a)海水がエンジンの排気ガスを洗浄して排気ガス中の二酸化硫黄を吸収するように、船舶の航行中に船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄海水をスクラバーに導入するステップと、
b)海水での洗浄及び吸収の後に、硫黄含有量の許容基準を満たした排気ガスを大気中に排出するステップと、
c)ステップa)で生じた酸性の洗浄廃水を、船舶に汲み上げられたアルカリ性の海水と混合することによって中和し、排出が認められている海域を船舶が航行中に、許容基準を満たした後に洗浄廃水を海洋に排出するステップと、
d)排出が禁止されている海域を船舶が航行している間に、船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに、ステップa)で生じた酸性の洗浄廃水を貯蔵するステップと、
e)排出が認められている海域に船舶が戻った際に、船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、中和処理及び/又は殺滅処理をして許容基準を満たした後に海洋に排出し、ステップa)からステップc)の生じた洗浄廃水の処理に切り替えるステップと、
を含む。
【0034】
ステップb)における海水での洗浄及び吸収の後に、硫黄含有量の許容基準を満たした排気ガスを排出する過程で、エンジンの排気ガス中の二酸化硫黄含有量が、船舶からの汚染防止のための国際条約(MARPOL附属書VI)及び関連規則で要求される基準を満たした後に、エンジンの排気ガスは大気中に排出される。
【0035】
更に好ましい実施形態は、以下のように提供される。
【0036】
ステップa)において海水がエンジンの排気ガスを洗浄して排気ガス中の二酸化硫黄を吸収する過程で、海水及び排気ガスは、大面積の連続した気体用間隙と水膜とを有する充填層を通過して、十分な気液接触及び効率的な脱硫洗浄を実現する。この場合、二酸化硫黄の洗浄の除去率は高く、必要な洗浄水の量は少ない。
【0037】
ステップe)の中和処理には、アルカリ性の海水の中和処理及び/又はアルカリ性の化学物質の中和処理が含まれる。
【0038】
アルカリ性の海水の中和処理の過程で、中和処理は、貯蔵された酸性の洗浄廃水と、海から船舶の主海水パイプラインに汲み上げられた天然海水及び/又は船舶の設備の冷却用の天然海水を含む天然海水を混合することによって行われる。
【0039】
アルカリ性の化学物質の中和処理の過程で、中和処理は、貯蔵された酸性の洗浄廃水と、マグネシウム系及び/又はカルシウム系及び/又はナトリウム系の化学物質などの化学物質を混合することによって行われる。
【0040】
ステップe)の殺滅処理は、UV殺滅処理及び/又は次亜塩素酸塩殺滅処理及び/又はオゾン殺滅処理による船舶のバラスト水の生物の殺滅処理を含む。
【0041】
ステップe)の殺滅処理の過程で、生物は、酸性の洗浄廃水である貯蔵された船舶のバラスト水の低いpH値の酸性溶液によって直接殺滅処理される。
【0042】
ステップe)における船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、中和処理及び/又は殺滅処理をして許容基準を満たした後に海洋に排出する過程で、洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び/又は船舶のバラスト水排出規制によって要求される水質基準を満たした後に排出される。
【0043】
ステップd)における船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに酸性の洗浄廃水を貯蔵する過程で、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの容積は、船舶のバラストタンクの総容量の少なくとも0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%、あるいは最大で0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%である。
【0044】
ステップd)における船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに酸性の洗浄廃水を貯蔵する過程で、酸性の洗浄廃水は、船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くにあるバラストタンクに貯蔵される。
【0045】
ステップe)における船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、中和処理及び/又は殺滅処理をして許容基準を満たした後に海洋に排出する過程で、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも10分間、又は20分間、30分間、45分間、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、又は48時間に亘って貯蔵される。
【0046】
本発明の船舶の排気ガスを浄化するための方法を実施するための船舶は、
船体と、エンジンと、スクラバーと、海水中和装置と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク及びその殺滅処理装置と、許容基準を満たした洗浄水の排出口とを含み、エンジンの排気管はスクラバーを介して煙突に接続され、洗浄水の流入管はスクラバーに接続され、スクラバーは酸性の洗浄水の排出管を介して海水中和装置に接続され、海水中和装置の流入管は海水中和装置に接続され、海水中和装置は、洗浄水の排出管を介して許容基準を満たした洗浄水の排出口に接続され、海水中和装置はまた、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに接続され、殺滅処理装置はバラストタンクに接続され、殺滅処理装置は殺滅処理水用の排出ポンプを介して海水中和装置に接続される。
【0047】
本発明の第4の態様は、上記の船舶の排気ガスを浄化するための方法を実施するための船舶を提供することであり、
船体と、エンジンと、スクラバーと、海水中和装置と、化学中和装置と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク及びその殺滅処理装置と、許容基準を満たした洗浄水の排出口と、許容基準を満たしたバラスト水の排出口とを含み、エンジンの排気管はスクラバーを介して煙突に接続され、洗浄水の流入管はスクラバーに接続され、スクラバーは酸性の洗浄水の排出管を介して海水中和装置に接続され、海水中和装置の流入管は海水中和装置に接続され、海水中和装置は、洗浄水の排出管を介して許容基準を満たした洗浄水の排出口に接続され、海水中和装置は、化学中和装置と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクとに接続され、殺滅処理装置及びバラスト水の排出管はバラストタンクに接続され、バラスト水の排出管は、許容基準を満たしたバラスト水の排出口に接続される。
【0048】
本発明の第5の態様は、上記の船舶の排気ガスを浄化するための方法を実施するための別の船舶を提供することであり、
船体と、エンジンと、スクラバーと、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクと、海水中和装置と、許容基準を満たした洗浄水の排出口とを含み、エンジンの排気管はスクラバーを介して煙突に接続され、洗浄水の流入管はスクラバーに接続され、スクラバーは酸性の洗浄水の排出管を介して海水中和装置に接続され、海水中和用の流入管は海水中和装置に接続され、海水中和装置は、洗浄水の排出管を介して許容基準を満たした洗浄水の排出口に接続され、海水中和装置はまた、双方向管を介して貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに接続される。
【0049】
更に好ましい実施形態は、以下のように提供される。
【0050】
化学中和装置は、酸性の洗浄廃水とアルカリ性の化学物質を混合するように構成された容器と、マグネシウム系及び/又はカルシウム系及び/又はナトリウム系のアルカリ性の化学物質を貯蔵するように構成されたタンクと、輸送装置とで構成される。
【0051】
殺滅処理装置は、低いpH値の貯蔵された酸性の洗浄水を使用して生物を殺滅処理するように構成された酸性溶液での殺滅処理装置で構成される。
【0052】
殺滅処理装置は、UV殺滅処理装置及び/又は次亜塩素酸塩殺滅処理装置及び/又はオゾン殺滅処理装置を含む既存の船舶のバラスト水殺滅処理装置で構成される。
【0053】
貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクは、バラストタンクの一部で構成され、その容量は船舶のバラストタンクの総容量の少なくとも0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%、あるいは最大で0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%である。
【0054】
貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクは、複数のバラストタンクで構成され、その容量は少なくとも10分間、又は20分間、又は30分間、又は45分間、又は1時間、又は2時間、又は3時間、又は6時間、又は12時間、又は24時間、又は36時間、又は48時間に亘る貯蔵について設定される。
【0055】
貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクは、船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くに位置する。
【0056】
スクラバーは充填スクラバーであり、気液接触が高効率の脱硫を実現するのに十分であるようにして、大面積の連続した気体用間隙と水膜とを有する充填物が充填スクラバーの空洞に充填される。
【0057】
充填物は、リング状及び/又は球状及び/又は帯状及び/又は鞍状及び/又は多角形状及び/又はオリフィス板状及び/又は複数の異なる形状の充填物を含む。
【0058】
スクラバーはサイレンサーと統合されて消音機能を備えることで、スクラバーが船舶で余計なスペースを占有しない。
【0059】
船舶の排気ガスを浄化する方法を使用する船舶での適用スキームは、船舶での大気への二酸化硫黄の排出を低減するために本発明の方法を使用することを含む。
【0060】
上記の発明の技術的原理及び効果は、次の通りである。本発明において、船舶の排気ガスを浄化するための方法及び船舶並びに適用は、開ループ及び閉ループEGCの技術原理を採用する。船舶が一般海域を航行する時は、IMO EGC(排気ガス浄化)ガイドラインの標準的な方法、すなわち航行中での排気ガスの洗浄及び排出に海水のみを使用する脱硫法が採用される。洗浄水排出が禁止されている水域に船舶が入ると、海水がやはり使用されて脱硫のために排気ガスを洗浄するが、洗浄廃水は船舶での貯蔵タンク及び/又は貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵される。船舶が一般海域に戻った後、天然中和処理及び/又は化学物質中和処理並びに殺滅処理の後に船舶の洗浄水排出規制及び/又はバラスト水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たした貯蔵された洗浄水は、海洋に排出される。船舶EGCシステムの運転は、IMO EGCガイドラインの標準モードに切り替えられる。貯蔵タンクとして使用されていたバラストタンクが、再びバラストタンクとして使用される。全航行中でのほとんどの海域でバラストタンクは占有されない。更に、本発明では洗浄効率が高くて必要な洗浄水の量が少ないため、1つの利点は、バラストタンクの総容積における一時的に貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの割合が、船舶の航行の安全性に影響を与えないように制限された量に設定できるということである。他の利点は、硫黄規制に適合するための運転コスト(エネルギー消費)と固定費(占有スペース)が低いことである。全般的に、本発明は、船舶の航行が国連の硫黄制限の新たな規制の要件を満たすと共に、航海全体において輸送費及び環境上の利益が依然として維持されるという、本発明の目的を達成する技術的効果をもたらす。
【0061】
開ループ及び閉ループ動作は、主として洗浄水処理の切り替えを含み、比較的複雑であるため、洗浄水の流通性能がスクラバーの排気の流通性能に影響を与える可能性が高くなる。エンジンの排気が遮断されるのを防ぎ、船舶のエンジンの運転及び航行の絶対的な安全性を確保するために、水封式安全バイパスバルブの方法及び装置が使用される。本発明の第6の目的は、船舶の排気ガスを安全に浄化するための方法を提供することであり、それは、
a)洗浄水がエンジンの排気ガスを洗浄して排気ガス中の二酸化硫黄を吸収するように、船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄水をスクラバーに導入するステップと、
b)洗浄及び吸収後に硫黄含有量が許容基準を満たした排気ガスを、スクラバー上部の煙突を通じて大気中に排出するステップと、
c)洗浄後に二酸化硫黄を吸収した酸性の洗浄水を、スクラバーの水封を通って、大気と連通した容器に排出するステップと、ここでスクラバーの水封の流通性能は、エンジンの排気ガスが支障なく通過でき、かつスクラバーの水封の水柱の高さがスクラバーの安全な空気圧の上限に等しくなるようにされ、
d)容器内の酸性の洗浄水を水質回復システムに排出し、水質の許容基準を満たした後に、洗浄水を海洋に排出するステップと、
を含む。
【0062】
既存船では、EGCシステムの故障によって安全なエンジンの運転が影響を受けないことを確保するために、エンジンの排気管に緊急バイパス減衰弁を備え、それによりEGCシステムで故障が発生した場合に、バイパス減衰バルブの切り替えによってEGCシステムを通過せずに、エンジンの排煙を大気に排出できるようにしている。しかし、バイパス減衰バルブはエンジンの排気管に直列に接続する必要があり、取り外すことができないため、バイパス減衰バルブ自体の故障により、エンジンの停止が船舶の航行安全に影響を与えるという深刻な結果をもたらす可能性がある。残念なことに、バイパス減衰バルブ(ダブルディスク気密)自体の構造は複雑で、作動状態が悪く、それ自体の信頼性を確保することは困難である。したがって、いずれの故障の影響も受けないエンジンの安全な運転が保証されることはできない一方で、システムの故障率は増加し、エンジンの安全性、つまり船舶の航行の安全性は低下する。本発明の方法は、EGCの従来のバイパスシステムが既存の船舶における船舶のエンジンの安全性及び航行の安全性を保証できないという欠点を克服することができ、EGCシステムの故障がエンジンの安全な運転に影響を及ぼさない安全な浄化のための方法及び船舶を提供する。
【0063】
更に好ましい実施形態は、以下のように提供される。
【0064】
ステップc)におけるスクラバーの水封の開放ガス圧は、スクラバーの安全な空気圧の上限値に等しい。
【0065】
本発明の第7の態様は、上記の船舶の排気ガスを安全に浄化するための方法を実施するための船舶を提供することであり、
船体と、エンジンと、スクラバーと、水とガスが平衡したバイパスボックスと、水質回復装置とを含み、エンジンは船体の下部に設置され、エンジンの排気通路はスクラバーのガス入口に接続され、スクラバーは集水プールと水封を含み、水とガスが平衡したバイパスボックスはバイパス排出通路を含み、水とガスが平衡したバイパスボックスの水及びガス入口は水封に接続され、水とガスが平衡したバイパスボックスの水出口は水質回復システムに接続される。
【0066】
更に好ましい実施形態は、以下のように提供される。
【0067】
水封の流通能力は、エンジンの排気ガスが支障なく通過できるように構成される。
【0068】
水封は、水柱の高さがスクラバーの安全な空気圧の上限に等しくなるように設定された封止構造で構成される。
【0069】
スクラバー及び水とガスが平衡したバイパスボックスは、高耐熱材で構成される。
【0070】
上記の船舶の排気ガスを安全に浄化するための方法及び船舶の技術的原理及び効果は、次の通りである。本発明において提供される船舶の排気ガスを安全に浄化するための方法及び船舶は、洗浄水がスクラバーの水封を通過して、大気と連絡されている容器に入る手段を採用している。故障したスクラバーの背圧が、水封の事前設定されたガス圧の開放値を超える値に上昇すると、水封を自動的に開くことができる。次に排気ガスは、大気と連通した容器に入り、バイパス通路を形成する。水封の流通能力は、エンジンの排気ガスが支障なく通過できるように構成されるため、エンジンの安全な運転が保証される。技術的効果には、次の側面が含まれる。第1の側面は、スクラバーの集水プール、すなわち水封の水位が維持され、これにより洗浄水がエンジンの排気管に入ってスムーズな排気を妨げるのを防ぐことである。第2の側面は、スクラバーが塞がれたときに排気ガスがバイパスを通過して、エンジンの排気の安全性を確保することができることである。第3の側面は、従来のバイパス減衰器(ダブルディスク、密閉ファン)の導入を避けて、切り離すことができないエンジン停止の致命的なリスクを回避することである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図面の符号に対応する構成要素又は構造の名称は、以下で与えられる。
【
図1】本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法の一実施例のステップを示す概略図であり、また本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法の船舶での適用スキームの一実施例のステップを示す概略図である。
【
図2】本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の技術的スキームの一実施例を示す概略図であり、バラストタンクの一部は、船舶に酸性の洗浄廃水を貯蔵するための貯蔵タンクとして使用され、海水中和装置は、バラストタンク及び殺滅処理水用のポンプに接続される。
【
図3】本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の別の技術的スキームの一実施例を示す概略図であり、バラストタンクの一部は、船舶での酸性の洗浄廃水を貯蔵するための貯蔵タンクとして使用され、海水中和装置は、化学中和装置及びバラストタンクに接続される。
【
図4】
図2及び
図3に示す船舶の技術的スキームの組み合わせの一実施例を示す概略図であり、図の点線は、
図2又は
図3に対応する技術的スキームのうちの一方に切り替えられることができる2つの動作状態があることを示す。
【
図5】本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の別の技術的スキームの一実施例を示す概略図であり、バラストタンクの一部は、船舶での酸性の洗浄廃水を貯蔵するための貯蔵タンクとして使用され、海水中和装置はバラストタンクと双方向で接続される。
【
図6】
図5に示す船舶の技術的スキームに基づく変更された一実施例を示す概略図であり、バラストタンクの一部が船舶の酸性の洗浄廃水を貯蔵するための貯蔵タンクとして使用され、海水中和装置がバラストタンクと統合される。
【
図7】本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の別の技術的スキームの一実施例を示す概略図であり、酸性の洗浄廃水を貯蔵するために貯蔵タンクが船舶に備えられ、海水中和装置は貯蔵タンクに接続される。
【
図8】
図7に示す船舶の技術的スキームに基づく変更された一実施例を示す概略図であり、酸性の洗浄廃水を貯蔵するために貯蔵タンクが船舶に備えられ、海水中和装置は貯蔵タンクと統合される。
【
図9】本発明の船舶の排気ガスを安全に浄化する方法及び船舶の一実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図面と実施例を組み合わせて、本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法及び船舶の更なる説明が以下で提供される。
【実施例1】
【0073】
これらは、本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法の基本的な実施例のグループである。
図1に示されるように、実施例は、
a)海水がエンジンの排気ガスを洗浄して排気ガス中の二酸化硫黄を吸収するように、船舶の航行中に船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄海水をスクラバーに導入するステップと、
b)海水での洗浄及び吸収の後に、硫黄含有量の許容基準を満たした排気ガスを大気中に排出するステップと、
c)ステップa)で生じた酸性の洗浄廃水を、船舶に汲み上げられたアルカリ性の海水と混合することによって中和し、排出が認められている海域を船舶が航行中に、許容基準を満たした後に海洋に廃水を排出するステップと、
d)排出が禁止されている海域を船舶が航行している間は、ステップa)で生じた酸性の洗浄廃水を、船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵するステップと、
e)排出が認められている海域を船舶が再び航行中に、船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、中和処理及び/又は殺滅処理をして許容基準を満たした後に海洋に排出し、そしてステップa)からステップc)で生じた洗浄廃水の処理に切り替えるステップと
を含む。
【0074】
ステップb)では、海水での洗浄及び吸収の後に、船舶からの汚染防止に関する国際条約(MARPOL附属書VI)及びの関連規則によって要求される硫黄含有量の許容基準を満たした排気ガスが、大気中に排出される。
【0075】
別の実施例では、ステップa)で生じた洗浄廃水は、ステップd)での排出が禁止されている海域を船舶が航行している間は船舶での貯蔵タンクに貯蔵され、船舶での貯蔵タンクに貯蔵された洗浄廃水は、排出が認められている海域に船舶が戻ったら、ステップe)において処理して許容基準を満たした後に海洋に排出される。
【実施例2】
【0076】
これらは、実施例1に基づく実施例のグループである。一実施例では、ステップa)において、天然海水がエンジンの排気ガスを洗浄するための洗浄水として使用される。別の実施例では、ステップa)において、真水がエンジンの排気ガスを洗浄するために使用される。別の実施例では、ステップa)において、エンジンの排気ガスは最初に海水で洗浄され、次に真水で洗浄され、次に海水で洗浄される。これは、船舶が最初に海を航行し、次に内陸の川を航行し、次に海を航行する、河川と海の複合輸送に関係する場合に適している。しかしながら、ほとんどの場合に、洗浄には天然の海水のみが使用される。
【0077】
別の実施例では、ステップa)で海水がエンジンの排気ガスを洗浄する過程で、海水及び排気ガスは、海水がエンジンの排気ガスを洗浄して排気ガス中の二酸化硫黄を吸収するよう、大面積の連続した気体用間隙と水膜を有する充填層を通過して、十分な気液接触と効率的な洗浄を実現する。このような洗浄法では、気相が連続しているため排気ガスの流れがスムーズであり、ガスと洗浄海水の間の接触が十分であるため、二酸化硫黄の洗浄での除去率が高く、必要な洗浄水の量が少ない。したがって、1つの側面として、バラストタンクの総容積における一時的に貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの割合が小さく、船舶の航行安全性が確保できるように制限された量で構成されることができる。他の側面として、硫黄規制に適合するための船舶の運転コスト(エネルギー消費)と固定費(占有スペース)が低い。
【0078】
別の実施例では、スクラバーをサイレンサーと統合してサイレンサーの機能を備えた洗浄サイレンサーにし、洗浄水がその中のエンジンの排気ガスを洗浄するために使用されるので、スクラバーは船舶で余計なスペースを取らず、固定費を更に削減する。
【実施例3】
【0079】
これらは、実施例1に基づく実施例のグループである。実施例での中和処理の過程で、貯蔵された酸性の洗浄廃水は、船舶に汲み上げられたアルカリ性の海水によって中和されて、船舶の洗浄海水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たした後に海洋に排出される。船舶に汲み上げられるアルカリ性の海水には、海から汲み上げられた船舶の主海水パイプラインでの天然海水、及び/又は船舶施設を冷却するための天然海水が含まれる。一般に、酸アルカリ中和処理後の船舶の洗浄水のpH値は、洗浄水が海洋に排出される前に、水質基準の6.0~6.5にされることが排出規制によって要求される。船舶の洗浄水排出に関する排出規制によって要求される他の水質基準は、船舶の排気ガス浄化の関連技術マニュアルに記録されている。
【0080】
別の実施例では、ステップe)において船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、中和処理及び/又は殺滅処理をして許容基準を満たした後に海洋に排出する過程で、貯蔵された洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及びバラスト水排出規制によって要求される水質基準を満たすために、化学中和処理及び/又は殺滅処理の後に海洋に排出される。化学中和処理の過程では、アルカリ性の化学物質が酸性の洗浄水に追加される。実施例のグループにおいて、アルカリ性の化学物質はそれぞれ、マグネシウム系のアルカリ溶液、カルシウム系のアルカリ溶液、ナトリウム系のアルカリ溶液、及びマグネシウム系とカルシウム系とナトリウム系の混合アルカリ溶液である。法規定により、バラスト水排出規制に従って、海洋に排出する前に、化学中和処理が行われたすべての洗浄廃水に対して、バラスト水の殺滅処理を実施することが必要とされる。そのため、実施例のグループでは、バラスト水の殺滅処理はそれぞれ、酸性溶液殺滅処理、紫外線殺滅処理、次亜塩素酸塩殺滅処理、及びオゾン殺滅処理である。酸性溶液殺滅処理は、低いpH値の貯蔵された酸性の洗浄廃水を直接使用する殺滅処理方法である。紫外線殺滅処理、次亜塩素酸塩殺滅処理、オゾン殺滅処理は、船舶でのバラスト水の既存の殺滅処理である。船舶の洗浄水排出規制によって要求される満たすべき水質基準は、前の実施例と同じである。船舶のバラスト水排出規制によって要求される水質基準は、船舶のバラスト水処理の関連技術マニュアルに記録されている。
【0081】
別の実施例では、ステップe)において船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、中和処理及び/又は殺滅処理をして許容基準を満たした後に海洋に排出する過程で、貯蔵された洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及びバラスト水排出規制によって要求される水質基準を満たすために、船舶での殺滅処理及びその後のアルカリ性の海水による中和処理の後に海洋に排出される。
【実施例4】
【0082】
実施例1に基づく実施例のグループである。重心及び船舶の安定性を調整するバラスト水を含む船舶のバラストタンクは、船舶の安全な航行を確保するために重要な設備である。これらの実施例では、バラストタンクの総容積における洗浄廃水を貯蔵するための貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの容積の割合は、船舶の航行の安全性に影響しないように制限された値になるように設定される。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの容積は、それぞれ船舶のバラストタンクの総容積の少なくとも0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%、あるいは最大で0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%の値になるように設定される。異なる構成の値は、異なる船舶の積載量、バラストタンクの容量、及び航路における洗浄水排出が禁止される航海距離に応じて定められる。
【実施例5】
【0083】
実施例1に基づく別の実施例では、船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに酸性の洗浄廃水を貯蔵する過程で、酸性の洗浄廃水は、船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くにあるバラストタンクに貯蔵される。
【実施例6】
【0084】
これらは、実施例1に基づく別の実施例のグループである。実施例では、ステップd)において船舶での貯蔵タンク及び/又は貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、処理して許容基準を満たした後に海洋に排出する過程で、洗浄廃水は海洋に排出される前に少なくとも10分間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも20分間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも30分間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも45分間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも1時間保管される。
【0085】
別の実施例のグループは次のとおりである。一実施例では、ステップd)において貯蔵タンク及び/又は船舶での貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された洗浄廃水を、処理して許容基準を満たした後に海洋に排出する過程で、洗浄廃水は海洋に排出される前に少なくとも2時間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも3時間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも6時間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも12時間保管される。別の実施例では、洗浄廃水は、海洋に排出される前に少なくとも24時間保管される。他の2つの実施例では、洗浄廃水は、それぞれ海洋に排出される前に少なくとも36時間と48時間保管される。海洋に排出される前に洗浄廃水に必要とされる貯蔵時間は、洗浄水排出が禁止された海域で必要な船舶の航行時間に応じて定められる。例えば、洗浄水排出が禁止された港湾エリアに船舶が入った時からドックに入るまで約30分必要とされる場合、排出が禁止された1回の航行時間は約30分となる。そうすると、船舶が港湾エリアに入ってから出るまでの洗浄廃水の保管時間は、排出が禁止された1回の航行時間の2倍、つまり約1時間である。船舶が港に停泊する時、補助機械の排出量は少なく、陸上の電力を使用する場合には排出量はない。船舶が提供できる洗浄水の貯蔵時間は、既存の技術によりEGC洗浄水の生成量と貯蔵タンクの容量を計算することによって決定できる。
【実施例7】
【0086】
これは、本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の技術的スキームの基本的な実施例であり、実施例1の船舶の排出物が削減された航行のための方法の使用例でもある。
図2又は
図4に示されるように(点線は
図2の動作状態に対応)、それは船体1と、エンジン2と、スクラバー3と、海水中和装置5と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4及びその殺滅処理装置4.2と、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5とを含む。ここで、エンジン2の排気管2.1は、スクラバー3を介して煙突7に接続される。洗浄水の流入管3.1は、スクラバー3に接続される。スクラバー3は、酸性の洗浄水の排出管3.2を介して海水中和装置5に接続される。海水中和装置の流入管5.1は海水中和装置5に接続される。海水中和装置5は、洗浄水の排出管5.3を介して、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5に接続される。海水中和装置5はまた、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に接続される。殺滅処理装置4.2はバラストタンク4に接続され、殺滅処理装置4.2は殺滅処理水用の排出ポンプ4.6を介して海水中和装置5に接続される。
【0087】
この実施例では、IMOのEGC(排気ガス浄化)ガイドラインの標準的な方法、つまり、洗浄海水を排出することが認められている一般海水を船舶が航行している時に、海水のみを洗浄及び排出に使用する開ループEGCシステムが採用されている。船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄海水は、エンジンの排気ガスが海水で洗浄されるようにスクラバー3に導入される。生じた酸性の洗浄水は、排出管3.2を通って海水中和装置5に排出され、次に船舶の洗浄水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たすように、海水中和装置5において中和海水の流入管5.1を通って導入されるアルカリ性の海水によって中和され、その後に洗浄廃水用の開放された遮断弁5.4を通って、許容基準を満たした洗浄海水の排出口5.5から海洋に排出される。
【0088】
洗浄水排出が禁止されている海域を船舶が航行している間に、排気ガスはやはり脱硫のために海水で洗浄され、船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄海水は、エンジンの排気ガスが海水で洗浄されるようにやはりスクラバー3に導入される。生じた酸性の洗浄水は、やはり排出管3.2を通って海水中和装置5に排出され、排気ガスの浄化が続けられる。この時、海水中和装置5と貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4の接続路が開かれ、それにより酸性の洗浄水が貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に入って貯蔵される点が異なる。洗浄廃水用の遮断弁5.4が閉じられて、中和海水用のポンプ5.2の運転が停止される。この場合、洗浄水は海洋に排出されず、船舶の排気ガスの浄化モードは閉ループ動作モードに切り替わる。
【0089】
船舶が洗浄水の排出が認められている海域に戻ると、排気ガスはやはり脱硫のために海水によって洗浄される。洗浄廃水用の遮断弁5.4が開かれ、中和海水用のポンプ5.2が給水を開始し、海水中和装置5と貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4の接続路が閉じられ、そうしてスクラバー3で生じた酸性の洗浄水が排出管3.2を通って海水中和装置5に排出される点が異なる。酸性の洗浄水は、船舶の洗浄水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たすように、中和装置5において中和海水の流入管5.1から導入されたアルカリ性の海水によって中和され、その後に洗浄廃水用の開放された遮断弁5.4を通って、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5から海洋に排出され、したがって開ループ動作モードに切り替わる。同時に、殺滅処理水用の出口ポンプ4.6が始動され、それにより貯蔵タンクとしてのバラストタンク4に貯蔵されて、バラスト水排出規制に適合するために殺滅処理装置4.2によって殺滅処理された酸性の洗浄水が海水中和装置5に排出され、次に海水中和装置5においてスクラバー3の排出管3.2から導入された酸性の洗浄水を合流させ、船舶の洗浄水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たすように、中和海水の流入管5.1から導入されたアルカリ性の海水によって中和され、その後に洗浄廃水用の遮断弁5.4を通って許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5から海洋に排出される。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に貯蔵された酸性の洗浄海水がすべて排出されると、中和海水用ポンプ5.2の流量は必要に応じて増加される。
【0090】
この実施例では、接続路の開閉は、接続路にバルブ及び/又はポンプを備える既存の技術によって行われる。
【0091】
この実施例では、エンジンの排気ガスを洗浄し、洗浄廃水を処理するために、船舶航海全体で海水のみが使用され、アルカリ性の化学物質は追加されない。更に、洗浄廃水の殺滅処理装置が備えられており、洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び船舶のバラスト水排出規制並びに許容基準を満たす。
【実施例8】
【0092】
これは、船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の技術的スキームの別の基本的な実施例であり、実施例1の船舶の排出物が削減された航行のための方法の使用例でもある。
図3又は
図4に示されるように(点線は
図3の動作条件に対応)、それは船体1と、エンジン2と、スクラバー3と、海水中和装置5と、化学中和装置8と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4及びその殺滅処理装置4.2と、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5と、許容基準を満たしたバラスト水の排出口4.5とを含む。ここで、エンジン2の排気管2.1は、スクラバー3を介して煙突7に接続される。洗浄水の流入管3.1はスクラバー3に接続される。スクラバー3は酸性の洗浄水の排出管3.2を介して海水中和装置5に接続される。海水中和装置の流入管5.1は海水中和装置5に接続される。海水中和装置5は、洗浄水の排出管5.3を介して許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5に接続される。海水中和装置5はまた、化学中和装置8と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4とに接続される。殺滅処理装置4.2及びバラスト水の排出管4.3は、バラストタンク4に接続される。バラスト水の排出管4.3は、許容基準を満たしたバラスト水の排出口4.5に接続される。
【0093】
この実施例では、船舶が洗浄海水の排出が認められている一般海水を航行している間に、IMO EGC(排気ガス浄化)ガイドラインの標準的な方法、つまり洗浄及び排出に海水のみが使用される開ループEGCシステムが採用されている。エンジンの排気ガスが海水で洗浄されるように、船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄海水はスクラバー3に導入される。生じた酸性の洗浄水は、排出管3.2を介して海水中和装置5に排出され、次に海水中和装置5において、船舶の洗浄水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たすように中和海水の流入管5.1を通って導入されるアルカリ性の海水によって中和され、その後に洗浄廃水の開放された遮断弁5.4を通って、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5から海洋に排出される。
【0094】
洗浄水排出が禁止されている海域を船舶が航行している間に、排気ガスは脱硫のためにやはり海水で洗浄され、エンジンの排気ガスが海水で洗浄されるように、船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄海水はやはりスクラバー3に導入される。生じた酸性の洗浄水は、やはり排出管3.2を通って海水中和装置5に排出され、排気ガスの浄化が続けられる。この時、海水中和装置5と貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4の接続路が開かれ、それにより酸性の洗浄水が貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に入って貯蔵される点が異なる。酸性の洗浄水をアルカリ性の化学物質で中和して化学中和処理を行うために、化学中和装置8を開放する。洗浄廃水の遮断弁5.4が閉じられて、中和海水用のポンプ5.2の運転が停止される。この場合、洗浄水は海洋に排出されず、船舶の排気ガスの浄化モードは閉ループ動作モードに切り替わる。
【0095】
船舶が洗浄水の排出が認められている海域に戻ると、排気ガスは脱硫のためにやはり海水によって洗浄される。洗浄廃水の遮断弁5.4が開かれ、中和海水用のポンプ5.2が給水を開始し、海水中和装置5と貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4の接続路が閉じられ、化学中和装置8と海水中和装置5の接続路が閉じられて、スクラバー3で生じた酸性の洗浄水が、排出管3.2を通って海水中和装置5に排出される点が異なる。酸性の洗浄水は、船舶の洗浄水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たすために、中和装置5において、中和海水の流入管5.1から導入されたアルカリ性の海水によって中和され、次に洗浄廃水用の開いた遮断弁5.4を通って許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5から海洋に排出され、したがって開ループ動作モードに切り替わる。同時に、バラスト水用の出口ポンプ4.4が始動され、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に貯蔵されて、洗浄水の排出規制及びバラスト水排出規制を満たすために殺滅処理装置4.2によって殺滅処理された酸性の洗浄水が、許容基準を満たしたバラスト水の排出口4.5を通って海洋に排出される。
【0096】
この実施例では、接続路の開閉は、接続路にバルブ及び/又はポンプを備える既存の技術によって行われる。
【0097】
この実施例では、船舶航海全体でエンジンの排気ガスを洗浄するために海水のみが使用され、洗浄廃水にアルカリ性の化学物質が追加される。更に、洗浄廃水の殺滅処理装置が備えられており、洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び船舶のバラスト水排出規制並びに許容基準を満たす。
【実施例9】
【0098】
これは、船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の技術的スキームの別の基本的な実施例であり、実施例1の船舶の排出物が削減された航行のための方法の使用例でもある。
図5に示されるように、それは船体1と、エンジン2と、スクラバー3と、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4と、海水中和装置5と、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5とを含む。ここで、エンジン2の排気管2.1は、スクラバー3を介して煙突7に接続される。洗浄水の流入管3.1はスクラバー3に接続される。スクラバー3は、酸性の洗浄水の排出管3.2を介して海水中和装置5に接続される。海水中和用の流入管5.1は海水中和装置5に接続される。海水中和装置5は、洗浄水の排出管5.3を介して、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5に接続される。海水中和装置5はまた、双方向管4.7を介して貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に接続される。
【0099】
この実施例では、船舶の航行のほとんどは、洗浄水排出が禁止されている海域から洗浄水排出が認められている海域に船舶が戻ることを含め、国際規制によって洗浄水排出が認められている海域であり、船舶は、洗浄及び排出に天然海水のみを使用するモード、つまり開ループ動作モードを採用している。
【0100】
洗浄水排出が禁止されている海域を航行している間に、脱硫のために排気ガスをやはり海水で洗浄する。生じた酸性の洗浄水は、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に向けて排出され、そして双方向管4.7を介して海水中和装置5から貯蔵される。洗浄廃水の遮断弁5.4が閉じられて、中和海水用のポンプ5.2の運転が停止される。この場合、洗浄水は海洋に排出されず、船舶の排気ガスの浄化モードは閉ループ動作モードに切り替わる。
【0101】
船舶は、洗浄水の排出が認められている海域に戻ると、排気ガスは脱硫のためにやはり海水によって洗浄され、これは同じである。洗浄水排出の運転が開ループ動作モードに切り替わることに加えて、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4に貯蔵された酸性の洗浄水は、双方向管4.7から海水中和装置5に導入される。酸性の洗浄水は、船舶の洗浄水排出規制で要求される水質の許容基準を満たすように中和海水の流入管5.1から導入された中和海水によって中和装置5で中和され、次に海洋に排出される。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された酸性の洗浄海水がすべて排出されると、中和海水用ポンプ5.2の流量は必要に応じて増加される。
【0102】
双方向管4.7の輸送方向は、接続路内にバルブ及び/又はポンプを備える既存の技術によって行われる。
【0103】
上記の実施例の変更例が
図6に示される。ここでは、海水中和装置5が貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4と統合されるため、システムは簡素化されているが機能は変わらない。
【0104】
この実施例では、エンジンの排気ガスを洗浄し、洗浄廃水を処理するために、船舶航海全体で海水のみが使用され、アルカリ性の化学物質は追加されない。この実施例では、航路における洗浄水排出が禁止されている区域が、洗浄水排出が認められる区域に近く、洗浄水の貯蔵時間が短くてバラスト水は異なる海域のものとはみなされないので、殺滅処理は必要とされない。洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び許容基準を満たす。
【実施例10】
【0105】
これは、本発明の船舶の排出物が削減された航行のための方法を実施するための船舶の技術的スキームの別の基本的な実施例であり、実施例1の船舶の排出物が削減された航行のための方法の使用例でもある。
図7に示されるように、それは船体1と、エンジン2と、スクラバー3と、貯蔵タンク3.3及び海水中和装置5と、許容基準を満たす洗浄水の排出口5.5とを備える。ここで、エンジン2の排気管2.1は、スクラバー3を介して煙突7に接続される。洗浄水の流入管3.1はスクラバー3に接続される。スクラバー3は、酸性の洗浄水3.2の排出管を介して貯蔵タンク3.3に接続される。貯蔵タンク3.3は海水中和装置5に接続される。海水中和装置5.1の流入管は海水中和装置5に接続される。海水中和装置5は、洗浄水の排出管5.3を介して、許容基準を満たした洗浄水の排出口5.5に接続される。
【0106】
上記の実施例に基づく別の実施例では、
図8に示されるように、貯蔵タンク3.3が海水中和装置5と統合される。
【0107】
この実施例では、エンジンの排気ガスを洗浄し、洗浄廃水を処理するために、船舶航海全体で海水のみが使用され、アルカリ性の化学物質は追加されない。この実施例は実施例10と類似しており、航路における洗浄水排出が禁止されている区域が、洗浄水排出が認められる区域に近く、洗浄水の貯蔵時間が短くてバラスト水は異なる海域のものとはみなされないので、殺滅処理は必要とされない。洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び許容基準を満たす。
【実施例11】
【0108】
これらは、実施例7、8、9及び10に基づく実施例のグループである。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4及び貯蔵タンク3.3は、バラストタンクの一部から構成され、その容積は、それぞれ少なくとも10分間、又は20分間、又は30分間、又は45分間、又は1時間、又は2時間、又は3時間、又は6時間、又は12時間、又は24時間、又は36時間、又は48時間に亘って洗浄廃水が貯蔵されるように設定される。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクは、洗浄廃水を貯蔵しない間は依然として一般的なバラストタンクとして使用される。
【実施例12】
【0109】
これらは、実施例7、8、9及び10に基づく実施例のグループである。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4の容積はバラストタンクの一部で構成され、その容積は、船舶のバラストタンクの総容量の少なくとも0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%、あるいは最大で0.3%、又は0.5%、又は1%、又は2%、又は3%、又は4%、又は5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%、又は80%の値となるように設定される。
【0110】
実施例7、8、9及び10に基づく別の実施例のグループでは、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4は、船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くに位置する1つのバラストバンクで構成されるか、又は船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くにある分離されたバラストバンクで構成される。
【実施例13】
【0111】
これらは、実施例8に基づく実施例のグループである。一実施例では、船舶に設置される化学中和装置8は、マグネシウム系のアルカリ材料を貯蔵するためのタンクと、アルカリ溶液を輸送するための装置とから構成される。マグネシウム系のアルカリ材料を貯蔵するタンクは水酸化マグネシウム液体材料のタンクであり、アルカリ溶液を輸送するための装置は、アルカリ溶液用のポンプと、バルブとで構成される。別の実施例では、化学中和装置8の材料を貯蔵するためのタンクは、水酸化マグネシウム固体材料用のタンクと、アルカリ溶液を生成するためのタンクとからなる。
【0112】
別の実施例では、化学中和装置8は、酸化カルシウム固体材料用のタンクと、アルカリ溶液を生成するためのタンクと、アルカリ溶液用の計量ポンプとで構成されて、それらは接続されて1つにされる。
【0113】
別の実施例では、化学中和装置8は、水酸化ナトリウム溶液材料を貯蔵するためのタンクと、アルカリ溶液用の計量ポンプと、バルブとから構成されて、それらは接続されて1つにされる。水酸化ナトリウム溶液材料を貯蔵するために、10%から60%の水酸化ナトリウムのアルカリ溶液がタンクに貯蔵される。ほとんどの場合、タンク内の水酸化ナトリウムの濃度はおおよそ30%から50%である。高緯度の海域では、溶液の凍結を防ぐために水酸化ナトリウムの濃度を20%にする必要がある。
【0114】
上記の実施例では、化学中和装置に関して、アルカリを添加するために既存の従来の産業用装置が選択される。そのサイズは大きくなく、コストが安い。
【実施例14】
【0115】
これらは、実施例7及び8に基づく実施例のグループである。一実施例では、設置された殺滅処理装置4.2は、船舶のバラスト水処理システムの既存のUV殺滅処理装置から構成される。別の実施例では、設置された殺滅処理装置4.2は、船舶のバラスト水処理システムの既存のオゾン殺滅処理装置で構成される。別の実施例では、設置された殺滅処理装置4.2は、船舶のバラスト水処理システムの既存の次亜塩素酸ナトリウム殺滅処理装置で構成される。上記の実施例では、すべての船舶の殺滅処理装置4.2は、船舶のバラスト水処理システムの既存の殺滅処理装置である。
【0116】
別の実施例は、
図5、6、7及び8に示す実施例と似たものである。殺滅処理装置は酸性溶液での殺滅処理装置で構成され、それは殺滅処理のためにスクラバーに貯蔵された酸性の廃水を直接使用する装置であり、低pH溶液中での生物の生存時間に応じて(たとえば、pHが3の場合には20分)設計される。この場合、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク4は、殺滅処理装置4.2と統合されているとみなされることができる。別の実施例では、貯蔵タンク3.3は殺滅処理装置4.2と統合される。
【実施例15】
【0117】
これらは、実施例6又は実施例7に基づく実施例のグループである。設置されたスクラバー3は充填スクラバーであり、それは気液接触が高効率の脱硫を実現するのに十分であるようにして、大面積の連続した気体用間隙と水膜、すなわち湿潤表面を有する充填物が、充填スクラバーの空洞に充填される。充填物には、それぞれリング状、球状、帯状、鞍状、多角形状、オリフィス板状、及び様々な形状を組み合わせた複数の異なる形状の充填物がある。大面積の連続した気体用間隙と湿潤表面を有する充填物の洗浄は、二酸化硫黄の除去効率が高く、必要な洗浄水の量が少ないので使用される。1つの利点は、船舶の航行の安全性に影響を与えないように、船舶のバラストタンクの総容積における一時的に貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの容積の割合を、制限された量に設定できることである。もう1つの利点は、硫黄規制に適合するための船舶の運転コスト(エネルギー消費)及び固定費(占有スペース)が低いことである。
【0118】
別の実施例では、設置されたスクラバー3は、空洞スプレー式スクラバーである。別の実施例では、スクラバー3には、充填物、ベンチュリーインジェクター、及びバブルスクラバーが含まれる。上記の実施例のすべてのスクラバーは、化学産業での既存のスクラバーである。
【0119】
別の実施例では、設置されたスクラバー3はサイレンサーと統合されて消音機能を有する。これは洗浄効率が高く、海水及び/又は真水洗浄の作動条件において小さいサイズを有する。したがって、排気ガスの消音と高効率な洗浄の両方が実現される。重要なのは、余計な船舶のスペースが必要とされないことであり、それにより船舶の固定費と運転費が更に削減される。
【実施例16】
【0120】
これは、実施例1の船舶の排出物が削減された航行のための方法の使用例である。
図1及び
図2に示されるように、この実施例では、船舶は40,200DWTと8,580KWのエンジン出力を備えた海洋タンカーである。硫黄3.5%の重油(380CST)が使用される。バラストタンクの総容積は20,650m
3である。船舶の片道の所定航路は約6,000kmである。洗浄水排出が禁止された港湾区域がある。入港には片道約1時間かかる。往復航行計画では、洗浄水の排出は2.5時間禁止される。貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクは、船舶の喫水線より下の船舶平面の中心点付近にあるバラストバンクから離れた約1000m
3のスペースで構成される。船舶のバラストタンクの総容積におけるこの容積の割合の制限された範囲は、0.3%~5%になるように設定される。
【0121】
この実施例では、船舶の排気ガス浄化モードは、公海を含むほとんどの海域を航行している時に海水のみを洗浄及び排出に使用する経済的な運転モードである。エネルギー消費量は、対応するエンジン出力の約1%である。洗浄水排出が禁止された港湾エリアに出入りする期間中、洗浄廃水は一時的に貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵される。この実施例では、船舶は効率的な充填物洗浄の設計を採用しており、全負荷航行で1時間当たりに生じる洗浄水の量はバラストタンクの総容量の約0.5%であり、貯蔵タンクの設定された量は、洗浄水が2.5時間の航行の間に排出されないことを可能にする。積み降ろしの期間中、主推進エンジンは停止し、補助エンジンのみが動いているか、又は補助エンジンも停止している(陸上の電力を使用)。洗浄水排出が禁止されている海域を船舶が離れた後に、バラスト水排出規制によって要求される水質の許容基準を満たすように、殺滅処理水用の出口ポンプが始動されてバラスト水タンクに一時的に貯蔵された酸性の洗浄水に対して殺滅処理を行い、その後に海水中和装置に排出される。導入されたアルカリ性の海水によって、IMO規制によって要求されるEGC排出のpH値の許容基準まで中和された後に、洗浄廃水は海洋に排出される(排出する水質の他の指標は、既存の技術によって保証される)。貯蔵された酸性の洗浄海水がすべて排出されると、中和海水用ポンプの流量が増加される。この時点で、EGCシステムの運転は、洗浄及び排出に海水を使用するモードに切り替えられている。
【0122】
この実施例では、全航行中での船舶の排気ガス浄化のエネルギー消費量は、基本的に対応するエンジン出力の1%に維持され、アルカリ性の化学物質は追加されない。洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び船舶のバラスト水排出規制並びに許容基準を満たす。
【実施例17】
【0123】
これは、実施例1の船舶の排出物が削減された航行のための方法の別の使用例である。
図1及び
図3に示されるように、この実施例では、船舶は180,000DWT及び15MWのエンジン出力を備えた外航ばら積み貨物船である。硫黄3.5%の重油(380CST)が使用される。バラストタンクの総容積は90,650m
3である。船舶の片道の所定航路は約10,000kmである。洗浄水排出が禁止された港湾区域がある。入港には片道約2時間かかる。往復航行計画では、洗浄水の排出は4.5時間禁止される。この実施例では、船舶が公海を含む一般的な海域を航行している時に、排気ガスの浄化装置は、洗浄及び排出に海水のみを使用するIMO EGCガイドラインの標準モードで動作している。洗浄水排出が禁止された港湾区域に出入りする期間中、洗浄廃水は貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵され、海洋に排出されない。この実施例では、船舶は効率的な充填物洗浄の設計を採用しており、全負荷航行で1時間当たりに生じる洗浄水の量はバラストタンクの総容量の約1%であり、排出が禁止された4.5時間の航海で生じる洗浄水の量は、バラストタンクの総容量の約4.5%である。船舶のすべてのバラストタンクの総容積における、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクの容積の割合は、2段階で構成される。第1段階は5%~10%で、4.5時間の航行で洗浄水が排出されないようにすることができる。第2段階は10%~50%で、必要に応じて48時間の洗浄廃水を貯蔵することができる。このために、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクは、船舶の喫水線の下の船舶平面の中心点の近くに配置された2つ以上の接続されたバラストタンクで構成される。貯蔵タンクとして使用される各バラストタンクは、洗浄廃水を貯蔵しない間は一般的なバラストタンクとして使用される。この実施例では、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵された船舶の洗浄廃水は、化学的中和及び殺滅処理によって処理される。化学的中和処理は、30%の水酸化ナトリウム溶液を入れたタンクと、アルカリを計量及び輸送するためのポンプとで構成された化学的中和装置によって行われる。少量のアルカリ性の化学物質が短時間だけ使用される。化学中和装置は、貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに接続されており、洗浄廃水がバラストタンクに入ると開かれて、それにより酸性の洗浄水がアルカリ性の化学物質によって中和される。バラストタンクの化学的腐食を防ぐのにも役立つ。殺滅処理は、船舶でのバラスト水処理システムの元々の殺滅処理装置によって行われる。積み降ろしの期間中、主推進エンジンは停止し、補助エンジンのみが動いているか、又は補助エンジンも停止している(陸上の電力を使用)。洗浄水排出が禁止されている海域を船舶が離れた後にバラスト水用の出口ポンプが始動されて、それにより貯蔵タンクとして使用されるバラストタンクに貯蔵され、化学的中和処理及び殺滅処理後に洗浄水排出規制及びバラスト水排出規制で要求される許容基準を満たした洗浄廃水が、許容基準を満たした洗浄水の排出口から海洋に排出される。船舶が一般海域に戻ると、EGCシステムの運転は、洗浄及び排出に海水を使用する動作モードに切り替わる。この実施例では、全航行中での船舶の排気ガス浄化のエネルギー消費量は、対応するエンジン出力の約1.5%であり、洗浄廃水は、船舶の洗浄水排出規制及び船舶のバラスト水排出規制並びに許容基準を満たす。
【実施例18】
【0124】
これらは、本発明の船舶の排気ガスを安全に浄化するための別の方法の基本的な実施例のグループである。
図9に示されるように、実施例では、それは
a)洗浄水がエンジンの排気ガスを洗浄して排気ガス中の二酸化硫黄を吸収するように、船舶のエンジンの排気ガス及び洗浄水をスクラバーに導入するステップと、
b)洗浄及び吸収後に硫黄含有量が許容基準を満たした排気ガスを、スクラバー上部の煙突を通じて大気中に排出するステップと、
c)洗浄後に二酸化硫黄を吸収した酸性の洗浄水を、スクラバーの,水封を通って、大気と連通した容器に排出するステップと、ここでスクラバーの水封の流通能力は、エンジンの排気ガスが支障なく通過でき、かつスクラバーの水封の水柱の高さがスクラバーの安全な空気圧の上限に等しくなるようにされ、
d)容器内の酸性の洗浄水を水質回復システムに排出し、水質の許容基準を満たした後に、洗浄水を海洋に排出するステップと、
を含む。
【実施例19】
【0125】
これは、実施例18に基づく実施例である。ステップc)におけるスクラバーの水封の開放ガス圧力は、スクラバーの安全な空気圧の上限値に等しい。
【0126】
この実施例では、洗浄水がスクラバーの水封を通って、大気と連通した容器に入るモードが採用されている。故障したスクラバーの背圧が、水封の事前設定されたガス圧の開放値を超える値に上昇すると、水封を自動的に開くことができる。次に排気ガスは、バイパス通路を形成する、大気と連通した容器に入る。水封の流通能力は、エンジンの排気ガスが支障なく通過できるように構成されるため、エンジンの安全な運転が保証される。第1の側面として、スクラバーの集水プール、すなわち水封の水位が維持され、これにより洗浄水がエンジンの排気管に入ってスムーズな排気を妨げるのを防ぐ。第2の側面として、スクラバーが塞がれたときに排気ガスがバイパスを通過して、エンジンの排気の安全性を確保することができる。第3の側面として、従来のバイパス減衰器(ダブルディスク、密閉ファン)の導入を避けて、切り離すことができないエンジン停止の致命的なリスクを回避する。
【実施例20】
【0127】
これは、実施例18に基づく実施例である。これは、船体1と、エンジン2と、スクラバー3と、水とガスが平衡したバイパスボックス3.7と、海水中和装置5とからなる。エンジン2は、船体1の下部に設置される。エンジン2のエンジン排気管2.1は、スクラバー3のガス入口に接続される。スクラバーは、集水プール3.5及び水封3.6を含む。水とガスが平衡したバイパスボックス3.7は、バイパス排出通路3.8を含む。水とガスが平衡したバイパスボックス3.7の水とガスの入口は、水封3.6に接続される。水とガスが平衡したバイパスボックス3.7の水出口は、海水中和装置5に接続される。
【実施例21】
【0128】
これは、実施例20に基づく実施例である。スクラバー3及び水とガスが平衡したバイパスボックス3.7は、高温耐性材で構成される。
【実施例22】
【0129】
これは、実施例20に基づく実施例である。水封3.6の流通能力は、エンジンの排気ガスが支障なく通過できるように構成される。
【実施例23】
【0130】
これは、実施例20に基づく実施例である。水封3.6は、水柱の高さがスクラバーの安全な空気圧の上限に等しくなるように設定された封止構造で構成される。
【0131】
本発明の特許請求の範囲は、上記の実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0132】
1-船体、2-エンジン、2.1-エンジンの排気管、3-スクラバー、3.1-洗浄水の流入管、3.2-酸性の洗浄水の排出管、3.3-貯蔵タンク、3.4-洗浄水用ポンプ、3.5-集水プール、3.6-水封、3.7-水とガスが平衡したバイパスボックス、3.8-バイパス排出通路、4-貯蔵タンクとして使用されるバラストタンク、4'-一般的なバラストタンク、4.1-バラスト水用の入口ポンプ、4.2-殺滅処理装置、4.3-バラスト水の排出管、4.4-バラスト水用の出口ポンプ、4.5-許容基準を満たしたバラスト水の排出口、4.6-殺滅処理水用の排出ポンプ、4.7-双方向管、5-海水中和装置、5.1-中和海水の流入管、5.2-中和海水用のポンプ、5.3-洗浄水の排出管、5.4-洗浄廃水の遮断弁、5.5-許容基準を満たした洗浄水の排出口、6-船舶の海中入口、6.1-船舶の主海水パイプライン、7-煙突、8-化学中和装置
【国際調査報告】