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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】医薬送達組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220228BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220228BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220228BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20220228BHJP
   A61K 36/03 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 36/04 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 36/886 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220228BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/44
A61K47/10
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/14
A61K35/644
A61K36/03
A61K36/04
A61K36/05
A61K31/7048
A61K31/341
A61K31/015
A61K31/197
A61K36/886
A61K36/23
A61K36/53
A61K31/714
A61K31/522
A61P1/02
A61P31/22
A61K31/52
A61P29/00
A61P17/02
A61P25/02
A61P3/02 102
A61P3/02 104
A61L15/28 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540141
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2020013118
(87)【国際公開番号】W WO2020146752
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】62/791,005
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】521301806
【氏名又は名称】イノーバコーリアム,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブッツィ,マルセロ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
4C087
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA29
4C076BB22
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC29
4C076CC35
4C076DD07E
4C076DD25Z
4C076DD37S
4C076DD59S
4C076DD69E
4C076EE23
4C076EE30E
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE41
4C076EE41E
4C076EE43
4C076FF15
4C076FF41
4C076FF51
4C076FF61
4C081AA02
4C081BA14
4C081CD32
4C081CE02
4C081DA04
4C084AA17
4C084MA17
4C084NA10
4C084ZA891
4C084ZB111
4C084ZC411
4C086AA01
4C086BA03
4C086CB07
4C086DA39
4C086EA11
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA44
4C086MA57
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA20
4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC24
4C087AA01
4C087BB22
4C087CA06
4C087CA19
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA13
4C087MA17
4C087MA28
4C087MA44
4C087MA57
4C087MA63
4C087NA10
4C087ZA67
4C087ZA89
4C087ZB11
4C088AA13
4C088AA14
4C088AA15
4C088AB38
4C088AB40
4C088AB71
4C088AC01
4C088AC15
4C088BA08
4C088BA12
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA07
4C088MA13
4C088MA17
4C088MA28
4C088MA44
4C088MA57
4C088MA63
4C088NA10
4C088ZA20
4C088ZA67
4C088ZA89
4C088ZB11
4C206AA01
4C206BA04
4C206GA05
4C206GA36
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA06
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA64
4C206MA77
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA67
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZC23
4C206ZC24
(57)【要約】
いくつかの態様では、本開示は、皮膚修復及び再生のための組成物及び方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物は、粘膜組織(例えば、口腔粘膜組織)などの損なわれた皮膚の修復に適した、生物界面活性剤などの生物工学的賦形剤系と組み合わせた天然産物(例えば、抽出物)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)炭酸緩衝液、少なくとも2種の異なる生物界面活性剤、少なくとも1種の吸湿剤、及び少なくとも1種の抗酸化剤を含む薬物送達系と;
(ii)少なくとも1種の生物活性剤と
を含む組成物であって、約7.5~約9.5の範囲であるpHを有する組成物。
【請求項2】
前記炭酸緩衝液が、次のイオン:ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムのうちの1つを含み、任意選択的に前記炭酸緩衝液が炭酸水素ナトリウム緩衝液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも2種の生物界面活性剤のそれぞれが、糖脂質、リポペプチド、及び高分子生物界面活性剤から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記糖脂質が、ラムノリピド、ソホロ脂質、トレハロ脂質、セロビオ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、及びそのあらゆる組み合わせから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記リポペプチドが、サーファクチン、プリパスタチン、バシロマイシン、フェンギシン、サブチリシン、グラミシジン、ポリミキシン、及びそのあらゆる組み合わせから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記高分子生物界面活性剤が、エマルサン、バイオディスパーサン、リポサン、マンナン-脂質-タンパク質複合体、炭水化物-脂質-タンパク質複合体、及びそのあらゆる組み合わせから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも2種の生物界面活性剤が、ラムノリピド及びソホロ脂質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記生物界面活性剤の総量が、約1.5%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ラムノリピドとソホロ脂質との比率が、約1:9~約9:1の範囲であり、任意選択的に前記比率が、約1:1又は約7:3である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記吸湿剤が、グリコールポリマー、グリコサミノグリカン、及びセルロースポリマーから選択される薬剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記グリコールポリマーが、ポリエチレングリコールポリマーを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記セルロースポリマーが、カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記吸湿剤の量が、約1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の抗酸化剤が、親油性抗酸化剤を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記親油性抗酸化剤が、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及び/又はトコフェロールであり、任意選択的に前記トコフェロールがα-トコフェロールである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の生物活性剤が、小分子、タンパク質、核酸、又は生物活性抽出物である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記生物活性抽出物が、1つ以上の種類のプロポリスから得られる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記プロポリスが、グリーンプロポリス、ブラウンプロポリス、レッドプロポリス、又は前述のもののいずれかの組み合わせを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
天然の生物活性抽出物が、次のもの:フラボノイド、アルテピリンC、トリテルペノイド、イソフラボニド、及び芳香族酸の1つ以上を含む、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
前記グリーンプロポリスとブラウンプロポリスとの比率が、約1:9~約9:1の範囲である、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
生物活性のあるプロポリス抽出物の総量が、約5%(w/w)~約20%(w/w)の範囲である、請求項18~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記生物活性のある天然抽出物が、1つ以上の種類の海藻から得られる、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
前記1つ以上の種類の海藻が、アオノリ属(Enteromorpha)、アオサ属(Ulva)、ヒトエグサ属(Monostroma)、ミル属(Codium)、イワヅタ属(Caulerpa)、ハネモ属(Bryopsis)、アマノリ属(Porphyra)、及びコンブ属(Laminaria)から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記生物活性のある天然抽出物が、1種以上の硫酸化多糖を含み、任意選択的に、前記1種以上の硫酸化多糖のそれぞれが、カラギーナン、ウルバン、ガラクタン、及びフコイダンから選択される、請求項23又は24に記載の組成物。
【請求項26】
前記生物活性抽出物の総量が、約5%(w/w)~約20%(w/w)の範囲である、請求項23~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記生物活性抽出物が、アロエベラ(Aloe vera)、バイカリン、又はアンドログラホリドをさらに含む、請求項18~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記生物活性のある天然抽出物が、1種以上のカロテノイド及び/又はビタミンAを含み、任意選択的に前記カロテノイド及び/又はビタミンAがニンジン油から得られる、請求項17に記載の組成物。
【請求項29】
前記生物活性のある天然抽出物が、1種以上のビタミンB複合体を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記1種以上のビタミンB複合体が、パントテン酸の誘導体又はその誘導体若しくは類似体であり、任意選択的に前記ビタミンB複合体がデクスパンテノールを含む、請求項28又は29に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、1種以上のタンパク質をさらに含み、任意選択的に前記タンパク質がコラーゲン及び/又はアルブミンを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記生物活性のある天然抽出物の総量が、約1%(w/w)~約5%(w/w)の範囲である、請求項28~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記生物活性のある天然抽出物が、レモンバーム(Melissa officinalis)から得られる、請求項17に記載の組成物。
【請求項34】
前記生物活性のある天然抽出物が、1種以上のビタミンB複合体を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記1種以上のビタミンB複合体が、メチルコバラミン及び/又はシアノコバラミンを含む、請求項33又は34に記載の組成物。
【請求項36】
前記1種以上のビタミンB複合体が、パントテン酸の誘導体又はその誘導体若しくは類似体であり、任意選択的に前記ビタミンB複合体がデクスパンテノールを含む、請求項33又は34に記載の組成物。
【請求項37】
前記生物活性のある天然抽出物の総量が、約1%(w/w)~約5%(w/w)の範囲である、請求項34~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、固体(例えば、凍結乾燥粉末などの粉末)、液体、ゲル、又は泡として製剤化される、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記液体が、口腔洗浄液である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記ゲル又は泡が、エアロゾル化されたスプレー又はハイドロゲルとして製剤化される、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、固体基材上又は固体基材中に存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
前記固体基材が、綿繊維を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記固体基材が、包帯又は綿マスクである、請求項41又は42に記載の組成物。
【請求項44】
請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物を含む固体基材。
【請求項45】
前記基材が、綿繊維を含む、請求項44に記載の固体基材。
【請求項46】
前記基材が、包帯又はマスクである、請求項44又は45に記載の固体基材。
【請求項47】
(i)請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物と;
(ii)非粘着性創傷被覆材と
を含むキット。
【請求項48】
前記非粘着性創傷被覆材が、綿繊維を含む、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
1つ以上の伸縮包帯をさらに含む、請求項47又は48に記載のキット。
【請求項50】
前記組成物が、泡、ゲル、又は液体として製剤化される、請求項47~49のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
(i)請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物と;
(ii)単純ヘルペスウイルスを治療するのに有効な1種以上の抗ウイルス剤と
を含むキット。
【請求項52】
前記1種以上の抗ウイルス剤が、アシクロビル、バラシクロビル、及びファムシクロビルから選択される、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記単純ヘルペスウイルスが、口唇単純ヘルペス(HSL)である、請求項51又は52に記載のキット。
【請求項54】
対象における口腔病変を治療するための方法であって、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物を、1つ以上の口腔病変を有する対象に投与することを含む方法。
【請求項55】
前記対象が、粘膜炎を有する、又は有する疑いがある、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、化学療法、放射線療法、又は化学療法と放射線療法の組み合わせを以前に施されている、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、下顎顔面手術を受けている、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物が、前記対象の口腔に直接的に投与され、任意選択的に、前記投与が、経口スプレー又は口腔洗浄液によるものである、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、1日に1回よりも多く(例えば、1日に2、3、4回、又はそれ以上の回数)、前記組成物を投与される、請求項54~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が、食前、食後、又は食前と食後の両方に、前記対象に投与される、請求項54~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物の投与が、細菌のバイオフィルム形成及び/又は成長を阻害する、請求項54~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象の皮膚に投与することを含む方法。
【請求項63】
前記皮膚が、美容処置を受けており、任意選択的に、前記美容処置が、レーザー皮膚ピーリングである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記対象の皮膚が、損なわれており、任意選択的に、前記損なわれた皮膚が、創傷、潰瘍、又は水疱である、請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
前記投与することが、前記対象の皮膚を、前記組成物を含む固体基材と接触させることを含む、請求項62~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記固体基材が、非接着性包帯又は綿のフェイスマスクである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記投与が、局所投与である、請求項62~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記投与が、1日に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回行われる、請求項62~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記投与が、1週に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回行われる、請求項62~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、糖尿病の結果としての慢性創傷、又は不十分な血流を伴う損なわれた皮膚(例えば、静脈瘤、褥瘡など)を有する、又は有する疑いがある、請求項62~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象が、単純ヘルペスウイルスを有する、又は単純ヘルペスウイルスに感染している疑いがあり、任意選択的に、前記単純ヘルペスウイルスが、口唇単純ヘルペスである、請求項62~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
それを必要とする対象における末梢神経末端を再生する方法であって、
(i)生物活性のあるレモンバーム(Melissa officinalis)抽出物を含む第1の組成物と;
(ii)メチルコバラミン及び/又はシアノコバラミンを含む第2の組成物
を、前記対象に投与することを含む方法。
【請求項73】
前記第1の組成物及び第2の組成物が、請求項33~37のいずれか一項に記載の組成物として投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記第1の組成物及び/又は第2の組成物が、局所的に投与される、請求項72又は73に記載の方法。
【請求項75】
前記対象の皮膚が、損なわれており、任意選択的に、前記損なわれた皮膚が、創傷、潰瘍、又は水疱である、請求項72~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象が、単純ヘルペスウイルスを有する、又は単純ヘルペスウイルスに感染している疑いがあり、任意選択的に、前記単純ヘルペスウイルスが、口唇単純ヘルペスである、請求項72~75のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[001] 本出願は、2019年1月10日に出願された「DRUG DELIVERY COMPOSITIONS AND USES THEREOF」という題名の、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/791,005号の出願日の利益を、35 U.S.C.119(e)の下で主張する。
【背景技術】
【0002】
[002] 皮膚又は粘膜などの損なわれた組織の治療には、一般に、創傷被覆材及び物理的又は酵素的デブリードマンと組み合わせた、治療薬(例えば、抗菌薬の局所又は全身投与が含まれる。これらの治療は、典型的には、軽微な切創及び感染症の治癒を促進するのに十分であるが、慢性創傷、感染した皮膚などの、より重篤に損なわれた組織は、しばしば、こうしたモダリティによって十分には対処されない。現在の方法の主要課題は、微生物成長に対して抵抗性であり、且つ組織再生及び治癒を促進する分子的状態を作り出す、組織微小環境を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[003] 本開示の態様は、損なわれた皮膚を治療するのに有用な組成物及び方法に関する。本開示は、一つには、次のもののそれぞれの1つ以上を含む薬物送達組成物(系)に基づく:表面活性剤(例えば、界面活性剤)、水和剤(例えば、吸湿剤)、及び約pH7.5~pH9.5という組成物のpHを維持する炭酸系緩衝液。いかなる特定の理論にも拘泥されることを望まないが、対象(例えば、ヒト対象)の損なわれた組織(例えば、皮膚、粘膜組織など)に投与される場合、本開示によって記載される組成物は、1)分子的デブリードマン、2)適切な水和、並びに3)抗炎症及び抗微生物活性(例えば、足場となるエキソポリマー多糖構造の破壊の結果としての細菌バイオフィルムの除去)を同時に提供することによって、組織治癒及び再生を促進する微小環境を提供する。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物の特性及び/又は活性は、中性(例えば、pH約7.0)から酸性(例えば、pH約5.0~6.0)の範囲のpH値を典型的には有する現在利用可能な創傷治癒組成物を考慮すると、驚くべきことである。
【0004】
[004] したがって、いくつかの態様では、本開示は、炭酸緩衝液、少なくとも2種の異なる生物界面活性剤、少なくとも1種の吸湿剤、及び少なくとも1種の抗酸化剤を含む薬物送達系と;少なくとも1種の生物活性剤とを含む組成物であって、約7.5~約9.5の範囲であるpHを有する組成物を提供する。
【0005】
[005] いくつかの実施形態では、炭酸緩衝液は、次のイオン:ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムのうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、炭酸緩衝液は、炭酸水素ナトリウム緩衝液である。
【0006】
[006] いくつかの実施形態では、組成物の生物界面活性剤は、糖脂質、リポペプチド、及び高分子生物界面活性剤から選択される。
【0007】
[007] いくつかの実施形態では、糖脂質は、ラムノリピド、ソホロ脂質、トレハロ脂質、セロビオ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、及びそのあらゆる組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、生物界面活性剤は、少なくとも1種のラムノリピド及び少なくとも1種のソホロ脂質を含む。
【0008】
[008] いくつかの実施形態では、リポペプチドは、サーファクチン、プリパスタチン、バシロマイシン、フェンギシン(fengycin)、サブチリシン、グラミシジン、ポリミキシン、及びそのあらゆる組み合わせから選択される。
【0009】
[009] いくつかの実施形態では、高分子生物界面活性剤は、エマルサン(emulsan)、バイオディスパーサン(biodispersan)、リポサン(liposan)、マンナン-脂質-タンパク質複合体、炭水化物-脂質-タンパク質複合体、及びそのあらゆる組み合わせから選択される。
【0010】
[010] いくつかの実施形態では、組成物中の生物界面活性剤の総量は、約1.5%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中のラムノリピドとソホロ脂質との比率は、約1:9(例えば、1%(w/w)~99%(w/w))~約9:1(例えば、99%(w/w)~約1%(w/w))の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約50%~50%(例えば、l:l)である。
【0011】
[011] いくつかの実施形態では、吸湿剤は、グリコールポリマー、グリコサミノグリカン、及びセルロースポリマーから選択される薬剤を含む。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーは、ポリエチレングリコールポリマーを含み、ここでは任意選択的に、ポリエチレングリコールポリマーは、2個のポリマーサブユニットから約50,000個のポリマーサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸である。いくつかの実施形態では、セルロースポリマーは、カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースを含む。いくつかの実施形態では、組成物中の吸湿剤の量は、約1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。
【0012】
[012] いくつかの実施形態では、組成物の少なくとも1種の抗酸化剤は、親油性抗酸化剤である。いくつかの実施形態では、親油性抗酸化剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及び/又はトコフェロールである。いくつかの実施形態では、トコフェロールは、α-トコフェロールである。
【0013】
[013] いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1種の生物活性剤を含む。いくつかの実施形態では、生物活性剤は、小分子、タンパク質、核酸、又は生物活性抽出物である。
【0014】
[014] いくつかの実施形態では、生物活性抽出物は、1つ以上の種類のプロポリス(例えば、プロポリス混合物)から得られる(例えば、抽出される)。いくつかの実施形態では、プロポリス(例えば、プロポリス混合物)は、グリーンプロポリス、ブラウンプロポリス、レッドプロポリス、又はその組み合わせ(例えば、グリーンプロポリスとブラウンプロポリス、レッドプロポリスとグリーンプロポリスとブラウンプロポリスなど)を含む。いくつかの実施形態では、天然の生物活性抽出物(例えば、プロポリス抽出物)は、次のもの:フラボノイド、アルテピリンC、トリテルペノイド、イソフラボニド(isoflavonid)、及び芳香族酸の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、組成物中のグリーンプロポリスとブラウンプロポリスとの比率は、約1:9~約9:1の範囲である、いくつかの実施形態では、組成物中の生物活性のあるプロポリス抽出物の総量は、約5%(w/w)~約20%(w/w)の範囲である。
【0015】
[015] いくつかの実施形態では、生物活性のある天然抽出物は、1つ以上の種類の海藻(例えば、海藻混合物)から得られる(例えば、抽出される)。いくつかの実施形態では、1つ以上の種類の海藻は、アオノリ属(Enteromorpha)、アオサ属(Ulva)、ヒトエグサ属(Monostroma)、ミル属(Codium)、イワヅタ属(Caulerpa)、ハネモ属(Bryopsis)、アマノリ属(Porphyra)、及びコンブ属(Laminaria)から選択される。いくつかの実施形態では、生物活性のある天然抽出物(例えば、海藻抽出物)は、1種以上の硫酸化多糖を含む。いくつかの実施形態では、1種以上の硫酸化多糖は、カラギーナン、ガラクタン、ウルバン(ulvan)、及びフコイダンから選択される。いくつかの実施形態では、生物活性抽出物は、アロエベラ(Aloe vera)抽出物をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物中の生物活性のある海藻抽出物の総量は、約5%(w/w)~約20%(w/w)の範囲である。
【0016】
[016] いくつかの実施形態では、生物活性のある天然抽出物は、1種以上のカロテノイド及び/又はビタミンA(又はその誘導体)を含む。いくつかの実施形態では、カロテノイドを含む生物活性抽出物は、ニンジン油から得られる(例えば、抽出される)。いくつかの実施形態では、生物活性のあるニンジン油天然抽出物は、1種以上のビタミンB複合体を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のビタミンB複合体は、パントテン酸の誘導体又はその誘導体若しくは類似体である。いくつかの実施形態では、ビタミンB複合体は、デクスパンテノールを含む。いくつかの実施形態では、組成物中の生物活性のあるニンジン油天然抽出物の総量は、約1%(w/w)~約5%(w/w)の範囲である。
【0017】
[017] いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上のタンパク質(例えば、動物タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、など)をさらに含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、コラーゲン、アルブミン、又はその組み合わせを含む。
【0018】
[018] いくつかの実施形態では、生物活性のある天然抽出物は、植物から得られる(例えば、抽出される)。いくつかの実施形態では、生物活性のある天然抽出物は、レモンバーム(Melissa officinalis)から得られる(例えば、抽出される)。いくつかの実施形態では、生物活性のあるレモンバーム(Melissa officinalis)天然抽出物は、1種以上のビタミンB複合体を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のビタミンB複合体は、メチルコバラミン及び/又はシアノコバラミンを含む。いくつかの実施形態では、1種以上のビタミンB複合体は、パントテン酸の誘導体又はその誘導体若しくは類似体であり、任意選択的に、ビタミンB複合体は、デクスパンテノールを含む。いくつかの実施形態では、組成物中の生物活性のあるレモンバーム(Melissa officinalis)天然抽出物の総量は、約1%(w/w)~約5%(w/w)の範囲である。
【0019】
[019] いくつかの実施形態では、本開示によって記載された組成物は、固体(例えば、凍結乾燥粉末などの粉末)、液体、ゲル(例えば、ハイドロゲル)、又は泡として製剤化される。いくつかの実施形態では、液体は、口腔洗浄液である。いくつかの実施形態では、ゲル又は泡は、エアロゾル化されたスプレー又はハイドロゲルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示によって記載された組成物は、固体基材上又は固体基材中に存在する。いくつかの実施形態では、固体基材は、綿繊維を含む。いくつかの実施形態では、固体基材は、包帯又は綿マスクである。
【0020】
[020]いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載された組成物を含む固体基材を提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の伸縮包帯をさらに含むキット。いくつかの実施形態では、組成物は、泡、ゲル、又は液体として製剤化される。
【0021】
[021]いくつかの実施形態では、固体基材は、綿繊維を含む。いくつかの実施形態では、固体基材は、包帯(例えば、非接着性包帯)又はマスク(例えば、綿のフェイスマスク)である。
【0022】
[022] いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載された組成物と;非粘着性創傷被覆材とを含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、非粘着性創傷被覆材は、綿繊維を含む。
【0023】
[023] いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載された組成物と;単純ヘルペスウイルスを治療するのに有効な1種以上の抗ウイルス剤とを含むキットを提供する。
【0024】
[024] いくつかの実施形態では、1種以上の抗ウイルス剤は、アシクロビル、バラシクロビル、及びファムシクロビルから選択される。いくつかの実施形態では、単純ヘルペスウイルスは、口唇単純ヘルペス(HSL)である。いくつかの実施形態では、組成物、抗ウイルス剤、又はその組み合わせは、局所投与のために製剤化される。
【0025】
[025] いくつかの態様では、本開示は、対象(例えば、ヒト対象)における口腔病変を治療するための方法であって、本明細書に記載された組成物を、1つ以上の口腔病変を有する対象に投与することを含む方法を提供する。
【0026】
[026] いくつかの実施形態では、対象は、粘膜炎を有する、又は有する疑いがある。いくつかの実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、又は化学療法と放射線療法の組み合わせを以前に施されている。いくつかの実施形態では、対象は、下顎顔面(buco-maxillofacial)手術を受けている。
【0027】
[027] いくつかの実施形態では、組成物は、対象の口腔に直接的に投与される。いくつかの実施形態では、投与は、口腔スプレー又は口腔洗浄液によるものである。いくつかの実施形態では、対象は、1日に1回よりも多く(例えば、1日に2、3、4回、又はそれ以上の回数)、組成物を投与される、いくつかの実施形態では、組成物は、食前、食後、又は食前と食後の両方に、対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、細菌のバイオフィルム形成及び/又は成長を阻害する。
【0028】
[028] いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載された組成物を、それを必要とする対象の皮膚に投与することを含む方法を提供する。
【0029】
[029] いくつかの実施形態では、対象の皮膚は、美容処置を受けている。いくつかの実施形態では、美容処置は、レーザー皮膚ピーリングである。
【0030】
[030] いくつかの実施形態では、対象の皮膚は、損なわれている。いくつかの実施形態では、損なわれた皮膚は、創傷(例えば、外科的切開創など)、潰瘍、又は水疱である。
【0031】
[031] いくつかの実施形態では、投与することは、対象の皮膚を、組成物を含む固体基材と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、固体基材は、非接着性包帯又は綿のフェイスマスクである。
【0032】
[032] いくつかの実施形態では、組成物は、局所的に投与される。いくつかの実施形態では、投与は、1日に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回行われる。いくつかの実施形態では、投与は、1週に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回行われる。
【0033】
[033] いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病(例えば、1型糖尿病又はII型糖尿病)を有する、又は有する疑いがある。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病に起因する慢性創傷、又は不十分な血流に起因する損なわれた皮膚、例えば静脈瘤又は褥瘡を有する。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病性潰瘍、例えば糖尿病足病性潰瘍を有する、又は有する疑いがある。
【0034】
[034] いくつかの実施形態では、対象は、単純ヘルペスウイルスを有する、又は単純ヘルペスウイルスに感染している疑いがある。いくつかの実施形態では、このウイルスは、口唇単純ヘルペスである。
【0035】
[035] いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする対象における末梢神経末端を再生する方法であって、生物活性のあるレモンバーム(Melissa officinalis)抽出物を含む第1の組成物と;メチルコバラミン及び/又はシアノコバラミンを含む第2の組成物とを、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0036】
[036] いくつかの実施形態では、第1の組成物及び第2の組成物は、単一の組成物として投与される。いくつかの実施形態では、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、局所的に投与される。
【0037】
[037] いくつかの実施形態では、対象の皮膚は、損なわれている。いくつかの実施形態では、損なわれた皮膚は、創傷、潰瘍、又は水疱である。いくつかの実施形態では、対象は、単純ヘルペスウイルスを有する、又は単純ヘルペスウイルスに感染している疑いがある。いくつかの実施形態では、単純ヘルペスウイルスは、口唇単純ヘルペスである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】[038]3日目の黄色ブドウ球菌(S.aureus)MRSAバイオフィルムに対する組織修復製剤の有効性についての代表的なデータを示す。毎日の適用と単回適用の両方を評価した。データは、微生物生存数として示されることに留意されたい。Ex=賦形剤。
図2】[038]3日目の緑膿菌(P.aeruginosa)バイオフィルムに対する組織修復製剤の有効性についての代表的なデータを示す。毎日の適用と単回適用の両方を評価した。データは、微生物生存数として示されることに留意されたい。Ex=賦形剤。
図3】[038]3日目のC.アルビカンス(C.albicans)バイオフィルムに対する組織修復製剤の有効性についての代表的なデータを示す。毎日の適用と単回適用の両方を評価した。データは、微生物生存数として示されることに留意されたい。Ex=賦形剤。
図4】[038]各治療についてランダムに選択されたブタの背側領域上の創傷部位の模式的描写を示す。
図5A】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Aは、製剤Aについてのデータを示す。
図5B】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Bは、製剤Bについてのデータを示す。
図5C】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Cは、製剤Cについてのデータを示す。
図5D】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Dは、製剤Dについてのデータを示す。
図5E】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Eは、生理食塩水対照(SAL)についてのデータを示す。
図5F】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Fは、Plurogelについてのデータを示す。
図5G】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Gは、Medihoneyについてのデータを示す。
図5H】[038]種々の治療及び対照での、ブタ皮膚上の全層(full thickness)切除創の治癒プロセスを表す写真である。図5Hは、Amerigelについてのデータを示す。
図6】[038]創傷治癒組成物治療及び生理食塩水対照の、創傷面積の低下の割合を示す。A、製剤A;B、製剤B;C、製剤C;D、製剤D;PG、Plurogel;MH、Medihoney;AMG;Amerigel;SAL、生理食塩水対照。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[039] 正常な創傷治癒パターンを経て進行できずに慢性炎症の状態のままである慢性創傷は、通常、プロテアーゼが豊富且つ酸化促進物質が敵対している微小環境である。こうした微小環境は、通常、成長因子の分解及び活性酸素種(ROS)の過剰産生を促進し、より多くの組織損傷及びより多くの組織修復遅延がもたらされる。創傷に存在する微生物も、組織修復障害に寄与する。
【0040】
[040] 本開示は、創傷治癒及び組織産生を促進するための薬物の薬物送達系及び組成物に関する。本開示は、一つには、次のもののそれぞれの1つ以上を含む薬物送達組成物(系)に基づく:表面活性剤(例えば、界面活性剤)、水和剤(例えば、吸湿剤)、及び約pH8.0~pH9.5という組成物のpHを維持する炭酸系緩衝液。いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上の少なくとも1種の生物活性剤をさらに含む。
【0041】
[041] いかなる特定の理論にも拘泥されることを望まないが、対象の損なわれた組織(例えば、皮膚、粘膜組織など)に投与される場合、本開示によって記載される組成物は、1)分子的デブリードマン、2)適切な水和、並びに3)抗炎症及び抗微生物活性を同時に提供することによって、組織治癒及び再生を促進する微小環境を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物は、足場となるエキソポリマー多糖構造の破壊の結果としての細菌バイオフィルムの除去を促進する。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物の特性及び/又は活性は、中性(例えば、pH約7)から酸性(例えば、pH約5.0~6.0)の範囲のpH値を典型的には有する現在利用可能な創傷治癒組成物を考慮すると、驚くべきことである。
【0042】
[042] したがって、いくつかの態様では、本開示は、炭酸緩衝液、少なくとも2種の異なる生物界面活性剤、少なくとも1種の吸湿剤、及び少なくとも1種の抗酸化剤を含む薬物送達系と;少なくとも1種の生物活性剤とを含む組成物であって、約8.0~約9.5の範囲であるpHを有する組成物を提供する。
【0043】
表面張力調整剤
[043] 本開示は、一つには、1種以上の表面張力調整剤を含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、表面張力調整剤は、界面活性剤である。
【0044】
[044] 一般に、本明細書に記載された組成物は、1種以上の界面活性剤(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又は10種よりも多い界面活性剤)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物の各界面活性剤は、生物界面活性剤、陰イオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、界面活性剤を欠く(例えば、含まない)。
【0045】
[045] いくつかの実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、生物界面活性剤である。本明細書で使用する場合、「生物界面活性剤」は、細胞の表面張力(例えば、哺乳類の細胞膜などの細胞膜の表面張力)を低下させる、微生物(例えば、ある種の細菌細胞)によって産生される表面活性のある生体分子を指す。
【0046】
[046] 生物界面活性剤の例としては、限定はされないが、糖脂質(例えば、ラムノリピド、ソホロ脂質、トレハロ脂質、セロビオ脂質、マンノシルエリスリトール脂質など)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、プリパスタチン、バシロマイシン、フェンギシン、サブチリシン、グラミシジン、ポリミキシンなど)、及び高分子生物界面活性剤(例えば、エマルサン、バイオディスパーサン、リポサン、マンナン-脂質-タンパク質、炭水化物-脂質-タンパク質など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、生物界面活性剤は、糖脂質、リポペプチド、及び高分子生物界面活性剤から選択される。
【0047】
[047] いくつかの実施形態では、本明細書の本開示における生物界面活性剤は、糖脂質から選択される1種以上の生物界面活性剤である。糖脂質は、長鎖脂肪族酸又はヒドロキシ脂肪族酸に炭水化物がエステル基によって連結されたものである。糖脂質の例としては、限定はされないが、ラムノリピド、トレハロ脂質、及びソホロ脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、糖脂質は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)細菌細胞によって産生される。
【0048】
[048] 本明細書で使用する場合、「ラムノリピド」は、1つ又は2つのラムノース分子が1つ又は2つのヒドロキシデカン酸分子に連結された糖脂質を指す。いくつかの実施形態では、ラムノリピドは、3-[3-[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシデカノイルオキシ]デカン酸(本明細書では「ラムノリピドRI」とも称される)である。
【0049】
[049] 本明細書で使用する場合、「ソホロ脂質」は、酵母によって産生され、グリコシド結合によって長鎖ヒドロキシル脂肪酸に連結された二量体の炭水化物ソホロースからなる糖脂質を指す。ソホロ脂質は、少なくとも6~9個の異なる疎水性ソホロ脂質の混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、ソホロ脂質は、ラクトン型のソホロ脂質である。いくつかの実施形態では、ソホロ脂質は、(E)-17-[(2R,3R,4S,5S,6R)-6-(アセチルオキシメチル)-3-[(2S,3R,4S,5S,6R)-6-(アセチルオキシメチル)-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]オキシ-4,5-ジヒドロキシオキサン-2-イル]オキシオクタデカ-9-エン酸である。
【0050】
[050] いくつかの実施形態では、組成物は、ラムノリピド及びソホロ脂質などの界面活性剤の組み合わせ(例えば、少なくとも1種のラムノリピドと少なくとも1種のソホロ脂質)を含む。組成物中の界面活性剤(例えば、ラムノリピド及びソホロ脂質)の相対量(例えば、比率)は、変動し得る。いくつかの実施形態では、ラムノリピドとソホロ脂質との比率は、約1:9~約9:1(例えば、1:9と9:1の間のあらゆる比率、例えば1:1、2:8、8:2、7:3、3:7、6:4、4:6など)の範囲である。
【0051】
[051] 組成物中の生物界面活性剤の比率又は量(例えば、ラムノリピドとソホロ脂質との比率)は、例えば、組成物全体に対する重量%(w/w)、体積%(v/v)、モル濃度などによって、測定することができる。
【0052】
[052] 組成物中の生物界面活性剤の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物中の生物界面活性剤の総量は、約0.1%(w/w)~約8%(w/w)の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中の生物界面活性剤の総量は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、又は約8.0%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、生物界面活性剤を含有しない。
【0053】
[053] 溶液では、濃度及び温度に依存して、界面活性剤は、「ユニマー」と呼ばれる球状ミセルを構造的に形成する。ミセル構造は、時間と共に変化し、崩壊及び膨張してマルチマーを形成する。いくつかの実施形態では、ユニマーは、創傷の壊死組織片を絶え間なく捕捉して、すすぎ作用をもたらすように配置される。界面活性剤が、創傷床と清浄液との間の表面張力を低下させるので、清浄液は、創傷床と密接に接触するようになる。これは、生存可能な創傷床からの、結びつきがゆるい、生存可能ではない組織及び微生物粒子の分離を容易にし、これは、バイオフィルム形成を抑制(例えば、予防)し、より古い、より根絶が難しいバイオフィルムの根絶を助ける。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、デブリードマン後のバイオフィルムの再形成を妨害及び予防する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物中のラムノリピド及びソホロ脂質生物界面活性剤などの非常に高い張力の生体分子の存在が、細菌バイオフィルムの多糖マトリックスの有効な破壊を引き起こす生化学的微小デブリードマン(microdebridation)、並びに細胞損傷によって引き起こされた失活及び壊死組織の除去を促進する。
【0054】
[054] いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物は、1種以上の陰イオン界面活性剤を含む。陰イオン界面活性剤の例としては、セッケン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、フッ素化脂肪酸の塩、シリコーン、脂肪アルコール硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルリン酸塩、アルキルアルコールアミド、アルキルスルホン酸アセトアミド、アルキルコハク酸スルホン酸塩(alkyl succinate sulfonate)、アミノアルコールアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフテン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、及びポリオキシエチレンモノラウリン酸塩が挙げられる。
【0055】
[055] 組成物中の陰イオン界面活性剤の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物中の陰イオン界面活性剤の総量は、約0.1%(w/w)~約8%(w/w)の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中の生物界面活性剤の総量は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、又は約8.0%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、陰イオン界面活性剤を欠く(例えば、含まない)。
【0056】
[056]いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物は、1種以上の非イオン界面活性剤を含む。非イオン界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(Brij)、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、グリセロールアルキルエステル、ラウリン酸グリセリル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー:ポロキサマー、ポリエトキシ化牛脂アミン(Polyethoxylated tallow amine)(POEA)が挙げられる。
【0057】
[057] 組成物中の非イオン界面活性剤の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物中の非イオン界面活性剤の総量は、約0.1%(w/w)~約8%(w/w)の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中の非イオン界面活性剤の総量は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、又は約8.0%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、非イオン界面活性剤を欠く(例えば、含まない)。
【0058】
[058] 組成物はまた、1種以上の双性イオン界面活性剤を含むことができる。双性イオン界面活性剤の例としては、限定はされないが、合成の双性イオン界面活性剤(例えば、1種以上のヒドロキシスルタイン)及び/又は天然に存在する双性イオン界面活性剤(例えば、1種以上のベタイン、ホスファチジルコリン、及び/又はレシチン成分)が挙げられる。いくつかの実施形態では、双性イオン界面活性剤は、コカミドプロピルベタインである。
【0059】
[059] 組成物中の双性イオン界面活性剤の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物中の双性イオン界面活性剤の総量は、約0.1%(w/w)~約8%(w/w)の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中の双性イオン界面活性剤の総量は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、又は約8.0%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、双性イオン界面活性剤を欠く(例えば、含まない)。
【0060】
pH/緩衝系
[060] 現在使用されるスキンケア組成物は、典型的には、ヒト皮膚の本来のpHに近い(例えば、pH6.8~7.0)、又はヒト皮膚のpHよりもわずかに酸性である(例えば、pH5.0~7.0)pHを有する。本開示は、一つには、組織治癒及び再生を促進する微小環境を提供する7を超えるpHを有する(例えば、中性よりも塩基性又はアルカリ性の)組成物に基づく。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物の治癒及び/又は再生活性は、典型的な創傷ケア製品と比較して、より塩基性の組成物のpHを考慮すると、驚くべきことである。
【0061】
[061] 本開示によって記載された組成物のpHは、約7.5~約10.0の範囲である。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物のpHは、約8.0~約9.5の範囲である。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物のpHは、約7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1,9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、又は10.0である)。組成物のpHを測定する方法は、公知であり、例えば、pHメータ、電極に基づく測定(例えば、ガラス電極、基準電極、組み合わせ電極、など)、比色測定などによるものである。典型的には、
pHは、室温(例えば、18℃~24℃)で測定される。しかし、pHは、他の温度(例えば、10℃未満、25℃超、など)で測定することができることを認識するべきである。
【0062】
[063] 組成物のpHは、緩衝系によって維持することができる。緩衝系の例としては、限定はされないが、炭酸緩衝系、リン酸緩衝系、タンパク質緩衝系などが挙げられる。組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又はそれ以上の緩衝系を含むことができる。
【0063】
[064] 本開示は、一つには、炭酸緩衝系を含む組成物に基づく。一般に、「炭酸緩衝系」は、溶液のpHの変化を緩衝する、弱酸(例えば、炭酸)とその共役塩基(例えば、炭酸水素アニオン)を含む溶液を指す。共役塩基(例えば、炭酸水素アニオン)は、炭酸のあらゆる共役塩、例えば、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、炭酸水素セシウム(CsHCO)、炭酸水素マグネシウム(Mg(HCO)、炭酸水素カルシウム(Ca(HCO)、及び炭酸水素アンモニウム(NHCO)によって提供することができる。いくつかの実施形態では、炭酸緩衝系は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を含む。いくつかの実施形態では、炭酸緩衝系は、炭酸水素アンモニウム(NHCO)を含む。
【0064】
[065] ある種の緩衝系(例えば、Naベースの、及びNHベースの緩衝系)は、pH緩衝作用に加えて、組成物中の、又は損なわれた組織(例えば、創傷、水疱、潰瘍など)と組成物が接触された場合に作り出される微小環境中の、Na又はNH4イオンの濃度を上昇させる。いかなる特定の理論にも拘泥されることを望まないが、例えば、Rabenstein et al.(2002)Nat.Prod.Rep.19:312-331によって記載されている通り、多くのイオン(例えば、ナトリウムイオン)が、ヘパリン硫酸(HS)などの、哺乳類の細胞の表面上のある種の分子と結合し、病原体の細胞への侵入を妨げる。いくつかの実施形態では、多くのイオンの細胞膜への結合はまた、皮膚再生にとって重要であるFGF及びEGFなどの成長因子のシグナル伝達に影響を与える。
【0065】
[066] いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物は、標的細胞の表面上のプロテオグリカン(例えば、HSなど)への細菌及びウイルスなどの微生物の結合を妨害するのに十分な量の、創傷微小環境中のイオン(例えば、Na又はNH4イオン)を含有する(又は提供する)。
【0066】
[067] いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物は、約0.5%(w/w)~約10%(w/w)の炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約2%~約5%(w/w)の炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム)、例えば約2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、又は5%(w/w)の炭酸水素ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、炭酸緩衝系を欠く(例えば、含まない)
【0067】
水和剤
[068] 本開示の組成物は、1種以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又はそれ以上の)水和剤を含むことができる。「水和剤」又は「吸湿剤」は、一般に、周囲環境から吸収又は吸着を通して水分子を引き寄せる及び/又は保持する分子を指す。吸湿剤の例としては、セルロースポリマー、グリコールポリマー、グリコサミノグリカン、ムコ多糖などのポリマーが挙げられる。
【0068】
[069] いくつかの実施形態では、吸湿剤は、潮解性の薬剤(例えば、水溶液を形成するのに十分な水をその周囲から吸収する分子)ではない。潮解性の薬剤の例としては、塩(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、カーナライト、炭酸カリウム、リン酸カリウム、クエン酸鉄アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム)が挙げられる。
【0069】
[070] いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上のセルロースポリマー、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又はそれ以上のセルロースポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、水和剤を欠く(例えば、含まない)。一般に、セルロースポリマーは、グルコースの2つ以上の繰り返しサブユニット(例えば、ポリマーサブユニット)を含む。セルロースポリマーの例としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。いくつかの実施形態では、セルロースポリマーの少なくとも1つは、ヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースである。
【0070】
[071] 組成物中の1種以上のセルロースポリマーの量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%(w/w)~約5%(w/w)のセルロースポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、又は5.0%(w/w)のセルロースポリマーを含む。
【0071】
[072] いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上のグリコールポリマー、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又はそれ以上のグリコールポリマーを含む。一般に、グリコールポリマーは、エチレンオキシドなどのポリエーテルの、2つ以上の繰り返しサブユニット(例えば、ポリマーサブユニット)を含む。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG;PEG及びPOEとも称される)である。グリコールポリマーのさらなる例としては、メトキシポリ(エチレングリコール)及びポリプロピレングリコール(PPG)が挙げられる。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーの少なくとも1つは、PEGである。
【0072】
[073] グリコールポリマー(例えば、PEG)中のポリマーサブユニットの数は、変動し得る。いくつかの実施形態では、グリコールポリマー(例えば、PEG)は、約2~10,000,000個のポリマーサブユニット(例えば、2~10,000,000(端値を含む)のいずれかの整数)を含む。いくつかの実施形態では、グリコールポリマー(例えば、PEG)は、10,000,000個よりも多いポリマーサブユニットを含む。
【0073】
[074] いくつかの実施形態では、PEGポリマーなどのグリコールポリマーは、その分子量(例えば、g/molで測定されたもの)によって記載されている。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーは、PEG 400(例えば、400ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 500(例えば、500ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 1000(例えば、1000ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 3500(例えば、3500ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 4000(例えば、4000ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 10,000(例えば、10,000ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 50,000(例えば、50,000ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、PEG 100,000(例えば、100,000ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)、又はPEG 1,000,000(例えば、1,000,000ダルトンの平均分子量を有するPEGポリマー)である。
【0074】
[075] PEGなどのグリコールポリマーの幾何学的形状(例えば、構造)は、変動し得る。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーは、直鎖ポリマー(例えば、直鎖PEG)である。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーは、分枝ポリマー(例えば、「スター(star)PEG」などの分枝PEG)である。いくつかの実施形態では、グリコールポリマーは、櫛状(comb)PEG(例えば、複数のPEG鎖がポリマー骨格に接ぎ合わされたもの)である。
【0075】
[076] 組成物中の1種以上のグリコールポリマー(例えば、PEG)の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%(w/w)~約15%(w/w)のグリコールポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、又は5.0%(w/w)のグリコールポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約10%、11%、12%、13%、14%、又は15%(w/w)のグリコールポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、最大で15%~20%(w/w)(例えば、最大で15%、16%、17%、18%、19%、又は20%(w/w))のグリコールポリマーを含む。
【0076】
[077] いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上のグリコサミノグリカン、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又はそれ以上のグリコサミノグリカンを含む。一般に、グリコサミノグリカンは、2つ以上の反復する二糖サブユニット(例えば、ポリマーサブユニット)、例えばアミノ糖及びウロン糖(uronic sugar)(例えば、グルクロン酸、イズロン酸)又はガラクトースを含む、長鎖の枝分かれしていない多糖である。グリコサミノグリカンの例としては、ヘパリン(Hep)/ヘパリン硫酸(HS)、コンドロイチン硫酸(CS)/デルマタン硫酸(DS)、及びヒアルロン酸(HA)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、グリコサミノグリカンの少なくとも1つは、ヒアルロン酸(HA)である。
【0077】
[078] ヒアルロン酸(HA)の、ポリマーサブユニットの数、したがって分子量(例えば、重量平均分子量)は、変動し得る。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸(HA)は、約5,000~20,000,000ダルトンの分子量を含む。いくつかの実施形態では、HA中の二糖ポリマーサブユニットの数は、約2個のポリマーサブユニット~約50,000個のポリマーサブユニット(例えば、2~50,000(端値を含む)のいずれかの整数)の範囲である。
【0078】
[079] 組成物中の1種以上のグリコサミノグリカンの量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%(w/w)~約5%(w/w)のグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、又は5.0%(w/w)のグリコサミノグリカンを含む。
【0079】
[080] いくつかの実施形態では、本開示によって記載される薬物送達組成物は、水を含む。組成物中の水の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%(w/w)の水を含む。
【0080】
生物活性剤
[081] 本開示によって記載される組成物は、1種以上の生物活性剤を含むことができる。生物活性剤の例としては、抗微生物剤(例えば、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤など)、細胞傷害性薬剤、抗癌剤、フリーラジカルスカベンジャー、抗酸化剤、受容体のリガンド(例えば、細胞シグナル伝達を誘導又は阻害する分子など)、などが挙げられる。生物活性剤は、小分子(例えば、化学物質)、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸(例えば、DNA、RNAなど)、又は生物活性抽出物であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20種の生物活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、20種を超える生物活性剤を含む。
【0081】
[082] いくつかの実施形態では、生物活性剤は、抗細菌剤、抗ウイルス剤、又は抗寄生虫剤などの抗微生物剤である。一般に、抗微生物剤は、小分子(例えば、化学物質)、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、核酸(例えば、DNA、RNAなど)であり得る。抗微生物剤の例としては、限定はされないが、細菌及び真菌由来の小分子(例えば、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾールなど)、植物由来の小分子(例えば、タンニン、フラボン、フェノール類、アルカロイドなど)、及び抗微生物ペプチド(例えば、マキサミン(maxamin)、ダーミシジン(dermicidin)、メクロピン(mecropin)、アンドロピン(andropin)など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、生物活性剤は、植物由来の抗微生物剤、例えばバイカリン(例えば、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)若しくはブルースカルキャップ(Scutellaria lateriflora)から抽出されたもの)又はアンドログラホリド(例えば、アンドログラフィス・パニクラータ(Andrographis paniculata)から抽出されたもの)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、化学物質又は元素の抗微生物剤、例えば銀(例えば、スルファジアジン銀などの銀系化合物)又は亜鉛(例えば、酸化亜鉛などの亜鉛系化合物)を欠く。
【0082】
[083] いくつかの実施形態では、生物活性剤は、細胞傷害性薬剤である。細胞傷害性薬剤の例としては、限定はされないが、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、ニトロソウレアなど)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)、タキサン(例えば、タキソール、パクリタキセルなど)、HDAC阻害剤、ヌクレオチド類似体(例えば、ゲムシタビンなど)、白金系化合物(例えば、シスプラチンなど)、及びビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンなど)が挙げられる。
【0083】
[084] いくつかの実施形態では、生物活性剤は、抗酸化剤又はフリーラジカルスカベンジャーである。抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャーの例としては、限定はされないが、ある種の酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ-カタラーゼなど)、カロテノイド(例えば、アスタキサンチン、ベータ-カロテン、トコフェロールなど)、フェノール化合物(例えば、植物由来のポリフェノール、例えばアントシアニン、フラバン-3-オール(カテキン)、フラボノール(例えば、ケルセチン及びルチン)、ケイ皮酸(例えば、S-グルタチオニルカフタル酸)、コーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)、カルコン、イソフラボノイド(例えば、7-O-メチルベスチトール、メディカルピン、及び3,4,2’,3’-テトラヒドロカルコン)などが挙げられる。
【0084】
[085] いくつかの実施形態では、生物活性剤は、受容体のリガンドなどの細胞シグナル伝達分子である。細胞シグナル伝達分子の例としては、限定はされないが、神経伝達物質(例えば、GABA、グルタミン酸、アセチルコリン、セロトニン、ドパミンなど)、サイトカイン(例えば、IL-4、IL-15、TNFα、IFNγなど)、ホルモン(例えば、エストロゲンなど)、小分子(例えば、一酸化窒素など)、ある種のペプチド(例えば、神経ペプチド、成長因子など)などが挙げられる。
【0085】
[086] 本明細書で使用する場合、「生物活性抽出物」は、有機起源、例えば、1種以上の植物又は植物産物、動物又は動物産物、昆虫又は昆虫産物、微生物又は微生物産物などから抽出された(例えば、単離された)、1種以上の生物活性剤を含む組成物を指す。一般に、生物活性抽出物は、あらゆる好適な方法、例えば、溶媒による抽出方法(例えば、アルコール抽出、炭化水素抽出など)、冷浸抽出方法、超音波抽出(例えば、超音波処理)、マイクロ波アシスト抽出(MAE)などによって産生することができる。しかし、当業者は、適切な抽出方法が、生物活性剤が単離されることが求められる材料のタイプに依存することとなることを理解することとなり、したがって、抽出方法を選択することとなる。
【0086】
[087] 組成物中の生物活性剤又は抽出物の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物中の生物活性剤又は生物活性抽出物の濃度は、組成物の総重量の、約0%w/w(absent)~約20%w/w(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)の範囲である。
【0087】
生物活性のあるプロポリス抽出物
[088] いくつかの実施形態では、組成物は、プロポリスから得られる生物活性抽出物を含む。「プロポリス」は、一般に、ミツロウ、脂肪酸、花粉、芳香油、及びある種の生物活性分子(例えば、フラボノイド、イソフラビノイド(isoflavinoid)、カルコン、プテロカルパンなど)を含めた様々な化学物質及び分子を含む、ミツバチ(例えば、ミツバチ属(Apis)、及び他の種)によって産生される樹脂性材料を指す。プロポリスは、北米及び中米(例えば、米国、カナダ、メキシコ、キューバなど)、南米(例えば、ブラジル、コロンビア、チリなど、アジア(例えば、中国)、及びニュージーランドを含めた世界のいくつかの地域において見られる。いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物は、少なくとも1種のブラジル産プロポリス種を含むブレンド(例えば、混合物)から得られる。生物活性のあるプロポリス抽出物は、あらゆる好適な方法、例えば、エタノール/グリコール抽出又は超臨界CO抽出によって産生することができる。
【0088】
[089] プロポリス起源の特徴は、変動し得る。例えば、ブラジル産プロポリスは、元々、原産地及び/又は生理化学的特性によって分類され、限定はされないが、ブラジル南部グループ(グループ3)の5種、ブラジル南東部グループ(グループ12)の1種、及びブラジル北東部グループ(グループ6)の6種を含めて、少なくとも12種のプロポリス起源が特定された。しかし、植物学的起源によって分類される場合、同じ種プロポリスについて、ブラジル産プロポリスの3つの起源:ポプラ(例えば、ポプラ属(Populus)の種)、バッカリス(例えば、アレクリン(Baccharis dracunculifolia)などのバッカリス属(Baccharis)の種など)、及びブッシュミント(bushmint)(例えば、ヒプティス・ディバリカタ(Hyptis divaricata)などのイガニガクサ属(Hyptis)の種)が特定された。プロポリスのさらなる起源も公知であり、例えば、Park et al.(2002)J.Agric.Food Chem 50:2502-2506、及びDezmirean et al.(2017)J.Apicultural Res 56(5):588-597によって記載されている。いくつかの実施形態では、プロポリスは、その色によって特徴付けられる(例えば、レッドプロポリス、グリーンプロポリス、ブラウンプロポリスなど)。
【0089】
[090] 「レッドプロポリス」は、ブラジルでは「ホエザルのしっぽ(rabo-de-bugio)」として一般に知られているダルベルギア・エカストフィラム(Dalbergia ecastophyllum)(D.ecastophyllum)(L)Taub.(マメ科(Fabaceae))などの植物に植物学的に由来するプロポリスを指す。いくつかの実施形態では、レッドプロポリスは、ブラジル、キューバ、メキシコ、中国、及びナイジェリアから選択される地域から入手される。レッドプロポリスの起源は、例えば、Corbellini Rufatto et al.(2017)Asian Pacific Journal of Tropical Biomedicine KTy.591-598によって記載されている。
【0090】
[091] 「グリーンプロポリス」は、例えばLopes Machado et al,(2012)Evid Based Complement Alternat Med.2012:157652によって記載された、アレクリン・ド・カンポ(Baccharis dracunculifolia DC)(キク科(Asteraceae))などの植物に植物学的に由来するプロポリスを指す。いくつかの実施形態では、グリーンプロポリスは、ブラジル(例えば、ブラジル南東部、例えば、バイーア州(Bahia state)、ミナスジェライス州(Minas Gerais state)、サンパウロ州(Sao Paulo state)、又はパラナ州(Parana state))から入手される。
【0091】
[092] 「ブラウンプロポリス」は、ポプラ属(Populus)の種(ギンドロ(P.alba)、クロヤマナラシ(P.nigra)、ヨーロッパヤマナラシ(P.tremula))又はクルシア属(Clusia)の種などの植物に植物学的に由来するプロポリスを指す。いくつかの実施形態では、ブラウンプロポリスは、ブラジル、ベネズエラ、キューバ、及び欧州から選択される地域から入手される。
【0092】
[093] 生物活性のあるプロポリス抽出物が産生される混合物中の各種類のプロポリス比率は、変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、プロポリス混合物は、グリーンプロポリスとブラウンプロポリスを、約9:1~約1:9の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、2:1、2:3、2:4、2:5、2:6、2:7、2:8、2:9、3:1、3:2、3:4、3:5、3:6、3:7、3:8、3:9、4:1、4:2、4:3、4:5、4:6、4:7、4:8、4:9、5:1、5:2、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:1、6:2、6:3、6:4、6:5、6:7、6:8、6:9、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、8:1、8:2、8:3、8:4、8:5、8:6、8:7、8:9、9:8、9:7、9:6、9:5、9:4、9:3、9:2、9:1など)で含む。いくつかの実施形態では、プロポリス混合物は、グリーンプロポリスとレッドプロポリスを、約9:1~約1:9の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、2:1、2:3、2:4、2:5、2:6、2:7、2:8、2:9、3:1、3:2、3:4、3:5、3:6、3:7、3:8、3:9、4:1、4:2、4:3、4:5、4:6、4:7、4:8、4:9、5:1、5:2、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:1、6:2、6:3、6:4、6:5、6:7、6:8、6:9、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、8:1、8:2、8:3、8:4、8:5、8:6、8:7、8:9、9:8、9:7、9:6、9:5、9:4、9:3、9:2、9:1など)で含む。いくつかの実施形態では、プロポリス混合物は、ブラウンプロポリスとレッドプロポリスを、約9:1~約1:9の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、2:1、2:3、2:4、2:5、2:6、2:7、2:8、2:9、3:1、3:2、3:4、3:5、3:6、3:7、3:8、3:9、4:1、4:2、4:3、4:5、4:6、4:7、4:8、4:9、5:1、5:2、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:1、6:2、6:3、6:4、6:5、6:7、6:8、6:9、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、8:1、8:2、8:3、8:4、8:5、8:6、8:7、8:9、9:8、9:7、9:6、9:5、9:4、9:3、9:2、9:1、など)で含む。いくつかの実施形態では、プロポリス混合物は、グリーンプロポリスとブラウンプロポリスとレッドプロポリスを、約9:1:1~約1:9:1、~約1:1:9の範囲の比率(例えば、1:1:1、1:2:1、2:1:1、1:1:2など)で含む。
【0093】
[094] 本開示の組成物中の生物活性のあるプロポリス抽出物の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物(例えば、薬物送達組成物)は、約0.1%w/w~約20%w/wの生物活性のあるプロポリス抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%w/w~約4%w/wの生物活性のあるプロポリス抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約1%~約5%w/wの生物活性のあるプロポリス抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約3%~約7%w/wの生物活性のあるプロポリス抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約5%~約20%w/wの生物活性のあるプロポリス抽出物を含む。
【0094】
[095] プロポリス(例えば、1つ以上のプロポリスの種類、例えばブラウンプロポリス、グリーンプロポリス、レッドプロポリス、又はそのあらゆる組み合わせのブレンド)から得られる抽出物は、様々な生物活性剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロポリスから得られる生物活性抽出物は、次のものの少なくとも1つを含む:脂肪酸及びフェノール酸及びエステル、置換されたフェノールエステル、フラボノイド(例えば、フラボン、フラバノン、フラボノール、ジヒドロフラボノール、カルコンなど)、モノ-、セスキ-、ジ-、及びトリテルペン、ステロイド、芳香族アルデヒド及びアルコール、ナフタレン及びスチルベン誘導体、カフェオイルキナ酸誘導体、リグナン、クマリン、プレニル化及びクマリン誘導体。プロポリスから得られる生物活性分子は、当技術分野で公知であり、例えば、Schindler Machado et al.(2016)Evid Based Complement Alternat Med.2016:6057650、及びTrusheva et al.(2006)Evid Based Complement Alternat Med.3(2):249-254、及びHuang et al.(2014)Molecules 19:19610-19632によって記載されている。
【0095】
[096] 本開示は、一つには、1種以上(例えば、1、2、3、4、5、6種など)の抗酸化剤を含む、生物活性のあるプロポリス抽出物に基づく。いくつかの実施形態では、1種以上の抗酸化剤は、フラボノイド(例えば、イソフラボノイドなど)である。いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物中のフラボノイド生物活性物質は、放射線を受けた細胞成分のDNA損傷によって産生される活性酸素種(ROS)の除去を促進し、口腔粘膜細胞外マトリックス分解の低下を引き起こす。いくつかの実施形態では、フラボノイドは、生物活性のあるプロポリス抽出物中に、重量によって測定される場合に、約100μg/mL~約500μg/mL(例えば、約100μg/mL、約150μg/mL、約200μg/mL、約250μg/mL、約300μg/mL、約350μg/mL、約400μg/mL、約450μg/mLなど)の範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、フラボノイドは、生物活性のあるプロポリス抽出物中に、重量によって測定される場合に、約100μg/mL~約200μg/mLの範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、フラボノイドは、生物活性のあるプロポリス抽出物中に、重量によって測定される場合に約150μg/mL~約300μg/mLの範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、フラボノイドは、生物活性のあるプロポリス抽出物中に、重量によって測定される場合に、約250μg/mL~約400μg/mLの範囲の濃度で存在する。
【0096】
[097] いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物は、1種以上の脂質、1種以上のミツロウ、又は1種以上の脂質と1種以上のミツロウの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物の総脂質及びミツロウ濃度は、重量によって測定される場合に、約25μg/mL~約750μg/mL(例えば、約25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、350μg/mL、500μg/mL、650μg/mLなど)の範囲である。いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物の総脂質及びミツロウ濃度は、重量によって測定される場合に、約25μg/mL~約100μg/mLの範囲である。いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物の総脂質及びミツロウ濃度は、重量によって測定される場合に、約75μg/mL~約250μg/mLの範囲である。いくつかの実施形態では、生物活性のあるプロポリス抽出物の総脂質及びミツロウ濃度は、重量によって測定される場合に、約300μg/mL~約550μg/mLの範囲である。
【0097】
生物活性のある海藻抽出物
[099] いくつかの実施形態では、組成物は、海藻から得られた生物活性抽出物を含む。いくつかの実施形態では、この生物活性抽出物は、海藻を乾燥及び粉砕することによって生成された粉末である。海藻抽出物(例えば、粉末)を生成する方法は、公知であり、例えば、Costa et al.(2010)Biomedicine and Pharmacology 64:21-28によって記載されている。
【0098】
[100] 海藻は、一般に、4つのファミリー:紅藻綱(rhodonphyceae)(紅藻)、褐藻綱(phaeophyceae)(褐藻)、藍藻綱(cyanophaeceae)(藍藻)、及び緑藻綱(chlorophyceae)(緑藻)に分類される。海藻の識別及び分類は、例えば、AlgaeBase(Guiry,M.D.&Guiry,G.M.2018.AlgaeBase.World-wide electronic publication,National University of Ireland、Galway;www.algaebase.org)によって記載されている。
【0099】
[101] いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、1つ以上の種類の紅藻を含む。紅藻の例としては、限定はされないが、紅藻植物門(Rhodophyta)の種(例えば、紅藻植物門(Rhodophyta)グラシラリア・カウダータ(graciliara caudata)など)、アマノリ属(Porphyra)の種(例えば、タンシサイ(Porphyra haitanensis)など)、オバクサ属(Pterocladiella)の種(例えば、カタオバクサ(Pterocladiella capillacea)など)、カエリナミ属(Osmundaria)の種(例えば、カエリナミ(Osmundaria obtusiloba)など)、テングサ属(Gelidium)の種(例えば、ゲリジウム・カーチラギネウム(Gelidium cartilagenium)など)、ナミノハナ属(Chondrococcus)の種(例えば、ホソバナミノハナ(Chondrococcus hornemannii)など)、及びイバラノリ属(Hypnea)の種(例えば、カギイバラノリ(Hypnea musciformi)など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、タンシサイ(Porphyra haitanensis)を含む。
【0100】
[102] いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、1つ以上の種類の褐藻を含む。褐藻の例としては、限定はされないが、コンブ属(Laminaria)の種(例えば、マコンブ(Laminaria japonica)など)、ホンダワラ属(Sargassum)の種(例えば、サルガッスム・ウィグッチイ(Sargassum wightii)、サルガッスム・フィリペンデュラ(Sargassum filipendula)など)、コモングサ属(Spatoglossum)の種(例えば、スパトグロッサム・シュロエデリ(Spatoglossum schroderi)など)、ウミウチワ属(Padina)の種(例えば、パディナ・テトラストロマティカ(Padina tetrastromatica)など)、アミジグサ属(Dictyota)の種(例えば、ヨレアミジ(Dictyota cervicornis)、ディクティオタ・メンストルアリス(Dictyota menstrualis)、ディクティオタ・ミルテンシイ(Dictyota myrtensii)など)、ヤハズグサ属(Dictyopteris)の種(例えば、ディクトヨプテリス・デリカトゥラ(Dictyopteris delicatula)など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、マコンブ(Laminaria japonica)を含む。
【0101】
[103] いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、1つ以上の種類の緑藻を含む。緑藻の例としては、限定はされないが、アオサ属(Ulva)の種(例えば、オオバアオサ(Ulva latuca)、ナガアオサ(Ulva arasakii)、ウルバ・アーモリカナ(Ulva armoricana)、タレツアオノリ(Ulva clathrata)、ボタンアオサ(Ulva conglobate)、リボンアオサ(Ulva fasciata)、アナアオサ(Ulva pertusa)、アミアオサ(Ulva reticulate)、ウルバ・リジダ(Ulva rigida)、ウルバ・ロタンダタ(Ulva rotundata)など)、アオノリ属(Enteromorpha)の種(例えば、ウスバアオノリ(Enteromorpha linza)、タレツアオノリ(Enteromorpha clathrata)、ヒラアオノリ(Enteromorpha compressa)、ボウアオノリ(Enteromorpha intestinalis)、スジアオノリ(Enteromorphaprolifera)など)、ヒトエグサ属(Monostroma)の種(例えば、ヒロハノヒトエグサ(Monostroma latissimum)、ヒトエグサ(Monostroma nitidum)、エゾヒトエグサ(Monostroma angicava)など)、ミル属(Codium)の種(例えば、)、イワヅタ属(Caulerpa)の種(例えば、ヘライワヅタ(Caulerpa brachyous)、ビャクシンヅタ(Caulerpa cupressoides)、クビレヅタ(Caulerpa lentillifera)、カウレルパ・プロリフェラ(Caulerpa prolifera)、センナリヅタ(Caulerpa racemosa)、タカノハヅタ(Caulerpa sertularioides)など)、ハネモ属(Bryopsis)の種(例えば、ハネモ(Bryopsis plumose)など)、サボテングサ属(Halimeda)の種(例えば、ハリメダ・モニル(Halimeda monile)など)、カプサアオノリ属(Capsosiphon)の種(例えば、カプサアオノリ(Capsosiphon fulvescens)など)、及びジュズモ属(Chaetomorpha)の種(例えば、エナガジュズモ(Chaetomorpha antennenina)など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、オオバアオサ(Ulva latuca)を含む。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、ウスバアオノリ(Enteromorpha linza)を含む。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、オオバアオサ(Ulva latuca)及びウスバアオノリ(Enteromorpha linza)を含む。
【0102】
[104] いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、1つ以上の種類の藍藻を含む。藍藻の例としては、限定はされないが、ミクロキスティス属(Microcystis)の種(例えば、ミクロキスティス・エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)など)、ノストック属(Nostoc)の種(例えば、ノストック・リンキア(Nostoc linckia)、ノストック・スポンギエフォルム(Nostoc spongiaeform)など)、リングビア属(Lyngbya)の種(例えば、オオクダモ(Lyngbya majuscule)、リングビア・ボウイルロニ(Lyngbya bouillonii)、リングビア・ソルディダ(Lyngbya sordida)など)、タバクダモ属(Symploca)の種、カロトリクス属(Calothrix)の種などが挙げられる。
【0103】
[105] 生物活性抽出物は、海藻種、例えば少なくとも1種の緑色海藻種(例えば、2、3、4、5種、又はそれ以上の緑藻種)、少なくとも1種の紅色海藻種(例えば、2、3、4、5種、又はそれ以上の紅藻種)、及び/又は少なくとも1種の褐色海藻種(例えば、2、3、4、5種、又はそれ以上の褐藻種)の組み合わせを含むことができる。例えば、生物活性のある海藻抽出物は、次の種:ウスバアオノリ(Enteromorpha linza)、オオバアオサ(Ulva lactula)、タンシサイ(Porphyra haitanensis)、及びマコンブ(Laminaria japonica)を含むことができる。いくつかの実施形態では、海藻抽出物は、紅藻、緑藻、褐藻、及び藍藻などの1つ以上の分類の海藻種を含まない(例えば、欠く)。いくつかの実施形態では、海藻抽出物は、藍藻を欠く。
【0104】
[106] 生物活性のある海藻抽出物が生成される混合物中の各種類の海藻の比率は、変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、混合物は、緑色海藻と褐色海藻を、約5:1~約1:5の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4など)で含む。いくつかの実施形態では、混合物は、緑藻と紅藻を、約5:1~約1:5の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4など)で含む。いくつかの実施形態では、混合物は、褐藻と紅藻を、約5:1~約1:5の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4など)で含む。いくつかの実施形態では、プロポリス混合物は、緑藻と褐藻と紅藻を、約5:1:1~約1:5:1、~約1:1:5の範囲の比率(例えば、1:1:1、1:2:1、2:1:1、1:1:2、など)で含む。
【0105】
[107] 本開示の組成物中の生物活性のある海藻抽出物の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物(例えば、薬物送達組成物)は、約0.1%w/w~約20%w/wの生物活性のある海藻抽出物を含む。海藻抽出物の量は、組成物中の各海藻種抽出物の重量(パーセント)として、又は組成物中の生物活性のある海藻抽出物の総量として表すことができる。例えば、組成物は、20%w/wの全部合わせた生物活性のある海藻抽出物を含む(4つの異なる種類の海藻種抽出物が5%w/wを占める)ことができる。
【0106】
[108] いくつかの実施形態では、組成物は、約0.1%w/w~約5%w/wの生物活性のある海藻抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約1%、約2%、約3%、約4%、又は約5%w/wの生物活性のある海藻抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約3%~約7%w/wの生物活性のある海藻抽出物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約5%~約20%w/wの生物活性のある海藻抽出物を含む。
【0107】
[109] 海藻(例えば、1種以上の海藻種、例えば、2、3、4種、又はそれ以上の海藻種のブレンド)から得られる抽出物は、様々な生物活性剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、以下のものの1種以上を含む:硫酸化多糖、フロロタンニン、キサンチン(例えば、フコキサンチン、アスタキサンチンなど)、フロログルシノール、ポリフェノール、カロテノイド、及びセスキテルペン。
【0108】
[110] 本開示は、一つには、硫酸化多糖(例えば、非動物性硫酸化多糖)を含む、生物活性のある海藻抽出物に基づく。硫酸化多糖は、一般に、それが得られる海藻の分類(例えば、褐色、緑色、紅色)に基づいて分類される、アニオン性の炭水化物ポリマーである。典型的には、褐色海藻(例えば、褐藻綱(phaeophyceae))は、硫酸化フカン又はフコイダン(これは、フコース、キシロース、ウロン酸、及び/又はガラクトース糖を含むことができる)を産生する。紅色海藻(例えば、紅藻綱(rhodonphyceae))は、一般に、ガラクタン及びカラギーナン(これは、硫酸化ガラクトース及び3,6-アンヒドロガラクトース糖を含むことができる)を産生する。緑色海藻は、ウルバン(これは、グルクロン酸、イズロン酸、又はキシロースに連結された硫酸化ラムノースを含む)を産生する。海藻硫酸化多糖の分類は、公知であり、例えば、Pater(2012)3 Biotech 2(3):171-185によって記載されている。
【0109】
[111] 硫酸化多糖の生物活性特性は、変動し得る。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、抗酸化活性を有する1種以上の硫酸化多糖を含む。抗酸化性の硫酸化多糖の例としては、限定はされないが、ミル属(Codia)、アオサ属(Ulva)、及びアオノリ属(Enteromorpha)から抽出されたウルバン、イワヅタ属(Caulerpa)から抽出されたガラクタン、マコンブ(Laminaria japonicum)から抽出されたフカン及びフコダン(fucodan)、並びにタンシサイ(Porphyra haitanensis)由来のガラクタン及びカラギーナンが挙げられる。いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、抗凝血活性、免疫調節活性、抗腫瘍活性、抗ウイルス活性、及び抗侵害受容活性から選択される生物活性を有する1種以上の硫酸化多糖を含む。海藻硫酸化多糖の抽出及び機能的特性化の方法は、公知であり、例えば、それぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれるCosta et al.(2010 Biomedicine and Pharmacotherapy 64:21-28;Zhang et al.(2010)Carbohydrate Polymers(2010)82:118-121;及びWang et al.(2014)Mar.Drugs 12:4984-5020によって記載されている。
【0110】
[112] いくつかの実施形態では、生物活性のある海藻抽出物は、ウルバン、カラギーナン、及びフカン、又は前述のものの組み合わせから選択される1種以上の硫酸化多糖を含む。いくつかの実施形態では、生物活性抽出物は、1種以上のウルバン、例えば、オオバアオサ(Ulva latuca)及び/又はウスバアオノリ(Enteromorpha linza)から得られたウルバンを含む。いくつかの実施形態では、生物活性抽出物は、1種以上のガラクタン及び/又は1種以上のカラギーナン、例えば、タンシサイ(Porphyra haitanensis)から得られたガラクタン及び/又はカラギーナンを含む。いくつかの実施形態では、生物活性抽出物は、1種以上のフカン及び/又はフコイダン、例えば、マコンブ(Laminaria japonica)から得られた1種以上のフカン及び/又はフコイダンを含む。
【0111】
ニンジン由来の生物活性抽出物
[113] いくつかの実施形態では、本開示は、組織再生を促進するのに有用である分子の組み合わせを含む生物活性抽出物(例えば、組織再生生物活性抽出物)に関する。いくつかの実施形態では、組織再生生物活性抽出物は、ニンジンから得られた1種以上の生物活性分子(例えば、カロテノイドなど)、1種以上のビタミンA誘導体、1種以上の足場分子、又は前述のもののいずれかの組み合わせを含む。
【0112】
[114] いくつかの実施形態では、1種以上の生物活性剤は、ニンジン(例えば、ノラニンジン(Dacus carota)、又はその栽培品種若しくは変種)から得られる(例えば、抽出される)。一般に、ニンジンは、様々な生物活性分子、例えば、カロテノイド及びフェノール化合物を含む。ニンジンから抽出可能なカロテノイドの例としては、限定はされないが、α-カロテン及びβ-カロテンが挙げられる。ニンジンから抽出可能なフェノール化合物の例としては、クロロゲン酸、ヒドロキシケイ皮酸誘導体、フェルラ酸、ジカフェオイルキナ酸、及びアントシアニンが挙げられる。いくつかの実施形態では、1種以上の生物活性分子が、「ニンジン油」の形態で、ニンジンから抽出される。これは、典型的には、溶媒による又は圧力による抽出方法、例えばニンジン種子及び/又は根から脂質及び生体分子を低温圧搾すること;ニンジン種子及び/又は根からの化合物の中性油(例えば、鉱油)による抽出;ニンジン種子及び/又は根からの生体分子のアルコールによる抽出;超臨界二酸化炭素抽出方法などによって生成される。生物活性分子を抽出する方法はまた、例えば、米国特許第7,141,083号、米国特許出願公開第2008-0233238号、及び日本特許第JPH0676591号によって記載されている。
【0113】
[115] いくつかの実施形態では、組織再生生物活性抽出物は、1種以上のビタミンB複合体(例えば、ビタミンB複合体の1つ以上のメンバー)を含む。ビタミンB複合体は、一般に、ビタミンCを除くすべての必須の水溶性ビタミンを含む複合体を指す。いくつかの実施形態では、ビタミンB複合体は、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン、葉酸、及びコバラミン(ビタミンB12)を含む。いくつかの実施形態では、組織再生生物活性抽出物は、パントテン酸、又はその誘導体、類似体、若しくは塩を含む。パントテン酸誘導体及び類似体の例としては、パントテノール(pantothenol)及びデクスパンテノールが挙げられる。いくつかの実施形態では、1種以上のビタミンB複合体は、パントテン酸の誘導体、又はその誘導体若しくは類似体である。いくつかの実施形態では、ビタミンB複合体は、デクスパンテノールを含む。
【0114】
[116] ニンジンに由来する組成物中の生物活性抽出物の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、ニンジンから得られる生物活性抽出物(例えば、ニンジン油抽出物)の量は、約1%(w/w)~約5%(w/w)、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、又は約5%w/wの範囲である。いくつかの実施形態では、組織再生生物活性抽出物は、ニンジンに由来する生物活性抽出物を含まない(例えば、欠く)。いくつかの実施形態では、組織再生生物活性抽出物は、アロエベラ(Aloe vera)、例えばアロエベラ(Aloe vera)抽出物をさらに含む。
【0115】
[117] 本開示は、一つには、1種以上の足場分子を含む組織再生生物活性抽出物に基づく。本明細書で使用する場合、「足場分子」は、細胞(例えば、間葉系幹細胞などの幹細胞)が接着することができ、且つ細胞付着、成長、及び分化を促進する、基材を提供する、タンパク質又はポリマーなどの分子である。いくつかの実施形態では、1種以上の足場分子は、タンパク質(例えば、動物タンパク質、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質など)である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、コラーゲン、アルブミン、又はその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、1種以上の血清タンパク質、例えば、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン)、魚類血清タンパク質、ブタ血清タンパク質などを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種、又はそれ以上の足場分子を含む。
【0116】
[118] いくつかの実施形態では、足場分子は、ポリマー、例えば多糖ポリマー、例えばヒアルロン酸、キトサン、又はアルギン酸である。いくつかの実施形態では、多糖ポリマーは、ヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンの繰り返しサブユニットを含むグリコサミノグリカンポリマーである。典型的には、ヒアルロン酸は、その分子量に従って分類される。低分子量のヒアルロン酸(MWHA)は、一般に、100kDa未満の分子量を有する。中分子量のMWHAは、一般に、100~300kDaの分子量を有する。高分子量のMWHAは、一般に、300kDaを超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、足場分子は、中分子量のMWHAを含む。
【0117】
[119] 組成物中の足場分子の総量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、足場分子の量は、約0.1%(w/w)~約10%(w/w)、例えば、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20%w/wの範囲である。
【0118】
[120] 組織再生生物活性抽出物中の生物活性分子と足場分子との比率は、変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、生物活性分子と足場分子を、約10:1~約1:10の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10 2:1、2:3、2:4、2:5、2:6、2:7、2:8、2:9、3:1、3:2、3:4、3:5、3:6、3:7、3:8、3:9、4:1、4:2、4:3、4:5、4:6、4:7、4:8、4:9、5:1、5:2、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:1、6:2、6:3、6:4、6:5、6:7、6:8、6:9、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、8:1、8:2、8:3、8:4、8:5、8:6、8:7、8:9、9:8、9:7、9:6、9:5、9:4、9:3、9:2、9:1、10:1など)で含む。
【0119】
レモンバーム由来の生物活性抽出物
[121] いくつかの態様では、本開示は、レモンバーム(Melissa officinalis)(レモンバーム(Lemon balm)とも称される)から得られる生物活性抽出物に関する。レモンバームは、シソ科(mint family)(シソ科(Lamiaceae))の植物メンバーである。レモンバームは、欧州及び中央アジアに自生するが、一般に、世界中で栽培することができる。レモンバーム(M.officinalis)の栽培品種としては、レモンバーム・シトロネラ(M.officinalis citronella)、レモンバーム・レモネラ(M.officinalis lemonella)、レモンバーム・クエドリンバーガー(M.officinalis Quedlinburger)、レモンバーム・ライム(M.officinalis lime)、レモンバーム・ヴァリエガタ(M.officinalis variegata)、レモンバーム・アウレア(M.officinalis aurea)、及びレモンバーム・クエドリンバーガー・ニーデリーゲンデ(M.officinalis Quedlinburger Niederliegende)が挙げられる。
【0120】
[122] レモンバームによって産生される生物活性分子には、限定はされないが、ポリフェノール化合物、オイゲノール、タンニン、及びテルペン(例えば、モノテルペン、トリテルペン、テルペノイドなど)、例えば(+)-シトロネラール、1-オクテン-3-オール、10-α-カジノール、3-オクタノール、3-オクタノン、α-クベベン、α-フムレン、β-ブルボネン、コーヒー酸、カリオフィレン、カリオフィレンオキシド、カテキン、クロロゲン酸、シス-3-ヘキセノール、シス-オシメン、シトラールA、シトラールB、コパエン、δ-カジネン、酢酸オイゲニル、γ-カジネン、ゲラニアール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ゲルマクレンD、イソゲラニアール、リナロール、ルテオリン-7-グルコシド、メチルヘプテノン、ネラール、ネロール、安息香酸オクチル、オレアノール酸、ポモール酸((1R)-ヒドロキシウルソール酸)、プロトカテク酸、ラムナジン、ロスマリン酸、スタキオース、コハク酸、チモール、トランス-オシメン、ウルソール酸、及びハルミンが含まれる。
【0121】
[123] いくつかの実施形態では、生物活性分子は、レモンバームの葉及び茎内で産生される。典型的には、生物活性分子は、レモンバームの葉から、「精油」(「揮発性の油」とも称される)の形態で単離される(例えば、抽出される)。レモンバームから生物活性化合物を抽出する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、水抽出(例えば、Nolkemper et al.(2006)Planta Med.72(15):1378-1382によって記載されているもの)による、又は圧力による抽出(例えば、Dastmalchi et al.(2008)LWT-Food Science and Technology,41(3):391-400によって記載されているもの)によるものである。
【0122】
[124] いくつかの実施形態では、レモンバーム(Melissa officinalis)から得られる生物活性抽出物は、1種以上のモノテルペン又はモノテルペノイド、例えば、シトロネラール、ネラール、及び/又はゲラニアールを含む。いくつかの実施形態では、レモンバーム(Melissa officinalis)から得られる生物活性抽出物は、ロスマリン酸を含む。いくつかの実施形態では、レモンバーム(Melissa officinalis)の生物活性抽出物中に存在するテルペン及びロスマリン酸は、抗ウイルス(例えば、抗ヘルペス又は抗HIVなどの抗レトロウイルス)活性を有する。レモンバーム(Melissa officinalis)から得られる生物活性抽出物の抗ウイルス活性は、例えば、Allahverdiyev et al.(2004)Phytomedicine 11(7-8):657-61、及びGeuenich et al.(2008)Retrovirology 5:27によって記載されている。
【0123】
[125] いくつかの実施形態では、本開示によって記載された組成物は、レモンバーム(Melissa officinalis)から得られた生物活性抽出物と、1種以上の抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ドコサノール、アバカビル、シドホビル、エファビレンツ、エンテカビル、イミキモド、ロピナビル、エムトリシタビン、ラミブジン、テノホビル、ジドブジン、ドラビリン、エトラビン(etravine)、ネビラピン、リルピビリン、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、サスキナビル(sasquinavir)、チプラニビル(tipranivir)、エフビルチド(efuviritide)、マラビロク、ラルテラビル(ralteravir)、イバルズマブ(ibalzumab)、コビシスタット、又はそのあらゆる組み合わせとを含む。
【0124】
[126] いくつかの実施形態では、レモンバーム(Melissa officinalis)から得られる生物活性抽出物を含む組成物は、1種以上のビタミンB複合体(例えば、ビタミンB複合体の1つ以上のメンバー)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ビタミンB複合体の1つ以上のメンバーは、コバラミン(例えば、ビタミンB12)である。いくつかの実施形態では、コバラミンは、メチル化(例えば、メチルコバラミン)又はシアン化(例えば、シアノコバラミン)されている。いくつかの実施形態では、組成物は、メチルコバラミンとシアノコバラミンの組み合わせを含む。いかなる特定の理論にも拘泥されることを望まないが、コバラミンは、いくつかの実施形態では、末梢神経修復を促進する及び神経障害性疼痛を軽減するのに有用である。
【0125】
[127] 組成物中のコバラミン(例えば、メチルコバラミン及び/又はシアノコバラミン)の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、組成物中のメチルコバラミンの量は、約0.1%(w/w)~約0.5%(w/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、又は約0.5%w/wの範囲である。いくつかの実施形態では、組成物中のシアノコバラミンの量は、約0.1%(w/w)~約2.%(w/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、又は約2.0%w/wの範囲である。
【0126】
[128] 組成物中のメチルコバラミンとシアノコバラミンとの比率は、変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、メチルコバラミンとシアノコバラミンを、約10:1~約1:10の範囲の比率(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10 2:1、2:3、2:4、2:5、2:6、2:7、2:8、2:9、3:1、3:2、3:4、3:5、3:6、3:7、3:8、3:9、4:1、4:2、4:3、4:5、4:6、4:7、4:8、4:9、5:1、5:2、5:3、5:4、5:6、5:7、5:8、5:9、6:1、6:2、6:3、6:4、6:5、6:7、6:8、6:9、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、7:8、7:9、8:1、8:2、8:3、8:4、8:5、8:6、8:7、8:9、9:8、9:7、9:6、9:5、9:4、9:3、9:2、9:1、10:1など)で含む。
【0127】
治療方法
[129] 本開示は、いくつかの態様では、細胞又は対象に組成物(例えば、治療用組成物)を送達するための方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物を投与する方法は、損傷を受けた組織又は損なわれた皮膚(例えば、損傷を受けた皮膚又は細胞)を伴うある種の疾患及び障害、例えば粘膜炎、潰瘍、創傷(例えば、外科的切開創など)、熱傷、並びにウイルス感染に起因する組織損傷(例えば、ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染に起因する末梢神経損傷、又はヘルペスウイルス2型(HSV-2)の感染、水痘感染に起因する水疱など)の治療に有用である。
【0128】
[130] 用語「治療」、「治療する」、及び「治療すること」は、本明細書に記載される「病的状況」(例えば、疾患、障害、若しくは状態、又はその1つ以上の徴候若しくは症状)を逆行させること、緩和させること、発症を遅らせること、又は進行を抑制することを指す。いくつかの実施形態では、治療は、1つ以上の徴候又は症状が発生した又は認められた後に施すことができる。他の実施形態では、治療は、疾患又は状態の徴候又は症状の非存在下で施すことができる。例えば、治療は、症状の発症の前に(例えば、症状の履歴を考慮して、及び/又は遺伝的若しくは他の易罹患性因子を考慮して)、罹りやすい個人に施すことができる。治療はまた、例えばヘルペスウイルスの反復感染を遅らせる又は予防するために、症状が回復した後に継続することもできる。
【0129】
[131] 本明細書に開示される場合、組成物は、あらゆる好適な経路によって投与することができる。例えば、有効量の組成物及び/又は他の治療薬を、所望される組織、例えば皮膚、粘膜組織、神経系組織、筋肉組織などに薬剤を送達するあらゆる様式によって、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、局所的に投与される。他の好適な投与経路には、限定はされないが、経口、非経口、静脈内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内、舌下、気管内、吸入、皮下、眼内、膣内、及び直腸内が含まれる。全身経路には、経口及び非経口が含まれる。
【0130】
[132] 経口投与については、組成物は、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、口腔洗浄液、ゲル、シロップ、泥状物、懸濁剤などの形態で投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、いくつかの実施形態では、感染症及び歯周病の原因である細菌バイオフィルムを除去する、及び口腔粘膜の創傷治癒作用を促進して傷害組織のより早い回復を提供する、薬用口腔洗浄液、スプレー、ゲル、クリーム、軟膏、又は歯磨剤の形態の組成物を提供する。いくつかの実施形態では、口腔送達のための組成物は、生物活性のあるプロポリス抽出物と、1種以上の界面活性剤(例えば、1種以上の生物界面活性剤)との組み合わせを含む。
【0131】
[133] いくつかの実施形態では、口腔送達のために製剤化される組成物は、自己移植技術、例えば多血小板フィブリン(PRF)などの生体材料の使用と適合性がある。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、移植された組織及び結合された血餅と化学的に相互作用せず、歯科的処置(例えば、歯科的組織移植など)を受けている対象による使用に適したものとなっている。
【0132】
[134] したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、粘膜炎(例えば、放射線療法によって引き起こされる口腔病変など)の治療に有用である。粘膜炎は、典型的には癌の化学療法及び/又は放射線療法によって引き起こされる、口腔内の粘膜組織の炎症及び潰瘍形成である。
【0133】
[135] いくつかの実施形態では、本開示は、対象(例えば、粘膜炎を有する対象)における口腔病変を治療する方法であって、1つ以上の口腔病変を有する対象に、本開示によって記載された組成物(例えば、口腔組成物)を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、口腔組成物は、プロポリスから得られた生物活性抽出物を含む。いくつかの実施形態では、口腔組成物は、口腔洗浄液又は水性の口腔用液剤の形態で投与される。
【0134】
[136] いくつかの実施形態では、粘膜炎を有する又は有する疑いがある対象は、化学療法(例えば、化学療法薬の1回以上の投与の施与)及び/又は放射線療法(例えば、治療的放射線、例えば頭頸部放射線療法の1回以上の照射の施与)を受けている。いくつかの実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、又は化学療法と放射線療法の組み合わせを以前に施与されている。いくつかの実施形態では、粘膜炎を有する又は有する疑いがある対象は、造血幹細胞移植を受けるのに先立って、全身照射を受けている。
【0135】
[137] いくつかの実施形態では、本開示によって記載される組成物(例えば、口腔組成物)は、物理的に損なわれている組織を治療するのに有用である。いくつかの実施形態では、物理的に損なわれた口腔組織を有する対象は、下顎顔面手術、例えば歯科的インプラント処置を受けている。いくつかの実施形態では、プロポリスから得られた生物活性抽出物を含む口腔組成物は、口腔手術に一般に使用される生体材料(例えば、多血小板フィブリンなど)と適合性があり、消毒用口腔洗浄液などのアルコール系組成物の使用と比較して、歯科的インプラントが対象の免疫系によって拒絶されることとなる確率を低下させる。
【0136】
[138] いくつかの実施形態では、本明細書に記載された口腔組成物の投与は、対象における細菌バイオフィルム形成及び/又は成長(例えば、対象の口腔の粘膜組織上及び/又は口腔内のバイオフィルム形成)を阻害する。潰瘍形成された粘膜の細菌バイオフィルムの除去は、いくつかの実施形態では、多形核細胞浸潤の減少、それに続く炎症促進性メディエーター(TNF-α、IL-1β、IL-6、及び痛覚過敏疼痛を媒介する主なプロスタグランジンなど)の放出の低下をもたらす。
【0137】
[139] いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される組成物を局所的に投与するための方法に関する。局所投与のための医薬製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、スプレー、座剤、液体、及び粉末が含まれる。さらに、従来の薬剤用担体、水性、粉末、若しくは油性の基剤、又は増粘剤を、局所投与のための医薬調製物に使用することができる。局所投与のために製剤化される本開示の組成物は、いくつかの実施形態では、皮膚などの損なわれた組織を治療するのに有用である。いくつかの実施形態では、製剤は、ハイドロゲルである。一般に、「ハイドロゲル」は、親水性のであり、且つ水が分散媒であるコロイド状ゲルを形成する、網目構造のポリマー鎖を指す。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルは、少なくとも10%w/wの水(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の水)を含む。
【0138】
[140] 「損なわれた組織」(例えば、損なわれた皮膚)は、化学的又は物理的に損傷を受けている組織を指す。損なわれた組織の例としては、創傷(例えば、切創、擦り傷、穿刺創、外科的切開創、神経障害性(糖尿病性)創傷など)、熱傷(例えば、化学熱傷、日焼け、低温熱傷(heat exposure burn)など)、水疱、潰瘍、筋及び腱断裂、及び神経組織変性が挙げられる。
【0139】
[141] いくつかの態様では、本開示は、対象における損なわれた組織を治療するための方法であって、本明細書に記載された組成物をそれを必要とする対象に局所的に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、潰瘍(例えば、糖尿病性潰瘍)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、熱傷、例えば(例えば、皮膚ケミカルピーリングなどの皮膚科又は美容処置の結果としての)化学熱傷を有する。
【0140】
[142] いくつかの実施形態では、組成物は、スプレー、泡、ゲル、又は水溶液の形態で、対象に局所的に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、装置又は器具(例えば、医療機器)、例えば組成物を含侵させた又は組成物でコーティングした固体基材の一部として、対象に投与される。組成物を含侵させる又は組成物でコーティングすることができる固体基材の例としては、限定はされないが、繊維(例えば、天然の綿繊維、ナイロンなどの合成繊維など)、包帯、パッド、被覆物(例えば、フェイスマスク)、プラスチック、金属(例えば、ステンレス鋼、チタンなど)などが挙げられる。
【0141】
[143] 他の実施形態では、本開示によって記載された組成物は、複数回投与される。場合により、組成物は、毎日、週2回、毎週、2週ごと、3週ごと、毎月、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、5か月ごと、6か月ごと、又は6か月ごとよりも低い頻度で投与することができる。場合により、組成物は、1日、1週、1か月、及び/又は1年に複数回、投与される。例えば、組成物は、およそ1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間ごとに、又は12時間よりも長い時間ごとに投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、1日に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、又は10回よりも多く投与される。
【0142】
[144] 投薬レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整することができる。例えば、オリゴヌクレオチドを、繰り返し投与することができ、例えば、いくらかの用量を毎日投与することもできるし、治療状況の緊急性によって示される場合に用量を比例的に低下させることもできる。当業者は、組成物が細胞に投与されることとなるか対象に投与されることとなるかにかかわらず、対象組成物の投与の適切な用量及びスケジュールを容易に決定できるであろう。
【0143】
[145] 本開示の態様は、対象(例えば、哺乳類)での使用のための方法に関する。いくつかの実施形態では、哺乳類対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である。非ヒト霊長類対象の非限定的な例としては、マカク(例えば、カニクイザル又はアカゲザル)、マーモセット、タマリン、クモザル、ヨザル、サバンナモンキー、リスザル、ヒヒ、ゴリラ、チンパンジー、及びオランウータンが挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト対象である。対象の他の例としては、イヌ及びネコなどの飼い慣らされた動物;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びニワトリなどの家畜;並びにマウス、ラット、モルモット、及びハムスターなどの他の動物が挙げられる。
【実施例
【0144】
実施例
実施例1:薬物送達組成物
[146] この実施例は、本開示の薬物送達組成物のいくつかの実施形態を記載する。一般に、ここで記載する薬物送達組成物は、次の構成成分:炭酸緩衝液、少なくとも2種の異なる生物界面活性剤、少なくとも1種の吸湿剤、少なくとも1種の抗酸化剤、及び少なくとも1種の生物活性剤を含む。
【0145】
[147] 炭酸緩衝液系は、7.5~約9.5、好ましくは8.0~9.0のpHを有する。対象の損なわれた組織に投与される場合、本開示によって記載される薬物送達組成物は、組織治癒及び再生を促進する微小環境を提供する。緩衝液中に存在するある種のイオンが、組成物中の、又は損なわれた組織と組成物が接触された場合に作り出される微小環境中の、多くのNa若しくはNH4イオンの濃度を上昇させる。多くのイオンは、ヘパリン硫酸(heparin sulfate)(HS)などの、哺乳類の細胞の表面上のある種の分子と結合し、細菌及びウイルスなどの微生物が標的細胞の表面上のHSに結合するのを妨害することによって、病原体の細胞への侵入を妨げる。本開示によって記載される組成物が、このpHでこうした環境を提供する能力は、典型的には中性から酸性の範囲のpH値を有する現在利用可能な創傷治癒組成物を考慮すると、驚くべきことである。
【0146】
[148] 本明細書に記載される組成物中の2種の生物界面活性剤の組み合わせは、いくつかの目的を果たす。いくつかの実施形態では、これらの生物界面活性剤は、細菌細胞及び損なわれた組織の細胞などの細胞の表面張力を破壊し、それによって、分子的デブリードマンを促進する。さらに、これらの界面活性剤は、組成物の生物活性分子が、損なわれた組織に深く浸透するのを助ける。
【0147】
[149] 吸湿剤は、創傷床に水分を提供し、組織が治癒する時の組織の適切な水和を促進する。吸湿剤はまた、いくつかの実施形態では、組織再生における細胞接着及び分化のための足場として働くことができる基質を提供する。
【0148】
[150] 組成物中に存在する抗酸化剤は、フリーラジカルを除去し、活性酸素種(ROS)を減少させる。これは、治癒プロセスが行われる時に、損なわれた組織における炎症を減少させるために重要である。抗酸化剤はまた、組成物中の保存剤として機能することができる。
【0149】
[151] 組成物はまた、組成物によって送達される、1種以上の生物活性剤を含む。下の実施例に記載する通り、生物活性剤は、所望される治療結果を達成する生物活性分子を含むように置き換える又は変更することができる。本開示によって記載される薬物送達組成物製剤の一実施形態を、下の表1に提供する。
【0150】
【表1】
【0151】
[152] 要約すると、本明細書によって記載される薬物送達組成物は、1)分子的デブリードマン、2)適切な水和、並びに3)抗炎症及び抗微生物活性(足場となるムコ多糖構造の破壊の結果としての細菌バイオフィルムの除去、又は対象の標的細胞への病原体結合の阻害など)を同時に提供することによって、組織治癒及び再生を促進する微小環境を提供する)。
【0152】
実施例2:組織修復組成物
[153] 例えば、栄養支援、疼痛管理、二次感染の予防、及び/又は治療による、RIOMの症状及び合併症の低下は、現在、RIOMの管理における主な土台であると考えられる。
【0153】
[154] 歯学における再生医療は、疾患又は傷害の結果として変化した口腔組織の置換及び/又は再生を含む。この試みを困難にする、報告されている側面の一つは、口腔に見られる組織の複雑性である。これらには、セメント質、歯槽骨、及び象牙質などの石灰化組織と、靱帯(歯根膜)によってつなげられた軟部組織との両方が含まれ、それぞれが、様々な組織由来(外胚葉性及び中胚葉性)の別の細胞集団を含む。
【0154】
[155] 多血小板フィブリン(PRF)は、抗凝血薬を用いずに患者の末梢血の遠心分離によって簡単に得られるので、厳密に自己由来である。このフィブリンマトリックスは、血小板及び白血球、並びに様々な成長因子及びサイトカイン(トランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン(IL)-1β、IL-4、及びIL-6が含まれる)を含有する。さらに、凝固カスケードの最終段階中に形成するフィブリンを、血小板によって分泌されるサイトカインと組み合わせると、PRFは、特に、フィブリンネットワークが組織成長因子の貯蔵庫としても作用する損傷部位において、高度に生体適合性のマトリックスとなる。いくつかのランダム化比較試験(Control Randomized Trial)(RCT)は、自己PRFが、口腔組織の再生について、市販で入手可能ないかなる生体材料よりも有効であることを実証している。しかし、従来の口腔洗浄液は、口腔を消毒し、細菌性プラークの除去を助け、う蝕形成を予防するために設計されており、変性剤及び抗微生物薬の高濃度の活性な化合物を特徴とする。エタノール、トリクロサン、及びクロルヘキシジンを含有する口腔洗浄液の使用は、PRFを使用する手術後の移植のすすぎのためには推奨されない。なぜなら、これらは、血餅を溶解し、また、フィブリン膜を分解し、治癒プロセスに影響を与える可能性があるからである。
【0155】
[156] この実施例は、潰瘍段階のRIOMの予防及び治癒に有用な、且つ歯科的インプラント手術における補助的手段としての、組織修復溶液を記載する。典型的には、この口腔洗浄液は、1日に3回、食事の前後に、口腔の病変に直接的に、スプレー溶液として適用される。組織修復溶液の例を、下の表2に記載する。
【0156】
【表2】
【0157】
[157] この組成物は、実施例1に記載されている通りの薬物送達組成物を含み、高品質プロポリス抽出物の均衡化されたブレンドの由来の生物活性物質を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、抗炎症、抗酸化、免疫誘導、抗微生物、及び抗真菌作用などの、粘膜の組織修復にとって重要な同時の生物学的作用を促進する。組成物は、血餅及び移植された組織を化学的に攻撃しないので、PRFの場合と同様に、自己移植技術の使用と完全に適合性がある。
【0158】
[158] 生物活性のあるプロポリス複合体は、創傷治癒にとって、また、粘膜及び粘膜下層における病変床からの細菌バイオフィルムの除去にとって重要な、抗菌、抗真菌、及び抗酸化作用を有する、いくつかの群のフラボノイド、イソフラボノイド、カルコン、及びプテロカルパンを含む。イソフラボノイド生物活性物質の高い抗酸化剤作用はまた、放射線を受けた細胞成分のDNA損傷によって産生される活性酸素種(ROS)の除去を促進し、次に、口腔粘膜細胞外マトリックス分解の低下を引き起こす。
【0159】
[159] 潰瘍形成された粘膜の細菌バイオフィルムの除去は、いくつかの実施形態では、多形核細胞浸潤の減少、それに続く炎症促進性メディエーター(TNF-α、IL-1β、IL-6、及び痛覚過敏疼痛を媒介する主なプロスタグランジンなど)の放出の低下をもたらす。
【0160】
[160] 薬物送達系のラムノリピド及びソホロ脂質生物界面活性剤などの非常に高い張力の生体分子の存在が、細菌バイオフィルムの多糖マトリックスの有効な破壊を引き起こす生化学的微小デブリードマン、並びに細胞損傷によって引き起こされた失活及び壊死組織の除去を促進する。
【0161】
[161] これらのすべての相乗的作用は、共に、傷害された粘膜の迅速且つ有効な組織修復を促進する。
【0162】
実施例3:創傷治癒組成物
[162] 慢性創傷は、正常な創傷修復パターンを経て進行できずに、主として豊富な末梢単核(PMN)及びマクロファージ(MF)細胞浸潤を特徴とする慢性炎症の状態のままである。存続する炎症細胞は、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL-1、TNF-α、IL-6)、及びプロテアーゼが豊富且つ酸化促進物質が敵対している微小環境の産生において主要な役割を果たす。タンパク質分解活性(例えば、好中球エラスターゼ、MMP-8、及びゼラチナーゼ)の増大は、修復にとって重要な、成長因子、及び細胞外マトリックスの構造タンパク質の分解をもたらす。ROS(H、O )の増大は、細胞又は細胞外マトリックス分子の直接的損傷をもたらす、又は、(MMP-1、-2、-3、-9、及び13)などのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現増大に寄与する可能性がある。細菌バイオフィルムは、以下のような慢性の非治癒性の創傷に影響を与える:1)バイオフィルムを含有する創傷を特定できない;2)有効でないバイオフィルム治療が治癒を遅らせる可能性がある;3)デブリードマンが、バイオフィルムに対する最も重要な治療戦略の一つであるが、すべてのバイオフィルムを除去せず、それ故に、それだけで使用することができない;4)バイオフィルムが急速に再形成する可能性がある;繰り返されるデブリードマンが単独でバイオフィルム再成長を予防する可能性が低い;しかし、この時間依存性範囲内での有効な局所的消毒薬適用が、バイオフィルム再形成を抑制することができる;並びに5)バイオフィルムが、ほとんどの慢性創傷に存在し、表面上と、より深い創傷層内との両方に位置している可能性が高い。バイオフィルム構成成分(例えば、細胞外接着タンパク質(Eap)、ホルミルメチオニルペプチド、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン)は、細胞-マトリックス相互作用の妨害又は炎症反応の促進によって、宿主の修復機構障害に寄与する可能性がある。
【0163】
[163] 次の例は、肉芽組織の成長を促進するための皮膚軟化及び治癒作用を有する海藻由来の硫酸化多糖を含む生物活性抽出物と、デブリードマン並びに壊死組織及び壊死組織片の除去を促進するための、また創傷治癒に貢献する湿った環境を維持するための、プロポリス、バイカリン、及びアドログラホリド(adrographolide)などの細菌バイオフィルム阻害剤を含むハイドロゲルとを含む、細胞を活性化する流動性の泡の形態の医薬送達組成物を記載する。細胞を活性化する流動性の泡の一実施形態を、表3Aに記載し、細菌バイオフィルム緩和ハイドロゲルの一実施形態を、下の表3Bに記載する。
【0164】
【表3A】
【0165】
【表3B】
【0166】
[164] 組成物中に存在する生物活性成分は、慢性創傷治癒過程における様々な時点で相乗的に作用する。例えば、アロエベラ(Aloe vera)植物複合体中に存在するサポノシド(saponosidic)化合物は、細菌脂質界面活性剤と組み合わせられると、そのムコ多糖マトリックスの破壊によって、細菌バイオフィルムの除去を容易にし、したがって、創傷床における感染及び炎症反応を低下させる。
【0167】
[165] 細胞を活性化する流動性の泡に存在する海藻の硫酸化多糖は、ヒドロキシ及びスーパーオキシド(H、O)などの重要な抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャーであり、これは、酸化促進物質及びタンパク質分解活性を低下させ、免疫細胞、成長因子、及び細胞外マトリックスの破壊を防止する。さらに、これらは、マクロファージ活性を制御することによって、免疫系を刺激することができる。カラギーナン、ウルバン、及びフコイダンなどの硫酸化多糖は、マクロファージの活性を改変し、コロニー形成された創傷における細菌結合及び死滅活性を増大させることができる。硫酸化多糖の抗凝血及び抗血栓活性も、生成物のこの相乗作用に寄与し、微小血栓の形成を防止し、したがって、新しい成長組織における血管新生を促進する。
【0168】
実施例4:美容用皮膚修復組成物
[166] この実施例は、薬用化粧品として有用な組成物を含侵させた、皮膚ピーリング(例えば、パルス光、化学及びフラクショナルレーザーピーリング)後の処置における治療用の顔皮膚修復マスクを記載する。この組成物は、跡(sign)、斑(spot)、嚢胞、及びしみ(freckle)を除去するための、軽い皮膚科的処置後の再生医療処置として使用することもできる。
【0169】
[167] 組成物は、皮膚再生のプロセスにおける、β-カロテン(例えば、ニンジン油由来)、α-トコフェロール、及び他の重要な構成成分などの生物活性物質を含む薬物送達組成物を含侵させた又はコーティングした生分解性の天然繊維フェイスマスクを含む。この生物活性物質は、例えば、レーザー熱傷後の残存する増殖性組織の保持における主要な役割を果たす、ヒアルロン酸-デクスパンテノールの流体マトリックスに組み込まれる。
【0170】
[168] ヒアルロン酸(HA)も、上皮において、細胞外空間を維持するように機能し、栄養の通過のための開放的且つ水和された構造を提供する。生物活性物質及び栄養、例えばレチノイン酸(ビタミンA)、α-トコフェロール(ビタミンE)、及びビタミンB5(デクスパンテノール)を、修復中の組織に、HAマトリックスを通して大規模に輸送することができる。さらに、HAは、細胞及びマトリックス事象の媒介、それに続く外傷、炎症、肉芽組織の形成、再上皮化(reepithelization)、及びリモデリングにおいて、多面的役割を果たす可能性が高い。この実施例に記載した薬物送達組成物の一例を、下の表4に提供する。
【0171】
【表4】
【0172】
実施例5:ヘルペス感染症のための治療用組成物
[169] ウイルスHSV-1は、唇の皮膚に存在し、口唇単純ヘルペス(HSL)を引き起こす。口唇単純ヘルペス(HSL)は、感冒時の痛み(cold sore)又は発熱時の水疱(fever blister)としても知られており、数百万人の米国人が罹患している。米国だけで、毎年9800万のHSL症例が存在すると推定されている。
【0173】
[170] このウイルスの初感染は、唇又は口の粘膜又は擦りむいた皮膚と、活動期の一次感染又は反復感染を有する人の唾液又は他の分泌物との間の直接的接触によるものである。HSVの一次感染は、典型的には、幼少期に起こり、しばしば無症状であるが、口腔及び口周囲の小胞(小さい水疱)及び潰瘍を特徴とするヘルペス性歯肉口内炎として現れることもある。「前駆症状」として公知である警告徴候が、HSLに先行する;これらは、その後の小胞発生の部位での疼痛、灼熱、そう痒、又は刺痛の感覚である。前駆期には、頭痛も起こることがある。前駆症状の24時間以内に、複数の小胞集合体が現れ、次いで、最終的に痂皮を形成するまで滲出する。こうした痂皮は、しばしば、かなり容易に出血し、乾いた血液により、見た目の悪い黒っぽい痂皮(これは、皮膚が引っ張られる時、例えば、食べる及び笑う時に、再び出血する可能性がある)を形成する可能性がある。これらは通常、瘢痕化せずに5~15日以内に治癒する。口唇単純ヘルペスは、疼痛、不快感、不自由、及び容貌の損傷の結果としての若干の心理的及び社会的苦痛を引き起こす可能性がある。
【0174】
[171] 一次感染後、ウイルスは、潜伏形態で知覚神経節(神経末端)に存在する。再活性化後、HSVは、これらの知覚神経節から、唇又は口の皮膚の外層に移動して、再発性HSLを引き起こす。ウイルスは、ニューロン内で複製され、反復性の突発的発生をもたらす。この突発的発生は、しばしば、紫外線(太陽光及び/又は日焼けマシーン(tanning bed))への曝露、ストレス、免疫抑制、感冒、疲労、発熱(したがって、用語「感冒時の痛み」又は「発熱時の水疱」)、風への過剰曝露、極度の温度、月経期間、妊娠、歯科的作業、又は口唇外傷によって誘発される。口周囲のレーザーリサーフェシング(laser resurfacing)又は口周囲のボツリヌストキシン又はフィラー(filler)の注射は、突発的発生を刺激する可能性がある。現在、HSLのための治療法は存在しないので、理論的に、一旦罹ると、感染は生涯にわたって残る。
【0175】
[172] この実施例は、口唇単純ヘルペス(HSL)及び性器ヘルペスを治療するための、天然の抗ウイルス生物活性抽出物を末梢神経修復因子と組み合わせて含有する薬用の液剤を記載する。この組成物は、感冒時の痛み及び性器ヘルペスの治療のための局所用製剤を含む。ウイルス感染の低下と、傷害された神経組織の回復との両方に対処する、現在市販で入手可能な局所用製品は存在しない。局所用組成物の一実施形態を、下の表5に記載する。
【0176】
【表5】
【0177】
[173] レモンバーム(Melissa officinalis)の生物活性抽出物は、HSV-1及びHSV-2に対する相乗的抗ウイルス作用を有する、ゲラニアール、α-ビサボロール、β-カリオフィレン、リナロール、ネラール、シトロネラール、α-カジノール、β-カジネン、及びその他のものなどのモノテルペノイド化合物を含む。レモンバーム(Melissa officinalis)の生物活性抽出物は、モノテルペノイド生物活性物質に加えて、口唇ヘルペス(herpes labialis)(HSV-1)と性器ヘルペス(HSV-2)の両方に対する抗ウイルス活性を呈する、ロスマリン酸などのポリフェノール化合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、HSV感染症を治療するために現在使用されている1種以上の抗ウイルス剤(例えば、アシクロビルなど)をさらに含む(又は、これらを同時投与される)。
【0178】
[174] メチル化されたビタミンB12及びメチルコバラミンは、変性した及び傷害された末梢神経の修復の機構、並びに神経障害性疼痛を軽減させること及び神経成長を促進することと関与することが認められている。
【0179】
[175] 組成物中に(緩衝系を介して)存在する生物界面活性剤及びイオンは、いくつかの実施形態では、細胞表面上のHSの結合を妨害することによって、標的細胞へのウイルス侵入をブロックすることができる。
【0180】
実施例6:バイオフィルム形成を用いるエクスビボのブタ皮膚モデルにおける組織修復ハイドロゲル製剤の評価
[176] この実施例は、ブタ皮膚外植片モデルにおける4つの異なる創傷治療(製剤A、B、C、及びD)の有効性を調べるための実験を記載する。簡単に言うと、3日目の成熟した(mature)外植片を、24時間又は72時間、ゲル製剤で処理し、それに続いて生存微生物の回収を行った。この研究には、3種の代表的な微生物種:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(グラム陽性)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(グラム陰性)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母)を使用した。
【0181】
[177] 全体的に、試験された組織治癒製剤は、72時間の処理時間で十分に機能し、24時間の時間に対して、著しく高いレベルの治療有効性を示し、評価されたすべての種を通して≦1.5logの微生物負荷であった。処理は再適用されず、72時間の処理時間の間、最初の処理が外植片上に残っていたことに留意することが、ここでは重要である。
【0182】
材料及び方法
[179] 試験製剤:プロポリスを含有する5種の異なる組織治癒製剤(製剤A、B、C、及びD)を試験した。各製剤は、異なる濃度の活性剤(例えば、プロポリス)を含有するハイドロゲルであった。活性剤を含まない1つのハイドロゲルを、陰性対照(賦形剤)として試験した。各ハイドロゲル製剤について、この研究に使用される各外植片に、およそ2mLを適用した。
【0183】
[180] 試験微生物:グラム陽性及びグラム陰性細菌、並びに真菌種に対する有効性を試験した。種及び対応付けられるATCC番号を、表6に列挙する。
【0184】
【表6】
【0185】
バイオフィルム確立
[181] 外植片のためのブタ組織は、高精度水準の技術を使用するUSDA認可施設から入手し、およそ2mmという特定の厚さを有するブタ皮膚を調製した。パンチ生検を使用して、組織を、直径がおよそ12mmである円形の外植片に切断し、Dremelツールを使用して人工的に傷つけて、1.5mmの深さのくぼみを有するおよそ2mmの直径の創傷を作り出した。次いで、この外植片を、徹底的に洗浄し、塩素ガスを使用して滅菌した。接種及び試験製剤の適用の前に、外植片を、およそ2時間、37℃のインキュベータ中の0.5%寒天上に置いて、平衡化させた。次いで、外植片に、指定された細菌の15~20μLの対数期の培養株、又は外植片あたりおよそ10CFUのC.アルビカンス(C.albicans)の48時間培養株を接種し、新鮮な寒天プレートに毎日移動させながら、0.5%寒天上で3日間インキュベートさせた。
【0186】
処理
[182] 3日目の外植片を、2mLの滅菌PBS中で2分間洗浄し、それに続いて、試験組成物での処理を行った。製剤A、B、C、及びDを、10mLシリンジに装填し、およそ2mLの製剤での外植片への制御された投薬を可能にした。洗浄後、外植片を、24ウェルプレートの個々のウェルに移し、それに続いて、試験製剤の添加を行った。次いで、プレートを、24時間、インキュベータに入れた。第2ラウンドのスクリーニングでは、処理時間を72時間に延長して、処理時間を延長することに対して利益が存在するかどうかを評価した。4種の製剤と賦形剤対照はすべて、同じように処理した。指定された処理時間の後、すべての外植片から、生存しているバイオバーデンを回収し、段階希釈及びプレーティングを介して数え上げた。
【0187】
生存している細菌の回収
[183] 24時間又は72時間のインキュベーション後、生存している細菌及び酵母を、組織から回収し、数え上げた。最初に、残存する製剤を、外植片を軽くたたくことによって、外植片から穏やかに除去し、それに続いて、2mLの滅菌PBS中で2回(各回2分)洗浄して、あらゆる残存する材料を除去した。次いで、洗浄した外植片を、2mLのDey/Engleyブロス、すなわち一般的な中和剤を含有する15mL遠心チューブに入れた。外植片を、10秒間、ボルテックス処理し、一連の5回の超音波処理デブリードマンステップ:90秒の超音波処理/60秒の休止期間にかけた。均一性を確実にするために試料を再びボルテックス処理し、段階希釈し、希釈-6までスポットプレーティング(試料10μL/スポット、3連)を行い、必要に応じてスプレッドプレーティングを行った(200μLの希釈されていない回収溶液)。
【0188】
有効性データ
[184] データを、表7及び図1~3にまとめて示す。
【0189】
【表7】
【0190】
[185] メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)の3日目のバイオフィルムに対する組織修復製剤の有効性を、図1にまとめて示す。全体的に、製剤A~Dは、未処理対照についての約7.5logと比較して、24時間の処理後におよそ5logの生存を有する、同等の有効性を示した。処理時間の延長は、生存を、製剤A~Cについては1log未満のレベル、製剤Dについては約1.5logまで有意に低下させた。興味深いことに、賦形剤も、24時間処理のマーク時に、微生物負荷の低下、ほぼ2logの低下を示したが、試験された製剤が、有意に高い有効性を示したのに対して、処理時間の延長が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の生存を、およそもう1logしか低下させなかった。
【0191】
[186] 緑膿菌(P.aeruginosa)の3日目のバイオフィルムに対する組織修復製剤の有効性を、図2にまとめて示す。黄色ブドウ球菌(S.aureus)について報告されたことと同様に、処理時間の延長が、すべての製剤の有効性を増大させた。製剤A~Dはすべて、24時間以内に5logよりも大きい低下、及び72時間後に1log未満の生存を示した。これらの製剤は、24時間の処理時点で、黄色ブドウ球菌(S.aureus)よりも、緑膿菌(P.aeruginosa)に対して、より優れた有効性を有するように見える;しかし、賦形剤単独も、緑膿菌(P.aeruginosa)バイオフィルムに対する、有効性の時間依存性の増大を示し、72時間の処理時間は、2logの生存をもたらす。
【0192】
[187] C.アルビカンス(C.albicans)の3日目のバイオフィルムに対する組織修復製剤の有効性を、図3にまとめて示す。C.アルビカンス(C.albicans)に対する全体的な有効性プロフィールは、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)について観察されたものと同様であり、ここでは、製剤はすべて、処理時間の延長(24時間処理に対する72時間処理)での有効性の増大を示し、また、72時間処理時点での有効性は、賦形剤単独の有効性よりも有意に高い。
【0193】
[188] 全体的に、この研究において評価された製剤はすべて、評価された3種すべての代表的な微生物種:グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)、グラム陰性の緑膿菌(P.aeruginosa)、及び酵母C.アルビカンス(C.albicans)からのバイオフィルムに対して、非常に高い有効性を示した。72時間の処理時間の延長は、すべての製剤についての有効性の全体的な増大をもたらし、すべての種を通して≦1.5logの生存可能細菌がもたらされた。賦形剤単独も、微生物負荷の低下を示し、黄色ブドウ球菌(S.aureus)及びC.アルビカンス(C.albicans)については、24時間及び72時間の処理時間後に、約2~3logの低下、また、緑膿菌(P.aeruginosa)については、24時間で3logの低下及び72時間でほぼ7logの低下であった。
【0194】
[189] 観察された賦形剤有効性を説明するのに適切であり得る、ここで留意するべき少しの重要なことが存在する:
・この研究では、微生物負荷全体、すなわちバイオフィルム+浮遊性細菌が数え上げられた。これは、特に24時間処理については、賦形剤の部分的有効性を説明する可能性がある。参考として、バイオフィルムを有する3日目の外植片が、>200×MIC値の濃度の抗生物質又は抗真菌剤の溶液中で24時間処理されるならば、一般に、微生物負荷の≦2logの低下が見られる。
・緑膿菌(P.aeruginosa)は、他の種よりも多いバイオマスを有するバイオフィルムを生成する。賦形剤の構成成分が、緑膿菌(P.aeruginosa)バイオフィルムを破壊しているならば、これは、観察される有効性の増大をもたらすことができるが、これは、微生物を殺すことに由来するのではなく、組織からのバイオフィルムの物理的除去に由来する可能性がある。
【0195】
実施例7:抗バイオフィルム性阻害剤を含有するハイドロゲル製剤を用いる全層切除ブタモデルにおける創傷治癒の評価
[190] この実施例は、ブタ全層切除創治癒皮膚モデルにおける、異なる濃度のプロポリス、バイカリン、及びアンドログラホリドを含有する4種の組織治癒ハイドロゲル製剤の評価を記載する。
【0196】
[191] 全層皮膚創傷に対する組織修復ハイドロゲル(例えば、プロポリスを含むハイドロゲル)及び3種の既承認薬(predicate)の治癒特性を、ブタモデルにおいて研究した。約39.5kgの重量の1匹の雄のブタ(ラージ・ホワイト(Large white))を、手術前に3日間順化させ、12時間絶食させた。動物に、筋肉内ケタミン(5mg/kg)、ミダゾラム(0.5mg/kg)、及びアセプロマジン(0.05mg/kg)を鎮静剤投与した。沈静後、動物を、沈静を維持するためのイソフルラン吸入後、プロポフォール(5mg/kg)の耳介静脈内注射によって麻酔した。切開部位に、リドカイン2%で、麻酔ブロックを実施した。手術前に、背面を剪毛し、クロルヘキシジン2%で滅菌した。ステンレス鋼のテンプレートを使用して、ブタの背中に、scalp N.11とハサミによって、4列に対称的に、2cmの直径を有する16個の全層切開創を作製した。
【0197】
[192] 創傷部位に対して、8種の組織治癒処置を2連で試験した:InnovaCorium Dressing Hydrogel(IWD)-製剤A、B、C、及びD、Plurogel(登録商標)(PG-Medline,Northfield,IL)、Medihoney(登録商標)(MH-Derma Sciences,Toronto,Canada)、Amerigel(登録商標)(AMG-Amerx,Clearwater,FL)、及び生理食塩水対照(SAL)。部位は、図4に従って、各治療についてランダムに選択した。製剤A、B、C、及びD中の選択される構成成分の量を、下の表8に示す。
【0198】
【表8】
【0199】
[193] 0.5gの量の各生成物を、22日の研究中、24時間ごとに創傷床に投与した。創傷は、最初に、滅菌生理食塩水で洗浄して、以前の適用による生成物の残留物を除去した。次いで、創傷周囲の領域を、新しい被覆カバーのより良い固定のために、滅菌ガーゼで拭いた。被覆材を変える間の動物のストレス及び痛みを軽減するために、筋肉内ケタミン(10mg/kg)及びミダゾラム(0.5mg/kg)の鎮静剤を、最初の週の間、投与した。創傷部位は、3M(商標)Micropore(商標)外科用テープ(Surgical Tape)(3M,Maplewood,MN)を用いて、Curatec透明フィルム(Urgo Medical,France)によって被覆した。病変を被覆した後、快適性向上及び偶然の外傷からの保護のために、動物に、清潔な綿の衣服を着せた。
【0200】
[194] 治療の創傷治癒有効性を評価するために、創傷を、毎週撮影して、基準としての既知の円形面積テンプレートを用いてImage Jソフトウェア(NIH,USA)を使用して、面積を推定した。第15日(反復(Replicate)1)及び第22日(反復(Replicate)2)に、創傷床からの生検材料を収集し、創傷の組織学的治癒段階を評価した。3マイクロメートル切片を用いて組織学的スライドを作製し、次いで、75℃のオーブン内に30分置いて、パラフィンを排出した。ヘマトキシリン/エオシン及びマッソントリクローム(Masson’s Trichrome)染色を使用した。簡単に言うと、試料を、3槽のキシロール浴で、それぞれ5分間脱パラフィンし、次いで、濃度を下げていくアルコール、100%、90%、80%、70%、及び水中の10回通過で水和した。3分間Harrysヘマトキシリンを用いて核染色を行い、それに続いて、流水で1分間洗浄した。ヘマトキシリン・タイリング(tiling)を、Scoth溶液中の10回の通過によって実施し、さらに2分間、流水ですすいだ。細胞質は、エオシンによって3分間染色した。最後に、濃度を上げていくアルコールによって脱水を行い、それぞれにおける合成培地中での会合のために、3槽のキシロール浴の10回の通過によって清澄化した。3槽のキシロール浴(それぞれ5分)での脱パラフィン、及びヘマトキシリンでの3分間の染色によって、マッソントリクローム(Massom trychomic)染色を実施した。試料を、10回の通過のために、Scoth溶液中に並べた(tile)。次いで、試料を、Briebrich Scarlat溶液-15分、リンタングステン酸/リンモリブデン酸-10分、アニリンブルー-5分、及び酢酸1%-2分にさらした。濃度を上げていくアルコール中での脱水、清澄化、及び合成培地中での会合を行った。
【0201】
[195] 図5A~5Hは、様々な治療及び対照を用いる、ブタ皮膚上の全層切除創の治癒プロセスを表す写真である。切除創の生成のための手術の24時間後、これらは、出血、感染、浮腫、及び紅斑の徴候がなく、清浄であった。7日の治療の後、組織修復製剤で治療したすべての創傷は、製剤A、B、C、又はDにかかわらず、創傷床上の生成物のわずかな浸透を示した。創傷周囲領域では、生理食塩水ですすぐのが困難な、生成物のわずかな浸透が存在した。これらの浸透は、最も高い濃度のプロポリスを用いた製剤において、より顕著であった(図5A及び5D)。様々な既承認薬及び対照生理食塩水で治療された創傷も、浸透を有していたが、プロポリス含有製剤ほどの濃さ及び厚みはなかった。14日の治療後、どの病変も、創傷床のより多くの生成物蓄積はなかった。製剤の中で、製剤Cは、最も低い創傷低下率を伴い、最も広い面積の肉芽組織を示していた(図5C)。MHで治療された創傷の1つは、過剰な肉芽形成及び浮腫を示していたが、研究期間全体を通して、いずれかの創傷における感染、浸出液、及び紅斑は観察されなかった(図5G)。データは、最初の週の治療では、治療のいずれかにおける病変面積の、生理食塩水対照と比較した有意な低下が存在しなかったことを示す。しかし、第2週の治療では、各製剤は、生理食塩水対照よりも良く機能していた。表9は、観察の期間にわたる、各治療及び対照の創傷面積を示す。図6に示す通り、研究の最後まで、製剤Aは、生理食塩水対照(93.3%)と比較して、最も高い創傷低下率(98.6%)を示す。MH治療は、この研究中、創傷治癒をもたらさなかった。
【0202】
【表9】
【0203】
[196] 無処置のブタの皮膚、及び様々な生成物で治療されたすべての創傷の組織学的特性を評価した。損傷を受けていない無処置の組織から収集した生検材料は、ブタの外皮の非常に特徴的な皮膚構造を示し、コラーゲン線維束を有する改変されていない密性結合組織を伴い、異型及び/又は炎症細胞浸潤がなく、真皮乳頭がほとんどなかった。概して、観察された断片は、薄い圧縮されていないケラチン層で完全に上皮化されていた。創傷から採取された生検材料の組織学的切片は、無処置の皮膚ほど組織化されておらず、主として炎症性浸潤、及びよりまばらで低密度の線維を伴う疎性結合組織堆積の存在によって特徴付けられる上皮構造を示した。創傷から収集された生検材料は、概して、製剤A及びDは、15日で、より大きな組織ターンオーバーを有しており、重層化されたケラチノサイトによるケラチンの重積(invagination)及び堆積を伴う上皮形成を伴っていたことを示した。製剤Cは、この段階に到達するのに最も長い時間がかかった。既承認薬の中では、AMGが、上皮及び真皮構造を最も早く再構成するものであった。一方で、MH製品は、皮膚層を修復するのに最も長い時間がかかった。21日後、組織修復組成物で治療された創傷の生検材料からの組織学的切片は、上皮構造の完全な組織化及び層形成を示し、製剤Cで治療された病変であっても、上皮の異なる層の間で違いを伴っていた。一方で、MH及びSALで治療された創傷は、21日の治療の最後まで、上皮形成が不完全であった。
【0204】
[197] 上に記載したデータは、すべての組織治癒製剤(例えば、A、B、C、及びD)が、生理食塩水で治療された病変と比較して、ブタの全層切除創における治癒有効性を示したことを示す。PG及びAMG製品も、この試験で治癒有効性を示している。製剤A及びAMGが、最も良く機能し、21日に98%を超える創傷低下率に到達した。皮膚修復プロセスにわたる組織再構築を確認するために、様々な治療と対照との間の、ブタの切除創の治癒段階の差を、組織学的に追跡した。また、製剤A、製剤D、及びAMGは、治療の15日目の後に、高度な上皮層再構成を示した。
【0205】
等価物
[198] 本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を、このように記載してきたので、様々な変更、改変、及び改良が、当業者に容易に思い浮かぶであろうことが理解されよう。こうした変更、改変、及び改良は、本開示の一部であることが意図され、また、本発明の趣旨及び範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、例示のためのものに過ぎない。
【0206】
[199] 本発明のいくつかの実施形態を、本明細書に記載及び例示してきたが、当業者は、目的を果たす及び/又は本明細書に記載される結果及び/又は1つ以上の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に思い描くこととなり、また、こうした変形及び/又は改変のそれぞれは、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が、例示的であることが意図されること、また、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される具体的適用例に依存することとなることを容易に理解することとなる。当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的実施形態に対する多くの等価物を、認識する、又は日常の実験だけを使用して確認することができることとなる。したがって、前述の実施形態が、例示だけの目的で示されること、また、添付の特許請求の範囲及びそれに対する等価物の範囲内で、本発明を、具体的に記載されている及び主張されているのとは別の方法で実施することができることが理解されよう。本発明は、本明細書に記載されるそれぞれ個々の特徴、系、物、材料、及び/又は方法を対象とする。さらに、2つ以上のこうした特徴、系、物、材料、及び/又は方法のいかなる組み合わせも、こうした特徴、系、物、材料、及び/又は方法が相互に相反するものでないならば、本発明の範囲内に含まれる。
【0207】
[200] 本明細書内及び特許請求の範囲内で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、そうではないと明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解されるべきである。
【0208】
[201] 本明細書内及び特許請求の範囲内で使用される表現「及び/又は」は、等位接続される要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素の「一方又は両方」を意味するものと理解されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定されている要素以外の他の要素も、そうではないと明確に示されない限り、具体的に特定されている要素と関連するかしないかにかかわらず、場合によっては存在することができる。したがって、非限定的な例として、「~を含む(comprising)」などの制約のない言葉と共に使用される場合の「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、Bを含まないA(場合によってはB以外の要素が含まれる);別の実施形態では、Aを含まないB(場合によってはA以外の要素が含まれる);さらに別の実施形態では、AとBの両方(場合によっては他の要素が含まれる);などを指すことができる。
【0209】
[202] 本明細書内及び特許請求の範囲内で使用される場合、「又は」は、上で定義した通りの「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、要素の数又はリストの少なくとも1つ(それだけでなく2つ以上も含まれる)と、場合によっては追加のリストにない項目の包含であると解釈されるものとする。「の1つのみ」又は「の厳密に1つ」、又は特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」などの、そうではないと明確に示される用語のみ、要素の数又はリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指すこととなる。一般に、本明細書で使用される場合の用語「又は」は、「どちらかの」、「の1つ」、「の1つのみ」、又は「の厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち「一方又は他方だが両方ではない」)を示すと解釈されるに過ぎないものとする。「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲内で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0210】
[203] 本明細書内及び特許請求の範囲内で使用される場合、1つ以上の要素のリストへの言及における、表現「少なくとも1つの」は、要素のリスト中の要素のいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素(要素のリスト内の具体的に列挙されたありとあらゆる要素の少なくとも1つが必ずしも含まれるわけではなく、また、要素のリスト中の要素のいずれの組み合わせも排除しない)を意味するものと理解されるべきである。この定義はまた、具体的に特定されている要素と関連するかしないかにかかわらず、表現「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内に具体的に特定された要素以外の要素が、場合によっては存在することができることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は同等に、「A又はBの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在せずに、少なくとも1つの(場合によっては2つ以上が含まれる)A(場合によってはB以外の要素が含まれる);別の実施形態では、Aが存在せずに、少なくとも1つの(場合によっては2つ以上が含まれる)B(場合によってはA以外の要素が含まれる);さらに別の実施形態では、少なくとも1つの(場合によっては2つ以上が含まれる)A、及び少なくとも1つの(場合によっては2つ以上が含まれる)B(場合によっては他の要素が含まれる);などを指すことができる。
【0211】
[204] 特許請求の範囲では、また、上の明細書では、「含む」、「含まれる」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」などの、少しずつ異なるすべての表現は、制約がない(open-ended)、すなわち、「限定はされないが、~が含まれる」を意味すると理解されるべきである。少しずつ異なる表現「~からなる」、及び「本質的に~からなる」のみ、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03に説明されている通り、それぞれ、閉鎖された(closed)又は半閉鎖された(semi-closed)少しずつ異なる表現であるものとする。
【0212】
[205] 請求項要素を修飾するための、特許請求の範囲中の「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体では、ある請求項要素の別の請求項要素に対するいかなる優先権、先行、若しくは順序、又は方法の行為が実施される時間順序も意味せず、単に、請求項要素を区別するための、ある種の名前を有するある請求項要素を、(序数用語の使用以外は)同じ名前を有する別の要素と区別するための標識として使用される。
【0213】
[206] そうではないと明確に示されない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む本明細書で主張されるあらゆる方法において、その方法のステップ又は行為の順序が、その方法のステップ又は行為が列挙された順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
【国際調査報告】