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特表2022-517236自己組織化ペプチドナノ粒子およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】自己組織化ペプチドナノ粒子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20220228BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220228BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20220228BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220228BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220228BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220228BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 38/21 20060101ALN20220228BHJP
【FI】
A61K47/64
C12N5/10 ZNA
C12N5/0784
C12N15/11 Z
C12N15/87 Z
A61P17/02
A61P35/00
A61P31/00
A61P35/04
A61K9/14
A61K9/51
A61K31/7105
A61K31/713
A61K31/711
A61K38/08
A61K38/10
A61K45/00
A61K39/00 G
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/18
A61K48/00
A61P37/04
A61K38/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540420
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2020013417
(87)【国際公開番号】W WO2020146906
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】62/791,795
(32)【優先日】2019-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515104741
【氏名又は名称】ザ・メソジスト・ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ロンフー
(72)【発明者】
【氏名】ワン, イーチェン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, モタオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ルイファン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC19
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD52
4C076DD63
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084AA22
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA42
4C084DA22
4C084DA23
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZC75
4C085AA02
4C085AA38
4C085BB11
4C085CC32
4C085EE03
4C085EE06
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC75
(57)【要約】
それぞれが疎水性治療分子(例えば、抗原ペプチド、mRNA、siRNA、DNAなど)に共有結合で連結し、かつ、必要に応じて、少なくとも1つのTLR(Toll様受容体)リガンドに非共有結合している複数のカチオン性細胞透過性ペプチドを含む、自己組織化ナノ粒子組成物が開示される。さらに、哺乳動物疾患(限定されないが、がん、感染、炎症、ならびに関連する疾患および異常な状態を含む)の1つまたはそれを超える症状の処置、予防、および/または改善における、前記ナノ粒子組成物の使用方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中性pHにおいて自己組織化性であり、疎水性治療用ペプチドリガンドに共有結合で連結している複数のカチオン性細胞透過性ペプチドから構成されるナノ粒子の集団;
(b)医薬的に許容され得るバッファー、希釈剤、キャリアー、またはビヒクル
を含む、組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、mRNA、siRNA、dsRNA、RNA、DNA、もしくはそれらの任意の組み合わせなどの負に荷電している分子、またはMPLAなどの疎水性ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
NY-ESO-1(配列番号1)またはTRP-2(配列番号2)などの治療用ペプチドに共有結合で連結している、CPP-TATなどの両疎媒性または両親媒性ペプチドをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
適切な哺乳動物細胞に導入された場合に、IFN-I発現を増加させるように適合または構成され;好ましくはIFN-α4またはIFN-βの発現を増加させるように適合または構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
腫瘍細胞または樹状細胞などの哺乳動物細胞の単離された集団に含まれる、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
配列番号3~配列番号8または配列番号11~配列番号16のいずれか1つに開示された1またはそれを超えるカチオン性細胞透過性ペプチドを含む、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
(c)化学療法剤、免疫調節剤、神経活性剤、抗炎症剤、抗脂血症剤、ホルモン、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、抗感染症剤、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、リボザイム、コファクター、ステロイド、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ドセタキセル、パクリタキセル、トラスツズマブ、メトトレキサート、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、イサベピロン、エリブリン、ラパチニブ、カルムスチン、ナイトロジェンマスタード、サルファマスタード、四硝酸プラチン、ビンブラスチン、エトポシド、カンプトテシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
アジュバントをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
抗原、抗原ポリペプチド、またはそれらの抗原ペプチドフラグメントをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
1)リポソーム、ナノ粒子、またはマイクロ粒子の集団と共に製剤化されているか;または2)1またはそれを超える界面活性剤、ニオソーム、エトソーム、トランスフェロソーム、リン脂質、またはスフィンゴソームと混合されている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
1またはそれを超える医薬的に許容され得るキャリアー、バッファー、希釈剤、ビヒクル、または賦形剤と混合されている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
哺乳動物に対する全身投与のために、好ましくはヒトに対する静脈内投与のために製剤化されている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物と、それを必要とするヒトに対して前記組成物を投与するための指示の少なくとも第1のセットとを含む治療キットの一部として適合または構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
哺乳動物の疾患、障害、機能不全、欠乏、欠損、外傷、傷害、または異常な状態の、1またはそれを超える症状の治療、予防、または改善に使用するための、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
ヒトのがんまたは感染の1またはそれを超える症状の前記治療、予防、または改善に使用するための、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
先行する請求項のいずれかに記載の組成物を含む、哺乳動物細胞の単離された集団。
【請求項18】
ヒト樹状細胞であることを特徴とする、請求項17に記載の哺乳動物細胞の単離された集団。
【請求項19】
哺乳動物対象におけるがんまたは感染の少なくとも1つの症状を処置または改善するための医薬の製造における、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
前記哺乳動物対象が、ヒト、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル、外来動物、または家畜である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
1)請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物;および2)哺乳動物における疾患、機能不全、異常な状態、または外傷の1またはそれを超える症状の防止、診断、処置、または改善のためのレジメンの一部として、それを必要とする前記哺乳動物に対して前記組成物を投与するための指示、を含む、キット。
【請求項22】
それを必要とする動物におけるがんまたは感染の1またはそれを超える症状を処置または改善する方法であって、前記動物に対して、有効量の請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物を、前記動物における前記がんまたは前記感染の前記1またはそれを超える症状を処置または改善するために十分な時間にわたって投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記がんが、治療抵抗性、転移性、再発、または処置抵抗性がんであると診断または同定されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記動物が、ヒトである、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、単回投与で、または1日またはそれを超える日数の期間にわたる、1週間またはそれを超える週数の期間にわたる、もしくは1か月またはそれを超える月数の期間もしくはそれより長い期間にわたる複数回の一連の投与で、前記動物に対して全身投与される、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、第2の別個の化学療法剤、または第2の別個の治療剤を含む第2の別個の自己組織化ナノ粒子の集団をさらに含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
診断剤、治療剤、または予防剤を、それを必要とする哺乳動物対象の1またはそれを超える細胞、組織、器官、または全身に投与する方法であって、有効量の請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記1またはそれを超える細胞が、ヒト樹状細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1またはそれを超える組織が、腫瘍性である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
治療組成物を、それを必要とする患者の少なくとも1つの細胞、少なくとも1つの組織、または少なくとも1つの器官に提供する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物の量または請求項17または請求項18に記載の哺乳動物細胞の単離された集団を、前記患者の少なくとも1つの細胞、少なくとも1つの組織、または少なくとも1つの器官に前記治療組成物を提供するために有効である期間、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年1月12日に出願された米国仮特許出願第62/791,795号に対する優先権を主張し、明示された参照により、その内容全体が具体的に本明細書に援用される。
米国連邦政府によって支援された研究または開発に関する陳述
【0002】
該当なし。
共同研究契約の団体名
【0003】
該当なし。
技術分野
【0004】
本開示は、それぞれが疎水性治療用ペプチド(例えば、抗原ペプチド)に共有結合で連結している多数のカチオン性細胞透過性ペプチド(CPP)を含み、かつ、必要に応じて、前記CPP結合治療用ペプチドに非共有結合している少なくとも1または複数のTLR(Toll様受容体)リガンドを含む、ナノ粒子に関する。このCPP結合治療用ペプチドの両親媒性は、負に荷電している核酸(CpG、ポリ(I:C)、mRNA、siRNA、およびDNAなど)および疎水性MPLAと共に、中性条件(pH=7.0)下でナノ粒子を形成する自己組織化能を有するが、このナノ粒子は酸性条件(pH<5)下で破壊される。得られるCPP結合治療用ペプチドとTLRリガンドまたはmRNAを含む自己組織化ナノ粒子は、T細胞活性化のための効果的な提示のための抗原提示細胞(APC)内への共送達を可能にし、その結果、がんおよびその他の疾患に対する強力な免疫原性が生じる。よって、本開示は、また、CPP-T細胞ペプチド/TLRリガンドが組織化したナノ粒子を利用することによって、がん(種々の腫瘍を含む)、または感染性疾患を処置および/または予防するための方法も提供する。
【背景技術】
【0005】
1.がんの免疫療法
がんは、米国内で、かつ世界的に主要な死因であり、公衆衛生上の大きな問題をもたらしている。がんの免疫療法は、がん療法に対する有望なアプローチとなっている(Di Lorenzoら、2011;Lesterhuisら、2011;Rosenberg,2011;WangおよびWang、2017)。いくつかの免疫療法に基づくチェックポイント遮断薬、例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)モノクローナル抗体(Ab)、イピリムマブ(Yervoy)、プログラム細胞死(PD)-1抗体、ペンブロリズマブ(Keytruda)が、多くの種類のがんの処置のために、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている(Bagcchi、2014;Hodi、2010;Kantoffら、2010;Bender、2017)。さらに、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)組換えT細胞を用いた細胞に基づく免疫療法によって、血液がん(例えば、白血病およびリンパ種)において、有望な臨床反応が示されている。
【0006】
こうした急速な進歩にもかかわらず、がん患者の大多数は、一般に、チェックポイント遮断療法に反応しない。例えば、免疫チェックポイント療法に反応する肺がん患者は、約20%である。免疫チェックポイント療法に反応する乳がんおよび前立腺がん患者は、わずか13~18%である(Nandaら、2016;Kwonら、2014)。CAR-T細胞免疫療法技術は、血液がんにおいて有効であるが(Sadelainら、2017;JohnsonおよびJune、2017)、おそらく腫瘍微小環境における免疫抑制のために、固形がんにおいては有効ではない。近年の研究により、免疫チェックポイント遮断療法の臨床有効性は腫瘍組織中の腫瘍反応性T細胞の存在に依存し、腫瘍浸潤T細胞、PD-L1発現、および変異荷重と関係があることが示されている(Sharmaら、2017)。腫瘍組織に腫瘍浸潤抗原特異的T細胞が欠けているがん患者は、一般に、免疫チェックポイント療法に対して反応しない。これらの問題点を克服するために、がんワクチンによって、腫瘍を制御するための腫瘍特異的T細胞を増加させ得る。代替的な戦略は、がん患者由来であるか、またはT細胞上に腫瘍抗原特異的TCRもしくはCARを発現するように操作された、腫瘍特異的T細胞の養子移入である。
【0007】
がんワクチンによる免疫療法は、非常に腫瘍特異的な細胞傷害性の可能性をもたらし、したがってがん処置のための非常に魅力的なアプローチである。実際に、最初の治療用がんワクチン(シプロイセルT;PROVENGE(著作権)、Dendreon)は、転移性前立腺がんの処置のために、2010年にFDAに承認された(Kantoffら、2010)。しかしながら、がんワクチンによって、一般に、限られた臨床的成功が得られているにすぎない。FDAに承認されているシプロイセルT(PROVENGE(著作権))ワクチンでさえ、対照群と比較して患者を4.1か月延命させるが、著明な臨床反応は示さない。抗原ペプチドまたは抗原ペプチドをパルスした樹状細胞(DC)によるワクチン接種は、抗腫瘍免疫を生じさせ得るが、試験対象となっているいくつかの種類のがんにおいて、有意な臨床的有効性を得るために十分な免疫応答を生じさせることはできない(Meleroら、2014;Rosenbergら、2004)。DC/ペプチドまたはタンパク質ワクチン単独では、強力で持続的な抗腫瘍応答を生じさせるのに十分なほど強力ではない可能性がある(Rosenbergら、2004)。
【0008】
以前の研究により、チロシン関連タンパク質-2(tyrosinase-related protin-2)(TRP-2)などのがん抗原ペプチドを、細胞透過性ペプチド(CPP)共有結合性連結を介してDC内に細胞内送達することによって、主にT細胞に対するDCの抗原提示時間が延長されるために、抗原特異的T細胞応答およびがんに対する抗腫瘍免疫が増強されることが示されている(WangおよびWang、2002;Wangら、2002)。これらの前臨床試験に基づいて、TAT-NY-ESO-1ペプチドを用いた臨床試験が開始され、このペプチドワクチンが安全であり、評価された9人の前立腺がん患者のうち6人において抗原特異的T細胞応答を誘導できることが見いだされ、これはワクチン接種された患者においてPSA倍加時間が増加したことと相関があった(Sonpavdeら、2014)。しかしながら、全ての免疫応答は、がんの退縮を誘導するためには、あまりに弱く、また一過性である。したがって、がんおよびその他の疾患に対するより強力なワクチンを開発するための、新たな戦略が緊急に必要とされている。
【0009】
Toll様受容体(TLR)は、最近、自然免疫システムの不可欠なコンポーネントとして見出され、TLRは、微生物感染を検出し、獲得免疫応答を誘導するためのDC成熟プログラムを活性化する(IwasakiおよびMedzhitov、2004;AkiraおよびTakeda;2016)。DCにおいて、自然免疫受容体(例えば、TLR、Nod様受容体(NLR)、およびRIG様受容体(RLR))を、その受容体の対応するリガンドと共にトリガーすることによって、核内因子κB(NFκB)、I型インターフェロン(IFN)、および炎症反応が活性化される。これらのシグナル伝達経路は、炎症促進性サイトカインを産生させ、強い自然および獲得免疫応答を誘導する。抗原をTLRリガンドと共に投与することによって、その抗原の免疫原性が増加し、DCのT細胞応答刺激能が増強され得る(BlanderおよびMedzhitov;2006;BlanderおよびMedzhitov;2006)。DCに、抗原ペプチドを、TLRリガンドと一緒にロードすることは、ペプチドとTLRリガンドを用いて強いT細胞応答を生じさせるために有効であり得る(PaluckaおよびBanchereau、2013)。
【0010】
マルチステージベクター(MSV)などのナノテクノロジーを用いることによって、より多くの抗原をナノリポソームまたはナノ粒子の中にロードすることができ、従来のDCワクチンと比較して、乳がんに対するより強い抗腫瘍免疫を生じさせることができた(Xiaら、2015)。黒色腫において、がん抗原ペプチドTRP-2は、MSVの中に、TLRリガンド(CpGおよびMPLA)と共にロードされ、次いで同じDCによってワクチンとして取り込まれるに違いないことが見出された(Zhuら、2018)。MSV/TRP-2をロードしたDCとMSVTLRリガンドをロードしたDCの混合物のワクチン接種によって強力な抗腫瘍免疫は生じず、このことは、ペプチドとTLRリガンドの共送達が決定的に重要であることを示唆している(Zhuら、2018)。しかしながら、MSVテクノロジーによる進歩にもかかわらず、DC/MSVベースのワクチン接種によって延長することができるマウスの生存期間は限られており(10日間)、DC/MSVベースのワクチン接種は、腫瘍成長を遅らせるだけであり、腫瘍細胞の完全な排除に十分な抗腫瘍免疫を生じさせ得ないことがさらに示唆された。
【0011】
これらの研究に基づき、現在のワクチン戦略は、がん細胞を完全に排除するために十分な免疫を生じさせることができなかったと推論された。代わりに、腫瘍微小環境における免疫抑制は、ペプチドワクチンによって誘導される抗腫瘍免疫を阻害する。CPP結合治療用ペプチドをロードしたDCががんを根絶させる抗腫瘍免疫を誘導することができない理由を理解するために、CPP結合治療用ペプチドは、DC内への抗原ペプチドの細胞内送達を促進することが見出された。同様に、CPPは、タンパク質、DNA、siRNA、およびmRNAを含むさまざまなカーゴを細胞内に(標的細胞内に)送達するために用いられてきた。しかしながら、CPP TAT-NY-ESO-1ペプチドは、ワクチンアジュバントであるモンタニドISA-51と安定的なエマルジョンを生じさせることが困難であることが判明した。TAT-NY-ESO-1とモンタニドISA-51のエマルジョン液滴は、不安定であり、水中で短時間に拡散し、このことはワクチンの有効性に影響を及ぼし得る。このTAT-NY-ESO-1とモンタニドISA-51の不安定な特性は、本発明者らを、この問題の解決方法のさらなる研究に駆り立てた。1つの潜在的な問題は、CPP(すなわち、TAT)の正電荷(親水性)が、CPP-NY-ESO-1とモンタニドISA-51のエマルジョンを破壊している可能性があることである。
【0012】
強力なワクチンは、自然免疫シグナル伝達コンポーネントを含有しているに違いない。本発明者および共同研究者らの最近の研究によって、抗原ペプチドとTLRリガンドの同じDC内への共送達が、強力かつ効果的な免疫応答を生じさせるために必要であることが見出された(Zhuら、2018)。MSVに基づくアプローチによって、抗原ペプチドと核酸に基づくTLRリガンドの同じDC内への共送達が改善されるが、これによって抗腫瘍免疫が増強される。しかしながら、このアプローチでは、前述の基本的な問題は解決されず、すなわち、抗原ペプチドと核酸に基づくTLR3およびTLR9リガンドは、ペプチドは疎水性であり、核酸は負に荷電しているために、複合体を形成しない。
【0013】
上記の点に鑑み、T細胞エピトープ、B細胞エピトープ、治療用核酸分子、およびアジュバントを含むがん治療用分子のための、改善された送達方法の必要性が存在する。
2.自己組織化したペプチドに基づくナノ構造
【0014】
分子の自己組織化は、規則的な構造の自発的な形成であり、特異的かつ局所的な分子相互作用により、ある熱力学的および動力学的条件下で起こる。水素結合、疎水性相互作用、静電的相互作用、およびファンデルワールス力によって分子は結合され、安定的な低エネルギー状態に維持される。ナノおよび/またはマイクロスケールの両方において階層的な構造を形成する自己会合が起こり、これらの最小のエネルギーが実現される(Hanら、2010)。
【0015】
自己組織化は、本来、タンパク質のフォールディング、DNAの二重らせん形成、および細胞膜の形成の間に自発的に起こる(Korolkovら、2013)。アミノ酸などの天然の生体分子基本要素から製造される自己組織化ナノ構造は、生体適合性があり、「ボトムアップ」な製造が容易であるため(Yanら、2010)、それらの合成自己組織化単層(SAM)代替物よりもはるかに好ましい(Tayebe Zohrabiら、2015)。
3.細胞透過性ペプチド
【0016】
細胞透過性ペプチド(CPP)は、8~30アミノ酸の短いペプチドとして一般的に記述され、生体膜を透過して、種々の生体分子の細胞膜を横断する細胞質内への移動をトリガーし、かつその細胞内経路を改善し、それによって標的との相互作用を促進することができる(例えば、米国特許第9,598,465号を参照のこと)。CPPは、タンパク質由来またはキメラ配列由来のいずれかであり、通常両親媒性であり、正の実効電荷を有している(Morrisら、2008;Hansenら、2008;Heitzら、2009)。タンパク質から、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTatタンパク質(FrankelおよびPabo、1988)、単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質(ElliottおよびO’Hare;1997;Phelanら、1998)、および線維芽細胞成長因子(Linら、1995;Rojasら、1998)を含む、いくつかのCPPが同定されている。Tatペプチドおよび膜移行配列(membrane-translocating sequence)(MTS)は、in vitroおよびin vivoの両方において、タンパク質を細胞内に導入するために使用されてきた(Farwellら、1994;Kimら、1997;Schwarzら、1999;Lindgrenら、2000)。
【0017】
CPPは、2つの大きなクラスに細分化することができ、1つ目はカーゴとの化学結合を必要とし、2つ目は安定な非共有結合複合体の形成に関係している。CPPは、多種多様なカーゴ(プラスミドDNA、オリゴヌクレオチド、siRNA、PNA、タンパク質、ペプチド、リポソーム、ナノ粒子)を、多種多様な細胞型およびin vivoモデル内に送達するために使用されてきた(Morrisら、2008;BeggarsおよびSagan,2013;Huangら、2015;Marcusら、2016;Gungorら、2014)。これらのケースでは、CPPは、主にその膜移動能によって、カーゴを細胞内に運搬する(図1)。これらの適用において、CPPに共有結合で連結した治療的なT細胞エピトープは存在しない。よって、CPPは、両親媒性ではなく、CPP-T細胞ペプチド(負に荷電している分子と共にナノ粒子に自己組織化するための両親媒性をする)とは異なる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、標的化送達システムを有する新たなワクチンを提供することによって、これらの制約および従来技術に内在するその他の制約を克服する。開示されているのは、1またはそれを超える疎水性治療用ペプチドリガンド(TLR(toll様受容体)および抗原ペプチドを含む)に結合されたカチオン性細胞透過性ペプチド(CPP)の集団から構成される自己組織化ナノ粒子である。得られるナノ粒子の両親媒性(すなわち、親水性部分および疎水性部分の両方を含む)は、加えて、1またはそれを超える治療のためのmRNA、siRNA、および/またはDNA分子の組み込みを促進する。得られる粒子は、中性pHにおいて自己組織化であり、T細胞に提示するための樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)内に送達され、免疫システムの活性化を引き起こすことができ、または、この粒子は、ワクチンとして直接送達されてもよい。
【0019】
特定の実施形態において、本発明者らは、それぞれがある特定の治療用ペプチド(例えば、抗原ペプチド(好ましくは疎水性である))に共有結合で連結している複数のカチオン性CPPが、密でサイズが小さい(50~100nm)自己組織化ナノ粒子を形成することができ、治療用ペプチドの効果的な細胞内送達を実現するために使用することができることを実証している。ナノ粒子の形成およびナノ粒子の細胞膜を横断する送達を促進するために、負に荷電している分子(DNA、dsRNA、siRNA、またはmRNA)などのその他のコンポーネントをナノ粒子に組み込んでもよい(図2)。このナノ粒子は、(i)好ましい疎水性を有する治療用ペプチドに共有結合で連結している正に荷電しているペプチドを有するCPPを含むコロナ、および(ii)負に荷電している分子(DNA、dsRNA、siRNA、またはmRNA)に加えて疎水性分子(MPLAなど)、を含む。電荷と疎水性に基づき、本発明者らは、図2Aおよび図2Bに概略的に示すように、TLRリガンド[CpGとMPLA(略してCM);CpGとMPLAとポリ(I:C)(略してCMI)]を含む自己組織化CPP-T細胞ペプチドナノ粒子の新規技術を設計および開発した。正に荷電しているペプチドを有し、治療用ペプチド(例えば、NY-ESO-1[SLLMWITQCFLPV(配列番号1)]およびTRP-2[SYVDFFVWL(配列番号2)](一般に疎水性))と共有結合で連結しているCPP(TATなど)からなる、両疎媒性または両親媒性CPP治療用ペプチドは、一方では電気的相互作用によって負に荷電しているCpGおよび/またはポリ(I:C)と共に、他方では粒子内部の疎水性によってMPLAと共にナノ粒子を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された図面を少なくとも1枚含んでいる。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公開のコピーは、請求し必要な料金の納付を行えば、官庁から頒布される。
【0021】
以下の図面は、本出願の一部を構成し、本発明のある特定の態様を説明するために含められている。本発明の原理の理解を促進するために、図面に示された実施形態または実施例を参照し、それを説明するために特定の用語を使用する。それにもかかわらず、そのことが本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されよう。記載されている実施形態における任意の変更およびさらなる改変、ならびに本明細書に記載されている本発明の原理の任意のさらなる適用は、本発明が関連する技術分野における当業者が通常想到するように企図される。
【0022】
本発明は、添付の図面と併せてとられる以下の説明(そこでは、同様の参照数字は、同様の要素を特定する)を参照することによって、よりよく理解される。
【0023】
図1図1は、CPPが、カーゴを細胞内に送達するキャリアーとして働くことを図解する。
【0024】
図2-1】図2Aおよび図2Bは、カチオン性のCPP-T細胞エピトープペプチドが、両親媒特性(amphopathetic property)を有し、ナノ粒子を形成すること、およびそのエンドソーム内への送達を示す。図2A:カチオン性CPP(正電荷)は、T細胞エピトープペプチド(疎水性)と共有結合で連結し、両親媒特性(amphopatheic property)を持たせている。CpGとポリ(I:C)は負に荷電しているのに対し、MPLAは疎水性である。CPP-T細胞ペプチドは、一方では電気的相互作用によってCpGおよび/またはポリ(I:C)と共に、他方では粒子内部の疎水性相互作用によってMPLAと共に、ナノ粒子を形成する。図2B:CPPペプチド/TLRリガンドナノ粒子は、DCまたはマクロファージによって取り込まれ、エンドソーム内に送達され、そこでCPPペプチド/TLRリガンド粒子はpH4.0で破壊される。CPPペプチドはプロセシングされ、そしてMHCクラスIまたはII分子によってT細胞に提示され、一方で、TLRリガンドはTLR3、TLR4、およびTLR9に結合して自然免疫応答およびサイトカイン産生をトリガーし、それによってT細胞応答の効率と質が高められる。
図2-2】同上。
【0025】
図3-1】図3A-1、図3A-2、図3B-1、図3B-2、図3C-1、および図3C-2は、TAT-TRP2と、CpGおよびMPLA(略してCM)の自己組織化ナノ粒子を示す。TRP2自体は、CpGおよびMPLAと粒子を形成できなかった。AFM解析は、ナノ粒子の横断面のサイズを示す。
図3-2】同上。
【0026】
図4図4は、TAT-TRP2の、さまざまな比率のTLRリガンドとの自己組織化ナノ粒子のサイズ分布に関するDLS測定を示す。TAT-TRP2とTLRリガンド(異なる比率)の組み合わせは、表3に列挙されている。灰色のバーは、PDIが大きい(PDI>0.5)、不安定/多分散複合体を示す。
【0027】
図5図5は、種々の窒素(+)対リン酸(-)(N/P)比における、TAT-TRP2、CpG、およびMPLAから構成されるTAT-TRP2-CM複合体のゼータ電位を示す。
【0028】
図6-1】図6Aおよび図6Bは、TAT-TRP2-CM複合体の特徴付けを示す。HO中のTAT-TRP2-CM複合体のサイズに関するDLS測定(図6A)。HO中のTAT-TRP2(別称TRP2TAT)、CpG、MPLA、およびTAT-TRP2-CM複合体のゼータ電位(図6B)。PDIは、多分散指数。
図6-2】同上。
【0029】
図7-1】図7A図7B図7C図7D図7E、および図7Fは、TAT-TRP2およびTAT-ESO-1と、CpGおよびMPLAのナノ粒子(TAT-TRP2-CM、TAT-ESO-l-CM)、ならびにTAT-TRP2およびTAT-ESO-1と、CpG、MPLA、およびポリ(I:C)のナノ粒子(TAT-TRP2-CMIおよびTAT-ESO-1-CMI)を示す。TAT-TRP2およびTAT-ESO-1ナノ粒子の概略図(図7A)。TAT-TRP2およびTAT-ESO-1とCMのナノ粒子サイズ(図7B)、またはTAT-TRP2およびTAT-ESO-1とCMIのナノ粒子サイズ(図7Cおよび図7D)。図7Eおよび図7F:TAT-TRP2-CM、TAT-TRP2-CMI、TAT-ESO-l-CM、およびTAT-ESO-1-CMIのゼータ電位。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
【0030】
図8図8A図8B、および図8Cは、さまざまなpH値におけるTAT-TRP2-CM複合体の特徴付けを示す。(図8Aおよび図8B)pH7.0(図8A)およびpH4.0(図8C)のリン酸カリウムバッファー中におけるTAT-TRP2-CM複合体のサイズに関するDLS測定。(図8C)pH7.0およびpH4.0のリン酸カリウムバッファー中における、TAT-TRP2(別称TRP2TAT)、CpG、MPLA、およびTAT-TRP2-CM複合体のゼータ電位。PDIは、多分散指数。
【0031】
図9-1】図9A図9B図9C、および図9Dは、TAT-TRP2/TLRおよびTAT-ESO-l/TLRの組織化およびナノ粒子が、pH依存的であることを示す。図9Aは、pH4~7のリン酸カリウムバッファー中におけるTAT-TRP2-CM複合体のサイズ変化に関するDLS測定を示す。図9Bは、DCにおけるTAT-TRP2またはTAT-TRP2-CM複合体の取り込み、およびpH依存的複合体解体プロセスの概略図である。図9Cおよび図9Dは、pH7およびpH4のリン酸カリウムバッファー中におけるTAT-TRP2-CM(図9C)、TAT-ESO-l-CM TAT-TRP2-CMI
図9-2】同上。
【0032】
図10-1】図10は、自然免疫応答およびサイトカイン産生を刺激するためのTLRリガンドの組み合わせを示す。骨髄由来DCを単離し、次いでさまざまなTLRリガンド(1種のみ)、2種の組み合わせ、または3種の組み合わせで処理した。細胞上清におけるサイトカイン(TNF-α、IL-6、IFN-α、およびIFN-β)の産生をELISAによって決定した。ポリ(I:C)/CpG、CpG/MPLAの2種の組み合わせ、およびCpG/ポリ(I:C)/MPLAの3種の組み合わせは、自然免疫サイトカイン産生のトリガーにおいて、他の群よりも強力であった。
図10-2】同上。
【0033】
図11図11は、DC/TAT-TRP2-CMおよびDC/TRP2-CMでワクチン接種したC57BL/6マウスにおける、B16腫瘍の肺転移モデルを示す。第0日にB16腫瘍細胞(0.2×10細胞/マウス)をC57BL/Cマウスに注射(静脈内)し、第5日にDC/TAT-TRP2-CM、DC/TRP2-CM、またはDC/β-gal-CMでワクチン接種した(5×10細胞/マウス)。第18日にマウスを屠殺した。肺転移の数をカウントした。
【0034】
図12-1】図12A図12B、および図12Cは、種々のワクチンを接種した後の、B16担持C57BL/6マウスの肺転移および生存を示す。図12Aは、腫瘍モデルおよびワクチン接種スケジュールを示す。図12Bにおいて、第0日にB16腫瘍細胞(0.2×10細胞/マウス)をC57BL/Cマウスに注射(静脈内)し、第5日に異なる5つの群のワクチン接種を行った(5×10細胞/マウス)。第18日に全てのマウスを屠殺した。肺転移の数をカウントした。図12Cは、B16注射およびワクチン接種が図12Bと同じであったことを示す。異なる群のワクチン接種したB16担持マウスを、生存に関して、55日間モニタリングした。エラーバーは標準偏差を示す。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図12-2】同上。
【0035】
図13-1】図13Aおよび図13Bは、DC/TAT-ESO-CMおよびTAT-ESO-CMIワクチンが、強い抗腫瘍免疫を生じさせることを示す。第0日にRM1/A2-ESO-1腫瘍細胞をHLA-A2 Tgマウスに注射した。腫瘍担持マウスをワクチン(DC/対照、DC/TAT-ESO-CM、またはDC/TAT-ESO-CMI)で処置した。腫瘍成長を2日毎にモニタリングした。図13Aは、第15日における腫瘍サイズを示す。図13Bは、腫瘍成長曲線を示す。異なる群の間のP値が示されている。
図13-2】同上。
【0036】
図14-1】図14Aおよび図14Bは、DC/対照、DC/TAT-ESO-CM、またはDC/TAT-ESO-CMIでワクチン接種したマウスにおけるT細胞応答を示す(図14A)。図14Bは、CD8T細胞(cT細胞)における%IFN-γ(INFγ)を示す。
図14-2】同上。
【0037】
図15図15は、DC/TAT-ESO-CMワクチン接種後の、乳がん成長の著しい阻害を示す。第0日にE0771/A2-ESO-1腫瘍細胞をHLA-A2 Tgマウスに注射した。腫瘍担持マウスをDC/対照またはDC/TAT-ESO-CMで処置した。腫瘍成長を2日毎にモニタリングした。DC/TAT-ESO-CMによるワクチン接種は、乳がん成長を顕著に阻害した。
【0038】
図16図16A図16B、および図16Cは、TAT-ESO-CMIによる直接的免疫が、DC/TAT-ESO-CMIワクチン接種と比較して、強力かつ治療的な抗腫瘍免疫を生じさせたことを示す。図16Aにおいて、第0日にRM1/A2-ESO腫瘍細胞をHLA-A2 Tgマウスに注射し、次いで第10、13、および18日にTAT-ESO-CMIを3回注射するか、または第10日にDC/TAT-ESO-CMIワクチン接種を行った。腫瘍成長を2日毎にモニタリングした。図16Bにおいて、腫瘍サイズはそれぞれの群ごとに示されている。図16Cにおいて、ワクチン接種後の、3つの群の腫瘍成長を記録した。群の間の有意差に関するP値が示されている。
【0039】
図17図17A図17B図17C、および図17Dは、乳がんサンプルおよび細胞系におけるCT83発現を示す。図17Aは、CT83発現乳がん細胞系のRF-PCR解析を示す。図17Bは、RT-PCR解析を用いた、乳がんサンプルにおけるCT83発現を示す。NY-ESO-1は、陽性対照の役割を果たした。図17Cは、抗CT83抗体を用いた、乳がん細胞系のウェスタンブロット解析である。CT83発現に関する正常組織および乳がん組織の抗体染色を図17Dに示す。
【0040】
図18図18Aおよび図18Bは、肺がんサンプルおよび細胞系におけるCT83発現を示す。図18Aは、CT83発現肺がん細胞系およびがんサンプルのRF-PCR解析を示す。図18Bは、抗CT83抗体を用いた、肺がん細胞系におけるCT83発現のウェスタンブロット解析を示す。MDA-468は、陽性対照の役割を果たした。
【0041】
図19-1】図19A図19B図19C、および図19Dは、CMIを含む自己組織化TAT-CT83ペプチドナノ粒子を用いたCD83特異的T細胞の生成を示す。図19Aは、TAT-CT83-CMI免疫マウスの脾細胞から放出されたIFN-γの細胞内染色を示す。図19Bは、ELISAによるIFN-γ放出アッセイを示す。図19Cは、1サイクルの培養後の、CT83ペプチドに対するT細胞応答を示す。図19Dは、CT83-A2拘束性ペプチドT細胞クローンの確立を示す。
図19-2】同上。
【0042】
図20-1】図20A図20B図20C、および図20Dは、TAT-CT83-CMIワクチンが、E0771-A2-CT83乳がんに対する強力な抗腫瘍免疫を生じさせることを示す。(図20A)HLA-A2トランスジェニックマウスにおけるE0771-A2-CT83乳がんモデルの確立、およびワクチン接種スケジュールのスキーム。(図20B)示されているワクチン製剤を、単独で、または抗PD1遮断療法と共に、2回免疫(10mg/kg体重、腹腔内)した後のE0771-A2-CT83乳房腫瘤のイメージ。(図20C)示されている製剤を、抗PD1抗体と共に、または抗PD1抗体なしでワクチン接種したマウスから、第16日に切り出され、測定された腫瘍の重量。(図20D)TAT-CT83-CMIワクチン接種を行った、または行わなかった腫瘍部位におけるCD3T細胞浸潤の免疫組織化学染色。
図20-2】同上。
【0043】
図21図21A図21B図21C、および図21Dは、TAT-ESO-CMIのワクチン接種が、乳がんに対する強力な治療的免疫を生じさせることを示す。(図21A)ワクチン接種実験のデザインの概略図。(図21B)HLA-A2 Tgマウスにおける、各群の腫瘍成長を示す。(図21C)マウスおよび腫瘍サイズのイメージ。(図21D)DCなしのTAT-ESO-CMIによるワクチン接種は、腫瘍成長を顕著に阻害した。P<0.05、**P<0.01。
【0044】
図22図22A図22B、および図22Cは、TAT-TRP2-CMI単独のワクチン接種、または抗PD-1療法と組み合わせたワクチン接種を示す。(図22Aおよび図22B)TAT-TRP-2/CMI単独のワクチン接種、または抗PD-1処置と組み合わせたワクチン接種を受けたマウスの肺イメージおよび肺転移数。(図22C)TAT-TRP-2/CMI単独のワクチン接種、または抗PD-1療法と組み合わせたワクチン接種後のマウスの生存期間。
【0045】
図23図23Aおよび図23Bは、TAT-ESO-CMI単独のワクチン接種、または抗PD-1療法と組み合わせたワクチン接種を示す。(図23A)対照群と比較した、TAT-ESO-CMI単独のワクチン接種、または抗PD-1処置と組み合わせたワクチン接種を受けたHLA-A2-TgマウスにおけるRM1/A2-ESO腫瘍細胞の腫瘍イメージ。(図23B)対照群と比較した、TAT-ESO-CMI単独のワクチン接種、または抗PD-1療法と組み合わせたワクチン接種後の腫瘍成長曲線。
【0046】
図24図24Aおよび図24Bは、TCR-T細胞移植後のSAPNANOワクチン接種が、腫瘍浸潤T細胞を増加させ、腫瘍成長を顕著に阻害することを示す。(図24A)異なる処置群間の腫瘍成長。P値<0.05。(図24B)A2-ESO TCR-T細胞単独のワクチン接種、またはTAT-ESO-CMIと組み合わせたワクチン接種後の、腫瘍浸潤A2-ESO TCR-T細胞の増加のパーセンテージを示す。A2-ESO TCR-T細胞は、抗CD3陽性T細胞上で出会う抗TCRヒトVβ13抗体を用いて検出した。TAT-ESO-CMIワクチンに誘導された内在性T細胞は、抗TCRヒトVβ13抗体によって検出できなかった。
【0047】
図25図25A図25B図25C図25D、および図25Eは、NY-ESO TCR-T療法とTAT-ESO-CMIワクチン接種の組み合わせが、ヒト化NSGマウスモデルにおいて強い抗腫瘍応答を生じさせたことを示す。(図25A)動物実験の概略図。3~4週齢のNSGマウスを、腫瘍インキュベーションの3~4週間前に、1×10のヒトPBMCを静脈内注射してヒト免疫システムを再構成させることによってヒト化した。HLA-A2/NY-ESO陽性ヒト乳がん細胞(MDA-MB-231-A2-ESO)をヒト化NSGマウスの脂肪パッドに皮下注射した(100万/マウス)。腫瘍担持マウスを、第5日にNY-ESO TCR-T細胞で処置した。3回のヒトIL2(50000IU)投与、および4回のTAT-ESO-CMIワクチン投与を静脈内注射によって行った。第30日にマウスを屠殺した。(図25B)ヒト化の3週間後に、FACSによって、NSGマウスにおけるヒトリンパ球を検出した。(図25C)処置後、腫瘍成長をモニタリングした。データは平均±標準誤差を表す。PBS対照群(N=4)、その他の群(N=5)、2元配置分散分析試験を統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01。(図25Dおよび図25E)マウスから切り出した後に、腫瘍重量をイメージ化し、秤量した。(平均±標準誤差、T検定を統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
【発明を実施するための形態】
【0048】
配列の簡単な説明:
配列番号1は、本開示の一態様に従って使用するための例示的な治療用NY-ESO-1特異的(speficic)ペプチドである。
【0049】
配列番号2は、本開示の一態様に従って使用するための例示的な治療用TRP-2特異的ペプチドである。
【0050】
配列番号3は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なHIV Tat47-57特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0051】
配列番号4は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT-PTD-4特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0052】
配列番号5は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT-PTD-5特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0053】
配列番号6は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なDPV3特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0054】
配列番号7は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なDPV6特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0055】
配列番号8は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なDPV7特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0056】
配列番号9は、本開示の一態様に従って使用するための例示的な9残基ポリアルギニン細胞透過性ペプチド配列である。
【0057】
配列番号10は、本開示の一態様に従って使用するための例示的な9残基ポリリジン細胞透過性ペプチド配列である。
【0058】
配列番号11は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なFHVコート特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0059】
配列番号12は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なシグナルペプチドII特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0060】
配列番号13は、本開示の一態様に従って使用するための例示的な両親媒性モデルペプチド特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0061】
配列番号14は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なHSV VP22特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0062】
配列番号15は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なペプチドキャリアー特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0063】
配列番号16は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なCL22特異的細胞透過性ペプチド配列である。
【0064】
配列番号17は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTRP-2特異的ペプチド配列である。
【0065】
配列番号18は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0066】
配列番号19は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0067】
配列番号20は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0068】
配列番号21は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0069】
配列番号22は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0070】
配列番号23は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0071】
配列番号24は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0072】
配列番号25は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0073】
配列番号26は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0074】
配列番号27は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
【0075】
配列番号28は、本開示の一態様に従って使用するための例示的なTAT結合ペプチドである。
例証的な実施形態の説明
【0076】
本発明の例証的な実施形態を以下に説明する。明確性をもたらすため、本明細書において、実際の実施の全ての特徴が説明されているわけではない。当然のことであるが、このような実際の実施形態のいずれの開発においても、開発者の特定の目標、例えば、システムに関連する制約およびビジネスに関連する制約に対する適合性など(これらは実施ごとに異なる)を実現するために、実施に固有の数多くの決定を行わなければならないことが理解されよう。さらに、このような開発努力は、複雑で多くの時間を必要とし得るが、本開示の恩恵を受けた当業者にとっては、日常的な業務であろうことが理解されよう。
【0077】
したがって、第1の態様において、本発明は、それぞれが疎水性治療用ペプチドに共有結合で連結している多数のカチオン性CPPを含むナノ粒子を提供し、前記ナノ粒子は、中性条件下、例えば、pH7.0において自己組織化し、酸性条件下、例えばpH4.5において解離する(図2Aおよび図2B)。
【0078】
いくつかの実施形態において、カチオン性CPPは、TAT、TAT-PTD-4、TAT-PTD-5、DVP3、DVP6、DVP7、ポリアルギニン(R9)、ポリリジン(K9)、FHVコート、シグナルペプチドI、シグナルペプチドII、PRES、トランスポータン、両親媒性モデルペプチド、HSV VP22、およびCL22からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、カチオン性CPPは、8~30アミノ酸からなる。一実施形態において、カチオン性CPPは、Tatである。
【0079】
いくつかの実施形態において、治療用ペプチドは、T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態において、T細胞エピトープは、腫瘍特異的エピトープまたは病原体特異的エピトープである。いくつかの実施形態において、治療用ペプチドは、9~25アミノ酸からなる。T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドは、特定の疾患、例えば腫瘍、および感染性疾患に向けられる。
【0080】
本発明のナノ粒子は、CPPに非共有結合している少なくとも1つの負に荷電している分子、好ましくは負に荷電しているTLRリガンドをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、負に荷電している分子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリ(I:C)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、長さが20~24bpである。いくつかの実施形態において、ポリ(I:C)は、長さが0.2~1kbである。
【0081】
本明細書に記載されているナノ粒子は、治療用ペプチドに非共有結合している少なくとも1つの疎水性分子、好ましくは疎水性TLRリガンドも保持していてもよい。いくつかの実施形態において、疎水性分子は、モノホスホリル脂質A(MPLA)、R848、またはそれらの組み合わせである。
【0082】
本明細書に開示されているナノ粒子は、細胞に取り込まれ得る。いくつかの実施形態において、T細胞エピトープを有する抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドを含むナノ粒子は、in vitroとin vivoの両方において、APC(特にDCまたはマクロファージ)に取り込まれ得る。いくつかの実施形態において、TLRリガンドは、1またはそれを超えるTLRシグナル伝達経路を活性化する。
【0083】
別の態様において、本開示は、本発明のナノ粒子および医薬的に許容され得るキャリアー(好ましくは約pH7.0のもの)を含む、医薬組成物を提供する。
【0084】
第3の態様において、本開示は、また、それぞれが疎水性治療用ペプチドに共有結合で連結している複数のカチオン性CPPを含み、かつ、必要に応じて、少なくとも1つの負に荷電している分子および/または少なくとも1つの疎水性分子を含む、上記のナノ粒子を生成するための組成物も提供する。
【0085】
本組成物中のコンポーネントは、ナノ粒子の投与に先立って、約pH7.0の媒体中で混合してもよい。ナノ粒子は、媒体中で自己組織化し、in vitroでエンドサイトーシスによってAPCに取り込まれ、次いでワクチンとして使用される。あるいは、自己組織化ナノ粒子を調製し、動物に送達し、そこで自己組織化ナノ粒子がin vivoでDCまたはマクロファージに取り込まれてもよい。DCまたはマクロファージによるナノ粒子の取り込みがin vitroであるかin vivoであるかにかかわらず、自己組織化ナノ粒子はエンドソームまたはリソソームに入り、そこでナノ粒子はpH4.5で破壊され;CPP結合ペプチドおよびTLRリガンドが放出される。エンドソーム局在TLR3、TLR7、TLR8、およびTLR9は、自然免疫シグナル伝達をトリガーするためにTLRリガンドに結合し、一方で、CPP結合ペプチドは、ロードおよび提示のために、エンドソーム中のMHCクラスII分子に結合するか、または抗原プロセシングおよびMHCクラスI分子によるT細胞に対する提示のために、エンドソーム膜を横断して細胞質、ER、およびゴルジに入る。
【0086】
いくつかの実施形態において、カチオン性CPPは、TAT、TAT-PTD-4、TAT-PTD-5、DVP3、DVP6、DVP7、ポリアルギニン(R9)、ポリリジン(K9)、FHVコート、シグナルペプチドI、シグナルペプチドII、PRES、トランスポータン、両親媒性モデルペプチド、HSV VP22、およびCL22からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、カチオン性CPPは、8~30アミノ酸からなる。一実施形態において、カチオン性CPPは、Tatである。いくつかの実施形態において、治療用ペプチドは、T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態において、T細胞エピトープは、腫瘍特異的エピトープまたは病原体特異的エピトープである。いくつかの実施形態において、治療用ペプチドは、MHCクラスI分子によって提示される8、9、10、または11アミノ酸、またはMHCクラスII分子によって提示される9~25アミノ酸からなる。T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドは、特定の疾患、例えば腫瘍、および感染性疾患に向けられる。
【0087】
いくつかの実施形態において、負に荷電している分子は、負に荷電しているTLRリガンドである。いくつかの実施形態において、負に荷電している分子は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリ(I:C)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、長さが15~24bpである。いくつかの実施形態において、ポリ(I:C)は、長さが0.2~1kbである。いくつかの実施形態において、非共有結合的な疎水性分子は、疎水性TLRリガンドである。いくつかの実施形態において、疎水性分子は、モノホスホリル脂質A(MPLA)、R848、またはそれらの組み合わせである。
【0088】
第4の態様において、本開示は、がんまたは感染性疾患の少なくとも1つの症状の処置、予防、および/または改善のための方法を提供する。包括的かつ一般的な意味で、本方法は、典型的には、本明細書に開示されているナノ粒子を含む医薬製剤の治療有効量を、それを必要としている対象に提供することを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、がんは、危険な腫瘍であり、そのような腫瘍は、特定の疾患に応じて、構造的に固形であるか、または非固形であり得る。ある特定の実施形態において、処置されるがん性腫瘍は、原発腫瘍または転移腫瘍(例えば、限定するものではないが、1またはそれを超える黒色腫または肺がん)である。
【0090】
他の実施形態において、疾患の処置は、例えば、1またはそれを超えるウイルス、真菌、および/または細菌感染の処置において、特に意図され得る。
【0091】
ナノ粒子中のT細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドは、APC(特にDCまたはマクロファージ)によって、プロセシングされ、そして新たに合成されたMHCクラスII分子によってT細胞に長時間提示される。ナノ粒子内に含まれるTLRリガンドは、DCまたは免疫細胞を刺激して自然免疫応答(例えばI型インターフェロンサイトカインの放出)を生じさせ、エピトープをT細胞に提示し、活性化のためにT細胞を共刺激するDCの能力、ならびにT細胞の成長および増大のためのサイトカイン刺激を増強する。
【0092】
本明細書に記載されているナノ粒子によって、同じ抗原提示細胞(たとえば、DCまたはマクロファージ)内への、T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドと、2またはそれを超えるTLRリガンドの共送達を強化し、それによって強力かつ効果的な免疫応答を生じさせることが可能となる。得られる効果(例えば抗腫瘍効果または抗病原体効果)は、いくつかの他の送達プラットフォーム(例えば、MSV)よりも優れたものであり得る。
【0093】
本開示のその他の目的、特徴、および利点が、以下の詳細の説明から明らかになる。しかしながら、この詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、本発明の趣旨および範囲内の種々の変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになることから、単に例証の目的で示されているものである。
医薬製剤
【0094】
ある特定の実施形態において、本開示は、動物の1またはそれを超える細胞または組織に、単独で、または診断、予防、および/または治療の1またはそれを超えるその他の様式と組み合わせて投与するための、医薬的に許容され得る製剤に調製された自己組織化ナノ粒子組成物に関する。医薬的に許容され得る賦形剤およびキャリアー溶液の製剤化は、種々の治療、予防、診断、および予後レジメンにおいて、本明細書に記載されている自己組織化ナノ粒子組成物を使用するための適切な投与レジメンおよび処置レジメンの開発がそうであるように、当業者に周知である。
【0095】
ある特定の状況において、本開示の適切に製剤化された医薬ビヒクル中の自己組織化ナノ粒子組成物は、1またはそれを超える標準的な送達デバイス(限定されないが、皮下、非経口、静脈内、筋肉内、髄腔内、腫瘍内、腹腔内、経皮、局所、経口または経鼻吸入による、または直接注射による送達デバイスが含まれる)によって、動物の体内またはその周辺の1またはそれを超える細胞、組織、または器官に送達することが望ましい。
【0096】
投与方法としては、また、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号;および米国特許第5,399,363(これらは、明示された参照により、それぞれその全体が具体的に本明細書に援用される)に記載されているものもあげられ得る。遊離塩基または薬理学的に許容され得る塩としての活性化合物の液剤は、滅菌水中で調製してもよく、1またはそれを超える界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと適切に混合してもよい。分散液剤は、また、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、油、またはそれらの混合物中で調製してもよい。保存および使用の通常の条件下において、これらの調製物は、微生物の成長を防止するために、保存料を含有する。
【0097】
注射用水性液剤の投与のために、限定されないが、液剤は、必要であれば、適切に緩衝してもよく、液体希釈剤は、最初に十分な食塩水またはグルコースで等張にしてもよい。これらの特定の水性液剤は、筋肉内、皮下、経皮、真皮下、および/または腹腔内投与のために特に適切である。この点に関し、本発明の組成物は、例えば、無菌の水性媒体、バッファー、希釈剤などを含む、1またはそれを超える医薬的に許容され得るビヒクル中で製剤化してもよい。例えば、所与の用量の活性成分(単数または複数)を特定の体積の等張溶液(例えば、等張のNaClベースの溶液)に溶解し、次いで企図された投与部位に投与するか、または静脈内注入に適したビヒクルでさらに希釈してもよい(例えば、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES’」15版、pp.1035-1038および1570-1580を参照のこと)。処置する対照の状態、処置の程度、および投与部位に応じて、投薬におけるある程度の変更が必然的に発生するが、それにもかかわらず、投与の責任者は、医学および医薬の技術分野における通常の知識を用いて、個々の対象に適した正しい投与レジメンを決定できる。
【0098】
無菌の注射用組成物は、必要な量の本開示の自己組織化ナノ粒子組成物を、必要に応じて上に列挙したその他の成分のいくつかと共に、適切な溶媒中に混和し、次いで、ろ過滅菌することによって調製してもよい。一般に、分散液剤は、選択された滅菌の活性成分(単数または複数)を、基礎分散媒と上に列挙したその他の成分のうちの必要な成分を含む、無菌のビヒクル中に組み入れることによって調製することができる。本明細書に開示されている自己組織化ナノ粒子組成物は、また、中性または塩の形態で製剤化してもよい。
【0099】
医薬的に許容され得る塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基によって形成される)があげられ、この酸付加塩は、無機酸(例えば、限定されないが、塩酸またはリン酸)、または有機酸(例えば、限定されないが、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)によって形成される。遊離カルボキシル基によって形成される塩も、無機塩基(例えば、限定されないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄)、および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)から得ることができる。製剤化されたら、溶液は、投与製剤に適合するやり方で、かつ、意図した用途に有効な量で投与される。本発明の化合物の製剤は、注射用液剤、局所調製物、経口製剤(徐放性カプセル剤を含む)、ヒドロゲル、コロイド、粘稠ゲル、経皮試薬、鼻腔内および吸入製剤などの多様な剤形で投与することができる。
【0100】
本明細書に開示されている自己組織化ナノ粒子組成物の量、投薬レジメン、製剤、および投与は、本教示の恩恵を受けた当業者の認識範囲内である。しかしながら、1またはそれを超える本開示の組成物の診断的に有効な(すなわち、医薬的に有効な)量の投与は、単回投与によって、例えば、限定されないが、所望の利益を、それを必要とする患者にもたらすために十分な量の送達剤の単回注射によって実現され得る見込みがある。あるいは、いくつかの状況において、本開示の自己組織化ナノ粒子組成物の、複数回または連続的な、比較的短期間または、さらには比較的長期間にわたる投与が(そのような手順(単数または複数)、処置、治療、または診断を受けている選択された個体に対するかかる組成物の投与を監督する医師が決定し得るように)望ましい場合がある。
【0101】
典型的には、本明細書に記載されている1またはそれを超える自己組織化ナノ粒子組成物の製剤は、少なくとも有効量の第1の活性薬剤を含む。好ましくは、本製剤は、少なくとも約0.001%の各活性成分、好ましくは少なくとも約0.01%の活性成分を含んでいてもよいが、当然ながら、活性成分(単数または複数)のパーセンテージは、さまざまであってもよく、便宜には、全製剤に基づいて、約0.01~約90重量%もしくは体積%、または約0.1~約80重量%もしくは体積%、または好ましくは約0.2~約60重量%もしくは体積%の量で存在してもよい。当然、各組成物中の活性化合物(単数または複数)の量は、化合物の任意の所与の単位用量において適切な投薬量が実現されるようなやり方で調製されてもよい。溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的t1/2、投与経路、製品の有効期間などの因子、ならびにその他の薬理学的な考慮事項が、そのような医薬製剤調製の技術分野における当業者によって意図され、そうであるから、種々の投薬量および処置レジメンが望ましい場合がある。
【0102】
本発明の多くの実施形態において、全身投与が有効であると予期されるが、本明細書に開示されている製剤は、体内の1またはそれを超える器官、組織、または細胞型への直接注射に適することも予期される。本開示のナノ粒子の、体内の特定の目立たない部位に対する直接注射、または腫瘍、腫瘍幹細胞、がん性組織、および/もしくはがん幹細胞に直接行われる直接注射は、例えば、関連する腫瘍医学の技術分野における当業者に知られている適切な方法を使用して行ってもよい。
【0103】
本明細書に開示されている1またはそれを超える自己組織化ナノ粒子組成物を含む医薬製剤は、哺乳動物細胞(および、特にヒト細胞)と接触させるために、および/または哺乳動物対象(例えばヒト患者)に対して投与するために特に製剤化される、1またはそれを超える賦形剤、バッファー、または希釈剤をさらに含んでいてもよい。組成物は、必要に応じて、1またはそれを超える診断剤もしくは予後剤(prognostic agent)をさらに含んでいてもよく、および/またはマイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノスフェア、もしくはナノ粒子の追加の集団(単数または複数)と共に製剤化されてもよく、または哺乳動物患者(および、特にヒト患者)の1またはそれを超える細胞、組織、器官、もしくは身体への投与に有用な、1またはそれを超える追加の治療剤(単数または複数)および/または診断剤(単数または複数)を含むように製剤化されてもよい。
【0104】
医薬的に許容され得る賦形剤およびキャリアー溶液の配合は、それが本明細書に記載されている特定の自己組織化ナノ粒子組成物を種々の様式(例えば、限定されないが、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、腫瘍内、および筋肉内投与経路を含む)で使用するための適切な投与、診断、および/または処置レジメンの開発であるため、当業者に周知である。
【0105】
採用される自己組織化ナノ粒子組成物の特定の量、および本開示の製剤を採用した組成物のための特定の投与時間、または投薬レジメンは、本教示の恩恵を受けた当業者の認識範囲内である。しかしながら、本開示の製剤の投与は、そのような処置を受けている患者に対して望ましい利益をもたらすために有効な時間の間、本製剤の1またはそれを超える用量の投与によって実現され得る見込みがある。このような投与レジメンは、本化合物の投与を監督している医師によって、特定の状態または患者、施行されている治療の程度または継続時間などに応じて決定され得る。
【0106】
本明細書において開示されている1またはそれを超える自己組織化ナノ粒子組成物を含む医薬製剤は、決して、ヒト、または、さらには霊長類もしくは哺乳類における使用のみに限定されない。ある特定の実施形態において、本明細書に開示されている方法および組成物は、鳥類、両生類、爬虫類、またはその他の動物種を用いて使用され得る。しかしながら、好ましい実施形態において、本開示の組成物は、患者の体内の1またはそれを超える疾患を診断、改善、および/または処置するための種々のレジメンにおける、哺乳動物(特にヒト)への投与のために、ならびに、特に1またはそれを超える種類の腫瘍またはがん細胞の処置のために、または1またはそれを超える感染を処置するために、適切に製剤化される。上述のように、このような組成物は、ヒトにおける使用のみに限定されず、限定されないが、選択された家畜、外来動物もしくは飼い慣らされた動物、コンパニオンアニマル(ペットなどを含む)、非ヒト霊長類、ならびに動物学的検体またはその他の方法で捕獲された検体などに対する投与を含む、獣医学的投与のためにも製剤化され得る。
医薬の調製のための組成物
【0107】
本発明の別の重要な態様は、本開示の自己組織化ナノ粒子組成物(ならびに、それを含む製剤)を、動物(例えば、脊椎哺乳動物を含む)における1またはそれを超える疾患、機能不全、異常な状態、または障害の1またはそれを超える症状を防止、診断、処置、および/または改善するための医薬の調製に使用するための方法に関する。本開示の自己組織化ナノ粒子組成物の使用は、がんの診断および/または予後における使用、がん転移の検出および/もしくは予測における使用、もしくはその程度のモニタリングのための使用、および/または1またはそれを超える異常な状態の処置(例えば、in vivo、ex vivo、および/またはin situにおける1またはそれを超えるがん細胞型の処置)のための使用が特に意図されている。
【0108】
このような使用は、一般に、罹患した哺乳動物における腫瘍形成、またはがんの成長および/もしくは転移の1またはそれを超える症状を診断、処置、軽減、または改善するために十分な量で、かつ十分な時間にわたって、少なくとも第1の活性薬剤を含む1またはそれを超える本開示の自己組織化ナノ粒子組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む。1またはそれを超える本開示の自己組織化ナノ粒子組成物を含む医薬製剤もまた、本開示の一部を形成し、特に罹患した哺乳動物におけるがんの1またはそれを超える症状の治療および/または改善における使用のための少なくとも第1の医薬的に許容され得る賦形剤をさらに含むこれらの組成物を形成する。
自己組織化ナノ粒子
【0109】
本開示は、ナノ粒子を形成するための、カチオン性細胞透過性ペプチド(それぞれが疎水性治療用ペプチド、および、必要に応じて、少なくとも1つの負に荷電している分子および/または少なくとも1つの疎水性分子に共有結合で連結している)の使用を説明している。得られるナノ粒子は、(i)疎水性治療用ペプチド、および、必要に応じて、疎水性分子を含むコア、および(ii)前記CPP、および、必要に応じて、負に荷電している分子を含むコロナを有する。
【0110】
負に荷電している分子は、TLRリガンド、例えば、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリ(I:C)、DNA、およびRNA(mRNAまたはsiRNA)であってもよい。疎水性分子は、好ましくは疎水性TLRリガンドであってもよく、疎水性TLRリガンドは、モノホスホリル脂質A(MPLA)、またはR848であってもよい。
【0111】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、自己組織化は、約pH7.0の水溶液中で、治療用ペプチド(および、必要に応じて疎水性分子)の疎水性、およびCPPの親水性、正および負に荷電している分子による電気的結合のために起こると考えられる。
【0112】
本発明のナノ粒子を形成するために使用されるコンポーネントの量は、当業者によって決定され得る。より多くの負に荷電している分子が使用されれば、より多くのCPPがナノ粒子形成に関わる。さらに、いくつかのコンポーネントの量が変わることによって、ゼータ電位の違いのために、ナノ粒子のサイズおよび形状、ならびにin vivo体内分布が変化する。
【0113】
一実施形態において、カチオン性CPP(正に荷電している)-抗原ペプチドまたは弱い免疫原性ペプチド(T細胞エピトープ(一般に疎水性)を含む)が、設計および合成され、そして、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で、CpGオリゴヌクレオチド(負に荷電している)およびモノホスホリル脂質A(MPLA、疎水性)と混合される。CPP抗原ペプチド(10mM)とCpG(10mM)はどちらもPBSに可溶性であるが、混合(1:1)したところ、沈殿または凝集物が観察された。これらの凝集物は丸いナノ粒子であり、サイズが直径100nMであった。この自己組織化は、正に荷電しているCPPと負に荷電している分子の電気的相互作用、ならびにペプチド自体とモノホスホリル脂質A(MPLA)の間の疎水性相互作用によって起こると考えられた。異なる比率(正電荷:負電荷、またはモル濃度)を用いたさらなる実験によって、異なる比率のCPP治療用ペプチド、CpG、およびMPLAは、pH7において、サイズが100nMであるが、ゼータ電位(表面電荷)および各コンポーネントの組織化効率が異なるナノ粒子を生成できることが見出された。
【0114】
上記のように、本発明のナノ粒子は、中性条件下(例えば、pH7.0)において自己組織化し、酸性条件下(例えば、pH4.5)において破壊される。したがって、このナノ粒子は、密でサイズが小さい粒子として樹状細胞またはマクロファージに送達され、次いでpHが4.5になるエンドソーム内部で破壊され、CPPを、治療用ペプチド(好ましくはT細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチド)、およびその他の分子(好ましくはTLRリガンド)と共に、細胞質中に放出する。その後、T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドは、MHCクラスIまたはII分子に結合し、そのエピトープがT細胞に提示され、一方で、TLRリガンドは、TLRに結合してTLR媒介シグナル伝達経路(NF-κB、およびI型インターフェロン)をトリガーし、炎症誘発性サイトカインを産生させ、強い自然および獲得免疫応答を誘導する。
化学療法的な方法および使用
【0115】
本開示の重要な態様は、例えば、腫瘍または転移性がん(限定されないが、哺乳動物の肺への黒色腫転移)を含む、1またはそれを超える形態のがんの症状を処置または改善するための、本開示の自己組織化ナノ粒子製剤を使用するための方法に関する。このような方法は、一般に、罹患した哺乳動物におけるがんを処置するために(または、代わりに、そのがんの1またはそれを超える症状を改善するために)十分な量で、かつ十分な時間にわたって、少なくとも第1の抗がん治療薬を含む1またはそれを超える本開示の自己組織化ナノ粒子組成物を、哺乳動物に(および、特に、それを必要とするヒトに)投与することを含む。
【0116】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている自己組織化ナノ粒子組成物は、特定の疾患、障害、機能不全、または異常な状態を処置するための必要に応じて、1つの処置様式で(単回投与として、または、それに代えて、数時間(hrs)から数日(または、さらに数週間または数か月)の期間にわたる複数回の投与のいずれかで)、動物に提供してもよい。あるいは、いくつかの実施形態において、数か月、またはそれを超える期間にわたって、前記処置を継続するか、または治療の1またはそれを超える追加のモードとの組み合わせに前記処置を組み込むことが望ましいことがあり得る。他の実施形態において、1またはそれを超える従来の処置レジメンと組み合わせて、本治療を提供することが望ましいことがあり得る。
【0117】
本開示は、また、感染またはがんの1またはそれを超える症状の療法および/または改善のための医薬の製造における1またはそれを超える本開示の自己組織化ナノ粒子組成物の使用を提供し、および、特に、哺乳動物の感染またはがん(例えば、ヒトの感染、がん性腫瘍、およびリンカーを含む)の1またはそれを超える症状を処置および/または改善するための医薬の製造における使用を提供する。
【0118】
本発明は、また、哺乳動物における疾患または障害の処置のための、および、特に、1またはそれを超えるヒトの疾患(例えば、感染および/または細胞過剰増殖(すなわち、がん)など)の処置のための医薬の製造における、1またはそれを超える本開示の自己組織化ナノ粒子組成物の使用を提供する。
治療キット
【0119】
1またはそれを超える本開示の自己組織化ナノ粒子組成物を含む治療キット、および特定の処置様式でキットを使用するための指示もまた、本開示の好ましい態様を表す。これらのキットは、必要に応じて、1またはそれを超える追加の治療用化合物、1またはそれを超える診断試薬、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含んでいてもよい。
【0120】
本発明のキットは、商業的な流通のために包装されてもよく、かつ、必要に応じて、自己組織化ナノ粒子組成物(単数または複数)を動物に送達するために適合された1またはそれを超える送達デバイス(例えば、シリンジ、注射剤など)をさらに含んでいてもよい。このようなキットは、典型的には、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、またはその他の容器を含み、その中に自己組織化ナノ粒子組成物(単数または複数)が入れられていてもよく、好ましくは、適切に等分されて(aliquotted)いてもよい。第2の医薬品も提供される場合、キットは、第2の別個の容器も含んでいてもよく、その中にこの第2の組成物が入れられていてもよい。あるいは、本明細書に開示されているような複数の自己組織化ナノ粒子は、単一の混合物(例えば懸濁液または溶液)に調製されてもよく、単一の容器(例えば、バイアル、フラスコ、シリンジ、カテーテル、カニューレ、ボトル、またはその他の適切な単一の容器)に包装されてもよい。
【0121】
本発明のキットは、また、典型的には、商業的な販売のためにバイアル(単数または複数)またはその他の容器(単数または複数)を緊密に閉じ込めて収容または保持するように適合された保持機構、例えば、破損、太陽光への曝露、もしくはその他の望ましくない因子を低減または防止するために、またはキットに含まれている組成物(単数または複数)の手早い使用を可能にするために、所望のバイアル(単数または複数)またはその他の容器(単数または複数)を内部に保持することができる射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器なども含んでいてもよい。
細胞透過性ペプチド
【0122】
HIV-Tatベースのペプチドおよびキメラ細胞透過性ペプチドなどの細胞透過性両親媒性ペプチドもまた、治療カーゴをそれらの標的に送達するために適用されている(Magzoubら、2004)。
[00100]CPPは、細胞膜を移動することができるため、長期にわたり薬物送達ビヒクルとして使用されてきた(Guptaら、2005)。CPP(カチオン性の30アミノ酸に満たない短いペプチドである)、およびポリアルギニンに基づくCPP(長さが8~10アルギニン残基)が、最も効率的な細胞膜透過性を示してきた(Fuchsら、2006)。
【0123】
古典的なメカニズムによれば(Fuchsら、2006)、CPPの膜透過は、アルギニン残基のグアニジウム基と、細胞表面の炭水化物およびリン脂質のカルボキシル基、ホスホリル基またはスルフリル基との間の水素結合相互作用に基づくものである。膜を通過するCPP移動の経路は、最初は、受容体/エンドサイトーシス非依存的メカニズムによって説明されたが、現在では、新たなCPP内在化メカニズムが実証されている。
【0124】
いくつかのCPPが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTatタンパク質、単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質、および線維芽細胞成長因子を含むタンパク質から同定されている。
【0125】
細胞透過性ペプチドのいくつかの例としては、それらに限定されないが、以下のものがあげられる:
1.YGRKKRRQRRR(HIV Tat(47-57))(配列番号3);
2.YARAAARQARA(TAT-PTD-4)(配列番号4);
3.YARAARRAARR(TAT-PTD-5)(配列番号5);
4.RKKRRRESRKKRRRES(DPV3)(配列番号6);
5.GRPRESGKKRKRKRLKP(DPV6)(配列番号7);
6.GKRKKKGKLGKKRDP(DPV7)(配列番号8);
7.RRRRRRRRR(ポリアルギニン、R9)(配列番号9);
8.KKKKKKKKK(ポリリジン、K9)(配列番号10);
8.RRRRNRTRRNRRRVR(FHVコート)(配列番号11);
9.GALFLGWLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV(シグナルペプチドII)(配列番号12);
10.KLALKLALKALKAALKLA(両親媒性モデルペプチド)(配列番号13);
11.DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE(HSV VP22)(配列番号14);
12.KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(ペプチドキャリアー)(配列番号15);および
13.KKKKKKGGFLGFWRGENGRKTRSAYERMCNILKGK(CL22)(配列番号16)。
【0126】
既知のCPPの包括的なリストは、一般に利用可能なウェブサイトであるCPPsite 2.0においてオンラインで見つけることができ、このCPPsite 2.0は、細胞透過性ペプチドのデータベース(CPPsite)のアップデート版である。
【0127】
本開示において、カチオン性CPPは、T細胞エピトープペプチドに共有結合で連結しており、ナノ粒子のコロナ部分に存在する。正に荷電しているか、または中性のコロナは、ナノ粒子を負に荷電している細胞表面に付着させ、次いで、向上した取り込み効率で、DCまたはマクロファージなどの細胞によって取り込まれる。
【0128】
CPPは、また、T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは弱免疫原性ペプチド(T細胞エピトープは、そのペプチドに結合している)が、細胞表面における抗原提示のためにエンドソーム中でMHCクラスII分子に直接結合するのを助けるか、または、T細胞エピトープを含む抗原ペプチドまたは非免疫原性ペプチドが、エンドソームから脱出し、次いでERおよびゴルジに入り、そこでT細胞活性化のための細胞表面における提示のために、新たに合成されたMHCクラスI分子に結合するのを助ける。
【0129】
カチオン性CPPは、上記のように、本発明において必要である。しかしながら、カチオン性ではないCPPは、当業者に周知であるように、Lys、Arg、およびHisなどのいくつかのアミノ酸をバックボーン鎖に付加または付着させることによって改変してもよい。例えば、ポリLysまたはArgペプチドは、カチオン性CPPとして合成される。
抗原ペプチド
【0130】
本開示の文脈において、用語「抗原ペプチド」は、特定の腫瘍または病原体に共通し、かつMHC分子に結合するペプチド抗原を指す。
【0131】
本開示の腫瘍抗原は、好ましくは、がん由来であり、このがんには、それらに限定されないが、原発性または転移性の、黒色腫、胸腺腫、リンパ種、肉腫、肺がん、肝臓がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ種、白血病、子宮がん、頸部のがん、膀胱(bladder)がん、腎臓がん、および腺癌(例えば、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がんなど)などが含まれる。一実施形態において、本開示の腫瘍抗原は、哺乳動物のがん性腫瘍に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)によって免疫学的に認識される1またはそれを超える抗原性がんエピトープを含む。
【0132】
悪性腫瘍は、免疫の攻撃のための標的抗原として働き得る多数のペプチドを発現する。これらの分子としては、それらに限定されないが、組織特異的抗原、例えば、黒色腫におけるMART-1、チロシナーゼ、およびGP100、ならびに前立腺がんにおける前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異的抗原(PSA)があげられる。他の標的分子は、癌遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子のグループに属する。標的抗原のさらに別のグループは、癌胎児性抗原(carcino-embryonic antigen)(CEA)などの癌胎児性抗原(onco-fetal antigen)である。
【0133】
がん精巣抗原および変異由来のネオ抗原などの腫瘍抗原としては、それらに限定されないが、例えば、NY-ESO-1、CT83、MAGE遺伝子ファミリー、およびネオ抗原があげられる
【0134】
同様に、特定の腫瘍タイプに共通する癌遺伝子産物ペプチド抗原が同定されている。これらのポリペプチドは、本発明のポリペプチド複合体において、そのような抗原を担持する腫瘍と反応するために有効なT細胞応答を刺激するために一般に使用され得る試薬として用いられる。癌遺伝子産物ペプチド抗原としては、それらに限定されないが、ヒト乳がんおよび婦人科がんに関連するHER-2/neu、膵臓のがんに関連する癌胎児性抗原(CEA)があげられる。
【0135】
腫瘍抗原およびその抗原性がんエピトープは、天然のソースから、例えば、初代臨床分離株、細胞系などから精製および単離してもよい。がんペプチドおよびその抗原性エピトープは、また、当該技術分野で知られている化学合成、または組換えDNA技術によって得てもよい。化学合成のための技術は、Stewardら(1969);Bodanskyら(1976);Meienhofer(1983);およびSchroderら(1965)に記載されている。
【0136】
さらに、Renkvistら(2001)に記載されているように、当該技術分野で知られている数多くの抗原が存在する。腫瘍抗原によってコードされ、T細胞(細胞傷害性CD8またはヘルパーCD4のいずれか)によって認識される多様なT細胞決定エピトープが、PCT国際特許出願公開第WO02/064057(これは、明示された参照により、その全体が具体的に本明細書に援用される)に列挙されている。
【0137】
アナログまたは人工的に改変されたエピトープは列挙されていないが、当業者は、当該技術分野における標準的な方法による、それらの取得方法または生成方法を認識している。その他の抗原(抗体によって同定され、SEREX法によって検出されるようなもの[Sahinら(1997)およびChenら(2000)を参照のこと])は、Ludwig Institute for Cancer Researchのデータベース(当業者は、ワールドワイドウェブ上で容易に見つけることができる)において確認される。
【0138】
本発明の抗原ペプチドは、ナノ粒子内に組み込まれ、エンドソームに送達されるように、疎水性であることが必要である。疎水性ではない抗原ペプチドは、当業者に周知であるように、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、およびTrpなどの1またはそれを超えるアミノ酸をバックボーン鎖に付加または付着させることによって改変し、ペプチドの抗原性を増強させてもよい。
T細胞エピトープ
【0139】
本発明のナノ粒子のコア部分を形成する免疫原性ペプチドは、T細胞エピトープを含む。
【0140】
T細胞エピトープは、免疫を引き起こすためにキャリアーの表面上に提示されている必要がないため、ナノ粒子のコアの中に組み込まれてもよい。
【0141】
T細胞エピトープは、異なるソースから選択されてもよい。例えば、T細胞エピトープは、実験的方法によって決定されてもよい。このようなエピトープは、文献によって知られており、また、特定の病原体またはがん抗原の既存のタンパク質配列に基づいてアルゴリズムによって予測してもよく、新たに設計してもよい。
【0142】
科学文献によって利用可能な既知のT細胞エピトープの財産が存在する。これらのT細胞エピトープは、特定の病原体から選択してもよく、がん特異的なペプチド配列から選択してもよく、または特定の特徴を有する新たに設計されたペプチド、例えば、多くの異なるMHC II分子に結合する(これによって、いわゆる無差別的なT細胞エピトープとなる)PADREペプチド(例えば、米国特許第5,736,142号(これは、明示された参照により、その全体が具体的に本明細書に援用される)を参照のこと)であってもよい。数千の異なるT細胞エピトープを含む、一般に利用しやすいデータベース、例えば、MHCのデータベースである「MHCBN VERSION 4.0」、またはPDBのデータベースである「Protein Data Bank」、またはその他のデータベースが存在する。
【0143】
ヘルパーT細胞(HTL)エピトープを、もともとは免疫原性ではないペプチド配列に組み込むか、または非ペプチド性抗原に付着させることによって、それらを非常に強い免疫原性にすることが可能である。Pan-DR結合ペプチドHTLエピトープPADREは、マラリア、アルツハイマー病、およびその他の多くのワクチンのためのワクチン設計に幅広く用いられてきた。
【0144】
MHCBNデータベース(上記)の定義に従って、T細胞エピトープは、対応するMHC分子に対する結合親和性(IC50値)が50,000nM未満のペプチドである。このようなペプチドは、MHCバインダーとみなされる。この定義に従って、2006年8月までに、MHCBNデータベースのバージョン4.0において、以下のデータが利用可能である:20717種のMHCバインダー、および4022種のMHC非バインダー。
【0145】
適切なT細胞エピトープは、また、予測アルゴリズムを用いることによって得ることもできる。これらの予測アルゴリズムは、病原体またはがん抗原由来の既存のタンパク質配列を、推定T細胞エピトープについて検索することができ、あるいは、新たに設計したペプチドが特定のMHC分子に結合するかどうかを予測することができる。多くのそのような予測アルゴリズムがインターネット上で一般にアクセス可能である。SVRMHCdb(Wanら、2006)、SYFPEITHI、MHCPred、MHC II結合分子に関するモチーフスキャナーまたはNetMHCIIpan、およびMHC I結合エピトープに関するNetMHCpanがその例である。
【0146】
本明細書に記載されており、設計に好ましいHTLエピトープは、生物物理学的方法による測定、またはNetMHCIIpanによる予測のいずれかで、任意のMHC II分子に対して500nMより強い結合親和性(IC50値)で結合するペプチド配列である。これらは、弱いバインダーであるとみなされる。好ましくは、これらのエピトープは、生物物理学的方法による測定、またはNetMHCIIpanによる予測で、MHC II分子に対して50nMより強いIC50値で結合する。これらは、強いバインダーであるとみなされる。
【0147】
T細胞エピトープは、非免疫原性ペプチド内のいくつかの位置で組み込むことができる。これを実現するために、T細胞エピトープを有する特定の配列は、MHC結合のルールに従っていなければならない。このMHC分子に対する結合についてのルールは、MHC結合ペプチドを予測するための高度なアルゴリズムを使用する、MHC結合予測プログラム中に組み込まれる。
【0148】
多くの異なるHLA分子が存在し、それぞれ、それに最もよく結合する配列中のアミノ酸に制限を有する。結合モチーフは、米国特許第8,546,337号(これは、明示された参照により、その全体が具体的に本明細書に援用される)の表3にまとめられている。この表において、任意のアミノ酸であってもよい位置をxで示し、角括弧内は、結合モチーフの特定の位置にのみ存在してもよいアミノ酸(のリスト)である。
【0149】
一般に、本発明において、T細胞エピトープを含む非免疫原性ペプチドは、ナノ粒子内に組み込まれ、エンドソームに送達されるように、疎水性であることが必要である。疎水性ではないT細胞エピトープを含む非免疫原性ペプチドは、当業者に周知であるように、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、およびTrpなどのいくつかのアミノ酸をバックボーン鎖に付加または付着させることによって改変してもよい。
Toll様受容体およびTLRシグナル伝達
【0150】
Toll様受容体(TLR)は、進化的に保存された受容体であり、微生物感染に対する防御のために重要であることが見出されたショウジョウバエTollタンパク質のホモログである。TLRは、病原体関連微生物パターン(PAMP)(これは、病原性微生物によって排他的に発現される)として知られる高度に保存された構造モチーフ、またはネクローシス細胞または死にかけている細胞から放出される内在性分子である損傷関連分子パターン(DAMP)として知られる高度に保存された構造モチーフを認識する。
【0151】
TLRには、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、およびTLR13が含まれるが、最後の2つはヒトでは確認されていない。
【0152】
TLRは、樹状細胞(DC)およびマクロファージなどの自然免疫細胞、ならびに線維芽細胞および上皮細胞などの非免疫細胞において発現される。TLRは、その局在に基づき、大きく2つのサブファミリー、すなわち細胞表面TLRと細胞内TLRに分類される。細胞表面TLRは、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、およびTLR10を含み、一方、細胞内TLRはエンドソーム内に局在し、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9、TLR11、TLR12およびTLR13を含む。
【0153】
対応するPAMPまたはDAMPによるTLRの刺激は、AP-1、NF-κB、およびインターフェロン調節因子(IRF)などの転写因子の活性化を引き起こすシグナル伝達カスケードを開始させる。TLRによるシグナル伝達は、インターフェロン(IFN)、炎症誘発性サイトカイン、および獲得免疫応答を誘導するエフェクターサイトカインの産生を含む、種々の細胞応答を引き起こす。
【0154】
TLRシグナル伝達は、少なくとも2つの異なる経路、すなわち、炎症性サイトカインの産生を引き起こすMyD88依存性経路、ならびにIFN-βの刺激、および樹状細胞の成熟に関連するTRIF依存性経路からなる。
TLRリガンド
【0155】
TLR(およびその他の自然免疫受容体)は、その特異性ゆえに、進化の過程にわたって容易に変化することができず、これらの受容体は、脅威(例えば、病原体または細胞ストレス)にしばしば関連する分子を認識し、これらの脅威に非常に特異的である。
【0156】
この要求を満たす病原体関連分子は、病原体の機能に対して決定的であり、変異によって変化しにくく、これらは進化的に保存されていると言われる。病原体においてある程度保存されている特徴としては、細菌の細胞表面のリポ多糖類(LPS)、リポタンパク質、リポペプチド、およびリポアラビノマンナン;細菌の鞭毛由来のフラジェリンなどのタンパク質;ウイルスの二本鎖RNA;または細菌およびウイルスDNAのメチル化されていないCpGアイランド;および真核生物DNAのプロモーターに見られるCpGアイランド;ならびにその他のある特定のRNAおよびDNA分子があげられる。
CpG-AおよびCpG-B
【0157】
表1に、いくつかのよく知られているTLR、およびそれらの一般的なリガンドを列挙する。
表1
一般に知られているTLR、およびそれらのリガンド
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0158】
本発明のナノ粒子は、抗原提示細胞(APC)、特にTLRが多種多様に分布している樹状細胞(DC)またはマクロファージによって取り込まれるものである。したがって、強固なT細胞応答をトリガーするために、表1のリガンド、および本明細書または他の場所に記載されているその他のリガンドは、ナノ粒子に形作られてもよい。処置または予防されるさまざまな疾患について、免疫応答に関わる主要な種類の抗原提示細胞に応じたナノ粒子を形成するために、TLRを選択してもよい。
【0159】
1またはそれを超える、好ましくは2またはそれを超えるTLRリガンドが、1つのナノ粒子中に含まれていてもよい。疎水性TLRリガンドは、ナノ粒子のコア部分に、疎水性治療用ペプチドと一緒に位置していてもよく、一方、負に荷電しているTLRリガンドは、ナノ粒子のコロナ部分に、カチオン性CPPと共に存在してもよい。正に荷電しているCPPの負に荷電しているTLRリガンドとの電気的相互作用は、より安定で密なナノ構造をもたらすと考えられる。一実施形態において、2つの負に荷電しているTLRリガンドが、ナノ粒子のコロナ部分に含まれる。別の実施形態において、1つの疎水性TLRリガンドが、ナノ粒子のコア部分に含まれ、2つの負に荷電しているTLRリガンドが、ナノ粒子のコロナ部分に含まれる。ナノ粒子中に多くの種類のTLRリガンドが存在することによって、T細胞応答が明らかに改善される。TLRリガンドは、また、当業者に周知のように、所望の特性を有するように改変されてもよい。
例示的な定義
【0160】
本発明によれば、ポリヌクレオチド、核酸セグメント、核酸配列などには、それらに限定されないが、DNA(それらに限定されないが、ゲノムDNAまたはゲノム外DNAを含む)、遺伝子、ペプチド核酸(PNA)、RNA(それらに限定されないが、rRNA、mRNA、およびtRNAを含む)、ヌクレオシド、および天然のソースから得た、化学的に合成された、修飾された、または全体もしくは一部が人間の手によってその他の方法で調製もしくは合成された、適切な核酸セグメントが含まれる。
【0161】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解される通りの意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する:Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(第2版)、J.Stenesh(編)、Wiley-Interscience(1989);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第3版)、P.Singleton and D.Sainsbury(編)、Wiley-Interscience(2007);Chambers Dictionary of Science and Technology(第2版)、P.Walker(編)、Chambers(2007);Glossary of Genetics(第5版)、R.Riegerら(編)、Springer-Verlag(1991);およびThe HarperCollins Dictionary of Biology、W.G.HaleおよびJ.P.Margham(編)、HarperCollins(1991)。
【0162】
本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および組成物を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および組成物が本明細書に記載されている。本発明の目的のために、明確性および参照を容易にするために、以下の用語を以下に定義する。
【0163】
長年にわたる特許法の慣習に従い、単語「a」および「an」は、本明細書全体を通して、および特許請求の範囲で使用される場合、「1またはそれを超える(one or more)」を意味する。
【0164】
用語「約(about)」および「約(approximately)」は、本明細書で使用される場合、互換的であり、かつ与えられた数の前後の数の範囲、ならびに列挙された数の範囲内の全ての数を指すものと一般に理解すべきである(例えば、別段の指定がない限り、「約5~15」は、「約5~約15」を意味する)。さらに、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数のそれぞれを含むものと理解すべきである。
【0165】
生体適合性」は、生細胞に曝露した場合に、その細胞において望まない効果、例えば、細胞の生活周期の変化、細胞の増殖速度の変化、または細胞傷害効果を引き起こすことなく、その細胞の適切な細胞活動を維持させる材料を指す。
【0166】
用語「生物学的に機能が同等」は、当該技術分野においてよく理解されており、また、本明細書においてさらに詳細に定義される。したがって、本明細書において提供される1またはそれを超えるヌクレオチド配列と同一または機能的に同等なヌクレオチドの約85%~約90%;または、より好ましくは、約91%~約95%;または、さらに好ましくは、約96%~約99%を有する配列は、特に、本出願に規定される方法および組成物の実施において有用であると予期される。
【0167】
本明細書で使用される場合、「生体模倣」は、人体に天然に存在する物質に対する、合成された材料の類似物を意味するものとし、この類似物は、人体によって拒絶されない(例えば、人体において有害反応を引き起こさない)。
【0168】
本明細書で使用される場合、用語「バッファー」は、バッファーを含む溶液または組成物に対して酸またはアルカリが加えられた場合に、pHの変動に抵抗する1またはそれを超える組成物、またはその水溶液を含む。pH変化に対するこの抵抗は、そのような溶液の緩衝特性によるものであり、その組成物に含まれる1またはそれを超える特定の化合物の機能である可能性がある。よって、緩衝活性を示す溶液またはその他の組成物は、バッファーまたはバッファー溶液と呼ばれる。バッファーは、一般に、溶液または組成物のpHを維持する無限の能力を持っているわけではなく、むしろ、典型的には、pHをある特定の範囲内、例えば、約5~7のpHに維持することができる。
【0169】
本明細書で使用される場合、用語「キャリアー」は、関連する動物に対する投与について医薬的に許容され得る、任意の溶媒(単数または複数)、分散媒、コーティング(単数または複数)、希釈剤(単数または複数)、バッファー(単数または複数)、等張化剤(単数または複数)、溶液(単数または複数)、懸濁液(単数または複数)、コロイド(単数または複数)、不活性物(inert)(単数または複数)など、またはそれらの組み合わせを含むことが意図されている。一般に化学的化合物に対する、特に化学療法剤に対する1またはそれを超える送達ビヒクルの使用は、医薬の技術分野における当業者に周知である。任意の従来の媒体または剤は、活性成分に対して非適合性である場合を除き、診断、予防、および治療組成物における使用が予期される。1またはそれを超える補足的な活性成分(単数または複数)もまた、1またはそれを超える本開示の化学療法組成物に配合してもよく、または1またはそれを超える本開示の化学療法組成物と共に投与してもよい。
【0170】
本明細書で使用される場合、用語「DNAセグメント」は、特定の種の全ゲノムDNAから単離されその混入がないDNA分子を指す。したがって、本明細書に開示された1つの組成物を使用して生体サンプルから得たDNAセグメントは、そのDNAセグメントを得る特定の種の全ゲノムDNAから単離または精製された1またはそれを超えるDNAセグメントを指す。用語「DNAセグメント」には、DNAセグメント、およびそのようなDNAセグメントのさらに小さいフラグメント、ならびに組換えベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどを含む)が含まれる。
【0171】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」、は、疾患または状態を処置または改善することができるか、またはその他の方法で意図した治療効果をもたらすことができる量を指す。
【0172】
本明細書で使用される場合、用語「例えば(for example)」または「例えば(e.g.)」は、限定の意図はなく、例示の目的で使用されているにすぎず、また、本明細書に明示的に列挙された項目だけを指すものと解釈すべきではない。
【0173】
本明細書で使用される場合、「異種」配列は、あらかじめ決められた参照配列、例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列との関係で定義される。例えば、構造遺伝子配列に関して、異種プロモーターは、参照される構造遺伝子に隣接して天然に存在せず、実験的操作によって配置されるプロモーターと定義される。同様に、異種遺伝子または核酸セグメントは、参照されるプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントに隣接して天然に存在しない、遺伝子またはセグメントと定義される。
【0174】
本明細書で使用される場合、「相同」は、ポリヌクレオチドを指す場合には、異なる起源から生じたものではあるが、同じ基本的なヌクレオチド配列を有する配列を意味する。典型的には、相同核酸配列は、密接に関連した遺伝子、または1またはそれを超える実質的に類似するゲノム配列を有する生物に由来する。対照的に、「類似」ポリヌクレオチドは、異なる種または生物由来のポリヌクレオチドと同じ機能を共有しているが、有意に異なる一次ヌクレオチド配列(類似の機能を実現するか、または類似の生物学的活性を有する、1またはそれを超えるタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)を有していてもよいポリヌクレオチドである。類似ポリヌクレオチドは、(例えば、遺伝的または系統発生学的に)密接に関係しない2またはそれを超える生物に由来していてもよいことが多い。
【0175】
本明細書で使用される場合、用語「相同性」は、2またはそれを超えるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の相補性の程度を指す。第1の核酸またはアミノ酸配列が第2の核酸またはアミノ酸配列と全く同一の一次配列を有する場合は、用語「同一性」を用語「相同性」に代えて用いることができる。配列相同性および配列同一性は、当該技術分野で知られているアルゴリズムおよびコンピュータープログラムを用いて、2またはそれを超える配列を解析することによって決定することができる。このような方法は、所与の配列が、別の選択された配列と同一または相同であるかどうかを評価するために使用することができる。
【0176】
用語「同一」またはパーセント「同一性」は、2またはそれを超える核酸またはポリペプチド配列の文脈において、同一である2またはそれを超える配列もしくはサブ配列を指すか、または下記の配列比較アルゴリズムの1つ(または当業者が利用できるその他のアルゴリズム)を使用して測定するか、または目視観察によって測定して、最大に一致するように比較およびアラインした場合、特定のパーセンテージの同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2またはそれを超える配列またはサブ配列を指す。
【0177】
本明細書で使用する場合、語句「処置を必要とする」は、医師または獣医師などの医療提供者によって行われる、患者が処置を必要とする(または、処置から、1またはそれを超える様式で利益を得る)という判断を指す。このような判断は、医療提供者の専門知識の領域内の多様な因子に基づいて行われてもよく、この因子は、本明細書に規定されるものなどの1またはそれを超える化合物または医薬組成物によって処置することが可能な疾患状態の結果として、患者が病んでいるという知識を含み得る。
【0178】
語句「単離された」または「生物学的に純粋」は、天然の状態で見出されたときには通常その材料に付随しているコンポーネントを実質的に、または本質的に含まない材料を指す。
【0179】
本明細書で使用される場合、用語「キット」は、本発明の1またはそれを超えるアッセイ方法を実施するための少なくとも1セットの試薬、コンポーネント、または医薬的に製剤化された組成物を含む、持ち運びでき、自己完結型の多様な封入物を表すために用いられてもよい。必要に応じて、このようなキットは、封入された試薬を(例えば、実験室または臨床適用などにおいて)使用するための指示の1またはそれを超えるセットを含んでいてもよい。
【0180】
「連結する(link)」または「接続する(join)」は、1またはそれを超えるタンパク質、ペプチド、核酸、またはポリヌクレオチドを機能的につなげるための、当該技術分野で知られている任意の方法を指し、それらに限定されないが、組換え融合、共有結合、ジスルフィド結合、イオン結合、水素結合、静電結合などが含まれる。
【0181】
本明細書で使用される場合、ある対象(an object)に適用したときの用語「天然に存在する」は、ある対象が天然に見いだされ得ることを指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、天然のソースから単離可能であり、実験室内で人間の手によって意図的に改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。本明細書で使用される場合、古典的遺伝学に従って選択的に繁殖させた可能性があるげっ歯類の実験室系統は、天然に存在する動物とみなされる。
【0182】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、1またはそれを超える種類の、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、およびプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基(非塩基部位を含む)のN-グリコシドである任意のその他の種類のポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、また、典型的にはサブユニット間のホスホジエステル結合によるが、いくつかのケースではホスホロチオエート、メチルホスホネートなどによって共有結合された、リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドのポリマーも含む。「核酸」は、一本鎖および二本鎖DNA、ならびに一本鎖および二本鎖RNAを含む。例示的な核酸としては、それらに限定されないが、gDNA;hnRNA;mRNA;rRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、核小体低分子RNA(snORNA)、核内低分子RNA(snRNA)、および一過性低分子RNA(stRNA)など、ならびにそれらの任意の組み合わせがあげられる。
【0183】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」および作動的に連結されている」は、コード領域が近接し、正しいリーディングフレームに入るようなやり方で連結された、複数の核酸配列の結合(union)を指す。このような複数の配列は、典型的には近接しているか、または実質的に近接している。しかしながら、エンハンサーは、一般に、プロモーターから数キロベース離れている場合に機能し、またイントロン配列はさまざまな長さであり得るため、いくつかのポリヌクレオチドエレメントは、作動可能に連結されているが、近接していなくてもよい。
【0184】
本明細書で使用される場合、用語「患者」(互換的に「宿主」または「対象」とも呼ばれる)は、本明細書に開示されている1またはそれを超える医薬組成物を受け得る任意の宿主を指す。好ましくは、前記対象は脊椎動物であり、これは、任意の動物種(好ましくは、ヒトなどの哺乳動物種)を意味することが意図されている。ある特定の実施形態において、「患者」は、限定されることなく、任意の哺乳動物宿主を含む任意の動物宿主を指す。好ましくは、この用語は、任意の哺乳動物宿主を指し、後者は、それらに限定されないが、ヒトおよび非ヒト霊長類、ウシ、イヌ、ヤギ(caprine)、cavines、カラス、epines、ウマ、ネコ、ヤギ(hircine)、ウサギ(lapin)、ウサギ(leporine)、オオカミ、マウス(murine)、ヒツジ、ブタ、カエル、racines、キツネなど(家畜、動物学的検体、外来動物、ならびにコンパニオンアニマル、ペット、および獣医の世話を受けている任意の動物を含む)を含む。患者は、本ワクチンの接種に対して免疫応答の発生による応答が可能な、いかなる年齢であってもよい。特定の実施形態において、哺乳動物患者は、好ましくはヒトである。
【0185】
語句「医薬的に許容され得る」は、哺乳動物に投与した場合、特にヒトに投与した場合に、好ましくはアレルギーや同様の望ましくない反応を生じさせない、分子的実体および組成物を指す。
【0186】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容され得る塩」は、好ましくは、本化合物の望ましい生物学的活性を保持し、いかなる望ましくない毒性作用も与えない塩を指す。このような塩としては、例えば、それらに限定されないが、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)と形成する酸付加塩;および有機酸(それらに限定されないが、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ(エンボン)酸、アルギン酸、ナフトエ酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロ酸を含む)と形成する塩;例えば亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどの多価金属カチオンとの塩;N,N’ジベンジルエチレンジアミンまたはエチレンジアミンから形成される有機カチオンと形成する塩;およびそれらの組み合わせがあげられる。
【0187】
本明細書で使用される場合、用語「プラスミド」または「ベクター」は、遺伝子材料(すなわち、核酸)から構成される遺伝子構築物を指す。典型的には、プラスミドまたはベクターは、細菌宿主細胞(例えば、大腸菌)内で機能する複製起点と、そのプラスミドを含む細菌宿主細胞を検出するための選択マーカーを含む。本発明のプラスミドおよびベクターは、挿入されているコード配列が適切な発現細胞内で転写および翻訳され得るように配置された、本明細書に記載されている1またはそれを超える遺伝子エレメントを含んでいてもよい。加えて、プラスミドまたはベクターは、1またはそれを超える核酸セグメント、遺伝子、プロモーター、エンハンサー、アクチベーター、多重クローニング部位、またはそれらの任意の組み合わせ(1またはそれを超える天然および/または人工的なソースから得た、またはそのようなソースに由来するセグメントを含む)を含んでいてもよい。
【0188】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、重合によって形成される化学的化合物または化合物の混合物を意味し、繰り返し構造単位を含む。ポリマーは、複数の形態および組成物または組成物の組み合わせに構成され得る。
【0189】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、単数の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図されており、2またはそれを超えるアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)が含まれる。よって、本明細書で使用される場合、それらに限定されないが、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」、「アミノ酸鎖」、および「連続したアミノ酸配列」を含む用語は、全て「ポリペプチド」の定義の範囲内に包含され、また、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のいずれかと互換的に使用することができる。この用語は、また、1またはそれを超える翻訳後修飾(単数または複数)(例えば、それらに限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、誘導体化、タンパク分解的開裂、翻訳後プロセシング、または天然に存在しない1またはそれを超えるアミノ酸の組み込みによる修飾が含まれる)を受けたポリペプチドもさらに含む。ポリヌクレオチドおよびポリペプチド構造について、当該技術分野において、慣習的な命名法が存在する。
【0190】
例えば、アミノ酸を記述するために、1文字略記法および3文字略記法が広く利用されている:アラニン(A;Ala)、アルギニン(R;Arg)、アスパラギン(N;Asn)、アスパラギン酸(D;Asp)、システイン(C;Cys)、グルタミン(Q;Gin)、グルタミン酸(E;Glu)、グリシン(G;Gly)、ヒスチジン(H;His)、イソロイシン(I;Ile)、ロイシン(L;Leu)、メチオニン(M;Met)、フェニルアラニン(F;Phe)、プロリン(P;Pro)、セリン(S;Ser)、スレオニン(T;Thr)、トリプトファン(W;Trp)、チロシン(Y;Tyr)、バリン(V;Val)、およびリジン(K;Lys)。本明細書に記載されているアミノ酸残基は、好ましくは「L」異性体で存在する。しかしながら、ポリペプチドの所望の特性が保持される限り、「D」異性体の残基で任意のL-アミノ酸残基を置換してもよい。
【0191】
本明細書で使用される場合、用語「防止する」、「防止すること(preventing)」、「防止」、「抑制する」、「抑制すること」、および「抑制」は、本明細書で使用されるように、疾患状態の任意の症状、局面、または特徴が防止されるように、疾患状態の臨床症状が発症する前に、化合物を単独で、または医薬組成物に含有させて投与することを指す。このような防止することおよび抑制することは、医学的に有用であるとみなされるために、絶対的である必要はない。
【0192】
「タンパク質」は、本明細書において、「ペプチド」および「ポリペプチド」と互換的に使用され、合成で、組換えで、またはin vitroで産生されたペプチドおよびポリペプチド、ならびに核酸配列を宿主動物またはヒト対象に投与した後にin vivoで発現されたペプチドおよびポリペプチドの両方が含まれる。用語「ポリペプチド」は、好ましくは、任意のアミノ酸鎖の長さを指すことが意図されており、長さが約2~約20アミノ酸残基の短いペプチドのポリペプチド、長さが約10~約100アミノ酸残基のオリゴペプチド、および長さが約100アミノ酸残基またはそれより多い、より長いポリペプチドを含む。さらに、この用語は、また、酵素、すなわち、少なくとも1つのアミノ酸ポリマーを含む機能的な生体分子を含むことも意図されている。本発明のポリペプチドおよびタンパク質は、また、翻訳後修飾される、またはされているポリペプチドおよびタンパク質を含み、また、バックボーンアミノ酸鎖に付加される、任意の糖またはその他の誘導体(単数または複数)もしくはコンジュゲート(単数または複数)を含む。
【0193】
本明細書で使用される場合、「精製された」は、多くの他の化合物または実体から分離されたことを意味する。化合物または実体は、部分的に精製されてもよく、実質的に精製されてもよく、純粋であってもよい。化合物または実体は、実質的に全ての他の化合物または実体から取り出された場合に純粋とみなされ、すなわち、好ましくは少なくとも約90%純粋であり、より好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%よりも純粋である。部分的または実質的に精製された化合物または実体は、それと共に天然に見出される材料、例えば、細胞のタンパク質および/または核酸などの細胞材料の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%から取り出されていてもよい。
【0194】
用語「組換え」は、その材料(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)が、人間の介入によって、人工的または合成的に(非天然に)改変されていることを指す。改変は、天然の環境または天然の状態におかれた材料に対して行ってもよく、または天然の環境または天然の状態から取り出された材料に対して行ってもよい。具体的には、例えば、プロモーター配列は、人間の手によって操作された核酸セグメントの発現によって産生された場合、「組換え」である。例えば、「組換え核酸」は、例えば、クローニング、DNAシャフリング、またはその他の手順の間に、核酸を組み換えることによって作製されるか、または化学的もしくはその他の変異誘発によって作製される核酸であり;「組換えポリペプチド」または「組換えタンパク質」は、組換え核酸の発現によって産生されるポリペプチドまたはタンパク質であり;および「組換えウイルス」、例えば、組換えAAVウイルスは、組換え核酸の発現によって産生される。
【0195】
本明細書で使用される場合、用語「調節エレメント」は、転写を調節する核酸配列の領域(単数または複数)を指す。例示的な調節エレメントとしては、それらに限定されないが、エンハンサー、転写後エレメント、転写制御配列などがあげられる。
【0196】
用語「RNAセグメント」は、特定の種の全細胞RNAを含まない、単離されたRNA分子を指す。したがって、RNAセグメントは、その他のRNAから単離または精製された(天然または合成起源の)1またはそれを超えるRNAセグメントを指してもよい。用語「RNAセグメント」には、RNAセグメント、およびそのようなセグメントのさらに小さいフラグメントが含まれる。
【0197】
用語「本質的に配列番号Xで示される配列」は、その配列が、配列番号Xの部分に実質的に対応し、かつ配列番号Xのヌクレオチド(または、ポリペプチド配列の場合はアミノ酸)と同一ではないヌクレオチド(アミノ酸)を比較的少数含むか、または配列番号Xのヌクレオチド(アミノ酸)と生物学的に機能が同等であることを意味する。用語「生物学的に機能が同等」は、当該技術分野でよく理解されており、また、本明細書においてさらに詳細に定義される。したがって、本明細書で提供される1またはそれを超えるヌクレオチド配列と同一であるか、または機能的に同等であるヌクレオチドの約85%~約90%;より好ましくは約91%~約95%;またはさらに好ましくは約96%~約99%を有する配列は、特に、本発明の実施において有用であることが予期される。
【0198】
本発明で使用するための核酸のための、適切な標準的ハイブリダイゼーション条件は、例えば、50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSC、25mMリン酸ナトリウム、0.1%SDS、および100μg/mLの変性サケ精子DNA中において、42℃で16時間ハイブリダイゼーションを行い、続いて、所望の量のバックグラウンドシグナルを除去するために、0.1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて、60℃で1時間、順次洗浄することを含む。本発明のための、より低ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件は、例えば、35%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSC、25mMリン酸ナトリウム、0.1%SDS、および100μg/mLの変性サケ精子DNAまたはE.coli DNA中において、42℃で16時間ハイブリダイゼーションを行い、続いて、0.8×SSC、0.1%SDSを用いて、55℃で順次洗浄することを含む。このようなハイブリダイゼーション条件は、特定の適用のための所望のレベルのストリンジェンシーを実現するために、容易に調整し得ることが、当業者によって理解されよう。
【0199】
本明細書で使用される場合、用語「構造遺伝子」は、コードされたペプチド、ポリペプチド、タンパク質、リボザイム、触媒RNA分子、またはアンチセンス分子を産生するために発現されるポリヌクレオチド(例えば遺伝子)を一般的に記述することが意図されている。
【0200】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、本発明による組成物による処置が提供され得る生物(霊長類などの哺乳類を含む)を記述する。本開示の処置方法から利益を受け得る哺乳動物種は、それらに限定されないが、類人猿;チンパンジー;オランウータン;ヒト;サル;イヌおよびネコなどの飼い慣らされた動物;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびニワトリなどの家畜;ならびにマウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどのその他の動物を含む。
【0201】
用語「実質的に相補的」は、アミノ酸または核酸配列のいずれかを定義するために使用される場合、特定の対象配列(例えば、オリゴヌクレオチド配列)が、選択された配列の全体または一部に対して実質的に相補的であり、それゆえに、その選択された配列をコードするmRNAの一部に特異的に結合することを意味する。したがって、典型的には、その配列は、mRNA「標的」配列に対して相補性が高く、配列の相補的部分全体にわたって、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10以下程度の塩基ミスマッチを有する。多くの例において、配列は、完全一致、すなわち、そのオリゴヌクレオチドが特異的に結合する配列に対して完全に相補的であり、したがって、相補的ストレッチに沿ってミスマッチがゼロであることが望ましい場合がある。したがって、相補性が高い配列は、典型的には、mRNAの標的配列領域に対して極めて特異的に結合し、したがって、標的mRNA配列のポリペプチド産物への翻訳の低減、および/またはさらには阻害において、非常に効率的である。
【0202】
実質的に相補的な核酸配列は、その核酸が特異的に結合する、対応する核酸標的配列に対する相補性(または「完全一致の%」)が約80パーセントよりも大きく、より好ましくは、その核酸が特異的に結合する、対応する標的配列に対する相補性が約85パーセントよりも大きい。ある特定の態様において、上記のように、本発明の実施において使用するために、よりいっそう実質的に相補的な核酸配列を有することが望ましく、そのような例において、核酸配列は、その核酸が特異的に結合する、対応する標的配列に対する相補性が約90パーセントよりも大きく、ある特定の実施形態において、その核酸が特異的に結合する、対応する標的配列に対する相補性は約95パーセントよりも大きくてもよく、さらには、その設計された核酸が特異的に結合する標的配列の全体または一部に対して、最大で(その値を含む)約96%、約97%、約98%、約99%の相補性であってもよく、さらには約100%完全一致の相補性でさえあり得る。
【0203】
本開示の核酸配列のいずれかの類似性のパーセントまたは相補性のパーセントは、例えば、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手できるGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を使用して、配列情報を比較することによって決定することができる。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunsch(1970)のアライメント法を利用している。簡潔に言えば、GAPプログラムは、アラインされた類似するシンボル(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を、2つの配列のうち短い方の配列の符号の合計数で除算した数として、類似性を定義している。GAPプログラムのための好ましい初期パラメーターは、以下のものを含む:(1)ヌクレオチドについて、単項比較マトリクス(一致に対して1、および非一致に対して0の値を含む)、およびGribskovおよびBurgess(1986)の重み付けされた比較マトリクス;(2)各ギャップに対して3.0のペナルティ、および各ギャップ中の各シンボルに対して追加の0.10のペナルティ;および(3)末端のギャップに対してはペナルティなし。
【0204】
本明細書で使用される場合、コンポーネントの量に関連する用語「実質的に含まない」または「本質的に含まない」は、好ましくは、ある化合物の含有量が、約10重量パーセント未満、好ましくは約5重量パーセント未満、より好ましくは約1重量パーセント未満である組成物を指す。好ましい実施形態において、これらの用語は、約0.5重量パーセント未満、約0.1重量パーセント未満、または約0.01重量パーセント未満を指す。
【0205】
本明細書で使用される場合、用語「構造遺伝子」は、コードされたペプチド、ポリペプチド、タンパク質、リボザイム、触媒RNA分子、またはアンチセンス分子を産生するために発現されるポリヌクレオチド(例えば遺伝子)を一般的に記述することが意図されている。
【0206】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、本発明による組成物による処置が提供され得る生物(霊長類などの哺乳類を含む)を記述する。本開示の処置方法から利益を受け得る哺乳動物種は、それらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類(類人猿;チンパンジー;サル、およびオランウータンなど)、飼い慣らされた動物(イヌおよびネコを含む)、ならびにウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、およびヤギなどの家畜、またはその他の哺乳動物種(それらに限定されないが、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスターを含む)などを含む。
【0207】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に対応する」、「実質的に相同」、または「実質的同一性」は、核酸またはアミノ酸配列の特徴を表し、ここで、選択された核酸配列または選択されたアミノ酸配列は、選択された参照核酸またはアミノ酸配列と比較して、少なくとも約70または約75パーセントの配列同一性を有する。より典型的には、選択された配列と参照配列とは、少なくとも約76、77、78、79、80、81、82、83、84、さらには85パーセントの配列同一性、より好ましくは、少なくとも約86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95パーセントの配列同一性を有する。より好ましくは、さらに相同性が高い配列は、選択された配列と、その配列が比較された参照配列との間で、少なくとも約96、97、98、または99パーセントを超える配列同一性を共有していることが多い。
【0208】
本明細書で使用される場合、「合成」は、材料が、ヒトまたは動物起源ではないことを意味するものとする。
【0209】
「標的化部分」は、粒子による特定の部位に対する標的化を促進し得る任意の因子である。例えば、標的化部分は、化学的標的化部分、物理的標的化部分、幾何学的標的化部分、またはそれらの組み合わせであってもよい。化学的標的化部分は、粒子の表面上の化学基または分子であってもよく;物理的標的化部分は、粒子の特定の物理的性質、例えば表面の疎水性であってもよく;幾何学的標的化部分は、粒子のサイズおよび形状を含む。さらに、化学的標的化部分は、デンドリマー、抗体、アプタマー(チオアプタマーであってもよい)、リガンド、抗体、または標的化部位上の特定の受容体に結合する生体分子であってもよい。物理的標的化部分は、表面電荷であってもよい。電荷は、粒子の製造中に、特定の洗浄などの化学的処理を使用して導入してもよい。例えば、多孔性シリカまたは酸化ケイ素の表面を水に浸漬すると、表面上に負電荷を帯びさせ得る。表面電荷は、また、粒子表面上の追加の層、または化学鎖(ポリマー鎖など)によって付与してもよい。例えば、ポリエチレングリコール鎖は、表面上の負電荷の発生源であり得る。ポリエチレングリコール鎖は、当該技術分野における当業者に知られている方法を用いて、コーティングするか、または表面に共有結合させてもよい。
【0210】
用語「治療上実際的な期間」は1またはそれを超える活性薬剤が、治療的に有効であるために必要な期間を意味する。用語「治療上有効な」は、1またはそれを超える症状の重症度および/または頻度の低減、1またはそれを超える症状および/またはその基礎をなす要因の除去、症状および/またはその基礎をなす要因の発生の防止、およびダメージの改善または軽減を指す。
【0211】
「治療剤」は、対象における標的部位に、所望の生物学的効果をもたらし得る、任意の生理学的または薬理学的に活性な物質であり得る。治療剤は、化学療法剤、免疫抑制剤、サイトカイン、細胞傷害性薬剤、核酸分解性化合物、放射性同位元素、受容体、およびプロドラッグ活性化酵素であってもよく、それらは天然であってもよく、合成または組換え法によって製造されてもよく、それらの組み合わせであってもよい。古典的な多剤耐性によって影響される薬物、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンおよびビンクリスチン)、アントラサイクリン類(例えば、ドキソルビシンおよびダウノルビシン)、RNA転写阻害剤(例えば、アクチノマイシンD)、および微小管安定化薬(例えば、パクリタキセル)は、治療剤として特定の有用性を有し得る。サイトカインもまた、治療剤として使用し得る。このようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。がん化学療法剤は、好ましい治療剤であり得る。抗がん剤およびその他の治療剤のさらに詳細な記述については、当業者は、任意の数の解説書(それらに限定されないが、Physician’s Desk Reference、ならびにHardmanおよびLimbird(2001)を含む)を参照されたい。
【0212】
本明細書で使用される場合、「転写因子認識部位」および「転写因子結合部位」は、1またはそれを超える転写因子の配列特異的相互作用のための部位であると同定されるポリヌクレオチド配列(単数または複数)または配列モチーフ(単数または複数)を指し、直接的なタンパク質-DNA結合の形態をとることが多い。典型的には、転写因子結合部位は、DNAフットプリンティング、ゲル移動度シフトアッセイなどによって同定することができ、および/または既知のコンセンサス配列モチーフに基づいて、もしくは当業者に知られている他の方法によって予測することができる。
【0213】
「転写調節エレメント」は、単独で、または1またはそれを超える他の核酸配列と組み合わせて、転写を活性化するポリヌクレオチド配列を指す。転写調節エレメントは、例えば、1またはそれを超えるプロモーター、1またはそれを超える応答エレメント、1またはそれを超える負の調節エレメント、および/または1またはそれを超えるエンハンサーを含んでいてもよい。
【0214】
「転写ユニット」は、少なくとも第1のシス作用性プロモーター配列に作動可能に連結され、かつ、必要に応じて、構造遺伝子配列の効率的な転写に必要な1またはそれを超えるその他のシス作用性核酸配列に作動可能に連結された、少なくとも第1の構造遺伝子、および、プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントの制御下に作動可能に配置された構造遺伝子配列の適切な組織特異的な発生転写に必要とされ得る、少なくとも第1の遠位調節エレメント、ならびに、効率的な転写および翻訳に必要とされる任意の追加のシス配列(例えば、ポリアデニル化部位(単数または複数)、mRNA安定性制御配列(単数または複数)など、を含むポリヌクレオチド配列を指す。
【0215】
本明細書で使用される場合、用語「形質転換」は、外来性ポリヌクレオチド配列(例えば、ウイルスベクター、プラスミド、または組換えDNAまたはRNA分子)を、宿主細胞またはプロトプラスト内に導入するプロセスを一般的に記述することが意図されており、ここで、外来性ポリヌクレオチドは、少なくとも第1の染色体に組み込まれるか、または形質転換宿主細胞内で自発複製することができる。トランスフェクション、エレクトロポレーション、および「裸の(naked)」核酸の取り込みは、全て宿主細胞を1またはそれを超えるポリヌクレオチドで形質転換するために使用される技術の例を表す。
【0216】
本明細書で使用される場合、用語「形質転換細胞」は、宿主細胞であって、1またはそれを超える外来性ポリヌクレオチドをその細胞に導入することによって、その核酸相補体が変えられている、宿主細胞を意味することが意図されている。
【0217】
本明細書で使用される場合、「処置すること」または「~の処置」は、任意の種類の医学的または外科的管理を対象に提供することを指す。処置することは、それらに限定されないが、治療剤を含む組成物を対象に投与することを含んでもよい。「処置すること」は、疾患、障害、もしくは状態、または疾患、障害、もしくは状態の1またはそれを超える症状もしくは徴候を、治癒させる、反転させる、軽減させる、その重症度を減少させる、その進行を阻害する、またはその尤度を減少させることを目的とする、対象に対する、本発明の化合物もしくは組成物の任意の投与もしくは適用を含む。ある特定の態様において、本発明の組成物は、また、予防が正当化される場合、状態の任意の症状または徴候が生じる前に、予防的に投与してもよい。典型的には、このようなケースにおいて、その対象は、家族歴、診療記録、またはその後にそのような疾患または障害が生じる傾向を示唆する1またはそれを超える診断もしくは予後試験のいずれかの結果として、そのような疾患または障害が生じる「リスクがある」ものと診断されている対象である。
【0218】
本明細書で使用される場合、用語(tern)「ベクター」は、宿主細胞中で複製することができる、および/または別の核酸セグメントが、その連結されたセグメントの複製を引き起こすように作動的に連結されていてもよい核酸分子(典型的にはDNAから構成される)を指す。プラスミド、コスミド、またはウイルスは、例示的なベクターである。
【0219】
ある特定の実施形態において、本発明の1またはそれを超える核酸セグメントは、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて所与の標的配列の存在を決定するときに標識されたポリヌクレオチドプローブを利用するケースのように、適切な検出可能なマーカー(すなわち、「標識」)と組み合わせて利用することが有利である。オリゴヌクレオチドプローブを標識するための多種多様な適切なインジケーター化合物および組成物が当該技術分野において知られており、それらに限定されないが、蛍光性、放射性、酵素的、またはその他のリガンド(例えばアビジン/ビオチン)などを含み、それらは、適切なアッセイにおいて検出することができる。特定の実施形態において、また、1またはそれを超える蛍光標識またはウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはペルオキシダーゼなどの酵素タグを、放射性またはその他の環境的にあまり望ましくない試薬に代えて利用してもよい。酵素タグのケースにおいては、比色性、発色性、または蛍光発生指示基質は、人間の目で見えるサンプルの検出方法を提供するために利用できること、または、1またはそれを超える相補的もしくは実質的に相補的な核酸配列を含むサンプルとの特異的なハイブリダイゼーションを同定するための、シンチグラフィー、蛍光定量、分光光度測定などの分析方法に利用できることが知られている。いわゆる「多重化」アッセイ(この場合、2またはそれを超える標識されたプローブが同時に、または逐次的に検出される)のケースにおいて、第1のオリゴヌクレオチドプローブを第1の検出特性またはパラメーター(例えば、発光および/または励起スペクトルの極大)を有する第1の標識で標識し、さらに第2のオリゴヌクレオチドプローブを、第1の標識と異なる(すなわち、ディスクリートな(discreet)、または識別できる)第2の検出特性またはパラメーターを有する第2のオリゴヌクレオチドプローブで標識することが望ましい場合がある。多重化アッセイの使用は、特に遺伝子増幅/検出プロトコルの状況において、分子遺伝学の技術分野における当業者に周知である。
生物学的機能同等性
【0220】
核酸、または核酸を含むベクター、ならびにそれらにコードされるmRNA、ポリペプチド、または治療剤の構造に対して改変および変更を行い、それでもなお望ましい特性を有する1またはそれを超える治療剤を含む機能的システムを得ることが可能である。上述のように、特定のポリヌクレオチド配列に1またはそれを超える変異を導入することが望ましいことが多い。ある特定の状況において、得られるコードされたポリペプチド配列は、この変異によって変えられ、または、他のケースでは、このポリペプチドの配列は、コードするポリヌクレオチドにおける1またはそれを超える変異によって変わらない。
【0221】
ポリペプチドのアミノ酸配列を変えて、同等の、または、さらには改善された第2世代の分子を作り出すことが望ましい場合、コードDNA配列の1またはそれを超えるコドンを、表2に従って変化させることによって実現し得る。
【0222】
例えば、ある特定のアミノ酸によって、例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などの構造に対する相互作用的結合能力を大きく損なうことなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸を置換することができる。タンパク質の生物学的機能活性を規定するのはタンパク質の相互作用能力および性質であるので、タンパク質配列(および、当然ながら、その基となるDNAコード配列)において、ある特定のアミノ酸配列置換を行い、それにもかかわらず、同様の特性を有するタンパク質を得ることが可能である。よって、本発明者らは、本開示の組成物のペプチド配列、またはそのペプチドをコードする対応するDNA配列に対して、その生物学的有用性または活性を大きく損なうことなく、種々の変更を行い得ることを意図している。
【0223】
表2
【表2】
【0224】
そのような変更を行う場合、アミノ酸の疎水性親水性指数を考慮してもよい。タンパク質に対する相互作用的生物学的機能の付与における疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、当該技術分野において一般に認識されている(KyteおよびDoolittle、1982(参照により本明細書に援用される))。アミノ酸の相対的疎水性親水性特性が得られるタンパク質の二次構造に寄与し、それが次に、そのタンパク質と、他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定することが受け入れられている。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づき、疎水性親水性指数が割り当てられている(KyteおよびDoolittle、1982)。その値は、以下のとおりである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
【0225】
ある特定のアミノ酸が、類似の疎水性親水性指数またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換され、それでもなお類似の生物学的活性を有するタンパク質をもたらし得る、すなわち、それでもなお生物学的機能が同等なタンパク質が得られ得ることが、当該技術分野において知られている。このような変更を行う場合、疎水性親水性指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内の置換が特に好ましく、さらに±0.5以内の置換がとりわけ好ましい。同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行い得ることもまた、当該技術分野において理解されている。米国特許第4,554,101号(明示された参照により、その全体が具体的に本明細書に援用される)には、タンパク質の局所平均親水性(隣接するアミノ酸の親水性によって決定される)の最大値が、そのタンパク質の生物学的特性と相関することが述べられている。
【0226】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。あるアミノ酸で類似の親水性値を有する別のアミノ酸を置換し、それでもなお生物学的に等価な、特に、免疫学的に等価なタンパク質が得られ得ることが理解されている。このような変更の場合、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、特に±1以内の置換が好ましく、さらに±0.5以内の置換がとりわけ好ましい。
【0227】
したがって、上に概説したように、アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。上記の1またはそれを超える特性を考慮した置換の例は、当業者に周知であり、そのような置換には、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリン、ロイシンとイソロイシンが含まれる。
【0228】
全体を通して使用されているセクションの表題は、構成を目的としているにすぎず、記載されている主題を限定するものと解釈するべきではない。本出願に引用されている全ての文献、または文献の部分(それらに限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍、および論文を含む)は、明示された参照により、それらの全体が明示的に本明細書に援用される。援用された文献または類似の資料の1またはそれを超えるものが、本出願における用語の定義と矛盾するような様式で用語を定義している場合には、本出願が優先する。
【実施例
【0229】
以下の実施例は、本発明の例証的な実施形態を説明するために含められている。これらの実施例において開示されている技術は、本発明の実施において良好に機能することが見出された技術であり、したがって、本発明の実施のための好ましいモードを構成するものとみなされ得ることを、当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、開示されている特定の実施形態に対して多くの変更を行い、それでもなお、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、同様または類似の結果が得られ得ることを理解すべきである。
実施例1
【0230】
NY-ESO-1ペプチドとモンタニドISA-51に加えてCpGまたはポリ(I:C)を使用して多くの臨床試験が報告されているが、臨床応答および免疫応答は、一般に弱いか、または中程度である。妥当と思われる理由の1つは、NY-ESO-1ペプチドとTLRリガンド[CpGまたはポリ(I:C)]は、互いに相互作用して複合体または粒子を形成せず、それが弱い免疫応答をもたらすというものである。以前に、DC/TAT-TRP-2ワクチンが、強い保護的(しかし、治療的ではない)免疫を生じさせ得ることが実証された(Wangら、2002)。第1相臨床試験において、TAT-ESO-1ペプチドは、ワクチンのためにモンタニドISA-51と混合され、このワクチンは弱いT細胞応答を生じさせただけであった。この試験の過程の間、本発明者らは、2つの潜在的な問題点を見出した:1)TAT-ESO-1は、おそらくN末端の正電荷のために、モンタニドISA-51と安定な複合体を形成することができなかった;2)TAT-ESO-1は、CpGと混合したときに、沈殿を形成した。電荷と疎水性に基づき、本発明者らは、図2Aおよび図2Bに概略的に示すように、TLRリガンド[CpG、MPLA、およびポリ(I:C)(略してCMI)]を用いた自己組織化CPP-T細胞ペプチドナノ粒子(PEP-NANO)の新規技術を設計および開発した。正に荷電しているペプチドを有し、NY-ESO-1(SLLMWITQCFLPV)(配列番号1)およびTRP-2(SYVDFFVWL)(配列番号2)などの治療用ペプチド(一般に疎水性)に共有結合で連結しているTATなどのCPPからなる、両疎媒性または両親媒性CPP治療用ペプチドは、一方では電気的相互作用によって負に荷電しているCpGおよび/またはポリ(I:C)と共に、他方では粒子内部の疎水性によってMPLAと共に、ナノ粒子を形成する。
実施例2
TAT-TRP2ペプチドナノ粒子の、TLRリガンドまたはその組み合わせとの自己組織化および特徴付け
【0231】
TAT-TRP2、TAT-ESO-1、およびCpGは、まず、ストック溶液として、10mg/mLの濃度で滅菌超純水に完全に溶解した。MPLAおよびポリI:Cは、1mg/mLの濃度で滅菌超純水に完全に溶解した。TAT-ペプチドワクチンナノ粒子を調製するために、指定された体積のCpG、MPLA、およびポリI:C(表3に示す)を、超純水またはバッファー中で、激しいボルテックスによって徹底的に混合した。
【0232】
表3
TLRリガンドの濃度および組み合わせ
【表3】
【0233】
TAT-ペプチドナノ粒子の自己組織化を、氷冷水浴中で超音波処理しながら、1分間以内にTAT-ペプチドを滴下添加することによってトリガーした。TAT-TRP2は、親水性/正電荷および疎水性を示し、かつCpG ODNとの静電的相互作用を促進する。TRP2ペプチドの疎水性C末端は、疎水性相互作用によって、MPLAと共に疎水性コアを形成する。静電的および疎水性相互作用は、TAT-TRP2とダブルまたはトリプルTLRアゴニストの自己組織化を推進し、代表的な横断面(赤線)にわたる高さとDMTモジュラス分布の両方についてのAFM解析によって示されるように、球形のTAT-TRP2-CMナノ粒子を形成させる。対照的に、TAT修飾されていないTRP2ペプチドは、CpG-MPLAと複合体を形成できず、長いファイバーを形成した。
【0234】
安定で有効性が高いペプチドワクチンナノ粒子を製剤化するために、本発明者らは、表3に示すような種々の異なる比率のTAT-TRP2ペプチド:TLRリガンドを使用して製剤を最適化し、TAT-TRP2と異なる組み合わせのTLRリガンドの各ナノ粒子(80~150nm)のサイズを解析した(図4)。灰色のバーは、PDIが大きい(PDI>0.5)不安定/多分散複合体を示す。
実施例3
CPPペプチドナノ粒子のゼータ電位
【0235】
ナノ粒子の表面電荷を決定するために、種々の窒素(+)対リン酸(-)(N/P)比(N=アミノ酸残基由来の窒素;P=CpG ODNリン酸基)で構成された複合体について、ゼータ電位を測定した。TAT-TRP2-CMナノ粒子のゼータ電位は、N/Pの比の違いに応じて変化した(図5)。この後の研究のために、TAT-TRP2-CMについて条件#2を、TAT-TRP2-CMIについて条件#18を適用した(表3および図4)。図6Aおよび図6Bは、TAT-TRP2-CMのナノ粒子サイズ、ならびにTAT-TRP2、CpG、MPLA、およびTAT-TRP2-CMのゼータ電位を示す。TAT-ESO-1を、CpGとMPLA(CM)、およびCpG、MPLAとポリ(I:C)(CMI)と共に用いて、同様の結果を得た(図7A図7B図7C図7D図7E、および図7F)。
実施例4
CPPペプチドナノ粒子の形成およびサイズは、どちらもpH依存的である
【0236】
TAT-TRP2-CMのpH7.0におけるナノ粒子およびゼータ電位は、pH4.0で破壊および変化することが実証された(図8A図8B、および図8C)。
【0237】
pH4~7の異なるpHにおける自己組織化およびナノ粒子サイズをさらに特徴付けるために、本発明者らは、自己組織化およびナノ粒子が異なるpH値において破壊されることを見出した。TAT-TRP2-CMのナノ粒子は、pH7.0において密でサイズが100nmであるが、pH6.0でサイズが大きくなり、pH5.0でサイズが小さくなる。TAT-TRP2-CMのナノ粒子は、完全に破壊され、分離した(図9A)。これらの結果に基づき、本発明者らは、TAT-TRP2-CMナノ粒子は、APCによって食作用でエンドソーム/リソソームに取り込まれ、そこでナノ粒子がpH4~5で破壊されると推論した。エンドソーム/リソソームコンパートメント内における酸性化によって、TAT-TRP2の正電荷が増加し、CpG ODNが中性化する。そこで、TAT-TRP2ペプチドが細胞質内に放出され、ER内のMHCクラスIまたはII分子によって提示され、一方で、TLRリガンドは、TLRに結合し、自然免疫応答をトリガーし、サイトカインを産生させ、これによって抗原提示およびT細胞活性化が増強される(図9B)。対照的に、TAT-TRP2は、単独で、細胞透過性によってAPCに入り、APCによってT細胞に提示され、自然免疫応答およびサイトカイン産生はない。このpH依存的な特性は、TAT-TRP2-CM、TAT-TRP2-CMI、TAT-ESO-l-CM、およびTAT-ESO-l-CMIにもあてはまることがさらに示された(図9C)。
実施例5
異なるTLRリガンドの組み合わせによる、CPPペプチドナノ粒子がトリガーする自然免疫応答およびサイトカイン産生
【0238】
自然免疫応答を刺激する最適なTLRリガンドの組み合わせを同定するために、本発明者らは、骨髄由来DCを新たに単離し、次いで異なるTLRリガンド(単独のみ)、二重の組み合わせ、または三重の組み合わせで処理した(図9A図9B図9C、および図9D)。異なるTLRリガンドまたはそれらの組み合わせによる処理の後、サイトカイン(TNF-α、IL-6、IFN-α、およびIFN-β)産生を、細胞上清のELISAによって決定した。ポリ(I:C)/CpG、CpG/MPLAという二重の組み合わせ、およびCpG/ポリ(I:C)/MPLAという三重の組み合わせが、自然免疫サイトカイン産生のトリガーにおいて、その他の群よりも優れていることが判明した。CpG/ポリ(I:C)/MPLAという三重の組み合わせが、サイトカイン産生を誘導するための最強のアクチベーターである(図10)。
実施例6
CPPペプチドナノ粒子の形成およびサイズはpH依存的である
【0239】
NY-ESO-1ペプチドとモンタニドISA-51に加えてCpGまたはポリ(I:C)を使用して多くの臨床試験が報告されているが、臨床応答および免疫応答は、一般に弱いか、または中程度である。妥当と思われる理由の1つは、NY-ESO-1ペプチドとTLRリガンド[CpGまたはポリ(I:C)]は、互いに相互作用して複合体または粒子を形成せず、それが弱い免疫応答をもたらすというものである。以前に、DC/TAT-TRP-2ワクチンが、強い保護的(しかし、治療的ではない)免疫を生じさせ得ることが実証された(Wangら、2002)。第1相臨床試験において、TAT-ESO-1ペプチドは、ワクチンのためにモンタニドISA-51と混合され、このワクチンは弱いT細胞応答を生じさせただけであった。全体として、マウスおよびヒトの臨床試験によって、現在のワクチンによるアプローチは、強力な免疫応答および臨床応答にならないことが示されている。主要な問題は、がん抗原ペプチド/タンパク質とTLRリガンドが、同じAPCに共送達されないことである。多くのケースにおいて、2種または3種のリガンドが共送達されるのではなく、1種類のTLRリガンドだけが使用される。以下の実施例において、本発明者らは、TAT-TRP2またはTAT-ESO-1などの両親媒性CPP治療用ペプチドを利用して、一方では電気的相互作用によって負に荷電しているCpGおよび/またはポリ(I:C)と共に、他方では疎水性によってMPLAと共にナノ粒子を形成する、SAPEP-NANOテクノロジーが、マウスモデルにおいて、強力な抗腫瘍免疫を生じさせ得ることを実証する。
実施例7
TAT-TRP2およびTLRリガンドナノ粒子をロードしたDCによる強固な抗腫瘍免疫の発生
【0240】
抗腫瘍免疫を増強するために、本発明者らは、TAT-TRP-2ペプチドが、物理的性質(正/負電荷、親水性、および疎水性)によって、CpGおよびMPLAなどのTLRリガンドと複合体を形成し、治療的免疫を誘導すると仮定した。この予想を検証するために、本発明者らは、B16マウスモデルおよびチロシナーゼ関連タンパク質-2(TRP-2)ペプチドを実験系として使用した。TAT-TRP-2(YGRKKRRQRRRSYVDFFVWL)(配列番号17)ペプチドは、CpG/MPLAと密な複合体(TAT-TRP2-CM)を形成したが、TRP2ペプチドは、CpG/MPLAと複合体(TRP2-CM)を形成することができなかった(図3A-1、図3A-2、図3B-1、図3B-2、図3C-1、および図3C-2)。TAT-TRP2-CMまたはTRP2-CMをロードしたDCを調製し、B16腫瘍担持マウスに静脈内注射した。16日後、これらの処置マウスにおいて肺転移を検査し、DC/TAT-TRP2-CMは肺転移の数を顕著に抑制するが、DC/TRP2-CMは、DC/β-gal-CM対照群と比較して、肺転移の数を抑制できないことが確認された(図11)。
【0241】
マルチステージビヒクル(MSV)ナノテクノロジーは、ペプチド、CpG、およびMPLAをシリコン粒子中にロードし、B16腫瘍細胞に対する強力な免疫応答を誘導できることが最近示された(Zhuら、2018)。抗腫瘍免疫および生存を誘導する能力についてDC/MSVワクチンとDC/PEP-NANOワクチンを比較するために、本発明者らは、DC/対照ペプチド(群#1)、DC/TRP2/CpG/MPLA(#2)、DC/TAT-TRP-2/CpG/MPLA(群#3)、DC/MSV-TRP2/CpG/MPLA(#4)、およびDC/MSV-TAT-TRP-2/CpG/MPLA(#5)を調製し、腫瘍担持マウスに注射した(図12A)。明らかに、DC/TAT-TRP2/CpG/MPLA群(#3)およびDC/MSV-TAT-TRP2/CpG/MPLA群(#5)は、DC/TRP-2/CpG/MPLA(#2)およびDC/MSV/TRP-2/CpG/MPLA(#4)と比較して、MSVとは無関係に、より強い治療的免疫を誘導し、B16肺転移を抑制することができ(図12B)、このことは、MSVではなく、TAT配列が、最も強い免疫応答を生じさせるために決定的に必要とされることを示唆している。さらに重要なことには、本発明者らは、DC/TAT-TRP-2/CpG/MPLAによって免疫されたマウスが、DC/MSV-TAT-TRP-2/CpG/MPLA群よりもはるかに長く生き残ることを示した(全てのマウスはB16腫瘍注射後35日以内に死亡した)(図12C)。その他のワクチン群(DC/β-Gal/CpG/MPLA、DC/TRP2/CpG/MPLA、およびDC/MSV/TRP-2/CpG/MPLA)は、B16接種後25日以内に死亡した。これらの結果によって、TAT-TRP-2/CpG/MPLAワクチンが、試験した種々の異なるワクチン群のうちで最良であることが示唆された。
実施例8
TAT-ESO-1およびTLRリガンドナノ粒子をロードしたDCによるロバストな抗腫瘍免疫の発生
【0242】
TAT-ESO-l-CMまたはTAT-ESO-CMIナノ粒子をロードしたDCが、RM1/A2-ESO-1腫瘍細胞に対する強力な抗腫瘍免疫を誘導し得るかどうかを確認するために、DC/対照ペプチド、DC/TAT-ESO-CM、またはDC/TAT-ESO-CMIのワクチン接種による実験を行った。腫瘍成長を2日毎にモニターした。DC/TAT-ESO-CMワクチン接種は、対照群と比較して、RM1/HLA-A2-NY-ESO-1腫瘍成長を顕著に抑制することが観察された(図13Aおよび図13B)。重要なことには、DC/TAT-ESO-CMIは、DC/TAT-ESO-CMワクチンよりも極めて強い免疫を示した(図13Aおよび図13B)。免疫細胞応答のさらなる分析によって、DC/TAT-ESO-CMIにおける抗原特異的な応答は、DC/TAT-ESO-CMよりも優れていることが確認された(図14Aおよび図14B)。これらの結果によって、DC/TAT-ESO-CMとDC/TAT-ESO-CMIワクチンのどちらも強力な抗腫瘍免疫を生じさせることが示唆された。
【0243】
DC/TAT-ESO-CMが、その他の腫瘍モデルにおいて、治療的な抗腫瘍免疫を誘導することができるかどうかをさらに実証するために、乳がんE0771/A2-ESO腫瘍細胞を腫瘍モデルとして使用した。DC/TAT-ESO-CMワクチン接種は、対照と比較して、腫瘍成長を完全に抑制することが示された(図15)。
実施例9
DCを含まない、TAT-ESO-l/TLRナノ粒子の直接的免疫は、強い治療的抗腫瘍免疫を誘導する
【0244】
ワクチンのためのほとんどの研究は、抗原ペプチドをロードしたDC、MSV粒子、またはCPPペプチドとTLRナノ粒子の組み合わせを使用するが、そのようなプロセスは、特に臨床試験のためには、複雑かつ非常に労働集約的である。よって、本発明者らは、CPPペプチド/TLRナノ粒子が、強力な抗腫瘍免疫を生じさせるためのワクチン接種のために直接使用できるかどうかを仮定した。この可能性を検証するために、腫瘍担持マウスをTAT-ESO-CMIで3回免疫し、DC/TAT-ESO-CMIで1回免疫したマウスと比較した。結果を図16Aに示す。TAT-ESO-CMIによる直接的なワクチン接種は、腫瘍成長を顕著に抑制し、その程度はDC/TAT-ESO-CMIよりもはるかに高かった(図16Bおよび図16C)。対照的に、予測したとおり、対照群においては、急速な腫瘍成長が観察された。
実施例10
TAT-CT83ペプチドワクチン
【0245】
CT83(CXORF61およびKKLC1としても知られる)は、ヒト肺および乳がんにおいて高発現されていることが示されており(図17A図17D図18A、および図18B)、これは以前の報告と整合性がある(Fukuyamaら、2006;Paretら、2015)。よって、CT83は、がんワクチンおよび免疫療法のための免疫標的として機能することが見込まれる。
【0246】
この可能性を検証するために、潜在的HLA-A2結合モチーフ(binging motif)を含む一連のTAT結合CT83ペプチドを合成した(表4)。HLA-A2トランスジェニックマウスのin vivo免疫を使用して、CMIを含む自己組織化TAT-CT83ペプチドナノ粒子が、CT83-A2ペプチドに対する強いT細胞応答を生じさせることが示された(図19A図19B図19C図19D、および図20A図20D)。HLA-DR13およびHLA-DP4拘束性T細胞が、in vitroペプチド刺激の後に生じた。
【0247】
TAT-CT83-CMIが強力な抗腫瘍免疫を生じさせ得たかどうかを確認するために、各マウスにつき、100μgのTAT-CT83ペプチド混合物(等量のTAT-CT83-A2-1、-5、-6、および-7を含む、下記表4を参照のこと)、20μgのCpG、4μgのMPLA、および10μgのポリ(I:C))を超音波処理下で混合することによって、TAT-CT83ペプチドワクチンを調製した。HLA-A2トランスジェニックマウスを使用した実験デザインを図20Aに示す。TAT-CT83-CMIワクチンが、マウス乳がんE0771/A2/CT83細胞に対する強力な抗腫瘍免疫を強く誘導し得ることが示された(図20Bおよび図20C)。さらに、このような抗腫瘍免疫は、抗PD-1遮断療法によってさらに増強することができた(図20Bおよび図20C)。重要なことには、ワクチンに誘導されたT細胞は、ワクチンなしのマウスと比較して、腫瘍組織内に浸潤していた(図20D)。
【0248】
表4
TAT結合CT83ペプチド
【表4】
1.TAT-ESO-CMIは、乳がんにおいて強力な抗腫瘍免疫を生じさせる
【0249】
同様に、E0771/A2-ESO乳がん細胞を用いて、HLA-A2 Tgマウスで実験を行った。DC/TAT-ESO-CMIの1回のワクチン接種は、腫瘍注射(1×10細胞/マウス)の10日後に、対照処置群と比較して、腫瘍成長を完全に抑制したことが確認された(図21A図21B、および図21C)。さらに、DCを含まないTAT-ESO-CMIのワクチン接種は、治療モデルにおいて強力な抗腫瘍免疫を生じさせ、腫瘍細胞成長を抑制したことが示された(図21D)。
2.抗PD-1遮断を含むTAT-TRP2-CMIまたはTAT-ESO-CMIワクチンの組み合わせ療法
【0250】
SAPNANOワクチンは免疫チェックポイント療法と組み合わせ得るかどうかを検証するために、TAT-TRP-2-CMI SAPNANOワクチン接種に抗PD-1療法を組み合わせたところ、TAT-TRP-2-CMI SAPNANO単独と比較して、抗腫瘍免疫をさらに増強させ、マウスの生存期間を延長できたことが示された(図22A図22B、および図22C)。特に、TAT-TRP2-CMIに抗PD-1を組み合わせた場合、マウスの生存期間が著しく延長された(図22C)。
【0251】
この概念をさらに検証するために、RM1-A2-ESO腫瘍担持HLA-A2トランスジェニックマウスを、TAT-ESO-CMIワクチン接種単独で処置するか、または抗PD-1療法と組み合わせて処置した(図23Aおよび図23B)。SAPNANOワクチン単独で、腫瘍成長を著しく抑制することが示された(図22Aおよび図22B)。SAPNANOワクチンに誘導された抗腫瘍免疫は、抗PD-1遮断療法によってさらに増強することができた(図23Aおよび図23B)。
3.TAT-ESO-CMIワクチンのTCR-T細胞免疫療法との組み合わせ療法
【0252】
本発明者らの新たなSAPNANOワクチンは、乳がんに対してA2-ESO TCR-T細胞介在性免疫をブーストし得るかどうかを検証するために、E0771/A2-ESO腫瘍細胞を用いた実験を行い、A2-ESO TCR-T細胞を養子移入した後にTAT-ESO-CMIワクチン接種を行うと、いずれか単独よりも、E0771/A2-ESO腫瘍成長の抑制が良好であった(図24A)。注目すべきことに、TAT-ESO-CMIワクチンは、TCR-T細胞の養子移入よりも、強い抗腫瘍免疫を誘導する(図24A)。これと矛盾なく、A2-ESO TCR-T細胞単独(5.5%)と比較して、TAT-ESO-CMIワクチン(25.9%)の方が、腫瘍浸潤性A2-ESO TCR-T細胞を増やした(図24B)。これらの結果によって、A2-ESO TCR-T細胞を、in vivoにおいて、TAT-ESO-CMIワクチンによって増やし得ることが示唆される。
【0253】
この組み合わせ療法をヒト化マウスにおいてさらに検証するために、ヒトPBMCをNSGマウスに注射し、ヒト免疫システムを3~4週間再構成させた。これらのヒト化NSGマウスに、次いで、MDA-MB-231-A2-ESO腫瘍細胞を注射し、続いてSAPNANOワクチン、NY-ESO-1TCR-T細胞療法、またはその両方を行った。TAT-ESO-CMIワクチン単独では、T細胞などの免疫細胞および免疫再構成後のDCが限られていたために、腫瘍成長を有意に阻害しなかったが、TAT-ESO-CMIワクチンとESO特異的TCR組換えT細胞療法を組み合わせることによって、MDA-MB-231-A2-ESO乳がんモデルにおいて、TCR-T細胞単独群と比較して、いずれか単独よりも強い抗腫瘍効果を生じさせることができた(図25A図25B図25C図25D、および図25E)。
参考文献
【0254】
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【0328】
本明細書に記載されている実施例および実施形態は、単に例示を目的としており、それを考慮した種々の改変または変更が当業者に示唆され、それらが本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲に含められることが理解されるべきである。本明細書に引用されている刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別かつ具体的に参照により援用されるべく表示され、その全体が本明細書に記載されている場合と同程度に、参照により援用される。本明細書における値の範囲の記述は、別段の指定がない限り、その範囲内に含まれる個々の別々の値に対する個別の参照の簡略的な方法であり、個々の別々の値は、それらが本明細書に個別に記述されているかのごとく、本明細書に組み入れられる。
【0329】
1または複数の要素に関連する「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、または「含む(containing)」などの用語を用いた本発明のあらゆる態様または実施形態の本明細書における記載は、別段の記載がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、その1または複数の特定の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、または「を実質的に含む(substantially comprises)」、本発明の類似の態様または実施形態に対するサポートを与えることが意図されている。(例えば、ある特定の要素を含む(comprising)として本明細書に記載されている組成物は、別段の記載がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、その要素からなる(consisting of)組成物も記載しているものと理解すべきである)。
【0330】
本明細書に記載および特許請求されている組成物および方法の全ては、本開示を参照して、過度な実験を行うことなく作製または実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様によって説明されてきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲を逸脱することなく、その組成物および方法に対して、ならびに本明細書に記載されている方法のステップまたは一連のステップにおいて、変更を加えてもよいことが当業者には明らかである。より具体的には、化学的および/または生理学的に関連するある特定の薬剤を、本明細書に記載されている薬剤の代用としてもよく、それでもなお同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。
【0331】
当業者に明らかなこのような類似の置換および改変は、全て、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であるとみなされる。

図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2021-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中性pHにおいて自己組織化性であり、疎水性治療用ペプチドリガンドに共有結合で連結している複数のカチオン性細胞透過性ペプチドから構成されるナノ粒子の集団;
(b)医薬的に許容され得るバッファー、希釈剤、キャリアー、またはビヒクル
を含む、組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、mRNA、siRNA、dsRNA、RNA、DNA、もしくはそれらの任意の組み合わせなどの負に荷電している分子、またはMPLAなどの疎水性ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
NY-ESO-1(配列番号1)またはTRP-2(配列番号2)などの治療用ペプチドに共有結合で連結している、CPP-TATなどの両疎媒性または両親媒性ペプチドをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
適切な哺乳動物細胞に導入された場合に、IFN-I発現を増加させるように適合または構成され;好ましくはIFN-α4またはIFN-βの発現を増加させるように適合または構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
腫瘍細胞または樹状細胞などの哺乳動物細胞の単離された集団に含まれる、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
配列番号3~配列番号8または配列番号11~配列番号16のいずれか1つに開示された1またはそれを超えるカチオン性細胞透過性ペプチドを含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
(c)化学療法剤、免疫調節剤、神経活性剤、抗炎症剤、抗脂血症剤、ホルモン、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、抗感染症剤、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、リボザイム、コファクター、ステロイド、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ドセタキセル、パクリタキセル、トラスツズマブ、メトトレキサート、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、イサベピロン、エリブリン、ラパチニブ、カルムスチン、ナイトロジェンマスタード、サルファマスタード、四硝酸プラチン、ビンブラスチン、エトポシド、カンプトテシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
アジュバントをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
抗原、抗原ポリペプチド、またはそれらの抗原ペプチドフラグメントをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
1)リポソーム、ナノ粒子、またはマイクロ粒子の集団と共に製剤化されているか;または2)1またはそれを超える界面活性剤、ニオソーム、エトソーム、トランスフェロソーム、リン脂質、またはスフィンゴソームと混合されている、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
1またはそれを超える医薬的に許容され得るキャリアー、バッファー、希釈剤、ビヒクル、または賦形剤と混合されている、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
哺乳動物に対する全身投与のために、好ましくはヒトに対する静脈内投与のために製剤化されている、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物と、それを必要とするヒトに対して前記組成物を投与するための指示の少なくとも第1のセットとを含む治療キットの一部として適合または構成されている、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
哺乳動物の疾患、障害、機能不全、欠乏、欠損、外傷、傷害、または異常な状態の、1またはそれを超える症状の治療、予防、または改善に使用するための、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
ヒトのがんまたは感染の1またはそれを超える症状の前記治療、予防、または改善に使用するための、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
求項1~16のいずれかに記載の組成物を含む、哺乳動物細胞の単離された集団。
【請求項18】
ヒト樹状細胞であることを特徴とする、請求項17に記載の哺乳動物細胞の単離された集団。
【請求項19】
哺乳動物対象におけるがんまたは感染の少なくとも1つの症状を処置または改善するための医薬の製造における、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
前記哺乳動物対象が、ヒト、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル、外来動物、または家畜である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
1)請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物;および2)哺乳動物における疾患、機能不全、異常な状態、または外傷の1またはそれを超える症状の防止、診断、処置、または改善のためのレジメンの一部として、それを必要とする前記哺乳動物に対して前記組成物を投与するための指示、を含む、キット。
【請求項22】
それを必要とする動物におけるがんまたは感染の1またはそれを超える症状を処置または改善する方法において使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物であって、前記方法が、
前記動物に対して、前記組成物を、前記動物における前記がんまたは前記感染の前記1またはそれを超える症状を処置または改善するために十分な時間にわたって投与することを含むものである、組成物
【請求項23】
前記がんが、治療抵抗性、転移性、再発、または処置抵抗性がんであると診断または同定されている、請求項22に記載の組成物
【請求項24】
前記動物が、ヒトである、請求項22または23に記載の組成物
【請求項25】
前記組成物が、単回投与で、または1日またはそれを超える日数の期間にわたる、1週間またはそれを超える週数の期間にわたる、もしくは1か月またはそれを超える月数の期間もしくはそれより長い期間にわたる複数回の一連の投与で、前記動物に対して全身投与される、請求項22~24のいずれか1項に記載の組成物
【請求項26】
前記組成物が、第2の別個の化学療法剤、または第2の別個の治療剤を含む第2の別個の自己組織化ナノ粒子の集団をさらに含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の組成物
【請求項27】
診断剤、治療剤、または予防剤を、それを必要とする哺乳動物対象の1またはそれを超える細胞、組織、器官、または全身に投与する方法において使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物
【請求項28】
前記1またはそれを超える細胞が、ヒト樹状細胞である、請求項27に記載の組成物
【請求項29】
前記1またはそれを超える組織が、腫瘍性である、請求項27に記載の組成物
【請求項30】
治療組成物を、それを必要とする患者の少なくとも1つの細胞、少なくとも1つの組織、または少なくとも1つの器官に提供する方法において使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物または請求項17または18に記載の哺乳動物細胞の単離された集団であって、前記方法が、
前記組成物または前記哺乳動物細胞の単離された集団を、前記患者の少なくとも1つの細胞、少なくとも1つの組織、または少なくとも1つの器官に前記治療組成物を提供するために有効である期間、それを必要とする患者に投与することを含むものである、組成物または哺乳動物細胞の単離された集団
【請求項31】
哺乳動物対象におけるがんまたは感染の少なくとも1つの症状を処置または改善するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記哺乳動物対象が、ヒト、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル、外来動物、または家畜である、請求項31に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図7-1】図7A図7B図7C図7D図7E、および図7Fは、TAT-TRP2およびTAT-ESO-1と、CpGおよびMPLAのナノ粒子(TAT-TRP2-CM、TAT-ESO-l-CM)、ならびにTAT-TRP2およびTAT-ESO-1と、CpG、MPLA、およびポリ(I:C)のナノ粒子(TAT-TRP2-CMIおよびTAT-ESO-1-CMI)を示す。TAT-TRP2およびTAT-ESO-1ナノ粒子の概略図(図7A)。TAT-TRP2およびTAT-ESO-1とCMのナノ粒子サイズ(図7B)、またはTAT-TRP2およびTAT-ESO-1とCMIのナノ粒子サイズ(図7Cおよび図7D)。図7Cは配列番号30を開示する。図7Eおよび図7F:TAT-TRP2-CM、TAT-TRP2-CMI、TAT-ESO-l-CM、およびTAT-ESO-1-CMIのゼータ電位。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
表1に、いくつかのよく知られているTLR、およびそれらの一般的なリガンドを列挙する。
表1
一般に知られているTLR、およびそれらのリガンド
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】

【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0331
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0331】
当業者に明らかなこのような類似の置換および改変は、全て、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であるとみなされる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)中性pHにおいて自己組織化性であり、疎水性治療用ペプチドリガンドに共有結合で連結している複数のカチオン性細胞透過性ペプチドから構成されるナノ粒子の集団;
(b)医薬的に許容され得るバッファー、希釈剤、キャリアー、またはビヒクル
を含む、組成物。
(項目2)
前記ナノ粒子が、mRNA、siRNA、dsRNA、RNA、DNA、もしくはそれらの任意の組み合わせなどの負に荷電している分子、またはMPLAなどの疎水性ペプチドをさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
NY-ESO-1(配列番号1)またはTRP-2(配列番号2)などの治療用ペプチドに共有結合で連結している、CPP-TATなどの両疎媒性または両親媒性ペプチドをさらに含む、項目1または項目2に記載の組成物。
(項目4)
適切な哺乳動物細胞に導入された場合に、IFN-I発現を増加させるように適合または構成され;好ましくはIFN-α4またはIFN-βの発現を増加させるように適合または構成されている、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
腫瘍細胞または樹状細胞などの哺乳動物細胞の単離された集団に含まれる、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
配列番号3~配列番号8または配列番号11~配列番号16のいずれか1つに開示された1またはそれを超えるカチオン性細胞透過性ペプチドを含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
(c)化学療法剤、免疫調節剤、神経活性剤、抗炎症剤、抗脂血症剤、ホルモン、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、抗感染症剤、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、リボザイム、コファクター、ステロイド、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ドセタキセル、パクリタキセル、トラスツズマブ、メトトレキサート、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、イサベピロン、エリブリン、ラパチニブ、カルムスチン、ナイトロジェンマスタード、サルファマスタード、四硝酸プラチン、ビンブラスチン、エトポシド、カンプトテシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、項目7に記載の組成物。
(項目9)
アジュバントをさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目10)
抗原、抗原ポリペプチド、またはそれらの抗原ペプチドフラグメントをさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目11)
1)リポソーム、ナノ粒子、またはマイクロ粒子の集団と共に製剤化されているか;または2)1またはそれを超える界面活性剤、ニオソーム、エトソーム、トランスフェロソーム、リン脂質、またはスフィンゴソームと混合されている、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
1またはそれを超える医薬的に許容され得るキャリアー、バッファー、希釈剤、ビヒクル、または賦形剤と混合されている、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目13)
哺乳動物に対する全身投与のために、好ましくはヒトに対する静脈内投与のために製剤化されている、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
前記組成物と、それを必要とするヒトに対して前記組成物を投与するための指示の少なくとも第1のセットとを含む治療キットの一部として適合または構成されている、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目15)
哺乳動物の疾患、障害、機能不全、欠乏、欠損、外傷、傷害、または異常な状態の、1またはそれを超える症状の治療、予防、または改善に使用するための、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目16)
ヒトのがんまたは感染の1またはそれを超える症状の前記治療、予防、または改善に使用するための、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目17)
先行する項目のいずれかに記載の組成物を含む、哺乳動物細胞の単離された集団。
(項目18)
ヒト樹状細胞であることを特徴とする、項目17に記載の哺乳動物細胞の単離された集団。
(項目19)
哺乳動物対象におけるがんまたは感染の少なくとも1つの症状を処置または改善するための医薬の製造における、項目1~16のいずれか1項に記載の組成物の使用。
(項目20)
前記哺乳動物対象が、ヒト、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル、外来動物、または家畜である、項目19に記載の使用。
(項目21)
1)項目1~16のいずれか1項に記載の組成物;および2)哺乳動物における疾患、機能不全、異常な状態、または外傷の1またはそれを超える症状の防止、診断、処置、または改善のためのレジメンの一部として、それを必要とする前記哺乳動物に対して前記組成物を投与するための指示、を含む、キット。
(項目22)
それを必要とする動物におけるがんまたは感染の1またはそれを超える症状を処置または改善する方法であって、前記動物に対して、有効量の項目1~16のいずれか1項に記載の組成物を、前記動物における前記がんまたは前記感染の前記1またはそれを超える症状を処置または改善するために十分な時間にわたって投与することを含む、方法。
(項目23)
前記がんが、治療抵抗性、転移性、再発、または処置抵抗性がんであると診断または同定されている、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記動物が、ヒトである、項目22または23に記載の方法。
(項目25)
前記組成物が、単回投与で、または1日またはそれを超える日数の期間にわたる、1週間またはそれを超える週数の期間にわたる、もしくは1か月またはそれを超える月数の期間もしくはそれより長い期間にわたる複数回の一連の投与で、前記動物に対して全身投与される、項目22~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記組成物が、第2の別個の化学療法剤、または第2の別個の治療剤を含む第2の別個の自己組織化ナノ粒子の集団をさらに含む、項目22~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
診断剤、治療剤、または予防剤を、それを必要とする哺乳動物対象の1またはそれを超える細胞、組織、器官、または全身に投与する方法であって、有効量の項目1~16のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目28)
前記1またはそれを超える細胞が、ヒト樹状細胞である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記1またはそれを超える組織が、腫瘍性である、項目27に記載の方法。
(項目30)
治療組成物を、それを必要とする患者の少なくとも1つの細胞、少なくとも1つの組織、または少なくとも1つの器官に提供する方法であって、項目1~16のいずれか1項に記載の組成物の量または項目17または項目18に記載の哺乳動物細胞の単離された集団を、前記患者の少なくとも1つの細胞、少なくとも1つの組織、または少なくとも1つの器官に前記治療組成物を提供するために有効である期間、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7-2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7-2】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022517236000001.app
【国際調査報告】