IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インドリオ テクノロジーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-517259レーザーを用いた現場排気ガスセンサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】レーザーを用いた現場排気ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20220228BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G01N21/61
G01N21/03 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540856
(86)(22)【出願日】2020-01-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 US2020013255
(87)【国際公開番号】W WO2020150112
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】62/792,986
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/740,431
(32)【優先日】2020-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521310059
【氏名又は名称】インドリオ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スール、リトブラタ
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB04
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057CB03
2G057DA03
2G057DA13
2G057DB03
2G057DC07
2G057EA01
2G057EA06
2G059AA01
2G059BB01
2G059DD12
2G059DD16
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG09
2G059JJ14
2G059JJ17
2G059KK02
2G059LL01
2G059LL03
(57)【要約】
レーザー吸収分光法排気ガスセンサが提供され、このレーザー吸収分光法排気ガスセンサは、平均直径が0.1nm~1mmの範囲の細孔を有する多孔質壁404を備えた光学セルと、前記光学セル内でマルチパス光路412を実現するように位置付けられた前記光学セル内の金のミラー405と、凝縮を防止するために前記光学セルを加熱するべく適合されたアクティブ加熱要素と、レーザービームを生成するように適合されたレーザーと、戻りレーザービームを検出するように適合された光学検出器408と、前記レーザーと前記アクティブ加熱要素を制御し、前記光学検出器からの信号を分析して前記光学セル内のガスを特定するためのプロセッサであって、可撓性を有する導管によって前記光学セルから離隔されて設けられた、該プロセッサとを備えることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
平均直径が0.1nm~1mmの範囲の細孔を有する多孔質壁を備えた光学セルと、
前記光学セル内でマルチパス光路を実現するように位置付けられた前記光学セル内の金のミラーと、
凝縮を防止するために前記光学セルを加熱するべく適合されたアクティブ加熱要素と、
レーザービームを生成するように適合されたレーザーと、
戻りレーザービームを検出するように適合された光学検出器と、
前記レーザーと前記アクティブ加熱要素を制御し、前記光学検出器からの信号を分析して前記光学セル内のガスを特定するためのプロセッサであって、可撓性を有する導管によって前記光学セルから離隔されて設けられた、該プロセッサとを備える、レーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
光導波路をさらに含み、
前記光導波路は、前記レーザービームを前記レーザーから前記光学セルに導き、前記戻りレーザービームを前記光学セルから前記検出器に導くように適合されることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記多孔質壁は、多孔質焼結金属粉末、金網、またはセラミックで構成されることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記多孔質壁は、細孔を有し、
前記細孔の平均直径は、感知対象の所望のガスが前記細孔を通過することを可能とする程度に十分に大きく、望ましくない汚染粒子が細孔を通過するのを阻止するのに十分に小さい平均直径であることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記細孔は、10nm~10μmの範囲の平均直径を有することを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記金のミラーは、保護最上層を備えることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記アクティブ加熱要素は、前記多孔質壁内に組み込まれることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記アクティブ加熱要素は、前記多孔質壁に取り付けられることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記アクティブ加熱要素は、凝縮を防ぐために、排気ガス中の成分の飽和温度を超える温度に前記光学セルを加熱するように適合されていることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項10】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記光学セルの壁は非多孔質区域を有することを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項11】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記金のミラーは、保護層がなく基板上に堆積して形成された金で構成されることを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項12】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記金のミラーは、凹面鏡を含むことを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項13】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記金のミラーは、焦点距離が互いに異なる、対向する球面鏡を含むことを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項14】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記多孔質壁は、前記光学セルへのガスの流れを強化するように適合された、異なる壁厚を有する複数の区域を有することを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項15】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記マルチパス光路は、5cm未満の物理的な長さのなかで、50cmを超える光路長を有することを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項16】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記マルチパス光路は、前記複数のミラー上で、入口及び出口の孔から離隔して描かれる楕円形をなす、ミラー上で部分的に重複したビームスポットパターンを有することを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【請求項17】
請求項1に記載のレーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、
前記光学セルの周りに配置され、前記レーザー吸収分光法排気ガスセンサを車両の排気管に固定するように適合された固定ねじをさらに有することを特徴とするレーザー吸収分光法排気ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ガスの濃度を検出するための方法及び装置に関する。本発明は特に、車両や発電所などの排気ガスの粒子状物質や水分の存在下で、高温でレーザー吸収分光法を使用して低濃度成分をその場で検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーをベースにしたセンシング技術は、環境モニタリングからヘルスケアに至るまでの用途に広く使用されている。これらのセンサでは、光学セルに分析されたガス混合物が充填され、レーザーはセルの窓からセルに入り、セル内の分析されたガスを一定距離移動した後、別の窓または同じ窓を通してセルから出る。場合によっては、センサの感度を上げるために、1つ以上のミラーを使用して混合物を通過する距離を長くする。これらの高度に探索される領域のほとんどは、粒子や凝縮によるレーザービームの遮断のリスクがないクリーンな環境にある。ただし、レーザーベースの技術の重要な利点の1つは、例えば燃焼生成物の濃度を測定するために、高温で過酷な環境でガスを監視できることにある。しかし、既存のデバイスの問題の1つは、これらのデバイスの動作寿命全体にわたって光セルをクリーンに保つという課題である。これらの環境での長期間の曝露では、粒子と湿気が光学反射面または透明面に付着し、及び/またはそれを腐食し、それが機器の故障につながる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本発明は、ガスに対して多孔性であるが、同時にほとんどの粒子がセルに入るのを防ぎ、それによってセルを清潔に保つ、アクティブに加熱されるセルを含むガスセンサを提供する。多孔質壁の構成では、局所的な粒子分布の知識を利用する。細孔径が小さすぎると、サンプルの拡散/流速が不利に制限される。これに関して、細孔サイズは、流れの確率カットオフ値で期待される最小粒子のサイズに等しくなるように定義された平均細孔サイズであるように選択される。例えば、ディーゼル車の排気ガスの場合、粒子分布は次の大まかなカテゴリ、
・粗い粒子すなわちPM10(空気力学的直径が10μm以下の粒子)、
・微粒子またはPM2.5(直径が2.5μm以下の粒子)、
・直径が0.1μm未満または100nm未満の超微粒子、及び
・直径50nm未満を特徴とするナノ粒子、
に分類される。核形成モードの粒子は、サンプルが冷えて燃焼による高温の粒子が核形成するにつれて、多く現れ始める。このプロセスは、サンプルがまだ熱い場所に注意深く配置された場合、または核形成に十分な時間が与えられていない場合(約450~800℃)に、主にこれらのセンサの配置後に生じ得る。その場合、上流に配置されたディーゼル粒子フィルタから逃げた大きな粒子についてのみ考慮する必要がある。この特定の場合の細孔は、超微粒子よりも大きい(>100nm)粒子に関して設計され、100nmの特徴的な細孔サイズが利用される。しかし逆に、サンプルに超微粒子が予想されるが、最小のナノ粒子は、ほとんど上流に捕捉されるか、センサの寿命中にミラーの反射率に影響を与えるには小さすぎると推定される場合には、はるかに細かい細孔サイズ(約20nm)が必要と考えられ得る。効果的な粒子除去を実現する1つの方法は、極薄壁の小さなポケットを備えたフィルタ要素を設計することである。このアイデアは、後で説明する技術概念実証用プロトタイプに実装され、フィルタの「エラ部」と呼ばれていた。
【0004】
アクティブに加熱されたセルは、結露を防ぐために、すべての構成要素の飽和温度を超える温度に維持される。車両の排気ガスで維持できる一般的な温度範囲は300~600℃である。この加熱された装置はまた、部分的反射性の、または反射面に任意の数の孔を備えたミラーを装備することができる。「孔」は、物理的な孔でも物理的な孔でなくてもよく、孔がない場合には反射性となる表面の単なる透過性の領域であってもよい。セルの温度分布に応じて、透過性部品または反射性部品は、設計条件での許容範囲内でレーザーを透過または反射するために必要なすべての適切な材料を組み込む必要がある。
【0005】
したがって、一態様では、本発明は、レーザーをベースにした現場(in situ)排気ガスセンサであって、(a)動作波長でレーザービームを生成するように適合されたレーザーと、(b)アクティブに加熱されるセルであって、そのセルを通るビーム経路を作り出すように適合された光反射要素を含む、アクティブに加熱されるセルと、(c)前記レーザーから前記アクティブ加熱されるセルにレーザービームを到達させるように適合されたレーザービーム導波路であって、前記レーザーは前記アクティブに加熱されるセルから熱的に絶縁される、該レーザービーム導波路と、(d)前記アクティブに加熱されるセルを通過した後のレーザービームを検出するように適合されたレーザービーム検出器と、(e)吸収分光法に基づいてセル内のガスを識別するように適合された信号プロセッサとを備え、多孔質の前記アクティブに加熱されるセルは、排気ガスの凝縮を防ぐために排気流中の構成成分の飽和温度を超える温度に該セルを維持するように適合された加熱要素と接触し、多孔質の前記アクティブに加熱されるセルは、細孔を有する壁を有し、前記細孔の平均直径は、感知対象の所望のガスが前記細孔を通過することを可能とする程度に十分に大きく、望ましくない汚染粒子が細孔を通過するのを阻止するのに十分に小さい平均直径であり、それにより、セルの内部におけるレーザー検出に対する汚染物質の望ましくない影響が緩和される、現場排気ガスセンサを提供する。
【0006】
一部の実施形態では、前記セルは、前記セルの条件での複数のミラー間の複数回の反射の結果として、マルチパスレーザービームパターン形態を有する。ミラー表面の反射率は、SNRが100を超えるレーザー検出器で出力ビーム強度を検出するために必要な減衰よりも低い減衰レベルでレーザービームを反射するように選択される。一部の実施形態では、シリカとAlの保護最上層が、金または他の金属材料のミラー表面に適用され得る。
【0007】
一態様では、本発明は、レーザー吸収分光法排気ガスセンサであって、平均直径が0.1nm~1mmの範囲の細孔を有する多孔質壁を備えた光学セルと、前記光学セル内でマルチパス光路を実現するように位置付けられた前記光学セル内の金のミラーと、凝縮を防止するために前記光学セルを加熱するべく適合されたアクティブ加熱要素と、レーザービームを生成するように適合されたレーザーと、戻りレーザービームを検出するように適合された光学検出器と、前記レーザーと前記アクティブ加熱要素を制御し、前記光学検出器からの信号を分析して前記光学セル内のガスを特定するためのプロセッサであって、可撓性を有する導管によって前記光学セルから離隔されて設けられた、該プロセッサとを備える、レーザー吸収分光法排気ガスセンサを提供する。
【0008】
前記レーザー吸収分光法排気ガスセンサは、前記レーザービームを前記レーザーから前記光学セルに導き、前記戻りレーザービームを前記光学セルから前記検出器に導くように適合される光導波路も備え得る。
【0009】
好ましくは、前記多孔質壁は、多孔質焼結金属粉末、金網、またはセラミックで構成される。好ましくは、前記多孔質壁は、細孔を有し、前記細孔の平均直径は、感知対象の所望のガスが前記細孔を通過することを可能とする程度に十分に大きく、望ましくない汚染粒子が細孔を通過するのを阻止するのに十分に小さい平均直径である。好ましくは、前記細孔は、10nm~10μmの範囲の平均直径を有する。
【0010】
前記レーザー吸収分光法排気ガスセンサは、前記金のミラーの上に保護最上層を備え得る。
【0011】
前記アクティブ加熱要素は、前記多孔質壁内に組み込まれるか、前記多孔質壁に取り付けられ得る。好ましくは、凝縮を防ぐために、排気ガス中の成分の飽和温度を超える温度に前記光学セルを加熱するように適合される。
【0012】
好ましくは、前記光学セルの壁は非多孔質区域を有する。
【0013】
前記金のミラーは、保護層がなく基板上に堆積して形成された金で構成され得る。前記金のミラーは、凹面鏡を含み得る。
【0014】
前記金のミラーは、焦点距離が互いに異なる、対向する球面鏡を含み得る。
【0015】
前記多孔質壁は、前記光学セルへのガスの流れを強化するように適合された、異なる壁厚を有する複数の区域を有し得る。
【0016】
前記マルチパス光路は、5cm未満の物理的な長さのなかで、50cmを超える光路長を有し得る。
【0017】
前記マルチパス光路は、前記複数のミラー上で、入口及び出口の孔から離隔して描かれる楕円形をなす、ミラー上で部分的に重複したビームスポットパターンを有し得る。
【0018】
前記レーザー吸収分光法排気ガスセンサは、前記光学セルの周りに配置され、前記レーザー吸収分光法排気ガスセンサを車両の排気管に固定するように適合された固定ねじをさらに有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、レーザーベースの現場排気ガスセンサアーキテクチャの概要を示す図である。
図2図2は、センサの変形形態の高温区域の断面図である。
図3図3は、図2に示すセンサの変形形態の高温区域の軸方向の図である。
図4図4は、図2に示すセンサの変形形態の高温区域の3D断面図である。
図5図5は、多孔質スリーブの変形形態の高温区域の断面図である。
図6図6は、多孔質スリーブの変形形態の高温区域の分解図である。
図7図7は、多孔質窓の変形形態の高温区域の断面図である。
図8図8は、多孔質窓の変形形態の高温区域の分解図である。
図9図9は、ビームが検出器で捕捉される、簡略化された調整可能な光学的構成の断面図である。
図10図10は、ビームが検出器で捕捉される、簡略化された調整可能な光学的構成の側面図である。
図11図11は、ビームが検出器で捕捉される、簡略化された調整可能な光学的構成の3D図である。
図12図12は、ビームが光ファイバ/バンドル/導波路でビームを捕捉される、簡略化された調整可能な光学的構成の断面図である。
図13図13は、ビームが光ファイバ/バンドル/導波路で捕捉される、簡略化された固定式の光学的構成の断面図である。
図14図14は、ビームが検出器で捕捉される、簡略化された固定式の光学的構成の断面図である。
図15図15は、スパイラル発熱体を備えた多孔質光学セルを示す図である。
図16図16は、ストレート発熱体を備えた多孔質光学セルを示す図である。
図17図17は、エンドキャップを使用しない、多孔質窓とセル本体の単一要素構造を組み合わせたハイブリッド式多孔質光学セルの設計コンセプトを示す図である。
図18図18は、第1世代の排気センサプロトタイプの断面図である。
図19A図19Aは、第1世代のプロトタイプで実装された多孔質壁を示す図である。
図19B図19Bは、第1世代のプロトタイプで実装された多孔質壁を示す図である。
図19C図19Cは、第1世代のプロトタイプで実装された多孔質壁を示す図である。
図20A図20Aは、入口ミラーの詳細図である。
図20B図20Bは、基板上のコーティング層の詳細図である。
図21図21は、先細のスポットパターンを示す不等焦点距離マルチパス型セル配置を示す図である。
図22図22は、超小型マルチパスセル構成で得られる部分的に重複したスポットパターンを示す図である。
図23図23は、非楕円形のビームパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
このセンサ設計の最初に検討された用途の1つは、車両の排気ガス監視であり。図1は、この用途の場合を示す。例えば、図1のパイプ101の区域は、ガスを移送するパイプを表す。しかし、車両の排気ガスの場合、具体的には、このパイプはテールパイプの区域を表し得る。矢印は、この区域を通るガスの流れの方向を示す。高温多孔質光学セル(POC)102は、多孔質壁を備えた本発明の中心的な要素である。細孔径は、その環境での平均粒子分布の知識に基づいて選択できる。平均細孔径は、粒子サイズに対する確率分布関数で表される確率における設計しきい値を下回る流れの最小粒子のサイズに等しいか、それより小さい大きさであり得る。自動車の排気管の許容可能な細孔の一般的な寸法は、10nm~10μmである。一般的には、平均細孔径は、分子篩(~0.1nm)から単純な金網のサイズ~1mmまでの範囲内の直径になるように選択できる。
【0021】
この表面は、この図では円筒形の要素として示されているが、他の円筒形や角柱形を含む任意の形状にし得る。固定区域103は、パイプ101内に光学セルを取り付けるために使用される。固定区域103は、ここではねじ付き結合部として示されているが、(最初のプロトタイプの場合のように)フランジシールまたはスレッドを含む他の任意のガス漏れ防止結合あり得る。図示の例では、酸素/NOxセンサマウントの一般的な設計を使用することで、アフターマーケットでの交換を容易化している。センサ104のヘッドは、センサのエンドキャップと呼ばれ、パイプ101の範囲の外側に存在する。ヘッドは、排気管とのガスシールを締めるために使用することができ、また、高温光学(HTO)チャンバ105を熱的に隔離するための空間を提供することができる(レーザーを発射して、そのレーザーがサンプルガスを含む光学セル102を出た後にそのレーザーを受け取る高温光学系を収容するので、エンドキャップと名付けられた)HTOチャンバの温度は、排気管(パイプ)101からの熱伝達の増減により大きく変動するその熱伝達の関数である。最初のプロトタイプでは、HTOチャンバで測定された最高温度は常に150℃未満であった。導管106(可撓性または剛性を有する)は、光ファイバ及びワイヤを通し保護するために使用され、ワイヤは電圧、電流、またはデータをセンサ電子機器ボックス107との間で通信を行い、センサ電子機器ボックス107は、アセンブリの高温領域から隔離する必要がある、または隔離することができるセンサの部品を収容し得る。電子機器ボックス107のいくつかの重要な構成要素は、(a)レーザー、(b)レーザー制御ハードウェア、(c)フォトダイオード、(d)A/DまたはD/A変換器、及び/または(e)通信ユニットを備えた処理用コンピュータを含み得る。次に、レーザー制御ボックスの最も一般的に使用される操作モードのいくつかについて説明する。レーザー温度コントローラユニットは、レーザーハウジング内の熱電冷却器(TEC)を介して、波長可変レーザーダイオードまたはチップまたはアレイの固定温度設定を維持できる。目標のレーザー温度を維持するために、追加の外部冷却(水またはフィンをベースにしたパッシブ冷却など)が必要になる場合もある。レーザー電流コントローラは、レーザー電流を固定または変調するために使用される。これは、レーザーの波長と強度を同時に制御するメカニズムである。電流の調整は、レーザー出力の波長/周波数及び強度で必要なパターンを生成するための最も一般的なメカニズムである。次に、このパターンは、直接吸収、波長変調、周波数変調、またはその他の確立された吸収分光法技術で利用される。この方法は、スキャンモードを使用せずに広帯域吸収技術で使用することもできる。POCに吸収された後の出力レーザービームは、直接または導波路を使用して検出器に取り込むことができる。結果として得られる検出器の電圧または電流信号は、A/Dコンバータによってデジタル化され、その後、組み込みコンピュータでインタープリートされる。別バージョンでは、完全なアナログ信号生成とアナログロックインフィルタを使用して、通常の吸収分光法で使用できる最終データを取得できる。一部に変更を施すと、周囲の環境が比較的ノイズがなく構成部品の温度定格がある場合には、アーキテクチャの必要な変更(例えば、POCでのマイクと音叉の使用)とともに、現在のセットアップで光音響分光法を利用することもできる。
【0022】
図2(パイプ軸に垂直な断面図)、図3(軸に沿った図)、及びび図4(3D断面図)は、「高温区域」の一般的な設計アーキテクチャをより詳細に示す図である。これらの図中の設計要素は、このアーキテクチャのいくかの変形形態の1つである。他の変形形態については、後の図で説明する。光ファイバ(201、301、及び410)は、電子機器ボックス107に収容されたレーザーからのレーザービームを伝達する。光ファイバ材料は、好ましくは、以下の特性を有する:(a)さらされる温度に物理的に耐えることができる、(b)最高の設計温度分布での損失の量が許容できる(「許容性」は、後述するように設計の様々な変更を通じて達成できる)レベルでレーザー波長を透過できる、及び(c)単一のマルチモードファイバまたは中空コア導波路であり得る。ファイバ伝送の「許容性」は、要すれば出力レーザービームの最終的な検出可能性のレベルである。これに影響を与える可能性のある多くのパラメータが存在する。例を挙げる。(1)検出感度:検出器の感度が非常に高い近赤外線波長(~1.6μm)では、非常に損失の多いファイバでも許容される場合があるが、検出器の感度が低下する10μmでは、低損失のファイバでさえ許容されない場合がある。(2)反射数とマルチパスミラー反射率:反射が生じれば出力ビームの強度が低下する。したがって、設計上は、出力ビームパワーを向上させファイバ伝送を機能させるために、より少ない数の反射を選択する場合がある。(3)ファイバ長:損失/ファイバ長は大きくなり得るが、レーザー強度の損失量を減らすためにファイバ長さを短くできる。高温(>2000℃)に耐え、4μmを超える波長のレーザー光を透過できる繊維材料の一例がサファイアである。フッ化物ガラス繊維は、より長い波長範囲を透過できるが、耐えられる温度範囲は比較的狭くなる。
【0023】
レーザービームは、ファイバーコリメートシステム210及び211を使用して、かつ設計温度及び水分への暴露に耐えることができ、対象の波長を透過することができる材料で作られたレーザー透過窓213を通して高温光学セル218に向けて発射される。例えばフッ化カルシウム(CaF)窓は、0.18~9.2μmを60%以上の透過率で透過し、1000℃を超える温度に耐えることができるが、300℃を超える温度で水分と反応し始める。したがって、CaFレンズと窓を使用する必要がある場所の温度を下げるために注意深い設計が必要である。サファイアなどの材料は、温度範囲での透過範囲が十分である場合、窓213の材料の高温多湿環境に耐えられるように選択され得る。露出面に薄膜コーティングを施すことにより、透過性と耐環境性をさらに向上させることもできる。窓219の裏側は、前述のように、反射研磨された金属または誘電体層でコーティングされ、「孔」を備えた所望の曲率とされ得る。類似の構造では、2つの個別の部品を背中合わせに配置したミラーと窓を組み込むこともできる(最初のプロトタイプで実装)。窓の表面は、窓の面の平行性のために時々観察されるエタロニングまたはフリンジ効果を減らすために、他の面に対して角度を付けることができる。レーザーの位置合わせは、固定具と留め具(図2の202、204、205、212、図3の311、312、313)を介して調整及び固定される。レーザービームは、セルに入った後ミラー213と216の間で跳ね返り、最終的にミラー213の孔を通ってセルを出る。次に、レーザービームは、集束ミラー203/302によって光検出器206上に収集される。HTOチャンバベース207/304は、断熱ワッシャー/層208または305によってセンサエンドキャップ214/310から断熱されている。ワッシャー/層208/305の厚さと材質は、HTOチャンバ内の温度分布を制御するべく選択される。HTOチャンバ-ワッシャー/層208/305の温度分布は、主として、ワッシャーを通過する伝導熱伝達率、エンドキャップの温度、HTOチャンバの他の可能な熱放散モード、及び周囲温度の関数である。HTOチャンバ105の内側及び外側にさらにパッシブ/アクティブ熱放散の機能を追加して、HTOチャンバの冷却を強化できる。
【0024】
排気ガスは、矢印の方向に沿ってパイプ区域(209/307/401)を通って流れる。図3のガスの流れは、POC308の周囲を除いて、紙面に垂直な方向である。POC308は、排気の高温の流れに「浸され」る。センサは、固定ねじ309/406を使用してパイプ内に固定される。センサは、固定ねじ309/406を使用してパイプ内に固定される。このねじ山は、現在使用されている車両の排気センサのドロップイン代替品として、排気NOxセンサに一般的に使用されるM20×1.5ねじ山であり得ることに注意されたい。濾過された排気流は、小さな矢印402によって示されるように、多孔質壁215または404を通ってセル218に浸透または拡散する。小さな矢印403によって示されるように、流れはセルから拡散する。これらの矢印の方向は説明のみを目的として示されており、実際の流れのダイナミクスを示すものとの混同を避けられたい。多孔質壁215/404の構築は、後の区域で説明する別の方法を含む様々な方法によって可能である。構築方法の1つは、適切な多孔性を有する多孔質焼結金属(例えば、オーステナイト系ニッケル-クロムベースの超合金、鋼など)粉末またはワイヤメッシュの円筒形セル製造である。別の変形形態は、多孔質セラミック壁構造(例えば、シリカ、アルミナなど)を組み込み得る。
【0025】
セル壁の材料は、凝縮を回避するために加熱ワイヤ、加熱要素、または加熱リボン306を使用してアクティブに加熱され、いくつかの実施形態では、図3に例示されるように、埋め込まれた熱電対または他の温度監視デバイスを使用して温度制御し得る。アクティブな温度制御で温度が一定に保たれるか否かは、用途によって異なる。アクティブ温度制御を使用して、パイプ内の外部サンプル温度を常に一致させられる。排気管の温度が飽和温度を十分に上回る場合もある。したがって、しきい値を超えた温度に維持する必要しかない。制御されていない温度は、NOxなどの温度依存成分を保持できるため、これらの状況で有利になることもある。ただし、この場合、温度変化を測定し、特性を評価して、信号インタープリートモデルに含める必要がある。最初のプロトタイプを含むテストの後、動作の開始時に、POCセルの温度は排気ガスの飽和温度(通常は60℃未満)を超えればよいと結論付けられた。センサは、排気流の大きな熱質量によって急速に加熱されるため、特定の温度を維持する必要がなくなる。センサ自体の動作は、流れの温度に依存しない。このため、600℃に予熱する必要がある従来の電気化学センサと比較して「始動」時間が大幅に短縮される。
【0026】
センサを通るレーザービーム伝搬経路の例は、黒い破線(光路412)で示され得る。レーザービームは、コリメート光学系(ここではレンズとして示されている。ミラーも使用できる)411によってファイバから自由空間に発射される。次に、レーザービームは、窓407及びミラーの「孔」を通って、または部分的に透過性のミラー面を通ってPOCに入る。セルに入ると、それは、入力/出力ミラー217と後方反射ミラー表面219または405との間で前後に反射し始める。これらの表面間の多重反射によって形成されるパターンにより、吸収の光路長が決定される。レーザーマルチパスパターンの例は、レーザーセンシングで実際に広く使用されているヘリオットまたはホワイトのマルチパスアーキテクチャである。他の代替的な経路パターンも、例えば非点収差ミラーまたは球面ミラーを使用して実装できる。ビームは、入力/出力ミラー217の同じまたは異なる孔から出ることができる。出力ビームは、次のまたは後の区域で説明される、レンズ、ミラー、光ファイバ、光ファイバ束、導波路、またはそれらの組み合わせを含むまたは含まない種々の方法によって、フォトダイオード(303または408)に収集できる。このマルチパス構成は、5cmの物理的長さの範囲内で50cmを超える光路長を得るために使用される。ビームは、フォトダイオード408表面上の凹面または平坦なミラー409を用いて反射することができる。フォトダイオードは、入射ビームを電流または電圧に変換し、それを増幅器に送信してからA/Dコンバータに送信する。次に、直接吸収または波長変調分光法(WMS)などの方法によるレーザー吸収分光法で一般的に行われているように、受信信号を分析して混合物の濃度及び/または温度に関する情報を取得する。
【0027】
上記の実施形態は、レーザービームに光波長を使用する場合を例示する目的で説明してきたが、本発明の原理は、マイクロ波からX線までの光学範囲外の波長を使用する場合に一般化される。一般的に、ビームサイズの上限は、POC直径の最大物理寸法に制限され得る。ビーム径の例は、0.1μm~ら10cmの範囲である。窓とミラーの材料、及びビーム発射の方法(ファイバ/非ファイバ)は、使用する波長に基づいて適切に変更する必要があり得る。一般的に、どの波長でも使用されるコアの分光法は吸収分光法である。ただし、正確な測定スキームは、チューニングが可能であるか必要である場合には、チューニングメカニズムによって異なってくる。例えば、波長変調分光法は、現在の波長可変レーザーにのみ使用できる。直接吸収法は、調整不可能なレーザー及び調整可能なレーザー、広帯域及び狭帯域レーザーに使用できるが複数の欠点がある。
【0028】
センサは、前述の構成のさまざまな部分に次の代替的な構成を組み合わせて実装することによって製造され得る。
【0029】
(A)多孔質壁構造の代替的な構成
単一要素としてのPOC102の構築は、その製造可能性と品質保証に影響を与える可能性がある。図示のように、POCはセンサエンドキャップ501/701に接続されている。いくつかの代替アプローチが図5図8に示されている。
【0030】
(1)多孔質セラミック/金属スリーブ構造(図5及び図6
この設計では、POCは3つの区域で構成されている。すなわち、(a)剛性管状多孔質または非多孔質区域602、(b)多孔質スリーブ(金属またはセラミック)502/604、及び(c)ボトミングキャップ504/606(エポキシ、高温パテ層、またはその他の高温接着剤(503)によって所定の位置に保持された後方反射ミラーを収容する)である。これらの構成要素は、ここではねじ山(508/601、506/603、及び605)で相互に接続する構成が示されているが、フランジまたは高温接着剤やパテで固定することもできる。これらの要素が組み立てられると(図5)、高温エポキシまたはパテのビードまたは他の高温接着剤を使用するか、接合部をシールするために金属スリーブを溶接することができる(505)。加熱の代替モードも507によって示され、この場合には加熱ワイヤ/リボンのストランドが602の壁に沿って内部に引き伸ばされている。本明細書において「高温」という用語は、状況に応じて、比較的低レベルの温度(約200℃)、中程度の温度(排気のような温度、約500℃)、または高レベルの温度(約1500℃)を意味し得る。
【0031】
(2)多孔質セラミック/金属窓構造(図7及び図8
スリーブの設計と同様に、POCは3つの区域で構成される。すなわち、(a)複数の「窓」のような開口部802及び組み立て用のねじ山付き区域(706/804、708/801、及び805)を備えた剛性の管状多孔質または非多孔質区域、(b)複数の多孔質窓(金属またはセラミック)702または803(これらは、他の漏れ防止固定方法を介して802に接着または固定(例えばPOC本体の残りの部分に溶接)できる)、及び(c)接着剤層703によって取り付けられた後方反射ミラー704を収容するボトミングキャップ705/806である。例示した加熱アーキテクチャ(707)は、以前よりも密度が僅かに高いことを除いて、前に例示したものと同様である。これらの多孔質形状は、3D印刷またはキャスティング及び焼結法を用いた方法によって製造され、目的の形状を実現する。
【0032】
(B)高温光学(HTO)チャンバの代替的な設計
POCに出入りするビームの発射と収集は、以下にリストされている他のいくつかのアプローチを通じて行うことができる(図9~14参照)。
【0033】
(1)簡略化された調整可能な光学的構成(図9図12
この構成では、調整可能性の低下を犠牲にしてより高いコンパクトさを可能にする、前述の設計のいくつかの変形形態が図9図12に示されている。
これら2つの変形形態の差異は、ミラーの孔(904/1208)から光学セルを出た後のレーザービームが、(a)検出器901または1102(図9、10、及び11)により直接捕捉され得るか、または(b)初めにファイバ、光ファイバ束、またはその他の導波路1204に捕捉して検出器に送信し、次にフォトダイオード(この場合電子機器ボックス107に収容されなければならない)に送信することにより捕捉するかのいずれかで歩族され得る。ファイバ1204は、1205として示されるように、断熱ジャケットを有し得る。捕捉レンズ(1207)の焦点長さ及び距離は、捕捉されたビーム形状の大部分を収集ファイバ先端1206の開口数(NA)に限定するように選択される。この構成では一般的な構成要素として、(a)レーザーファイバー(907/1201)発射/コリメート要素(905、1101、1202、及び1203)用の傾斜調整要素(906または1003)、(b)HTOチャンバベースプレート903、1004及び1105、(c)集束出力ビーム捕捉レンズ(反射防止(AR)コーティング付きまたは無し)902、(d)平面変位(XYトランスレーションマウント)ビーム捕捉光学メカニカル要素(1001/1103及び1002/1104)、及び(e)パイプ区域1107に取り付けられたセンサエンドキャップ1106を備える。この構成は、絶縁ワッシャー/層208または305無しのもののみが図示されているが、絶縁ワッシャー/層208または305付きでも無しでも使用され得る。
【0034】
(2)簡略化された固定式の光学的構成(図13及び図14
上記の全ての構成は、設計の柔軟性が高い小規模製造プロセスにより適している。特定の設計が確認され、スケーリングの準備が整うと、これらの変形形態はすべての調整機能を除去して、製造のコストパフォーマンスとスループットを向上させられる。図13に示すバージョンは、(a)受信ファイバ、ファイバ束、またはその他の導波路1301、(b)繊維保護ジャケット1302、(c)ビームキャプチャレンズ1304、(d)HTOチャンバベースプレート1303、(e)ベースプレートとエンドキャップ1305の間の絶縁ワッシャー/層1307、(f)ファイバ発射/コリメート光学系1309、及び(g)入力ファイバ1310を備える。HTOチャンバベースプレートに光学部品(例:1308)を収容するための溝は、ミラー1306の所定の孔位置の場合の、POCのレーザービームパターンに必要な許容範囲内の3D空間内において特定の角度と位置を有する精密な溝として取り付けられる。図14は、捕捉された光が検出器1401上で直接捕捉される変形形態を示す。このアプローチでは、フォトダイオードからの熱放散に関して問題が生ずるので、アクティブまたはパッシブ冷却手法のいずれかによってこの問題に対処する必要がある。十分な冷却を提供できる場合、代替的な変形形態では、レーザーを、検出器と同様にベースプレートに直接取り付けることもできる。
【0035】
(C)多孔質光学セル(POC)の代替的な加熱装置
パイプ区域1504に沿った流れ(1503)におけるそれらの飽和蒸気圧近くの成分の凝縮を防ぐために、POC1501/1602の温度は、前述のように加熱することによって上昇させる。上述の構成に加えて、スパイラル(図15)パターンのまたはストレートパターンの(図16)発熱体1502または1601(例えば、リボン、ワイヤなど)を利用することができる。1つの製造方式では、加熱要素は、多孔質壁製造プロセス(例えば、焼結またはゲルキャスティングプロセス)の間、型内に保持され得る。
【0036】
そして最後に、これらのサブ設計要素のいずれかを他の要素と組み合わせてハイブリッド形態を形成できることを明確にする必要がある。例えば、図17に示されるように、多孔質窓要素1701は、ボトミングキャップ806を使用せずに、元の単一要素1702と組み合わせられる。このハイブリッド形態では、後方反射ミラー1703は、孔を通してPOCの底部に、高温接着剤1704(例えば、パテまたはセラミック接着剤)を用いて接着される。
【0037】
この現場排気ガスセンサの技術は、ディーゼルエンジンの排気ガスで正常に検証された。この区域では、図18を使用してセンサの構成を示す。図18は、排気管1801に取り付けられたときのプロトタイプの断面図である。このプロトタイプは、フランジペア(1802及び1803)及びスパイラルガスケット1807を使用して、HTOチャンバ1805と排気管1801との間のガスシールを達成する。多孔質光学セル(POC)1810とHTOチャンバ1805との間のシールは、窓ソケット1808とその中に配置されたくさび形の円筒形窓との間の高温RTVまたはエポキシシールによって達成される。POCセルのミラーは、符号1809(上)と1812(下)で示される。この設計の有効光路長は1.37mである。上側ミラー1809は、HTOフランジ1802の最も低いポケットにエポキシシールされている。下側ミラー1812は、下側ミラーキャップ1813にエポキシシールされている。下側ミラーキャップは、ステンレス鋼ロッド1811を使用して、HTOフランジの底面から離れた位置に固定されている。高温ワイヤ及び熱電対は、周辺スロット1804を通して入れられて、高温RTVシーラントを使用してシールされる。HTOフランジ1802上のタップ穴1806は、高温光学部品を取り付けるために使用される。
【0038】
POCセルの加熱された多孔質壁は、構成上の重要な要素であり、図19A図19B、及び図19Cを参照して個別に説明する。これは、シリカベースの3Dプリントセラミック多孔質壁1901、及びステンレス鋼のエンドフランジ1902並びに1903の3つの区域で構成されている。壁1901の多孔性は、未焼成(緑)の3D印刷された壁の焼結温度及び時間によって制御される。3D印刷された構造は、最初はプラスチックとセラミックの粉末で構成されている。焼成(焼結)プロセスの後、構造は完全にセラミックで作られているため、通常の車両の排気温度(最大600℃)を十分に超える温度でも耐えることができる。エンドフランジ(1902及び1903)は、設置プロセス中にセラミック壁1906の溝に摺動させて出入りさせられる。POCセルの「エラ部」と呼ばれる壁1904上のポケットは、セルへの周囲のガスの流れを増強し、セル内での非常に短い滞留時間をもたらす。POC壁1905の隆起は、1907に示されるように、壁ヒーターニクロムまたはカンタルワイヤーを取り付けるために使用される。これらの発熱体は、起動時にセルを飽和温度(通常は<60℃)以上に予熱するために使用される。排気が流れ始めると、排気ガスはPOCセルを150℃を超える温度まで急速に加熱し、凝結の発生の余地もセルをアクティブに加熱する必要もなくなる。
【0039】
高温用ミラーコーティング
マルチパスセルに使用される典型的なミラーは、図20A及び図20Bに2001として示されている。ミラーは、設計により所望の経路長に必要とされるので、孔(例えば、2002)を含んでも、含まなくてもよい。ミラーの断面図(断面A-A)は、符号2003によって示されている。ミラーコーティングの層の拡大図は、符号2004によって示されている。ハッチングが施された領域2005、2006、及び2007は、それぞれ保護最上層、反射層、及び接着層を示す。符号2008は、ミラーコーティングが適用された研磨された基板に付されている。実験により、金材料の上の一般的に使用されている保護最上層(2005)は、400℃を超える高温でのコーティングの安定性に悪影響を与えることが観察された。この悪影響は、層の不均一な膨張が応力の増大につながり、反射コーティングの破裂を引き起こすためであると考えられる。別の候補である保護最上層であるHfOは、高温で透明度を劇的に変化させることが判明した。これらは直感的な知見ではなく、発明者らの研究で得られた主要な新発見である。高温暴露試験中に生き残った唯一の反射ミラーコーティングは、保護されていない金コーティングであった。金コーティングの完全性と厚さも、高温での強度を推定する上で重要である。さらに、金コーティングと基板(テストケースでは溶融シリカ)の間に挟まれた接着層(通常はCr、Ti、またはNi層)について観察がされた。しかし、将来は、高温で生き残ることができる適切な保護最上層を見つけるための研究も行われよう。さらに、ステンレス鋼(特に、熱膨張係数が金と非常に近いSS310鋼)、ニッケル合金、チタンなどのさまざまな基板材料を実装することもできる。
【0040】
マルチパスセルの設計
本発明者が実装したマルチパス光学セルの設計は、焦点距離が等しくない複数の球面ミラーと、部分的に重複したスポット配置という2つの新規な技術に基づいている。
【0041】
(a)異なる焦点距離:異なる焦点距離の概念を図21に示す。ヘリオットタイプのマルチパスセルに関して、従来は等しい焦点距離の球面凹面鏡、または1つの凹面鏡と1つの平面鏡という構成を前提としていた。本発明では、互いに向き合う異なる焦点距離のミラーを用いる設計を一般化した。図21では、入口ミラーは符号2101で示されている。このミラーには、図中で黒い点2103で示されているように、少なくとも2つの孔が機械加工されている。2102で示されるもう一方のミラーは、戻りミラーと呼ばれる。複数回の反射の結果としてミラー上に形成されたスポットは、図中で白い点2104で示されている。これらのスポットのサイズが小さいほど、その点に到達する前に経てきた反射の回数が多くなる。このミラーは他のミラー2101よりも焦点距離が長く、コンピュータで生成された光線経路追跡で見られるように、比較的密度の高いパターンになる。これは、次の技術の結果としてのみ有利な効果を奏する。
【0042】
(b)部分的に重複したスポットの配置:従来のマルチパスセル構成では、光学フリンジやエタロニング効果を防ぐために、ミラー上に形成されたパターン全体が隣接するパターンと重複をしてはならない、とされていた。しかし、これは実際に必要な要件よりも厳格すぎる要件であった。フリンジ効果を防ぐために、入口ビームと出口ビームだけが隣接するビームと重複しないようにする必要があるのみであった。本発明者は、この新しい知見をマルチパスセル設計に導入し、特定の光路長に対して大幅に削減された体積を実現する。例えば、図21の場合、光学的な構成上の制約は、入口ミラー2101の重複の必要性のみである。本発明の現在のプロトタイプはこの知見を利用しており、この知見が図18及び図19A図19Cに見られるように先細セル構成とした背後にある理由である。
【0043】
この技術思想は、図22に示すように、楕円形のビームパターンを利用することで、さらに少ない体積を実現するように拡張された。この例では、入口ミラー2201は、入口及び出口(交換可能)として2つの孔2204を有する。2201の表面は球形であるが、ビームパターンを遮らない限りミラーの形状は矩形または他の形状にすることができる。この実施形態では、ビームは戻りミラー2202上で完全に重なっていることに留意されたい。それのみならず、符号2203と2205で示される領域のビーム反射スポットも重複している。これにより、レーザー経路線の包絡線からわかるように、小さな体積内で光路長を大幅に増やすことができる。さらに、車両の排気系の用途では、従来ではプローブを流れに挿入すると背圧が上昇して動作に悪影響を与える可能性があるが、この設計により、流れが狭い面に衝当したときの排気路断面積の遮断を大幅に低減できる。この技術思想は、図23に示すような他の非楕円形のビームパターンにも使用できることに留意されたい。図23では、ミラーは符号2301と2302で示され、スポットパターンは2303で示され、ビーム経路は2304で示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21
図22
図23
【国際調査報告】