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特表2022-517268免疫チェックポイント阻害剤関連大腸炎を処置するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-07
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害剤関連大腸炎を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20220228BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220228BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220228BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61K35/12
A61P1/04
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/48
A61K9/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541027
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 US2020013808
(87)【国際公開番号】W WO2020150429
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】62/793,085
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ワーゴ ジェニファー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェンホン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンク ロバート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA58
4C076BB01
4C076CC16
4C076FF04
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC33
4C087BC53
4C087BC61
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB11
(57)【要約】
健常ドナーからの糞便物質を対象に投与する工程を含む、対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎を処置するための方法および組成物が、本明細書において記載される。本開示の更なる局面は、以下のの属:エシェリキア、アッケルマンシア、バクテロイデス、ラクノスピラ科、ブラウチア、タイゼレラ、ビフィドバクテリウム、ストレプトコッカス、コリンセラ、およびフシカテニバクターのうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む組成物を対象に投与する工程を含む、対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎を処置する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健常ドナーからの糞便物質を対象に投与する工程を含む、対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎を処置するための方法。
【請求項2】
ICI関連大腸炎が、難治性ICI関連大腸炎を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象が、抗CTLA-4単剤療法で処置されたことがある、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
対象が、抗PD-1単剤療法で処置されたことがある、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
対象が、抗CTLA-4および抗PD-1の併用療法で処置されたことがある、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記大腸炎が、グレード2またはそれ以上として分類される、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
対象が、ICI関連大腸炎に対して先行の処置を受けたことがある、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
対象が、先行の処置に対して非応答性であると判定されたことがある、請求項7記載の方法。
【請求項9】
先行の処置が、ステロイド、コルチコステロイド、抗TNFα療法、抗インテグリン療法、インフリキシマブ、メサラミン、およびベドリズマブのうちの1つまたは複数を含む、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
ステロイドが、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
対象が、少なくとも5日間の静脈内メチルプレドニゾロン140mg/日に対して非応答性であると判定されたことがある、請求項10記載の方法。
【請求項12】
対象が、5mg/kgのインフリキシマブである少なくとも1用量に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある、請求項8~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
対象が、少なくとも2日間の静脈内メチルプレドニゾロン110mg/日に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある、請求項8~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
対象が、10mg/kgインフリキシマブである用量に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある、請求項8~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2用量の糞便物質の投与を含む、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
2回の投与が、少なくとも30日間空けて行われる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、結腸内投与を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、盲腸への結腸内投与を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
1つまたは複数の処置を施す工程を更に含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の処置が、コルチコステロイド、抗TNFα療法、抗インテグリン療法、インフリキシマブ、メサラミン、およびベドリズマブのうちの1つまたは複数を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
糞便物質投与後長くとも30日間以降の1つまたは複数の追加の処置を除外する、請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
糞便物質投与後30日間以降のステロイドの投与を除外する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
健常ドナーが、がんを有していないか、または以前にがんの処置を受けたことがない、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
健常ドナーが、大腸炎を有していない、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
対象が、難治性がんと診断されたことがある、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
糞便物質を投与する前に、対象に免疫チェックポイント阻害剤療法が施される、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
対象が、目下免疫チェックポイント阻害剤療法レジメンを受けている、請求項1~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
免疫チェックポイント療法および糞便物質の投与が7日間以内に行われる、請求項26記載の方法。
【請求項29】
糞便物質が、50gの用量で投与される、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記投与により、CD8+T細胞密度またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球が減少する、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記投与により、CD4+FoxP3+T細胞が増加する、請求項1~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
以下の属:エシェリキア(Escherichia)、アッケルマンシア(Akkermansia)、バクテロイデス(Bacteroides)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、ブラウチア(Blautia)、タイゼレラ(Tyzzerella)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、コリンセラ(Colinsella)、およびフシカテニバクター(Fusicatenibacter)のうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む組成物を対象に投与する工程を含む、対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎を処置する方法。
【請求項33】
前記組成物が、以下の属:アッケルマンシア、ブラウチア、ビフィドバクテリウム、バクテロイデス、およびエシェリキアのうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
エシェリキア属が、エシェリキア・シゲラ(Escherichia shigella)を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ICI関連大腸炎が、難治性ICI関連大腸炎を含む、請求項32~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
対象が、抗CTLA-4単剤療法で処置されたことがある、請求項32~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
対象が、抗PD-1単剤療法で処置されたことがある、請求項32~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
対象が、抗CTLA-4および抗PD-1の併用療法で処置されたことがある、請求項32~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
前記大腸炎が、グレード2またはそれ以上として分類される、請求項32~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
対象が、ICI関連大腸炎に対して先行の処置を受けたことがある、請求項32~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
対象が、先行の処置に対して非応答性であると判定されたことがある、請求項40記載の方法。
【請求項42】
先行の処置が、ステロイド、コルチコステロイド、抗TNFα療法、抗インテグリン療法、インフリキシマブ、メサラミン、およびベドリズマブのうちの1つまたは複数を含む、請求項40または41記載の方法。
【請求項43】
ステロイドが、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
対象が、少なくとも5日間の静脈内メチルプレドニゾロン140mg/日に対して非応答性であると判定されたことがある、請求項43記載の方法。
【請求項45】
対象が、5mg/kgのインフリキシマブである少なくとも1用量に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある、請求項41~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
対象が、少なくとも2日間の静脈内メチルプレドニゾロン110mg/日に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある、請求項41~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
対象が、10mg/kgインフリキシマブである用量に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある、請求項41~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
少なくとも2用量の糞便物質の投与を含む、請求項32~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
2回の投与が、少なくとも30日間空けて行われる、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記投与が、結腸内投与を含む、請求項32~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記投与が、盲腸への結腸内投与を含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記投与が経口投与を含み、かつ前記組成物が経口送達用に製剤化される、請求項32~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
経口送達用に製剤化された組成物が、錠剤またはカプセルである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
錠剤またはカプセルが、耐酸性腸溶性コーティングを含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
1つまたは複数の処置を施す工程を更に含む、請求項32~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
1つまたは複数の処置が、コルチコステロイド、抗TNFα療法、抗インテグリン療法、インフリキシマブ、メサラミン、およびベドリズマブのうちの1つまたは複数を含む、請求項55記載の方法。
【請求項57】
糞便物質投与後長くとも30日間以降の1つまたは複数の追加の処置を除外する、請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
糞便物質投与後30日間以降のステロイドの投与を除外する、請求項57記載の方法。
【請求項59】
健常ドナーが、がんを有していないか、または以前にがんの処置を受けたことがない、請求項32~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
健常ドナーが、大腸炎を有していない、請求項32~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
対象が、難治性がんと診断されたことがある、請求項32~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
糞便物質を投与する前に、対象に免疫チェックポイント阻害剤療法が施される、請求項32~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
対象が、目下免疫チェックポイント阻害剤療法レジメンを受けている、請求項32~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
免疫チェックポイント療法および糞便物質の投与が7日間以内に行われる、請求項62記載の方法。
【請求項65】
糞便物質が、50gの用量で投与される、請求項32~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
前記投与により、CD8+T細胞密度またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球が減少する、請求項32~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記投与により、CD4+FoxP3+T細胞が増加する、請求項32~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
以下の属:エシェリキア、アッケルマンシア、バクテロイデス、ラクノスピラ科、ブラウチア、タイゼレラ、ビフィドバクテリウム、ストレプトコッカス、コリンセラ、およびフシカテニバクターのうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む組成物。
【請求項69】
以下の属:エシェリキア、アッケルマンシア、バクテロイデス、ラクノスピラ科、ブラウチア、タイゼレラ、ビフィドバクテリウム、ストレプトコッカス、コリンセラ、およびフシカテニバクターのうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも2つの単離または精製された集団を含む組成物。
【請求項70】
細菌の集団がそれぞれ、少なくとも10^3CFUの濃度で組成物中に存在する、請求項68または69記載の組成物。
【請求項71】
生きている細菌製品または生きている生物療法製品である、請求項68~70のいずれか一項記載の組成物。
【請求項72】
前記細菌が、凍結乾燥、フリーズドライ、または冷凍されている、請求項68~71のいずれか一項記載の組成物。
【請求項73】
経口送達用に製剤化される、請求項68~72のいずれか一項記載の組成物。
【請求項74】
経口送達用に製剤化された組成物が、錠剤またはカプセルである、請求項73記載の組成物。
【請求項75】
錠剤またはカプセルが、耐酸性腸溶性コーティングを含む、請求項74記載の組成物。
【請求項76】
細菌の少なくとも1つの単離もしくは精製された集団、または細菌の少なくとも2つの単離もしくは精製された集団を含む前記組成物が、大腸内視鏡検査、経鼻胃管によるS状結腸鏡検査、または浣腸を介する直腸投与用に製剤化される、請求項68~72のいずれか一項記載の組成物。
【請求項77】
液剤、懸濁剤、ゲル剤、ゲルタブ剤、半固形剤、錠剤、サシェ剤、ロゼンジ剤、カプセル剤を含むものとして、または経腸製剤として、最終的な送達のために再構築することができる、請求項68~76のいずれか一項記載の組成物。
【請求項78】
複数回投与用に製剤化される、請求項68~77のいずれか一項記載の組成物。
【請求項79】
薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項68~78のいずれか一項記載の組成物。
【請求項80】
細菌の精製された集団が、少なくとも2つの属または種からの細菌を含み、かつ、該2つの細菌の比が1:1である、請求項68~79のいずれか一項記載の組成物。
【請求項81】
少なくとも2つの異なる種または属の細菌を含む、請求項68~80のいずれか一項記載の組成物。
【請求項82】
対象への投与後に少なくとも5であるアルファ多様性を提供する、請求項68~81のいずれか一項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2019年1月16日出願の米国仮特許出願第62/793,085号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
政府の支援についての記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた助成金番号CA219896及びHL124112の下で政府の支援を受けて成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1. 発明の分野
本発明は、分子生物学および医学の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
2. 背景
免疫療法は腫瘍学の分野に変革をもたらし、多種のがんにわたって患者の長期生存率を向上させてきた。細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とするICIによる処置は、患者のサブセットにおいてT細胞の活性化および有効な抗腫瘍免疫応答の増大に関連しているが、一部の患者では処置が重篤な免疫関連有害作用(irAE)に関連する場合もある。最も一般的な毒性の1つは、ICI関連大腸炎である。これは、非常に重篤になり得、そして、炎症性腸疾患(IBD)を含む自己免疫病態生理に関連する大腸炎に酷似している。ICI関連大腸炎は、コルチコステロイドおよび/または腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を標的とする作用物質を含む免疫抑制療法でルーチン的に処置されているが、これらは全て重大な副作用を有する。ICI誘発性大腸炎の最適な管理に関する推奨は、進化し続けている。当技術分野では、ICI関連大腸炎に対するより有効な処置および/または副作用の少ない処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
健常ドナーからの糞便物質を対象に投与する工程を含む、対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎を処置するための方法および組成物が、本明細書において記載される。
【0006】
開示の更なる局面は、以下の属:エシェリキア(Escherichia)、アッケルマンシア(Akkermansia)、バクテロイデス(Bacteroides)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、ブラウチア(Blautia)、タイゼレラ(Tyzzerella)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、コリンセラ(Colinsella)、およびフシカテニバクター(Fusicatenibacter)のうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む組成物を対象に投与する工程を含む、対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎を処置する方法に関する。
【0007】
いくつかの態様では、組成物は、以下の属:アッケルマンシア、ブラウチア、ビフィドバクテリウム、バクテロイデス、およびエシェリキアのうちの1つまたは複数に属する細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む。いくつかの態様では、エシェリキア属は、エシェリキア・シゲラ(Escherichia shigella)を含む。
【0008】
いくつかの態様では、ICI関連大腸炎は、難治性ICI関連大腸炎を含む。いくつかの態様では、対象は、抗CTLA-4単剤療法で処置されたことがある。いくつかの態様では、対象は、抗PD-1単剤療法で処置されたことがある。いくつかの態様では、対象は、抗CTLA-4および抗PD-1の併用療法で処置されたことがある。いくつかの態様では、大腸炎は、グレード2または以上として分類される。いくつかの態様では、対象は、ICI関連大腸炎に対して先行の処置を受けたことがある。いくつかの態様では、対象は、先行の処置に対して非応答性であると判定されたことがある。いくつかの態様では、先行の処置は、ステロイド、コルチコステロイド、抗TNFα療法、抗インテグリン療法、インフリキシマブ、メサラミン、およびベドリズマブのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、ステロイドは、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンを含む。
【0009】
いくつかの態様では、対象は、少なくとも5日間の静脈内メチルプレドニゾロン140mg/日に対して非応答性であると判定されたことがある。いくつかの態様では、対象は、少なくともまたは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の、少なくともまたは多くとも50、75、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、または400mg/日(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の静脈内メチルプレドニゾロンに対して非応答性であると判定されたことがある。
【0010】
いくつかの態様では、対象は、5mg/kgのインフリキシマブである少なくとも1用量に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある。いくつかの態様では、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、または40mg/kg/回(またはこの中の任意の導出可能な範囲)のインフリキシマブの少なくとも1、2、3、4、5、または6用量の投与(またはこの中の任意の導出可能な範囲)に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある。いくつかの態様では、対象は、10mg/kgインフリキシマブである用量に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある。
【0011】
いくつかの態様では、対象は、少なくとも2日間の静脈内メチルプレドニゾロン110mg/日に対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある。いくつかの態様では、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の、少なくとも25、50、60、70、80、90、100、110、120、130、または140mg/日(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の静脈内メチルプレドニゾロンに対して非応答性であるかまたは更に非応答性であると判定されたことがある。
【0012】
いくつかの態様では、方法は、少なくとも2用量の糞便物質の投与を含む。いくつかの態様では、方法は、少なくとも2、3、4、5、6、7、または8用量の糞便物質(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の投与を含む。いくつかの態様では、2回の投与は、少なくとも30日間空けて行われる。いくつかの態様では、2回の投与は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200日間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)である。
【0013】
いくつかの態様では、投与は、結腸内投与を含む。いくつかの態様では、投与は、盲腸への結腸内投与を含む。いくつかの態様では、方法は、1つまたは複数の処置を施すことを更に含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の処置は、コルチコステロイド、抗TNFα療法、抗インテグリン療法、インフリキシマブ、メサラミン、およびベドリズマブのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、方法は、糞便物質投与後長くとも30日間以降の1つまたは複数の追加の処置を除外する。いくつかの態様では、方法は、糞便物質投与後長くとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65 70、75、80、85、90、95、または100日間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)以降の1つまたは複数の追加の処置を除外する。いくつかの態様では、方法は、糞便物質投与後30日間以降のステロイドの投与を除外する。いくつかの態様では、方法は、糞便物質投与後長くとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65 70、75、80、85、90、95、または100日間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)以降のステロイドの投与を除外する。
【0014】
いくつかの態様では、健常ドナーは、がんを有していないか、または以前にがんの処置を受けたことがない。いくつかの態様では、健常ドナーは、大腸炎を有していない。いくつかの態様では、対象は、難治性がんと診断されたことがある。いくつかの態様では、糞便物質を投与する前に、対象に免疫チェックポイント阻害剤療法が施される。いくつかの態様では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤療法レジメンを目下受けている。いくつかの態様では、糞便物質を投与した後に、対象に免疫チェックポイント阻害剤療法が施される。いくつかの態様では、免疫チェックポイント療法および糞便物質の投与は7日間以内に行われる。いくつかの態様では、免疫チェックポイント療法および糞便物質の投与は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100日間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)以内に行われる。
【0015】
いくつかの態様では、糞便物質は、50gの用量で投与される。いくつかの態様では、糞便物質は、少なくとも、多くとも、または正確に10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75. 80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、または400g(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の用量で投与される。
【0016】
別の局面では、開示は、バクテロイデス・ステルコリス(Bacteroides stercoris)、バクテロイデス・カッカエ(Bacteroides caccae)、バクテロイデス・インテスチナリス(Bacteroides intestinalis)、ディアリスター属(Dialister)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バンピロビブリオ属(Vampirovibrio)、タイゼレラ属、バクテロイデス・ステルコリス(Bacteroides stercoris)、フラボニフラクター・プラウチイ(Flavonifractor plautii)、ディエルマ・ファスチジオサ(Dielma fastidiosa)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクトバチルス・ロゴサエ(Lactobacillus rogosae)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、プレボテラ・シャヒイ(Prevotella shahii)、ファーミキューテス門(Firmicutes)、クロストリジウム目(Clostridiales)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、アリスティペス・インジスチンクタス(Alistipes indistinctus)、バクテロイデス・ステルコリロソリス(Bacteroides stercorirosoris)、クロストリジウム・ラクタチフェルメンタンス オラス(Clostridium lactatifermentans orus)、アビシビルガ・アルカニフィラ(Abyssivirga alkaniphila)、アセタチファクター・ムリス(Acetatifactor muris)、アセチビブリオ・セルロリチクス(Acetivibrio cellulolyticus)、アセチビブリオ・エタノルギグネンス(Acetivibrio ethanolgignens)、アコレプラズマ・ビツリ(Acholeplasma vituli)、アクロモバクター・デレイ(Achromobacter deleyi)、アシドボラクス・ラジセス(Acidovorax radices)、アドレルクルーツィア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)、アッケルマンシア・ムシニフィラ、アリスティペス・インジスチンクタス、アリスティペス・オベシ(Alistipes obesi)、アリスティペス・プトレジニス(Alistipes putredinis)、アリスティペス・セネガレンシス(Alistipes senegalensis)、アリスティペス・チモネンシス(Alistipes timonensis)、アルカリバクター・サッカロフェルメンタンス(Alkalibacter saccharofermentans)、アルカリバクルム・バッキ(Alkalibaculum bacchi)、アロバクルム・ステルコリカニス(Allobaculum stercoricanis)、アナエロバクテリウム・チャルチソルベンス(Anaerobacterium chartisolvens)、アナエロコルムナ・セルロシリチカ(Anaerocolumna cellulosilytica)、アナエロスポロバクター・モビリス(Anaerosporobacter mobilis)、アナエロタエニア・トルタ(Anaerotaenia torta)、アナエロトルンクス・コリホミニス(Anaerotruncus colihominis)、アナエロトルンクス・ルビインファンチス(Anaerotruncus rubiinfantis)、アナエロボラクス・オドリムタンス(Anaerovorax odorimutans)、バクテロイデス・アシジファシエンス(Bacteroides acidifaciens)、バクテロイデス・カエシムリス(Bacteroides caecimuris)、バクテロイデス・ドレイ(Bacteroides dorei)、バクテロイデス・ファエシキンキラエ(Bacteroides faecichinchillae)、バクテロイデス・ロデンチウム(Bacteroides rodentium)、バクテロイデス・ステルコリロソリス、バクテロイデス・キシラノリチクス(Bacteroides xylanolyticus)、バルネシエラ・インテスチニホミニス(Barnesiella intestinihominis)、ベデュイニ・マシリエンシス(Beduini massiliensis)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム(Bifidobacterium pseudolongum)、ブラウチア・ルチ(Blautia luti)、ブレズナキア・ブラッチコーラ(Breznakia blatticola)、ブレズナキア・パクノダエ(Breznakia pachnodae)、ブチリコッカス・プリカエコルム(Butyricicoccus pullicaecorum)、ブチリビブリオ・クロッソタス(Butyrivibrio crossotus)、カタバクター・ホンコンゲネシス(Catabacter hongkongensis)、クリステンセネラ・マシリエンシス(Christensenella massiliensis)、クリステンセネラ・ミヌタ(Christensenella minuta)、クリステンセネラ・チモネンシス(Christensenella timonensis)、クロストリジウム・アエロトレランス(Clostridium aerotolerans)、クロストリジウム・アルデネンセ(Clostridium aldenense)、クロストリジウム・アルカリセルロシ(Clostridium alkalicellulosi)、クロストリジウム・アスパラギホルメ(Clostridium asparagiforme)、クロストリジウム・セレレクレセンス(Clostridium celerecrescens)、クロストリジウム・セロビオパルム(Clostridium cellobioparum)、クロストリジウム・セルロリチクム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・クラリフラブム(Clostridium clariflavum)、クロストリジウム・コクレアツム(Clostridium cocleatum)、クロストリジウム・コリヌム(Clostridium colinum)、クロストリジウム・ハイレモナエ(Clostridium hylemonae)、クロストリジウム・インドリス(Clostridium indolis)、クロストリジウム・ジェジュエンス(Clostridium jejuense)、クロストリジウム・ラクタチフェルメンタンス(Clostridium lactatifermentans)、クロストリジウム・ラバレンス(Clostridium lavalense)、クロストリジウム・メチルペントスム(Clostridium methylpentosum)、クロストリジウム・オロチクム(Clostridium oroticum)、クロストリジウム・オリザエ(Clostridium oryzae)、クロストリジウム・パピロソルベンス(Clostridium papyrosolvens)、クロストリジウム・ポリサッカロリチクム(Clostridium polysaccharolyticum)、クロストリジウム・ポプレチ(Clostridium populeti)、クロストリジウム・サッカロリチクム(Clostridium saccharolyticum)、クロストリジウム・サウジエンス(Clostridium saudiense)、クロストリジウム・サインデンス(Clostridium scindens)、クロストリジウム・ストラミニソルベンス(Clostridium straminisolvens)、クロストリジウム・ビリデ(Clostridium viride)、クロストリジウム・キシラノリチクム(Clostridium xylanolyticum)、コプロバクター・セクンダス(Coprobacter secundus)、コプロコッカス・カタス(Coprococcus catus)、クルツロミカ・マシリエンシス(Culturomica massiliensis)、デフルビイタレア・サッカロフィラ(Defluviitalea saccharophila)、デスルフィトバクテリウム・ハフニエンス(Desulfitobacterium hafniense)、デスルフィトバクテリウム・メタリレデュセンス(Desulfitobacterium metallireducens)、デスルホスポロシヌス・オリエンチス(Desulfosporosinus orientis)、デスルホビブリオ・デスルフリカンス(Desulfovibrio desulfuricans)、デスルホビブリオ・シンプレックス(Desulfovibrio simplex)、ドレア・ホルミシゲネランス(Dorea formicigenerans)、エイセンベルギエラ・マシリエンシス(Eisenbergiella massiliensis)、エメルゲンシア・チモネンシス(Emergencia timonensis)、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、エンテロルハブデュス・ムコシコーラ(Enterorhabdus mucosicola)、エンテロルハブデュス・ムリス(Enterorhabdus muris)、エリシペラトクロストリジウム・ラモスム(Erysipelatoclostridium ramosum)、エリシペロトリクス・ラルバエ(Erysipelothrix larvae)、エシェリキア・フェルグソニイ(Escherichia fergusonii)、ユーバクテリウム・コプロスタノリゲネス(Eubacterium coprostanoligenes)、ユーバクテリウム・ドリチュム(Eubacterium dolichum)、ユーバクテリウム・ルミナンチウム(Eubacterium ruminantium)、ユーバクテリウム・シラエウム(Eubacterium siraeum)、ユーバクテリウム・トルツオスム(Eubacterium tortuosum)、ユーバクテリウム・ベントリオスム(Eubacterium ventriosum)、ファエカリバキュルム・ロデンチウム(Faecalibaculum rodentium)、フラビマリナ・パシフィカ(Flavimarina pacifica)、フラボニフラクター・プラウチイ(Flavonifractor plautii)、フリンチバクター・ブチリクス(Flintibacter butyricus)、ゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)、グラシリバクター・サーモトレランス(Gracilibacter thermotolerans)、ハリーフリンチア・アセチスポラ(Harryflintia acetispora)、ホルデマニア・マシリエンシス(Holdemania massiliensis)、ヒドロゲノアナエロバクテリウム・サッカロボランス(Hydrogenoanaerobacterium saccharovorans)、イフバクター・マシリエンシス(Ihubacter massiliensis)、インテスチニモナス・ブチリシプロデュセンス(Intestinimonas butyriciproducens)、イレグラリバクター・ムリス(Irregularibacter muris)、ラクノクロストリジウム・パカエンス(Lachnoclostridium pacaense)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・ファエシス(Lactobacillus faecis)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ホミニス(Lactobacillus hominis)、ラクトバチルス・インテスチナリス(Lactobacillus intestinalis)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・レウテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ロゴサエ、ラクトバチルス・タイワネンシス(Lactobacillus taiwanensis)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、ロンギバクルム・ムリス(Longibaculum muris)、マルビンブリアンチア・ホルマテキシゲンス(Marvinbryantia formatexigens)、ミリオネラ・マシリエンシス(Millionella massiliensis)、ムシスピリルム・スカエドレリ(Mucispirillum schaedleri)、ムリバクルム・インテスチナレ(Muribaculum intestinale)、ムリモナス・インテスチニ(Murimonas intestini)、ナトラナエロビルガ・ペクチニボラ(Natranaerovirga pectinivora)、ネグレクタ・チモネンシス(Neglecta timonensis)、オドリバクター・スプランクニクス(Odoribacter splanchnicus)、オルセネラ・プロフサ(Olsenella profusa)、オスシリバクター・ルミナンチウム(Oscillibacter ruminantium)、オスシリバクター・バレリシゲネス(Oscillibacter valericigenes)、パピリバクター・シンナミボランス(Papillibacter cinnamivorans)、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイ(Parabacteroides goldsteinii)、パラエッゲルテラ・ホンコンゲネシス(Paraeggerthella hongkongensis)、パラステレラ・エクスクレメンチホミニス(Parasutterella excrementihominis)、パルビバクター・カエシコーラ(Parvibacter caecicola)、ペプトコッカス・ニガー(Peptococcus niger)、フォセア・マシリエンシス(Phocea massiliensis)、ポルフィロモナス・カトニアエ(Porphyromonas catoniae)、プレボテラ・オラリス(Prevotella oralis)、プレボテラ・ステルコレア(Prevotella stercorea)、プレボテラマシリア・チモネンシス(Prevotellamassilia timonensis)、シュードブチリビブリオ・ルミニス(Pseudobutyrivibrio ruminis)、シュードフラボニフラクター・カピロサス(Pseudoflavonifractor capillosus)、シュードフラボニフラクター・ホカエエンシス(Pseudoflavonifractor phocaeensis)、ラオウルチバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)、リゾビウム・ストラミノリザエ(Rhizobium straminoryzae)、ロゼブリア・ファエシス(Roseburia faecis)、ロゼブリア・ホミニス(Roseburia hominis)、ロゼブリア・インテスチナリス(Roseburia intestinalis)、ルミニクロストリジウム・サーモセラム(Ruminiclostridium thermocellum)、ルミノコッカス・シャンパネレンシス(Ruminococcus champanellensis)、ルミノコッカス・ファエシス(Ruminococcus faecis)、ルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)、ルミノコッカス・グナブス(Ruminococcus gnavus)、ルテニバクテリウム・ラクタチホルマンス(Ruthenibacterium lactatiformans)、スフィンゴモナス・キエオンギエンシス(Sphingomonas kyeonggiensis)、スピロプラズマ・ベロシクレセンス
(Spiroplasma velocicrescens)、スポロバクター・テルミチジス(Sporobacter termitidis)、ストマトバクルム・ロングム(Stomatobaculum longum)、ストレプトコッカス・アシドミニムス(Streptococcus acidominimus)、ストレプトコッカス・ダニエリアエ(Streptococcus danieliae)、シントロホモナス・ウォルフェイ(Syntrophomonas wolfei)、テピジモナス・タイワネンシス(Tepidimonas taiwanensis)、チンダリア・カリフォルニエンシス(Tindallia californiensis)、チンダリア・テキスココネンシス(Tindallia texcoconensis)、ツリシバクター・サングイニス(Turicibacter sanguinis)、ツリシモナス・ムリス(Turicimonas muris)、タイゼレラ・ネキシリス(Tyzzerella nexilis)、バリタレア・プロニエンシス(Vallitalea pronyensis)、および/またはバンピロビブリオ・クロレラボラス(Vampirovibrio chlorellavorus)のうちの少なくとも1、少なくとも2、または3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の単離または精製された集団を含む組成物に関する。
【0017】
いくつかの態様では、がんは、皮膚がんである。いくつかの態様では、がんは、基底細胞皮膚がん、扁平上皮細胞皮膚がん、黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、ケラトアカントーマ、紡錘細胞腫瘍、脂腺癌、小嚢胞付属器癌、乳房パジェット病、非定型的線維黄色腫、平滑筋肉腫、または血管肉腫である。いくつかの態様では、がんは、黒色腫である。いくつかの態様では、黒色腫は、転移性黒色腫、悪性黒子、悪性黒子由来黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、末端黒子型黒色腫、皮膚黒色腫、または線維形成性黒色腫である。いくつかの態様では、がんは、皮膚黒色腫を含む。
【0018】
いくつかの態様では、がんは、再発性がんを含む。いくつかの態様では、がんは、再発した転移性がんを含む。いくつかの態様では、がんは、原発腫瘍の領域におけるがんの再発を含む。いくつかの態様では、がんは、転移性がんを含む。いくつかの態様では、がんは、ステージIIIまたはIVのがんを含む。いくつかの態様では、がんは、ステージIまたはIIのがんを含む。いくつかの態様では、がんは、ステージIまたはIIのがんを除外する。
【0019】
いくつかの態様では、方法は、少なくとも1つの追加の抗がん処置を施す工程を更に含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の抗がん処置は、外科的療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、低分子療法、受容体キナーゼ阻害作質療法、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、または生物学的療法である。いくつかの態様では、追加の抗がん処置は、本明細書において記載されるがん処置を含む。
【0020】
いくつかの態様では、療法、微生物組成物、または糞便物質は、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、髄腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮的、皮下的、局所的、定位的、経口的に、または直接注射もしくは灌流により施される。いくつかの態様では、投与経路は、本明細書において記載される経路である。
【0021】
いくつかの態様では、糞便物質または微生物組成物の投与により、CD8+T細胞密度またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球が減少する。いくつかの態様では、糞便物質または微生物組成物の投与により、CD8+T細胞密度またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球が少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70%(またはこの中の任意の導出可能な範囲)減少する。いくつかの態様では、糞便物質または微生物組成物の投与により、CD4+FoxP3+が増加する。いくつかの態様では、糞便物質または微生物組成物の投与により、CD4+FoxP3+が少なくとも2、3 4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70%(またはこの中の任意の導出可能な範囲)増加する。
【0022】
いくつかの態様では、細菌の精製された集団は、少なくとも2つの属または種からの、かつ、2つの細菌の比が1:1である細菌を含む。いくつかの態様では、細菌の精製された集団は、少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、20、30、40、または50(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の異なる科、属、または種の細菌からの細菌を含む。いくつかの態様では、組成物中に存在するある科、属、または種の細菌の、別の科、属、または種の細菌に対する比は、少なくとも、多くとも、または正確に1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:450、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1500、1:2000、1:2500、1:3000、1:3500、1:4000、1:4500、1:5000、1:1550、1:6000、1:6500、1:7000、1:7500、1:8000、1:8500、1:9000、1:9500、1:10000、1:1200、1:14000、1:16000、1:18000、1:20000、1:30000、1:40000、1:50000、1:60000、1:70000、1:80000、1:90000、または1:100000(またはその中の導出可能な範囲)である。
【0023】
いくつかの態様では、組成物は、少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20であるアルファ多様性を提供する。アルファ多様性を算出する方法は、当技術分野において公知である。例えば、サンプルの分類学的アルファ多様性は、シンプソン指数の逆数を用いて推定することができる。いくつかの態様では、組成物は、有効量で投与される。いくつかの態様では、有効量は、対象において少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20(またはこの中の任意の導出可能な範囲)であるアルファ多様性を提供する量を含む。
【0024】
いくつかの態様では、以下の属または種:エシェリキア、アッケルマンシア、バクテロイデス、ラクノスピラ、ブラウチア、タイゼレラ、ビフィドバクテリウム、ストレプトコッカス、コリンセラ、および/またはフシカテニバクターに属する細菌は、少なくとも、多くとも、または正確に1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、または1×1016の細胞またはCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の量で投与される。いくつかの態様では、投与される細菌の総量は、少なくとも、多くとも、または正確に1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、または1×1016の細胞またはCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの態様では、特定の種の細菌などの特定の量の細菌は、少なくとも、多くとも、または正確に、少なくとも、多くとも、または正確に1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、または1×1016の細胞またはCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の量であってよい。いくつかの態様では、組成物は、本明細書において記載される細菌の門、科、属、または種からの少なくとも、多くとも、または正確に、少なくとも、多くとも、または正確に1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、または1×1016の細胞またはCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)を含有し得る。いくつかの態様では、組成物は、本明細書において記載される細菌の門、科、属、または種からの少なくとも、多くとも、または正確に1×106、1×105、1×104、1×103、または1×102未満の細胞またはCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)を含有し得る。
【0025】
いくつかの態様では、方法は、抗生物質の投与を更に含む。いくつかの態様では、抗生物質は、広域スペクトル抗生物質であってよい。いくつかの態様では、少なくとも1、2、3、4、または5種の抗生物質の混合物が投与される。いくつかの態様では、抗生物質は、アンピシリン、ストレプトマイシン、およびコリスチン、ならびにこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、抗生物質は、細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む組成物の前に投与される。いくつかの態様では、抗生物質は、細菌の少なくとも1つの単離または精製された集団を含む組成物と同時に投与される。いくつかの態様では、抗生物質は、微生物組成物の少なくともまたは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、もしくは24時間、または1、2、3、4、5、もしくは6日、または1、2、3、4、5、もしくは6週間(またはこの中の任意の導出可能な範囲)前または後に投与される。
【0026】
開示の組成物は、本明細書において記載される1つもしくは複数の細菌の属または種を除外してもよく、または1×106、1×105、1×104、1×103、もしくは1×102未満の細胞もしくはCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の本明細書において記載される細菌のうちの1つもしくは複数を含んでいてもよい。
【0027】
いくつかの態様では、細菌の集団はそれぞれ、少なくとも10^3 CFUの濃度で組成物中に存在する。いくつかの態様では、組成物は、生きている細菌製品または生きている生物療法製品である。いくつかの態様では、本開示の組成物、例えば微生物集団または糞便物質を含む組成物は、凍結乾燥、フリーズドライ、または冷凍される。いくつかの態様では、組成物は、経口送達用に製剤化される。いくつかの態様では、経口送達用に製剤化された組成物は、錠剤またはカプセル剤である。いくつかの態様では、錠剤またはカプセル剤は、耐酸性腸溶性コーティングを含む。いくつかの態様では、組成物は、大腸内視鏡検査、経鼻胃管によるS状結腸鏡検査、または浣腸を介する直腸投与用に製剤化される。いくつかの態様では、組成物は、液剤、懸濁剤、ゲル剤、ゲルタブ剤、半固形剤、錠剤、サシェ剤、ロゼンジ剤、カプセル剤を含むものとして、または経腸製剤として、最終的な送達のために再構築することができる。いくつかの態様では、組成物は、複数回投与用に製剤化される。いくつかの態様では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む。
【0028】
本明細書において使用するとき、用語「または」および「および/または」は、互いに組み合わせたまたは互いを除いた複数の成分を記載するために使用される。例えば、「x、y、および/またはz」は、「x」のみ、「y」のみ、「z」のみ、「x、y、およびz」、「(xおよびy)またはz」、「xまたは(yおよびz)」、または「xまたはyまたはz」を指し得る。具体的には、x、y、またはzが態様から具体的に除外されてもよいことが企図される。
【0029】
本願全体を通して、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられる装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために、細胞生物学の分野におけるその明白かつ通常の意味に従って用いられる。
【0030】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「特徴とする(characterized by)」と同義である用語「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法工程を除外するものではない。語句「からなる」は、指定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。語句「から本質的になる」は、記載されている主題の範囲を、指定の材料または工程、およびその基本的かつ新規な特徴に重大な影響を与えることのないものに限定する。用語「含む」の文脈で記載された態様は、用語「からなる」または「から本質的になる」の文脈でも実施できることが企図される。
【0031】
本明細書の一態様に関して論じられる任意の限定が、本明細書の任意の他の態様にも適用され得ることが具体的に意図される。更に、本発明の任意の組成物は、本発明の任意の方法で用いることができ、そして、本発明の任意の方法を用いて、本発明の任意の組成物を生成または利用することができる。実施例に記載される態様の局面は、異なる実施例の他の箇所または本願の他の箇所、例えば、発明の概要、態様の詳細な説明、特許請求の範囲、および図面のレジェンドの説明において論じられる態様の状況で実施することができる態様でもある。
【0032】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明及び具体例は、発明の好ましい態様を示すものの、例示のためだけに与えられることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、そして、本発明の特定の局面を更に示すために含まれる。これら図面のうちの1つまたは複数を、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、本発明をより深く理解することができる。
図1図1A~F.臨床経過全体にわたる結腸粘膜浸潤の内視鏡的変化および特性評価。患者1. a、全大腸内視鏡検査によって評価した結腸粘膜の変化。診断時(1行目)付近では、複数の大きな潰瘍およびびまん性の炎症性滲出物が存在し(結腸の遠位40cmのみ、近位結腸は正常に見える)、そして、ステロイドおよび生物学的免疫抑制剤(ステロイド+2用量のインフリキシマブ+1用量のベドリズマブ)による数ヶ月間にわたる処置にもかかわらず残存している(2行目)。FMTのおよそ1ヶ月間後(3行目)、結腸粘膜は、全体的に正常な血管系、最小限の斑状紅斑、および以前の潰瘍のほぼ完全な治癒を呈している。黄色の矢印は、潰瘍性病変を指している。この患者に対して、大腸の全てのセグメント(上行、横行、下行、およびS状の結腸、ならびに直腸)を検査する全大腸内視鏡検査による評価を行った。内視鏡検査を各時点で1回実施した。内視鏡データ収集の性質が定性的であり、そして、真の統計分析を提供できないことに鑑みて、同じ大腸内視鏡検査による評価から複数の他の代表的な写真を含めるように選択した(図6A)。b、FMTの前および後の結腸/直腸の粘膜生検のIHC分析。全体として内視鏡生検標本を代表する1枚のスライドを、各時点での各患者ごとに染色した。追加の時点からの代表的なスライドは図7Aおよび7Cに含まれており、免疫細胞サブセット(CD8赤四角、CD4青丸、FOXP3黒三角)の密度の経時変化の分析を、これらマーカーを発現している細胞の総密度に基づいてベースラインからの変化倍率として表した(絶対密度は図8Aに提示する)。時点は、診断時、FMT前、ステロイドおよび生物学的免疫抑制後、ならびにFMT後を含む。FMTの日を縦の点線で表し、かつ0日目とする。これらデータは、1サンプル(各時点で患者1人あたり1枚のスライド)あたり4つのROIからの平均細胞密度を表し、各ROIは、合計およそ1mm2につき500×500μm2と測定された。本発明者らは、1mm2あたりのIHC陽性細胞の平均数を、ベースライン時の1mm2あたりのIHC陽性細胞の平均数で除した値を報告する。患者2. d、全大腸内視鏡検査によって評価した結腸粘膜の変化。診断時(1行目)付近では、複数の大きな潰瘍および炎症性滲出物が存在し(結腸全体にわたって)、そして、ステロイドおよび生物学的免疫抑制剤(ステロイド+2用量のインフリキシマブ+4用量のベドリズマブ)による不成功の処置後にも残存している(2行目)。1回目のFMT後に顕著な改善がみられるが(3行目)、残留潰瘍が残存している。2回目のFMT後(4行目)、全ての潰瘍性病変がほぼ完全に消散していることが認められる。再度、各時点につき1回、全内視鏡検査による評価を実施した。大腸内視鏡検査による評価からの追加の代表的な写真を図6Bに示す。e、1回目のFMT前および1回目のFMT後に採取した結腸/直腸の粘膜生検の免疫組織化学的分析。内視鏡生検標本を代表する1枚のスライドを、各時点での各患者ごとに染色した。追加の時点からの代表的なスライドは図7Bおよび7Fに含まれており、免疫細胞サブセット(CD8赤四角、CD4青丸、FOXP3黒三角)の密度の経時変化の分析を、これらマーカーを発現している細胞の総密度に基づいてベースラインからの変化倍率として表した(絶対密度は図8Bに提示する)。これらデータは、1サンプル(各時点で患者1人あたり1枚のスライド)あたり4つのROIからの平均細胞密度を表し、各ROIは、合計およそ1mm2につき500×500μm2と測定された。本発明者らは、1mm2あたりのIHC陽性細胞の平均数を、ベースライン時の1mm2あたりのIHC陽性細胞の平均数で除した値を報告する。1回目(0日目)と2回目(67日目)のFMTの日を縦の点線で表す。
図2-1】図2A~E.16Sディープシーケンシングによる患者およびドナーの腸内細菌のマイクロバイオーム解析。FMTドナーからのサンプルと共に、FMTの前および後の指定の時点で、患者の大便のマイクロバイオームを縦断的にサンプリングした。各サンプルについて3,380~42,776個の配列を得た(平均10,003個)。a、患者およびFMTドナーのサンプルについて、3,000個の配列に希薄化した後にシンプソン指数の逆数によって定量したα-多様性、ならびに観測されたOTU数の合計を評価した。b、重み付けされていないUniFrac距離の主座標分析(PCoA)を用いて、aからのマイクロバイオームサンプルを空間上に描き、より類似するサンプルをまとめてより近くに配置した。c、aにおけるサンプルからの細菌16S配列を起源別に分類した(患者のベースラインに固有、ドナーに固有、患者のベースラインおよびドナーの両方に存在する、患者のベースラインおよびドナーのいずれにも存在しない)。d、配列を綱レベルの分類によって分類した。e、10種の細菌属で変動するトップ10の存在量の経時変化。
図2-2】図2-1の説明を参照のこと。
図3】患者1の臨床経過を表すタイムライン。主要な時点は、免疫療法のタイミング、大腸炎の診断、ステロイド(最初に2mg/kgをIV投与し、その後、数ヶ月間にわたって徐々に減量)ならびにインフリキシマブおよびベドリズマブを含む他の免疫抑制剤を含む従来の作用物質で処置された時間の長さ、FMTの時間を含む。本発明者らはまた、内視鏡検査が実施され、かつ画像が示されている時間も示す(**)。指定の時間に、免疫組織化学的分析のために生検を採取した(##)。また、腸内マイクロバイオームの分析のために糞便材料を回収した時点も示す。タイムラインの下には、この時間経過全体にわたって患者が様々な臨床的適応のために受けた様々な抗生物質療法のおおよその日付および期間を示す。
図4】患者2の臨床経過を表すタイムライン。主要な時点は、免疫療法のタイミング、大腸炎の診断、ステロイド(最初に2mg/kgをIV投与し、その後、数ヶ月間にわたって徐々に減量)ならびにインフリキシマブおよびベドリズマブを含む他の免疫抑制剤を含む従来の作用物質で処置された時間の長さ、ならびに1回目および2回目のFMTのタイミングを含む。1回目のFMTの時間を0日目として確立し、そして、この主要な時点に対する他の日付も報告する。本発明者らは、内視鏡検査が実施され、かつ画像が示されている時間も示す(**)。##でマーキングされた時間に免疫組織化学的分析のために生検を採取した。また、腸内マイクロバイオームの分析のために糞便材料を回収した時点も示す。タイムラインの下には、この時間経過全体にわたって患者が様々な臨床的適応のために受けた様々な抗生物質療法のおおよその日付および期間を示す。更に、この期間中に投与された他の化学療法剤のタイミングも示す。
図5A図5A~B.大腸炎の重症度。全身性ステロイドの1日投与量(青線)、CTCAEバージョン4によって評価したときの下痢(赤四角)および大腸炎(黒三角)のグレード、ならびに紅斑/びらんの存在、潰瘍の存在、ならびに粘膜潰瘍の数(≧2)、サイズ(≧1cm)、および深さ(≧2mm)が組み込まれた(各特徴を1ポイントと数える)内視鏡重症度スコア(薄青色菱形)を含む、(a)患者1および(b)患者2の臨床経過全体にわたる疾患の重症度の様々な尺度をプロットする。縦の点線は、FMTの日を示す。内視鏡スコア付け基準は、施設の専門家の意見に基づいて作成した。免疫抑制剤の投与のタイミングも示す。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図6A図6A~B.大腸内視鏡検査からの追加の内視鏡画像。(a)患者1についての、診断時付近(1行目)、ステロイドおよび生物学的免疫抑制剤(ステロイド+2用量のインフリキシマブ+1用量のベドリズマブ)による不成功の処置後(2行目)、ならびにFMTのおよそ1ヶ月間後(3行目)の結腸および直腸の画像。潰瘍および炎症は、結腸の遠位40cmにびまん性に分布していた。全結腸内視鏡検査に基づいて、近位結腸の残部は正常であるようにみえた。(b)患者2についての、診断時付近(1行目)、ステロイドおよび生物学的免疫抑制剤(ステロイド+2用量のインフリキシマブ+4用量のベドリズマブ)による不成功の処置後(2行目)、1回目のFMTのおよそ5週間後(3行目)、ならびに2回目のFMTのおよそ3ヶ月間後(4行目)の結腸および直腸の画像。黄色の矢印は、潰瘍性病変を指している。潰瘍および炎症は結腸全体に広がっており、斑状の分布パターンを有していた。各写真は、結腸および直腸の固有の部分を表す。次の行の直下の写真は、必ずしも結腸または直腸内の正確に同じ位置に対応するわけではないことに留意することが重要である。各時点で1回の内視鏡検査を実施した。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図7A図7A~B.結腸粘膜の免疫組織化学的分析。(a)患者1についての、診断時、ステロイドおよび2用量のインフリキシマブによる不成功の処置後、追加の1用量のベドリズマブ後、ならびにFMT後を含む臨床的に関連する各時点で採取した複数の内視鏡生検からの代表的なスライド (b)患者2についての、診断時、ステロイドおよび生物学的免疫抑制剤による不成功の処置後、ならびに1回目のFMT後および2回目のFMT後に採取された複数の生検からの代表的なスライド。CD8、CD4、およびFoxP3のそれぞれについてのH&E染色に加えて、Tリンパ球に共通する個々のマーカーの染色を示す。FMT1の日を0日目とみなす。いずれの患者についても、1時点につき、全体として内視鏡生検標本の代表的なスライド1枚を染色した。各サンプルにつき、4つの関心対象の領域(ROI)を分析した。各ROIは0.5mm×0.5mm(合計約1.00mm2)と測定された。
図7B図7Aの説明を参照のこと。
図8A図8A~B.結腸粘膜の免疫組織化学的分析の定量 (a)患者1についての、診断時、ステロイドおよび2用量のインフリキシマブによる最初の処置中、追加の1用量のベドリズマブによる処置後、ならびにFMT後の様々な免疫細胞の絶対密度(細胞/mm2)。縦の点線は、FMTのタイミング(0日目)を表す。(b)患者2についての、診断時、ステロイドおよび生物学的免疫抑制による不成功の処置後、FMT1の後、ならびに2回目のFMTの後の様々な免疫細胞の絶対密度(細胞/mm2)。いずれの患者についても、1時点につき、全体として内視鏡生検標本を代表するスライド1枚を染色した。これらデータは、1サンプルあたり4つの関心対象の領域(各ROIは500μm×500μmと測定)からの平均(+/-標準偏差)細胞密度を表す。縦の点線は、各患者のFMTのタイミングを表す。FMT1の日を0日目とみなす。
図8B図8Aの説明を参照のこと。
図9】CD4及びFoxP3の共存。T制御性リンパ球を表す可能性が高い複数の細胞における、特徴的なCD8+(赤)およびCD4+(黄)のリンパ球集団に加えてCD4+およびFoxP3(緑)の共存を示す代表的なマルチプレックスIHC。核のDAPI染色は青色である。これは、FMT1後の患者2からの生検を表す。各患者ごとに少なくとも2つの時点での複数の複製(2つ以上)が、同様の結果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
例示的態様の説明
I. 定義
本明細書において使用するとき、用語「抗体」は、免疫グロブリン、特異的結合能を維持しているその誘導体、および免疫グロブリン結合ドメインと相同または大部分が相同である結合ドメインを有するタンパク質を指す。これらタンパク質は、天然源由来であってもよく、または一部もしくは全体が合成的に生成されてもよい。抗体は、モノクローナルであってもポリクローナルであってもよい。抗体は、ヒトのクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれかを含む、任意の免疫グロブリンクラスの一員であってよい。本明細書において記載される方法および組成物で使用される抗体は、一般に、IgGクラスの誘導体である。また、抗体という用語は、抗原結合抗体断片も指す。このような抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、およびFdの断片を含むが、これらに限定されるわけではない。抗体断片は、任意の手段によって生成され得る。例えば、抗体断片は、インタクトな抗体を断片化することによって酵素的または化学的に生成されてもよく、部分的な抗体配列をコードしている遺伝子から組換え的に生成されてもよく、全体または一部が合成的に生成されてもよい。抗体断片は、任意で、一本鎖抗体断片であってもよい。あるいは、断片は、例えばジスルフィド連結によって互いに連結された複数の鎖を含んでいてもよい。断片は、任意で、多分子複合体であってもよい。機能的抗体断片は、完全抗体と同等の親和性でその同種抗原に結合する能力を保持している。
【0035】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書において使用するとき、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体、例えば、微量に存在し得る可能性のある変異、例えば天然に存在する変異を除いて同一である集団を構成する個々の抗体を指す。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の態様では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的結合ポリペプチド配列が複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスによって得られたものである、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含む。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンから固有のクローンを選択することであってよい。例えば、標的に対する親和性を改善する、標的結合配列をヒト化する、細胞培養における生成を改善する、インビボでの免疫原性を低下させる、多特異性抗体を作製するなどのために、選択された標的結合配列を更に変化させてもよいこと、そして、変化した標的結合配列を含む抗体も本開示のモノクローナル抗体であることを理解すべきである。通常異なる決定基(エピトープ)に対するいくつかの異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製品とは対照的に、モノクローナル抗体調製品の各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定基に対するものである。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、通常他の免疫グロブリンが夾雑していないという点でも有利である。
【0036】
語句「薬学的組成物」または「薬理学的に許容される組成物」とは、必要に応じて、動物、例えばヒトに投与したとき、副作用、アレルギー反応、または他の有害な反応を生じさせない分子実体および組成物を指す。抗体または追加の活性成分を含む薬学的組成物の調製は、本開示に照らして当業者に知られるであろう。更に、動物(例えば、ヒト)に投与する場合、調製品は、FDA Office of Biological Standardsによって、要求に応じて無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たさなければならないことが理解される。
【0037】
本明細書において使用するとき、「薬学的に許容される担体」は、当業者に知られているような、任意の、そして全ての水性溶媒(例えば、水、アルコール/水の溶液、生理食塩水、塩化ナトリウムなどの非経口ビヒクル、およびリンゲルデキストロース)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびエチルオレアートなどの注射用有機エステル)、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩類、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、染料、水分および栄養分の補給剤、このような類似の材料、ならびにこれらの組み合わせを含む。薬学的組成物における各種成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整することができる。
【0038】
用語「単位用量」または「投与量」は、対象において使用するのに好適な物理的に別個の単位であって、各単位が、その投与、すなわち適切な経路および処置レジメンに関連して本明細書において論じられる所望の応答を生じさせるように算出された所定の量の処置組成物を含有する単位を指す。投与される量は、処置の回数および単位用量の両方に従って、所望の効果に依存する。患者または対象に投与される本態様の組成物の実際の投与量は、対象の体重、年齢、健康状態、および性別、処置される疾患の種類、疾患の侵入の程度、以前または同時に行われた処置的介入、患者の特発性、投与経路、ならびに特定の処置物質の効力、安定性、および毒性などの物理的および生理的な要因によって決定することができる。例えば、用量は、投与1回あたり約1μg/kg/体重~約1000mg/kg/体重(この、このような範囲は、これらの間の用量を含む)またはそれ以上、およびこの中の導出可能な任意の特定の用量を含んでいてもよい。本明細書において列挙する数字から導出可能な範囲の非限定的な例では、約5μg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などの範囲を投与してよい。投与に責任のある実施者が、いかなる場合も、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象についての適切な用量を決定する。
【0039】
細菌の「集団」とは、単一の種または異なる種の混合物を含む細胞の組成物を指す場合もある?
【0040】
用語「免疫チェックポイント」とは、免疫反応を調節するためにその構成要素に阻害性シグナルをもたらす免疫系の構成要素を指す。公知の免疫チェックポイントタンパク質は、CTLA-4、PD-lならびにそのリガンドであるPD-LlおよびPD-L2、そして、更にはLAG-3、BTLA、B7H3、B7H4、TIM3、KIRを含む。LAG3、BTLA、B7H3、B7H4、TIM3、およびKIRが関与する経路は、CTLA-4およびPD-1に依存する経路と類似の免疫チェックポイント経路を構成すると当技術分野において認識されている(例えば、Pardoll, 2012, Nature Rev Cancer 12:252-264;Mellman et al., 2011, Nature 480:480-489を参照)。
【0041】
用語「阻害物質」とは、タンパク質の1つまたは複数の機能を遮断するまたは低下させる、有機または無機のタンパク質、ポリペプチド、抗体、低分子、炭水化物、または核酸であってよい分子を指す。阻害物質は、タンパク質と直接相互作用することによって作用する直接阻害物質であってもよく、タンパク質と直接相互作用することはできないが、それにもかかわらずタンパク質の1つまたは複数の機能を阻害する間接阻害物質であってもよい。
【0042】
「免疫チェックポイント阻害剤」とは、免疫チェックポイントタンパク質の機能を阻害する任意の化合物を指す。阻害は、機能の低下および完全な遮断を含む。特に、免疫チェックポイントタンパク質は、ヒト免疫チェックポイントタンパク質である。したがって、免疫チェックポイントタンパク質の阻害物質は、特にヒト免疫チェックポイントタンパク質の阻害物質である。
【0043】
「対象」および「患者」は、ヒトまたは非ヒト、例えば、霊長類、哺乳類、および脊椎動物のいずれかを指す。特定の態様では、対象は、ヒトである。
【0044】
本明細書において使用するとき、用語「処置する」、「処置」、「処置している」、または「回復」とは、疾患、障害、または病状に関連して使用する場合、病態の治療的処置を指し、その目的は、症状または病態の進行または重篤度を逆転させる、緩和する、回復させる、阻害する、減速させる、または止めることである。用語「処置している」は、少なくとも1つの副作用または病態の症状を低減または緩和することを含む。処置は、一般には、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが減少した場合に「有効」である。あるいは、処置は、病態の進行が低減または停止した場合に「有効」である。すなわち、「処置」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、処置しなかった場合に予測される症状の進行または悪化の中止または少なくとも減速も含む。有益または所望の臨床結果は、1つまたは複数の症状の緩和、欠陥の程度の縮小、腫瘍または悪性腫瘍の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、腫瘍の成長および/または転移の遅延または減速、ならびに処置しなかった場合に予測される寿命と比較した寿命の延長を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
「腸内微生物叢」または「腸内マイクロバイオーム」とは、対象の腸内に生息する微生物の集団(およびそのゲノム)を指す。
【0046】
用語「アルファ多様性」とは、サンプル内の多様性の尺度であり、かつサンプル内の全ての微生物叢の分布およびアセンブリのパターンを指し、各サンプルのスカラ値として算出される。「ベータ多様性」とは、サンプル間の多様性についての用語であり、サンプル同士を比較することで、各サンプル対間の距離または非類似度の尺度を提供することを含む。
【0047】
「相対存在量」と呼ばれる場合もある用語「相対量」とは、生物学的サンプル中の特定の分類学的レベル(門から種まで)の細菌の総数の割合としての、そのレベルの細菌の数として定義される。この相対存在量は、例えば、これら細菌に割り当てられるサンプル中に存在する16S rRNA遺伝子配列の割合を測定することによって評価することができる。特定の細菌の16S rRNA遺伝子マーカーの454パイロシーケンシング、または特定の遺伝子の定量PCRなどの当業者に公知の任意の適切な技術によって測定することができる。
【0048】
用語「単離された」とは、(1)(自然界であろうと実験設定であろうと)最初に生成されたときに付随していた成分のうちの少なくとも一部から分離された、ならびに/または(2)ヒトの手によって生成、調製、精製、および/もしくは製造された細菌または他の実体もしくは物質を包含する。単離された細菌は、最初に付随していた他の成分のうちの少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ以上から分離され得る。いくつかの態様では、単離された細菌は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%を超える、または約99%を超える純度である。本明細書において使用するとき、物質が他の成分を実質的に含まない場合、その物質は「純粋」である。
【0049】
用語「精製する」、「精製している」、および「精製された」とは、最初に生成もしくは作製されたとき(例えば、自然界であろうと実験設定であろうと)または最初に生成された後の任意の時間の間に付随していた成分のうちの少なくとも一部から分離された細菌または他の材料を指す。細菌または細菌集団は、細菌または細菌集団を含有する材料または環境などからの生成時または生成後に単離された場合、精製されたとみなすことができ、そして、精製された細菌または細菌集団は、最高約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約90%超の他の材料を含有していてもよく、そして、それにもかかわらず「単離された」とみなすことができる。いくつかの態様では、精製された細菌および細菌集団は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%を超える、または約99%を超える純度である。本明細書において提供される細菌組成物の例では、組成物中に存在する1つまたは複数の細菌型は、独立して、その細菌型を含有する材料または環境中で生成されたおよび/または存在する1つまたは複数の他の細菌から精製することができる。細菌組成物およびその細菌成分は、一般に、残留生息生成物から精製される。
【0050】
用語「より少ない」、「低減された」、「低減」、「減少」、または「阻害」は全て、一般に統計的に有意な量の減少を意味するように本明細書において使用される。しかし、疑念を避けるために、「より少ない」、「低減された」、「低減」、「減少」、または「阻害」は、基準レベルと比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、もしくは最高100%および100%を含む減少(すなわち、基準サンプルと比較して存在しないレベル)、または基準レベルと比較して10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0051】
用語「増加した」、「増加」、「増強」、または「活性化」は全て、一般に統計的に有意な量の増加を意味するように本明細書において使用され;いかなる疑念も避けるために、用語「増加した」、「増加」、「増強」、または「活性化」は、基準レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最高100%および100%を含む増加、または基準レベルと比較して10~100%の間の任意の増加、または基準レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、もしくは2倍~10倍の間もしくはそれ以上の任意の増加を意味する。
【0052】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「その(the)」は、文脈上特に明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書において記載されているおよび/または本開示を読めば当業者に明らかになるであろう種類の1つまたは複数の方法、および/または工程などを含む。
【0053】
本明細書において使用するとき、特定の成分に関して「本質的に含まない」とは、意図的に組成物に配合された特定の成分が存在しないおよび/または夾雑物としてしかもしくは微量にしか存在しないことを意味するように、本明細書において使用される。したがって、組成物の何らかの意図しない混入によって生じる特定の成分の総量は、0.01%をはるかに下回る。最も好ましいのは、標準的な分析方法で検出することができる特定の成分の量が存在しない組成物である。
【0054】
語句「有効量」、「処置的に有効な量」、または「十分な量」は、所望の結果をもたらすのに十分な薬物または剤の投与量を意味する。所望の結果は、腫瘍サイズの減少、がん細胞の成長速度の低下、転移の減少、腫瘍もしくは腫瘍免疫浸潤物におけるCD8+Tリンパ球の増加、腫瘍におけるCD45+、CD3+/CD20+/CD56+、CD68+、および/もしくはHLA-DR+の細胞の増加、腫瘍免疫浸潤物におけるCD3、CD8、PD1、FoxP3、グランザイムB、および/もしくはPD-L1の発現の増加、腫瘍免疫浸潤物におけるRORγTの発現の減少、全身循環もしくは末梢血におけるエフェクタCD4+、CD8+T、単球、および/もしくは骨髄樹状細胞の増加、対象の全身循環もしくは末梢血におけるB細胞、制御性T細胞、および/もしくは骨髄系由来サプレッサー細胞の減少、または上記のいずれかの組み合わせであってよい。
【0055】
II. チェックポイント阻害剤および併用処置
提供される方法、組成物、またはキットのうちのいずれか1つのいくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、低分子阻害物質である。提供される方法、組成物、またはキットのうちのいずれか1つのいくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント経路を阻害するポリペプチドである。提供される方法、組成物、またはキットのうちのいずれか1つのいくつかの態様では、阻害物質は、融合タンパク質である。提供される方法、組成物、またはキットのうちのいずれか1つのいくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体である。提供される方法、組成物、またはキットのうちのいずれか1つのいくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0056】
A. PD-1、PDL1、およびPDL2の阻害物質
PD-1は、T細胞が感染症または腫瘍に遭遇する腫瘍微小環境で作用することができる。活性化したT細胞は、PD-1をアップレギュレートし、そして、末梢組織でそれを発現し続ける。IFN-ガンマなどのサイトカインは、上皮細胞および腫瘍細胞におけるPDL1の発現を誘導する。PDL2は、マクロファージおよび樹状細胞上で発現される。PD-1の主な役割は、末梢におけるエフェクタT細胞の活性を制限し、そして、免疫応答中の組織への過剰の損傷を防ぐことである。開示の阻害物質は、PD-1および/またはPDL1の活性のうちの1つまたは複数の機能を遮断することができる。
【0057】
「PD-1」の別名は、CD279およびSLEB2を含む。「PDL1」の別名は、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hを含む。「PDL2」の別名は、B7-DC、Btdc、およびCD273を含む。いくつかの態様では、PD-1、PDL1、およびPDL2は、ヒトのPD-1、PDL1、およびPDL2である。
【0058】
いくつかの態様では、PD-1阻害物質は、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PD-1のリガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。別の態様では、PDL1阻害物質は、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL1の結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の態様では、PDL2阻害物質は、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL2の結合パートナーは、PD-1である。阻害物質は、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであってよい。例示的な抗体は、全て参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記載されている。本明細書において提供される方法および組成物で使用するための他のPD-1阻害物質は、全て参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0294898号、同第2014/022021号、および同第2011/0008369号に記載されているものなど、当該技術分野において公知である。
【0059】
いくつかの態様では、PD-1阻害物質は、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびピディリズマブからなる群より選択される。いくつかの態様では、PD-1阻害物質は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合しているPDL1またはPDL2の細胞外またはPD-1結合の部分を含むイムノアドヘシンである。いくつかの態様では、PDL1阻害物質は、AMP-224を含む。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)としても知られているニボルマブは、国際公開公報第2006/121168号に記載されている抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても知られているペンブロリズマブは、国際公開公報第2009/114335号に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011、hBAT、またはhBAT-1としても知られているピディリズマブは、国際公開公報第2009/101611号に記載されている抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224は、国際公開公報第2010/027827号および同第2011/066342号に記載されているPDL2-Fc融合可溶性受容体である。追加のPD-1阻害物質は、AMP-514としても知られているMEDI0680、およびREGN2810を含む。
【0060】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI4736としても知られているデュルバルマブ、MPDL3280Aとしても知られているアテゾリズマブ、MSB00010118Cとしても知られているアベルマブ、MDX-1105、BMS-936559、またはこれらの組み合わせなどのPDL1阻害物質である。特定の局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、rHIgM12B7などのPDL2阻害作質である。
【0061】
いくつかの態様では、本明細書において記載される抗体(抗PD-1抗体、抗PDLl抗体、または抗PDL2抗体など)は、ヒトまたはマウスの定常領域を更に含む。なおさらなる局面では、ヒト定常領域は、IgGl、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択される。より更に特定の局面では、ヒト定常領域は、IgGlである。より更なる局面では、マウスの定常領域は、IgGl、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群より選択される。より更に特定の局面では、抗体は、エフェクタ機能が低下しているかまたは最低限である。より更に特定の局面では、最低限のエフェクタ機能は、原核細胞における生成に起因する。より更に特定の局面では、最低限のエフェクタ機能は、「エフェクタレスFc変異」またはα-グリコシル化に起因する。
【0062】
いくつかの態様では、阻害物質は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、阻害物質は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3のドメインと、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3のドメインとを含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体と同じPD-1、PDL1、またはPDL2におけるエピトープへの結合について競合するおよび/または該エピトープに結合する。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列の同一性を有する。
【0063】
したがって、本明細書において使用される抗体は、α-グリコシル化を含むことができる。抗体のグリコシル化は、通常、N-結合型またはO-結合型のいずれかである。N-結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への糖鎖部分の結合を指す。アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖に糖鎖部分を酵素的に結合させるための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が生じる。O-結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへのN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの糖のうちの1つの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンを使用することもある。上述のトリペプチド配列(N-結合型グリコシル化部位の場合)のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによって、グリコシル化部位は抗体から便利に除去される。この変化は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはスレオニンの残基を別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン、または保存的置換)に置換することによって行うことができる。
【0064】
抗体またはその抗原結合断片は、当技術分野において公知の方法を用いて、例えば、既に記載した抗PDLl、抗PD-1、もしくは抗PDL2の抗体または発現に好適な形態の抗原結合断片のいずれかをコードしている核酸を含有する宿主細胞を、このような抗体または断片を生成するのに好適な条件下で培養し、そして、抗体または断片を回収することを含むプロセスによって作製することができる。
【0065】
B. CTLA-4、B7-1、およびB7-2
本明細書において提供される方法で標的とすることができる別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られている細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上にみられ、そして、抗原提示細胞の表面上のB7-1(CD80)またはB7-2(CD86)と結合したときに「オフ」のスイッチとして作用する。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上で発現し、そして、阻害性シグナルをT細胞に伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーの一員である。CTLA4は、T細胞共刺激性タンパク質であるCD28と類似しており、そして、両分子は抗原提示細胞上のB7-1およびB7-2に結合する。CTLA-4は、阻害性シグナルをT細胞に伝達するが、一方、CD28は、共刺激性シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4は制御性T細胞にもみられ、そして、その機能にとって重要であり得る。T細胞受容体およびCD28を通してT細胞が活性化されると、B7分子についての阻害性受容体であるCTLA-4の発現が増加する。開示の阻害物質は、CTLA-4、B7-1、および/またはB7-2の活性のうちの1つまたは複数の機能を遮断することができる。いくつかの態様では、阻害物質は、CTLA-4とB7-1との相互作用を遮断する。いくつかの態様では、阻害物質は、CTLA-4とB7-2との相互作用を遮断する。
【0066】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0067】
本方法で使用するのに好適な抗ヒトCTLA-4抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLのドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認識されている抗CTLA-4抗体を使用してもよい。例えば、米国特許第8,119,129号、国際公開公報第01/14424号、同第98/42752号;同第00/37504号(CP675,206、トレメリムマブとしても知られている;以前はチシリマブ)、米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al., 1998;に開示されている抗CTLA-4抗体を本明細書において開示される方法で使用することができる。前述の各刊行物の教示は、参照により本明細書に組み入れられる。また、これら当技術分野において認められている抗体のいずれかとCTLA-4への結合について競合する抗体を使用することもできる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、全て参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2001/014424号、同第2000/037504号、および米国特許第8,017,114号に記載されている。
【0068】
開示の方法および組成物においてチェックポイント阻害物質として有用な更なる抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX- 010、MDX- 101、およびYervoy(登録商標)としても知られている)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、国際公開公報第0 1/14424号を参照)。
【0069】
いくつかの態様では、阻害物質は、トレメリムマブまたはイピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、阻害物質は、トレメリムマブまたはイピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3のドメインと、トレメリムマブまたはイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3のドメインとを含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体と同じPD-1、B7-1、またはB7-2におけるエピトープへの結合について競合するおよび/または該エピトープに結合する。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列の同一性を有する。
【0070】
CTLA-4を調節するための他の分子は、全て参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5844905号、同第5885796号、国際公開公報第1995001994号および同第1998042752号に記載されているものなどの可溶性CTLA-4リガンドおよび受容体、ならびに参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8329867号に記載されているものなどのイムノアドヘシンを含む。
【0071】
III. 微生物調節物質
本開示の態様は、大腸炎を処置するための微生物調節物質組成物、特に、併用免疫チェックポイント阻害剤療法で処置されたことがあるまたは処置されるであろう対象のマイクロバイオームを調節するための方法に関する。
【0072】
また、本開示は、上記に記載されているような1つまたは複数の微生物培養物を含む薬学的組成物を提供する。したがって、細菌種は、乾燥形態であろうと、凍結乾燥形態であろうと、または胞子状の形態であろうと、生きている細菌としての用量形態で存在する。これは、好ましくは、好適な投与のために適応させることができる;例えば、経口処置の場合、潜在的に腸溶性コーティングを有する錠剤または散剤の形態である。
【0073】
特定の局面では、組成物は、経口投与用に製剤化される。経口投与は、チュアブル製剤、溶解製剤、カプセル化/コーティング製剤、多層ロゼンジ(活性成分および/または活性成分と賦形剤とを分離するため)、徐放/持続放出製剤、または当業者に公知の他の好適な製剤を使用して達成することができる。本明細書においては「錠剤」という語を使用するが、製剤は、一般にロゼンジ、ピル、カプセルなどの他の用語で呼ばれることもある様々な物理的形態をとることができる。
【0074】
本開示の組成物は、好ましくは経口投与用に製剤化されるが、しかしながら、皮下、筋肉内、皮内、経皮、眼内、腹腔内、粘膜、膣、直腸、および静脈内を含むがこれらに限定されるわけではない、他の投与経路を使用してもよい。
【0075】
本開示の組成物の所望の用量は、1日全体を通して適切な間隔で投与される複数の(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上の)サブ用量で提示されてもよい。
【0076】
一局面では、開示される組成物は、カプセルとして調製されてよい。カプセル(すなわち、担体)は、ゼラチン、セルロース、炭水化物などの様々な物質から形成される中空でほぼ円筒形のカプセルであってよい。
【0077】
別の局面では、開示される組成物は、座剤として調製されてもよい。坐剤は、細菌と1つまたは複数の担体、例えば、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、アセチル化モノグリセリド、カルナウバロウ、酢酸フタル酸セルロース、トウモロコシデンプン、フタル酸ジブチル、ドクサートナトリウム、ゼラチン、グリセリン、酸化鉄、カオリン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、メチルパラベン、薬学的グレーズ、ポビドン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、モノオレイン酸ソルビタン、ショ糖タルク、二酸化チタン、白ろう、および着色剤などとを含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
いくつかの局面では、開示される微生物調節物質組成物は、錠剤として調製されてもよい。錠剤は、細菌と、1つまたは複数の打錠剤(すなわち、担体)、例えば、第二リン酸カルシウム、ステアリン酸、クロスカルメロース、シリカ、セルロース、およびセルロースコーティングとを含み得る。錠剤は、直接圧縮プロセスを用いて形成することができるが、当業者であれば、様々な技術を用いて錠剤を形成できることを理解するであろう。
【0079】
他の局面では、開示される微生物調節物質組成物は、食品または飲料として、あるいは食品または飲料への添加物として形成されてもよく、この場合、適切な量の細菌を食品または飲料に添加して、その食品または飲料を担体にする。
【0080】
本開示の微生物調節物質組成物は、ラクチトール、イヌリン、またはこれらの組み合わせなど、当技術分野において公知の1つまたは複数のプレバイオティクスを更に含んでいてもよい。
【0081】
いくつかの態様では、微生物調節物質組成物は、対象の消化管に存在するクロストリジウム目の細菌の成長を刺激するのに有効な食品または栄養補助食品を更に含んでいてもよい。いくつかの態様では、栄養補助食品は、健康なヒトの腸内マイクロバイオームに関連する細菌によって生成される。
【0082】
IV. 追加の療法
開示の現在の方法および組成物は、当技術分野において公知のおよび/または本明細書において記載される1つまたは複数の追加の療法を含んでいてもよい。いくつかの態様では、追加の療法は、追加のがん処置を含む。このような処置の例は、本明細書において記載される。
【0083】
A. 免疫療法
いくつかの態様では、追加の療法は、更なるがん免疫療法を含む。がん免疫療法(時にイムノオンコロジーと呼ばれる、略してIO)とは、がんを処置するために免疫系を使用することである。免疫療法は、能動的、受動的、またはハイブリッド(能動的および受動的)に分類することができる。これらアプローチは、腫瘍関連抗原(TAA)として知られている、免疫系によって検出され得る分子を、がん細胞がその表面上に有することが多いという事実を利用したものであり;該分子は、多くの場合タンパク質または他の巨大分子(例えば、炭水化物)である。能動的免疫療法は、TAAを標的とすることによって免疫系に腫瘍細胞を攻撃させる。受動的免疫療法は、既存の抗腫瘍応答を増強するものであり、そして、モノクローナル抗体、リンパ球、およびサイトカインを使用することを含む。免疫療法は当技術分野において公知であり、そして、その一部を以下に記載する。
【0084】
2. 共刺激性分子の阻害
いくつかの態様では、免疫療法は、共刺激性分子の阻害物質を含む。いくつかの態様では、阻害物質は、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD28、ICOS、OX40(TNFRSF4)、4-1BB(CD137;TNFRSF9)、CD40L(CD40LG)、GITR(TNFRSF18)、およびこれらの組み合わせの阻害物質を含む。阻害物質は、阻害性抗体、ポリペプチド、化合物、および核酸を含む。
【0085】
3. 樹状細胞療法
樹状細胞療法は、樹状細胞に腫瘍抗原をリンパ球に提示させて、リンパ球を活性化し、リンパ球を刺激して抗原を提示する他の細胞を殺傷させることによって、抗腫瘍応答を引き起こす。樹状細胞は、哺乳類の免疫系における抗原提示細胞(APC)である。がん処置において、樹状細胞は、がん抗原のターゲティングを支援する。樹状細胞に基づく細胞性がん療法の一例は、シプロイセル-Tである。
【0086】
樹状細胞が腫瘍抗原を提示するように誘導する1つの方法は、自己腫瘍溶解物または短いペプチド(がん細胞におけるタンパク質抗原に対応するタンパク質の小片)をワクチン接種することによる。これらペプチドは、免疫および抗腫瘍の応答を高めるために、アジュバント(高度に免疫原性の物質)と組み合わせて与えられることが多い。他のアジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの、樹状細胞を誘引および/または活性化するタンパク質または他の化学物質を含む。
【0087】
また、腫瘍細胞にGM-CSFを発現させることによって樹状細胞をインビボで活性化させることもできる。これは、腫瘍細胞を遺伝的に操作してGM-CSFを生成させることによって、またはGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞に感染させることによって実現することができる。
【0088】
別のストラテジは、患者の血液から樹状細胞を取り出し、そして、体外で活性化させることである。樹状細胞は、単一の腫瘍特異的ペプチド/タンパク質であってもよく、腫瘍細胞溶解物(分解された腫瘍細胞の溶液)であってもよい、腫瘍抗原の存在下で活性化される。これら細胞を(任意のアジュバントと共に)注入し、そして、免疫応答を引き起こす。
【0089】
樹状細胞療法は、樹状細胞の表面上の受容体に結合する抗体を使用することを含む。抗原を抗体に加えてもよく、そして、抗原は、樹状細胞の成熟を誘導して、腫瘍に対する免疫を提供することができる。TLR3、TLR7、TLR8、またはCD40などの樹状細胞受容体が抗体の標的として使用されている。
【0090】
4. CAR-T細胞療法
キメラ抗原受容体(CAR、キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、または人工T細胞受容体としても知られている)は、がん細胞を標的とするために新たな特異性を免疫細胞と組み合わせた遺伝子操作受容体である。典型的には、これら受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に移植する。受容体は、異なる起源からの部分を融合させたものであるので、キメラと呼ばれる。CAR-T細胞療法とは、このような形質転換された細胞をがん療法のために使用する処置を指す。
【0091】
CAR-T細胞の設計の基本原理は、抗原結合機能とT細胞活性化機能とを兼ね備えた遺伝子組み換え受容体を必要とする。CAR-T細胞の一般的前提は、がん細胞上にみられるマーカーを標的とするT細胞を人工的に作製することである。科学者たちは、ヒトからT細胞を取り出し、遺伝的に変化させ、そして、がん細胞を攻撃させるために患者に戻すことができる。T細胞がCAR-T細胞になるように遺伝子操作されると、「生きた薬(living drug)」として機能する。CAR-T細胞は、細胞外リガンド認識ドメインと、後にT細胞を活性化させる細胞内シグナル分子との間を連結させる。細胞外リガンド認識ドメインは、通常、一本鎖可変断片(scFv)である。CAR-T細胞療法の安全性の重要な局面は、いかにして正常な細胞ではなく、がん性腫瘍細胞だけを確実に標的にするかということである。CAR-T細胞の特異性は、標的となる分子の選択によって決定される。
【0092】
例示的なCAR-T療法は、チサゲンレクロイセル(Kymriah)およびアキシカブタゲンシロロイセル(Yescarta)を含む。いくつかの態様では、CAR-T療法は、CD19を標的とする。
【0093】
5. サイトカイン療法
サイトカインは、腫瘍内に存在する細胞の多くの種類によって生成されるタンパク質である。サイトカインは、免疫応答を調節することができる。腫瘍は多くの場合、腫瘍を成長させおよび免疫応答を低減するために、サイトカインを使用する。これら免疫調節効果により、免疫応答を引き起こすための薬物としてサイトカインを使用することが可能になる。2つの一般的に使用されるサイトカインは、インターフェロンおよびインターロイキンである。
【0094】
インターフェロンは、免疫系によって生成される。インターフェロンは、通常抗ウイルス応答に関与しているが、がんに対する用途も有する。インターフェロンは、タイプI(IFNαおよびIFNβ)、タイプII(IFNγ)、およびタイプIII(IFNλ)の3つのグループに含まれる。
【0095】
インターロイキンは、数々の免疫系効果を有する。IL-2が、例示的なインターロイキンサイトカイン療法である。
【0096】
6. 養子T細胞療法
養子T細胞療法は、T細胞の移入(養子細胞移入)による受動免疫の一種である。T細胞は、血液および組織にみられ、通常、外来病原体をみつけたときに活性化する。具体的には、T細胞は、その表面抗原上に外来タンパク質の一部をディスプレイしている細胞にT細胞の表面受容体が遭遇したときに、活性化する。それらは、感染細胞であってもよく、抗原提示細胞(APC)であってもよい。T細胞は、正常組織および腫瘍組織にみられ、腫瘍組織では、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られている。T細胞は、腫瘍抗原を提示する樹状細胞などのAPCの存在によって活性化される。これら細胞は腫瘍を攻撃することができるが、腫瘍内の環境は高度に免疫抑制されているので、免疫が介在する腫瘍死が阻止される。[60]
【0097】
腫瘍を標的とするT細胞を生成および入手する複数の方法が開発されている。腫瘍抗原に特異的なT細胞は、腫瘍サンプルから取り出したり(TIL)、血液から濾過したりすることができる。その後の活性化および培養はエクスビボで行われ、結果物が再注入される。活性化は、遺伝子治療を通して、またはT細胞を腫瘍抗原に曝露することによって、行うことができる。
【0098】
B. 腫瘍溶解性ウイルス
いくつかの態様では、追加の療法は、腫瘍溶解性ウイルスを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に優先的に感染し、そして、死滅させるウイルスである。感染したがん細胞が腫瘍溶解によって破壊されると、がん細胞は、新たな感染性ウイルス粒子、すなわちビリオンを放出して、残りの腫瘍の破壊を助ける。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞を直接破壊するだけでなく、長期的な免疫療法のために宿主の抗腫瘍免疫応答を刺激すると考えられる。
【0099】
C. 多糖類
いくつかの態様では、追加の療法は、多糖類を含む。キノコ類、主に多糖類でみられる特定の化合物は、免疫系をアップレギュレートすることができ、そして、抗がん特性を有し得る。例えば、レンチナンなどのベータグルカンは、マクロファージ、NK細胞、T細胞、および免疫系サイトカインを刺激することが実験室試験で示されており、そして、免疫学的アジュバントとして臨床試験において調べられている。
【0100】
D. ネオアンチゲン
いくつかの態様では、追加の療法は、ネオアンチゲンの投与を含む。多くの腫瘍は、変異を発現する。これら変異により、T細胞免疫療法において使用するための新たな標的とすることが可能な抗原(ネオアンチゲン)が生じる可能性がある。がん病巣におけるCD8+T細胞の存在は、RNAシーケンシングデータを用いて同定したとき、変異負荷の高い腫瘍でより高い。ナチュラルキラー細胞およびT細胞の細胞溶解活性に関連する転写物のレベルは、多くのヒト腫瘍において変異荷重と正の相関がある。
【0101】
E. 化学療法
いくつかの態様では、追加の療法は、化学療法を含む。化学療法剤の好適なクラスは、(a)アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、クロロゾシン、ストレプトゾシン)、ならびにトリアジン(例えば、ジカルバジン)、(b)代謝拮抗物質、例えば葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、アザウリジン)、ならびにプリン類似体および関連材料(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン)、(c)天然物、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、およびマイトキサントロン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、および生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン-α)、ならびに(d)種々の剤、例えば、白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシウレア)、メチルヒジアジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質抑制物質(例えば、タキソールおよびミトタン)を含む。いくつかの態様では、シスプラチンは、特に好適な化学療法剤である。
【0102】
シスプラチンは、例えば、転移性の精巣もしくは卵巣の癌、進行膀胱がん、頭頸部がん、子宮頸がん、肺がん、または他の腫瘍などのがんを処置するために広く使用されている。シスプラチンは、経口では吸収されないので、例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、または腹腔内の注射などの他の経路を介して送達しなければならない。シスプラチンは、単独でまたは他の剤と組み合わせて使用することができ、特定の態様では、3週間毎に5日間にわたって約15mg/m2~約20mg/m2を合計3コース行うことを含む、臨床用途で使用される効果的な用量が企図される。いくつかの態様では、処置用ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドに機能的に連結されたEgr-1プロモータを含む構築物と共に細胞および/または対象に送達されるシスプラチンの量は、シスプラチンを単独で使用したときに送達される量よりも少ない。
【0103】
他の好適な化学療法剤は、微小管阻害作用物質、例えば、パクリタキセル(「タキソール」)および塩酸ドキソルビシン(「ドキソルビシン」)を含む。アデノウイルスベクターを介して送達されるEgr-1プロモータ/TNFα構築物とドキソルビシンとの組み合わせは、化学療法および/またはTNF-αに対する抵抗性を克服するのに有効であると判断されており、これは、構築物およびドキソルビシンの併用処置が、ドキソルビシンおよびTNF-αの両方に対する抵抗性を克服することを示唆している。
【0104】
ドキソルビシンは吸収率が低いので、静脈内投与が好ましい。特定の態様では、成人に適切な静脈内用量は、約21日間隔で約60mg/m2~約75mg/m2、または約3週間~約4週間の間隔で繰り返す2もしくは3連続日のそれぞれに約25mg/m2~約30mg/m2、または週1回約20mg/m2を含む。前化学療法もしくは新生物骨髄浸潤によって引き起こされる前骨髄抑制が存在する場合、またはこの薬物を他の骨髄造血抑制薬と併用する場合、高齢患者では最低用量を使用しなければならない。
【0105】
ナイトロジェンマスタードは、開示の方法において有用な別の好適な化学療法剤である。ナイトロジェンマスタードは、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、および/またはイホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、およびクロラムブシルを含み得るが、これらに限定されるわけではない。シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)は、Mead Johnsonから入手可能であり、そして、NEOSTAR(登録商標)は、Adriaから入手可能であり)、別の好適な化学療法剤である。成人に好適な経口用量は、例えば、約1mg/kg/日~約5mg/kg/日を含み、静脈内用量は、例えば、最初に約2日~約5日の期間にわたって分割用量で約40mg/kg~約50mg/kg、または約7日~約10日毎に約10mg/kg~約15mg/kg、または週2回約3mg/kg~約5mg/kg、または約1.5mg/kg/日~約3mg/kg/日を含む。消化器への悪影響があるので、静脈内経路が好ましい。また、薬物は、筋肉内に、浸潤によって、または体腔内に投与されることもある。
【0106】
追加の好適な化学療法剤は、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5-フルオロウラシル(フルオロウラシル;5-FU)、およびフロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)などのピリミジン類似体を含む。5-FUは、約7.5~約1000mg/m2のいかなる投与量で対象に投与してもよい。更に、5-FUの投与スケジュールは、様々な期間、例えば6週間以下であってもよく、または本開示が関連する技術分野の当業者によって決定される通りであってもよい。
【0107】
別の好適な化学療法剤であるゲムシタビン二リン酸(GEMZAR(登録商標)、Eli Lilly & Co.、「ゲムシタビン」)は、進行および転移性の膵臓がんの処置に推奨されているので、これらがんについては本開示でも同様に有用であろう。
【0108】
患者に送達される化学療法剤の量は変動し得る。好適な一態様では、構築物と共に化学療法を施す場合、化学療法剤は、宿主におけるがんを抑止または退縮させるのに有効な量で投与され得る。他の態様では、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法的に有効な用量よりも2~10,000倍少ないいかなる量で投与されてもよい。例えば、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法的有効用量よりも約20倍少ない、約500倍少ない、または更には約5000倍少ない量で投与され得る。開示の化学療法薬は、構築物と組み合わせた所望の処置活性について、また、有効な投与量を決定するためにインビボで試験することができる。例えば、ヒトで試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むがこれらに限定されるわけではない好適な動物モデル系で、このような化合物を試験することができる。また、実施例に記載されているように、インビトロ試験を使用して、好適な組み合わせおよび投与量を決定することができる。
【0109】
F. 放射線療法
いくつかの態様では、追加の療法または前療法は、電離放射線などの放射線を含む。本明細書において使用するとき、「電離放射線」は、イオン化(電子の獲得または損失)を起こすのに十分なエネルギーを有するまたは十分なエネルギーを、核相互作用を介して生み出すことができる粒子または光子を含む放射線を意味する。例示的かつ好ましい電離放射線は、X線である。標的の組織または細胞にX線を照射するための手段は、当技術分野において周知である。
【0110】
いくつかの態様では、電離放射線の量は、20グレイ(Gy)超であり、そして、1回で施される。いくつかの態様では、電離放射線の量は、18Gyであり、3回で施される。いくつかの態様では、電離放射線の量は、少なくとも、多くとも、または正確に2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または40Gy(またはこの中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの態様では、電離放射線は、少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回(またはこの中の任意の導出可能な範囲)で施される。1回超施されるとき、約1、4、8、12、もしくは24時間、または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8日、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、もしくは16週間あけて、またはこの中の任意の導出可能な範囲で施してよい。
【0111】
いくつかの態様では、IRの量は、IRの総線量として提示されてもよく、これは、その後、分割線量で施される。例えば、いくつかの態様では、総線量は50Gyであり、5Gyずつ10回の分割線量で施される。いくつかの態様では、総線量は50~90Gyであり、2~3Gyずつ20~60回の分割線量で施される。いくつかの態様では、IRの総線量は、少なくとも、多くとも、または約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、または150(またはこの中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの態様では、総線量は、少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、または50Gy(またはこの中の任意の導出可能な範囲の分割線量で施される。いくつかの態様では、少なくとも、多くとも、または正確に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100回の分割線量(またはこの中の任意の導出可能な範囲)で施される。いくつかの態様では、1日あたり、少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の分割線量で施される。いくつかの態様では、1週間あたり、少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30回の分割線量(またはこの中の任意の導出可能な範囲)で施される。
【0112】
G. 手術
がんを有するヒトのうちのおよそ60%が何らかの種類の手術を受けるが、その中には予防、診断、または病期分類、根治、および緩和のための手術が含まれる。根治手術は、がん組織の全部または一部を物理的に除去、摘出、および/または破壊する切除を含み、そして、本態様の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法と併用することができる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。腫瘍切除に加えて、手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡制御下手術(モース氏手術)を含む。
【0113】
がんの細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を摘出すると、体内に空洞が形成されることがある。処置は、灌流、直接注射、または追加の抗がん療法を領域に局所的に適用することによって達成される。このような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎、または1、2、3、4、および5週間毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月毎に繰り返してよい。これら療法も同様に様々な投与量であってよい。
【0114】
H. 他の剤
処置の処置有効性を改善するために、他の剤を本態様の特定の局面と組み合わせて使用してもよいことが企図される。これら追加の剤は、細胞表面受容体およびGAPジャンクションのアップレギュレーションに影響を与える剤、細胞分裂阻害および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を高める剤、または他の生物学的剤を含む。GAPジャンクションの数を増やすことによって細胞間シグナルを増加させると、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果が高まるであろう。他の態様では、処置の抗過剰増殖有効性を改善するために、細胞分裂阻害または分化剤を本態様の特定の局面と組み合わせて使用してもよい。細胞接着の阻害剤は、本態様の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。更に、処置有効性を改善するために、抗体c225などのアポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を高める他の剤を、本態様の特定の局面と組み合わせて使用してもよいことが企図される。
【0115】
V. 処置用組成物の投与
開示の方法は、処置剤の組み合わせの投与および/または糞便物質などの処置剤の投与、ならびに例えばステロイド療法または抗インテグリン療法などの処置レジメンを含む。療法は、当技術分野において公知である任意の好適な方法で施してよい。例えば、療法は、逐次(異なる時間に)または同時に(同じ時間に)施してよい。いくつかの態様では、療法は、別の組成物で施される。いくつかの態様では、療法は、同じ組成物で施される。
【0116】
療法の様々な組み合わせ、例えば、「A」と命名されたある療法および「B」と命名された別の療法を使用してよい。
【0117】
本開示の療法、例えば健常対象からの糞便物質は、同じ投与経路で投与してもよく、または異なる投与経路で投与してもよい。いくつかの態様では、この療法は、結腸内、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植によって、吸入によって、髄腔内、心室内、または鼻腔内に投与される。いくつかの態様では、微生物調節物質は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植によって、吸入によって、髄腔内、心室内、または鼻腔内に投与される。
【0118】
例えば、ヒトに投与される態様の微生物調節物質組成物の細菌の少なくとも1つの単離もしくは精製された集団のそれぞれ、または該細菌の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15個の単離もしくは精製された集団のそれぞれの処置的に有効なまたは十分な量は、少なくとも約1×10e3コロニー形成単位(CFU)の細菌、または少なくとも約1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015CFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの態様では、単一用量は、少なくとも、多くとも、または正確に1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、または1×1015を超えるCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の指定の細菌である、細菌(本明細書において記載される特定の細菌または種、属、もしくは科など)の量を含有する。いくつかの態様では、単一用量は、少なくとも、多くとも、または正確に1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、または1×1015を超えるCFU(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の全細菌を含有する。特定の態様では、細菌は、胞子の形態でまたは胞子形成した細菌として提供される。特定の態様では、細菌、例えば、各種、亜種、または株の各単離または精製された集団の胞子の濃度は、組成物1グラムあたりまたは投与される用量あたり少なくとも、多くとも、または正確に1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015個、または1×1015個を超える(またはこの中の任意の導出可能な範囲)生菌の胞子である。いくつかの態様では、組成物または方法は、異なる細菌種、異なる細菌属、または異なる細菌科のうちの少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、または50(またはこの中の任意の導出可能な範囲)を投与することを含む。
【0119】
いくつかの態様では、ヒトに投与される態様の微生物調節物質組成物の細菌の少なくとも1つの単離もしくは精製された集団のそれぞれ、または該細菌の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15個の単離もしくは精製された集団のそれぞれの処置的に有効なまたは十分な量は、少なくとも約1×103個の細胞の細菌、または少なくとも約1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015個の細胞(またはこの中の任意の導出可能な範囲)である。いくつかの態様では、単一用量は、少なくとも、多くとも、または正確に1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015個、または1×1015個を超える細胞(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の指定の細菌である、細菌(本明細書において記載される特定の細菌または種、属、もしくは科など)の量を含有する。いくつかの態様では、単一用量は、少なくとも、多くとも、または正確に1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015個、または1×1015個を超える細胞(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の全細菌を含有する。特定の態様では、細菌は、胞子の形態でまたは胞子形成した細菌として提供される。特定の態様では、細菌、例えば、各種、亜種、または株の各単離または精製された集団の胞子の濃度は、組成物1グラムあたりまたは投与される用量あたり少なくとも、多くとも、または正確に1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015個、または1×1015個を超える(またはこの中の任意の導出可能な範囲)生菌の胞子である。いくつかの態様では、組成物または方法は、異なる細菌種、異なる細菌属、または異なる細菌科のうちの少なくとも、多くとも、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、または50(またはこの中の任意の導出可能な範囲)を投与することを含む。
【0120】
処置は、は様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、所定の量の処置組成物を含有すると定義される。投与される量、ならびに具体的な経路および製剤は、臨床分野における当業者の判断の技能の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与する必要はなく、一定期間にわたる連続注入を含み得る。いくつかの態様では、単位用量は、単回投与可能な用量を含む。
【0121】
投与される量は、処置の回数および単位用量の両方に従って、所望の処置効果に依存する。有効用量は、特定の効果を達成するために必要な量を指すと理解される。特定の態様における実施では、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量が、これら作用物質の保護能力に影響を与え得ることが企図される。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000のμg/kg、mg/kg、μg/日、もしくはmg/日、またはこの中の任意の導出可能な範囲の用量を含むことが企図される。更に、このような用量は、1日の間、および/または複数の日、週、もしくは月に、複数回投与することができる。
【0122】
いくつかの態様では、ヒトに投与される治療用組成物の処置的に有効なまたは十分な量は、1回の投与であろうと複数回の投与であろうと、約0.01~約50mg/kg(患者の体重)の範囲になる。いくつかの態様では、使用される治療剤は、例えば、毎日投与される約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、または約0.01~約1mg/kgである。いくつかの態様では、治療剤は、15mg/kgで投与される。しかし、他の投与レジメンが有用である場合もある。一態様では、本明細書において記載される治療剤は、21日サイクルの1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量で対象に投与される。用量は、単一用量として、または注入など複数用量(例えば、2回量または3回量)として投与され得る。この療法の進行は、従来の技術によって容易にモニタリングされる。
【0123】
特定の態様では、薬学的組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供することができるものである。別の態様では、有効用量は、約4μM~100μM;または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の血中レベルを提供する。他の態様では、用量は、処置剤を対象に投与した結果として剤の以下の血中レベルを提供することができる:約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μM、またはこの中の任意の導出可能な範囲。特定の態様では、対象に投与された処置剤は、体内で代謝されて代謝処置剤になるが、その場合、血中レベルがその剤の量を指すことができる。あるいは、処置剤が対象によって代謝されない範囲では、本明細書において論じられる血中レベルは、未代謝処置剤を指す場合もある。
【0124】
また、処置組成物の正確な量は、実施者の判断に依存し、かつ、各個体に特有である。用量に影響を与える要因は、患者の身体的および臨床的な状態、投与経路、意図する処置目的(症状の緩和対治癒)、ならびに特定の処置物質または対象が受けている可能性のある他の療法の効力、安定性、および毒性を含む。
【0125】
当業者であれば、μg/kgまたはmg/kg(体重)の投与量単位を比較可能な濃度単位のμg/mLまたはmM(血中レベル)、例えば4μM~100μMに変換し、表すことができることを理解し、そして、気付くであろう。また、取り込みが種および器官/組織依存性であることも理解される。取り込みおよび濃度測定値に関して適用可能な換算係数および生理学的仮説は周知であり、それによって、当業者は、ある濃度測定値を別の濃度測定値に変換し、そして、本明細書において記載されている用量、有効性、および結果に関して合理的な比較を行い、そして、結論を出すことができるようになる。
【0126】
VI. 処置方法
治療用組成物、例えば健常対象由来の糞便物質を含む組成物を免疫チェックポイント療法を施されたことがあるまたは現在施されている対象に投与することによる、大腸炎を処置するまたは進行を遅らせるための方法が、本明細書において提供される。
【0127】
いくつかの態様では、処置の結果、処置を中止した後も個体において持続的な応答が得られる。いくつかの態様では、個体は、1または複数の抗がん剤療法に対して抵抗性のある(抵抗性であることが実証されている)がんまたは大腸炎を有する。いくつかの態様では、療法に対する抵抗性は、難治性の大腸炎を含む。
【0128】
用語「処置」または「処置する」は、以下を含む、哺乳類における疾患の任意の処置を意味する:(i)疾患を予防すること、すなわち、疾患の誘導前に保護組成物を投与することによって疾患の臨床症状を発症させないこと、(ii)疾患を抑制すること、すなわち、誘導事象の後であるが疾患の臨床的な出現もしくは再出現の前に保護組成物を投与することによって疾患の臨床症状を発症させないこと;(iii)疾患を阻害すること、すなわち、最初の出現後に保護組成物を投与することによって臨床症状の発現を抑止すること、および/または(iv)疾患を軽減すること、すなわち、最初の出現後に保護組成物を投与することによって臨床症状を後退させること。いくつかの態様では、処置は、疾患の予防を除外する場合もある。
【0129】
特定の局面では、特定の腸内マイクロバイオームの組成を有すると判定された患者におけるがんまたはがん転移を検出するために、更なるがんもしくは転移の検査もしくはスクリーニング、または造影コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放射断層撮影法-CT(PET-CT)、および磁気共鳴画像法(MRI)などの更なる診断を実施してもよい。
【0130】
VII. マイクロバイオームの組成を決定する方法
いくつかの態様では、方法は、マイクロバイオームプロファイルを入手することに関する。いくつかの態様では、マイクロバイオームプロファイルを入手することは、i)対象(例えば、ヒト対象)から得られるサンプルを入手する工程、ii)サンプルから1つまたは複数の細菌種を単離する工程、iii)少なくとも1つの細菌種から1つまたは複数の核酸を単離する工程、iv)単離された核酸をシーケンシングする工程、およびv)シーケンシングされた核酸を基準核酸配列と比較する工程を含む、またはこれら工程をこの順に含む。ジェノタイピングを必要とする方法を実施する場合、いずれのジェノタイピングアッセイを使用してもよい。例えば、これは、16Sもしくは23Sのリボソームサブユニットのシーケンシングによって、またはメタトランスクリプトミクスに関連したメタゲノミクスショットガンDNAシーケンシングによって行うことができる。
【0131】
マイクロバイオームの組成を決定する方法は、シーケンシング、次世代シーケンシング、ウェスターブロッティング、比較ゲノムハイブリダイゼーション、PCR、ELISAなどの1つまたは複数の微生物学的方法を含み得る。
【0132】
VIII. キット
本開示の特定の局面は、大腸炎の検出、診断、もしくは処置、ならびに/または微生物の検出および定性的もしくは定量的な特性評価などの本開示の方法を実施するためのキットも包含する。このようなキットは、容易に入手可能な材料および試薬から調製することができる。例えば、このようなキットは、以下の材料のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る:酵素、反応チューブ、バッファ、洗剤、プライマー、プローブ、抗体。好ましい態様では、これらキットにより、実施者は、血液、涙、精液、唾液、尿、組織、血清、糞便、痰、脳脊髄液、および細胞溶解物からの上清中の新生細胞のサンプルを入手することができる。別の好ましい態様では、これらキットは、RNA抽出、RT-PCR、およびゲル電気泳動を実施するために必要な装置を含む。また、アッセイを実施するための説明書がキットに含まれていてもよい。
【0133】
特定の局面では、これらキットは、微生物を評価または同定するための複数の剤を含んでいてもよく、該キットは容器に収容されている。キットは、配列を評価するためにキットを使用するための説明書、予後判定を行うために配列データを変換および/または分析するための手段を更に含んでいてもよい。バイオマーカーの発現を測定するためのキット中の剤は、qRT-PCR用の複数のPCRプローブおよび/もしくはプライマー、ならびに/またはバイオマーカーの発現を評価するための複数の抗体もしくはその断片を含んでいてもよい。別の態様では、バイオマーカーの発現を測定するためのキット中の剤は、本発明のバイオマーカーのmRNAに対して相補的な数々のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。また、発現データを発現値に変換するため、および発現値を分析して生存または予後を予測するスコアを作成するための可能な手段が含まれていてもよい。
【0134】
キットは、ラベル付きの容器を含んでいてもよい。好適な容器は、例えば、瓶、バイアル、および試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、例えば上述したような予後判定または非予後判定の用途に有用なプローブを含む組成物を保持することができる。容器上のラベルは、組成物が特定の予後判定または非予後判定の用途に使用されることを示していてよく、そして、例えば上記のものなどのインビボまたはインビトロのいずれかで使用するため指示も示していてよい。キットは、上述の容器と、バッファ、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、および使用説明書を含む添付文書を含む商業的およびユーザーの観点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器とを含み得る。
【0135】
更なるキットの態様は、本開示の処置組成物を含むキットに関する。キットは、本開示の処置方法において有用であり得、そして、使用説明書を含み得る。
【実施例
【0136】
IX. 実施例
本発明の好ましい態様を説明するために以下の実施例が含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施においてうまく機能することが本発明者によって見出された技術を表し、したがって、その実施のための好ましいモードを構成すると考えることができることを、当業者は理解すべきである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の態様に多くの変更を加え、そして、それでもなお同様のまたは類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0137】
実施例1-難治性免疫チェックポイント阻害剤関連大腸炎に対する糞便微生物叢の移植
本発明者らは、腸内マイクロバイオームが再構成され、そして、結腸粘膜内の制御性T細胞の比率が相対的に増加した、糞便微生物叢移植で成功裏に処置された免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連大腸炎の最初の症例シリーズについて報告する。これら予備的データは、腸内マイクロバイオームの調節によってICI関連大腸炎を消失させることができるという証拠を提供する。
【0138】
本発明者らは、難治性ICI関連大腸炎を有する患者における健常ドナーからのFMTによる処置の影響を判定しようとし、2017年6月から2018年1月にかけて2名の患者をこの処置プロトコルに登録した(CIND17-0036、CIND17-0058)。両患者の臨床経過については、図3~5で更に詳述する。第1の患者は、併用CTLA-4およびPD-1遮断薬の治験(NCT1928394)に登録していた、標準的な化学療法に対して不応性の高悪性度転移性尿路上皮癌を有する50歳の女性であった。処置開始の2週間後、CTCAEグレード≧2の下痢/大腸炎で入院した。一般的な消化器病原体に対するPCRベースのマルチプレックスアッセイを含む感染症精密検査は陰性であり、そして、大腸内視鏡検査は、内視鏡的に潰瘍性大腸炎に似た重篤な大腸炎を示した(図1Aならびに図5Aおよび6A)。全身にコルチコステロイドを投与し、その後、2用量の抗TNF-α作用物質(インフリキシマブ)および1用量の抗インテグリン療法(ベドリズマブを)を投与したが、症状は持続した。次いで、大腸内視鏡検査を介して単一用量のFMT(50gのドナー大便)を投与した。登録された第2の患者は、臨床試験(NCT02113657)の状況で2用量のイピリムマブを投与された、化学療法およびホルモン療法に対して不応性の前立腺がんを有する78歳の男性であった。処置開始の3ヶ月間後、発熱およびCTCAEグレード≧2の下痢/大腸炎で入院した。感染症の病因は排除され、そして、大腸内視鏡検査によって、ICI関連大腸炎の診断が確認されたが、結腸クローン病様の症状を呈していた(図1D、5B、および6B)。全身へのコルチコステロイド、インフリキシマブ、およびベドリズマブにもかかわらず、症状は持続した。2用量のFMTを投与した。3つのFMT生成物の源は全て、3つの異なる時点で回収された1人の健常非血縁ドナーであった。
【0139】
どちらの患者も、FMTによる処置後に臨床症状が完全に消失し、最終的には、更に出血することなく、毎日正常な固形の便通に戻った(図5)。第1の患者では、2週間以内に徐々に完全に消失し、そして、7日間でステロイドを中止した(図5A)が、第2の患者は、消化器症状は部分的に改善したものの、経過観察の大腸内視鏡検査では潰瘍が残存しており、そして、腹痛が再発した。2回目のFMT処置後に完全消失を経験した(図5B)。
【0140】
内視鏡検査による評価により、ICI関連大腸炎の診断時付近において両患者で著しい粘膜炎症および潰瘍が示され、全身コルチコステロイド、抗TNF、および抗インテグリン作用物質後も実質的に改善しなかった。FMT後、内視鏡検査による評価において顕著な改善が明らかであり、炎症が減少し、そして、潰瘍が消失した(図1A、1D、および6)。第1の患者では、結腸粘膜における免疫浸潤を分析したところ、FMT前には高密度の炎症浸潤が存在し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球の密度が高く、そして、CD4+FoxP3+T細胞の密度が低いことが示され(図1B、1C、7A、および8A)、これは、自己免疫性大腸炎の報告から得られた知見と一致している。FMT後、CD8+T細胞の密度は実質的に低下し、CD4+FoxP3+が同時に増加した(図1B、1C、7A、および8A)が、これは、FMTがICI関連毒性を消失させることができる機序の可能性を示唆する。第2の患者では、分析した全てのT細胞サブタイプの密度がFMT後に低下したが、CD4+T細胞集団はCD8+T細胞集団に比べて比較的温存され、CD4+細胞およびFoxP3+細胞にはここでも持続性が見られた(図1E、1F、7B、8B、および9)。
【0141】
内視鏡検査による評価により、ICI関連大腸炎の診断時付近において両患者で著しい粘膜炎症および潰瘍が示され、全身コルチコステロイド、抗TNF、および抗インテグリン作用物質後も実質的に改善しなかった。FMT後、内視鏡検査による評価において顕著な改善が明らかであり、炎症が減少し、そして、潰瘍が消失した(図1A、1D、および6)。第1の患者では、結腸粘膜における免疫浸潤を分析したところ、FMT前には高密度の炎症浸潤が存在し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球の密度が高く、そして、CD4+FoxP3+T細胞の密度が低いことが示され(図1B、1C、7A、および8A)、これは、自己免疫性大腸炎の報告から得られた知見と一致している。FMT後、CD8+T細胞の密度は実質的に低下し、CD4+FoxP3+が同時に増加した(図1B、1C、7A、および8A)が、これは、FMTがICI関連毒性を消失させることができる機序の可能性を示唆する。第2の患者では、分析した全てのT細胞サブタイプの密度がFMT後に低下したが、CD4+T細胞集団はCD8+T細胞集団に比べて比較的温存され、CD4+細胞およびFoxP3+細胞にはここでも持続性が見られた(図1E、1F、7B、8B、および9)。
【0142】
次に、本発明者らは、これら患者において大腸炎時に存在していた細菌分類群に加えて、FMTによる処置後の腸内マイクロバイオームの組成変化を評価した。大腸炎時に存在していた細菌分類群は、2人の患者の間でかなり異なっており、第1の患者ではクロストリジウム綱(Clostridia)が優勢であり、そして、それぞれバクテロイデス綱(Bacteroidia)およびウェルコミクロビウム綱(Verrucomicrobiae)などのICI関連大腸炎およびIBDに対して保護的であることが示されている細菌が特に不在であり、そして、第2の患者ではガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)(主にエシェリキア属)が優勢であるが、これは腸の状態が乱れているときに一般的にみられる。第1の患者におけるFMTの直後、ドナーFMT由来の細菌が腸管に有効に定着しており、配列のほぼ75%がFMTドナーのマイクロバイオームに一義的に起因しており、そして、アッケルマンシア属の存在量が顕著に多かった(図2D及び2E)。FMT後7週目までに、アッケルマンシア属は患者のマイクロバイオームのごく一部を占めるにすぎなくなり、そして、大部分が患者由来の起源であるクロストリジウム綱が更に拡大していた(図2D、左および2E、左)。注目すべきことに、この患者は、FMT後にビフィドバクテリウム属の拡大も示し、これは、最近マウスモデルでICI関連毒性を抑止することが報告されている(図2D、左および2E、左)。第2の患者では、FMT後にブラウチア属およびビフィドバクテリウム属の種の存在量が顕著に増加し、これら種は腸の炎症の低減に関連していた(図2D、右および2E、右)。これに加えて、1回目のFMT後に、病原性である可能性があるエシェリキア属の存在量が減少し、そして、有益である可能性があるバクテロイデス属が増加していた(図2D、右および2E、右)。2回目のFMT後には、エシェリキア属の存在量が増加し、そして、バクテロイデス属は最終的に減少したが、消化器症状は着実に改善し続けた(図2D、右および2E、右)。
【0143】
まとめると、これら症例は、FMTを介した腸内マイクロバイオームの調節が、難治性ICI関連大腸炎の顕著かつ迅速な改善に関連している可能性があることを示す刺激的かつ新規の証拠を提供し、潜在的な機序についての早期の知識をもたす。
【0144】
A. 方法
ドナー選択大便バンクは、University of Texas School of Public Healthにおける施設内審査委員会HSC-SPH-15-0991によってカバーされている。適切なスクリーニング後、1人の匿名のドナーからこの研究で使用した糞便大便が提供された(表1および2)。
【0145】
1. ドナー大便の調製
ドナーからの個々の大便サンプル≧150gを、排泄の4時間以内に処理し、総体積が1,500mLになるように0.85% NaCl(1:10)で希釈し、StoomacherR 80 Master(Seward Laboratory System)で滅菌した袋において混合し、次いで、生物学的安全キャビネット内の漏斗(いずれも滅菌済み)において、湿らせた5層の滅菌ガーゼで濾過した。冷凍したアリコートを-80℃で保管し、調製の6ヶ月以内に使用した。FMT当日、250mLの冷凍生成物を溶かし、50mLの滅菌済みシリンジ5本にパックした。再構成後、生成物を4℃で維持し、4時間以内に使用した。
【0146】
2. FMTの送達
標準的な手順として、一晩かけて結腸洗浄予備レジメンを行った後、MD Andersonの内視鏡ユニットでレシピエントに対して大腸内視鏡検査を実施した。スコープが盲腸に到達したら、50g/250mLの液体ドナー大便を、予めロードしておいたシリンジによってスコープの水チャネルを通じて盲腸に送達した。レシピエントは、手技後1時間ベッドで休息した後、内視鏡ユニットから退出した。患者は、FMT手技後、食事を含む通常の日常生活を再開するように指示された。
【0147】
3. 患者の臨床歴
患者1は、標準的な化学療法レジメンに対して不応性の肺および脊椎に転移した高悪性度の転移性尿路上皮癌を有する50歳の女性であった。この患者は、併用イピリムマブおよびニボルマブ遮断薬の治験(NCT1928394)に登録されていた。処置開始の2週間後、CTCAE(Common terminology criteria for adverse events)グレード≧2の下痢/大腸炎(血性下痢)で入院し、臨床的に診断され、そして、感染症の病因を排除した後に内視鏡検査で確認された。大腸炎の標準的療法にもかかわらず、症状は持続していた。この標準的療法は、長期入院中に、2用量の抗TNF-α作用物質(インフリキシマブ)を伴う、3カ月間の継続中の全身コルチコステロイドを含んでいた。その後の内視鏡検査で得られた組織学的所見において、サイトメガロウイルスの免疫組織化学的検査が陽性であるようにみえ;バルシクロビルによる治療に成功し、経過観察の内視鏡生検では消失していた。第三選択療法として、1用量の抗インテグリン抗体(ベドリズマブ)を投与したが、更なる改善はみられなかった。救済処置(CIND17-0036、IRB PA18-0372)として、大腸内視鏡検査を介して単一用量のFMT(50gのドナー大便)を投与した。患者は臨床的に改善した。しかし、最終的にはFMTの3ヶ月間後に原発性がんが進行して亡くなった。患者2は、臨床試験(NCT02113657)の状況で2用量のイピリムマブを投与された、化学療法およびホルモン療法に対して不応性の骨に転移した前立腺がんを有する78歳の男性であった。処置開始の3ヵ月間後、発熱およびCTCAEグレード≧2の下痢/大腸炎(下痢、直腸出血、および腹痛)で入院し、臨床的に診断され、そして、感染症の病因を排除した後に内視鏡検査で確認された。患者は、合計5ヶ月間の免疫抑制剤(全身コルチコステロイド、2用量のインフリキシマブ、および4用量のベドリズマブ)を含む大腸炎の標準的療法に対して、臨床的、内視鏡的、および組織学的に不完全な改善を呈した。救済処置(CIND17-0058、IRB PA18-0372)として、FMT処置(ここでも大腸内視鏡検査を介してドナー大便50gを投与)を受け、短期的には症状が改善したが、腹痛が残存すると共に複数の結腸潰瘍が持続していた。同じCIND17-0058の下で2ヶ月間後に2回目のFMT(大腸内視鏡検査を介してドナー大便50gを投与)を受けた。ここまで7ヶ月間は無症状のままであったが、その後、追加の抗がん剤処置を受けた。
【0148】
4. マイクロバイオーム解析の方法
FMT前、ならびにFMT後10日目および53日目に回収した患者のサンプルと、FMTドナーから回収したサンプルに対して、マイクロバイオーム解析を実施した。ビーズビーティング溶解工程を追加したQIAamp DNA Stool Kit(Qiagen)を用いて、糞便サンプルからゲノム細菌DNAを抽出した。ゲノム16Sリボソーム-RNA V4可変領域を増幅し、そして、既述のように24、Illumina MiSeqプラットフォームで配列を決定した。各サンプルにつき3,380~42,776個の配列が得られた(平均10,003個)。
【0149】
ヌクレオチド配列の解析にはVSEARCHを使用した。ペアエンドリードをマージし、デレプリーケーションし、そして、長さおよびサイズでソートした。次いで、UNOISEアルゴリズム(ワールドワイドウェブのatbiorxiv.org/content/early/2016/10/15/081257で入手可能)を用いて配列のエラーを補正し、そして、キメラをフィルタリングして、OTUの予備リストを作成した。databasecommons.org/database.jsp?db_id=238においてワールドワイドウェブで入手可能なSilvaデータベースのバージョン128を用いるMothur法を用いて、OTUおよび推定キメラの両方をQIIME26における分類に割り当てた。更に、完全なスコアでデータベースのエントリーと一致した、UNOISEアルゴリズムによって拒絶された配列を復元して、最終的なOTUリストを作成した。VSEARCHを用いてOTU表を作成し、そして、QIIMEでサンプル間のUniFrac距離を求めた。シンプソンの逆数の多様性スコアの評価では、まず、QIIMEを用いて、配列数が最も少ない(3,000)サンプルを下回る数にサンプル配列を希薄化した。更に、主座標分析(PCoA)を用いて、研究患者およびドナーのサンプルの間の重み付けされていないUniFrac距離を2つの次元PC1とPC2で図示して、最も大きいサンプル間の変動を示す直交座標を構築した。
【0150】
5. 免疫組織化学的検査の方法
ホルマリン固定パラフィン包埋腸組織から切片(厚さ4μm)を調製した。次いで、Leica Bond RX自動スライドステーナ(Leica Biosystems)を用いて、スライドをCD3(1:100、Dako)、CD8(1:100、Thermo Scientific)、およびFoxP3(1:50、BioLegend)について染色し、そして、ヘマトキシリンで対比染色した。次いで、染色されたスライドを、自動Aperioスライドスキャナ(Leica)を用いてスキャンし、デフォルト「Nuclear v9」アルゴリズムの修正版を用いて腫瘍領域における免疫浸潤の密度を定量し、そして、1mm2あたりの陽性数として表した。
【0151】
各免疫組織化学(IHC)マーカーにつき、本発明者らは、1枚の5mm切片を評価した。自動画像解析のために、サンプル1つあたり、マーカー1つあたり各5mmの切片から4つの関心対象の領域(ROI)を手動で選択した。4つのROIはそれぞれ0.5×0.5mm2と測定され、そして、各時点でプロットされたIHC+細胞の密度は、1mm2あたりの4つのROIの平均を表す。免疫細胞の絶対密度を、分散(標準偏差)の尺度と共に提供する。
【0152】
6. マルチプレックス免疫蛍光アッセイ及びマルチスペクトル解析の方法
マルチプレックス染色については、本発明者らは、以下のマーカーについてのOpalプロトコル染色法に従った:CD4(1:25、CM153BK、Biocare)は、その後フルオレセインAF-647用いて可視化を達成し;FoxP3はAF-488(1:50)を用いて可視化し;CD8(1:200、M7103、Dako)はAF-594(1:50)を用いて可視化し;および、グランザイムB(1:100、PA0291、Leica Microsystems)はAF-555(1:50)を用いて可視化した。その後、DAPI(1:2,000)で核を可視化した。全ての切片をVectashield Hardset 895封入剤を用いてカバーガラスに載せた。
【0153】
マルチスペクトル解析の詳細な方法論については前述の通りである。個別に染色した各切片(CD4/AF-647、CD8/AF-594、FoxP3/AF-488、GrB/AF-555、およびDAPI)を利用して、マルチスペクトル解析に必要なフルオロフォアのスペクトルライブラリを確立した。Vectraスライドスキャナー(PerkinElmer)を用いて、蛍光条件下で切片をスキャンした。各マーカーについて、次いで、1症例あたりの平均蛍光強度を基点として求め、これから陽性コールを陽性閾値として確立することができた。
【0154】
7. 感染病原体についての大便の分析方法
リアルタイムPCR法を実施して、以下の22種類の病原体から核酸の存在を検出した:アデノウイルス(Adenovirus)F 40/41、アストロウイルス属(Astrovirus)、C. ディフィシル(C. difficile)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、シクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、大腸菌(Escherichia coli)O157、腸管凝集性大腸菌(Enteroaggregative E. coli)、腸管組織侵入性大腸菌(Enteroinvasive E. coli)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、腸病原性大腸菌(Enteropathogenic E. coli)、毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic E. coli)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、ノロウイルス(Norovirus)GI/GII、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、ロタウイルス(Rotavirus)A、サルモネラ属(Salmonella)、サポウイルス(Sapovirus)(I、II、IV、およびV)、志賀毒素産生大腸菌(Shiga toxin-producing E. coli)、ビブリオ属(Vibrio)、コレラ菌(Vibrio cholera)、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)。陽性の結果は、ほとんどの病原体については培養で、またはC. ディフィシルについてはELISAで確認された。
【0155】
8. ICI関連大腸炎についての内視鏡スコアリングの方法
両患者に対して、大腸の全てのセグメント(上行、横行、下行、およびS状の結腸、ならびに直腸)を検査する全大腸内視鏡検査による評価を行った。内視鏡データ収集の性質が定性的であり、そして、真の統計分析を提供できないことに鑑みて、同じ大腸内視鏡検査による評価から複数の他の代表的な写真を含めた。
【0156】
紅斑および潰瘍の存在、ならびに粘膜潰瘍の数および深さを組み込んだICI関連大腸炎に特化した内視鏡的重症度スコアを利用した。内視鏡検査のスコアは5つの特徴からなり、以下のそれぞれに対して1ポイントが与えられる:(a)紅斑およびびらん;(b)任意の潰瘍;(c)2つより多い潰瘍数;(d)表面積が1cmよりも大きい潰瘍;ならびに(e)2mmより深い潰瘍。
【0157】
9. データの統計的処理および分析
内視鏡検査を含む定性データについては、本発明者らは、上述のように複数の代表的な写真を含めていた。IHCについては、本発明者らは、各時点ごとに各患者から1枚のスライドを選んで染色したが、患者1名あたり複数の時点を含めていた。次いで、染色されたスライドを、自動Aperioスライドスキャナ(Leica)を用いてスキャンし、そして、デフォルト「Nuclear v9」アルゴリズムの修正版を用いて腫瘍領域における免疫浸潤の密度を定量し、そして、1mm2あたりの陽性数として表した。各IHCマーカーにつき、本発明者らは、1枚の5mm切片を評価した。自動画像解析のために、サンプル1つあたり、マーカー1つあたり各5mmの切片につき4つのROIを手動で選択した。4つのROIはそれぞれ0.5×0.5mm2と測定され、そして、それぞれについてIHC+細胞の密度をプロットした。
【0158】
時点は、1mm2あたりの4つのROIの平均を表す。免疫細胞の絶対密度を、分散(標準偏差)の尺度と共に提供する。マルチプレックスIHCでは、本発明者らの目的は、各サンプル内の異なる細胞型の数を定量することではなく、CD4およびFoxP3の共存を実証することであった。したがって、本発明者らは、両患者から代表的なスライドを選択し、そして、複数枚(>2時点)を評価した。大便の分析に関しては、各時点の各患者から1つのサンプルを分析した。上述の通り、各サンプルにつき3,380~42,776個の配列が得られた(平均10,003個)。
【0159】
(表1)ドナースクリーニング検査
【0160】
(表2)ドナースクリーニング検査
【0161】
本明細書において開示され、そして、請求される方法は全て、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様の観点から説明してきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書において記載される方法および方法の工程または工程の順序に変更を適用できることは、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的に関連する特定の剤を本明細書において記載される剤の代わりに使用しても、同様または類似の結果が得られることは明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換および変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内にあるとみなされる。
【0162】
参照文献
以下の参照文献は、本明細書において記載される内容を補足する例示的な手順または他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】