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特表2022-517323圧縮性およびグリーン強度が改善された硬質粉末粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】圧縮性およびグリーン強度が改善された硬質粉末粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/14 20220101AFI20220228BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20220228BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20220228BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220228BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220228BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20220228BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20220228BHJP
   B22F 10/00 20210101ALN20220228BHJP
   C22C 29/06 20060101ALN20220228BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20220228BHJP
【FI】
B22F1/14 400
B22F9/08 A
B22F1/17
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y40/00
C22C30/02
B22F10/00
C22C29/06 Z
C22C38/00 304
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539043
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2020012158
(87)【国際公開番号】W WO2020142671
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】62/788,709
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/803,260
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/732,831
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518372567
【氏名又は名称】テネコ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TENNECO INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーリュー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ボワベール,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファーソン,デニス・ビィ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA06
4K017BB04
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB07
4K017BB08
4K017BB13
4K017DA06
4K017FA14
4K017FA17
4K018AA24
4K018AB02
4K018AB04
4K018BA13
4K018BB06
4K018BC01
4K018BC15
4K018BC22
4K018BD09
4K018KA07
4K018KA10
(57)【要約】
粉末金属材料および粉末金属材料で形成される焼結部品が提供される。粉末金属材料は、粒子の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の量の銅を含む複数の粒子を含む。粒子は、また、鉄、ニッケル、コバルトのうちの少なくとも1つを含む。粒子は、さらに、ホウ素、炭素、クロム、マンガン、モリブデン、窒素、ニオブ、リン、硫黄、アルミニウム、ビスマス、ケイ素、スズ、タンタル、チタン、バナジウム、タングステン、ハフニウムおよびジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む。粒子は、噴霧、および任意に熱処理によって形成される。粒子は、第1領域と第2領域とからなり、第1領域は銅リッチであり、第2領域は硬質相を含む。硬質相は、第2領域の総重量に基づいて、少なくとも33重量%の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子であって、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の量の銅(Cu)を含む、複数の粒子を含み、
前記粒子は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つを含み、
前記粒子は、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つを含む、粉末金属材料。
【請求項2】
前記粒子の総重量に基づいて、前記銅(Cu)は15重量%~50重量%の量で存在し、スズ(Sn)は0重量%~10重量%の量にあり、鉄(Fe)は0重量%~89重量%の量にあり、ニッケル(Ni)は0重量%~50重量%の量にあり、コバルト(Co)は0重量%~89重量%の量にあり、ホウ素(B)は0重量%~1.0重量%の量にあり、炭素(C)は0重量%~6.0重量%の量にあり、窒素(N)は0重量%~1.0重量%の量にあり、リン(P)は0重量%~2.0重量%の量にあり、硫黄(S)は0重量%~2.0重量%の量にあり、アルミニウム(Al)は0重量%~15重量%の量にあり、ケイ素(Si)は0重量%~8.0重量%の量にあり、クロム(Cr)は0重量%~40重量%の量にあり、マンガン(Mn)は0重量%~25重量%の量にあり、モリブデン(Mo)は0重量%~50重量%の量にあり、タングステン(W)は0重量%~30重量%の量にあり、ビスマス(Bi)は0重量%~5重量%の量にあり、ニオブ(Nb)は0重量%~10重量%の量にあり、タンタル(Ta)は0重量%~10重量%の量にあり、チタン(Ti)は0重量%~10重量%の量にあり、バナジウム(V)は0重量%~10重量%の量にあり、ジルコニウム(Zr)は0重量%~10重量%の量にあり、ハフニウム(Hf)は0重量%~10重量%の量にある、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項3】
前記粒子は、本質的に、
前記銅(Cu)と、
前記鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つと、
前記ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つと、
からなる、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項4】
銅(Cu)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、少なくとも40重量%である、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項5】
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項6】
前記銅(Cu)は、前記粒子の総重量に基づいて、20重量%~40重量%の量で存在し、
前記鉄(Fe)は、前記粒子の総重量に基づいて、30重量%~78重量%の量で存在し、
鉄(Fe)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、少なくとも50重量%であり、
前記粒子は、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つを含み、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項7】
前記ホウ素(B)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量にあり、
前記炭素(C)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.1重量%~5.0重量%の量にあり、
前記窒素(N)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.05重量%~0.5重量%の量にあり、
前記リン(P)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~2.0重量%の量にあり、
前記硫黄(S)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.2重量%~1.2重量%の量にあり、
前記アルミニウム(Al)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~8.0重量%の量にあり、
前記ケイ素(Si)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.2重量%~4.0重量%の量にあり、
前記クロム(Cr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、2.0重量%~10重量%の量にあり、
前記マンガン(Mn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%の量にあり、
前記モリブデン(Mo)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%の量にあり、
前記タングステン(W)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~25重量%の量にあり、
前記ビスマス(Bi)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ニオブ(Nb)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~5.0重量%の量にあり、
前記タンタル(Ta)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記チタン(Ti)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記バナジウム(V)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~8重量%の量にあり、
前記ジルコニウム(Zr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ハフニウム(Hf)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項6に記載の粉末金属材料。
【請求項8】
前記粒子は、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記スズ(Sn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~5.0重量%の量にあり、
前記ニッケル(Ni)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~34重量%の量にあり、
前記コバルト(Co)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~25重量%の量にある、請求項6に記載の粉末金属材料。
【請求項9】
前記銅(Cu)は、前記粒子の総重量に基づいて、25重量%~35重量%の量で存在し、
前記鉄(Fe)は、前記粒子の総重量に基づいて、30重量%~78重量%の量で存在し、
鉄(Fe)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、少なくとも55重量%であり、
前記粒子は、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つを含み、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項10】
前記ホウ素(B)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量にあり、
前記炭素(C)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.1重量%~5.0重量%の量にあり、
前記窒素(N)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.05重量%~0.5重量%の量にあり、
前記リン(P)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~2.0重量%の量にあり、
前記硫黄(S)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.2重量%~1.2重量%の量にあり、
前記アルミニウム(Al)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~8.0重量%の量にあり、
前記ケイ素(Si)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.2重量%~4.0重量%の量にあり、
前記クロム(Cr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、10.1重量%~35重量%の量にあり、
前記マンガン(Mn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%の量にあり、
前記モリブデン(Mo)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~40重量%の量にあり、
前記タングステン(W)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~25重量%の量にあり、
前記ビスマス(Bi)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ニオブ(Nb)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~5.0重量%の量にあり、
前記タンタル(Ta)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記チタン(Ti)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記バナジウム(V)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~8重量%の量にあり、
前記ジルコニウム(Zr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ハフニウム(Hf)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項9に記載の粉末金属材料。
【請求項11】
前記粒子は、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記スズ(Sn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~5.0重量%の量にあり、
前記ニッケル(Ni)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~34重量%の量にあり、
前記コバルト(Co)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~25重量%の量にある、請求項9に記載の粉末金属材料。
【請求項12】
前記銅(Cu)は、前記粒子の総重量に基づいて、25重量%~35重量%の量で存在し、
前記鉄(Fe)は、前記粒子の総重量に基づいて、30重量%~78重量%の量で存在し、
鉄(Fe)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、少なくとも55重量%であり、
前記粒子は、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つを含み、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項13】
前記ホウ素(B)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量にあり、
前記炭素(C)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.1重量%~5.0重量%の量にあり、
前記窒素(N)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.05重量%~0.5重量%の量にあり、
前記リン(P)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~2.0重量%の量にあり、
前記硫黄(S)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.2重量%~1.2重量%の量にあり、
前記アルミニウム(Al)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、2.0重量%~5.0重量%の量にあり、
前記ケイ素(Si)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.5重量%の量にあり、
前記クロム(Cr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、4.0重量%~20重量%の量にあり、
前記マンガン(Mn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%の量にあり、
前記モリブデン(Mo)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.5重量%~40重量%の量にあり、
前記タングステン(W)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~25重量%の量にあり、
前記ビスマス(Bi)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ニオブ(Nb)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~5.0重量%の量にあり、
前記タンタル(Ta)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記チタン(Ti)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記バナジウム(V)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~8重量%の量にあり、
前記ジルコニウム(Zr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ハフニウム(Hf)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項12に記載の粉末金属材料。
【請求項14】
前記粒子は、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記スズ(Sn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~5.0重量%の量にあり、
前記ニッケル(Ni)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~20重量%の量にあり、
前記コバルト(Co)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~25重量%の量にある、請求項12に記載の粉末金属材料。
【請求項15】
前記銅(Cu)は、前記粒子の総重量に基づいて、20重量%~40重量%の量で存在し、
前記コバルト(Co)は、前記粒子の総重量に基づいて、30重量%~78重量%の量で存在し、
鉄(Fe)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、少なくとも50重量%であり、
前記粒子は、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つを含み、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項16】
前記ホウ素(B)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量にあり、
前記炭素(C)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~4.0重量%の量にあり、
前記窒素(N)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.05重量%~0.5重量%の量にあり、
前記リン(P)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~2.0重量%の量にあり、
前記硫黄(S)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.2重量%~1.2重量%の量にあり、
前記アルミニウム(Al)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~8.0重量%の量にあり、
前記ケイ素(Si)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~5.0重量%の量にあり、
前記クロム(Cr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、10.1重量%~35重量%の量にあり、
前記マンガン(Mn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%の量にあり、
前記モリブデン(Mo)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、5.0重量%~40重量%の量にあり、
前記タングステン(W)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、5.0重量%~20重量%の量にあり、
前記ビスマス(Bi)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ニオブ(Nb)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~5.0重量%の量にあり、
前記タンタル(Ta)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記チタン(Ti)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記バナジウム(V)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~8重量%の量にあり、
前記ジルコニウム(Zr)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
前記ハフニウム(Hf)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~3.0重量%の量にあり、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)の総量は、前記粒子の総重量に基づいて、10重量%以下である、請求項15に記載の粉末金属材料。
【請求項17】
前記粒子は、鉄(Fe)、スズ(Sn)およびニッケル(Ni)のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記鉄(Fe)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~25重量%の量にあり、
前記スズ(Sn)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~5.0重量%の量にあり、
前記ニッケル(Ni)は、存在する場合、前記粒子の総重量に基づいて、0.5重量%~34重量%の量にある、請求項15に記載の粉末金属材料。
【請求項18】
前記粒子は、合金組成物を噴霧することによって形成され、前記銅は、前記噴霧の前に前記合金組成物にプレアロイされる、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項19】
前記粒子は、第1領域と第2領域とからなり、前記第1領域は、銅リッチであり、かつ微細構造中および/または前記粒子の表面に沿って位置し、
前記第2領域は、硬質相を含み、前記硬質相は、前記第2領域の総重量に基づいて、少なくとも33重量%の量で存在する、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項20】
前記粒子は、硬質相を含む微細構造を有し、前記硬質相は、FeB、TiB2、Fe2N、Fe3N、TiN、Fe3C、Cr236、(Cr,Fe)236、MoC、Mo2C、TiC、Cr73、ZrC、VNC、TiCN、Fe2P、Fe3P、(Ni,Fe)3P、WSi2、Nb5Si3、(Mo,Co)Si2、FeMo、CoTiおよびNiMoのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の粉末金属材料。
【請求項21】
焼結粉末金属材料を含み、前記焼結粉末金属材料は、前記焼結粉末金属材料の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の量の銅(Cu)を含み、
前記焼結粉末金属材料は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つを含み、
前記焼結粉末金属材料は、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つを含む、部品。
【請求項22】
前記部品は、バルブシートインサート、バルブガイドまたはターボチャージャブッシュである、請求項21に記載の部品。
【請求項23】
粉末金属材料を製造する方法であって、
合金組成物にプレアロイされる銅を含む融解合金組成物を提供するステップを含み、前記銅は、前記組成物の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の量で存在し、
前記合金組成物は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記合金組成物は、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つをさらに含み、前記方法はさらに、
前記融解合金組成物を噴霧粒子に噴霧するステップを含む、方法。
【請求項24】
前記噴霧するステップは、水噴霧またはガス噴霧であり、前記噴霧粒子を熱処理することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年1月4日に提出された米国仮特許出願番号第62/788,709号、2019年2月8日に提出された米国仮特許出願番号第62/803,260号および2020年1月2日に提出された米国特許出願番号第16/732,831号に対する優先権を主張するものであり、上記出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
背景
この発明は、概して、粉末金属材料、粉末金属材料を製造する方法、粉末金属材料で形成された焼結部品、および焼結部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
粉末金属材料は、限定されるわけではないが、バルブガイド、バルブシートインサートおよびターボチャージャブッシュなどの自動車用途のための、耐摩耗性が改善された部品を形成するためにしばしば用いられる。硬質粉末粒子は、上記部品の耐摩耗性を改善するために、粉末混合物に含まれることがある。粉末金属材料は、典型的には、融解金属材料を水噴霧またはガス噴霧することによって形成される粒子の形態にある。噴霧粒子は、改善された特性を有する部品を形成するために、スクリーニング、製粉(milling)、熱処理、他の粉末との混合、固化(consolidated)/プレス加工、および/または焼結など様々な処理を施され得る。粉末粒子が含む硬質相が多いほど、粉末粒子で形成された結果として生じる焼結部品の耐摩耗性は高くなる場合が一般的である。したがって、それらの全体の耐摩耗性を増大させるように、硬質相の量および/または粉末金属部品におけるこれらの硬質相を含む硬質粒子の量を増加させることが望ましい。一般に、硬質粒子は、典型的には500HVより高いビッカーズ微細硬度(Vickers microhardness)を有する。
【0004】
良好な加工性を有する粉末金属材料も所望される。なぜなら、加工性は、費用、最終的には部品の作製の実効性に直接的に影響を与えるからである。たとえば、プレス加工および焼結加工を介して部品を作製するために用いられる粉末混合物は、圧縮可能であるべきである。すなわち、それらは、所定の印加圧力に対して比較的高いグリーン密度に到達する能力を有しているべきである。高い圧縮性を有する粉末金属材料は、とりわけ、改善されたグリーン強度を有する部品を提供し、より高い焼結強度を促進させる。粉末粒子が含む硬質相が多いほど、圧縮性は低くなる場合が一般的である。実際に、これは、粉末混合物に取り込まれ得る硬質粒子の量を制限し、粉末金属部品の全体の耐摩耗性の上限を決める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本発明の1つの局面は、改善された圧縮性および改善されたグリーン強度を有する粉末金属材料を提供する。粉末金属材料は、粒子の総重量に基づいて、10重量%(wt.%)~50重量%の量の銅(Cu)を含む、複数の粒子を含む。粒子は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つを含み、粒子は、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
本発明の別の局面は、焼結粉末金属材料を提供する。焼結粉末金属材料は、焼結粉末金属材料の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の量の銅(Cu)を含む。焼結粉末金属材料は、また、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つを含み、上記焼結粉末金属材料は、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
本発明の別の局面は、粉末金属材料を製造する方法を提供する。方法は、合金組成物におけるプレアロイされた銅を含む融解合金組成物を提供するステップを含み、銅は、組成物の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の量で存在する。合金組成物は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つをさらに含み、合金組成物は、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つをさらに含む。方法は、融解合金組成物を噴霧粒子に噴霧することも含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】4つの好ましい場合の組成を含む、粉末金属材料の可能な組成の概要を提供する表を含む図である。
図2】比較のための2つの工具鋼参照材料を含む、硬質粉末粒子の化学組成の例を提供する表を含む図である。
図3】例示の粉末金属材料の微細構造を示す図である。
図4】例示の粉末金属材料の微細構造を示す図である。
図5】例示の粉末金属材料の微細構造を示す図である。
図6図3に示される粉末で100%作製された焼結粉末金属材料の微細構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示の実施形態の詳細な説明
本発明の1つの局面は、高い圧縮性および耐摩耗性に加えて良好な加工性を有する粉末金属材料、ならびに粉末金属材料を製造する方法を提供する。これにより、粉末金属材料は、バルブガイド、バルブシートインサート、およびターボチャージャブッシュなどの自動車用途のための焼結部品を形成するために用いられることができる。
【0010】
粉末金属材料は、2つの主構成要素を含み(すなわち、微細構造領域)、一方は銅リッチで、他方は耐摩耗性のための硬質相を提供する。銅リッチの構成要素は、硬質相を有する構成要素よりも軟質で、粉末粒子が圧縮中に変形されることを可能にし、改善された圧縮性およびグリーン強度を提供する。
【0011】
しばしば、耐摩耗性用途のための部品を作製するように設計された粉末混合物は、耐摩耗性のための硬質相を提供する硬質粒子を含む。しかしながら、硬質粒子は、もともと、低い圧縮性を有し、粉末混合物に含まれ得る硬質粒子の量を制限するため、最終部品の最大耐摩耗性を制限する。硬質粉末粒子における、より軟質の銅リッチ構成要素の存在は、これらの硬質粒子の圧縮性を改善し、粉末混合物における硬質粒子の量を増加させることを可能にする。粉末粒子の表面上における、より軟質の銅リッチ構成要素の存在は、グリーン強度を増大させるための手段も提供する。
【0012】
銅リッチ構成要素は、粉末粒子内部および粉末粒子の表面上に位置する。これは、圧縮中により容易に塑性変形可能な領域を形成し、グリーン強度を改善する粒子間におけるより強い機械的結合を形成する。これは、プレス部品および焼結部品にとって重要な側面である。なぜなら、グリーン部品は、プレス機から加熱炉への移動の間にそれらの形状を保持しなければならないためである。低いグリーン強度部品は焼結前にそれらの形状を緩める可能性があることは既知の問題である。したがって、低強度は、グリーンチッピングおよび/または形が崩れた部品を引き起こす高度の歪みなど、欠陥の量を増大させる原因となり得る。
【0013】
粉末金属材料は、融解物を水噴霧またはガス噴霧することによって形成されるが、他の粉末製造加工、たとえばプラズマ噴霧および回転円盤噴霧が、複数の噴霧粒子、以下、粉末金属材料とも呼ばれる、を形成するために用いられてもよい。上記方法は、任意に、噴霧粒子の熱処理および/または製粉もしくは摩砕(grinding)などの機械的加工を含んでもよい。
【0014】
上述されたように、粉末金属材料は、たとえば水噴霧またはガス噴霧といった噴霧によって形成された複数の粒子を含む。一般に、粉末金属材料は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも1つと、ホウ素(B)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1つの他の元素も含む組成物に、プレアロイされた10重量%~50重量%の量の銅を含む。新規の粉末金属材料の可能な組成の概要は、図1の表において提供される。
【0015】
全体の例示の組成について図1の表に示されるように、各元素は、新規の粉末金属材料に存在し得る組成の特定的な範囲を有する。粉末金属材料の総重量に基づいて、銅(Cu)は15重量%~50重量%であり、スズ(Sn)は0重量%~10重量%であり、鉄(Fe)は0重量%~89重量%であり、ニッケル(Ni)は0重量%~50重量%であり、コバルト(Co)は0重量%~89重量%であり、ホウ素(B)は0重量%~1.0重量%であり、炭素(C)は0重量%~6.0重量%であり、窒素(N)は0重量%~1.0重量%であり、リン(P)は0重量%~2.0重量%であり、硫黄(S)は0重量%~2.0重量%であり、アルミニウム(Al)は0重量%~15重量%であり、ケイ素(Si)は0重量%~8.0重量%であり、クロム(Cr)は0重量%~40重量%であり、マンガン(Mn)は0重量%~25重量%であり、モリブデン(Mo)は0重量%~50重量%であり、タングステン(W)は0重量%~30重量%であり、ビスマス(Bi)は0重量%~5重量%であり、ニオブ(Nb)は0重量%~10重量%であり、タンタル(Ta)は0重量%~10重量%であり、チタン(Ti)は0重量%~10重量%であり、バナジウム(V)は0重量%~10重量%であり、ジルコニウム(Zr)は0重量%~10重量%であり、ハフニウム(Hf)は0重量%~10重量%である。
【0016】
図1は、新規の粉末粒子が有し得る全体の化学組成におけるいくつかの制約も示す。たとえば、銅、スズ、鉄、ニッケルおよびコバルトの総量は、40重量%以上であるべきである。加えて、ニオブ、タンタル、チタン、バナジウム、ジルコニウムおよびハフニウムの総量は、10重量%以下であるべきである。なぜなら、これらの元素は、典型的な噴霧温度(約1300~2000℃)において難溶である高融点を有する化合物を形成するためである。
【0017】
図1は、改善された圧縮性およびグリーン強度を有する硬質粉末粒子の化学組成についての好ましい範囲も表す。好ましい組成#1について、銅(Cu)は20重量%~40重量%であり、鉄(Fe)は30重量%~78重量%であり、スズ(Sn)が存在する場合、それは1.0重量%~5.0重量%であり、ニッケル(Ni)が存在する場合、それは0.5重量%~34重量%であり、コバルト(Co)が存在する場合、それは0.5重量%~25重量%である。銅、スズ、鉄、ニッケルおよびコバルトの総量は、50重量%以上であるべきである。リストに載せられた少なくとも1つの合金元素も、好ましい組成#1に示される。粉末金属材料の総重量に基づいて、ホウ素(B)が存在する場合、それは0.001重量%~0.2重量%であり、炭素(C)が存在する場合、それは1.1重量%~5.0重量%であり、窒素(N)が存在する場合、それは0.05重量%~0.5重量%であり、リン(P)が存在する場合、それは1.0重量%~2.0重量%であり、硫黄(S)が存在する場合、それは0.2重量%~1.2重量%であり、アルミニウム(Al)が存在する場合、それは1.0重量%~8.0重量%であり、ケイ素(Si)が存在する場合、それは0.2重量%~4.0重量%であり、クロム(Cr)が存在する場合、それは2.0重量%~10重量%であり、マンガン(Mn)が存在する場合、それは0.1重量%~15重量%であり、モリブデン(Mo)が存在する場合、それは0.5重量%~30重量%であり、タングステン(W)が存在する場合、それは0.5重量%~25重量%であり、ビスマス(Bi)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ニオブ(Nb)が存在する場合、それは0.5重量%~5.0重量%であり、タンタル(Ta)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、チタン(Ti)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、バナジウム(V)が存在する場合、それは0.5重量%~8重量%であり、ジルコニウム(Zr)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ハフニウム(Hf)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%である。ニオブ、タンタル、チタン、バナジウム、ジルコニウムおよびハフニウムの総量は、10重量%以下であるべきである。
【0018】
図1に示される好ましい組成#2について、銅(Cu)は25重量%~35重量%であり、鉄(Fe)は30重量%~78重量%であり、スズ(Sn)が存在する場合、それは1.0重量%~5.0重量%であり、ニッケル(Ni)が存在する場合、それは0.5重量%~34重量%であり、コバルト(Co)が存在する場合、それは0.5重量%~25重量%である。銅、スズ、鉄、ニッケルおよびコバルトの総量は、55重量%以上であるべきである。リストに載せられた少なくとも1つの合金元素も、好ましい組成#2に示される。粉末金属材料の総重量に基づいて、ホウ素(B)が存在する場合、それは0.001重量%~0.2重量%であり、炭素(C)が存在する場合、それは1.1重量%~5.0重量%であり、窒素(N)が存在する場合、それは0.05重量%~0.5重量%であり、リン(P)が存在する場合、それは1.0重量%~2.0重量%であり、硫黄(S)が存在する場合、それは0.2重量%~1.2重量%であり、アルミニウム(Al)が存在する場合、それは1.0重量%~8.0重量%であり、ケイ素(Si)が存在する場合、それは0.2重量%~4.0重量%であり、クロム(Cr)が存在する場合、それは10.1重量%~35重量%であり、マンガン(Mn)が存在する場合、それは0.1重量%~15重量%であり、モリブデン(Mo)が存在する場合、それは0.5重量%~40重量%であり、タングステン(W)が存在する場合、それは0.5重量%~25重量%であり、ビスマス(Bi)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ニオブ(Nb)が存在する場合、それは0.5重量%~5.0重量%であり、タンタル(Ta)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、チタン(Ti)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、バナジウム(V)が存在する場合、それは0.5重量%~8重量%であり、ジルコニウム(Zr)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ハフニウム(Hf)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%である。ニオブ、タンタル、チタン、バナジウム、ジルコニウムおよびハフニウムの総量は、10重量%以下であるべきである。
【0019】
図1に示される好ましい組成#3について、銅(Cu)は25重量%~35重量%であり、鉄(Fe)は30重量%~78重量%であり、スズ(Sn)が存在する場合、それは1.0重量%~5.0重量%であり、ニッケル(Ni)が存在する場合、それは0.5重量%~20重量%であり、コバルト(Co)が存在する場合、それは0.5重量%~25重量%である。銅、スズ、鉄、ニッケルおよびコバルトの総量は、55重量%以上であるべきである。リストに載せられた少なくとも1つの合金元素も、好ましい組成#3に示される。粉末金属材料の総重量に基づいて、ホウ素(B)が存在する場合、それは0.001重量%~0.2重量%であり、炭素(C)が存在する場合、それは1.1重量%~5.0重量%であり、窒素(N)が存在する場合、それは0.05重量%~0.5重量%であり、リン(P)が存在する場合、それは1.0重量%~2.0重量%であり、硫黄(S)が存在する場合、それは0.2重量%~1.2重量%であり、アルミニウム(Al)が存在する場合、それは2.0重量%~5.0重量%であり、ケイ素(Si)が存在する場合、それは0.5重量%~3.5重量%であり、クロム(Cr)が存在する場合、それは4.0重量%~20重量%であり、マンガン(Mn)が存在する場合、それは0.1重量%~15重量%であり、モリブデン(Mo)が存在する場合、それは1.5重量%~40重量%であり、タングステン(W)が存在する場合、それは1.0重量%~25重量%であり、ビスマス(Bi)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ニオブ(Nb)が存在する場合、それは0.5重量%~5.0重量%であり、タンタル(Ta)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、チタン(Ti)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、バナジウム(V)が存在する場合、それは0.5重量%~8重量%であり、ジルコニウム(Zr)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ハフニウム(Hf)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%である。ニオブ、タンタル、チタン、バナジウム、ジルコニウムおよびハフニウムの総量は、10重量%以下であるべきである。
【0020】
図1に示される好ましい組成#4について、銅(Cu)は20重量%~40重量%であり、コバルト(Co)が存在し、それは30重量%~78重量%であり、鉄(Fe)が存在する場合、それは0.5重量%~25重量%であり、スズ(Sn)が存在する場合、それは1.0重量%~5.0重量%であり、ニッケル(Ni)が存在する場合、それは0.5重量%~34重量%である。銅、スズ、鉄、ニッケルおよびコバルトの総量は、50重量%以上であるべきである。リストに載せられた少なくとも1つの合金元素も、好ましい組成#4に示される。粉末金属材料の総重量に基づいて、ホウ素(B)が存在する場合、それは0.001重量%~0.2重量%であり、炭素(C)が存在する場合、それは0.5重量%~4.0重量%であり、窒素(N)が存在する場合、それは0.05重量%~0.5重量%であり、リン(P)が存在する場合、それは1.0重量%~2.0重量%であり、硫黄(S)が存在する場合、それは0.2重量%~1.2重量%であり、アルミニウム(Al)が存在する場合、それは1.0重量%~8.0重量%であり、ケイ素(Si)が存在する場合、それは0.5重量%~5.0重量%であり、クロム(Cr)が存在する場合、それは10.1重量%~35重量%であり、マンガン(Mn)が存在する場合、それは0.1重量%~15重量%であり、モリブデン(Mo)が存在する場合、それは5.0重量%~40重量%であり、タングステン(W)が存在する場合、それは5.0重量%~20重量%であり、ビスマス(Bi)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ニオブ(Nb)が存在する場合、それは0.5重量%~5.0重量%であり、タンタル(Ta)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、チタン(Ti)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、バナジウム(V)が存在する場合、それは0.5重量%~8重量%であり、ジルコニウム(Zr)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%であり、ハフニウム(Hf)が存在する場合、それは0.5重量%~3.0重量%である。ニオブ、タンタル、チタン、バナジウム、ジルコニウムおよびハフニウムの総量は、10重量%以下であるべきである。
【0021】
改善された圧縮性および/またはグリーン強度を提供するために、粉末金属材料における銅は、銅リッチ領域が微細構造内および/または粉末粒子の表面上に存在するような量で存在する。言い換えれば、銅は、完全に固溶体ではない。粉末金属材料における銅リッチ領域を形成するために必要とされる銅の量は、合金元素の存在および噴霧の間に達成される冷却速度に部分的に依存する。たとえば、水噴霧の間に経験される冷却速度は、ガス噴霧の間に経験されるものよりも大きく、これにより、同じ化学組成を有するガス噴霧粉末と比較して、固溶体における銅の量は多くなり得る。大きな片の銅リッチ領域の形成を促進するために、異なるアプローチが用いられてもよい。たとえば、合金組成物における合金化された銅の量は、増やされてもよい。代替的には、噴霧粉末は、粉末粒子中および/またはそれらの表面上における銅リッチ領域の沈殿を誘発するための熱処理を受けてもよい。
【0022】
粉末金属材料は、粉末金属材料の微細構造における多量の硬質相によって、高い高度を有する。粒子に存在し得る硬質相の例は、限定ではないが、ホウ化物(FeB、TiB2)、窒化物(Fe2N、Fe3N、TiN)、炭化物(Fe3C、Cr236、(Cr,Fe)236、MoC、Mo2C、TiC、Cr73、ZrC)、炭窒化物(VNC、TiCN)、リン化物(Fe2P、Fe3P、(Ni,Fe)3P)、ケイ化物(WSi2、Nb5Si3)、(Mo,Co)Si2)、ならびにFeMo、CoTiおよびNiMoなどの他の金属間化合物を含む。これらの硬質相は、化学量論的または非化学量論的であり得るとともに、噴霧の間ならびに/または限定ではないが熱処理および/もしくは機械的処理などの続く処理の間に直接形成され得る。
【0023】
粒子の形態である、粉末金属材料は、最終粉末金属部品における所望の耐摩耗性を提供するために多量の硬質相を含むべきであり、改善された圧縮性および/またはグリーン強度を提供するために銅リッチ構成要素も含むべきである。粉末金属材料の非銅リッチ相における硬質相の量は、十分な耐摩耗性のレベルを提供するのに足りるほど高いものであるべきである。ある耐摩耗性に到達するために要求される硬質相の量は、用途および粉末金属材料における硬質相の化学的性質を含む多くの変数に依存する。たとえば、炭化鉄(例:Fe3C、(Fe,Cr)3C)は、炭化クロム(Cr73)または炭化タングステン(WC)などの他のタイプの炭化物ほど硬質ではなく、軟質炭化物を含む部品の全体の耐摩耗性は、同量の硬質炭化物を含む部品よりも低いと予想され得る。
【0024】
本発明の粉末金属材料は、硬質粒子とも呼ばれ得る。硬質粒子は、定義上は、所望の耐摩耗性を提供するために大きな片の硬質相を含むべきである。他のタイプの合金も硬質相を含み、工具鋼は、たとえば、典型的には、30重量%未満の様々なタイプの炭化物
(すなわち、硬質相)含む。しかしながら、工具鋼が熟考の上での硬質合金であったとしても、それらは熟考の上での硬質粒子たり得るほどの十分な硬質相を含まない。したがって、定義上は、硬質粒子は、工具鋼よりも多くの量の硬質相を有する。この発明に開示される新規の硬質粉末粒子は、2つの異なる主構成要素(すなわち、微細構造領域)で作製され、一方は改善された圧縮性および改善されたグリーン強度を提供する銅リッチなものであり、他方は耐摩耗性のための硬質相を提供するものである。新規の粉末粒子の耐摩耗性を提供する構成要素は、少なくとも33重量%の硬質相を含むべきである。
【0025】
硬質相の量および性質は、粉末金属材料の条件に応じて変化し得る。言い換えれば、材料の状態、すなわち噴霧されたままのもの(これは、噴霧のタイプ、例:水噴霧もしくはガス噴霧にも依存する)、または熱処理されたもの(熱処理の間に用いられる時間および温度にも依存する)のいずれかが、硬質粉末金属材料における硬質相の量および性質を変化させ得る。様々な材料における硬質相の量および性質と比較するために用いられる1つの技術は、化学システムの熱力学的平衡を計算することである。なぜなら、これは、その化学システムの最も安定な状態を提供するからである。しかしながら、用いられるソフトウェアおよびデータベースならびに計算の温度に依存する計算された相の量および性質には、わずかな変動があり得る。図2は、比較のための2つの工具鋼組成を含む、新規の硬質粒子の化学組成を例示する表を示す。各合金における硬質相の総量(重量%における)は、FSstel、SpMCBNおよびFactPSデータベースを用いるFactSageソフトウェアバージョン7.2で計算された。計算のために選択された温度は、600℃であった。なぜなら、これが硬質金属合金の熱処理のために用いられる平均温度であるためである。非銅リッチ相のみが硬質相を含むため、各合金における硬質相の濃度は銅リッチ構成要素を除くことによって計算された。
【0026】
図2に示される8つの粉末金属材料の例は、33重量%よりも大きい重量%の非銅リッチ構成要素における硬質相を含む粒子を各々提供する。上述の条件において実行される平衡熱力学計算は、以下の結果を提供する。合金#1は、多量の様々な炭化物を有する銅とプレアロイされた鉄材料であり、その大部分はM236化学量論である。合金#2も銅とプレアロイされた鉄材料であるが、合金#1と比較してより多い炭素およびクロム含有量を有する。合金#2は、硬質相として異なる炭化物を含み、これらの大部分はM73およびMC化学量論である。合金#3も、クロム、マンガンおよび炭素リッチな、銅とプレアロイされた鉄材料である。多量の硬質相は、ほとんどM73化学量論を有する炭化物で作製される。合金#4は、トリバロイ(商標登録)T-400に近いが、30重量%の銅とプレアロイされる。合金#4における硬質相の大部分は、ケイ化物である。合金#5は、ニッケルおよびクロムリッチな銅とプレアロイされた鉄合金である。合金#5における硬質相の大部分はCr-Fr-Moの金属間化合物である。合金#6は、銅とプレアロイされたモリブデンリッチな合金であり、硬質相の大部分はM6C化学量論を有する炭化物として存在する。合金#7は、銅とプレアロイされたキャスト鉄材料であり、硬質相の大部分はクロムと合金化されたセメンタイトとして存在する。合金#8は、大きな片の硬質相を含む、銅とプレアロイされたクロムおよびタングステンリッチな材料であり、その大部分はM236化学量論の炭化物である。比較によって、工具鋼M2およびT15のための計算は、これらの工具鋼の両方における硬質相が主にM6C化学量論の炭化物であり、M2およびT15工具鋼の非銅リッチ相における硬質相の量がそれぞれ17.8重量%および25.3重量%、すなわち硬質粒子の定義のための33重量%制限未満であることを示した。
【0027】
図3は、15~30重量%Cuの銅含有量を有する、改善された圧縮性およびグリーン強度を有する硬質粉末粒子の例示の実施形態を示す。この場合、銅含有量は、21重量%であると測定された。粒子は、Fe、Mo、Cr、SiおよびCも含む。より具体的には、粒子は、約20~30重量%のFe、30~40重量%のMo、10~20重量%のCr、0.5~3重量%のSi、および0.5~2.0%のCを含む。図3における拡大されたウインドウは、マトリックスの構造における多量の硬質相を示すSEM画像を提示する。Fe/Mo/Cr/Si/Cリッチなマトリックスにおける硬質相の量は、50重量%より多い。
【0028】
図4は、約20~40重量%の銅含有量を有する、改善された圧縮性およびグリーン強度を有する硬質粉末粒子の例示の実施形態を示す。この場合、銅含有量は、30重量%であると測定された。粒子は、Co、Mo、CrおよびSiも含む。より具体的には、粒子は、20~40重量%のCo、20~40重量%のMo、5~15重量%のCr、および2~6重量%のSiを含む。図4における拡大されたウインドウは、マトリックスの構造における多量の硬質相を示すSEM画像を提示する。Co/Mo/Cr/Siリッチなマトリックスにおける硬質相の量は、50重量%より多い。
【0029】
図5は、約20~40重量%の銅含有量を有する、改善された圧縮性およびグリーン強度を有する硬質粉末粒子の例示の実施形態を提示する。この場合、銅含有量は、27重量%であると測定された。粒子は、Fe、Mo、W、Cr、V、NbおよびCも含む。より具体的には、粒子は、約40~60重量%のFe、5~12重量%のMo、4~10重量%のCr、5~12重量%のW、2~7重量%のV、0.5~5重量%のNbおよび1~3重量%のCを含む。Fe/Mo/W/Cr/V/Nb/Cリッチなマトリックスにおける硬質相の量は、40重量%より多い。
【0030】
本発明の別の局面は、粉末金属材料で形成された焼結部品、および粉末金属材料をプレス加工および焼結することによって部品を作製する方法を提供する。粉末金属材料の銅リッチ相は、粉末金属材料が焼結部品に形成されるとき、たとえば強度などの良好な機械的特性といった利点も提供する。
【0031】
図6は、図3に開示される新規の硬質粉末金属材料で100%作製された焼結部品の例示の実施形態を示す。部品は、標準的な工具類および工業において典型的に用いられる標準的な圧縮圧力を用いて圧縮された。グリーン強度は、他のグリーン部品がそうであるように、部品が圧縮プレスから焼結加熱炉まで扱われることができるほど十分に高いものであった。圧縮性および軸方向グリーン強度の評価は、PTC(「粉末テストセンター」(Powder Testing Center))で実行された。900MPaでプレスされたときの図3に示される粉末で100%作製された混合物は、8%より高いグリーン密度の改善および140MPaの軸方向グリーン強度、プレアロイされた銅なしで噴霧された同様の合金と比較して250%より高い改善を示した。
【0032】
図4に示される粉末は、また、PTC(「粉末テストセンター」)を用いて軸方向グリーン強度について評価された。図4に示される粉末で100%作製された混合物は、149MPaの軸方向グリーン強度を提供した。これは、同様の合金であるがプレアロイされた銅なしで噴霧されたものと比較して意義ある改善である。プレアロイされた銅なしの粉末で100%作製された混合物のグリーン強度は測定できないほど低いため、この改善は、定量化されることはできなかった。比較のために、部品を破壊することなしに部品が扱われるのに十分な高さのグリーン強度を保持するために、最大30~40重量%の硬質粒子が粉末混合物に含まれ得る場合が一般的である。
【0033】
銅リッチ相は、グリーン強度、圧縮性、焼結中における元素の拡散、および粉末金属材料の粒子の結合を含む、いくつかの特性の改善をもたらす。100MPaの軸方向グリーン強度は、グリーン強度についての最終的な下限として定義される。
【0034】
上述の粉末金属材料の特性の意義ある改善に加えて、プレアロイされた銅の高い含有量は、粉末金属材料および新規の粉末金属材料から形成された焼結部品の熱伝導度を改善させるためにも有利である。なぜなら、銅および銅合金は、高い熱伝導度を有するからである。たとえば、粉末金属材料は、高温(最高で約1000℃)に曝される可能性がある、バルブシートインサート、バルブガイド、およびターボチャージャブッシュを形成するために用いられることができ、良好な熱伝導度は、一般的に、そのようなタイプの部品のために好まれる。粉末金属材料の銅リッチな相は、他の高温耐摩耗性および高性能用途のためにも有利である。
【0035】
この発明に開示される新規の粉末金属材料は、プレス加工および焼結加工とは異なる他の粉末金属加工においても用いられることができる。たとえば、新規の粉末金属材料は、多量のプレアロイされた銅の存在から、改善された熱伝導度を有する耐摩耗性層堆積物を製造するために、熱溶射法においても用いられることができる。改善された熱伝導度を有する部品を作るための付加製造は、これらの新規の粉末が用いられる可能性がある別のプロセスである。
【0036】
言うまでもなく、上記の教示に照らせば、本発明の多くの修正および変形が可能であり、以下の請求項の範囲内で特定的に記載される以外の方法でも実施され得る。記載されたすべての構成およびすべての実施形態は、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わされることができると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
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図6
【国際調査報告】