(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】金属封鎖のためのポリアミンリンデンドリマー材料
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20060101AFI20220301BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220301BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220301BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C02F1/28 B
C02F1/28 C
C02F1/28 J
B01J20/34 G
B01J20/30
B01J20/26 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539566
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2020013855
(87)【国際公開番号】W WO2020150457
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507021506
【氏名又は名称】リサーチ トライアングル インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ジョン トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ スークリ
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D624AA02
4D624AA04
4D624AB15
4D624AB16
4D624AB17
4D624AB18
4D624BA18
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4D624DA07
4G066AA34D
4G066AB07A
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4G066AC27B
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4G066DA08
4G066FA03
4G066FA21
4G066GA11
4G066GA35
(57)【要約】
本開示は、ポリアミンとポリアルデヒドリンデンドリマー(P-デンドリマー)化合物との反応によって合成された、金属封鎖のための新規の固形吸着材を提供する。該吸着材は、非常に安定しており、所望の熱力学、および重金属や希土類元素を含むさまざまな金属との反応速度を示す。該吸着材は、水溶液から金属を抽出するための繰り返しの使用のために、容易に再生可能である。材料は、水性および有機媒体、ならびに強酸および強塩基に対して安定である。該吸着材は、多くの使用サイクルにわたって全能力を維持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性流体流から金属を除去する方法であって、水性流体流を、式I:
【化1】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
水性流体流から金属を吸着、分離、貯蔵、または封鎖する方法であって、水性流体流から金属を吸着、分離、貯蔵、または封鎖するために、前記水性流体流を、式I:
【化2】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、ポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)と接触させることを含む、方法。
【請求項3】
前記水性流体流のpHが、約2.0~約12.0の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水性流体流のpHが、約2.0~約12.0の間である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記水性流体流が、都市廃水流体流である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水性流体流が、工業廃水流体流である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水性流体流が、飲料水流体流である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水性流体流が、都市ごみ埋立地、水圧破砕、酸性鉱山排水、酸性鉱山スラッジ、または石炭火力発電所からの浸出液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属が重金属である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記重金属が、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、セレン(Se)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、またはマグネシウム(Mg)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属が希土類金属である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記希土類金属が、以下の元素、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジミウム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびイットリウム(Y)、のうちの1つ以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記P-デンドリマーを濃縮酸性溶液と接触させることにより、前記式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記濃縮酸性溶液が、約0.1~約5.0Mの酢酸、または約0.1~約5.0MのHClである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記P-デンドリマーを濃縮塩基性溶液と接触させることにより、式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記濃縮塩基性溶液が、約0.05~約2.0MのNaOH、または約0.05~約2.0Mのクエン酸アンモニウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを鉄塩と接触させて、鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材を形成することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材が、前記水性流体流からヒ素(As)またはセレン(Se)を吸着、分離、貯蔵、または封鎖するために使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水性の金属含有流から金属を捕捉および除去するためのプロセスであって、
(a)式I:
【化3】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)を含む吸着材を中に分散させたハウジングを提供するステップと、
(b)金属含有流が前記吸着材に接触するように、該金属含有流を前記ハウジングに通すステップと、
(c)前記ハウジングを濃縮酸性流で洗い流して、前記吸着材からその中に保持されている金属を脱着させ、脱着金属の溶液を形成するステップと、
(d)前記ハウジングを洗い流して、前記脱着金属を前記ハウジングから除去するステップと、
を含むプロセス。
【請求項20】
前記水性の金属含有流体流のpHが、約2.0~約12.0の間である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記水性流体流が、都市廃水流体流である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記水性流体流が、工業廃水流体流である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項23】
前記水性流体流が、飲料水流体流である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水性流体流が、都市ごみ埋立地、水圧破砕、酸性鉱山排水、酸性鉱山スラッジ、または石炭火力発電所からの浸出液を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項25】
前記金属が重金属である、請求項19~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記重金属が、ヒ素(As)、カドミウム、鉛(Pb)、水銀(Hg)、セレン(Se)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、またはマグネシウム(Mg)である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記金属が希土類金属である、請求項19~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記希土類金属が、以下の元素、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジミウム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびイットリウム(Y)、のうちの1つ以上である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記P-デンドリマーを濃縮酸性溶液と接触させることにより、式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、請求項19~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記濃縮酸性溶液が、約0.1~約5.0Mの酢酸、または約0.1~約5.0MのHClである、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記P-デンドリマーを濃縮塩基性溶液と接触させることにより、式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、請求項19~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記濃縮酸性溶液が、約0.05~約2.0MのNaOH、または約0.05~約2.0Mのクエン酸アンモニウムである、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを鉄塩と接触させて、鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材を形成することをさらに含む、請求項19~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材が、前記水性流体流からヒ素(As)またはセレン(Se)を吸着、分離、貯蔵、または封鎖するために使用される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
(a)鉄IIまたは鉄III、ならびに(b)式I:
【化4】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)を含む吸着材を含む、吸着材。
【請求項36】
Zが、ポリエチレンイミンである、請求項35に記載の吸着材。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2019年1月17日に提出された62/793,644、Thompson&Soukri、Atty. Dkt. 121-88-PROVの利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
1.技術分野
本開示は、ポリアミンとポリアルデヒドリンデンドリマー(P-デンドリマー)化合物との反応によって合成された、金属封鎖のための新規の固形吸着材を提供する。該吸着材は、非常に安定しており、所望の熱力学、および重金属や希土類元素を含むさまざまな金属との反応速度を示す。該吸着材は、水溶液から金属を抽出するための繰り返しの使用のために、容易に再生可能である。材料は、水性および有機媒体、ならびに強酸および強塩基に対して安定である。該吸着材は、多くの使用サイクルにわたって全能力を維持する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
本明細書で提供される「背景技術」の説明は、本開示の内容を一般的に提示することを目的としている。この背景技術セクションに記載されている範囲において、目下名前が挙げられた発明者の研究のみならず、出願時における先行技術とは認められ得ない明細書の態様は、明示的にも黙示的にも本開示に対する先行技術としては認められない。
【0004】
2.1.導入:重金属の除去
産業汚染または自然発生に起因する重金属(Pb、Hg、Asなど)による水源の汚染は、環境に壊滅的な影響を及ぼし、人間の健康に重大な脅威をもたらす可能性がある。産業廃棄物の排出物には、水溶性の高い重金属が含まれており、該重金属は、水流に流入して耕作土壌に吸収性の蓄積をもたらし、また、飲料水の水質を維持するための除去に技術的な課題をもたらす。重金属への長期暴露または許容濃度を超える摂取は、深刻な人間の健康障害、または死にさえつながる可能性がある。危険な重金属への人間の曝露を制限するための世界的な規制努力が確立されており、金属濃度を効果的に微量レベル(<5ppb)まで低減することは、今日まで重要な課題である1。
【0005】
最も毒性の高い3つの水汚染元素は、鉛(Pb)、水銀(Hg)、およびヒ素(As)である。これらの金属は、低暴露レベルでさまざまな健康への悪影響を引き起こし、高摂取レベルでの死亡や、長期暴露により癌を引き起こす重大なリスクがある。鉛(Pb)、水銀(Hg)、およびヒ素(As)に対する米国環境保護庁(EPA)の現在の規制制限は、それぞれ15ppb、2ppb、および10ppbである。重金属は一般に、自然の堆積物の侵食および溶解や、農業廃水および工業廃水から、飲料水供給に侵入する。特に鉛については、鉛を含むパイプが腐食することで、飲料水に課題をもたらし、そのようなことは、酸性度が高い、またはミネラル含有量が少ない水供給においてよく見られる。厳格な人体暴露基準のため、水供給を大量消費の前に浄化するための、極めて効率的で費用効果の高い技術が求められている。
【0006】
沈殿、凝固、逆浸透、イオン交換、溶媒抽出、浮選、膜分離など、汚染した重金属を水流から除去するためのさまざまな技術が開発されてきた。これらのプロセスは、典型的には、低エネルギープロセス要件および有毒スラッジの必要的回避に起因して、それらの実装を妨げる低容量および低除去率などといった、経済的および技術的なハードルに直面している2。吸着技術は、強力な金属結合親和性および高い除去率を備えた低コストで単純なプロセス設計により、魅力的な代替手段として浮上してきた3。廃水とは混合しないが有毒で有害な不純物を除去できる固形吸着材が、その後、大いに求められている。吸着技術は、ゼオライト、活性炭、シリカ、ポリマー、生体材料、イオン交換樹脂、工業副産物、バイオマス、および生物学的材料を基礎としている4。吸着技術の種類の中でも、キレート効果を介して重金属を結合するものは、技術的な制限を最小限に抑えた安価で環境に優しい技術を提供する5。
【0007】
吸着材のポリマー種では、樹枝状(デンドリック)ポリマーが浄水用途で大きな注目を集めている。デンドリマーは、多くの反応性末端基を有する、明確に定義され、段階的に構築されたポリマーである。これらの高分子は、特定のモノマーを正確に添加することで微調整できる明確な構造を有する。さまざまな末端基による多様化および機能化の容易性により、樹枝状材料は、汚染された水源からの重金属除去の有望な候補となっている。デンドリマーは、外部結合部位および内部結合部位の両方を提供する3次元構造、多数の反応部位からの強力なキレート効果、およびさまざまな汚染物質を特異的にターゲットとする調整可能性により、吸着材として最適である6。最も広く研究され、適用されている樹枝状ポリマーは、エチレンジアミンおよびアクリル酸メチルの繰り返し単位からなる、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーである。PAMAMデンドリマーは、毒性がなく、低コストで、簡単に合成でき、重金属に対して高い親和性を示す7。アミン官能化デンドリマーは、ポリマーのさまざまなアミン単位による強力なキレート効果によって重金属を除去する。
【0008】
通常、PAMAMなどのデンドリマーは、機械的強度を高め、固体材料を形成し、重金属除去に利用できる表面積を増やすために、他の無機材料または有機材料で、担持または統合する必要がある。最も一般的な担持体(supports)は、シリカおよび炭素ベースであるが、チタニア、磁性ナノ粒子、セルロース、キチン、および膜も実証されている。担持されたデンドリマーは、さまざまな重金属(Pb(II)、Cd(II)、Cu(II)、Mn(II)、Ni(II)、Hg(II)など)を除去する機能を示している。デンドリマーの担持は、吸着材へのデンドリマーの希釈(重量による)のために、必然的に最終材料中の全体的なキレート剤含有量を減少させる。アミン官能化デンドリマーは、通常、狭いpH範囲(4.0~7.0)で、公称の吸着容量(<50mg/g)で、いくつかの例外では>500mg/gに達して動作する6。同様に、樹枝状材料の再生および安定性は、十分には調査されていない。
【0009】
2.2.導入:希土類元素の回収
主にランタニド(Ln)金属とスカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)とからなる希土類元素(Rare earth elements)(REEs)は、REEsを技術開発に不可欠なものにする特有の特性を備えた化学的に類似した元素である。具体的には、REEsは、エネルギー、電子機器、および防衛産業における需要の着実な増加を基としているだけでなく、供給市場の不安定性もあり、強く望まれている。2015年、米国地質調査所は、世界のREE埋蔵量は合計1億3000万トンと推定し、主なREE埋蔵量は主に中国(42%)とブラジル(17%)とによって管理されており、米国が所有しているのはわずか1.3%である。2012年においては、中国が世界のREE市場の95%を支配している22。安定した米国のサプライチェーンの欠如、並びに、REEsが採掘される環境的および社会的な懸念だけでなく、外国のREE依存による国家安全保障への懸念も、REEsを回収およびリサイクルするための新技術の開発への多大な努力を促している23。
【0010】
米国において水域からREEを回収することは、非常に大きな課題である。2014年のNoackらの報告によると、海、地下水、河川、および湖からのREE濃度は、5~170pmol/Lの範囲であった24。REE濃度は、酸性水源および酸性土壌から測定すると、劇的に増加することが分かった24 25。近年、本質的に強酸性である酸性鉱山排水(AMD)スラッジは、かなりの濃度のREEsを含むことが分かってきている。REEsは、石炭採掘AMDから300~3,000m/Lを超える濃度で検出され、これは非常に高い濃度であり、この排水の流れが、REE回収の潜在的なソースとなる可能性がある26-28。AMDの液体流は、複雑で、REE混合物と一緒に他のさまざまな金属汚染物質を含んでいるため、混合または純粋なREE成分の抽出が困難となる。
【0011】
最も一般的な産業的分離技術は、多段液-液抽出(LLE)、および樹脂ベースのクロマトグラフィーを使用する29。LLEプロセスでは、大量の有機溶媒を繰り返し抽出に使用して、部分選択的なREE濃縮溶液を得ると同時に、大量の有機廃棄物を生成する。樹脂ベースのクロマトグラフィープロセスは、選択性の課題を克服できるが、イオン交換樹脂のコストは、再生できないために過度に高くなる。REE抽出の新しい技術は、化学的沈殿、膜分離、および吸着を利用する。これらのアプローチのうち、吸着プロセスは、REEsと他の共汚染物質との間の分離効率を向上させながら、溶媒廃棄物を最小限に抑える30。吸収材は通常、ルイス塩基性化合物で官能化されているため、ルイス酸性の高いREEsとの強い相互作用がある。例えば、モンモリロナイトやベントナイトなどの吸着材は、REE吸着効率が低いが、キレート剤で修飾すると、吸着効率は大幅に向上した31-33。REE捕捉に使用される最も一般的なルイス塩基性キレート剤は、カルボン酸塩およびアミン部分(amine moieties)である。
【0012】
固相吸着材の主な2つのタイプは、固体担持材料(シリカなど)に共有結合により固定された、またはポリマー材料の化学組成における、ルイス塩基官能性を基礎としている。アミン官能化シリカ担持体を使用した第一の例は、2014年にFlorekらによって報告され、それによると、ランタニドを抽出および分離するためにジグリコールアミド修飾KIT-6シリカを調製した34。2015年に、Zhengらは、無水マレイン酸で官能化され、Eu3+およびGd3+に対して特に高い活性を示す、REE捕捉用のメソポーラスシリカを調製した35。Huらは、ルイス塩基のジオメトリーがREE捕捉に果たす役割を認識し、最大容量8.47mg/gの吸着容量を持つターゲットREE吸着用のフタロイルジアミド官能化KIT-6シリカを調製した29。2017年には、Wilfongらによってハイブリッドシリカ-アミン-ポリマーマトリックス材料が調製され、高いppmおよびppbのREE吸着効率を示した36 37。シリカ材料は非常に効果的であるが、グラフト(graft)材料は高価になる傾向があり、グラフトプロセスのスケーリングは技術的に困難である。
【0013】
ポリマーのREE吸着材料は、ランタニドおよびCe3+を除去するために、ポリビニルアルコール(PVA)で架橋されたポリ-γ-グルタミン酸(PGA)に由来する固定化ゲル粒子を使用して、2015年にGaoらによって初めて調製された38。該PGA-PVAポリマーは、10mg/Lの投与量の混合物から、0.2g/Lの吸着材充填で、すべてのランタニドを吸着する性能があった。REE吸着のために、他の様々な架橋ポリマー材料が調製されてきた39-44。最も有望なポリマー吸着材の1つは、曝露から30分以内に384mg/gのLa3+を吸着した42。ポリマー材料の利点は、ポリマー材料に組み込むことができるキレート剤の高い充填性に由来する。これにより、材料が溶液から、より高濃度のREEを吸着できるようになる。
【発明の概要】
【0014】
3.本開示の概要
本開示は、水性流体流から金属を除去する方法であって、水性流体流を、式I:
【化1】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)と接触させることを含む、方法を提供する。
【0015】
また、本開示は、水性流体流から金属を吸着、分離、貯蔵、または封鎖する方法であって、水性流体流から金属を吸着、分離、貯蔵、または封鎖するために、前記水性流体流を、式I:
【化2】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、ポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)と接触させることを含む、方法を提供する。
【0016】
また、本開示は、水性の金属含有流から金属を捕捉および除去するためのプロセスであって、(a)式I:
【化3】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(Pデンドリマー)を含む吸着材を中に分散させたハウジングを提供するステップと、
(b)金属含有流が前記吸着材に接触するように、該金属含有流を前記ハウジングに通すステップと、
(c)前記ハウジングを濃縮酸性流で洗い流して、前記吸着材からその中に保持されている金属を脱着させ、脱着金属の溶液を形成するステップと、
(d)前記ハウジングを洗い流して、前記脱着金属を前記ハウジングから除去するステップと、を含むプロセスを提供する。
【0017】
また、本開示は、(a)鉄IIまたは鉄III、ならびに(b)式I:
【化4】
【0018】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)を含む吸着材を含む吸着材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】還元的アミノ化条件による固形吸着材の形成のための、アルデヒド成分およびアミン成分を包含する2段階のワンポット反応の一般的なスキームである。
【
図2】さまざまなポリアルデヒドP-デンドリマーを使用したPEI官能基化固形吸着材の調製である。
【
図3A】ポリアルデヒドP-デンドリマーの例である。
【
図3B】ポリアルデヒドP-デンドリマーの例である。
【
図5】1-G
0/600PEIの固体状態
13CCP/MASスペクトルである。
【
図6】固形吸着材1-G
0/600PEIと出発物質(リンベースのデンドリマーコアおよび600PEI)の赤外スペクトル比較である。
【
図7】1-G
0-TEPA吸着材容量に対する温度の影響を示す熱重量分析(TGA)曲線である。
【
図8】1-G
0/600PEIのZ偏光共焦点顕微鏡画像である。
【
図9A】1-G
0/600PEI(10μm)のクラスターを示すSEM画像である。
【
図9B】1-G
0/600PEI(2.0μm)のクラスターを示すSEM画像である。
【
図9C】1-G
0/600PEI(20μm)のクラスターを示すSEM画像である。
【
図10】1-G
0/600PEIのN
2吸着-脱着等温線である。
【
図11A】50ppm濃度におけるHgおよびPbの吸着材処理である。
【
図11B】500ppm濃度におけるHgおよびPbの吸着材処理である。
【
図12A】50ppm濃度における様々な重金属の吸着材処理である。
【
図12B】500ppm濃度における様々な重金属の吸着材処理である。
【
図13】1g/Lまたは5g/Lの吸着材充填における50ppm濃度でのHgおよびPbの吸着材除去の吸着速度論である。
【
図14】5g/L吸着材処理での50ppm HgおよびPb除去に対するpHの影響である。
【
図15】固形吸着材による混合金属イオン溶液の処理である。
【
図16】固形吸着材のフロースルー吸着および再生である。
【
図17】Cuを用いた吸着から再生までにおける吸着材の色の視覚的変化である。
【
図18】固形吸着材によるHg(II)のクロマトグラフィー分離である。
【
図19】As除去に対するFe(III)担持P-デンドリマー固形吸着材の特性評価-(パネルA)FT-IR、およびSEM(パネルB)である。
【
図20】固形吸着材および酸化鉄(III)官能基化-固形吸着材を用いたモデル化された地下水溶液からのAs(II)、およびAs(IV)の除去である。
【
図21】As除去に対する吸着材充填の影響である。
【
図22】固形吸着材によるAs除去の速度論である。
【
図23】固形吸着材によるAs除去に対するpHの影響である。
【
図24】鉄で官能基化された固形吸着材による亜セレン酸塩Se(IV)および亜セレン酸塩Se(VI)のバッチ除去である。
【
図25】異なる充填量の固形吸着材によるバッチREE除去である。
【発明の詳細な説明】
【0020】
5.本開示の詳細な記載
この開示は、高度のアミン官能性を有する固体で水に安定な材料を提供するための、ポリアミン化合物およびリンデンドリマー間における反応からの直接の吸着材の調製を記載している。該デンドリマーは、本発明者らから2つの公開により最近開示され、それらの調製、それらの物理的特性、およびそれらのCO2回収への使用が記載されている8,9。
【0021】
合成経路は、ポリアミンとポリアルデヒドリンデンドリマーとの架橋反応を含み、これが、スケーリング可能な固体化合物への容易なアクセスを提供する。リンデンドリマー(Pデンドリマー)は、ポリマーの星状の材料であり、固形吸着材を形成するための架橋剤として使用できる。P-デンドリマーは容易な方法で合成でき、通常、アルデヒドなどの反応性末端基によって末端位置で官能化される10。一般に、P-デンドリマーは、材料用途に有利に使用できる熱的に安定した堅牢な化合物である。P-デンドリマーは、中央のコアから出ているブランチの数に基づいてサイズを変化させることが可能であり、各ブランチは「世代(generation)」と呼ばれる。アルデヒドと層状になった高密度化合物の使用は、多くのアミン官能基と反応してポリアミン化合物を硬化させ、最終的に固化させるための優れたアンカーをもたらす。
【0022】
重要なことに、吸着材の調製はモジュール式であるため、さまざまなアミン含有量およびコア構造を持つ材料を調製して、吸着材の反応性を微調整できる。吸着材合成のP-デンドリマーコアおよび世代成長ユニットを変更して、吸着材の形態を修正することができる。世代0~12のP-デンドリマーを使用できる。キレート化固形吸着材を調製するために、任意のポリアミン(2以上のアミン官能基)を使用できる。
【0023】
P-デンドリマー固形吸着材は、バッチ、およびカラムフロースルーの除去アプリケーションの両方で、液体源からの重金属およびREEの除去の優れた候補であることが見出された。開示された固形吸着材は、高容量であり、金属を微量レベル(ppb濃度)まで除去する。重要なことに、記載されている吸着材は、酸および塩基に対して優れた安定性を示し、分解を示さず、金属除去のための過酷な条件下での操作を可能にする。金属除去のさまざまなパラメータ(pH、反応速度、共汚染物質の影響、流量)を調べ、すべての条件下で吸着材は優れていた。
【0024】
5.1.吸着材の調製
固形吸着材は、1)ポリアミン化合物のアミン官能基と、ポリアルデヒド化合物のアルデヒド部分との間の縮合反応によるイミン中間体の形成;続いて、2)上記イミン中間体を水素化ホウ素ナトリウムで還元して、アルキルアミンを形成する、との手順を包含するワンポット2段階の手順で調製され、還元的アミノ化プロセスとしても知られている(
図1)。この2段階のシーケンスは、PEIなどのポリアミン化合物をアルデヒドユニットを介して共有結合でロックし、固形吸着材を形成する。ステップの間に、イミン含有化合物をテトラヒドロフランで洗浄し、乳鉢乳棒を使用して粉砕して、非反応性アミン出発物質を除去する。対象化合物をろ過により分離し、水、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄して、水素化ホウ素ナトリウムの残留物と可溶性有機種とを除去する。両方の反応は、空気または湿気を排除するための予防措置を講じることなく、撹拌条件下で室温にて行われる。使用されるアルデヒド化合物は、市販されているものであってもよく、または標準的な実験室の方法によって合成されてもよい。これらの化合物は、直接アルキル化条件によっても形成され得る。最終的な吸着材は、ふるいにかけるかまたは粉砕して、所望の粒子サイズにすることができる。
【0025】
5.2.吸着材の手順の実施例
ポリアルデヒドP-デンドリマー(1当量)をテトラヒドロフラン(0.005~0.1M濃度)に溶解し、丸底フラスコ内で空気に開放して撹拌した。ポリアミン化合物(0.1~1.0当量)をテトラヒドロフラン(0.2~0.5M)に溶解し、上記の混合物に素早く添加して、5秒から1時間のどこかで形成し始める白色の固体を生成した。反応物を2時間撹拌したままにした。イミン中間体をろ過し、テトラヒドロフランで数回洗浄し、次に乳鉢と乳棒で粉砕して粉末にした。粉末を新しい丸底フラスコに移し、テトラヒドロフラン/メタノール(2:1の比率、0.001~0.1M)に分散させ、撹拌した。この混合物に過剰の水素化ホウ素ナトリウム(>5当量)を加え、5~24時間撹拌した。完了後、混合物をろ過し、水、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させた(
図2)。得られた化合物は、常温保存可能であり、保存のための予防措置は取らなかった。
【0026】
5.3.ポリアルデヒド成分
吸着材合成の該アルデヒド成分は、2つ以上のアルデヒド官能基を持っている必要がある。アルデヒドは、単一または個別のポリアミン化合物のアミン官能基と反応して、不溶性のイミン化合物を生成させることができる。イミン化合物は、架橋ポリマーのような結合のネットワークで構成されているが、アルデヒドユニットは、複数の結合を介して材料内にランダムに分散している。吸着材は、さまざまなポリアルデヒド化合物、およびそれらとポリアミン化合物との反応から調製された。いずれかの成分を変更すると、吸着材の形態および容量に影響を与える可能性がある。
【0027】
この研究で使用されるP-デンドリマーは、求電子性リン含有種への求核試薬の添加を通じて、文献で知られている手順、またはその中のわずかな変更によって、容易に調製される。この研究で使用されたP-デンドリマービルディングブロックの2つの例は、塩化チオホスホリルおよびヘキサクロロホスファゼンである。これらの塩化リン化合物に添加できる一般的な求核試薬の例は、4-ヒドロキシベンズアルデヒドである。P-デンドリマーは、他の求核試薬から合成して、固形吸着材の製造に使用するためのアルデヒド官能基を持つ化合物を生成することができる。固形吸着材を形成するための調製方法は、P-デンドリマー化合物に限定されず、ポリアミン化合物との反応時に2以上のアルデヒドを含む他の分子から合成してもよい。
【0028】
リン系のデンドリマーコアの非限定的な例を
図3に示す。
【0029】
多官能芳香族リンカーの出発物質の非限定的な例は、以下の通りである:
【化5】
【0030】
5.4.ポリアミン成分
固形吸着材のポリアミン成分は、アルデヒド成分との反応のために2以上のアミン官能基を有してもよい。アミンは、市販されており、固形吸着材の合成に費用効果がある。この方法で固形吸着材を製造するために使用されるアミンは、これらに限定されるものではないが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ならびに、線状および分枝状のポリエチレンイミンである。追加の官能基を有する他のアミン化合物を使用して、記載された方法により固形吸着材を合成することもできる。
【0031】
【0032】
さまざまなポリアミン(2以上の第一級アミン)をポリアルデヒドP-デンドリマー化合物と反応させて、固形吸着材を形成することができる。
【0033】
本明細書に記載の吸着材は、複合材料に組み込むことができる。複合材料の非限定的な例を、以下に説明する。
【0034】
表面:複合材料は、ミクロポーラス層の有無にかかわらず、さまざまなカーボンシートを使用して作製した。これらの表面のそれぞれに対して、ヘキサキス(4-ホルミルフェノキシ)シクロ(トリホスファゼン)-PEIコンプレックス、およびKynar UltraFlex(登録商標)B樹脂を使用した。この研究で使用したミクロポーラス層を含む市販のカーボンシートは、Sigracet 10BC、24BC、25BC、34BC、10BA、および24BAである。ガラスおよび金属の表面(ステンレス鋼)も、コーティングすることができる。
【0035】
デンドリマー:Sigracet 24BC表面層、およびKynarUltraFlex(登録商標)B樹脂を用いて、ヘキサキス(4-ホルミルフェノキシ)シクロ(トリホスファゼン)-テトラエチレンジアミン錯体を使用した。
【0036】
樹脂:Sigracet 24BC表面層、およびヘキサキス(4-ホルミルフェノキシ)シクロ(トリホスファゼン)-PEI複合体を用いて、さまざまな樹脂を分析した。テストに供した樹脂は、Methocel、およびKynarFlex(登録商標)2801であった。
【0037】
5.5.定義
以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、現在開示されている主題の説明を容易にするために記載されている。
【0038】
「アルキル」は、親アルカンの単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される、飽和で、分岐または直鎖の、一価の炭化水素基を指す。典型的なアルキル基としては、以下に限定されるものではないが、メチル、エチル、プロパン-1-イル、プロパン-2-イルおよびシクロプロパン-1-イルなどのプロピル、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、tert-ブチルなどのブチルが挙げられる。アルキル基は、例えばトリフルオロメチルのように例えば1つ以上のハロゲンで置換されていてもよく、非置換であってもよい。特定の実施形態において、アルキル基は、1~20個の炭素原子を含む。あるいは、アルキル基は、1~8個の炭素原子を含んでもよい。
【0039】
「アリール」は、親芳香環系の単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される、一価の芳香族炭化水素基を指す。アリールは、例えばベンゼンやシクロペンタジエンなどの5員および6員の炭素環式芳香環、例えばナフタレンやインダンなどの少なくとも1つの環が炭素環式で芳香族である二環式環系、または、例えばベンジルフェニル、ビフェニル、ジフェニルエタン、ジフェニルメタンなどの2つの芳香族環系を含む。アリール基は、例えばハロゲンで置換されていてもよく、非置換であってもよい。
【0040】
「ハロゲン」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、またはヨード基を指す。
【0041】
「重金属」は、環境または健康に懸念のある金属を指す。この開示における重金属の例として:アンチモン(Sb)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、水銀(Hg)、ニッケル(Ni)、オスミウム(Os)、プラチナ(Pt)、セレン(Se)、銀(Ag)、タリウム(Tl)、スズ(Sb)、ウラン(U)、および亜鉛(Zn)がある。
【0042】
本明細書で使用される「金属」という用語は、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ベリリウム(Be)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)、金(Au)、ウラン(U)、および銀(Ag)などの周期表の金属を含む。金属という用語は、ヒ素(As)、セレン(Se)、ポロニウム(Po)、テルル(Te)などのメタロイドまたは半金属元素を包含する。好ましい実施形態において、本開示の金属は、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、およびクロム(Cr)など、環境または人為的汚染のいずれかで自然に見出され、ヒト、動物または環境に比較的高い毒性を有する元素を含む。本明細書で使用される場合、金属という用語は、重金属および希土類金属(REE)を含む。
【0043】
本明細書で使用される「希土類金属」(REE)は、スカンジウム(Sc)、およびイットリウム(Y)を含む第III族元素を指す。具体的に、REEは、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジミウム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびイットリウム(Y)である。
【0044】
「固形担持体」という用語は、ポリマーまたは無機質のいずれかの、親水性マクロポーラス材料を有する材料を意味し、現在において使用可能である。固形担持体は、アクリルアミド誘導体、アガロース、炭素、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、ガラス、マグネタイト、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、シリカ、シリコン、ジルコニア、アルミナ、およびそれらの組み合わせであってよい。固形担持材料は、多孔質ビーズの形態であってもよく、また球形であってもよい。あるいは、担持体は、他の規則的または不規則な形状を有する粒子状または分割された形態であってもよい。他の適切な固形担持材料の例としては、膜、半透膜、毛細管、マイクロアレイ、モノリス、アルミナ、アルミナ担持ポリマー、または多糖類を含むマルチウェルプレート、が挙げられる。本発明の固形支持体は、織布または不織布のような、剛性または非剛性の可撓性材料であってもよい。適切な非剛性の可撓性材料は、膜(当分野で既知の種々の技術で製造された、キャスト、不織、またはマイクロもしくはナノの繊維)であろう。
【0045】
本明細書全体を通して、「約」および/または「おおよそ」という用語は、数値および/または範囲と組み合わせて使用され得る。「約」という用語は、記載された値に近い値を意味すると理解される。たとえば、「約40[単位]」は、40の±25%以内(たとえば、30~50)、±20%以内、±15%以内、±10%以内、±9%以内、±8%以内、±7%以内、±6%以内、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±1%未満、または、その中もしくはその下のその他の値もしくは値の範囲を意味し得る。あるいは、文脈に応じて、「約」という用語は、±半分の標準偏差、±1つの標準偏差、または±2つの標準偏差を意味し得る。さらに、「約[値]未満」または「約[値]より大きい」という句は、本明細書で示される「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。「約」と「おおよそ」という用語は、同じ意味で使用されてもよい。
【0046】
本明細書全体を通して、数値範囲は、特定の量に対して提供される。これらの範囲は、その中のすべての部分範囲を含むことを理解されたい。したがって、「50~80」の範囲は、その中のすべてのあり得る範囲(たとえば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)を含む。さらに、所与の範囲内のすべての値は、それによって包含される範囲の端点であり得る(例えば、範囲50~80は、55~80、50~75等の端点を有する範囲を含む)。
【0047】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲、ならびにその活用形で使用される動詞「を含む(comprise)」は、非限定的な意味で使用され、その単語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目が除外されないことを意味する。
【0048】
明細書全体を通して、「含む(comprising)」という単語、または、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップの群を包含することを意味すると理解されるが、他のいずれの要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップの群を除外するものではない。本開示は、特許請求の範囲に記載されたステップ、要素、および/または試薬を適切に「含む(comprise)」、「からなる(consist of)」、または「本質的に~からなる(consist essentially of)」とすることができる。
【0049】
特許請求の範囲(claims)は、任意の要素を除外するために起草される場合があることにさらに留意されたい。したがって、このステートメントは、クレーム要素の列挙に関連して「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための、または「消極的な」限定の使用のための先行する基礎として機能することを意図している。
【0050】
本明細書で使用されるすべての技術的および科学的な用語は、別で定義されていない限り、本開示が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。好ましい方法、装置、および材料が記載されているが、本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができる。本明細書で引用されているすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
以下の実施例は、本開示をさらに例説するものであり、範囲を限定することを意図するものではない。特に、この開示は、記載された特定の実施形態に限定されず、もちろん、それ自体が変化し得ることを理解されたい。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されたい。
【実施例】
【0052】
6.実施例
6.1.P-デンドリマー/低分子量ポリアミン吸着材
すべての溶媒および試薬は、試薬グレードであり、受け取ったままの状態で使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、EMD Chemicalから購入したシリカゲルプレート(シリカゲル60、F254)で実行した。1HNMRおよび31PNMRスペクトルは、Bruker Avance(1Hの場合は300 MHz、31Pの場合は121 MHz)で記録した。化学シフトは、内部標準として残留溶媒シグナルを使用して、百万分率(ppm)として報告する(CHCl3、1HNMRのδ= 7.26 ppm)。1HNMRのデータは、化学シフト(δ、ppm)、多重度(s =シングレット、d =ダブレット、t =トリプレット、dd =ダブレットのダブレット、m =マルチプレット)、結合定数(Hz)、および積分として表した。見つかったピークの化学シフトは、31PNMRスペクトルで報告した。フーリエ変換赤外スペクトルは、PerkinElmer Spectrum 100FT-IR分光計にてニートサンプル(ATR FT-IR)で取得した。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、FEI Quanta 200可変圧力走査型電子顕微鏡を使用して得られた。熱安定性の測定は、メトラートレドの熱重量分析装置(TGA)にて、空気雰囲気下で1000℃まで5℃/分のステップを使用して実施した。77Kでの窒素収着等温線は、Micromeritics ASAP2020装置を使用して得られた。測定前に、サンプルを120℃で6時間脱気した。表面積は、13.5Åと推定される窒素分子の表面積を仮定して決定した。二酸化炭素収着等温線は0℃で得られた。元素分析は、Elemental Analyzer Flash 2000 C/H/N/S機器で実施した。
【0053】
6.1.1.架橋吸着材の調製
ヘキサ(4-ホルミルフェノキシ)シクロトリホスファゼン(HAPCP)-1-G
0の合成
【化6】
【0054】
文献(C. Wang et al., RSC Adv 2015、5、88382)を応用した手順により、次のように調製した:乾燥した2Lの3つ口丸底フラスコに、炭酸カリウム(202g、1.5mol、12.2当量)、および4-ヒドロキシベンズアルデヒド(89.4g、0.73mol、6.1当量)を加えた。その固形分をHPLCグレードのテトラヒドロフラン(1.3L、0.1M)に溶解し、加熱マントルを介して、撹拌条件下で窒素雰囲気下で4時間加熱還流した。その後、フラスコを火から離し、温かいうちに、ヘキサクロロホスファゼン(42g、0.12mol、1当量)を10分かけて少しずつ加え、混合物を窒素下で48時間撹拌した。次に、溶媒を回転蒸発下で除去し、残りの固体を200mLのクロロホルム、および300mLの3N NaOH水溶液で溶解した。有機層を分離し、水層をクロロホルム(100mL)で3回抽出した。合わせた有機層を回転蒸発下で濃縮して、黄色の固体を形成した。その固体を500mLの熱酢酸エチルで溶解し、一晩再結晶させた。生成物を真空ろ過により単離し、100mLの酢酸エチルで洗浄して、ヘキサ(4-ホルミルフェノキシ)シクロトリホスファゼン1-G0の白色結晶を得た(90.5g、105mmol、88%収率)、1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.94 (s, 6H), 7.74 (d, J = 9.0 Hz, 12H), 7.14 (t, J = 9.0 Hz, 12H). 31P NMR (121 MHz, CDCl3) δ 7.07 (s). Anal. Found: C, 57.78; H, 3.41; N, 4.98. C42H30N3O12P3Calc.: C, 58.55; H, 3.51; N, 4.88 %.
【0055】
【0056】
文献(N. Launay et al., J. Organometal. Chem. 1997, 529, 51)を応用した手順により、次のように調製した:乾燥した丸底フラスコに、1-G0(7.76g、9.0mmol、1当量)、およびクロロホルム(90mL、0.1M)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で0℃に冷却し、撹拌しながら、ジクロロホスホノメチルヒドラジド(M. L. Lartigue、et al., Bull Soc Chim Fr 1997, 134, 981)(10.47g、58.5mmol、6.5当量)を滴下した。反応物を一晩撹拌し、室温まで温めた。TLC分析により反応が完了したと判断した後、回転蒸発下で溶媒を除去して、濃厚な白色油を得た。縮合ヒドラジン複合体は、ヘキサンで沈殿させ、ヘキサンで洗浄しながら真空ろ過した後、オフホワイトの固体(約16g)として得られた。中間化合物を、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(15.4g、126mmol、14当量)と共に乾燥した丸底フラスコに加え、固体をテトラヒドロフラン(450mL、0.02M)に溶解した。撹拌混合物に無水炭酸セシウム(82.2g、252mmol、28当量)を加え、反応物を一晩撹拌した。TLC分析により反応が完了したと判断した後、溶媒を回転蒸発下で除去し、残りの固体を100mLのクロロホルム、および100mLの1N NaOH水溶液で溶解した。有機層を分離し、水層をクロロホルム(50mL)で3回抽出した。合わせた有機層を回転蒸発下で濃縮して、1-G1(17.55g、6.1mmol、68%収率)を白色固体として得た、1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.87 (s, 12H), 7.80 (d, J = 8.5 Hz, 24H), 7.67 - 7.52 (m, 12H), 7.32 (d, J = 7.6 Hz, 24H), 7.01 (d, J = 8.5 Hz, 12H), 3.32 (d, J = 10.5 Hz, 18H). 31P NMR (121 MHz, CDCl3) δ 60.43 (s), 7.97 (s). Anal. Found: C, 53.23; H, 3.71; N, 7.37; S, 6.60. C132H108N15O30P9S6Calc.: C, 55.52; H, 3.81; N, 7.36; S, 6.74 %.
【0057】
【0058】
手順は、修正された条件を使用して1-G1の合成経路に従った:縮合ステップには、1-G1(4.5g、1.6mmol、1当量)、クロロホルム(30mL、0.05M)、およびジクロロホスホノメチルヒドラジド(3.7g、20.7mmol、13当量)を使用した;添加ステップには、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4.87g、40mmol、26当量)、テトラヒドロフラン(250mL、0.006M)、および無水炭酸セシウム(26.1g、80mmol、52当量)を使用した。所望の化合物1-G2(9.26g、1.35mmol、85%収率)が白色粉末として得られた、1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.88 (s, 24H), 7.80 (d, J = 5.9 Hz, 48H), 7.58 (m, 54H), 7.28 (m, 48H), 7.17 (d, J = 8.1 Hz, 24H), 6.93 (m, 12H), 3.49-3.26 (m, 54H). 31P NMR (121 MHz, CDCl3) δ 62.32 (s), 60.28 (s), 8.20 (s). Anal. Found: C, 50.73; H, 3.66; N, 7.59; S, 7.83. C312H264N39O66P21S18Calc.: C, 54.76; H, 3.89; N, 7.98; S, 8.43%.
【0059】
o,o,o-トリス(4-ホルミルフェニル)ホスホロチオエート(TPPT-2-G
0の合成
【化9】
【0060】
文献手順に従って調製した(N. Launay et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1994, 33, 1589)。
【0061】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 10.01 (s, 3H), 7.95 (d, J = 8.2 Hz, 6H), 7.42 (dd, J = 8.5, 1.5 Hz, 6H). 31P NMR (121 MHz, CDCl3) δ 49.78 (s). Anal. Found: C, 58.24; H, 3.54; S, 7.30. C21H15O6PS Calc.: C, 59.16; H, 3.55; S, 8.7.52%.
【0062】
【0063】
文献手順(Launay1994)に従って作成した。
【0064】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.90 (s, 6H), 7.80 (d, J = 9.0 Hz, 12H), 7.61 (m, 6H), 7.31 (d, J = 7.5 Hz, 12H), 7.26 (m, 6H), 3.35 (dd, J = 15.8, 9.2 Hz, 9H). 31P NMR (121 MHz, CDCl3) δ 60.18 (s), 52.38 (s). Anal. Found: C, 54.08; H, 4.05; N, 7.86; S, 8.26. C66H54N6O15P4S4 Calc.: C, 55.70; H, 3.82; N, 5.90; S, 9.01.
【0065】
TEPAを使用した架橋吸着材の調製例:
吸着材の調製は、市販のポリアミンを使用して、空気雰囲気下で丸底フラスコ内で実施した。各P-デンドリマー、およびポリアミンの吸着材の調製を最適化した。たとえば、1-G
0、およびTEPA(1-G
0-TEPAと呼ばれる)から調製された吸着材の合成は、次のように進行する:
50mLの丸底フラスコに、ヘキサ(4-ホルミルフェノキシ)シクロトリホスファゼン1-G
0(0.5g、0.58mmol、1当量)およびテトラヒドロフラン(10mL、0.06M)を加えた。すべての固形物が溶解するまでフラスコを加熱し、空気に開放して撹拌した。温かいうちに、3mLのテトラヒドロフラン中のTEPA(0.55g、2.9mmol、5当量)の溶液を上記の撹拌混合物に急速に(5秒未満で)加えた。10秒未満で、白色の固体が形成し、1時間撹拌した(または撹拌棒が凍結されている場合はそのままにした)。次いで、固体を真空ろ過により単離し、テトラヒドロフラン(50mL)で洗浄し、乳鉢と乳棒で粉砕し、新しい100mLの丸底フラスコに入れた。固体を、空気に開放して撹拌しながら、40mLのテトラヒドロフランおよび20mLのメタノールに懸濁させた。この混合物に無水水素化ホウ素ナトリウム(430mg、12mmol、20当量)を室温で加え、反応物を窒素下で14時間撹拌したままにした。次いで、混合物を真空下でろ過し、得られた固体を50mLの蒸留水、50mLのメタノール、および25mLのジエチルエーテルで洗浄した。洗浄により白色粉末が生成され、これをさらに減圧下で乾燥させた結果、470mgの1-G
0-TEPAが白色粉末として得られた。
【化11】
表1.1-G
0-TEPA調製条件とCO
2容量
【表1】
【0066】
6.2.P-デンドリマー/高分子量ポリアミン吸着材、例:PEI
PEIを使用した架橋吸着材の調製例:
50mLの丸底フラスコに、600MWの分岐PEI(2.78g、4.63mmol、2当量)およびテトラヒドロフラン(20mL、0.12M)を加えた。溶液が均一になるまでフラスコを加熱した。温かいうちに、5mLのテトラヒドロフラン中のヘキサ(4-ホルミルフェノキシ)シクロトリホスファゼン1-G0(2.0g、2.32mmol、1当量)の溶液を上記の撹拌混合物に急速に加えた。10秒未満で、白色の固体が形成され、1時間撹拌した。次いで、固体を真空ろ過により単離し、テトラヒドロフラン(50mL)で洗浄し、乳鉢と乳棒で粉砕し、250mLの新たな丸底フラスコに入れた。固体を80mLのテトラヒドロフランおよび40mLのメタノールに懸濁させ、無水水素化ホウ素ナトリウム(1.7g、46mmol、20当量)を室温で加えた。洗浄により白色粉末が生成され、これをさらに減圧下で乾燥させた結果、白色粉末として4.22g(90%収率)の1-G0/600PEIが得られた。
【0067】
6.3.複合吸着材材料の手順例
架橋吸着材複合材料の調製例:
2mLのアセトンおよび4.0mgのPVDF樹脂KynarUltraFlex(登録商標)Bを含有する溶液を、樹脂が完全に溶解するまでウォーターバスで超音波処理した。次いで、40mgのポリアミンP-デンドリマー吸着材を添加し、10分間超音波処理して完全に分散させた。次に、粘性のある混合物(10重量%の結合剤を含む)を、12.4mgの炭素長方形シートの表面に部分的に層状に塗布した。一旦アセトンが蒸発したら、厚くて白いポリマー層が得られるまで、さらにコーティングを施した。試験前に完全に乾燥するように、最終的な材料を1時間風乾した。カーボンシートにくっついた(bound to)ポリマー/樹脂の総量は合計5.2mgであった。複合材料はカーボンシートによく接着しており、この場合、適用した厚さは4.49mmであった。その厚さは、カーボンシートに塗布されたポリアミン吸着材/樹脂混合物の層の数に直接関係している。
【0068】
6.4.固形吸着材の特性
本明細書で調製された固形吸着材は、CPMAS核磁気共鳴(NMR)イメージング、およびフーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって特徴付けられ、還元的アミノ化プロセスを介したアルデヒドおよびアミン成分間の効果的な反応を確認した。吸着材の有機物含有量はC/H/N元素分析(EA)で測定し、熱安定性は熱重量分析(TGA)で測定した。材料の表面および形態の整合性(integrity)は、Z偏光共焦点顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法(SEM)、および透過型電子顕微鏡法(TEM)で調べた。表面積および細孔径分布特性は、N2等温線によって決定した。本発明の開示では1つの固形吸着材が記載されているが、製造された他の固形吸着材についても同様の特性データが得られた。
【0069】
6.5.本開示の吸着材の例:ヘキサキス(4-ホルミルフェノキシ)シクロ(トリホスファゼン)-PEI錯体(complex)
CPMAS核磁気共鳴(NMR)
【0070】
サンプルのスペクトルは、それぞれ18~50ppmおよび100~140ppmの範囲で、様々なアルキルおよびアリール炭素ピークを示した。160ppmを超えるイミンC=Nピークは見られなかった。この証拠は、PEIが1-G
0/600 PEIの構造と一致する中間イミンの還元的アミノ化を介して、安定したC-N結合によって吸着材内で共有結合していることを裏付けている。1-G
0/600 PEIの固体13CCP/MASスペクトルを
図5に示す。
【0071】
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法
【0072】
生成されたP-デンドリマー成分、PEI成分、および固形吸着材のFTIRスペクトルを
図6に示す。固形吸着材のFTIRスペクトルには、予想される大きなC=O伸縮信号(~1600 cm
-1)がなく(abscent)、PEIから組み込まれた一級および二級アミンからの大きなN-H伸縮信号(3100~3400cm
-1)が保持されている。P-デンドリマー成分からのアルデヒドの大部分(> 95%)は、プロセスを通して還元された。
【0073】
C/H/N元素分析(EA)
【0074】
C/H/N元素分析の結果は、以下の通りである。
【表2】
【0075】
熱重量分析(TGA)
【0076】
吸着材は、200℃まで安定であることが見出され、その時点では、20.5重量%の損失を受け、1000℃に達するまで徐々に87重量%を失った。つまり、吸着材はCO
2捕捉条件下で安定しており、実用的な温度で再生することができる。熱重量分析(TGA)を
図7に示す。
【0077】
Z偏光共焦点顕微鏡
【0078】
Z偏光共焦点顕微鏡画像は、あるマクロスケールの結晶性を有する大きな凝集分子を示した。その粒子は白色である。
図8を参照。
【0079】
走査型電子顕微鏡(SEM)
【0080】
SEMから得られた画像により、2.0μmまでの凝集粒子を区別することができた。結晶ネットワークなどの構造秩序は直接観察されなかった。
図9A~9Cを参照。
【0081】
N
2
等温線
【0082】
吸着材の形態論(morphology)を、N
2吸着-脱着等温線によって分析した。N
2の物理吸着により、表面積は11.0m
2/g、細孔容積および細孔サイズはそれぞれ0.005cm
3/gおよび18.1475Åであった。吸着材は、分子の凝集した非結晶構造の整合性のために、表面積が小さくなっている。N
2吸着-脱着等温線を
図10に示す。
【0083】
6.6.水中における吸着特性
P-デンドリマーおよびポリアミン架橋を介して調製された吸着材は、ヒドロゲルとして作用する。ヒドロゲルは、親水性であり、水で著しく膨潤することの可能なポリマー材料である11。ここで調製された固形吸着材は、水にも、液体媒体(水性、有機性、酸性、塩基性)にも溶解しない。この材料は、ポリアミン化合物との水素結合によって水を吸収し、架橋マトリックスにチャネルを開いて水で満たす。たとえば、調製された吸着材は、吸着材1グラムあたり12.8gの水を取り込むことができた。ポリアルデヒドP-デンドリマー、またはポリアミンを変更することにより、固形吸着材の膨潤能力に影響を与える。さらに、これらの吸着材は、酸性および塩基性条件に対して非常に安定していることがわかった。材料を12N HClか、50wt% NaOHかのいずれかの水中に30日間浸漬した後、分解は観察されなかった。水による材料の膨潤は、水にさらされる吸着材の表面積を増加させることにより、吸着材の外部表面および内部表面の化学種が、溶解した汚染物質と反応する機会を与えてしまう。固形アミン吸着材は、主にエチレンジアミンの繰り返し単位(吸着材の質量の最大20wt%を占める)で構成されており、金属に対するキレート剤として機能することができる。
【0084】
6.7.重金属除去分析試験
吸着材処理の前後の液体サンプルの重金属含有量を、同心ガラスネブライザー、衝突セル技術(CCT)、およびペルチェ冷却ガラススプレーチャンバーを備えた、サーモシリーズI誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)により測定した。各重金属液体サンプル、および混合重金属液体サンプルの吸着材の除去効率を、バッチ分離とクロマトグラフィー分離によって測定した。
【0085】
典型的なバッチ分離実験において、200mLの重金属汚染水を、1.0gの吸着材で処理し、設定された時間(典型的には12時間)撹拌状態にした。完了したら、溶液をろ過して微量の固形物をすべて除去し、液体金属含有量をICP-MSによって分析した。典型的なクロマトグラフィー実験において、ガラスフリットカラムに2.0gの固形吸着材(パッキングなし)を充填した。この吸着材に、流れている(flowing)重金属汚染された溶液を添加し、処理された液体をカラムの末端で捕捉した。完了したら、溶液をろ過して微量の固形物をすべて除去し、液体金属含有量をICP-MSによって分析した。
【0086】
6.8.重金属除去
水から重金属を結合、および除去する吸着材の傾向評価を、水銀および鉛について開始した。P-デンドリマー固形吸着材を用いてさまざまな充填(loading)レベルで、50ppmおよび500ppmの両濃度の、HgおよびPbのストック溶液を個別にバッチ処理した。吸着材をストック溶液に懸濁し、10時間撹拌し、ろ過し、処理した溶液の金属含有量をICP-MS分析で測定した。50ppmHg溶液を1g/Lの充填で吸着材により処理すると、95.6%のHgイオンが除去された(
図11A)。吸着材の充填を5g/Lに増やすと、除去率は98.6%に増加した。より高い濃度では、500ppm溶液から1~5g/Lの充填で、99%を超える効率でHgを除去することができた(
図11B)。Pb除去は、50ppmおよび500ppmの両方の溶液において、より効果的であり、すべての吸着材充填で99%を超える除去効率が観察された。水中のHgまたはPbの量は、安全であるとは見なされないため、99%を超える除去が常に望まれる、これは、5g/Lの充填量の吸着材で達成された。
【0087】
吸着材の充填の効果、および吸着材の金属除去能力を、Cu、Co、Fe、およびNi、つまり、地下水において規制を必要とし、廃水でよく見られる天然に存在する金属、について拡張した。汚染された溶液を1g/Lの充填で吸着材により処理したところ、Cu、Co、Fe、およびNiの除去効率は乏しい結果を示した(
図12A)。充填を5g/Lに増やすと、除去効率が大幅に向上した。Coは89.6%、CuおよびNiは>96%、Feは>99%除去された。500ppmの濃度でより濃縮された溶液を処理した場合にも、同様の傾向が観察された(
図12B)。吸着材の1g/L充填では、HgおよびPbのみが、95%を超えて除去でき、Cu、Co、Fe、およびNiの除去効率は、50%を下回った。吸着材の充填を5g/Lに増やすと、すべての金属が90%を超えて除去され、除去効率が望ましいレベルまで劇的に向上した。吸着材が、異なる速度で金属に結合する結果が示され、これは、金属のルイス酸性度、およびさまざまなpHでのイオン化種によって規定されている可能性がある。
【0088】
6.9.重金属除去の速度論
水処理プロセスにとって、汚染された溶液に対する吸着材の初期接触時間からの急速な吸着が、非常に望ましい。pH7における50ppm濃度のHgおよびPbを、個別に吸着した場合の速度論的結果を
図13に示した。HgおよびPbの両方で、固形吸着材による急速な吸着が観察された。1g/Lまたは5g/Lの吸着材充填レベルとは無関係に、Hgの55%およびPbの90%が、5分以内に除去された。30分後には、Hgの92%およびPbの>95%の除去が測定された。30分後には、金属濃度は5ppm未満に減少し、残りの微量金属の結合は拡散速度論によって遅くなった。HgおよびPbの吸着材への急速な結合は、架橋マトリックスにおける繰り返しエチレンジアミン単位で構成される吸着材の高度なキレート性によって説明できる。重要なこととして、この吸着材の膨潤挙動により、金属の表面結合と内部結合の両方を可能にする。
【0089】
6.10.重金属除去に対するpHの影響
吸着に対する汚染水のpHの影響を、高酸性条件(pH2)から高アルカリ性条件(pH12)まで調査した。過酷なpH環境に対するこの吸着材固有の安定性(セクション3.1を参照)により、過酷な環境から金属を除去する機会が得られる。印象的なことに、該吸着材は、pH2~12までにおいて、HgおよびPbの除去に対して完全な活性(97~99%の除去)で動作するという結果を示した(
図14)。多くの吸着材の場合、溶液のpHは、吸着材の除去能力に関して最も影響を与えるパラメータである。たとえば、低pH(<4.0)では、HgCl
2は塩化物の種分化(speciation)とともにHg
2+にイオン化する。より高いpH(>4.0)では、主な化学種は、Hg(OH)
2である。通常、吸着材はこれらの種の1つに対して選択的であり、pHスペクトル全体で高い除去効率を提供しない。この驚くべき性能は、P-デンドリマー固形吸着材の強力なキレート効果を披露するものである。
【0090】
6.11.混合金属汚染溶液のバッチ処理
各金属が50ppm(イオンの総濃度:300ppm)に調製されている混合金属イオン溶液を吸着材で処理して、結合に対する混合イオン競合性を評価した。HgおよびPbの除去効率が、混合金属環境で維持され、1g/Lの吸着材充填でCu、Co、Fe、およびNiの除去効率を大幅に上回っている結果が示された(
図15)。該吸着材は、他の重金属汚染物質に対して66%の選択性でHgおよびPbを除去した。吸着材の充填を5g/Lに増やすと、Cu(77%)を除く、すべての金属の除去効率を90%以上にすることができた。この結果は、該吸着材が他の金属イオンの存在下でも、水源から有毒金属(HgおよびPb)を除去するのに効果的である可能性があることを示している。
【0091】
6.12.重金属の回収と吸着材の再生
固形吸着材は、重金属を吸着する能力、金属を選択的に放出する能力、および付随的な吸着試験にたいして再生する能力を有する。この能力は、効果的な重金属除去を維持しながら、吸着材を繰り返し再利用できるようにすることで、プロセスコストの削減につながる。このプロセスは、個々のイオン除去を通して、50ppmのPbおよびCu溶液で実証された(
図16)。金属溶液を吸着材床に流し通した後、吸着材は>99%のPbおよび98%のCuを除去することがわかった。金属の結合した吸着材は、1N HClを添加して、吸着材から金属を引き剥がすことにより再生し、脱イオン化のために水で洗浄した。吸着材は、3サイクルにわたる吸着および再生で、>99%のPbおよび>93%のCuの除去効率を維持した。再生の有効性は、Cu結合吸着材(暗い)から遊離アミン吸着材(白)への劇的な色の変化によって視覚的に観察された(
図17)。
【0092】
6.13.重金属除去のクロマトグラフィーによるデモンストレーション
この吸着材が、静的吸収ではなく、流れる液体から重金属を能動的に除去できるかどうかを測定するために、フロースルー実験を設計した。ガラスカラム(直径2インチ)に、2.0gの緩く詰めたP-デンドリマー吸着材を装填した。水中で50ppmとなるHgCl
2400mL溶液を、30分後に溶液全体が吸着材を通過するように、約13.3mL/minの速度でカラムに添加した。吸着材の最上層は、溶液が通過するにつれて時間の経過とともにゆっくりと灰色に変わり、これは水銀の吸着を示していた(
図18)。ろ過された水を収集し、ICP分光法で分析し、処理済み溶液のHgが0.1ppm未満であることを明らかにした。これは、99.8%の除去を示している。さらに、吸着材は、このフロースルー設計を用いて、13.3mL/minの流量により同じ効率(>99%の除去)で50ppmPbの溶液を除去できることがわかった。該吸着材は、濃縮された流水(50ppm)から飲料水用のEPA規制値を下回るまで、HgおよびPbを除去する能力があった。
【0093】
6.14.ヒ素の除去
ヒ素は、一般に、無機種As(V)またはAs(III)の形で水中に見出される。ヒ素は、凝固および凝集、沈殿、膜ろ過、イオン交換、ならびに吸着を含む、さまざまな手法を通じて、除去するのが特に難しいことが証明されてきた。たとえば、活性炭は、炭素1グラムあたり数ミリグラムのAsしか除去できなかったため、このアプローチは高価で実用的ではなかった。ヒ素は、地下水供給に高濃度で存在するため、このようなシステムからの除去は非常に重要となる。溶存As(V)およびAs(III)イオンは、地下水中の酸素種で飽和しており、アミンの封鎖によって除去することはできないが、これらのイオンは、酸化鉄表面に対して高い親和性を持っている。他の金属イオンを含有するモデル化された地下水溶液から、選択的にAs(V)イオンおよびAs(III)イオンの両方を容易に吸着できる材料を提供するために、酸化鉄を本開示の(our)固形吸着材のマトリックスに埋め込んだ。
【0094】
6.15.ヒ素固有の吸着材
酸化鉄は、水性FeSO
4の浸透を介して、P-デンドリマー固形吸着材のポリマーマトリックス内に埋め込み可能であり、結果として、アミン配位を介して鉄分子の結合をもたらし、空気への曝露時に、Fe(II)種が酸化Fe(III)に酸化された。吸着材へのFe(III)酸化物の担持は、Fe(III)の酸化状態を示す白から赤みがかったオレンジへの色の変化によって、容易に視覚化された。FT-IRによるFe/PEI担持吸着材の分析において、Fe(III)酸化物の配位を示すシフトが見られた(
図19、パネルA)。SEM分析では、RTIの官能化されていない固形吸着材と同様に、Feに担持された吸着材が、より大きな凝集体に凝集する不規則な粒子で構成されていることが示された(
図19、パネルB)。酸分解研究の結果は、Fe/PEI吸着材のFe含有量が252mg/gであることを示した。
【0095】
6.16.ヒ素吸着材の調製
丸底フラスコに20mLの水を加え、その溶液を窒素ガスで3時間バブリングした。フラスコを70℃に加熱し、溶液を窒素雰囲気下に保ちながら、10.0gのFeSO4-7H2Oを加えた。鉄が溶解した後、6.0gのP-デンドリマー固形吸着材を添加し、混合物を3時間撹拌した。媒体中の固形物は完全に白からターコイズ色に変わった。反応混合物をろ過し、固体を12時間空気にさらし、オレンジ/赤に変色させて、Fe(II)種をFe(III)に酸化させた。残りの固形物を乳鉢と乳棒で粉砕し、1.0Lの水で洗浄して未結合の鉄を溶出し、50℃で24時間真空乾燥して、Fe/PEI吸着材を得た。
【0096】
6.17.官能化および非官能化固形吸着材によるヒ素除去の比較
Fe/PEI吸着材によるAs除去効率のバッチ試験を、モデル化された粉砕ブライン水で実施し、該ブライン水は、pH7.5で、おおよそAs(III)(2,500μg/L)、As(V)(2,500μg/L)、B(15,000μg/L)、Mn(II)(2,500μg/L)、およびNaCl(1030mg/L)を含有し、すべての金属分析はICP-MSによって測定した。5g/Lの充填でFe/PEI吸着材を使用してブライン水を処理すると、12時間で96%のAs、および2.3%のMnが除去された(
図20)。Fe/PEI吸着材は、B、およびNaCl種に対しては親和性を示さなかった。ブライン水を官能化されていない吸着材で処理すると、選択性が逆転し、99%のMn、および11.8%のAsが除去され、B、およびNaClに対する親和性はなくなった(
図20)。Fe/PEI吸着材のアミン官能基の大部分はFe(III)酸化物に配位しており、Mnに結合できるアミンはほとんど残っていないため、吸着材はAs種に対して高度に選択的である。官能化されていないRTI PEI吸着材は、非常に活性の高いキレート剤であり、ブラインからMnを除去するのに驚くほど効果的であることが証明されている。
【0097】
6.18.ヒ素除去に対する吸着材充填の影響
Fe/PEI吸着材の充填は、As除去効率に相関的な影響を与える。1g/Lを超える吸着材の充填により、バッチテストで90%を超える除去効率が得られた(
図21)。充填を0.25g/Lに減らすと、75.5%のAs除去効率が維持された。Fe/PEI吸着材を使用して除去できるAsの量は、吸着材の鉄含有量に直接関連している。
【0098】
6.19.ヒ素除去の速度論
バッチAs除去速度は、1g/Lの処理充填での吸着材における最初の接触時において急速であった(
図22)。5分以内に、複合のAs種の60%以上が除去され、60分で75%のAs除去が達成された。接触時間を10時間まで延ばすと、Fe/PEI吸着材によるAs除去効率は93%になった。60分で75%のAsを除去した後、かなりの数のFe(III)酸化物活性部位が、Asイオンによって消費されていた。さらにAsイオンが薄まっていくにつれ、活性Fe(III)酸化物サイトの数が減少すると、拡散限界吸着(diffusion limited adsorption)を呈した。As除去の急速な反応速度は、吸着材技術を膜システムに付加するために必要なフロープロセスにとって非常に有望である。
【0099】
6.20.ヒ素除去に対するpHの影響
さらに、吸着材のAs除去効率に対するブライン水のpHの影響を、バッチ試験によって調べた。印象的なことに、Fe/PEI吸着材は、高酸性(pH2において、90%除去効率)、および高塩基性(pH12において、99%除去効率)の条件で、As除去効率>90%を維持した(
図23)。中性付近のpHで優勢なヒ素種は、As(III)の場合はHAsO
2であり、As(V)の場合はH
2AsO
4
-、およびHAsO
4
2-である。より高いpH値では、陰イオン性ヒ酸塩種が優勢であり、Fe(III)酸化物による除去のためのより高い結合値を提供する。重要なことは、Fe/PEI吸着材は、pH6~8の範囲内の一般的な地下水でAsを効果的に除去するということである。
【0100】
6.21.ヒ素除去のための鉄修飾吸着材の再生
この吸着材の2つの潜在的な適用経路としては、As飽和吸着材をごみ処理地に廃棄し交換するという、使い捨て材料とするもの、または、As飽和吸着材を繰り返し使用するために、吸着したAsを除去することによって再生させるという、再生吸着材とするもの、がある。どちらのシナリオでも、吸着材は飽和時にAsを浸出してはならない。初めに、200mLのAs、B、およびMnブライン水を1gのFe/PEI吸着材(5g/L充填比)で処理することにより、As浸出の可能性を調べた。12時間以上かけて、吸着材は、ブライン水から94.7%のAsを除去した。ろ過した吸着材を100mLの脱イオン水で洗浄すると、吸着材から約200μg/LのAsが浸出することが示されたが、1Lの脱イオン水洗浄後に収集した画分では、浸出したAsが、10μg/L未満に減少した。Fe/PEI吸着材は、ポリマーチャネルの膨潤によってブライン水を保持する。最初の洗浄水は、膨潤したポリマーに閉じ込められたブライン水に取って代わり、これが最初に浸出したAsを説明するものとなる。重要なこととして、吸着材は流水(flowing water)からは、Asを浸出させないことである。
【0101】
次に、Fe/PEI吸着材の再生について調べた。吸着材を0.1M NaOH水溶液で洗浄し、最初の洗浄フラクションで4,500μg/L Asが観察され、1Lの基本洗浄後に40μg/L As未満が観察された。SEMおよびFTIRによるリサイクル吸着材の試験において、前処理から再生後まで、構造的に、または化学的に明確な変化は全く見られなかった。バッチテストによる該再生吸着材を用いた新しいブライン溶液の処理では、95%のAs除去を達成した。Fe/PEI吸着材のリサイクル可能性についての予備的な証拠は、As除去吸着材としての使用にとって非常に有望である。ブライン水からのMnの除去に対処するために、ブライン溶液を、5g/L充填で等量のFe/PEI吸着材、および官能化されていないPEI吸着材で処理した。処理されたブライン水は、94.7%のAs除去、および98.9%のMn除去を示した。ろ過した吸着材を0.1M NaOH水溶液で洗浄し、新しいブライン溶液にさらした。リサイクルされた複合吸着材混合物の除去効率は、Asで95.1%、Mnで99.8%であった。RTIの吸着材は、予備データに基づいて、AsおよびMnの両方の除去に対処するために、遊離アミンおよびFe(III)酸化物の両方の機能を備えるように設計可能である。
【0102】
6.22.導入:セレンの除去
セレン(Se)は、微量レベルでヒトの細胞機能において重要な役割を果たす、天然に存在する元素であるが、高用量では毒性になる。その有益な健康への影響のために、Seは、EPAによって、飲料水中においては50ppbレベルまでを許容されており、その濃度は厳密に管理されている。セレンは、一般的に農業活動、鉱業、産業廃棄物から、そして排煙脱硫を介して飲料水に入り込む12。健康リスクが最も高いセレンの最も一般的な形態は、無機亜セレン酸塩-Se(IV)、(SeO3
4-)、およびセレン酸塩-Se(VI)、(SeO4
2-)である。水性セレンを除去するために採用された技術は、凝固、イオン交換、膜ろ過、ならびに、生物学的および化学的還元を基礎としている。これら技術の普及は、高い運用コスト、有毒な化学的処理の必要性、および有毒な廃棄物の発生を理由に制限されてきた13。EPAが推奨する技術は、フェリハイドライトによるSeの沈殿を包含するが、この方法は、50ppb未満のSeを除去するには経済的ではない14。セレン除去用の吸着材としての酸化鉄の使用は、大きな注目を集めている13,15-18。酸化鉄ナノ粒子であるFe3O4は、溶液中での安定性、溶解性、分散効果が低いことが多く、酸化鉄をより実用的な形に変化させることが求められている19。1999年、Min および Heringは、Fe(III)をドープしたアルギン酸ゲルバイオポリマーを使用して、狭いpH範囲のSe(IV)を除去した20。2008年、Zhangらは、粒状活性炭にFe(III)酸化物をドープし、pH範囲2~8で5時間にわたって>90%のセレン除去を達成した21。セレン除去のための酸化鉄を用いた修飾ポリマーの使用は、私たちの知る限りでは報告されていない。
【0103】
6.23.固形吸着材による亜セレナイト(Selenite)、セレナイト(Selenate)、および亜セレン酸(Selenous acid)の除去
3種の水性無機セレンストック溶液:1)5000ppb Se(IV)、2)5000ppb Se(VI)、ならびに3)2500ppb Se(IV)および2500ppb Se(VI)を調製した。これらすべての溶液を5g/L充填の鉄官能化固形吸着材で処理すると、ICP-MSの検出限界を下回るSeが除去された(
図24)。これは無機セレン除去に非常に有望である。2500ppb Se(IV)および2500ppb Se(VI)ストック溶液を未修飾の吸着材で処理すると、12時間で87%の除去効率が達成された。
【0104】
二酸化セレンの水への曝露から形成される亜セレン酸は、産業廃棄物由来のセレンのもう一つの潜在的汚染源である。亜セレン酸H2SeO3の6120ppb(6.12mg/L)溶液を固形吸着材で処理すると、57.5%の除去が達成された(表2)。鉄で修飾された固形吸着材を使用すると、99.9%のセレンを除去することができた。
【0105】
【0106】
6.24.固形吸着材による希土類元素(REE)の封鎖
混合REE溶液は、以下の組成物;一価イオン、Sc、La、Pr、Ce、Eu、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Nd、Th、Tm、Fe、K、Mn、およびMgの各30ppmで調製された。モデル化されたAMD REE溶液のpHは3.3であった。AMD液体(Fe、Mn、Mg、K)に一般的な共汚染物質が存在する場合のREE除去効率を調べるために、吸着材充填試験を実施した(
図25)。このストック溶液を5g/L充填の固形吸着材で処理すると、Ndを除くすべてのREEが、100%除去されることがわかった。5g/Lの吸着材を充填すると、100%のFeが除去され、60%のMnが除去され、KまたはMgへの選択性はなかった。吸着材の充填を2g/Lに減らすと、Feが完全に除去され、REE吸着が減少した。ScおよびLaは、それぞれ20%が吸着され、残りのREEは、5~10wt%の効率で除去された。これは、ルイス酸性金属が吸着材により効果的に結合することを示している。吸着材の充填を0.5g/Lに減らすと、6%の除去効率でScおよびLaが除去され、他のREEは一切吸着されなかった。
【0107】
7.参考文献
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【0108】
8.本開示の概論的ステートメント(GENERALIZED STATEMENTS)
以下の番号が付されたステートメントは、本開示の概括的な説明を提供し、添付の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。
【0109】
ステートメント1:水性流体流から金属を除去する方法であって、水性流体流を、式I:
【化12】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンデンドリマー(P-デンドリマー)と接触させることを含む、方法。
【0110】
ステートメント2:水性流体流から金属を吸着、分離、貯蔵または封鎖する方法であって、水性流体流から金属を吸着、分離、貯蔵または封鎖するために、前記水性流体流を、式I:
【化13】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、ポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である] を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)と接触させることを含む、方法。
【0111】
ステートメント3:前記水性流体流のpHが、約2.0~約12.0の間である、ステートメント1または2に記載の方法。
【0112】
ステートメント4:前記水性流体流が、都市廃水流体流(municipal waste water fluid stream)である、ステートメント1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
ステートメント5:前記水性流体流が、工業廃水流体流(industrial waste water fluid stream)である、ステートメント1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
ステートメント6:前記水性流体流が、飲料水流体流(drinking water fluid stream)である、ステートメント1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
ステートメント7:前記水性流体流が、都市ごみ埋立地(municipal waste landfill)、水圧破砕(hydraulic fracturing)、酸性鉱山排水(acid mine drainage)、酸性鉱山スラッジ(acid mine sludge)、または石炭火力発電所(coal-fired power plant)からの浸出液を含む、ステートメント1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
ステートメント8:前記金属が重金属である、ステートメント1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
ステートメント9:前記重金属が、ヒ素(As)、カドミウム、鉛(Pb)、水銀(Hg)、セレン(Se)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、またはマグネシウム(Mg)である、ステートメント8に記載の方法。
【0118】
ステートメント10:前記金属が希土類金属である、ステートメント1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
ステートメント11:前記希土類金属が、以下の元素、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジミウム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびイットリウム(Y)、のうちの1つ以上である、ステートメント10に記載の方法。
【0120】
ステートメント12:前記P-デンドリマーを濃縮酸性溶液と接触させることにより、前記式IのポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、ステートメント1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
ステートメント13:前記濃縮酸性溶液が、約0.1~約5.0Mの酢酸、または約0.1~約5.0MのHClである、ステートメント11に記載の方法。
【0122】
ステートメント14:前記P-デンドリマーを濃縮塩基性溶液と接触させることにより、式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、ステートメント1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
ステートメント15:前記濃縮塩基性溶液が、約0.05~約2.0MのNaOH、または約0.05~約2.0Mのクエン酸アンモニウムである、ステートメント13に記載の方法。
【0124】
ステートメント16:式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを鉄塩と接触させて、鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材を形成することをさらに含む、ステートメント1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
ステートメント17:前記鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材が、前記水性流体流からヒ素(As)またはセレン(Se)を吸着、分離、貯蔵、または封鎖するために使用される、ステートメント16に記載の方法。
【0126】
ステートメント18:水性の金属含有流から金属を捕捉および除去するためのプロセスであって、
(a)式I:
【化14】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である] を有するポリアミンリンデンドリマー(Pデンドリマー)を含む吸着材を中に分散させたハウジングを提供するステップと、
(b)金属含有流が前記吸着材に接触するように、該金属含有流を前記ハウジングに通すステップと、
(c)前記ハウジングを、濃縮酸性流で洗い流して、前記吸着材からその中に保持されている金属を脱着させ、脱着金属溶液を形成するステップと、
(d)前記ハウジングを洗い流して、前記脱着金属を前記ハウジングから除去するステップと、
を含むプロセス。
【0127】
ステートメント19:前記水性の金属含有流体流のpHが、約2.0~約12.0の間である、ステートメント18に記載のプロセス。
【0128】
ステートメント20:前記水性流体流が、都市廃水流体流である、ステートメント18または19に記載のプロセス。
【0129】
ステートメント21:前記水性流体流が、工業廃水流体流である、ステートメント18または19に記載のプロセス。
【0130】
ステートメント22:前記水性流体流が、飲料水流体流である、ステートメント18または19に記載のプロセス。
【0131】
ステートメント23:前記水性流体流が、都市ごみ埋立地、水圧破砕、酸性鉱山排水、酸性鉱山スラッジ、または石炭火力発電所からの浸出液を含む、ステートメント18または19に記載のプロセス。
【0132】
ステートメント24:前記金属が重金属である、ステートメント18~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【0133】
ステートメント25:前記重金属が、ヒ素(As)、カドミウム、鉛(Pb)、水銀(Hg)、セレン(Se)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、またはマグネシウム(Mg)である、ステートメント24に記載のプロセス。
【0134】
ステートメント26:前記金属が希土類金属である、ステートメント18~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【0135】
ステートメント27:前記希土類金属が、以下の元素、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジミウム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびイットリウム(Y)、のうちの1つ以上である、ステートメント26に記載のプロセス。
【0136】
ステートメント28:前記P-デンドリマーを濃縮酸性溶液と接触させることにより、式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、ステートメント18~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【0137】
ステートメント29:前記濃縮酸性溶液が、約0.1~約5.0Mの酢酸、または約0.1~約5.0MのHClである、ステートメント28に記載のプロセス。
【0138】
ステートメント30:前記P-デンドリマーを濃縮塩基性溶液と接触させることにより、式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを再生することをさらに含む、ステートメント18~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【0139】
ステートメント31:前記濃縮塩基性溶液が、約0.05~約2.0MのNaOH、または約0.05~約2.0Mのクエン酸アンモニウムである、ステートメント30に記載のプロセス。
【0140】
ステートメント32:式Iの前記ポリアミンP-デンドリマーを鉄塩と接触させて、鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材を形成することをさらに含む、ステートメント18または19に記載のプロセス。
【0141】
ステートメント33:前記鉄に担持されたポリアミンP-デンドリマー固形吸着材が、水性流体流からヒ素(As)またはセレン(Se)を吸着、分離、貯蔵、または封鎖するために使用される、ステートメント15に記載のプロセス。
【0142】
ステートメント34:(a)鉄IIまたは鉄III、ならびに(b)式I:
【化15】
[上記式中、Wは、リン系のデンドリマーコアであり、Xは、多官能芳香族リンカーであり、Yは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、多官能芳香族リンカーに結合した多官能アミノホスホリル基であり、Zは、ジアミノアルキル基、ポリアルキルアミノ基、Mwが400~約1,000,000の範囲であるポリエチレンイミン、またはポリプロピレンイミンであり、jおよびkは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は独立して1~10の範囲であり、lは、分岐点の多重度に対応する数値であり、その値は2~10の範囲である]を有するポリアミンリンデンドリマー(P-デンドリマー)を含む吸着材を含む、吸着材。
【0143】
ステートメント35:Zが、ポリエチレンイミンである、ステートメント33に記載の吸着材。
【0144】
上記の記載は、例示的な実施形態および実施例の代表にすぎないことを理解されたい。読者の便宜のために、上記の記載は、すべての可能な実施形態の限られた数の代表的な例、本発明の原理を伝える実施例に焦点を合わせている。本明細書は、すべての可能なバリエーション、または、説明されたそれらのバリエーションの組み合わせさえも網羅的に列挙しようとはしていない。その代替の実施形態は、本発明のある特定の部分について提示されていない可能性があり、または、さらに説明されていない代替の実施形態が一部について利用可能である可能性があることは、それらの代替の実施形態の免責事項(disclaimer)と見なされるべきではない。これらの記載されていない実施形態の多くは、本発明の原理の適用の違いではなく、技術および材料の違いを伴うことを当業者は認識するであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲および同等物(equivalents)に記載される範囲未満に限定されることを意図するものではない。
【0145】
参照による組み込み(INCORPORATION BY REFERENCE)
【0146】
本明細書で引用されるすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、および特許出願は、すべての目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。ただし、ここで引用されている参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、および特許出願についての言及は、有効な先行技術を構成する、または、世界のどの国でも一般的な知識の一部を形成するという承認または提案の形として解釈されるものではなく、また解釈されるべきではない。本発明は、その詳細な説明と併せて記載されてきたが、前述の記載は、範囲を説明することを意図しており、範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および修正は、以下に記載される特許請求の範囲内にある。本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】