(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】幹細胞機能を向上させるための薬剤及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0789 20100101AFI20220301BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220301BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20220301BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220301BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220301BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220301BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20220301BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220301BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C12N5/0789 ZNA
C12N1/00 G
A61K31/37
A61P7/06
A61P7/04
A61P31/00
A61P35/00
A61K31/706
A61K38/19
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540025
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020051173
(87)【国際公開番号】W WO2020148445
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(71)【出願人】
【識別番号】516029470
【氏名又は名称】ルドウイグ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ギロトラ, ムクル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンニーニ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】コウコス, ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】レッジ, セルジュ, アンドレ, ドミニク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BA24
4B065BB13
4B065BD34
4B065CA60
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA44
4C084DA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA53
4C084ZA55
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA55
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC75
(57)【要約】
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団における幹細胞機能を向上させるためのウロリチンの使用。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団における幹細胞機能を向上させるためのウロリチンの使用。
【請求項2】
前記ウロリチンが、ウロリチンAである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
造血幹細胞機能の向上における使用のためのウロリチン。
【請求項4】
前記造血幹細胞機能が、生着、自己複製、及び分化のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項5】
前記使用が、対象における血球レベルを増加させる、請求項3又は4に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項6】
(a)貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症;(b)感染症;及び/又は(c)癌、の治療又は予防における使用のためのウロリチン。
【請求項7】
前記ウロリチンが、ウロリチンAである、請求項3~6のいずれか一項に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項8】
前記ウロリチンが、医薬組成物又は栄養組成物の形態であり、任意選択で食品製品、栄養補助食品、ニュートラシューティカル、特定医療目的用食品(FSMP)、栄養補給剤、乳飲料、小容量液体栄養補給剤、又は食事代替飲料の形態である、請求項3~7のいずれか一項に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項9】
対象が、正常量に満たない造血細胞を有するか、又はそのリスクがあり、場合により前記造血細胞が赤血球、白血球、及び/又は血小板である、請求項3~8のいずれか一項に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項10】
対象が、貧血、白血球減少症、及び/又は血小板減少症を有するか、又はそのリスクがある、請求項3~9のいずれか一項に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項11】
対象が、造血幹細胞移植、骨髄移植、骨髄破壊的前処置、化学療法、放射線療法、及び外科手術からなる群から選択される介入を受けたことがある、請求項3~10のいずれか一項に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項12】
前記ウロリチンが、ニコチンアミドリボシド、G-CSF類似体、TPO受容体類似体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤との同時の使用、別々の使用、又は順次使用のための、組み合わせ製剤中に存在する、請求項3~11のいずれか一項に記載の使用のためのウロリチン。
【請求項13】
単離した造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団を増殖させる方法であって、前記細胞集団をウロリチンと接触させる工程を含む、方法。
【請求項14】
(a)HSPCの細胞集団を用意する工程と;
(b)任意選択で、HSPCの前記細胞集団を、好ましくはHSPC増殖培地又は維持培地中で培養する工程と;
(c)任意選択で、ミトコンドリア膜電位が低いことを特徴とするHSPCの細胞亜集団を単離する工程と、
(d)(a)若しくは(b)の細胞集団、又は(c)の細胞亜集団をウロリチンと接触させる工程と、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ウロリチンを含む、細胞培養用培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)に関する。具体的には、本発明は、造血幹細胞における幹細胞機能を向上させるため、例えば、HSPCの細胞集団の生着を向上させるため、並びに/又は自己複製能及び分化能を向上させるための、薬剤及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造血系は、種々の成熟細胞系列からなる細胞の複雑な階層である。成熟細胞には、病原体からの保護を与える免疫系の細胞、体中に酸素を運ぶ細胞、及び創傷治癒に関与する細胞が含まれる。これらの成熟細胞は全て、自己複製及び任意の血球系列への分化が可能な、造血幹細胞(HSC)のプールに由来する。
【0003】
HSCは、エネルギー産生を、ミトコンドリアによる酸化的リン酸化ではなく嫌気的解糖に主に依存するという点で、コミットされた子孫細胞とは異なる(Simsek,T.et al.(2010)Cell Stem Cell 7:380-90;Takubo,K.et al.(2013)Cell Stem Cell 12:49-61;Vannini,N.et al.(2016)Nat Commun 7:13125;Yu,W.M.et al.(2013)Cell Stem Cell 12:62-74)。この特徴的な代謝状態は、活性ミトコンドリアにおける反応性酸素種(ROS)による細胞損傷からHSCを保護し、それによって細胞の長期インビボ機能を維持すると考えられている(Chen,C.et al.(2008)J Exp Med 205:2397-408;Ito,K.et al.(2004)Nature 431:997-1002;Ito,K.et al.(2006)Nat Med 12:446-51;Tothova,Z.et al.(2007)Cell 128:325-39)。
【0004】
ミトコンドリア膜電位は、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)蛍光によって示され、細胞の代謝状態を示す代替的な指標として従来使用されてきた。表現型により定義されるHSCは、前駆細胞と比較して低いミトコンドリア膜電位を有することが実証されている(Vannini,N.et al.(2016)Nat Commun 7:13125)。同じ研究では、ミトコンドリアの電子伝達鎖の化学的脱共役によってミトコンドリア膜電位を人工的に低下させることで、通常であれば急速に分化を誘導する培養条件下で、HSCが維持されることが判明している(Vannini,N.et al.(2016)Nat Commun 7:13125)。重要なことに、ヒトHSCにおいて同種の機序が観察され、培地にニコチンアミドリボシド(NAD及びビタミンB3前駆体)を添加することによってミトコンドリア膜電位を人工的に低下させたときに、有意に高レベルの生着を生じ、一次ヒト化レシピエントマウス及び二次レシピエントマウスの両方において長期の血液産生を維持することが可能であった。
【0005】
しかしながら、インビボ及びインビトロのHSCにおける幹細胞機能を向上させる更なるアプローチ、特に、HSPCの細胞集団の生着を向上させるアプローチ(例えば、造血幹細胞の移植処置中)、並びにHSCの自己複製能及び分化能を向上させるアプローチが依然として大いに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、ウロリチンA(UroA)が、生着及び自己複製を向上させることなどによって、造血幹細胞(HSC)機能を改善することを見出した。
【0007】
理論に束縛されることを望むものではないが、幹細胞機能の向上は、UroAに曝露された細胞におけるマイトファジー誘導によるミトコンドリア膜電位の調節を介して達成され得る。
【0008】
一態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団における幹細胞機能を向上させるためのウロリチンの使用を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、使用は、インビトロでの使用である。いくつかの実施形態では、使用は、エクスビボでの使用である。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、単離したHSPCの細胞集団である。
【0011】
いくつかの実施形態では、HSPCは、CD34+表現型を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、HSPCは、CD34+CD38-表現型を有する。
【0013】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞機能の向上に使用するためのウロリチンを提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、対象における造血幹細胞機能の向上に使用するためのものである。
【0015】
いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、生着を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、自己複製を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、分化を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、生着である。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、自己複製である。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、分化である。
【0017】
別の態様では、本発明は、対象における血球レベルの増加に使用するためのウロリチンを提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、対象における(a)貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症;(b)感染症;及び/又は(c)癌、の治療又は予防に使用するためのウロリチンを提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、貧血症、白血球減少症及び/又は血小板減少症の治療又は予防に使用するためのウロリチンを提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、感染症の治療又は予防に使用するためのウロリチンを提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、癌の治療又は予防に使用するためのウロリチンを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、癌は、血液癌である。いくつかの実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫である。
【0023】
好ましい実施形態では、ウロリチンは、ウロリチンAである。
【0024】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、経腸的又は非経口的に、好ましくは経腸的に、対象に投与される。好ましい実施形態では、ウロリチンは、経口的に対象に投与される。
【0025】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、医薬組成物又は栄養組成物の形態である。
【0026】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、食品製品、栄養補助食品、ニュートラシューティカル、特定医療目的用食品(FSMP)、栄養補給剤、乳飲料、小容量液体栄養補給剤、又は食事代替飲料の形態である。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象は、正常量に満たない造血細胞、例えば赤血球、白血球及び/若しくは血小板を有する、又はそのリスクがある。
【0028】
いくつかの実施形態では、対象は、貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症を有する、又はそのリスクがある。
【0029】
いくつかの実施形態では、対象は、造血幹細胞移植;骨髄移植;骨髄破壊的前処置;化学療法;放射線療法;及び外科手術からなる群から選択される介入を受けたことがある。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫低下状態の対象である。
【0031】
いくつかの実施形態では、対象は、介入から3~4週間後である。
【0032】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物、好ましくはヒトであり、任意選択でヒト成人、小児、又は乳児である。
【0033】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、ニコチンアミドリボシド、G-CSF類似体、TPO受容体類似体、SCF、TPO、Flt3-L、FGF-1、IGF1、IGFBP2、IL-3、IL-6、G-CSF、M-CSF、GM-CSF、EPO及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤との同時の使用、別々の使用、又は順次使用のための、組み合わせ製剤中に存在する。
【0034】
好ましい実施形態では、ウロリチンは、ニコチンアミドリボシドとの同時の使用、別々の使用、又は順次使用のための、組み合わせ製剤中に存在する。
【0035】
別の態様では、本発明は、単離した造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団を増殖させる方法であって、該集団をウロリチンと接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は、ウロリチンの存在下で細胞集団を培養することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、
(a)HSPCの細胞集団を用意する工程と、
(b)任意選択で、HSPCの細胞集団を、好ましくはHSPC増殖培地又は維持培地中で培養する工程と;
(c)任意選択で、ミトコンドリア膜電位が低いことを特徴とするHSPCの細胞亜集団を単離する工程と、
(d)(a)若しくは(b)の細胞集団、又は(c)の細胞亜集団をウロリチンと接触させる工程と、を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、工程(a)で用意される細胞集団は、骨髄、動員された末梢血、又は臍帯血から得られる。
【0039】
いくつかの実施形態では、工程(d)の生成物では、長期多系列血液再構成能力を有する細胞が濃縮されている。
【0040】
別の態様では、本発明は、本発明の方法によって得ることのできる造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団を提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、本発明の造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、ウロリチンを含む、細胞培養用培地を提供する。
【0043】
好ましい実施形態では、ウロリチンは、ウロリチンAである。
【0044】
いくつかの実施形態では、培地は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の培地である。
【0045】
いくつかの実施形態では、培地は、増殖培地又は維持培地である。
【0046】
別の態様では、本発明は、単離したHSPCの細胞集団をウロリチンと接触させる工程と、HSPCの細胞集団を、該集団を必要とする対象に投与する工程と、を含む、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)を対象に生着させる方法を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程を含む、造血幹細胞機能を向上させる方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程と、HSPCの細胞集団を、該集団を必要とする対象に投与する工程と、を含む、対象における造血幹細胞機能を向上させる方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程を含む、造血幹細胞の生着を向上させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程を含む、造血幹細胞の自己複製を向上させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程を含む、造血幹細胞の分化を向上させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、生着、自己複製及び/又は分化が対象において向上され、方法は、HSPCの細胞集団を、該集団を必要とする対象に投与する工程を更に含む。
【0050】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程と、HSPCの細胞集団を、該集団を必要とする対象に投与する工程と、を含む、対象における(a)血球レベルを増加させる方法;(b)貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症を治療又は予防する方法;(c)感染症を治療又は予防する方法:並びに/あるいは(d)癌を治療又は予防する方法を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させる工程を含む、血球レベルを増加させる方法を提供する。
【0052】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させることを含む、貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症を治療又は予防する方法を提供する。
【0053】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させることを含む、感染症を治療又は予防する方法を提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団をウロリチンと接触させることを含む、癌を治療又は予防する方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、方法は、エクスビボ法である。いくつかの実施形態では、方法は、インビボ法である。
【0056】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、単離したHSPCの細胞集団である。いくつかの実施形態では、方法は、HSPCの細胞集団を、該集団を必要とする対象に投与する工程を更に含む。
【0057】
別の態様では、本発明は、ウロリチンを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、造血幹細胞機能を向上させる方法を提供する。
【0058】
別の態様では、本発明は、ウロリチンをを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、造血幹細胞の生着を向上させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、ウロリチンをを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、造血幹細胞の自己複製を向上させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、ウロリチンを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、造血幹細胞の分化を向上させる方法を提供する。
【0059】
別の態様では、本発明は、ウロリチンをを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、血球レベルを増加させる方法を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、ウロリチンを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症を治療又は予防する方法を提供する。
【0061】
別の態様では、本発明は、ウロリチンを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、感染症を治療又は予防する方法を提供する。
【0062】
別の態様では、本発明は、ウロリチンを必要とする対象にウロリチンを投与する工程を含む、癌を治療又は予防する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1-1】UroAがミトコンドリア膜電位の低下を誘発することを示す。A)様々な濃度のUroAを添加した基本培地(対照)中で培養した骨髄由来マウスHSC。TMRM lowゲート内の細胞の割合は増加し、MFI TMRMは用量依存的に減少する(上図)。
【
図1-2】ミトコンドリア質量(Mitotrackerにより測定)は、培養液中のUroAの濃度の増加と共に減少する。
【
図1-3】B)様々な濃度のUroAを含む基本培地(対照)中で7日間培養したヒト臍帯血由来HSPC。FACS分析は、3つの時点[3日目(上)、5日目(中央)、及び7日目(下)]の全てにおいてTMRMシグナルの低下を示す。
【
図1-4】CD34+TMRM lowゲート中の細胞の割合は増加し、MFI TMRMは用量依存的に減少する。
【
図2-1】インビトロでのUroA処理がmHSC及びhHSPCのインビボでの機能を増進することを示す。A)HSCをマウスの骨髄から単離し、20μMのUroA添加又は非添加の基本培地中で培養した。培養期間の終了時に、細胞を、致死的照射を受けたレシピエントマウスに尾静脈内注射した。UroAを使用して培養した細胞を注射したマウスは、24週間にわたって、より高い血液再構成を示す。この増加は、骨髄系列及びリンパ系列にも表れる。B)ヒト臍帯血由来HSPCを、50μMのUroA添加又は非添加の基本培地中で培養した。2つの機能アッセイを実施した。培養5日後の細胞を、照射NSG-SGM3新生仔に注射した。培養7日後の細胞を、メチルセルロースプレートに播種し、そのコロニー形成能を推定した(CFUアッセイ)。
【
図2-2】C)UroAで処理した細胞は、メチルセルロース培養の15日後に、対照(Ctrl)群と比較して有意に多数のコロニーを産生した。D)UroAで処理した細胞を移植したマウスは、末梢血におけるヒト細胞のキメラ化の有意な増加を示す。E)UroA処理は、主としてヒトリンパ系列(T細胞及びB細胞)の血球数を増加させる。
【
図3】UroAがmHSCにおける代謝遺伝子の発現を駆動することを示す。A)20μMのUroA添加又は非添加の基本培地中で培養した骨髄由来mHSCに対して実施したQPCR分析UroAで処理した細胞において、マイトファジー/オートファジー遺伝子、解糖系遺伝子、及びROSからの保護に関係する遺伝子のより高い発現が認められた。
【
図4】UroA処理が移植後のレシピエントマウスの生存率を改善することを示す。 A)ヒト臍帯血由来HSPCを、50μMのUroA添加又は非添加の基本培地中で培養した。培養3日後に細胞を計数し、限界用量(細胞40,000個)を照射レシピエントの各成体NSGマウスに注入し、数ヶ月にわたって生存率をモニターした。対照条件及びUroA条件について各12匹のマウスに移植を行った。B)UroAで処理した細胞を移植したマウスは、8ヶ月間にわたって生存率が著しく改善された。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」は、「含む(including)」又は「含む(includes)」又は「含有する(containing)」又は「含有する(contains)」と同義であり、他を包含し得るもの、すなわちオープンエンドであり、かつ追加の、列挙されていない構成、要素、又は工程を除外しない。用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」はまた、用語「からなる(consisting of)」を含む。
【0065】
造血幹細胞
幹細胞は、多くの細胞型に分化することができる。全ての細胞型に分化可能な細胞は、全能性であるものとして知られている。哺乳動物では、接合子及び初期胚細胞のみが全能性である。幹細胞は、全てではないとしてもほとんどの多細胞生物に見られる。幹細胞は、有糸分裂による自己複製能、並びに多様な専門化した細胞型への分化能を特徴とする。哺乳動物幹細胞の2つの主要な型として、胚盤胞の内部細胞塊から単離される胚性幹細胞と、成体組織に見られる成体幹細胞がある。発生過程の胚では、幹細胞は、専門化した胚組織の全てに分化し得る。成体生物では、幹細胞及び前駆細胞は身体の修復システムとして働き、専門化した細胞を補充するだけでなく、血液、皮膚又は腸組織などの再生器官の正常な代謝回転を維持する。
【0066】
造血幹細胞(HSC)は、例えば、末梢血、骨髄、及び臍帯血に見出され得る多能性幹細胞である。HSCには、自己複製能及び任意の血球系列への分化能がある。HSCは、免疫系全体、並びに全造血組織(骨髄、脾臓、及び胸腺など)の赤血球及び骨髄系列に、コロニーを再形成させる能力がある。HSCは、全ての系列の造血細胞を長期にわたり(life-long)産生する。
【0067】
造血前駆細胞は、特異な細胞型へと分化する能力を有する。しかしながら、幹細胞とは対照的に、造血前駆細胞は既にかなり特異的なものであり、それらが「分化運命を決定されている(target)」細胞へと分化される。幹細胞と前駆細胞には、幹細胞は無限に複製できるのに対し、前駆細胞は限られた回数しか分裂できないという違いがある。造血前駆細胞は、インビボにおける機能アッセイ(すなわち、移植及び全血液系列を長期間にわたって生じることができるかどうかの実証)によってのみ、HSCから厳密に区別することができる。
【0068】
分化細胞は、幹細胞又は前駆細胞と比較して、より特殊化した細胞である。分化は、多細胞生物の発生過程で、この生物が単一の接合子から複数の組織及び複数の細胞型からなる複雑な系へと変化することにより生じる。分化は、成体においても共通のプロセスである:成体幹細胞は、組織修復及び正常な細胞代謝回転の際に分裂して完全に分化した娘細胞を作り出す。分化は、細胞の大きさ、形状、膜電位、代謝活性及びシグナルに対する反応性を劇的に変化させる。これらの変化は、主として遺伝子発現における高度に制御された調節によるものである。換言すれば、分化した細胞は、特異的な構造を有しており、かつ特定の遺伝子の活性化及び不活性化を伴う発生プロセスにより特定の機能を示す、細胞である。ここで、分化細胞は、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞、T細胞、B細胞、及びNK細胞などの造血系列の分化細胞を含む。例えば、造血系列の分化細胞は、未分化細胞では発現されない又は発現の程度がより低い細胞表面分子の検出によって、幹細胞及び前駆細胞から識別することができる。好適なヒト系統のマーカーの例としては、CD33、CD13、CD14、CD15(骨髄)、CD19、CD20、CD22、CD79a(B)、CD36、CD71、CD235a(赤血球)、CD2、CD3、CD4、CD8(T)、CD56(NK)が挙げられる。
【0069】
HSC供給源
いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、組織サンプルから得られる。
【0070】
例えば、HSCは、成体及び胎児末梢血、臍帯血、骨髄、肝臓、又は脾臓から得ることができる。HSCは、成長因子で処理することによってインビボで細胞を動員した後に得られる。
【0071】
動員は、例えば、G-CSF、プレリキサフォル又はこれらの組み合わせを用いて実施されてもよい。NSAID、CXCR2リガンド(Grobeta)及びジペプチジルペプチダーゼ阻害剤などの他の薬剤も動員剤として有用であり得る。
【0072】
幹細胞成長因子GM-CSF及びG-CSFが利用可能であることから、現在、ほとんどの造血幹細胞移植処置は、骨髄からではなく末梢血から採取した幹細胞を使用して行われる。末梢血幹細胞を採取することで、より大きな移植片が得られ、移植片を採取するためにドナー全身麻酔を受ける必要がなく、その結果生着時間が短縮され、長期再発率が低下し得る。
【0073】
骨髄は、標準的吸引法(定常状態若しくは動員後のいずれか)により、又は次世代採取ツール(例えば、Marrow Miner)を使用することによって、採取され得る。
【0074】
加えて、HSCはまた、誘導を受けた多能性幹細胞に由来してもよい。
【0075】
HSCの特徴
HSCは、典型的には、フローサイトメトリー法による前方散乱及び側方散乱のプロファイルが低い。ミトコンドリア活性の判定を可能とするローダミン標識により実証されるように、一部は代謝面で休止状態である。HSCは、CD34、CD45、CD133、CD90、及びCD49fなどの特定の細胞表面マーカーを含んでもよい。HSCは、CD38及びCD45RA細胞表面マーカーの発現がない細胞としても定義できる。しかしながら、これらのマーカーのいくつかの発現は、発生段階及びHSCの組織特異性に依存する。「サイドポピュレーション細胞」と呼ばれるいくつかのHSCは、フローサイトメトリーによって検出されるHoechst 33342染料を除外する。したがって、HSCは、その同定及び単離を可能にする記述的特徴を有する。
【0076】
陰性マーカー
CD38は、ヒトHSCの最も確立され、有用な単一の陰性マーカーである。
【0077】
ヒトHSCはまた、CD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD20、CD24、CD36、CD56、CD66b、CD271及びCD45RAなどの系列マーカーが陰性であり得る。しかしながら、これらのマーカーは、HSCの濃縮のために組み合わせて使用する必要があり得る。
【0078】
「陰性マーカー」により、ヒトHSCがこれらのマーカーを発現しないことを理解されたい。
【0079】
陽性マーカー
CD34及びCD133は、HSCの最も有用な陽性マーカーである。
【0080】
一部のHSCは、CD90、CD49f、及びCD93などの系列マーカーに対して陽性でもある。しかしながら、これらのマーカーは、HSCの濃縮のために、組み合わせて使用する必要があり得る。
【0081】
「陽性マーカー」により、ヒトHSCがこれらのマーカーを発現することを理解されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、HSCはCD34+表現型を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、HSCは、CD34+CD38-表現型を有する。
【0084】
更なる分離を、例えば、CD34+CD38-CD45RA-CD90+CD49f+細胞を得るために実施してもよい。
【0085】
幹細胞機能
本明細書で使用するとき、用語「幹細胞機能」は、幹細胞に典型的に関連付けられる特徴、例えば、特異的な細胞系列への分化能、及び/又は自己複製能を指す。
【0086】
一実施形態では、幹細胞機能は、生着、自己複製、及び/又は分化を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、生着を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、自己複製を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、分化を含む。
【0088】
一実施形態では、幹細胞機能は、生着、自己複製、及び/又は分化である。
【0089】
いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、生着である。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、自己複製である。いくつかの実施形態では、幹細胞機能は、分化である。
【0090】
本明細書で使用するとき、用語「生着」は、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞が、移植後、すなわち移植後の短い期間及び/又は長い期間に、対象において定着及び生存する能力を指す。例えば、生着は、移植後約1日~24週間、1日~10週間、又は1日~30日又は10日~30日で検出される、移植された造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞に由来する造血細胞(例えば移植片由来細胞)の数及び/又は割合を指し得る。いくつかの実施形態において、生着は、移植後約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約15日、約20日、約25日、又は約30日の時点で評価される。他の実施形態では、生着は、移植後約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間又は約24週間の時点で評価される。他の実施形態では、生着は、移植後約16週間~24週間、好ましくは20週間の時点で評価される。
【0091】
生着は、当業者によって容易に分析され得る。例えば、移植される造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞を、マーカー(例えば、蛍光タンパク質などのレポータータンパク質)を含むように操作してもよく、このマーカーを移植片由来細胞の定量に使用することができる。分析のためのサンプルを関連組織から抽出し、エクスビボで(例えば、フローサイトメトリーを使用して)分析してもよい。
【0092】
本明細書で使用するとき、用語「自己複製」は、細胞が、未分化の状態を維持しながら、細胞分裂を複数サイクル行う能力を指す。
【0093】
ある状態の細胞(例えば、生細胞、死細胞、又はアポトーシス細胞)の数及び/又はパーセンテージは、血球計数器、自動細胞カウンター、フローサイトメーター、及び蛍光活性化細胞選別装置の使用などの、当該技術分野において公知の多数の方法のいずれかを使用して定量され得る。これらの技術は、生細胞、死細胞、及び/又はアポトーシス細胞の間の区別を可能にし得る。追加的に又は代替的に、アポトーシス細胞は、利用しやすいアポトーシスアッセイ(例えば、細胞膜表面上のホスファチジルセリン(PS)の検出に基づくアッセイ、露出したPSに結合するアネキシンVを使用するものなど;アポトーシス細胞は蛍光標識されたアネキシンVの使用によって定量することができる)を用いて検出することもでき、このようなアッセイを他の技術を補完するために使用してもよい。
【0094】
細胞集団の単離及び濃縮
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)などの細胞集団が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、単離された細胞集団である。
【0095】
本明細書で使用するとき、用語「単離された細胞集団」は、体内に含まれていない細胞の集団を指す。単離された細胞集団は、あらかじめ対象から取り出されていてもよい。単離された細胞集団は、当該技術分野で公知の標準的な技術を使用して、エクスビボ又はインビトロで培養及び操作することができる。単離された細胞集団は、後で対象に再導入されてもよい。上記対象は、細胞が当初単離された対象と同じ対象でもよく、異なる対象でもよい。
【0096】
細胞集団からは、特異的な表現型若しくは特徴を示す細胞を、その表現型若しくは特徴を示さない、又は示す程度が低い、他の細胞から、選択的に精製できる。例えば、特定のマーカー(CD34など)を発現する細胞集団を、操作を開始する細胞集団から精製することができる。あるいは、又は加えて、別のマーカー(CD38など)を発現しない細胞集団を精製することもできる。
【0097】
本明細書で使用するとき、用語「濃縮」は、集団内のある細胞型の濃度を高めることを指す。他の細胞型の濃度は、それに伴って低減され得る。
【0098】
精製又は濃縮は、他の細胞型の実質的に純粋な細胞集団をもたらし得る。
【0099】
特異的なマーカー(例えば、CD38又はCD34)を発現する細胞集団の精製又は濃縮は、そのマーカーに結合する薬剤、好ましくはそのマーカーに実質的に特異的な薬剤を使用することによって達成され得る。
【0100】
細胞マーカーに結合する薬剤は、抗体、例えば抗CD34抗体又は抗CD38抗体であってもよい。
【0101】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、選択された標的に結合することができる完全な抗体又は抗体断片を意味し、Fv、ScFv、F(ab’)及びF(ab’)2、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、改変抗体、例えば、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体及びヒト化抗体、並びにファージディスプレイ又は代替技術を用いて産生される人工的に選択された抗体が挙げられる。
【0102】
加えて、本発明ではまた、典型的な抗体の代替物、例えば、「アビボディ」、「アビマー」、「アンチカリン」、「ナノボディ」、及び「DARPin」も使用され得る。
【0103】
特異的マーカーに結合する薬剤は、当該技術分野において公知の多数の技術のいずれかを使用して、同定可能なように標識されてもよい。薬剤は、固有に標識されてもよく、又は薬剤に標識をコンジュゲートすることによって修飾されてもよい。「コンジュゲート」により、薬剤及び標識が操作可能に連結されることを理解されたい。これは、薬剤と標識が両方とも実質的に障害なくそれらの機能(例えば、マーカーに結合すること、蛍光による同定を可能にすること、又は磁場に置いた場合に分離が可能であること)を発揮できるように連結されることを意味する。コンジュゲートの好適な方法は当技術分野で周知であり、当業者により容易に特定可能である。
【0104】
標識は、例えば、それが連結されている標識薬剤及び任意の細胞をその環境から精製すること(例えば、薬剤は磁気ビーズ、又はアビジンなどの親和性タグで標識されてもよい)、検出すること、又はその両方を可能とする。標識として使用するのに好適である検出可能なマーカーとしては、蛍光分子(例えば、グリーン蛍光タンパク質、チェリー蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、及びオレンジ蛍光タンパク質)及びペプチドタグ(例えば、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ及びHAタグ)が挙げられる。
【0105】
特異的マーカーを発現する細胞集団を分離するための多数の技術が当技術分野で公知である。上記技術には、磁気ビーズベースの分離技術(例えば、閉回路磁気ビーズによる分離)、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、親和性タグ精製(例えば、アフィニティーカラム又はビーズ、例えば、アビジン標識薬剤を分離するためのビオチンカラム)及び顕微鏡ベースの技術が含まれる。
【0106】
異なる技術の組み合わせ、例えば、磁気ビーズベースの分離工程と、その後の、得られた細胞集団を1つ以上の付加的(陽性又は陰性)マーカーについてフローサイトメトリーにより選別する工程と、を用いて分離を行うこともできる。
【0107】
臨床グレードの分離は例えば、CliniMACS(登録商標)システム(Miltenyi)を用いて行うことができる。これは閉回路磁気ビーズベースの分離技術の一例である。
【0108】
色素排除特性(例えば、サイドポピュレーション又はローダミン標識)又は酵素活性(例えば、ALDH活性)を使用してHSCを濃縮できることも想定される。
【0109】
ウロリチン
ウロリチンは、食品に由来するエラジタンニンなどのエラグ酸誘導体の代謝産物であり、ヒト腸内で腸内細菌によって産生される。
【0110】
エラジタンニンは、いくつかの果実、特にザクロ、イチゴ、キイチゴ、及びクルミに存在する抗酸化ポリフェノールの一分類である。エラジタンニンの吸収は非常に低いが、大腸の腸内微生物叢によってウロリチンへと急速に代謝される。
【0111】
ウロリチンは、その優れた吸収により、エラジタンニンの効果を介在する生物活性分子であると考えられている。例えば、ウロリチンは、抗酸化特性及び抗炎症特性を有することが過去に示されている。
【0112】
ウロリチンの例としては、ウロリチンA(3,8-ジヒドロキシウロリチン)、ウロリチンB(3-ヒドロキシウロリチン)、及びウロリチンD(3,4,8,9-テトラヒドロキシウロリチン)、ウロリチンAグルクロニド及びウロリチンBグルクロニドが挙げられる。
【0113】
ウロリチンA(UroA)は、以下の構造を有する:
【化1】
【0114】
いくつかの実施形態では、HSPCを、5μM~250μM、5μM~200μM、5μM~150μM、5μM~100μM、又は5μM~50μMのウロリチン濃度でウロリチンと接触させる。他の実施形態では、HSPCを、10μM~250μM、10μM~200μM、10μM~150μM、10μM~100μM、又は10μM~50μMのウロリチン濃度でウロリチンと接触させる。他の実施形態では、HSPCを、20μM~250μM、20μM~200μM、20μM~150μM、20μM~100μM、又は20μM~50μMのウロリチン濃度でウロリチンと接触させる。他の実施形態では、HSPCを、5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、100μM、125μM、150μM、175μM、200μM、225μM又は250μMのウロリチン濃度でウロリチンと接触させる。
【0115】
好ましい実施形態では、HSPCを、20μM~50μMのウロリチン濃度でウロリチンと接触させる。
【0116】
本発明のウロリチンは、塩又はエステル、特に薬学的に許容される塩又はエステルとして存在し得る。
【0117】
本発明の薬剤の薬学的に許容される塩としては、その好適な酸付加塩又は塩基塩が挙げられる。好適な薬学的塩の総説は、Berge et al.(1977)J Pharm Sci 66:1-19に見出すことができる。
【0118】
本発明はまた、適宜、薬剤の全てのエナンチオマー及び互変異性体を含む。当業者は、光学特性(例えば、1つ以上のキラル炭素原子)又は互変異性特性を有する化合物を認識するであろう。対応するエナンチオマー及び/又は互変異性体は、当該技術分野において既知の方法によって単離/調製することができる。
【0119】
医薬組成物及び栄養組成物
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、医薬組成物の形態である。
【0120】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を更に含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)は、医薬組成物の形態である。
【0122】
本発明の細胞は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤と共に対象に投与するために配合することができる。好適な担体及び希釈剤は、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水を含み、場合によりヒト血清アルブミンを含有する。
【0123】
細胞療法製品の取り扱いは、好ましくは、細胞療法に関するFACT-JACIE国際規格に準拠して実施される。
【0124】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは栄養組成物の形態である。
【0125】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、食品製品、栄養補助食品、ニュートラシューティカル、特定医療目的用食品(FSMP)、栄養補給剤、乳飲料、小容量液体栄養補給剤、又は食事代替飲料の形態である。いくつかの実施形態では、組成物は乳児用フォーミュラである。
【0126】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、食品添加物又は医薬品の形態である。
【0127】
食品添加物又は医薬品は、例えば、錠剤、カプセル、トローチ、又は液体の形態であってもよい。食品添加物又は医薬品は、好ましくは持続放出製剤として提供され、長期にわたって、ウロリチン又はその前駆体の不断の供給を可能にする。
【0128】
組成物は、粉乳ベースの製品;インスタント飲料;レディ・トゥ・ドリンク処方;栄養粉末;栄養液体;乳ベースの製品、特にヨーグルト又はアイスクリーム;穀類製品;飲料;水;コーヒー;カプチーノ;麦芽飲料;チョコレート風味飲料;調理製品;スープ;錠剤;及び/又はシロップからなる群から選択されてもよい。
【0129】
組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、フィルム形成剤、封入剤/封入材、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化物質、及び抗菌剤を更に含有してもよい。
【0130】
更に、組成物には、経口又は経腸投与に好適な有機又は無機担体材料に加え、USRDAなどの政府機関の推奨に従い、ビタミン類、ミネラル類、微量元素及びその他の微量栄養素を含有させることもできる。
【0131】
本発明の組成物は、タンパク質源、炭水化物源及び/又は脂質源を含有してもよい。
【0132】
任意の好適な食品由来のタンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質、及び卵タンパク質など);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;又はこれらの組み合わせを使用できる。カゼイン及びホエイタンパク質等の乳タンパク質、並びにダイズタンパク質が特に好ましい。
【0133】
組成物が脂肪源を含む場合、脂肪源は、好ましくは、フォーミュラのエネルギーのうち5%~40%;例えば、エネルギーのうち20%~30%をもたらす。DHAを添加してもよい。好適な脂肪プロファイルを、キャノーラ油、コーン油、及び高オレイン酸ヒマワリ油のブレンドを使用して得ることができる。
【0134】
炭水化物源は、より好ましくは、組成物のエネルギーの40%~80%をもたらす。任意の好適な炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、固形コーンシロップ、マルトデキストリン、及びこれらの混合物を使用できる。
【0135】
造血幹細胞移植
本発明は、治療に使用するための、本発明の方法に従って調製された、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞の細胞集団を提供する。
【0136】
使用は、造血幹細胞移植処置の一環であってもよい。
【0137】
造血幹細胞移植(HSCT)は、骨髄(この場合、骨髄移植として知られる)又は血液由来の血液幹細胞の移植である。幹細胞移植は、血液学及び腫瘍学の分野における医療処置であり、血液若しくは骨髄の疾患、又は特定の種類の癌を有する人々に最も多く実施される。
【0138】
HSCTの多くのレシピエントは、化学療法を用いた長期処置では効果が得られないと考えられる、又は化学療法に対して既に耐性のある、多発性骨髄腫又は白血病の患者である。HSCTの候補としては、患者が幹細胞の欠陥を伴う重症複合免疫不全症又は先天性好中球減少症などの先天的欠陥を有している小児科症例、及び出生後に幹細胞を失っており再生不良性貧血を有する小児又は成人が挙げられる。幹細胞移植で治療される他の病態としては、鎌状赤血球症、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、リンパ腫、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍及びホジキン病が挙げられる。より最近では、必要な術前化学療法及び放射線の用量がより少ない、非骨髄破壊的な、いわゆる「ミニ移植」処置が開発されている。この開発により、体質的に弱く従来の治療計画には耐えられないと考えられていた高齢者などの患者においてHSCTを実施できるようになった。
【0139】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞は、自家幹細胞移植処置の一環として投与される。
【0140】
他の実施形態では、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞は、同種幹細胞移植処置の一環として投与される。
【0141】
「自家幹細胞移植処置」では、操作を開始する細胞集団(すなわち、本発明の薬剤との接触前)が、最終的な細胞集団を投与される対象と同じ対象から得られることを理解されたい。自家移植処置は、免疫学的不適合に伴う問題を回避し、遺伝的に適合するドナーが見つかる可能性に関係なく対象に利用できるため、有利である。
【0142】
「同種幹細胞移植処置」では、操作を開始する細胞集団(すなわち、本発明の薬剤との接触前)が、最終的な細胞集団を投与される対象と異なる対象から得られることを理解されたい。好ましくは、免疫学的不適合のリスクを最小にするために、ドナーは細胞が投与される対象と遺伝的に合うように選択されることとなる。
【0143】
治療方法
本明細書において「治療」についてなされる全ての言及は、治癒的、緩和的、及び予防的治療を含むものであると理解される。哺乳動物、特にヒトの治療が、好ましい。ヒト及び動物の治療の両方が、本発明の範囲内である。
【0144】
投与
本発明で使用される薬剤は単独で投与され得るが、特にヒトの治療法において、それらは一般的には医薬担体、賦形剤又は希釈剤との混合物で投与されるであろう。
【0145】
いくつかの実施形態では、ウロリチンは、ニコチンアミドリボシド、G-CSF類似体、TPO受容体類似体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤との同時の使用、別々の使用、又は順次使用のための、組み合わせ製剤中に存在する。
【0146】
本明細書で使用するとき、用語「組み合わせ」、又は用語「組み合わせて」、「~と組み合わせて使用される」若しくは「組み合わせ製剤」は、2種以上の薬剤を同時に、順次に、又は別々に組み合わせ投与することを指す。
【0147】
本明細書で使用される用語「同時」は、薬剤が同時に投与される、すなわち、同じ時に投与されることを意味する。
【0148】
本明細書で使用される用語「順次」とは、薬剤がもう一方の後に投与されることを意味する。
【0149】
本明細書で使用される用語「別々に」は、薬剤が、互いに独立して投与されるが、但し薬剤を組み合わせた効果、好ましくは相乗的な効果を示すことを可能にする時間間隔内で投与されることを意味する。したがって、「別々に」投与するとは、1つの薬剤を、例えば、もう一方の後の1分以内、5分以内、又は10分以内に投与することを容認し得る。
【0150】
投与量
当業者は、過度の実験を行わずとも、本発明の薬剤の1つを対象に投与するのに適切な用量を容易に決定することができる。典型的には、医師は、個々の患者に最も好適である実際の投与量を、使用される特定の薬剤の活性、代謝安定性及びその薬剤の作用の長さ、年齢、体重、全般的な健康、性別、規定食、投与方法及び投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、並びに治療を受けている個体を含む様々な因子をもとに決定する。当然ではあるが、より高い又はより低い投与量範囲が優れている個別の場合があり得、そのような場合も本発明の範囲内にある。
【0151】
対象
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト又はヒト以外の動物である。
【0152】
ヒト以外の動物の例としては、脊椎動物、例えば、ヒト以外の霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、又はモルモット)、ブタ及びネコなどの哺乳類が挙げられる。ヒト以外の動物は、コンパニオンアニマルであってもよい。
【0153】
好ましくは、対象は、ヒトである。
【0154】
本発明は、例えば、対象における血球の産生を増加させるのに有用であり得る。
【0155】
本発明は、例えば、対象における血球レベルの増加に有用であり得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、対象は、正常量に満たない造血細胞、例えば赤血球、白血球及び/若しくは血小板を有する、又はそのリスクがある。
【0157】
ヒトにおける白血球の正常な範囲は、4500個/μL~10000個/μLである。男性における赤血球の正常な範囲は500万個/μL~600万個/μLであり、女性では、400万個/μL~500万個/μLである。血小板の正常な範囲は、1μL当たり140000~450000個である。血球レベルは、血球数と呼ばれることもあり、当業者は、当該技術分野で公知の多数の技術のうちのいずれか、例えば、血球計数器及び自動血液分析装置を使用して、容易に測定し得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、対象は、貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症を有する、又はそのリスクがある。
【0159】
いくつかの実施形態では、正常量に満たない造血細胞は、造血系の原発性又は自己免疫疾患、例えば、先天性骨髄不全症候群、特発性血小板減少症、再生不良性貧血、及び骨髄異形成症候群、に続発する。
【0160】
血球レベルの低下を発生するリスクがある対象としては、貧血又は骨髄異形成症候群に罹患している患者、化学療法、骨髄移植又は放射線療法を受けている患者、並びに免疫性血小板減少性紫斑病、赤芽球ろう及び自己免疫性好中球減少症が挙げられるがこれらに限定されない自己免疫性血球減少症に罹患している患者が挙げられる。
【0161】
移植後合併症を発生するリスクがある対象としては、造血細胞を枯渇しており、初代HSPC又はインビトロで操作したHSPCによる自家若しくは同種の造血幹細胞移植若しくは前駆細胞移植を受けている対象が挙げられる。
【0162】
いくつかの実施形態では、対象は、骨髄破壊的前処置;化学療法;放射線療法;及び/又は外科手術を受けていてもよい。骨髄破壊的前処置;化学療法;放射線療法及び/又は外科手術は、正常量に満たない造血細胞をもたらし得る。
【0163】
正常量に満たない造血細胞を有する、又はその発生リスクがある対象としては、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫及び骨髄腫)、血液疾患(例えば、遺伝性貧血、先天性代謝異常、再生不良性貧血、β-サラセミア、ブラックファン・ダイアモンド症候群、グロボイド細胞白質ジストロフィー、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、X連鎖リンパ球増殖症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群、ハンター症候群、ハーラー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、大理石骨病)に罹患している対象、免疫系及び他の疾患(例えば、自己免疫疾患、糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)の化学療法を受けている対象が挙げられる。更に、正常量に満たない造血細胞を有する、又はその発生リスクがある対象としては、重度の好中球減少症及び/又は重度の血小板減少症及び/又は重度の貧血を示す対象、例えば、移植後の対象、又は固形腫瘍のための除去的化学療法を受けている対象、毒性、薬剤性造血障害又は感染症による造血障害(すなわち、ベンゼン誘導体、クロラムフェニコール、B19パルボウイルスなど)を罹患している患者、並びに骨髄異形成症候群に罹患している患者、重度の免疫疾患に罹患している患者、又は中枢起源(すなわち、ファンコニ貧血)若しくは末梢起源(すなわち、G6PDH欠損症)のいずれかに関わらず、先天性血液疾患に罹患している患者が挙げられる。
【0164】
本発明は、例えば、貧血、白血球減少症及び/又は血小板減少症;感染症(例えば、非ウイルス感染又はウイルス感染);及び/又は血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)などの癌の治療又は予防に有用となり得る。
【0165】
本発明の薬剤、組成物、及び細胞集団は、国際公開第1998/005635号に列挙されている疾患の治療に有用となり得る。参照しやすいように、そのリストの一部をここに示す:癌、炎症又は炎症性疾患、皮膚科障害、発熱、心血管作用、出血、凝固及び急性期応答、悪液質、食欲不振症、急性感染、HIV感染、ショック状態、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、再潅流傷害、髄膜炎、片頭痛及びアスピリン依存性抗血栓症;腫瘍の増殖、浸潤及び拡散、血管新生、転移、悪性腫瘍、腹水及び悪性胸水;脳虚血、虚血性心疾患、骨関節炎、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息、多発性硬化症、神経変性、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、血管炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎;歯周炎、歯肉炎;乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、表皮水疱症;角膜潰瘍、網膜症及び外科的創傷治癒;鼻炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、アナフィラキシー;再狭窄、鬱血性心不全、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症又は内部硬化症(endosclerosis)。
【0166】
加えて、又は代替的に、本発明の薬剤、組成物、及び細胞集団は、国際公開第1998/007859号に列挙されている疾患の治療に有用であり得る。参照しやすいように、そのリストの一部をここに示す:サイトカイン及び細胞増殖/分化活性;免疫抑制又は免疫賦活活性(例えば、ヒト免疫不全ウイルス感染を含む免疫不全を治療するため;リンパ球の増殖の調節;癌及び多くの自己免疫疾患の治療、及び移植拒絶の防止又は腫瘍免疫の誘導のため);造血の調節、例えば、骨髄系疾患又はリンパ系疾患の治療;例えば、創傷治癒、火傷、潰瘍及び歯周病及び神経変性の治療のための、骨、軟骨、腱、靱帯及び神経組織の成長の促進;卵胞刺激ホルモンの阻害又は活性化(受精能の調節);化学走性/ケモキネシス活性(例えば、特定の細胞型を損傷部位又は感染部位に動員するため);止血及び血栓溶解活性(例えば、血友病及び脳卒中を治療するため);抗炎症活性(例えば、敗血性ショック又はクローン病を治療するため);抗微生物剤として;例えば、代謝又は行動のモジュレーター;鎮痛薬として;特定の欠乏症の治療;ヒト又は獣医学における、例えば乾癬の治療。
【0167】
加えて、又は代替的に、本発明の薬剤、組成物、及び細胞集団は、国際公開第1998/009985号に列挙されている疾患の治療に有用であり得る。参照しやすいように、そのリストの一部をここに示す:マクロファージ阻害活性及び/又はT細胞阻害活性、及びしたがって、抗炎症活性;抗免疫活性、すなわち、炎症を伴わない応答を含む、細胞性免疫応答及び/又は体液性免疫応答に対する阻害効果;細胞外マトリックス成分及びフィブロネクチンに対するマクロファージ及びT細胞の接着能の阻害、並びにT細胞において上方制御されたFas受容体発現の阻害;関節リウマチを含む関節炎、過敏症、アレルギー反応、喘息、全身性紅斑性狼瘡、膠原病及び他の自己免疫疾患に関連する炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、アテローム動脈硬化性心疾患、再潅流傷害、心停止、心筋梗塞、血管炎症性障害、呼吸窮迫症候群又は他の心肺疾患に関連する炎症、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎及び他の消化管疾患に関連する炎症、肝線維症、肝硬変又は他の肝臓疾患、甲状腺炎又は他の腺疾患、糸球体腎炎又は他の腎及び泌尿器疾患、耳炎又は他の耳鼻咽喉科疾患、皮膚炎又は他の皮膚疾患、歯周病又は他の歯科疾患、睾丸炎又は睾丸副睾丸炎、不妊症、睾丸外傷又は他の免疫関連精巣疾患、胎盤機能不全、胎盤不全、習慣性流産、子癇、前子癇及び他の免疫及び/又は炎症関連婦人科疾患、後部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、ブドウ膜網膜炎、視神経炎、眼内炎症、例えば、網膜炎又は嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、変性性眼底疾患(degenerative fondus disease)の免疫及び炎症成分、眼球損傷の炎症成分、感染により引き起こされる眼の炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経障害、例えば緑内障濾過手術後の過度の瘢痕化、眼内インプラントに対する免疫反応及び/又は炎症反応、並びに他の免疫及び炎症関連眼科疾患、中枢神経系(CNS)又は他の任意の器官の療法において免疫及び/又は炎症抑制が有益であると思われる自己免疫疾患若しくは病態若しくは障害に関連する炎症、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症及び/又は副作用、AIDS関連認知症複合HIV関連脳症、デビック病、ジデナム舞踏病、アルツハイマー病及びCNSの他の変性疾患、病態又は障害、ストークスの炎症成分、ポリオ後症候群、精神障害の免疫及び炎症成分、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性汎脳炎、脳脊髄炎、急性神経障害、亜急性神経障害、慢性神経障害、ギラン-バレー症候群、ジデナム舞踏病、重症筋無力症、偽脳腫瘍、ダウン症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、CNS圧迫若しくはCNS外傷若しくはCNS感染の炎症成分、筋萎縮及び筋ジストロフィーの炎症成分、並びに免疫及び炎症関連疾患、中枢神経系及び末梢神経系の病態又は障害、外傷後炎症、敗血症性ショック、感染性疾患、手術の炎症性合併症又は副作用、骨髄移植又は他の移植合併症及び/若しくは副作用、遺伝子療法の炎症及び/又は免疫合併症並びに副作用(例えばウイルス担体の感染による)、あるいは、AIDSに関連する炎症などの、望ましくない免疫反応及び炎症の阻害、体液性及び/若しくは細胞性の免疫応答を抑制又は阻害するため、単球若しくは白血球増殖性疾患、例えば白血病を、単球若しくはリンパ球の量を低減することによって治療又は改善するため、角膜、骨髄、器官、水晶体、ペースメーカー、天然若しくは人工皮膚組織などの天然又は人工の細胞、組織及び器官を移植する場合の移植片拒絶を予防及び/又は治療するため。
【0168】
増殖及び培養用培地の方法
別の態様では、本発明は、単離した造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(HSPC)の細胞集団を増殖させる方法であって、該集団をウロリチンと接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0169】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は、ウロリチンの存在下で細胞集団を培養することを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、方法は、
(a)HSPCの細胞集団を用意する工程と、
(b)任意選択で、HSPCの細胞集団を、好ましくはHSPC増殖培地又は維持培地中で培養する工程と;
(c)任意選択で、ミトコンドリア膜電位が低いことを特徴とするHSPCの細胞亜集団を単離する工程と、
(d)(a)若しくは(b)の細胞集団、又は(c)の細胞亜集団をウロリチンと接触させる工程と、を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、工程(a)で用意される集団は、骨髄、動員された末梢血、又は臍帯血から得られる。
【0172】
いくつかの実施形態では、工程(d)の生成物では、長期多系列血液再構成能を有する細胞が濃縮されている。
【0173】
本明細書で使用するとき、用語「増殖培地」及び「維持培地」は、幹細胞の増殖及び維持に好適な任意の標準的な幹細胞用培地、例えば本明細書の以下の実施例において記載されている培地又はBoitano et al.(2010)Science 329:1345-1348に記載されている培地を指す。
【0174】
別の態様では、本発明は、ウロリチンを含む細胞培養用培地を提供する。
【0175】
いくつかの実施形態では、培地は、サイトカイン及び成長因子を含む。サイトカイン及び成長因子は、間質細胞フィーダー又は間葉細胞によるサポートの有無に関わらず使用でき、SCF、TPO、Flt3-L、FGF-1、IGF1、IGFBP2、IL-3、IL-6、G-CSF、M-CSF、GM-CSF、EPO、オンコスタチン-M、EGF、PDGF-AB、アンジオポエチン、及びアンジオポエチン様ファミリー(Angl5を含む)、PGE2を含むプロスタグランジン及びエイコサノイド、アリール炭化水素(AhR)受容体阻害剤、例えばStemRegeninI(SRI)及びLGC006(Boitano et al.(2010)Science 329:1345-1348)を含み得る。
【0176】
HSC区画における膜電位、特にミトコンドリア膜電位は、本明細書の実施例に記載されるような当業者に公知の方法、特にテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)で染色した細胞のフローサイトメトリーによって測定できる。
【0177】
キット
別の態様では、本発明は、本発明の薬剤及び/又は細胞集団を含むキットを提供する。
【0178】
細胞集団は、好適な容器に入れて提供され得る。
【0179】
キットはまた、使用のための使用説明書を含んでもよい。
【0180】
当業者は、開示される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を組み合わせることができることを理解されたい。
【0181】
本発明の好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な例によってこれより記述する。
【0182】
本発明の実施では、特に指示がない限り、当業者の能力の範囲内のものである、化学、生化学、分子生物学、微生物学、及び免疫学の従来技術を用いる。かかる技術は文献で説明されている。例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements)Current Protocols in Molecular Biology,Ch.9,13 and 16,John Wiley&Sons;Roe,B.,Crabtree,J.and Kahn,A.(1996)DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley&Sons;Polak,J.M.and McGee,J.O’D.(1990)In Situ Hybridization:Principles and Practice,Oxford University Press;Gait,M.J.(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press、並びに、Lilley,D.M.and Dahlberg,J.E.(1992)Methods in Enzymology:DNA Structures Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA,Academic Pressを参照されたい。これらの一般的なテキストの各々は、本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例】
【0183】
実施例1
結果及び考察
UroAは、ミトコンドリア膜電位の低下を誘発する。
【0184】
最初に、骨髄由来マウスHSC(mHSC)に対するUroAの効果を試験した(
図1A)。新たに単離したmHSC(LKS CD150+CD48-)を、異なる濃度のUroAを添加した基本培地(Stemline+SCF+FLT3L+ペニシリン/ストレプトマイシン)中で培養した。3日目に細胞を回収し、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM;ミトコンドリア膜電位を測定するため)及びMitotracker(ミトコンドリア質量を測定するため)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0185】
UroAの用量の増加と共にTMRM
lowゲート内の細胞の割合が段階的に増加し、TMRM蛍光強度(平均蛍光強度、MFI)の有意な低下をもたらすことが判明した(
図1A、上図)。Mitotracker染色は、全ての濃度のUroAにおいてミトコンドリア質量が減少していることを示した。20μMでは有意な減少が生じていた(
図1A、下図)。次に、ヒト臍帯血由来造血幹細胞及び前駆細胞(hHSPC)に対するUroAの効果を調べた(
図1B)。凍結保存していたhHSPC(CD34+)を解凍し、異なる濃度のUroAを添加した基本培地(Stemspan+SCF+FLT3L+TPO+LDLP+ペニシリン/ストレプトマイシン)中で培養した。細胞のアリコートを3日目、5日目及び7日目に回収し、続いてCD34及びTMRMの染色を行い、フローサイトメトリーによって分析した。3つの時点全てにおいて、UroAの用量の増加と共に、TMRM
lowゲート内の細胞の割合が増加し、それに伴い同時にTMRMシグナル(蛍光強度の中央値、MFI)が低下することが確認された(
図1B)。
【0186】
インビトロでのUroA処理は、mHSC及びhHSPのインビボでの機能を増進させる。
【0187】
ミトコンドリア膜電位の低下はHSC機能を増進させることが過去に明らかにされている(Vannini,N.et al.(2016)Nat Commun 7:13125)ことから、本発明者らは、UroA処理がHSCのインビボでの再構成の有望性を向上させるかどうかを調べた。そのために、新たに単離したmHSCを、UroA(20μM)添加又は非添加の基本培地中で培養した。培養期間(3日間)の終了時に、細胞を計数し、致死的な線量照射を受けたレシピエントマウスに注射した(
図2A)。レシピエントの血液分析は、UroAで処理した細胞を注射したマウスにおいて、より高い再構成レベルを示した(
図2A)。この傾向は、血液の骨髄系列及びリンパ系列の両方に表れた(
図2A)。
【0188】
次に、臍帯血由来ヒトHSPCをUroA(50μM)添加又は非添加で培養し、次の2つの機能アッセイを実施した:コロニー形成単位(CFU)アッセイ-培養7日後、及びNSG-SGM3新生仔インビボ移植アッセイ-培養5日後(
図2B)。UroAで処理した細胞は、メチルセルロースCFUアッセイプレート(
図2C)において有意に多い数のコロニーを形成し、UroAに曝露されたhHSCの幹細胞機能及び前駆細胞機能の向上を示した。第2のアッセイでは、培養細胞を移植したNSG-SGM3マウスの血液分析により、UroAで処理した条件においてヒト移植片の生着の増加(割合及び絶対数の両方)が示された(
図2D)。更に、本発明者らは、異なるヒト血球系列を分析し、主にリンパ系列(T細胞及びB細胞)において、UroA条件下でヒト細胞数がより大きいことを見出した(
図2E)。これらのデータは、UroAによる処理がHSCの機能を増進することを実証する。
【0189】
UroAは、mHSCにおける代謝遺伝子の発現を駆動する。
【0190】
UroAがHSC機能を増進する分子機序を解析するために、UroA(20μM)添加又は非添加の基本培地中で培養したmHSCの遺伝子発現解析を実施した。倍率変化(ΔΔCT)分析は、UroAで処理した条件において、オートファジー遺伝子(ATG5、PARK2)、解糖系遺伝子(HK2、Glut1)及びROSからの保護に関係する遺伝子(Fox1、SOD2)の発現が増加していること示した(
図3)。これは、オートファジーと、ROSからの保護とが、HSCの自己複製の重要なドライバである(Takubo,K.et al.(2013)Cell Stem Cell 12:49-61;Vannini,N.et al.(2016)Nat Commun 7:13125;Ito,K.et al.(2006)Nat Med 12:446-51;Warr,M.R.et al.(2013)Nature 494:323-327;Ito,K.et al.(2016)Science 354:1156-1160)と共に、HSCの幹細胞性(stemness)を維持する主要な代謝経路である、上方調節された解糖の重要なドライバであること(Takubo,K.et al.(2013)Cell Stem Cell 12:49-61;Yu,W.M.et al.(2013)Cell Stem Cell 12:62-74)を示した本発明者らの過去の研究及び文献と一致する。
【0191】
要約すると、本発明者らの知見は、マイトファジー誘導によるミトコンドリア膜電位の調節を介してHSCの機能を回復するというUroAの能力を実証した。このことは、血液悪性腫瘍の治療のためのHSC移植におけるUroAの適用につながる。
【0192】
材料及び方法
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析を、C57Bl6マウスから新たに単離した骨髄(BM)で実施した。BMは、破砕大腿骨及び脛骨から抽出した。細胞懸濁液を70μmの細胞濾過器に通して濾過し、赤血球溶解緩衝液(eBioscences)を添加してインキュベートすることで赤血球細胞を除去した。単離及び染色は、氷冷した1mM EDTA/PBS溶液中で実施した。次いで、系列の陽性細胞を、磁気による細胞系列枯渇キット(magnetic lineage depletion、BD biosciences)を用いて除去した。次いで、細胞懸濁液を幹細胞区画に対する特異的抗体で染色し、FACS(BD FACS Aria III)により1.5mLエッペンドルフチューブに選別した。
【0193】
抗体
本研究では、以下の抗体を使用した:cKit(2B8)、Sca1(D7)、CD150(TC-15-12F12.2)、CD48(HM48-1)、CD45.2(104)、CD45.1(A20)、Gr1(RB6-8C5)、F4/80(BM8)、CD19(6D5)、CD3(17A2)、CD16/CD32(2.4G2)に対するラットmAb。抗体は、Biolegend、eBiosciences、及びBDから購入した。CD3、CD11b、CD45R/B220、Ly-6G、Ly-6C及びTER-119に対するビオチン化mAbの混合物を、系列マーカー(「系列カクテル」)として使用し、BDから購入した。ヒト特異性抗体は、hCD56(NCAM16.2)、hCD16(3G8)、hCD45(HI30)、hCD19(HIB19)、hCD4(RPA-T4)、hCD3(SK7)、hCD14(M5E2)、hCD8b(SIDI8BEE)、hCD34(8G12)、hCD38(HB-7)であり、eBioscience又はBDのいずれかから入手した。DAPI又はヨウ化プロピジウム(PI)染色を、生/死細胞の識別に使用した。
【0194】
mHSC及びhHSPCの培養
マウスHSCを1.5mLエッペンドルフチューブに選別し、100ng/mLのSCF(R&D)及び2ng/mLのFlt3(R&D)を添加したStemline II(SIGMA)中で培養した。表示のとおり、異なる濃度のUroA(DMSO中に溶解)を添加し、対照ウェルには等量のDMSOを添加した。
【0195】
胎児肝臓/臍帯血から単離し凍結保存したCD34+細胞を解凍し、hSCF(100ng/ml)、hFLT3L(100ng/ml)、hTPO(50ng/ml)、hLDLP(10μg/ml)、及び異なる濃度のUroA(DMSO中に溶解)を添加したStemSpan(Stem cell tech)培地中でインビトロ培養した。対照ウェルには等量のDMSOを添加した。培養期間が長い場合、培地の半分を2日又は3日毎に補充した。
【0196】
ミトコンドリア活性の分析
予め培養しておいたマウスHSCを、200nMのテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM;Invitrogen)及び100nMのMitotrackerグリーンと共に37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、BD LSR IIでフローサイトメトリーにより分析した。
【0197】
既に培養中のヒトHSCを、200nMのTMRM(Invitrogen)と共に37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、続いてCD34抗体で、4℃で1時間染色した。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、BD LSR IIでフローサイトメトリーにより分析した。
【0198】
マウス及びヒト化移植
C57Bl/6 Ly5.2マウスに、移植24時間前に、ガンマラジエーター内で合計8Gyの線量で致死的照射を行った。マウスに、C57Bl/6 Ly5.1マウス由来のものであり培養後の200個のドナー細胞と、C57Bl/6 Ly5.1/5.2マウス由来の200,000個のコンペチター細胞(competitor cell)とを、尾静脈注射により注射した。末梢血を数週間毎に採取して、FACS分析によってキメラ化のパーセンテージを算出した。
【0199】
NSGマウスは、Jackson Laboratoryから購入し、研究施設内の無菌室で繁殖及び維持した。移植のために、1日齢のNSG仔に1Gy(RS-2000、RAD源)を照射し、数時間後に、インビトロで増殖させたHSCを肝臓内注射した。各仔には、当初50,000個であったCD34+細胞のインビトロ培養後に誘導された細胞塊を注入した。マウスから12週目に採血して、末梢血中のヒト再構成レベル(ヒトCD45+細胞の%)を推定した。抗体の組み合わせを使用して、ヒトB細胞、T細胞、単球、好中球、及びNK細胞を更に推定した。
【0200】
CFUアッセイ
CFUアッセイは、H4434(Stem cell tech)を使用して、製造業者の取扱説明書に従って実施した。各ウェルから1000個の細胞を2連で播種した。播種の15日後に、Stem Vision(Stem cell tech)を使用してコロニーを計数した。
【0201】
QPCR
ZR RNA MicroPrep(Zymo Research)を使用して、培養後のHSCからRNAを抽出した。RNA抽出は製造業者の取扱説明書に従って実施した。1st strand cDNAキット(TAKARA)を用いて、製造業者の取扱説明書に従って、RNAをcDNAに逆転写した。
【0202】
qPCRについては、0.5μLのcDNA、5μLのPower Syber Greenマスターミックス(Applied Biosystem)及び500nMのプライマーを使用して、各反応の最終体積を10μLとした。反応は、7900HTシステム(Applied Biosystem)上で実施した。
【0203】
マウスプライマー配列は以下のとおりである。
【0204】
【0205】
実施例2
UroAによる短時間のインビトロ処置が、照射レシピエントへの移植後の生存率を改善できるかを確認するために、限定移植実験を計画した。ヒト臍帯血由来HSCを、UroAの非存在下又は存在下で3日間培養した。培養後、細胞を計数し、40,000個をそれぞれのレシピエントマウス(照射NSG成体マウス)に注射した。これらのマウスを数ヶ月間経過観察して、移植後生存率を確認した。UroA処理した細胞を移植したマウスの群は、特に移植後回復の早期段階において、生存率の有意な改善を示した。
【0206】
上記明細書で言及した全ての刊行物は、本明細書に参照により組み込まれる。本発明に開示する組成物、使用及び方法の様々な改変及び変更は、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、当業者には明白であろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して開示されているが、特許請求される本発明は、このような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、当業者には自明であり、本発明を実施するために開示された様式の種々の改変は以下の特許請求の範囲の範囲内であることを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】