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特表2022-517378炎症性疾患および疼痛を治療するためのペプチドおよびそれを含有する薬剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】炎症性疾患および疼痛を治療するためのペプチドおよびそれを含有する薬剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20220301BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 38/03 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C12N15/11 Z
A61K38/03
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P29/02
A61P25/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541078
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2019111788
(87)【国際公開番号】W WO2021072724
(87)【国際公開日】2021-04-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521311643
【氏名又は名称】沛爾生技醫藥股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林 成龍
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA02
4C084BA18
4C084BA23
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA081
4C084ZA961
4C084ZB111
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA16
4H045EA20
4H045FA33
4H045GA05
4H045GA15
(57)【要約】
本発明は、炎症性疾患を治療するためのペプチドおよびそのための薬剤の製造におけるその使用に関し、そのペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含み、その薬剤は有効量のペプチドおよび薬学上許容される担体を含む。また、疼痛を治療するための薬剤の製造のためのペプチドの使用も提供され、その薬剤は、有効量のペプチドおよび薬学上許容される担体を含む。本発明により、そのペプチドの投与が炎症指標を効果的に軽減し、抗侵害受容作用を示すことが確認される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、単離されたペプチド。
【請求項2】
有効量の請求項1に記載のペプチドおよび薬学上許容される担体を含むことを特徴とする、炎症性疾患を治療するための薬剤の製造のための請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項3】
前記炎症性疾患は強直性脊椎炎、変形性関節症、リウマチ性関節炎、関節リウマチ、外傷性関節炎、化膿性関節炎、通風性関節炎、結核性関節炎、神経障害性関節炎、および血友病性関節炎を含むことを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
有効量の請求項1に記載のペプチドおよび薬学上許容される担体を含むことを特徴とする、疼痛を治療するための薬剤の製造のための請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項5】
前記疼痛は神経障害性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格疼痛、術後疼痛、癌性疼痛、急性疼痛、および慢性疼痛を含むことを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記炎症性疼痛は、強直性脊椎炎疼痛、変形性関節症疼痛、リウマチ性関節炎疼痛、関節リウマチ疼痛、外傷性関節炎疼痛、化膿性関節炎疼痛、通風性関節炎疼痛、結核性関節炎疼痛、神経障害性関節炎疼痛、および血友病性関節炎疼痛を含むことを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記薬剤は腸溶剤形または非経口剤形であることを特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記有効量は0.0008μg/kg~815μg/kgの範囲であることを特徴とする、請求項2または4に記載の使用。
【請求項9】
前記腸溶剤形は経口剤形であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記非経口剤形は注射用剤形であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、炎症性疾患および疼痛を治療するために使用可能なペプチド、および炎症性疾患を治療するための薬剤の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術の説明
発赤、腫脹、発熱および疼痛を含む炎症応答は、傷害または病原体感染などの刺激に対する身体組織の一連の生理反応を指す。炎症応答は、生物が外因性病原体に反応する反応の1つであり、生物に有益な免疫応答の1つである。しかしながら、長期間持続する炎症、すなわち、慢性炎症は、花粉症、歯周炎、関節リウマチなどのいくつかの炎症性疾患を引き起こし得る。サイトカインは、炎症に対して調節作用を及ぼす。いくつかのサイトカインは、炎症応答に役割を果たす。腫瘍壊死因子(TNF)は多機能性サイトカインであり、炎症応答中にマクロファージまたは単球の増殖を促進し、下流炎症応答においてサイトカインの発現を活性化する。従って、それは炎症誘発性サイトカインである。全てのサイトカインの中で、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、炎症に取り組むための指標として慣用されている。さらに、インターロイキン-6もまた炎症誘発物質として働き、多くの単球およびマクロファージを患部に導き、炎症応答を引き起こす。
【0003】
国際疼痛学会(IASP)は、疼痛を、実際のまたは潜在的な組織損傷に関連する不快な感覚および感情体験と定義している。疼痛は、神経系の不快な感覚である。一般的な疼痛のタイプとしては、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、交感神経性疼痛、心因性疼痛などが含まれる。加えて、疼痛はまた、身体の部位、急性または慢性などの時間、病因、および生理学的特徴によっても区別できる。全ての疼痛の中で、急性疼痛の持続はより短く、通常、組織損傷の警報シグナルである。従って、このタイプの疼痛は組織回復の後に消失する。慢性疼痛の持続はより長く、通常、組織損傷のシグナルではなく、疾患のシグナルである。慢性疼痛を有する患者は、おそらく抑鬱、自閉、または過敏となってより高い社会コストを要する。よって、疼痛の管理は常に大きな医療問題となっている。
【発明の概要】
【0004】
新規な抗炎症性鎮痛剤を開発する差し迫った必要があるという事実に鑑みて、本発明は、炎症性疾患および疼痛を治療するために使用可能なペプチドを提供する。さらに、本発明は、炎症性疾患を治療するための薬剤を製造するためのペプチドの使用を提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含み、その薬剤は有効量の前記ペプチドおよび薬学上許容される担体を含む。加えて、このペプチドは、疼痛を治療するために使用できる。よって、本発明はまた、炎症性疾患を治療するための薬剤を製造するためのペプチドの使用も提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含み、その薬剤は有効量の前記ペプチドおよび薬学上許容される担体を含む。
【0005】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む。
【0006】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0007】
本発明はさらに、疼痛を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む。
【0008】
本発明はさらに、疼痛を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0009】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することを含み、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することからなり、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、疼痛を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することを含み、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、疼痛を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することからなり、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる方法を提供する。
【0013】
好ましくは、この変異体は、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、この変異体のアミノ酸配列は、配列番号1のペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%または90%を超える配列同一性を有し、炎症性疾患または疼痛を治療する効果を有する。いくつかの実施形態では、このペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸の付加、欠失、および/または置換は、C末端および/またはN末端に作出される。
【0014】
好ましくは、この変異体は、配列番号1と比較して1~3個の保存的アミノ酸置換、より好ましくは、1~2個の保存的アミノ酸置換、いっそうより好ましくは、1個の保存的アミノ酸置換を有し、かつ、炎症性疾患または疼痛の治療の効果を有するアミノ酸配列を指す保存的変異体である。
【0015】
「保存的アミノ酸置換」は、元のアミノ酸配列と同じまたは類似の特性を有するアミノ酸での置換を指す。天然アミノ酸は、それらの側鎖の特性に基づいて以下のカテゴリーに分類できる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met(M)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)
(2)中性親水性:Cys(C)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:His(H)、Lys(K)、Arg(R)
(5)鎖の特性に影響を及ぼす残基:Gly(G)、Pro(P)
(6)芳香族:Trp(W)、Tyr(Y)、Phe(F)
【0016】
よって、保存的アミノ酸置換は、これらのカテゴリーの1つのアミノ酸が同じカテゴリーの別のアミノ酸で置換されることを意味する。保存的アミノ酸置換は、非天然アミノ酸残基での置換を含み得る。好ましくは、このペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体からなる。より好ましくは、このペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。好ましくは、本発明によれば、「薬学上許容される担体」としては、限定されるものではないが、溶媒、乳化剤、沈殿防止剤、崩壊剤、結合剤、賦形剤、分解防止剤、希釈剤、ゲル化剤、保存剤、滑沢剤、界面活性剤およびその他の類似の担体または本発明に好適な担体が含まれる。
【0017】
好ましくは、前述の炎症性疾患としては、強直性脊椎炎、変形性関節症、リウマチ性関節炎、関節リウマチ、外傷性関節炎、化膿性関節炎、通風性関節炎、結核性関節炎、神経障害性関節炎、および血友病性関節炎が含まれる。
【0018】
好ましくは、前述の疼痛としては、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格疼痛、術後疼痛、癌性疼痛、急性疼痛、および慢性疼痛が含まれる。
【0019】
好ましくは、前述の炎症性疼痛としては、強直性脊椎炎疼痛、変形性関節症疼痛、リウマチ性関節炎疼痛、関節リウマチ疼痛、外傷性関節炎疼痛、化膿性関節炎疼痛、通風性関節炎疼痛、結核性関節炎疼痛、神経障害性関節炎疼痛、および血友病性関節炎疼痛が含まれる。
【0020】
前述の薬剤は、腸溶剤形または非経口剤形であり得る。腸溶剤形としては、限定されるものではないが、経口剤形および浣腸の、腸溶コーティング錠剤、多層錠、糖衣錠、舌下錠、チュアブル錠、トローチ、カプセル剤、散剤、シロップ、溶液、エマルション、懸濁液、粘着剤、マグマ剤、液体抽出物、抽出液、酒精剤、エリキシル剤、およびチンキなどが含まれる。非経口剤形としては、限定されるものではないが、注射用剤形、軟膏、ローション、リニメント、およびエアロゾルが含まれる。
【0021】
好ましくは、有効量は、0.0008μg/kg~815μg/kgの範囲である。
【0022】
好ましくは、本願のペプチドは、月1回~1日1回の頻度で投与される。より好ましくは、本願のペプチドは、月2回~週2回の頻度で投与される。より好ましくは、本願のペプチドは、週1回の頻度で投与される。
【0023】
より好ましくは、本願のペプチドは、前述の有効量で週1回投与される。
【0024】
本発明によれば、有効量は、本明細書の実施形態において、米国食品医薬品局により発行されている指針文書“Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers”に従って、0.01μg/kg~10mg/kgの範囲の配列番号1のペプチド濃度に基づいて計算される。体重(b.w.)60kgの成人では、用量は基準:12.3×1日当たり体重kg当たりヒト推奨用量=1×マウス用量によって換算できる。
【0025】
より好ましくは、有効量は、0.008μg/kg~410μg/kgの範囲である。
【0026】
より好ましくは、有効量は、0.008μg/kg~0.25μg/kgの範囲である。
【0027】
より好ましくは、有効量は、0.025μg/kg~0.25μg/kgの範囲である。
【0028】
より好ましくは、有効量は、80μg/kg~410μg/kgの範囲である。
【0029】
より好ましくは、有効量は、80μg/kg~250μg/kgの範囲である。
【0030】
好ましくは、腸溶剤形は、経口剤形である。
【0031】
好ましくは、非経口剤形は、注射用剤形である。
【0032】
本発明によれば、「治療」とは、治療の効果を達成するための本発明のペプチドを患者に投与することを指し、その治療の効果は、疾患または関連の症状の治癒の治癒、緩和、改善または軽減を指す。本発明によれば、炎症性疾患の治療は、炎症関連症状の改善を指し、いくつかの実施形態では、これは炎症指標の軽減によって評価される。本発明によれば、疼痛の治療は、疼痛関連症状の改善を指し、いくつかの実施形態では、これは疼痛知覚の閾値の上昇により、またはいくつかの実施形態では、足逃避閾値(PWT)の上昇より評価される。
【0033】
本発明によれば、用語「有効量」は、所望の生体反応のための用量、すなわち、所望の治療効果のための用量を指す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウス(試験群)におけるTNF-αの血清濃度を対照群と比較して示す。
図2】3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウス(試験群)におけるIL-6の血清濃度を対照群と比較して示す。
図3】3mg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウス(試験群)の同側後足のPWTの経時的変化をモルヒネ群(10mg/kg)と比較して示す。
図4】3mg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウス(試験群)の反対側の足のPWTの経時的変化をモルヒネ群(10mg/kg)と比較して示す。
図5】1mg/kgおよび3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウスの同側後足のPWTを対照群と比較して示す。
図6】1mg/mLおよび3mg/mLの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウスの反対側後足のPWTを対照群と比較して示す。
図7】それぞれ0.3μg/kg、1μg/kg、3μg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウスの同側後足のPWTを対照群と比較して示す。
図8】それぞれ0.3μg/kg、1μg/kg、3μg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウスの反対側の足のPWTを対照群と比較して示す。
図9】酢酸誘発ライジング試験における配列番号1のペプチドの抗侵害受容作用およびテールフリック試験における配列番号1のペプチドの最大効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の所定の発明目的を達成するために採用した技術的手段を添付図面により、本発明の準備例および実施例に従ってさらに説明する。
【0036】
準備例1
本発明において使用されるGlp Glu Thr Ala Val Ser Ser His Glu Gln Aspのペプチドを合成するために標準的なFmoc法およびマイクロ波ペプチド合成装置を適用した。ここで、Glpはピログルタミン酸(Cas Number 98-79-3)である。一般に、D残基を予め添加したWang樹脂(装填量0.6mmol/g)を反応容器に秤量し、合成前に新鮮なDMF(10~15mL)を加え、膨潤準備をした。膨潤時間はマイクロ波ペプチド合成装置で3分に設定した。
【0037】
N末端アミン基を遊離状態にするために、DMF中20%ピペリジン5mLを用いて最初とその次のFmoc基を除去し、標準的な脱保護法(第1段階:温度75℃、電圧155W、および温度保持時間15秒 第2段階:温度90℃、電圧30W、および温度保持時間50秒)によって「DEP」工程の溶液として利用した。
【0038】
次に、C末端(「ACT」工程として機能)、および所望のアミノ酸(Fmoc-AA(保護側鎖)-OHとして機能)を活性化するためにDMF中0.5MのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を5倍過剰量(DMF中0.2Mの濃度)で加え、カップリング反応(工程AA)のためにDMF中1.0Mのオキシマを用いた。標準的なカップリング反応を行った(第1段階:温度75℃、電圧170W、および温度保持時間15秒 第2段階:温度90℃、電圧30W、および温度保持時間230秒)。約4分間AAを行った後、Wang樹脂をDMF溶液で洗浄した。DEP-ACT-AAの工程を繰り返して、C末端からN末端へペプチドを構築した。
【0039】
最後に、このペプチドを、氷浴中、95%TFA/2.5%HO/2.5%TIPSで処理した後、それを2時間放置して室温とすることによって固相支持体から取り出す。濾過後に濾液を回収し、アイスエーテルを加えて沈澱させ、遠心分離して上清を除去した。その後、エーテルを加えてこの沈澱を洗浄した。前述の工程を3~6回繰り返した。最終的な沈澱を採取し、凍結乾燥させて白色の綿毛様生成物、すなわち、最終生成物を得た。この最終生成物の純度を高速液体クロマトグラフィーにより決定し、分子量および配列をLC-MS/Mにより分析した。
【0040】
準備例2
ICRマウス(8~12週齢、体重20~25g、BioLASCO Taiwanから)において次のように関節炎を誘導した。各マウスの右足関節に1mg/mLの完全フロイントアジュバント(CFA)を5μLの量で週1回継続的に注射した。最後の注射時を0週とする。4回の注射の後、ICR(Institute of Cancer Research)マウスの片側の前部足関節に長期炎症および足の腫脹が少なくとも12週間誘導され、両側の機械痛覚過敏もまた少なくとも12週間、継続的に誘導され、従って、臨床的に長期慢性疼痛を患う関節リウマチモデルとして機能した。
【0041】
準備例3
侵害受容性疼痛試験および酸誘発慢性広範囲疼痛試験を行うために、C57BL/6JNarl雄マウス(20~25g)を温度制御環境(24±0.5℃)下、12時間明暗周期(08:00~20:00に照明)で飼育し、標準的な実験室餌および水道水を自由に摂らせた。動物を試験的操作の前に20~30分馴化させた。動物飼育および取り扱い手順は疼痛研究で使用される動物に関する国際疼痛学会指針に準拠し、これらの手順は動物実験倫理委員会によって承認された。
【0042】
試験1
準備例2からのマウスに、滅菌水に溶解させた3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目に経口投与し、その後、12週目まで週1回ペプチドを継続的に投与し、6個体のマウスを含む試験群とした。他方、水を投与したマウスを対照群とし、これも6個体のマウスを含んでいた。試験群および対照群のマウスを投与後12週目に犠牲にした。心臓穿刺により血清採取を行う。マウスTNF-α Quantikine ELISAキット(R&D System、MTA00B)、マウスIL-6 Quantikine ELISAキット(R&D System、M600B)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、試験群および対照群におけるマウスのTNF-αおよびIL-6の血清濃度を決定および収集した。この結果から、配列番号1のペプチドの長期経口投与を受けた試験群のマウスのTNF-αの血清濃度は検出可能域外のレベルに低下していた、すなわち、検出されなかった(ND)ことが見て取れた(図1)。また、試験群のIL-6の血清濃度も、対照群に比べて低下していた(図2)。従って、本発明の配列番号1のペプチドは、全身炎症指標を実際に引き下げることができ、このことは、本発明の配列番号1のペプチドが炎症性疾患、特に、関節リウマチから生じる慢性全身炎症を実際に治療できることを証明する。
【0043】
試験2
準備例2からのマウスに、10mg/kgのオピオイド鎮痛薬としてのモルヒネを4週目に経口投与し、これらを陽性対照とした。他方、滅菌水に溶解させた3mg/kgの配列番号1のペプチドを経口投与したマウスを試験群とした。モルヒネ陽性対照群および試験群は両方とも6個体のマウスを含んだ。マウスの足逃避閾値(PWT)を、投与から0分、30分、60分、90分、120分後にvon Freyフィラメントにより決定した。
【0044】
試験の結果を図3および図4に示した。配列番号1の投与後、両群のマウスの同側後足および反対側の足のPWT値は、モルヒネ陽性対照群のように上昇傾向を示した。従って、これは、本願の配列番号1のペプチドが、モルヒネと同様の抗侵害受容作用を有したが、必要な量は少なかったことを証明する。また、試験群およびモルヒネ群において投与後90分の時点で最大抗侵害受容作用が示されたことも見て取れた。90分で、モルヒネ群では、マウスの同側後足のPWT値は0.085±0.015gから0.64±0.089gに上昇し(図3に示されるとおり)、マウスの反対側の足のPWT値は0.43±0.033gから1.96±0.488gに上昇し(図4に示されるとおり)、一方、試験群では、マウスの同側後足のPWT値は0.07gから0.9±0.156gに上昇し(図3に示されるとおり)、マウスの反対側の足のPWT値は0.5±0.047gから1.35±0.193gに上昇した(図4に示されるとおり)。さらに、抗侵害受容作用は投与後120分で低下し始めた。
【0045】
試験3
準備例2からのマウスに、滅菌水に溶解させた1mg/kgまたは3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目に経口投与し、その後、12週目まで週1回ペプチドを継続的に投与し、これらを灰色の矢印で示した。準備例2のマウスに関するCFA注射の4回の時機を図5および図6に黒い矢印で示した。2つの投与群はともに6個体のマウスを含んだ。水を経口投与したマウスを対照群として用いた。対照群もまた6個体のマウスを含んだ。PWT値は、投与後90分の時点でvon Freyフィラメントにより測定した。
【0046】
試験結果を図5および図6に示した。1mg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、同側後足のPWT値は0.09gから0.5~1gに上昇し(図5に示されるとおり)、反対側の足のPWT値は3週目の0.4gから0.6~1.2gに上昇した。3mg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後(図6に示されるとおり)、同側後足のPWT値は3週目の0.09gから0.63~1gに上昇し(図5に示されるとおり)、反対側の足のPWT値は0.4gから0.87~1.27gに上昇した(図6に示されるとおり)。よって、試験の結果は、1mg/kgおよび3mg/kgの配列番号1のペプチドの抗侵害受容作用が長期投与の後に同等であったことを示した。
【0047】
試験4
準備例2から24個体のマウスを供給した。マウスにそれぞれ0.3μg/kg、1μg/kg、または3μg/kgの配列番号1のペプチドを投与した。全ての投与群は6個体のマウスを含んだ。他の6個体のマウスに水を経口投与し、これを対照群とした。投与後90分の時点でPWT値をvon Freyフィラメントにより測定した。
【0048】
結果を図7および図8に示した。0.3μg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、マウスの同側後足のPWT値は0.065gから1gに上昇し、反対側の足のPWT値は0.32gから1gに上昇した。1μg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、マウスの同側後足のPWT値は0.065gから0.6gに上昇し、反対側の足のPWT値は0.32gから1.4gに上昇した。3μg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、マウスの同側後足のPWT値は0.065gから0.16gに上昇し、反対側の足のPWT値は0.32gから1gに上昇した。これらの試験結果は、0.3μg/kg~3μg/kgの配列番号1のペプチドが経口投与後に抗侵害受容作用を有したことを示した。
【0049】
試験5
酸誘発腹部収縮アッセイをH.O.Collier,L.C.Dinneen,C.A.Johnson,C.Schneider,The abdominal constriction response and its suppression by analgesic drugs in the mouse. Br J Pharmacol Chemother 32,295-310(1968)に従って行った。一般に、準備例3からのマウスを小さな観察室に入れ、20分間馴化した。内臓痛の指標となる「ライジング」応答(腹部収縮)を誘導する1%酢酸300μL)を注射する10分前に、マウスに蒸留水(ビヒクル対照として)または種々の濃度(0.1μg/kg、0.3μg/kg、1μg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kg)の配列番号1のペプチドを経口投与した。ビヒクル対照群および配列番号1のペプチドを投与した投与群はそれぞれ5~12個体のマウスを含んだ。酸注射後30分以内の腹部収縮の数を数え、各群のマウスの平均収縮数を計算した。酸誘発ライジングの抗侵害受容作用を抗侵害受容作用%として示した。
(ビヒクル対照群のマウスの平均収縮数-投与群のマウスの平均収縮数)/(ビヒクル対照群のマウスの平均収縮数)×100%
【0050】
試験6
放射熱テールフリック試験をF.E.D’Amour,D.L.Smith,A method for determining loss of pain sensation.The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 72,74-79(1941)に従って改変した。準備例3の5~12個体のマウスを入れ、テールフリック試験の前に30分間、固定器に馴化した。較正および装置の維持のために熱流束赤外放射計(Ugo Basile、イタリア、カタログ番号37300)を用いた。マウスの尾の先端から2cmの部位に刺激を与え、マウスが熱源から尾を退けるまでにかかる時間をテールフリッキング潜時と定義した。組織損傷のリスクを制限するために、カットオフ時間を30.1秒に設定した。熱強度は、ベースライン潜時が大部分の動物で約5~8秒となるように調整した。潜時は、種々の用量(0.01μg/kg、0.03μg/kg、0.1μg/kg、0.3μg/kg、1μg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kg)の配列番号1のペプチドを経口投与した後、示された時間間隔(10~90分)で、10分毎に記録した。次に、10~90分間の平均潜時を計算した。L.S.Harris,A.K.Pierson,Some Narcotic Antagonists in the Benzomorphan Series.J Pharmacol Exp Ther 143,141-148(1964)に従い、テールフリック試験の抗侵害受容作用を式:
%MPE=(投薬後潜時-投薬後潜時)/(カットオフ時間-投薬前潜時)×100%
によって定義される「%MPE」(最大効果)で示した。
【0051】
試験5および試験6の結果を図9に示した。1μg/kgおよび10mg/kgの用量の配列番号1のペプチドは、酸誘発ライジング試験において最良の抗侵害受容作用を示し、一方、0.1μg/kg、0.3μg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgは、放射熱テールフリック試験において最良の抗侵害受容作用を示した。従って、本発明の配列番号1のペプチドは、高濃度および低濃度の両方で抗侵害受容作用を有する。
【0052】
結論として、本発明のペプチドは、炎症性疾患、特に、関節リウマチを治療する効果、および疼痛、特に、関節リウマチから生じる疼痛を治療する効果を有する。
【0053】
上記の実施形態は、いずれの態様においても本発明を限定することを意図しない本発明の好ましい実施形態にすぎない。好ましい実施形態を上記に開示するが、それらはいずれの態様においても本発明を限定することを意図しない。当業者は、本発明の技術的な解決の範囲から逸脱することなく、上記の開示を、等価な変形形態または等価な実施形態の改変としてその内容に軽微な改変を加えて利用できる。本発明の趣旨および原理の範囲内のいずれの改変、なされる等価の置換、改良なども、本発明の範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2022517378000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、単離されたペプチド。
【請求項2】
有効量の請求項1に記載のペプチドおよび薬学上許容される担体を含むことを特徴とする、炎症性疾患を治療するための薬剤
【請求項3】
前記炎症性疾患は強直性脊椎炎、変形性関節症、リウマチ性関節炎、関節リウマチ、外傷性関節炎、化膿性関節炎、通風性関節炎、結核性関節炎、神経障害性関節炎、および血友病性関節炎を含むことを特徴とする、請求項2に記載の薬剤
【請求項4】
有効量の請求項1に記載のペプチドおよび薬学上許容される担体を含むことを特徴とする、疼痛を治療するための薬剤
【請求項5】
前記疼痛は神経障害性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格疼痛、術後疼痛、癌性疼痛、急性疼痛、および慢性疼痛を含むことを特徴とする、請求項4に記載の薬剤
【請求項6】
前記炎症性疼痛は、強直性脊椎炎疼痛、変形性関節症疼痛、リウマチ性関節炎疼痛、関節リウマチ疼痛、外傷性関節炎疼痛、化膿性関節炎疼痛、通風性関節炎疼痛、結核性関節炎疼痛、神経障害性関節炎疼痛、および血友病性関節炎疼痛を含むことを特徴とする、請求項5に記載の薬剤
【請求項7】
前記薬剤は腸溶剤形または非経口剤形であることを特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載の薬剤
【請求項8】
前記有効量は0.0008μg/kg~815μg/kgの範囲であることを特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載の薬剤
【請求項9】
前記腸溶剤形は経口剤形であることを特徴とする、請求項7に記載の薬剤
【請求項10】
前記非経口剤形は注射用剤形であることを特徴とする、請求項7に記載の薬剤
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、炎症性疾患および疼痛を治療するために使用可能なペプチド、および炎症性疾患を治療するための薬剤の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術の説明
発赤、腫脹、発熱および疼痛を含む炎症応答は、傷害または病原体感染などの刺激に対する身体組織の一連の生理反応を指す。炎症応答は、生物が外因性病原体に反応する反応の1つであり、生物に有益な免疫応答の1つである。しかしながら、長期間持続する炎症、すなわち、慢性炎症は、花粉症、歯周炎、関節リウマチなどのいくつかの炎症性疾患を引き起こし得る。サイトカインは、炎症に対して調節作用を及ぼす。いくつかのサイトカインは、炎症応答に役割を果たす。腫瘍壊死因子(TNF)は多機能性サイトカインであり、炎症応答中にマクロファージまたは単球の増殖を促進し、下流炎症応答においてサイトカインの発現を活性化する。従って、それは炎症誘発性サイトカインである。全てのサイトカインの中で、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、炎症に取り組むための指標として慣用されている。さらに、インターロイキン-6もまた炎症誘発物質として働き、多くの単球およびマクロファージを患部に導き、炎症応答を引き起こす。
【0003】
国際疼痛学会(IASP)は、疼痛を、実際のまたは潜在的な組織損傷に関連する不快な感覚および感情体験と定義している。疼痛は、神経系の不快な感覚である。一般的な疼痛のタイプとしては、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、交感神経性疼痛、心因性疼痛などが含まれる。加えて、疼痛はまた、身体の部位、急性または慢性などの時間、病因、および生理学的特徴によっても区別できる。全ての疼痛の中で、急性疼痛の持続はより短く、通常、組織損傷の警報シグナルである。従って、このタイプの疼痛は組織回復の後に消失する。慢性疼痛の持続はより長く、通常、組織損傷のシグナルではなく、疾患のシグナルである。慢性疼痛を有する患者は、おそらく抑鬱、自閉、または過敏となってより高い社会コストを要する。よって、疼痛の管理は常に大きな医療問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2018/0134751 A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2015/0218214 A1号明細書
【特許文献3】中国特許第104321337A号明細書
【特許文献4】中国特許第107849091A号明細書
【特許文献5】中国特許第107847550A号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zheng, Yuqiu, et al. ”Neurotropin inhibits neuroinflammation via suppressing NF-κB and MAPKs signaling pathways in lipopolysaccharide-stimulated BV2 cells.” Journal of pharmacological sciences 136.4 (2018): 242-248
【非特許文献2】Miura, Tomoshi, et al. ”Mechanisms of analgesic action of neurotropin on chronic pain in adjuvant-induced arthritic rat: roles of descending noradrenergic and serotonergic systems.” Journal of pharmacological sciences (2005): 0503110016-0503110016
【発明の概要】
【0006】
新規な抗炎症性鎮痛剤を開発する差し迫った必要があるという事実に鑑みて、本発明は、炎症性疾患および疼痛を治療するために使用可能なペプチドを提供する。さらに、本発明は、炎症性疾患を治療するための薬剤を製造するためのペプチドの使用を提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含み、その薬剤は有効量の前記ペプチドおよび薬学上許容される担体を含む。加えて、このペプチドは、疼痛を治療するために使用できる。よって、本発明はまた、炎症性疾患を治療するための薬剤を製造するためのペプチドの使用も提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含み、その薬剤は有効量の前記ペプチドおよび薬学上許容される担体を含む。
【0007】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む。
【0008】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0009】
本発明はさらに、疼痛を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む。
【0010】
本発明はさらに、疼痛を治療するためのペプチドを提供し、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0011】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することを含み、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することからなり、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、疼痛を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することを含み、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、疼痛を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療上有効な量のペプチドを投与することからなり、このペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる方法を提供する。
【0015】
好ましくは、この変異体は、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、この変異体のアミノ酸配列は、配列番号1のペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%または90%を超える配列同一性を有し、炎症性疾患または疼痛を治療する効果を有する。いくつかの実施形態では、このペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸の付加、欠失、および/または置換は、C末端および/またはN末端に作出される。
【0016】
好ましくは、この変異体は、配列番号1と比較して1~3個の保存的アミノ酸置換、より好ましくは、1~2個の保存的アミノ酸置換、いっそうより好ましくは、1個の保存的アミノ酸置換を有し、かつ、炎症性疾患または疼痛の治療の効果を有するアミノ酸配列を指す保存的変異体である。
【0017】
「保存的アミノ酸置換」は、元のアミノ酸配列と同じまたは類似の特性を有するアミノ酸での置換を指す。天然アミノ酸は、それらの側鎖の特性に基づいて以下のカテゴリーに分類できる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met(M)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)
(2)中性親水性:Cys(C)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:His(H)、Lys(K)、Arg(R)
(5)鎖の特性に影響を及ぼす残基:Gly(G)、Pro(P)
(6)芳香族:Trp(W)、Tyr(Y)、Phe(F)
【0018】
よって、保存的アミノ酸置換は、これらのカテゴリーの1つのアミノ酸が同じカテゴリーの別のアミノ酸で置換されることを意味する。保存的アミノ酸置換は、非天然アミノ酸残基での置換を含み得る。好ましくは、このペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体からなる。より好ましくは、このペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。好ましくは、本発明によれば、「薬学上許容される担体」としては、限定されるものではないが、溶媒、乳化剤、沈殿防止剤、崩壊剤、結合剤、賦形剤、分解防止剤、希釈剤、ゲル化剤、保存剤、滑沢剤、界面活性剤およびその他の類似の担体または本発明に好適な担体が含まれる。
【0019】
好ましくは、前述の炎症性疾患としては、強直性脊椎炎、変形性関節症、リウマチ性関節炎、関節リウマチ、外傷性関節炎、化膿性関節炎、通風性関節炎、結核性関節炎、神経障害性関節炎、および血友病性関節炎が含まれる。
【0020】
好ましくは、前述の疼痛としては、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格疼痛、術後疼痛、癌性疼痛、急性疼痛、および慢性疼痛が含まれる。
【0021】
好ましくは、前述の炎症性疼痛としては、強直性脊椎炎疼痛、変形性関節症疼痛、リウマチ性関節炎疼痛、関節リウマチ疼痛、外傷性関節炎疼痛、化膿性関節炎疼痛、通風性関節炎疼痛、結核性関節炎疼痛、神経障害性関節炎疼痛、および血友病性関節炎疼痛が含まれる。
【0022】
前述の薬剤は、腸溶剤形または非経口剤形であり得る。腸溶剤形としては、限定されるものではないが、経口剤形および浣腸の、腸溶コーティング錠剤、多層錠、糖衣錠、舌下錠、チュアブル錠、トローチ、カプセル剤、散剤、シロップ、溶液、エマルション、懸濁液、粘着剤、マグマ剤、液体抽出物、抽出液、酒精剤、エリキシル剤、およびチンキなどが含まれる。非経口剤形としては、限定されるものではないが、注射用剤形、軟膏、ローション、リニメント、およびエアロゾルが含まれる。
【0023】
好ましくは、有効量は、0.0008μg/kg~815μg/kgの範囲である。
【0024】
好ましくは、本願のペプチドは、月1回~1日1回の頻度で投与される。より好ましくは、本願のペプチドは、月2回~週2回の頻度で投与される。より好ましくは、本願のペプチドは、週1回の頻度で投与される。
【0025】
より好ましくは、本願のペプチドは、前述の有効量で週1回投与される。
【0026】
本発明によれば、有効量は、本明細書の実施形態において、米国食品医薬品局により発行されている指針文書“Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers”に従って、0.01μg/kg~10mg/kgの範囲の配列番号1のペプチド濃度に基づいて計算される。体重(b.w.)60kgの成人では、用量は基準:12.3×1日当たり体重kg当たりヒト推奨用量=1×マウス用量によって換算できる。
【0027】
より好ましくは、有効量は、0.008μg/kg~410μg/kgの範囲である。
【0028】
より好ましくは、有効量は、0.008μg/kg~0.25μg/kgの範囲である。
【0029】
より好ましくは、有効量は、0.025μg/kg~0.25μg/kgの範囲である。
【0030】
より好ましくは、有効量は、80μg/kg~410μg/kgの範囲である。
【0031】
より好ましくは、有効量は、80μg/kg~250μg/kgの範囲である。
【0032】
好ましくは、腸溶剤形は、経口剤形である。
【0033】
好ましくは、非経口剤形は、注射用剤形である。
【0034】
本発明によれば、「治療」とは、治療の効果を達成するための本発明のペプチドを患者に投与することを指し、その治療の効果は、疾患または関連の症状の治癒の治癒、緩和、改善または軽減を指す。本発明によれば、炎症性疾患の治療は、炎症関連症状の改善を指し、いくつかの実施形態では、これは炎症指標の軽減によって評価される。本発明によれば、疼痛の治療は、疼痛関連症状の改善を指し、いくつかの実施形態では、これは疼痛知覚の閾値の上昇により、またはいくつかの実施形態では、足逃避閾値(PWT)の上昇より評価される。
【0035】
本発明によれば、用語「有効量」は、所望の生体反応のための用量、すなわち、所望の治療効果のための用量を指す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウス(試験群)におけるTNF-αの血清濃度を対照群と比較して示す。
図2】3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウス(試験群)におけるIL-6の血清濃度を対照群と比較して示す。
図3】3mg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウス(試験群)の同側後足のPWTの経時的変化をモルヒネ群(10mg/kg)と比較して示す。
図4】3mg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウス(試験群)の反対側の足のPWTの経時的変化をモルヒネ群(10mg/kg)と比較して示す。
図5】1mg/kgおよび3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウスの同側後足のPWTを対照群と比較して示す。
図6】1mg/mLおよび3mg/mLの配列番号1のペプチドを4週目~12週目まで毎週投与した後のマウスの反対側後足のPWTを対照群と比較して示す。
図7】それぞれ0.3μg/kg、1μg/kg、3μg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウスの同側後足のPWTを対照群と比較して示す。
図8】それぞれ0.3μg/kg、1μg/kg、3μg/kgの配列番号1のペプチドを投与した後のマウスの反対側の足のPWTを対照群と比較して示す。
図9】酢酸誘発ライジング試験における配列番号1のペプチドの抗侵害受容作用およびテールフリック試験における配列番号1のペプチドの最大効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の所定の発明目的を達成するために採用した技術的手段を添付図面により、本発明の準備例および実施例に従ってさらに説明する。
【0038】
準備例1
本発明において使用されるGlp Glu Thr Ala Val Ser Ser His Glu Gln Aspのペプチドを合成するために標準的なFmoc法およびマイクロ波ペプチド合成装置を適用した。ここで、Glpはピログルタミン酸(ピロリドンカルボン酸)(Cas Number 98-79-3)である。一般に、D残基を予め添加したWang樹脂(装填量0.6mmol/g)を反応容器に秤量し、合成前に新鮮なDMF(10~15mL)を加え、膨潤準備をした。膨潤時間はマイクロ波ペプチド合成装置で3分に設定した。
【0039】
N末端アミン基を遊離状態にするために、DMF中20%ピペリジン5mLを用いて最初とその次のFmoc基を除去し、標準的な脱保護法(第1段階:温度75℃、電圧155W、および温度保持時間15秒 第2段階:温度90℃、電圧30W、および温度保持時間50秒)によって「DEP」工程の溶液として利用した。
【0040】
次に、C末端(「ACT」工程として機能)、および所望のアミノ酸(Fmoc-AA(保護側鎖)-OHとして機能)を活性化するためにDMF中0.5MのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を5倍過剰量(DMF中0.2Mの濃度)で加え、カップリング反応(工程AA)のためにDMF中1.0Mのオキシマを用いた。標準的なカップリング反応を行った(第1段階:温度75℃、電圧170W、および温度保持時間15秒 第2段階:温度90℃、電圧30W、および温度保持時間230秒)。約4分間AAを行った後、Wang樹脂をDMF溶液で洗浄した。DEP-ACT-AAの工程を繰り返して、C末端からN末端へペプチドを構築した。
【0041】
最後に、このペプチドを、氷浴中、95%TFA/2.5%HO/2.5%TIPSで処理した後、それを2時間放置して室温とすることによって固相支持体から取り出す。濾過後に濾液を回収し、アイスエーテルを加えて沈澱させ、遠心分離して上清を除去した。その後、エーテルを加えてこの沈澱を洗浄した。前述の工程を3~6回繰り返した。最終的な沈澱を採取し、凍結乾燥させて白色の綿毛様生成物、すなわち、最終生成物を得た。この最終生成物の純度を高速液体クロマトグラフィーにより決定し、分子量および配列をLC-MS/Mにより分析した。
【0042】
準備例2
ICRマウス(8~12週齢、体重20~25g、BioLASCO Taiwanから)において次のように関節炎を誘導した。各マウスの右足関節に1mg/mLの完全フロイントアジュバント(CFA)を5μLの量で週1回継続的に注射した。最後の注射時を0週とする。4回の注射の後、ICR(Institute of Cancer Research)マウスの片側の前部足関節に長期炎症および足の腫脹が少なくとも12週間誘導され、両側の機械痛覚過敏もまた少なくとも12週間、継続的に誘導され、従って、臨床的に長期慢性疼痛を患う関節リウマチモデルとして機能した。
【0043】
準備例3
侵害受容性疼痛試験および酸誘発慢性広範囲疼痛試験を行うために、C57BL/6JNarl雄マウス(20~25g)を温度制御環境(24±0.5℃)下、12時間明暗周期(08:00~20:00に照明)で飼育し、標準的な実験室餌および水道水を自由に摂らせた。動物を試験的操作の前に20~30分馴化させた。動物飼育および取り扱い手順は疼痛研究で使用される動物に関する国際疼痛学会指針に準拠し、これらの手順は動物実験倫理委員会によって承認された。
【0044】
試験1
準備例2からのマウスに、滅菌水に溶解させた3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目に経口投与し、その後、12週目まで週1回ペプチドを継続的に投与し、6個体のマウスを含む試験群とした。他方、水を投与したマウスを対照群とし、これも6個体のマウスを含んでいた。試験群および対照群のマウスを投与後12週目に犠牲にした。心臓穿刺により血清採取を行う。マウスTNF-α Quantikine ELISAキット(R&D System、MTA00B)、マウスIL-6 Quantikine ELISAキット(R&D System、M600B)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、試験群および対照群におけるマウスのTNF-αおよびIL-6の血清濃度を決定および収集した。この結果から、配列番号1のペプチドの長期経口投与を受けた試験群のマウスのTNF-αの血清濃度は検出可能域外のレベルに低下していた、すなわち、検出されなかった(ND)ことが見て取れた(図1)。また、試験群のIL-6の血清濃度も、対照群に比べて低下していた(図2)。従って、本発明の配列番号1のペプチドは、全身炎症指標を実際に引き下げることができ、このことは、本発明の配列番号1のペプチドが炎症性疾患、特に、関節リウマチから生じる慢性全身炎症を実際に治療できることを証明する。
【0045】
試験2
準備例2からのマウスに、10mg/kgのオピオイド鎮痛薬としてのモルヒネを4週目に経口投与し、これらを陽性対照とした。他方、滅菌水に溶解させた3mg/kgの配列番号1のペプチドを経口投与したマウスを試験群とした。モルヒネ陽性対照群および試験群は両方とも6個体のマウスを含んだ。マウスの足逃避閾値(PWT)を、投与から0分、30分、60分、90分、120分後にvon Freyフィラメントにより決定した。
【0046】
試験の結果を図3および図4に示した。配列番号1の投与後、両群のマウスの同側後足および反対側の足のPWT値は、モルヒネ陽性対照群のように上昇傾向を示した。従って、これは、本願の配列番号1のペプチドが、モルヒネと同様の抗侵害受容作用を有したが、必要な量は少なかったことを証明する。また、試験群およびモルヒネ群において投与後90分の時点で最大抗侵害受容作用が示されたことも見て取れた。90分で、モルヒネ群では、マウスの同側後足のPWT値は0.085±0.015gから0.64±0.089gに上昇し(図3に示されるとおり)、マウスの反対側の足のPWT値は0.43±0.033gから1.96±0.488gに上昇し(図4に示されるとおり)、一方、試験群では、マウスの同側後足のPWT値は0.07gから0.9±0.156gに上昇し(図3に示されるとおり)、マウスの反対側の足のPWT値は0.5±0.047gから1.35±0.193gに上昇した(図4に示されるとおり)。さらに、抗侵害受容作用は投与後120分で低下し始めた。
【0047】
試験3
準備例2からのマウスに、滅菌水に溶解させた1mg/kgまたは3mg/kgの配列番号1のペプチドを4週目に経口投与し、その後、12週目まで週1回ペプチドを継続的に投与し、これらを灰色の矢印で示した。準備例2のマウスに関するCFA注射の4回の時機を図5および図6に黒い矢印で示した。2つの投与群はともに6個体のマウスを含んだ。水を経口投与したマウスを対照群として用いた。対照群もまた6個体のマウスを含んだ。PWT値は、投与後90分の時点でvon Freyフィラメントにより測定した。
【0048】
試験結果を図5および図6に示した。1mg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、同側後足のPWT値は0.09gから0.5~1gに上昇し(図5に示されるとおり)、反対側の足のPWT値は3週目の0.4gから0.6~1.2gに上昇した図6に示されるとおり)。3mg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、同側後足のPWT値は3週目の0.09gから0.63~1gに上昇し(図5に示されるとおり)、反対側の足のPWT値は0.4gから0.87~1.27gに上昇した(図6に示されるとおり)。よって、試験の結果は、1mg/kgおよび3mg/kgの配列番号1のペプチドの抗侵害受容作用が長期投与の後に同等であったことを示した。
【0049】
試験4
準備例2から24個体のマウスを供給した。マウスにそれぞれ0.3μg/kg、1μg/kg、または3μg/kgの配列番号1のペプチドを投与した。全ての投与群は6個体のマウスを含んだ。他の6個体のマウスに水を経口投与し、これを対照群とした。投与後90分の時点でPWT値をvon Freyフィラメントにより測定した。
【0050】
結果を図7および図8に示した。0.3μg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、マウスの同側後足のPWT値は0.065gから1gに上昇し、反対側の足のPWT値は0.32gから1gに上昇した。1μg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、マウスの同側後足のPWT値は0.065gから0.6gに上昇し、反対側の足のPWT値は0.32gから1.4gに上昇した。3μg/kgの配列番号1のペプチドの経口投与後、マウスの同側後足のPWT値は0.065gから0.16gに上昇し、反対側の足のPWT値は0.32gから1gに上昇した。これらの試験結果は、0.3μg/kg~3μg/kgの配列番号1のペプチドが経口投与後に抗侵害受容作用を有したことを示した。
【0051】
試験5
酸誘発腹部収縮アッセイをH.O.Collier,L.C.Dinneen,C.A.Johnson,C.Schneider,The abdominal constriction response and its suppression by analgesic drugs in the mouse. Br J Pharmacol Chemother 32,295-310(1968)に従って行った。一般に、準備例3からのマウスを小さな観察室に入れ、20分間馴化した。内臓痛の指標となる「ライジング」応答(腹部収縮)を誘導する1%酢酸300μL)を注射する10分前に、マウスに蒸留水(ビヒクル対照として)または種々の濃度(0.1μg/kg、0.3μg/kg、1μg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kg)の配列番号1のペプチドを経口投与した。ビヒクル対照群および配列番号1のペプチドを投与した投与群はそれぞれ5~12個体のマウスを含んだ。酸注射後30分以内の腹部収縮の数を数え、各群のマウスの平均収縮数を計算した。酸誘発ライジングの抗侵害受容作用を抗侵害受容作用%として示した。
(ビヒクル対照群のマウスの平均収縮数-投与群のマウスの平均収縮数)/(ビヒクル対照群のマウスの平均収縮数)×100%
【0052】
試験6
放射熱テールフリック試験をF.E.D’Amour,D.L.Smith,A method for determining loss of pain sensation.The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 72,74-79(1941)に従って改変した。準備例3の5~12個体のマウスを入れ、テールフリック試験の前に30分間、固定器に馴化した。較正および装置の維持のために熱流束赤外放射計(Ugo Basile、イタリア、カタログ番号37300)を用いた。マウスの尾の先端から2cmの部位に刺激を与え、マウスが熱源から尾を退けるまでにかかる時間をテールフリッキング潜時と定義した。組織損傷のリスクを制限するために、カットオフ時間を30.1秒に設定した。熱強度は、ベースライン潜時が大部分の動物で約5~8秒となるように調整した。潜時は、種々の用量(0.01μg/kg、0.03μg/kg、0.1μg/kg、0.3μg/kg、1μg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kg)の配列番号1のペプチドを経口投与した後、示された時間間隔(10~90分)で、10分毎に記録した。次に、10~90分間の平均潜時を計算した。L.S.Harris,A.K.Pierson,Some Narcotic Antagonists in the Benzomorphan Series.J Pharmacol Exp Ther 143,141-148(1964)に従い、テールフリック試験の抗侵害受容作用を式:
%MPE=(投薬後潜時-投薬後潜時)/(カットオフ時間-投薬前潜時)×100%
によって定義される「%MPE」(最大効果)で示した。
【0053】
試験5および試験6の結果を図9に示した。1μg/kgおよび10mg/kgの用量の配列番号1のペプチドは、酸誘発ライジング試験において最良の抗侵害受容作用を示し、一方、0.1μg/kg、0.3μg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgは、放射熱テールフリック試験において最良の抗侵害受容作用を示した。従って、本発明の配列番号1のペプチドは、高濃度および低濃度の両方で抗侵害受容作用を有する。
【0054】
結論として、本発明のペプチドは、炎症性疾患、特に、関節リウマチを治療する効果、および疼痛、特に、関節リウマチから生じる疼痛を治療する効果を有する。
【0055】
上記の実施形態は、いずれの態様においても本発明を限定することを意図しない本発明の好ましい実施形態にすぎない。好ましい実施形態を上記に開示するが、それらはいずれの態様においても本発明を限定することを意図しない。当業者は、本発明の技術的な解決の範囲から逸脱することなく、上記の開示を、等価な変形形態または等価な実施形態の改変としてその内容に軽微な改変を加えて利用できる。本発明の趣旨および原理の範囲内のいずれの改変、なされる等価の置換、改良なども、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】