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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】義足挿入部
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/66 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
A61F2/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541099
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020051783
(87)【国際公開番号】W WO2020152341
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019101835.8
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プッシュ、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】メニケ、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】クレンツ、ハンネス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097BB02
4C097CC15
4C097DD04
4C097DD11
4C097TA08
(57)【要約】
本発明は、義足挿入部(10)を近位部品(2)に固定するための近位固定装置(20)と、該固定装置(20)に対して遠位に配置され、該固定装置(20)と連結された保持具(30)と、該保持具(30)に配置された弾性踵要素(50)と、前足部領域に延在し、該保持具(30)と連結されているメインスプリング(40)とを備えた義足挿入部(10)に関し、その際、メインスプリング(40)は踵要素(50)において近位踵部品(51)と遠位踵部品(52)との間に保持されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義足挿入部(10)を近位部品(2)に固定するための近位固定装置(20)と、前記固定装置(20)に対して遠位に配置され、前記固定装置(20)と連結された保持具(30)と、前記保持具(30)に配置された弾性踵要素(50)と、前足部領域に延在し、前記保持具(30)と連結されているメインスプリング(40)とを備えたものであって、前記メインスプリング(40)が前記踵要素(50)において近位踵部品(51)と遠位踵部品(52)との間に保持されていることを特徴とする、義足挿入部(10)。
【請求項2】
前記遠位踵部品(52)が剛性を持って形成されていて、前記近位踵部品(51)が前記保持具(30)及び前記メインスプリング(40)に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の義足挿入部。
【請求項3】
前記メインスプリング(40)が、引張り力が伝達されない状態で前記近位踵部品(51)と連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の義足挿入部。
【請求項4】
前記遠位踵部品(52)が前記近位踵部品(51)より硬いことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項5】
前記メインスプリング(40)が前記近位踵部品(51)と前記遠位踵部品(52)との間に埋設されていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項6】
前記メインスプリング(40)が板ばねとして形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項7】
前記保持具(30)が前記前足部領域の方向に前記固定要素(20)を越えて突出する突出部(34)を有し、これが前記メインスプリング(40)上で支持されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項8】
前記保持具(30)が、前記メインスプリング(40)の長手方向延在範囲において互いに間隔を置いた2つの領域(71、72)において前記メインスプリング(40)上で支持されることを特徴とする、請求項7に記載の義足挿入部。
【請求項9】
前記保持具(30)が中間スプリング(60)又は中間プレートを介して前記メインスプリング(40)上で支持されることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の義足挿入部。
【請求項10】
前記踵要素(50)に、前記メインスプリング(40)に保持されている案内要素(80)が固定されていることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項11】
前記案内要素(80)が前記メインスプリング(40)の正面端部に固定されていることを特徴とする、請求項10に記載の義足挿入部。
【請求項12】
前記案内要素(80)が前記踵要素(50)の内外方向への移動を制限又は阻止し、前記踵要素(50)の圧縮又は膨張を可能にすることを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の義足挿入部。
【請求項13】
前記踵要素(50)が少なくとも1つの引張り要素(90)を介して前記保持具(30)と連結されていることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項14】
前記引張り要素(90)が前記踵要素(50)を圧縮された位置に維持することを特徴とする、請求項13に記載の義足挿入部。
【請求項15】
前記引張り要素(90)が前記遠位踵部品(52)の遠位に導かれていることを特徴とする、請求項13又は請求項14に記載の義足挿入部。
【請求項16】
前記引張り要素(90)が前足部への荷重時に前記遠位踵要素(52)を前記メインスプリング(40)に向かって引っ張ることを特徴とする、請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項17】
前記遠位踵部品(52)又は前記案内要素(80)に、ソール要素(100)が配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項18】
前記保持具(30)が継手(110)を介して前記メインスプリング(40)、中間スプリング(60)又は中間プレートと連結されていることを特徴とする、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項19】
前記継手(110)が中足部領域に配置されていることを特徴とする、請求項186に記載の義足挿入部。
【請求項20】
前記メインスプリング(40)の前記正面端部にトウ要素(120)が固定されていることを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項21】
前記踵部品(51、52)が発泡材料、中空体、エラストマ要素、炭素繊維要素、ポンプ室としての空洞を備えたエラストマ要素及び/又はコイルスプリング要素から成ることを特徴とする、請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項22】
前記スプリング(40、60、120)が直線状板ばねとして形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項23】
前記保持具(30)と前記メインスプリング(40)との間にダンパ(200)又はアクチュエータが配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項24】
前記ダンパ(200)がロック可能であることを特徴とする、請求項23に記載の義足挿入部。
【請求項25】
前記ダンパ(200)がシーケンスバルブを含むことを特徴とする、請求項23又は請求項24に記載の義足挿入部。
【請求項26】
前記メインスプリング(40)に対する前記固定装置(20)の近位‐遠位距離を調整する目的で、前記保持具(30)が調整可能に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【請求項27】
前記固定装置(20)が移動可能、関節状又は回転可能に前記保持具(30)に保持されていることを特徴とする、請求項1から請求項26のいずれか一項に記載の義足挿入部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義足挿入部を近位部品に固定するための近位固定装置と、該固定装置に対して遠位に配置され、該固定装置と連結された保持具と、該保持具に配置された弾性踵要素と、前足部領域に延在し、該保持具と連結されているメインスプリングとを備えた義足挿入部に関する。
【背景技術】
【0002】
義足挿入部は、例えば下腿切断者における補綴用具の一部である。義足挿入部はできる限り自然な外観を達成し、更なる機能性を提供するために、カバー、つまりプラスチック製であり得る義肢装飾物を備えておくことができる。義足挿入部は足継手に、又は継手無しで下腿パイプ若しくは下腿シャフトに固定しておくことができる。固定装置は通常、所謂ピラミッドアダプタとして形成されていて、これを介して近位部品、つまり下腿パイプ、義肢シャフト又は足継手に対する義足挿入部の多数の調整と位置合わせが設定され、固定され得る。固定装置は保持具に固定されていて、一方で保持具には前足部方向に延在するスプリング、例えば前足部スプリング又はルーフスプリングを配置しておくことができる。踵踏込み時の衝撃を和らげるために、必要に応じて中間物を挿入して、保持具に固定されている弾性踵要素が備わっている。義肢挿入部に関する例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、又は特許文献4に記載されている。
【0003】
従来技術による義足挿入部の問題は、場合によっては必要とされる組立てスペース、不十分な沈込み挙動、不均等な転がり挙動、及び非平坦性の補償の難しさである。更に、部分的に複雑な設計が必要であり、これによって製造費用が上昇し、最適な材料活用が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2420212号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1976463号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0038525号明細書
【特許文献4】欧州特許第2688522号明細書
【発明の概要】
【0005】
したがって本発明の課題は、小さい組立てスペースにおいて簡単な構造で最適な材料活用を可能にする義足挿入部を提供することである。
【0006】
本発明により、上記の課題は主クレームの特徴を備えた義足挿入部によって解決される。本発明の有利な実施態様と発展形態は従属クレーム、明細書、及び図面において開示されている。
【0007】
義足挿入部を近位部品に固定するための近位固定装置と、該固定装置に対して遠位に配置され、該固定装置と連結された保持具と、該保持具に配置、特に固定された弾性踵要素と、前足部領域に延在し、該保持具と連結されているメインスプリングとを備えた義足挿入部は、メインスプリングが踵要素において近位踵部品と遠位踵部品との間に保持されていることを予定する。保持具と固定装置は一体に合わせて形成しておく、あるいは独立した部品として相互に固定、例えば螺着、貼着、係着又は溶着しておくことができる。踵要素は保持具に組み込まれていて、特に螺合、貼合、嵌合、係着、溶着、又は他の方法で、力及び/又はモーメントが伝達される状態で、保持具に配置又は固定されている。したがって踵要素は2つの部分に分かれていて、その際、遠位踵部品はメインスプリングに対して底側つまり遠位に有効であり、一方で、上部の近位踵部品は保持具の方向に有効である。それによって、踵への荷重時に両踵部品の連続接続を実現することが可能であり、それにより両方の踵部品が有効になる。それによって、踵踏込み時の衝撃荷重を快適に緩和することが可能である。歩行又は立位の間の、踵要素に対して全体的に圧縮荷重がかかっている間は、両踵部品が共同で作用する。前足部への荷重時にはメインスプリングが遠位踵部品と共同で作用し、その結果、2つの用途が生み出され、それによって材料活用が改善される。義足挿入部は、メカトロニクス継手、MLアダプタ、差高調整用アダプタ、油圧継手ユニット等といった、その他の上部構造のための基礎として使用され得る。
【0008】
遠位踵部品は本発明の1つの変形形態において剛性を持って形成しておくことができ、その際、近位踵部品は保持具及びメインスプリングに固定されている。近位踵部品は圧縮力が伝達される状態かつ引張り力が伝達される状態で保持具及びメインスプリングに固定され、例えば貼付けされている、溶着されている、吹付けされている、鋳付けされている、相加的に製造されているか、あるいは例えばネジ、ボルト、クリップ、バヨネットロック、蟻継ぎガイド、角ブラケット又は他の固定要素によって形状結合式に連結されていて、それによって、特に保持具及びメインスプリングにおける可逆的固定と交換可能性が達成され得る。その際、遠位踵部品は前足部への荷重時にも踵への荷重時にも作用する。
【0009】
有利に、踵部品は同様に組み立てられていることによって、交換され得る。したがって、両踵部品を取り換えることにより、前足部への荷重時に同じ踵部品を用いて異なるばね特性を可能にすることがあり得る。前足部への荷重時、及び踵への荷重時における異なる撓み挙動が設定できるように、遠位踵部品は近位踵部品より硬く形成しておくことができる。踵への荷重時には連続的に配置された両踵部品が作用し、前足部への荷重時には単に遠位踵部品のみ、あるいは全く圧倒的に遠位踵部品が作用する。
【0010】
メインスプリングは本発明の1つの実施態様において近位踵部品と遠位踵部品との間に埋設されていて、有利にメインスプリングは近位踵部品を遠位踵部品から分離する。メインスプリングは両踵部品の間にあり、これらと一体型に形成、又は取外し不能に結合しておくことができる。同様に、メインスプリングにおける固定、つまり踵部品とメインスプリングとの間における成形、相加的製造方法における一体形状又は他の永続的結合が、発展形態において実現されている。踵部品が圧縮方向においてのみ相互に連結されていれば、前足部への荷重時には専ら遠位踵部品がメインスプリングと共同作用する可能性が存在する。両踵部品が、引張り力が伝達される状態かつ圧縮力も伝達される状態で、例えば形状結合式係止によって、貼着又は同種のものによって、メインスプリングと連結されていれば、伸長特性が異なることにより引張り荷重及び圧縮荷重時に、前足部への荷重時及び踵への荷重時のスプリングダンパ特性に関して異なる調整が達成され得る。近位踵要素は好ましくは保持具に不動に固定されていて、異なる使用者又は異なる使用条件への適合が行われ得るように、有利に取外し可能に固定されている。同様に遠位踵部品も主として交換可能にメインスプリングに配置されているか、あるいはメインスプリングに対して予張力が加えられていて、その結果、遠位踵部品は常にメインスプリングの底側表面に保持されている。
【0011】
好ましくは遠位踵部品は近位踵部品より硬く、したがって、メインスプリングの遠位踵部品との組合せから成る比較的硬いスプリングを用いて、踵への負荷時の穏やかな踏込みが達成される。それによって、立脚相終期の範囲において、同時に転がり運動を高度に制御可能な高度なエネルギーフィードバックが達成され得る。メインスプリングは、前足部への負荷時に遠位踵部品と共同作用し、踵への負荷時に最優先的に弾性踵要素の両踵部品が作用することによって、立位時及び踵の着地時に柔らかい踵が達成される。それによって、特に関節状の義足の場合に迅速な底屈が達成され、その結果、足の完全な着地後の、より高い膝安定性が達成される。
【0012】
メインスプリングは本発明の1つの実施態様において、踵部品には必ず圧力による荷重のみが加えられるように、引張り力が伝達されない状態で近位踵部品と連結されている。それによって、特に発泡要素として又はエラストマで形成しておくことができる踵部品の耐久性が増大する。
【0013】
メインスプリングは本発明の1つの実施態様において板ばねとして、特に直線状板ばねとして形成されていて、これは両踵部品の間に配置されていて、有利に両踵部品を互いから分離する。直線状板ばねの実施態様には、特にメインスプリングが繊維強化プラスチックで製造されている場合に、製造が極めて容易であるという利点がある。スプリングはガラス繊維、炭素繊維、アラミド、ケブラ、ダイニーマ等、又はこれらの組合せを材料として、母材に埋め込んで製造され得る。メインスプリングは比較的硬く設定できることによって、耐久性が向上し、これは、メインスプリングの硬いスプリング設定が前足部への荷重時に遠位踵部品を介して補償されることによって、前足部への荷重時においても十分な屈曲性が達成されることによる。
【0014】
本発明の1つの発展形態は、保持具が前足部領域の方向に固定要素を越えて突出する突出部を有し、これがメインスプリング上で支持されることを予定する。この支持はメインスプリング上で直接行われる必要はなく、複数の中間物、1つ以上の継手、1つ以上のエラストマ要素又は同様のものを、保持具とメインスプリングとの間に装備しておくこともできる。該突出部を介して力の伝達場所を変更することが可能である。歩行の間、ロールオーバ時又は立位時に、力ベクトルが固定要素を介して垂線の前に移動すれば、力が保持具からメインスプリングに伝達される。メインスプリングは前足部領域においては底上でも支持され、それにより、突出部を介した力の伝達によって中足部領域においてメインスプリングの曲げ荷重が伝達され得る。
【0015】
1つの発展形態において、保持具は、メインスプリングの長手方向延在範囲において互いに間隔を置いた2つの点においてメインスプリング上で、直接、あるいは、好ましくは互いに間隔を置いた2つの点においてメインスプリング上で支持される中間スプリング又は中間プレート又は留め具を介しても支持される。メインスプリング上での中間スプリング又は中間プレートの支持は、例えば2つの貼付け点又は同様のものを介して達成され得る。力の伝達が踵部品と、底における前部適用点つまり前部支持点との間にある2つの点を介して、例えばメインスプリングにある2つの点上の中間スプリング又は中間プレートの移動を介して伝達される場合、前足部への荷重があれば4点曲げが行われ、それによってメインスプリングにおける最大曲げモーメントが基本的に低減される。中間スプリングは1つの実施形態において直線状板ばねとして形成されていて、これはメインスプリング上の2つの保持要素に保持されていて、それによって、例えば保持具を介して中間スプリングの中央に力が伝達されれば、該力はメインスプリングの2つの位置に伝達される。中間スプリングとは異なり、中間プレートは基本的に曲げ剛性すなわち曲げ硬さを持って形成されていて、以下に中間スプリングに関して述べるが、明文をもって弾性特性への言及がなされなければ、これは剛性の、又は基本的に剛性のプレートと解釈されるものとする。
【0016】
踵要素には、メインスプリングに保持されている案内要素を固定しておくことができる。案内要素はメインスプリングに、例えばメインスプリングの正面端部領域において、関節状に保持しておくことができる。代替として、案内要素は例えば繊維複合材料から成る、直線状板ばねとして実施されている。板ばね形態の案内要素は例えばソール側で、また爪先の領域においてメインスプリングと連結、例えば螺着しておくことができ、後端においては踵要素と連結されている。遠位踵部品は案内要素に直接固定しておくことができ、代替として、遠位踵部品を案内要素と連結させる収容部を案内要素に配置しておくことができる。板ばねとしての案内要素の実施態様においても、案内要素はばね作用を引き起こさないか、あるいは僅かにしか引き起こさないよう意図されている。この目的で案内要素は非常に薄く形成されていて、その際、最初に組み立てられた状態においては、案内要素のばね作用によって圧縮作用が踵要素に対して引き起こされないか、あるいは僅かにしか引き起こされないことが予定されている。案内要素の固定と実施態様によって、義足挿入部使用中の踵要素の内側‐外側への移動が阻止又は制限されることにより、保持具及びメインスプリングに対する踵要素の方向付け及び位置決めが安定する。更に、案内要素によってメインスプリング及び固定要素に対する踵要素の位置合わせが保証され、これは足装飾物の使用時にも有利である。案内要素は踵要素の圧縮と膨張を可能にし、復元力は案内要素を通して近位‐遠位方向においては僅かにしか、あるいは全く引き起こされない。
【0017】
本発明の1つの実施形態は、踵要素が少なくとも1つの引張り要素を介して保持具と連結されていることを予定する。引張り要素は引張り剛性及び可撓性を持って形成しておくことができ、同様に弾性可撓性要素、例えばベルト又はバンドとして、あるいは屈曲性要素又はエラストマ要素として形成しておくことができる。踵側の引張り要素は、特に、引張り要素が踵部品に沿って外面の内側と外側に導かれている場合に、踵部品を側方に逸脱しないよう安定させ得る。引張り要素を介して、踵部品すなわち踵要素全体に予圧縮を生じさせることができ、それによって、前後方向における平衡保持に必要な予張力が達成される。引張り要素は調整可能、特に短縮可能又は延長可能に、保持具及び/又は踵要素に、あるいはそこに配置された、又は組み込まれた収容部分に、保持しておくことができる。代替として、挿入物つまりスペーサによって予張力が変更され得る。引張り要素は閉じた輪として、ロッドとして、ロープ又はバンド結合あるいは留め具として形成しておくことができる。予張力の変更は輪、バンド、ロープ、ロッド、又は留め具の交換、及び、逸脱する周長、逸脱する長さ又は逸脱する範囲を有する他の引張り要素の挿入によって達成され得る。保持具には、引張り要素を挿入する収容部又は溝を形成しておくことができる。引張り要素が保持具から意図せず取り外されないように、例えば固定要素の一部であり得る機械的安全装置を溝の上方に配置しておくことができる。予張力における変更は引張り要素と踵要素及び/又は保持具との間に配置されているクッション又は挿入要素によっても達成され得る。特に、ベルトとしての引張り要素の実施態様においては、剛性の保持具との直接的接触が回避されることから、1つ以上の挿入物つまりスペーサ要素によって摩耗減少が達成され得る。引張り要素は無荷重の開始位置において圧縮された位置にある踵要素を、圧縮された位置において無荷重の開始位置に保つ。踵に高い負荷がかけられると、引張り要素は引張り応力無しで保持具及び/又は踵要素に固定された状態であり得る。前足部に負荷がかけられると、引張り要素はメインスプリング及び遠位踵要素に対する支えとなる。前足部への荷重つまり爪先への負荷時に、遠位踵要素がメインスプリングに向かって引っ張られ、力が加えられることによって、該要素が該スプリングに押し付けられる。引張り剛性を備えた材料の対象となるのは、伸長不能なあるいは極僅かにしか伸長可能でない、つまり高い伸長剛性を有する材料である。弾性率は1平方ミリメートル当たり5キロニュートンより大きい。引張り要素は若干の弾性を有することもでき、バンド又は他の成形されたエラストマ要素として形成しておくことができる。
【0018】
1つ以上の引張り要素の予張力は、特に衝撃荷重を伴う歩行と、寧ろ静荷重を伴う立位との間の区別を知覚可能にする目的で、調整可能である。歩行中、特に踵接地中、しかし転がり運動中においても、部品の相応の移動を伴う減衰が相前後して行われるよう意図されている。立位時において、使用者に安定感が伝わるよう意図されていて、これは弾性の要素又は部品に対する保持具の予張力によって達成される。予張力は好ましくは、使用者の体重の5%~60%、特に予張力は使用者の体重の5%~40%、特に好ましくは使用者の体重の10%~25%である。この最後の場合、踵要素つまり両踵部品、及び必要に応じてメインスプリング又は他の弾性の要素若しくは部品のばね作用に対する、1つ以上の引張り要素による保持具の予張力は、使用者の体重が100kgの場合に、10kg~25kgであり、これはおよそ98.1N~245.25Nの力に相当する。
【0019】
引張り要素は、本発明の1つの実施態様において、前足部への荷重時にメインスプリングを介した圧縮に対して支えを曲げる目的で、遠位踵部品の遠位に導かれている。引張り要素は、遠位において例えば案内要素に固定、又は遠位において案内要素の周囲に配置しておくことができる。引張り要素の1つの開放的な実施態様において、あるいは、1つは踵要素の内側、もう1つは踵要素の外側で導かれている、2つの引張り要素を備えた実施態様において、該1つ以上の引張り要素は個々に遠位踵部品の下面又は遠位端に固定しておくことができる。
【0020】
遠位踵部品又は案内要素には、踵の外形を形成し得るソール要素を配置しておくことができる。ソール要素は踵要素の遠位境界を成し、案内要素に対して遠位に、またそこに密着して配置しておくことができる。ソール要素は案内要素を例えば細隙又は溝内に収容し得る。案内要素はソール要素内に固定、例えば螺嵌、注入、又は貼設等しておくか、あるいは単に差し込んでおくことができる。ソール要素は各使用者に適合した、又は適合可能な遠位外形を有し得る。大腿切断患者に対しては、下腿切断患者に対する外形とは別の外形が必要であり得る。引張り要素は摩耗を減少させるためにソール要素において注入又は一体化しておくことができる。ソール要素は義足挿入部の全長に渡って延在する必要はなく、ソール要素は、保持具、メインスプリング、中間スプリング又は中間プレート及び踵要素といった、その他の部品の機械的動作方式を損なわないように、有利に踵領域にのみ位置する。ソール要素は貼設しておくか、あるいは形状結合要素を備えておき、案内要素にクリップ留めしておくか、あるいは他の方法で固定しておくことができる。ソール要素には、遠位踵部品を収容し、機械的に固定するために、形状結合要素を形成しておくことができる。遠位において、ソール要素には、ソール要素の外形を異なる使用者に適合させることができるように、外形要素をソール要素に取り付ける目的で、収容部又は固定要素を配置しておくことができる。ソール要素の外面に、足装飾物における突出部又はアンダーカットとの形状結合式嵌合を可能にする、突出部又は固定装置を配置しておくことができる。
【0021】
1つの実施態様において保持具が、ヒンジ又はスプリング、例えば板ばね、として形成しておくことができる継手を介して、メインスプリング又は中間スプリング又は中間プレートと連結されている。継手は有利に中央、つまりメインスプリングの長手方向延在範囲の中央領域に配置されている。継手つまりばね板は、有利に寸法安定性を持って形成されている保持具に固定されている。有利に、継手は捻り剛性を持って、保持具及び中間スプリング又は中間プレート又はメインスプリングに固定されている。継手、厳密には保持具及び中間スプリング又は中間プレート又は該スプリングにおける継手の固定を介して、メインスプリングに対する保持具の移動が防止される。更に、ばね板つまり継手によって、前足部への荷重時に発生するような、前額面における極僅かな捻れつまり回転が可能になる。ばね板としての継手の1つの実施態様においては、前足部への荷重時における力の伝達が大きい支持面に分配され、それによって表面圧力が回避される。それによって、中間スプリング又はメインスプリングが高い圧縮荷重から保護され、その結果、各スプリングの耐久性が向上する。更に、ばね板又はヒンジ継手を介した保持具の取付けによって、保持具したがって固定要素の、メインスプリングとの永続的かつ移動自在な結合が保証される。中足部領域における継手の配置、つまりばね板を介した力の伝達の配置は、メインスプリングのばね特性、及び中間スプリングがある場合はそのばね特性の最適な利用に役立つ。
【0022】
メインスプリングの正面端部に、トウスプリング又はトウ要素を配置しておくことができ、それによって、トウスプリング又はトウ要素の、メインスプリングの正面端部における簡単な配置、特に螺合によって、異なる足のサイズへの適合が可能になる。更に、トウスプリング又はトウ要素の、メインスプリングにおける交換可能な固定によって、右の義足挿入部又は左の義足挿入部への適合が行われ得る。それによって、義足挿入部の右側又は左側の取付けに用いられ得る共通部品の数が増加する。したがって、メインスプリングとしての同様の中央板ばね及び相応の踵要素が、左右両方の義足挿入部に対して使用され、異なる足のサイズあるいは右側又は左側での使用への適合が、トウ要素又はトウスプリングによって行われる。取外し可能な実施態様の代わりに、例えば貼合による取外し不能な結合も行われ得る。取外し不能とは、同じ部品との新たな結合が可能ではないという意味である。更に、トウスプリング又はトウ要素を用いて、ソール側の外形に影響を及ぼすこと、及び前足部への最大荷重に従ってエネルギー管理を調整することが可能である。トウスプリング又はトウ要素の特性を介して、各義足挿入部使用者への更なる適合が行われ得る。トウ要素はメインスプリングに対して折畳み可能又は傾転可能に形成、又は義足挿入部に配置しておくことができる。
【0023】
踵部品は有利に少なくとも1つの発泡材料、中空体、エラストマ要素、炭素繊維要素、ポンプ室としての空洞を備えたエラストマ要素及び/又はコイルスプリング要素から成る。踵要素の中、又は互いに移動する義足挿入部の部品間に、例えば近位義肢部品において負圧を発生させる目的で、少なくとも1つのポンプ装置又はポンプ要素を配置しておくことができる。ポンプは踵部品内に一体化しておくか、あるいは独立した部品又は独立したアセンブリとして保持具とメインスプリング、メインスプリングと案内要素、及び/又は保持具と案内要素との間に配置しておくことができ、相応の相対移動によって作動され得る。ポンプと平行に、出発状態への復帰を可能にする目的で、発生させるべき真空より強く設定されている復帰ばねを配置しておくことができる。
【0024】
スプリング、特にメインスプリング及び中間スプリングは有利に直線状板ばねとして形成されていて、それによって、手頃な値段での製造を達成することができ、材料特性が最適に利用される。
【0025】
本発明の1つの発展形態において、保持具とメインスプリングとの間にダンパ又はアクチュエータが配置されていることが予定される。ダンパを介して、メインスプリングに対する保持具の相対運動に追加的に影響を及ぼすこと、及び異なる歩行状態、歩行速度、使用領域及び/又は患者への適合と調整の更なる可能性を提供することが可能である。ダンパ、特に油圧ダンパ又は空気圧ダンパとしての実施態様に対する代替として、保持具とメインスプリングとの間に、メインスプリングに対する保持具の相対位置が調整可能なアクチュエータを配置しておくことができる。それによって、例えば、一回限りの調整、又は異なる歩行速度、荷重若しくは歩行状況における歩行中の連続的調整のために、踵を異なる高さに上昇させる適合が行われ得る。アクチュエータは、特にモータとして形成されていて、発電機モードにおいてダンパとして使用され得る。ダンパは更に、減衰を変更する目的で、ダンパ内部のバルブを調整、例えば閉鎖又は開放するために、調整装置と連結しておくことができる。減衰は好ましくは電動で変更され、その目的で調整装置にはモータが備わっていて、調整装置は制御装置及びセンサユニットを介して歩行中にデータを提供し、制御装置内のプロセッサを用いて処理する。その後センサデータに基づいて、相応の調整を実施するために、更に相応のデータ処理プログラム、メモリ及び電源を有し得る制御装置から、制御信号がモータに送信される。
【0026】
ダンパは、例えば荷重に応じて、又はダンパの所定の沈込み又は引戻しに応じて、新たな位置に付けることになるまで一度見つけた位置を固定する目的で、ロック可能に形成しておくことができる。これは、バルブの開閉によって、又は機械的ロック装置によって起こり得る。
【0027】
本発明の1つの発展形態において、ダンパにシーケンスバルブが組み込まれていること、又はダンパにシーケンスバルブが含まれることが予定され、これは所定の力又は予め設定されたモーメントを超過して初めて開き、ダンパの動きを可能にする。起動力又は起動モーメントは制御装置によって電動又は手動で調節可能であり得る。制御装置はデータ処理装置、データ記憶装置、及び、必要に応じたエネルギー貯蔵装置の他に、シーケンスバルブ調整のためのアクチュエータを有する。制御装置のプロセッサで処理されるセンサデータに基づいて、起動モーメントが調整され得る。
【0028】
本発明の1つの発展形態において、メインスプリングに対する固定装置の近位‐遠位距離を調整する目的で、保持具が調整可能に形成されていることが予定される。保持具を介して、調整可能な近位‐遠位距離を変更することが可能であり、その際、保持具は好ましくは多部品で形成されていて、保持具を各位置に固定可能な停止装置を有する。例えば、保持具は互いに傾転可能な枝部を用いて2つの部品で組み立てておくことができ、その際、上部の近位枝部に固定装置が配置又は固定されている。調整可能な移動によって、異なる差高への適合を行うこと、又は固定装置の、したがって近位部品の方向付けの変更によって義肢全体の構造を変更することが可能である。
【0029】
本発明の1つの発展形態において、固定装置が移動可能、関節状又は回転可能に保持具に保持されていることが予定されている。固定装置の保持具における移動可能な、関節状の、又は回転可能な保持によって、異なる差高又は位置合わせへの適合を行うことが可能であり、好ましくは固定装置は各位置において保持具に対して、例えば締付けネジ、ピン、蟻継ぎ等を介して固定可能である。
【0030】
以下に本発明の実施例が添付の図面を基により詳細に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】義足挿入部の概略図である。
図2】フットシェル内の義足挿入部の3つの荷重段階の図である。
図3】無荷重の義足挿入部の側面図である。
図4】義足挿入部の断面図である。
図5】踵接地時の義足挿入部の図である。
図6】立脚相中期における義足挿入部の図である。
図7】踏返し時の義足挿入部の図である。
図8】立脚相終期における義足挿入部の図である。
図9】ダンパを備えた図4の変形形態の図である。
図10】調整可能な保持具を備えた図4の変形形態の図である。
図11】移動可能な固定装置を備えた変形形態の図である。
図12】義足挿入部の斜視図である。
図13図12による義足挿入部の分解立体図である。
図14】装飾物を備えた図12による義足挿入部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、例えばピラミッドアダプタとして形成しておくことができる、近位固定装置20を備えた義足挿入部10の概略図である。近位固定装置20は保持具30と一体に形成しておくことができ、代替として、固定装置20は保持具30に取外し可能に固定しておくことができる。保持具30は、近位固定装置20を介して、図示されていない近位部品から義足挿入部10に伝達される力及び/又はモーメントを受けて分配する目的で、寸法安定性を備えた材料、例えば軽金属、内部に繊維を埋め込んだプラスチック製の複合材料、プラスチック又は他の適切な材料から成る。保持具30は近位固定装置20から遠位方向つまり下方に、また前方方向つまり歩行方向において前方に延在する。斜め遠位前方に向いた部分を有する保持具30の前方の前端に、図示した実施例では、固定要素20を越えて前方方向に突出する突出部34が配置又は形成されている。同様に、図示した実施例においては、保持具30の前方端部から突出する板ばね111の形態の支持体111が、2本のネジを介して保持具30に固定されている。板ばね111は更なるネジを介して中間スプリング60と連結されていて、中間スプリング60と保持具30との間の継手110を形成し、それによって、保持具30の角を丸くした前端34を用いた、板ばね111上、したがって中間スプリング60上における転がり運動つまり回転運動が行われ得る。
【0033】
中間スプリング60は、2つの台つまり中間物を介してメインスプリング40に対して間隔を置いて、メインスプリング40の長手方向延在範囲において互いに間隔を置いた2つの領域71、72においてメインスプリング上で支持されている。例えば、中間スプリング60が弓形を成す場合は、中間スプリング60はメインスプリング40上の互いに間隔を置いた2つの領域71、72において、基本的に直接メインスプリング40上でも支持され得る。保持具30は他の方法で関節状又は傾転可能に中間スプリング60と結合しておくこともできる。
【0034】
図示した実施例においては、中間スプリング60は中間物と共に、ベルト又は留め具61、62を介してメインスプリング40に固定されている。中間スプリング60、中間物、及びメインスプリング40の周囲を囲むベルト又は留め具61、62を介した固定の代替として、メインスプリングにおける中間スプリング60の固定はネジ結合又は接着結合によって行われ得る。有利に、各患者又は変更された使用目的への適合が行われ得るように、中間スプリング60は必要に応じて中間物を介して、メインスプリング40に可逆的に固定されている。
【0035】
メインスプリング40は保持具30の後端つまり後方端部から義足挿入部10の前足部領域にまで延在し、前方端部に至るまで延在し得る。図示した実施例においては、メインスプリング40の前方端部に独立したアーチ状の外形を備えたトウスプリング120が配置されていて、これは螺着によって可逆的にメインスプリング40に固定されている。交換可能なトウスプリング120を介して、異なる靴のサイズつまり足のサイズへの適合、及び特に立脚相終期における、転がり挙動に関する各患者のニーズへの適合が行われ得る。トウスプリング120の硬い実施態様によって、義足挿入部10の有効足長を拡大することが可能であり、トウスプリング120が比較的柔らかく選択されれば、義足挿入部10の有効足長は短縮される。図1に示されているようなネジ結合の他に、トウスプリング120は差込み結合、クリップ結合、接着結合、又は他の係合要素を介した結合によってメインスプリング40に固定され得る。基本的にトウスプリング120の代わりに剛性又は基本的に剛性のトウ要素を使用し、メインスプリング40に固定しておくことができる。トウ要素120は例えばヒンジを介して、折畳み可能にメインスプリング40に配置しておくことができる。
【0036】
メインスプリング40の遠位において、メインスプリング40の前端に案内要素80が固定されている。この固定は例えばトウスプリング120の固定と共に可逆的に行われ得る。代替として、案内要素80は独立して直接メインスプリング40において、可逆的に、あるいは形状結合式又は例えば貼着若しくは溶着による材料結合式に、固定しておくことができる。更なる実施形態において、案内要素80はトウスプリング120を介してメインスプリング40に固定することが可能である。更なる実施形態において、案内要素80とメインスプリング40は互いに屈曲しにくく結合されていて、それにより、案内要素80はスプリングとしても利用され得る。案内要素80はメインスプリング40と比べて基本的により薄く、例えばメインスプリング40の半分以下の厚さしかない。案内要素80は、メインスプリング40と中間スプリング60が板ばねとして形成されているのと同様に、板ばねとして形成しておくことができる。図示した実施例に示されている3つの板ばねは全て直線状板ばねとして形成されていて、これは製造、組立て、保管及び耐久性に関して有利である。案内要素80は図示した実施形態においては、ばね作用を引き起こすことを最優先の目的とせず、寧ろ案内要素80は、案内要素80の後方端部つまり後端に配置された踵要素50の内側‐外側ガイドとして役立つ。案内要素80は内外方向への移動を阻止することができ、近位‐遠位方向に柔軟に、又は自在に揺動可能に形成されていること、つまり案内要素80の後端つまり後方端部を無抵抗又は単に僅かな抵抗で移動させることが可能である。案内要素80には、例えば前方端部のメインスプリング40への固定領域において、継手を形成しておくことができる。該継手はフィルムヒンジ、又は固定されている関節軸を備えたヒンジとして、形成しておくことができる。案内要素80の固定は、例えば中央で、又はあらゆる任意の場所でも行われ得る。案内要素の主な目的は踵要素50の位置決めを確定することである。
【0037】
案内要素80の後方端部に、底方向の角を丸くした形状を有するソール要素100が配置されていて、これによって、ソール要素100を介し案内要素80の後方部分を介した踏込み及び転がりが可能になる。ソール要素100は案内要素80に可逆的に配置しておくことができる。この目的で、案内要素80をソール要素100に固定する形状結合要素、例えば突出部、スプリングクリップ、ネジとネジ山、ボルト、スナップ結合又は同様のものが装備されている。代替又は補足として、案内要素80とソール要素100は、例えば接着結合により材料結合式に相互に連結しておくことができる。
【0038】
メインスプリング40と案内要素80との間の間隙に、遠位踵部品52が配置されている。メインスプリング40と保持具30との間に、近位踵部品51が配置されている。両踵部品51、52は踵領域における義足挿入部10の弾性支持を可能にする踵要素50の一部である。弾性踵要素50は図示した実施例においては両踵部品51、52から成り、その際、遠位踵部品52をソール要素100と共に組み合わせておくことができるか、あるいは遠位踵部品52が両部品から成るアセンブリを形成する。ソール要素100は踵要素50の一部であり得、近位方向に向かう2つの突出部を有し、これらは周囲を囲む1つの突出部つまりフレームとして形成しておくこともでき、その際、該フレームは、遠位踵部品52が該フレームの中又は両突出部の間に挿入され得るように形成されている。それによって、遠位踵部品52は案内要素80又はソール要素100上で位置合わせされ、前後方向、及び必要に応じて内外方向に移動しないよう保証される。遠位踵部品52は引張り要素90による予張力の下でメインスプリング40と案内要素80との間に挟み込まれている。引張り要素90は内側と外側で近位踵部品51へと導かれていて、それにより、引張り要素90によって内外方向への踵部品52の側方移動が防止される。図示した実施例においては、引張り要素90は、一つの輪に形成されているベルト、例えば布バンドの形態の、引張剛性と可撓性を備えた引張り要素90として形成されている。引張り要素90は、保持具30に配置されていて、図示した実施例においては凹部において保持具30の近位端を越えて導かれていて、引張り要素90の上方の円板又は固定要素を介してそこに固定されている。代替として、引張り要素90はネジ、ボルト、フック又は類似の固定要素を介して保持具30の内側と外側に固定しておくことができる。好ましくは、引張り要素90は保持具30に可逆的に固定されている。
【0039】
引張り要素90はメインスプリング40と案内要素80の横に内側及び外側で導いておくことができ、代替として、メインスプリング40に細隙が形成されていて、これを通して引張り要素90が案内要素80の方向に導かれていることが可能である。引張り要素90は案内要素80の下方でソール要素100を通して導いておくことができ、代替として、引張り要素90は案内要素80又はソール要素100に固定しておくことができ、それによって、引張り要素90の一方の端部が保持具30に、もう一方の端部が案内要素80又はソール要素100に固定されている。好ましくは、2つの引張り要素90が、義足挿入部10において、1つは内側に、もう1つは外側に配置されている。
【0040】
引張り要素90は無荷重の図1により示された状態において、踵要素50を圧縮された位置に維持し、予張力は引張り要素90の長さの変更によって調整可能である。更に、引張り要素90を介して、保持具30からの案内要素80又はソール要素100の最大距離が決定される。引張り力の引張り要素90への適用時、例えば前足部への荷重時に、引張り要素90は屈曲しない、又は基本的に屈曲しない。引張り要素90の伸長が起こる場合においても、その伸長が大きいことによって、遠位踵部品52に対するメインスプリング40と案内要素80との間の圧縮が無効になることは意図されていない。輪としての引張り要素90の実施態様の代わりに、該要素は中央ベルトとして、中央ロープとして、又は可撓性ロッドとしても形成しておくことができ、踵部品51、52に沿って、又は該部品を通ってガイドに保持しておくことができ、それによって、同様に部品の相互配置が行われ、内側及び/又は外側への移動が防止されるか、又は減少する。
【0041】
踵部品51、52は弾性材料、特に弾性発泡材料から成る。
【0042】
義足挿入部の機能方法は、図2に示した荷重状態に基づいて説明される。図2において、フットシェル5の中の義足挿入部10の3つの荷重状態が示されている。図2の上部右の図は、義足挿入部10の荷重が軽減された状態、下の図は踵踏込み時、所謂ヒールストライク時の義足挿入部10、上部左の図は前足部への荷重時における立脚相終了時の義足挿入部10を示す。フットシェル5はそれぞれ無変化である中央位置が示されていて、上部左と、下の図において、同様に、義足挿入部10は開始位置において示されている。図2の上部右の図は図1による図に相当するが、継手110を備えた支持体111としての板ばね111又は金属ストリップ又は類似のものはなく、またメインスプリング40上での中間スプリング60の固定の詳細図もない。中間スプリング60は、例えば転がり要素又はクッション要素を介して、中間スプリング60の後方端部及び前方端部においてメインスプリング40上で固定、例えば貼付しておくことができる。メインスプリング40の下面にはクッション要素を配置しておくことができ、これによって、通常繊維複合材料から成る板ばねの摩耗及び損耗につながり得る、案内要素80のメインスプリング40の下面への直接的密着が回避される。
【0043】
図2の下の図には、保持具30が中間スプリング60上の支持点を中心に時計回りに傾斜している、踵踏込みつまりヒールストライク時の荷重状態が示されている。上部の近位踵部品51も下部の遠位踵部品52も圧縮されていて、引張り要素90は緩んでいて、メインスプリング40と案内要素80との間の間隙が縮小されている。メインスプリング40の近位端がソール要素100の方向に、つまり底に向かって移動され、同様に、保持具30の後方端部がメインスプリング40の方向に移動されたことによって、保持具30がメインスプリング40にほぼ接触する。踵踏込み時の荷重は踵要素50とソール要素100を介して主として後方部分においてかけられ、それによって、メインスプリング40及び案内要素80と同様、中間スプリング60も基本的に荷重が軽減されている。同じことが、前端がフットシェル5内の凹部に挿入されていて、その中で形状結合式に固定されるトウスプリング120にも当てはまる。
【0044】
踏返し又は立位の間は、例えば図2の上部右の図に示されているように、均等な垂直荷重が踵要素50と保持具30を介して、中間スプリング60、中間物つまりスペーサ要素、メインスプリング40及びトウスプリング120を介してかけられる。
【0045】
上部左の図には立脚相終了時の荷重が示されている。ソール要素100は底から持ち上げられていて、最大荷重が底にあるトウスプリング120の接点においてかけられる。床反力がメインスプリング40に伝達され、保持具30が中間スプリング60上の保持位置110を中心に傾転する。中間スプリング60がメインスプリング上で前方及び後方の支持領域72、71において間隔を置いて保持されることによって、そうでなければ前部突出部34を介してメインスプリング40上の唯一の点に伝達されている力を、支持している保持具30を介して、メインスプリング40の長手方向延在範囲において互いに間隔を置いた2つの点又は領域に分配することが可能であり、それによって、メインスプリング40への2つの位置における均等な、つまり均質化された力の伝達が行われる。保持具30は引張り要素90を介してソール要素100又は案内要素80と連結される。反時計回りの捻れにより、遠位踵部品52が引張り要素90と案内要素80によってメインスプリング40に向かって圧縮される。保持具30に固定されている近位踵部品は、メインスプリング40から持ち上げられ、最大限圧縮前に復元される。したがって、メインスプリング40の前部支持点とメインスプリング40の遠位踵部品52の作用点又は作用領域との間で曲げが発生する。踵踏込みつまりヒールストライク時、つまり、メインスプリング40が曲がっていない状態で、ばね作用及び減衰作用全体が両踵部品51、52を備えた踵要素50を介して、また必要に応じてソール要素100を介して足装飾物5との共同作用において発生する場合とは異なり、足の転がり及び前足部への荷重時にはメインスプリング40の作用が引き起こされる。力の伝達ベクトルが固定要素20の前に移動すると、直ちに、保持具30の前端を介して圧縮力が中間スプリング60を介してメインスプリング40に加えられ、これによって引張り要素90が引っ張られ、その結果、特にメインスプリング40の曲げ及び案内要素80の曲げと、遠位踵部品52の圧縮が行われる。
【0046】
図3図1又は図2による義足挿入部10の変形形態を示す。固定要素20と保持具30とを備え、該保持具の前端が中間スプリング60を介し、領域71、72における2つの中間物を介してメインスプリング40上に支持され、メインスプリングの前部領域が案内要素80と接続されていて、案内要素の後部領域つまり後方領域において踵要素50が導かれ、踵要素が引張り要素90を介して圧縮状態に維持されている基本的構造は、そのまま維持されている。
【0047】
無荷重の義足挿入部10の側面を図示する図3において、更に下腿パイプの形態の近位部品2が示されていて、これは従来のピラミッドアダプタによって固定装置20に可逆的に固定可能である。保持具30の前端には、金属板111つまり中間スプリング60に関節状に保持されている支持体としての板ばね111の代わりに、図3による実施形態においては、固定要素、例えばクランプアダプタを介して中間スプリング60に取り付けられている所定の関節軸を備えた継手110が形成されている。該軸は、例えば、保持具30の内側と外側にある2つの収容部内で揺動可能に中間スプリング60に取り付けられた軸スタブとして、保持具30の前端に取り付けておく、又は形成しておくことができる。
【0048】
メインスプリング40は、下側から見て、その前方の前部領域において凸面状に曲げられていて、それによって、前足部への荷重時に容易な転がりが行われ得る。案内要素80は結合装置48、例えば接着結合又は形状結合によって、案内要素80と結合されている。案内要素80は波型形状を有し、それぞれ下から見て、前足部領域において凸面状に、中足部領域において凹面状に、踵領域において直線又は同様に凸面状に形成されている。前方から後方に向かう過程で案内要素80は中足部領域において薄くなるが、材料の厚みを基本的にメインスプリング40より僅かにして、同じ厚さを維持することもできる。
【0049】
ソール要素100は引張り要素90を導くための凹部109を有する。それに対応して、踵部分保持具35には凹部39が形成されていて、そこに引張り要素90が導かれていることによって、荷重が軽減された状態において前後方向への移動は不可能である。踵部分保持具35は保持具30に交換可能に配置しておくことができ、例えば差込み可能に、また形状結合式のスナップ結合によって係止可能に形成しておくことができる。同様に、踵部分保持具35は永続的かつ不可逆的に保持具30に固定、例えば、溶接又は貼合しておくことが可能である。踵部分保持具35は保持具30の一部である。
【0050】
図4図3による義足挿入部10の断面を図示し、引張り剛性を備えるが可撓性を有するベルト状の引張り要素90を収容するための凹部39、109の角形の外形が、メインスプリング40と中間スプリング60の基本的に直線状の実施態様と同様に、認識され得る。保持具30の前端にある継手110は軸ボルト112を有し、これは軸ボルト収容部113に揺動可能に収容されている。中間スプリング60をメインスプリング40において間隔を置いて固定するための中間物は、図示した実施例においては、貼着によって材料結合式に中間スプリング60及びメインスプリング40と結合されている。
【0051】
図5は踵踏込みの間、つまりヒールストライクの間の図3による義足挿入部を示す。近位踵部品51は最大限圧縮されていて、保持具30の後方端部にある踵部分保持具35が遠位踵部品52と同様に、特に踵部品51の後方部分を圧縮する。保持具30はボルト112を中心に時計回りに傾転されていて、引張り要素90は図示した実施例において十分な剛性を備えていることによって、凹部39から外に移動される。引張り要素90が凹部39の領域において固定、例えば螺合、挟着、又は貼着されていれば、引張り要素90は踵踏込みに基づく圧縮時に内側と外側で外向きに動くことになる。メインスプリング40の曲げは発生しない。案内要素80は、遠位踵部品52の圧縮に基づき、中足部領域においてメインスプリング下面へと接近する。
【0052】
図6図5による踵踏込み後の前進動作を示し、前足部領域が下げられていて、もはや図示されていない義肢の近位部品2は反時計回りに歩行方向において前方に傾転される。それによって、保持具30の前方端部への圧縮力が増大され、その結果、継手110を介して圧縮力が中間スプリング60の中央に加えられ、その後、中間スプリングは両支持台を介して該圧縮力を長手方向に間隔を置いて分配してメインスプリング40に伝達する。それによって、メインスプリング40が前部支持点と後端との間で撓み、中足部領域において案内要素80に接近する。引張り要素90は、弾性踵要素50の荷重が軽減されるに連れて、再び踵部分保持具35の方向に動く。
【0053】
図7は、前足部への荷重が増大しつつある義足挿入部10を示し、力の伝達点が更に前方に移動していて、両踵部品51、52への荷重がほぼ完全に軽減されている。近位踵部品51はその上面が保持具30又は踵部分保持具35の下面に密着していて、引張り要素90を介して引張り力が保持具30から踵部分保持具35を介してソール要素100に、したがって案内要素80に伝達される。それによって、遠位踵部品52が圧縮され、メインスプリング40に向かって押し付けられ、その結果、圧縮力が両領域71、72において間隔を置いて伝達されることによるメインスプリング40の撓みと同時に、復元力が弾性遠位踵部品52を介してもたらされる。中間スプリング60とメインスプリング40のばね特性に加えて、遠位踵部品52を介して更なる弾性部品が提供され、これを介して義足挿入部10のばね特性と戻りばね特性の調整が追加として可能である。
【0054】
義足の更なる転がり運動の際に、前足部への負荷が更に上昇し、案内要素80がメインスプリング40の下面に更に接近し、遠位踵部品52が更に圧縮される。図示した実施例において、近位踵部品51はメインスプリング40に固定されていて、それによって、保持具30、又は踵部分保持具35が存在する場合は踵部分保持具35が、近位踵部品51から外れる。近位踵部品51は前足部への荷重時に、近位部品2の力の伝達ベクトルが継手110を中心として反時計回りに傾転されると、もはやばね作用を持たない。
【0055】
各踵部品51、52の荷重状態が異なることによって、義足挿入部10のばね特性を個別に適合させることが可能である。したがって、例えば遠位踵部品52を近位踵部品51より硬く形成しておくことができる。遠位踵部品52がより硬いということは、近位踵部品51の変形に対する抵抗より大きい抵抗がもたらされることを意味する。それによって、近位踵部品51を介して患者にまず比較的柔らかい踵踏込みを行えるようにすることが可能である。更に、近位踵部品51の範囲に渡る柔軟な圧縮経路を確立することが可能である。近位踵部品51に一定の圧縮及び変形が生じてから、追加として遠位踵部品52が作用する。これによって、遠位踵部品52のばね剛性がより大きいことに基づき、その作用が発揮されれば迅速な底屈と確実な立位に至る。近位踵部品51と比べるとより僅かな範囲ではあるが、遠位踵部品52は踵への追加負荷の際に更に屈曲する。
【0056】
前足部への負荷の際に保持具30からメインスプリング40に伝達される力を互いに間隔を置いた2つの位置又は領域71、72において支持することによって、均等な力の伝達が可能になり、それによって、板ばねとして形成されたメインスプリング40のばね特性を最適に利用することができる。それによって、メインスプリング40は比較的薄く、また軽く形成されていること、あるいは同じ実施態様で、点状の力の伝達と比べてより高い耐久性を備えることが可能である。中間スプリング60は交換可能に形成しておくことができ、各患者又は予定されている荷重に適合させることができる。
【0057】
保持具30又はメインスプリング40のいずれかにおいて近位踵部品51の片側のみを固定することによって、引張り力が近位踵部品51を通して伝達されず、これは、主として発泡材料から成る近位踵部品51の耐久性に役立つ。遠位踵部品52は好ましくは永続的にメインスプリング40と案内要素80又はソール要素100との間で予張力が加えられた状態にある。
【0058】
継手110は好ましくは中足部領域、特に好ましくはメインスプリング40の中央に配置されていて、それによって、領域71、72が継手110に対して義足挿入部10の長手方向延在範囲において均等に配置されていれば、保持具30からメインスプリング40への最適な力配分が達成され得る。領域71、72の移動、つまり継手110からの間隔を不均等にすることによって、メインスプリング40の異なるばね特性が実現され得る。
【0059】
図9では、メインスプリング40と保持具30との間にダンパ200が配置されている、図4の変形形態が示されている。図示した実施例において、ダンパ200は保持具30の近位の上部枝部と、中間スプリング60とメインスプリング40上の近位踵部品51の上で支持される下部枝部との間に保持されている。遠位枝部は継手110の揺動軸を中心に揺動可能に保持されていて、それによって、固定装置20したがって近位部品2もメインスプリング40に対して傾転可能である。ダンパ200は空気圧ダンパ及び/又は油圧ダンパとして形成しておくことができ、代替として、ダンパ200は駆動モード及び/又は減衰モードで動作可能なアクチュエータとして形成しておくことができる。アクチュエータとしての実施態様では、両枝部の間の距離、したがって固定装置20とメインスプリング40との間の距離の能動的変更が行われ得る。アクチュエータを介して、近位枝部とそこに配置された固定装置20の、メインスプリング40に対する傾転に基づく傾斜に関して、電動調整を行うことができ、それによって、例えば異なる差高への適合が行われ得る。純粋なダンパとしての実施態様では、例えば定力又は継手110を中心とした定モーメントによって、降下又は前方への傾斜が行われる。例えば、所望の位置に達した場合に、ダンパ200の内部のバルブを閉じることにより、ゆっくりとした沈込み又は持上げによって所望の差高の正確な調整が可能になる。同様に、アクチュエータとしての実施態様では、メインスプリング40又は底に対する固定装置20の所望の方向付けつまり所望の距離及び/又は角度が達成されていれば、駆動装置が停止されてロックされ得る。基本的に、アクチュエータ又はモータがこの目的で装備されていれば、減衰を電動で変更することも可能である。その場合、モータ又は駆動装置は制御装置及びセンサユニットを介して、異なる歩行速度、荷重又は歩行状態への適合を可能にするために、歩行中に調整され得る。油圧ダンパ及び/又は空気圧ダンパとしてのダンパ200の実施態様の場合は、これに、所定のモーメント又は所定の力の超過時に初めて移動を可能にする、したがって一種の過負荷防止装置として作用する、シーケンスバルブを装備しておくことができる。更に、シーケンスバルブを介して、限界力の超過時に調整が行われ、相応に高い調整力の消失後に所望の位置においてロックが維持され得る。
【0060】
図10は、構造設計は基本的に図9に相当する義足挿入部の更なる変形形態を示す。この場合においても、保持具30は2つの部分に分かれていて、継手110と揺動軸を中心として遠位枝部に対して移動可能である近位枝部を有する。近位枝部の後方領域において、停止装置210が配置されていて、これを介して近位枝部が不連続的段階又は無段階で遠位枝部に対して調整され、各位置において固定され得る。両枝部の相互調整は、電動でも行われ得る。その場合、モータ又は駆動装置は制御装置又はセンサユニットを介して歩行中に動作の開始と停止が行われ得る。
【0061】
図11は、保持具30に移動可能に配置された固定装置20を備えた義足挿入部の更なる変形形態を示す。固定装置20は例えば遠位球部品220を有し、これは保持具30の内部の対応する凹部に取り付けられている。カルダン継手又は一軸性若しくは多軸性の傾転可能性といった他の支持コンセプトは代替案である。該支持を介して、保持具30に対する固定装置20の傾転、ねじり又は移動が行われている。例えば差高適合の枠内で、固定装置20の目標位置が達成されていれば、固定装置20は例えば締付け要素、ネジ、形状結合要素によって、又は自動ロック式駆動装置、例えばスピンドルの駆動中断によって、保持具30に固定される。図11による移動可能な固定装置20は図9及び図10による保持具30の多部品の実施態様においても、特にメインスプリング40に対する固定装置20の遠位‐近位の距離の変更によって差高調整が行われる場合に、装備しておくことができる。図10に示されている停止装置210の他に、保持具30の位置と保持具30に対する固定装置20の位置を、例えばスペーサ要素、ストッパ、調整ネジ、クランプネジ等によって固定するために、他の停止装置又は固定要素を備えておくことができる。
【0062】
図12においては、本発明の更なる変形形態の義足挿入部10の全体斜視図が示されている。保持具30にある固定要素20はピラミッドアダプタとして形成されていて、図示されていない近位義肢部品、例えば下腿パイプ又は下腿シャフトにおける固定に用いられる。保持具30は特に寸法安定性を有する材料から成り、その前端に孔が設けられていて、その中に、保持具30と支持体600との間の継手110を形成するために軸ボルト112が導かれている。支持体600は中間スプリング又は上述の実施形態の中間要素に相当するが、有意なサスペンション特性は持たない。支持体600の前端と後端には側面突出部が配置されていて、これらが互いに基本的にメインスプリング40の幅の間隔を有することにより、メインスプリング40は該突出部の間に収容され得る。支持体600は中間物を介してメインスプリング40上で支持され、該図面においては該中間物の内、前部中間物72のみが認識され得る。メインスプリング40は接着結合、締付け結合及び/又は形状結合によって、支持体600と結合しておくことができる。同様に、支持体が突出部の下端に横突出部を有することによって、メインスプリング40のためのC形状又は細隙状の収容部を形成することが可能である。その場合、メインスプリング40は該収容部に挿入され得る。その場合、メインスプリング40の支持体600における固定は、中間物、形状結合要素、締付け結合及び/又は接着結合によっても行われ得る。
【0063】
メインスプリング40の前端は形状結合式に案内要素80又はベーススプリングに保持されている。この目的で案内要素80の前端には前部収容部84つまりポケットが形成されていて、そこにメインスプリング40が挿入されている。追加的固定はピン、ボルト、フック、ネジ、クリップ結合、面ファスナによって、他の形状結合及び/又は締付け結合及び/又は材料結合によって行われ得る。好ましくは、メインスプリング40は案内要素80の前端に取外し可能かつ交換可能に保持されていて、それによって、修理目的、適合目的又は調整目的での、メインスプリング40の非破壊的取出し又は案内要素80の交換が行われ得る。前部収容部84は案内要素80の一体型部品として形成しておくことができる。代替として、前部収容部84は独立した要素として製造し、永続的に案内要素80に固定しておくこと、例えば溶接、貼合により、又は固定要素を介して取り付けておくことができる。
【0064】
案内要素80の後端において、踵要素50のための後部収容部85が配置又は形成されている。後部収容部85も、案内要素80の一体型部品として一体に形成しておくこと、あるいは別に製造して、前部収容部84と同様に、案内要素80に固定しておくことができる。後部収容部85は、近位方向に向けられた全側面に張り出す領域を有し、それによってこの張出し領域の内部に遠位踵部品52が挿入され得る。後部収容部85を介して、遠位踵部品52の側方への移動、又は歩行方向及び歩行方向とは逆向きの移動が起こり得ないことが保証される。同様に、遠位踵部品52の捻れも不可能である。遠位踵部品52は案内要素80上に装着されている。
【0065】
遠位踵部品52の上方にメインスプリング40が位置し、その後端上にキャップ45が押し被せられて、又は装着されていて、これが側方と後方のフレーム状突出部を形成する。それによって、遠位踵部品52の上端が側方に、又は後方に向かって移動され得ることが防止される。キャップ45の側方及び後方突出部はメインスプリング40の上面から離れて近位方向にも延出し、したがって近位踵部品51のための収容部及びガイドとして用いられる。近位踵部品51の近位上面は保持具30の下面に、直接、あるいは中間物又は更なる保持具を介して置かれている。
【0066】
引張り要素90として、ベルトが保持具30の上面の上方、及びメインスプリング40の両踵部品51、52の内側と外側で導かれている。下面において、ベルト90は後部収容部85の下方で案内要素80の下に沿って導かれていて、それによって、メインスプリング40は両踵部品51、52の間に保持され、保持具30と案内要素80との間に挟着されている。
【0067】
図示した、義足挿入部10の無荷重状態においては、引張り要素90は僅かに予張力がかけられていて、それによって、両踵部品51、52は保持具30、メインスプリング40と案内要素80との間に挟まって保持されている。踵接地時に、踵部品51、52の少なくとも1つが圧縮され、ベルト90が緩む。ベルト90が保持具30及び/又は案内要素80から外れることを防止するために、ベルト90はそこに固定しておくことができる。より適切に導くために、また外的影響に対する保護として、保持具30と後部収容部85の中に凹部又は溝が作成されていて、そこにベルト90が導かれている。
【0068】
図13の分解立体図において、義足挿入部10の個々の部品が示されている。固定要素20は螺入可能なピラミッドアダプタとして形成されていて、これは保持具30内部のネジ山に螺入可能である。歩行方向において固定要素20の後ろで、保持具30に溝形状の凹部39が作成されていて、その中にベルト90が導かれている。ベルト張力を変更するために、保持具30にカム300が保持されている。カム300は保持具30の背面から到達可能であり、開始位置から捻ることによってベルト張力の変更が可能になる。
【0069】
キャップ45は、踵部品51、52のためのガイドとなるように、内側と外側並びに背面において近位と遠位に土台から突出するフレームとして組み立てられている。フレーム内部には、土台としてプレート、内側に突出するフレーム、複数の装飾要素又は1つの細隙を形成しておくことができる。したがってキャップ45をメインスプリング40上に置き得ること、メインスプリング40をキャップ45上に置き得ること、又はメインスプリング40の後端をキャップ45の細隙に挿入し得ることが可能である。キャップ45のメインスプリング40の後端における固定は摩擦結合、形状結合及び/又は材料結合によって行われ得る。
【0070】
支持体30の前端に軸ボルト112を収容するための孔を認識することができ、該ボルトは支持体600の孔の内部でスリーブ114に保持されている。支持体600は橋状に組み立てられていて、2つの土台領域を有することによって、支持体600とメインスプリング40との間の接触が両中間物71、72を介して互いに間隔を置いて行われる。したがって、上からの圧縮荷重時にメインスプリング40への力の伝達が、メインスプリング40の長手方向延在範囲において互いに間隔を置いて行われ、それによって保持具30は支持体600と中間物71、72を介して、2点支持によってメインスプリング40上で支持される。
【0071】
したがって、中間物71、72に対して長手方向延在範囲において間隔を置いた、メインスプリング40の前端と後端にある、案内要素80及び遠位踵部品52上の支持点によって、全体としてメインスプリング40の4点支持が形成される。
【0072】
両踵部品51、52は好ましくは発泡要素又は発泡ブロックとして形成されていて、異なる弾性と減衰特性を有し得る。踵部品51、52は交換可能に、特に非破壊的に交換可能に義足挿入部10内部に保持しておくことができる。引張り要素90を取り除いた後、例えば保持具30を継手110を中心として上方に折り畳み、近位踵部品51を取り出すことができる。これは遠位踵部品52においても同様に行われる。
【0073】
図14においては、図12による義足挿入部10が組み立てられて、本来の足の形状を模して形成された足装飾物5を備えている。足装飾物5は特に義足挿入部10の機械部品の外的影響からの保護、義足挿入部10を支える靴、及び周囲の保護に役立つ。義足挿入部10の鋭角の、又は硬い部品による損傷又は負傷が発生しないように、義肢装飾物は有利に軟質の可撓性材料、例えばポリウレタン、ポリエチレン又はシリコーン材料又は複数の材料の組合せで形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】