(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】抗癌免疫応答を誘導する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220228BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20220228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220228BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220228BHJP
C07D 213/40 20060101ALI20220228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220228BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220228BHJP
A61K 35/13 20150101ALI20220228BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/44
A61P35/00
A61K39/395 N
C07D213/40
A61P43/00 105
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K35/13
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541234
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 US2020013817
(87)【国際公開番号】W WO2020150434
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521313197
【氏名又は名称】アポジー・バイオテクノロジー・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Apogee Biotechnology Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】スミス,チャールズ ディ
(72)【発明者】
【氏名】メインズ,リン ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C055
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA27
4C055DB07
4C055FA15
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
方法、又は患者から収集された癌細胞を使用して免疫学的にプライミングされた癌細胞を調製することは、スフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で、収集された癌細胞を、エクスビボで処理することを含み、毒性濃度は、癌細胞における免疫原性細胞死を誘導するのに十分である。実施形態において、化合物は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド化合物又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、それらの表面上でカルレティキュリンを過剰発現する。実施形態において、癌細胞は、固形腫瘍細胞である。実施形態において、癌細胞は、循環腫瘍細胞である。実施形態において、方法は、免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を採取することと、リン酸緩衝生理食塩水に細胞を懸濁することと、を更に含む。実施形態において、方法は、免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を患者のケアの場所まで輸送することを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で、治療を必要とする患者から収集された癌細胞を、エクスビボで処理することによって、免疫学的にプライミングされた癌細胞を調製することを含む方法であって、前記毒性濃度が、前記癌細胞の免疫原性細胞死を誘導するのに十分である、方法。
【請求項2】
スフィンゴ脂質代謝を改変する前記化合物が、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スフィンゴシンキナーゼの前記阻害剤が、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
SK2の前記選択的阻害剤が、3-(4-クロロフェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記癌細胞が、前記化合物で少なくとも24時間処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
SK2の前記選択的阻害剤の前記毒性濃度が、約20μM~約60μMである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫学的にプライミングされた癌細胞が、それらの表面上にカルレティキュリンを過剰発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞が、免疫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌細胞が、血液癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記癌細胞が、固形腫瘍細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記癌細胞が、循環腫瘍細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を採取することと、リン酸緩衝生理食塩水に前記細胞を懸濁することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を前記患者のケアの場所まで輸送することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者のケアの前記場所が、病院である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者のケアの前記場所が、癌センターである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記輸送された免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を前記患者に投与して、免疫応答を誘発することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫応答が、前記患者における癌の成長を遅延又は停止させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫応答が、前記患者における癌の転移を停止させる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫応答が、癌細胞を死滅させる際に前記患者の免疫系をより効率的にする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を投与することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
癌の治療を必要とする患者において癌細胞に対する免疫原性細胞死を増強又は誘導することによって癌を治療する方法であって、
スフィンゴ脂質代謝を改変する有効量の化合物を前記患者に投与することと、
チェックポイント経路の有効量の阻害剤を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項22】
前記スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物が、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スフィンゴシンキナーゼの前記阻害剤が、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
SK2の前記選択的阻害剤が、3-(4-クロロフェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫原性細胞死が、前記癌細胞の前記表面上でのカルレティキュリンの増加した発現を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記癌細胞が、チェックポイント阻害剤で一般的に治療される癌由来の細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、黒色腫、メルケル細胞癌、扁平上皮細胞癌、食道の扁平上皮細胞癌、肺、小細胞肺、非小細胞肺腎、ホジキンリンパ腫、頭頸部、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫、腎臓、膀胱、尿路、肝臓、結腸直腸、子宮頸部、子宮、及び胃癌からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記チェックポイント経路の前記阻害剤が、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、又はこれらの組み合わせである、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記抗PD-L1抗体及び前記抗PD-1抗体が、モノクローナル抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記モノクローナル抗体が、ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記チェックポイント経路の前記阻害剤が、抗CTLA4抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記抗CTLA4抗体が、モノクローナル抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記モノクローナル抗体が、ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記投与することが、十分な時間にわたって複数回行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤と、使用のための説明書と、を含む、キット。
【請求項36】
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤が、CTLA-4受容体阻害剤、PD-1受容体阻害剤、PD-L1リガンド阻害剤、PD-L2リガンド阻害剤、LAG-3受容体阻害剤、TIM-3受容体阻害剤、BTLA受容体阻害剤、KIR受容体阻害剤、又は前記チェックポイント阻害剤のうちのいずれかの組み合わせである、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤が、抗体又は抗体断片である、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4受容体抗体、抗PD-1受容体抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、又は前記抗体のうちのいずれかの組み合わせである、請求項35に記載のキット。
【請求項39】
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤が、凍結乾燥固体の形態にある、請求項35に記載のキット。
【請求項40】
水性再構成溶媒を更に含む、請求項35に記載のキット。
【請求項41】
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤が、第1の薬学的に許容される製剤に組み込まれ、前記3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミドが、第2の薬学的に許容される製剤に組み込まれる、請求項35に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌は、異常細胞の制御不能な成長及び拡がりを特徴とする疾患の群である。多くの異なる種類の癌治療があり、伝統的療法(手術、化学療法、及び放射線療法など)、より新しい形態の治療(標的療法)、並びに補完及び代替療法が含まれる。癌が多数の変化した分子経路に依存し、単剤での療法に対する多様な抵抗機序を発達させ得ることが益々明白になっている。したがって、組み合わせレジメンは、永続性のある効果を伴う有効な療法に対して最善の希望を提供し得る。
【発明の概要】
【0002】
本明細書に示される態様によれば、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の毒性濃度の選択的阻害剤を含む免疫原性細胞死(ICD)誘導剤が開示される。実施形態において、SK2の選択的阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド化合物又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド化合物又はその薬学的に許容される塩の毒性濃度は、約35μM~約45μMである。実施形態において、インビトロで、患者由来の癌細胞を、約35μM~約45μMの3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド化合物又はその薬学的に許容される塩で処理して、癌細胞における十分な免疫原性細胞死(ICD)をもたらす。これらのプライミングされた癌細胞は、癌免疫療法として使用され、患者に再び投与することができる。実施形態において、これらの新たに埋め込まれたプライミングされた癌細胞は、患者内の未処理癌細胞において大規模なICDを生じさせることができる。
【0003】
本明細書に示される態様によれば、癌細胞を、エクスビボで、スフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で処理することを含む、患者から収集された癌細胞を使用して免疫学的にプライミングされた癌細胞を調製する方法であって、毒性濃度が、癌細胞において免疫原性細胞死を誘導するのに十分である方法が開示される。実施形態において、スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物は、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である化合物は、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK2の選択的阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、収集された癌細胞は、少なくとも24時間処理される。実施形態において、SK2の選択的阻害剤の毒性濃度は、約20μM~約60μMである。実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、それらの表面上にカルレティキュリンを過剰発現する。実施形態において、癌細胞は、免疫細胞である。実施形態において、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は樹状細胞を含む。実施形態において、癌細胞は、血液癌細胞である。実施形態において、血液癌細胞は、白血病細胞である。実施形態において、癌細胞は、固形腫瘍細胞である。実施形態において、癌細胞は、循環腫瘍細胞である。実施形態において、方法は、免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を採取することと、細胞をリン酸緩衝生理食塩水に懸濁することと、を更に含む。実施形態において、方法は、免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を患者のケアの場所まで輸送することを更に含む。実施形態において、患者のケアの場所は、病院である。実施形態において、患者のケアの場所は、癌センターである。実施形態において、方法は、輸送された免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を患者に投与して、免疫応答を誘発することを更に含む。実施形態において、免疫応答は、患者における癌の成長を遅延又は停止させる。実施形態において、免疫応答は、患者の癌転移を停止させる。実施形態において、免疫応答は、癌細胞の死滅について患者の免疫系をより効率的にする。実施形態において、方法は、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を投与することを更に含む。
【0004】
本明細書に示される態様によれば、患者において抗癌免疫応答を誘導する方法であって、患者から癌細胞を取り出すことと、癌細胞において免疫原性細胞死を誘導、増強、又は促進するのに十分な量の薬学的に許容される製剤に組み込まれたその薬学的に許容される塩の3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド化合物で、エクスビボで、細胞を処理し、次いで、処理した細胞を元の患者に投与して戻し、患者の癌に対する免疫応答を誘発することと、を含む、方法が開示される。実施形態において、患者の細胞は、白血病細胞などの血液癌細胞である。実施形態において、患者の細胞は、生検から得られた固形腫瘍細胞又は患者の血液から単離された循環腫瘍細胞である。
【0005】
本明細書に示す態様によれば、対象の癌を治療する方法で使用するための、有効量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤と、CTLA-4受容体阻害剤、PD-1受容体阻害剤、PD-L1リガンド阻害剤、PD-L2リガンド阻害剤、LAG-3受容体阻害剤、TIM-3受容体阻害剤、BTLA受容体阻害剤、KIR受容体阻害剤、又は前述のチェックポイント阻害剤のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤と、が開示される。実施形態において、チェックポイント阻害剤は、PD-L1/PD-1経路の阻害剤である。実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4の阻害剤である。実施形態において、癌は、化学療法又は放射線抵抗性癌である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤を投与し、次いで他の阻害剤を好適な期間内に投与する。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。実施形態において、PD-L1/PD-1経路の阻害剤は、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、又はこれらの組み合わせである。実施形態において、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。実施形態において、CTLA-4の阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。実施形態において、抗CTLA-4抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0006】
本明細書に示す態様によれば、有効量のスフィンゴシンキナーゼ(SK)の阻害剤及び有効量のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを含む、対象において癌を治療する方法が開示される。実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CTLA4に対する抗体(例えば、イピリムマブ)、若しくはPD-1に対する抗体(例えば、ペムブロリズマブ又はニボルマブ)、又はPD-L1に対する抗体(例えば、アテゾリズマブ又はデュルバルマブ)であり得る。これらの経路を標的とする他の抗体又は化学的阻害剤はまた、本発明の範囲内である。例えば、PD-L1経路の更なる阻害剤としては、BMS-936559、MPDL3280A、BMS-936558、MK-3475、CT-011、又はMEDI4736が挙げられる。
【0007】
本明細書に示される態様によれば、有効量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤及びPD-L1/PD-1経路の阻害剤又はCTLA-4の阻害剤のうちの少なくとも1つを投与することを含む、患者において癌を治療する方法が開示される。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。実施形態において、PD-L1/PD-1経路の阻害剤は、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、又はこれらの組み合わせである。実施形態において、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。実施形態において、CTLA-4の阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。実施形態において、抗CTLA-4抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0008】
本明細書に示される態様によれば、有効量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤及びCTLA-4阻害剤を患者に投与することを含む、黒色腫の治療を必要とする患者において黒色腫を処理する方法が開示される。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。実施形態において、CTLA-4の阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。実施形態において、抗CTLA-4抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。実施形態において、黒色腫を治療することは、腫瘍のサイズを減少させるか、又は腫瘍の成長を阻害することとして更に定義される。実施形態において、阻害剤は、それを必要とする患者に、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与される。実施形態において、患者に、第2の癌療法が更に投与される。実施形態において、第2の癌療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、又は遺伝子療法を含む。実施形態において、黒色腫は、化学療法又は放射線抵抗性黒色腫である。
【0009】
本明細書に示される態様によれば、有効量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤及びPD-L1/PD-1経路の阻害剤を患者に投与することを含む、黒色腫の処理を必要とする患者において黒色腫を処理する方法が開示される。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。実施形態において、PD-L1/PD-1経路の阻害剤は、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、又はこれらの組み合わせである。実施形態において、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。実施形態において、黒色腫を治療することは、腫瘍のサイズを減少させるか、又は腫瘍の成長を阻害することとして更に定義される。実施形態において、阻害剤は、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与される。実施形態において、患者は、第2の癌療法を更に投与する。実施形態において、第2の癌療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、又は遺伝子療法を含む。実施形態において、黒色腫は、化学療法又は放射線抵抗性黒色腫である。
【0010】
本明細書に示される態様によれば、黒色腫の治療を必要とする患者において黒色腫を治療する方法であって、有効量の3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)及びPD-L1経路の阻害剤を投与することを含む、方法が開示される。
【0011】
本明細書に示される態様によれば、肺癌に罹患している患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、60分未満の注入によって投与される、PD-1受容体に特異的に結合し、かつPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分(「抗PD-1抗体又はその抗原結合部分」)である治療有効量の抗癌剤を、経口投与されるスフィンゴシンキナーゼの阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法が開示される。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。
【0012】
本明細書に示される態様によれば、肺癌に罹患している患者を治療するための方法であって、それ必要とする患者に、PD-1受容体に特異的に結合し、かつPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であるフラット用量の治療有効量の抗癌剤を、経口投与される治療有効量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法が開示される。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。
【0013】
本明細書に示される態様によれば、患者において肺癌を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤及び抗CTLA-4の阻害剤を投与することを含む、方法が開示される。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシン-キナーゼ-2の阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)である。実施形態において、抗CTLA-4の阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。実施形態において、抗CTLA-4抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。実施形態において、抗CTLA-4モノクローナル抗体は、イピリムマブである。実施形態において、肺癌を治療することは、腫瘍のサイズを減少させるか、又は腫瘍の成長を阻害することとして更に定義される。実施形態において、阻害剤は、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与される。実施形態において、患者に、第2の癌療法が更に投与される。実施形態において、第2の癌療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、又は遺伝子療法を含む。
【0014】
本明細書に示される態様によれば、患者において肺癌を治療する方法であって、患者に、有効量の3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド(ABC294640)及び抗CTLA-4の阻害剤を投与することを含む、方法が開示される。実施形態において、抗CTLA-4の阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。実施形態において、抗CTLA-4抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、抗CTLA-4モノクローナル抗体は、イピリムマブである。
【0015】
本明細書に示される態様によれば、免疫原性細胞死のための細胞を調製するためのキットが開示される。キットは、スフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物を含み、毒性濃度は、癌細胞において免疫原性細胞死を誘導するのに十分であり、使用のための説明書のセットを含む。実施形態において、スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物は、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である化合物は、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK2の選択的阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、SK2の選択的阻害剤の毒性濃度は、約20μM~約60μMである。
【0016】
本明細書に示される態様によれば、腫瘍を治療するためのキットが開示される。キットは、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤化合物と、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド又はその薬学的に許容される塩と、使用のための説明書のセットと、を含むことができる。実施形態において、使用のための説明書は、投与経路、投与用量、及び投与期間を含む、阻害剤を投与する方法を示すラベルを含む。キットのいくつかの形態において、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド又はその薬学的に許容される塩は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害化合物とは別個の容器に保存される。キットのいくつかの形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤化合物は、CTLA-4受容体阻害剤、PD-1受容体阻害剤、PD-L1阻害剤、若しくはPD-L2阻害剤、LAG-3受容体阻害剤、TIM-3受容体阻害剤、BTLA受容体阻害剤、KIR受容体阻害剤、又は前述の免疫チェックポイント阻害剤化合物のうちのいずれかの組み合わせである。キットのいくつかの形態において、免疫チェックポイント阻害剤化合物は、抗体又は抗体断片である。キットのいくつかの形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤化合物は、抗CTLA-4受容体抗体、抗PD-1受容体抗体、抗LAG-3受容体抗体、抗TIM-3受容体抗体、抗BTLA受容体抗体、抗KIR受容体抗体、抗PD-L1抗体、若しくは抗PD-L2抗体、又は前述の抗体のうちのいずれかの組み合わせである。キットのいくつかの形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤化合物は、凍結乾燥固体の形態にある。いくつかの形態において、キットは、水性再構成溶媒を更に含む。キットのいくつかの形態において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤化合物は、第1の薬学的に許容される製剤に組み込まれ、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミドが、第2の薬学的に許容される製剤に組み込まれる。
【0017】
本明細書に示される態様によれば、肺癌に罹患した対象を治療するためのキットであって、フラット投与量の少なくとも約240mgのPD-1受容体に特異的に結合し、かつPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分と、投与量のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤と、本開示の方法における抗PD-1抗体又はその抗原結合部分及びスフィンゴシンキナーゼの阻害剤を使用するための説明書と、を含む、キットが開示される。実施形態において、使用のための説明書は、投与経路、投与用量、及び投与期間を含む、抗PD-1抗体又はその抗原結合部分及びスフィンゴシンキナーゼの阻害剤を投与する方法を示すラベルを含む。実施形態において、キットは、CTLA-4に特異的に結合しCTLA-4を阻害する抗体又はその抗原結合部分の0.1~10mg/kg体重の範囲の投与量である、別の抗癌剤の投与量と、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用方法が更に記載された説明書と、を更に含む。
【0018】
本明細書に示される態様によれば、肺癌に罹患した対象を治療するためのキットであって、PD-1受容体に特異的に結合しPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分である抗癌剤の0.1~10mg/kg体重の範囲の投与量と、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤の投与量と、本開示の方法における抗PD-1抗体又はその抗原結合部分及びスフィンゴシンキナーゼの阻害剤を使用するための説明書と、を含む、キットが開示される。実施形態において、キットは、CTLA-4に特異的に結合しCTLA-4を阻害する抗体又はその抗原結合部分の0.1~10mg/kg体重の範囲の投与量である別の抗癌剤の投与量と、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用方法が更に記載された説明書と、を更に含む。
【0019】
本開示の態様によれば、治療される癌は、黒色腫、皮膚T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、パジェット様細網症、セザリー症候群、肉芽腫様弛緩皮膚、リンパ腫様丘疹症、慢性苔癬状粃糠疹、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、CD30+皮膚T細胞リンパ腫、続発性皮膚CD30+大細胞型リンパ腫、非菌状息肉症CD30皮膚大T細胞リンパ腫、多形性T細胞リンパ腫、レンネルトリンパ腫、皮下T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、頭頸部腫瘍、扁平上皮細胞癌、横紋筋肉腫(rhabdomyocarcoma)、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道扁平上皮細胞癌、食道腺癌、腎細胞癌(RCC)、結腸直腸癌(CRC)、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、尿路上皮癌、膀胱癌、胃癌、前立腺小細胞神経内分泌癌(SCNC)、肝癌、肉腫、膠芽腫、肝癌、口腔扁平上皮細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、肝内胆管細胞癌、肝細胞癌、骨癌、転移、及び鼻咽頭癌からなる群から選択される。実施形態において、癌を治療することは、腫瘍のサイズを減少させるか、又は腫瘍の成長を阻害することとして更に定義される。
【0020】
本開示の態様によれば、阻害剤は、それを必要とする対象に、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与され得る。本開示の実施形態において、それを必要とする対象に、第2の癌療法が更に投与される。実施形態において、第2の癌療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、又は遺伝子療法を含む。実施形態において、癌は、化学療法耐性癌又は放射線抵抗性癌である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ABC294640で処理されたB16黒色腫細胞の投与により、その後に注射された未処理のB16腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。これは、ABC294640が腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することの実証である。
図1、
図2、及び
図3A~
図3Cに示される「ボックス&ウィスカー」プロットにおいて、腫瘍体積中央値は、各バー中の水平線によって示される。バーの範囲は、四分位範囲を示し、ウィスカーは、各処理群について最小の腫瘍と最大の腫瘍との間の範囲を示す。
【
図2】ABC294640で処理されたNeuro-2a神経芽腫細胞の投与により、その後に注射された未処理のNeuro-2a腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。これは、ABC294640が腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することの更なる実証である。
【
図3A】ABC294640で処理されたルイス肺癌(LLC)細胞の投与により、その後に注射された未処理のLLC腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。腫瘍サイズは、15日目(
図3A)、17日目(
図3B)、及び20日目(
図3C)に示され、ABC294640で処理された細胞の投与により、未処理の腫瘍細胞による腫瘍成長の持続的な抑制が引き起されることを実証している。これは、ABC294640が腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することの更なる実証である。
【
図3B】ABC294640で処理されたルイス肺癌(LLC)細胞の投与により、その後に注射された未処理のLLC腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。腫瘍サイズは、15日目(
図3A)、17日目(
図3B)、及び20日目(
図3C)に示され、ABC294640で処理された細胞の投与により、未処理の腫瘍細胞による腫瘍成長の持続的な抑制が引き起されることを実証している。これは、ABC294640が腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することの更なる実証である。
【
図3C】ABC294640で処理されたルイス肺癌(LLC)細胞の投与により、その後に注射された未処理のLLC腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。腫瘍サイズは、15日目(
図3A)、17日目(
図3B)、及び20日目(
図3C)に示され、ABC294640で処理された細胞の投与により、未処理の腫瘍細胞による腫瘍成長の持続的な抑制が引き起されることを実証している。これは、ABC294640が腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することの更なる実証である。
【
図4】ABC294640で処理されたB16黒色腫又は)ルイス肺癌(LLC)細胞の投与により、その後に注射された未処理のB16腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。これは、ABC294640が交差免疫を誘導することの実証である。
【
図5】ABC294640で処理されたB16黒色腫又はルイス肺癌(LLC)細胞の投与により、その後に注射された未処理のLLC腫瘍細胞に対する免疫が誘発されることを示す。これは、ABC294640が交差免疫を誘導することの更なる実証である。
【
図6】ABC294640(ABC)のみ又は抗PD-1抗体のみのいずれかでマウスを治療することによって、B16黒色腫腫瘍の成長が部分的に阻害されることを示す。ABC294640と抗PD-1抗体との組み合わせによるマウスの治療は、腫瘍成長の抑制を著しく増加させた。記号は、平均腫瘍体積を示し、エラーバーは、指示された時間における各治療群の平均の標準誤差を示す。
【
図7】ABC294640(ABC)のみ又は抗PD-1抗体のみのいずれかでマウスを治療することによって、B16黒色腫腫瘍を有するマウスの生存がわずかに延長されることを示す。ABC294640と抗PD-1抗体との組み合わせによるマウスの治療は、腫瘍を有するマウスの生存期間を著しく増加させた。
【
図8】ABC294640(ABC)のみ又は抗CTLA4抗体のみのいずれかでマウスを治療することによって、LLC肺腫瘍の成長が部分的に阻害されることを示す。ABC294640と抗CTLA4抗体との組み合わせでのマウスの治療は、腫瘍成長の抑制を著しく増加させた。
【
図9】ABC294640(ABC)のみ又は抗CTLA4抗体のみのいずれかでマウスを治療することによって、LLC腫瘍を有するマウスの生存がわずかに延長されていることを示す。ABC294640と抗CTLA4抗体との組み合わせでのマウスの治療は、腫瘍を有するマウスの生存期間を著しく増加させた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示のスフィンゴシンキナーゼ(SK)阻害剤は、1つ以上の他の抗癌療法と組み合わせて使用される。そのような他の薬物は、ある経路により、そのために一般的に使用される量で、本発明のSK阻害剤と同時に又は逐次的に投与されてもよい。本発明のSK阻害剤が1つ以上の他の薬物と同時に使用される場合、本発明のSK阻害剤に加えてそのような他の薬物を含む薬学的組成物が好ましい。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明のSK阻害剤に加えて、1つ以上の他の活性成分又は治療剤も含むものを含む。別々に投与されるか、又は同じ薬学的組成物中で投与されるかのいずれかである、本発明のSK阻害剤と組み合わせてもよい他の治療剤の例としては、CTLA-4、PD1、又はPD-L1に対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のSK阻害剤と第2の活性成分との重量比は、変動してもよく、各成分の有効用量に依存するであろう。一般に、各々の有効用量が使用されるであろう。本発明のSK阻害剤と他の活性成分との組み合わせは、一般に、前述の範囲内であるが、各場合において、各活性成分の有効用量を使用する必要がある。実施形態において、SK阻害剤は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用される。実施形態において、SK阻害剤は、CTLA-4(CD152)、PD-1(CD279)、PDL-1(CD274)、TIM-3、LAG-3(CD223)、VISTA、KIR、NKG2A、BTLA、PD-1H、TIGIT、CD96、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、GARP、CSF-1R、A2AR、CD73、CD47、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)、又はインドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)の活性を遮断する化合物のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。
【0023】
用語
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。本明細書で別段で明示的に提供される場合を除き、本出願で使用される場合、以下の用語の各々は、以下に記載される意味を有するものとする。追加の定義は、本願全体を通して記載される。
【0024】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、互換的に使用される。
【0025】
「投与」は、当業者に既知の様々な方法及び送達システムのいずれかを使用して、本発明の阻害剤を含む組成物を対象に物理的に導入することを指す。抗PD-1抗体の好ましい投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、又は他の非経口投与経路、例えば、注射又は注入が挙げられる。本明細書で使用する場合、「非経口投与」という語句は、経腸及び通常は注射による局所投与以外の投与様式を意味し、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、頭蓋内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、硬膜外及び胸骨内での注射及び注入、並びにインビボエレクトロポレーションが挙げられる。本発明のSK阻害剤は、典型的には非非経口経路により投与され、好ましくは経口投与される。他の非非経口経路としては、局所、表皮、又は粘膜経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸、舌下、又は局所が挙げられる。投与はまた、例えば、1回、複数回及び/又は1つ以上の長期間にわたって行うことができる。
【0026】
本発明で使用される場合、「薬剤」という用語は、患者に対する薬理活性又は効果を有する化合物を指す。「薬剤」、「化合物」及び「薬物」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0027】
「緩和する」は、特定の状態の症状又は臨床的徴候特性の範囲、重症度、頻度及び/又は尤度の任意の低減を指す。
【0028】
本発明の「SK阻害剤で処理された癌細胞」又は「ABC296460で処理された癌細胞」は、処理された細胞の表面上でのカルレティキュリンの増加された発現を有するであろう。理論に拘束されるものではないが、カルレティキュリンの過剰発現は、免疫応答を促進する新生抗原のうちの少なくとも1つとして作用すると考えられる。カルレティキュリンの表面発現は、注射前に細胞のフローサイトメトリーによって測定することができ、細胞は、免疫応答を最適化するために、カルレティキュリンの高い発現を有するサブセットに分類することができる。本明細書に開示される方法によって調製されるSK阻害剤で処理された癌細胞又はABC294640で処理された癌細胞は、抗癌剤免疫応答を誘発するのに特に有効である。
【0029】
カルレギュリン、CRP55、CaBP3、カルセケストリン様タンパク質、及び小胞体小体残留タンパク質60(ERp60)としても知られるカルレティキュリンは、Ca2+イオン(シグナル伝達における第2メッセンジャー)に結合して、それを不活性にする、多機能性可溶性タンパク質である。
【0030】
「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリン又はその抗原結合部分を含むが、これらに限定するものではない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではYHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、Cm、Cm、及びm-を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではYLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。V#及びYL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域に散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分することができる。各YH及びYLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される3つのCDR及び4つのFR:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4を含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系(例えば、エフェクター細胞)の様々な細胞及び古典的な補体系の第1の構成要素(Clq)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0031】
「抗体断片」は、リガンドに対する親抗体の結合機能の少なくとも一部を保持する抗体のサブ部分を指す。
【0032】
「抗体誘導体」は、抗体又は抗体断片の化学的に改変された形態を指す。誘導体のいくつかの例としては、PEG基、ペプチド、タンパク質又は他の抗体などの他の機能性分子への結合が挙げられる。
【0033】
「免疫原性細胞死」(「ICD」)という用語は、免疫応答を誘発する任意の種類の細胞死である。ICDは、細胞表面の組成の変化を伴う。
【0034】
「インビトロで免疫原性細胞死を引き起こすことが知られている」例えば化合物ABC294640などのSK阻害剤の濃度は、腫瘍細胞の少なくとも75%の死滅を引き起こすように選択された化合物の毒性量を意味する。実施形態において、インビトロで細胞死を引き起こすことが知られている、例えばABC294640などのSK阻害剤の濃度は、約10μM~約100μM、約20μM~約60μM、約25μM~約55μM、約30μM~約50μM、約35μM~約45μMである。実施形態において、インビトロで免疫原性細胞死を引き起こすことが知られている、例えばABC294640などのSK阻害剤の濃度は、40μMである。
【0035】
本明細書に開示される「エクスビボ」方法は、患者から採取された細胞を、インビトロでスフィンゴ脂質代謝を改変し、次いで、患者の身体に戻すことができるようにプライミングされた化合物で処理することを意味する。
【0036】
「モノクローナル抗体」(「mAh」)という用語は、単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、かつ特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す抗体分子の天然に存在しない調製物を指す。モノクローナル抗体は、単離された抗体の例である。MAbは、ハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニック、又は当業者に既知の他の技術によって産生され得る。
【0037】
免疫チェックポイント経路を遮断するためのモノクローナル抗体、抗体断片及び抗体誘導体は、体細胞ハイブリダイゼーション技術及びハイブリドーマ方法を含むがこれらに限定されない、当業者に既知のいくつかの方法のうちのいずれかによって調製することができる。ハイブリドーマ生成は、Antibodies,A Laboratory Manual,Harlow and Lane,1988,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkに記載されている。ヒトモノクローナル抗体は、
例えば、米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,698号、同第6,582,915号、及び同第6,593,081号に記載される方法によって、ヒト免疫グロブリン遺伝子のファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることによって同定及び単離することができる。モノクローナル抗体は、米国特許第6,331,415号(Cabilly)に記載される一般的な方法を使用して調製することができる。
【0038】
「新生抗原」は、免疫細胞が癌細胞を同定し、これと闘うのを助ける特有の分子又はタンパク質である。実施形態において、SK阻害剤、例えば、毒性濃度のABC294640での患者由来癌細胞のインビトロ処理は、処理された癌細胞の表面上でのカルレティキュリンの過剰発現をもたらす。次いで、これらの処理された(「プライミングされた」)癌細胞は、癌と闘うこと/癌を治療するのを助けるために患者に投与することができる。
【0039】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。更に、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム突然変異誘発若しくは部位特異的突然変異誘発により、又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を含むことができる。しかしながら、本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図するものではない。「ヒト」抗体及び「完全ヒト」抗体という用語は、同義的に使用される。一例として、ヒトモノクローナル抗体は、XenoMouse(商標)(Abgenix、Freemont、Calif.)又はXenoMouseからのB細胞のハイブリドーマを使用して調製することができる。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号(Kucherlapati)に記載される、機能性ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するマウス宿主である。
【0040】
「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体のCDRドメインの外側のアミノ酸の一部、大部分又は全てが、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸と置換される抗体を指す。ヒト化形態の抗体の一実施形態において、CDRドメインの外側のアミノ酸の一部、大部分又は全てが、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置き換えられているが、1つ以上のCDR領域内の一部、大部分又は全てのアミノ酸は変化しない。アミノ酸の少数の付加、欠失、挿入、置換、又は改変は、抗体が特定の抗原に結合する能力を妨げない限り許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体の抗原特異性と同様の抗原特異性を保持する。
【0041】
「キメラ抗体」とは、可変領域がマウス抗体に由来し、かつ定常領域がヒト抗体に由来する抗体など、可変領域が1つの種に由来し、かつ定常領域が別の種に由来する抗体を指す。
【0042】
「抗抗原」抗体は、抗原に特異的に結合する抗体を指す。例えば、抗PD-1抗体は、PD-1に特異的に結合し、抗CTLA-4抗体は、CTLA-4に特異的に結合する。
【0043】
「遮断する」、「遮断すること」、「遮断」、及びそれらの変形は、「阻害する」、「阻害すること」、「阻害」及び、それらの変形と同じ意味を有する。「遮断」という用語は、部分的遮断及び完全な遮断の両方を包含することを意味する。
【0044】
「細胞媒介性免疫活性」は、例えば、少なくとも1つのTHIサイトカインの産生の増加などの細胞媒介性免疫応答の一部と考えられる生物活性を指す。
【0045】
「チェックポイント阻害剤」又は「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫系又は免疫応答を増強する任意の薬剤を含む。このような阻害剤としては、免疫チェックポイント受容体に結合し、かつそれを遮断若しくは阻害する小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片若しくはそれらの抗原結合断片、又は免疫チェックポイント受容体リガンドに結合し、それを遮断若しくは阻害する抗体が挙げられ得る。遮断又は阻害を標的とし得る例示的なチェックポイント分子としては、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、GAL9、LAG3、TIM3、VISTA、KIR、2B4(CD2分子ファミリーに属し、全てのNK、γδ、及びメモリCD8+(αβ)で発現される)、CD160(BY55とも称される)、CGEN-15049、CHK1及びCHK2キナーゼ、A2aR及び様々なB-7ファミリーリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。B7ファミリーリガンドとしては、B7-1、B7-2、B7-DC、B7-H1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6、及びB7-H7が挙げられるが、これらに限定されない。チェックポイント阻害剤としては、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、及びCGEN-15049のうちの1つ以上に結合し、その活性を遮断又は阻害する、抗体若しくはその抗原結合断片、他の結合タンパク質、生物学的治療剤又は小分子が挙げられる。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-Hl;MEDI4736)、MK-3475(PD-1遮断剤)、ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)、及びYervoy/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が挙げられる。チェックポイントタンパク質リガンドとしては、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CD28、CD86、及びTIM-3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
「免疫細胞」は、免疫応答が自然、後天的、液性、又は細胞媒介性であるかに関わらず、免疫系、すなわち、免疫応答の生成又は維持に直接的又は間接的に関与する細胞を指す。
【0047】
「推定」及びその変形は、細胞活性の任意の測定可能な増加を指す。例えば、免疫応答の誘導は、例えば、サイトカインの生成、免疫細胞集団の活性化、増殖、若しくは成熟、及び/又は増加した免疫機能の他の指標を含み得る。
【0048】
本明細書で使用される「対象」又は「患者」は、同義であり、ヒト成人、小児、又は乳児を指す。
【0049】
プログラムされた死-1(PD-1)は、活性化T細胞及びB細胞によって発現され、免疫抑制を媒介する、重要な免疫チェックポイント受容体である。PD-1は、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1、及びBTLAを含む、受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD-1についての2つの細胞表面糖タンパク質リガンドである、プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1、CD274、B7-H1)及びプログラム細胞死リガンド-2(PD-L2、CD273、B7-DC)が同定されている。PD-L1及びPD-L2は、PD-1に結合した際に、抗原提示細胞及び多くのヒト癌で発現されるT細胞活性化及びサイトカイン分泌をダウンレギュレートし、PD-1に結合した際に、T細胞活性化及びサイトカイン分泌をダウンレギュレートすることが示されている。本明細書で使用する場合、「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、及び種相同体、並びにhPD-1と少なくとも1つの共通するエピトープを有する類似体を含む。完全なhPD-1配列は、GenBankアクセッション番号U64863で見出すことができる。PD-1/PD-L1相互作用の阻害は、前臨床モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を媒介し(米国特許第8,008,449号及び同第7,943,743号)、癌を治療するためのPD-1/PD-L1相互作用の抗体阻害剤の使用は臨床試験に入っている(Brahmer et al,2010、Topalian et al,2012a、Topalian et al,2014、Hamid et al.,2013、Brahmer et al,2012、Flies et al,2011、Pardoll,2012、Hamid and Carvajal,2013)。
【0050】
PD-L1に対する抗体を使用したPD-1/PD-L1連結の遮断は、多くのシステムにおいてT細胞活性化を回復及び増強することが示されている。進行性癌効果を有する患者は、PD-L1に対するモノクローナル抗体を用いた治療から利益を受ける。腫瘍及び慢性感染症の前臨床動物モデルは、モノクローナル抗体によるPD-1/PD-L1経路の遮断が、免疫応答を増強し、腫瘍拒絶又は感染症の制御することができることが示している。PD-1/PD-L1の遮断による抗腫瘍免疫療法は、多くの組織学的に異なる腫瘍に対する治療免疫応答を増強し得る。
【0051】
米国において現在上市されているPD-1/PD-L1阻害剤の例としては、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck)、ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Roche)、アベルマブ(Bavencio(登録商標)、EMD及びPfizer)、及びデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標)、AstraZeneca)が挙げられる。これらのPD-1/PD-L1阻害剤のいずれも、本発明のSK阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0052】
ニボルマブ(以前は5C4、BMS-936558、MDX-1 106、又はONO-4538と命名)は、PD-1リガンド(PD-L1及びPD-L2)との相互作用を選択的に防止し、それにより、抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害抗体である(米国特許第8,008,449号、Wang et al.,2014)。ニボルマブは、腎細胞癌(腎腺癌又は副腎腫)、黒色腫及び非小細胞肺癌(NSCLC)(Topalian et al,2012a、Topalian et al.,2014、Drake et al,2013、国際公開第2013/173223号)を含む、様々な進行した固体腫瘍での活性を示している。
【0053】
イピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、2011年にFDAにより認可された最初のチェックポイント抗体であり、米国特許第6,984,720号に開示されているように、B7リガンドへのCTLA-4の結合を遮断し、それにより、T細胞活性化を刺激し、進行した黒色腫(Hodi et al,2010)を有する患者の全生存期間(OS)を改善する、完全ヒトIgGlモノクローナル抗体である。イピリムマブは、4回の用量について3週間毎に静脈内に与えられる3mg/kgでの黒色腫の治療について認可されている。したがって、好ましい形態において、3mg/kgは、抗PD-1抗体と組み合わせて使用されるイピリムマブの最大投与量であるが、特定の形態において、イピリムマブなどの抗CTLA-4抗体は、ニボルマブと組み合わせた場合に、2週間毎又は3週間毎に約0.3~10mg/kg体重の範囲内で投与され得る。3週間毎に認可された3mg/kgより著しく少ない、例えば、3週間毎又は4週間毎に0.3mg/kg以下であるイピリムマブの投与量は、治療投与量以下とみなされる。3mg/kgのニボルマブ及び3mg/kgのイピリムマブとの組み合わせ用量は、黒色腫集団においてMTDを超えるが、1mg/kgのニボルマブ+3mg/kgのイピリムマブ又は3mg/kgのニボルマブ+1mg/kgのイピリムマブの組み合わせは、黒色腫患者において許容可能であることが見出されたことが示されている(Wolchok et al.,2013)。したがって、ニボルマブは、2週間毎に静脈内に与えられる最大10mg/kgまで許容されるが、好ましい形態において、抗PD-1抗体の用量は、イピリムマブと組み合わせた場合に3mg/kgを超えない。特定の形態において、リスク-利益及びPK-PD評価に基づき、使用される投与量は、1mg/kgのニボルマブ+3mg/kgのイピリムマブ、3mg/kgのニボルマブ+1mg/kgのイピリムマブ、又は3mg/kgのニボルマブ+3mg/kgのイピリムマブの組み合わせを含み、使用され、それぞれが2~4週間毎に1回、好ましくは3週間毎に1回の投与頻度で投与される。特定の他の形態において、ニボルマブは、2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は4週間毎に1回、0.1、0.3、1、2、3、又は5mg/kgの投与量で投与されるイピリムマブと組み合わせて、0.1、0.3、1、2、3、又は5mg/kgの投与量で投与される。
【0054】
本明細書で使用する場合、「PD-1抗体」という用語は、PD-1をアンタゴナイズすることによってリンパ球の活性及び/又は増殖をアンタゴナイズする抗体を指す。「活性をアンタゴナイズする」という用語は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上のリンパ球増殖活性の減少(又は低減)に関する。「アンタゴナイズする」という用語は、「阻害性」及び「阻害する」という用語と互換的に使用され得る。PD-1媒介活性は、本明細書に記載されるT細胞増殖アッセイを使用して定量的に決定することができる。
【0055】
「薬学的に許容される製剤」は、選択された投与経路によって治療有効量の本開示の化合物を対象に送達することができ、一般に、対象によって許容され、許容可能な毒性プロファイル(好ましくは投与された投与量において最小限の毒性から毒性ないであること)を有することができる。好適な薬学的に許容される製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(1990),Mack Publishing Co.に記載されており、当業者によって容易に選択することができる。
【0056】
「薬学的に許容される塩」は、化合物が化合物中の少なくとも1つの酸又は塩基基を無毒性の塩形態に変換することによって修飾される、化合物の誘導体を指す。「薬学的に許容される塩」の例は、Berge in Journal of Pharmaceutical Science(1977),66,pages 1-19に記載されており、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。酸付加塩としては、化合物中の塩基性部分(アミン基など)の鉱酸塩又は有機酸塩が挙げられる。好適な酸付加塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸などの無機酸から誘導されるものが挙げられる。モノカルボン酸及びジカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸)、ヒドロキシアルカン酸(例えば、クエン酸、酒石酸)、芳香族酸(例えば、安息香酸、キシナホ酸(xinofoic acid)、パモ酸)、脂肪族及び芳香族スルホン酸(例えば、パラ-トルエンスルホン酸)などの有機酸から誘導される、好適な酸付加塩。塩基付加塩としては、化合物中の酸性部分(カルボン酸基など)のアルカリ土類鉱塩及び有機アミン塩が挙げられる。好適な塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩などが挙げられる。追加の好適な塩基付加塩としては、コリン、エチレンジアミンなどの非毒性有機アミンが挙げられる。
【0057】
本発明で使用される場合、「好適な期間」という用語は、対象が本開示の方法を使用して癌の診断に対する治療を始めるときに開始し、治療を通して、対象が治療を停止するときまでの期間を指す。実施形態において、好適な期間は、1週間である。実施形態において、好適な期間は、1週間~2週間である。実施形態において、好適な期間は、2週間である。実施形態において、好適な期間は、2週間~3週間である。実施形態において、好適な期間は、3週間である。実施形態において、好適な期間は、3週間~4週間である。実施形態において、好適な期間は、4週間である。実施形態において、好適な期間は、4週間~5週間である。実施形態において、好適な期間は、5週間である。実施形態において、好適な期間は、5週間~6週間である。実施形態において、好適な期間は、6週間である。実施形態において、好適な期間は、6週間~7週間である。実施形態において、好適な期間は、7週間である。実施形態において、好適な期間は、7週間~8週間である。実施形態において、好適な期間は、8週間である。実施形態において、好適な期間は、少なくとも2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月である。実施形態において、好適な期間は、少なくとも1年である。
【0058】
本明細書で使用する場合、「相乗的」という用語とは、組み合わされた作用が別々に作用するそれぞれの合計よりも大きくなるような、本発明の2つ以上の薬剤の調整された又は相関する作用を指す。実施形態において、本発明の薬剤は、治療レジメンの一部として一緒に投与された場合、相乗的副作用を伴わずに治療相乗効果を提供する(例えば、限定するものではないが交差反応剤)。
【0059】
「治療有効量」又は「治療有効投与量」は、腫瘍の少なくとも1つの症状又は臨床的徴候を緩和させる量である。腫瘍の少なくとも1つの症状又は臨床的徴候の緩和としては、腫瘍のサイズの減少、腫瘍のサイズ若しくは成長の安定化、腫瘍の成長の速度の低下、腫瘍壊死の増加、崩壊などの腫瘍構造の変化、腫瘍形成の減少に関連する生化学的マーカーの変化、腫瘍の進行の減少、又は腫瘍の生存の減少が挙げられ得る。
【0060】
本発明で使用される場合、「癌を治療する」、「治療する」、及び「治療」は、癌の発達を予防若しくは低減すること、癌の症状を低減すること、確立した癌の成長を抑制若しくは阻害すること、既存の癌の転移及び/若しくは浸潤を予防すること、癌の後退を促進若しくは誘導すること、癌性細胞の増殖を阻害若しくは抑制すること、血管新生を低減すること、悪性若しくは癌性腫瘍細胞を死滅させること、又はアポトーシス癌細胞の量を増加させることを含むが、これらに限定されない。
【0061】
「治療を必要とする患者」は、本明細書で使用される場合、治療を必要とすると特定される患者を意味する。例えば、癌治療を必要とする患者は、癌を有すると特定されるか又は癌を発達させるリスクのある患者である。患者は、健康管理専門職によって及び/又は1種以上の診断アッセイを行うことによって治療を必要とすると診断され得る。例えば、癌治療を必要とする患者は、健康管理専門職によって癌と診断されたか又は癌のリスクがあると診断された患者であり得る。患者が癌を有するか又は癌を発達させるリスクがあるかを評価するための診断アッセイは、当該技術分野において既知である。
【0062】
本発明の方法及び投与量に関する「フラット用量」という用語の使用は、患者の体重又は身体表面積(BSA)を考慮することなく患者に投与される用量を意味する。したがって、フラット用量は、mg/kg用量として提供されるのではなく、薬剤(例えば、抗PD-1抗体)の絶対量として提供される。例えば、60kgのヒト及び100kgのヒトは、同じ用量の抗体(例えば240mgの抗PD1抗体)を受容するであろう。
【0063】
本明細書で言及される「体重ベースの用量」という用語は、患者に投与される投与量が患者の体重に基づいて計算されることを意味する。例えば、体重60kgの患者が3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とする場合、投与のための抗PD-1抗体の適切な量(すなわち、180mg)を計算及び使用することができる。
【0064】
腫瘍細胞を含む細胞集団の少なくとも1つの細胞媒介性免疫応答の増加は、腫瘍微小環境の免疫学的プロファイルの改善に関連する少なくとも1つの生化学的マーカー、組織学的マーカー、又は免疫学的マーカーの増加を指す。マーカー量の増加が腫瘍微小環境の免疫学的プロファイルの改善に関連するマーカーとしては、インターフェロンα、インターフェロンγ、インターフェロン誘導性タンパク質、TNF-α、CCL2、CCL3、CCL4、CXCL2などのケモカイン、活性化T細胞、活性化B細胞、活性化NK-細胞、腫瘍特異的T細胞、活性化腫瘍関連マクロファージ、CCR6などのケモカイン受容体、又は腫瘍関連リンパ球凝集体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
腫瘍微小環境に関連するマーカーは、例えば、腫瘍、局所腫瘍領域、又は腫瘍流入領域リンパ節由来の生検(例えば、針生検)の分析によって決定することができる。マーカーの分析は、組織学(H&E染色)、フローサイトメトリー、遺伝子発現アッセイ(定量PCR)、免疫化学技術、並びに当業者に周知の他の技術などの標準的な技術を使用して行うことができる。
【0066】
本明細書で使用する場合、「インビトロ」という用語は、人工の環境において、例えば、限定するものではないが、試験管又は細胞培養システムにおいて行われる手順を指す。当業者は、例えば、単離されたSK酵素がインビトロ環境においてモジュレータと接触し得ることを理解するであろう。代替的に、単離された細胞を、インビトロ環境においてモジュレータと接触させ得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、「インビボ」という用語は、限定するものではないが、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ又は霊長類などの生物内で行われる手順を指す。
【0068】
本発明において有用な活性成分又は薬剤は、本明細書に記載されるものを、それらの薬学的に許容される形態のうちのいずれかで含み、その異性体、塩、溶媒和物、及び多形、並びにラセミ混合物及びプロドラッグが挙げられる。
【0069】
本開示のスフィンゴシンキナーゼの阻害剤
スフィンゴシンキナーゼ(SK)は、アポトーシス促進性セラミドを減らして分裂促進性第2メッセンジャースフィンゴシン-1-リン酸(SIP)の形成を触媒する癌原性スフィンゴ脂質代謝酵素である。したがって、SIPの遮断が癌細胞における増殖の阻害及びアポトーシスの誘導をもたらすため、SKは、癌療法の魅力的な標的である。本開示は、SKを阻害するアリールアダマンタン化合物を提供する。実施形態において、SK阻害剤は、スフィンゴシンキナーゼ-1(SKI)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK阻害剤は、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK阻害剤は、スフィンゴシンキナーゼの二重阻害剤である(スフィンゴシンキナーゼ-1及びスフィンゴシンキナーゼ-2の両方を阻害する。
【0070】
SKの阻害剤である本発明のアリールアダマンタン化合物の例は、一般に、以下に示す式1:
【0071】
【化1】
及びその薬学的に許容される塩によって表され、式中、
Lは、結合又は-C(R
3,R
4)-であり、
Xは、-C(R
3,R
4)N(R
5)-、-C(O)N(R
4)-、-N(R
4)C(O)-、-C(R
4,R
5)-、-N(R
4)-、-O-、-S-、-C(O)-、-S(O)
2-、-S(O)
2N(R
4)-又は-N(R
4)S(O)
2-であり、
R
1は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル又はモノ若しくはジアルキルチオカルバモイルであり、
R
2は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、COOH、OH、SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、モノ若しくはジアルキルチオカルバモイル、アルキル-S-アルキル、-ヘテロアリール-アリール、-アルキル-ヘテロアリール-アリール、-C(O)-NH-アリール、-アルケニル-ヘテロアリール、-C(O)-ヘテロアリール又は-アルケニル-ヘテロアリール-アリールであり、
R
3は、Hアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、オキソ(=O)、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、又はモノ若しくはジアルキルチオカルバモイルであり、上記R
1、R
2、及びR
3基の各々のアルキル及び環部分は、独立して(C
1~C
6)アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、-OC(O)(C
1~C
6アルキル)、-C(O)O(C
1~C
6アルキル)、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR’C(O)R”、-CF
3、-OCF
3、-OH、C
1~C
6アルコキシ、ヒドロキシアルキル、-CN、-CO
2H、-SH、-S-アルキル、-SOR’R”、-SO
2R’、-NO
2又はNR’R”である、最大5つの基で任意選択で置換され、式中、R’及びR”は独立して、H又は(C
1~C
6)アルキルであり、置換基の各アルキル部分は、ハロゲン、CN、OH及びNH
2から独立して選択される1つ、2つ又は3つの基で更に任意選択で置換され、
R
3及びR
4が同じ炭素上にあり、かつR
3がオキソである場合にはR
4が不在であることを条件として、R
4及びR
5は、独立して、H又はアルキルである。
【0072】
式1のアリールアダマンタン化合物は、式I-1の化合物、
【0073】
【化2】
及びその薬学的に許容される塩を含み、式中、
R
1は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、
アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアムルノ(dialkylamlno)、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアムルノアルキル、チオカルバモイル、又はモノ若しくはジアルキルチオカルバモイルであり、
R
2は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアムルノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアムルノアルキル、チオカルバモイル、モノ若しくはジアルキルチオカルバモイル、アルキル-S-アルキル、-ヘテロアリール-アリール、-アルキル-ヘテロアリール-アリール、-NH-アリール、-アルケニル-ヘテロアリール、-ヘテロアリール、-NH-アルキル、-NH-シクロアルキル、又は-アルケニル-ヘテロアリール-アリールであり、
上記R
1及びR
2基の各々のアルキル及び環部分は、独立して(C
1~C
6)アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、-OC(O)(C
1~C
6アルキル)、-C(O)O(C
1~C
6アルキル)、-CONR’R”、OC(O)NR’R’、-NR’C(O)R”、-CF
3、-OCF
3、-OH、C
1~C
6アルコキシ、ヒドロキシアルキル、-CN、-CO
2H、-SH、-S-アルキル、-SOR’R”、-SO
2R’、-NO
2、又はNR’R”である、最大5つの基で任意選択で置換され、式中、R’及びR”は、独立して、H又は(C
1~C
6)アルキルであり、置換基の各アルキル部分は、ハロゲン、CN、OH及びNH
2から独立して選択される1つ、2つ又は3つの基で更に任意選択で置換される。
【0074】
式Iのアリールアダマンタン化合物は、式IIの化合物
【0075】
【化3】
及びその薬学的に許容される塩を含み、式中、
Yは、-C(R
4,R
5)-、-N(R
4)-、-O-又は-C(O)-であり、
R
1は、H、アルキル、シクロアルキル、エイクロアルキルアルキル(eycloalkylalkyl)、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、
アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2.(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、又はモノ若しくはジアルキルチオカルバモイルであり、
R
2は、H、アルキル、シクロアルキル、エシクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2.(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノエアルバモイル(dialkylaminoearbamoyl)、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、モノ若しくはジアルキルチオカルバモイル、アルキル-S-アルキル、-ヘテロアリール-アリール、-アルキル-ヘテロアリール-アリール、-C(O)-NH-アリール、-アルケニル-ヘテロアリール、-C(O)-ヘテロアリール、又は-アルケニル-ヘテロアリール-アリールであり、
R
3は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、オキソ(=O)、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO
2、-NH
2、-CO
2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノエアルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、又はモノ若しくはジアルキルチオカルバモイルであり、
上記R
1、R
2及びR
3基の各々のアルキル及び環部分は、独立して(C
1~C
6)アルキル、ハロゲン、ハロアルキル-OC(O)(C
1~C
6アルキル)、-C(O)O(C
1~C
6アルキル)、-CONR’R”、OC(O)NR’R”、-NR’C(O)R”、-CF
3、-OCF
3、-OH、C
1~C
6アルコキシ、ヒドロキシアルキル、-CN、-CO
2H、-SH、-S-アルキル、-SOR’R”、-SO
2R’、-NO
2又はNR’R”である、最大5つの基で任意選択で置換され、式中、R’及びR”は、独立して、H又は(C
1~C
6)アルキルであり、置換基の各アルキル部分は、ハロゲン、CN、OH及びNH
2から独立して選択される1つ、2つ又は3つの基で更に任意選択で置換され、かつ
R
4及びR
5は独立して、H又はアルキルである。
【0076】
式IIの化合物は、式中、
Yは、-C(R4,R5)-又は-N(R4)-であり、
R1は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO2、-NH2、-CO2(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミエアルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、又はモノ若しくはジアルキルチオカルバモイルであり、
R2は、H、アルキル、シクロアルキル、エシクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル-ヘテロシクロアルキル、アシル、アロイル、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイル、-COOH、-OH、-SH、-S-アルキル、-CN、-NO2、-NH2、-CO2.(アルキル)、-OC(O)アルキル、カルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノカルバモイル、モノ若しくはジアルキルカルバモイル、モノ若しくはジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、チオカルバモイル、モノ若しくはジアルキルチオカルバモイル、アルキル-S-アルキル、-ヘテロアリール-アリール、-アルキル-ヘテロアリール-アリール、-C(O)-NH-アリール、-アルケニル-ヘテロアリール、-C(O)-ヘテロアリール、又は-アルケニル-ヘテロアリール-アリールであり、
上記R1及びR2基の各々のアルキル及び環部分は、独立して、(C1~C6)アルキル、ハロゲン、ハロアルキル-OC(O)(C1~C6アルキル)、C(O)O(C1~C6アルキル)、CONR4R5、-OC(O)NR4R5-NR4C(O)R5、-CF3、-OCF3、-OH、C1~C6アルコキシ、ヒドロキシアルキル、-CN、-CO2H、-SH、-S-アルキル、-SOR4R5、-SO2R4R5、-NO2、又はNR4R5である、最大5つの基で任意選択で置換され、置換基の各アルキル部分は、ハロゲン、CN、OH、NH2から独立して選択される1、2、又は3つの基で更に任意選択で置換され、
R3は、H、アルキル、又はオキソ(=O)であり、かつ
R4及びR5は独立して、H又は(C1~C6)アルキルである、化合物を含む。
【0077】
本発明の特に好ましいアリールアダマンタンSK阻害剤化合物は、以下に例示され、ABC294640[3-(4-クロロフェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド]と称される。
【0078】
【0079】
本開示の特定の方法又は治療的組み合わせに組み込まれるSK阻害剤の正確な量は、例えば、対象の身体的及び臨床的状態、投与方法、製剤の含有量、意図される投与レジメン又は配列など、当該技術分野で既知の要因に従って変化し得る。したがって、全ての可能な用途について治療的に有効なSK阻害剤の量を構成する量を具体的に記載することは実用的ではない。しかしながら、当業者は、そのような要因を考慮することにより、適切な量を容易に決定することができる。
【0080】
抗PD-1抗体
高親和性でPD-1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第8,008,449号に開示されている。他の抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号及び同第8,354,509号、並びに国際公開第2012/145493号に記載されている。米国特許第8,008,449号に開示されている抗PD-1ヒトモノクローナル抗体の各々は、以下の特性のうちの1つを示すことが実証されている:(a)Biacoreバイオセンサシステムを使用して表面プラズモン共鳴によって決定した際に、1×10”7M以下のKDでヒトPD-1に結合すること、(b)ヒトCD28、CTLA-4又はICOSに実質的に結合しないこと、(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させること、(d)MLRアッセイにおいてインターフェロンγ産生を増加させること、(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させること、(f)ヒトPD-1及びカニクイザルPD-1に結合すること、(g)PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合を阻害すること、(h)抗原特異的メモリ応答を刺激すること、(i)抗体応答を刺激すること、並びに(j)インビボで腫瘍細胞成長を阻害すること。本発明で使用可能な抗PD-1抗体としては、ヒトPD-1に特異的に結合し、かつ前述の特性のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つを示すモノクローナル抗体が挙げられる。好ましい抗PD-1抗体は、ニボルマブである。別の好ましい抗PD-1抗体は、ペンドロリズマブである。
【0081】
本開示方法で使用可能な抗PD-1抗体としては、ヒトPD-1に特異的に結合し、かつヒトPD-1と結合についてニボルマブと交差競合する単離された抗体も挙げられる(例えば、米国特許第8,008,449号;国際公開第2013/173223号を参照のこと)。抗原との結合について交差競合する抗体の能力は、これらの抗体が抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への他の交差競合抗体の結合を立体的に阻害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD-1の同じエピトープ領域に結合することにより、ニボルマブのものと非常に類似した機能特性を有することが予想される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイ、又はフローサイトメトリーなどの標準的なPD-1結合アッセイにおいて(例えば、国際公開第2013/173223号を参照のこと)、ニボルマブと交差競合する能力に基づいて容易に同定することができる。
【0082】
特定の形態において、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合するか、又はニボルマブと同じヒトPD-1のエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、好ましくはキメラ抗体、又はより好ましくはヒト化抗体若しくはヒト抗体である。このようなキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒトモノクローナル抗体は、当該技術分野で周知の方法によって調製及び単離することができる。
【0083】
本開示の発明の方法において使用可能な抗PD-1抗体はまた、上記抗体の抗原結合部分を含む。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片によって発揮することができることが十分に実証されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)L、H、CL及びCmドメインからなる一価の断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片、(iii)V#及びCドメインからなるFd断片、並びに(iv)抗体の単一アームのVi及びV#ドメインからなるFv断片。
【0084】
本発明の抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に結合して、CTLA-4とヒトB7受容体との相互作用を妨げる。CTLA-4とB7との相互作用は、CTLA-4受容体を有するT細胞の不活性化をもたらすシグナルを変換するため、相互作用の妨害により、そのようなT細胞の活性化が有効に誘導、増強又は延長され、それにより、免疫応答が誘導、増強又は延長される。
【0085】
高い親和性でCTLA-4に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第6,984,720号及び同第7,605,238号に開示されている。他の抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第5,977,318号、同第6,051,227号、同第6,682,736号、及び同第7,034,121号に記載されている。米国特許第6,984,720号及び同第7,605,238号に開示される抗PD-1ヒトモノクローナル抗体は、以下の特性のうちの1つ以上を示すことが実証されている:(a)Biacore分析によって決定した際に、少なくとも約107M’1、若しくは約109M’1、若しくは約1010M”1~1011M’1又はそれ以上の平衡会合定数(Ka)によって反映される結合親和性で、ヒトCTLA-4に特異的に結合すること、(b)少なくとも約103、約104又は約105m’1s’1の動的会合定数(ka)、(c)少なくとも約103、約104又は約105m”1s”1の動的解離定数(k^)、並びに(d)B7-1(CD80)及びB7-2(CD86)へのCTLA-4の結合を阻害すること。本発明で使用可能な抗CTLA-4抗体としては、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、かつ前述の特徴のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも3つを呈するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0086】
本開示方法で使用可能な抗CTLA-4抗体としては、ヒトPD-1に特異的に結合し、かつヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブ若しくはトレメリムマブと交差競合するか、又はイピリムマブ若しくはトレメリムマブと同じヒトCTLA-4のエピトープ領域に結合する、単離された抗体も挙げられる。特定の好ましい形態において、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブ若しくはトレメリムマブと交差競合するか、又はイピリムマブ若しくはトレメリムマブと同じヒトPD-1のエピトープ領域と結合する抗体は、ヒトIgGlアイソタイプの重鎖を含む抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、好ましくはキメラ抗体、又はより好ましくはヒト化抗体若しくはヒト抗体である。使用可能な抗CTLA-4抗体としては、Fab、F(ab’)2、Fd又はFv断片などの上記抗体の抗原結合部分も挙げられる。
【0087】
特定の一実施形態において、本発明は、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の活性を阻害する特定のクラスのチェックポイント阻害剤薬の使用を含む。本発明の方法での使用に好適な抗CTLA4アンタゴニスト剤としては、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳動物抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン、抗CTLA4ドメイン抗体、単鎖抗CTLA4断片、重鎖抗CTLA4断片、軽鎖抗CTLA4断片、共刺激経路をアンタゴナイズするCTLA4阻害剤、国際公開第2001/014424号に開示されている抗体、国際公開第2004/035607号に開示されている抗体、米国公開第2005/0201994号に開示されている抗体、及び欧州特許第1212422(B1)号に開示されている抗体が挙げられるが、これらに限定されない。追加のCTLA-4抗体は、米国特許第5,811,097号、同第5,855,887号、同第6,051,227号、及び同第6,984,720号、並びに国際公開第01/14424号及び同第00/37504号、並びに米国公開第2002/0039581号及び同第2002/086014号に記載されている。本発明の方法で使用することができる他の抗CTLA-4抗体としては、例えば、国際公開第98/42752号、米国特許第6,682,736号及び同第6,207,156号、Hurwitz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(17):10067-10071(1998)、Camacho et al.,J.Clin.Oncology,22(145):Abstract No.2505(2004)(抗体CP-675206)、Mokyr et al.,Cancer Res.,58:5301-5304(1998)、並びに米国特許第5,977,318号、同第6,682,736号、同第7,109,003号、及び同第7,132,281号に記載されるものが挙げられる。
【0088】
追加の抗CTLA4アンタゴニストとしては、以下が挙げられるが、限定するものではない:一般的に活性化されることからCD28抗原がその同族リガンドに結合する能力を妨げることができる任意の阻害剤であって、CTLA4のその同族リガンドに結合する能力を阻害するため、共刺激経路を介してT細胞応答を増強するため、B7のCD28及び/又はCTLA4に結合する能力を妨げるため、B7の共刺激経路を活性化する能力を妨げるため、CD80のCD28及び/又はCTLA4に結合する能力を妨げるため、CD80の共刺激経路を活性化する能力を妨げるため、CD86のCD28及び/又はCTLA4に結合する能力を妨げるため、CD86の共刺激経路を活性化する能力を妨げるため、かつ共刺激経路を妨げるための、阻害剤。これは、共刺激経路の他のメンバーの中でもとりわけ、CD28、CD80、CD86、CTLA4の小分子阻害剤、共刺激経路の他のメンバーの中でもとりわけ、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対する抗体、共刺激経路の他のメンバーの中でもとりわけ、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアンチセンス分子、共刺激経路の他のメンバーの中でもとりわけ、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアドネクチン、共刺激経路の他のメンバーの中でもとりわけ、他の抗CTLA4アンタゴニスト剤の中でもとりわけ、CD28、CD80、CD86、CTLA4のRNAi阻害剤(一本鎖及び二本鎖の両方)を必要に応じて含む。
【0089】
本開示のいくつかの形態において、免疫チェックポイント阻害剤化合物は、免疫チェックポイント受容体と免疫チェックポイント受容体の対応するリガンドとの間のシグナル伝達相互作用を阻害する。免疫チェックポイント阻害剤化合物は、免疫チェックポイント受容体の阻害による(アタゴニズム)か、又は免疫チェックポイント受容体のリガンド(リガンドのいくつかの例としては、PD-L1及びPD-L2が挙げられる)の阻害により、免疫チェックポイント経路の活性化を遮断することによって作用することができる(受容体のいくつかの例としては、CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM-3、BTLA、及びKIRが挙げられる)。このような実施形態において、免疫チェックポイント阻害化合物の効果は、腫瘍微小環境における免疫系抗腫瘍応答の特定の態様のダウンレギュレーションを低減又は排除することである。
【0090】
免疫チェックポイント受容体細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)は、T細胞上で発現され、T細胞活性化のレベルを低減するシグナル伝達経路に関与する。CTLA-4は、CD80及びCD86の競合的結合及び分離により、T細胞活性化をダウンレギュレートすることができると考えられる。加えて、CTLA-4は、TReg細胞の免疫抑制活性の増強に関与することが示されている。
【0091】
本開示のいくつかの形態において、免疫チェックポイント阻害剤化合物は、小有機分子(1000ダルトン未満の分子量)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、又は抗体誘導体である。いくつかの形態において、免疫チェックポイント阻害剤化合物は、抗体である。いくつかの形態において、抗体は、モノクローナル抗体、具体的には、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。
【0092】
免疫チェックポイント抗体の調製及び我々のための方法は、以下の例示的な刊行物に記載されている。抗CTLA-4抗体の調製及び治療用途は、米国特許第7,229,628号(Allison)、米国特許第7,311,910号(Linsley)及び米国特許第8,017,144号(Korman)に記載されている。抗PD-1抗体の調製及び治療用途は、米国特許第8,008,449号(Korman)及び米国特許第8,552,154号(Freeman)に記載されている。抗PD-L1抗体の調製及び治療用途は、米国特許第7,943,743号(Korman)に記載されている。抗TIM-3抗体の調製及び治療用途は、米国特許第8,101,176号(Kuchroo)及び米国特許第8,552,156号(Tagayanagi)に記載されている。抗LAG-3抗体の調製及び治療用途は、米国特許出願第2011/0150892号(Thudium)及び国際公開第2014/008218号(Lonberg)に記載されている。抗KIR抗体の調製及び治療用途は、米国特許第8,119,775号(Moretta)に記載されている。BTLA調節阻害経路を遮断する抗体(抗BTLA抗体)の調製は、米国特許第8,563,694号(Mataraza)に記載されている。
【0093】
本開示のいくつかの形態において、免疫チェックポイント阻害剤化合物は、CTLA-4受容体阻害剤、PD-1受容体阻害剤、LAG-3受容体阻害剤、TIM-3受容体阻害剤、BTLA受容体阻害剤、又はKIR受容体阻害剤である。いくつかの形態において、免疫チェックポイント阻害化合物は、PD-L1の阻害剤又はPD-L2の阻害剤である。
【0094】
本明細書に開示される組成物、剤形、及び方法で使用するために、チェックポイント阻害剤の任意の好適な日用量が企図される。チェックポイント阻害剤の日用量は、複数の因子に依存し、その決定は、当業者の技能の範囲内である。例えば、チェックポイント阻害剤の日用量は、チェックポイント阻害剤の強度に依存する。弱い免疫チェックポイント阻害剤は、中等度の免疫チェックポイント阻害剤よりも高い日用量を必要とし、中等度の免疫チェックポイント阻害剤は、強力な免疫チェックポイント阻害剤よりも高い日用量を必要とするであろう。例えば、Merckのペムブロリズマブ(Keytruda)は、3週間毎に30分間にわたる2mg/kgの静脈内(iv)(50mgの凍結乾燥力)について承認されている。ニボルマブ(OPDVO)は、2週間毎に60分間にわたって3mg/kgで静脈内投与される(注射剤形:単回使用バイアル中40mg/4mL及び100mg/10/ml)。イピリムマブ(YERVOY)は、合計4回の用量について、3週間毎に90分間にわたって3mg/kgで静脈内投与される(剤形:50mg/10ml、200mg/40ml)。
【0095】
経口投与のための固体形態は、薬学的に許容される結合剤、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、香味剤、コーティング剤、保存剤、潤滑剤、及び/又は遅延剤を含有し得る。好適な結合剤としては、アカシアガム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。好適な甘味剤としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、又はサッカリンが挙げられる。好適な崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、又はアガーが挙げられる。好適な希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又はリン酸二カルシウムが挙げられる。好適な香味剤としては、ペパーミント油、ウィンターグリーン、チェリー、オレンジ、又はラズベリー香味の油が挙げられる。好適なコーティング剤としては、アクリル酸及び/若しくはメタクリル酸のポリマー若しくはコポリマー、並びに/又はそれらのエステル、蝋、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック又はグルテンが挙げられる。好適な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、又は二硫酸ナトリウムが挙げられる。好適な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又はタルクが挙げられる。好適な遅延剤としては、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートが挙げられる。
【0096】
本発明の組成物及び方法は、対象に投与した際にフィロウイルス媒介疾患を治療する化合物(複数可)濃度をもたらす化合物(複数可)の製剤(複数可)を含むことができる。化合物(複数可)は、任意の好適な担体物質中に任意の好適な量で含有されてもよく、一般に、組成物の総重量の1~95重量%の量で存在する。組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内又は筋肉内)、直腸、皮膚科、皮膚(cutaneous)、経鼻、膣内、吸入、皮膚(パッチ)、眼内、髄腔内又は頭蓋内投与経路に好適な剤形で提供されてもよい。したがって、組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ヒドロゲル剤を含むゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤、水薬、浸透圧送達デバイス、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、スプレー又はエアロゾルの形態であってもよい。薬学的組成物は、従来の薬学的実施に従って製剤化されてもよい。
【0097】
本発明によるか、又は本発明の方法で使用される薬学的組成物は、投与直後又は投与後の任意の所定の時間若しくは期間で活性化合物を放出するように配合されてもよい。後者の種類の組成物は、一般に、制御放出製剤として知られており、これには、(i)実質的に一定の濃度の本発明の薬剤(複数可)を長期間にわたって生成する製剤、(ii)所定の遅延時間後に、実質的に一定濃度の本発明の薬剤(複数可)を長期間にわたって体内に生成する製剤、(iii)薬剤(複数可)の血漿レベルの変動(鋸歯状の動的パターン)に関連する望ましくない副作用を同時に最小限にして、体内の薬剤(複数可)の比較的一定の有効レベルを維持することにより、所定の期間中に薬剤(複数可)作用を持続する製剤、(iv)薬剤(複数可)の作用、例えば、疾患組織若しくは器官に隣接する又は疾患組織若しくは器官における制御放出組成物の空間的配置を局所化する製剤、(v)投与の利便性、例えば、1週間毎に1回又は2週間毎に1回の組成物の投与を達成する製剤、及び(vi)担体又は化学誘導体を使用して薬剤(複数可)の作用を標的化し、特定の標的細胞種に組み合わせを送達する製剤以下が挙げられる。
【0098】
放出の速度が問題としている化合物の代謝速度を上回る制御放出を得るために、数多くの戦略のうちのいずれかを追求することができる。一例では、制御放出は、例えば、様々な種類の制御放出組成物及びコーティングを含む、様々な製剤パラメータ及び成分の適切な選択によって得られる。したがって、化合物(複数可)は、投与時に制御された方法で化合物(複数可)を放出する薬学的組成物中に適切な賦形剤とともに製剤化される。例としては、単一又は複数単位の錠剤又はカプセル組成物、油剤、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル剤、分子複合体、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ剤、及びリポソームが挙げられる。
【0099】
化合物の投与は、組み合わせの全ての化合物について単一の製剤及び送達方法に限定されることは意図されていない。組み合わせは、例えば、上記の製剤及び方法のいずれかを使用して、組み合わせの各化合物について別々の製剤及び/又は送達方法を使用して投与することができる。一例では、第1の薬剤は経口送達され、第2の薬剤は静脈内に送達される。
【0100】
化合物又は化合物の組み合わせの投与量は、投与方法、治療される疾患の種類、感染の重症度、感染の初期又は後期段階で最初に投与されるかどうか、並びに治療される患者の年齢、体重、及び健康を含む、いくつかの因子に依存する。本明細書で同定される薬剤の相乗的な対を含む組み合わせについて、抗ウイルス剤の推奨投与量は、Physician’s Desk Reference,69th Edition(2015)に示される推奨用量以下であり得る。
【0101】
上記のように、問題の化合物(複数可)は、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤若しくはシロップ剤の形態で、又は坐剤の形態で経口投与されてもよい。化合物の非経口投与は、例えば、生理食塩水溶液の形態で、又はリポソームに組み込まれた化合物(複数可)とともに好適に行われる。化合物自体が溶解するのに十分に可溶性でない場合、エタノールなどの可溶化剤を適用することができる。化合物の正しい投与量は、ウイルス複製アッセイにおける化合物の有効性、及びヒトにおける毒性を調べることによって決定することができる。
【0102】
本発明の薬剤はまた、ウイルス疾患に関与する生物学的経路に関する作用機構情報を解明するのに有用なツールである。このような情報は、ウイルス疾患を治療、予防又は軽減するための新しい組み合わせ又は単一の薬剤の開発をもたらすことができる。生物学的経路を決定するための当該技術分野で既知の方法は、ウイルスに感染した細胞(例えば、初代マクロファージ細胞)を本発明の化合物と接触させることによって影響される経路又は経路ネットワークを決定するために使用することができる。そのような方法は、未処理、陽性若しくは陰性対照化合物、並びに/又は新しい単一の薬剤及び組み合わせと比較して、本発明の化合物と接触した後に発現又は再加圧される細胞成分を分析すること、又は酵素活性、栄養素取り込み、及び増殖などの細胞若しくはウイルスのいくつかの他の活性を分析することを含むことができる。分析される細胞成分は、遺伝子転写物及びタンパク質発現を含むことができる。好適な方法としては、標準的な生化学的技術、本発明の化合物を放射標識すること(例えば、14C又は3H標識)、例えば、2Dゲルを使用してタンパク質に結合する化合物を観察する遺伝子発現プロファイリングを含むことができる。同定されると、このような化合物は、ツールを更に検証するか又はウイルス疾患を治療するための新しい薬剤若しくは戦略を開発するために、インビボモデル(例えば、ノックアウト又はトランスジェニックマウス)において使用することができる。
【0103】
キット及びパッケージ
「キット」及び「薬学的キット」という用語は、1つ以上の好適な容器中に1つ以上の医薬組成物及びそれらの使用のための説明書を含む、市販のキット又はパッケージを指す。一実施形態において、ABC294640及びその投与のための説明書を含むキットが提供される。一実施形態において、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、1つ若しくは2つ、又は1つ~3つ)の追加の治療剤と組み合わせたABC294640、及びそれらの投与のための説明を含むキットが提供される。
【0104】
実施形態において、本開示のチェックポイント阻害剤は、単一パッケージング中にパッケージ化された投与ユニットへと製剤化される。単一パッケージングには、ボトル、冷却抵抗性ボトル、アンプル及びチューブが包含されるが、これらに限定されない。実施形態において、本開示のチェックポイント阻害剤及び任意選択的に追加の治療剤は、投与ユニットへと製剤化され、単一投与ユニット毎に、単一パッケージング中に個別にパッケージ化される。このような個別にパッケージングされた単位は、液体形態、固体形態、散剤形態、粒剤形態、発泡性散剤又は錠剤、硬質又は軟質カプセル剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、坐剤、錠剤、トローチ剤、トローチ剤、溶液剤、バッカルパッチ剤、薄膜剤、経口用ゲル剤、チュアブル錠、チューインガム、及び使い捨てシリンジが挙げられるが、これらに限定されない任意の形態で薬学的組成物を含有してもよい。このような個別にパッケージ化されたユニットは、紙、厚紙、板紙、金属箔、及びプラスチック箔、例えばブリスターパックのうちの1つ以上で作製されたパッケージ中で組み合わされてもよい。1つ以上の投与ユニットは、1日に1回又は数回投与され得る。1つ以上の投与ユニットは、1日3回投与され得る。1つ以上の投与ユニットは、1日2回投与され得る。1つ以上の投与ユニットは、第1の日に投与され得、1つ以上の投与ユニットは、翌日以後に投与され得る。
【実施例】
【0105】
本発明は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を表すことを意図するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0106】
実施例1
3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド、ABC294640の合成方法
一例として、ABC294640の合成プロセスをスキーム1に記載する。塩化アルミニウム(AlCl3)の存在下でアダマンタン-1-カルボン酸(1)を直接臭素化して、1の3-ブロミド誘導体(2)を得て、これをフリーデル・クラフツ反応によって(3)に変換した。3を塩化チオニル(SOCl2)と反応させて、3-R置換-1-アダマンタンカルボニルクロリド4を得た。THF中、4を置換アミン、例えば、4-アミノメチルピリジン(5)と反応させることにより、(6は、ABC294640としても表される)及び関連するアミド化合物を得た。
【0107】
【0108】
より具体的には、アダマンタン-1-カルボン酸(1)(45g、0.25mol)を、0℃で、AlCh(45g、0.34mol)及びBn(450g)の混合物に添加し、0~10℃で48時間撹拌し、約20℃で5時間保持し、500gの破砕氷に注ぎ、300mlのCHCl3で希釈し、固体Na2S2O5で脱色させた。水相をEt20(50mlx2)で抽出した。組み合わせた有機溶液をH2Oで洗浄し、10%NaOHで抽出した。アルカリ抽出物を2N H2SO4で酸性化し、49g(収率=75.7%)の3-ブロモ-アダマンタン-1-カルボン酸(2)を得た。
【0109】
30分間にわたって、-10℃の50mlの乾燥クロロベンゼン中の3-ブロモ-アダマンタン-1-カルボン酸(2)(16.0g、61.7mmol)を、100mlの乾燥クロロベンゼン及び9.3gの70mmol AlCl3に添加した。次いで、混合物を室温に1時間温め、次いで、90℃に10時間加熱した。次いで、混合物を200gの破砕氷に注ぎ、濾過して、14.2g(収率=79.3%)の3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(3)を得た。
【0110】
3を等モル量の1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と反応させて、中間体3-R置換-1-アダマンタンカルボニルイミダゾール(4)を得た。4を置換アミンと反応させることにより、対応するアダマンチアミドを得た。
【0111】
例えば、トルエン中で3を4-アミノメチルピリジン(5)と反応させることにより、{3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド}(6は、ABC294640としても表される)を生成し、収率92.6%であり、融点128~130℃であった。1HNMR(300MHz,CDCl3)δ1.72-2.25(m,12H,Admant-CH),4.44-4.46(d,J=6Hz,2H,CH2-Py),6.18(m,1H,HN),7.13-7.15(d,J=6Hz,2H,H-Py),7.15-7.30(m,4H,H-Ph),8.52-8.54(d,J=6 Hz,2H,H-Py);13C NMR(300 MHz,CDCl3)δ28.98,35.73,36.71,38.77,42.18,42.37,44.88,122.38,125.30,126.57,128.56,129.26,148.39,150.20 177.76;MS m/z(相対強度)381.50(MH+,100),383.41(90),384.35(80)。
【0112】
実施例2
ABC294640の第2の合成方法ABC294640及び関連するアダマンチアミドの第2の合成方法をスキーム2に記載する。3-フェニル置換中間体(3)を上記のように調製した。3を1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と反応させることにより、3-R置換-1-アダマンタンカルボニルイミダゾール中間体(4)を得た。トルエン中で、4を置換アミン、例えば、4-アミノメチルピリジン5と反応させることにより、6{3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド}を得た。
【0113】
【0114】
様々な芳香族化合物を2と縮合させることにより、置換アリールアダマンタンの様々なセットを効率的に合成することができ、様々なそのような化合物が市販されている。追加的に、様々なカップリング試薬及び一級アミン含有化合物を使用して、3のアミド化を効率的に完了することができる。以下の実施例は、このプロセスの生成物のいくつかの代表例を提供する。しかしながら、これらの方法は、本発明の対象と考えられる多くの構造的に関連するアダマンチアミドを生成するように適合させることができる。これらの方法の十分な開示のために、米国特許第7,338,961号は、参照することによりその教示について本明細書に組み込まれる。
【0115】
実施例3
ABC294640は腫瘍細胞の表面でのカルレティキュリンの発現を増加させる腫瘍細胞が免疫原性細胞死(ICD)を受けていることを示す1つの指標は、細胞表面でのカルレティキュリンの増加した発現である。カルレティキュリンは、通常、細胞の小胞体(ER)で発現される。しかしながら、細胞をERストレスを促進する薬剤で処理する場合、カルレティキュリン発現を細胞の外表面上で観察することができる。ERストレスの促進は、ICDを誘導するための典型的な作用機構であり、したがって、カルレティキュリンの表面発現を測定することは、化合物がICDを引き起こすかどうかを決定するための確立された方法である。いくつかの異なる種類の腫瘍細胞におけるカルレティキュリンの表面発現に対する、スフィンゴシンキナーゼ-2の阻害剤であるABC294640の効果を試験した。これらの実験では、試験腫瘍細胞をABC294640とともに様々な濃度でインキュベートし、ABC294640添加の4~24時間後に細胞を回収した。次いで、細胞を、カルレティキュリンに選択的に結合する蛍光標識抗体とともにインキュベートし、洗浄し、次いでフローサイトメトリーによって分析して、多くの個々の細胞上の表面カルレティキュリンの量を定量化した。結果として得られたデータは、フローサイトメトリーの分野で周知のアルゴリズムを使用して、細胞集団の蛍光強度の幾何平均を決定することによって分析される。表1に提供されたデータは、腫瘍細胞パネルでのカルレティキュリンの表面発現に対するABC294640による処理の効果を要約している。各細胞種について、試料をジメチルスルホキシド(DMSO、ABC294640を溶解するために使用される溶媒)又は40μMのABC294640で24時間処理した。DMSOで処理した細胞試料の蛍光強度の幾何平均を1.0として表し、ABC294640で処理した細胞試料のデータをDMSO対照に対して表した。全ての場合において、ABC294640による処理は、カルレティキュリンの表面発現の増加を引き起こし、応答は1.46~3.64.の範囲であった。このデータは、2.0の幾何平均蛍光は、表面カルレティキュリンの量の10倍の増加を示すように、対数スケールで計算されることに留意されたい。要約すると、ABC294640による処理は、膵臓、前立腺、神経芽腫、乳房(breast)、肺及び黒色腫腫瘍細胞において、約3倍~400倍超で表面カルレティキュリン発現を増加させた。したがって、ABC294640は、広範囲の腫瘍においてICDを増加させた。
【0116】
【0117】
実施例4
ABC294640がB16腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することのインビボ実証ABC294640がICDを誘導する能力を、マウスメ黒色腫B16細胞(ATCC CRL-6322)をインビトロでABC294640で処理し、次いで、免疫能のある(C57BL/6)マウスの皮下に移植した同系マウスモデルを使用して評価した。C57B1/6マウス(6~8週齢、雄)をジャクソン研究から入手し、自由に食品及び水を与える標準的な条件下で維持した。臨床グレードABC294640(BatchCHP110607)を、ChemPacific Corporation(Baltimore,MD)によるGMP契約下で製造し、全ての研究に使用した。B16細胞をATCCから入手し、10%ウシ胎児血清を有するダルベッコ改変イーグル培地中で標準条件下で培養した。B16を、細胞死を引き起こすことが知られているABC294640の濃度で24時間にわたり培養において処理し、細胞死を誘導した-細胞を40μMのABC294640で処理した。次いで、ABC296460で処理した細胞を、培養物をトリプシン処理し、プレートの細胞を剥ぎ取ることによって採取し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させ、0.1mlの全体積で左の後脇腹に皮下注射した(500,000個の染色細胞)。対照群に、PBSのみを左後脚に注射した。7日後、両方の群(n=10/群)のマウスに対して、100,000個の未処理のB16細胞を右後脇腹に移植した。デジタルキャリパーで1週間当たり3回腫瘍成長を測定し、式(L×W
2)/2を使用して腫瘍体積を計算した。腫瘍体積が3,000mm
3以上に達したときにマウスを安楽死させた。
図1は、PBSで前処理したマウス(対照)又はABC294640で処理したB16細胞で前処理したマウス(免疫化)のいずれかに移植した後の14日目のB16腫瘍サイズのデータを示す。対照マウスにおける腫瘍は、14日目に2344±361mm
3の平均サイズに達した。対照的に、免疫化マウスに注射した細胞は、14日目(p=0.0007)で641±210mm
3の平均サイズにしか達しなかった。これらのデータは、ABC294640でのB16腫瘍細胞を処理することにより、その後にチャレンジされたマウスにおける腫瘍成長を著しく低減するICDが引き起こすことを実証している。
【0118】
実施例5
ABC294640がNeuro-2a腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することのインビボ実証
実験の第2の形態において、ICDを誘導するABC294640の能力を、マウスNeuro-2a神経芽腫細胞をABC294640でインビトロで処理し、次いで、皮下に免疫コンピテント(A/J)マウスに移植した同系マウスモデルを用いて評価した。マウスの供給源、ABC294640、及び腫瘍細胞は、実施例4で詳述したものと同じであった。Neuro-2a細胞を、細胞死を引き起こすことが知られているABC294640の濃度で24時間にわたり培養において処理し、細胞死を誘導した-細胞を40μMのABC294640で処理した。次いで、ABC294640で処理した細胞を、培養物をトリプシン処理し、細胞をプレートから剥ぎ取ることによって採取し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させ、0.1mlの全体積で左後脇腹に皮下注射した(5,000,000個の染色細胞)。対照群に、PBSのみを左後脚に注射した。7日後、両方の群(n=4-5/群)のマウスに対して、1,000,000個の未処理のNeuro-2a細胞を右後脚に移植した。腫瘍成長を測定し、腫瘍体積を実施例1に記載したように計算した。
図2は、PBSで前処理したマウス(対照)又はABC294640処理されたNeuro-2a細胞(免疫化)で前処理したマウスのいずれかに移植した後の22日目の腫瘍サイズのNeuro-2a腫瘍サイズのデータを示す。対照マウスにおける腫瘍は、22日目に1039±450mm
3の平均サイズに達した。対照的に、免疫化されたマウスに注射された細胞は、22日目(p=0.085)で15±15mm
3の平均サイズにしか達しなった。対照群の全てのマウスは腫瘍を有し、免疫化された群のうちの75%は、22日目に測定可能な腫瘍を有していなかった。これらのデータは、Neuro-2a腫瘍細胞をABC294640で処理することにより、その後にチャレンジされたマウスにおける腫瘍成長を著しく低減するICDを引き起こすことを実証している。
【0119】
実施例6
ABC294640が、ルイス肺癌(LLC)腫瘍細胞において免疫原性細胞死を誘導することのインビボ実証
実験の第3の形態では、ABC294640がICDを誘導する能力を、マウスLLC細胞(ATCC CRL-1642)をABC294640でインビトロで処理し、次いで、免疫コンピテント(C57BL/6)マウスに皮下移植した同系マウスモデルを使用して評価した。マウスの供給源、ABC294640及び腫瘍細胞は、実施例4で詳述したものと同じであった。LLC細胞を40μMのABC294640で24時間にわたり培養において処理し、細胞死を誘導した。次いで、ABC294640で処理した細胞を、培養物をトリプシン処理し、細胞をプレートから擦り落とすことによって採取し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させ、0.1mlの全体積で左後脇腹に皮下注射した(5,000,000個の染色細胞)。対照群に、PBSのみを左後脚に注射した。7日後、両方の群(n=10/群)のマウスに対して、1,000,000個の未処理のLLC細胞を右後脚に移植した。腫瘍成長を測定し、腫瘍体積を実施例1に記載したように計算した。
図3A~
図3Cは、PBSで前処理したマウス(対照)又はABC294640処理されたLLC細胞(免疫化)で前処理したマウスのいずれかに移植した後の15日目、17日目、及び20日目におけるLLC腫瘍サイズに関するデータを示す。対照マウスにおける腫瘍は、実験が経過するにつれ徐々に増加し、15日目、17日目、及び20日目にそれぞれ651±114、1190±143、及び2263±227smm
3の平均サイズに達した。対照的に、免疫化マウスに注射された細胞は、15日目、17日目、及び20日目に、209±18(p=0.0012)、510±94(p=0.0009)、及び1220±320(p=0.016)mm
3に達した。これらのデータは、LLC腫瘍細胞をABC294640で処理することにより、その後にチャレンジされたマウスにおける腫瘍成長を著しく低減するICDを引き起こすことを実証している。
【0120】
実施例7
ABC294640が交差免疫を誘導することのインビボ実証
上記の実施例は、ABC294640を使用して複数の腫瘍細胞株をインビトロ処理し、続いて、処理された細胞を正常マウスに投与することにより、同じ腫瘍細胞のその後に投与された未処理試料の成長を抑制することを実証している。以下の研究では、ABC294640処理腫瘍細胞のうちの1種を投与することにより、同種の腫瘍細胞の成長が抑制されるだけでなく、異種の腫瘍細胞に「交差」免疫が付与されるという仮説を試験した。マウスの供給源、ABC294640及び腫瘍細胞は、前の実施例で詳述したものと同じであった。別個に、B16又はLLC細胞を40μMのABC294640で24時間にわたって培養において処理し、細胞死を誘導した。次いで、ABC294640で処理したB16又はLLC細胞を、培養物をトリプシン処理し、細胞をプレートから擦り落とすことによって採取し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させ、0.1mlの全体積で左後脇腹に(500,000個の染色B16細胞又は5,000,000個の染色LLC細胞を)皮下注射した。対照マウスに対して、PBSのみを左後脚に注射した。7日後、マウスを以下に要約するように4つの群にランダム化し、100,000個の生B16細胞又は1,000,000個の生LLC細胞のいずれかで右後脇腹にチャンレジして、腫瘍成長を評価した。したがって、「交差」試験群は、ABC294640で処理した肺癌細胞で免疫化され、未処理の黒色腫細胞でチャレンジしたマウスからなる群3、及びABC294640で処理した黒色腫細胞で免疫化され、未処理の肺癌細胞でチャレンジしたマウスからなる群6である。
【0121】
【0122】
腫瘍成長を測定し、腫瘍体積を実施例1に記載するように計算した。腫瘍体積が3,000mm
3以上に達したときにマウスを安楽死させた。
図4は、PBSで前処理したマウス(対照)、ABC294640で処理したB16細胞で前処理したマウス又はABC294640で処理したLLC細胞で前処理したマウスのいずれかに移植した後の19日目におけるB16腫瘍サイズのデータを示す。対照マウスにおける腫瘍は、702±144mm
3の平均サイズに達した。対照的に、B16免疫化マウスに注射された細胞は、203±15mm
3(p=0.018)の平均サイズに達した。LLC免疫化マウスに注射された細胞は、102±51mm
3(p=0.0009)の平均サイズに達した。したがって、ABC294640で処理した黒色腫又は肺癌細胞のいずれかでのワクチン接種は、未処理の黒色腫細胞のその後の成長を抑制した。
図5は、PBSで前処理したマウス(対照)、ABC294640で処理したB16細胞で前処理したマウス又はABC294640で処理したLLC細胞で前処理したマウスのいずれかに移植した後の28日目におけるLLC腫瘍サイズのデータを示す。対照マウスの腫瘍は、479±113mm
3の平均サイズに達した。対照的に、B16免疫マウスに注射された細胞は、208±74mm
3(p=0.0003)の平均サイズに達した。LLC免疫マウスに注射された細胞は、177
±68mm
3の平均サイズに達した(p<0.001)。したがって、ABC294640で処理した黒色腫又は肺癌細胞のいずれかによるワクチン接種は、未処理の肺癌細胞のその後の成長を抑制した。これらのデータは、腫瘍細胞をABC294640でインビトロで処理することにより、その後にチャレンジされたマウスにおいて複数の腫瘍種に対する免疫化を促進することを実証している。
【0123】
実施例8
抗PD-1抗体と組み合わせたABC294640のインビボ抗腫瘍活性ICDを誘導する薬剤は、チェックポイント抗体の抗腫瘍活性を増強し得る。上記のデータは、ABC294640がいくつかの種類の癌においてICDを誘導することを明確に実証しているため、腫瘍を有するマウスをABC294640及び抗PD-1抗体で治療することの組み合わせ効果をB16腫瘍モデルにおいて検査した。抗マウスPD-1(カタログ番号BE0146)抗体をBioXCell(West Lebanon,NH)から購入した。C57BL/6マウスに対して、PBSに懸濁させた100,000B16細胞を実験0日目に皮下注射した。実験3日目に、マウスを以下の4つの処理群(n=10/群)にランダム化した:対照(ビヒクルのみ);ABC294640のみ;抗PD-1抗体のみ;及び抗PD-1抗体と組み合わせたABC294640。ABC294640をビヒクル(46.7%PEG、46.7%生理食塩水及び6.6%エタノール)に懸濁し、犠牲死させるまで、50mg/kg、5日/週(すなわち、3~7日目、10~14日目、17~21日目など)で強制経口投与によって投与した。抗PD-1抗体を無菌PBSに懸濁させ、200μg/マウスの用量で、3日目、6日目、及び10日目に腹腔内(i.p.)注射により投与した。組み合わせ治療群マウスは、抗体が予定された日に、抗体及びABC294640治療を同時に受容した。対照群のマウスは、治療マウスがABC294640又は抗体のいずれかを受容した全ての日に、経口ビヒクル及び/又は滅菌PBSをi.p.で受容した。腫瘍をデジタルキャリパーで1週間当たり3回測定し、体積を式(L×W
2)/2を用いて計算した。腫瘍体積がμ3,000mm
3に達したときにマウスを安楽死させた。
図6は、この実験におけるB16腫瘍の成長を実証する。対照マウスにおける腫瘍は、約10日を経た後に非常に侵襲的に増殖した。19日目に、対照、ABC294640のみ、抗PD-1抗体のみ、並びに組み合わせ治療群の平均腫瘍体積はそれぞれ、1702±373、892±364、783±265、及び190±114mm
3であった。ABC294640のみ及び抗PD-1抗体のみの腫瘍体積は、対照群と著しく異なるものではなかった。しかしながら、ABC294640+抗PD-1治療群における腫瘍体積は、対照群と比較して非常に有意に減少した(p=0.0011)。IACUCプロトコルによって指示されるように、腫瘍体積が3,000mm
3に達しときに各マウスを犠牲死させた。
図7は、この実験におけるマウスの生存曲線を示す。対照群のマウスは21日の生存中央値を有し、全ての動物を29日目に犠牲死させた。ABC294640のみでの治療は、24日の生存中央値をもたらし、マウスの30%は、実験が終了したときに56日目に生存した(p=0.009)。同様に、抗PD-1のみでの治療は、23日目までの生存中央値を高め(p=0.033)、56日目にマウスのうちの20%が生存した。ABC294640及び抗PD-1抗体の組み合わせは、生存中央値を35日に著しく増加させ、これらのマウスのうちの30%は、56日目まで生存した(p<0.0001)。したがって、ABC294640及びPD-1チェックポイント抗体を組み合わせることにより、抗腫瘍活性が大幅に改善され、いずれかの薬剤のみよりも生存期間が長くなる。
【0124】
実施例9
抗CTLA4抗体と組み合わせたABC294640のインビボ抗腫瘍活性腫瘍を有するマウスをABC294640及び抗CTLA41抗体で治療することの組み合わせ効果をLLC腫瘍モデルにおいて調べた。抗マウスCTLA-4(カタログ番号BE0131)抗体をBioXCell(West Lebanon,NH)から購入した。マウスに対して、PBSに懸濁させた1,000,000個のLLC細胞を実験0日目に皮下注射した。実験3日目に、マウスを以下の4つの処理群(n=5/群)にランダム化した:対照(ビヒクルのみ);ABC294640のみ;抗CTLA4抗体のみ;及び抗CTLA4抗体と組み合わせたABC294640。ABC294640をビヒクル(46.7%PEG、46.7%生理食塩水及び6.6%エタノール)に懸濁し、犠牲死させるまで、50mg/kg、5日/週(すなわち、3~7日目、10~14日目、17~21日目など)で強制経口投与によって投与した。抗CTLA4抗体を希釈緩衝液(BioXCell、カタログ番号IP0070)に懸濁させ、3日目、6日目、10日目、13日目、17日目、及び20日目に200μg/マウスの用量で腹腔内(i.p.)注射により投与した。組み合わせ治療群マウスは、抗体が予定された日に、抗体及びABC294640治療を同時に受容した。対照群のマウスは、治療マウスがABC294640又は抗体のいずれかを受容した全ての日に、経口ビヒクル及び/又は滅菌PBSをi.p.で受容した。腫瘍をデジタルキャリパーで1週間当たり3回測定し、体積を式(L×W
2)/2を使用して計算した。腫瘍体積が3,000mm
3以上に達したときにマウスを安楽死させた。
図8は、この実験におけるLLC腫瘍の成長を実証する。対照マウスの腫瘍は、およそ7日を経た後に徐々に増殖した。21日目に、対照、ABC294640のみ、抗CTLA4抗体のみ、及び組み合わせ治療群の平均腫瘍体積はそれぞれ、4622±548、3197±914、3029±675、及び1274±336mm
3であった。ABC294640のみ及び抗CTLA4抗体のみの腫瘍体積は、対照群と著しく異なるものではなかった。しかしながら、ABC294640+抗CTLA4治療群における腫瘍体積は、対照群と比較して非常に有意に減少した(p=0.0008)。IACUCプロトコルによって指示されるように、腫瘍体積が3,000mm
3に達しときに各マウスを犠牲死させた。
図9は、この実験におけるマウスの生存曲線を示す。対照群のマウスは19日の生存中央値を有し、全ての動物を21日目に犠牲死させた。ABC294640のみでの治療は、22日目に生存中央値を付与し、抗CTLA4による治療は、生存中央値に影響を及ぼさなかった。ABC294640及び抗CTLA4抗体の組み合わせは、生存中央値を26日超に増加させ、これらのマウスのうちの60%は26日目まで生存した。したがって、ABC294640及びCTLA4チェックポイント抗体を組み合わせることにより、抗腫瘍活性が著しく改善され、いずれかの薬剤のみよりも生存期間が長くなる。
【0125】
実施例10
抗PD-L1抗体と組み合わせしたABC294640のインビボ抗腫瘍活性
腫瘍を有するマウスをABC294640及び抗PD-L1抗体で治療することの組み合わせ効果をB16腫瘍モデルにおいて調べた。抗マウスPD-L1(カタログ番号BE0101)抗体をBioXCell(West Lebanon,NH)から購入した。マウスに対して、PBSに懸濁させた100,000個のB16細胞を実験0日目に皮下注射した。腫瘍が300mm3以上の体積に達したとき、マウスを以下の4つの処理群(n=5~6/群)にランダム化した:対照(ビヒクルのみ);ABC294640のみ;抗PD-L1抗体のみ、及び抗PD-L1抗体と組み合わせたABC294640。ランダム化の日は、各マウスについての実験1日目として注記される。ABC294640をビヒクル(46.7%PEG、46.7%生理食塩水及び6.6%エタノール)に懸濁し、犠牲死させるまで、50mg/kg、5日/週で強制経口投与によって投与した。抗PD-L1抗体を希釈緩衝液(BioXCell、カタログ番号IP0070)に懸濁させ、1日目、3日目、5日目、及び7日目に200μg/マウスの用量で腹腔内(i.p.)注射により投与した。組み合わせ治療群マウスは、抗体が予定された日に、抗体及びABC294640治療を同時に受容した。対照群のマウスは、治療マウスがABC294640又は抗体のいずれかを受容した全ての日に、経口ビヒクル及び/又は滅菌PBSをi.p.で受容した。腫瘍をデジタルキャリパーで1週間当たり3回測定し、体積を式(L×W2)/2を使用して計算した。腫瘍体積が3,000mm3以上に達したときにマウスを安楽死させた。以下の表は、各治療群の生存中央値を示す。
【0126】
【0127】
対照群のマウスは8.5日の生存中央値を有し、全ての動物を12日目に犠牲死させた。ABC294640のみ又は抗PD-L1のみでの治療は、それぞれ10日及び10.5日の生存中央値を提供した。ABC294640及び抗PD-L1抗体の組み合わせは、生存中央値を16日に増加させた(p=0.0029、対照と比較)。したがって、ABC294640とPD-L1チェックポイント抗体と組み合わせることにより、抗腫瘍活性が著しく改善され、いずれかの薬剤のみよりも生存期間が長くなる。
【0128】
有効量のスフィンゴシンキナーゼ(SK)の阻害剤及び有効量のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法が本明細書に開示される。実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CTLA4に対する抗体(例えば、イピリムマブ)、若しくはPD-1に対する抗体(例えば、ペムブロリズマブ又はニボルマブ)、又はPD-L1に対する抗体(例えば、アテゾリズマブ又はデュルバルマブ)であり得る。これらの経路を標的とする他の抗体又は化学的阻害剤はまた、本発明の範囲内である。例えば、PD-L1経路の更なる阻害剤としては、BMS-936559、MPDL3280A、BMS-936558、MK-3475、CT-011、又はMEDI4736が挙げられる。
【0129】
実施形態において、腫瘍細胞は、癌患者の血液又は罹患組織から単離され、ABC294640でエクスビボで約24時間処理することができる。次いで、処理された細胞を患者の血流に送達して、癌に対する免疫応答を促進することができる。
【0130】
実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、式Iによって表される化合物
【0131】
【化7】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、R
1は、フェニル、4-クロロフェニル又は4-フルオロフェニルであり、R
2は、4-ピリジルであり、独立して(C
1~C
6)アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、-OC(O)(C
1~C
6アルキル)、-C(O)O(C
1~C
6アルキル)、-CONR’R”、OC(O)NR’R”、NR’C(O)R”、CF
3-OCF
3、-OH、C
1~C
6アフコキシ、ヒドロキシアルキル、-CN、-CO
2H、SH、-S-アルキル、-SOR’R”、-SO
2R’、-NO
2、又はNR’Rである、最大4つの基で任意選択で置換され、式中、R’及びR”は、独立して、H又は(C
1~C
6アルキル)であり、置換基の各アルキル部分は、ハロゲン、CN、OH、及びNH
2から独立して選択される1つ、2つ又は3つの基で任意選択で更に置換され、R
4は、H又はアルキルであり、nは、1又は2である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、
【0132】
【0133】
実施形態において、癌を治療することは、腫瘍のサイズを減少させるか、又は腫瘍の成長を阻害することとして更に定義される。実施形態において、阻害剤は、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回投与される。実施形態において、対象に、第2の癌療法が更に投与される。実施形態において、第2の癌療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、又は遺伝子療法を含む。実施形態において、黒色腫は、化学療法又は放射線抵抗性黒色腫である。実施形態において、有効量は、対象の体重あたり、少なくとも約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250若しくは300μg/kg又はmg/kgを含む。
【0134】
患者から収集された癌細胞を使用して免疫学的にプライミングされた癌細胞を調製する方法は、癌細胞を、エクスビボで、スフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で処理することを含み、毒性濃度は、癌細胞において免疫原性細胞死を誘導するのに十分である。実施形態において、スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物は、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である化合物は、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK2の選択的阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、収集された癌細胞は、少なくとも24時間処理される。実施形態において、SK2の選択的阻害剤の毒性濃度は、約20μM~約60μMである。実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、その表面上にカルレティキュリンを過剰発現する。実施形態において、癌細胞は、免疫細胞である。実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミングされた癌細胞よりも約3倍以上(例えば、約3倍~約400倍以上)、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約300倍、約350倍、約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約3倍~約10倍、約3倍~約50倍、約3倍~約100倍、約3倍~約150倍、約3倍~約200倍、約3倍~約250倍、約3倍~約300倍、約3倍~約350倍、約3倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約10倍~約50倍、約10倍~約100倍、約10倍~約150倍、約10倍~約200倍、約10倍~約250倍、約10倍~約300倍、約10倍~約350倍、約10倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約50倍~約100倍、約50倍~約150倍、約50倍~約200倍、約50倍~約250倍、約50倍~約300倍、約50倍~約350倍、約50倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約100倍~約150倍、約100倍~約200倍、約100倍~約250倍、約100倍~約300倍、約100倍~約350倍、約100倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約150倍~約200倍、約150倍~約250倍、約150倍~約300倍、約150倍~約350倍、約150倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約200倍~約250倍、約200倍~約300倍、約200倍~約350倍、約200倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約250倍~約300倍、約250倍~約350倍、約250倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約300倍~約350倍、約300倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約350倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。実施形態において、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞又は樹状細胞を含む。実施形態において、癌細胞は、血液癌細胞である。実施形態において、血液癌細胞は、白血病細胞である。実施形態において、癌細胞は、固形腫瘍細胞である。実施形態において、癌細胞は、循環腫瘍細胞である。実施形態において、方法は、免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を採取することと、細胞をリン酸緩衝生理食塩水に懸濁することと、を更に含む。実施形態において、方法は、免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を患者のケアの場所まで輸送することを更に含む。実施形態において、患者のケアの場所は、病院である。実施形態において、患者のケアの場所は、癌センターである。実施形態において、方法は、輸送された免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部を患者に投与して、免疫応答を誘発することを更に含む。実施形態において、免疫応答は、患者における癌の成長を遅延又は停止させる。実施形態において、免疫応答は、患者の癌転移を停止させる。実施形態において、免疫応答は、癌細胞を死滅させる際に患者の免疫系をより効率的にする。実施形態において、方法は、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を投与することを更に含む。
【0135】
本発明による方法によって得られる免疫学的にプライミングされた癌細胞を含む、癌を治療するための薬剤。
【0136】
以下のステップ:患者から収集された癌細胞を受容するステップと、収集された癌細胞を、エクスビボで、スフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で処理して、免疫学的にプライミングされた癌細胞を調製するするステップと、を含む、方法であって、毒性濃度が、癌細胞において免疫原性細胞死を誘導するのに十分である、方法によって調製された免疫学的にプライミングされた癌細胞。実施形態において、スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物は、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤は、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK2の選択的阻害剤は、3-(4-クロロフェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、収集された癌細胞は、少なくとも24時間処理される。実施形態において、SK2の選択的阻害剤の毒性濃度は、約20μM~約60μMである。実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、その表面上にカルレティキュリンを過剰発現する。実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミングされた癌細胞よりも約3倍以上(例えば、約3倍~約400倍以上)、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミングされた癌細胞よりも約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約300倍、約350倍、約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は非プライミングされた癌細胞よりも約3倍~約10倍、約3倍~約50倍、約3倍~約100倍、約3倍~約150倍、約3倍~約200倍、約3倍~約250倍、約3倍~約300倍、約3倍~約350倍、約3倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約10倍~約50倍、約10倍~約100倍、約10倍~約150倍、約10倍~約200倍、約10倍~約250倍、約10倍~約300倍、約10倍~約350倍、約10倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約50倍~約100倍、約50倍~約150倍、約50倍~約200倍、約50倍~約250倍、約50倍~約300倍、約50倍~約350倍、約50倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約100倍~約150倍、約100倍~約200倍、約100倍~約250倍、約100倍~約300倍、約100倍~約350倍、約100倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約150倍~約200倍、約150倍~約250倍、約150倍~約300倍、約150倍~約350倍、約150倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約200倍~約250倍、約200倍~約300倍、約200倍~約350倍、約200倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約250倍~約300倍、約250倍~約350倍、約250倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約300倍~約350倍、約300倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。いくつかの実施形態において、免疫学的にプライミングされた癌細胞は、非プライミング癌細胞よりも約350倍~約400倍又はそれ以上、その表面上にカルレティキュリンを発現する。実施形態において、癌細胞は、免疫細胞である。実施形態において、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞又は樹状細胞を含む。実施形態において、癌細胞は、血液癌細胞である。実施形態において、血液癌細胞は、白血病細胞である。実施形態において、癌細胞は、固形腫瘍細胞である。実施形態において、癌細胞は、循環腫瘍細胞である。実施形態において、薬学的組成物は、上記の免疫学的にプライミングされた癌細胞を含む。実施形態において、薬学的組成物は、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を更に含む。実施形態において、患者における免疫応答を促進するための薬学的組成物の調製における、上記の免疫学的にプライミングされた癌細胞の使用が開示される。実施形態において、免疫応答は、患者における癌の成長を遅延又は停止させる。実施形態において、免疫応答は、患者の癌転移を停止させる。実施形態において、免疫応答は、癌細胞を死滅させる際に患者の免疫系をより効率的にする。
【0137】
記述1:患者から収集された癌細胞を免疫学的にプライミングするエクスビボ法であって、当該方法は、患者から収集された癌細胞をスフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で処理して、収集された癌細胞において免疫原性細胞死を誘導するステップを含む、方法。
【0138】
記述2:免疫学的にプライミングされた、患者から収集された癌細胞を産生するエクスビボ方法であって、当該方法は、患者から収集された癌細胞をスフィンゴ脂質代謝を改変する毒性濃度の化合物で処理して、収集された癌細胞において免疫原性細胞死を誘導し、それにより、免疫学的にプライミングされた癌細胞を産生するステップを含む、方法。
【0139】
記述3:患者から収集された癌細胞において免疫原性細胞死を誘導するための、スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物のエクスビボ使用。
【0140】
記述4a:スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物がスフィンゴシンキナーゼの阻害剤である、記述1若しくは記述2に記載の方法又は記述3に記載の使用。
【0141】
記述4b:スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物の毒性濃度が、約20μM~約60μMである、記述1若しくは記述2に記載の方法又は記述3に記載の使用。
【0142】
記述5:スフィンゴシンキナーゼの阻害剤が、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である、記述4a又は4bに記載の方法又は使用。
【0143】
記述6:SK2の選択的阻害剤が、3-(4-クロロフェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド又はその薬学的に許容される塩である、記述5に記載の方法又は使用。
【0144】
記述7:収集された癌細胞が、少なくとも24時間処理される、記述1、2若しくは4a~6のいずれか1つに記載の方法又は記述3~6のいずれか1つに記載の使用。
【0145】
記述8:癌細胞が、免疫細胞である、記述1、2若しくは4a~7のいずれか1つに記載の方法又は記述3~7のいずれか1つに記載の使用。
【0146】
記述9:免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞又は樹状細胞を含む、記述8に記載の方法又は使用。
【0147】
記述10:癌細胞が、血液癌細胞である、記述1、2若しくは4a~7のいずれか1つに記載の方法又は記述3~7のいずれか1つに記載の使用。
【0148】
記述11:血液癌細胞が、白血病細胞である、記述10に記載の方法又は使用。
【0149】
記述12:癌細胞が、固体腫瘍細胞である、記述1、2若しくは4a~7のいずれか1つに記載の方法又は記述3~7のいずれか1つに記載の使用。
【0150】
記述13:癌細胞が、循環腫瘍細胞である、記述1、2若しくは4a~7のいずれか1つに記載の方法又は記述3~7のいずれか1つに記載の使用。
【0151】
記述14:免疫学的にプライミングされた癌細胞の少なくとも一部患者のケアの場所に輸送することを更に含む、記述1、2若しくは4a~13のいずれか1つに記載の方法又は記述3~13のいずれかの記載の使用。
【0152】
記述15:輸送されたプライミング癌細胞の一部が、染色癌細胞を含む、記述14に記載の方法又は使用。
【0153】
記述16:患者のケアの場所が、病院である、記述14又は15に記載の方法又は使用。
【0154】
記述17:患者のケアの場所が、癌センターである、記述14又は15に記載の方法又は使用。
【0155】
記述18:医薬において使用するための、記述2又は4~13のいずれか1つに記載の方法によって産生された免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0156】
記述19:患者における癌細胞に対する免疫応答を促進するための、記述2又は4~13のいずれか1つに記載の方法によって産生された免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0157】
記述20:患者における癌の成長の遅延又は停止に使用するための、記述2又は4~13のいずれか1つに記載の方法によって産生された免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0158】
記述21:患者における癌の転移の停止に使用するための、記述2又は4~13のいずれか1つに記載の方法によって産生された免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0159】
記述22:癌細胞を死滅させる際に患者の免疫系をより効率的にするのに使用するための、記述2又は4~13のいずれか1つに記載の方法によって産生された免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0160】
記述23:癌を治療する方法で使用するための、記述2又は4~13のいずれか1つに記載の方法によって産生された免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0161】
記述24:当該方法が、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を投与することを更に含む、記述20に記載の使用のための免疫学的にプライミングされた癌細胞。
【0162】
癌の治療を必要とする対象において細胞に対する免疫原性細胞死を増強又は誘導することによって癌を治療する方法であって、有効量のスフィンゴ脂質代謝を改変する化合物及びチェックポイント経路の阻害剤を対象に投与することと、を含む、方法。実施形態において、スフィンゴ脂質代謝を改変する化合物は、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である。実施形態において、スフィンゴシンキナーゼの阻害剤である化合物は、スフィンゴシンキナーゼ-2(SK2)の選択的阻害剤である。実施形態において、SK2の選択的阻害剤は、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)アミド又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、免疫原性細胞死は、癌細胞の表面のカルレティキュリンの増加された発現を含む。実施形態において、癌細胞は、黒色腫細胞である。実施形態において、癌細胞は、肺癌細胞である。実施形態において、チェックポイント経路の阻害剤は、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体又はこれらの組み合わせである。実施形態において、チェックポイント阻害剤経路は、抗CTLA4抗体である。実施形態において、
抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、抗CTLA4抗体は、モノクローナル抗体である。実施形態において、モノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。実施形態において、投与は、複数回行われる。実施形態において、対象に、第2の癌療法が更に投与される。実施形態において、第2の癌療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法又は遺伝子療法を含む。
【0163】
3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤と、使用のための説明書と、を含む、キット。実施形態において、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、CTLA-4受容体阻害剤、PD-1受容体阻害剤、PD-L1リガンド阻害剤、PD-L2リガンド阻害剤、LAG-3受容体阻害剤、TIM-3受容体阻害剤、BTLA受容体阻害剤、KIR受容体阻害剤又は前述のチェックポイント阻害剤のうちのいずれかの組み合わせである。実施形態において、チェックポイント阻害剤は、抗体又は抗体断片である。実施形態において、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4受容体抗体、抗PD-1受容体抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体又は前述の抗体のうちのいずれかの組み合わせである。実施形態において、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、凍結乾燥固体の形態にある。実施形態において、キットは、水性再構成溶媒を更に含む。実施形態において、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、第1の薬学的に許容される製剤に組み込まれ、3-(4-クロロ-フェニル)-アダマンタン-1-カルボン酸(ピリジン-4-イルメチル)-アミド化合物又はその薬学的に許容される塩は、第2の薬学的に許容される製剤に組み込まれる。
【0164】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】