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特表2022-517417打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステム及び方法
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  • 特表-打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(54)【発明の名称】打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20220301BHJP
   B64G 1/00 20060101ALI20220301BHJP
   B64G 1/66 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B64G1/64 143
B64G1/00 270
B64G1/64 500
B64G1/66 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541337
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 IN2019050344
(87)【国際公開番号】W WO2020065660
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】201841035794
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521119902
【氏名又は名称】インディアン スペース リサーチ オーガニゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エル ソウミアナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】アール ハットン
(72)【発明者】
【氏名】ビー ジャヤクマール
(72)【発明者】
【氏名】エーケー アニルクマール
(72)【発明者】
【氏名】ディーパク ネギ
(72)【発明者】
【氏名】ケー シヴァン
(57)【要約】
複数の衛星を打ち上げ機から発射するシステム100及び方法300が提供される。システムは、1つ以上の搭載手段104A~104Fを有する機械構造部102と、機械構造部において複数の衛星を位置決め及び分離する1つ以上の搭載手段を制御する制御ユニット106と、機械構造部における各衛星の位置決めを監視する画像キャプチャシステムとを備える。搭載手段は、各衛星が短い継続時間及び長い継続時間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する距離に、軸方向、傾斜方向及び径方向に分離して衛星を位置決めするように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち上げ機(100)から複数の衛星を発射するシステムであって、
複数の搭載手段(104A~104F)を備える機械構造部(102)と、
前記機械構造部において前記複数の衛星を位置決め及び分離するように前記複数の搭載手段を制御する制御ユニット(106)と、
前記機械構造部における各衛星の前記位置決めを監視する画像キャプチャシステムと、
を備え、
前記搭載手段は、各衛星が短い継続時間及び長い継続時間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する距離に、軸方向、傾斜方向及び径方向に分離して前記衛星を位置決めするように構成される、システム。
【請求項2】
前記複数の搭載手段のそれぞれは、1つ以上の衛星を位置決めするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1の一組の搭載手段が前記軸方向に分離して配置され、第2の一組の搭載手段が前記傾斜方向に分離して配置され、第3の一組の搭載手段が前記径方向に分離して配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記衛星の分離の間の前記距離は、以下の式から導出される最大衝突確率(Pmax)に基づいて求められ、
【数1】
ここで、Rminは前記衛星の間の最小距離であり、Rは前記有効衝突半径である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
打ち上げ機における機械構造部を使用して複数の衛星を配備及び発射する方法であって、
前記機械構造部に設けられる複数の搭載手段に前記複数の衛星を位置決めするステップであって、前記搭載手段は、最大衝突確率(Pmax)に基づく前記長期無衝突要件を満たす距離に配置される、位置決めするステップと、
第1の一組の衛星を軸方向に分離し、第2の一組の衛星を径方向に分離するステップと、
第2の一組の衛星を速度方向及び反対速度方向に基づいて2つのグループに分割するステップと、
速度方向及び反対速度方向に沿った軌道面における衛星の分離を確実にするように前記段を再方位付けし、0.20度~0.35度の小さなロールレートを有する前記2つのグループのうちのいずれか一方の下にグループ化された前記衛星を分離するステップと、
軸方向に配置された前記第1の一組の衛星と、径方向に配置された前記第2の一組の衛星の一部分と、傾斜方向に配置された前記第2の一組の衛星の残りの部分とを前記打ち上げ機から発射し、適切なイントラックデルタv分布を用いてそれらを分離するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
全ての分離事象をキャプチャすることができるビデオ撮像システムが適切に搭載され、位置決めされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分離するステップは、全ての前記衛星を、全ての分離について前記所望の最小距離を満たす最適な姿勢で分離することができることを確保する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記再方位付けするステップにおいて、ロールレート可制御性が、前記軌道面における分離の前記所望の角度及び方向を得るための0.20度~0.35度で達成される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記分離の前記ロールレート及びタイミングは、前記分離する2つの衛星が短期間及び長期間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する前記2つの分離の間の前記所望のイントラックデルタv差分を与える前記軌道面における前記分離の方向を達成するように選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分離するステップは、上段制御スラスターのプルームと分離する衛星との間の相互作用がないことを確保する、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、包括的には、打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステムに関し、より詳細には、プルーム相互作用(plume interaction)がない複数の衛星の分離を確実にするとともに長期無衝突要件を満たすシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衛星配備システムは、多段式の打ち上げ機を使用し、これらの打ち上げ機が個々に分離してそれらの最終運用軌道に向かって飛行する前に挿入軌道に達する。打ち上げ機の電力及び推進力の量は限られており、そのため、全ての衛星は、比較的小さな時間窓内において配備されなければならない。ペイロードとして多数の衛星がある場合には、それらの衛星を限られた時間窓内で比較的迅速に連続して配備することは、衛星が近接し、衛星間の潜在的な衝突の固有リスクがあるために困難である。
【0003】
従来技術(非特許文献1)は、衛星を打ち上げ機から切り離した後に、逆噴射を使用して上段を遠ざけることを開示している。別の従来技術(特許文献1)は、推進ユニットを有するディスペンサーモジュール全体が最終段から分離され、衛星がその後にディスペンサーモジュールから分離する方法を開示している。しかしながら、これらの方法論は、多数の衛星を短い発射時間窓内にただ1回の試みで安全な方法で配備することが必要とされるときは役立たない。
【0004】
特許文献1は、衛星を組み立てて配備するシステム及び方法を開示している。この発明では、複数のディスペンサーモジュールが、当該モジュールから一組の衛星を分離するためにそれら自体の推進ユニットとともに使用される。これらのモジュールは、指定時刻に打ち上げ機の最終段から分離され、衝突を回避するために互いに離れるようにマヌーバすることができる。この発明の限界は対処済みであり、本発明における新規なストラテジーは、(1)全ての衛星が適切な方位に取り付けられ、最終段から直接分離されたことと、(2)ロールマヌーバを提供し、分離のタイミングを制御し、異なる方向に異なる角度で同時に衛星を分離することと、(3)ビデオ撮像システムの位置決めがクリーンな分離を立証したこととである。
【0005】
非特許文献2は、複数の衛星分離を開示しており、主要なオプションが、異なる相対速度(デルタv)を有する様々な衛星を異なる時間間隔で分離することであり、総分離時間窓が45分と規定されている。本発明を使用して対処されるこの方法の限界は、(1)同じ分離メカニズムを使用することによって衛星の相対速度がほぼ同じであることと、(2)ミッションの全時間が800秒未満に制限される可能性があることとである。
【0006】
非特許文献1は、ロシアのランチャーが、段がまだ燃料燃焼しているときにロケットの後方から37個の衛星を分離したことを開示している。そのようなシステムでは、衛星がロケット推進システムのプルームに遭遇する可能性がある。本発明を使用して対処されるこの方法の限界は、(1)衛星が速度方向及び反対速度方向の双方に同時に分離されたことと、(2)プルーム相互作用を回避する衛星の適切な搭載方向と、(3)ビデオ撮像システムの位置決めが全ての衛星のクリーンな分離をキャプチャし、プルーム相互作用がないことを確認したこととである。プルームがないこともビデオ撮像システムによってキャプチャされた。
【0007】
要約すれば、従来技術は多くの限界を有している。それらの従来技術のいずれも、多数の衛星を安全でタイミングが良く費用効果の高い方法で配備する確実な方法を提供していない。これらの限界を克服するために、多段式打ち上げ機を使用して複数の衛星を配備するミッション管理における革新的なシステム及び方法が実現される。本実施の形態は、これらの問題の1つ以上を固有かつ経済的な方法で解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9463882号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.nasaspaceflight.com>
【非特許文献2】インターネット<URL:http://digitalcommons.usu.edu>、Donald E. Keenan著「A Deployment Strategy for Multiple Secondary Payloads on the MLV05 Mission」(Proceedings of the AIAA/USU Conference on Small Satellites 2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複数の衛星の配備のための新規なミッション管理ストラテジーは、以下の目的を有する。
【0011】
本発明の主要な目的は、複数の衛星のクリーンな分離である。本発明の別の目的は、最初の少数の軌道内にギャップを構築して複数の衛星の分離を確実にすることである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、プルーム相互作用がない複数の衛星の分離を確実にすることである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、衛星を打ち上げ機から切り離した後に、衛星が取り付けられていた上段を逆噴射を用いることなく遠ざけるための上段の新規なマヌーバ方式を実現することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、衛星配備を援助する推進ユニットを有するディスペンサーモジュールの使用をなくすことである。
【0015】
本発明のまた更なる目的は、衛星を配備するのに使用される分離システムの部分が、その後に分離する衛星の経路を遮断しないことを確実にすることである。
【0016】
本発明の別の目的は、短いミッション継続時間内に全ての衛星分離を達成することである。本発明の更に別の目的は、衝突のない安全な分離のための適切な搭載方向を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、ビデオ撮像システムを適切な箇所に位置決めすることによって全ての分離をキャプチャすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の目的に従って、本発明は、上述した目的の実現を可能にする、複数の衛星の配備のための新規なシステム及び方法を提供する。
【0019】
本実施の形態の1つの態様において、打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステムが提供される。本システムは、1つ以上の搭載手段を有する機械構造部と、機械構造部において複数の衛星を位置決め及び分離するように1つ以上の搭載手段を制御する制御ユニットと、機械構造部における各衛星の位置決めを監視する画像キャプチャシステムとを備える。搭載手段は、各衛星が短い継続時間及び長い継続時間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する距離に、軸方向、傾斜方向及び径方向に分離して衛星を位置決めするように構成される。複数の搭載手段は、1つ以上の衛星を位置決めするように構成される。第1の一組の搭載手段が軸方向に分離して配置され、第2の一組の搭載手段が傾斜方向に分離して配置され、第3の一組の搭載手段が径方向に分離して配置される。分離される物体が互いの距離を横切っているときにこれらの物体間に必要とされる最小距離は、以下の式から導出される最大衝突確率(Pmax)(Vladimir A. Chobotov著「Orbital Mechanics, Second Edition」(AIAA Educational Series, 1996)参照)に基づいて求められる。
【0020】
【数1】
ここで、Rminは上記物体間の最小距離であり、Rは有効衝突半径である。
【0021】
本実施の形態の別の態様において、打ち上げ機における機械構造部を使用して複数の衛星を配備及び発射する方法が提供される。本方法は、(i)機械構造部に設けられる1つ以上の搭載手段に複数の衛星を位置決めするステップであって、搭載手段は、最大衝突確率(Pmax)に基づく長期無衝突要件を満たす距離に配置される、位置決めするステップと、(ii)第1の一組の衛星を軸方向に分離し、第2の一組の衛星を径方向に分離するステップと、(iii)第2の一組の衛星を速度方向及び反対速度方向に基づいて2つのグループに分割するステップと、(iv)速度方向及び反対速度方向に沿った軌道面における衛星の分離を確実にするように段を再方位付けし、0.20度~0.35度の小さなロールレートを有する2つのグループのうちのいずれか一方の下にグループ化された衛星を分離するステップと、(v)軸方向に配置された第1の一組の衛星と、径方向に配置された第2の一組の衛星の一部分と、傾斜方向に配置された第2の一組の衛星の残りの部分とを打ち上げ機から発射し、適切なイントラックデルタv分布を用いてそれらを分離するステップとを含む。全ての分離事象をキャプチャすることができるビデオ撮像システムが適切に搭載され、位置決めされる。分離するステップは、全ての衛星を、全ての分離について所望の最小距離を満たす最適な姿勢で分離することができることを確保する。再方位付けするステップにおいて、ロールレート可制御性が、軌道面における分離の所望の角度及び方向を得るための0.20度~0.35度で達成される。分離のロールレート及びタイミングは、分離する2つの衛星が短期間及び長期間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する2つの分離の間の所望のイントラックデルタv差分を与える軌道面における分離の方向を達成するように選択される。分離するステップは、上段制御スラスターのプルームと分離する衛星との間の相互作用がないことを確保する。
【0022】
本発明の利点及び特徴は、非限定的な例として与えられているにすぎない添付図面を参照する以下の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本明細書における実施形態による、打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステムを示す図である。
図2】本明細書における実施形態による、2つの衛星の間の最小距離を示す概略図である。
図3】本明細書における実施形態による、打ち上げ機における機械構造部を使用して複数の衛星を配備及び発射するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、本明細書に下記において添付図面に関して説明される。打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステム及び方法が本明細書において説明される。
【0025】
以下の説明は、本発明の例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明の範囲も、利用可能性も、構成も限定するものではない。逆に、以下の説明は、本発明の様々な実施形態を実施する便利な例示を提供することを意図している。明らかになるように、本明細書で述べるような本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態において説明される構造上/動作上の特徴の機能及び構成に様々な変更を行うことができる。本明細書における説明は、異なる形状、構成要素等を有する代替的に構成されたデバイスとともに用いられるように適合させることができ、それでもなお本発明の範囲内に含まれることが理解されよう。したがって、本明細書における詳細な説明は、限定ではなく、専ら例示を目的として提示されている。
【0026】
図1は、本明細書における実施形態による、打ち上げ機から複数の衛星を発射するシステム100を示している。システム100は、1つ以上の搭載手段104A~104Fを有する機械構造部102と、機械構造部において複数の衛星を位置決め及び分離するように1つ以上の搭載手段を制御する制御ユニット106と、機械構造部における各衛星の位置決めを監視する画像キャプチャシステム(図示せず)とを備える。搭載手段は、各衛星が短い継続時間及び長い継続時間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する距離に、軸方向、傾斜方向及び径方向に分離して衛星を位置決めするように構成される。搭載手段は、1つ以上の衛星を位置決めするように構成される。第1の一組の搭載手段は軸方向に分離して配置され、第2の一組の搭載手段は傾斜方向に分離して配置され、第3の一組の搭載手段は径方向に分離して配置される。
【0027】
複数衛星配備ミッションは、衛星及び使用済みの段に対応する多数の物体が存在するので、再接触の可能性を回避するように搭載を構成し、衛星分離シーケンスを設計する課題を提起する。搭載構成は以下の制約を有する。
1.幾つかの衛星には軸方向の分離を行い、他の幾つかの衛星には傾斜方向の分離を行い、それ以外の衛星の集合体には径方向の分離も行うこと。
2.径方向に分離する衛星の搭載が、上段制御スラスターのプルームと分離する衛星との間の相互作用がないことを確保するものであること。
3.衛星を配備するのに使用される分離システムの部分に、その後に分離する衛星の経路を遮断するものがないこと。
【0028】
衛星分離シーケンスは、搭載要件に関する上記制約に加えて以下のミッション制約を用いて設計される。
1.全ての物体ペアの間の最小距離が、搭載構成において100000分の1の衝突確率及び正のマージンを満たすこと。
2.同じシーケンサーから分離する衛星は、最低限5秒の遅延を有すること。
3.衛星分離に使用される再方位付けの数が最小であること。
4.全ての衛星分離の時間が最小であること。
【0029】
衛星の無衝突長期軌道運動を達成するために、最初に、空間及び時間において適切に衛星を分析的に配置することによって設計を行った。その後に、軌道伝播のフルフォースモデルを使用することによって衛星投入間の時間間隔を調節した。
【0030】
本発明では、複数の衛星の分離は、物体の任意の2つのペアの間の、それらの配備されるサイズに対する距離に基づいて100000分の1の衝突確率を満たす非常に短い時間スパン(最終段の切り離しから1000秒を越えない)内に行われる。また、分離される物体は、上段制御システムのプルームとの相互作用も有しない。このミッションストラテジーは、以下に示すようなフローチャートを使用して説明することができる。
【0031】
任意の所与の衝突確率についての衛星間の距離を計算する新たな方法が考案される。
【0032】
安全な再接触距離の計算:
衛星/上段の特性半径(characteristic radius)は、衛星/上段に外接する球の半径である。検討対象の2つの衛星の特性半径をr及びrとし(図2参照)、それらの衛星間の最小距離をRminとし、Rは有効衝突半径(=r+r)である。最大衝突確率は以下の式として与えられる。
【0033】
【数2】
【0034】
空間物体近接分析(SOPA:Space Object Proximity Analysis)用の衝突確率閾値は1000分の1であり、衝突回避(COLA:Collision Avoidance)用の衝突確率閾値は軌道位相において100000分の1である。COLA用の衝突確率閾値は、投入不確実性を考慮するために控えめであるのに対して、定型的なSOPA用及び軌道マヌーバのSOPA用の衝突確率閾値は緩やかにされている。本発明は、小さな質量を有する複数の衛星の円形軌道内への分離のための新規な解決策を提供する。
【0035】
同じデルタvを用いて分離する衛星について、分離デルタvのイントラック(in-track)成分は、適切な分離方向を選択することによって構成することができる。系統的な分離シーケンスに達するために、全ての衛星は軌道面において分離される。イントラックデルタv成分は、軌道面における適切な分離方向を選択することによって所望の順序(降順又は昇順)に配列される。衛星による短期の追い越しを回避するために、イントラックデルタvをそれらの大きさの降順にしたものが必要とされる。
【0036】
反対方向に分離する衛星は、正確な径方向における分離の場合を除いて、それらの衛星間に時間期間差(time period difference)を常に有する。したがって、衛星は、速度方向に分離される一方のグループと、反対速度方向に分離される他方のグループとの2つのグループに分割され、一方の衛星グループのシーケンスタイミングが求められ、他方のグループは同じタイミングで同時に分離される。0.20度/秒~0.35度/秒の小さなロールレートが、軌道面における分離の所望の角度を得るために使用される。この設計方法論は、径方向分離についてのみ使用される。軸方向分離については、全ての衛星が、所望の最小距離を満たす固定された最適な姿勢で分離される。
【0037】
軸方向における衛星の分離後、速度方向及び反対速度方向に沿った軌道面における他の衛星の分離を確保するように、上段の再方位付けが行われる。2つの分離ペアの間の差速が、それらの分離ペアを速度方向及び反対速度方向に分離することによって確保される。打ち上げ機の縦軸が軌道法線方向と整列され、その後、0.20度/秒~0.35度/秒のレートで回転され、分離のタイミングが、同じ方向における2つの分離の間のイントラックデルタv差分を与える軌道面における分離方向を達成するように選択される。これによって、分離する2つの衛星が短期間及び長期間の軌道進化において互いに接触しないことが確保される。
【0038】
このシーケンスは、打ち上げ機が回転していない場合であっても、1つの軌道における0度~360度の速度ベクトルの回転に起因して機能する。衛星分離の方向は、円形軌道に適切なレートを有する打ち上げ機の自然なローリング(打ち上げ機の縦軸は軌道法線ベクトルと整列されていると仮定する)の効果を与える局所面に対して自然に変化する。このレートは、計画的なロールレート(roll rate)の場合にも更に利用可能である。非常に小さなレートに起因して、これは、分離により長い継続時間を要する。本方法は、適切に位置決めされたカメラを使用して全ての衛星分離事象の視覚映像を取得することも含む。
【0039】
例えば、25個のクァッドパック(101個の衛星を収容する)と、2つのISROナノサットと、メイン衛星との搭載は、打ち上げ機のヨー軸の回りに対称に配置されると、その結果、分離する衛星の全てが搭載自体による制御システムプルームに入ることになる。その場合、衛星の各ペアの間の最小距離が、100000分の1の衝突確率を確保する各衛星の最大配備サイズを包含する球を使用して計算される。この分離シーケンスは、2つの径方向に分離する衛星を、有限時間ギャップを伴って速度方向及び反対速度方向に同時に分離するように、計画的なロールレートを用いて設計され、それによって、ギャップが、5460個の全ての物体ペアについて、最初の10個の軌道において増加し続けることが確保される。
【0040】
図3は、本明細書における実施形態による、打ち上げ機における機械構造部を使用して複数の衛星を配備及び発射するフロー図300を示している。ステップ302において、機械構造部に設けられた1つ以上の搭載手段において複数の衛星が位置決めされる。これらの搭載手段は、最大衝突確率(Pmax)に基づく長期無衝突要件を満たす距離に配置される。ステップ304において、第1の一組の衛星が、複数の衛星から軸方向に分離され、第2の一組の衛星が、複数の衛星から径方向に分離される。ステップ306において、第2の一組の衛星が、速度方向及び反対速度方向に基づく2つのグループに分割される。ステップ308において、速度方向及び反対速度方向に沿った軌道面における衛星の分離を確実にするように0.20度~0.35度の小さなロールレートを有する2つのグループのうちのいずれか一方の下にグループ化された衛星が、再方位付けされて分離される。ステップ310において、軸方向に配置された第1の一組の衛星と、径方向に配置された第2の一組の衛星の一部分と、傾斜方向に配置された第2の一組の衛星の残りの部分とが打ち上げ機から発射され、適切なイントラックデルタv分布を用いて分離される。全ての分離事象をキャプチャすることができるビデオ撮像システムが適切に搭載され、位置決めされる。分離するステップは、全ての衛星を、全ての分離について所望の最小距離を満たす最適な姿勢で分離することができることを確保する。再方位付けするステップにおいて、ロールレート可制御性が、軌道面における分離の所望の角度及び方向を得るための0.20度~0.35度で達成される。分離のロールレート及びタイミングは、分離する2つの衛星が短期間及び長期間の軌道進化において互いに接触しないことを確保する2つの分離の間の所望のイントラックデルタv差分を与える軌道面における分離の方向を達成するように選択される。分離するステップは、上段制御スラスターのプルームと分離する衛星との間の相互作用がないことを確保する。
【0041】
本実施形態は、短い継続時間内の複数の衛星の安全な配備のためのシステム及び方法論を容易にする。本方法は、安全な分離を確保するように複数の衛星の搭載構成を設計することと、複数の衛星のクリーンな分離及び分離された衛星の間の安全な運動を確保するとともに、分離中に衛星と打ち上げ機制御システムプルームとの間の相互作用を防止するマヌーバを有する分離シーケンスを構成することとから構成される。衛星分離方向は、分離後に、衛星が制御システムプルームに入る可能性がないように最終決定される。これが最終決定されると、分離の時刻を調整することによって、分離する衛星間のギャップが十分なものとなるように近接分析が行われる。本方法は、適切に位置決めされたビデオ撮像システムを使用して全ての衛星分離事象のビデオ画像をキャプチャすることも含む。本実施形態の技術的利点は、以下の通りである。
1.分離される第1の一群の衛星の軸方向分離と、分離される第2の一群の衛星の傾斜方向分離と、残りの衛星の径方向分離とが達成される。
2.このマヌーバを有しない通常のシーケンスと比べて、段切り離し後に100000分の1の衝突確率を有する短いミッション継続時間内で全ての衛星分離が完了することが確保される。
3.同じシーケンサーから分離する衛星の最小時間遅延が確保される。
4.衛星分離に使用される再方位付けの数が最小となる。
5.全ての分離された衛星の衛星間ギャップが、最初の10個の軌道において増加し続けることが確保される。
【0042】
上記説明は限定ではなく例示であることを意図したものであることが理解されよう。上記説明を読んで理解することで、他の多くの実施形態が当業者に明らかになる。本発明は、特定の例示的な実施形態に関して説明されているが、本発明は、説明した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内において変更及び変形を行うことができることが認識されるであろう。したがって、明細書及び図面は、限定の意味ではなく例示の意味にみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに添付の特許請求の範囲に関して画定されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】