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特表2022-517527広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオードおよびその取得方法
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  • 特表-広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオードおよびその取得方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(54)【発明の名称】広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオードおよびその取得方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536740
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 TR2019050901
(87)【国際公開番号】W WO2020130972
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】2018/19952
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521272481
【氏名又は名称】ハジェテペ ユニヴェルシテシ
(71)【出願人】
【識別番号】520485572
【氏名又は名称】オルタ ドグ テクニク ユニヴェルシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タンセル,トゥネイ
(72)【発明者】
【氏名】トゥラン,ラシット
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA01
5F849AB03
5F849AB16
5F849BA09
5F849CB06
5F849CB08
5F849CB14
5F849DA02
5F849FA05
5F849GA04
5F849GA12
5F849LA01
5F849LA02
5F849XB06
5F849XB15
5F849XB16
5F849XB33
(57)【要約】
本発明は、可視域および近赤外に加えて中波赤外および遠波長までの広帯域範囲で機能し、カルコゲン群(S(硫黄)、Se(セレン)、Te(テルル))の元素によるブラックシリコンのドープ状態を含む半導体フォトダイオード(光検出器)およびその取得方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体フォトダイオード(1)であって、
レーザによって粗面化されたときに光吸収を提供することができる微細構造の光吸収領域(2)と、
アルミニウム(Al)、銀(Ag)などの金属材料でコーティングされた第1の電気的下部接点(3)と、
結晶シリコン(c-Si)からなるシリコン(4)と、
アルミニウム(Al)、銀(Ag)などの金属材料でコーティングされた第2の電気的下部接点(5)と、
カルコゲン元素が注入された前記シリコーン(4)領域へのパルスレーザによるドーピングの結果として得られる、カルコゲンドープ超充填シリコーン領域(6)と、
アルミニウム(Al)-(Al)-銀(Ag)を含む二層合金、チタン(Ti)-金(Au)を含む二層合金、Ti-白金(Pt)-Au-Agを含む三層合金、またはTi-鉛(Pb)-Agを含む三層合金を使用することによって、一般に10nm~1000nmの厚さ範囲でコーティングされた上部電気的接点(7)部品と、を含むことを特徴とする、半導体フォトダイオード(1)。
【請求項2】
前記第1の電気的下部接点(3)は、オーミック接点を作成する金属で作られることを特徴とする、請求項1に記載の半導体フォトダイオード(1)。
【請求項3】
前記第2の電気的下部接点(5)は、オーミック接点を作成する金属で作られることを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体フォトダイオード(1)。
【請求項4】
前記上部電気的接点(7)は、オーミック接点を作成する金属で作られることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード(1)。
【請求項5】
可視域および近赤外に加えて、中および長赤外波長までの広帯域範囲で機能することができることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード(1)。
【請求項6】
入射する低エネルギー光子を保持し、高い反応を示すことを可能にすることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード(1)。
【請求項7】
軍隊、法執行機関、防衛産業(ナイトビュー)、様々な健康、産業分野(電界、断熱など)、情報技術およびエネルギー部門(光電池)においてより広い波長で機能する可能性があることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード(1)。
【請求項8】
半導体フォトダイオード取得方法(100)であって、
前記シリコーン(4)試料を調製するステップ(101)と、
前記カルコゲン元素を前記シリコーン(4)の単一表面に注入するステップ(102)と、
前記注入されたシリコーン(4)表面をパルスレーザ(レーザ支援ドーピング)による溶融時にドーピングするステップ(103)と、
パルスレーザ(衝撃/非衝撃)によって前記シリコーン(4)の非注入(他の表面)領域を溶融するステップ(104)と、
前記シリコーン(4)表面からの電気信号および電気光学信号を測定するためのメサ(ラスタライゼーション)構造(微細加工)を作成するステップ(105)と、
前記シリコーン(4)表面から電気および光電気信号を受け取るために、前記表面を金属でコーティングするステップ(106)と、
前記金属と前記シリコーン(4)との間にオーミック接点を形成し、発生した構造応力および欠陥を改善するために熱アニールを行うステップ(107)と、を含むことを特徴とする、半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項9】
1~10Ωcmの抵抗率値を有する半導体「p型/n型Si(100)、Si(111)またはSi(110)」結晶を使用することによって前記シリコーン(4)試料を調製(101)する前記ステップを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項10】
前記シリコーンの任意の表面に受動的に注入されたカルコゲン元素である前記S、SeおよびTe元素を注入することによって実現される、前記シリコーン(4)の単一表面に前記カルコゲン元素を注入(102)する前記ステップを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項11】
前記カルコゲン元素でレーザ支援ドーピング技術を使用することによって前記シリコーン(4)表面をドーピングすることによって実現される、前記シリコーン(4)の単一表面に前記カルコゲン元素を注入(102)する前記ステップを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項12】
前記カルコゲン元素が注入された前記シリコーン(4)表面に少数回のレーザパルスを実行することによって実現されるパルスレーザ(レーザ支援ドーピング)によって、前記注入されたシリコーン(4)表面を溶融時にドーピング(103)する前記ステップを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項13】
前記カルコゲン元素が前記カルコゲンドープシリコーン(4)材料内に位置する前記層をレーザによって溶融しながら、レーザ出力、レーザ放射パルス回数、パルス周波数、パルス持続時間、走査速度および波長などのパラメータの適切な値で処理が実行される、前記注入されたシリコーン(4)表面をパルスレーザ(レーザ支援ドーピング)によって溶融する際にドーピング(103)する前記ステップを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項14】
前記カルコゲン元素が、最適値で作用することによって、または前記層を適切に溶融することができない結果、前記シリコーン(4)原子と前記カルコゲン元素とが適切に結合できないことを防止することによって配置される、前記注入されたシリコーン(4)表面を、前記層の消失(アブレーション)を回避することを可能にするパルスレーザ(レーザ支援ドーピング)によって溶融時にドーピング(103)する前記ステップを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項15】
最適値で作用することによって前記シリコーン(4)の前記注入表面側のオーバドーピング(ナノメートルの深さに位置する前記カルコゲン元素)を実現する、前記注入されたシリコーン(4)表面を溶融時にパルスレーザによってドーピング(レーザ支援ドーピング)(103)する前記ステップを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項16】
前記注入されたカルコゲン元素の濃度が蒸発によって低下するのを防止し、かつ少数回のレーザパルスを実行することによってオーバドーピングを実現するパルスレーザ(レーザ支援ドーピング)(103)によって、前記注入されたシリコーン(4)表面を溶融時にドーピングする前記ステップを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項17】
注入された前記シリコーン(4)表面を、より広い中間エネルギー帯域を作り出すことによって前記シリコーン(4)がより長い波長で反応性を示すことを可能にするパルスレーザによって溶融時にドーピング(レーザ支援ドーピング)(103)する前記ステップを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項18】
真空チャンバチャンバにおける真空下、ガス(例えば、空気、不活性ガスまたは非不活性ガスなど)雰囲気または蒸留水環境下でパルスレーザを介して溶融/アブレーションし、光の吸収を可能にするマイクロ/ナノ構造(吸収体層)を得て、前記シリコーン(4)の前記表面反射を低減することによって広帯域波長の光の吸収を生じさせることによって、前記テーブル上に位置する前記シリコーン(4)の前記非注入(前記カルコゲン元素を含まない)表面を粗面化(テクスチャ化)する処理を行うパルスレーザ(衝撃/非衝撃)によって、前記シリコーン(4)の前記非注入(他の表面)領域を溶融(104)する前記ステップを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項19】
前記注入濃度を低下させないために、前記非注入表面上で処理を実行することによって、前記シリコーン(4)の光学的、電気光学的およびエネルギーバンド構造の特徴を変更/発展させるために、ドープおよび非ドープ表面を互いに独立して処理するパルスレーザ(衝撃/非衝撃)によって前記シリコーン(4)の前記非注入(他の表面)領域を溶融(104)する前記ステップを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項20】
古典的/標準的なメサエッチング技術またはフォトリソグラフィメサ研磨(ラスタライゼーション)技術またはフォトリソグラフィメサ研磨技術を使用することによって光検出器用のメサ構造を作成する、前記シリコーン(4)表面からの電気信号および電気光学信号を測定するためのメサ(ラスタライゼーション)構造(微細加工)を作成(105)する前記ステップを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項21】
前記カルコゲンドープシリコーン(4)表面上の要求される点を要求される深さでレーザによって最適なパラメータで研磨することによってメサ構造を作成する、前記シリコーン(4)表面からの電気および電気光学信号を測定するためのメサ(ラスタライゼーション)構造(微細加工)を作成(105)する前記ステップを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項22】
研磨中に前記表面上に生じるシリコーン酸化物は、HF(フッ化水素)を塗布することによって前記表面から除去され、メサが得られる、前記シリコーン(4)表面からの電気信号および電気光学信号を測定するためのメサ(ラスタライゼーション)構造(微細加工)を作成(105)する前記ステップを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項23】
古典的/標準的な金属コーティング(メタライゼーション)技術によって前記第1の電気的下部接点(3)、前記第2の電気的下部接点(5)、および前記上部電気的接点(7)を得る、前記シリコーン(4)表面から電気および光電気信号を受け取るために前記表面を金属でコーティング(106)する前記ステップを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項24】
前記第1の電気的下部接点(3)、前記第2の電気的下部接点(5)および前記上部電気的接点(7)は、前記シリコーン(4)の前記非注入側が金属薄膜でコーティングされた前記ガラス表面上に着座しているときに得られ、前記研磨シリコーン(4)表面の特定の点は、真空環境において前記パルスレーザによって作られた前記パルスによって蒸発する際に金属でコーティングされる、前記シリコーン(4)表面から電気および光電気信号を受け取るために前記表面を金属でコーティング(106)する前記ステップを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【請求項25】
前記金属と前記シリコーン(4)との間にオーミック接点を形成し、発生した構造応力および欠陥を改善するために、350K~900Kの温度値の間および5分~60分の時間間隔で実行される、熱アニールを実行(107)する前記ステップを特徴とする、請求項1から24のいずれか一項に記載の半導体フォトダイオード取得方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視域および近赤外に加えて中波赤外および遠波長までの広帯域範囲で機能し、カルコゲン群(S(硫黄)、Se(セレン)、Te(テルル))の元素によるブラックシリコンのドープ状態を含む半導体フォトダイオード(光検出器)およびその取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラックシリコン(b-Si)と呼ばれる材料はまた、有用な光学的および電気的特徴を有するシリコンの変形である。この材料は、その表面に到達する光のほとんどすべてをその内部に含み、したがって入射光から最大の利益を提供する。したがって、太陽エネルギーおよび光検出器システムに有用であると言える。
【0003】
今日、光検出器分野では、主に量子井戸赤外線光検出器(QWIP-Quantum Well Infrared Photodetector)、テルル化カドミウム水銀(Mercury Cadmium Telluride-MCT)およびII型スーパーメッシュ検出器が一般的に使用されている。しかしながら、製造工程中のこれらの検出器の高コストを考慮すると、より費用対効果の高い検出器代替物の探索は避けられなくなる。これらのタイプの検出器の代替として、低コストの原材料および製造コストのために、カルコゲンドープシリコン光検出器に関する研究が開始されている。後の研究では、超高硫黄が局所的かつ迅速にドープされたシリコン系材料の表面を溶融することによって微細構造化検出器が得られている。また、シリコン系太陽電池の低コスト化による高効率化により、エネルギー部門におけるシリコンの有用性も急速に高まっている。最初に、太陽電池の性能を高めるために、シリコンを通常よりも高くドープすることによってシリコンの表面を粗面化するという考えが提案された。それによって、可視域に加えて近赤外線も吸収することができ、中間エネルギー準位の豊富さにより太陽光をより効率的に利用できると考えられた。実施されたオーバドーピングと共に赤外線バンドで光反応を得る際に、赤外線画像化にブラックシリコン材料を使用するという考えが浮上した。
【0004】
2000年代までにブラックシリコンの高い光電子的特徴が発見されると、ナノ秒およびフェムト秒パルスレーザによって超高速溶融プロセスがオーバドーピングされたシリコン試料の表面に同期的に適用され、表面上に針状微細構造を作成することによって表面光吸収が可視および近赤外領域で90%を超えて増加することが可能になった。また、表面のこれら微細構造は、高さに依存して吸収に影響を与えることが明らかとなった。次いで、2つの電子を提供するドナーイオンでドープするためにカルコゲンイオンを使用することによって、表面に硫黄、セレンおよびテルル層状微細構造(微結晶)を作成することが達成された。また、この材料は、高い吸収性および反応性などの有意な光電子的特徴を有することが示された。
【0005】
近赤外波長で生成された試料から高い吸収率および効率が達成された。これらの結果に基づいて、近赤外領域の検出が可能な光検出器が開発された。その後、ブラックシリコン光検出器が市販されている。
【0006】
近年、シリコンデバイス(赤外線半導体フォトダイオード、発光ダイオード、および薄膜太陽電池)の製造技術は、低コストおよび高性能に基づいて開発されている。実施されたいくつかの研究では、イオン注入、拡散などの方法を用いてカルコゲン元素でシリコン材料をドープし、得られたこれらの微細構造化シリコン材料をフェムト秒レーザで処理し、それらの光電子的特徴を調べた。
【0007】
主題についての以前の研究を調べたとき、シリコン系の赤外線光検出器材料の製造に使用されるフェムトまたはピコ秒レーザパラメータのパラメータおよび試料厚さは、明らかに示すことができないことが分かった。
【0008】
2500nmの波長に関する光学的(吸収率)研究がなく、1250nmの波長に関する電気光学的研究がないという事実は、現在のところ重大な欠陥として際立っている。この値に対して吸収スペクトル挙動を示し、これらの光検出器がより長い波長で機能するかどうかを検出し、高濃度の光検出器のドーピング濃度によって与えられる反応を検出し、約1250nmの波長に対する光検出器の電気光学測定値も得ることが必要である。
【0009】
最新技術の出願である特許文献1は、広い波長範囲で機能するカルコゲン元素でドープされたブラックシリコン材料を開示している。
【0010】
最新技術の別の出願である特許文献2は、ブラックシリコン系金属-半導体光検出器の製造方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、可視域および近赤外に加えて、中波赤外および遠波長までの広帯域範囲で機能するカルコゲンドープブラックシリコン(Si)系半導体フォトダイオード(光検出器)およびその取得方法を実現することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ブラックシリコン試料にカルコゲンドープ半導体フォトダイオード(光検出器)およびその取得方法を実現することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の目的を達成するために実現される「広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオードおよびその取得方法」を添付の図面に示す。
【0014】
図1】本発明の半導体フォトダイオードの側面図である。
図2】本発明の半導体フォトダイオード取得方法に関するフローチャートである。
【0015】
図に示されている構成要素には個別に番号が付けられており、番号は以下を指す。
1.半導体フォトダイオード
2.光吸収領域
3.第1の電気的下部接点
4.シリコーン
5.第2の電気的下部接点
6.カルコゲンドープハイパーフィルドシリコーン領域
7.上部電気的接点
【発明を実施するための形態】
【0016】
広帯域範囲で機能する本発明の半導体フォトダイオード(1)は、
-レーザによって粗面化されたときに光吸収を提供することができる微細構造の光吸収領域(2)と、
-アルミニウム(Al)、銀(Ag)などの金属材料でコーティングされた第1の電気的下部接点(3)と、
-結晶シリコン(c-Si)からなるシリコン(4)と、
-アルミニウム(Al)、銀(Ag)などの金属材料でコーティングされた第2の電気的下部接点(5)と、
-カルコゲン元素が注入されたシリコーン(4)領域へのパルスレーザによるドーピングの結果として得られる、カルコゲンドープ超充填シリコーン領域(6)と、
-アルミニウム(Al)-(Al)-銀(Ag)を含む二層合金、チタン(Ti)-金(Au)を含む二層合金、Ti-白金(Pt)-Au-Agを含む三層合金、またはTi-鉛(Pb)-Agを含む三層合金を使用することによって、一般に10nm~1000nmの厚さ範囲でコーティングされた上部電気的接点(7)部品と、を含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、第1の電気的下部接点(3)は、オーミック接点を形成する金属で作られる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、第2の電気的下部接点(5)は、オーミック接点を形成する金属で作られる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、上部電気的接点(7)は、オーミック接点を形成する金属で作られる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオード(1)は、可視域および近赤外に加えて、中および長赤外波長までの広帯域範囲で機能することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、(電磁スペクトルの)広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオード(1)は、入射する低エネルギー光子を保持し、高い反応を示すことを可能にする。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、広帯域範囲で機能する半導体フォトダイオード(1)によって、好ましい半導体フォトダイオードは、軍隊、法執行機関、防衛産業(ナイトビュー)、様々な健康、産業分野(電界、断熱など)、情報技術およびエネルギー部門(光電池)においてより広い波長で機能する可能性がある。
【0023】
本発明の半導体フォトダイオード(1)を得る方法(100)は、
-シリコーン(4)試料を調製するステップ(101)と、
-カルコゲン元素をシリコーン(4)の単一表面に注入するステップ(102)と、
-注入されたシリコーン(4)表面をパルスレーザ(レーザ支援ドーピング)による溶融時にドーピングするステップ(103)と、
-パルスレーザ(衝撃/非衝撃)によってシリコーン(4)の非注入(他の表面)領域を溶融するステップ(104)と、
-シリコーン(4)表面からの電気信号および電気光学信号を測定するためのメサ(ラスタライゼーション)構造(微細加工)を作成するステップ(105)と、
-シリコーン(4)表面から電気および光電気信号を受け取るために、表面を金属でコーティングするステップ(106)と、
-金属とシリコーン(4)との間にオーミック接点を形成し、発生した構造応力および欠陥を改善するために熱アニールを行うステップ(107)と、を含む。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、1~10Ωcmの抵抗率値を有する半導体「p型/n型Si(100)、Si(111)またはSi(110)」結晶が、シリコーン(4)試料を調製(101)しながら使用される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、カルコゲン元素であるS、SeおよびTe元素は、シリコーン(4)の単一表面にカルコゲン元素を注入(102)する処理のために、シリコーンの任意の表面に受動的に注入される(注入パラメータを表1に示す)。ここで、シリコーン(4)表面は、カルコゲン元素によるレーザ支援ドーピング技術を使用することによってドープされる。
【表1】
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、パルスレーザ(レーザ支援ドーピング)によって溶融(103)する際に注入されたシリコーン(4)表面をドーピングする処理において、カルコゲン元素が注入されたシリコーン(4)表面上で少数回のレーザパルスが実行される(関連するレーザパルスパラメータを表2に示す)。カルコゲン元素がカルコゲンドープシリコーン(4)材料中に位置する層をレーザによって溶融しながら、レーザ出力、レーザ放射パルス回数、パルス周波数、パルス持続時間、走査速度および波長などのパラメータの適切な値で処理を実行する必要がある。表2に含まれる最適値で作用しないと、カルコゲン元素が位置する層が過剰に溶融(アブレーション)して消失したり、または前記層を適切に溶融することができない結果、シリコーン(4)原子とカルコゲン元素とが適切に結合できない場合がある。これにより、シリコーン(4)の注入表面側のオーバドーピング(ナノメートルの深さに位置するカルコゲン元素)が実現される。レーザパルスの実行回数が少ない理由は、蒸発によるカルコゲン元素の注入濃度の低下を防止し、オーバドープを実現するためである。したがって、シリコーン(4)は、より広い中間エネルギー帯域を作り出すことによって、より長い波長での反応性を高める。また、このシリコーン(4)は、微細加工(ラスタライゼーション)に有利である。
【表2】
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、シリコーン(4)結晶は、パルスレーザ(衝撃/非衝撃)(104)によってシリコーン(4)の非注入(他の表面)領域を溶融する処理のために最初にテーブルに配置される。シリコーン(4)結晶が配置されているこのテーブルを真空チャンバに運び、環境を真空にする。または、この処理は、ガス(例えば、空気、不活性ガスまたは非不活性ガスなど)雰囲気下または蒸留水環境下で行うこともできる。処理に適した環境が作成された後、シリコーン(4)の非注入(カルコゲン元素を含まない)表面をパルスレーザにより溶融/アブレーションすることにより、表面を粗面化(テクスチャ化)し、光を吸収可能なマイクロ/ナノ構造体(吸収体層)を得て、シリコーン(4)の表面反射を低減することにより、広帯域波長での光吸収が付与/増強される。注入濃度を低下させないために、この表面で処理が実行される(関連するレーザパルスパラメータを表3に示す)。これにより、シリコーン(4)の光学的、電気光学的およびエネルギーバンド構造の特徴を変更/発展させるために、ドープされた表面およびドープされていない表面に対して互いに独立して処理を実行することができる。
【表3】
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、シリコーン(4)表面からの電気信号および電気光学信号を測定するためのメサ(ラスタライゼーション)構造(微細加工)を作成(105)する処理は、古典的/標準的なメサエッチング技術またはフォトリソグラフィメサ研磨(ラスタライゼーション)技術またはフォトリソグラフィメサ研磨技術(図1)を使用することによって光検出器用のメサ構造を作成する。レーザ研磨法の使用は、メサ構造を作成するための別の技術である。メサ構造は、カルコゲンドープシリコーン(4)表面上の要求される点を要求される深さでレーザによって最適なパラメータで研磨することによって作成される。研磨中に表面にシリコーン酸化物が発生するが、HF(フッ化水素)を塗布して表面から酸化層を除去することでメサが得られる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、シリコーン(4)表面から電気および光電気信号を受け取るために、表面を金属でコーティング(106)する処理において古典的/標準的な金属コーティング(メタライゼーション)技術が使用される。これにより、第1の電気的下部接点(3)、第2の電気的下部接点(5)および上部電気的接点(7)が得られる。金属コーティング処理が実行された後に得られた金属層を示す半導体フォトダイオード構造も図1に示されている。
【0030】
本発明の別の実施形態では、シリコーン(4)表面から電気および光電気信号を受け取るために表面を金属でコーティング(106)する処理において、シリコーン(4)の非注入側は、金属薄膜でコーティングされたガラス表面上に着座し、研磨シリコーン(4)表面の特定の点は、真空環境においてパルスレーザによって行われるパルスによって蒸発する際に金属でコーティングされる。これにより、第1の電気的下部接点(3)、第2の電気的下部接点(5)および上部電気的接点(7)が得られる(金属コーティング処理が実行された後に得られた金属層を示す半導体フォトダイオード構造も図1に示されている)。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、金属とシリコーン(4)との間にオーミック接点を形成し、発生した構造応力および欠陥を改善するために熱アニールを実行(107)する処理は、350K~900Kの温度値の間および5分~60分の時間間隔で実行される。
【0032】
これらの基本概念において、広帯域範囲で機能する本発明の半導体フォトダイオードの様々な実施形態(1)およびその取得方法(100)を開発することが可能であり、本発明は、本明細書に開示された例に限定されず、本質的に特許請求の範囲による。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】中国特許第105655419号明細書
【特許文献2】米国特許第2012012967号明細書
図1
図2
【国際調査報告】