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特表2022-517531神経学的疾患のための二重幹細胞治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(54)【発明の名称】神経学的疾患のための二重幹細胞治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20220302BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220302BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220302BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220302BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220302BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20220302BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20220302BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20220302BHJP
   A61K 47/04 20060101ALN20220302BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P43/00 121
A61P25/00
A61K35/15 A
A61K33/00
C12N5/0775 ZNA
C12N5/0789
A61P25/16
A61K47/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021537075
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020014041
(87)【国際公開番号】W WO2020150580
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】62/794,041
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521174912
【氏名又は名称】アブラハム ジェイ アンド フィリス カッツ コード ブラッド ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラフリン,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】ズウィック,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA25
4B065BD39
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD21
4C086AA01
4C086HA08
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB59
4C087BB64
4C087CA04
4C087DA14
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZC75
(57)【要約】
造血幹細胞および間葉系間質細胞を対象に投与することを含む、パーキンソン病等のニューロン損傷を治療するための組成物および方法が提供される。臍帯血を含む血液からそのような組成物を生成するための方法もまた提供される。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の実質的に精製されたCD133+造血幹細胞(HSC)の第1の組成物および実質的に精製された間葉系間質細胞(MSC)の第2の組成物を対象に投与することを含む、必要とする前記対象における損傷したニューロンを治療するための方法。
【請求項2】
前記第1および第2の組成物が、投与前に組み合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HSCおよびMSCが、前記対象に対して自己である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記HSCおよびMSCが、前記対象に対して同種異系である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記同種異系HSCおよびMSCが、ヒト臍帯血由来である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記実質的に精製された組成物が、血液中に天然に見られる他の成分を少なくとも80%含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記HSCおよびMSCが、前記対象の脳内への定位誘導を介した実質内注射によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ニューロン損傷が、パーキンソン病に起因する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与後に前記対象の前記脳を電気的に刺激することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
実質的に精製された間葉系間質細胞(MSC)と組み合わせて実質的に精製されたCD133+造血幹細胞(HSC)を含む、治療上有効な用量の薬学的組成物。
【請求項11】
神経学的疾患を治療するための組成物を生成するための方法であって、
血液を提供することと、
CD133+造血幹細胞(HSC)の実質的に純粋な組成物を前記血液から単離することと、
間葉系間質細胞(MSC)の実質的に純粋な組成物を前記血液から単離することと、
前記実質的に純粋なCD133+HSCの組成物と、前記実質的に純粋なMSCの組成物とを組み合わせて、神経学的疾患を治療するための組成物を生成することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記血液が、ヒト臍帯血である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記MSCが、単離の前に前記血液中の単核細胞(MNC)からさらに培養される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記実質的に精製された組成物が、前記血液中の他の成分を少なくとも80%含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
有効量の請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、必要とする前記対象における神経学的疾患を治療するための方法。
【請求項16】
前記投与が、前記対象の脳内への定位誘導を介した実質内注射による、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ニューロン損傷が、パーキンソン病に起因する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与後に前記対象の前記脳を電気的に刺激することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
投与前に前記組成物中のHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、トンネルナノチューブ形成を促進することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
投与前にHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、有効量の活性酸素種を前記組成物と組み合わせることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
投与前にHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、前記組成物中のCD73またはA2Aシグナル伝達を活性化することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、または低酸素が、CD73シグナル伝達を活性化するために使用される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年1月18日に出願された米国仮出願第62/794,041号の優先権利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、概して、パーキンソン病および他の神経学的疾患を治療するための細胞組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、100万人近いアメリカ人に影響を及ぼしている消耗性の神経変性疾患である。1,2PDは、ドーパミンを産生する黒質(SN)におけるニューロンの段階的変性を伴い、最終的には消耗性の運動障害およびうつ病をもたらす。現在のところ、カルビドパ/レボドパ(Sinemet)の標準的な薬物治療レジメンにより、内因性ドーパミン放出を増強し、PDの症状を緩和することができるが、レボドパで長期的に治療される患者は、ある時点で、通常、薬物治療を開始してから3~5年後に、ジスキネジアを経験する可能性がある。最も重要なことは、レボドパはドーパミン作動性ニューロンの再生を誘導せず、既存の治療法は、長期的に疾患の進行を制御するまたは逆行させる際の有効性が限定されることである。
【0004】
PDに対する革新的な治療アプローチを開発する必要性がある。幹細胞は、疾患の病因を制御し、潜在的に逆転させる有望な手段を提供する。PD治療における幹細胞の可能性は、同種異系胎児組織移植を用いたヒト介入概念証明研究が症状およびPD病理を逆転させるという初期の証拠が示された後、30年超にわたって認識されている。これらのPD患者の死後分析により、同種異系胎児ドーパミン作動性組織移植片が解剖学的に組み込まれ、宿主の線条体投射ニューロンと正常なシナプス接触を形成することができると考えられることが示唆された。しかし、幹細胞治療の治療効果の根底には、直接的機構および間接的機構の両方が存在すると考えられる。前臨床研究におけるヒト胚性幹細胞(hESC)および誘導多能性幹細胞(iPSC)は、ドーパミン作動性ニューロンに分化してそれに置き換わる可能性を示しているが、hESCは倫理的な問題を伴い、幹細胞の両方の供給源が奇形腫形成のリスクを伴う。
【0005】
対照的に、臍帯血(UCB)は、hESCおよびiPSCよりも安全であり、より容易に取得される原始幹細胞の豊富な供給源である。癌遺伝子を用いた侵襲的処置もしくは遺伝子操作が必要ではないか、またはUCB幹細胞に関連する倫理的な問題がなく、Webベースの検索エンジンを介して移植医チームにリンクされた66万個を超える臨床グレードのUCB幹細胞移植片の現在の世界的な在庫によって、幹細胞移植を必要とする個々の患者のための最適なHLAマッチおよび細胞用量が保証されている。UCBは、バチカンを含む全ての宗教団体によって承認されている。さらに、UCB幹細胞治療によって治療された約4万人のヒトの(30年を超える)長期的な観察により、患者にはドナー由来の奇形腫形成の証拠がないことが明らかになっている。
【0006】
間葉系間質細胞(MSC)は、動物モデルおよび臨床試験において神経再生能を示している。8,9残念ながら、これまでのところ、MSCによるPD臨床症状の制御または逆転は実証されていない。10前臨床インビトロモデルおよびマウスPD前臨床モデルにおける明らかな神経保護能力を考慮すると、ヒトPD臨床試験におけるMSCの相対的な失敗は予想外であった。PDは、しばしば同時に微小血管形成の低下を伴って特に高齢者/個人に影響を与えるため、MSC治療単独の1つの限界は、この幹細胞集団が造血幹細胞(HSC)と比較して限定的な血管原性効果を有することである。PDの病態生理学は、微小血管変性に一部起因することがますます認識されている。UCB由来のCD133+HSCは、インビトロおよびインビボでロバストな血管形成を引き起こすことが以前に観察されている。11-19さらに、UCB CD133+HSCは、げっ歯類PDモデルにおいて、MSCと比較した場合に同等の血管原性電位を含む神経保護能力を発揮することが示されている。20,21限られた状況において、MSC/HSCは造血幹細胞移植において共移植されていた。25
【0007】
ある特定の神経学的治療手順では、脳深部刺激(DBS)が、細胞または組織移植とDBSとを組み合わせて用いられてきた。22DBS手術を受ける患者は、同じ手術手技中に、頭蓋内に定位的に投与される幹細胞移植片を同時に受けることができる。23,24しかしながら、特に、DBS単独では一般的に効果が非常に低い高齢者において、PDは血管系の疾患としてますます認識されている。26-28
【0008】
したがって、PDおよび他の神経学的疾患のための新しい治療組成物、それらの製造方法、およびそれらを用いた治療方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
実施形態において、本発明は、間葉系間質細胞(MSC)および造血幹細胞(HSC)を発現する原始CD133を含むPD治療に有用性を有するUCBにおいて再生幹細胞の2つの別個の集団の補完的かつ付加的な神経再生能を特定することに基づいて、パーキンソン病等の神経学的疾患に対する新規の幹細胞治療アプローチを提供する。
【0010】
実施形態において、本発明は、治療有効量の実質的に精製されたCD133+HSCの第1の組成物および実質的に精製されたMSCの第2の組成物を対象に投与することを含む、必要とする対象における損傷したニューロンを治療するための方法を提供する。実施形態において、第1および第2の組成物は、投与前に組み合わされる。
【0011】
実施形態において、HSCおよびMSCは、自己または同種異系であり得る血液から実質的に精製される。実施形態において、HSCおよびMSCは、ヒト臍帯血、血液、または骨髄から得られる。実施形態において、実質的に精製された組成物は、血液中に天然に見られる成分の少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%以上から単離される。
【0012】
実施形態において、投与は、対象の脳内への定位誘導を介した実質内注射である。実施形態において、ニューロン損傷はパーキンソン病に起因する。
【0013】
実施形態において、方法は、例えば、脳深部刺激(DBS)を介して、MSC/HSC投与後に対象の脳を電気的に刺激することをさらに含む。
【0014】
本発明は、実質的に精製された間葉系間質細胞(MSC)と組み合わせて実質的に精製されたCD133+造血幹細胞(HSC)を含む、治療上有効な用量の薬学的組成物をさらに提供する。
【0015】
本発明は、神経学的疾患を治療するための組成物を生成するための方法であって、血液を提供することと、CD133+造血幹細胞(HSC)の実質的に純粋な組成物を血液から単離することと、間葉系間質細胞(MSC)の実質的に純粋な組成物を血液から単離することと、実質的に純粋なCD133+HSCの組成物と、実質的に純粋なMSCの組成物とを組み合わせて、神経学的疾患を治療するための組成物を生成することと、を含む方法をさらに提供する。
【0016】
実施形態において、HSCおよびMSCは、自己または同種異系であり得る血液から実質的に精製される。実施形態において、HSCおよびMSCは、ヒト臍帯血、血液、または骨髄から得られる。実施形態において、実質的に精製された組成物は、血液中に天然に見られる成分の少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%以上から単離される。実施形態において、MSCは、単離の前に、血液中の単核細胞(MNC)からさらに培養される。
【0017】
実施形態において、方法は、投与前に組成物中のHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、トンネルナノチューブ形成を促進することを提供する。
【0018】
実施形態において、方法は、投与前にHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、有効量の活性酸素種を組成物と組み合わせることを提供する。
【0019】
実施形態において、方法は、投与前にHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、組成物中のCD73またはA2Aシグナル伝達を活性化することを提供する。1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、または低酸素が、CD73シグナル伝達を活性化するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】HSCが、損傷したドーパミン作動性ニューロンのMSCによって媒介される再生を増強することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+HSCとともに6時間共培養し、固定し、Tuj1および早期損傷マーカーである切断カスパーゼ3について染色し、ApoTome.2を装備したZeiss社製Axiovert Z1で可視化した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図1B】HSCが、損傷したドーパミン作動性ニューロンのMSCによって媒介される再生を増強することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+HSCとともに6時間共培養し、固定し、Tuj1および早期損傷マーカーである切断カスパーゼ3について染色し、ApoTome.2を装備したZeiss社製Axiovert Z1で可視化した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図2A】二重幹細胞が、分泌された可溶性因子を介してニューロンを保護することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、通常の分化培地またはMSC馴化培地で48時間培養し、図1に示すように染色および可視化した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図2B】二重幹細胞が、分泌された可溶性因子を介してニューロンを保護することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、通常の分化培地またはMSC馴化培地で48時間培養し、図1に示すように染色および可視化した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図3A】UCB MSCおよびHSCが損傷したドーパミン作動性ニューロンにミトコンドリアを供与することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のMitotracker Redで前標識したUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+HSCとともに6時間共培養し、ニューロンへのMitotrackerの移動を蛍光顕微鏡により監視した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図3B】UCB MSCおよびHSCが損傷したドーパミン作動性ニューロンにミトコンドリアを供与することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のMitotracker Redで前標識したUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+HSCとともに6時間共培養し、ニューロンへのMitotrackerの移動を蛍光顕微鏡により監視した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図3C】UCB MSCおよびHSCが損傷したドーパミン作動性ニューロンにミトコンドリアを供与することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のMitotracker Redで前標識したUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+HSCとともに6時間共培養し、ニューロンへのMitotrackerの移動を蛍光顕微鏡により監視した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
図4A】UBC CD133+HSCが、ニューロン再生における重要なプロセスである神経突起伸長を増強することを示す。
図4B】UBC CD133+HSCが、ニューロン再生における重要なプロセスである神経突起伸長を増強することを示す。
図4C】UBC CD133+HSCが、ニューロン再生における重要なプロセスである神経突起伸長を増強することを示す。
図5】二重幹細胞が神経突起伸長調節物質Tuj1の発現を増強することを示す。
図6】パラクリン機構自体が再生に寄与し得る程度を示す。
図7】HSCはまた、損傷したドーパミン作動性ニューロンにTNTを介してミトコンドリアを移動させることを示す。
図8】ROSをブロックすることにより6-OHDA誘発性の損傷が低減することを示す。
図9A】CD73が損傷したドーパミン作動性ニューロンの再生を媒介することを示す。
図9B】CD73が損傷したドーパミン作動性ニューロンの再生を媒介することを示す。
図10A】TNT形成および二重MSC+HSCからのミトコンドリア移動が、損傷したドーパミン作動性ニューロンからのシグナルによって能動的に誘導されることを示す。
図10B】TNT形成および二重MSC+HSCからのミトコンドリア移動が、損傷したドーパミン作動性ニューロンからのシグナルによって能動的に誘導されることを示す。
図11】ROSをブロックすることにより6-OHDA誘発性の損傷が低減することを示す。
図12】CD73がTNT形成およびミトコンドリア移動を媒介することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、単一のUCB臨床グレード移植片(したがって、HLAおよびKIRが同一である)に由来するMSCおよびHSC(MSC/HSC)を含む二重幹細胞治療に関する本発明の実施形態の基礎を成す再生療法における細胞間相互作用の複雑さを認識し、ドーパミン作動性ニューロンおよび支持細胞の再生を介してPDの病態生理学を制御するまたは逆転させるための補完的な再生効果を有する。
【0022】
本発明の第2の態様は、脳深部刺激(DBS)のために電極の留置を経験している薬物療法に失敗した対象において、定位誘導下でUCB二重幹細胞移植片を注射することを含む、PDの二重幹細胞治療の実施形態を提供する。DBSは、薬物で症状を十分に制御することができないPD患者に有効であることが示されている。本発明は、養子投与されたUCB二重幹細胞の神経再生機能を改善するための刺激を提供するために、電極および二重UCB MSC/HSC幹細胞移植片注射後に経時的に投与される低用量の電流を提供する。
【0023】
本発明の第3の態様は、神経新生を増強するUCB由来のMSC/HSCの補完的機構を用いたPD治療に対する幹細胞治療アプローチの実施形態を提供する。本発明は、インビトロで、損傷したドーパミン作動性ニューロンへのミトコンドリアの移動を実証する。
【0024】
実施形態において、本発明は、間葉系間質細胞(MSC)および造血幹細胞(HSC)を発現する原始CD133を含むPD治療に可能性を有するUCBにおいて再生幹細胞の2つの別個の集団の補完的かつ付加的な神経再生能を特定することに基づいて、パーキンソン病等の神経学的疾患に対する新規の幹細胞治療アプローチを提供する。
【0025】
実施形態において、本発明は、治療有効量の実質的に精製されたCD133+HSCの第1の組成物および実質的に精製されたMSCの第2の組成物を対象に投与することを含む、必要とする対象における損傷したニューロンを治療するための方法を提供する。実施形態において、第1および第2の組成物は、投与前に組み合わされる。
【0026】
実施形態において、HSCおよびMSCは、自己または同種異系であり得る血液から実質的に精製される。実施形態において、HSCおよびMSCは、ヒト臍帯血、血液、または骨髄から得られる。実施形態において、実質的に精製された組成物は、血液中に天然に見られる成分の少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%以上から単離される。
【0027】
実施形態において、投与は、対象の脳内への定位誘導を介した実質内注射である。実施形態において、ニューロン損傷はパーキンソン病に起因する。
【0028】
実施形態において、方法は、例えば、脳深部刺激(DBS)を介して、投与後に対象の脳を電気的に刺激することをさらに含む。
【0029】
本発明は、実質的に精製された間葉系間質細胞(MSC)と組み合わせて実質的に精製されたCD133+造血幹細胞(HSC)を含む、治療上有効な用量の薬学的組成物をさらに提供する。
【0030】
本発明は、神経学的疾患を治療するための組成物を生成するための方法であって、血液を提供することと、CD133+造血幹細胞(HSC)の実質的に純粋な組成物を血液から単離することと、間葉系間質細胞(MSC)の実質的に純粋な組成物を血液から単離することと、実質的に純粋なCD133+HSCの組成物と、実質的に純粋なMSCの組成物とを組み合わせて、神経学的疾患を治療するための組成物を生成することと、を含む方法をさらに提供する。PDの治療のために等、細胞間のミトコンドリア移動を促進するための方法および組成物も提供される。
【0031】
実施形態において、HSCおよびMSCは、自己または同種異系であり得る血液から実質的に精製される。実施形態において、HSCおよびMSCは、ヒト臍帯血、血液、または骨髄から得られる。実施形態において、実質的に精製された組成物は、血液中に天然に見られる成分の少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%以上から単離される。実施形態において、MSCは、単離の前に、血液中の単核細胞(MNC)からさらに培養される。
【0032】
ある特定の実施形態において、方法および製造ステップは、CD133 HSC選択後にロバストなUCB MSCの伸長を確実なものにし、それによってヒトPD治療に好適な細胞用量で単一のUCB臨床グレード移植片からの二重幹細胞治療用細胞集団を可能にする単純な新規技術を含む。
【0033】
本発明は、投与前に組成物中のHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進するために、トンネルナノチューブ形成を促進することを更に提供する。本発明は、有効量の活性酸素種を組成物と組み合わせることにより、投与前にHSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進することを提供する。
【0034】
本発明は、組成物中のCD73またはA2Aシグナル伝達経路を促進することにより、HSCおよびMSCから損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動を促進することをさらに提供する。1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、または低酸素が、CD73シグナル伝達を促進するために使用され得る。
【0035】
本発明の要素またはその好ましい実施形態(複数可)を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「前記」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味することが意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0036】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「からなる」および/または「から本質的になる」ことを含むことを理解されたい。
【0037】
本開示全体を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、具体的に開示される全ての可能な部分範囲だけではなく、その範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の具体的に開示される部分範囲だけではなく、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を有すると考えられるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「約」は当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化する。当業者に明確でない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考慮して、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」は、ヒト患者が好ましい、治療される動物対象を意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「増殖(proliferation)」または「増殖(expansion)」は、細胞または細胞集団が数を増加させる能力を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「MSC」という用語は、単核細胞に由来し得る間葉系間質細胞を包含する。MSCを得るための技術は当該技術分野において周知であり、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/684,854号にさらに記載される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「HSC」という用語は、CD133+表現型を発現する造血幹細胞を包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「実質的に精製された」または「実質的に純粋な」は、第1の物質が天然に見られるもの等の、第2の物質の集団の近傍から除去された第1の物質の集団の特徴を指し、第1の物質の集団は必ずしも第2の物質を欠くものではなく、第2の物質の集団は必ずしも第1の物質を欠くものではない。しかしながら、第2の物質の集団から「実質的に精製された」第1の物質の集団は、第1および第2の物質の非分離混合物と比較して測定できるほどに低い含有量の第2の物質を有する。一態様では、第2の物質の少なくとも30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれよりも多くが、第1の物質から除去される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療上有効な」は、ニューロン損傷に関連する症状を治療もしくは改善する、または何らかの方法で軽減するのに十分な細胞の量を指す。方法に関して使用される場合、該方法は、異常応答に関連する症状を治療もしくは改善する、または何らかの方法で軽減するのに十分に有効である。例えば、疾患に関して有効な量は、疾患の発症を阻止もしくは予防するのに十分な量であるか、あるいは疾患病態が開始された場合、疾患を緩和し、改善し、安定化し、逆転させるかもしくは遅延させる、またはそうでなければ疾患の病理学的結果を軽減するのに十分な量である。いずれの場合においても、有効量は、単回用量または分割用量で与えられ得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、患者の異常状態に関連する症状の少なくとも改善を包含し、改善は、パラメータの大きさ、例えば、治療される状態に関連する症状の少なくとも軽減を指すために広義に使用される。そのため、「治療」はまた、疾患、障害、もしくは病理学的状態、または少なくともそれに関連する症状が、患者がその状態、または少なくともその状態を特徴付ける症状に罹患しなくなるように、完全に阻害される(例えば、起こることを防ぐ)または停止される(例えば、終了される)状況も含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、MSCおよびCD133+HSCは、例えばヒトを含む様々な動物源に由来する臍帯血を含む血液から得ることができる。したがって、いくつかの実施形態は、本発明で使用される細胞の供給源として、単一の同種異系ドナーからヒト臍帯血を提供することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、ナイーブCD133+細胞は臍帯血中の他の細胞から実質的に分離されて、精製されたCD133+HSC細胞組成物を形成する。CD133+HSCを血液から分離/精製する方法は、当該技術分野で周知であり、以下の実施例にさらに記載される。技術として、単純な遠心分離手順を用いて生存可能な単核細胞を血液から単離するためのFicoll-Paque密度勾配分離、およびCD133+細胞を単核細胞から分離するための親和性分離が挙げられる。例示的な親和性分離技術は、例えば、磁気分離(例えば、抗体コーティングされた磁気ビーズ)および蛍光活性化細胞選別を含み得る。実質的に精製されたCD133+HSCは、培養中にさらに増殖させることができる。いくつかの実施形態において、得られる組成物の細胞の少なくとも75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上は、CD133+HSCである。いくつかの実施形態において、CD133+HSCの純度は、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上と等しいかまたはそれを上回る。
【0048】
いくつかの実施形態において、MSCは、残りの臍帯血中の他の細胞および材料から実質的に精製される。MSCの分離/精製する方法は、当該技術分野で周知であり、以下の実施例にさらに記載されている。技術は、他の細胞から細胞を分離するための、磁気細胞選別(例えば、抗体コーティングされた磁気ビーズ)および蛍光活性化細胞選別等の親和性分離方法を含むことができる。1つの非限定的な例では、磁気分離キットを使用して細胞が精製される。実質的に精製されたMSCは、培養中にさらに増殖させることができる。いくつかの実施形態において、細胞の実質的に精製された組成物の細胞の少なくとも75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上。いくつかの実施形態において、細胞の純度は、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上と等しいかまたはそれらを上回る。いくつかの実施形態において、細胞の少なくとも75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上が実質的に精製される。
【0049】
いくつかの実施形態において、HSCが除去された血液中の残りの細胞を培養して増殖された単核細胞組成物を形成する。したがって、実施形態において、培養された単核細胞組成物を増殖させて、より大きなMSCの集団を生成する。増殖ステップは、当該技術分野で周知の培養技術および条件を使用することができる。ある特定の実施形態において、培養中の細胞を約1日~約3ヶ月間維持することによって細胞を増殖させる。さらなる実施形態において、約2日間~約2ヶ月、約4日間~約1ヶ月、約5日間~約20日間、約6日間~約15日間、約7日間~約10日間、および約8日間~約9日間、細胞を培養中で増殖させる。間葉系間質細胞(MSC)は、任意の好適な供給源(例えば、骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯血、臍帯組織)に由来し得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、培養された細胞は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、300、500、または少なくとも800倍増殖する。いくつかの実施形態において、増殖した細胞を含む組成物は、臨床的に適切な数または集団の細胞を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約10、約10、約10細胞、約10細胞、約10細胞、約10細胞、約10細胞、約1010細胞以上を含む。いくつかの実施形態において、組成物中に存在する細胞の数は、組成物が意図される最終的な使用、例えば、疾患または状態または条件、患者の状態(例えば、サイズ、体重、健康等)、および当業者が容易に理解する他の健康関連パラメータに依存するであろう。加えて、いくつかの実施形態において、臨床的に適切な数の細胞を、累積的に所望の投与と等しいか、またはそれを超える複数の注入、例えば、10または1010細胞に割り当てることができる。
【0051】
実質的に精製された細胞は、直ちに使用することができる。実質的に精製された細胞はまた、液体窒素温度で凍結して長期間にわたって保存することができ、解凍して使用することができる。細胞は、例えば、培地、グルコース等と組み合わせて、DMSOおよび/またはFCS中に保管されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量の臍帯血由来のMSCおよびHSCを含む組成物は、薬学的に許容される担体を用いて対象に投与され得る。投与経路は、疾患標的組織(例えば、脳)内に直接、または血管内(静脈内もしくは動脈内)への定位誘導を介した実質内注射を含むがこれらに限定されない、任意の好適な手段を含み得る。いくつかの実施形態において、選択される特定の投与方法は、特定の治療、患者の病態または状態、対象に投与される他の薬物または治療薬の性質または投与経路等に依存する。
【0053】
いくつかの実施形態において、約10~1011細胞が、5ml~1リットル、50ml~250ml、50ml~150、および典型的には100mlの体積で投与され得る。いくつかの実施形態において、体積は治療される障害、投与経路、患者の状態、病態等に依存する。細胞は、例えば、用量を滴定するために、選択された時間間隔にわたって単回用量またはいくつかの用量で投与することができる。
【0054】
一態様において、本明細書に開示される組成物および方法は、本明細書に開示される臍帯血由来間葉系間質細胞および造血幹細胞を投与することによって、対象における異常な神経学的疾患、例えば、パーキンソン病を調節することを対象とする。
【0055】
本明細書に開示される間葉系間質細胞および造血幹細胞を含む臍帯血由来細胞を使用して、多種多様な神経学的障害の症状を治療、緩和もしくは改善するか、または抑制することができる。いくつかの実施形態において、神経学的障害は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症、筋萎縮症、進行性球麻痺、ハンチントン病、フリートライヒ運動失調症、およびアルツハイマー病が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
これらの方法は、患者における応答が所望される様々な異なる状態および状況の治療に使用される。例として、限定するものではないが、本明細書に開示されるようなHSCおよびMSCを含む組成物は、PDの影響を受ける中脳の領域である黒色付近の細胞の脳深部刺激のために電極を設置するための手順等の関連する手術中に投与され得る。上述のように、食品医薬品局は、1997年に本態性振戦およびパーキンソン病(PD)の治療としてDBSを承認した。この手術では、脳深部刺激のための微小電極を配置し、脳の特定の部分に電気インパルスを送る神経刺激装置と呼ばれる医療機器を移植する。典型的には、複数の電極を有する薄いリードが、視床下部、視床中間腹側核、または視床下核に移植され、電気パルスが治療的に使用される。インプラントからのリードは、胸部の皮膚の下の神経刺激装置まで延在する。DBSは、高周波電気インパルスを脳の特定の領域に送ることにより脳細胞および神経伝達物質の生理学に影響を及ぼし、そうすることで症状を軽減するか、PD薬物によって誘発される副作用を直接的に軽減するか、薬物の減少を可能にするか、または薬物レジメンをより寛容にすることができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、細胞を、薬学的に許容される担体、例えば、人工ゲル、または凝固血漿中に、または当該技術分野で既知の他の制御放出機構を利用することによって投与することが便利である。実施形態において、本発明は、解凍され、組み合わされ、損傷した神経組織に適用される2つの凍結成分で提供され得る。実施形態において、組み合わされたHSCおよびMSCは、損傷組織内にインビボで適用した1~5分以内、または1~2分以内にゲル化または固化する。
【0058】
カスパーゼ3は、ドーパミン作動性ニューロンの損傷および再生の定量的尺度である。具体的には、細胞死から救出できる段階の損傷の早期指標である。したがって、カスパーゼ3切断を低減する治療薬は、ニューロン再生を促進するための強力な候補である。本発明は、開示される治療法の治療有効性を定量的に評価するために、切断カスパーゼ3の発現の測定を提供する。
【0059】
損傷後の神経突起伸長は、ドーパミン作動性ニューロン再生の定量的尺度である。神経突起は、ドーパミンを含む細胞間のシグナル伝達に重要なニューロン細胞体からの延伸部である。カスパーゼ3切断に加えて、神経突起損傷は、6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)、低酸素、および他の傷害によるニューロン損傷の特徴である。したがって、神経突起伸長を誘導する治療薬は、ニューロン再生の有望な候補である。
【0060】
6-OHDAは、ミトコンドリア機能障害および神経突起損傷を含むドーパミン作動性ニューロンの損傷の特徴を誘発する毒性代謝産物である。したがって、6-OHDAドーパミン作動性神経損傷モデルは、幹細胞の治療有効性の定量的評価を可能にする。さらに、低酸素誘発性の損傷モデルは、治療有効性を評価するために使用することもできる。具体的には、ガス制御された低酸素チャンバー内でニューロンをインキュベートすることにより、切断カスパーゼ3および神経突起伸長等の損傷マーカーによって測定することができるドーパミン作動性ニューロンの損傷を誘導する。これらの損傷モデルを使用して、本発明は、二重細胞MSC+HSC治療薬の増強された治療有効性を示している。
【0061】
本発明は、MSCおよびHSCの同時投与により、同等の細胞用量のいずれかの幹細胞集団単独と比べて驚くほどかなりの程度までニューロンのアポトーシスを有意に逆転させ、神経突起形成を増強することを提供する。
【0062】
ドーパミン作動性機能のMSCおよびHSC媒介による回復は、以下を含むがこれらに限定されない機構によって媒介される:1)パラクリン機構を介したMSCおよびHSCの付加的神経栄養および血管新生効果、2)損傷したドーパミン作動性ニューロンへのミトコンドリアの移動を含む直接的な細胞間相互作用。以前の研究で、神経保護において重要な役割を果たすトロンボスポンジンを含むUCB-MSC由来因子が特定されている。43UCB MSC馴化培地は、6-OHDA誘発性の損傷からドーパミン作動性ニューロンを救出するのに十分であり、パラクリン作用機序を支持する。
【0063】
神経再生機能を媒介する直接的な細胞間相互作用に関して、多くの研究は、ミトコンドリア機能障害がPDの病因において重要な役割を果たすことを示しており、実際に、いくつかの報告は、効果的なニューロンの救出は、治療幹細胞から損傷したニューロンへのミトコンドリアの供与を促進する直接的な細胞間接触に依存することを示唆している。44-54本発明は、UCB MSCおよびHSCの両方がそれぞれ、損傷したドーパミン作動性ニューロンと密接な関連を形成してミトコンドリアを供与することを示し、UCB MSC/HSC神経再生におけるそれらの潜在的な付加的利益がさらに示唆される。本発明は、ミトコンドリア移動が、トンネルナノチューブ(TNT)を介して起こることを示す。TNTは、HSCにおいて以前には観察されなかった。本発明はさらに、活性酸素種(ROS)を、TNT形成およびミトコンドリア移動を駆動する主要な機構として特定し、CD73シグナル伝達がTNT形成、ミトコンドリア移動、およびニューロン再生を媒介することを明らかにする。本発明はまた、パラクリン効果と比較して、細胞間相互作用が再生プロセスにおいてより大きな役割を果たすことも示す。
【0064】
TNT形成およびミトコンドリア移動は、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質としても知られるM-Sec、Rho GTPaseファミリーRac1およびCdc42を含むアクチン重合因子、ならびにそれらの下流エフェクターであるWAVEおよびWASP等の化合物によって、また、DuPont et al.,Front.Immunol.,25 January 2018(https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.00043)に記載されるように、HeLaおよびHEK細胞株における白血球特異的転写産物1(LST1)タンパク質の発現によって誘導することができる。TNTおよびミトコンドリア移動はまた、Desir et al,Scientific Reports,volume 8,Article number:9484(2018)に記載されるように、ドキソルビシンおよび他のアントラサイクリン類似体などの化合物、ならびに細胞ストレス応答を引き起こす他の薬剤によっても誘導することができる。TNTおよびミトコンドリア移動は、Omsland et al.,Scientific Reports,volume 8,Article number:11118(2018)に記載されるように、サイトカラシンB、およびヌクレオシド類似体、例えば、シタラビン(シトシンアラビノシド、AraC)によって阻害することができる。さらに、サイトカラシンDは、細胞透過性であり、アクチン阻害剤である。サイトカラシンDは、Saenz-de-Santa-Maria et al.,Oncotarget,2017に示されるように、TNT形成の有意な減少を引き起こし得る。Hanna et al.Scientific Reports(2017)、Keller et al.Invest Ophthalmol Vis Sci.(2017)も参照されたい。
【0065】
Tregは、ミトコンドリア移動を促進するアピラーゼ(CD39)およびエクト-5’-ヌクレオチダーゼ(CD73)を発現する。CD39/CD73は、1型IFN、TNFa、IL-1b、プロスタグランジン(PG)E2、TGF-β、wntシグナル伝達経路のアゴニスト、E2F-1、CREB、Sp1、HIF1-a、Stat3、および低酸素を使用することによって上方制御され得る。Beavis et al.,Trends in Immunology(2012)、Bao et al.,Int’l J.of Molecular Med(2012)、Regateiro et al.,Eur.J.Immunol(2011)、Synnestvedt et al.,J.Clin Invest(2002)、Eltzschig et al.,J of Exp.Med(2003)、Eltzschig et al.,Blood(2009)、およびChalmin et al.,Immunity(2012)を参照されたい。Chalmin,Immunity(2012)に記載されるように、Gfi-1は、CD39/CD73発現を抑制する。CD39/CD73はまた、POM1(E-NTPDases阻害剤)、およびアデノシン5’-(α,β-メチレン)二リン酸塩等の遮断抗体または薬理学的阻害剤を使用して阻害してもよい。
【0066】
本発明は、HSCおよびMSCが、血管新生促進因子および神経栄養因子の分泌、ならびにミトコンドリア移動を介して、補完的な神経再生効果を発揮することを提供する。本発明はまた、神経突起成長の促進および神経突起成長調節物質Tuj1のレベルの増強におけるHSCの新規の役割を特定する。
【実施例
【0067】
実施例1.UBSからのMSCおよびHSC精製とエクスビボ増殖
この実施例の目的は、臍帯血から単核細胞を単離し、臍帯血回収バッグの内面に結合した可能性がある潜在的な間葉系間質細胞を単離し、同じユニットからCD133+造血幹細胞を単離するための例示的な手順を説明することである。
【0068】
臍帯血用のチューブが50mLファルコンチューブの内側にあることを確認し、血液がチューブ内に自然に流れるようにバッグを適切な角度で持ち上げる。各チューブに50mLを流し入れる。25mLの血液を25mLのPBSで希釈する(血液/PBSの1:1希釈)。希釈後、チューブを3~4回上下逆さまにして混合する。15mLのFicoll-Paque密度勾配培地を50mLのSepMateチューブにピペッティングする。ピペット先端をチューブの底付近の頂点に当てる。チューブの底をゆっくりと満たし、気泡が存在しないことを確認する。25mLの希釈した血液-PBS混合物を、Ficollを含む50mL SepMateチューブに非常にゆっくりピペッティングする。ピペット先端をチューブの側面に当て、混合物をチューブ内にゆっくりと放出して、血液がSepmateチューブの底部分に入らないようにする。SepMateチューブを垂直に保つ。
【0069】
ブレーキをオンにして(加速は9にプログラムし、減速は6にプログラムする)、40分間遠心分離する(2400rpm(1200×g)[ThermoFisher Sorvall Legend XTR]。遠心分離後(RBCが底部に残る)、上層をピペットで除去する。上層は、血漿とともにバフィーコートを含む。この画分を他のチューブの層と合わせて、50mLファルコンチューブに入れる。これらのチューブを1200rpmで8分間遠心分離する。液体を吸引すると、ペレットがチューブの底に残る。
【0070】
MNCを1×PBSで洗浄し(最大50mLを加える)、1200rpmで8分間遠心沈殿する。液体を吸引し、MNCを1×PBSで再び洗浄し、1200rpmで8分間遠心沈殿する。有核赤血球の濃度に応じて、ACK溶解緩衝液を使用してRBCを溶解することができる。5mLの緩衝液をピペッティングしてペレットを懸濁させる。5分後、チューブを1200rpmで8分間遠心沈殿する。細胞を1×PBSで洗浄し、2つのチューブ1およびチューブ2に分割し、1200rpmで8分間遠心沈殿する。20%HSを含む10mLのIMDMに細胞ペレット1を懸濁し、1mLのMACS緩衝液で細胞ペレット2を懸濁して、細胞をカウントする。10μlの細胞懸濁液を取り、エッペンドルフチューブに加える。チューブに90μlのIMDMを加える。最後に、100μlのトリパンブルー染色を同じチューブに加える。この混合物10μl全てを血球計数器に加え、細胞をカウントする。
【0071】
細胞懸濁液1については、以下のステップに従う。細胞懸濁液2については、CD133マイクロビーズ(Miltenyi)を製造業者の指示に従って使用して細胞懸濁液を染色する。
【0072】
細胞懸濁液1については、細胞密度が1×10細胞/cmとなるように25cmフラスコ内に播種する。フラスコAとフラスコBの2つがある。Aは、この手順を通して得られたこれらのMNCのみを含む。Bは、臍帯血バッグから得られた細胞とともにMNCを含む。このプロセスについては、以下にさらに詳述される。Aと表示された細胞を、適切なサイズのフラスコ内で細胞密度1×10細胞/cmを維持するのに適切な体積のIMDMを用いて、20%HSを含むIMDMに播種する。37℃および5%CO2のCO2インキュベーターに細胞を入れる。
【0073】
臍帯血バッグから血液を排出した後、30mLシリンジで臍帯血バッグに150mLのAccutase Dissociation Bufferを加える。シリンジの先端を臍帯血ユニットチューブの内側に配置し、液体を注ぎ入れる。Accutaseは37℃で加熱するべきではなく、冷蔵庫で一晩解凍する。150mLのAccutase緩衝液を加えた後、臍帯血ユニットのチューブの端部にParafilmを巻く(液体がバッグから出ないことを確実にするため)。臍帯血バッグを滅菌輸送容器に入れ、次いで、振盪機に1000rpmで10分間入れる。このプロセスは、室温で行われる。臍帯血バッグを50mLファルコンチューブに流し入れる。臍帯血バッグのチューブを50mLファルコンチューブに入れ、ファルコンチューブが満たされるまでバッグを再び持ち上げる。臍帯血バッグへのAccutase Dissociation Bufferの注入を繰り返し、10分間振盪して排出する。臍帯血バッグを2回PBSですすいだ後(100mL)、全ての細胞を確実に回収する。
【0074】
PBSすすぎ液と、Accutase Dissociation Bufferとを含む両方のファルコンチューブを1200rpmで8分間遠心沈殿する。液体を吸引し、細胞を単一の50mLファルコンチューブ内で合わせる。これらの細胞をPBS中で洗浄し、8分間1200rpmで遠心沈殿する。細胞ペレットを、新鮮な40ng/mlのbFGFを補充した完全IMDM培地(IMDM、20%HS、100U/ml Pen/Strep、2mMグルタミン)に懸濁させる。これらの細胞を上記のBと表示されたMNC細胞に加える。これらの細胞を適切なサイズのフラスコおよび濃度で完全IMDM+FGFに播種し、深さで1×10細胞/cm2を維持する。72~120時間後に培地をフラスコに加える。120~168時間後に培地を交換する。光顕微鏡下で細胞を頻繁に検査する。
【0075】
MSCの培養および凍結保存のために、フラスコから培地を吸引する。5mLのTrypLE Selectで3分間、インキュベーターで処理する。フラスコをすすいで細胞を回収し、1200rpmで5分間遠心沈殿する。液体を吸引する。細胞培養のために20%HSを含む完全IMDM培地に細胞ペレットを再懸濁させるか、または90%FBS、10%DMSO中で凍結保存するために細胞を調製する。細胞は、MSC表現型特性を失い始めるので、約5回を超えて継代させてはならない。
【0076】
CD133+HSC単離の場合、細胞密度を108細胞/mLに調整する。FcBlockの1:11希釈液および1:11のCD133マイクロビーズを加える。(氷上ではなく)冷蔵庫内で30分間インキュベートする。細胞を5mLのMACS緩衝液で洗浄し、1200rpmで10分間遠心沈殿する。液体を吸引する。MACS緩衝液中に細胞ペレットを再懸濁し、希少な細胞型についてAutoMACS Posseldsプログラムを使用してCD133単離を行い、CD133陽性画分(pos1)およびCD133陰性細胞(neg)の両方を回収する。単離された細胞を1200rpmで10分間遠心沈殿する。液体を吸引する。実験で新鮮なHSCを使用するために、完全IMDM培地(FGFを含まない)に細胞ペレットを再懸濁し、実験で使用する約1~2日前まで培養する。凍結保存のために、90%FBS、10%DMSO中に細胞を再懸濁し、10細胞/バイアルを凍結させる。
【0077】
CD133+HSC増殖のために、AutoMACS Posseldsプログラムによって単離された陽性画分中のCD133+HSCを、TPO、FLT3、およびSCFをそれぞれ10ng/ml補充した1mLの培養培地に24ウェルプレートのウェル当たり250,000~1,000,000細胞でそれらを播種することにより増殖させる。2~3日ごとに、細胞を上下にピペッティングして、接着の弱い細胞を剥離させ、1:5の比率で10日間継代培養する。エクスビボ増殖の10日目に、CD133+細胞について細胞を再選択する(SOP CD133 HSC単離後)。CD133細胞単離後、特徴付けのためにアリコートを除去する(フローサイトメトリーによるCD133+HSC純度のSOP特徴付け)。残りの細胞を90%FBS、10%DMSO中で凍結保存し、106細胞/バイアルを凍結させる。
【0078】
期待される結果は、臍帯血100mL当たり1億~2億の単核細胞が得られることである。バッグ内洗浄細胞を含むように処理された60~80%の臍帯血ユニットは、間葉系間質細胞を生成する。脊髄血MNCの40%のみがMSCを生成する。これらのMSCを、コンフルエントに増殖させ、継代させ、FACSおよびMLR抑制アッセイによって分析する。MNC画分に加えられる臍帯血バッグから得られた細胞を含む細胞調製物は、それ自体で、播種されたMNC画分を含む細胞調製物よりもMSCを生成する可能性が高い。臍帯血100mL当たり50万~100万のCD133+HSCが得られる。エクスビボ増殖の10日後に、55×10細胞が得られた(初期の106個のCD133選択HSCの55倍の増殖)。55×10増殖細胞の15%がCD133を発現するため、CD133 HSCの総収率は、約10x10細胞である。
【0079】
実施例2.神経突起伸長促進におけるHSCの新規役割
神経突起は、ニューロンの正常な機能ならびにニューロン間の接続および通信において重要な役割を果たすニューロン細胞体からの延伸部である。低酸素または6-OHDA等の環境毒素によるニューロン損傷の特徴は、神経突起網の圧密化および神経突起の分解として現れる、神経突起への損傷である。神経突起伸長は、再生に寄与する重要なプロセスであり、顕微鏡分析によって定量化することができる。MSCは神経成長促進因子を分泌するが、MSCは神経突起伸長にわずかな利点を示したに過ぎない。HSCが神経突起伸長に及ぼす影響は研究されていないが、HSCは、神経突起伸長を促進することが示されている、SDF-1を含むタンパク質を分泌する。本発明は、損傷後に、HSCが神経突起伸長を増強することができることを開示する。
【0080】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番ガラス底皿(Cellvis Catalog番号D35-20-1.5-N)にウェル当たり30万細胞で細胞を再播種した。分化の6日目に、細胞を100uMの6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、UCB MSCおよび/またはCD133+HSCと10:1のLUHMES:MSC+HSC比で共培養し、72時間インキュベートした。次いで、3日後、カスパーゼ3/Tuj1共染色のために細胞を処理した。細胞を2%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定した。細胞をPBS中で洗浄し、0.1%サポニン、0.1%BSA/PBS(pH7.4)中、ウサギ切断カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technologies、1:400)およびマウスTuj1抗体(Biolegend、1:400)で、一晩4℃で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488抗マウスIgGおよびAlexa Fluor 647抗ウサギIgG(1:250、Invitrogen)で、1時間室温で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡で撮像し、ApoTome.2を装備したZeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の60倍油浸対物レンズでZスタック画像を収集した。図4Aは、zスタック画像の3D再構成を表し、データは、3つの独立した実験を代表するものである。Graphpad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、マンホイットニーU検定により統計学的有意性を決定した。
【0081】
神経突起経路をトレースし、Neurolucida 360神経突起分析ソフトウェアを使用して神経突起面積を測定した。各神経突起の面積を各画像フィールドで測定し、データは、少なくとも4つの画像フィールドからの平均、合計、または最大神経突起面積を表す。図4B図4Cのデータは、3つの独立した実験のうちの1つの代表的な実験からの平均+/-標準偏差を表す。Graphpad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、独立t検定により統計学的有意性を決定した。
【0082】
神経毒素処理による損傷は、全体的な神経突起面積を減少させ、神経突起の面積および長さが非損傷ニューロンにおいて観察されるレベルまで完全に回復することによって示されるように、HSCは、毒素誘発性損傷後の神経突起伸長を著しく増強する。MSCは、場合によっては神経突起の回復の助けとなるが、全体的なHSCは、損傷後の神経突起伸長に対して有意により大きな再生上の利点を有する。
【0083】
実施例3.二重MSCおよびHSC細胞治療
この実施例は、National Marrow Donor Programを介してネットワーク化された臨床グレードUCBのグローバルUCB在庫検索に基づいて各患者に最適なHLA適合を提供することで、同種異系UCB由来二重幹細胞(MSC/CD133+ HSC)による生物学的療法を提供する。
【0084】
図1A図1Bは、HSCが、損傷したドーパミン作動性ニューロンのMSCによって媒介される再生を増強することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+HSCとともに6時間共培養し、固定し、Tuj1および早期損傷マーカーである切断カスパーゼ3について染色し、ApoTome.2を装備したZeiss社製Axiovert Z1で可視化した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
【0085】
MSCおよびHSCの単離および培養:ヒトUCBを、クエン酸デキストロースを含む回収バッグ中に回収した(Allegiance、Deerfield,IL)。単核細胞を、SepMate-50チューブ(STEMCELL Technologies)を用いてFicoll-Paque PLUS(GE Healthcare Life Sciences、Piscataway,NJ)密度勾配遠心分離により単離した。HSC単離のために、MNCを、製造業者のプロトコルに従ってCD133マイクロビーズ(Miltenyi)で標識した。標識されたCD133+HSCを、Posseldsプログラムを使用してAutoMACSシステム(Miltenyi)上で単離した。収率は、日常的にUCBユニット当たり10細胞であり、フローサイトメトリーによるCD133染色によって純度を日常的に評価し、90%超となるようにした。HSCを、実験で使用するまで凍結保存した。20%ヒト血清(Abnova)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、2mMのグルタミンを含み、40ng/mlの塩基性FGF(Sigma)を新たに補充したIMDM培地でMNCを培養することによりMSCを作製した。培地を2~3日ごとに交換し、10ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT75組織培養フラスコ内で継代培養した。3~4週間の培養後、細胞を凍結保存し、実験で使用するまで保管した。UCB MSCおよびHSCを解凍し、実験で使用する前に1~2日休ませた。
【0086】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内に10継代未満で維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番カバーグラス(Cellvis)にウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、細胞を100uMの6-OHDAで示された期間処理し、1回洗浄し、UCB幹細胞の示された組み合わせをニューロンとの直接共培養に加えた。6時間後、細胞を2%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定した。細胞をPBS中で洗浄し、0.1%サポニン、0.1%BSA/PBS(pH7.4)中、ウサギ切断カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technologies、1:400)およびマウスTuj1抗体(Biolegend、1:400)で、一晩4℃で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488抗マウスIgGおよびAlexa Fluor 647抗ウサギIgG(1:250、Invitrogen)で、1時間室温で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の40倍対物レンズで撮像した。図1Aは、構造化照明のためにApoTome.2で取得したzスタックの3D再構成を表す。切断カスパーゼ3陽性Tuj1+ニューロンの割合を、蛍光画像からの手動計数によって決定した。データは、少なくとも4つの画像フィールドからのn>50細胞の分析の平均+/-標準偏差を表し、3つの独立した実験を代表するものである。
【0087】
図2A図2Bは、二重幹細胞(CD133+HSCおよびMSC)が、分泌された可溶性因子を介してニューロンを保護することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、通常の分化培地またはMSC馴化培地で48時間培養し、図1に示すように染色および可視化した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
【0088】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番カバーグラス(Cellvis)にウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、細胞を100uMの6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、示される培地(分化培地、または5日間培養したUCB MSCから回収したMSC馴化培地)中で3日間インキュベートした。次いで、細胞を2%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定した。細胞をPBS中で洗浄し、0.1%サポニン、0.1%BSA/PBS(pH7.4)中、ウサギ切断カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technologies、1:400)およびマウスTuj1抗体(Biolegend、1:400)で、一晩4℃で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488抗マウスIgGおよびAlexa Fluor 647抗ウサギIgG(1:250、Invitrogen)で、1時間室温で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の40倍対物レンズで撮像した。図2Aは、構造化照明のためにApoTome.2で取得したzスタックの3D再構成を表す。切断カスパーゼ3陽性Tuj1+ニューロンの割合を、蛍光画像からの手動計数によって決定した。データは、少なくとも4つの画像フィールドからのn>30細胞の分析の平均+/-標準偏差を表し、2つの独立した実験からのデータが示される。
【0089】
図3A図3Cは、UCB MSCおよびHSCが損傷したドーパミン作動性ニューロンにミトコンドリアを供与することを示す。分化の6日目に、LUHMESドーパミン作動性ニューロンを100uMの6-OHDAで処理し、様々な用量のMitotracker Redで前標識したUCB MSCおよびautoMACSにより選択したCD133+ HSCとともに6時間共培養し、ニューロンへのMitotrackerの移動を蛍光顕微鏡により監視した。データは、平均+/-SD、マンホイットニーU検定を表す。
【0090】
MSCおよびHSCの単離および培養:ヒトUCBを、クエン酸デキストロースを含む回収バッグ中に回収した(Allegiance、Deerfield,IL)。単核細胞を、SepMate-50チューブ(STEMCELL Technologies)を用いてFicoll-Paque PLUS(GE Healthcare Life Sciences、Piscataway,NJ)密度勾配遠心分離により単離した。HSC単離のために、MNCを、製造業者のプロトコルに従ってCD133マイクロビーズ(Miltenyi)で標識した。標識されたCD133+HSCを、Posseldsプログラムを使用してAutoMACSシステム(Miltenyi)上で単離した。収率は、日常的にUCBユニット当たり10細胞であり、フローサイトメトリーによるCD133染色によって純度を日常的に評価し、90%超となるようにした。HSCを、実験で使用するまで凍結保存した。20%ヒト血清(Abnova)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、2mMのグルタミンを含み、40ng/mlの塩基性FGF(Sigma)を新たに補充したIMDM培地でMNCを培養することによりMSCを作製した。培地を2~3日ごとに交換し、10ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT75組織培養フラスコ内で継代培養した。3~4週間の培養後、細胞を凍結保存し、実験で使用するまで保管した。UCB MSCおよびHSCを解凍し、実験で使用する前に1~2日休ませた。ニューロンとの共培養の直前に、MSCおよびHSCを37℃で30分間、50nMのMitotracker Redで標識した。細胞を洗浄し、ニューロンと共培養した。
【0091】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番カバーグラス(Cellvis)にウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、細胞を100uMの6-OHDAで示された期間処理し、1回洗浄し、Mitotracker Redで標識したUCB幹細胞の示された組み合わせをニューロンとの直接共培養に加えた。0または24時間後、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の40倍対物レンズで細胞を撮像した。データは、ImageJで定量化され、染色されていないニューロンに存在するバックグラウンド染色に正規化された、ニューロン中のMitotracker Red染色の平均蛍光強度を表す。
【0092】
実施例4.二重幹細胞は、神経突起伸長調節物質Tuj1の発現を増強する
図5は、二重幹細胞が神経突起伸長調節物質Tuj1の発現を増強することを示す。LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした24ウェルプレートに、ウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、24ウェルプレートを低酸素チャンバー(C-Chamber、Biospherix)に入れ、細胞を、酸素コントローラー(P15 O2コントローラー、Biospherix)を使用して送達される5.25%の二酸化炭素と94.75%の窒素とからなるカスタムガス混合物を使用して送達される5%酸素に24時間曝露する。24時間後、プレートを低酸素チャンバーから取り出し、PKH26で標識したUCB MSCおよび/またはUCB CD133+もしくはCD133-HSCと示される比率で共培養し、72時間インキュベートする。
【0093】
次いで、3日後、カスパーゼ3/Tuj1共染色のために細胞を処理した。細胞を2%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定した。細胞をPBS中で洗浄し、0.1%サポニン、0.1%BSA/PBS(pH7.4)中、ウサギ切断カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technologies、1:400)およびマウスTuj1抗体(Biolegend、1:400)で、一晩4℃で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488抗マウスIgGおよびAlexa Fluor 647抗ウサギIgG(1:250、Invitrogen)で、1時間室温で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の40倍対物レンズで撮像した。全ての画像をスタックに組み合わせ、半径50でバックグラウンド減算を適用することにより全ての画像を同じ様式で処理してImageJのバックグラウンドを除去した(画像は図示せず)。データは、少なくとも4つの画像フィールドからのn>50細胞の分析の平均+/-標準誤差を表し、3つの独立した実験を代表するものである。Graphpad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、マンホイットニーU検定により統計学的有意性を決定した。
【0094】
これらのデータは、二重MSC+HSC処理が、ドーパミン作動性ニューロン損傷後のTuj1の発現を著しく増強することを実証する。これらのデータに基づいて、二重幹細胞治療の主な利点は、ドーパミン作動性ニューロン再生における不可欠なプロセスである神経突起伸長に不可欠なTuj1を含む因子の発現増強を提供することである。
【0095】
実施例5.作用機序MSCおよびHSCは、パラクリン因子および細胞間相互作用の両方を介して再生を促進する。
以前の研究では、再生の機構について相反する見解が示された。幹細胞は、神経保護を支持し得る因子を分泌することができる。図6および図2Bは、パラクリン機構自体が再生にどの程度貢献できるかを示す。具体的には、MSC単独の培養物から回収した培地(MSC馴化培地またはMSC CMと称される)が、神経毒素で損傷させたニューロンの再生を促進することができるかどうかを調査した。ニューロンを最初に神経毒素処理によって損傷させ、その後、通常のニューロン培地またはMSC馴化培地で培養し、切断カスパーゼ3発現により以下に詳細に再生を測定した。
【0096】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番ガラス底皿(Cellvis Catalog番号D35-20-1.5-N)にウェル当たり30万細胞で細胞を再播種した。分化の6日目に、細胞を100uMの6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、UCB MSCおよび/またはCD133+ HSCと10:1のLUHMES:MSC+HSC比で共培養し、72時間インキュベートした。次いで、3日後、カスパーゼ3/Tuj1共染色のために細胞を処理した。細胞を2%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定した。細胞をPBS中で洗浄し、0.1%サポニン、0.1%BSA/PBS(pH7.4)中、ウサギ切断カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technologies、1:400)およびマウスTuj1抗体(Biolegend、1:400)で、一晩4℃で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488抗マウスIgGおよびAlexa Fluor 647抗ウサギIgG(1:250、Invitrogen)で、1時間室温で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、ApoTome.2を装備したZeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の60倍油浸対物レンズで撮像した(画像は図示せず)。データは、3つの独立した実験のうちの1つの代表的な実験からの少なくとも4つの画像フィールドからのn>50細胞の分析の平均の平均+/-標準偏差を表す。Graphpad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、マンホイットニーU検定により統計学的有意性を決定した。
【0097】
MSCは、再生を促進するタンパク質の混合物(MSC馴化培地と称される)を分泌することができる。しかしながら、興味深いことに、MSC馴化培地自体は(すなわち、MSC自体の不在下では)、6-OHDA処理後にニューロンを完全に再生するのに十分ではない。MSC馴化培地中で6-OHDAで処理されたニューロンは、MSC培地の不在下で6-OHDA処理されたニューロンと比較するとより低いレベルのカスパーゼ3を示すが、それは未処理ニューロンほど低くはない。さらに、MSC馴化培地は、損傷後のロバストな神経突起伸長を促進しない。
【0098】
再生に対するパラクリン機構および直接細胞接触機構の寄与を評価するために、損傷したニューロンを幹細胞と直接共培養した後と、間接的なトランスウェルを使用して共培養した後の再生(切断カスパーゼ3発現の低減、および神経突起伸長の増加)を比較した。トランスウェルを用いた共培養では、分泌されたパラクリン分子の移動を可能にするが、直接細胞接触は防止する0.2umの細孔膜によって幹細胞がニューロンから隔てられる。直接比較では、LUHMES細胞と直接共培養したMSC(直接的な細胞間接触を可能にする)は、トランスウェルで間接的に共培養したMSC(パラクリン/分泌因子のみを可能にする)と比較して著しく増強された再生を支持した。これらのデータは、直接的な細胞間接触が、再生において間接的なパラクリン機構と比べてより顕著な役割を果たすという主張を支持するものである。
【0099】
実施例6.直接的な細胞間相互作用によって媒介されるニューロン再生の根底にある作用機序は、TNTである。
トンネルナノチューブ(TNT)を介したMSCミトコンドリア移動は、ドーパミン作動性ニューロン再生の根底にある重要な作用機序である。HSCはまた、ミトコンドリアを移動させてドーパミン作動性ニューロンの損傷を低減することもできるが、これは、HSCにおいて以前に記載されたことがなく、MSCにおいてのみ観察される機構である。
【0100】
損傷したドーパミン作動性ニューロンの存在下で、MSCはTNTを突出させてミトコンドリア移動を容易にする(データは図示せず)。LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番ガラス底皿(Cellvis Catalog番号D35-20-1.5-N)にウェル当たり30万細胞で細胞を再播種した。分化の6日目に、細胞を示された濃度の6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、PKH26/Mitotracker Greenで共標識したUCB MSCと3:1のLUHMES:MSC比で共培養し、24時間インキュベートした。Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の60倍油浸漬対物レンズで細胞のZスタック画像を収集した。
【0101】
PKH26/Mitotracker Greenによる共標識のために、MSCをPBS中で洗浄し、PKH26染色キット(Sigma Aldrich)を使用してPKH26で染色した。MSCを0.1mLの希釈剤Cに再懸濁した。2ulのPKH26色素を1mLの希釈剤Cに希釈し、0.1mLをMSCに加えた。5分後、MSC培地(IMDM完全培地中の10%HS)の添加により標識をクエンチした。細胞を、MSC培地中で2回洗浄し、LUHMES完全培地中に再懸濁した。その後、37℃で30分間、細胞を200nMのMitotracker Greenで標識した。細胞を完全LUHMES培地中で2回洗浄し、LUHMES分化培地に再懸濁した。次いで、示された比率でMSCをLUHMES細胞と共培養した。
【0102】
驚くべきことに、HSCはまた、図7に示すように、TNTを介して、損傷したドーパミン作動性ニューロンにミトコンドリアを移動させる。色素漏出の懸念を回避する蛍光ミトコンドリアタンパク質(MitoGFP)を発現するように操作した遺伝子組み換えHSCを作製した。幹細胞由来のMitoGFPで標識したミトコンドリアが、幹細胞/ニューロンの共培養中に損傷したニューロンに移動されるかどうかを評価するために実験を行った。
【0103】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番ガラス底皿(Cellvis Catalog番号D35-20-1.5-N)にウェル当たり30万細胞で細胞を再播種した。分化の6日目に、細胞を示された濃度の6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、350nMのサイトカラシンBの存在下または不在下で、MitoGFPで標識したUCB幹細胞と3:1のLUHMES:幹細胞比で共培養し、24時間インキュベートした。次いで、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の60倍油浸漬対物レンズで細胞を撮像した。Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡、60倍油浸漬対物レンズで細胞のZスタック画像を収集した。
【0104】
幹細胞におけるMitoGFPタンパク質発現のために、UCB CD133+HSCにMitoGFPレンチウイルスを形質導入した。レンチウイルスは、pLYS-MitoGFP(Addgene)およびレンチウイルスエンベロープおよびパッケージングプラスミド(Dharmacon)を用いたHEK293T細胞の3つのプラスミドトランスフェクションにより生成し、Lenti-X濃縮試薬を使用して回収および濃縮した。ウイルスを遠心分離し、DMEM培地に再懸濁し、使用まで-80℃で保管した。ウイルス作製時に、幹細胞にMitoGFPレンチウイルスを形質導入した。細胞を解凍し、形質導入前に24時間休ませた。その後、100ulの完全HSC培地に懸濁した100,000個のトリパンブルー陰性の生存細胞を丸底96ウェルプレート(Costar)に移した。幹細胞にMitoGFPレンチウイルスを加え、スピノキュレーションにより細胞を形質導入した。プレートを、室温で2時間、932×gで回転させた。その後、100ulの完全培地を各ウェルに滴下して加え、細胞を組織培養インキュベーターに入れた。24時間後、蛍光顕微鏡によりMitoGFPの発現を評価したところ、約5%の細胞に蛍光が観察された。細胞を1ug/mlのピューロマイシンで処理して、ピューロマイシン誘発性細胞死に対する耐性を付与するピューロマイシン耐性遺伝子を担持するMitoGFPレンチウイルスを保有する細胞を選択した。24~48時間のピューロマイシン選択後、MitoGFP+細胞の割合を約20%に増加させ、細胞を共培養実験に利用した。
【0105】
ミトコンドリアに局在する遺伝的にコードされたミトコンドリア蛍光タンパク質を用いて標識した、HSC由来のミトコンドリアは、損傷したニューロンにおいて検出され得る。HSCは実際に、損傷したニューロンにミトコンドリアを移動させる。HSCによる損傷したニューロンへのミトコンドリアの移動は、これまでに観察または公表されていない。
【0106】
直接的な細胞間相互作用を介したトンネルナノチューブ(TNT)によるミトコンドリア移動は、損傷したドーパミン作動性ニューロンの再生における二重MSC+HSCの重要な作用機序である。ミトコンドリア機能障害は損傷の根底にある重要な機構であるため、二重MSC+HSCから健康なミトコンドリアを得るための損傷したニューロンからのシグナルによってミトコンドリア移動が積極的に誘導され、再生の重要な機構としてのミトコンドリア機能を回復させることができると推論された。健康なドーパミン作動性ニューロンと6-OHDAで損傷させたドーパミン作動性ニューロンに対するミトコンドリア移動を比較することによって、ミトコンドリア移動がニューロン損傷によって特異的に誘発されるかどうかを決定するために実験を行った。
【0107】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番ガラス底皿(Cellvis Catalog番号D35-20-1.5-N)にウェル当たり30万細胞で細胞を再播種した。分化の6日目に、細胞を示された濃度の6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、小麦胚芽凝集Oregon 488/200nMのMitotracker Redで共標識したUCB MSCおよびHSCと3:1のLUHMES:MSC+HSC比で共培養し、4時間インキュベートした。MSCおよびHSCを、PBS中の200nMのMitotracker Redで15分間標識した。最後の5分間に、1ug/mlの小麦胚芽凝集集Oregon 488を加えた。次いで、細胞をMSC培地で2回洗浄し、ニューロンと4時間共培養した。その後、細胞を、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の60倍油浸漬対物レンズで撮像した(図10A図10B)。
【0108】
これらの実験は、TNT形成、ならびにMSCおよびHSCからドーパミン作動性ニューロンへのミトコンドリアの移動を誘導するためには、ニューロン損傷が必要であることを示す。これらのデータは、TNT形成および二重MSC+HSCからのミトコンドリア移動が、損傷したドーパミン作動性ニューロンによってMSCおよびHSCに伝達されるシグナルを必要とする能動的なプロセスであることを実証するものである。
【0109】
実施例7.損傷したドーパミン作動性ニューロンにおけるROS蓄積は、TNT形成およびミトコンドリア移動を誘発する主要な機構である
直接的な細胞間相互作用によるミトコンドリア移動は、MSCおよびHSCからミトコンドリアを運ぶTNTを呼び出すためにミトコンドリア経路の活性化を必要とする能動的プロセスである。驚くべきことに、損傷したニューロンにおけるROSの上方制御は、治療細胞からのTNTの突出およびミトコンドリアの移動を開始する活性化事象である。この機構の裏付けとして、損傷したニューロンをMSCおよびHSCと共培養することにより、損傷したドーパミン作動性ニューロンにおけるROSが減少する。
【0110】
図8は、ROSをブロックすることにより6-OHDA誘発性の損傷が低減することを示す。ROS蓄積は、ドーパミン作動性ニューロンの6-OHDA誘発性損傷の間の重要な早期事象である。ROS蓄積がニューロン損傷に寄与するかどうかを決定するために以下の実験を行った。この実験では、ROS産生の阻害剤であるYCG063が、顕微鏡で、損傷したニューロンのアネキシンV染色によって測定されるように、6-OHDA誘発性の損傷をブロックするかどうかを調べた。
【0111】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした24ウェルプレートに、ウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、細胞をROS阻害剤の存在下または不在下で、50uMの6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、示されるように3日間培養した。次いで、細胞をアネキシンV-FITC(1:10、BD Biosciences)およびヨウ化プロピジウム(1:10、BD Pharmingen)で染色し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の41倍対物レンズで撮像した(画像は図示せず)。データは、1つの実験からの少なくとも4つの画像フィールドからのn>50細胞の分析の平均+/-標準偏差を表す。
【0112】
ドーパミン作動性ニューロンにおける6-OHDA誘発性ROSの阻害は、アネキシンV染色によって測定される6-OHDA誘発性ニューロン損傷を有意に低減した。これらのデータは、ROS蓄積が、ドーパミン作動性ニューロンの6-OHDA誘発性損傷の根底にある重要な機構であることを実証するものである。
【0113】
ROS蓄積は、ドーパミン作動性ニューロンの6-OHDA誘発性損傷の間の重要な早期事象である。ROS蓄積がニューロン損傷に寄与するかどうかを決定するために実験を行った。この実験では、ROS産生の阻害剤であるYCG063が、図11によって示されるように、顕微鏡で、損傷したニューロンのアネキシンV染色によって測定されるように、6-OHDA誘発性の損傷をブロックするかどうかを調べた。
【0114】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした24ウェルプレートに、ウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、細胞をROS阻害剤の存在下または不在下で、50uMの6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、示されるように3日間培養した。次いで、細胞をアネキシンV-FITC(1:10、BD Biosciences)およびヨウ化プロピジウム(1:10、BD Pharmingen)で染色し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の41倍対物レンズで撮像した(画像は図示せず)。データは、1つの実験からの少なくとも4つの画像フィールドからのn>50細胞の分析の平均+/-標準偏差を表す。
【0115】
ドーパミン作動性ニューロンにおける6-OHDA誘発性ROSの阻害は、アネキシンV染色によって測定される6-OHDA誘発性ニューロン損傷を有意に低減した。これらのデータは、ROS蓄積が、ドーパミン作動性ニューロンの6-OHDA誘発性損傷の根底にある重要な機構であることを実証するものである。
【0116】
実施例8.二重幹細胞が直接的な細胞間接触によって媒介される損傷したPDドーパミン作動性ニューロンの再生に及ぼす有益な効果の根底にある主要な機構の同定
以前の一連の実験は、直接的な細胞間接触が、パラクリン機構よりも幹細胞再生機構においてより重要な役割を果たすことを示した。さらに、ニューロンROSの増加がニューロン損傷に寄与することが見出された。ROSの増加は、MSCからニューロンを含む損傷した細胞型への健康なミトコンドリアの移動を刺激するMSCへのシグナルとしての役割を果たし得ることが報告されている。この機構は、特に、ミトコンドリア機能障害が損傷の根底にある重要な機構である損傷したドーパミン作動性ニューロンの再生において重要な役割を果たし得る。MSCと損傷した細胞型との間のミトコンドリア移動は主に、顕微鏡で観察することができる細いトンネルナノチューブ(TNT)の形成を介して生じる。MSCが、TNT形成を介して、蛍光標識したミトコンドリアを損傷したニューロンに移動させることができることが示された。CD73シグナル伝達の阻害剤を用いて、CD73シグナル伝達がTNT形成およびミトコンドリア移動のための重要なシグナルであるかどうかを決定するために以下の実験を行った。
【0117】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした35mmの1.5番ガラス底皿(Cellvis Catalog番号D35-20-1.5-N)にウェル当たり30万細胞で細胞を再播種した。分化の6日目に、細胞を示された濃度の6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、CD73阻害剤(50um)の存在下または不在下で、PKH26/Mitotracker Greenで共標識したUCB MSCと3:1のLUHMES:MSC比で共培養し、8時間インキュベートした。MSCおよびHSCのPKH26標識は、前述のように行った。その後、MSCおよびHSCを、PBS中の500nMのMitotracker Greenで15分間標識した。次いで、細胞をMSC培地で2回洗浄し、4時間インキュベートした。細胞をその後、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の60倍油浸対物レンズで撮像した(画像は図示せず)。MSC/HSC Mitotracker Greenで標識したミトコンドリアの損傷したニューロンへの移動を、ImageJで個々のニューロンについてMitotracker Green蛍光強度を測定することによって評価した。データは平均+/-SDを表す。
【0118】
図12に示すように、これらの実験は、CD73シグナル伝達の阻害がTNT形成を著しくブロックし、MSCおよびHSCから損傷したドーパミン作動性ニューロンへのミトコンドリアの移動を低減することを示す。これらのデータは、CD73シグナル伝達がTNT形成および損傷したドーパミン作動性ニューロンへのミトコンドリア移動にとって必要な重要な経路であることを実証するものである。
【0119】
ミトコンドリア移動は、MSCおよびHSCからミトコンドリアを運ぶTNTを呼び出すためにミトコンドリア経路の活性化を必要とする能動的プロセスである。先に示されたように、損傷したニューロンにおけるROS蓄積は、驚くべきことに、治療細胞からのTNTの突出およびミトコンドリアの移動を開始する活性化事象である。この機構の裏付けとして、損傷したニューロンをMSCおよびHSCと共培養することにより、損傷したドーパミン作動性ニューロンにおけるROSが減少することが示された。
【0120】
ROSは、ミトコンドリア機能障害を誘発し、CD73を含むミトコンドリアシグナル伝達経路を変化させる。CD73シグナル伝達は、アクチン細胞骨格の再編成に関連している。本発明は、CD73の活性化がTNT形成およびミトコンドリア移動に重要であることを開示する。本発明は、損傷したドーパミン作動性ニューロンにおけるCD73の有意な上方制御を含むROSの上方制御が、ミトコンドリアシグナル伝達経路に影響を与えることを驚くべきことに見出した。さらに、本発明は、驚くべきことに、CD73が、ドーパミン作動性ニューロン再生に寄与するTNTの突出およびミトコンドリア移動を媒介することを示す。驚くべきことに、CD73の阻害は、ミトコンドリア移動を50%減少させる。さらに、本発明は、カスパーゼ活性化および神経突起伸長によって測定されるように、CD73阻害が、MSCおよびHSCによる損傷したドーパミン作動性ニューロンの再生をブロックすることを明らかにする。
【0121】
パーキンソン病の多因子損傷モデル(低酸素または6-OHDA誘発性損傷後)において、保護的役割を果たす炎症トリガーとして関与しているCD39およびCD73タンパク質がニューロンにおいて上方制御されるかどうかを調べるために以下の実験を行った(データは図示せず)。
【0122】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンの24ウェルプレートにウェル当たり300,000細胞で細胞を再播種した。6-OHDAによる損傷のために、分化の6日目に、細胞を50uMの6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、4時間または24時間インキュベートした。低酸素による損傷のために、24ウェルプレートを低酸素チャンバー(C-Chamber、Biospherix)に入れ、細胞を、酸素コントローラー(P15 O2コントローラー、Biospherix)を使用して送達される5.25%の二酸化炭素と94.75%の窒素とからなるカスタムガス混合物を使用して送達される5%酸素に24時間曝露する。4時間または24時間後、プレートを低酸素チャンバーから取り出した。次いで、全ての試料を、以下のようにフローサイトメトリー染色のために処理した:組織培養インキュベーター中、0.25%トリプシン/EDTAを5分間使用してLUHMESニューロンを24ウェルプレートから解離する。次いで、細胞をすすぎ、5mlピペットを使用して表面からそれらを剥離させ、加温完全DMEM/F12培地と混合した。次いで、細胞を14000rpmで5分間遠心分離し、各条件につき、100,000個の細胞をP1000で再懸濁してFACS緩衝液(0.1% BSC/PBS)中の細胞塊を破壊し、氷上で30分間、ヒトCD39 PE-CF594またはCD73 PE-Cy7抗体(BD)を使用して染色する。細胞を、FACS緩衝液中で2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、BD Fortessaフローサイトメーター(Cleveland Clinic)を使用してチューブ当たり10000事象を分析した。データをFACSアナライザーソフトウェアで分析した(データは図示せず)。
【0123】
この実験は、CD73が、ドーパミン作動性ニューロンの低酸素誘発性損傷および毒素誘発性損傷の両方の後に上方制御され、隣接するMSCおよびHSCからのTNT突出およびミトコンドリア移動を誘発することを示す。損傷したドーパミン作動性ニューロンへのTNT突出およびミトコンドリアの移動を活性化するCD73の役割は、事前に観察または公表されていない。
【0124】
本発明は、CD73が損傷したドーパミン作動性ニューロンの再生を媒介することをさらに示す。上記の実験の所見は、幹細胞が損傷したニューロン上でCD73を上方制御することを実証した。CD73またはA2A受容体活性がMSCまたはHSC媒介性再生に関与するかどうかを調べるために以下の実験を行った。この目的のために、切断カスパーゼ3発現によって測定されるように、CD73またはA2A受容体活性の阻害剤がニューロンの再生をブロックするかどうかを評価した。
【0125】
LUHMES細胞を、完全DMEM/F12培地(Gibco)(1×N-2 Supplement(Gibco)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および40ng/mlのヒト塩基性FGF(Sigma Aldrich)を含む)中の、50ug/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma)および1ug/mlのフィブロネクチン(Sigma)でプレコーティングしたT25組織培養フラスコ内で10継代未満に維持した。実験のために、TryPLEを使用してLUHMES細胞を解離し、ポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした6ウェル組織培養処理プレート中にウェル当たり7×10細胞で播種した。翌日、培地を分化培地(1mMのジブチリル環状AMP(Sigma)、1ug/mlのテトラサイクリン(Sigma)、および2ng/mlのグリア由来神経栄養因子(R&D Systems)を補充した、bFGFを欠く完全DMEM/F12培養培地)と交換した。分化の2日目に、新鮮な分化培地中のポリオルニチン/フィブロネクチンでプレコーティングした24ウェルプレートに、ウェル当たり30万細胞で再播種した。分化の6日目に、細胞を示された濃度の6-OHDAで45分間処理し、洗浄し、PKH26で標識したUCB MSCおよびUCB CD133+HSCと示された比率で共培養し、72時間インキュベートした。次いで、細胞を2%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定した。細胞をPBS中で洗浄し、0.1%サポニン、0.1%BSA/PBS(pH7.4)中、ウサギ切断カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technologies、1:400)およびマウスTuj1抗体(Biolegend、1:400)で、一晩4℃で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488抗マウスIgGおよびAlexa Fluor 647抗ウサギIgG(1:250、Invitrogen)で、1時間室温で染色した。細胞をPBS中で洗浄し、Zeiss社製Axiovert蛍光顕微鏡の40倍対物レンズで撮像した(画像は図示せず)。全ての画像をスタックに組み合わせ、半径50でバックグラウンド減算を適用することにより全ての画像を同じ様式で処理してImageJのバックグラウンドを除去し、ノイズを除去するためにスペックル除去した。データは、1つの実験からの少なくとも4つの画像フィールドからのn>50細胞の分析の平均の平均+/-標準偏差を表す。Graphpad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、マンホイットニーU検定により統計学的有意性を決定した。
【0126】
PKH26標識のために、MSCをPBS中で洗浄し、PKH26染色キット(Sigma Aldrich)を使用してPKH26で染色した。MSCを0.1mLの希釈剤Cに再懸濁した。2ulのPKH26色素を1mLの希釈剤Cに希釈し、0.1mLをMSCに加えた。5分後、MSC培地(IMDM完全培地中の10%HS)の添加により標識をクエンチした。細胞を、MSC培地中で2回洗浄し、LUHMES完全培地中に再懸濁した。次いで、示された比率でMSCをLUHMES細胞と共培養した。
【0127】
図9A図9Bによって要約されるように、CD73およびA2A受容体の阻害剤は、それぞれ、MSCまたはHSCのいずれかによる再生を著しく損なった。これらのデータは、養子細胞MSC/HSC神経再生の主要な機構が、直接的な細胞間相互作用を必要とし、任意のかなりの程度まではパラクリン機構を介して媒介されないことを示す。さらに、直接的な細胞間相互作用を介したニューロン再生の主要な機構は、受動的な事象ではなく、むしろ能動的であり、さらに、MSC/HSCからのTNT突出およびミトコンドリア移動を開始するシグナル伝達経路は、損傷したドーパミン作動性ニューロンにおけるROSの即時上方制御、ならびにCD73およびA2A受容体の活性化を含む。
【0128】
本発明は、1)MSCおよびHSCの相乗的な神経栄養および血管新生効果、ならびに2)幹細胞治療とDBSとを組み合わせることによって、ドーパミン作動性機能および運動障害のMSCおよびHSC媒介による部分回復を提供する。
【0129】
本発明は、MSCおよびHSCの併用投与がインビトロでのニューロン生存に利益をもたらし、それらを実行可能な細胞治療の前臨床候補として確立することを提供する。本発明は、PDドーパミン作動性細胞損傷のインビトロモデル系において神経保護を増強する方法として、組み合わせたMSC/HSC治療を提供する。記載されるデータおよび図に示されるように、モデル神経毒素6-OHDAは、早期損傷マーカーであるカスパーゼ3の活性化を誘導し、LUHMESニューロンにおける神経突起の構造的完全性を損なう。ニューロン損傷後のUCB MSCの添加は、ニューロンのカスパーゼ活性化を著しく低減し、神経突起構造の保存を増強する。それにもかかわらず、MSC単独では、ニューロン損傷を完全に抑制することはできない。しかしながら、興味深いことに、HSCをMSCと一緒に加えると、ニューロン保護が劇的に増強される。再生は、パラクリン機構と直接的な細胞間相互作用の両方を介して行われる。直接的な細胞間相互作用は、MSCおよびHSCからニューロンへのTNTおよびミトコンドリア移動を介する。ROSは、TNT形成およびミトコンドリア移動を駆動する主要な機構である。CD73シグナル伝達は、TNT形成、ミトコンドリア移動、およびニューロン再生を媒介する。
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図12
【国際調査報告】