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特表2022-517536微生物を増殖させるためのバイオリアクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(54)【発明の名称】微生物を増殖させるためのバイオリアクタ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/08 20060101AFI20220302BHJP
   C12M 1/06 20060101ALI20220302BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C12M1/08
C12M1/06
C12M1/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021537978
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 FI2019050920
(87)【国際公開番号】W WO2020148480
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】20195020
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520476330
【氏名又は名称】ソーラー フーズ オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ピトゥカネン ユハ-ペッカ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC01
4B029DB05
4B029DB11
4B029DC01
(57)【要約】
微生物を増殖させるためのバイオリアクタ(100)。反応チャンバ(102)の内部に配置されたドラフトチューブ(210)を備え、ドラフトチューブはガス入口(104、106、108)、反応混合物の入口及び出口を有する。バイオリアクタは、反応チャンバ内に反応混合物の流れ(224)を発生する手段と、反応チャンバの内部に配置されて、ドラフトチューブを取り囲む第1のブレード構造(226A、226B)とを備える。第1のブレード構造は、反応チャンバの高さによって定義される方向に対して20~40°または320~340°に配置された複数のブレードを備える。バイオリアクタは、反応媒体のための入口、増殖した微生物とともに媒体を回収するための出口(110)も備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体および微生物を含む反応混合物を収容するための反応チャンバ(102)を備える、微生物を増殖させるためのバイオリアクタ(100)であって、前記反応チャンバは、第1の端部(202)、第2の端部(204)、第1の端部における内側表面と前記第2の端部における内側表面との間の距離によって定義される内側高さH、および内側直径Dを有し、
・ 前記反応チャンバの内部に配置されたドラフトチューブ(210)であって、
・ 第1の端部(212)、第2の端部(214)および前記第1の端部(212)を前記第2の端部へ接続する側壁(216)、
・ 内側直径Dであって、Dより小さいD
・ 前記第1の端部と前記第2の端部との間の距離によって定義される高さHであって、Hより小さいH
・ 少なくとも1つのガス入口(104、106、108)、
・ その第1の端部に設けられる前記反応混合物の入口、
・ その第2の端部に設けられる前記反応混合物の出口、
を有する、前記ドラフトチューブ;
・ 前記反応チャンバ内に前記反応混合物の流れ(224)を発生させる手段;
・ 前記反応チャンバの内部に配置されて、前記ドラフトチューブを取り囲む少なくとも第1のブレード構造(226A,226B)であって、
・ 前記反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、20~40°である前記角度α
・ 前記反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、320~340°である前記角度α
のうちの少なくとも一つに配置された複数のブレードを備える、前記少なくとも第1のブレード構造;
・ 反応媒体のための少なくとも1つの入口;
・ 媒体を、増殖した微生物とともに回収するための少なくとも1つの出口(110);
を備える、バイオリアクタ。
【請求項2】
前記反応チャンバ(102)の内部に配置されて、前記ドラフトチューブ(210)を取り囲む第2のブレード構造(228A、228B)をさらに備え、
・ 前記第2のブレードは、前記第1のブレード構造(226A、226B)から距離Lに配置され、
・ 前記第1のブレード構造は、前記反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αに配置された複数のブレードを備え、前記角度αが20~40°であり、
・ 前記第2のブレード構造は、前記反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αに配置された複数のブレードを備え、前記角度αが320~340°である
請求項1に記載のバイオリアクタ。
【請求項3】
前記バイオリアクタ(100)は、前記反応チャンバ(102)から前記ドラフトチューブ(210)中へ、前記反応チャンバの内部のガスおよび前記反応チャンバの内部の反応混合物の少なくとも一方を循環させるための循環ユニット(700、800、900)をさらに備える、請求項1または2に記載のバイオリアクタ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガス入口(104、106、108)は、前記ドラフトチューブ(210)の前記側壁(216)上に設けられた、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガス入口(104、106、108)は、ガス気泡を作り出すためのいくつかの開口部を備えるノズル(222)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項6】
媒体を、増殖した微生物とともに回収するための前記少なくとも1つの出口(110)が前記反応チャンバ(102)の前記第1の端部(202)に配置された、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項7】
前記ドラフトチューブ(210)は、前記ドラフトチューブの内部に配置された、前記反応混合物を混合するためのインペラ(218)をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項8】
前記インペラ(218)は、前記少なくとも1つのガス入口(104、106)より前記ドラフトチューブ(210)の前記第1の端部(212)に近い方に配置された、請求項7に記載のバイオリアクタ。
【請求項9】
アクスルへ接続されたタービン(820)を備え、ガスの循環のために、そのアクスルが撹拌シャフトへ接続された、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項10】
ガスの循環のために外部ポンプ(720)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項11】
前記反応チャンバ(102)内に前記反応混合物の流れ(224)を発生させるための前記手段は、ポンプ(510)であり、前記ドラフトチューブ(210)は、前記ドラフトチューブの高さの方向に垂直に配置された少なくとも1つの内部ブレード構造(606、608)を備え、前記内部ブレード構造(606A、606B、606C、606D)は、前記ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度αd1に配置された複数のブレードを備え、前記αd1が20~40°である、請求項1~10のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項12】
前記ドラフトチューブ(210)は、互いからある距離に配置された2つの内部ブレード構造(606A、606B)を備え、前記2つの内部ブレード構造の前記ブレードが前記ドラフトチューブ(210)の高さによって定義される方向に対して異なる角度に配置された、請求項11に記載のバイオリアクタ。
【請求項13】
前記ドラフトチューブ(210)は、3つ以上の内部ブレード構造(606A、606B、606C、606D)を備え、各隣接する内部ブレード構造の前記ブレードが前記ドラフトチューブ(210)の高さによって定義される方向に対して異なる角度に配置された、請求項11または12に記載のバイオリアクタ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのガス入口(104、106、108)は、前記少なくとも1つの内部ブレード構造(606A、606B、606C、606D)より前記ドラフトチューブ(210)の前記第2の端部(214)に近い方に配置された、請求項11~13のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項15】
前記少なくとも1つのガス入口(104、106、108)および/または液体入口(512)へ接続されたエジェクタ構造(914)を備える、請求項11~13のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項16】
各ブレード構造(226A、226B、228A、228B)および各内部ブレード構造(606A、606B、606C、606D)は、独立して30~60ブレードを備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項17】
少なくとも1つのセンサ(112)をさらに備える、請求項1~16のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項18】
前記少なくとも1つのセンサ(112)は、泡形成センサ、温度センサ、液体流量センサ、ガス流量センサ、ガスレベルセンサおよび液体レベルセンサからなる群から選択される、請求項17に記載のバイオリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される事項(以下、本開示という)は、一般に、バイオリアクタに関し、より具体的には、微生物を増殖させるためのバイオリアクタに関する。
【背景】
【0002】
微生物は、ヒトおよび動物のクオリティ・オブ・ライフを支援して、改善するのに極めて重要な役割を果たす。さらに、微生物は、夥しい食品生産物および医薬化合物の生産を支援するため、生理的プロセスを促進するため、下水および廃水を処置するために、そしていくつかの製造および研究プロセスにおいて定常的に用いられる。それゆえに、適正製造規範を順守するプロセスを用いて制御された物理的および化学的環境で増殖される微生物が多数の分野で必要とされる。典型的に、バイオリアクタは、微生物の適切な増殖のためにかかる制御された環境を確保すべく採用される。
【0003】
一般に、微生物は、バイオリアクタにおける適切な増殖のために最適にバランスされた環境条件、例えば、栄養分の混合物、ガス、熱、pHおよび圧力を必要とする。ガス発酵などのいくつかのプロセスのために、微生物は、液相中で増殖される。典型的に、かかる液体は、主として水および栄養分を備え、さらに水素(H)、酸素(O)および二酸化炭素(CO)などのガスが提供される。しかしながら、前述のガスを液体中に溶解させるためにかなりのエネルギー量が用いられる。そのうえ、ガスの一部分は、溶解されないままのことがある。その後に、ガスのかかる部分は、微生物によって用いられず、それゆえに、ガス利用のエネルギー効率に悪影響を与える。
【0004】
典型的に、ガスは、定められた圧力でバイオリアクタの底部から、バイオリアクタ中に含まれる液体中へポンピングされる。その後に、ガスは、バイオリアクタの底部からバイオリアクタの最上部へ上昇する。さらに、ガスは、一般に、ガスが底部から最上部へ上昇するときに微生物によって用いられる。それゆえに、ガスが底部から最上部へ上昇するのに要する時間と、微生物がガスを用いることができる確率との間に比例関係があるので、ガスが底部から最上部へ上昇するのに要する時間が最大にされる必要がある。さらに、バイオリアクタの底部中へポンピングされるガスが液体の内部にガス気泡を形成する。その後に、微生物がその使用のためにガス分子を取り込むことができる面積を最大にするために、ガス気泡のサイズが最小限に抑えられなければならない。
【0005】
従来、バイオリアクタは、ガスを液体中へスパージして、その後に、ガス気泡を破壊すべくRushtonタービン(すなわち、半径流インペラ)を用いるために反応チャンバの底部に実装されたガススパージャを含む。しかしながら、バイオリアクタにおけるRushtonタービンの使用は、反応チャンバ中に(キャビテーションとも呼ばれる)液体のないゾーンの形成をもたらして、タービンのエネルギー効率を減少させることがある。さらに、液体中のガスの滞留時間を増加させるために、Uチューブ配置のような異なる幾何学的配置が採用される。具体的には、Uチューブ配置では、液体がポンプを用いて大きいU字状パイプ中を循環させられる。加えて、Uチューブ配置は、液体を混合するためにスタティックミキサを用いることを含んでよい。そのうえ、バイオリアクタの実装は、様々なエアリフト型リアクタ設計を含んでよい。かかるエアリフト型リアクタ設計では、液体を通して上昇するガスが液体をリアクタのライザ部上へ移動させて、その後に、ガスが液体から分離し、ガス気泡のない液体がリアクタのダウンカマー部を通して戻る。Outotec Oyj社によって設計され、OKTOP(登録商標)と命名されたバイオリアクタの実装においては、ドラフトチューブ、およびミキサーモータへ接続されたポンピング撹拌器が採用される。かかる実装では、ドラフトチューブ中のポンピング撹拌器を用いて液体が移動される。かかるポンピング、混合およびスパージングシステムがバイオリアクタにおける液体中のガスの適切な混合を確実にする。しかしながら、これらのシステムは、哺乳類細胞のようにゆっくりと増殖する培養物の増殖を支援しうるに過ぎず、集約的な微生物増殖を支援しない。
【0006】
それゆえに、前述の考察の観点から、従来のバイオリアクタ設計と関連する欠点を克服する必要がある。
【摘要】
【0007】
本開示は、微生物を増殖させるためのバイオリアクタを提供することを目指す。本開示は、バイオリアクタの内部の反応混合物中のガスの低溶解および短い滞留時間の既存の問題への解決策を提供することを目指す。本開示の目標は、先行技術において遭遇する前記問題を少なくとも部分的に克服して、微生物の最適増殖のために反応混合物中のガスのより長い滞留時間を達成するバイオリアクタのための効率的で堅牢な設計を提供する解決策を提供することである。
【0008】
一態様において、本開示のある実施形態は、反応媒体および微生物を含む反応混合物を収容するための反応チャンバを備える、微生物を増殖させるためのバイオリアクタを提供し、前記反応チャンバは、第1の端部、第2の端部、第1の端部における内側表面と前記第2の端部における内側表面との間の距離によって定義される内側高さH、および内側直径Dを有し、
・ 前記反応チャンバの内部に配置されたドラフトチューブであって、
・ 第1の端部、第2の端部および前記第1の端部を前記第2の端部へ接続する側壁、
・ 内側直径Dであって、Dより小さいD
・ 前記第1の端部と前記第2の端部との間の距離によって定義される高さHであって、Hより小さいH
・ 少なくとも1つのガス入口、
・ その第1の端部に設けられる前記反応混合物の入口、
・ その第2の端部に設けられる前記反応混合物の出口、
を有する、前記ドラフトチューブ;
・ 前記反応チャンバ内に前記反応混合物の流れを発生させる手段;
・ 前記反応チャンバの内部に配置されて、前記ドラフトチューブを取り囲む少なくとも第1のブレード構造であって、
・ 前記反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、20~40°である前記角度α
・ 前記反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、320~340°である前記角度α
のうちの少なくとも一つに配置された複数のブレードを備える、前記少なくとも第1のブレード構造;
・ 反応媒体のための少なくとも1つの入口;
・ 媒体を、増殖した微生物とともに回収するための少なくとも1つの出口;
を備える。
【0009】
本開示の実施形態は、先行技術における前述の問題を実質的になくし、または少なくとも部分的にそれらに対処して、液体と結合するためにより大きい表面積を提供すべく小さいサイズのガス気泡の生成を可能にし、それによって反応混合物とガスとの適切な混合を確実にする。
【0010】
本開示の追加の態様、利点、特徴および目的は、続いて添付の特許請求の範囲と併せて解釈される説明的な実施形態の図面および詳細な記載から明らかにされるであろう。
【0011】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく様々な組み合わせに組み合わされる余地があることがわかるであろう。
【0012】
上記の摘要、ならびに説明的な実施形態の以下の詳細な記載は、添付図面と併せて読まれたときにさらによく理解される。本開示を説明するために、本開示の例示的な構造が図面に示される。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法および手段には限定されない。そのうえ、図面が縮尺通りではないことを当業者は理解するであろう。可能な限り、同様の要素は、同一の番号によって示された。
【0013】
次に、本開示の実施形態が、以下のダイアグラムを参照して、例としてのみ記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付図面において、下線付き番号は、下線付き番号がその上に置かれた事項、または下線付き番号がそれに隣接する事項を表すために採用される。下線のない番号は、下線のない番号を事項に結びつける線によって識別される事項に関係する。番号に下線がなく関連付けられた矢印を伴うときには、下線のない番号は、矢印が指し示す全般的な事項を識別するために用いられる。
【0015】
図1】本開示のある実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタの概略説明図である。
図2】本開示のある実施形態による、軸X-X'に沿ったバイオリアクタの断面図の概略説明図である。
図3】本開示のある実施形態による、少なくとも1つのブレード構造によって取り囲まれた、ドラフトチューブの概略説明図である。
図4】本開示のある実施形態による、第1のブレード構造および第2のブレード構造の概略説明図である。
図5】本開示の別の実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタの例示的な実装の概略説明図である。
図6】本開示のある実施形態による、軸Y-Y'に沿ったバイオリアクタの断面図の概略説明図である。
図7】本開示の様々な実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタの様々な例示的な実装の概略説明図である。
図8A】本開示の様々な実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタの様々な例示的な実装の概略説明図である。
図8B】本開示の様々な実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタの様々な例示的な実装の概略説明図である。
図9】本開示の様々な実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタの様々な例示的な実装の概略説明図である。
【実施形態の詳細説明】
【0016】
以下の詳細な記載は、本開示の実施形態およびそれらを実装することができる方法を示す。本開示を実施するいくつかのモードが開示されたが、本開示を実施または実行するために他の実施形態も可能であることを当業者は認識するであろう。
【0017】
一態様において、本開示のある実施形態は、反応媒体および微生物を含む反応混合物を収容するための反応チャンバを備える、微生物を増殖させるためのバイオリアクタを提供し、前記反応チャンバは、第1の端部、第2の端部、第1の端部における内側表面と第2の端部における内側表面との間の距離によって定義される内側高さH、および内側直径Dを有し、
・ 反応チャンバの内部に配置されたドラフトチューブであって、
・ 第1の端部、第2の端部および第1の端部を第2の端部へ接続する側壁、
・ 内側直径Dであって、Dより小さいD
・ 第1の端部と第2の端部との間の距離によって定義される高さHであって、Hより小さいH
・ 少なくとも1つのガス入口、
・ その第1の端部に設けられる反応混合物の入口、および
・ その第2の端部に設けられる反応混合物のための出口
を有する、ドラフトチューブ;
・ 反応チャンバ内に反応混合物の流れを発生させる手段;
・ 反応チャンバの内部に配置されて、ドラフトチューブを取り囲む少なくとも第1のブレード構造であって、
・ 反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、20~40°である角度α
・ 反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、320~340°である角度α
のうちの少なくとも1つに配置された複数のブレードを備える、少なくとも第1のブレード構造;
・ 反応媒体のための少なくとも1つの入口;
・ 媒体を、増殖した微生物とともに回収するための少なくとも1つの出口:
を備える。
【0018】
本開示は、微生物を増殖させるための前述のバイオリアクタを提供する。微生物は、適正製造規範(GMP)の下で増殖されたときに、食品、医薬品、化粧品などを含めて、様々な用途を見出す。本バイオリアクタは、微生物の最適増殖のために微生物によるガスおよび栄養分の効率的な使用を確実にする。本開示のバイオリアクタは、液相中へ提供されるガス気泡のサイズを減少させること、ならびに液体、栄養分および微生物を含む、反応混合物の流れを、バイオリアクタの反応チャンバ全体にわたって均等に発生させることによってガスおよび液体混合物のためにより長い滞留時間を可能にする。この点に関して、バイオリアクタは、より大きいガス気泡を破壊し、ガス気泡を反応混合物と混合して、反応チャンバ内に反応混合物の流れを発生させるために、少なくとも1つのブレード構造、好ましくは、(いくつかのブレード構造が用いられるときには)バイオリアクタ内の異なる位置に配置された、複数のブレード構造を採用する。有益には、ブレード構造は、反応混合物のガスおよび液相の効率的な混合のために反応混合物を異なる方向に、時計回りおよび反時計回りに、回転させるために、バイオリアクタの高さに対してある角度に配置された、複数のブレードを備える。加えて、有益には、バイオリアクタは、微生物を増殖させるのに総合的にエネルギー効率のよいバイオリアクタを提供するために、増殖直後の微生物の効率的な回収を提供する。
【0019】
本開示を通して、用語「バイオリアクタ(bioreactor)」は、定義され、制御された物理的および科学的条件の下での、細胞の培養、微生物の増殖、および医薬品として関心のあるバイオ分子のそれらからの生成に必要とされる、生物学的および/または生化学的反応が意図された容器を指す。医薬品として関心のあるバイオ分子は、以下には限定されないが、適正製造規範(GMP)条件の下で適正製造規範を順守するプロセスを用いて増殖されたワクチン、薬剤、ホルモン、酵素、抗体、バイオ医薬品、プラスミドDNA、ウイルス、ファージ、タンパク質、ペプチド、および脂質を備える群から選択される。バイオリアクタは、例えば、円筒、円錘、略立方体、または立方体形状を有してよい。さらに、バイオリアクタの容積は、その使用法に依存して選択され、例えば、10リットル、100リットル、200リットル、1000リットル、5000リットル、10000リットル、20000リットル、50000リットル、100000リットルまたは200000リットルであってよい。バイオリアクタは、バイオリアクタの内容物に対して不活性な材料から作製されてよい。ある例では、作製のために用いられる材料は、ステンレス鋼(例えば、タイプ304、316もしくは316L)、他の適切な金属もしくは合金、ガラス材料、ファイバ、セラミック、プラスチック材料および/またはそれらの組み合わせであってよい。そのうえ、作製材料は、典型的に、防水であり、様々な生物学的、生化学的および/または機械的プロセス、例えば、微生物濃度、バイオマス生成、撹拌力、エアレーション力、動作圧力、温度などの摩耗効果に耐えるために十分に強い。
【0020】
本記載においては、たとえ指定されなくても、言及される部品が一端または両端を有さない、すなわち、内側高さが外側高さと同じである場合を除いて、高さおよび直径が意味するのは、それぞれ、内側高さおよび内側直径である。内側高さが意味するのは、内側で測定された、部品の2つの端部間の距離であり、一方で内側直径は、側壁の内側表面間の距離である。非円筒部品が用いられるときに、内側直径は、高さ方向に垂直な最大寸法を示す。
【0021】
微生物を増殖させるためのバイオリアクタは、反応媒体および微生物を含む反応混合物を収容するための反応チャンバを備える。反応チャンバは、生物学的および/または生化学的反応がその中で実施される、バイオリアクタの内部の容器である。さらに、反応チャンバは、第1の端部、第2の端部、第1の端部における内側表面と第2の端部における内側表面との間の距離によって定義される内側高さH、および内側直径Dを有する。ある実施形態によれば、反応チャンバは、形状が円筒であり、第1の端部、すなわち最上面、および第2の端部、すなわち底面をもつ。実施形態によっては、反応チャンバの内側高さH、すなわち、第1の端部における内側表面と第2の端部における内側表面との間の距離は、200~550ミリメートル、好ましくは300~500ミリメートル、より好ましくは340~410ミリメートルの範囲にあってよい。内側高さHは、例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410または420mmから240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540または550mmまでであってよい。実施形態によっては、反応チャンバの内側直径D、すなわち、側壁の内側表面間の距離は、120~350ミリメートル、好ましくは170~300ミリメートル、より好ましくは220~260ミリメートルの範囲にあってよい。内側直径Dは、従って、例えば、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300mmから140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340または350mmまでであってよい。より大きい反応チャンバについては、寸法が当然ながら比例して増加される。
【0022】
本開示を通して、用語「反応混合物(reaction mixture)」は、微生物の増殖のために採用される、反応チャンバの内部の構成要素を指す。反応混合物は、反応媒体および微生物を含む。反応媒体は、栄養分ありまたはなしの液相を含み、微生物のための栄養分および増殖媒体として役立つ。液相は、水、例えば、逆浸透または蒸留を用いて精製された水、海水、塩気のある水、リサイクルプロセス水、例えば、酪農流出液、生理食塩液媒体、および/またはそれらの組み合わせを備える群から選択されてよい。液相は、炭素、マグネシウム、カリウム、リン、硫黄、鉄、亜鉛、マンガン、窒素(例えば、アンモニア、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、アミノ酸類、(可溶性、不溶性または加水分解された)タンパク質類の形態)、動物副産物、酪農廃棄物、イースト、脂肪酸類、アルコール類、多糖類、鉱物、ビタミン類、成長因子、酸類、塩基類、抗生物質類、消泡剤類、界面活性剤類および同様のものを含めて、追加の栄養分を備えてよい。
【0023】
反応混合物は、最適増殖条件の下でより多くの微生物を発生させるための出発材料として機能する、微生物の接種材料を備えることがわかるであろう。本開示を通して、用語「微生物(micro-organism)」は、藻類、細菌類、ラン藻類、イースト、真菌類、古細菌類および同様のものを指す。バイオリアクタは、微生物の増殖に必要とされる、定義され、制御された生理学的条件を提供する。さらに、バイオリアクタは、植物細胞類、真菌類、ハイブリドーマ細胞株類などを含めて、真核細胞類を培養するために用いられてよい。初めに、無菌的に維持された微生物培養物からある量の接種材料がバイオリアクタに播種される。微生物は、次に、後の使用のためにその後に収集されることになる、微生物増殖のバイオマスまたは副産物に関して、最適増殖を達成するためにある環境においてある時間にわたって増殖することを許容される。実施形態によっては、反応チャンバ中の反応混合物は、反応チャンバの容積の0.5~20%に及ぶ。実施形態によっては、反応混合物は、バイオリアクタの外部で、例えば、滅菌振とうフラスコにおいて、無菌条件の下で調製されて、次に、無菌条件の下で反応チャンバへ移される。
【0024】
バイオリアクタは、反応チャンバの内部に配置されたドラフトチューブを備える。用語「ドラフトチューブ(draft tube)」は、本明細書では、液相を導くために反応チャンバの内部に設置された導管を指す。そのうえ、ドラフトチューブは、液相の循環を改善し、気泡合体を低減して、液相中のガスの混合効率を反応チャンバ全体にわたって向上させる。ドラフトチューブは、第1の端部、第2の端部および第1の端部を第2の端部へ接続する側壁を有する。第1の端部がドラフトチューブの最上もしくは上端部に属し、第2の端部がドラフトチューブの底端部に属して、側壁がドラフトチューブの第1の端部および第2の端部を接続する。好ましくは、ドラフトチューブの第1の端部および第2の端部は、開いており、ドラフトチューブに中空円筒形状を与える。実施形態によっては、ドラフトチューブは、ステンレス鋼(例えば、タイプ304、316または316L)、他の適切な金属または合金、ガラス材料、ファイバ、セラミック、プラスチック材料および/またはそれらの組み合わせから作製されてよい。そのうえ、作製材料は、典型的に防水であり、様々な生物学的、生化学的および/または機械的プロセス、例えば、微生物濃度、バイオマス生成、圧力、撹拌力、エアレーション力、温度および同様のものの摩耗効果に耐えるために十分に強い。
【0025】
ドラフトチューブは、内側直径Dであって、Dより小さいD、および第1の端部と第2の端部との間の距離によって定義される高さHであって、Hより小さいHを有する。ドラフトチューブが反応チャンバ内に囲まれるので、ドラフトチューブの内側直径Dおよび高さHは、反応チャンバの内側直径Dおよび内側高さHより小さいことがわかるであろう。実施形態によっては、ドラフトチューブの内側直径Dは、50~250ミリメートル、好ましくは70~180ミリメートル、より好ましくは90~130ミリメートルの範囲にあってよい。内側直径Dは、従って、例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200mmから80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240または250mmまでであってよい。より大きい反応チャンバについては、寸法がそれに応じて増加される。
【0026】
ある実施形態によれば、ドラフトチューブの高さHは、150~400ミリメートル、実施形態によっては200~350ミリメートル、実施形態によっては250~300ミリメートルの範囲にあってよい。例えば、ドラフトチューブの高さHは、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360または370mmから180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390または400mmまでであってよい。やはり、より大きい反応チャンバについては、これらの寸法がそれに応じてスケールアップされる。
【0027】
ある実施形態によれば、ドラフトチューブの内側直径Dは、111ミリメートルであり、反応チャンバの内側直径Dは、240ミリメートルであり、従って、ドラフトチューブの断面積は、反応チャンバの断面積の21%である。この比は、例えば、15~50%とすることができるであろう。ドラフトチューブの高さHは、275ミリメートルであり、一方で反応チャンバの液高さは、350ミリメートルである。このケースでは、液体レベルは、近似的にドラフトチューブの上方の高さに位置するであろう、その高さがドラフトチューブの半径の2分の1(約27ミリメートル)であり、ドラフトチューブの下方のクリアランスは、ドラフトチューブの半径の約75%となろう。
【0028】
ドラフトチューブは、少なくとも1つのガス入口をさらに備える。実施形態によっては、ガスは、ガスを圧力下で貯蔵するガスのソースから少なくとも1つのガス入口へ流入する。ガスは、空気、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素、不活性ガス、窒素の酸化物、メタンなどであってよい。より実施形態によっては、ガスは、圧縮状態で用いられてよく、反応混合物中へスパージされてよい。さらに、少なくとも1つのガス入口へのガスの流れの速度は、好ましくは、当技術分野でよく知られるコントローラ配置によって制御される。コントローラ配置は、少なくとも1つのガス入口への、その後にドラフトチューブへのガスの流れの所望の速度を達成するためにガスの流れの速度を調節する。実施形態によっては、ガスの流量は、0.1~2容積/分の範囲にあってよい。実施形態によっては、少なくとも1つのガス入口は、ドラフトチューブの側壁上に設けられる。少なくとも1つのガス入口が、少なくとも1つのガス入口に対応する、少なくとも1つの接続開口部を通してガスをドラフトチューブの内部へ供給する。具体的には、少なくとも1つのガス入口の端部が開いており、各々がコネクタを通してドラフトチューブ中のそれぞれの接続開口部へ接続される。ある実施形態では、反応混合物の流量は、0.1~2容積/分の範囲にあってよい。例えば、バイオリアクタ中の反応混合物の容積が15リットルであれば、流量は、15リットル/分とすることができるであろう。これがドラフトチューブの内部に2.5cm/秒の流速をもたらすであろう。
【0029】
実施形態によっては、少なくとも1つのガス入口は、ガス気泡を作り出すためにいくつかの開口部を備えるノズルを備える。ノズル、例えば、スパージャは、少なくとも1つのガス入口の端部における突出部としての役割を果たし、少なくとも1つのガスをガス気泡として液体中へ分散させるためにいくつかの開口部、例えば、小さい穴を備える。具体的には、少なくとも1つのガスがドラフトチューブの下部に、すなわち、ドラフトチューブの第1の端部と第2の端部との間の領域に、その中の接続開口部を通してスパージされる。ノズルのいくつかの開口部を通してスパージされたガスが小さいおよび大きいガス気泡の組み合わせをもたらす。ノズル中の開口部の直径は、例えば、0.5~200μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは3~10μmとすることができる。ある実施形態では、ガス気泡の形状は、チューブ、球、半球、楕円体、半楕円体および/またはそれらの組み合わせのいずれかであってよい。直径は、例えば、0.5、1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125または130μmから1、2、3、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195または200μmまでであってよい。
【0030】
本開示を通して、用語「スパージする(sparge)」、「スパージされる(sparged)」または「スパージング(sparging)」は、スパージャ(もしくはディフューザまたはノズル)を採用することによってガスを液相中へ注入するプロセスを指す。スパージングは、発酵、オゾン処理、酸化、水素付加などのような用途におけるさらなる反応のために、例えば、エアレーションおよびカーボネーションにおいて、ガスを液体中へ溶解させるために用いられてよい。実施形態によっては、スパージングは、例えば、剥離用途などにおいて、汚染物質を液相から除去するために用いられてもよい。一般に、スパージャは、異なるタイプ、サイズ、構成に作製材料を用いて製造される。スパージャは、ステンレス鋼、他の適切な金属または合金、ガラス材料、ファイバ、セラミック、プラスチック材料および/またはそれらの組み合わせの群から選択された異なる材料から作製されてよい。さらに、スパージャの選択は、培養プロセスのタイプ、すなわち、連続またはバッチ、ガスの流速、反応チャンバの容積、様々な生物学的、生化学的および/または機械的プロセス、例えば、撹拌力、エアレーション力、動作圧力、温度などの摩耗効果によって支配される。
【0031】
実施形態によっては、ドラフトチューブは少なくとも2つのガス入口を備える。実施形態によっては、これら2つのガス入口はドラフトチューブの側壁上に設けられる。これら少なくとも2つのガス入口は、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素、不活性ガス、窒素の酸化物、メタンおよび同様のものの群から選択された少なくとも1つのガスの各々を供給するために設けられてよい。ある例では、第1のガス入口が、例えば、水素のような第1のガスを供給し、第2のガス入口が、例えば、酸素のような第2のガスを供給する。実施形態によっては、少なくとも2つのガス入口のいずれかまたは両方を通してガスの混合物が供給されてもよい。実施形態によっては、2つのガス入口は、直径方向に対向して、ドラフトチューブの第1の端部から同じ距離に配置される。直径方向に対向した配置およびドラフトチューブの第1の端部から同じ距離が、ドラフトチューブの断面全体にわたってガス気泡の均一な分布を確実にすることがわかるであろう。具体的には、2つのガス入口の突出部が対応するガスをドラフトチューブの側壁上の2つの開口部の各々からドラフトチューブの内部の液相中へスパージし、一方では同時に、ドラフトチューブ中にガス気泡の上昇流を生成する。そのうえ、ドラフトチューブの第1の端部から同じ距離が、その中にスパージされた第1のタイプのガスのみで液相が飽和される余地を残すことなく、少なくとも2つのガスの等しい混合も確実にする。
【0032】
実施形態によっては、ドラフトチューブは少なくとも3つのガス入口を備える。実施形態によっては、これら少なくとも3つのガス入口は、やはりドラフトチューブの側壁上に設けられ、周方向に等距離に、そしてドラフトチューブの第1の端部から同じ距離に配置される。少なくとも3つのガス入口は、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素、不活性ガス、窒素の酸化物、メタン、および同様のものの群から選択された少なくとも1つのガスの各々を供給するために設けられてよい。ある例では、第1のガス入口は、例えば、水素のような第1のガスを供給し、第2のガス入口は、例えば、酸素のような第2のガスを供給し、第3のガス入口は、例えば、二酸化炭素のような第3のガスを供給するなどである。実施形態によっては、少なくとも1つのガス入口のいずれかまたはすべてを通してガスの混合物が供給されてもよい。実施形態によっては、3つのガス入口は、周方向に等距離に、そしてドラフトチューブの第1の端部から同じ距離に配置される。周方向に等距離の配置およびドラフトチューブの第1の端部から同じ距離が、ドラフトチューブの断面全体にわたってガス気泡の均一な分布を確実にすることがわかるであろう。具体的には、少なくとも3つのガス入口の突出部が対応するガスをドラフトチューブの側壁上の3つの開口部の各々からドラフトチューブの内部の液相中へスパージし、一方では同時にドラフトチューブ中にガス気泡の上昇流を生成する。そのうえ、ドラフトチューブの第1の端部から同じ距離が、その中にスパージされた第1のタイプのガスのみで液相が飽和される余地を残すことなく、少なくとも3つのガスの等しい混合も確実にする。
【0033】
実施形態によっては、少なくとも1つのガス入口がドラフトチューブの第1の端部の近くに設けられてもよい。かかる事例では、少なくとも1つのガス入口がドラフトチューブ中への少なくとも1つの開口部を通してガスをドラフトチューブの内部へ供給する。
【0034】
ドラフトチューブは、その第1の端部に反応混合物のための入口をさらに備える。微生物は、増殖するために、反応混合物と、二酸化炭素を生成するための酸素のような、空気(またはガス)とを必要とすることがわかるであろう。それゆえに、バイオリアクタは、反応チャンバの内部の調節された液体流および少なくとも1つのガスと、使用済みの反応混合物および余剰ガスの反応チャンバからの流出とを確実にするように設計される。さらに、バイオリアクタは、反応混合物の適切な混合、すなわち、反応混合物中での少なくとも1つのガスと液相との混合を確実にするように設計される。さらに、反応混合物中へのガスの注入がガス気泡と反応混合物の液相との混合物(以下では「ガス・液体混合物」と呼ばれる)をもたらす。実施形態によっては、反応混合物は、反応混合物を貯蔵する、反応混合物の新鮮な供給ソースから、ドラフトチューブ上の第1の端部における反応混合物のための入口へ流入する。実施形態によっては、この供給ソースはバイオリアクタの外部に配置される。実施形態によっては、反応混合物は、循環によって反応チャンバ中の反応混合物からドラフトチューブ上の第1の端部における反応混合物のための入口へ流入する。
【0035】
実施形態によっては、ドラフトチューブは、ドラフトチューブの内部に配置された、反応混合物を混合するためのインペラをさらに備える。用語「インペラ(impeller)」は、本明細書では、反応混合物の液相を、そのブレードの回転によって、移動させるための回転デバイスを指す。具体的には、インペラは、液相の圧力および流れを回転の中心から外側へ増加させ、それによって、反応混合物の液相がドラフトチューブ中のガスと混合する効率を向上させる。実施形態によっては、インペラは、少なくとも1つのガス入口よりドラフトチューブの第1の端部に近い方に配置される。インペラは、反応混合物の一部分を受けて、ドラフトチューブからの反応混合物が反応チャンバへ流入してその中の反応混合物と混合する前に、液相中でのガスの適切な混合を確実にするように、ドラフトチューブの第1の端部に近い方に配置されることがわかるであろう。さらに、インペラは、反応混合物とガスとの適切な混合を確実にするために、反応混合物を定められた方向に、すなわち、ドラフトチューブの内部で下方へ、そしてドラフトチューブの外部では上方へ、具体的には、ドラフトチューブの側壁と反応チャンバの壁との間に流れさせるように配置される。そのうえ、反応混合物の適切な混合は、バイオリアクタ混合システムとガス注入システム、例えば、スパージングシステムとの組み合わせによって確実にされる。インペラの回転速度は、400~600rpmのように、例えば、100~1000rpmとすることができる。実施形態によっては、インペラは、インペラを回転させる、エンジンとともに配置される。ある実施形態では、インペラの撹拌アクスルの(反応チャンバの外部の)懸架端にプーリが配置される。さらに、インペラに回転運動を提供するために、プーリがベルトドライブによってエンジンのモータシャフトへ連結される。そのうえ、エンジンのモータシャフトが駆動体としての機能を果たし、インペラの撹拌アクスルが駆動される機能を果たす。ベルトドライブが動力を高効率(約90%)で伝達することがわかるであろう。
【0036】
インペラは、典型的に、ドラフトチューブの第1の端部に近い方に配置されるので、付着のために反応混合物の液相に対してより大きい表面積を提供する、より小さいガス気泡がドラフトチューブの第2の端部に向かって下方へ移動することがわかるであろう。そのうえ、大きいガス気泡ほど、より小さいガス気泡と比較して浮揚性が高く、それゆえに、ドラフトチューブ中で浮上する傾向がある。しかしながら、大きいガス気泡ほど、反応混合物の能率的な混合のためにインペラによってより小さいガス気泡へ分解される。
【0037】
ドラフトチューブは、その第2の端部に反応混合物のための出口をさらに備える。ドラフトチューブは、ドラフトチューブから反応チャンバ中への反応混合物の流れを調節し、反応チャンバ全体にわたって剪断力と加圧力とを釣り合わせる。とりわけ、ガス・液体混合物は、ドラフトチューブの第2の端部に向かって、そして反応チャンバ中の残りの反応混合物とのさらなる混合のために反応チャンバ中へ移動する。具体的には、ドラフトチューブの第2の端部における反応混合物の出口が反応チャンバ中の反応混合物へのガス・液体混合物の供給を可能にする。さらに、ドラフトチューブが反応チャンバの反応混合物の一部を囲んでキャビテーションを回避するので、ドラフトチューブの高さHがキャビテーションの回避に重要な役割を果たす。
【0038】
バイオリアクタは、反応媒体のための少なくとも1つの入口を備える。微生物は、増殖するために反応混合物を用いることがわかるであろう。それゆえに、バイオリアクタは、反応チャンバの内部の調節された液体流および少なくとも1つのガスと、使用済みの反応混合物および余剰ガスの反応チャンバからの流出とを確実にするように設計される。とりわけ、反応媒体は、反応媒体のソースから反応媒体のための少なくとも1つの入口へ供給される。反応媒体のための少なくとも1つの入口が、栄養分ありまたはなしの滅菌液相を備える、新鮮な反応媒体を反応チャンバへ提供する。ある例では、反応媒体は、Luria Broth培地であってよい。遅滞期(すなわち、微生物の増殖中のある相)においては、反応チャンバが微生物で飽和され、これがエネルギーの大部分を用いて、反応混合物からの栄養分およびガスの観点からバイオリアクタの効率を低下させ、一方ではバイオリアクタの運転コストを増加させることがわかるであろう。それゆえに、バイオリアクタの動作を回復させるために、増殖した微生物の除去が必要である。
【0039】
バイオリアクタは、媒体を、増殖した微生物とともに回収するための少なくとも1つの出口を備える。実施形態によっては、微生物の培養が最適培養を一旦達成すると、微生物を反応チャンバから収集することができる。実施形態によっては、増殖した微生物を回収するための少なくとも1つの出口が反応チャンバの第1の端部に、すなわち、反応チャンバの最上部に配置される。微生物増殖が反応混合物と比較してより軽いので、増殖した微生物の層は、反応混合物の表面から収集されてよい。とりわけ、反応混合物の表面の上方の、反応チャンバの残りの容積は、余剰ガスで満たされる。この点に関して、媒体を、増殖した微生物とともにリアクタチャンバから回収するために、媒体を、増殖した微生物とともに回収するための少なくとも1つの出口が用いられる。そのうえ、余剰ガスを反応チャンバから、ベンティングによって、除去するためにも、媒体を、増殖した微生物とともに回収するための少なくとも1つの出口を用いることができる。
【0040】
バイオリアクタは、反応チャンバの内部に配置されて、ドラフトチューブを取り囲む少なくとも第1のブレード構造をさらに備え、少なくとも1つのブレード構造は、反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、20~40°である角度α、または反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αであって、320~340°である角度αのうちの少なくとも1つに配置された複数のブレードを備える。これは、第1のブレード構造とも呼ばれる。
【0041】
ある実施形態によれば、バイオリアクタは、反応チャンバの内部に配置されて、ドラフトチューブを取り囲む第2のブレード構造をさらに備える。第2のブレード構造は、第1のブレード構造から距離Lに配置される。このケースでは、第1のブレード構造は、反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αに配置された複数のブレードを備え、角度αが20~40°であり、第2のブレード構造は、反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αに配置された複数のブレードを備え、角度αが320~340°である。以下の(ならびに上記の)説明では、「1つのブレード構造(one blade structure)」が述べられるときに、それらの説明は、第1および第2のブレード構造の両方について妥当である。さらに、バイオリアクタは、特に、その寸法が大きければ、反応チャンバの内部に配置されてドラフトチューブを取り囲むさらなるブレード構造(第3、第4、第5など)を備えてよい。最も好ましくは、ブレード構造のブレードの角度は、反応チャンバ内の反応混合物の移動を増加させるために、2つの連続するブレード構造の角度が異なる。
【0042】
さらに、かかる事例では、第1、第2のおよびさらなるブレード構造が同じかまたは異なる距離に配置されてよい。実施形態によっては、第1のブレード構造と第2のブレード構造との間の距離Lは、反応チャンバの内側高さHの約5~25%であってよい。同じことが2つのブレード構造間のその他の距離について独立して当てはまる。例えば、その距離は、反応チャンバの内側高さHの5、6、7、8、9、10、12、15、17または20%から6、7、8、9、10、12、15、17、20、22または25%までであってよい。1つより多いブレード構造が用いられるときには、それらは、典型的に、互いからある距離に配置され、ブレード構造の2つのセット間の距離は、同じかまたは異なることができる。
【0043】
角度αは、例えば、20、22、24、26、28、30、32または34°から22、24、26、28、30、32、34、36、38または40°までとすることができる。角度αは、例えば、320、322、324、326、328、330、332または334°から322、324、326、328、330、332、334、336、338または340°までとすることができる。異なるブレード構造の角度は、同じかまたは異なることができる。
【0044】
少なくとも1つのブレード構造は、ドラフトチューブまたは反応チャンバの高さの方向に垂直に配置される。そのうえ、ドラフトチューブを取り囲む少なくとも1つのブレード構造が反応チャンバの内部のドラフトチューブの設置を支持し、少なくとも1つのブレード構造の外周は、反応チャンバの側壁に取り付けられて、内周は、対応する平行部位で、ドラフトチューブの側壁に据え付けられる。さらに、ドラフトチューブを取り囲む少なくとも1つのブレード構造は、ドラフトチューブの第2の端部において反応混合物のための出口からガス・液体混合物を受ける。ドラフトチューブを取り囲む少なくとも1つのブレード構造は、ガス・液体混合物のためにより長い滞留時間をさらに可能にして、微生物が増殖するために利用可能なより高いガス濃度を提供する。
【0045】
少なくとも1つのブレード構造は、複数のブレードを備える。複数のブレードは、少なくとも1つのブレード構造の支持配置上に配置されてよい。少なくとも1つのブレード構造の支持配置は、少なくとも1つのブレード構造の各々に対して、および/または反応チャンバの内側高さまたは(少なくとも1つのブレード構造がドラフトチューブの高さの方向に垂直に配置されるので)ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度αに配置された、複数の開口部を有する。そのうえ、複数の開口部が支持配置上に配置された複数のブレードに対応し、複数のブレードが開口部中へ固定されることを許容する。実施形態によっては、当技術分野で知られたその他の方法によって、例えば、溶接によって複数のブレードが支持配置上に配置されてもよい。
【0046】
複数のブレードが反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αに配置され、角度α1が20°~40°である。例えば、角度αは、20°、25°、30°または35°から25°、30°、35°または40°までであってよい。実施形態によっては、複数のブレードが反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度αに配置され、角度αが320°~340°である。例えば、角度αは、320°、325°、330°または335°から325°、330°、335°または340°までであってよい。ある例では、少なくとも1つのブレード構造のブレードが反応チャンバの高さによって定義される方向に対して角度30°に、または角度330°に配置される。角度αまたはαが0°であれば、そのときにはブレードが反応混合物の方向を変えず、角度αまたはαが90°であれば、そのときにはブレードが反応混合物の移動を妨げ、それゆえに、それぞれ20°~40°および320°~340°である角度αおよびαが反応チャンバ全体にわたって反応混合物の効率的な流れを提供して、反応混合物が方向を変更するように強いることがわかるであろう。
【0047】
とりわけ、ブレードの角度は、インペラの速度に依存し、ブレードの角度は、インペラの速度に比例する。ある例では、インペラが低速で回転するならば、そのときにはブレードの角度が低くなければならず、例えば、インペラの速度が毎秒100メートル(m/s)であれば、そのときにはブレードの角度は、反応混合物がブレードを損傷することも、いずれの妨害もなしにブレードを通過することを許容するために20°であってよい。別の例では、インペラの速度が毎秒500メートル(m/s)であれば、そのときにはブレードの角度は、反応混合物が反応混合物とガスとの適切な混合を生じさせるために増加した滞留時間を有しつつ、ブレードを通過することを許容するために40°であってよい。用語「滞留時間(residence time)」は、本明細書では、ある物質がバイオリアクタ中で過ごす時間を指す。ある例では、ガス・液体混合物中のガス気泡の滞留時間は、10~30分に及んでよい。小さいガス気泡ほど、より大きいガス気泡と比較して、より大きい表面積、それゆえに、より長い滞留時間を有することがわかるであろう。例えば、直径2ミリメートルのガス気泡は、20分の滞留時間を有し、一方で1ミリメートルの直径を有するガス気泡は、30分のより長い滞留時間を有する。
【0048】
実施形態によっては、少なくとも1つのブレード構造は、30~60ブレードを備える。例えば、少なくとも1つのブレード構造中のブレードの数は、30、35、40、45または55ブレードから35、40、45、50、55または60ブレードまでであってよい。いくつかのブレード構造が用いられるならば、それらは、同じかまたは異なる数のブレードを備えてよい。例えば、第2のブレード構造中のブレードの数は、30、35、40、45または55ブレードから35、40、45、50、55または60ブレードまでであってよい。そのうえ、少なくとも1つのブレード構造のブレードの各々は、ドラフトチューブおよび/または反応チャンバの高さによって定義される方向に対して等しい角度に傾けられ、従って、少なくとも1つのブレード構造全体にわたってガス・液体混合物の均一な分布をもたらす。さらに、少なくとも1つのブレード構造を、各部品が一定数のブレードを備える、3つの部品から作製することができる。実施形態によっては、各部品は、10~20ブレードを備える。例えば、少なくとも1つのブレード構造の各部品は、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19ブレードから11、12、13、14、15、16、17、18または20ブレードまでを備えてよい。やはり、1つより多いブレード構造が用いられるならば、それらの各々が1つ以上の部品を備えてよく、各部品が適切な数のブレード、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19ブレードから11、12、13、14、15、16、17、18または20ブレードまでを備えてよい。ある例では、各部品が14ブレードを備える場合に、少なくとも1つのブレード構造は、全部で42ブレードを有することになる。
【0049】
ドラフトチューブの高さHに基づいて、バイオリアクタは、複数のブレード構造を含んでよいことがわかるであろう。例えば、バイオリアクタは、反応チャンバの内部に配置されて、ドラフトチューブを取り囲む2つ、3つまたはそれ以上のブレード構造を含んでよい。さらに、かかる事例では、複数のブレード構造が互いから離れて所定の距離に配置されてよい。とりわけ、複数のブレード構造間の所定の距離は、同じかまたは異なってもよい。例えば、上述のように、1つのブレード構造が、別のブレード構造から距離Lにある隣接するブレード構造から距離Lに配置されてよいなどである。そのうえ、Lは、Lに等しい、もしくはより小さいかまたはより大きくてよい。実施形態によっては、あるブレード構造と隣接するブレード構造との間の距離Lは、反応チャンバの内側高さHの約5~25%であってよい。同じことが任意の2つのブレード構造間のその他の距離について独立して当てはまる。例えば、その距離が反応チャンバの内側高さHの5、6、7、8、9、10、12、15、17または20%から6、7、8、9、10、12、15、17、20、22または25%までであってよい。
【0050】
ある実施形態では、第1のブレード構造は、ガス・液体混合物が時計回りの方向に流れるようにし、第2のブレード構造は、ガス・液体混合物が反時計回りの方向に流れるようにする。第1のブレード構造および第2のブレード構造の配置は、ガス・液体混合物のためにより長い滞留時間を可能にし、従って、微生物が増殖するために利用可能なガス・液体混合物中のより高いガス濃度を可能にする。
【0051】
バイオリアクタは、反応チャンバ内に反応混合物の流れを発生させる手段をさらに備える。具体的には、反応チャンバ内に反応混合物の流れを発生させる手段は、液体流を反応媒体のための少なくとも1つの入口からドラフトチューブへ向けるように、そして反応チャンバ中へ戻すように動作可能である。
【0052】
実施形態によっては、反応チャンバ内に反応混合物の流れを発生させる手段は、ポンプであり、ドラフトチューブは、ドラフトチューブの高さの方向に垂直に配置された少なくとも1つの内部ブレード構造を備える。さらに、内部ブレード構造は、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度αd1に配置された複数のブレードを備え、角度αd1が20~40°である。実施形態によっては、ポンプは、反応混合物を回転させることによって液体流を反応チャンバ中へ向けるように動作可能である。より実施形態によっては、ポンプは、ドラフトチューブへ新鮮な反応媒体を提供する反応媒体のための少なくとも1つの入口から反応混合物を受け、ドラフトチューブではインペラが液体流をドラフトチューブ中へさらに下方に向ける。ポンプが用いられるときに、その電力は、例えば、0.3~0.8kWのように、0.1~5kWとすることができる。
【0053】
実施形態によっては、ドラフトチューブは、ドラフトチューブの高さの方向に垂直に配置された少なくとも1つの内部ブレード構造を備え、少なくとも1つの内部ブレード構造は、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度αd1に配置された複数のブレードを備え、角度αd1が20~40°である。実施形態によっては、複数のブレードが少なくとも1つの内部ブレード構造の支持配置上に配置される。少なくとも1つの内部ブレード構造の支持配置は、内部ブレード構造に対して、および/またはドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度αに配置された、複数の開口部を有してよい。例えば、複数の開口部が少なくとも1つの内部ブレード構造のうちの1つに対して角度αd1に配置される。そのうえ、複数の開口部が支持配置上に配置された複数のブレードに対応し、複数のブレードが開口部中へ固定されることを許容する。実施形態によっては、当技術分野で知られたその他の方法によって、例えば、溶接によって複数のブレードが支持配置上に配置されてもよい。少なくとも1つの内部ブレード構造の複数のブレードは、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度αd1に配置され、角度αd1が20~40°である。例えば、角度αd1は、20°、25°、30°または35°から25°、30°、35°または40°までであってよい。
【0054】
さらに、少なくとも1つの内部ブレード構造は、インペラを介して推進される、ドラフトチューブ中に囲まれたガスと液相との適切な混合を強化する。内部ブレード構造のブレードは、20°、25°、30°または35°から25°、30°、35°または40°までであってよい、角度αd1に固定されてよい。角度αd1が0°であれば、そのときにはブレードがインペラによって向けられる反応混合物の方向を変えないことがわかるであろう。角度αd1が90°であれば、そのときにはブレードがインペラによって向けられる反応混合物の移動を妨げ、それゆえに、20°~40°である角度αd1が反応チャンバ全体にわたって液相中へのガス気泡の効率的な混合、結果として、反応混合物の流れを提供する。
【0055】
実施形態によっては、少なくとも1つの内部ブレード構造は、独立して30~60ブレードを備える。例えば、少なくとも1つの内部ブレード構造中のブレードの数は、30、35、40、45または55ブレードから35、40、45、50、55または60ブレードであってよい。そのうえ、少なくとも1つの内部ブレード構造のブレードの各々は、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して等しい角度に傾けられ、従って、少なくとも1つの内部ブレード構造全体にわたってガス・液体混合物の均一な分布をもたらす。さらに、少なくとも1つの内部ブレード構造を、各部品が一定数のブレードを備える、3つの部品から作製することができる。実施形態によっては、各部品は、10~20ブレードを備える。例えば、少なくとも1つの内部ブレード構造の各部品は、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19ブレードから11、12、13、14、15、16、17、18または20ブレードまでを備えてよい。ある例では、各部品が14ブレードを備える場合に、少なくとも1つの内部ブレード構造は、全部で42ブレードを有することになる。
【0056】
実施形態によっては、ドラフトチューブは、互いからある距離に配置された2つの内部ブレード構造を備え、2つの内部ブレード構造のブレードは、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して異なる角度に配置される。実施形態によっては、2つの内部ブレード構造は、インペラの撹拌アクスルの回りで互いから距離Ld1に配置される。実施形態によっては、距離Ld1は、ドラフトチューブの高さHの約5~25%であってよい。
さらに、2つの内部ブレード構造の複数のブレードは、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して、および前のブレード構造に対して異なる角度に配置される。例えば、2つの内部ブレード構造の一方の複数のブレードが角度30°を有するならば、そのときには2つの内部ブレード構造の第2の複数のブレードは、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して角度20°を有する。
【0057】
実施形態によっては、ドラフトチューブは、3つ以上の内部ブレード構造を備え、各隣接する内部ブレード構造のブレードは、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して異なる角度に配置される。3つ以上の内部ブレード構造は、従って、インペラの撹拌アクスルの回りで互いから距離Ld1に配置される。実施形態によっては、距離Ld1は、ドラフトチューブの高さHの約5~25%であってよい。
3つ以上の内部ブレード構造が用いられるときに、それらは、典型的に、互いからある距離に配置され、2つの連続するブレード構造間の距離は、同じかまたは異なることができる。さらに、3つ以上の内部ブレード構造のブレードは、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して、および前の内部ブレード構造に対して異なる角度に配置される。例えば、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して、3つ以上の内部ブレード構造のうちの1つのブレードが角度30°を有するならば、そのときには第2の内部ブレード構造のブレードが角度20°を有してよく、第3の内部ブレード構造のブレードが角度10°(またはやはり30°、2つの連続する内部ブレード構造が異なる角度を有することが好ましい)を有してよいなどである。
【0058】
とりわけ、ドラフトチューブの高さによって定義される方向に対して、および前の内部ブレード構造に対して異なる角度に配置された、2つまたは3つ以上の内部ブレード構造の配置は、ガス・液体混合物が2つまたは3つ以上の内部ブレード構造を通過する間に異なる方向に流れるようにして、その結果、ガス・液体混合物のためにより長い滞留時間を可能にし、微生物が増殖するために利用可能なガス・液体混合物中のより高いガス濃度を可能にする。
【0059】
実施形態によっては、少なくとも1つのガス入口が、ドラフトチューブの側壁上に設けられる。実施形態によっては、このガス入口は、少なくとも1つの内部ブレード構造よりドラフトチューブの第2の端部に近い方に配置される。ある実施形態では、ドラフトチューブの側壁上に設けられる少なくとも1つのガス入口は、2つの内部ブレード構造が用いられるときには、2つの内部ブレード構造の間に配置される。インペラの下方で2つの内部ブレード構造の間に配置された少なくとも1つのガス入口は、ガス気泡を、その中での適切な混合のために、ドラフトチューブによって囲まれた反応混合物の液相中へ噴出することを可能にすることがわかるであろう。さらに、少なくとも1つのガス入口をドラフトチューブの第2の端部に近い方に配置することが、インペラによって向けられる液体の流れとは反対方向の、すなわち、ドラフトチューブの上方へのガス気泡の流れを確実にする。とりわけ、前記配置は、少なくとも1つの内部ブレード構造によって、反応チャンバ全体にわたって増加した滞留時間とガス・液体混合物の分散された流れとを確実にする。
【0060】
ある実施形態では、ポンプ、およびドラフトチューブの高さの方向に垂直に配置された少なくとも1つの内部ブレード構造を備えるドラフトチューブの他に、インペラ、および反応チャンバの内部に配置されてドラフトチューブを取り囲む、少なくとも1つのブレード構造も反応チャンバ内に反応混合物の流れを発生させる。前述のように、インペラは、反応混合物またはガス・液体混合物流が、定められた方向に、すなわち、例えば、ドラフトチューブの内部で下方へ、そしてドラフトチューブの外部では上方へ、具体的には、ドラフトチューブの側壁と反応チャンバの壁との間に流れるように配置される。ガス・液体混合物は、ドラフトチューブの高さの方向に垂直に配置された少なくとも1つの内部ブレード構造を経由して流れる。具体的には、少なくとも1つの内部ブレード構造は、滞留時間を増加させるためにガス・液体混合物の移動の方向を変えるように、さらに、ガス気泡をより能率的な仕方で反応チャンバ全体にわたって均一に分布させるように配置される。より具体的には、少なくとも1つの内部ブレード構造、および反応チャンバの内部に配置されてドラフトチューブを取り囲む、少なくとも1つのブレード構造は、前のブレード構造と比較して、隣接するブレード構造がガス・液体混合物の流れを異なる方向、好ましくは反対方向、または前の方向と比較して約90°の角度の方向に向けるように設けられる。インペラおよび複数のブレード構造は、3つの要素の各々、インペラ、少なくとも1つの内部ブレード構造、および反応チャンバの内部に配置されてドラフトチューブを取り囲む、少なくとも1つのブレード構造上のブレード方向に依存して、流体が時計回りおよび/または反時計回りの方向に移動するように配置されることがわかるであろう。
【0061】
実施形態によっては、バイオリアクタは、反応チャンバからドラフトチューブ中へ、反応チャンバの内部のガスまたは反応チャンバの内部の反応混合物の少なくとも一方を循環させるための循環ユニットをさらに備える。有益には、循環ユニットは、反応チャンバの内部のガスまたは反応チャンバの内部の反応混合物の少なくとも一方の絶え間のない供給を提供する。加えて、循環ユニットは、バイオリアクタのエネルギー効率および費用対効果をより高める。実施形態によっては、循環ユニットは、バイオリアクタの外部に設置される。実施形態によっては、循環ユニットが部分的にバイオリアクタの内部および部分的にバイオリアクタの外部に設けられてもよい(すなわち、「内部循環ユニット」)。ある例では、循環ユニットは、ガス量が同じ反応混合物によるガスの蓄積の保持時間を増加させる。
【0062】
内部循環ユニットは、特に、バイオリアクタの連続培養では、反応チャンバの内部のガスおよび反応チャンバの内部の反応混合物の少なくとも一方の実質的な循環を確実にしなければならないことがわかるであろう。循環ユニットは、電気、ポンプ、エジェクタ構造、モータなどを用いて運転されてよいことがわかるであろう。
【0063】
ある実装では、循環ユニットがガスポンプによって実装される。かかる実装では、循環ユニットが、反応チャンバからドラフトチューブ中へ、反応チャンバの内部のガスを循環させる。反応チャンバの内部のガスが反応混合物から自由になるガスを指し、反応混合物の内部にまだあるガスではないことがわかるであろう。実施形態によっては、新鮮ガス入口およびリサイクルガス入口がドラフトチューブの側壁上に設けられる。新鮮ガス入口およびリサイクルガス入口は、好ましくは、直径方向に対向することがわかるであろう。
【0064】
バイオリアクタは、アクスルへ接続されたタービンを備えてよく、ガスの循環のために、そのアクスルが撹拌シャフトへ接続される。別の実施形態によれば、バイオリアクタは、ガスの循環のために外部ポンプを備える。
【0065】
別の実装では、従って、循環ユニットが、自己吸引型エアレータのような、タービンによって実装される。かかる実装では、循環ユニットが、反応チャンバからドラフトチューブ中へ、反応チャンバの内部のガスを循環させる。実施形態によっては、タービンは、反応チャンバの第1の端部の下方(すなわち、残りの容積中に)に、すなわち、余剰ガスが集められるところに設けられる。タービンは、湾曲したブレードを備え、その中心軸、または中空撹拌アクスルの回りを特定の速度で回転してよい。タービンは、回転するにつれて、(ブレードの中心にある)その内部チャンバ内に低圧力領域を作り出す遠心力を生成し、それによって追加の圧力入力を必要でなくする。かかる低圧力の生成は、インペラの中空撹拌アクスル中へ通じている、中空撹拌アクスルの内部のガスの吸気をもたらし、集められたガスをその中に押し込む。さらに、実施形態によっては、循環ユニットがタービンによって実装されるときには、少なくとも1つのガス入口が反応チャンバの第1の端部上でタービン中へ設けられる。タービンは、新鮮および余剰(またはリサイクル)ガスを集めて、それを一緒にインペラの撹拌アクスルによってドラフトチューブに導入する。インペラの撹拌アクスルが新鮮およびリサイクルガスをドラフトチューブへ提供するための穴または開口部を備えることがわかるであろう。実施形態によっては、インペラの撹拌アクスル中の開口部に、小さいガス気泡をドラフトチューブ中の反応混合物の液相中にスパージするためのスパージャが設けられてよい。とりわけ、タービンは、反応混合物の密度および粘性に基づいてその仕様が変化してよい。タービンは、ステンレス鋼(例えば、タイプ304、316または316L)、プラスチック材料および/またはそれらの組み合わせから作製されてよい。有益には、循環ユニットがタービンを採用するかかる実装では、必要とされるスパージャが少なくなり、それによって、システムのコストを低減する。加えて、有益には、かかる実装は、反応混合物の温度の上昇をもたらさない。
【0066】
さらに別の実装では、循環ユニットは、共通エジェクタ構造に取り付けられた液体循環ポンプによって実装される。共通エジェクタ構造は、ガス吸気管およびノズルを含む。バイオリアクタは、従って、少なくとも1つのガス入口へ接続されたエジェクタ構造を備えてよい。液体循環ポンプが共通エジェクタ構造のノズルによって反応チャンバの内部の反応混合物を循環させて、共通エジェクタ構造のガス吸気管が反応チャンバの内部のガスの循環を可能にすることがわかるであろう。実施形態によっては、液体循環ポンプは、バイオリアクタの外部に設けられ、共通エジェクタ構造は、ドラフトチューブの第1の端部に設けられる。そのうえ、新鮮ガスをドラフトチューブ中へ供給するために少なくとも1つのガス入口がドラフトチューブの側壁上に設けられてよい。一実施形態では、かかる実装によって、反応混合物と少なくとも1つのガスとの混合の大部分が液体循環ポンプおよび共通エジェクタ構造によって達成される。それゆえに、ドラフトチューブ中にインペラを設置することが回避されてよく、それによって、システムの費用対効果をより高くする。
【0067】
実施形態によっては、バイオリアクタは、少なくとも1つのセンサをさらに備える。動作中に少なくとも1つのセンサは、微生物の増殖のために反応チャンバ内の泡形成、温度、液体流量、ガス流量、ガスレベルおよび/または液体レベルなど、増殖条件を記述する少なくとも1つの増殖パラメータを測る。少なくとも1つのセンサは、泡形成センサ、温度センサ、液体流量センサ、ガス流量センサ、ガスレベルセンサおよび液体レベルセンサからなる群から選択されてよい。実施形態によっては、少なくとも1つのセンサは、pHセンサおよびバイオマスセンサも含んでよい。ガスレベルセンサは、動作中に、反応チャンバ内の二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガス、メタンガス、二酸化硫黄ガス、一酸化炭素ガスおよびガスの混合物のうちの少なくとも2つの相対濃度を測ってよい。泡形成センサは、動作中に、反応チャンバ内の泡形成を測る。温度センサ、pHセンサおよびバイオマスセンサは、動作中に、それぞれ反応チャンバ内の温度、pHおよびバイオマスを測る。液体流量制御センサおよびガス流量制御センサは、動作中に、それぞれ反応チャンバ内の液体流量およびガス流量を測る。液体レベルセンサは、動作中に、反応チャンバ内の液体のレベルを測る。
【0068】
実施形態によっては、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つのレギュレータへ通信可能に結合される。動作中に少なくとも1つのレギュレータは、微生物の増殖のために反応チャンバ内の泡形成、ガスレベル、温度、pH、バイオマスおよび液体流量ならびにガスおよび液体レベルなど、増殖条件を記述する少なくとも1つの増殖パラメータを調節する。少なくとも1つのレギュレータは、ガスレベルレギュレータ、温度レギュレータ、液体流量制御レギュレータ、ガス流量制御レギュレータ、液体レベルレギュレータ、pHレギュレータおよびバイオマスレベルレギュレータを備える群から選択される。ガスレベルレギュレータは、動作中に、微生物の増殖に適した反応チャンバ内のガスのバランスを達成するために、反応チャンバ内の二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガス、メタンガス、二酸化硫黄ガス、一酸化炭素ガスおよびガスの混合物のうちの少なくとも2つの相対濃度を調節してよい。温度レギュレータ、pHレギュレータおよびバイオマスレギュレータは、動作中に、それぞれ反応チャンバ内の温度、pHおよびバイオマスを調節する。液体流量制御レギュレータおよびガス流量制御レギュレータは、動作中に、2つの相、液相および気相の適切な混合のために増加した滞留時間が達成されるように、それぞれ反応チャンバ内の液体流量およびガス流量を調節する。液体レベルレギュレータは、動作中に、反応チャンバ内の液体のレベルを調節する。
【0069】
実施形態によっては、センサおよびレギュレータは、動作中にコントローラへ通信可能に結合される。動作中にコントローラは、微生物の増殖に必要とされる増殖パラメータのうちの少なくとも1つに関する情報を取得する。コントローラは、少なくとも1つのセンサから増殖条件を記述する少なくとも1つのセンサ信号を受信して、微生物を増殖させるべく、反応チャンバ内の少なくとも1つの増殖パラメータの調節のための少なくとも1つの命令を少なくとも1つのレギュレータに対して発生させるために、取得された増殖パラメータのうちの少なくとも1つを受信された少なくとも1つのセンサ信号と比較する。レギュレータは、さらに、動作中に、コントローラから命令を受信して、反応チャンバ内の少なくとも1つの増殖パラメータを調整することによって少なくとも1つの増殖パラメータを調節する。実施形態によっては、微生物を増殖させるのに最適な増殖条件を記述する少なくとも1つの増殖パラメータがデータベースから取得され、そのデータベースがコントローラへ通信可能に結合される。さらに、データベースは、データまたはその組織化された集合体が表現される仕方に係わらず、デジタル情報の組織化された集合体に関係する。実施形態によっては、データベースは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアおよび/またはそれらの任意の組み合わせであってよい。例えば、デジタル情報の組織化された集合体は、テーブル、マップ、グリッド、パケット、データグラム、ファイル、文書、リストの形式、またはその他の任意の形式であってよい。データベースは、任意のデータストレージソフトウェアおよび必要とされるシステムを含んでよい。実施形態によっては、コントローラは、通信ネットワークを経由してデータベースへ通信可能に結合される。ある例では、通信ネットワークは、以下には限定されないが、セルラーネットワーク、短距離無線(例えば、Bluetooth(登録商標)など)、インターネット、ワイヤレスローカルエリアネットワーク、および赤外線ローカルエリアネットワーク、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0070】
さらに、少なくとも1つのセンサは、動作中に、増殖条件を記述する少なくとも1つの増殖パラメータを連続的または断続的に測る。有益には、少なくとも1つのセンサは、反応チャンバ内の増殖条件を記述する少なくとも1つの増殖パラメータにおけるわずかな変化を生成時間全体にわたって連続的に、または所定の時間に、例えば、30分、1時間、2時間、1日などのうちの少なくとも1つを隔てた時間に測るように構成された自動化されたセンサ配置である。そのうえに、少なくとも1つのセンサによって測られた増殖条件を記述する少なくとも1つの増殖パラメータにおけるかかる変化が、コントローラによって連続的に、またはかかる変化を測る所定の時間に受信される。さらに、コントローラは、微生物を増殖させるべく、反応チャンバ内の少なくとも1つの増殖パラメータを調節するために少なくとも1つのレギュレータへ少なくとも1つの命令を提供するように動作可能である。実施形態によっては、コントローラは、動作中に、レギュレータへ少なくとも1つの命令を連続的または断続的に提供する。具体的には、コントローラは、少なくとも1つの命令をコントローラから受信して連続的に、または所定の時間に反応チャンバ内の少なくとも1つの増殖パラメータを調節するためにレギュレータへ少なくとも1つの命令を提供するように動作可能である。
【0071】
ある実施形態では、反応チャンバ内の調節された増殖条件は、25%~85%の範囲、実施形態によっては40%~80%の範囲、実施形態によっては55%~70%の範囲にある入口ガス中の水素の濃度、5%~50%の範囲、実施形態によっては10%~40%の範囲、実施形態によっては15%~25%の範囲にある入口ガス中の二酸化炭素の濃度、1%~25%の範囲、実施形態によっては5%~20%の範囲、実施形態によっては5%~15%の範囲にある入口ガス中の酸素の濃度、10℃~75℃の範囲、実施形態によっては25℃~45℃の範囲にある温度、3℃~10℃の範囲、実施形態によっては5.5~7.5の範囲にあるpH、0.5~60g/L(細胞乾燥重量)の範囲、実施形態によっては20~40g/Lの範囲にあるバイオマス、反応チャンバ容積のリットルあたり0.005L/h~反応チャンバ容積のリットルあたり0.5L/hの範囲、実施形態によっては反応チャンバ容積のリットルあたり0.01L/h~反応チャンバ容積のリットルあたり0.1L/hの範囲にある反応混合物の流量、反応チャンバ容積のリットルあたり50mL/分~反応チャンバ容積のリットルあたり2000mL/分の範囲、実施形態によっては反応チャンバ容積のリットルあたり60mL/分~反応チャンバ容積のリットルあたり200mL/分の範囲にある入口ガスの流量、および反応チャンバ内の70%~100%の範囲、実施形態によっては80%~90%の範囲にある液体レベルを含んでよい。
【0072】
実施形態によっては、ガスは、ガスを少なくとも1つのガス入口中へ移す前に、ガス供給ユニットにおいて微生物の増殖のための最適温度範囲へ加熱または冷却されてよい。実施形態によっては、ガスは、パイプの回りにウォータジャケットを設けて、温水または冷水をその中に供給することによって加熱または冷却されてもよい。
【0073】
実施形態によっては、微生物培養プロセスは、連続培養プロセスまたはバッチ型培養プロセスのいずれか一方であってよい。連続培養プロセスは、バイオリアクタ中への反応混合物および/またはガスの追加、ならびにバイオリアクタからの増殖した微生物および余剰ガスの除去を同時に必要とする。バッチ型培養プロセスは、バイオリアクタ中への反応混合物および/またはガスの追加なしに所定の時間にわたって1つのバッチを作って実行すること、ならびにプロセスが終了した(または所定の目標に達した)後に増殖した微生物および余剰ガスをバイオリアクタから除去することを必要とする。
【0074】
別の態様では、本開示のある実施形態は、微生物を増殖させるための方法を提供し、方法は、
・ 反応媒体および微生物を含む反応混合物を提供することと、
・ 少なくとも1つのガスを提供することと、
・ 少なくとも1つのガスおよび反応媒体を少なくとも2つの方向に流すことによって少なくとも1つのガスを反応媒体と混合することと、
・ 増殖した微生物および/または余剰ガスを回収することと
を含む。
【図面の詳細説明】
【0075】
図1を参照すると、外部から見られるような、本開示のある実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタ100の概略説明図が示される。バイオリアクタ100は、反応チャンバ102、ガス入口104、106および108ならびに増殖した微生物の回収のための出口110を備える。バイオリアクタ100は、センサ112をさらに備える。
【0076】
図2を参照すると、本開示のある実施形態による、軸X-X'に沿った図1のバイオリアクタ100の断面図の概略説明図が示される。示されるように、反応チャンバ102は、内側直径D、第1の端部202、第2の端部204、および第1の端部202と第2の端部204との間の距離によって定義される内側高さHを含む。バイオリアクタ100は、反応チャンバ102の内部に配置されて、第1の端部212、第2の端部214、および第1の端部212を第2の端部214へ接続する側壁216を有するドラフトチューブ210を含む。ドラフトチューブ210は、内側直径D、第1の端部212と第2の端部214との間の距離によって定義される高さH、少なくとも1つのガス入口104および106、その第1の端部212(開いた最上部)における反応混合物のための入口、ならびにその第2の端部214(開いた底部)における反応混合物のための出口を有する。少なくとも1つのガス入口104、106は、側壁216上の、端部にドラフトチューブ210中へ開くノズル222を備える。そのうえ、ドラフトチューブ210は、ドラフトチューブ210の内部に配置された、反応混合物を混合するためのインペラ218をさらに備える。
【0077】
反応チャンバ102は、図2に示されるように、反応チャンバ102内に反応混合物の流れ(矢印224で示される)を発生させる手段(示されない)も有する。反応チャンバ102は、反応チャンバの内部に配置されてドラフトチューブを取り囲む第1のブレード構造226A、226Bおよび第2のブレード構造228A、228Bも含む。さらに、第1のブレード構造226Aは、第2のブレード構造228Aから距離Lに配置されて、第1のブレード構造226Bは、第2のブレード構造228Bから距離Lに配置される。さらに、反応混合物の上昇レベル234および発生ガスで満たされた残りの容積236が反応チャンバ102中に示される。残りの容積236は、反応チャンバ102の第1の端部202と反応チャンバ102の内部の反応混合物の上昇レベル234との間に位置する。
【0078】
図3を参照すると、本開示のある実施形態による、第1のブレード構造226A、226Bおよび第2のブレード構造228A、228Bによって取り囲まれた、ドラフトチューブ210の概略説明図が示される。示されるように、第1のブレード構造226A、226Bは、複数のブレードを有する第1のブレードタイプ302を備える。さらに、第2のブレード構造228A、228Bは、複数のブレードを有する第2のブレードタイプ304を備える。異なるブレード構造が交互の順に配置される。図3は、ガス入口104、106および108、ドラフトチューブ210ならびにノズル222も示す。
【0079】
図4を参照すると、本開示のある実施形態による、第1のブレード構造226Aおよび第2のブレード構造228Aの概略説明図が示される。示されるように、第1のブレード構造226Aは、反応チャンバの高さHによって定義される方向に対して角度αに配置された複数のブレードを有する第1のブレードタイプ302を備える。さらに、角度αは、高さHによって定義される方向に対して33°である。加えて、第2のブレード構造228Aは、反応チャンバ102の高さHによって定義される方向に対して角度αに配置された複数のブレードを有する第2のブレードタイプ304を備える。さらに、角度αは、高さHによって定義される方向に対して327°である。そのうえ、第1のブレード構造226Aおよび第2のブレード構造228Aは、支持部402および404上に配置されて、各ブレードが、406および408のような、開口部に取り付けられる。さらに、第1のブレード構造226Aおよび第2のブレード構造228Aは、反応混合物の流れを矢印224で示されるように向ける。
【0080】
図5を参照すると、本開示の別の実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタ500の例示的な実装の概略説明図が示される。示されるように、バイオリアクタ500は、反応チャンバ502ならびにガスを提供するためのガス入口504、506および508を有する。バイオリアクタ500は、反応混合物を液体入口512を経由して反応チャンバ502中へ、そして出口514を経由して反応チャンバ502から外へ循環させるように動作可能なポンプ510も有する。
【0081】
図6を参照すると、本開示のある実施形態による、軸Y-Y'に沿った図5のバイオリアクタ500の断面図の概略説明図が示される。示されるように、バイオリアクタ500は、反応チャンバ502、液体入口512および出口514ならびに入口602、一組の内部ブレード構造606A、606B、606C、606Dを備えるドラフトチューブ604および一組の外部ブレード構造610、612、614、616を含む。ポンプ510は、反応混合物を一組の内部ブレード構造606A、606B、606C、606Dおよび一組の外部ブレード構造610、612、614、616内で循環させる。
【0082】
図7を参照すると、本開示の別の実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタ700の例示的な実装の概略説明図が示される。バイオリアクタ700は、反応チャンバ702を含む。反応チャンバ702は、ドラフトチューブ704、ガス入口706Aおよび706B、ガス出口708、ならびにインペラ710を含む。反応チャンバ702は、第1の端部712および第2の端部714も含む。反応チャンバ702は、反応チャンバ702の内部に配置されてドラフトチューブ704を取り囲むブレード構造716をさらに含む。バイオリアクタ700は、インペラ712へ連結されたモータシャフト718も含む。さらに、モータシャフト718がインペラ712を回転させる。バイオリアクタ700は、ガスをガス出口708からガス入口706Bを通してドラフトチューブ704へ循環させるために反応チャンバ702の外部に配置されたポンプ720をさらに含む。
【0083】
図8Aおよび8Bを参照すると、本開示の別の実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタ800の例示的な実装の概略説明図が示される。バイオリアクタ800は、反応チャンバ802を含む。反応チャンバ802は、ドラフトチューブ804、ガス入口806、およびインペラ808を含む。反応チャンバ802は、第1の端部810および第2の端部812も含む。反応チャンバ802は、反応チャンバ802の内部に配置されてドラフトチューブ804を取り囲むブレード構造814も含む。バイオリアクタ800は、インペラ808へ連結されたモータシャフト816をさらに含む。さらに、モータシャフト816がインペラ808の中空撹拌アクスル818を回転させる。バイオリアクタ800は、反応混合物の上昇レベル822の上方に配置されて、中空撹拌アクスル818を通してインペラ808へ連結され、モータシャフト816によって回転されるタービン820をさらに含む。さらに、タービン820は、反応混合物の上昇レベル822の上方に集められたガスを吸気し、出口824を経由してインペラ808の下方でガスを循環させる。図8Bに示されるように、タービン820の上面図は、タービン820のブレード826の周りの環境ガスの移動を描く。
【0084】
図9を参照すると、本開示の別の実施形態による、微生物を増殖させるためのバイオリアクタ900の例示的な実装の概略説明図が示される。バイオリアクタ900は、反応チャンバ902を含む。反応チャンバ902は、ドラフトチューブ904、およびガス入口906を含む。反応チャンバ902は、反応チャンバ902の内部に配置されてドラフトチューブ904を取り囲むブレード構造908も含む。さらに、ドラフトチューブ904は、ドラフトチューブ904の内部に配置された内部ブレード構造910を含む。バイオリアクタ900は、反応混合物を反応チャンバ902から共通エジェクタ構造914を通してドラフトチューブ904へ循環させるために反応チャンバ902の外部に配置されたポンプ912をさらに含む。示されるように、共通エジェクタ構造914は、ガス吸気管916、およびノズル918を含む。さらに、反応混合物が共通エジェクタ構造914のノズル918から吐出される。とりわけ、反応混合物の流れによってガス吸気管916に吸気圧力が作り出されて、共通エジェクタ構造914への環境ガスの吸い込みをもたらす。それゆえに、ガスおよび反応混合物の混合物がドラフトチューブ904へ循環される。
【0085】
先に記載された本開示の実施形態に対する変更が添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の範囲から逸脱することなく可能である。本開示を記載し、請求するために用いられた「含む(including)」、「備える(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「有する(have)」、「である(is)」のような表現は、非排他的な仕方で解釈されることが意図され、すなわち、明示的に記載されない事項、構成要素または要素も存在することを許容する。単数への言及は、複数にも関係すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】