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特表2022-517551ペロブスカイトソーラーモジュール及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ペロブスカイトソーラーモジュール及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 130
H01L31/04 135
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538414
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2019129280
(87)【国際公開番号】W WO2020135739
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811620661.9
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521285182
【氏名又は名称】無錫極電光能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI UTMOST LIGHT TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1098,Dacheng Road,Eastern Park,Economic Development Zone,Xishan District,Wuxi,Jiangsu 214101,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】邵君
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151CB30
5F151FA02
(57)【要約】
ペロブスカイトソーラーモジュール及びその作製方法を提供する。当該ペロブスカイトソーラーモジュールは、基板と、基板の表面の少なくとも一部に設けられた透明導電性酸化物層と、透明導電性酸化物層における基板に面していない表面の少なくとも一部に設けられた電子輸送層と、電子輸送層における透明導電性酸化物層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた光活性層と、光活性層における電子輸送層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた正孔輸送層と、正孔輸送層における光活性層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた電極と、光活性層に設けられるとともに光活性層と電極の凸出部とを離間させているバリア層と、を含む。当該ペロブスカイトソーラーモジュールは、バリア層を設けることで、光活性層と電極との直接接触によるシャント等の問題を効果的に解決し、ペロブスカイトソーラーモジュールの性能を顕著に向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面の少なくとも一部に設けられた透明導電性酸化物層と、
前記透明導電性酸化物層における前記基板に面していない表面の少なくとも一部に設けられた電子輸送層と、
前記電子輸送層における前記透明導電性酸化物層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた光活性層と、
前記光活性層における前記電子輸送層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた正孔輸送層と、
前記正孔輸送層における前記光活性層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた電極であって、前記電極は、凸出部を有し、前記凸出部は、前記正孔輸送層、前記光活性層及び前記電子輸送層を貫通して前記透明導電性酸化物層に接続されている電極と、
前記光活性層に設けられるとともに前記光活性層と前記凸出部とを離間させているバリア層と、を含むことを特徴とするペロブスカイトソーラーモジュール。
【請求項2】
前記透明導電性酸化物層に第一スクライビング領域が形成され、前記電子輸送層の一部は、前記第一スクライビング領域内に設けられており、
又は、前記透明導電性酸化物層及び前記電子輸送層に第一スクライビング領域が形成され、前記バリア層の一部は、前記第一スクライビング領域内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイトソーラーモジュール。
【請求項3】
前記光活性層は、ペロブスカイトで形成され、前記バリア層は、ハロゲン化物系材料、酸化物系材料、窒化物系材料及び炭化物系材料のうち、少なくとも1つで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイトソーラーモジュール。
【請求項4】
前記バリア層のバンドギャップは、前記光活性層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のペロブスカイトソーラーモジュール。
【請求項5】
前記バリア層のバンドギャップは、2.5eV以上であり、前記光活性層のバンドギャップは、1.5~1.8eVであることを特徴とする請求項3に記載のペロブスカイトソーラーモジュール。
【請求項6】
第二スクライビング領域を更に含み、
前記第二スクライビング領域は、前記電子輸送層、前記光活性層、前記正孔輸送層及び前記バリア層に位置し、前記電極の凸出部は、前記第二スクライビング領域内に設けられていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のペロブスカイトソーラーモジュール。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法であって、
基板上に透明導電性酸化物層を形成し、スクライビングによって前記透明導電性酸化物層に第一スクライビング領域を形成した後、前記透明導電性酸化物層上に電子輸送層を形成するステップ(1)と、
前記電子輸送層上にバリア層及び光活性層を形成するステップ(2)と、
前記バリア層及び前記光活性層上に正孔輸送層を形成するステップ(3)と、
前記正孔輸送層上に電極を設けるステップ(4)と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
ステップ(1)において、基板上に透明導電性酸化物層及び電子輸送層を順次に形成した後、スクライビングによって前記透明導電性酸化物層及び前記電子輸送層に第一スクライビング領域を形成することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記電子輸送層上にバリア層及び光活性層を同時に形成することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
スクライビングによって前記電子輸送層、前記正孔輸送層及び前記バリア層に第二スクライビング領域を形成し、次に、前記正孔輸送層上に電極を設け、前記電極の凸出部を前記第二スクライビング領域内に設けるステップを、ステップ(4)の前に更に含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力デバイス分野に関し、特に、ペロブスカイトソーラーモジュール及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト太陽電池は、現在急速に発展している太陽電池の1種であり、高効率、低コスト、作製し易い等の特徴を持つ。ペロブスカイト太陽電池は、その構造によって平面構造とメソポーラス構造とに分けられ、主に透明電極、電子輸送層、ペロブスカイト光吸収材料、正孔輸送層、対極等を含む。ペロブスカイト材料が光を吸収すると、光生成電子及び正孔が生成されて、それぞれ電子輸送層及び正孔輸送層に伝達され、外部回路に接続されてループを形成して電気エネルギーを出力する。
【0003】
しかしながら、既存のペロブスカイト太陽電池には、まだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明は、ペロブスカイトソーラーモジュール及びその作製方法を提供することを目的とする。当該ペロブスカイトソーラーモジュールは、バリア層を設けることで、光活性層と電極との直接接触によるシャント等の問題を効果的に解決し、ペロブスカイトソーラーモジュールの性能を顕著に向上させることができる。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の技術案は、次のように実現されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、本発明は、ペロブスカイトソーラーモジュールを提供している。本発明の実施例によれば、当該ペロブスカイトソーラーモジュールは、基板と、前記基板の表面の少なくとも一部に設けられた透明導電性酸化物層と、前記透明導電性酸化物層における前記基板に面していない表面の少なくとも一部に設けられた電子輸送層と、前記電子輸送層における前記透明導電性酸化物層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた光活性層と、前記光活性層における前記電子輸送層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた正孔輸送層と、前記正孔輸送層における前記光活性層に面していない表面の少なくとも一部に設けられた電極であって、前記電極は、凸出部を有し、前記凸出部は、前記正孔輸送層、前記光活性層及び前記電子輸送層を貫通して前記透明導電性酸化物層に接続されている電極と、前記光活性層に設けられるとともに前記光活性層と前記凸出部とを離間させているバリア層とを含む。
【0007】
既存技術に比べて、本発明の上記実施例に係るペロブスカイトソーラーモジュールは、少なくとも以下の利点を有する。本発明の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールは、光活性層にバリア層を設けることで、バリア層を用いて光活性層と電極とを離間させ、光活性層で生成された光生成電子又は正孔が金属電極に流れ込むのを回避することができるため、ペロブスカイトソーラーモジュールの性能が向上される。同時に、バリア層を用いて光活性層と電極とを隔てることで、レーザー又は物理的なスクライビング中に発生し得る化学反応による光活性層の劣化や損傷等の悪影響を回避することもできる。また、当該バリア層は、光活性層の形成と同時に形成することができ、作製方法が簡単である。
【0008】
さらには、前記透明導電性酸化物層に第一スクライビング領域が形成され、前記電子輸送層の一部は、前記第一スクライビング領域内に設けられており、又は、前記透明導電性酸化物層及び前記電子輸送層に第一スクライビング領域が形成され、前記バリア層の一部は、前記第一スクライビング領域内に設けられている。
【0009】
さらには、前記光活性層は、ペロブスカイトで形成され、前記バリア層は、ハロゲン化物系材料、酸化物系材料、窒化物系材料及び炭化物系材料のうち、少なくとも1つで形成されている。
【0010】
さらには、前記バリア層のバンドギャップは、前記光活性層のバンドギャップよりも大きい。
【0011】
さらには、前記バリア層のバンドギャップは、2.5eV以上であり、前記光活性層のバンドギャップは、1.5~1.8eVである。
【0012】
さらには、前記ペロブスカイトソーラーモジュールは、第二スクライビング領域を更に含み、前記第二スクライビング領域は、前記電子輸送層、前記光活性層、前記正孔輸送層及び前記バリア層に位置し、前記電極の凸出部は、前記第二スクライビング領域内に設けられている。
【0013】
本発明の別の態様によれば、本発明は、上記ペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法を提供している。本発明の実施例によれば、当該方法は、基板上に透明導電性酸化物層を形成し、スクライビングによって前記透明導電性酸化物層に第一スクライビング領域を形成した後、前記透明導電性酸化物層上に電子輸送層を形成するステップ(1)と、前記電子輸送層上にバリア層及び光活性層を形成するステップ(2)と、前記バリア層及び前記光活性層上に正孔輸送層を形成するステップ(3)と、前記正孔輸送層上に電極を設けるステップ(4)とを含む。
【0014】
本発明の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法は、透明導電性酸化物層及び電子輸送層を形成した後、更にバリア層材料及び光活性層材料を電子輸送層上に付与し、バリア層材料及び/又は光活性層材料に選択的な相変化を生じさせることで、バリア層及び光活性層が得られる。その後、バリア層及び光活性層上に正孔輸送層を形成し、電極を設けると、上記実施例に係るペロブスカイトソーラーモジュールが得られる。当該方法は、従来のペロブスカイトソーラーモジュールの作製プロセスに比べて、工程を過多に増やす必要がなく、当該方法を利用すれば、上記実施例に係るペロブスカイトソーラーモジュールを簡便かつ効率的に獲得することができる。
【0015】
さらには、ステップ(1)において、基板上に透明導電性酸化物層及び電子輸送層を順次に形成した後、スクライビングによって前記透明導電性酸化物層及び前記電子輸送層に第一スクライビング領域を形成するようにしてもい。
【0016】
さらには、ステップ(2)において、前記電子輸送層上にバリア層及び光活性層を同時に形成する。
【0017】
さらには、前記方法は、スクライビングによって前記電子輸送層、前記正孔輸送層及び前記バリア層に第二スクライビング領域を形成し、次に、前記正孔輸送層上に電極を設け、前記電極の凸出部を前記第二スクライビング領域内に設けるステップを、ステップ(4)の前に更に含む。
【0018】
本発明の付加的な態様及び利点は、以下の説明において部分的に示され、一部が以下の説明により明らかになるか、或いは本発明の実践により理解される。
【0019】
本発明の付加的な態様及び利点は、以下の説明において部分的に示され、一部が以下の説明により明らかになるか、或いは本発明の実践により理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであり、且つ明細書の一部を構成し、以下の具体的な実施形態とともに本発明を解釈するために用いられるが、本発明に対する制限を構成しない。図面は以下のようである。
図1図1は、本発明の一実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールの構造模式図である。
図2図2は、本発明の別の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールの構造模式図である。
図3図3は、本発明の更に別の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールの構造模式図である。
図4図4は、本発明の更なる別の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールの構造模式図である。
図5図5は、本発明の一実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法のフロー模式図である。
図6図6は、本発明の別の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法のフロー模式図である。
図7図7は、本発明の一実施例による押出型コーターを用いてバリア層材料及び光活性層材料を塗布する方法の模式図である。
図8図8は、本発明の一実施例による押出型コーターを用いてバリア層材料及び光活性層材料を塗布する方法の別の角度から見た模式図である。
図9図9は、本発明の一実施例によるバリア層及び光活性層を形成する方法のフロー模式図である。
図10図10は、本発明の別の実施例によるバリア層及び光活性層を形成する方法のフロー模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。前記実施例の示例は、図面に示され、そのうち、終始同一又は類似の符号は、同一又は類似の素子、或いは同一又は類似の機能を有する素子を示している。以下に図面を参照して説明される実施例は、例示的なものであり、本発明を解釈する目的で使用されるが、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。実施例において具体的技術や条件を明記していない場合は、当分野の文献に記載の技術や条件によって行うこととする。使用される試薬や計器についてメーカーが明記されていない場合は、何れも、市場から入手できる通常の製品であるとする。
【0022】
なお、本発明の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「内」、「外」等の用語によって表される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係であり、本発明の説明の便宜及び説明の簡素化のためだけであり、示された装置や素子が特定の方位にあり、特定の方位で構造及び操作されると指示又は暗示するものではないため、本発明を制限するものとして理解してはならない。
【0023】
そして、「第一」、「第二」といった用語は、説明の目的だけで用いられるものであり、相対的な重要性を指示又は暗示するか、或いは示された技術特徴の数を黙示的に指示すると理解されるべきではない。そのため、「第一」、「第二」によって限定された特徴は、当該特徴が少なくとも1つ含まれていることを明示又は暗示できる。本発明の説明において、別途に具体的な限定が明確にない限り、「複数」とは、例えば2つ、3つ等、少なくとも2つを意味する。
【0024】
本発明の説明において、別途に明確な規定や限定がない限り、「取り付け」、「繋がる」、「接続」、「固定」等の用語の意味は、広く理解されるべきである。例えば、固定接続、着脱可能な接続、又は一体的な接続であってもよい。機械的な接続又は電気的な接続であってもよい。別途に明確な限定がない限り、直接的に繋がってもよいし、中間媒体を介して間接的に繋がってもよく、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて、上記用語の本発明での具体的な意味を理解することができる。
【0025】
本発明において、別途に明確な規定や限定がない限り、第一特徴が第二特徴「上」又は「下」にあることは、第一特徴と第二特徴とが直接接触してもよいし、第一特徴と第二特徴とが中間媒体を介して間接的に接触してもよい。更に、第一特徴が第二特徴の「上」、「上方」又は「上の方」にあることは、第一特徴が第二特徴の真上及び斜め上にあるか、或いは、単に第一特徴の水平高さが第二特徴よりも高いことだけを表す。第一特徴が第二特徴の「下」、「下方」又は「下の方」にあることは、第一特徴が第二特徴の真下及び斜め下にあるか、或いは、単に第一特徴の水平高さが第二特徴よりも低いことだけを表す。
【0026】
本発明の一態様によれば、本発明は、ペロブスカイトソーラーモジュールを提供している。本発明の実施例によれば、図1及び図2を参照して、当該ペロブスカイトソーラーモジュールは、基板100と、透明導電性酸化物層200と、電子輸送層300と、光活性層400と、正孔輸送層500と、電極600と、バリア層700とを含む。そのうち、透明導電性酸化物層200は、基板100の表面の少なくとも一部に設けられ、電子輸送層300は、透明導電性酸化物層200における基板100に面していない表面の少なくとも一部に設けられ、光活性層400は、電子輸送層300における透明導電性酸化物層200に面していない表面の少なくとも一部に設けられ、正孔輸送層500は、光活性層400における電子輸送層300に面していない表面の少なくとも一部に設けられ、電極600は、正孔輸送層500における前記光活性層400に面していない表面の少なくとも一部に設けられ、電極600は、凸出部610を有し、凸出部610は、正孔輸送層500、光活性層400及び電子輸送層300を貫通して透明導電性酸化物層200に接続され、バリア層700は、光活性層400に設けられるとともに光活性層400と電極600の凸出部610とを離間させている。
【0027】
以下、更に図1図4を参照して、本発明の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールについて詳しく説明する。
【0028】
本発明の実施例によれば、当該ペロブスカイトソーラーモジュールの作製方法では、先に基板100上に透明導電性酸化物層200を形成し、次に、透明導電性酸化物層200をスクライビングして、第一スクライビング領域を得る(案1とする)ようにしてもよいし、先に基板100上に透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300を形成し、次に、透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300をスクライビングして、第一スクライビング領域を得る(案2とする)ようにしてもよい。これによって、上記案1では、透明導電性酸化物層200に第一スクライビング領域が形成され、さらに、透明導電性酸化物層200上に電子輸送層300が更に形成されると、図1に示すように、電子輸送層300の一部は、第一スクライビング領域内に形成されることになる。上記案2では、透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300の何れにも第一スクライビング領域が形成され、さらに、電子輸送層上にバリア層700が更に形成されると、図2に示すように、バリア層700の一部は、第一スクライビング領域内に形成されることになる。
【0029】
本発明の実施例によれば、上記光活性層400は、ペロブスカイト層であり、例えばCHNHPbI、CHNHPbBr等でペロブスカイト結晶形を形成することで得られてもよく、上記バリア層700は、ハロゲン化物系材料、酸化物系材料、窒化物系材料及び炭化物系材料のうち、少なくとも1つで形成されている。ハロゲン化物系材料は、例えば、塩化物(例えば塩化鉛)、臭化物(例えば臭化シアン)又はヨウ素化物(例えばヨウ化鉛)であってもよく、酸化物系材料は、例えば、Al、SiO等であってもよい。ハロゲン化物系材料は、臭化物又はヨウ素化物を使用されることが好ましく、これによって、臭化物又はヨウ素化物で形成されたバリア層700は、光活性層400(ペロブスカイト層)の縁に対して、パッシベーションの役割をある程度果たせるため、光活性層400の安定性が更に向上される。
【0030】
本発明の実施例によれば、バリア層700のバンドギャップは、光活性層400のバンドギャップよりも大きい。これによって、バリア層700は、光活性層400における光生成電子及び正孔が電極に流れ込むのを効果的にバリアすることができるため、ソーラーモジュール全体の信頼性が向上される。
【0031】
本発明の好ましい実施例によれば、バリア層700のバンドギャップは、2.5eV以上であり、光活性層400のバンドギャップは、1.5~1.8eVである。これによって、光活性層400で生成された光生成電子及び正孔に対するバリア層700のバリア効果は、より良好となる。
【0032】
本発明の実施例によれば、当該ペロブスカイトソーラーモジュールは、第二スクライビング領域を更に含んでもよく、当該第二スクライビング領域は、電子輸送層300、光活性層400、正孔輸送層500及びバリア層700をスクライビングすることで得られるものであるため、電子輸送層300、光活性層400、正孔輸送層500及びバリア層700に位置することになり、電極600の凸出部610は、当該第二スクライビング領域内に設けられる。
【0033】
また、留意されたいのは、本発明のペロブスカイトソーラーモジュールでは、基板、透明導電性酸化物層、電子輸送層、正孔輸送層及び電極の具体的な種類又は材料が特に限定されず、当業者は、通常の選択に応じて得ることが可能である。例えば、基板としては、ガラス基板が使用されてもよく、透明導電性酸化物層は、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ホウ素ドープ酸化亜鉛(BZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、ガリウムアルミドープ酸化亜鉛(GAZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、タングステンドープ酸化インジウム(IWO)及びチタンドープ酸化インジウム(ITIO)のうち、少なくとも1つで形成されてもよく、電子輸送層は、フラーレン誘導体PCBMによって形成されてもよく、正孔輸送層は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)で形成されてもよく、電極としては、金属電極(例えばAg電極、Cu電極、Au電極等)、酸化物電極、炭素材料電極又は複合電極が使用されてもよく、バリア層が光活性層と電極とを隔てることができるため、本発明のソーラーモジュールでは、電極材料については、より広い選択範囲が可能である。
【0034】
本発明のいくつかの実施例によれば、本発明のペロブスカイトソーラーモジュールは、パッケージ、バックシート等の通常の構造を更に有してもよいが、ここで繰り返さない。ペロブスカイトソーラーモジュールに対するパッケージ化又はバックシートの設置を容易にするために、図3及び4に示すように、電極及び正孔輸送層を更にスクライビングして、第三スクライビング領域830を得てもよい。
【0035】
本発明の別の態様によれば、本発明は、上記実施例に係るペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法を提供している。本発明の実施例によれば、当該方法は、基板上に透明導電性酸化物層を形成し、スクライビングによって透明導電性酸化物層に第一スクライビング領域を形成した後、透明導電性酸化物層上に電子輸送層を形成するステップ(1)と、電子輸送層上にバリア層及び光活性層を形成するステップ(2)と、バリア層及び光活性層上に正孔輸送層を形成するステップ(3)と、正孔輸送層上に電極を設けるステップ(4)を含む。
【0036】
本発明の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法は、透明導電性酸化物層及び電子輸送層を形成した後、更にバリア層材料及び光活性層材料を電子輸送層上に付与し、バリア層材料及び/又は光活性層材料に選択的な相変化を生じさせることで、バリア層及び光活性層が得られる。その後、バリア層及び光活性層上に正孔輸送層を形成し、電極を設けると、上記実施例に係るペロブスカイトソーラーモジュールが得られる。当該方法は、従来のペロブスカイトソーラーモジュールの作製プロセスに比べて、工程を過多に増やす必要がなく、当該方法を利用すれば、上記実施例に係るペロブスカイトソーラーモジュールを簡便かつ効率的に獲得することができる。
【0037】
本発明の実施例によれば、ステップ(1)において、基板上に透明導電性酸化物層及び電子輸送層を順次に形成した後、スクライビングによって透明導電性酸化物層及び前記電子輸送層に第一スクライビング領域を形成してもよい。具体的に、当該ペロブスカイトソーラーモジュールの作製方法では、先に基板100上に透明導電性酸化物層200を形成し、次に、透明導電性酸化物層200をスクライビングして、第一スクライビング領域810を得る(例えば図5に示す)ようにしてもよいし、先に基板100上に透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300を形成し、次に、透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300をスクライビングして、第一スクライビング領域810を得る(例えば図6に示す)ようにしてもよい。
【0038】
以下、それぞれ図5及び図6を参照して、本発明の実施例によるペロブスカイトソーラーモジュールを作製する方法について詳しく説明する。
【0039】
図5を参照して、本発明の実施例によれば、先ず、基板100上に透明導電性酸化物層200を形成し、さらに、レーザー又は物理的なスクライビングによって透明導電性酸化物層200上に第一スクライビング領域810を形成した後、透明導電性酸化物層200上に電子輸送層300を更に形成してもよく、これによって、電子輸送層300の一部は、第一スクライビング領域810内に形成される。
【0040】
図6を参照して、本発明の実施例によれば、先ず、基板100上に透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300を順次に形成し、さらに、レーザー又は物理的なスクライビングによって透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300上に第一スクライビング領域810を形成してもよい。これによって、その後に光活性層400及びバリア層700を形成すると、バリア層700の一部は、第一スクライビング領域810内に形成されることになる。
【0041】
留意されたいのは、透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300の形成方法が特に限定されず、当業者は、実際の必要に応じて選択可能であり、例えば、通常の透明導電性酸化物層、電子輸送層の材料を用いてそれぞれ溶液又はスラリー液を調製し、コーティングによる形成方法で透明導電性酸化物層200及び電子輸送層300を順次に形成してもよいし、化学気相堆積等の方法を利用してもよい。
【0042】
さらには、図5及び図6を参照して、電子輸送層300上に光活性層400及びバリア層700を形成する。光活性層400及びバリア層700の形成方法が特に限定されず、当業者は、実際の必要に応じて選択可能である。いくつかの実施例では、ペロブスカイト光活性層を形成するために、ペロブスカイト層の形成に適した通常の材料、バリア層を用いてそれぞれ溶液又はスラリー液を調製し、コーティングによる方法で光活性層及びバリア層を電子輸送層上に形成してもよい。本発明のいくつかの実施例によれば、ペロブスカイト層の材料をコーティングした後、適切な処理方法(例えば熱処理)を使用することで、ペロブスカイト層を形成するための材料をペロブスカイト晶体構造に転移させる。
【0043】
本発明の具体例によれば、図7及び図8を参照して、マルチノッチの押出型コーター900を用いて、光活性層材料及びバリア層材料を電子輸送層300上に同時に付与してもよい。押出型コーター900には、複数の第一ノッチ910及び複数の第二ノッチ920が含まれ、第一ノッチ910と第二ノッチ920とは、間隔を空けて順次に設けられ、且つ異なる材料の吐出に適しているため、電子輸送層300上に光活性層400及びバリア層700を同時に形成することが実現される。
【0044】
さらには、図5及び図6を参照して、光活性層400及びバリア層700上に正孔輸送層500を形成する。正孔輸送層500の形成方法が特に限定されず、当業者は、実際の必要に応じて選択可能であり、例えば、通常の正孔輸送層材料を用いて溶液又はスラリー液を調製し、コーティングによる形成方法で正孔輸送層500を順次に形成してもよいし、化学気相堆積等の方法を利用してもよい。
【0045】
さらには、図5及び図6を参照して、スクライビングによって電子輸送層300、正孔輸送層500及びバリア層700に第二スクライビング領域820を形成し、次に、正孔輸送層500上に電極600を設け、電極600の凸出部610を第二スクライビング領域820内に設ける。本発明のソーラーモジュールにバリア層が設けられているため、当該ステップでは、光活性層400をスクライビングすることなく、バリア層700をスクライビングすれば、電極600の設置要件を満たせるため、ソーラーモジュールの信頼性が更に向上される。
【0046】
さらには、ソーラーモジュールに対して、パッケージ化又はバックシートの設置等の通常加工を行ってもよいが、ここで繰り返さない。ソーラーモジュールに対するパッケージ化又はバックシートの設置を容易にするために、図3及び4に示すように、電極600及び正孔輸送層500を更にスクライビングして、第三スクライビング領域830を得てもよい。
【0047】
また、本発明の実施例によれば、図9及び図10を参照して、本発明は、「選択的な相変化」によってバリア層700及び光活性層400を形成する方法を更に提供している。図9及び図10では、710はハロゲン化物系材料(例えば塩化鉛及び/又は臭化鉛)を表し、720は酸化物系材料、窒化物系材料又は炭化物系材料を表し、410は、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料を表す。そのうち、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料は、ヨウ化メチルアミン(MAI)及びハロゲン化物を含んでもよい。
【0048】
図9を参照して、バリア層700及び光活性層400は、同時に形成されてもよい。具体的に、前述のようなマルチノッチ押出型コーターを用いて、異なるノッチによってそれぞれバリア層材料及び光活性層材料を押し出して塗布する。本発明の具体例によれば、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料を更に熱処理することで、ペロブスカイト光活性層を獲得することができる。
【0049】
図10を参照して、バリア層700と光活性層400とは、別のステップで形成されてもよい。具体的に、ハロゲン化物系材料をバリア層材料として使用する場合は、先に電子輸送層300上にバリア層材料710を1層コーティングし、次に、前述のようなマルチノッチ押出型コーターを用いて、間隔を空けてバリア層材料710上にペロブスカイト光活性層を形成するための材料410をコーティングしてもよく、さらに熱処理すれば、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料410と、その下に位置するバリア層710とは、ペロブスカイト光活性層を形成可能である。一方で、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料410が、間隔を空けたコーティングになっているため、材料410によって覆われていない部分のバリア層材料は、バリア層を形成することになる。酸化物系材料、窒化物系材料又は炭化物系材料をバリア層材料として使用する場合は、先に前述のようなマルチノッチ押出型コーターを用いて、異なるノッチによってそれぞれバリア層材料及びペロブスカイト光活性層材料におけるハロゲン化物を押し出して塗布し、次に、バリア層材料及びハロゲン化物材料上に、ペロブスカイト光活性層を形成するための他の材料をコーティングしてもよい。更に熱処理すれば、ペロブスカイト光活性層を形成するための他の材料及びハロゲン化物材料は、バリア層材料720と反応することなく、ペロブスカイト光活性層を形成するため、バリア層及び光活性層が獲得される。
【0050】
また、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料において、MAIの代わりにヨウ化ホルムアミジン(FAI)、Cs又はRb含有MAI、Cs又はRb含有FAIが使用されてもよく、ヨウ化鉛及び臭化鉛の代わりに他のハロゲン化物が用いられてもよい。図10に示す方法では、ペロブスカイト光活性層を形成するための材料には、KI又はHIが加えられてもよい。こうすれば、ペロブスカイト結晶形に存在し得る欠陥がIによって埋められるため、光活性層材料の選択的な相変化の効果を更に向上させ、ペロブスカイトソーラーモジュールの性能を更に向上させることができる。
【0051】
本発明の一具体例によれば、図9に示す方法では、710は臭化鉛、720はアルミナ、410はMAIと、ヨウ化鉛と、臭化鉛との混合材料である。図10に示す方法では、710は臭化鉛、720はアルミナ、410はMAIと、KI又はHIと、ヨウ化鉛と、臭化鉛との混合材料である。
【0052】
本発明の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「示例」、「具体例」或いは「いくつかの示例」等の用語を参照した説明とは、当該実施例や示例に結合して説明された具体的特徴、構造、材料や特性が、本発明の少なくとも1つの実施例や示例に含まれていることである。本明細書において、上記用語に対する例示的な記載は、必ずしも同じ実施例や示例に対するものではない。更に、説明された具体的特徴、構造、材料や特性は、いずれか1つ或いは複数の実施例や示例において適切に結合可能である。なお、互いに矛盾しない場合、当業者は、本明細書に記載された異なる実施例や示例、或いは異なる実施例や示例における特徴に対して結合及び組み合わせを行うことができる。
【0053】
なお、以上で本発明の実施例を示して説明したが、上記実施例は、例示的なものであり、本発明に対する制限として理解してはならない。当業者は、本発明の範囲内で、上記実施例に対して変更、修正、置換及び変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
100:基板、200:透明導電性酸化物層、300:電子輸送層、400:光活性層、410:光活性層材料、500:正孔輸送層、600:電極、610:凸出部、700:バリア層、710:ハロゲン化物系材料、720:酸化物系材料、窒化物系材料又は炭化物系材料、810:第一スクライビング領域、820:第二スクライビング領域、830:第三スクライビング領域、900:押出型コーター、910:第一ノッチ、920:第二ノッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】