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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(54)【発明の名称】義肢足部インサート
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/66 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
A61F2/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539993
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020051780
(87)【国際公開番号】W WO2020152339
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019101843.9
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プッシュ、マルティン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097BB02
4C097BB09
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD04
4C097TA08
4C097TB09
4C097TB17
(57)【要約】
本発明は、a.義肢足部インサート(10)を近位コンポーネント(2)又は患者に固定するための近位の取付装置(20)と、b.取付装置(20)の遠位に配置され、かつ取付装置(20)と接続されたホルダ(30)と、c.つま先部領域(11)へ延在し、かつホルダ(30)と結合された主ばね(40)と、を備え、ホルダ(30)が矢状面において傾動可能に主ばね(40)に支承され、主ばね(40)から離れる向きのホルダ(30)の移動を制限する後制限要素(92)が主ばね(40)とホルダ(30)との間に配置されている、義肢足部インサート(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.義肢足部インサート(10)を近位コンポーネント(2)又は患者に固定するための近位の取付装置(20)と、
b.前記取付装置(20)の遠位に配置され、かつ前記取付装置(20)と接続されたホルダ(30)と、
c.つま先部領域(11)へ延在し、かつ前記ホルダ(30)と結合された主ばね(40)と、を備える義肢足部インサート(10)において、
前記ホルダ(30)が矢状面において傾動可能に前記主ばね(40)に支承され、前記主ばね(40)から離れる向きの前記ホルダ(30)の移動を制限する後制限要素(92)が前記主ばね(40)と前記ホルダ(30)との間に配置されている
ことを特徴とする、義肢足部インサート。
【請求項2】
前記主ばね(40)は、少なくとも1つの近位ばね(44)及び少なくとも1つの遠位ばね(45、46)で構成されたばねとして形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の義肢足部インサート。
【請求項3】
前記近位ばね(44)及び前記遠位ばね(45、46)が互いに離間して空間(400、401)を形成するように互いに固定されていることを特徴とする、請求項2に記載の義肢足部インサート。
【請求項4】
前記近位ばね(44)と1つの前記遠位ばね(45、46)又は2つの前記遠位ばね(45、46)とが、両凸状に形作られて互いに方向合わせされていることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の義肢足部インサート。
【請求項5】
ガイド要素(80)が前記主ばね(40)の前領域(41)又は後領域(42)に取り付けられ、それぞれ逆の方向に延在し、かつ前記ホルダ(30)は、前記ガイド要素(80)を介して傾動可能に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項6】
前記ガイド要素(80)と前記ホルダ(30)又は前記主ばね(40)との間に前制限要素(91)が配置され、前記前制限要素は、踵荷重時に前記ガイド要素(80)から離れる向きの前記ホルダ(30)の前端の移動、又は前記主ばね(40)の移動を制限することを特徴とする、請求項5に記載の義肢足部インサート。
【請求項7】
前記主ばね(40)及び前記ガイド要素(80)が板ばねとして形成されていることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の義肢足部インサート。
【請求項8】
制限要素(91、92)は、引張強く、かつフレキシブルに形成されていることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項9】
前記主ばね(40)につま先部クッション(120)及び/又は踵クッション(100)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項10】
前記ホルダ(30)は、ばね舌片、ヒンジ、又は少なくとも1つのスペーサ要素を介して前記主ばね(40)に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項11】
前記ホルダ(30)は、前記取付装置(20)の前で前力導入領域(410)を介して、及び前記取付装置(20)の後で後力導入領域(420)を介して前記主ばね(40)に力を導入することを特徴とする、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項12】
前記前力導入領域及び後力導入領域(410、420)の少なくとも1つが移動可能又は交換可能に前記ホルダ(30)又は前記主ばね(40)に支承されていることを特徴とする、請求項11に記載の義肢足部インサート。
【請求項13】
前記ホルダ(30)と前記主ばね(40)との間に少なくとも1つのダンパ装置(51、52)が配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項14】
前記ホルダ(30)は、調整可能な近位-遠位距離で前記主ばね(40)に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項15】
非荷重状態において、制限要素(91、92)によって前記主ばね(40)がガイド要素(80)に対して弾性的に付勢されていることを特徴とする、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項16】
前記取付装置(20)は、変位可能に、及び/又は関節式に前記ホルダ(30)に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項17】
前記取付装置(20)と前記ホルダ(30)との間にダンパ(50)が配置されていることを特徴とする、請求項15に記載の義肢足部インサート。
【請求項18】
近位ばね(44)と内側ばね(45)との間、及び/又は前記内側ばね(45)と遠位ばね(46)との間に交換可能な及び/又は変位可能に支承された接触要素(47、48、49)が配置されていることを特徴とする、請求項2~請求項17のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【請求項19】
前記ホルダ(30)は、前記矢状面において位置可変の面上で傾動可能に前記主ばね(40)に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項18のいずれか1項に記載の義肢足部インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義肢足部インサートを近位コンポーネント又は患者に固定するための近位の取付装置と、取付装置の遠位に配置され、かつ取付装置と接続されたホルダと、つま先部領域へ延在し、かつホルダと結合された主ばねと、を備える義肢足部インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
義肢足部インサートは、例えば下腿切断者における義肢補装の一部である。義肢足部インサートは、可能な限り自然な外観を得るため、及び他の機能性を提供するために、プラスチックから形成され得る覆い又は義肢化粧要素を備えることができる。義肢足部インサートは、踝継手に、あるいは継手なしに下腿チューブ又は下腿ソケットに取り付けることができる。取付装置は、通常、いわゆるピラミッドアダプタとして形成され、ピラミッドアダプタを介して、近位コンポーネント、すなわち下腿チューブ、義肢ソケット、又は踝継手に相対する義肢足部インサートの数々の調整及び位置合わせを調整及び設定することができる。取付装置はホルダに取り付けられ、ホルダにもまたつま先部方向に延在するばね、例えばつま先部ばね又はルーフばねが配置され得る。踵接地時の衝撃を和らげるために、場合によっては中間物を介在させてホルダに取り付けられる弾性の踵要素が設けられている。義肢インサートの例は、欧州特許出願公開第2420212号明細書、欧州特許出願公開第1976463号明細書、米国特許出願公開第2005/0038525号明細書、又は欧州特許第2688522号明細書に記載されている。
【0003】
従来技術による義肢足部インサートにおいて問題となるのは、場合によって必要とされる取付スペース、不十分な沈み込み挙動、不均一なローリング挙動、及び凸凹の補償の困難さである。さらに、部分的に複雑な形状が必要であり、これが製造コストを上昇させ、かつ最適な材料利用を困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2420212号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1976463号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0038525号明細書
【特許文献4】欧州特許第2688522号明細書
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の課題は、立位及び歩行時の最適な挙動を可能にし、特に歩行時には、歩行時の快適さを犠牲にすることなく十分な安定性を与える義肢足部インサートを提供することである。
【0006】
本発明によれば、上記課題は、主請求項の特徴を有する義肢足部インサートによって解決される。本発明の有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項、以下の記載、及び図から明らかになる。
【0007】
義肢足部インサートをプロテーゼの近位コンポーネント又は患者自身に固定するための近位の取付装置と、取付装置の遠位に配置され、かつ取付装置と接続されたホルダと、つま先部領域へ延在し、かつホルダと結合された主ばねと、を備える義肢足部インサートは、ホルダが矢状面において傾動可能に主ばねに支承され、主ばねから離れる向きのホルダの移動を制限する後制限要素が主ばねとホルダとの間に配置されていることを企図する。義肢足部インサートは、遠位プロテーゼコンポーネント、例えば下腿チューブ又は下腿ソケットに固定可能な別個の部品として形成されているか、あるいは患者又は義肢足部インサートのユーザに固定するための相応の取付装置、例えば患者への骨直結型固定のための装置と一体に、又は下腿ソケットの一体化された部品として製造された義肢足部インサートとして形成されている。
【0008】
義肢足部インサートは、特にそれ以外の、メカトロニクス継手、MLアダプタ、踵高さを調整するためのアダプタ、液圧式継手ユニット、又はそれに類するものといった構造物のためのベースとして用いられ得る。
【0009】
後制限要素は、ホルダが一旦調整された限度を超えて主ばねから離れる向きに移動することを阻止する。後制限要素は、ホルダの後端と主ばね、特に主ばねの後端との最大距離を規定するが、引き続き反対の動きが可能である。それにより踵荷重時、又はヒールストライク時の義肢足部インサートの収縮が妨げられないか、又は無視できる程度にしか妨げられない一方で、ローリング運動又は立位中の前方屈曲時につま先部に荷重がかかった場合に十分な安定性が提供され、それにより立位時に基本的に可能である弾性たわみの他に、矢状面における傾動軸を中心とした前方向の傾動が制限される。
【0010】
主ばねは、少なくとも1つの遠位ばね及び/又は少なくとも1つの近位ばねで構成されたばねとして形成され得る。例えば遠位ばねが2つの場合、近位の遠位ばねが内側ばねを形成し、遠位の遠位ばねが、好ましくは義肢足部インサートの踵領域まで延在するベースばね、又は底部ばねを形成する。近位ばねは、ホルダ又はホルダためのガイド要素に割り当てられている。すべてのばねが、特に板ばねとして形成されている。板ばねは、実質的に矩形の横断面を有することができ、長手方向延在において均一な厚さ、又は変化する、特に前方向に行くほど小さくなる厚さを有することができる。義肢足部の内側-外側傾動を可能にするために、あるいは例えばサンダルの指差しベルト又はそれに類するものを収容できるようにするため開口部又は切込みを形成するために、つま先部領域においてばねにスリットを付けて形成することができる。
【0011】
主ばねの遠位ばね及び近位ばねは、荷重時に義肢足部の収縮を可能にするため、及び別々のばねの個々のばね特性を利用するために、互いに離間して空間を形成するように互いに固定されていることが好ましい。ばねは、特に複合材料、特に繊維強化プラスチックから形成されている。ばねは、母材に埋め込まれたガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ケブラー繊維、ダイニーマ繊維、又は他の、特に高強度の繊維から、あるいはこれらを組み合わせて製造することができる。
【0012】
本発明の一発展形態では、遠位ばね及び近位ばねは、これらの2つのばね間の中央領域に拡大された空間を形成するために両凹状に形作られて互いに位置合わせされている。空間は略楕円形に形成され、かつ足中央部領域又はつま先部領域において比較的長いばね変位にわたる収縮を可能にする。近位ばねも同様に互いに両凹状に形作られて形成及び位置合わせされ得る。遠位ばねと内側ばねとの間の形状が両凸状の場合、遠位ばね又はベースばねと内側ばねとの間の後領域にベースばね又は底部ばねの方向にホルダの深い収縮を可能にするための後方向に拡大する空間を形成することができる。
【0013】
本発明の一発展形態は、ガイド要素が主ばねの前領域又は後領域に取り付けられ、それぞれ逆の方向に延在し、ホルダは、このガイド要素を介して、好ましくは矢状面に対して直交する旋回軸線を中心として旋回可能に主ばねに支承されていることを企図する。ガイド要素を介して主ばねにホルダを支承することによって、様々に異なる支承及び運動に調整する、及び変化させることができ、それにより変種の数を個々に適合又は増加させることができる。その場合、ホルダは、例えば板ばねをホルダ底の下面に直接ねじ締結することによって主ばねと直接接続されて固定されるのではなく、例えば主ばねとホルダとの相対運動を可能にするガイド要素、ヒンジ、又は他の中間要素を介して歩行方向に対して横向きの軸線を中心として旋回可能である。
【0014】
ガイド要素を主ばねの前領域又は後領域に取り付けることができ、その場合、取付装置の後領域は、取付装置又はピラミッドアダプタの後側、特に立位時の力導入箇所の後に位置する。前領域は、取付装置、例えばピラミッドアダプタ、又は立位時に生じる床反力ベクトルの位置の前に位置する。ガイド要素は、ガイド要素のそれぞれの取付領域からそれぞれ逆の方向に、すなわち後領域に取り付けた場合には前方向に、及び前領域に取り付けた場合には後方向に延在する。ホルダは、ガイド要素を中心として矢状面において傾動可能に主ばねに支承され、それによりガイド要素によって、主ばねに相対するホルダの旋回運動と垂直方向運動とが可能にされる。
【0015】
一発展形態は、ガイド要素とホルダ又は主ばねとの間に前制限要素が配置され、前制限要素は、踵荷重時にガイド要素から離れる向きのホルダの前端の移動、又は主ばねの移動を制限することを企図する。義肢足部インサートの収縮挙動及び伸展挙動に影響を及ぼすために、後制限要素の場合のように、特定の荷重期中に主ばねに対するホルダの相対移動が前制限要素によって阻止される。前制限要素及び/又は後制限要素の長さを調整することによってばねの緊張状態を変更することができ、種々異なる歩行期中の足のエネルギー移動挙動の適合を行うことができる。同様に、ホルダの前端及び/又は後端の移動を制限するために付勢及び/又は長さを変更することによって、それぞれのユーザの異なった利用習慣、使用目的への、又は異なったユーザへの、あるいはそれぞれのユーザの異なった、又は変化する身体的特性などへの適合を行うことができる。
【0016】
ばねに対するホルダ、制限要素又はガイド要素に対するばねの可能な移動及び距離の正確な調整を保証するために、それぞれの制限要素は引張強く、かつフレキシブルに形成され得る。制限要素を、例えばベルト、ケーブル、又は紐として、あるいは最大距離をそれぞれ制限するためのストッパ要素を有するスリーブガイドとしても形成することができる。
【0017】
特に、衝撃荷重を伴う歩行と静的荷重を伴う立位の違いを知覚可能にするために、1つの制限要素又は複数の制限要素の付勢が調整可能である。歩行中、特に踵接地中、またローリング運動中にも、コンポーネントの相互の相応の移動と共に減衰が行われるべきである。立位時に、ばね弾性要素に対するホルダの付勢によって達成される安定感をユーザに提供すべきである。付勢は、ユーザの体重の好ましくは5%~60%であり、特に付勢はユーザの体重の5%~40%であり、特に好ましくはユーザの体重の10%~25%である。最後に挙げた事例では、1つの制限要素又は複数の制限要素によって主ばね又は他のばね弾性要素若しくはコンポーネントのばね作用に対するホルダの付勢は、ユーザの体重が100kgの場合10kg~25kgになり得るが、これは約98.1N~245.25Nの力に相当する。
【0018】
主ばね及びガイド要素は、好ましくは板ばねとして、特に直線的な板ばねとして形成され、このことにはばねコンポーネントの製造が特に簡単であるという利点がある。特に主ばね又は主ばねの個々のばねコンポーネントが繊維強化プラスチックから製造されている場合、主ばねを全体として比較的高剛性に形成することができ、それにより耐久性が向上する。個々のばねコンポーネントを高剛性にばね設計することにより、ばねコンポーネントの高い耐久性を可能にするが、高剛性のばね設計は、比較的大きいばね変位と長い力伝達経路により補償され得るので、これが踵接地時に特に高剛性の義肢足部インサートをもたらすことはない。ガイド要素も同様に板ばねとして、特にばね舌片の形態の金属板ばねとして形成することができる。これに代えてホルダをヒンジ又は少なくとも1つのスペーサ要素を介して主ばねに支承することができ、それによりガイド要素がばね舌片、ヒンジ、又はスペーサ要素として形成されている。
【0019】
歩行挙動をさらに調整するために、並びにローリング挙動と遠位ばね又は主ばねの遠位部分の保護の改善された適合可能性のために、つま先部クッション及び/又は踵クッションを主ばねに取り付け、例えば接着、ねじ締結、又は嵌着するか、あるいは特に踵クッションの場合に、それぞれの制限要素を介して保持することができる。クッションはベースばね又は底部ばねに配置されることが好ましい。
【0020】
本発明の一発展形態は、ホルダから主ばねへの力が前力導入領域及び後力導入領域を介して導入され、力導入領域がそれぞれ取付装置の前又は後に延在することを企図する。それによって、ホルダが主ばねの長手方向延在における離間した2つの点又は領域で主ばねに、場合によっては中間要素、中間板、又はダンパ装置を介して、場合によっては中間ばねも介して支持されることが可能である。この力導入領域における支持は、点荷重の低減、及び異なった荷重シナリオにおける制御された力の導入を可能にする。力導入領域は、主ばねが遠位領域において支持される2つの末端支持台間、例えばばねクッションとつま先部クッションとの間に位置することが好ましい。それによって患者が立脚期にあって、足が着地した場合に少なくとも1つの4点曲げが行われ、それにより力の導入が比較的広い範囲に分散されることから、主ばねの最大曲げモーメントがかなり低減される。
【0021】
力導入領域の少なくとも1つを移動可能又は交換可能にホルダ又は主ばねに支承することができ、それによりそれぞれの力導入領域の位置の調節によって、利用中にばね特性及び義肢足部インサートのエネルギー移動特性を変化させることができる。力導入領域のそれぞれの位置の調整は、義肢足部インサートの挙動をそれぞれのユーザに適合させるために一回だけ行われることが好ましく、それぞれの使用前に調整及び適合され得る。基本的に、力導入領域の位置をモータにより変更することも可能である。その場合、それぞれのモータ又は駆動装置は、異なった速度、荷重、又は歩行状況への適合を可能にするために、歩行中に制御装置及びセンサアセンブリによりに調節され得る。
【0022】
前領域若しくは後領域におけるホルダが主ばねから外れた後にホルダと主ばねとの間の新たな接触を緩やかに形成するため、又は旋回運動を減衰させるために、ホルダと主ばねとの間に少なくとも1つの減衰装置を配置することができる。したがって歩行中にホルダと主ばねとの接触による、患者のローリング挙動を不均一に、かつ不快にし得る妨害的な力ピーク及びインパルスの発生が回避される。同様に主ばねに相対するホルダの旋回挙動を調整することができる。
【0023】
角度調整、並びに係合挙動及び係合時点の変化、及びそれに伴いエネルギー移行の変化を可能にするために、ホルダを調整可能な近位-遠位距離で主ばねに支承することができる。
【0024】
本発明の一発展形態は、義肢足部インサートの非荷重状態において、1つの制限要素及び/又は複数の制限要素によって主ばねがガイド要素に対して弾性的に付勢されることを企図し、それにより非荷重状態において義肢足部インサートの個々のコンポーネントがガイド要素に相対する主ばねの付勢のみによって保持される。
【0025】
複数の制限要素又は1つの制限要素はホルダと主ばねとの間で作用する。主ばねとホルダとの間にはガイド要素が配置され、かつ垂直方向の力のみが生じ、すなわち水平方向に変位力が生じない限り、義肢足部インサートは、コンポーネントの別の固定装置なしに相接した状態で安定している。別の固定装置又は取付要素は、生じる横力又はせん断力に対して固定するためにのみ用いられる。異なった要求又は患者への適合を行うことができるようにするために、取付装置は変位可能及び/又は関節式にホルダに支承され得る。
【0026】
取付装置が別個の要素としてホルダに固定されている限り、取付装置とホルダとの間にダンパが配置され得る。ダンパは、取付装置とホルダとのわずかな相対運動を可能にすることができ、かつ荷重ピークを低下させ、インパルスなしに均一なローリング運動を可能にする。
【0027】
本発明の一発展形態は、近位ばねと遠位ばねとの間、及び/又は遠位ばね間に交換可能な及び/又は変位可能に支承された接触要素が配置されていることを企図し、接触要素を介してそれぞれの力導入点、並びに遠位ばねと近位ばねとの間、又は遠位ばね間の結合時点及び結合地点を固定、調整、又は調節することができる。交換可能及び/又は変位可能に支承された接触要素によって、義肢足部インサートの収縮挙動及び力伝達挙動の変更及び適合を簡単に行うことができる。
【0028】
ホルダを矢状面において位置可変の面上で傾動可能に主ばねに支承することができ、それによりホルダが荷重中に主ばね上でローリングし、主ばねに相対する移動を可能にすることができる。それによって、ホルダは、主ばねに対する固定の回転点を有さず、むしろローリング過程中にホルダの回転点が変位する。
【0029】
義肢足部インサートは、特に、異なった踵高さ又は所望の傾斜角度に適合させるためにも適し、かつ企図され、それによりユーザは個々の適合を簡単に行うことができる。このことは、特に、1つ又は複数の制限要素の長さを変化させることによって行うことができる。それぞれの制限要素は、交換され、又は長くされ、又は短くされ、続いて所望の長さで固定され、例えば締め付けられる。ホルダを、例えばホルダと主ばねとの間のクッション、ダンパ装置、中間片、挿入物、又はスペーサ要素を交換することによって、床又は主ばねに対して所望の角度位置に調整及び固定することができ、それによりホルダと取付装置との最適な位置合わせが達成される。取付装置による垂直線の前側又は後側に旋回可能な支承にもとづいて、所望の位置に位置合わせ及び固定することによって、それぞれの踵高さへの適合を達成することができる。軸受箇所又は軸の位置は、位置合わせ及び踵高さの適合を達成するために調節可能に形成され得る。液圧式ダンパ若しくは空気圧式ダンパ又は調整シリンダが存在する場合、弁を開閉することによってホルダの所望の姿勢及び向きに調整することができる。ホルダは、調整可能な近位-遠位距離で主ばねに支承され、それにより距離を均一に変更した場合に靴の異なったソール厚さへの適合を行うことができる。取付装置の前側と後側とで異なる距離に変更される場合、ホルダの傾きが所望どおりに適合される。このために、調整シリンダ又はダンパ装置の調整によって、あるいは挿入物又はそれに類するものによって前側距離及び後側距離を上記のように個々に調整することができる。
【0030】
以下、本発明の実施例について、添付の図をもとにして詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】義肢足部インサートの第1実施形態の模式的断面図である。
図2】ヒンジを有する図1の一変形形態の図である。
図3】ガイド要素が折り畳まれた図1の一変形形態の図である。
図4】ホルダが後に突き出す本発明の一変形形態の図である。
図5a】クッションが荷重状態にある図1の一変形形態の図である。
図5b】クッションが荷重状態にある図1の一変形形態の図である。
図5c】クッションが荷重状態にある図1の一変形形態の図である。
図6】ガイド要素と主ばねとの間にクッションを有する本発明の一変形形態の図である。
図7図6の一変形形態の図である。
図8】1つのヒンジと2つのばねを有する一変形形態の図である。
図9図8の一変形形態の図である。
図10】ホルダに高さ調節装置を有する一変形形態の図である。
図11】実質的に平行に案内された2つのばねと、逆向きに湾曲した1つのベースばねを有する一変形形態の図である。
図12】ホルダと主ばねとの間の接触が移動可能な一変形形態の図である。
図13】カバーを有する一変形形態の図である。
図14】遅延要素を有する本発明の一変形形態の図である。
図15】荷重時の図14による義肢足部インサートの図である。
図16】傾動姿勢の図14による義肢足部インサートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、下チューブの形態の近位コンポーネント2に可逆的に固定されるピラミッドアダプタの形態の近位の取付装置20を有する義肢足部インサート10の模式的断面図を示す。ピラミッドアダプタの形態の取付装置20の代わりに、取付装置20が下腿断端のための収容部、又は骨への骨直結結合部を有することが可能である。取付装置20は、例えば付加的な製造法の範囲内で一体に形成され、かつ同時に断端収容部をなすことができる。近位コンポーネント2が、例えば同様に付加的な製造方法で取付装置20に一体に形成されることも可能である。
【0033】
取付装置20と一体に形成され得るか、又は別個に製作された取付装置20と接続されて形成され得るホルダ30が取付装置20の遠位に配置されている。ホルダ30は、ホルダ30を越えて後に突き出し、かつ後制限要素92を収容するために用いられる調節可能な収容部31を有する。ホルダ31の長さを、ホルダ30に対して締結され得るナット32により調整して固定することができる。
【0034】
ホルダ30は、図示された実施例では3つの板ばね44、45、46から組み立てられた主ばね40の前領域41及び後領域42に取り付けられている。図示された実施例では、ホルダ30は、前力導入領域410及び後力導入領域420を介して近位ばね44に支承されている。前力導入領域410とホルダ30との間に前の減衰要素50が配置され、この減衰要素は、前制限要素91のための収容部910に載っている。力導入領域410と近位ばね44との間の、例えばエラストマダンパとして形成され得るダンパ51の下方に旋回軸110が形成され、この旋回軸は、紙面に対して実質的に垂直方向に、又は矢状面に対して直交方向に実質的に水平方向に延在する。
【0035】
この回転軸110を中心として、ホルダ30を主ばね40、特に近位ばね44に相対して傾動させることができる。前制限要素91と後制限要素92とは遠位ばね46又はベースばね46の下を回って案内され、図示された、義肢足部インサート10に荷重がかかっていない状態において、板ばね44、45、46の変形によって生ぜしめられた付勢を有する。義肢足部インサート10のすべてのコンポーネントがこの付勢によって互いに保持される。前制限要素91の領域において、後側の板ばね45又は内側ばね45と遠位ばね46との間に接触要素48が配置され、この接触要素の位置を前-後方向に移動可能である。例えば内側ばね45と遠位ばね46との間の力導入場所を決定するために、接触要素48を交換することができる。力導入点が異なることによって、前又は後の方向の位置に応じて収縮挙動が変化することになる。内側ばね45の前端と遠位ばね46の前端との間にも接触要素47が配置され、この接触要素は変位可能又は交換可能にそこに支承されている。接触要素47、48の材料選定、大きさ、及び位置により義肢足部インサート10のばね特性を調整することができる。
【0036】
これに加えて、近位ばね44とホルダ30との間にガイド要素80が配置され、このガイド要素は、後領域42、すなわち取付装置20への力の導入の後に位置する領域においてホルダ30に固定され、例えばねじ締結、接着、溶接、形状結合的に固定されるか、又は締め付けられている。ガイド要素80は、前力導入領域410を越えて近位ばね44の前端領域まで延在し、かつ主ばねに相対するホルダ30の傾動を可能にするため、及び前力導入領域410の領域において近位ばね44の上面上でのホルダ30のローリングを可能にするためのばね板として形成されている。
【0037】
制限要素91、92を、特にベルト、ロープ、又はケーブルとして形成することができ、これらの制限要素をループとして形成することができ、ホルダの上面又はベースばね47の下面の周りに案内することができる。制限要素91、92が入れ子式に伸縮可能なスリーブ、あるいはフレキシブルで引張強いロープとして、ホルダ30及びベースばね47の収容部間に緊張保持されることも可能である。義肢足部インサート10が足化粧要素3に埋め込まれ、足化粧要素に交換可能に取り付けられ得る。
【0038】
制限要素91、92は両方を又は一方を調節することができるように、特に短くすることができるか、又は長くすることができるように形成され得る。これに代えて、挿入片又はスペーサ片によって制限要素91、92の一方又は両方とホルダ30及び/又はベースばね46との間の付勢を変化させることができる。これに代えて、異なった長さの制限要素91、92と交換することによって付勢を変化させることができる。制限要素91、92の荷重解除又は付勢の解消時の離脱を防ぐために、制限要素91、92を、それぞれの収容部において形状結合的に固定することができる。例えばベースばね46の後端に、制限要素92を固定するための挿通部又は装置を有する収容部93が設けられる。収容部93は、同時にクッション機能を有することができる。
【0039】
例えばヒールストライク時に立位を越える踵荷重がかけられた場合、ホルダ30が軸力を後力導入領域42を介して床の方向にかけ、かつ主ばね44を後領域において圧縮するように、ベースばね40の3つのばね44、45、46が収縮し、それにより後制限要素92の荷重が解除されるのに対して、前制限要素91は引き続き緊張状態にある。足の荷重のさらなる推移において、近位のコンポーネント2を介して取付装置20に実質的に垂直方向に力が導入された場合、特に近位ばね44及び内側ばね45の均一な圧縮が行われ、それにより2つの制限要素91、92が緊張解除される。
【0040】
次いで、歩行前進の範囲内で近位コンポーネントが前方向に、すなわち前方へ傾動されると、ホルダ30の後端が近位ばね44から持ち上がり、それにより後力導入領域420と近位ばね44との間に解離又は隙間が生じる。その場合、ホルダ30は、ガイド要素80を介して内側-外側方向に固定され、かつ主ばね40に対するねじれが防止される。ホルダ30を傾動可能又は旋回可能に支承することにより、主ばね40上でのローリングをそれほど大きい抵抗なしに比較的簡単に行うことができる。旋回角度が大きくなり、ホルダ30の後端とベースばね46の後端との間の距離が大きくなって後制限要素92が緊張すると直ちに、ベースばね46が追加的に作動し、かつ前方へのさらなる旋回に対する追加的反力を提供する。それによって、近位ばね44に相対するホルダ30の最大旋回距離が制限されるので、歩行周期中に個々のばね44、45、46の切り替え作動を提供することが可能である。制限要素92により制限が有効になる。
【0041】
図2は、同様に3つのばね44、45、46を有する義肢足部インサート10の一変形形態を示し、近位ばね44と内側ばね45とは互いに両凹状に配置され、それにより楕円形又は略楕円形の空間400が形成される。内側ばね46の下面と遠位ばね45の上面との間には、ヒールストライク時に収縮を可能にするために後領域にも空間401が形成される。
【0042】
図2による変形形態は、それぞれの制限要素91、92を収容するための溝として形成された収容部910及び940をホルダ30の前領域及び後領域に有する。ベースばね46にも同様に収容部920、930が形成され、これらの収容部は、ベースばね46を保護するために用いられ、同時にそれぞれの制限要素91、92の意図しない移動を阻止する。ベースばね46の後端における収容部930は、荷重が解除された場合にも制限要素92の離脱を阻止する貫通穴を有する。収容部930は踵クッション100に形成され、ベースばね46の前端につま先部クッション120が配置されている。ばね間にはそれぞれ交換可能又は変位可能な接触要素を配置することができ、これらの接触要素は、図示された実施例では近位ばね44の後端と内側ばね45との間にのみ参照符号49で示されている。ホルダ30と近位ばね44との間にエラストマダンパとしてのダンパ要素52を配置することができる。
【0043】
ホルダ30の前端はヒンジを介してばね44と接続され、それによりホルダ30が近位ばね44に相対して旋回し得るが、そこから垂直方向に外れることはできない。ヒンジの軸受体は、ねじり力を受けるために近位ばね44と形状結合的に接続され、それにより垂直軸を中心としたねじりが生じ得ない。しかし義肢足部インサートの歩行方向延在又は長手方向延在に対して垂直方向の実質的に水平方向の旋回軸110を中心とした傾動は可能である。ヒンジは、主ばね40の後領域42において、例えばばね板又はばね要素により取り付けられ、あるいは前領域41において締付け又は他の形状結合的な固定により取り付けられ得る。
【0044】
図3において本発明の別の変形形態が示され、ばね構造は実質的に図1又は図2に相当し、ガイド要素80を介した主ばね40へのホルダ30の取付けが違っている。図1ではガイド要素80が近位ばね44の前端領域からホルダ30の後端領域へ延在するのに対して、図示された実施例は、折り畳まれたガイド要素80又は複数部分からなるガイド要素80を備え、ガイド要素はまず前領域41において、例えばエラストマダンパ51又は取付要素を介して近位ばね44に固定されている。ガイド要素80は、前領域41から近位ばね44の後領域42まで、及びそこから再び前方へ、前ダンパの直前の前制限要素91の下まで延在し、そこで取付要素61を介してホルダ30の下面に保持される。例えばばね板として形成され得るガイド要素80の折り畳まれた形態によって、前側の力導入領域410の領域において前旋回軸110を中心とした前方への傾動を実行すること、及びさらに後側の力導入領域420において後ダンパ52の上方で後側の旋回軸111を中心とした後領域42における後方への傾動を可能にすることが可能である。この後側の旋回軸111は、例えば軸方向荷重の存在時に後方移動する場合に、ばねの相応の移動及び緊張解除によって前制限要素91が効果的に切り替えられるまで機能する。ガイド要素の一体の折り畳まれた実施形態の代わりに、ガイド要素を2部分から形成すること、及び後側の後領域において接続することもできる。
【0045】
図4において、ガイド要素80が、例えばクリップ又はクランプの形態の取付要素62を介して保持される主ばね40上で後領域42からホルダ30の前領域41へ延在し、そこで締付保持されるか、又は前取付要素61を介して固定される、本発明の別の変形形態が示される。歩行中にホルダ30とばね44との間の接触を緩やかに形成するために、取付要素61、62と近位ばね44又はホルダ30との間にダンパ51、52を配置することができる。制限要素91、92はループとして形成され、前ループが義肢足部インサート10の周りに内側-外側に案内され、後制限要素92は内側及び/又は外側に案内され、さらに複数の制限要素92がホルダ30及びベースばね47に内側及び/又は外側に配置され得る。
【0046】
図5a~図5cにおいて、別の実施形態による義肢足部インサート10の種々異なる荷重期が示されている。図5aは、前側の端において近位ばね44及び内側ばね45を有する二重ばねアセンブリを介して遠位ばね46に支持されているホルダ30が実質的に水平方向に向けられている、非荷重状態、又は緊張解除された立位時の足化粧要素3内の義肢足部インサート10を示す。
【0047】
遠位ばね46の下方に底部ばね43が配置され、この底部ばねに踵クッション100及びつま先部クッション120が配置されている。遠位ばね46及び底部ばね43は、遠位ばね46の前側の端において、略つま先部クッション120の領域において互いに取り付けられている。遠位ばね46は、つま先部端部又は底部ばね43の前側の端まで延在し得る。上方へ曲げられた遠位ばね46とベースばね43との間に接触要素47が配置され、接触要素を介して、特に踵荷重時に力導入点を調整することができる。
【0048】
ベルトとして形成された2つの制限要素91、92の付勢によって、前-後方向の傾動に対する義肢足部インサート10の剛性を調整することができる。制限要素91、92の付勢が大きければ大きいほど、義肢足部インサートがより高剛性になるか、又はより安定する。
【0049】
図5bにおいて、高踵荷重時の義肢足部インサート10の配置及び挙動が模式的に示されている。ホルダ30の後側部分に荷重がかけられ、遠位ばね46の後側の端を押さえ、遠位ばねはベースばね43の後端の方向に押される。遠位ばね46の前側の端がベースばね43のつま先部領域に固定されているので、遠位ばねは、足中央領域において接触要素47を介して湾曲し、それにより3点曲げが生じる。さらに、接触要素47の前で、制限要素91による付勢にもとづいて垂直方向に下方へ作用する力が二重ばね44、45を介してかけられる。図5bにおいて、制限要素92が完全に緊張解除されているが、ホルダ30の後ではまだ遠位ばね46とホルダ30とにガイドが配置され、このガイドは、後側の制限要素92がホルダ30から離脱し得ることを阻止する。
【0050】
例えばいわゆるロールオーバ後のローリング中に生じるつま先部荷重時に、前側の、ホルダ30の前領域に荷重がかかり、この前領域は、2つのばね44、45を介して遠位ばね46に、及び遠位ばね46を介してベースばね43に支持される。
【0051】
接触要素47によって力導入点が規定され、ばねの長手方向延在に沿う変位によって変更される。
【0052】
近位ばね44及び内側ばね45を互いに向かって動かすことができ、それにより2つのばね間の空間400が縮小又は最小化される。ホルダ30の後側の端は、近位ばね44における旋回可能な支承にもとづいて、後側の端が後側の制限要素92と接触するまで上方へ移動される。この状態において、ホルダ30の後側の端が遠位ばね46から持ち上がる。
【0053】
図6は、ねじ62又は別の取付要素によりホルダ30の下面に固定されるばね舌片の形態の取付要素80を有する義肢足部インサート10の別の変形形態を示す。ホルダ30は、クッション53を介して近位ばね44とガイド要素80の上面とに支持される。つま先部に荷重がかかった場合に、クッション53の載置領域においてホルダが規定されない旋回軸を中心として、後側の制限要素92が近位ばね44に相対してさらに旋回することを阻止するまで傾動する。ガイド要素80は、近位ばね44の前側の端まで延在し、そこで取付要素61、例えば留め金、クリップ、又はベルトにより保持される。遠位ばね46は、近位ばね44と略同じ高さで終わる。内側ばね45は、さらに先へ前方向につま先部クッション120を越えて延在する。後領域において、ホルダ30と近位ばね44との間、及び近位ばね44と内側ばね45との間にダンパ51、52が配置され、接触時にばね又はばねがホルダ51から持ち上げられたときのインパルスを減衰させる。コンポーネントの互いに離れる動きを可能にするために、ダンパ51、52が好ましくは片側だけホルダ30、又はばね44、45の1つに取り付けられている。高弾性の材料の場合、ダンパ51、52を両側でコンポーネントと接着することができる。
【0054】
図7は、基本的に同じような構造を有する図6の一変形形態を示すが、取付要素61としての留め金又はクリップの代わりにすべてのばね44、45、46を通り抜けるねじを有し、ねじは、荷重時にばね44、45、46が互いに沿って変位することを阻止する。ばね44、45、46間に、それぞれクッション又はダンパ54、55が配置され、ねじ61の頭部と近位ばね44、及びナットと遠位ばね46との間にもクッション要素を配置することもできる。つま先部領域における締付けによって、変形時にばね44、45、46にモーメントが重畳され、それによって自由ばね長さが短くなる。ねじ61による締付けは、スラスト運動を阻止し、ばねが互いに変位することを可能にする緩んだ場合よりも義肢足部インサート10を全体として高剛性にする。
【0055】
図8は、ホルダ30のためのヒンジ収容部として形成されたガイド要素80を有する本発明の別の一変形形態を示し、旋回軸110を中心としてホルダの前側の端を旋回させることができる。ホルダ30の後側の端は、後側の制限要素92により、かつ遠位ばね46に対するその最大の旋回により制限される。ガイド要素80は、つま先部領域にまで延在し、かつ取付要素61を介して遠位ばねと一緒にベースばね46に配置されている。ホルダ30と、ホルダ30の後側の端まで延在するガイド要素80との間にダンパ51が配置され、同様にガイド要素80と近位ばね44の後側の端との間に別のダンパ52が配置されている。
【0056】
図9は、ベースばねの代わりに底部ガイド要素88が主ばね40を収容及び案内するために配置されている図8の一変形形態を示す。ガイド要素80と底部ガイド要素88は、つま先部クッション120の領域において取付要素61を介して互いに接続され、ガイド要素80は、その前側の端に延長舌片を有し、この延長舌片を介して底部ガイド要素88に弾性的及びばね弾性な支承が実現される。
【0057】
図10は、ホルダ30と取付装置20との間にダンパ50が配置され、それによりホルダ30が旋回軸110を中心として近位ばね44に相対して旋回可能に支承されるだけでなく、取付装置20も旋回軸110を中心としてホルダ30に相対して旋回可能である図8による変形形態の一実施形態を示す。取付装置20が3つの位置で示され、実線が基本位置を示し、点線が取付装置20の前方へ傾動した位置を示し、破線が取付装置20の、下降し、後方へ傾動した位置を示す。
【0058】
ダンパ50としての形態の他にアクチュエータを設けることもでき、アクチュエータにより傾きに関してモータによる調節、及びそれに伴い例えば異なった踵高さへの適合を行うことができる。装置をダンパ50として形成した場合、一定の力又は一定のモーメントが下降又は前方への傾動が生じることをもたらし得る。ゆっくりとした沈み込み又は持ち上げは、例えば相応の調節弁を閉じることによって、及び液圧式ダンパとして形成されたダンパ50を所望の位置でロックすることによって適正な位置を可能にする。
【0059】
図11は、近位ばね44の上面の形状に対して略平行の下面上に形状を有するホルダを備える図6の一変形形態を示す。遠位ばね46と内側ばね45との間の接触要素47は、前側の制限要素91の領域に配置され、義肢足部インサートの後側の領域におけるクッション51、52は、後側の制限要素92によって側方のずれが防止され、遠位ばね46の後側の端におけるガイドがクッション51、52の後方のずれを阻止する。ガイド要素80は、ばね44、45、46の後領域42における後側の端から前側の端まで延在し、ねじ62によってこれに固定される。ばね44、45、46とガイド要素80とはねじ62によって締め付けられ、かつ形状結合的に保持され、それによりばねに、変形時にスラストモーメントが重畳され、それによって全体として自由ばね長さが短くなる。
【0060】
他のすべての実施形態と同様に図11による実施形態でも、制限要素91、92、又は制限要素91、92の少なくとも1つをホルダ30、及び遠位ばね46又は踵クッション100に取り付けることによって、それぞれ制限要素91、92がホルダ30及び/又は遠位ばね46に相対して変位することが不可能にされるので、回内及び/又は回外に対する安定化を達成することが可能であり、相応の軸方向荷重時に圧縮のみが可能にされる。
【0061】
図11による実施例では、近位ばね44と内側ばね45が実質的に平行に湾曲して形成され、それによって収縮スペースが小さくなるが、より柔らかいローリング動作が全体として可能になる。遠位ばね46は、内側ばね45から離れる向きに湾曲され、それにより間に後方向に拡大する隙間及び空間が生じ、隙間及び空間は、前側の制限要素91又は接触要素47まで略達する。
【0062】
図12は、図6の実施形態と類似の別の一変形形態を示すが、ガイド要素がなく、ホルダ30の前領域にクッション51を備えている。取付装置20の下方の領域において、ホルダ30の下面と近位ばね44の上面との間に接触要素48が配置され、ばね44、45、46がねじ42により互いに固定され、つま先部クッション120と結合されている。接触要素48の位置決めによって、圧点又は力導入点の位置が規定される。踵荷重が存在し、つま先部が接地していない限り、踵のローリング点が力導入点を決定する。後側の制限要素92が緊張解除され、踵領域におけるばね44、45、46が圧縮され、相対して移動される。前側の制限要素91が緊張され、近位ばね44からのホルダ30の移動を阻止する。つま先部が接地すると直ちに、前側の制限要素91、例えばベルトが緊張解除され、遠位ばね46とホルダ30の後側の端とが互いに離れ、後側の制限要素92を調整された最大距離まで緊張させる。ホルダ30と近位ばね44との間の接点が前方にあるほど、すなわち前方向の位置決めが遠ければ遠いほど、それだけ軸方向のたわみ性を柔らかく調整する必要がある。
【0063】
ばね構造が図12のばね構造に実質的に相当する本発明の別の一変形形態が図13に示される。制限要素91、92に加えて、ばねコンポーネント及びホルダの周りに配置されている機能カバー200が配置されている。機能カバー200は靴下のように形成され、足化粧要素3に加えて使用される。図示された実施例では、機能カバー200は、踵クッション100及びつま先部クッション120を取り囲まないが、これらを包囲することもできる。機能カバー200を、弾性率を適合させた非伸長性又は高強度の材料から形成することができ、機能カバーは特に義肢足部内の摩擦、及びそれによる騒音を低減するために使用される。義肢足部インサート10の弾性特性並びにローリング特性及びエネルギー移動特性を調整するために、追加的ベルト又は緊締要素93、94を機能カバー200と一緒に使用することができ、緊締要素93、94を機能カバー200に組み込むこともできる。
【0064】
図14は、ホルダ30を有する一変形形態を示し、ホルダの前側の端に可動ピストン70を収容するためのシリンダチャンバ71が形成又は配置されている。ピストン70は、ピストンロッド72を介して近位ばね44に支持される。これに加えて、ホルダ30は、その後端において、ガイド要素80を介して近位ばね44の前側の端と接続されている。
【0065】
ガイド要素80は、前側の領域において、取付要素61を介してばね44と結合されている。内側ばね45と遠位ばね46とは別々に相接して、ねじ62を介して互いに接続されている。
【0066】
ホルダ30は、旋回軸110を中心として旋回可能に接触要素49を介して近位ばね44に支承されている。踵荷重時、例えばヒールストライク時、義肢足部インサートが平たく接地する立脚初期まで、シリンダチャンバ71内のピストン70は現れず、それにより軸方向力がピストンロッド72を介して近位ばね44にかからない。ローリング運動が進行し、つま先部にかかる荷重が増加すると直ちに、ピストン70がシリンダチャンバ上境界と接触し、ピストンロッド72を介してばねに圧縮力がかけられる。それによって、所定時点から、軸方向力が主ばね40に導入され、前方方向のさらなる移動又は前傾動が阻止されるか、又は困難にされ、それにより立脚中期からユーザに高い安定性が提供される。ゼロ位置周辺のローリング及びわずかな傾動は、ピストン70がチャンバ71内に有する遊びによって可能にされる。復元力は、ガイド要素80によって提供され得る。
【0067】
図15は、大きい軸方向荷重がかかった場合に、ピストン70がチャンバ71の上面に打ち当り、ばねに圧縮力をかける位置を示す。後側の制限要素92が緊張解除され、ガイド要素80の後側の端が近位ばね44の上面から持ち上げられる。
【0068】
図16は、図14及び図15による義肢足部インサートの、ホルダ30が歩行方向とは逆の方向に傾動した状態を示し、ピストン70は、シリンダチャンバ71の下面と接触し、時計回りの方向とは逆の方向にさらに旋回すること、及びそれに伴いホルダ30又はホルダ30の前側の端が近位ばね44から離れる方向に移動することを阻止する。
【0069】
本発明のすべての実施形態は、義肢足部インサート10を比較的扁平に形成することを可能にし、それにより基本的に、義肢足部インサート10を追加的な義肢足部継手と一緒に用いること、又は長い下腿断端、例えば切断断端を有する患者に適合させることが可能である。簡単に製造することができ、かつ複雑な成形法を必要としない少ない点数の部品は、一方で製造、他方でロバストで信頼できる設計を容易にし、これに加えてこの設計を、整形外科技術者によってそれぞれのユーザの異なったニーズ及び利用条件に適合させることができる。あまり動かされない部分を有する義肢足部インサート10の機械的設計は、保守費用を必要としないか、又はわずかしか必要とせず、それにより個々人に適合させることができ、かつ場合によっては利用期間中に変更できるにもかかわらず、わずかなサービス費用しかかけなくて済む。
【0070】
本発明の大部分の実施形態において、2つの機能対に分割され得る3つの板ばねが設けられている。近位ばね及び内側ばねは、通常、つま先部として動作するのに対して、内側ばね及び遠位ばねは、主に踵ばねとして動作する。遠位ばねは、つま先部の運動の終わりにはまだ接続されている。踵とつま先部とは荷重解除状態で、通常の立位荷重時と同様に、制限要素によって付勢される。ホルダは、ガイド要素を介してばねアセンブリに、通常は近位ばねに取り付けられている。ホルダと近位ばねとの間に配置されている少なくとも1つの接触要素を介して、力導入点、及びそれに伴い踵荷重から立脚期及びつま先部荷重への移行が調整される。取付装置の前の生理的安定点の領域における第2接点は、つま先部荷重時の力導入点を規定する機能を有する。それぞれのばね間の接点又は接触要素の移動によって、個々のばねの相互の割り当て、及びそれに伴い義肢足部インサートの構造全体を変化させることなしに、システム全体のばね剛性が変化させられる。立位中に義肢足部に通常の荷重がかかる場合、患者の両足に軸方向力が均等に分配される。
【0071】
その場合、通常、ばね付勢は非常に大きいので、2つの制限要素又は後制限要素はまだ緊張解除されていない。換言すると、制限要素又は付勢要素による付勢は、ユーザに十分な安定感を提供するために、立位中に、義肢足部インサートを介して十分な安定性が提供されるように選択されている。
【0072】
つま先部荷重時、すなわちわずかに前方に屈曲した場合に、旋回軸を中心としてホルダが移動可能であることにより、穏やかなローリング過程が開始され、同様に、ばねにエネルギーが蓄積され、踵ばねからつま先部荷重へのエネルギー移行が可能にされる。
【0073】
さらに、ばねの適合によって、立脚中期における下降を提供することが可能であり、それによって均一な沈み込み、及び自然な歩行運動に適合した運動を達成することができる。立脚中期中にばねに蓄積されるエネルギーは、さらなる歩行進行時に放出され、前進運動を容易にする。
【0074】
特に遊脚期後の足の着地期、すなわちヒールストライク時に、義肢足部インサートは踵において多くのばね変位を提供する。さらに、ばね付勢は、踵領域における制限要素を介して付勢され得る。立脚終期のつま先部荷重時に、すべての3つのばね又はすべてのばねが一緒に作用する。立脚終期の踵接地からつま先部へのローリング時にエネルギーが移動することにより、ロールオーバ時に沈み込みにもとづいて上方への垂直運動が行われないため、ユーザは歩行方向に動かされる。したがって技術的に短い義肢足部インサートが可能であり、その際、ユーザは、機械的に短い足の場合には不自然な早期ローリングと体の重心の下降が生じることによる穴に落ちるような感覚を立脚終期に持たない。義肢足部インサートをもってすれば、つま先部においてばねが緊張解除した場合に、立脚終期に持ち上げを生ぜしめる均一なばね付勢によって立脚中期において下降がもたらされる。
【0075】
接触要素の位置の他に、接触要素の形状及び寸法も歩行挙動及びエネルギー移動のために決定的に重要である。接触要素、及びそれに伴い力導入力領域の幅が狭ければ狭いほど、挙動がそれだけ厳密及び正確になり、接触要素又は力導入領域の幅が広ければ広いほど歩行感覚が柔らかくなる。
【0076】
ばねが荷重に対して垂直方向又は略垂直方向に向けられることが好ましく、それにより板ばねの場合、長手方向延在が荷重方向に対して実質的に垂直方向であり、それにより板ばねの材料特性が最適に利用される。ばねの付勢は、通常の立位時に変形が生じないか、最小限の変形しか生じないように選択されることが有利であり、それにより力導入点が安定状態となり、過度な高剛性なしに静かな立位が可能である。
【符号の説明】
【0077】
2 近位コンポーネント
3 足化粧要素
10 義肢足部インサート
20 取付装置
30 ホルダ
40 主ばね
41 前領域
42 後領域
43 ベースばね
44 近位ばね
45 内側ばね
46 遠位ばね
47 接触要素
48 接触要素
49 接触要素
50 ダンパ
51 ダンパ
52 ダンパ
53 クッション
54 クッション
55 クッション
60 すべり軸受
61 取付要素
62 ねじ
70 ピストン
71 シリンダ
72 ピストンロッド
80 ガイド要素
88 底部ガイド要素
91 制限要素
92 制限要素
100 踵クッション
110 旋回軸
111 旋回軸
120 つま先部クッション
200 カバー
400 空間
401 空間
410 力導入領域
420 力導入領域
910 収容部
920 収容部
930 収容部
940 収容部
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
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【国際調査報告】