(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】バクテリアセルロースの配合物、方法および使用法
(51)【国際特許分類】
C08L 1/02 20060101AFI20220303BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220303BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220303BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220303BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220303BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220303BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220303BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220303BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20220303BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20220303BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220303BHJP
A23L 2/62 20060101ALI20220303BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20220303BHJP
C08K 5/151 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C08L1/02
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/26
A61K8/73
A61K9/14
A23L33/21
A23L29/262
A23L29/269
A23L2/62
A23L2/00 L
C08K5/053
C08K5/151
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538064
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2019061452
(87)【国際公開番号】W WO2020136629
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516116507
【氏名又は名称】ユニベルズィダード ドゥ ミンホ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DO MINHO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド オクタヴィオ ケイロス ドウラド
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ ミゲル ポルテラ ダ ガマ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4B117
4C076
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD29
4B018MD35
4B018ME14
4B041LC10
4B041LH11
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4J002AB02X
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4J002EC056
4J002EL086
4J002GB00
4J002GC00
4J002HA07
(57)【要約】
本開示は、粉末状の再水和可能なバクテリアセルロース配合物に関し、その製造方法および使用を含む。特に、コロイド安定剤、泡安定剤、または増粘剤として、強化剤材料(充填剤として)、食物繊維、食品、化粧品または医薬組成物、複合材料などとしての、配合物の使用である。本主題の一態様は、バクテリアセルロースおよび以下のリストから選択される追加の成分(または第3の成分):ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタン、メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、チロース、グリセロール、サッカロース、またはそれらの混合物;を含む粉末配合物を開示する。ここで、粉末配合物は、低剪断混合で、20°Cで水性媒体に分散可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末配合物であって、
バクテリアセルロースと、
ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタン、メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、チロース、グリセロール、サッカロース、またはそれらの混合物、のリストから選択される追加成分と、
を備え、
ここで、前記粉末配合物は、低剪断混合で、20°Cで水性媒体に分散可能である、
粉末配合物。
【請求項2】
前記低剪断混合は、最大で1500rpm、好ましくは最大で1000rpmである、請求項1に記載の粉末配合物。
【請求項3】
粉末状の前記バクテリアセルロースは、最大10分で、好ましくは最大6分で、より好ましくは最大4分で、水性媒体中に分散される、請求項1または2に記載の粉末配合物。
【請求項4】
粉末状の前記バクテリアセルロースは、最大2分で、好ましくは最大1分で、水性媒体中に分散される、請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末配合物。
【請求項5】
粒子は、5~500μmのサイズを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の粉末配合物。
【請求項6】
粒子は、80~400μm、より好ましくは100~300μmのサイズを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末配合物。
【請求項7】
前記粒子のD50は、50~300μmであり、好ましくは前記粒子のD50は、80~250μmであり、より好ましくは前記粒子のD50は、100~200μmである、請求項5または6に記載の粉末配合物。
【請求項8】
前記粒子のD50は、10~90μmであり、好ましくは前記粒子のD50は、20~80μmであり、より好ましくは前記粒子のD50は、30~60μmである、請求項5に記載の粉末配合物。
【請求項9】
前記バクテリアセルロースは、最大2分で水性媒体中に分散され、前記粒子は、5~100μm、より好ましくは10~60μmのサイズを備える、請求項5に記載の粉末配合物。
【請求項10】
前記バクテリアセルロースと前記追加成分との質量比は、1:5~1:0.2の間で変化し、好ましくは1:2~1:0.5の間で変化する、請求項1から9のいずれか一項に記載の粉末配合物。
【請求項11】
前記追加成分は、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとキサンタン、カルボキシメチルセルロースとヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物である、請求項1から10のいずれか一項に記載の粉末配合物。
【請求項12】
粉末状の前記バクテリアセルロースは、アセトバクター(Acetobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)、アクロモバクター(Achromobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、エアロバクター(Aerobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、リゾビウム(Rhizobium)、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、サルシナ(Sarcina)、コマガタエイバクター(Komagataeibacter)、またはそれらの組み合わせのリストのバクテリアから得られ、好ましくは、粉末状の前記バクテリアセルロースは、アセトバクター、コマガタエイバクター、グルコナセトバクターまたはそれらの組み合わせのリストのバクテリアから得られる、請求項1から11のいずれか一項に記載の粉末配合物。
【請求項13】
5~70%(wt./v)のバクテリアセルロースを備え、
ここで、前記バクテリアセルロースは束状に分散されており、
ここで、前記バクテリアセルロース束のサイズは、20μm~2mmの間で変化する、
湿潤バクテリアセルロース配合物。
【請求項14】
前記バクテリアセルロース束のサイズは、20μm~2mmの間で変化する、請求項13に記載の湿潤バクテリアセルロース。
【請求項15】
前記バクテリアセルロース束のサイズは、200μm~1mmの間で変化する、請求項14に記載の湿潤バクテリアセルロース。
【請求項16】
前記バクテリアセルロース束のサイズは、20μm~400μmの間で変化し、好ましくは30μm~200μmの間で変化する、請求項15に記載の湿潤バクテリアセルロース。
【請求項17】
5~40%(wt./v)のバクテリアセルロース固形物を備える、請求項14~16のいずれか一項に記載の湿潤バクテリアセルロース。
【請求項18】
10~30%(wt./v)のバクテリアセルロース固形物を備える、請求項17に記載の湿潤バクテリアセルロース。
【請求項19】
前記バクテリアセルロースは、アセトバクター(Acetobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)、アクロモバクター(Achromobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、エアロバクター(Aerobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、リゾビウム(Rhizobium)、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、サルシナ(Sarcina)、コマガタエイバクター(Komagataeibacter)、またはそれらの組み合わせのリストのバクテリアから得られ、好ましくは、粉末状の前記バクテリアセルロースは、アセトバクター、コマガタエイバクター、グルコナセトバクターまたはそれらの組み合わせのリストのバクテリアから得られる、請求項14から18のいずれか一項に記載の湿潤バクテリアセルロース。
【請求項20】
コロイド安定剤、泡安定剤、または増粘剤としての、請求項1から19のいずれか1項に記載の粉末状のバクテリアセルロース配合物の使用。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の粉末状のバクテリアセルロース配合物または湿潤バクテリアセルロースの強化材料としての使用。
【請求項22】
少なくとも有効成分と請求項1から21のいずれか一項に記載の粉末状のバクテリアセルロース、または湿潤バクテリアセルロースを賦形剤として備える医薬組成物または化粧品組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の有効量の粉末状のバクテリアセルロースまたは湿潤バクテリアセルロースを備える食物繊維または食品。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の、有効量のバクテリアセルロース粉末配合物または湿潤バクテリアセルロースを備える複合物。
【請求項25】
20μm~2mm、好ましくは100μm~1.5mm、より好ましくは200μm~1mmの間のサイズの、粉砕バクテリアセルロース束の水性懸濁液を提供するステップと、
20~80°Cの温度で第3の成分を加えるステップと、
少なくとも60%の固形分が得られるまでバクテリアセルロースを乾燥させるステップと、
バクテリアセルロースを5~500μmの粒子サイズになるまで粉砕するステップと、
を含む、
請求項1から13のいずれか一項に記載のバクテリアセルロース粉末配合物を製造するための方法。
【請求項26】
前記粉砕バクテリアセルロース懸濁液中の前記バクテリアセルロースの濃度は、0.3~10%(wt./v)の間で変化する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記粉砕バクテリアセルロース懸濁液中の前記バクテリアセルロースの濃度は、0.5~5%(wt./v)の間で変化する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
水中で、20μm~2mm、好ましくは100μm~1.5mm、より好ましくは200μm~1mmのサイズの粉砕バクテリアセルロース懸濁液を提供するステップと、を含み、
水中の粉砕バクテリアセルロース懸濁液の濃度は、最大10~70%(wt./v)、好ましくは15~30%(wt./v)の濃度である、
湿潤バクテリアセルロース配合物を製造するための方法。
【請求項29】
前記バクテリアセルロース懸濁液を均質化するステップは、湿式粉砕を含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、湿潤および粉末の、再水和可能なバクテリアセルロース配合物に関し、その製造方法およびその使用を含む。
【0002】
本開示の湿潤および粉末バクテリアセルロース配合物は、とりわけ、医学、化粧品、食品、洗剤、ポリマーおよび複合材料産業において有用である。
【背景技術】
【0003】
バクテリアセルロース(BC)は、特定のグラム陰性の絶対好気性酢酸バクテリアによって合成される菌体外多糖(exopolysaccharide)であり、得られるセルロースの収量の高さのため、コマガタエイバクター(Komagataeibacter)属が最も重要である。BCは形態学的に、幅100nm未満のランダムに組み立てられたリボン状のフィブリルで構成され、基本的なナノフィブリルの凝集した束で構成されている。これらのフィブリルの横方向のサイズは7~8nmで、長さは数マイクロメートルである。コマガタエイバクター微生物は必須の好気性菌であるため、静的条件下では、BCは培地の気液界面で合成される[文献1-18]。
【0004】
バルク商業用途の場合、乾燥BC配合物は、サイズと質量の減少、したがって保管スペースと輸送コストの削減、保管安定性の向上、汚染のリスクの低減など、水性懸濁液に比べていくつかの利点を提供する。植物セルロースと同様に、BCの特性は乾燥するとほとんど失われることが知られている。水が蒸発すると、BC由来の細い繊維が凝集し、水に再懸濁しても容易に切断されない水素結合が確立される[文献19]。以下に概説するように、水分散後のセルロース特性の復元に取り組むために、乾燥BC配合物を調製するためにいくつかの試みがなされてきた。
【0005】
文献米国特許第4960763号明細書(US4960763A)[文献20]は、コレステロールを吸収/結合するための食物繊維としてのBCの使用(invitro)に関連している。BCは、単独で、またはスクロースと組み合わせて、凍結乾燥または凍結およびクライオミルのいずれかを施した。これらはセルロース繊維間の水素結合を防ぐのにかなり効果的であるが、工業的実装にはかなりコストのかかるソリューションである。この文献では、乾燥前後のBCの特性の比較は、コレステロール吸着への影響に関してのみ行われた。また、著者らは、乾燥方法に関係なく、BCのみを乾燥させると、未乾燥のBC懸濁液と比較して、BCのコレステロール吸着特性が大幅に低下することを認識している。スクロースの添加は、そのような制限を部分的に緩和しただけであった。
【0006】
文献米国特許第5962676号明細書(US5962676A)[文献21]は、BCの乾燥方法を説明している。BCの均質化のために、両方の場合において温度処理を伴う高圧均質化および細ねじ押出しが研究された。次に、BCをドラム乾燥、噴霧乾燥、押出乾燥、オーブン乾燥、および油で揚げることによって乾燥させた。BCもまたシートの形で乾燥され、粉砕された。様々な乾燥方法に関わらず、最大BC膨潤は30分から最大18時間かかった。これは、産業用途には実用的ではない。また、この文献は、膨潤したBCの特性が未乾燥のものと同等であるかどうかを立証していなかった。
【0007】
文献特許第2873927号公報(JP2873927B2)[文献22]は、オーブン乾燥、ドラム乾燥、赤外線乾燥などのいくつかの方法を通して、乾燥前に水性BC懸濁液に第3の成分を添加することを提案している。この文献では、BCの崩壊は、乾燥する前に、最大速度で最大15分間、ニーダー押出機を使用して行われた。試験された第3の成分の例は、分散可能な生成物を得るために(30秒未満、スパチュラで攪拌する)BCの50倍の質量の炭酸カルシウムを含んだ。BCとBCの5倍の量炭酸カルシウムとを混合し、スパチュラで水に混合した後、熱処理(120°C、20分)すると、分散性の懸濁液が得られる。BC:グリセリンの質量比が1:2で、グリセリンを第3の成分として使用した場合、最初に水性混合物を100°Cに1時間加熱することによっても分散を達成することができた。加熱することなく、分散性生成物を得るために、BCの50倍の量のグリセリンが必要であった。しかし、グリセリンをBCの500倍(または前述の加熱を使用した場合は200倍)の量で添加した場合にのみ、初期製品粘度のほぼ80%を回復することができた。これらすべての場合において、分散生成物の安定性(遠心分離後の沈殿度によって評価される)は低かった。BCをカルボキシメチルセルロース(CMC)とも混合し、乾燥させた。BC:CMCの質量比が1:5の混合物は分散性であり、初期生成物の粘度回復率は71%、安定性回復率は100%であった。他の多糖類(デキストリン、キサンタン、可溶性デンプンなど)および多糖類とグリセリンまたは多糖類とCMCの組み合わせを「第3の」成分としてテストし、乾燥前にBC水性懸濁液に添加した。1:1の質量比のBC:デキストリンを除いて、すべての混合物は、水分散後の粘度および安定性のほぼ完全な回復を可能にするために、過剰の第3成分を必要とした。BC/デキストリン混合物の調製に関連するその文献の一例は、400μm以下の最終粒子サイズへの乾燥製品の粉砕に取り組んでいる。マグネチックスターラーによる粉末の0.2%の水性分散には30秒かかり、乾燥していない混合物と比較して、粘度が完全に回復した。分散時間は、大きな巨視的な塊が肉眼で観察できなくなるまでの時間として定義された。ただし、この特定の混合物におけるBCとデキストリンとの質量比の詳細は提供されていない。これらすべての場合において、水中で攪拌した後、乾燥した材料を120°Cで10分間熱処理した。分散性製品を得るには、熱処理(工業的実施のための時間と費用とがかかる解決策)および過剰な第3の成分(実際には最終製品に少量のBCが生じる)が明らかに必要である。
【0008】
文献米国特許第6153413号明細書(US6153413A)[文献24]は、BC単独のいくつかの乾燥方法を提案し(すなわち、水性BC懸濁液に第3の成分を加える必要なしに)その特性の再安定化を可能にする。この文献によると、BC繊維の乾燥および脱水中に、繊維の結晶部分と非晶部分との両方に引張応力がかかる。結晶部分はアモルファス部分よりも弾性が高いため、引張応力のひずみ度はアモルファス部分の方が高くなる。セルロース繊維のアモルファス部分の結合は、セルロース分子間およびセルロース分子内の水素結合で構成されているため、ひずみの大きさのために水素結合間の距離が大きくなり、水分子が浸透する。その結果、水を加えると、ひずみの大きいBCフィブリル間の水素結合が容易に切断され、脱水および乾燥前に存在していたBCと水分子との間の水素結合が容易に再形成される。このような文献において、「乾燥」状態とは、乾燥BC質量に基づいて約25%以下の量の水が存在する状態を意味する。乾燥したBCの分散性を実証するために、BCホモジネート(18.000Rpmで2分間、ブレンダーで混合)をトレイに注ぎ、空気乾燥、オーブン乾燥、赤外線乾燥のいずれかを使用してBCホモジネートを乾燥させた。BCホモジネートはまた、凍結乾燥され、真空下またはドラム乾燥機で乾燥された。次に、ウルトラタラックス(ultraturrax)(ヒスコトロン)を使用して、最高速度(30.000Rpm)で1分間、乾燥したBCをさらに均質化することにより、BC水性懸濁液を調製した。このような回転速度では、ウルトラタラックスはかなりの剪断応力を及ぼし、したがって、広範囲のBC繊維の破壊および/または非フィブリル化を引き起こす可能性が最も高い。これは、ブレンダーでのみ粉砕されたBC(対照)と比較して、以前にウルトラタラックス処理を受けた乾燥BCシートの機械的特性の顕著な低下によってさらに強化される。さらに、著者らは、乾燥BCの分散性および粘度(噴霧乾燥を除く)の良好な回復を主張しているが、未乾燥のBCサンプル(対照)は、ウルトラタラックスではなく、18.000Rpmでの2分間の均質化のみを受けていた。したがって、得られた結果は比較できない。上記のことから、乾燥方法に関係なく、高い剪断力がBC繊維の分散の原因である可能性が最も高い。産業用用途の場合、これは追加の設備投資(高剪断混合装置の必要性)と運用コストを意味する。
【0009】
文献米国特許出願公開第2010/0016575号明細書(US20100016575A1)および米国特許第8053216号明細書(US8053216B2)[文献25、26]は、乾燥前のBCへの多糖類親水コロイドの助剤としての添加を記載している。乾燥した材料の分散は、追加の助剤の添加ありまたはなしで、高剪断混合によって行われ得る(たとえば、2500psiで[25]、またはSilversonミキサーで8000rpmで10分間、拡張ホモジナイザーで、1500psiで2パス、および10分間で2500rpmでの高圧均質化[26])。これらの文献は、BC-親水コロイド混合物の共沈のためのアルコール溶液の使用を提案しており、これに続いて、濃縮、乾燥、粉砕が行われる。ただし、大規模な実施の場合、共沈には非常に大量のアルコールが必要である。このように、アルコールの使用、(沈殿していない材料からの)製品の不可避損失、アルコール回収装置の必要性はすべて、生産の総コストに大きく関わる。このような有機溶媒の使用は、さらなる安全性と環境の問題をも引き起こす。これらの文献では、BCを含有する発酵ブロスを次亜塩素酸塩、グリコシダーゼ、およびプロテアーゼで処理している(細胞を溶解するため)。親水コロイドを混合した後、有機溶媒を加える。ただし、培地成分とバクテリア細胞加水分解物の共沈も発生するため、最終製品の純度(したがって、品質)が制限される。帯電した親水コロイドを使用すると、イオン相互作用により、不要な物質の共沈がさらに悪化する。
【0010】
別の文献、国際公開第2001/005838号(WO2001005838A1)[文献27]は、助剤なしで網状(架橋)BCを乾燥するプロセスを開示している。これは、高剪断混合および粉砕を使用して有機溶媒中にBC懸濁液を分散させ、分散液を濃縮して溶媒を実質的に除去し、乾燥させることを含む。必要に応じて、乾燥した材料を粉砕し得る。本開示において有用な例示的な有機溶媒には、炭化水素、アルキルアルコール、アルキルスルホキシド、それらの混合物またはそれらの水性混合物が含まれる。好ましくは、セルロース材料は、乾燥プロセスと粉砕プロセスとを交互に備える多段階プロセスを使用して乾燥される。以前の文献と同様に、ここでも、有機溶媒の使用に関して強い制限がある。提案された方法はまた、工業規模で使用するための不必要な非実用的なステップ、すなわち、有機溶媒の添加とそれに続く除去、および多段階の乾燥および粉砕をも提示している。また、すべての例において、キサンタン、CMC、スクロースなどの助剤(1つ以上)を、水性分散液の前に乾燥BCと混合した。さらに、乾燥した材料を分散させるための粒子サイズ、必要な時間およびエネルギー要件に関する詳細はない(このような文献の1つの例だけが、乾燥したBCを20メッシュサイズ(850μm未満)に粉砕することを説明している)。最後に、乾燥前後のBCの特性の比較は提示されなかった。
【0011】
上記から、再分散可能なBC配合物を得るためにいくつかのアプローチが検討されており、そのいくつかは、未乾燥の配合物と比較して、その特性の復元を主張している。しかしながら、再分散法は、高エネルギー混合および/または高温および/または長い分散時間の使用、および/または過剰量の第3の成分の使用を含み、それでも元の材料の特性の回復に関して限られた結果を示す。さらに、これらのエネルギーと時間のかかるプロセスは、産業用用途を検討する場合、高い投資コストと運用コストを表す。
【0012】
言及された文献のほとんどは、再分散時のBCの技術的特性の回復を完全には示しておらず、主にBCの再分散性の実証に焦点を当てているが、これは未乾燥材料の技術的特性の回復を必ずしも意味するわけではない。これは、文献米国特許第006069136号明細書(US006069136A)[文献28]にも当てはまり、乾燥製品の代わりに、BCの均質化(湿式粉砕)および濃縮を包括する、分散性、懸濁性、粘度などの特性が改善された濃縮BCを生成する方法を提供する。他の文献で観察されたように、請求されたBC特性の復元は、異なる濃縮方法、異なる目標BC最終濃度、および異なる再分散方法によって得られた再分散性を示すことに限定されている。粉砕された材料の粒子サイズ範囲、または再分散された材料の機能特性に関する情報は提供されなかった。
【0013】
本開示で観察されるように、見かけの(巨視的)BC再分散、または未乾燥サンプルと同様の粘度の復元(不均一系を扱う場合の複雑で潜在的に不明朗な特性)は、その特性の回復を完全に実証しているわけではない。技術的特性、すなわちBCの機能的特性(多相系の安定化など)は、より詳細な情報を提供する。
【0014】
これらの事実は、本開示によって対処される技術的問題を説明するために開示される。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、その製造方法および使用を含む、乾燥粉末および再水和可能なバクテリアセルロース(BC)配合物に関する。特に、コロイド安定剤、泡安定剤、または増粘剤として、強化剤材料(充填剤として)、食物繊維、食品、化粧品または医薬組成物、複合材料などとしての配合物の使用に関する。
【0016】
本開示は、低剪断混合を使用して、室温で5分以内に水性媒体に分散可能な乾燥粉末BC配合物を得られ得る条件に関する。そのような配合物は、特にコロイド安定剤として(しかしそれだけではなく)、非乾燥材料の技術的特性を保持する。
【0017】
本開示はまた、湿潤BC配合物、その製造方法および使用に関する。本開示の湿潤BCは、とりわけ、コロイド安定剤、泡安定剤、増粘剤として、強化剤材料(充填剤として)、食物繊維、食品、化粧品または医薬組成物、複合材料として使用され得る。
【0018】
本開示は、低剪断混合(最大1500rpm、1000rpm)を使用して、室温(20~25°C)で5分以内に水性媒体に分散可能な乾燥粉末BC配合物を得られ得る条件に関する。このような配合物は、非乾燥材料の技術的特性、特にコロイド安定剤としての性能(しかしそれだけではない)を保持する。より具体的には、BC配合物の処理に含まれる粉砕のレベルは、機能特性を損なうことなく、完全な再分散が可能であるように制御されなければならない。粒子サイズが小さいほど、再分散は良好である。しかしながら、BCの技術的特性の最適な復元に必要な粉砕条件は、再分散に関する最適でない条件で達成され得る。
【0019】
一実施形態では、BC技術特性の完全な復元は、第3の成分の添加を必要とするが、これは使用される乾燥技術または乾燥配合物中の残留水の量に関係なく達成され得る。
【0020】
一実施形態では、第3の成分(または追加の成分)の存在は、天然のBCの機能特性の変化のために、常に望ましいとは限らない場合がある。ただし、乾燥したBC(第3成分を添加しない)は、水性媒体に再分散させることはできない。あるいは、濃縮されたBC懸濁液を調製し得、機能特性の完全な再分散および復元をも提供し得る。ただし、濃縮ステップの前に実行されるBCの湿式粉砕も、BCの技術的特性が損なわれないように制御する必要がある。
【0021】
この開示は、乾燥されたBC配合物(好ましくは0%(w/w)~30%(w/w)の水を含有する)を得られ得る条件を包含する。さらに、それは、濃縮された湿潤BC配合物を得られ得る条件に関する。どちらの場合も、BC配合物は、室温で、低剪断応力下で、水性媒体に迅速に分散する。分散すると、乾燥した材料の特性は、未乾燥材料の特性と同等になる。
【0022】
本発明の目的のために、BCはバクテリアから生成され得る。バクテリアの属は、アセトバクター(Acetobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)、リゾビウム(Rhizobium)、アクロモバクター(Achromobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、エアロバクター(Aerobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、リゾビウム(Rhizobium)、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、サルシナ(Sarcina)であり得る。好ましくは、BCは、これらが最も生産的であるため、アセトバクター属またはコマガタエイバクター属(以前のグルコナセトバクター)に属する純粋な菌株を使用して得られるが、天然または変異を問わず、他のセルロース産生微生物株を使用し得る。BCの好気性発酵は、既知の静的または攪拌/曝気条件で行われ得る。バッチ、流加バッチ、反復バッチまたは連続発酵などの任意の既知の培養発酵方法が使用され得る。但し、汚染物質(外因性微生物または毒物)がないという条件において、いくつかの供給原料がバクテリアの増殖とセルロースの製造に使用され得る。例えば、炭素源は、グルコースおよびフルクトースなどの個々の糖またはそれらの混合物、スクロースなどの二糖、および単糖と二糖との混合物であり得る。さらに、炭素源は、糖蜜などの糖の複合混合物、または木材加水分解物、わら加水分解物、トウモロコシ茎加水分解物、ソルガム加水分解物または他のバイオマス廃棄物などの植物バイオマス加水分解物として供給され得る。エタノール、グリセロールまたは他の糖アルコールなどの代替炭素源を、単独で、または前述のものと組み合わせて使用することもできる。また、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム、酵母エキス、コーンスティープリカー、ホエイ加水分解物、ペプトン、カゼイン加水分解物などの、しかしこれらに限定されない、有機または無機のいくつかの窒素源を単独で、または組み合わせて使用できる。アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、2,7,9-トリカルボキシ-1Hピロロ[2,3,5]-キノリン-4,5-ジオン、エタノール、亜硫酸パルプ廃液、リグニンスルホン酸等を含む、微量の有機栄養素をさらに添加し得る。培養培地の有効pH範囲は4~6の範囲が優先される。必要に応じて、発酵中、pHは、クエン酸塩または3,3-ジメチルグルタル酸などであるがそれらに限定されない緩衝液、または十分な量の塩基または酸の、培地への添加を使用して制御され得、pHを所望の範囲内に維持し得る。接種材料の開発と発酵の温度は、27~32°Cの範囲が優先される。発酵後、発酵培地からバクテリアや残留物をさまざまなプロトコルで除去し得る。これらには、水、希酸および/またはアルカリによる洗浄、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素による漂白、リゾチームなどの溶解酵素によるバクテリアの溶解、ラウリル硫酸ナトリウムまたはデオキシコール酸ナトリウムなどの界面活性剤による処理が含まれる。洗浄手順は、上記の処理の任意の組み合わせで、室温から200°Cの間の温度範囲で行われ得る。当業者は、必要に応じて、他の発酵および精製条件を選択し得る。
【0023】
一実施形態では、0.5%(m/v)~10%固形分(BC)の間、好ましくは0.5%~5%固形分の間の範囲の濃度で、上記の手段のいずれかによって得られたBCは、以下の連続ステップを施され、湿潤濃縮配合物または乾燥粉末配合物を得る。
・機械的剪断応力、湿式粉砕ミル、破砕、切断、研和、水中逆衝突、超音波、高圧均質化、酸または酵素での加水分解または漂白、またはそれらの組み合わせなどであるがそれらに限定されない方法によって得られる、BCの湿式粉砕(以下、「粉砕」と呼ぶ)。当業者は、必要に応じて他の方法および条件を選択し得る。驚くべきことに、粉砕の程度が、さらなる処理によって得られる濃縮または乾燥された材料の最終特性に重要な役割を果たすことが観察された。すなわち、粗く粉砕されたBCは、長いフィブリル凝集体(束)を生成し、粉砕が広範囲に渡りすぎると、個々のBC繊維が広範になり、および/または繊維が分裂する。したがって、BC特性を完全に維持するには、最適な粒子サイズまたは最適な粒子サイズ範囲を達成しなければならない。
・粉砕されたBCは、5%(w/v)~70%(w/v)の範囲内、好ましくは10%(w/v)~30%(w/v)の範囲内の最終固形分に濃縮される(湿潤BC配合物)。本発明の目的のために、BCの濃縮は、遠心分離、プレスフィルター、沈殿および沈降、スクリュープレス、ローラープレス、ジュースリーマー、などであるがこれらに限定されない、単独または組み合わせの、多段階プロセスにおいて逆浸透を伴う任意の固液分離方法によって達成され得る。当業者は、必要に応じて、他の濃縮方法および条件を選択し得る。
・あるいは、濃縮されていない粉砕BCは、既存の機械的剪断プロセスおよび装置のいずれかによって、任意の親水性液体、任意の水溶性物質または任意の水不溶性物質、またはこれらの物質の任意の1つ以上の混合物を含む、第3の成分と混合され得る。そのような物質の例には、グリセリン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、乳酸、グルコン酸およびデルタグルコノラクトン、低分子量糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノース、スクロース、ラクトース、セロビオース、パラチノース、マルトース、ゲンチオビオース、トレハロース、ラムノース、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース、カップリングシュガー、液糖、シクロデキストリン、糖アルコール、ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、ドゥルシット)、塩(硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ロッセル塩)、アミノ酸、アミノ酸塩、酸性酸、有機酸、核酸、核酸塩、高分子量多糖(例えば、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカスとビーンガム、タマリンドガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、デンプン、デンプン、CMC、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、コーンスターチ、アラビアガム、グアーガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチン)、キチン、キトサン、カゼイン、アルピミン、大豆タンパク質溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムポリビニルピロリドン、ポリアミドまたはポリアミドイミンまたはポリアミン樹脂、ポリエチレンオキシド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸コポリマー、コロイド状シリカが含まれ、それらに限定されない。
・粉砕したBCと第3成分との混合は、添加する物質の性質に応じて、室温から80°Cの範囲の温度範囲で行われ得る。第3の成分は、乾燥した形で粉砕BCに加えられ得る。あるいは、粉砕したBCと混合する前に、ストック溶液を調製することもできる。添加される第3の成分の量は、材料の種類などに応じて、必要に応じて当業者によって決定され得、通常、BCの2重量%~1000重量%の範囲であり、好ましくは、BCの50重量%~200重量%(または質量)の範囲の間である。好ましくは、第3の成分は、水溶性多糖またはこれらの物質の混合物である。
・噴霧乾燥、ドラム乾燥、オーブン乾燥、真空乾燥、トンネル乾燥、赤外線乾燥、凍結乾燥を含む、利用可能な乾燥プロセスおよび装置のいずれかによる、第3の成分を含むBC混合物の乾燥。当業者は、他の適切な乾燥プロセスおよび/または方法の組み合わせを選択し得る。以前の文献で観察されたものとは反対に、「乾燥」状態は、残留水がない完全に乾燥したBC配合物であり得る。完全に乾燥したBC配合物の特性は、元の湿潤状態の特性に戻し得る。
・乾燥BC配合物の粉砕。これは、ロールクラッシャー、ロールミル、パンミル、ストレーナー、ハンマーミル、ハンマークラッシャー、ピンディスク、コロイドミル、ディスインテグレーター、ロータリーグラインダー、インペラーアトライター、ジェットミルなどの、当業者にとって既知である設備を使用して達成され得る。BCの湿式粉砕で観察されるように、乾燥粉末材料(以降、粉砕乾燥BC配合物と定義する)の粒子サイズは、最適な粒子サイズまたはその範囲での元の技術的特性(未乾燥で、粗く粉砕された材料の特性)の復元を決定し、そのような復元を達成するために必要である。
【0024】
一実施形態では、湿式粉砕と乾式粉砕との両方が、機能特性を損なうことなく完全な再分散が可能であるように制御されなければならない。したがって、BCの技術的特性の復元は、再分散に関して最適でない条件で達成され得る。実際、粒子サイズが小さいほど再分散は良好であるが、技術的特性には同じことが当てはまらない。
【0025】
本開示の一態様は、低剪断混合を使用して20°Cで水溶液に分散可能なBC、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタン、メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、チロース(tylose)、グリセロール、サッカロース、またはそれらの混合物のリストから選択される追加の(第3の)成分を備える粉末配合物に関する。
【0026】
本主題の一態様は、
粉末状のバクテリアセルロースと、
ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタン、メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、チロース、グリセロール、サッカロース、またはそれらの混合物、のリストから選択される追加成分(または第3の成分)と、
を備える以下を含む粉末配合物を開示しており、
ここで、前記粉末配合物は、低剪断混合で、20°Cで水性媒体に分散可能である。
特に、低剪断混合は、最大で1500rpm、好ましくは最大で1000rpmである。
【0027】
BC粉末配合物の分散性の測定は、様々な方法で実施することができる。本開示では、サンプルは、室温(すなわち、20°Cの範囲内)の水中で、0.5%(m/v)で調製される。このため、マグネチックスターラープレート(Stuart SD162)を使用して、900Rpmで最大10分間、低機械的剪断分散を行う。分散した材料をペトリ皿に広げ、肉眼で観察する。配合物の分散性は次のように分類される。1-サンプルは均質であり、目に見える粒子や凝集体は観察されない。2-サンプルは非常に小さな粒子または凝集体を含有する。3-サンプルはいくつかの大きな粒子または凝集体を含有する。4-水は透明なままで、十分に分離された粒子または凝集体が観察される。
【0028】
一実施形態では、より良い結果を得るために、粉末BC配合物は、最大10分で、好ましくは最大6分で、より好ましくは最大4分で水性媒体に分散され得る。
【0029】
一実施形態では、より良い結果を得るために、粉末BC配合物は、最大2分で、好ましくは最大1分で、水性媒体に分散される。特に、それは少なくとも100μmの粒子を使用し得る。
【0030】
一実施形態では、より良い結果を得るために、粒子は、5~500μmの間、好ましくは80~400μmの間、より好ましくは100~300μmの間のサイズを備え得る。これらの寸法は、食品、またはより具体的には飲料、乳製品ベースの飲料、特にチョコレートミルクとしての使用に特に適している。
【0031】
一実施形態では、より良い結果を得るために、粒子のD50は50~300μmの間であり、好ましくは粒子のD50は80~300μmの間であり、より好ましくは粒子のD50は100~200μmの間である。これらの寸法は、食品、またはより具体的には飲料、乳製品ベースの飲料、特にチョコレートミルクとしての使用に特に適している。
【0032】
より良い結果を得るための実施形態では、粉末BC配合物は、最大2分で水性媒体に分散され、粒子は、5~100μmの、より好ましくは10~60μmのサイズを備える。これらの寸法は、複合補強に特に適している。
【0033】
一実施形態では、より良い結果を得るために、粒子のD50は10~90μmの間であり、好ましくは粒子のD50は20~80μmの間であり、より好ましくは粒子のD50は30~60μmの間である。これらの寸法は、複合補強に特に適している。
【0034】
粒子サイズの測定は、様々な方法で実施され得、本開示では、測定は、機械的ふるい分けによる標準的な粒度分析に基づいて実施された。特に、指定されたふるいによって得られる粒子のサイズは、0.300mmの目開きを有するマットメッシュ:AISI316 No.1/2871/1 No.:1/2871/1、Endecotts, Ltd、目開き212μmおよびEndecotts, Ltd、目開き106μmである。
【0035】
一実施形態では、より良い結果を得るために、BCと追加の成分との間の質量比は、1:5~1:0.2の間で変化し、好ましくは1:2~1:0.5の間で変化する。
【0036】
一実施形態では、より良い結果を得るために、追加の成分(第3の成分)は、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびキサンタン、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物からなるリストから選択され得る。
【0037】
一実施形態では、粉末BC配合物は、アセトバクター、アグロバクテリウム、グルコナセトバクター、アクロモバクター、アルカリゲネス、エアロバクター、アゾトバクター、リゾビウム、サルモネラ、エシェリキア、サルシナ、コマガタエイバクター、またはそれらの組み合わせのリストのバクテリアから得られる。好ましくは、アセトバクター、コマガタエイバクター、グルコナセトバクターまたはそれらの組み合わせである。
【0038】
本開示の別の態様は、
5~70%(wt./v)のバクテリアセルロースを備え、
ここで、BCは束に分散しており、
ここで、バクテリアセルロース束のサイズは、20μm~2mmの間で変化する、湿潤BC配合物に関する。
【0039】
BC束サイズの測定は、さまざまな方法で実行され得る。この開示において、それは、0.01%(w/v)の最終濃度へのBCの水性希釈によって達成された。懸濁液を穏やかな攪拌(100rpmのオービタルシェーカー)下で2時間放置し、次に、カルコフルオルで染色する前に、1分間ボルテックスした。本開示で表される束のサイズは、蛍光顕微鏡によって観察されるようなより長い寸法に関係する。
【0040】
一実施形態では、より良い結果を得るために、BC束のサイズは、20μm~2mmの間で変化し得る。好ましくは、BCの束のサイズは、200μm~1mmの間で変化し得る。これらの寸法は、食品、または特にスムージーやフォーム(foam)としての使用に特に適している。
【0041】
一実施形態では、より良い結果を得るために、BC束のサイズは、20μm~400μmの間で変化し得る。好ましくは、BCの束のサイズは、30μm~200μmの間で変化し得る。これらの寸法は、ナノコンポジットやフィラー補強に特に適している。
【0042】
一実施形態では、湿潤配合物は、0.3~70%(w/v)のBC固形物を備え得る。好ましくは、水分散液は、5~40%(wt./v)のBC固形物を備え得る。より好ましくは、水分散液は、10~30%(wt./v)のBC固形物を備え得る。
【0043】
本開示の別の態様は、増粘剤としての本開示に記載されている粉末BC配合物の使用に関する。特に、粒子は、5~500μm、好ましくは80~400μm、より好ましくは100~300μmのサイズを備え得る。好ましくは、配合物は、食品、より具体的には飲料、乳製品ベースの飲料、さらにより具体的にはチョコレートミルクに使用され得る。
【0044】
本開示の別の態様は、本開示に記載されている粉末BCまたは湿潤BCを強化材として、すなわち充填剤として使用することに関する。好ましくは、粒子が5~100μmのサイズを備える、より好ましくは10~60μmのサイズを備える、粉末BC配合物の使用による。
【0045】
本開示の別の態様は、本開示に記載される、少なくとも有効成分および粉末BC配合物または湿潤BCを備える、医薬組成物または化粧品組成物に関する。
【0046】
本開示の別の態様は、有効量の粉末BC配合物または本開示に記載されている湿潤BCを備える食物繊維または食品に関する。
【0047】
本開示の別の態様は、本開示に記載されている有効量の粉末BC配合物または湿潤BCを備える複合材料に関する。
【0048】
20μm~2mm、好ましくは100μm~1.5mm、より好ましくは200μm~1mmのサイズの、BC束の水中懸濁液を提供するステップと、
20~80°Cの温度で第3の成分を添加するステップと、
少なくとも60%の固形分が得られるまでBC配合物を乾燥させるステップと、
BC配合物を粉砕するステップと、
を含む、乾燥粉末のBC配合物を製造するための方法。
【0049】
一実施形態では、BC束(i)の懸濁液を提供するステップは、湿式粉砕を含む。
【0050】
一実施形態では、BC粉末配合物は、5~500μmの間、好ましくは100~300μmの間のサイズを備える。
【0051】
一実施形態では、粉砕されたBC懸濁液中のBCの濃度は、0.3~10%(wt./v)の間で変化する。
【0052】
一実施形態では、粉砕されたBC懸濁液中のBCの濃度は、0.5~5%(wt./v)の間で変化する。
【0053】
一実施形態では、追加の(第3の)成分は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノース、スクロース、ラクトース、セロビオース、パラチノース、マルトース、ゲンチオビオース、トレハロース、ラムノース、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース、カップリングシュガー、液糖、シクロデキストリン、糖アルコール、ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、ドゥルシット、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカスとビーンガム、タマリンドガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、デンプン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、コーンスターチ、アラビアガム、グアーガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチンまたはそれらの混合物、からなるリストから選択され得る。
【0054】
本発明の別の態様は、
20μm~2mmのサイズの、好ましくは100μm~1.5mm、より好ましくは200μm~1mmの、粉砕されたBC束の水性懸濁液を提供するステップと、
20~80°Cの温度で第3の成分を添加するステップと、
少なくとも60%の固形分が得られるまでBC配合物を乾燥させるステップと、
5~500μmの粒子サイズが得られるまでBC配合物を粉砕するステップと、
を含む、本開示に記載のBC粉末配合物を製造するための方法に関する。
【0055】
一実施形態では、粉砕されたBC懸濁液中のBCの濃度は、0.3~10%(wt./v)の間で変動し得る。好ましくは、粉砕されたバクテリアセルロース懸濁液中のBCの濃度は、0.5~5%(wt./v)の間で変化する。
【0056】
本発明の別の態様は、
粉砕されたBC束の水性懸濁液を提供し、ここで、当該束は、20μm~2mm、好ましくは100μm~1.5mm、より好ましくは200μm~1mmのサイズを含む、ステップと、
最大10~70%、好ましくは15~30%の濃度に水性粉砕BC懸濁液を濃縮するステップと、
を含む、湿潤配合物BCを製造するための方法に関する。
【0057】
一実施形態では、BC懸濁液を均質化するステップは、湿式粉砕を含み得る。
【0058】
範囲が指定されている場合、終端が含まれる。さらに、別段の指示がない限り、または文脈および/または当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈上特に明記されない限り、本発明の異なる実施形態において記載された範囲内の、範囲の下限の単位の10分の1までの、任意の特定の値をとるものと考えられ得ることを理解されたい。別段の指示がない限り、または文脈および/または当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意のサブ範囲をとるものと考えられ得、サブ範囲の終端は、範囲の下限の単位の10分の1と同じ精度で表されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
以下の図は、説明を描写するための好ましい実施形態を提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【
図1】(A)Sammic(サミック)ブレンダー、(B)Comitrol(コミトロール)プロセッサー(2回通過(passages))、高圧ホモジナイザー(C1)1回通過、(C2)2回通過、(C3)6回通過で均質化した後の、バクテリアセルロース水性懸濁液のペトリ皿写真である。ホワイトバースケールは1mmである。
【
図2】(A)サミックブレンダー、(B)コミトロールプロセッサー(2回通過)、高圧ホモジナイザー(C1)1回通過、(C2)2回通過、(C3)6回通過で均質化した後の、バクテリアセルロース水性懸濁液の蛍光顕微鏡写真である。BCはカルコフルオルホワイトで染色され、オリンパスBX51顕微鏡で観察された。スケールは100μmである。
【
図3】ホイップ卵白のオーバーランに対するバクテリアセルロース、植物ナノセルロースおよび親水コロイドの添加の影響を示す図である。
【
図4】サミックブレンダー、コミトロールプロセッサー(6回通過)および高圧ホモジナイザーで均質化した後のバクテリアセルロース水性懸濁液のペトリ皿写真である。サンプルは20%固形分に濃縮され、希釈して水に再分散された。ホワイトバースケールは1mmである。
【
図5】均質化、固形分20%への濃縮、水への分散希釈後のバクテリアセルロース水性懸濁液の蛍光顕微鏡写真である。BCはカルコフルオルホワイトで染色され、オリンパスBX51顕微鏡で観察された。スケールは100μmである。
【
図6】サミックブレンダーで粉砕したバクテリアセルロース(0.1、0.2、0.3%)、キサンタン、またはBioplusを添加して調製した、ホイップした卵白の経時安定性を示す。
【
図7】BCと第3成分との未乾燥混合物の分散性の分類。1-サンプルは均質でよく分散している。2-サンプルには非常に小さなBC凝集体が含まれている。3-サンプルにはいくつかのより大きなBC凝集体が含まれている。
【
図8】(A)サミックブレンダー、(B)コミトロールプロセッサー(2回通過)および高圧ホモジナイザー(E)6回通過後の均質化後の、未乾燥BC:CMC水性懸濁液の蛍光顕微鏡写真である。混合後、BC:CMCを(I)マグネチックスターラーまたは(II)ウルトラタラックスのいずれかで分散させた。サンプルをカルコフルオルホワイトで染色し、オリンパスBX51顕微鏡で観察した。スケールは50μmである。
【
図9】(I)ウルトラタラックスおよび(II)マグネチックスターラーを使用して希釈および分散された0.5%(m/v)BC:CMCサンプルのレオロジープロファイルである。
【
図10】(I)ウルトラタラックス処理および(II)マグネチックスターラーによる攪拌を使用して希釈および分散された0.5%(m/v)BC:CMCサンプルのレオロジープロファイルである。
【
図11】様々な粒子サイズで粉砕された0.5%(m/v)BC:CMCサンプルのレオロジープロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示はまた、特に、本開示の実施形態を使用してさらに説明される。したがって、開示は、提供された説明および図に限定されない。これらは、開示が十分に詳細かつ包括的であるように使用される。また、図面の意図は説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではない。
【0061】
本開示は、粉末および湿潤のBC配合物、製造方法およびそれらの使用に関する。
【0062】
本開示の粉末BC配合物は、とりわけ、医学、食品、化粧品での使用に有用である。
【0063】
本開示は、低剪断混合を使用して、室温で5分以内に水性媒体に分散することが可能である乾燥粉末BC配合物を得られ得る条件に関する。このような配合物は、非乾燥材料の技術的特性、特にコロイド安定剤としての可能性(しかしそれだけではない)を保持する。
【0064】
本開示はまた、未乾燥のBC、その製造方法および使用に関する。
【0065】
一実施形態では、本開示の未乾燥BC(または湿潤BC)は、とりわけ、医学、食品、化粧品での使用に有用である。
【0066】
本開示はまた、迅速かつ低エネルギー分散も可能である湿潤BC懸濁液を得られ得る条件に関し、BCの特定のサイズ範囲への粉砕と、BCの水性懸濁液を乾燥質量で10質量%以上または70質量%未満の最終固形分含有量に濃縮することと、それを再び水溶液に分散させることと、を含む。
【0067】
明確にするために、本開示の説明は、以下の一連のステップに分けられる。
1.BCを湿式粉砕する(「粉砕」BCの生産)ステップと、
2.粉砕BCと第3の成分とを混合するステップと、
3.BC配合物を乾燥させるステップと、
4.BC配合物を粉砕するステップと、
5.ステップ2~4の代わりに、粉砕BCを第3の成分と混合せずに濃縮し得る、ステップ。
【実施例】
【0068】
(例1-バクテリアセルロースの湿式粉砕)
一実施形態では、前述の節で説明した任意の手段によって、0.5%(m/v)~10%固形分(BC)の範囲の量、好ましくは0.5%~5%固形分、好ましくは0.7~1%(w/v)の範囲は、3つの異なる方法で湿式粉砕された。
(A)目視検査で観察されるように、均質なパルプが得られるまでサミック固定速度ブレンダーモデルTR250(Samic,S.L.)を9000Rpmで使用する。
(B)コミトロール(R)プロセッサー、モデル1700(Urschel Laboratories Inc.)を通してBCを2回通過で施すことによる。各通過において、BCの粉砕は、ラビリンスベリカットインペラーと5°の傾斜のカッティングヘッド160を使用して、900Rpmで行われた。
(C)GEA Niro Soavi、モデルPanther NS3006Lを600Barで使用した高圧均質化(HPH)による。均質化されたBCは、高圧ホモジナイザーを1回通過(HPH 1パス)、2回通過(HPH 2パス)、6回通過(HPH 6パス)した後に集められた。HPH処理の前に、ホモジナイザーへの懸濁液の供給を容易にするために、BC懸濁液を方法Aで説明したようにまず粉砕した。
【0069】
BC懸濁液をペトリ皿に広げ、SZ40ズーム実体顕微鏡(オリンパス)で観察した。写真は、ソニーAVC-D5CEカメラとCMA-D5CEアダプターとを使用して、0.67倍~5倍の倍率で撮影した(
図1)。また、BC懸濁液を、カルコフルオルホワイトで染色し、オリンパスBX51顕微鏡で観察した。
【0070】
十分に分散された懸濁液は、多くの産業用途の前提条件である。BC懸濁液は、強い繊維間水素結合およびファンデルワールス引力(濃度に依存する効果)により、水性媒体中で顕著な凝集を示すことが知られている。これらの魅力的な相互作用は、繊維の長いアスペクト比と組み合わせて、BCが水に分散したときに拡張ネットワークの形成を引き起こす。BCが撹拌槽で製造されるか、静的発酵によって製造されその後湿式粉砕されるかに関係なく、糸の球が得られる。これらの非常に不均一な分散液は、濃度と剪断均質化条件に応じて、繊維束、フロック、および数十~数百マイクロメートルに及ぶ空隙で構成される(
図1および
図2)。この例では、ブレードブレンダー(A)から高圧ホモジナイザー(C)まで、剪断応力が増加する3つのBC均質化法が使用された。
【0071】
剪断応力の増加(AからCへ)に伴い、BC非フィブリル化/断片化の増加が起こったことが観察された。サミックブレンダーを使用したBCの均質化では、200μmから1~1.5mmのサイズ内でより大きな繊維凝集体とBC断片が示された。コミトロールプロセッサーとHPHで均質化されたBCでは、ミリメートル断片の量が少ないことが観察され、そのほとんどが200~600μm(コミトロール)、100~200μm(HPH 1パス)、20~100μm(HPH 6パス)の範囲であった。
【0072】
HPHによるパスの数を増やすと、分離が増えるとともに、繊維が短くなる。それらの引力と架橋のために、広範な解凝集にもかかわらず、BC繊維は常に隣接する繊維に相互接続されているように見え、非常に細い繊維と水のみを含む他の空隙領域との3Dネットワークを作成する。この効果は、低BC濃度(0.5%(w/v)程度)でも発生したため、十分に広がった単繊維の安定した分散は達成されなかった。
【0073】
(例2-ホイップ卵白のオーバーランおよびフォームの安定化に対するバクテリアセルロースの影響)
多くの食品は、乳濁液、フォーム、またはホイップ乳液(例:ミルク、クリーム、アイスクリーム、バター、マヨネーズ、ソーセージ肉などの細かく刻んだ肉、ホイップ卵白、ホイップクリームパンなど)である。フォームと乳濁液の特性は、システム内の乳化剤の界面特性に強く影響される。多糖類(加工デンプンなど)およびタンパク質は、しばしばこれらのコロイド系の形成と安定化に重要な役割を果たす。これらの高分子は、液滴の合体に対する耐性を決定する物理化学的およびレオロジー特性(立体障害、静電反発力、粘弾性)との界面を提供する。卵白を泡立てる間、タンパク質は新しく形成された界面に吸着し、変性して気泡を捉え、そのレオロジー特性がフォームの安定性を支配する「ゲル」ネットワークを形成する。
【0074】
これらの乳成分を含まない曝気製品は、気泡壁が薄く、比較的弱く、支持されていないため(油の質量によって支持されている油滴とは対照的に)、特別な懸念と制約をもたらす。これらのシステムには、2つの要件がある。1つ目は、フォームの間隙領域内の液体の物理的安定化である。2つ目は、フォームの壁を強化することである。これは、ガムおよびその他の成分の混合を使用して達成される。微結晶性セルロース(MCC)およびその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルエチルセルロース(MEC)、およびキサンタンなどの他の多糖類ガムが、フォームの安定化に使用されてきた。
【0075】
この実施形態では、ホイップ卵白のオーバーランおよびフォームの安定化に対するBCの効果を評価した。このため、例1で説明したようにサミックブレンダーで粉砕した、異なる供給源由来のBC(K.xylinus株ATCC700178およびHTKFoodCO.Ltd.(ベトナム)の「nata de coco(ナタデココ)」)を使用した(コードサンプル:700178,S;ATCC 700178由来のNata de coco,S.BCは、コミトロールおよび高圧均質化でさらに均質化された(実施例1)(コードサンプル:BCコミトロール、BC HPH 1パス、BC HPH 6パス))。
【0076】
BCの性能を他の親水コロイドおよび植物ナノセルロースと比較するために、他のいくつかのサンプルを並行して使用した:CelluForce NCC、Arbocel B 600、Arbocel BE 600/30(Celluforce Inc.製)および植物ナノセルロースとしてBioplus(バイオプラス)(American Process Inc.製);ハイドロコロイドの例としてキサンタン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン(Sigma製)である。
【0077】
前述のように、BC懸濁液は、強い繊維間水素結合とファンデルワールス引力により、水性媒体中で顕著な凝集を示すことが知られており、この効果は、水性媒体中のBCの濃度が増加するにつれてより顕著になる。BCの濃縮が繊維の分散性と機能特性に影響を与えるかどうかを評価するために、すべてのBCサンプルを20%(wt/v)の固体に濃縮し(コードサンプル:700178,S-PおよびNata de coco,S-P)、希釈し、900Rpmで、2時間マグネチックスターラーで撹拌し、水に再分散した。本実施形態によれば、BC濃縮物は、フィルタープレス、ベルトプレス、遠心分離、真空濾過、または当業者に既知の任意の他の方法などの、任意の既知の手段を用いた脱水によって調製され得る。
【0078】
乾燥卵白(12%wt/v)を水に分散させ、泡立てた(Silvercrestキッチンブレンダーを使用)。ホイップ中に、各BC水性懸濁液、またはその他の植物セルロースまたは親水コロイドサンプルを最終濃度0.1~0.3%(wt/v)になるように添加した。対照はまた、乾燥卵白のみを使用して行われた。ホイップクリームのオーバーランは、対照と比較したホイップクリームの体積増加を測定することによって決定された。
【0079】
図3に示すように、混合物に0.3%(wt/v)を加えると、サミックブレンダーで粉砕したすべてのBCサンプル(700178,SおよびNata de coco,S)で、ホイップクリームのオーバーランが著しく増加した。逆に、Celluforceを除いて、対照に対して6%のわずかな増加で、すべての植物ナノセルロースおよび親水コロイドはホイップクリームのオーバーランを減少させた。BC(HPH)の均質化の程度を上げると、観察されるように、BC凝集体のサイズが小さくなり、空気/液体界面を安定させるBCの能力が低下するため、クリームのオーバーランが減少する。最後に、BCを20%(wt/v)の固形分に圧縮した後、低剪断分散では、希釈して水に再分散したときにBC繊維凝集体を完全に伸ばすことはできない(
図5)。ただし、BC凝集体のサイズに影響がないという条件に限り、BCの圧縮(
図4)はフォームを安定させる能力に影響を与えない。
【0080】
これらの結果は、湿式粉砕によって得られたBCの粒子サイズがタンパク質フォームの安定化に及ぼす影響を明確に示している。
【0081】
また、フォームの安定性は、フラスコの底部の蓄積液体を定性的に評価することにより、室温で経時的に記録された(
図6)。BCをプレスするかどうかに関係なく、結果はまた、最終混合物で0.3%(wt/v)のサミックブレンダーで粉砕したBCが、対照と比較して、テストされた他の材料よりも優れた性能を示し、ホイップ卵白の安定化に最適な結果をもたらすことを示した(液体の蓄積は観察されなかったため)。
【0082】
(例3:バクテリアセルロースを第3の成分と混合する)
一実施形態では、実施例1に記載の3つの異なる粉砕方法のいずれかによって得られたBCを、カルボキシメチルセルロースナトリウム、CMC(90KDa、または250KDaまたは700KDa、Sigma)、キサンタン(Sigma)、メチルセルロース、MC(Sigma)、ヒドロキシエチルセルロース、HEC(Sigma)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Sigma)、HPMC(Sigma)、チロース(Sigma)、グリセロール(Sigma)およびサッカロース(Sigma)のいずれかと混合した。次の表に示すように、BCはCMC:キサンタン、CMC:HEC、およびCMC:HPMCの組み合わせとも混合された。
【0083】
【0084】
これらすべての場合において、BCに添加される成分は最初に水に溶解された。当業者は、物質の種類等に応じて、再分散助剤として第3成分の添加量を、通常BCの2~1,000質量%(wt/v)以内で適切に選択することができる。
【0085】
BC混合物の分散性を評価するために、サンプルを水中から室温でまで0.5%(wt/v)で調製した。このために、2つの分散方法を使用した。
(I)ウルトラタラックスCAT Unidrive 1000Dを15000Rpmで使用し、また分散シャフトCAT20Fをも5分間使用した、高剪断分散混合、
(II)マグネチックスターラープレート(Stuart SD162)を900Rpmで5分間使用した、低機械的剪断分散。
【0086】
対照として、上記の方法A、BおよびC(実施例1)のいずれかによって得られたBCを、同じ最終固形分濃度で使用した。分散した材料をペトリ皿に広げ、肉眼で観察した。また、蛍光顕微鏡を使用して、BC繊維をよりよく視覚化した。例として、次の表、
図7および
図8は、BCとCMCとの混合物に関する主な観察結果をまとめたものである。
【0087】
【0088】
UTを使用して分散したサンプルは完全な分散性を示したが(最小量の繊維束が観察された)、マグネチックスターラーを使用して分散したサンプルは依然として繊維束と凝集体を示した(
図8および表2)。ただし、第3の成分の存在により、凝集体の分散が改善され、より均質なサンプルが観察される(
図8対
図2)。また、ウルトラタラックスで最大60分間さらに均質化しても、BC:CMC混合物の形態やレオロジープロファイル(データには示されず)は変化しない。
【0089】
CMCまたはキサンタンをBCに添加すると、好ましくは1:1の質量比で添加すると、ウルトラタラックスによる高剪断処理後に、分散性で安定した懸濁液が得られることが観察された。対照に関しては、BC単独では、どの分散方法でも分散できなかった。
【0090】
これらの結果から、水溶性アニオン高分子電解質CMCは、BC繊維の分散性を確保し、水性媒体中での安定化を可能にする上で決定的な役割を果たす。CMCの負電荷は、立体障害によるBCファイバーの分散の改善に寄与し得る。また、CMCは水分子に対して強い親和性を有する。非吸着CMCは、CMCおよびBCの周囲で、水性媒体に水和シェルが生成されるため、BC繊維の凝集を防ぐことも可能であり得、したがって、水性媒体での分散性と安定性の向上にも貢献する。
【0091】
BC:CMCサンプルは、レオロジーアッセイによってさらに特徴づけられた(
図9)。このため、応力-ひずみ曲線は、TAインスツルメンツレオメーター、モデル5332-1179、およびディスクジオメトリを使用して取得した。剪断速度と粘度のグラフは、低剪断速度でのさまざまなレオロジープロファイルをより適切に視覚化するために、片対数スケールで描画された。これらのアッセイから、湿式粉砕中に高剪断速度応力を使用すると、サンプルの動粘度が低下すると結論付け得る(AからE、
図9)。前述のように、この効果は、剪断応力の増加に伴う繊維の断片化によって引き起こされる。また、偶然のレオロジープロファイルを示す(B)コミトロールで粉砕されたサンプルを除いて、他のすべてのサンプルは、(I)ウルトラタラックスで分散した後、より高いレオロジープロファイルを示した。これは、ウルトラタラックスで使用される高い剪断速度が、粘度を損なうことなくBC繊維のより良い分散を起こし、実際に改善したことを示している。
【0092】
(実施例4-バクテリアセルロース混合物の乾燥)
一実施形態では、BCを、実施例1(方法A、B、およびC)に記載されているように、3つの異なる方法によって湿式粉砕した。得られたBCを、実施例3に記載されているように、第3の成分と混合した。得られたBC混合物は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、オーブン乾燥、真空乾燥、トンネル乾燥、赤外線乾燥、凍結乾燥を含む、利用可能な乾燥プロセスおよび装置のいずれかによって乾燥させ得る。当業者は、他の適切な乾燥プロセスおよび/または方法の組み合わせを選択し得る。本開示において、BC混合物は、4つの方法によって乾燥された。
(i)ホットプレート上での乾燥、高速乾燥プロセス(数分以内)。これにより、BCサンプルの薄層がAriette CrepesMaker、モデル183のホットプレート(130°C)に広げられ、乾燥される。「乾燥」状態は、完全に乾燥したBC製品(100%TS(全固形分))であり、最終製品に残留水は存在しない。
(ii)4~6時間の範囲での、オーブンでの乾燥、より遅い乾燥プロセス。このために、サンプルをアルミニウムるつぼに入れ、80°Cで乾燥させた。コミトロールプロセッサーで湿式粉砕したBC配合物の分散性に対する残留水分の影響を評価するために、(a)80%(m/m)(80%TS)および(b)100%(m/m)(100%TS)の最終固形分になるまで乾燥を行った。
(iii)同じく速乾性のプロセスであるドラム乾燥も使用された。このために、サンプルは、Tummer Simon Dryers製のラボスケールのクロムメッキ鋳鉄ダブルドラムドライヤー(ドラムサイズ0.3mx0.3m、ロールあたり0.28m2の乾燥表面積(合計0.56m2))に供給された。供給は、11.9Kg/hrの速度で、室温でニップに手動供給(「ジャグ」)された。ニップギャップは0.1mmに設定した。乾燥は、2.5Rpmのロール速度で2~4barの蒸気圧で行われた。薄い製品シートは、約20%の残留水分で0.86Kg/hrの速度で得られた。
(iv)サンプルは噴霧乾燥によっても乾燥させた。このために、1%(m/v)のサンプルを240Kg/hの流量でMOBILEMINORTMR&Dスプレードライヤー(GEA Group AG)に供給した。入口温度と出口温度とをそれぞれ220°Cと115°Cとに設定し、3.5barの圧力ガスノズルを使用した。この場合、サンプルは100%TSまで乾燥された。
【0093】
すべての乾燥材料を粉砕し(ハイパワーハーブグレイングラインダーシリアルミル粉末粉砕機Flour 600Gを使用)、好ましくは300μm未満の範囲の最終粒子サイズになるまで、ふるいにかけた(マットメッシュ:AISI316 NO.1/2871/1 NO:1/2871/1、目開き0.300mm)。前の例のように、乾燥粉末は、以下を使用して、水中に0.5%の最終固形分濃度で分散された。
(i)ウルトラタラックス CAT Unidrive 1000Dを15000Rpmで使用し、分散シャフトCAT20Fを使用して5分間、高剪断分散混合を行う。
(ii)マグネチックスターラープレート(Stuart SD162)を使用して、900 Romで5分間、低機械的剪断分散を行う。
【0094】
レオロジーアッセイは、TAインスツルメンツレオメーター、モデル5332-1179、およびディスクジオメトリを使用して行われた。剪断速度と粘度のグラフは、低剪断速度でのさまざまなレオロジープロファイルをより適切に視覚化するために片対数スケールで描画された。
【0095】
次の表は、乾燥および粉砕されたBC:CMC90KDa混合物の水分散性に関する主な観察結果をまとめたものである。
【0096】
【0097】
図8で観察されたように、低剪断(マグネチックスターラー)下での乾燥および粉砕サンプルの水分散は、少しの繊維の膨らみを示したが、高剪断速度(超音波)では、BCは完全に分散した。BC:CMCの最高粘度プロファイルは、(A)サミックブレンダーで粉砕し、ホットプレート上で100%TSまで乾燥したBCから得られた(
図10)。レオロジープロファイルは、実際には、乾燥していないサンプルのうちのひとつよりも高かった(動粘度が高かった)。残りのサンプルについては、低剪断応力で分散したサンプル(II-マグネチックスターラー)はすべて、未乾燥サンプルと同様のレオロジープロファイルを示した。これらの結果は、室温で5分未満の低剪断応力分散混合の使用が、BC:CMC乾燥配合物のレオロジープロファイルの回復またはわずかな増加さえも可能にするのに十分であることを示唆している。ただし、懸濁液中のBCの小さな凝集体の存在は、見かけの粘度プロファイルの増加に寄与し得る。未乾燥のサンプルとは対照的に、ウルトラタラックスで乾燥したサンプルを分散させると、おそらくいくつかの繊維束と凝集体が減少したために、レオロジープロファイルが減少した(マグネチックスターラーに分散したサンプルと比較して)。ウルトラタラックスで最大60分間さらに均質化しても、サンプルのレオロジープロファイル(データには示されず)は変化しない。
【0098】
他の文献で提案されていることとは逆に、CMCなどの分散助剤をBCに添加すると、同一のレオロジープロファイルを示す80および100%TSを有する乾燥サンプルのように、水分子を完全に除去する程度まで乾燥を行い得る(
図10B)。ドラムドライヤー(80および100%TS)およびスプレードライヤー(100%TS)を使用して乾燥したサンプルについても、同様の観察結果が記録された。
【0099】
HPHなどによるBC懸濁液の過度の湿式粉砕(
図10C、D、E)は、乾燥材料のレオロジー特性に強く影響し、未乾燥のサンプルで以前に観察された効果を確認した。
【0100】
CMCを添加しない乾燥対照も準備した。結果は、使用された均質化、乾燥および分散方法に関係なく、BC単独ではは分散可能ではないことを示した。
【0101】
(実施例5-バクテリアセルロース混合物の分散性およびレオロジープロファイルに対する粒子サイズの影響)
前の例では、乾燥したBC配合物を300μm未満の粒子サイズに粉砕した。ただし、BC混合物の特性の復元における粒子サイズの影響をよりよく理解することが重要である。このために、前の例で得られたBC混合物をさらに粉砕し、最終粒子サイズ200μm未満(Endecotts,Ltd、目開き212μm)および100μm未満(Endecotts,Ltd、目開き106μm)にふるい分けた。また、サンプルは、100<x<300μm、300<x<500μmのサイズ範囲に分割された。前の例と同様に、乾燥粉末を水中で最終固形分濃度0.5%まで分散させ、ペトリ皿に広げ、蛍光顕微鏡を使用し、レオロジープロファイルを介して評価した。
【0102】
例として、表4および
図11は、BC:CMC90KDaの分散性とレオロジー挙動に関する主な観察結果をまとめたものである。結果の証示を簡略化するために、ホットプレート乾燥を使用して得られたもののみを示している。オーブンで乾燥させたサンプルでも同じプロファイルが観察された。
【0103】
【0104】
結果は、BC:CMCの粒子サイズを小さくすると、低剪断速度(マグネチックスターラー)でBC混合物のより速い分散(100μm未満に粉砕された粒子の場合は1分未満)が可能になることを示している。粒子サイズを大きくすると(たとえば、100μm未満から300x<500μmに)、30分間混合した後でも、低剪断混合条件下で完全に分散する能力が低下する。ただし、粒子サイズの減少に伴い、粘度プロファイルの減少も観察された(
図11)。さらに、以下の例が示すように、これはBC混合物の技術的性能に影響を与える。
【0105】
(実施例6-ココア飲料の懸濁安定性に対する乾燥BC配合物の粒子サイズの影響)
一実施形態では、ココア、粉末緑茶、および炭酸カルシウムなどの水不溶性固体粒子の懸濁安定性は、特定の市販飲料の開発にとって重要な側面である。チョコレートミルクの場合、ココア粒子は最初の混合直後に沈殿する傾向がある。
【0106】
この例では、チョコレートミルク飲料中のココア粒子懸濁液の安定化に対する、実施例5に記載のように得られたBC:CMC90KDaの乾燥配合物の粒子サイズの影響を評価した。このために、0.075~0.15%の範囲のさまざまな粒子サイズと最終濃度のBC:CMCと純粋なココア(1.2%)を重み付けした。中程度の脱脂乳、15 mLを各BC:CMC濃度に添加した。混合物をボルテックス(2,800rpm)で、室温で3分間撹拌し、次に75°Cで15秒間低温殺菌した。サンプルを室温で保存し、ココアの沈殿を評価した。さらに、BC:CMCサンプルの機能特性に対するウルトラタラックスの影響を評価した。このために、BCサンプルをウルトラタラックス(CAT Unidrive 1000D、15000Rpmで分散シャフトCAT20Fを使用)で4分間および30分間均質化した後、ミルクに添加した。並行して、キサンタン、カルボキシメチルセルロース、コロイド状植物セルロース:Avicel(RT1133、LM310およびCM2159、FMC Biopolymers)、Novagel(RCN-10およびRCN-15、FMC Biopolymers)、Bioplus Fibrils(食品用途には使用されていないミクロフィブリル化セルロース、American Process Inc.)および植物ナノセルロース:CelluForce NCC、Arbocel B 600、Arbocel BE 600/30(Celluforce Inc.製)を使用して同じテストを行った。すべてのAvicelおよびNovagelセルロースは、仕様書に従って、23,800Rpmで30分間、事前に活性化された。安定剤が添加されていない、対照アッセイも行った。また、CMCが追加された未乾燥BC(例1で説明した方法A、B、C、およびDを使用して粉砕)を使用した対照も実行された。この場合、実施例3に記載されているように、I)低剪断分散混合を使用して、CMCをBCと混合した。チョコレート飲料の安定性は、次の式に従って沈殿の割合を計算することによって評価された。
安定性(%)=(チョコレート入りミルクのmL×100)/(総ミルク量)(1)
【0107】
安定性(%)が高いほど、懸濁液はより安定している。
【0108】
この調査から得られる結果は、0.15%のBC:CMCを使用して、以下の表および
図12に示されている(他の濃度は、同様の観察で試験された)。
【0109】
【0110】
これらの結果は、乾燥した材料を高圧均質化による広範な均質化および100μm未満の粒子サイズに広範に粉砕すると、BC:CMCの安定化効果が低下することを示している。サミックブレンダーで処理された未乾燥のBC:CMCのUTによる処理は、ココア粒子に対する安定化効果を変化させない。ただし、HPH6回通過、乾燥、100μm未満への粉砕などの極端な処理条件下では、UT処理はBC:CMCで達成されるココアの安定性に影響を与える。
【0111】
Celluforceを除いて、すべてのコロイド状植物セルロースとナノセルロースは、ココア粒子に対して非常に低い安定化効果を示した。
【0112】
単一の形態の要素または特徴が特許請求の範囲の明細書で使用される場合、複数の形態も含まれ、特に除外されない限り、その逆も含まれる。例えば、「多糖類(a polysaccharide)」または「多糖類(the polysaccharide)」という用語は、複数形の「多糖類(polysaccharides)」または「多糖類(the polysaccharides)」も含み、逆もまた同様である。請求項において、「a」、「an」、および「the」などの記事は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1つ以上を意味し得る。グループの1つ以上の要素間に「または(or)」を含む請求項または説明は、反対に指示されていない限り、または文脈から明らかでない限り、特定の製品またはプロセスに1つ、複数、またはすべてのグループ要素が存在する、使用されている、または関連している場合に満たされていると見なされる。本開示は、グループの正確に1つの要素が所与の製品またはプロセスに存在する、使用される、またはさもなくば関連する、実施形態を含む。本開示はまた、2つ以上、またはすべてのグループメンバーが所与の製品またはプロセスに存在する、使用される、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。
【0113】
さらに、本開示は、1つ以上の請求項または別の請求項に導入された説明の関連部分からの1つ以上の制限、要素、節、説明用語などが含まれるすべての変形、組み合わせ、および順列を包含することを理解されたい。たとえば、別の請求項に依存する請求項は、同じ基本請求項に依存する他の請求項に見られる1つ以上の制限を含めるように変更され得る。
【0114】
さらに、特許請求の範囲が組成物を記載している場合、別段の指示がない限り、または当業者にとって矛盾または不整合が生じることが明らかでない限り、本明細書に開示される任意の目的のために組成物を使用する方法、および本明細書に開示される任意の製造方法または当業者に既知の他の方法に従って組成物を製造する方法が含まれることが理解されたい。
【0115】
本開示は、記載された実施形態に限定されるとは決して見られるべきではなく、当業者は、その修正に対する多くの可能性を予見するであろう。
【0116】
上記の実施形態は組み合わせ可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【特許文献1】米国特許第4954439号明細書(US4954439A)、Brown Jr, R.M. and C. Lin Fong, Multiribbon Microbial Cellulose. 1990, Board of Regents, The University of Texas System, Austin, Texas: US.[文献18]
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【国際調査報告】