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特表2022-517793負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
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  • 特表-負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池 図1
  • 特表-負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220303BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220303BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20220303BHJP
   C01B 33/113 20060101ALI20220303BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/36 C
C01B33/113 A
C01B33/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541129
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2020128783
(87)【国際公開番号】W WO2021093865
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】201911112677.3
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521078089
【氏名又は名称】ディンユアン ニュー エナジー テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダン,ツィーチアン
(72)【発明者】
【氏名】チュー,リージュエン
(72)【発明者】
【氏名】パン,チュンレイ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエキン
【テーマコード(参考)】
4G072
4G073
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA24
4G072DD03
4G072DD04
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH01
4G072HH22
4G072JJ02
4G072LL02
4G072LL03
4G072MM02
4G072MM23
4G072MM24
4G072MM36
4G072MM37
4G072QQ09
4G072TT01
4G072UU30
4G073BA03
4G073CB03
4G073CB06
4G073GA01
4G073GA02
4G073GA11
4G073UB60
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA09
5H050EA08
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本出願は、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池を提供する。前記負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含み、LiSiの平均粒径が20nm未満である。前記調製方法は、保護雰囲気又は真空下で、シリコン酸素材料に対して熱処理を行い、熱処理した後のシリコン酸素材料を得るステップと、保護雰囲気又は真空下で、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とを混合し、焼結を行い、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含む負極材料を得るステップとを含む。本出願の負極材料は、シリコン酸素材料に対して、リチウムのドーピングを行うことにより、材料の初回クーロン効率を大幅に向上させ、生成したケイ酸リチウムの結晶粒サイズをコントロールすることにより、高い初回クーロン効率を得るとともに、材料のサイクル性能を向上させることができる。ケイ酸リチウムを比較的に小さいサイズの結晶粒に調製することで、リチウムイオンの挿入/脱離反応をスムーズに完成させ、レート性能に優れる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含み、LiSi結晶粒の平均粒径が20nm未満であることを特徴とする負極材料。
【請求項2】
a.前記シリコン酸化物の化学式がSiOであり、ただし、0<x≦1を満たすこと、
b.前記シリコン酸化物及び前記LiSiに前記ナノシリコンが分散されること、
c.前記LiSiが前記ナノシリコン及び/又は前記シリコン酸化物の少なくとも一部を被覆すること、
d.前記ナノシリコンの粒径が0~15nmであり、且つ0nmが含まれないこと、
e.前記負極材料におけるLiSiの質量分率が30wt%~70wt%であること、
f.前記負極材料の平均粒径が1μm~50μmであること、
の条件のa~fの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
a.前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成されること、
b.前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成され、前記炭素被覆層の厚さが10nm~2000nmであること、
c.前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成され、前記負極材料における炭素被覆層の質量分率が1wt%~10wt%であること、
の条件のa~cの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の負極材料。
【請求項4】
保護雰囲気又は真空下で、シリコン酸素材料に対して熱処理を行い、熱処理した後のシリコン酸素材料を得るステップと、
保護雰囲気又は真空下で、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とを混合し、焼結を行い、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含む負極材料を得るステップとを含む
ことを特徴とする負極材料の調製方法。
【請求項5】
a.前記LiSiの平均粒径が20nm未満であること、
b.前記シリコン酸化物の化学式がSiOであり、ただし、0<x≦1を満たすこと、
c.前記シリコン酸化物及び前記LiSiに、前記ナノシリコンが分散されること、
d.前記LiSiが前記ナノシリコン及び/又は前記シリコン酸化物の少なくとも一部を被覆すること、
e.前記ナノシリコンの粒径が0~15nmであり、且つ0nmが含まれないこと、
f.前記負極材料におけるLiSiの質量分率が30wt%~70wt%であること、
g.前記負極材料の平均粒径が1μm~50μmであること、
の条件のa~gの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
a.前記シリコン酸素材料の化学式がSiOであり、ただし、0<y<2を満たすこと、
b.前記シリコン酸素材料が亜酸化ケイ素であること、
c.前記シリコン酸素材料の表面に炭素被覆層が被覆されること、
d.前記シリコン酸素材料の表面に炭素被覆層が被覆され、前記炭素被覆層の厚さが10nm~2000nmであること、
e.前記保護雰囲気が、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
f.前記熱処理の温度が600℃~1000℃であること、
g.前記熱処理の時間が4h~10hであること、
の条件のa~gの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の調製方法。
【請求項7】
a.前記リチウム源が、金属リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記熱処理した後のシリコン酸素材料と前記リチウム源とのモル比が(1.5~7):1であること、
c.前記焼結の温度が300℃~900℃であること、
d.前記焼結の時間が2h~8hであること、
の条件のa~dの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項8】
焼結した後、焼結した製品に対して後処理を行うことをさらに含み、前記後処理が、水洗及び酸洗のうちの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項9】
シリコン酸素材料に対して、気相炭素被覆及び固相炭素被覆のうちの少なくとも1種を含む炭素被覆を行うことをさらに含む
ことを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項10】
a.前記炭素被覆が気相炭素被覆を含み、前記気相炭素被覆の条件が、前記シリコン酸化物を保護雰囲気下で600℃~1000℃まで昇温させ、炭化水素を含む有機炭素源ガスを導入し、0.5h~10h保温して、そして冷却することであり、そのうち、前記炭化水素がメタン、エチレン、アセチレン及びベンゼンのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記炭素被覆が固相炭素被覆を含み、前記固相炭素被覆の条件が、前記シリコン酸化物と、ポリマー、糖類、有機酸及びピッチのうちの少なくとも1種を含む炭素源とを0.5h~2h融合した後、得られた炭素混合物を600℃~1000℃下で2h~6h炭化し、そして冷却することであること
の条件のa~bの少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
保護雰囲気又は真空下で、亜酸化ケイ素に対して、700℃~900℃の温度で、4h~10hの時間で熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得るステップと、
保護雰囲気又は真空下で、(2.5~5):1のモル比で前記熱処理した後の亜酸化ケイ素とリチウム源とを混合し、500℃~800℃の温度で、2h~8hの時間で焼結を行い、焼結した製品に対して、水洗及び/又は酸洗を行い、負極材料を得るステップとを含む
ことを特徴とする請求項4~10のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の負極材料又は請求項4~11のいずれか1項に記載の調製方法で調製できた負極材料を含む
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月14日に中国専利局に提出された、出願番号が2019111126773であり、名称が「負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、エネルギー貯蔵材料の技術分野に属し、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
新たなリチウムイオン二次電池負極材料として、シリコン酸素材料は、容量が高いので、現在の研究のホットスポットとなっている。しかし、従来のグラファイト負極材料に比べて、シリコン酸素材料の初回クーロン効率が比較的に低く、サイクル性能及びレート性能がより悪いので、その商業化応用が制限される。
【0004】
また、シリコン酸素材料SiOは、初回充電時に、SiOにおける酸素原子も電解液におけるLiと不可逆的な反応が発生し、不活性相のLiO及びLiSiOを生成するので、初回不可逆容量の増加がより深刻になってしまい、SiO負極材料の初回クーロン効率の低下を招く。従って、研究者らは、リチウムを事前に導入する方式でこの問題を改善する。
【0005】
従来のSiO及びLiSiを含む負極活性材料により、サイクル性能及び初期充放電特性を向上させることができる。また、従来のLi含有酸化ケイ素粉末は、結晶質のLiSiとLiSiとを含むので、材料のサイクル特性を改善した。さらに、従来のSiO、LiSi及びLiSiを含む負極材料により、良好なサイクル特性及び初期充放電特性を得ることができる。
【0006】
しかし、上記負極材料におけるケイ酸リチウムは、結晶化の過程において、シリコンの結晶粒の成長を促進し、シリコン結晶粒の増大は負極材料のサイクル性能を影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、従来技術の上記問題を鑑みてなされたものであり、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。本出願に係る負極材料は、ケイ酸リチウムの結晶粒サイズをコントロールすることで、高い初回クーロン効率を得ることができるとともに、材料のサイクル性能を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本出願は、以下の技術案を採用する。
【0009】
第1局面において、本出願は、負極材料を提供する。前記負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含み、LiSi結晶粒の平均粒径が20nm未満である。
【0010】
上記の技術案では、結晶質のケイ酸リチウムのサイズを適切な範囲内に収めることによって、材料の初回クーロン効率及びサイクル性能を向上させることができる。また、ケイ酸リチウムは、良好なリチウムイオン輸送特性を有し、またその結晶粒サイズが比較的に小さいので、リチウムイオンの挿入/脱離反応をスムーズに完成させ、レート性能に優れる。
【0011】
実施可能な実施形態において、前記負極材料は、
a.前記シリコン酸化物の化学式がSiOであり、ただし、0<x≦1を満たすこと、
b.前記シリコン酸化物及び前記LiSiに前記ナノシリコンが分散されること、
c.前記LiSiが、前記ナノシリコン及び/又は前記シリコン酸化物の少なくとも一部を被覆すること、
d.前記ナノシリコンの粒径が0~15nmであり、且つ0nmが含まれないこと、
e.前記負極材料におけるLiSiの質量分率が30wt%~70wt%であること、
f.前記負極材料の平均粒径が1μm~50μmであること、
の条件のa~fの少なくとも1つを満たす。
【0012】
実施可能な実施形態において、前記負極材料は、
a.前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成されること、
b.前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成され、前記炭素被覆層の厚さが10nm~2000nmであること、
c.前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成され、前記負極材料における炭素被覆層の質量分率が1wt%~10wt%であること
の条件のa~cの少なくとも1つを満たす。
【0013】
第2局面において、本出願は、負極材料の調製方法を提供する。前記方法は、
保護雰囲気又は真空下で、シリコン酸素材料に対して熱処理を行い、熱処理した後のシリコン酸素材料を得るステップと、
保護雰囲気又は真空下で、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とを混合し、焼結を行い、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含む負極材料を得るステップとを含む。
【0014】
上記の技術案では、シリコン酸素材料に対して熱処理を適切に行うことにより、シリコン酸素材料を不均化し、リチウムのドーピング反応の反応速度をコントロールするため、生成したケイ酸リチウムの結晶粒サイズをコントロールし、材料の初回クーロン効率を大幅に向上させる。これによって、高い初回クーロン効率を得るとともに、負極材料のサイクル性能を向上させる。また、ケイ酸リチウムは、良好なリチウムイオン輸送特性を有し、またその結晶粒サイズが比較的に小さいので、リチウムイオンの挿入/脱離反応をスムーズに完成させ、レート性能に優れる。
【0015】
実施可能な実施形態において、前記負極材料は、
a.前記LiSiの平均粒径が20nm未満であること、
b.前記シリコン酸化物の化学式がSiOであり、ただし、0<x≦1を満たすこと、
c.前記シリコン酸化物及び前記LiSiに、前記ナノシリコンが分散されること、
d.前記ナノシリコンの粒径が0~15nmであり、且つ0nmが含まれないこと、
e.前記負極材料におけるLiSiの質量分率が30wt%~70wt%であること、
f.前記負極材料の平均粒径が1μm~50μmであること
の条件のa~fの少なくとも1つを満たす。
【0016】
実施可能な実施形態において、前記方法は、
a.前記シリコン酸素材料の化学式がSiOであり、ただし、0<y<2を満たすこと、
b.前記シリコン酸素材料が亜酸化ケイ素であること、
c.前記シリコン酸素材料の表面に炭素被覆層が被覆されること、
d.前記シリコン酸素材料の表面に炭素被覆層が被覆され、前記炭素被覆層の厚さが10nm~2000nmであること、
e.前記保護雰囲気が、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
f.前記熱処理の温度が600℃~1000℃であること、
g.前記熱処理の時間が4h~10hであること
の条件のa~gの少なくとも1つを満たす。
【0017】
実施可能な実施形態において、前記方法は、
a.前記リチウム源が、金属リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記熱処理した後のシリコン酸素材料と前記リチウム源とのモル比が(1.5~7):1であること、
c.前記焼結の温度が300℃~900℃であること、
d.前記焼結の時間が2h~8hであること
の条件のa~dの少なくとも1つを満たす。
【0018】
実施可能な実施形態において、前記方法は、焼結した後、焼結した製品に対して後処理を行うことを含み、前記後処理が、水洗及び酸洗のうちの少なくとも1種を含む。
【0019】
実施可能な実施形態において、前記方法は、シリコン酸素材料に対して、気相炭素被覆及び固相炭素被覆のうちの少なくとも1種を含む炭素被覆を行うことをさらに含む。
【0020】
実施可能な実施形態において、前記方法は、
a.前記炭素被覆が気相炭素被覆を含み、前記気相炭素被覆の条件が、前記シリコン酸化物を保護雰囲気下で600℃~1000℃まで昇温させ、炭化水素を含む有機炭素源ガスを導入し、0.5h~10h保温して、そして冷却することであり、そのうち、前記炭化水素がメタン、エチレン、アセチレン及びベンゼンのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記炭素被覆が固相炭素被覆を含み、前記固相炭素被覆の条件が、前記シリコン酸化物と、ポリマー、糖類、有機酸及びピッチのうちの少なくとも1種を含む炭素源とを0.5h~2h融合した後、得られた炭素混合物を600℃~1000℃下で2h~6h炭化し、そして冷却することであること
の条件のa~bの少なくとも1つを満たす。
【0021】
実施可能な実施形態において、前記方法は、
保護雰囲気又は真空下で、亜酸化ケイ素に対して、700℃~900℃の温度で、4h~10hの時間で熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得るステップと、
保護雰囲気又は真空下で、(2.5~5):1のモル比で前記熱処理した後の亜酸化ケイ素とリチウム源とを混合し、500℃~800℃の温度で、2h~8hの時間で焼結を行い、焼結した製品に対して、水洗及び/又は酸洗を行い、負極材料を得るステップとを含む。
【0022】
第3局面において、本出願は、上記負極材料又は上記調製方法で調製できた負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
従来技術に比べて、本出願は、以下の有益な効果を有する。
(1)本出願の負極材料は、亜酸化ケイ素材料に対して、リチウムのドーピングを行うことにより、材料の初回クーロン効率を大幅に向上させ、生成したケイ酸リチウムの結晶粒サイズをコントロールすることにより、高い初回クーロン効率を得るとともに、材料のサイクル性能を向上させることができる。また、ケイ酸リチウムは、良好なリチウムイオン輸送特性を有し、またその結晶粒サイズが比較的に小さいため、リチウムイオンの挿入/脱離反応をスムーズに完成させ、レート性能に優れる。
(2)本出願に係る調製方法は、シリコン酸素材料に対して不均化を適切に行うことにより、リチウムのドーピング反応の反応速度をコントロールすることができるため、生成したケイ酸リチウムの結晶粒サイズがコントロールされて、製品の性能が保証され、高い初回クーロン効率を得るとともに、材料のサイクル性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本出願の実施例による負極材料の調製方法のプロセスフローチャートである。
図2】本出願の実施例1で調製した負極材料のSEM図である。
図3】本出願の実施例2で調製した負極材料のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願をよりよく説明し、本出願の技術案を簡単にするため、以下、本出願をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本出願の簡単な例にすぎず、本出願の保護範囲を表したり限定したりするものではなく、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0026】
以下は、本出願の代表的な実施例であり、限定するものではない。
【0027】
第1局面において、本出願は、負極材料を提供する。前記負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含み、LiSi結晶粒の平均粒径が20nm未満である。
【0028】
本出願の負極材料に、LiSiというケイ酸リチウム相が含まれ、LiSiが水不溶性を有するため、スラリーにガスが生成し、粘度が低く、塗布のときに切れ目がジグザグ状に形成され、極片が乾燥した後にピンホール、気孔が生じるなどのような負極材料の加工安定性の問題を根本的に解決することができる。さらに、負極材料に対して別途、表面処理が不要となるため、表面処理に起因したリチウム電池の容量、初回クーロン効率の低下などの問題を解決することができる。
【0029】
以下は、本出願の選択可能な技術案であり、本出願の技術案を限定するものではない。以下の選択可能な技術案により、本出願の技術的目的及び有益な効果をよりよく達成、実現することができる。
【0030】
本出願に係る負極材料において、LiSi結晶粒の平均粒径は、20nm未満であり、具体的に、19nm、18nm、17nm、16nm、15nm、14nm、13nm、12nm、11nm、10nm、9nm、8nm、6nm又は5nmなどであってもよい。有益な効果として、負極材料は、平均粒径を20nm以下に収めると、優れたサイクル性能及びレート性能を有する。結晶粒が過大になると、負極材料のサイクル性能及びレート性能の劣化を招いてしまう。
【0031】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン酸化物の化学式は、SiOであり、ただし、0<x≦1を満たす。SiOは、具体的に、SiO0.1、SiO0.2、SiO0.3、SiO0.4、SiO0.5、SiO0.6、SiO0.7、SiO0.8、SiO0.9又はSiOなどであってもよい。好ましくは、SiOがSiOである。なお、SiOは、組成が比較的に複雑であり、シリコン単体SiがSiOに均一に分散されてなるものであると理解できる。
【0032】
本出願の選択可能な技術案として、前記負極材料の平均粒径は、1μm~50μm、より具体的に、1μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm又は50μmなどであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。シリコン複合物負極材料の平均粒径を上記範囲内に収めることによって、負極材料のサイクル性能の向上に寄与できる。
【0033】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン酸化物及び前記LiSiに前記ナノシリコンが分散される。より具体的に、前記シリコン酸化物及び前記LiSiに前記ナノシリコンが均一に分散され、又は、ナノシリコンがシリコン酸化物に分散され、LiSiが、少なくとも一部の前記ナノシリコン及び/又はシリコン酸化物を被覆する。
【0034】
任意選択で、前記ナノシリコンの平均粒径は、0~15nmであり、且つ0nmが含まれず、例えば、1nm、3nm、5nm、8nm、10nm、12nm又は15nmなどである。ナノシリコンを上記範囲内に収めることによって、負極材料のサイクル性能、レート性能の向上に寄与できる。
【0035】
任意選択で、前記負極材料におけるLiSiの質量分率は、30wt%~70wt%であり、具体的に、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%又は70wt%などであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。LiSiの質量分率を上記範囲内に収めることによって、負極材料の容量、初回クーロン効率の向上に寄与できる。
【0036】
本出願の選択可能な技術案として、前記負極材料の表面に炭素被覆層がさらに形成される。
【0037】
前記負極材料における炭素被覆層の質量分率は、1wt%~10wt%であり、具体的に、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%又は10wt%などであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。
【0038】
前記炭素被覆層の厚さは、10nm~2000nmであり、より具体的に、10nm、50nm、100nm、300nm、500nm、800nm、1000nm、1500nm、1800nm又は2000nmであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。炭素被覆層が厚すぎると、リチウムイオンの輸送効率が低下し、材料の大きいレートでの充放電に不利であり、負極材料の総合的な性能を低下させる。炭素被覆層が薄すぎると、負極材料の導電性の向上に不利であるとともに材料の体積膨張に対する抑制も弱くなってしまい、長サイクル性能の劣化を招く。
【0039】
第2局面において、本出願は、負極材料の調製方法を提供する。前記方法は、以下のステップを含む。
【0040】
S100は、保護雰囲気又は真空下で、シリコン酸素材料に対して熱処理を行い、熱処理した後のシリコン酸素材料を得る。
【0041】
S200は、保護雰囲気又は真空下で、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とを混合し、焼結を行い、ナノシリコン、シリコン酸化物及び結晶質のLiSiを含む負極材料を得る。
【0042】
本出願の調製方法は、シリコン酸素材料に対して、リチウムのドーピングを行うことにより、負極材料の初回クーロン効率を大幅に向上させ、シリコン酸素材料(例えば、亜酸化ケイ素)材料に対して不均化を適切に行うことにより、リチウムのドーピング反応の反応速度をコントロールすることができるため、生成したケイ酸リチウムの結晶粒サイズがコントロールされ、高い初回クーロン効率を得るとともに、負極材料のサイクル性能を向上させることができる。そして、LiSiは、良好なリチウムイオンの輸送特性を有し、またその結晶粒サイズが比較的に小さいので、リチウムイオンの挿入/脱離反応をスムーズに完成させ、レート性能に優れる。
【0043】
以下は、本案による調製方法を詳細に説明する。
【0044】
S100は、保護雰囲気又は真空下で、シリコン酸素材料に対して熱処理を行い、熱処理した後のシリコン酸素材料を得る。
【0045】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン酸素材料の化学式は、SiOであり、ただし、0<y<2を満たす。SiOは、具体的に、SiO0.1、SiO0.2、SiO0.5、SiO0.7、SiO、SiO1.2、SiO1.4、SiO1.6、SiO1.8又はSiO1.9などであってもよい。なお、SiOは、組成が比較的に複雑であり、無定形シリコン単体SiがSiOに均一に分散されてなるものであると理解できる。高温下で、その熱力学的特性が非常に不安定であり、容易に不均化反応が発生してSi及びSiOを生成する。
【0046】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン酸素材料の平均粒径は1μm~50μmであり、より具体的に、1μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm又は50μmなどであってもよい。シリコン酸素材料を上記範囲内に収めることによって、負極材料のサイクル性能及びレート性能を向上させることができる。
【0047】
本出願の選択可能な技術案として、保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0048】
任意選択で、熱処理の温度は、600℃~1000℃であり、具体的に、600℃、700℃、800℃、900℃又は1000℃などであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。任意選択で、熱処理の温度は、700℃~900℃である。複数回の実験の結果、熱処理の温度が高すぎると、シリコン単結晶の成長速度が速くなり、顆粒のサイズも漸次に大きくなる。熱処理の温度が低すぎると、不均化反応の速度が低下し、シリコン酸素材料の不均化の度合いに影響を与える。
【0049】
任意選択で、前記熱処理の時間は、4h~10hであり、具体的に、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10hなどであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。複数回の実験の結果、上記時間範囲内において、熱処理時間の増加に伴い、ナノシリコンの数量も漸次に増加するが、ナノシリコンの顆粒サイズが大きく変化しないので、シリコン酸素材料が十分に不均化されて十分なナノシリコンが生成され、負極材料の電気化学的性能の向上に寄与できる。
【0050】
本実施例において、熱処理により、シリコン酸素材料を十分に不均化させることができ、即ち、シリコン酸素材料自体に酸化還元反応を発生させ、不均化してナノシリコンを生成することがきるので、負極材料の電気化学的性能の向上に寄与できる。
【0051】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン酸素材料は、亜酸化ケイ素SiOである。
【0052】
本出願の選択可能な技術案として、前記方法は、シリコン酸素材料に対して熱処理を行う前に、シリコン酸素材料に対して炭素被覆を行うことをさらに含み、前記炭素被覆が、気相炭素被覆及び固相炭素被覆のうちの少なくとも1種を含む。
【0053】
なお、前記シリコン酸素材料に対して炭素被覆を行い、炭素層は、比較的に疎なものであり、大量な微細孔通路を有するので、その後のリチウム塩が炭素被覆層の微細孔を経由して、炭素被覆層を透過してシリコン酸素材料の表面で反応できる、このため、得られた負極材料において、炭素被覆層が依然として最外層にある。
【0054】
本出願の選択可能な技術案として、気相炭素被覆を採用する場合、前記シリコン酸素材料を保護雰囲気下で600℃~1000℃まで昇温させ、有機炭素源ガスを導入し、0.5h~10h保温した後、冷却する。
【0055】
一部の実施例において、前記有機炭素源ガスは、炭化水素を含む。前記炭化水素は、メタン、エチレン、アセチレン及びベンゼンのうちの少なくとも1種を含む。
【0056】
本出願の選択可能な技術案として、固相炭素被覆を採用する場合に、前記シリコン酸素材料と炭素源とを0.5h~2h融合した後、得られた炭素混合物を600℃~1000℃下で2h~6h炭化し、そして冷却する。
【0057】
一部の実施例において、前記炭素源は、ポリマー、糖類、有機酸及びピッチのうちの少なくとも1種を含む。
【0058】
S200は、保護雰囲気又は真空下で、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とを混合して、焼結を行い、負極材料を得る。
【0059】
本出願の選択可能な技術案として、前記リチウム源は、金属リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム又は酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0060】
本出願の選択可能な技術案として、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とのモル比は、(1.5~7):1であり、具体的に、1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1又は7:1などであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。複数回の実験の結果、熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とのモル比が高すぎる(即ち、シリコン酸素材料が多すぎる)場合、シリコン酸素材料がLiSiに十分に転換できず、負極材料の加工性能に影響を与え、負極材料の初回クーロン効率が低下してしまう。シリコン酸素材料とリチウム源とのモル比が低すぎる(即ち、リチウム源が多すぎる)場合、理想的な負極材料を得ることができない。任意選択で、前記熱処理した後のシリコン酸素材料とリチウム源とのモル比が(2.5~5):1である。
【0061】
一部の実施形態において、前記混合は、混合設備で行われる。
【0062】
本出願の選択可能な技術案として、前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0063】
任意選択で、前記焼結の温度は、300℃~900℃であり、具体的に、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃又は900℃などであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよく、任意選択で、500℃~800℃である。焼成温度が高すぎる場合、反応が激しくなり、シリコン結晶粒が急激に大きく成長し、材料のサイクル性能に影響を与える。焼成の温度が低すぎる場合、LiSiを生成できなくなってしまう。
【0064】
任意選択で、前記焼結の時間は、2h~8hであり、より具体的に、2h、3h、4h、5h、6h、7h又は8hなどであってもよいが、これらの数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。なお、十分に焼結することにより、シリコン酸化物とリチウム源とを十分に反応させてLiSiを生成することができる。
【0065】
本出願の選択可能な技術案として、前記方法は、焼結した後、焼結した製品に対して、水洗及び酸洗の少なくとも1種を含む後処理を行うことをさらに含む。なお、焼結生成物にLiO、LiSiO、LiSiなどの水溶性リチウム含有化合物が含まれる可能性があり、LiSiが水不溶性を有するため、水洗により焼結生成物における不純物相を除去することができる。同様に、酸洗によってもこれらの不純物相を除去することができ、負極材料の初回クーロン効率及びサイクル安定性を向上させることができる。酸洗を採用する場合に、酸溶液は、例えば、塩酸、硝酸又は硫酸などであってもよい。
【0066】
本出願に係る調製方法の更なる選択可能な技術案として、前記方法は、以下のステップを含む。
【0067】
保護雰囲気又は真空下で、亜酸化ケイ素に対して、700℃~900℃の温度で、4h~10hの時間で熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得る。
【0068】
保護雰囲気又は真空下で、(2.5~5):1のモル比で前記熱処理した後の亜酸化ケイ素とリチウム源とを混合し、500℃~800℃の温度で、2h~8hの時間で焼結を行い、焼結した製品に対して水洗及び/又は酸洗を行い、負極材料を得る。
【0069】
第3局面において、本出願は、上記第1局面に記載のシリコン炭素複合負極材料又は上記第2局面に記載の調製方法で調製できたシリコン炭素複合負極材料を含む。
【0070】
以下、複数の実施例を用いて本発明の実施例をさらに説明する。しかし、本出願の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されず、保護範囲内において適切に変更して実施してもよい。
【0071】
実施例1
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)3wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素500gを取って、アルゴンガス雰囲気下で、700℃下で4hの熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得た。
(2)アルゴンガス雰囲気下で、熱処理した後の亜酸化ケイ素と金属リチウムとを1.5:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(3)アルゴンガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を600℃下で6h焼結し、焼結した製品に対して酸洗を行い、負極材料を得た。
【0072】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.2及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.2及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が6.1nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が18.3nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が67wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0073】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0074】
図2は、本実施例で調製した負極材料のSEM図である。
【0075】
実施例2
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)3wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素500gを取って、アルゴンガス雰囲気下で、800℃下で4hの熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得た。
(2)アルゴンガス雰囲気下で、熱処理した後の亜酸化ケイ素と金属リチウムとを1.5:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(3)アルゴンガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を600℃下で6h焼結し、焼結した製品に対して酸洗を行い、負極材料を得た。
【0076】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.3及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.3及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が7.5nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が10.4nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が56wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0077】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0078】
図3は、本実施例で調製した負極材料のSEM図である。
【0079】
実施例3
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)10wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素300gを取って、窒素ガス雰囲気下で、900℃下で10hの熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得た。
(2)窒素ガス雰囲気下で、熱処理した後の亜酸化ケイ素と炭酸リチウムとを4:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を800℃下で8h焼結し、焼結した製品に対して酸洗を行い、負極材料を得た。
【0080】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.7及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.7及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が3.9nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が11.6nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が37wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0081】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0082】
実施例4
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)2wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素800gを取って、窒素ガス雰囲気下で、800℃下で4hの熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得た。
(2)窒素ガス雰囲気下で、熱処理した後の亜酸化ケイ素と酢酸リチウムとを7:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(3)窒素ガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を500℃下で8h焼結し、焼結した製品に対して水洗を行い、負極材料を得た。
【0083】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.8及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.8及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が2.2nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が10.7nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が33wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0084】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0085】
実施例5
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)3wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素500gを取って、アルゴンガス雰囲気下で、600℃下で4hの熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得た。
(2)アルゴンガス雰囲気下で、熱処理した後の亜酸化ケイ素と金属リチウムとを1.5:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(3)アルゴンガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を300℃下で6h焼結し、焼結した製品に対して酸洗を行い、負極材料を得た。
【0086】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.9及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.9及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が4.6nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が6.8nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が30wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0087】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0088】
実施例6
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)3wt%の炭素被覆層を含むSiO1.5500gを取って、アルゴンガス雰囲気下で、1000℃下で4hの熱処理を行い、熱処理した後のSiO1.5を得た。
(2)アルゴンガス雰囲気下で、熱処理した後の亜酸化ケイ素と金属リチウムとを1.5:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(3)アルゴンガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を900℃下で6h焼結し、焼結した製品に対して酸洗を行い、負極材料を得た。
【0089】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.3及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.3及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が12.3nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が12.2nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が61wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0090】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0091】
実施例7
本実施例において、ステップ(1)の熱処理温度が570℃であることを除き、他の条件及び原料は、実施例1と同じであった。
【0092】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.4及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.4及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が8.7nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が26.5nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が58wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0093】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0094】
実施例8
本実施例において、ステップ(1)の熱処理温度が1025℃であることを除き、他の条件及び原料は、実施例1と同じであった。
【0095】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.3及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.3及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が5.4nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が17.6nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が45wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層がさらに形成された。
【0096】
本実施例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0097】
比較例1
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)3wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素500gを取って、アルゴンガス雰囲気下で、700℃下で4hの熱処理を行い、熱処理した後の亜酸化ケイ素を得た。
【0098】
本実施例で調製した負極材料に熱処理した亜酸化ケイ素が含まれ、ナノシリコン及びLiSiが含まれなかった。
【0099】
比較例2
本実施例は、以下の方法で負極材料を調製した。
(1)3wt%の炭素被覆層を含む亜酸化ケイ素500gを取って、アルゴンガス雰囲気下で、亜酸化ケイ素と金属リチウムとを1.5:1のモル比で混合設備内で均一に混合し、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を得た。
(2)アルゴンガス雰囲気下で、内部にリチウムが含まれるシリコン酸化物を600℃下で6h焼結し、焼結した製品に対して酸洗を行い、負極材料を得た。
【0100】
本実施例で調製した負極材料は、ナノシリコン、シリコン酸化物SiO0.2及び結晶質のLiSiを含む。ナノシリコンがSiO0.2及びLiSiに均一に分散され、ナノシリコンの平均粒径が6.1nmであり、LiSi結晶粒の平均粒径が27.4nmであり、前記負極材料におけるLiSiの質量分率が67wt%であった。前記負極材料の表面に炭素被覆層が形成された。
【0101】
本比較例で調製した負極材料のLiSi結晶粒サイズの測定結果及び性能の特徴づけた結果は、表1に示される。
【0102】
測定方法
LiSiの結晶粒サイズの測定、計算方法
各実施例及び比較例で調製した負極材料粉末に対して、CuKα線を用いたX線回折測定を行い、回折角2θが24.4°~25.0°の範囲にあるLiSiの(111)ピークを分析し、シェラーの式によりLiSiの結晶粒値を算出した。
【0103】
電気化学的性能測定
(1)初回クーロン効率測定
a.リチウムイオン電池の調製
調製した負極材料:導電性カーボンブラック:CMC:SBR=75:15:5:5の比例で銅箔に塗布し、負極片を作製した。金属リチウム片を対極とし、PP/PE膜をセパレータとし、1mol/LのLiPF、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルの混合液(体積比が1:1:1である)を電解液とし、ボタン電池を作製した。
b.LAND NEWWARE 5V/10mA型電池評価装置で電池の電気化学的性能を測定し、電圧が1.5Vであり、電流が0.1Cであり、初回クーロン効率=初回充電比容量/初回放電比容量であった。
【0104】
(2)サイクル性能測定
a.リチウムイオン電池の調製
調製した負極材料とグラファイトとを15:85の比例で混合して活性材料を得、活性材料:導電性カーボンブラック:CMC:SBR=92:4:2:2の比例で銅箔に塗布し、負極片を作製した。金属リチウム片を対極とし、PP/PE膜をセパレータとし、lmol/LのLiPF、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルの混合液(体積比が1:1:1である)を電解液とし、ボタン電池を作製した。
b.LAND NEWWARE 5V/10mA型電池評価装置で電池の電気化学的性能を測定し、電圧が1.5Vであり、電流が0.1Cであり、50サイクル維持率=第50回放電比容量/初回放電比容量であった。
【0105】
(3)レート性能測定
a.リチウムイオン電池の調製
調製した負極材料とグラファイトとを15:85の比例で混合し、活性材料を得、活性材料:導電性カーボンブラック:CMC:SBR=92:4:2:2の比例で銅箔に塗布し、負極片を作製した。金属リチウム片を対極とし、PP膜をセパレータとし、1mol/LのLiPF、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルの混合液(体積比が1:1:1である)を電解液とし、ボタン電池を調製した。
b.LAND NEWWARE 5V/10mA型電池評価装置で電池の電気化学的性能を測定し、電圧が1.5Vであり、電流がそれぞれに0.1Cと3Cであり、3C/0.1C=3C電流の放電比容量/0.1C電流の放電比容量であった。
【0106】
測定結果は、以下の表に示される。
【表1】
【0107】
実施例7の熱処理温度が低すぎたため、LiSiの結晶粒が過大になってしまい、そのサイクル維持率及び容量維持率が劣化した。
【0108】
実施例8の熱処理温度が高すぎたため、シリコン酸素材料の不均化の度合いが不適切になり、材料の容量及び初回クーロン効率が比較的に低かった。
【0109】
比較例1では、亜酸化ケイ素材料に対してリチウムのドーピングを行わなかったため、材料の初回クーロン効率が低下した。
【0110】
比較例2では、亜酸化ケイ素材料に対して熱処理を行わずに、直接にリチウムをドーピングしたため、生成したLiSi結晶粒が過大になってしまい、その初回クーロン効率、サイクル性能及びレート性能が著しく劣化した。
【0111】
上記実施例及び比較例からわかるように、実施例1~6の負極材料は、亜酸化ケイ素材料に対して、リチウムのドーピングを行うことにより、材料の初回クーロン効率を大幅に向上させ、生成したLiSi結晶粒サイズをコントロールすることにより、結晶粒の平均粒径が20nm以下になり、高い初回クーロン効率を得るとともに、材料のサイクル性能を向上させることができる。また、LiSiは、良好なリチウムイオン輸送特性を有し、またその結晶粒サイズが比較的に小さいので、リチウムイオンの挿入/脱離反応をスムーズに完成させ、レート性能に優れる。
【0112】
なお、本出願は、上記の実施例を用いて本出願の詳細な装置及びプロセスを説明したが、上記の詳細な装置及びプロセスに限定されない。つまり、本出願の実施が必ずしも上記の詳細な装置及びプロセスに依存するとは限らない。当業者による、本出願に対する任意の改良、本出願に係る製品の各原料に対する均等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択なども、本出願の保護範囲及び開示範囲に属する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】