(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】LILRB3結合分子とその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220303BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220303BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220303BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220303BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220303BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220303BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220303BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220303BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220303BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220303BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220303BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220303BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220303BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220303BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220303BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61P35/02
A61P37/00
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541292
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 CA2020050042
(87)【国際公開番号】W WO2020146946
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514234997
【氏名又は名称】ユニバーシティ ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブロックス,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,ジャクリーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ,マーク アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA01
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4C086EA16
4C086MA03
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4C086NA14
4C086ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA94
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規の抗LILRB3抗体、かかる抗体を含む医薬組成物、並びに、がん、自己免疫疾患、又はアレルギー性炎症などの疾患の治療のためにかかる抗体及び医薬組成物を使用する治療方法を提供する。本発明はまた、破骨細胞の分化を調節するために使用することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
c)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号6のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
e)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
f)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
g)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
h)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
i)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
j)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
k)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
l)配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、
m)配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸配列とを含む軽鎖可変領域と、を含む抗体。
【請求項2】
a)配列番号27を含むvhCDR1、配列番号28を含むvhCDR2、配列番号29を含むvhCDR3、配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2、及び配列番号32を含むvlCDR3と、
b)配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2、配列番号35を含むvhCDR3、配列番号36を含むvlCDR1、配列番号37を含むvlCDR2、及び配列番号38を含むvlCDR3と、
c)配列番号39を含むvhCDR1、配列番号40を含むvhCDR2、配列番号41を含むvhCDR3、配列番号42を含むvlCDR1、配列番号43を含むvlCDR2、及び配列番号44を含むvlCDR3と、
d)配列番号45を含むvhCDR1、配列番号46を含むvhCDR2、配列番号47を含むvhCDR3、配列番号48を含むvlCDR1、配列番号49を含むvlCDR2、及び配列番号50を含むvlCDR3と、
e)配列番号51を含むvhCDR1、配列番号52を含むvhCDR2、配列番号53を含むvhCDR3、配列番号54を含むvlCDR1、配列番号55を含むvlCDR2、及び配列番号56を含むvlCDR3と、
f)配列番号57を含むvhCDR1、配列番号58を含むvhCDR2、配列番号59を含むvhCDR3、配列番号60を含むvlCDR1、配列番号61を含むvlCDR2、及び配列番号62を含むvlCDR3と、
g)配列番号63を含むvhCDR1、配列番号64を含むvhCDR2、配列番号65を含むvhCDR3、配列番号66を含むvlCDR1、配列番号67を含むvlCDR2、及び配列番号68を含むvlCDR3と、
h)配列番号69を含むvhCDR1、配列番号70を含むvhCDR2、配列番号71を含むvhCDR3、配列番号72を含むvlCDR1、配列番号73を含むvlCDR2、及び配列番号74を含むvlCDR3と、
i)配列番号75を含むvhCDR1、配列番号76を含むvhCDR2、配列番号77を含むvhCDR3、配列番号78を含むvlCDR1、配列番号79を含むvlCDR2、及び配列番号80を含むvlCDR3と、
j)配列番号81を含むvhCDR1、配列番号82を含むvhCDR2、配列番号83を含むvhCDR3、配列番号84を含むvlCDR1、配列番号85を含むvlCDR2、及び配列番号86を含むvlCDR3と、
k)配列番号87を含むvhCDR1、配列番号88を含むvhCDR2、配列番号89を含むvhCDR3、配列番号80を含むvlCDR1、配列番号81を含むvlCDR2、及び配列番号82を含むvlCDR3と、
l)配列番号93を含むvhCDR1、配列番号94を含むvhCDR2、配列番号95を含むvhCDR3、配列番号96を含むvlCDR1、配列番号97を含むvlCDR2、及び配列番号98を含むvlCDR3と、
m)配列番号99を含むvhCDR1、配列番号100を含むvhCDR2、配列番号101を含むvhCDR3、配列番号102を含むvlCDR1、配列番号103を含むvlCDR2、及び配列番号104を含むvlCDR3と、を含む抗体。
【請求項3】
前記抗体が、ヒトLILRB3に結合する、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、ヒトIgGと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する定常領域を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記ヒトIgGが、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択される、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
前記IgGがIgG1である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記IgGがIgG2である、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸組成物。
【請求項9】
第1の核酸が第1の発現ベクターに含まれ、第2の核酸が第2の発現ベクターに含まれる、請求項8に記載の核酸組成物を含む発現ベクター組成物。
【請求項10】
第1の核酸及び第2の核酸が単一の発現ベクターに含まれる、請求項8に記載の核酸組成物を含む発現ベクター組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の発現ベクター組成物を含む、宿主細胞。
【請求項12】
前記抗体が発現する条件下で請求項11に記載の前記宿主細胞を培養すること、及び前記抗体を回収することを含む、抗体を作製する方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体と、医薬的に許容される担体又は希釈剤とを含む組成物。
【請求項14】
対象における免疫応答を調節する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体の有効量、又は請求項13に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体の有効量、又は請求項13に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象のがんを治療する方法。
【請求項16】
前記がんが、LILRB3をアップレギュレートする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、造血がん細胞上に高レベルのLILRB3を有する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、白血病である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、骨髄腫である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、がんを治療するために1つ以上の付加的な治療薬と組み合わされる、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記付加的な治療薬が、他の免疫チェックポイント阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記他の免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体の有効量、又は請求項13に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象の自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項24】
前記抗体が、自己免疫疾患を治療するために1つ以上の付加的な治療薬と組み合わされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体の有効量、又は請求項13に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象のアレルギー性炎症を治療する方法。
【請求項26】
前記抗体が、アレルギー性炎症を治療するために1つ以上の付加的な治療薬と組み合わされる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体の有効量、又は請求項13に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象における破骨細胞の分化を調節する方法。
【請求項28】
前記抗体が、破骨細胞の分化を調節するために1つ以上の付加的な治療薬と組み合わされる、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年1月18日に出願された米国仮出願第62/794,064号の優先権の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2020年1月15日に作成された当該ASCIIコピーは、011506-5022_ST25.txtという名前であり、サイズは72キロバイトである。
【0003】
本開示は、LILRB3、例えば、ヒトLILRB3(hLILRB3)に特異的に結合する抗体、及び、かかるLILRB3結合抗体を含むその医薬組成物に関する。炎症性疾患、自己免疫疾患、及びがんを含む様々な疾患の治療において、ヒトLILRB3を検出するため、又はヒトLILRB3活性を調節するために本発明の抗体を使用する方法もまた、本発明に含まれる。
【背景技術】
【0004】
ヒト白血球Ig様受容体(LILR)ファミリーは、細胞質尾部のチロシンベースのシグナル伝達モチーフの有無によって刺激性シグナル又は抑制性シグナルを伝達する可能性のあるペア受容体のスーパーファミリーに属している。ヒトLILRは、5つの刺激性受容体(LILRA1-5)、6つの抑制性受容体(LILRB1-6)、及び2つの偽遺伝子で構成されている。LILRは、リンパ系細胞や骨髄系細胞などの様々な細胞に発現しており、受容体ごとに発現パターンが異なる。多型性とコピー数多型は、人間の多様性に貢献している。一般に、LILR活性は、自然免疫機能と適応免疫機能の両方のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを引き起こし、様々な細胞型に様々な影響を及ぼす。最近の研究では、いくつかのLILRBファミリーメンバーががん細胞(特に造血がん細胞)によって発現され、がんの発生や再発、並びに、がん幹細胞の活性をサポートする可能性があることがわかっている。
【0005】
ヒトLILRB3(CD85A、ILT5、LIR3、又はHL9とも呼ばれる)には、4つの細胞外免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメイン、及び4つの細胞質免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)が含まれる。LILRB3の発現は、単球、単球由来破骨細胞、顆粒球、樹状細胞、破骨細胞、及び前駆肥満細胞で報告されている。LILRB3のリガンドは同定されておらず、LILRB3の機能についてはほとんど知られていない。まとめると、これらの発見は、LILRB3からのシグナル伝達を調節するのに有用な薬剤の開発が、炎症性疾患、自己免疫疾患、及びがんを含む免疫系の調節不全を伴う疾患において非常に有益であることを示唆している。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、新規の抗LILRB3抗体に関する。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号27を含むvhCDR1、配列番号28を含むvhCDR2、配列番号29を含むvhCDR3、配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2、及び配列番号32を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2、配列番号35を含むvhCDR3、配列番号36を含むvlCDR1、配列番号37を含むvlCDR2、及び配列番号38を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号39を含むvhCDR1、配列番号40を含むvhCDR2、配列番号41を含むvhCDR3、配列番号42を含むvlCDR1、配列番号43を含むvlCDR2、及び配列番号44を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号45を含むvhCDR1、配列番号46を含むvhCDR2、配列番号47を含むvhCDR3、配列番号48を含むvlCDR1、配列番号49を含むvlCDR2、及び配列番号50を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号51を含むvhCDR1、配列番号52を含むvhCDR2、配列番号53を含むvhCDR3、配列番号54を含むvlCDR1、配列番号55を含むvlCDR2、及び配列番号56を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号57を含むvhCDR1、配列番号58を含むvhCDR2、配列番号59を含むvhCDR3、配列番号60を含むvlCDR1、配列番号61を含むvlCDR2、及び配列番号62を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号63を含むvhCDR1、配列番号64を含むvhCDR2、配列番号65を含むvhCDR3、配列番号66を含むvlCDR1、配列番号67を含むvlCDR2、及び配列番号68を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号69を含むvhCDR1、配列番号70を含むvhCDR2、配列番号71を含むvhCDR3、配列番号72を含むvlCDR1、配列番号73を含むvlCDR2、及び配列番号74を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号75を含むvhCDR1、配列番号76を含むvhCDR2、配列番号77を含むvhCDR3、配列番号78を含むvlCDR1、配列番号79を含むvlCDR2、及び配列番号80を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号81を含むvhCDR1、配列番号82を含むvhCDR2、配列番号83を含むvhCDR3、配列番号84を含むvlCDR1、配列番号85を含むvlCDR2、及び配列番号86を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号87を含むvhCDR1、配列番号88を含むvhCDR2、配列番号89を含むvhCDR3、配列番号90を含むvlCDR1、配列番号91を含むvlCDR2、及び配列番号92を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号93を含むvhCDR1、配列番号94を含むvhCDR2、配列番号95を含むvhCDR3、配列番号96を含むvlCDR1、配列番号97を含むvlCDR2、及び配列番号98を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号99を含むvhCDR1、配列番号100を含むvhCDR2、配列番号101を含むvhCDR3、配列番号102を含むvlCDR1、配列番号103を含むvlCDR2、及び配列番号104を含むvlCDR3を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3に結合する。
【0009】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つをコードする核酸組成物に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の核酸組成物のいずれか1つを含む発現ベクター組成物に関する。いくつかの実施形態では、第1の核酸は、第1の発現ベクターに含まれ、第2の核酸は、第2の発現ベクターに含まれる。いくつかの他の実施形態では、第1の核酸及び第2の核酸は、単一の発現ベクターに含まれる。
【0011】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の発現ベクターのいずれか1つを含む宿主細胞に関する。抗LILRB3抗体を作製する方法も提示され、この方法は、抗体が発現する条件下で宿主細胞を培養すること、及び抗体を回収することを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つ、及び医薬的に許容される担体又は希釈剤を含む組成物に関する。
【0013】
対象における免疫応答を調節する方法も記載されており、この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つの有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、対象に、LILRB3アンタゴニストとして機能する抗LILRB3抗体の有効量、又はその医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、対象に、LILRB3アゴニストとして機能する抗LILRB3抗体の有効量、又はその医薬組成物を投与することを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、対象のがんを治療する方法に関するものであり、この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体の有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療されるがんは、対応する非がん性組織と比較して、LILRB3をアップレギュレートする。いくつかの実施形態では、治療される対象は、造血細胞上に高レベルのLILRB3を発現する。治療されるがんは、任意のがんであり得る。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、がんを治療するために1つ以上の付加的な治療薬と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、そのような抗がん治療薬は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブなどの他の免疫チェックポイント阻害剤である。
【0015】
別の態様では、本発明は、対象における自己免疫疾患を治療する方法に関する。この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つの有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、対象における自己免疫疾患を治療する方法に関するものであり、この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体の有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるアレルギー性炎症を治療する方法に関する。この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つの有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、破骨細胞分化を調節する方法に関する。この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つの有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。
【0019】
本発明は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解することができる。図面には以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、フローサイトメトリーを使用した様々な造血サブセットでのLILBR3表面発現を示す。
【
図1B】
図1Bは、フローサイトメトリーを使用した様々な造血サブセットでのLILBR3表面発現を示す。
【
図2】
図2は、第1の混合リンパ球反応(MLR)におけるT細胞の応答性に対するLILRB3抗体又はLILRB3-Fcタンパク質の効果を示す。
【
図3A】
図3は、LILRB3 7C5抗体とのインキュベーション後にT細胞刺激に応答して活性化マーカーの表面発現を調節するPBMCの能力を示す。
【
図3B】
図3は、LILRB3 7C5抗体とのインキュベーション後にT細胞刺激に応答して活性化マーカーの表面発現を調節するPBMCの能力を示す。
【
図4】
図4は、T細胞刺激に応答したPBMCによるサイトカイン産生に対するLILRB3 7C5抗体の効果を示す。
【
図5】
図5は、LILRB3 7C5抗体とインキュベートしたときの刺激されていない血液のサイトカイン放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、新規の抗LILRB3抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、対象における免疫応答を調節するように作用し、例えば、がん又は自己免疫疾患を治療するように作用する。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、アレルギー性炎症を治療するように作用する。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、破骨細胞の分化を調節する。
【0022】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び句を以下に定義する。
【0023】
本明細書で使用される場合、以下の各用語は、このセクションでそれに関連する意味を有する。
【0024】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「エレメント(an element)」は、1つのエレメント又は複数のエレメントを意味する。
【0025】
量や時間的持続時間などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」は、指定された値からの、±20%又は±10%の変動、より好ましくは±5%の変動、さらにより好ましくは±1%の変動、さらにより好ましくは±0.1%の変動であって、かかる変動が開示された方法を実行するのに適切である場合に、これを包含することを意味する。
【0026】
本明細書において「抗原結合ドメイン」又は「ABD」は、ポリペプチド配列の一部として存在する場合に、本明細書で考察される標的抗原と特異的に結合する6つの相補性決定領域(CDR)のセットを意味する。したがって、「抗原結合ドメイン」は、本明細書に概説されるように、標的抗原に結合する。当該技術分野で知られているように、これらのCDRは、一般に、可変重鎖CDRの第1のセット(vhCDR又はVHCDR又はCDR-HC)、及び、可変軽鎖CDRの第2のセット(vlCDR又はVLCDR又はCDR-LC)として存在し、各々が、3つのCDR、すなわち、重鎖についてのvhCDR1、vhCDR2、vhCDR3、及び、軽鎖についてのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む。CDRは、可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインにそれぞれ存在し、一緒になってFv領域を形成する。したがって、場合によっては、抗原結合ドメインの6つのCDRは、可変重鎖及び可変軽鎖によって与えられる。「Fab」フォーマットにおいて、6つのCDRのセットは、2つの異なるポリペプチド配列、可変重鎖ドメイン(vh又はVH;vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3を含む)及び可変軽鎖ドメイン(vl又はVL;vlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3を含む)によって与えられ、vhドメインのC末端が重鎖のCH1ドメインのN末端と結合し、vlドメインのC末端が定常軽鎖ドメインのN末端と結合している(その結果、軽鎖を形成している)。scFv形式では、VHドメイン及びVLドメインは、本明細書に概説されているように、一般的にはリンカーの使用によって、単一のポリペプチド配列に共有結合され、それは、(N末端から開始して)vh-リンカー-vl、又は、vl-リンカー-vhのいずれかであってよく、一般的には、前者が好ましい(使用される形式に応じて、両側に任意選択のドメインリンカーを含む)。当技術分野で理解されているように、CDRは、可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインのそれぞれのフレームワーク領域によって分離されており、ここで、軽可変領域に関して、これらは、FR1-vlCDR1-FR2-vlCDR2-FR3-vlCDR3-FR4であり、重可変領域に関して、これらは、FR1-vhCDR1-FR2-vhCDR2-FR3-vhCDR3-FR4であって、フレームワーク領域は、ヒト生殖系列配列と高い同一性を示している。本発明の抗原結合ドメインとしては、Fab、Fv及びscFvが挙げられる。
【0027】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、例えば、インタクトな免疫グロブリン又は抗原結合部分を含む。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、又はインタクトな抗体の酵素的切断又は化学的切断によって産生し得る。したがって、抗体という用語には、2つの重鎖と2つの軽鎖からなる従来の四量体抗体、並びに、Fv、Fab、scFvなどの抗原結合フラグメントが含まれる。場合によっては、本発明は、本明細書に概説される少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体を提供する。
【0028】
本明細書における「修飾」は、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/若しくは欠失、又はタンパク質に化学的に連結された部分への改変を意味する。例えば、修飾は、タンパク質に結合した改変された炭水化物又はPEG構造であってもよい。本明細書における「アミノ酸修飾」は、ポリペプチド配列中のアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失を意味する。明確にするために、別段の記載がない限り、アミノ酸修飾は、常に、DNAによってコードされるアミノ酸、例えば、DNA及びRNAにコドンを有する20個のアミノ酸に対するものである。
【0029】
本明細書における「アミノ酸置換」又は「置換」は、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸を異なるアミノ酸で置き換えることを意味する。特に、いくつかの実施形態では、置換は、特定の位置で天然に存在しない(生物内で天然に存在しないか、又はいずれの生物中にも存在しないかのいずれか)アミノ酸に対するものである。例えば、置換M252Yは、252位のメチオニンがチロシンで置換されているバリアントポリペプチド、この場合はFcバリアントを指す。明確にするために、核酸コード配列を変化させるが、開始アミノ酸を変化させない(例えば、宿主生物発現レベルを増加させるためにCGG(アルギニンをコードする)をCGA(依然としてアルギニンをコードする)に交換する)ように操作されたタンパク質は、「アミノ酸置換」ではない。すなわち、同じタンパク質をコードする新たな遺伝子の創出にもかかわらず、そのタンパク質が、それが開始される特定の位置に同じアミノ酸を有する場合、それはアミノ酸置換ではない。
【0030】
本明細書で使用される「バリアントタンパク質」又は「タンパク質バリアント」又は「バリアント」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾に基づいて親タンパク質のそれとは異なるタンパク質を意味する。タンパク質バリアントは、タンパク質自体、タンパク質を含む組成物、又はそれをコードするアミノ配列を指す場合がある。好ましくは、タンパク質バリアントは、親タンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば、親と比較して約1~約70個のアミノ酸修飾、及び、好ましくは、約1~約5個のアミノ酸修飾を有する。以下に記載するように、いくつかの実施形態では、親ポリペプチド、例えば、Fc親ポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4からのFc領域などのヒト野生型配列である。本明細書のタンパク質バリアントの配列は、好ましくは、親タンパク質配列と少なくとも約80%の同一性を有し、最も好ましくは、少なくとも約90%の同一性を有し、より好ましくは、少なくとも約95%-98%-99%の同一性を有する。バリアントタンパク質は、バリアントタンパク質それ自体、タンパク質バリアントを含む組成物、又はそれをコードするDNA配列を指す場合がある。
【0031】
したがって、本明細書で使用される「抗体バリアント」又は「バリアント抗体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために親抗体とは異なる抗体を意味し、本明細書で使用される「IgGバリアント」又は「バリアントIgG」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾に基づいて親IgG(ここでも、多くの場合はヒトIgGに由来)とは異なる抗体を意味し、本明細書で使用される「免疫グロブリンバリアント」又は「バリアント免疫グロブリン」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために親免疫グロブリン配列のそれとは異なる免疫グロブリン配列を意味する。本明細書で使用される「Fcバリアント」又は「バリアントFc」とは、Fcドメインにアミノ酸修飾を含むタンパク質を意味する。本発明のFcバリアントは、それらを構成するアミノ酸修飾に従って定義される。したがって、例えば、M252Y又は252Yは、親Fcポリペプチドに対して252位に置換セリンを有するFcバリアントであり、ここで付番はEUインデックスに従う。同様に、M252Y/S254T/T256Eは、親Fcポリペプチドに対して置換M252Y、S254T、及びT256Eを有するFcバリアントを定義する。野生型アミノ酸の同一性は、特定されていなくてもよく、その場合、前述のバリアントは、252Y/254T/256Eと称される。置換が提供される順序は任意であり、換言すると、例えば、252Y/254T/256Eは、254T/252Y/256Eと同一のFcバリアントである、といったことであることが知られている。抗体に関連する本発明で論じられる全ての位置について、特に断りのない限り、アミノ酸位置の番号付けは、可変領域の番号付けについてはKabatに従い、Fc領域を含む定常領域についてはEUインデックスに従う。EUインデックス、又はKabat若しくはEU付番スキームと同様のEUインデックスは、EU抗体の付番を指す(Edelmanら、1969、Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。修飾は、付加、欠失、又は置換であり得る。置換は、天然に存在するアミノ酸、及び、場合によっては、合成アミノ酸を含み得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、本明細書における「タンパク質」は、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びペプチドを含む。ペプチジル基は、天然に存在するアミノ酸及びペプチド結合を含む。
【0033】
本明細書で使用される「Fab」又は「Fab領域」は、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabは、単離におけるこの領域、又は、全長抗体に関連するこの領域、抗体断片、又はFab融合タンパク質を指す場合がある。
本明細書で使用される「Fv」又は「Fv断片」又は「Fv領域」は、単一抗体結合領域(ABD)のVLドメイン及びVHドメインを含むポリペプチドを意味する。当業者には理解されるように、これらは一般に、2つの鎖で構成されているか、又は組み合わさって(一般的には、本明細書で考察されるリンカーによって)、scFvを形成することができる。
【0034】
本明細書で使用される「アミノ酸」及び「アミノ酸同一性」は、DNA及びRNAによってコードされている20種の天然に存在するアミノ酸のうちの1つを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「親ポリペプチド」は、バリアントを生成するように後に修飾される出発ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド、又は天然に存在するポリペプチドのバリアント若しくは改変されたバージョンであってもよい。親ポリペプチドとは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。したがって、本明細書で使用される「親免疫グロブリン」とは、バリアントを産生するように修飾される非修飾免疫グロブリンポリペプチドを意味し、本明細書で使用される「親抗体」とは、バリアント抗体を生成するように修飾される非修飾抗体を意味する。「親抗体」には、以下に概説するように、既知の市販の組換えで産生した抗体が含まれることに留意されたい。
【0036】
本明細書における「重鎖定常領域」は、抗体のCH1-ヒンジ-CH2-CH3部分を意味し、一般的には、ヒトIgG1、ヒトIgG2、又はヒトIgG4に由来する。
【0037】
本明細書で使用される「標的抗原」とは、所与の抗体の可変領域が特異的に結合する分子を意味する。この場合、標的抗原はLILRB3タンパク質である。
【0038】
本明細書で使用される「標的細胞」とは、標的抗原を発現する細胞を意味する。
【0039】
本明細書で使用される「可変領域」は、実質的にVκ(V.カッパ)遺伝子、Vλ(V.ラムダ)遺伝子、及び/又はVH遺伝子のいずれかでコードされ、それぞれが、カッパ免疫グロブリン遺伝子座、ラムダ免疫グロブリン遺伝子座、及び重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成する1つ以上のIgドメインを含む免疫グロブリンの領域を意味する。
【0040】
本明細書における「野生型又はWT」は、対立遺伝子変異を含む、天然に見いだされるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有する。
【0041】
本明細書で使用される「位置」は、タンパク質の配列中の場所を意味する。位置は、順番に付番するか、又は確立されたフォーマット、例えば、抗体付番のためのEUインデックスに従って付番してもよい。
【0042】
本明細書で使用される「残基」は、タンパク質における位置及びその関連するアミノ酸素性を意味する。例えば、アスパラギン297(Asn297又はN297とも称される)は、タンパク質配列中の297位の残基である。
【0043】
本発明の抗体は、通常、組換え体である。「組換え体」は、外来性宿主細胞において組換え核酸技術を用いて抗体が産生されることを意味する。
【0044】
タンパク質配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するために配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入し、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しないということを経た後の、特定の(親)配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公然に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当技術分野の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。1つの特定のプログラムは、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2016/0244525号明細書の段落[0279]から[0280]に概説されているALIGN-2プログラムである。核酸配列の別の近似アラインメントは、Smith and Waterman、Advances in Applied Mathematics、2:482-489(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff、Atlas of Protein Sequences and Structure、MO Dayhoff ed.、5suppl.3:353-358、National Biomedical Research Foundation、Washington、DC、USAによって開発され、Gribskov、Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763(1986)によって正規化されたスコアリングマトリックスを使用することによって、アミノ酸配列に適用することができる。
【0045】
シーケンスのパーセント同一性を決定するためのこのアルゴリズムの実装例は、「BestFit」ユーティリティアプリケーションのGenetics Computer Group(ウィスコンシン州マディソン)によって提供されている。このメソッドのデフォルトパラメータは、the Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual、Version 8(1995)(Genetics Computer Group(ウィスコンシン州マディソン)から入手可能)に記載されている。本発明の文脈においてパーセント同一性を確立する別の方法は、エジンバラ大学に著作権があり、John F.Collins及びShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(カリフォルニア州マウンテンビュー)によって配布されたプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、Smith-Watermanアルゴリズムを使用し、スコアリングテーブルにデフォルトパラメータを使用することができる(例えば、ギャップオープンペナルティ12、ギャップエクステンションペナルティ1、ギャップ6)。生成されたデータから、「一致」値は、「シーケンスID」を反映する。配列間のパーセント同一性又は類似性を計算するための他の適切なプログラムは、当技術分野で一般に知られており、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータで使用されるBLASTである。例えば、BLASTN及びBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを用いて使用することができる。filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50 sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non-redundant,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR.これらのプログラムの詳細は、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiの前にhttp://を置くことで検索されるインターネットアドレスで見つけることができる。
【0046】
本発明のアミノ酸配列(「本発明の配列」)と親アミノ酸配列との間の同一性の程度は、「本発明の配列」の長さ又は親配列の長さのうちの長さが短い方で割った、2つの配列のアライメントにおける正確な一致の数として計算される。結果はパーセント同一性で表される。
【0047】
いくつかの実施形態では、2つ以上のアミノ酸配列は少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%同一である。いくつかの実施形態では、2つ以上のアミノ酸配列は少なくとも95%、97%、98%、99%、さらには100%同一である。
【0048】
特定の抗原又はエピトープへの「特異的結合」、あるいは、特定の抗原又はエピトープ「~に特異的に結合する」若しくは「~に対して特異的である」とは、測定し得るほどに非特異的相互作用とは異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に、結合活性を持たない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することによって、測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子との競合によって決定することができる。
【0049】
本明細書で使用される「カソック」又は「Ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すためのものであり、一方で、本明細書で使用される「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すためのものである。本明細書で使用される「KD」という用語は、KdとKaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される、解離定数を指すためのものである。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、抗体のKDを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴の使用によるものであり、例えば、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムの使用によるものである。いくつかの実施形態では、抗体のKDは、バイオレイヤー干渉法によって決定される。いくつかの実施形態では、KD値は、固定化された状態で測定される。他の実施形態では、KD値は、固定化された抗体(例えば、親マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体バリアント)で測定される。特定の実施形態では、KD値は、二価結合モードで測定される。他の実施形態では、KD値は一価結合モードで測定される。
【0050】
「疾患」には、動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合には動物の健康が悪化し続ける、ヒトを含む動物の健康状態が含まれる。
【0051】
その一方で、人間を含む動物の「障害」には、動物が恒常性を維持できるが、動物の健康状態がその障害がないときのそれよりもより好ましくない健康状態が含まれる。治療せずに放置しても、障害が必ずしも動物の健康状態をさらに低下させるわけではない。
【0052】
「治療」、「治療すること」、「治療する」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。この効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防する、又は、疾患若しくはその症状の可能性を低減するという点で予防的であり得、かつ/又は、疾患及び/若しくは疾患に起因する副作用を部分的若しくは完全に治癒するという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトの疾患のあらゆる治療を包含し、(a)疾患にかかりやすい可能性があるが、まだ疾患を有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を抑制すること、すなわち、疾患の発達又は進行を阻止すること、及び(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こし、かつ/又は、1つ以上の疾患症状を軽減すること、を含む。「治療」はまた、たとえ疾患又は症状がない場合であっても、薬理学的効果を提供するために薬剤を送達することを包含することを意味する。例えば、「治療」は、病状がない場合、例えば、ワクチンの場合に、免疫応答を誘発するか、又は免疫を与えることができる組成物を送達することを包含する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、マウス及びハムスターなどのネズミ目の哺乳動物、及び、ウサギなどのウザギ目の哺乳動物を含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ネコ科の動物(猫)及びイヌ科の動物(犬)を含む食肉目からのものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ウシ(ウシ)及びブタ(ブタ)を含む偶蹄目、又は馬(馬)を含む偶蹄目からのものである。哺乳動物は、霊長類、セボイド、若しくはシモイド(猿)の目、又は類人猿(ヒト及び類人猿)の目であることが最も好ましい。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はカニクイザルである。
【0054】
本明細書で使用される「退行」という用語、及びそれに由来する単語は、必ずしも100%又は完全な退行を意味するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する様々な程度の退行が存在する。この点で、開示された方法は、哺乳動物におけるがんの任意の量、任意のレベルの退行を提供することができる。さらに、本発明の方法によって提供される退行は、疾患(例えば、がん)の1つ以上の状態又は症状の退行を含み得る。また、本明細書において、「退行」は、疾患の発症を遅らせること、症状の発症を遅らせること、及び/又はその状態の発症を遅らせることを含む場合がある。進行性の疾患及び障害に関して、「退行」は、疾患又は障害の進行を遅らせること、疾患又は障害の症状の進行を遅らせること、及び/又は、その状態の進行を遅らせることを含む場合がある。
【0055】
組成物の「有効量」又は「治療有効量」には、組成物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な組成物の量が含まれる。送達ビヒクルの「有効量」は、組成物を効果的に結合又は送達するのに十分な量を含む。
【0056】
「個人」又は「宿主」又は「対象」又は「患者」とは、診断、治療、又は治療が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを意味する。他の対象には、カニクイザル、牛、犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、馬などが含まれる場合がある。
【0057】
本明細書で使用される「と組み合わせて」という用語は、例えば、第1の治療が第2の治療の実施の全過程の間に実施される場合の使用、及び、例えば、第1の治療の実施が第2の治療の実施の前に開始され、第1の治療の実施が第2の治療の実施が終了する前に終了する場合、第2の治療の実施が第1の治療の実施の前に開始し、第2の治療の実施が第1の治療の実施が終了する前に終了する場合、第1の治療の実施が第2の治療の実施が開始する前に開始し、第2の治療の実施が第1の治療の実施が終了する前に終了する場合、第2の治療の実施が第1の治療の実施が開始する前に開始し、第1の治療の実施が第2の治療の実施が終了する前に終了する場合のような、第1の治療が第2の治療の実施と重複する期間に実施される場合の使用を指す。したがって、「組み合わせて」は、2つ以上の治療法の実施を含むレジメンを指す場合もある。本明細書で使用される「と組み合わせて」はまた、同じ又は異なる製剤で、同じ又は異なる経路で、同じ又は異なる剤形タイプで実施され得る2つ以上の治療法の実施を指す。
【0058】
本明細書で使用される「アレルギー性炎症」という用語は、少なくとも1つの特定のアレルゲンに対する局所的又は全体的な過敏性反応を指す。「アレルギー性炎症」の症状は、影響と強度が大きく異なる場合がある。
【0059】
「コードする」という用語は、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列が、定義されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)又は定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマー及び高分子を合成するためのテンプレートとして機能する固有の特性、及び、それらから生じる生物学的特性を含む。したがって、例えば、ある遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって、細胞又は他の生物系においてタンパク質が生成される場合、その遺伝子はタンパク質をコードしている。そのヌクレオチド配列がmRNA配列のものと同一であり、通常は配列表に示されているコード鎖、及び、遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖はいずれも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の生成物をコードしていると言うことができる。
【0060】
「核酸」という用語は、一本鎖、二本鎖、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む任意の形態の2つ以上のヌクレオチドを有するRNA分子又はDNA分子を含む。「ヌクレオチド配列」という用語は、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの配列、又は、核酸の一本鎖形態のポリヌクレオチドの配列を含む。
【0061】
「核酸構築物」とは、自然界では一緒に見られない1つ以上の機能単位を含むように構築された核酸配列を意味する。例としては、環状、線状、二本鎖、染色体外DNA分子(プラスミド)、コスミド(ラムダファージからのCOS配列を含むプラスミド)、非天然核酸配列を含むウイルスゲノムなどが挙げられる。
【0062】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、別のポリヌクレオチドと機能的関係にあるポリヌクレオチドを含み、例えば、核酸部分の中に2つのポリヌクレオチドのうちの少なくとも一方が、他方に対して、それによって特徴づけられる生理学的効果を発揮することができるように配置された2つのポリヌクレオチドを含む一本鎖又は二本鎖核酸部分を含む。例として、遺伝子のコード領域に作動可能に連結されたプロモーターは、コード領域の転写を促進することができる。作動可能な連結を示すときに指定される順序は重要ではない。例えば、「プロモーターは、ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている」と「ヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結されている」という語句は、本明細書では互換的に使用され、同意義であると見なされる。場合によっては、所望のタンパク質をコードする核酸がプロモーター/調節配列をさらに含む場合、プロモーター/調節配列は、細胞において所望のタンパク質の発現を駆動するように、所望のタンパク質コード配列の5’末端に配置される。
【0063】
本明細書で互換的に使用される「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、及び「核酸分子」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、若しくは多本鎖のDNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいは、プリン塩基及びピリミジン塩基若しくは他の天然の塩基、化学的若しくは生化学的に修飾された塩基、非天然の塩基、又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドの骨格は、糖及びリン酸基(通常、RNA又はDNAに見られる)、又は、修飾若しくは置換された糖若しくはリン酸基を含む場合がある。
【0064】
本明細書で使用される「破骨細胞」という用語は、造血幹細胞に由来する豊富な好酸性細胞質を有する大きな多核細胞であり、骨組織の吸収及び除去において機能する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、その組成物をインビボ又はエクスビボでの診断又は治療用途に特に適したものにする活性剤と不活性又は活性の担体との組み合わせを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(例えば、油/水又は水/油エマルジョンなど)、及び様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを指す。上記組成物はまた、安定剤及び防腐剤を含むことができる。担体、安定剤及びアジュバントの例については、例えば、Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences、15th Ed.、Mack Publ Co.、Easton、PA[1975]を参照されたい。
【0067】
説明全体を通して、組成物が特定の成分を有する、若しくはそれを含む、若しくはそれを包含すると記載される場合、又は、プロセス及び方法が特定のステップを有する、若しくはそれを含む、若しくはそれを包含すると記載される場合、記載された構成要素から本質的になるか、又はそれからなる本発明の組成物が存在すること、及び、記載された処理ステップから本質的になるか、又はそれからなる本発明によるプロセス及び方法が存在することがさらに企図される。
【0068】
本発明の様々な態様は、以下のセクションに記載されている。しかしながら、ある特定のセクションに記載されている本発明の態様は、どの特定のセクションにも限定されるべきではない。
【0069】
I.抗体
本開示は、新規の抗LILRB3抗体を提供する。かかる抗体は、ヒトLILRB3に結合し、及び/又はその機能特性に影響を及ぼす。表1は、LILRB3抗体である重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のペプチド配列を表1に示すように組み合わせて列挙している。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、Fabフォーマットで配置される。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が一緒に結びついてscFvを形成する。
【表1】
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号1と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号2と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号27を含むvhCDR1、配列番号28を含むvhCDR2、配列番号29を含むvhCDR3、配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2、及び配列番号32を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号3と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2、配列番号35を含むvhCDR3、配列番号36を含むvlCDR1、配列番号37を含むvlCDR2、及び配列番号38を含むvlCDR3を含む。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号5と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号6と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号39を含むvhCDR1、配列番号40を含むvhCDR2、配列番号41を含むvhCDR3、配列番号42を含むvlCDR1、配列番号43を含むvlCDR2、及び配列番号44を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号7と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号8と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号45を含むvhCDR1、配列番号46を含むvhCDR2、配列番号47を含むvhCDR3、配列番号48を含むvlCDR1、配列番号49を含むvlCDR2、及び配列番号50を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号9と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号10と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号51を含むvhCDR1、配列番号52を含むvhCDR2、配列番号53を含むvhCDR3、配列番号54を含むvlCDR1、配列番号55を含むvlCDR2、及び配列番号56を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号11と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号12と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号57を含むvhCDR1、配列番号58を含むvhCDR2、配列番号59を含むvhCDR3、配列番号60を含むvlCDR1、配列番号61を含むvlCDR2、及び配列番号62を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号13と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号14と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号63を含むvhCDR1、配列番号64を含むvhCDR2、配列番号65を含むvhCDR3、配列番号66を含むvlCDR1、配列番号67を含むvlCDR2、及び配列番号68を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号15と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号16と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号69を含むvhCDR1、配列番号70を含むvhCDR2、配列番号71を含むvhCDR3、配列番号72を含むvlCDR1、配列番号73を含むvlCDR2、及び配列番号74を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号17と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号18と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号75を含むvhCDR1、配列番号76を含むvhCDR2、配列番号77を含むvhCDR3、配列番号78を含むvlCDR1、配列番号79を含むvlCDR2、及び配列番号80を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号19と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号20と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号81を含むvhCDR1、配列番号82を含むvhCDR2、配列番号83を含むvhCDR3、配列番号84を含むvlCDR1、配列番号85を含むvlCDR2、及び配列番号86を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号21と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号22と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号87を含むvhCDR1、配列番号88を含むvhCDR2、配列番号89を含むvhCDR3、配列番号90を含むvlCDR1、配列番号91を含むvlCDR2、及び配列番号92を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号23と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号24と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号93を含むvhCDR1、配列番号94を含むvhCDR2、配列番号95を含むvhCDR3、配列番号96を含むvlCDR1、配列番号97を含むvlCDR2、及び配列番号98を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示における抗LILRB3抗体は、配列番号25と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号26と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、配列番号99を含むvhCDR1、配列番号100を含むvhCDR2、配列番号101を含むvhCDR3、配列番号102を含むvlCDR1、配列番号103を含むvlCDR2、及び配列番号104を含むvlCDR3を含む。いくつかの実施形態では、かかる6つのCDRのうちの1つ以上は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾を有する。さらなる実施形態では、単一のCDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含み、改変された抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3への結合を保持する。
【0096】
本明細書に記載されている重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、及び/又はCDRの配列バリアントに加えて、重可変領域及び/又は軽可変領域のフレームワーク領域に変更を加えることができる。いくつかの実施形態では、フレームワーク領域(例えば、CDRを除く)におけるバリアントは、生殖系列配列に対して少なくとも約80、85、90又は95%の同一性を保持する。バリアントは、軽鎖V-GENE、軽鎖J-GENE、重鎖V-GENE、重鎖J-GENE、及び重鎖D-GENEの対立遺伝子のいずれか1つに対して少なくとも約80、85、90、又は95%の同一性を保持するように作製することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、変異は、6つのCDRを不変に保ちながら、生殖系列遺伝子配列に対して少なくとも80、85、90又は95%の同一性を保持するフレームワーク領域においてなされる。
【0098】
いくつかの実施形態では、変異は、生殖系列遺伝子配列に対して少なくとも80、85、90又は95%の同一性を保持する両方のフレームワーク領域においてなされる。CDRは、アミノ酸修飾を有していてもよい(例えば、CDRのセット中に、1、2、3、4又は5個のアミノ酸修飾(すなわち、CDRは、6つのCDRのセット中の総変化数が、6アミノ酸修飾未満である限り、修飾されてもよく、CDRの任意の組み合わせが変更され、例えば、vlCDR1中に1つの変更が存在する場合があり、vhCDR2中に2つの変更が存在する場合があり、vhCDR3中に変更が存在しない場合がある、等)。
【0099】
本明細書に記載のそれからCDRのアミノ酸配列及び/又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を選択し、必要に応じて、それらを抗体の重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域及び/又は定常領域のアミノ酸配列と組み合わせることによって、当技術分野の当業者は、本発明に従って抗LILRB3抗体を設計することができる。本発明に記載の抗体のフレームワーク領域及び/又は定常領域(Fcドメイン)は、ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ウマ又はサルなどの任意の種の抗体に由来し得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、定常領域は、ヒトに由来し、IgG、IgA、IgM、IgE、及びIgDのそれのサブタイプ又はそのバリアントに由来する重鎖定常領域、及び、カッパ又はラムダのサブタイプ又はそのバリアントに由来する軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むヒトIgGに由来する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の定常領域と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一である。いくつかの他の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ウマ又はサルなどの別の哺乳動物由来の抗体定常領域と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一である。いくつかの実施形態では、抗体定常領域は、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及び任意選択でCH1ドメインを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、異なる種に由来する混合物に由来する場合があり、例えば、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体を形成する。一般に、「キメラ抗体」と「ヒト化抗体」はいずれも、2つ以上の種に由来する領域を組み合わせた抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、伝統的に、マウス(又は、場合によってはラット)由来の可変領域(複数可)及びヒト由来の定常領域(複数可)を含む。「ヒト化抗体」は、一般に、可変ドメインフレームワーク領域がヒト抗体に見出される配列でスワップされた、非ヒト抗体を指す。一般に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、又はそのCDRの中を除いてかかる抗体と同一である。非ヒト生物を起源とする核酸によって一部又は全てがコードされるCDRを、ヒト抗体可変領域のベータシートフレームワークにグラフティングして、その特異性がグラフティングされたCDRによって決定される抗体を作製する。かかる抗体の作製は、例えば、国際公開第92/11018号、Jones、1986、Nature 321:522-525、Verhoeyenら、1988、Science 239:1534-1536に記載され、その全てが完全に参照により組み込まれる。選択されたアクセプターフレームワーク残基の、対応するドナー残基への「逆突然変異」が、最初のグラフト構築物において失われた親和性を回復するためにしばしば必要とされる(米国特許第5530101号明細書、米国特許第5585089号明細書、米国特許第5693761号明細書、米国特許第5693762号明細書、米国特許第6180370号明細書、米国特許第5859205号明細書、米国特許第5821337号明細書、米国特許第6054297号明細書、米国特許第6407213号明細書、全てが完全に参照により組み込まれる)。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分を含み、例えば、典型的には、ヒトFc領域を含む。ヒト化抗体はまた、例えば、参照により全体が組み込まれるRoqueら、2004、Biotechnol Prog.20:639-654に記載されている遺伝子操作された免疫系を有するマウスを使用して産生することができる。非ヒト抗体をヒト化して再形成するための様々な技法及び方法は、当該技術分野で周知である(Tsurushita&Vasquez、2004、Humanization of Monoclonal Antibodies、Molecular Biology of B Cells、533-545、Elsevier Science(USA)、及びそこで引用される参考文献(その全て参照により完全に組み込まれる)を参照されたい)。ヒト化方法としては、Jonesら、1986、Nature 321:522-525;Riechmannら、1988;Nature 332:323-329;Verhoeyenら、1988、Science、239:1534-1536;Queenら、1989、Proc Natl Acad Sci、USA 86:10029-33;Heら、1998、J.160:1029-1035;Carterら、1992、Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-9、Prestaら、1997、Cancer Res.57(20):4593-9、Gormanら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4181-4185;O’Connorら、1998,Protein Eng 11:321-8(これら全てが参照により完全に組み込まれる)に記載される方法が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト化、又は非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低下させる他の方法としては、例えば、参照によりその全体が組み込まれるRoguskaら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:969-973に記載される表面再構成法を挙げることができる。他のヒト化方法は、CDRの部分のみをグラフティングすることを含み得、これには、Tanら、2002、J.Immunol.169:1119-1125、及び、De Pascalisら、2002、J.Immunol.169:3076-3084(その全てが参照により完全に取り込まれる)に記載される方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、特定のヒト生殖系列重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域、及び/又は、特定のヒト生殖系列軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。かかるヒト抗体は、ヒト生殖系列配列と比較して、例えば、天然に生じる体細胞突然変異、又は部位特異的突然変異の意図的な導入に起因するアミノ酸の相違を含み得る。しかしながら、ヒト化抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも80%同一であり、他の種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖系列配列)と比較したときに、その抗体をヒト配列に由来するものとして識別するアミノ酸残基を含む。ある特定の場合には、ヒト化抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において、少なくとも95、96、97、98、若しくは99%同一であり得、又は、少なくとも96%、97%、98%、若しくは99%同一であり得る。典型的には、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト化抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10~20アミノ酸以下の相違しか示さない。ある特定の場合には、ヒト化抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とは5アミノ酸以下、又はさらには4、3、2、若しくは1アミノ酸以下の相違しか示さない場合がある。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、当技術分野で知られているように、ヒト化され、親和性成熟している。構造に基づく方法が、例えば、米国特許第7,657,380号明細書に記載されているように、ヒト化及び親和性成熟のために用いられ得る。選択に基づく方法を用いて、抗体可変領域をヒト化及び/又は親和性成熟してもよく、当該方法としては、Wuら、1999、J.Mol.Biol.294:151-162;Bacaら、1997、J.Biol.Chem.272(16):10678-10684;Rosokら、1996、J.Biol.Chem.271(37):22611-22618;Raderら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8910-8915;Kraussら、2003年、Protein Engineering 16(10):753-759(これら全ては参照により完全に本明細書に組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
II.抗体の特徴
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗LILRB3抗体は、ヒトLILRB3に結合する。いくつかの実施形態では、ヒトLILRB3への抗LILBR3抗体の結合は、実施例1に記載される例示的なアッセイなどのようなフローサイトメトリーによって測定される。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、ヒト対象に投与された場合、低い免疫原性を示す。これらの抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、又はヒトIgG3に由来するFcドメインを含む場合がある。いくつかの実施形態では、これらの抗体は、ヒト免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域を使用してヒト化される。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、T細胞の応答性に影響を与える。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、実施例3に記載される例示的なアッセイなどの異なるタイプのT細胞刺激に応答して、活性化マーカーの表面発現を調節する。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、実施例4に記載される例示的なアッセイなどのT細胞刺激に応答して、PBMCによるサイトカイン産生を調節する。
【0107】
いくつかの実施形態では、記載されている抗LILRB3抗体は、LILRB3アゴニストとして作用する。結果として、かかる抗LILRB3抗体は、LILRB3の活性を阻害する。
【0108】
他のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LIRB3抗体は、LILRB3アゴニストとして作用する。結果として、かかる抗LILRB3抗体は、LILRB3の活性を促進する。
【0109】
T細胞の機能に対する抗LILRB3抗体の効果は、当技術分野で知られている本明細書に記載されている様々な方法を使用して評価することができる。したがって、抗LILRB3抗体は、LILRB3アンタゴニスト又はLILRB3アゴニストとして機能することができる。
【0110】
III.本発明の核酸
本明細書に記載の抗LILRB3抗体をコードする核酸、並びに、かかる核酸を含む発現ベクター、及びかかる核酸及び/又は発現ベクターで形質転換された宿主細胞もまた、本開示に含まれる。当業者によって理解されるように、本明細書に示されるタンパク質配列は、遺伝コードの縮重に起因して、任意の数の可能性のある核酸配列によってコードされ得、当業者であれば、本明細書で提供されるアミノ酸配列に基づいて、かかる核酸配列を容易に同定することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体及び/又はLILRB3結合ドメインをコードする核酸組成物もまた、本発明に包含される。当業者によって理解されるように、抗原結合ドメインの場合、核酸組成物は、一般に、重鎖可変領域をコードする第1の核酸、及び軽鎖可変領域をコードする第2の核酸を含む。scFvの場合、本明細書に記載のリンカーによって分離される、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする単一の核酸を作製することができる。従来の抗体の場合、核酸組成物は、一般に、重鎖をコードする第1の核酸と、軽鎖をコードする第2の核酸とを含み、これらは、細胞で発現すると、自発的に集合して、2本の重鎖と2本の軽鎖からなる「従来の」四量体形式になる。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体及び/又はLILRB3結合ドメインをコードする核酸組成物は、コドン最適化されたバージョン又はバリアントである。
【0113】
当該技術分野で知られているように、本発明の構成要素をコードする核酸は、発現ベクターに組み込むことができ、宿主細胞に応じて、本発明の抗体を産生するのに使用することができる。これらの2つの核酸は、単一の発現ベクター又は2つの異なる発現ベクターに組み込むことができる。通常、核酸は、発現ベクターにおいて、任意の数の調節エレメント(プロモーター、複製起点、選択可能マーカー、リボソーム結合部位、インデューサーなど)に作動可能に連結されている。発現ベクターは、染色体外ベクター又は組込みベクターであり得る。
【0114】
本発明の核酸及び/又は発現ベクターは、当技術分野で周知の、哺乳動物、細菌、酵母、昆虫及び真菌細胞を含む、任意のタイプの宿主細胞に導入することができる。トランスフェクション後、限定希釈、ELISA、FACS、顕微鏡法、又はClonepixなどの当技術分野で知られている方法を使用して、細胞バンク生成のために単一細胞クローンを単離することができる。クローンは、バイオリアクターのスケールアップと抗体の発現維持に適した条件下で培養することができる。抗体は、遠心分離、深層濾過、細胞溶解、均質化、凍結融解、アフィニティー精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィー、及び混合モードクロマトグラフィーを含む当技術分野で知られている方法を使用して、単離及び精製することができる。
【0115】
IV.治療への応用
本開示は、対象における免疫応答を調節する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体の有効量、又は抗LILRB3抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示に含まれる免疫応答を調節する方法は、対象におけるLILRB3活性の阻害を含み、さらなる実施形態では、かかる方法は、対象に、LILRB3アンタゴニストとして作用する抗LILRB3抗体の有効量を投与すること、又は、アンタゴニスト抗LILRB3抗体を含む医薬組成物を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、本開示に含まれる免疫応答を調節する方法は、対象におけるLILRB3活性の阻害を含み、さらなる実施形態では、かかる方法は、対象に、LILRB3アゴニストとして作用する抗LILRB3抗体の有効量を投与すること、又は、アゴニスト抗LILRB3抗体を含む医薬組成物を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、免疫応答を刺激し得る。他の実施形態では、アンタゴニストは、免疫応答を阻害し得る。いくつかの実施形態では、アゴニストは、免疫応答を刺激し得る。他の実施形態では、アゴニストは、免疫応答を阻害し得る。
【0117】
本開示はまた、対象のがんを治療する方法を提供し、かかる方法は、抗LILRB3抗体の有効量、又は、かかる抗LILRB3抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療されるがんは、がん細胞表面上にLILRB3を発現する。いくつかの実施形態では、治療されるがんは、対応する非がん性組織と比較して、LILRB3をアップレギュレートする。いくつかの実施形態では、治療される対象は、リンパ球、骨髄細胞、単球、単球由来破骨細胞、顆粒球、樹状細胞、破骨細胞、及び前駆肥満細胞を含む1つ以上のタイプの免疫細胞上でLILRB3を発現する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、単球、単球由来破骨細胞、顆粒球、樹状細胞、破骨細胞、及び前駆肥満細胞を含む1つ以上のタイプの免疫細胞上に高レベルのLILRB3を発現する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、造血がん細胞上に高レベルのLILRB3を発現する。いくつかの実施形態では、治療されるがんは、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1などの他の免疫チェックポイントを標的とする既存の免疫調節抗体に反応しない。
【0118】
いくつかの実施形態では、がんは、骨髄性白血病、Bリンパ性白血病、又は骨髄腫である。
【0119】
他のいくつかの実施形態では、がんは、脳がん、膀胱がん、乳がん、頸部がん、子宮内膜がん、食道がん、白血病、肺がん、肝臓がん、黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、精巣がん、又は子宮がんである。さらに他の実施形態では、がんは、血管新生腫瘍、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫又は軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆道がん、甲状腺がん、先端レンズ状黒色腫、化学線角化症、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、アデノイド嚢胞性がん、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮がん、肛門管がん、肛門がん、肛門直腸がん、星状細胞腫瘍、バルトリン腺がん、基底細胞がん、胆管がん、骨がん、骨髄がん、気管支がん、気管支腺がん、カルシノイド、胆管がん、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/脈絡叢がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞がん、結合組織がん、嚢胞腺腫、消化器がん、十二指腸がん、内分泌系がん、内皮下洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺がん、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼がん及び眼窩がん、女性生殖器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、胃洞がん、胃眼底がん、胃腫、神経膠芽細胞腫、グルカゴノーマ、心臓がん、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道がん、肝細胞がん、ホジキン病、回腸がん、インスリン腫、上皮内腫瘍、上皮間扁平上皮がん、肝内胆管がん、浸潤性扁平上皮がん、空腸がん、関節がん、カポジ肉腫、骨盤がん、大細胞がん、大腸がん、平滑筋肉腫、黒子悪性黒色腫、リンパ腫、男性生殖器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽細胞腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮がん、転移性がん、口内がん、粘表皮がん、多発性骨髄腫、筋腫瘍、鼻道がん、神経系がん、神経上皮腺がん結節性黒色腫、非上皮性皮膚がん、オート麦細胞がん、乏突起膠がん、口腔がん、骨肉腫、乳頭状漿液性腺がん、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽細胞腫、直腸がん、腎細胞がん、呼吸器系がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性がん、副鼻腔がん、皮膚がん、小細胞がん、小腸がん、平滑筋がん、軟組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎がん、扁平上皮がん、線条体筋がん、中皮下がん、表在性拡大黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化がん、尿管がん、尿道がん、膀胱がん、尿路がん、子宮頸部がん、子宮体がん、ブドウ膜黒色腫、膣がん、疣贅がん、VIP産生腫瘍、外陰がん、高分化がん、又はウィルムス腫瘍である。
【0120】
他のいくつかの実施形態では、治療されるがんは、B細胞リンパ腫又はT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などのB細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、毛状細胞白血病、又は原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫である。特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫などのT細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、結節外自然キラー/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、又は末梢T細胞リンパ腫である。
【0121】
本開示はまた、対象の自己免疫障害又は炎症性障害を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、LILRB3のモジュレーターとして作用する抗LILRB3抗体の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療される対象は、リンパ球、骨髄細胞、単球、単球由来破骨細胞、顆粒球、樹状細胞、破骨細胞、及び前駆肥満細胞を含む1つ以上のタイプの免疫細胞上でLILRB3を発現する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、リンパ球、骨髄細胞、単球、単球由来破骨細胞、顆粒球、樹状細胞、破骨細胞、及び前駆肥満細胞を含む1つ以上のタイプの免疫細胞上に高レベルのLILRB3を発現する。いくつかの実施形態では、LILRB3は、対象において、自己反応性免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、内皮細胞、及び、例えば、多発性硬化症を患っている対象のリンパ節及び中枢神経系、関節リウマチを患っている対象の関節、及びセリアック病を患っている対象の胃腸管など、自己免疫疾患が発症する部位のマクロファージ)で高レベルに発現する。LILRB3アンタゴニストとして作用する抗LILRB3抗体を投与することによって、LILRB3活性を阻害することができる。LILRB3アゴニストとして作用する抗LILRB3抗体を投与することによって、LILRB3活性を促進することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、治療される自己免疫障害又は炎症性障害は、喘息、多発性硬化症、アディソン病、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、クッシング症候群、真性糖尿病1型、移植片対宿主病、グレーブス病、ギランバレ症候群、エリテマトーデス、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、全身性エリテマトーデス、移植片拒絶反応、又は血管炎である。
【0123】
他のいくつかの実施形態では、治療対象となる自己免疫障害としては、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アンキロス脊椎炎、抗リン脂質症候群、抗シンテターゼ症候群、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性非形成性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性膵炎、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵臓炎多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロ病/バロ同心性硬化症、ベーセット病、バーガー病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性ペンフィゴイド、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性閉塞性肺疾患、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性ペンフィゴイド、コーガン症候群、冷凝集素疾患、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、CREST症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴ病、ダーカム病、ヘルペス性皮膚炎、皮膚筋炎、びまん性皮膚全身性硬化症、円板状紅斑性肺炎、ドレスラー症候群、薬物誘発性好酸球性筋膜炎、湿疹、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、表皮水疱症、結節性紅斑、赤芽球症フェタリス、エッセンシャル混合クリオグロブリン血症、エバン症候群、線維異形成症妊娠性類天疱瘡、線維性肺胞炎(又は特発性肺線維炎)、胃炎、胃腸の類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性類天疱瘡(別名妊娠性類天疱瘡)、化膿性汗腺炎、ヒューズ-ストビン症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性肺線維症血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、間質性嚢胞炎、若年性特発性関節炎(別名若年性関節リウマチ)、川崎病、ランバート-イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病、ルポイド肝炎(別名自己免疫性肝炎)マジード症候群、微視的大腸炎、微視的多発血管炎、ミラーフィッシャー症候群、混合結合組織疾患、モルフィア、ムチャハーバーマン病(別名ピチリア症リケノイド及びバリオリフォルミスアクタ)、多発性硬化症、ミアステニアグラビス、筋炎、メニエール病、麻痺、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、神経筋炎眼の瘢痕性痘瘡、オプソクロヌスミオクロヌス症候群、オード甲状腺炎、パリンドローム性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンバーグ症候群、毛様体扁平部炎、パーソネージ・ターナー症候群、尋常性天疱瘡、静脈周囲性脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆道性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、ラスムッセン脳炎、レイノー症状、ライター症候群、再発性多発軟骨炎、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、リウマチ性発熱、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、硬化炎、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、硬直性人症候群、スティル病、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、Susac症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化脊椎関節症、蕁麻疹性血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
本開示はまた、対象のアレルギー性炎症を治療する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つの有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、治療されるアレルギー性炎症は、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎に関連し得る。
【0126】
本開示はまた、破骨細胞分化を調節する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の抗LILRB3抗体のいずれか1つの有効量、又は本明細書に記載の組成物のいずれか1つを対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、破骨細胞分化の調節は、骨粗鬆症、骨異栄養症、骨減少症、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、甲状腺中毒症、全身性肥満細胞症、成人低ホスファターゼ症、副腎皮質機能亢進症、骨粗鬆症、パジェット病、クッシング病/症候群、チューマー症候群、ゴーチャー病、エーラーズ-ダンロス症候群、マルファン症候群、メンケス症候群、ファンコニ症候群、多発性骨髄腫、高カルシウム血症、低カルシウム血症、関節炎、歯周病、リケット(ビタミンD依存性、I型及びII型、及びx連鎖低リン酸血症性リケットを含む)、又は、慢性腎疾患又は腎不全に関連するビタミンD欠乏症などの他の形態のビタミンD欠乏症、線維形成不全骨、濃化異骨症及びマクロファージを介した炎症過程で生じる損傷などの骨硬化性障害、からなる群から選択される状態に罹患している又は罹患しやすい患者の骨喪失又は骨吸収を治療するのに特に有用であり得る。
【0127】
V.併用療法
本明細書に記載の抗LILRB3抗体は、がん、自己免疫障害、及びアレルギー性炎症を治療するために、追加の治療薬と組み合わせて使用することができる。抗LILRB3抗体は、破骨細胞の分化を調節するために追加の治療薬と組み合わせて使用することもできる。
【0128】
がんの治療における併用療法の一部として使用できる例示的な治療薬としては、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボクオン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリックス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、酢酸エリプチニウム、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフル、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフル、イフォスファミド、プレドニムスチン、ピシバニル、レバミソール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、フォルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキン・ディフチトックス、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出因子、及び、同族受容体への異なる結合を示し、血清半減期を増加又は減少させる可能性のある前述の薬剤のバリエーションが挙げられる。
【0129】
がんの治療における併用療法の一部として使用できる追加のクラスの薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、(i)細胞傷害性T-リンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、及び(vii)TIM3(イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブなど)、のうちの1つ以上を阻害する薬剤が含まれる。
【0130】
がんの治療における併用療法の一部として使用され得るさらに他の薬剤は、非チェックポイント標的(例えば、ハーセプチン)及び非細胞毒性剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)を標的とするモノクローナル抗体剤である。
【0131】
抗がん剤のさらに他のカテゴリーには、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基切除修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKとmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤と2-クロロデオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、PARP1及びDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、及びWEE1阻害剤;(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25、又はICOSのアゴニスト;並びに、(iii)IL-12、IL-15、GM-CSF、及びG-CSFから選択されるサイトカイン、から選択される阻害剤が含まれる。本発明の抗体はまた、原発巣からのがんの外科的除去の補助として使用することができる。
【0132】
自己免疫又は炎症性障害の症状を治療する、その進行を遅らせる、その再発を防ぐ、又はそれを緩和するための抗LILRB3抗体との併用療法の一部として使用することができる例示的な治療薬としては、例えば、様々な既知の抗炎症療法、及び/又は免疫抑制療法が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗炎症療法及び/又は免疫抑制療法としては、メトトレキサート、シクロスポリンA(例えば、シクロスポリンマイクロエマルジョンを含む)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンベータ、非ステロイド性抗炎症剤、及び6-MP(6-メルカプトプリンとも呼ばれるメルカプトプリン、又はプリネトール)を挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体と組み合わせるための抗炎症性療法及び/又は免疫抑制療法として、TOPK阻害剤(例えば、OTS964((R)-9-(4-(1-(ジメチルアミノ)プロパン-2-イル)フェニル)-8-ヒドロキシ-6-メチルチエノ[2,3-c]キノリン-4(5H)-オン)(腫瘍療法科学))、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ、ダサチニブ、イコチニブ)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポテカン)、スフィンゴシン-1-リン酸受容体アゴニスト(例えば、フィンゴリモド、KRP-203)、抗T細胞免疫グロブリン(例えば、AtGam)、抗IL-2受容体抗体(例えば、ダクリズマブ))、アミド(CTX)、イフォスファミド(IFO)、アドリアマイシン(ADM)、ダウノルビシン(DNR)、ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチン(VBL)、エトポシド(VP16)、フェルメール(Vumon)、カルボプラチン(CBP)、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、アザチオプリン、ブレキナール、レフルノミド、LEA-29Y、抗CD3抗体(例えば、OKT3)、アスピリン、B7-CD28ブロッキング分子(例えば、ベラタセプト、アバタセプト)、CD40-CD154ブロッキング分子(抗CD40抗体)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、パイロキシカム、及び抗炎症ステロイド(例えば、プレドニゾロン又はデキサメタゾン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体と組み合わせるための抗炎症療法及び/又は免疫抑制療法として、例えば、TNF-アルファ、CFA、インターロイキン-1(IL-1)、プロテアソーム阻害剤、NFκB阻害剤、抗炎症薬、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、リポ多糖、UV光、及びTNF-アルファシグナル伝達経路の細胞内メディエーターの投与による自己免疫細胞の除去が挙げられる。かかる薬剤は、TNF-α受容体シグナル伝達の下流の経路を遮断することによって自己反応性リンパ球のアポトーシスを誘導するか、TNF-アルファ受容体結合の下流で作用する。(Baldwinら、Ann.Rev.Immunol.(1996)12:141;Baltimore、Cell(1996)87:13)。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体は、自己免疫疾患を治療するか、さもなければ緩和する外科的方法と併せて使用される。
【0136】
アレルギー性炎症の症状を治療する、又はその進行を遅らせる、又はその再発を防止する、又はそれを緩和するための抗LILRB3抗体との併用療法の一部として使用することができる例示的な治療薬としては、例えば、様々な既知の抗炎症療法及び/又は免疫抑制療法のうちのいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗LILRB3抗体と組み合わせるための抗炎症性療法及び/又は免疫抑制療法として、短時間作用型β2作動薬、長時間作用型β2作動薬、抗コリン作用薬、コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、マスト細胞安定剤、ロイコトリエン修飾薬、メチルキサンチン、β2作動薬、アルブテロール、レバルブテロール、ピルブテロール、アルトホルモテロール、ホルモテロール、サルメテロール、抗コリン作用薬(イプラトロピウム及びチオトロピウムを含む)、コルチコステロイド(ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンを含む)、ロイコトリエン修飾薬(モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びジロートンを含む)、肥満細胞安定剤(クロモリン及びネドクロミルを含む)、メチルキサンチン(テオフィリンを含む)、併用薬(イプラトロピウムとアルブテロール、フルチカゾンとサルメテロール、ブデソニドとホルモテロールを含む)、抗ヒスタミン薬(ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、セチリジン、及びヒドロコルチゾンを含む)、免疫系調節薬(タクロリムス及びピメクロリムスを含む)、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
他の実施形態において、アレルギー性炎症の症状を治療する、又はその進行を遅らせる、又はその再発を防止する、又はそれを緩和するための抗LILRB3抗体との併用療法の一部として使用され得る治療薬はまた、自己免疫疾患又は炎症性疾患用に指定されているそれらの治療薬を含み得る。
【0138】
破骨細胞活性を調節するための抗LILRB3抗体との併用療法の一部として使用し得る例示的な治療薬としては、ビスホスホネート、カルシトニン、エストロゲン置換、スクレロスチン抗体、RANKL抗体、副甲状腺ペプチド、ストロンチウムラネレート、TNFα阻害剤、コロニー刺激因子1阻害剤、コロニー刺激因子1受容体阻害剤、カテプシンK阻害剤、V-ATPase阻害剤、及びグルカゴン様ペプチド2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
所望の組み合わされた治療効果を達成するように、抗体及び付加的な治療薬の量、並びに、投与の相対的なタイミングを選択することができる。例えば、かかる投与を必要とする患者に併用療法を実施する場合、組み合わせの治療薬、又は治療薬を含む医薬組成物(複数可)は、例えば、連続して、並行して、一緒に、同時に、など、任意の順序で投与することができる。さらに、例えば、多重特異性結合タンパク質は、付加的な治療薬がその予防的又は治療的効果を発揮する期間に投与することができ、又はその逆も同様である。
【0140】
VI.医薬組成物及び投与
本開示はまた、本明細書に記載の抗LILRB3抗体の治療有効量を含む医薬組成物/製剤を特徴とする。本組成物は、様々な薬物送達システムで使用するために処方することができる。また、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤又は担体が適切な処方のために本組成物に含まれる場合がある。本開示で使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、Pa.、17th ed.、1985.に見出される。薬物送達の方法の簡単なレビューについては、例えば、Langer(Science 249:1527-1533、1990)を参照されたい。
【0141】
本開示の抗体は、凍結乾燥製剤又は液体水性医薬製剤の中に存在することができる。本明細書で対象となる水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与において安全かつ無毒である)、液体製剤の調製に有用なものである。例示的な担体としては、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液、又はデキストロース溶液が挙げられる。
【0142】
本開示の抗体は、タンパク質及び凍結保護剤を含む凍結乾燥製剤中に存在する場合がある。凍結保護剤は、糖、例えば、二糖であり得る。特定の実施形態では、凍結保護剤は、スクロース又はマルトースである。凍結乾燥製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤、及び/又は防腐剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0143】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に有毒でなく、所望の治療応答を達成するのに効果的な有効成分の量になるように、特定の患者、特定の組成物、及び特定の投与方式について変えることができる。成人の場合、1回の投与あたり0.1mgから1gの範囲、好ましくは、0.5mgから500mgの範囲の活性抗体を投与することができる。あるいは、患者の用量は、患者のおおよその体重又は体表面積に合わせて調整することができる。適切な投与量を決定する際の他の要因には、治療又は予防される疾患又は状態、疾患の重症度、投与経路、並びに患者の年齢、性別、及び病状が含まれ得る。治療のための適切な投薬量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に本明細書に開示される投薬量情報及びアッセイに照らして、当業者によって日常的に行われる。投与量はまた、適切な用量反応データと併せて使用される投与量を決定するための既知のアッセイを使用することによって決定することができる。個々の患者の投与量は、病気の進行を監視しながら調整することができる。患者の標的化可能な構築物又は複合体の血中レベルを測定することによって、有効濃度に到達するか又はそれを維持するために投与量を調整する必要があるかどうかを確認することができる。薬理ゲノミクスを使用することで、所与の個体について、どの標的化可能な構築物及び/又は複合体、並びにその投与量が、最も効果的である可能性が高いかを決定することができる(Schmitzら、Clinica Chimica Acta 308:43-53、2001;Steimerら、Clinica Chimica Acta 308:33-41,2001)。
【0144】
用量は、毎日、毎週、毎月又は毎年に1回以上与えることができ、あるいは、さらに2~20年毎に1回与えることができる。当業者は、測定された滞留時間、及び、体液又は組織中の標的可能な構築物又は複合体の濃度に基づいて、投薬の繰り返し率を容易に推定することができる。本発明の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内、カテーテルを介した灌流、又は直接病変内注射であり得る。これは、1日1回以上、週1回以上、月1回以上、及び年1回以上投与することができる。
【0145】
実施例
ここで概説されている本発明は、本発明の特定の態様及び実施形態を説明する目的でのみ含まれ、本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0146】
実施例1-造血細胞サブセットでのLILRB3表面発現
LILRB3の表面発現は、分位数等高線図(確率プロット)と呼ばれる2次元フローサイトメトリー(FCM)表現の形式で、様々な造血サブセットで測定した。健康なヒトドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を、LILRB3 3A3抗体及び示された細胞サブセットに特異的な抗体で染色した。
図1Aのプロットは、ゲートCD3+CD4+T細胞、CD3+CD8+T細胞又はCD11b+単球によるLILRB3発現を示している。
図1Bでは、健康なヒトドナーからの新鮮な全血が
図1Aのように染色された。プロットは、ゲートCD3+CD4+T細胞、CD3+CD8+T細胞、CD11b+単球又はCD11b+顆粒球によるLILRB3発現を示している。ゲートされた母集団内のゲートされた細胞とLILRB3+細胞のパーセンテージをプロット内に示す(それぞれ1番目と2番目の数値)。単球と顆粒球でLILRB3の発現が示され、CD4+又はCD8+T細胞でLILRB3の発現が低いことが示されている。LILRB3染色の特異性は、上記の全ての細胞サブセットをIgG1アイソタイプコントロール抗体で染色することによって決定した。データは、様々なヒト血液サンプルを利用したいくつかの独立した実験を表している。
【0147】
実施例2-一次混合リンパ球反応(MLR)におけるT細胞応答性に対するLILRB3抗体又はLILRB3-Fcタンパク質の効果
CD3+T細胞[1×10
5細胞、エフェクター(E)集団]と、健康なヒトドナー由来の照射(IR)同種CD14+単球[2×10
5細胞、刺激(S)集団]とを、指示された量のIgG1又はIgG2bアイソタイプコントロール抗体、LILRB3抗体、Fcタンパク質、又はFc-LILRB3タンパク質の存在下又は非存在下で共培養した。3日後、細胞を3H-チミジンで標識し、さらに18時間、T細胞の増殖を測定した。LILRB3 7C5抗体及びLILRB3Fcタンパク質は、T細胞増殖を阻害した(
図2)。示されているデータは、異なるエフェクター/刺激剤のペアを利用したいくつかの独立した実験の代表値であり、1分あたりの平均カウント(cpm)±三連ウェルの標準誤差として報告されている。
【0148】
実施例3-LILRB3 7C5抗体とインキュベートしたPBMCは、T細胞刺激に応答して活性化マーカーの表面発現を完全に調節することができない
健康なヒトドナー由来のPBMC(2x10
5細胞)を、7C5又はアイソタイプコントロール抗体(20μg/mL)、並びに指示された量の抗CD3抗体及び抗CD28抗体の存在下又は非存在下で培養した。24時間後、細胞を、指示された細胞サブセット及び活性化マーカーに特異的な抗体で染色した。パネルAのプロットは、ゲートされたCD3+CD4+T細胞によるCD69、CD25、及びCD62Lの発現を示す(
図3A)。パネルBのプロットは、ゲートCD3+CD8+T細胞によるCD69、CD25、及びCD62Lの発現を示す(
図3B)。LILRB3 7C5抗体は、CD69(II型C-レクチン受容体)及びCD25(IL-2受容体)の発現の低下、及び、CD62L(L-セレクチン)の脱落の低下によって示されるように、抗CD3抗体及び抗CD28抗体によるCD4+T細胞及びCD8+T細胞の活性化を阻害する。データは、異なるヒトPBMCサンプルを利用したいくつかの独立した実験の代表値であり、平均蛍光強度(MFI)±三連ウェルの標準誤差として報告されている。
【0149】
実施例4-LILRB3抗体は、T細胞刺激に応答してPBMCによるサイトカイン産生を変化させる。
健康なヒトドナー由来のPBMC(2x10
5細胞)を、7C5又はアイソタイプコントロール抗体(20μg/mL)、並びに、抗CD3抗体(1ng/mL)及び抗CD28抗体(100ng/mL)の存在下又は非存在下で培養した。24時間後、培養上清中のサイトカインレベルを、BioLegend LEGENDplex Human Th CytokinePanelによって製造元の使用説明書に従って決定した。7C5の存在下では、IL-2、IL-4、IL-5、IL-13、IL-17、及びIFNγを含む特定のサイトカインのレベルが低下する一方で、IL-6、IL-10、TNFのレベルは増加した(
図4)。データは、異なるヒトPBMCサンプルを利用したいくつかの独立した実験の代表値であり、重複ウェルのアイソタイプコントロール抗体と比較した7C5についての倍率変化として報告されている。
【0150】
実施例5-LILRB3 7C5抗体は、刺激されていない全血からのサイトカインの有意な放出を引き起こさない。
健康なヒトドナー(n=4)由来の新鮮な血液をRPMI1640培地で4:1に希釈し、7C5抗体又はアイソタイプコントロール抗体(50μg/mL)の存在下、4時間培養した。LPS(1μg/mL)をポジティブコントロールとして使用した。血清サンプル中のサイトカインレベルは、BioLegend LEGENDplex Human Th CytokinePanelによって製造元の使用説明書に従って決定した。LILRB3 7C5抗体は、T細胞受容体刺激がない場合に有意な刺激効果を示さなかった(
図5)。データはいくつかの独立した実験の代表値であり、重複ウェルのアイソタイプコントロール抗体と比較した7C5についての平均倍率変化として報告されている。
【0151】
参照による組込み
本明細書で参照される各特許文書及び科学論文の開示全体は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0152】
均等物
本開示は、その精神又は本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、あらゆる点で、本明細書に記載された発明を限定するものではなく、例示と見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲の意味及び同等の範囲内にある全ての変更は、本明細書に含まれるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】