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特表2022-517825電磁的に修正された基準仕様を用いた高強度振動試験およびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】電磁的に修正された基準仕様を用いた高強度振動試験およびその方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220303BHJP
   G01M 7/02 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G01H17/00 C
G01M7/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541721
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2020014422
(87)【国際公開番号】W WO2020150731
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】62/794,564
(32)【優先日】2019-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521318505
【氏名又は名称】アンダーウッド,マルコス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】アンダーウッド,マルコス
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB16
2G064BA02
2G064DD25
(57)【要約】
音響または機械振動試験システムは、振動トランスデューサの少なくとも2つの個別に制御可能なグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様および修正された基準仕様の両方を利用し、ここで、従来のMIMO制御の下でシステム動作中に取得されたデータは、実際のシステム性能およびその限界に基づいて修正された基準仕様を作成するために使用され、所定の初期基準の機能として、所定の初期基準仕様により近い対応を維持する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動トランスデューサの少なくとも2つの個別に制御可能なグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサと、
前記振動トランスデューサの少なくとも2つの個別に制御可能なグループと前記少なくとも2つの制御センサトランスデューサに結合されたコントローラであって、
前記コントローラは、
所定の初期基準仕様または以前に修正された初期基準仕様を利用して、完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルで、MIMO制御を使用して振動プレ試験を実行し、
完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルでの振動プレ試験中に実際のシステム性能に基づいて、修正された基準仕様を作成するように構成された、振動試験システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記以前に修正された初期基準仕様を利用して前記振動予備試験を実行するように構成され、前記以前に修正された初期基準仕様は、前記完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルでの振動プレ試験中に実際のシステム性能に基づいて前記修正された基準仕様を作成するために、前記所定の初期基準仕様を手動で修正することによって得られ、前記コントローラは、修正されていない所定の初期基準仕様を用いて得られる修正された基準仕様を利用する振動試験を実行する場合よりも小さいシステム駆動力を要求する前記修正された基準仕様を利用して振動試験を実行するようにさらに構成される、請求項1に記載の振動試験システム。
【請求項3】
前記コントローラは、同じ試験設備および試験条件が与えられた場合に、使用中の前記所定の初期基準仕様の機能として、修正されていない基準仕様を用いて振動試験を実行する場合よりも小さいシステム駆動力を要求する、前記修正された基準仕様を利用して振動試験を実行するようにさらに構成される、請求項1に記載の振動試験システム。
【請求項4】
前記修正された基準仕様を利用することにより、前記所定の初期基準の機能として、要求されるシステム駆動力がより少なく、かつ、試験の実施中に試験システムおよび被試験物に損傷を与えるリスクがより少なく、前記所定の初期基準仕様に近い対応を可能にする、請求項3に記載の振動試験システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
基準スペクトル密度行列[Grr(f)]として表現される、所定の初期基準仕様または以前に修正された初期基準仕様を利用し、
前記所定の初期基準仕様または以前に修正された初期基準仕様を利用して、完全な試験レベルを実質的に下回るMIMO制御を使用し、制御応答スペクトル密度行列[Gcc(f)]によって表現される、振動プレ試験下で動作中の制御位置応答を測定し、
修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]として表現される前記修正された基準仕様を作成することにより前記修正された基準仕様を作成する、請求項1に記載の振動試験システムであって、
前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の対角要素は、前記基準スペクトル密度行列[Grr(f)]内のものと同じであり、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の下側の対角要素のそれぞれは、前記基準スペクトル密度行列[Grr(f)]の下側の対角要素に[Kijk]の因子を乗じたものに等しく、これは、前記所定の初期基準仕様または前記以前に修正された初期基準仕様によって表される各制御位置ペア間の積を低レベル動作中に前記実際に測定された制御位置応答によって表される各制御位置ペア間の積で割ることによって表される比率であり、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の上対角行は、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の下対角列の複素共役転置に等しい、請求項1に記載の振動試験システム。
【請求項6】
前記基準スペクトル密度行列[Grr(f)]の対角要素との対応の度合をトレードオフするために、初期基準スペクトル密度行列の選択された非対角コヒーレンス要素の値をわずかに手動で増加させることによって、前記以前に修正された初期基準仕様が得られ、前記制御応答スペクトル密度行列[Gcc(f)]は、同じ試験設備と試験条件を与えられた、修正されていない所定の初期基準仕様を用いて得られた修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]で実行する試験と比較して、選択された周波数範囲内で要求されるシステム駆動力をさらに低減するために、前記以前に修正された初期基準仕様を用いて得られた前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]を用いることから生ずる後続の試験にある、請求項5に記載の振動試験システム。
【請求項7】
前記振動トランスデューサの少なくとも2つの個別に制御可能なグループは音響トランスデューサであり、前記少なくとも2つの制御センサトランスデューサは制御マイクロホンである、請求項1に記載の振動試験システム。
【請求項8】
前記少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループは、加振器であり、前記少なくとも2つの制御センサトランスデューサは、加速度計または他の機械振動感知トランスデューサである、請求項1に記載の振動試験システム。
【請求項9】
振動トランスデューサの少なくとも2つの個別に制御可能なグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとを有するシステムを用いて、所定の初期基準仕様または以前に修正された初期基準仕様を利用して、完全な試験レベルを実質的に下回るMIMO制御を使用して振動プレ試験を実行するステップと、
完全な試験レベルを実質的に下回る振動プレ試験中に、実際のシステム性能に基づいて修正された基準仕様を作成するステップとを含む、被試験物を振動試験する方法。
【請求項10】
前記修正された基準仕様を用いて振動試験を実行するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記修正された基準仕様を利用することにより、前記所定の初期基準の機能として、要求されるシステム駆動力がより少なく、かつ、試験の前記実行中に試験システムおよび被試験物への損傷のリスクがより少なく、前記所定の初期基準仕様により近い対応を可能にする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記修正された基準仕様を作成するステップは、
前記所定の初期基準仕様又は以前に修正された初期基準仕様を利用するステップであって、前記所定の初期基準仕様又は以前に修正された初期基準仕様を基準スペクトル密度行列[Grr(f)]として表現するステップと、
前記所定の初期基準仕様または前記以前に修正された基準を利用して、完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルで、MIMO制御を用いて、振動プレ試験下で動作中の制御位置応答を測定するステップであって、前記制御位置応答は、制御応答スペクトル密度行列[Gcc(f)]によって表現されるステップと、
修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]として表現される前記修正された基準仕様を作成するステップであって、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の対角要素は、前記基準スペクトル密度行列[Grr(f)]内のものと同じであり、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の下側の対角要素のそれぞれは、前記基準スペクトル密度行列[Grr(f)]の下側の対角要素に[Kijk]の因子を乗じたものに等しく、これは、前記所定の初期基準仕様によって表される各制御位置ペア間の積を低レベル動作中に前記実際に測定された制御位置応答によって表される各制御位置ペア間の積で割ることによって表される比率であり、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の上対角行は、前記修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の下対角列の複素共役転置に等しい、ステップとを含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記振動トランスデューサの少なくとも2つの個別に制御可能なグループは音響トランスデューサであり、前記少なくとも2つの制御センサトランスデューサは制御マイクロホンである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループは、加振器であり、前記少なくとも2つの制御センサトランスデューサは、加速度計である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高強度振動試験を用いて動作の信頼性を評価することができる衛星、計装、または他の任意の物体の振動試験の分野に関する。具体的には、本発明は、振動試験を実施するための直接場または残響室(音響)試験システム、または多重励振器(機械)試験システム(励振器は、電気油圧アクチュエータ、電気力学的加振器、セラミック加振器、またはそのような振動変換器の集合体のいずれかであってもよい)のいずれかの使用に関する。本発明はさらに、音響試験システムが所定の初期基準仕様に適合する音場を生成することを可能にする制御、および機械試験システムが所定の初期基準仕様に適合する振動応答を生成することを可能にする制御に関する。
【背景技術】
【0002】
音響振動試験の分野では、音響応答場または応答振動の多数のパラメータを所定の基準仕様に従って制御することが望ましい。その全体が参照により本明細書に組み込まれ、また図1に含まれる米国特許第9,109,972号[3]に記載されているように、典型的なMIMO DFAT制御システム100において、所望の所定の音場パラメータを含む基準仕様が典型的に提供される。動作中、システムは、独立して制御可能なトランスデューサの複数のグループに対する駆動信号を調整して、結果として生じる音場が、基準(すなわち、所定の基準仕様)に含まれる所定の音場仕様に可能な限り厳密に一致するようにする。しかしながら、所定の音場仕様は、通常、試験システム、その構成要素、および試験施設自体の実世界の制約を無視する。例えば、これに限定されない所定の音場仕様は、その非対角要素内に相対的コヒーレンス値を含むことができ、これは、試験システム内の物理的制限のために達成することができず、それ故無視される。その結果、動作中に、駆動信号の調整は、許容可能な試験応答をもたらすことができない。また、システムの能力を超え、試験システムの構成部品または被試験物自体に損傷を与える可能性のある試験システムの構成部品による自己制限が生じることがある。
【0003】
同様に、機械振動試験の分野では、機械振動試験の多数のパラメータを所定の基準仕様に従って制御することも望ましい。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,299,459号[15]の図2に記載されており、また、本明細書に含まれている図1によっても記載されているような、典型的な多入力多出力(MIMO)機械振動試験制御システム100において、所望の所定の機械振動試験パラメータを含む基準仕様が一般的に提供される。システム100の動作中、これに限定されない例として、MIMO機械振動コントローラ110は、結果として生じる機械振動試験応答が、基準仕様書(すなわち、所定の基準仕様)に含まれる所定の機械振動試験仕様書に可能な限り厳密に一致するように、複数のグループの個別に制御可能な励起子の駆動信号を調整する。しかしながら、所定の機械振動試験仕様は、音響試験に関して上述した例のように、試験システムおよびその構成要素の実際の制約も一般的に無視する。その結果、動作中に、駆動信号の調整が機械振動試験システムの能力を超えて、試験システムの構成要素による自己制限、指定された試験パラメータを満たさないこと、およびシステム構成要素または被試験物自体に対する損傷の可能性が生じる。
【0004】
機械式または音響式MIMO振動制御システムのいずれにおいても、実際の試験条件が指定された試験パラメータを満たさない程度は、システムの最大出力能力、非線形応答特性および/または試験システム特性の時間変動によって課される実世界の制約、使用されるトランスデューサまたは励振器の制限、およびMIMO振動試験設備によって課される制約、および/またはMIMO振動制御システム自体の関連する制限を含む多くの要因に依存する。これらの制限は、これらの制限を克服するためのMIMO振動制御システムによる試験において、集合的に、実際の試験応答と指定された試験パラメータとの間の実質的な不一致に寄与し、信頼性のない試験結果、過剰なシステム駆動力が必要とされること、システム構成要素への損傷または「過剰試験」を介した被試験物自体への損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
[2、4、8、9、10、11、12、13、14、15、16]に記載されている方法のような方法は、主として、試験システムがそれ自体を損傷すること、または被試験物を損傷することを防止するための限界値を設定することに焦点を当ててきた。当業者は、駆動信号のための最大安全レベルの確立、および被試験物計測からシステムリミッタへのフィードバックを含むリミッタを実施するための様々な方法に精通している。これらのリミッタは、試験システムの損傷およびある種の過剰試験のリスクを低減するが、試験システムおよび設備の最大能力を大幅に低減し、試験システムおよび設備の実際の性能限界に対応するための初期試験仕様の調整を行わない。
【0006】
したがって、MIMO音響または機械振動制御システムに、従来の正方形制御または矩形制御[12]のいずれかについて、特定の試験設定の集合的制限に基づいて経験的に決定された妥協点のセットに従って、所定の基準仕様を修正する能力を提供することが有利であろう。実際の試験動作中に修正された基準仕様を使用することによって、試験システムの応答と所定の基準仕様との間の改善された一致が、より少ない必要なシステム駆動力、全体的な能力の増加、およびMIMO振動制御方法がどのように使用されるかにかかわらず、システム構成要素または被試験物への損傷のリスクの減少によって達成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】1. Underwood, Marcos A.,“Applications of Digital Control Techniques to High Level Acoustic Testing,” 31st Aerospace Testing Seminar; 22-25 Oct. 2018; Los Angeles, CA; United States
【非特許文献2】2. Musella et al,“Tackling the target matrix definition in MIMO Random Vibration Control testing,” 30th Aerospace Testing Seminar; March 2017; Los Angeles, CA; United States
【非特許文献3】3. Larkin et al,“Direct Field Acoustic Test System and Method,” U.S. Patent No. 9,109,972, August 18, 2015.
【非特許文献4】4. Smallwood, David ().,“The challenges of multiple input vibration testing and analysis,” Presented at the Experimental and Analytical joint HOCWOG, Los Alamos National Labs, May 20, 2013, https://www.osti.gov/servlets/purl/1095931
【非特許文献5】5. Larkin et al,“Status of Direct Field Acoustic Testing,” 27 th Aerospace Testing Seminar; 16-18 October 2012; Los Angeles, CA
【非特許文献6】6. Maahs, Gordon,“Direct Field Acoustic Test (DFAT) Development and Flight Testing of Radiation Belt Storm Probe (RBSP) Satellites,” 27th Aerospace Testing Seminar; 16-18 Oct. 2012; Los Angeles, CA; United States
【非特許文献7】7. Hughes et al.,“The Development of the Acoustic Design of NASA Glenn Research Center’s New Reverberant Acoustic Test Facility,” 26th Aerospace Testing Seminar; 29-31 Mar. 2011; Los Angeles, CA; United States
【非特許文献8】8. Underwood et al,“Some Aspects of using Measured Data as the Basis of a Multi-Exciter Vibration Test,” Proceedings of the IMAC-XXVIII, February 1 4, 2010, Jacksonville, Florida USA
【非特許文献9】9. Underwood, Marcos A.,“Digital Control Systems for Vibration Testing Machines,” Shock and Vibration Handbook, 6th ed., Chapter 26, Edited by Piersol et al, T L., McGraw-Hill, New York, 2009
【非特許文献10】10. Underwood et al,“MIMO Testing Methodologies,” Proceedings of the 79th Shock &Vibration Symposium, October 2008; Orlando, Florida
【非特許文献11】11. Smallwood, David ().,“Multiple-Input Multiple-Output (MIMO) linear systems extreme inputs/outputs,” Shock and Vibration, Vol. 14, No. 2, (2007) pp 107-132.
【非特許文献12】12. Underwood et al,“Rectangular Control of Multi-Shaker Systems; Theory and somepractical results,” Journal and Proceedings - Institute of Environmental Sciences and Technology, April 2003
【非特許文献13】13. Underwood, Marcos A.,“Applications of Computers to Shock and Vibration,” Shock and Vibration Handbook, 5 th Ed., Chapter 27, Edited by Harris, C. M., and Piersol, A. G., McGraw-Hill, New York, 2001
【非特許文献14】14. Underwood, Marcos A., Adaptive Control Method and System for Transient Waveform Testing. U.S. Patent No. 5,517,426, May 14, 1996.
【非特許文献15】15. Underwood, Marcos A., Adaptive Control Method and System for MultiExciter Swept-Sine Testing. U.S. Patent No. 5,299,459, April 5, 1994.
【非特許文献16】16. Underwood, Marcos A., Digital Signal Synthesizer Method and System, U.S. Patent No. 4, 782,324, November 1, 1988.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムであって、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない音響または機械振動試験システムを含む。MIMO制御システムは、所定の初期基準の機能として、要求されるシステム駆動力がより少なく、かつ、試験の実施中に試験システムと被試験物に損傷を与えるリスクがより少ない状態で、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)と密接に対応することを維持するように、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様との両方を利用し、従来のMIMO制御の下でシステム動作中に取得されたデータを用いて、実際のシステム性能とその限界とに基づいて修正された基準仕様を作成する。
【0009】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様との両方を利用し、反復フィードバックプロセスは、ユーザによって手動でまたは計算によって自動的に行うことができ、反復フィードバックプロセスを使用して、実際のシステム性能とその限界とに基づいて修正された基準仕様を作成し、所定の初期基準の機能として、より少ない要求されるシステム駆動力で、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)とのより密接な対応を維持し、かつ、試験の実施中に試験システムおよび被試験物に対する損傷のリスクを低減する。
【0010】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様の両方を利用し、修正された基準仕様は従来のMIMO制御の下でシステム動作中に取得されたデータを用いて、実際のシステム性能とその限界とに基づいて作成され、修正された基準仕様は、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)に、所定の初期基準の機能として、必要とされるシステム駆動力がより少なく、試験の実行中に試験システムおよび試験物品に損傷を与える危険性がより少なく、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)とのより密接な対応を維持するように、類似の試験システム構成による将来の使用のために利用可能なように、適切なデータ記録装置を用いて記憶される。
【0011】
本発明の実施形態はまた、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と、従来のMIMO制御によるシステム動作中に取得されたデータを用いて、実際のシステム性能とその限界とに基づいて、修正された基準仕様を作成し、ローダを用いて、予め記憶された修正された基準を記憶装置からロードし、実際の試験中に、所定の初期基準仕様を置き換えることにより、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)に、所定の初期基準の機能として、より少ないシステム駆動力で、より緊密に対応し、かつ試験の実施中に試験システムおよび被試験物への損傷のリスクがより少なくなるように維持する。
【0012】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様との両方を利用し、ここで、従来のMIMO制御の下でシステム動作中に取得されたデータは、実際のシステム性能とその限界とに基づいて修正された基準仕様を作成するために使用され、予め記憶された修正された基準は、所定の初期基準仕様を置き換えるために使用され、反復フィードバックプロセスは、予め記憶された修正された基準仕様をさらに修正するために使用され、さらに修正された基準仕様は、実際の試験中に使用され、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)に、所定の初期基準の機能として、より少ないシステム駆動力で、より緊密に対応し、かつ試験の実施中に試験システムおよび被試験物への損傷のリスクがより少なくなるように維持する。
【0013】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様との両方を利用し、修正された基準仕様は、振動トランスデューサまたは制御センサトランスデューサの別個に制御可能なグループの配置に起因する異常、または入力チャネル間の位相および振幅整合不良、別個に制御可能な振動トランスデューサ駆動ベクトルと制御点応答ベクトルとの間の低コヒーレンス、およびコントローラの入出力チャネルのダイナミックレンジ制限などの計測誤差を考慮するための修正を含み、その結果、所定の初期基準の機能として、必要とされるシステム駆動力がより少なく、かつ、試験の実施中に試験システムおよび被試験物に損傷を与えるリスクがより少なく、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)へのより緊密な対応を維持する。
【0014】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と、修正された基準仕様との両方を利用し、修正された基準仕様は、音場の非線形特性および時変特性による異常を考慮するための修正を含み、その結果、所定の初期基準の機能として、必要とされるシステム駆動力がより少なく、かつ、試験の実施中に試験システムおよび被試験物に損傷を与えるリスクがより少なく、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)へのより緊密な対応を維持する。
【0015】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様の両方を利用する。MIMO制御システムは、従来のMIMO制御の下でシステム動作中に取得されたデータを用いて、実際のシステム性能とその限界とに基づいて修正された基準仕様を作成し、所定の初期基準仕様の修正は、所定の初期基準仕様行列(SDM)の対角要素(スペクトル基準ベクトル)を変更せず、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)に、所定の初期基準の機能として、より少ないシステム駆動力で、より緊密に対応し、かつ、試験の実施中に試験システムおよび被試験物に損傷を与えるリスクがより少ないように維持する。
【0016】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正基準仕様との両方を利用し、この修正基準仕様では、従来のMIMO制御の下でのシステム動作中の実際の制御センサ応答からのデータを使用して、実際のシステム性能とその限界とに基づいて、以前に修正された基準仕様をさらに修正し、所定の初期基準の機能として、より少ないシステム駆動力で、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)により密接に対応し、かつ試験の実施中に試験システムおよび被試験物に損傷を与えるリスクをより少なく維持する。
【0017】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、所定の初期基準仕様と修正された基準仕様との両方を利用する。従来のMIMO制御の下でシステム動作中に取得されたデータを用いて実際のシステム性能とその限界とに基づいて修正された基準仕様を作成し、修正された基準仕様を記述する得られた行列が少なくとも正の半定値とエルミート値の両方であるようにして、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)に、所定の初期基準の機能として、必要とされるシステム駆動力がより少なく、かつ試験の実施中に試験システムおよび被試験物への損傷のリスクがより少ない、より密接な対応を維持する。
【0018】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、スペクトル密度行列[Grr(f)]で表され、スペクトル密度行列[Gcc(f)]によって表される従来のMIMO制御の下での動作中に測定された制御位置応答として表される所定の初期基準仕様と、修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]として表される修正された基準仕様とを利用し、ここで、修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の対角要素は、[Grr(f)]と同じであり、[Gmod_rr(f)]の下の対角要素の各々は、[Gcc(f)]の下の対角要素に係数[Kijk]を乗じたものに等しい。係数[Kijk]は、所定の初期基準仕様によって示唆される各制御位置対間の積を、低レベル動作中の実際に測定された制御位置応答によって示唆される各制御位置対間の積で割った比である。[Gmod_rr(f)]の上記対角列は、下の対角行の対応する転置された複素共役に等しく(その要素の行と列の添え字は逆になっている)、それによって、所定の初期基準の機能として、より少ないシステム駆動力で、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)により密接に対応し、かつ、試験の実施中に試験システムおよび被試験物への損傷のより少ないリスクを維持するように、試験仕様に試験システムおよび設備の実世界の性能特性を組み込む。
【0019】
また、本発明の実施形態は、少なくとも2つの個別に制御可能な振動トランスデューサのグループと少なくとも2つの制御センサトランスデューサとに結合されたMIMO制御システムを含む音響または機械振動試験システムを含み、制御センサトランスデューサの数は、コントローラ出力ドライブの数または個別に制御可能な振動トランスデューサのグループの数と等しい必要はない。MIMO制御システムは、スペクトル密度行列[Grr(f)]として表される、その既存の所定の初期基準仕様入力ソフトウェアを使用して手動で修正された所定の初期基準仕様を利用し、ここで、その非対角要素のいくつかまたはすべては、それらの等価コヒーレンス値が「わずかに」増加するように選択され、例えば、試験技術者が、所定の初期基準仕様の非対角要素の許容可能な修正が、全体の指定された試験許容範囲と一致すると考えるように、例えば、0.005から0.05を元の値または他のいくつかの小さい量に加えることによって、典型的には最低周波数である選択された周波数範囲にわたって、必要な駆動力を、後続の制御精度における許容可能な損失を犠牲にして、典型的に修正された初期基準仕様を使用する。このように手動で修正された所定の初期基準仕様[Grr(f)]を利用して、MIMO制御システムは、スペクトル密度行列[Gcc(f)]によって表される従来のMIMO制御の下での動作中に測定された制御位置応答、および修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]として表される修正された基準仕様も利用する。ここで、修正されたスペクトル密度行列[Gmod_rr(f)]の対角要素は、[Grr(f)]と同じであり、[Gmod_rr(f)]の下の対角要素の各々は、[Gcc(f)]の下の対角要素に係数[Kijk]を乗算したものに等しく、ここで、係数[Kijk]は、所定の初期基準仕様によって示唆される各制御位置対間の積を、低レベル動作中の実際に測定された制御位置応答によって示唆される各制御位置対間の積で割った比である。[Gmod_rr(f)]の上対角列は、下対角行の対応する転置された複素共役に等しく、それによって、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)への修正の機能として、要求されるシステム駆動力のより大きな減少を伴って、所定の初期基準仕様(所定の初期音場仕様または所定の初期機械振動仕様)により近い対応を維持し、試験の実施中に試験システムおよび被試験物への損傷のリスクをより少なくするように、試験仕様に試験システムおよび設備の実世界での性能特性を組み込む。
【0020】
本発明の上記および他の特徴および利点は、添付の図面に例示される本発明の実施形態の以下の説明から明らかであろう。本明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の原理を説明し、当業者が本発明を作成し、使用することを可能にするためにさらに役立つ。図面の縮尺は合っていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】音響または機械試験のための典型的なMIMO振動試験システムの簡略化されたブロック図である。
図2a】本発明の実施形態による音響または機械試験のための強化MIMO振動試験システムの簡略ブロック図である。
図2b】本発明の実施形態による音響振動試験のための強化MIMO振動試験システムの詳細なブロック図である。
図2c】本発明の実施形態による機械振動試験のための強化MIMO振動試験システムの詳細なブロック図である。
図3】本発明による図2aに示されたものに類似した強化MIMO音響または機械振動試験システムの簡略化されたブロック図であり、以前の試験実行からの以前に記憶された修正された基準仕様の使用を示し、現在のまたは所定の初期基準仕様を置き換えるか、または図2aに示されたフィードバックプロセスを介してさらに修正されるブロック図である。
図4】従来の制御または矩形制御のいずれかを使用して、現在の基準スペクトル密度行列(SDM)[Grr(f)]および現在の制御応答SDM[Gcc(f)]が、図2a、2b、2c、および図3によって示されるように、以前に修正された基準SDMからのフィードバックまたは所定の最初に指定された基準SDMからのフィードバックのいずれかを使用して、修正された基準SDM[Gmod_rr(f)]を生成するためにどのように使用されるかのブロック図を示す。
図5a】試験のための所定の初期基準仕様を表すスペクトル密度行列(SDM)[Grr(f)]の例を示す。
図5b】SDM[Gcc(f)]の例を示しており、安定した動作構成が達成されると、完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルでの動作中の制御位置における実際の測定応答を表す図を示す。
図5c】修正された参照SDM[Gmod_rr(f)]の要素がどのようにして得られるかの詳細な計算を示す。
図6a】正方形制御で動作する特定のMIMOコントローラと組み合わせて矩形制御を達成するために、米国特許第9,683,912B2号に記載されているように、ミキサのための準備と共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、図2bに実線トレースによって示され、ミキサを使用して修正されていないMIMO音響振動コントローラで得られた、制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均と、図2bに破線トレースによって示され、ミキサを使用する強化MIMO音響振動コントローラで得られた、制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均との比較を示す。
図6b】別の試験中に、正方形制御で動作する特定のMIMOコントローラと組み合わせて矩形制御を達成するためにミキサを使用して、修正されていないMIMO音響振動コントローラで得られた、制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均と、破線で示され、制御性能の向上を示すために、矩形制御でありミキサを使用しない強化MIMO音響振動コントローラで得られた、制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均との比較を示す。
図6c】本発明の実施形態の達成されたコヒーレンス制御性能の改善を示す達成された相対制御応答コヒーレンスの比較を、図6aのように、実線および破線トレースを同様に使用して示す。
図7】同一の一般的なDFAT試験の2回の実行の間の、4つのドライブの各々に対するPSDの形式での、必要なシステムドライブ電力の比較であって、最初の実行は、実線トレースによって示される修正されていない所定の初期基準仕様で得られた修正された基準仕様を使用し、第2の実行は、破線トレースによって示される手動で修正された所定の初期基準仕様で得られた修正された基準仕様を使用する比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書の実施形態は、同様の参照符号/番号が同一または機能的に同様の要素を示す図を参照して説明される。具体的な構成および配置が議論されるが、これは例示目的のためにのみ行われることを理解されたい。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成および配置を使用できることを理解するであろう。
【0023】
図2aおよび図3を参照すると、本発明の一実施形態による強化MIMO振動試験システム200の簡略ブロック図が示されている。図2aを参照すると、MIMO振動試験システム200は、従来のMIMO振動コントローラ210と、被試験システム220と、制御フィードバックループ230と、修正または更新された基準仕様240を開発するための計算手段と、修正または更新された基準仕様を記憶するための基準仕様記憶部250とを含む。図2aを参照すると、当業者には理解されるように、被試験システム220は、少なくとも被試験デバイス(DUT)、物理的試験環境、DUTを励起するための機械または音響振動トランスデューサのグループ、およびシステムの性能を監視するための制御センサトランスデューサを含む。再び図2aを参照すると、MIMO振動コントローラ210は、被試験システム220内に配置された制御センサトランスデューサMから信号を受信するための多数の入力を有する。入力Mの数は、2以上の任意の数であり得るが、典型的には、4から24の間である。被試験システム220内の制御センサトランスデューサは、音響試験システム内の制御マイクロホン、機械試験システム内の振動台または被試験物制御加速度計、または駆動装置への応答を測定する他の制御センサであってもよい。MIMO振動コントローラ210はまた、被試験システム220内に配置された音響または機械振動トランスデューサの個別に制御可能なグループに駆動信号を提供するための多数の出力またはドライブNを有する。出力またはドライブの数Nは、2以上の任意の数であってもよいが、典型的には、4から16の間である。また、出力数Nは、入力数M以下である。当業者によって理解されるように、制御センサトランスデューサMからの入力の数は、従来の正方形MIMO制御のためのドライブNの数に等しく、一方、制御センサトランスデューサMからの入力の数は、矩形MIMO制御のための出力またはドライブNの数よりも大きい。本発明では、正方形または矩形のMIMO制御を使用することができる。制御フィードバックループ230は、MIMO振動コントローラ210に組み込まれてもよく、MIMO振動コントローラ210によって受信される、制御センサトランスデューサMから完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルでのシステム200の動作中の所定の初期基準仕様への信号の比較に基づき、MIMO振動コントローラ210へのフィードバック信号を供給してもよい。「完全な試験レベルよりも実質的に低い」という用語は、完全な試験レベルよりも6dB(完全なレベルの1/2)から24dB(完全なレベルの1/16)低いことを意味し、ここで「完全な試験レベル」とは、所定の初期基準仕様で定義された振動プレ試験中の音響の最大音圧レベル(通常はSPL単位)、または機械の最大振動レベル(通常はGrms単位)である。完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルでのシステム200の動作中にフィードバック信号を提供することにより、制御センサトランスデューサMの実際に測定された応答と所定の初期基準仕様との間の差が、オペレータが指定した予め設定された閾値よりも低くなり、安定した動作構成にシステムが到達した場合の判定が可能となる、または、さらなる動作が、制御センサトランスデューサ信号Mと所定の初期基準仕様との間の有意に良好な対応関係を生成しそうにないことを観察が示す。安定した動作構成が達成されると、修正または更新された基準仕様240は、後述するように作成され、修正された基準仕様記憶部250に記憶される。修正された基準仕様記憶部250は、従来のコンピュータシステム内で使用されるハードドライブまたはソリッドステートドライブなどのいずれかの適用可能な記憶媒体とすることができる。
【0024】
図2bを参照すると、これに限定されない1例としての、本発明の実施形態による音響試験のための強化MIMO振動試験システム200のより詳細な図が示されている。他の図と同じ参照番号を持つブロックは同じであり、前述と同じ機能を実行する。図2bに示す例では、試験中のシステムは、上述した制御センサトランスデューサとして16個の音響トランスデューサ222および24個のマイクロホンMを含む。しかしながら、上述したように、音響トランスデューサ222および制御マイクロホンMの数は、これに限られるものではない。図2bで説明した強化MIMO振動試験システム200は、図2aの簡略図の説明で前述した通りに機能する。しかしながら、当業者は理解するように、図2bに示される強化MIMO試験システムは、音響試験のために具体的に構成され、米国特許第9,683,912号に開示されているようなミキシングしフィルタリングするサブシステム380を含み、この米国特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるが、ここで、ミキシングは、信号分配サブシステムによってより簡単に実施することができ、フィルタリングは、ラウドスピーカ内に組み込むことができる。また、当業者は理解するように、N個の出力ドライブ370をミックスして、より少ない数の固有のドライブ信号390を音響トランスデューサ222に送ることは、固有のドライブ390の数を減らす効果を補償することができるMIMO制御システム内の矩形制御の実装の一部としての使用を可能にする。参照番号270、280、290および300は、制御応答SDM[Gcc(f)]300を測定するために必要な処理ブロックを識別する。参照番号340、350、360および370は、MIMO制御システム200の16個の出力ドライブ370を生成するために使用される処理ブロックを識別する。参照番号310、320および330は、制御参照SDM[Grr(f)]330を生成するために使用される処理ブロックを識別する。参照番号400および410は、n番目のオクターブバージョンの[Gcc(f)]400を作成するためのブロックであり、そのアラームおよびエラーチェックブロック410である。グラフィックス・サブシステム420は、試験・エンジニア(システム・ユーザ)が評価するための試験結果を表示する。
【0025】
図2cに、本発明の実施形態による機械試験のための強化MIMO振動試験システム200のより詳細な図を示す。他の図と同じ参照番号を持つブロックは同じであり、前述と同じ機能を実行する。図2cに示す例では、テスト中の試験システム220は、複数の加振器225を駆動して振動台および被試験物を駆動するための16個のパワーアンプ224と、上述した制御センサトランスデューサとしての24個の制御加速度計Mとを含む。しかしながら、上述したように、パワーアンプ/ドライバ224および制御加速度計Mの数は、これに限られない。図2cで説明した強化MIMO振動試験は、図2aの簡略図の説明で前述したように機能する。しかしながら、当業者は理解するように、図2cに示される強化MIMO試験システムは、特に機械試験のために構成される。参照番号270、280、290および300は、制御応答SDM[Gcc(f)]300を測定するために必要な処理ブロックを識別する。参照番号340、350、360および370は、MIMO制御システム200の16個の出力ドライブ370を生成するために使用される処理ブロックを識別する。参照番号330は、制御基準SDM[Grr(f)]330を含むために使用されるブロックを識別する。参照番号410は、[Gcc(f)]をその許容値とアボート境界と比較するためのものである。グラフィックス・サブシステム420は、試験・エンジニア(システム・ユーザ)が評価するための試験結果を表示する。
【0026】
図5aを参照すると、試験のための所定の初期基準仕様を表すスペクトル密度行列(SDM)の例[Grr(f)]が示されており、ここで、行および列の数は、本発明の一実施形態による制御センサトランスデューサMの数に対応するMに等しい。当業者は理解するように、対角要素は、制御センサトランスデューサの位置における所望のスペクトル振幅応答を表し、非対角要素は、制御センサ位置の応答間の相対的コヒーレンスおよび位相の所望の仕様を表し、ここで、上対角行は、エルミートおよび少なくとも正の半定値[Grr(f)]結果を保証するために、対応する下対角列の転置された複素共役である。
【0027】
図5bを参照すると、安定した動作構成が達成されると、完全な試験レベルよりも実質的に低いレベルで動作中の制御センサトランスデューサの位置における実際に測定された応答を表すSDMの例[Gcc(f)]が示されている。ここで、行および列の数は、本発明の一実施形態による、制御センサトランスデューサMの数に対応するMに等しい。当業者はよく理解するように、これらの実際に測定された応答は、先に議論した振動試験システムおよび設備の多くの現実世界の制限により、所定の初期基準仕様とは異なる。上記のように、[Gcc(f)]もまた、エルミート型であること、および少なくとも正の半定値的であることが要求され、その上対角行は、それらの対応する下対角列の転置複素共役である必要がある。
【0028】
図4を参照すると、本発明の実施形態による、所定の初期基準仕様または以前に修正された基準仕様[Grr(f)]からの修正された基準仕様[Gmod_rr(f)]についてのSDM、および制御センサトランスデューサ応答[Gcc(f)]についてのSDMを作成する簡略化されたブロック図が示されている。図5cを参照すると、本発明の一実施形態による、修正された基準仕様[Gmod_rr(f)]に対するSDMの要素が、所定の初期基準仕様または以前に修正された基準仕様[Grr(f)]からどのように導き出されるかの例、および制御センサトランスデューサ応答[Gcc(f)]に対するSDMの例が示される。図5cに示されるように、修正された基準仕様[Gmod_rr(f)]の対角要素は、制御位置における所望のスペクトル振幅応答を表す、所定の初期基準仕様または以前に修正された基準仕様[Grr(f)]の対角要素と同じである。修正された基準仕様[Gmod_rr(f)]の下対角要素Kijkcc(i、j、f)は、図5cに示すように、所定の初期基準仕様で示された各制御位置対間の積を、Kijkの下式に従って低レベルでの動作中に実際に測定された制御位置応答で示された各制御位置対間の積で割った比であるKijkと、Gcc(i、j、f)で示された対応する下対角要素Gcc(f)との積を生成することによって導出される。
【数1】
k=1・・・スペクトル線の数,
i=2,・・・M,
j=1,・・・i-1
【0029】
ここで、当業者はよく知っているように、スペクトル線の数は、[Gcc(f)]SDMを決定するために使用するMIMO振動コントローラが使用する振動高速フーリエ変換(FFT)スペクトラムアナライザによって分析される周波数の数と一致する[Grr(f)]の定義によって決定される。
【0030】
図5cにも示されているように、[Gmod_rr(f)]の上対角行は、先に得られた[Gmod_rr(f)]の下対角列の転置された複素共役をとることによって導かれる。これは、数学的に等価であるかもしれないが、効率的ではなく、悪い条件の結果を生じるかもしれない数値精度問題に苦しむかもしれない他の定式化と比較して、計算的に効率的である一方で、得られた修正基準仕様[Gmod_rr(f)]を表す得られたSDMが少なくとも正の半定値とエルミートの両方であることを保証する。この方法はまた、制御位置間の相対的コヒーレンスと位相を表す、得られた修正された基準仕様[Gmod_rr(f)]の非対角要素が、振動試験システムと設備の実世界の限界を組み込むことを保証する。
【0031】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による、完全な試験レベルで動作するMIMO振動試験システムの簡略化されたブロック図が示される。図2aと同じ参照番号を有するブロックは、同じであり、先に説明したのと同じ機能を実行する。完全な試験レベルの動作のために、修正された基準仕様は、修正された基準仕様記憶部250から呼び出され、基準インポート255によってMIMO振動コントローラ210にロードされる。修正された基準仕様がロードされると、振動試験システムは、修正された基準仕様を制御点での応答のターゲット仕様として使用して、通常の方法で動作する。修正された基準仕様書は、位相およびコヒーレンス関係を記述する修正された非対角要素に振動試験システムの実際の性能を組み込むので、結果として生じる完全なレベルの試験性能は、所定の初期基準の機能として、必要とされるシステム駆動力がより少なく、試験の実施中に試験システムおよび被試験物に損傷を与えるリスクがより少なく、所定の初期基準スペクトル仕様書により近い対応を維持することができる。
【0032】
実験はまた、修正された基準仕様の使用が、改善されたスペクトル均一性およびより少ない必要なシステム駆動力に加えて、コヒーレンスおよび位相に対する改善された全体的な(overall)結果を振動試験システムが達成することを可能にすることを示した。図6a、6bおよび6cを参照すると、これらは、米国特許第9,683,912号に開示されているようなミキシングおよびフィルタリングサブシステムを利用する従来のMIMO音響振動試験システムの性能と図2bに記載されている本発明による実施形態とを比較して示している。当業者は、スペクトル均一性の著しい改善が図6aおよび6bに示されることを容易に理解するだろう。図6cには、コヒーレンスを低減する実質的な改善が示されている。
【0033】
特に、図6aは、制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均の比較を示しており、特に、本発明が提供する制御性能の改善を示すために、正方形制御で動作する特定のMIMOコントローラと組み合わせて矩形制御を達成するためにミキサを用いた修正されていないMIMO音響振動コントローラを使用し、しかし、その実線トレースによって示される米国特許第9,683,912B2号に記載されるように、ミキサのための規定を用いて得られる制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均と、その破線トレースによって示される、図2bによって示される強化MIMO音響振動コントローラを使用し、先と同じミキサおよび正方形制御を用いて、得られる制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均の比較を示している。初期基準スペクトルベクトルの第1の要素はまた、破線-点線トレースによって図6aに示され、その平均性能が[Grr(f)]の対角要素によって初期定義基準仕様にどの程度よく対応するかを示す。図6aは、実線トレースによって示された修正されていないMIMOコントローラを用いて得られた制御応答SDMの対角要素の平均が、破線トレースによって示された本発明を用いて強化MIMOコントローラを用いて得られたものよりも大きな誤差を示し、高いノイズフロアを有することを教示しており、したがって、本発明が説明された方法を用いて提供する改善を示している。
【0034】
さらに、図6bは、図6aに実線トレースで示されるミキサのための準備ではなく矩形制御で動作する特定のMIMOコントローラと組み合わせて矩形制御を達成するミキサを使用し、修正されていないMIMO音響振動コントローラを用いて、別の試験中に得られる制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均と、破線で示される、本発明がさらに提供する制御性能の改善を示す、ミキサを使用しない矩形制御を用いる今回の強化MIMO音響振動コントローラを用いた制御応答SDM[Gcc(f)]の対角要素の平均との比較を示す。初期基準スペクトルベクトルの第1の要素はまた、破線点線トレースによって図6bに示され、また、その平均性能が[Grr(f)]の対角要素によって最初に定義されたものにどの程度よく対応するかを示す。図6bはまた、修正されていないMIMOコントローラ(実線トレースによって示される)を用いて得られる制御応答SDMの対角要素の平均が、本発明を用いて変更されたMIMOコントローラ(破線トレースによって示される)を用いて得られるものよりも大きな誤差を示すことを教示する。本発明で得られた制御性能は、図6aに示されたミキサを使用して得られた正方形制御よりも、強化された矩形制御を使用した場合の方が良好であることに注目されたい。従って、図6bは、先に説明した方法を使用した結果として、本発明が強化された矩形制御と共に提供するさらなる改善を教示する。
【0035】
図6cは、図6aと図6bのように、(実線トレースによる)変更されていないMIMOコントローラを用いて得られた、接近した制御トランスデューサ間の達成されたコヒーレンスと、(破線トレースによる)前述の修正されたMIMOコントローラを用いた達成されたコヒーレンスの比較を示す。下の図は、図6aと図6bのように、変更されていないMIMOコントローラで得られたより離れた制御トランスデューサ間の達成されたコヒーレンス(実線トレースで示す)と、前述の修正されたMIMOコントローラを用いて達成されたコヒーレンス(破線トレースで示す)との比較を示す。図6cは、修正されていないMIMOコントローラ(実線トレースによって示される)によって得られる制御変換器SDMの非対角要素の間の相対的コヒーレンスが、対応する相対的コヒーレンスが本発明を用いて修正されたMIMOコントローラ(破線トレースによって示される)によって得られ、より大きな相対的コヒーレンスを示すことを教示する。このように、MIMO音響振動制御のために、修正されたMIMOコントローラは、MIMO音響振動試験のもう一つの主要な目標である、その低い到達コヒーレンスで、修正されていないMIMOコントローラよりはるかに良い拡散場を近似する。
【0036】
図2aを参照すると、本発明の別の実施形態によるMIMO振動試験システムの簡略化されたブロック図が示される。前の図と同じ参照番号を持つブロックは前に説明したのと同じであり、同じ機能を実行する。この場合、以前に保存された修正された基準仕様書は、以前の試験あるいは試験設定からのものであってもよく、または試験条件は、基準仕様書の更なる修正が望ましいように十分に変更されていてもよい。従って、図2aに示されるフィードバックループ230は、以前に記憶された修正された基準仕様をロードした後、振動試験システムを完全な試験レベルより十分に低いレベルで動作させることができ、実際の制御位置応答を、図4、5a、5bおよび5cを参照して説明したのと同じプロセスに従って新しい修正された基準仕様を作成し記録する目的で、図2aの前の議論の場合のように記録することができるように設けられる。しかし、この場合の出発点は、後の使用のために記憶することができるか、またはすぐにロードして完全なレベルの試験のために使用することができる、[Gmod_rr(f)]という新しい修正された基準仕様を生成するために、図4および図5cを参照して説明したプロセスを使用して、新しい制御応答SDM[Gcc(f)]と組み合わせた修正された基準仕様、[Gmod_rr(f)]である。以前に修正された基準仕様のこのような追加の修正は、最初に修正された基準仕様を作成するために必要とされるより長い時間を排除し、システムが試験条件の変化に応じてさらに良好な結果を達成することを可能にするさらなる修正された基準仕様を生成し得る。
【0037】
最近の試験は、所定の初期基準仕様の非対角要素の手動修正が、例えば、初期基準の非対角要素内の特定の相対的コヒーレンス値を増加させることによって、所定の初期基準仕様を「わずかに」変更することによって行われる特定のMIMO試験で必要とされる要求されるシステム駆動力をさらに低減するために、図6a~6cに関して上述した達成されたスペクトル均一性をユーザがトレードオフすることを可能にすることを示した。試験は、この効果が非線形であることを示しており、これは、所定の初期基準仕様の定義および特定の試験設備に依存し、ここで、典型的には、修正が大きいほど、必要な駆動力は大きく減少するが、同時に、達成された制御精度も大きく低下し、上記の概要に記載されているように、修正が小さいほど、達成された制御精度の低下は許容可能となる。図7は、修正されていない所定の初期基準仕様を使用して得られた変更された基準仕様を使用する試験実行であって、制御マイクロホン応答間のすべての特定の初期コヒーレンスが、すべての周波数について0.0に設定された、すなわち、実線トレースによって示される拡散音場を特定する試験実行と、変更された所定の初期基準仕様を使用して得られた変更された基準仕様と、25Hzと50Hzの間の周波数についてのすべての基準が0.05に設定された、すなわち、破線トレースによって示されるほぼ拡散音場を特定する第2の試験実行との間の要求されるシステム駆動PSD(power spectral densities:パワースペクトル密度)の比較とともにこれらの結果のいくつかの例を示している。24台の制御マイクを使用して、試験中に使用された合計8個のスピーカスタックの2つの別々のスピーカスタックのセットのそれぞれを励起するために使用された4つのドライブのそれぞれのPSDの4つのプロットを確認します。図7に示される通り、4つのドライブの各々についての実線トレースが、個々のドライブに依存して、3よりも大きなファクタだけ、25Hzと50Hz間の周波数について、破線トレースよりもV/Hzにおいて、またV/Hzにおいて、より高い振幅を有する。周波数の関数として必要なスピーカスタック駆動力密度を表示するPSDによって示されるように、最大駆動力は、この周波数の範囲内で発生するので、このように修正された所定の初期基準仕様を有する本発明の使用は、修正されていない所定の初期基準を使用するよりも、必要なシステム駆動力をより大きく減少させるが、発明の概要で上述したように、後続の制御精度における許容損失を犠牲にする。この電力の減少により、同じスピーカ・スタック・セットおよびそれらのパワー増幅器について、より低い駆動力でより高い音響レベルのDFAT音響試験を実施することが可能となり、従って、より高い音響レベルでの音響試験のためのラウドスピーカの使用を拡張する。機械試験でも、実施された他の試験で見られたのと同じ利点が生じる。修正されていない所定の初期基準と共に本発明を使用することによる電力節約は、所定の初期基準仕様の機能であるので、修正された所定の初期基準を使用することにより提供される電力節約量も、修正された所定の初期基準仕様の機能である。しかし、多くの場合、利用可能な試験装置を用いた音響試験または機械試験のいずれについても、高い試験レベルに達することができるようにするためには、この例が示すように、修正された所定の初期基準を用いることは、特定の試験施設が利用可能な試験装置を用いて試験を行うことができるか否かの違いであり得る。
【0038】
当業者であれば、本発明の範囲内に入る、より多くの変形が実施され得ることは明らかであろう。これに限定されない例として、これらは、フィードバックループ230、修正された基準仕様導出240、および図2aおよび図3の修正された基準仕様記憶部250のMIMO振動コントローラ自体への組み込みを含み得る。あるいは、これらの要素は、既存のMIMO振動コントローラのためのアドオンとして、適切な基準仕様ロードデバイスを用いて構成することができる。正方形および矩形MIMO制御スキームは、米国特許第9,683,912号に開示されているような駆動ミキシングスキームと同様に、本発明と共に使用することができ、これらのスキームは全て本発明の範囲に含まれる。既存のMIMO制御システムに含まれる既存の所定の初期基準仕様入力ソフトウェアは、上述のように所定の初期基準仕様を修正するために使用され、本発明のそのような部分である。さらに、初期基準仕様と測定された制御位置応答を組み合わせて修正基準仕様SDMの要素を導出または計算する方法は他にも多数あり、これは振動試験システムおよび設備の実際の能力をより代表するものである。これに限定されない例として、[Grrmod(f)]を計算するために、図5cに示されているものの代わりに、行列法を使用することができ、これは、図5cに示されているように得られる結果を近似するであろうが、不可避の数値誤差のために正の(半)定値エルミート行列を生じることができず、図5cが教示するものほど計算が効率的ではないであろう。これに限定されないさらなる例として、「現実的な」[Gcc(f)]を得るための応答特性試験設備およびMIMO振動コントローラのシミュレーションを、図5cによって教示される方法と共に使用することができ、または近似的な結果[Grrmod(f)]を生じる他のそのような計算方法を使用することができるが、そのようにして得られた[Gcc(f)]が、存在する可能性のある前述の試験およびMIMO制御の制限を捕捉する程度によって制限される。これらの全てはまた、本発明の範囲内にある。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7
【国際調査報告】